JPH10101690A - 新規なリピドa及びlps並びにこれを産生する光合成細菌 - Google Patents

新規なリピドa及びlps並びにこれを産生する光合成細菌

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JPH10101690A
JPH10101690A JP8255869A JP25586996A JPH10101690A JP H10101690 A JPH10101690 A JP H10101690A JP 8255869 A JP8255869 A JP 8255869A JP 25586996 A JP25586996 A JP 25586996A JP H10101690 A JPH10101690 A JP H10101690A
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lps
fatty acids
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正広 緒方
Junko Yamada
純子 山田
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周三 高田
Jiro Takahashi
次郎 高橋
Shoichiro Kumamoto
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生体の免疫賦活的活性が高く、しかも毒性の
低いリピドAを提供すること。 【解決手段】 糖鎖と、該糖鎖とエステル結合した型の
脂肪酸及びアミド結合した型の脂肪酸との複合体である
リピドAにおいて、該糖がグルコサミン、マンノース又
は名称不明の糖からなることと;該エステル結合した型
の脂肪酸が炭素原子数12の直鎖飽和脂肪酸であること
と;該アミド結合した型の脂肪酸が炭素原子数14の直
鎖脂肪酸であって、該直鎖の末端の炭素原子と末端から
2番目の炭素原子との間の結合が二重結合である直鎖不
飽和脂肪酸、及び炭素原子数14の直鎖脂肪酸であっ
て、該直鎖の末端から3番目の炭素原子に結合する水素
原子1つが水酸基により置換された直鎖飽和脂肪酸であ
ることと;該リピドAがリンを包含しないことと;質量
が1928.9であることとを特徴とするリピドA。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、新規なリピドA及
びリポ多糖(以下LPSという)並びにこれを産生する
光合成細菌に関する。本発明のリピドA及びLPSは、
CSF(colony stimulation factor) の誘導作用活性を
有し、かつ毒性が低いので健康食品、食品添加物とし
て、さらには医薬として利用することができる。
【0002】
【従来の技術】腸内細菌等グラム陰性菌の細胞壁表面に
は、LPSが存在する。LPSは脂質(リピドA)と多
糖の複合体であり、菌体内毒素の主成分であることが知
られている。菌体内毒素の生物活性については、リピド
Aがその活性中心部分であることも知られているが、リ
ピドAの組成、構造及び生物活性は、菌種によって多少
異なる。
【0003】代表的腸内細菌である大腸菌(E.col
i)のリピドAは、以下の化1に示す構造を有すること
が知られている。
【0004】
【化1】
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上記大腸菌のリピドA
は、血液幹細胞の増殖分化因子であるCSFの誘導作用
活性を有することが知られているが、毒性が高いため食
用に供することができない。
【0006】本発明は、CSF活性などの生体の免疫賦
活的活性が高く、しかも毒性の低いリピドAを提供する
ことを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記事情
に鑑み鋭意研究の結果、ある種の光合成細菌の細胞壁表
面にあるLPSから抽出されるリピドAが、大腸菌由来
のリピドAと比較してCSF活性はやや劣るが、毒性が
極めて低いことを見いだした。
【0008】すなわち、本発明は、糖鎖と、該糖鎖とエ
ステル結合した型の脂肪酸及びアミド結合した型の脂肪
酸との複合体であるリピドAにおいて、該糖がグルコサ
ミン、マンノース又は名称不明の糖からなることと;該
エステル結合した型の脂肪酸が炭素原子数12の直鎖飽
和脂肪酸であることと;該アミド結合した型の脂肪酸が
炭素原子数14の直鎖脂肪酸であって、該直鎖の末端の
炭素原子と末端から2番目の炭素原子との間の結合が二
重結合である直鎖不飽和脂肪酸、及び炭素原子数14の
直鎖脂肪酸であって、該直鎖の末端から3番目の炭素原
子に結合する水素原子1つが水酸基により置換された直
鎖飽和脂肪酸であることと;該リピドAがリンを包含し
ないことと;質量が1928.9であることとを特徴と
するリピドAを提供する。
【0009】本発明は、前記リピドAを包含するLPS
をも提供する。
【0010】さらに、本発明は、受託番号FERM P
−15871で寄託されたランプロバクター(Lamproba
cter)属の光合成細菌を提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明のリピドAについて
