JPH10102655A - 床および屋根の取付構造 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 取付用部材に固定金具である例えばビスでプ
レキャスト製軽量コンクリートパネルを取付る床および
屋根の取付構造において、固定金具取付部分の面内方向
の耐力および剛性を向上させる。 【解決手段】 プレキャスト製軽量コンクリートパネル
の上面より挿通され、さらにプレキャスト製軽量コンク
リートパネルの取付用部材に面する面に固着された板材
を貫通する固定金具により、プレキャスト製軽量コンク
リートパネルが取付用部材に取付けられていることを特
徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、床および屋根に用
いるプレキャスト製軽量コンクリートパネルの取付構造
に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来のこの種の構造としては、図５に示
すように、取付用部材である薄肉下地材２０にプレキャ
スト製軽量コンクリートパネル１をビス７により取り付
ける構造が、特開平５−１４８９２９号公報に開示され
ている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】しかし、前記の特開平
５−１４８９２９号公報に開示された構造では、プレキ
ャスト製軽量コンクリートパネル１に固定金具であるビ
ス７を通じて面内方向（ビスの軸方向と直交する方向）
の外力が伝達される時に、プレキャスト製軽量コンクリ
ートパネル１とビスの接触部分の応力分布は一様に生じ
ず、薄肉下地材側に偏って大きな応力が生じるため、ビ
ス７が薄肉下地材側よりプレキャスト製軽量コンクリー
トパネル１に陥没しながら、薄肉下地材２０を中心とし
て回転する。この回転およびプレキャスト製軽量コンク
リートパネル１の端部の破壊によりビス取付部分の水平
方向の耐力および剛性が決まり、それ以上のビス取付部
分の面内方向の耐力および剛性を向上させることが不可
能であった。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は前記の課題を解
決するためのもので、プレキャスト製軽量コンクリート
パネルを用いた床および屋根の取付構造において、該プ
レキャスト製軽量コンクリートパネルの上面より挿通さ
れ、さらに該プレキャスト製軽量コンクリートパネルの
取付用部材に面する面に固着された板材を貫通する固定
金具により、該プレキャスト製軽量コンクリートパネル
が該取付用部材に取付けられていることを特徴とするプ
レキャスト製軽量コンクリートパネルを用いた床および
屋根の取付構造である。

【０００５】

【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を説明する。
本発明で使用するプレキャスト製軽量コンクリートパネ
ルは主に鉄骨造もしくは木造の床、屋根等に用いられる
もので、例えば内部を鉄筋もしくはラス網などで補強さ
れた厚さ３７ｍｍ〜１５０ｍｍの軽量気泡コンクリート
製のパネルを用いることができ、中でも厚さ７５ｍｍ以
上のＡＬＣパネルと呼称される軽量気泡コンクリート製
のパネルがよく用いられる。

【０００６】本発明で使用する板材は、プレキャスト製
軽量コンクリートパネルの取付用部材に面する面に固着
され、想定される荷重に対して面内方向にズレを生じな
いようにしたもので、プレキャスト製軽量コンクリート
パネルをプレキャスト製軽量コンクリートパネルの上面
から挿通されるビスなどの固定金具を用いて、建物の横
架材、もしくは横架材などに固着された専用の取付用部
材に取り付ける際に、プレキャスト製軽量コンクリート
パネルと固定金具に介在し、プレキャスト製軽量コンク
リートパネルと固定金具の間で伝達される面内方向の荷
重に対して、力の伝達経路を変え、さらにプレキャスト
製軽量コンクリートパネルの固定金具の貫通する部分の
周辺を補強するものである。即ち、板材を用いない場
合、例えば図５に示す従来の取付構造では、薄肉下地材
２０からビス７を介してプレキャスト製軽量コンクリー
トパネル１に伝達される面内方向力はビス７からプレキ
ャスト製軽量コンクリートパネル１への側圧として伝達
されるが、本発明では、主に、前記の面内方向力は、ま
ず固定金具からプレキャスト製軽量コンクリートパネル
に固着された板材に伝達され、さらに板材からプレキャ
スト製軽量コンクリートパネルに伝達される。