詳細に説明する。
【0012】本発明のリピドAを構成する糖は、グルコ
サミン、マンノースおよび名称不明の糖である。グルコ
サミン:マンノース:名称不明の糖を合わせると構成糖
は、3〜5個と考えられる。
【0013】本発明のリピドAを構成する脂肪酸は、前
記糖とエステル結合した型の脂肪酸が炭素原子数12の
直鎖飽和脂肪酸(以下「12:0の脂肪酸」という)で
あり、また前記糖にアミド結合した型の脂肪酸が炭素原
子数14の直鎖脂肪酸であって、該直鎖の末端の炭素原
子と末端から2番目の炭素原子との間の結合が二重結合
である直鎖不飽和脂肪酸(以下「14:1の脂肪酸」と
いう)、及び炭素原子数14の直鎖脂肪酸であって、該
直鎖の末端から3番目の炭素原子に結合する水素原子1
つが水酸基により置換された直鎖飽和脂肪酸(以下「3
−OH−14:0の脂肪酸」という)である。
【0014】本発明のリピドAには、リンは包含されて
いない。
【0015】本発明のリピドAは、高速原子衝撃法−重
量分析法(以下「FAB−MS」という)により測定し
た質量が1928.9である。
【0016】本発明のリピドAの構造は、それを構成す
る糖として、マンノース及び名称不明の糖を包含してい
る点、さらにはリンを含んでいない点において大腸菌由
来のリピドAと大きく異なる。
【0017】本発明のリピドAは、後に詳細に説明する
Lamprobacter属の新規な光合成細菌(以下「TP−5」
という)を出発物質として、それ自体は公知の、リピド
Aの抽出方法に準じて製造することができる。以下に、
本発明のリピドAの製造方法の一例を示す。
【0018】TP−5の脱脂乾燥菌体を、温フェノール
法により抽出し、水層に粗LPSを得る。得られた粗L
PSを、酵素処理に供し、精製LPSを得る。次いで、
LPSを酸加水分解し、精製することによりリピドAが
得られる。
【0019】より詳しくは、本発明のリピドAは、通
常、45%〜50%のフェノールを用い、通常、65℃
〜70℃で、10分〜20分間抽出する。45%フェノ
ールで抽出する場合には、例えば、90%フェノール水
溶液と、同量のTP−5の水縣濁液とを混合して、フェ
ノールの終濃度を45%として抽出することができる。
【0020】粗LPSを含む水層は、水で透析すること
により、フェノール、塩類のような低分子を除去するこ
とができる。
【0021】粗LPSの酵素処理には、RNase−A
を用いることができる。
【0022】酵素処理は、用いる酵素の種類により適宜
設定することができるが、通常、pH5.0、温度37
℃、で12〜16時間行なう。
【0023】酵素処理した粗LPSは、通常105 ×g
〜1.5×105 ×gの超遠心に3時間〜4時間供する
と、沈殿に精製LPSが得られる。
【0024】この精製LPSは、通常、濃度0.1規定
〜0.2規定の例えば酢酸、塩酸等の酸により、100
℃〜120℃の温度で、2〜8時間加水分解する。これ
を遠心に供し、沈殿にリピドAが得られる。このリピド
Aは、クロロホルム:メタノール(4:1、体積比)に
溶解し、例えば、薄層クロマトグラフィー(TLC)を
用いることにより精製することができる。
【0025】本発明のリピドAのCSF誘導作用活性
は、大腸菌リピドAのそれと同等又はそれよりも若干弱
い。しかしながら、本発明のリピドAは、大腸菌由来の
リピドAに比べて極めて低い毒性を有するという利点を
有する。
【0026】本発明は、上記方法により製造されたTP
−5由来の新規なLPSをも提供するものである。
【0027】以下、本発明のLPSを詳細に説明する。
【0028】本発明のLPSは、少糖の繰返し単位であ
るO抗原性多糖にRコアオリゴ糖がつき、それがさらに
KDO(3-keto-3-deoxyoctonate)を介して本発明のリピ
ドAに結合する複合体であるいわゆるI型のLPSであ
る。
【0029】本発明は、上述した本発明のリピドAの製
造方法における出発物質であるTP−5も提供するもの
である。
【0030】以下、本発明のTP−5について詳細に説
明する。
【0031】TP−5は、通産省工業技術院 生命工学
工業技術研究所に平成8年9月19日から受託番号FE
RM P−15871として寄託された。
【0032】TP−5は、Chromatiaceae 科(紅色硫黄
細菌:Purple sulfur bacteria) 、Lamprobacter属に属
し、以下に記載する形態、生化学的性状のうち、特にビ
タミンB12要求性がないこと、NaCl要求性がないこ
とが、公知の種(Lamprobacter modestohalophilus 種)
と異なるため、新規な種と判定した。なお、Lamprobact
erは、1種しか報告されていない。(Gorlenko, V.M.,
E.N. Krasil'nilova,O.G. Kikina and N.Y. Tatarinov
a, 1988. In Validation of the publicationof new na
mes and new combinations previously effectively pu
blished outside the IJSB, Int. J. Syst. Bacteriol.
38:220-222) (a)形態 (1)卵型状、短桿状 (2)グラム染色性:− (3)莢膜(slime) :− (4)細胞内硫黄粒:+ (5)ガス胞:+ (b)生育状態 (1)菌体懸濁液:紅色 (c)生理的性質 (1)微好気ないしは嫌気状態で成長する (2)細胞中に硫黄粒の生成 (3)成長最適温度:30℃付近 (4)NaCl要求性:− (d)炭素源の利用性 (1)グルコース:− (2)シュクロース:− (3)マンノース:− (4)フラクトース:+ (5)ラクトース:− (6)マンニット:− (7)ソルビトール:− (8)スターチ:− (9)フォルメイト:− (10)アセテート:+ (11)パイルベート:+ (12)プロピオネート:+ (13)マレート:+ (14)サクシネート:+ (15)グリセロール:+ (16)メタノール:− (17)エタノール:− (e)その他 (1)ビタミンB12要求性:− (2)培養液(生細胞)の吸収スペクトル:800、8
55nm付近に吸収極大を有する。図1に吸収スペクト
ルを示す。
【0033】本発明のTP−5は、以下に記載する方法
により製造することができる。
【0034】長崎県大村湾河口から採取した泥を0.8
%(重量)寒天を加えた実施例1の培養液で培養し、生
えてきた菌のコロニーをさらにビタミンB12を除いた培
養液で培養し、色調、硫黄粒、ガス胞、莢膜及び形態で
選択する。
【0035】本発明のTP−5には、大腸菌とほぼ同量
のLPSが含有されることが分かった。したがって、本
発明のTP−5は、本発明のリピドA及びLPSの製造
に有用に用いることができる。
【0036】以上説明したように、本発明のリピドA、
LPS及びTP−5は、CSF誘導作用活性が高く、し
かも毒性がきわめて低い。したがって、本発明のリピド
A、LPS及びTP−5は、健康食品、食品添加物とし
て、さらには医薬として使用することができる。
【0037】本発明のリピドAを医薬として用いる場
合、水溶液中にエマルジョン化した状態で、あるいはカ
プセル中に封入、又は経口剤に添加した状態で、経口薬
として、用量として0.1μg〜1gの範囲で、好まし
くは10μg〜100mgの範囲で用いることができ
る。注射薬としては用量として0.1μg〜100m
g、好ましくは1μg〜10mgの範囲で用いることが
できる。また皮膚からの吸収を考慮した湿布薬として、
用量としては1μg〜1gの範囲で用いることができ
る。
【0038】本発明のLPSを健康食品、特定保健用食
品あるいは食品添加物として用いる場合、クロレラや他
の食物に添加した状態、あるいは水溶液中に添加した状
態で、用量として0.1mg〜100g、好ましくは1
mg〜10gの範囲で用いることができる。
【0039】LPSを医薬として用いる場合、経口剤に
添加した状態で、あるいは水溶液中に添加した状態で、
用量として0.1mg〜100g、好ましくは1mg〜
10gの範囲で用いることができる。注射薬としては用
量として1μg〜10g、好ましくは10μg〜100
mgの範囲で用いることができる。また皮膚からの吸収
を考慮した湿布薬として、用量としては10μg〜10
0gの範囲で用いることができる。
【0040】本発明のTP−5を健康食品、特定保健用
食品あるいは食品添加物として用いる場合、クロレラや
他の食品に添加した状態、あるいはTP−5の熱水抽出
物(菌体を100℃の熱水で20分間加熱した後に得ら
れる抽出物(以下、「熱水抽出物」という))を含む水
溶液の状態で、用量として10mg〜100g、好まし
くは100mg〜10gの範囲で用いることができる。
【0041】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説
明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0042】実施例1 (1)TP−5の培養 菌体の培養には以下に記載する化合物を1リットルの蒸
留水に溶解した培養液(以下「培養液1」という)、以
下に記載する培養液2及び培養液3を用いた。