【０００７】板材の材質としては、金属板および硬質プ
ラスチック板などプレキャスト製軽量コンクリートパネ
ルと比して側圧に対する強度が十分に大きいものを用い
る。板材の厚さは、固定金具から板材に伝達される面内
方向力により、固定金具から受ける力に対して板材が破
壊しないように決めればよく、一般的には、０．４〜６
ｍｍ程度の鋼板が用いられ、さらに厚さ０．６〜３．２
ｍｍ程度の鋼板が特によく用いられる。又、板材の幅、
長さは固定金具の直径の５倍程度あれば固定金具から伝
わる面内方向力に対して、必要な縁あき距離を確保でき
る。従って、一般的には、プレキャスト製軽量コンクリ
ートパネルと板材とを接着剤などにより固着するために
必要な固着力を確保するに見合う面積、施工誤差などの
点から決めればよい。以上のように、板材の厚さ、大き
さおよび形状を適切に設計することにより、面内方向力
に対する耐力および剛性を優れたものとすることができ
る。又、板材をプレキャスト製軽量コンクリートパネル
の幅方向のほぼ全体に位置させると、施工の際、固定金
具の取付可能範囲が広く、施工が容易であり、かつ、プ
レキャスト製軽量コンクリートパネルの取付用部材と面
する面に板材を接着剤などにより固着する場合は、該プ
レキャスト製軽量コンクリートパネルと取付用部材との
間に隙間が生じなく好ましい。又、板材の大きさを決め
る際には、さらに風および自重などの荷重の伝達、通
気、火災時の火の流通、熱による伸縮などの点も考慮し
て行うのが好ましい。

【０００８】板材のプレキャスト製軽量コンクリートパ
ネルへの固着方法としては、接着剤による方法、両面接
着テープによる方法、板材に突起部を設け該突起部をプ
レキャスト製軽量コンクリートパネルに打ち込む方法、
第２の実施例に示すようにパネルの厚さよりやや小さめ
に作られたＣ字状の部材をプレキャスト製軽量コンクリ
ートパネルの端部からはめ込みＣ字状部材とプレキャス
ト製軽量コンクリートパネルを一体的にビスで締め上げ
る方法、釘およびビスなどにより留めつける方法、パネ
ルの取付用部材と面する面に板材をはめ込む凹部を設け
凹部に板材をはめ込むことにより板材をプレキャスト製
軽量コンクリートパネルの面内方向に固定する方法およ
びこれらの方法を併用することができる。

【０００９】本発明で使用する取付用部材は、建物の柱
梁などの躯体に固着されたもので、一般的にはプレキャ
スト製軽量コンクリートパネルの下面に面し、プレキャ
スト製軽量コンクリートパネルを固定金具を用いて面内
方向および面外方向に固定するためのものである。取付
用部材は、金属、プラスチックおよび木製などからな
り、一般的には厚さ１．２〜４．０ｍｍ程度の平板、山
形鋼、溝形鋼もしくは柱、梁に固着された少なくとも厚
さ１５ｍｍ程度を有する木製の部材などを用いる。又、
特に専用の部材を用いずに、木造および鉄骨造の梁、胴
縁、根太、母屋などをそのまま取付用部材として用いる
こともできる。

【００１０】本発明で使用する固定金具は、プレキャス
ト製軽量コンクリートパネルを取付用部材に面外方向
（固定金具の軸方向）および面内方向に固定するために
用いられるもので、ビス、釘およびボルトなどを用いる
ことができるが、中でも直径５〜６ｍｍ程度のビスおよ
び直径３〜５ｍｍの釘を用いれば、固定金具の挿通の為
の下穴を予め設けておく必要がないため施工性に優れ望
ましい。またセルフドリルビスを用いることもある。

【００１１】以上のように構成したプレキャスト製軽量
コンクリートパネルの取付構造は、プレキャスト製軽量
コンクリートパネルに固定金具を通じて面内方向（ビス
の軸方向と直交する方向）の外力が伝達される時に、補
強手段である板材を介して伝わるため、プレキャスト製
軽量コンクリートパネルが固定金具から受ける側圧によ
り陥没および亀裂などの損傷を生じることがない。

【００１２】又、プレキャスト製軽量コンクリートパネ
ルの板材で覆われた部分は、板材の拘束力により、亀裂
が生じにくくなり、又、例え亀裂が生じても進展しにく
くなり、取付部の面内方向の耐力および剛性が向上し好
ましい。尚、この効果は、前記の板材の固着方法の中
で、接着剤や両面接着テープによる方法およびＣ字状部
材を用いる方法とした場合に、特に大きくなる。

【００１３】従って、本発明の取付構造によるプレキャ
スト製軽量コンクリートパネルを建物の床、屋根などの
スラブ面に用いた場合、該プレキャスト製軽量コンクリ
ートパネルの上面側から容易に固定金具を挿通すること
ができプレキャスト製軽量コンクリートパネルの取付作
業を複数回で行う必要がなく好ましい。さらにプレキャ
スト製軽量コンクリートパネルが面内方向の外力による
損傷を生じにくくすることができ、耐力、剛性に優れた
取付構造を得ることができる。さらにプレキャスト製軽
量コンクリートパネルが、建物に加わった地震力などの
面内方向の外力を十分に負担し、外力によるスラブ面の
変形を防止することができ、躯体の耐震性を向上させる
ことができる。又、プレキャスト製軽量コンクリートパ
ネルの効果を適切に考慮して設計すれば、建物の火打
ち、筋交い、ブレースなどの構造材料を省略することも
できる。

【００１４】又、プレキャスト製軽量コンクリートパネ
ルは、一般に強度性状が脆性的であり、従来の技術とし
て図５に示した取付部構造では、水平方向の外力に対し
脆性的な性状を示すが、本発明では、補強手段である板
材に、金属、プラスチック等の延性的な材料を使用する
ので、取付部構造としても、延性的な性状となり、繰り
返し荷重に対する耐力、剛性にも優れる。又、取付部の
プレキャスト製軽量コンクリートパネルに部分的な損傷
が生じても、取付部強度が急激に低下することはないの
で、粘り強い取付部構造となる。

【００１５】

【実施例】図１、図２は、本発明の第１の実施例であ
り、互いに直交する断面を表している。図１において、
内部に補強筋１８を有する厚さ１００ｍｍ、長さ１８２
０ｍｍ、幅６０６ｍｍのＡＬＣ床パネル４が取付用部材
である木製の横架材８の上に載置されている。

【００１６】ＡＬＣ床パネル４の長さ方向の両端の下面
１１には、ＡＬＣ床パネル４を木製の横架材８の上に載
置する前に予め、長さ（ＡＬＣパネル床４の幅方向）５
６０ｍｍ、幅８０ｍｍ、厚さ１．２ｍｍの亜鉛メッキ鋼
板からなる板材２が、酢酸ビニール系の接着剤３により
固着されており、板材２が木製の横架材８に接するよう
に、ＡＬＣ床パネル４が木製の横架材８の上に載置さ
れ、さらに、ＡＬＣ床パネル４の４隅が直径５．７ｍｍ
長さ１４５ｍｍのビス７で木製の横架材８に締結されて
いる。

【００１７】接着剤３としては、エポキシ系、酢酸ビニ
ール系、アクリル系、ウレタン系、ゴム系など様々なも
のを用いることができるが、本実施例ではＡＬＣ床パネ
ル４に板材２を接着した後、すぐにＡＬＣ床パネル４を
木製の横架材８の上に載置できるように、初期接着力に
優れた酢酸ビニール系の接着剤を用いている。接着剤３
は、ＡＬＣ床パネル４が木製の横架材８の上に載置され
た後、ＡＬＣ床パネル４の重量およびビス７による締結
力により、十分に圧締されるため、接着強度はＡＬＣ床
パネル４の母材強度程度のものを容易に得ることができ
る。本実施例では、ビス７に加わったビスの軸部と直交
する面内せん断力は、ビス７から直接ＡＬＣ床パネル４
に伝達されるのではなく、ＡＬＣ床パネル４の下面１１
に固着された板材２を介して伝達される。従って、板材
の大きさは、面内方向力により、板材２とＡＬＣ床パネ
ル４とが接着面で剥離しないような接着面積を確保でき
るようにすればよい。又、板材２の厚さは、ビス７が伝
達する面内方向力により、板材２が変形および支圧破壊
などを起こさないように決めればよい。

【００１８】又、ビス７はＡＬＣ床パネル４の４隅に各
々１本ずつＡＬＣ床パネル４の上面１０側から打ち込ん
でいるが、打ち込み位置は端部補強筋１８ａの内側で長
さ方向の端部から４０ｍｍ、幅方向の端部から１００ｍ
ｍとし、打ち込み深さはビス７の頭部をＡＬＣ床パネル
４の上面１０から０〜１５ｍｍ沈めて床面に突起物が出
ないようにしている。

【００１９】又、ＡＬＣ床パネル４の長辺目地１２は、
目地接着剤３ａにより固着しており、相隣接するＡＬＣ
床パネル４が長辺目地１２でズレないようにしている。
目地接着剤３ａを用いない場合、面内せん断力を受けた
ＡＬＣ床パネル４で構成された床面は、各々のＡＬＣ床
パネル４が長辺目地１２にズレを生じながら回転し、床
面のせん断変形角に比べ、一枚一枚のＡＬＣ床パネル４
のせん断変形角は小さいものとなり、ＡＬＣ床パネル４
が持つせん断剛性を十分に利用することができない。本
実施例のように、目地接着剤３ａを用いれば、長辺目地
１２においてＡＬＣ床パネル４が一体化しているため、
ＡＬＣ床パネル４のせん断変形角と床面のせん断変形角
との差が小さくなり、さらに、目地接着剤３ａにより一
体化された複数のＡＬＣパネル４に取付られた固定金具
間にまたがり、例えば対角の位置の固定金具間にせん断
力に対する応力が発生するので、面内せん断剛性に優れ
た床面を得ることができる。

【００２０】目地接着剤３ａとしては、酢酸ビニール
系、エポキシ系、ウレタン系、ゴム系、アクリル系、シ
リカアルミナ系など種々のものを用いることができる
が、剛性に重点を置く場合は硬い接着剤を用いるのがよ
く、粘り強い構造とする場合は、比較的柔らかい接着剤
が適している。以上の構成による本実施例の取付構造
は、固定金具を介して、ＡＬＣパネルと木製の横架材と
の間で伝達される面内方向力に対する耐力、剛性に優
れ、床面としてのせん断力に対する耐力および剛性に優
れる。

【００２１】次に図３、４に第２の実施例を示す。図３
と図４は互いに直交する断面を表している。図３におい
て、Ｈ−３００×１５０×６．５×９と呼称される寸法
のＨ形鋼からなる鋼製の横架材１３の上面に、取付用部
材１４が溶接されており、取付用部材１４にＡＬＣ床パ
ネル４の長辺方向の端部１５が載置されている。長辺方
向の端部１５には亜鉛メッキ鋼板からなるＣ字状部材６
が予めはめこまれており、Ｃ字状部材６の上から打ち込
まれたセルフドリルビス７ａにより、Ｃ字状部材６とＡ
ＬＣ床パネル４が一体化した状態で取付用部材１４に取
り付けられている。Ｃ字状部材６はＡＬＣ床パネル４よ
りやや小さめに作られており、かつＣ字状部材６の上面
より打ち込まれたセルフドリルビス７ａにより締め付け
られるため、ＡＬＣ床パネル４と強く密着し、セルフド
リルビス７ａから水平力が伝達されても、ＡＬＣ床パネ
ル４とＣ字状部材６は容易にズレが生じない。

【００２２】取付用部材１４は、幅３００ｍｍ、厚さ
３．２ｍｍの平鋼を用いており、鋼製の横架材１３の両
側に７５ｍｍずつ突出している。ＡＬＣ床パネル４の長
辺の形状は図４に示すように凹凸を持つ本実形状であ
り、さらに長辺目地１２にはエポキシ系の目地接着剤３
ａが塗布され、ＡＬＣ床パネル４相互を接着している。

【００２３】本実施例の取付構造では、ＡＬＣ床パネル
４を直接ビスで取り付けた場合に比べ、面内方向力に対
するビス部分の耐力および剛性が大幅に向上した。

【００２４】

【発明の効果】本発明によると、極めて簡単な施工方法
により、建物の躯体とプレキャスト製軽量コンクリート
パネルを用いた床および屋根との間で伝達されるプレキ
ャスト製軽量コンクリートパネルの面内方向の力に対す
る取付部分の耐力および剛性に優れる取付構造を得るこ
とができる。

【００２５】さらに、プレキャスト製軽量コンクリート
パネルの面内方向力に対する耐力および剛性を適切に評
価して設計すれば、建物の耐震性が向上し、建物の火打
ち材、ブレースなどを省略することもできる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る第１の実施例の断面説明図。

【図２】本発明に係る第１の実施例の断面説明図。

【図３】本発明に係る第２の実施例の断面説明図。

【図４】本発明に係る第２の実施例の断面説明図。

【図５】従来の技術に関する斜視説明図。

【符号の説明】

１ プレキャスト製軽量コンクリートパネル ２ 板材 ３ 接着剤 ３ａ 目地接着剤 ４ ＡＬＣ床パネル ６ Ｃ字状部材 ７ ビス ７ａ セルフドリルビス ８ 木製の横架材 １０ 上面 １１ 下面 １２ 長辺目地 １３ 鋼製の横架材 １４ 取付用部材 １５ 長辺方向の端部 １８ 補強筋 １８ａ 端部補強筋 ２０ 薄肉下地材

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 プレキャスト製軽量コンクリートパネル
   を用いた床および屋根の取付構造において、該プレキャ
   スト製軽量コンクリートパネルの上面より挿通され、さ
   らに該プレキャスト製軽量コンクリートパネルの取付用
   部材に面する面に固着された板材を貫通する固定金具に
   より、該プレキャスト製軽量コンクリートパネルが該取
   付用部材に取付けられていることを特徴とする床および
   屋根の取付構造。