【0043】培養液1で用いた化合物 CH3 COONa 0.5g KH2 PO4 1.0g NH4 Cl 1.0g CaCl2 ・2H2 O 0.2g EDTA- 2Na 2 mg FeSO4 ・7H2 O 2 mg H3 BO3 100 μg CoCl2 ・6H2 O 100 μg ZnCl2 100 μg MnCl2 ・4H2 O 100 μg Na2 MoO4 ・2H2 O 20 μg NiCl2 ・6H2 O 20 μg CuCl2 ・2H2 O 10 μg Na2 SeO3 1 μg チアミン−HCl 500 μg ナイアシン 500 μg p−アミノ安息香酸 300 μg ビタミンB12 50 μg ピリドキシン−HCl 100 μg ビオチン 50 μg 培養液2:Na2 S・9H2 O 0.25g/10ml 培養液3:4%のNaCO3 25ml 上記培養液1及び培養液2を、121℃、15分間オー
トクレーブで別々に滅菌した。培養液3は、ろ過滅菌し
た。
【0044】継代培養 培養液1及び培養液2を冷却後、培養液3を加えすばや
く撹拌し、スクリューキャップ付試験管(全容量20ミ
リリットル)にほぼ満たすまで入れてから試験管のキャ
ップを閉めた。得られた培地入試験管は、よく振った
後、一昼夜冷暗所に放置し、培地内を完全に嫌気的にし
た。この状態で1カ月程度の保存ができる。1昼夜以上
放置した培地に菌を含む溶液を培養液20ミリリットル
に対して1〜2滴加えて培養を開始した。通常、室内
(できれば暗所)に数時間から1昼夜放置し、その後光
照射下(弱光)に移して光合成培養を開始した。5〜7
日間培養を続け、継代を繰返す。
【0045】TP−5の生産培地としては、培養液1の
CH3 COONaを2.0g/リットルに増加した上記
の培地を5リットル用して培養し、培養期間5〜7日間
で、1.5〜2.0g(乾燥重量)のTP−5を得た。
【0046】(2)LPSの調製 上記(1)で得られた脱脂菌体20gに45%フェノー
ルを750ミリリットル添加し、68℃で15分間抽出
した。水層を水で透析した後、凍結乾燥し、1.6gの
粗LPSが得られた。粗LPSをpH5.0、37℃で
12時間RNase−A(WORTHINGTON BIOCHEMICAL CO
RPORATION 製)処理し、超遠心(105×g、3時間、
2回)し、得られた沈殿を凍結乾燥し、0.2gの精製
LPSが得られた。
【0047】(3)リピドAの調製 上記(2)で得られた乾燥LPS1.0gに0.2規定
酢酸を100ミリリットル添加し、100℃で3時間加
水分解した。沈殿(0.05g)を1〜2ミリリットル
のクロロホルム:メタノール(4:1、体積比)溶液に
溶解させた。これを薄層クロマトグラフィー(以下TL
Cという)に2回かけ精製した。得られたリピドAは、
以下に示すリソ−リピドAの調製、並びにリピドAのリ
ンの測定、糖分析、脂肪酸分析及び質量分析に供した。
【0048】(4)リソ−リピドAの調製 上記(3)で得られたリピドA0.02gに0.2規定
KOH−メタノール20ミリリットルを添加し、37℃
で14時間加水分解した。沈殿(0.004g)をクロ
ロホルム:メタノール(4:1、体積比)に溶解させ
る。これをTLCに2回かけ、リソ−リピドAを精製し
た。リソ−リピドAは、リピドAからエステル結合型脂
肪酸を除いたものである。
【0049】(5)リピドAのリンの測定 上記(3)で得られたリピドAをTLCで展開し、ディ
ットマー−レスター(dittmer-Lester)試薬を噴霧してリ
ンの有無を確認したが、リンは確認されなかった。
【0050】同様にして、TLCで展開したリピドAを
バートレット(Bartlett)法により非色定量したが、リン
は検知されなかった。
【0051】(6)リピドAの糖分析 上記(4)で得られたリソ−リピドAを2.0モル/リ
ットルのトリフルオロ酢酸(TFA)を用いて120℃
で2時間加水分解した。得られた糖画分を回収し、アル
ジトールアセテイト化し、ガスクロマトグラフィー(58
90 SERIES II、HEWLETT-PACKARD 製)(以下「GC」と
いう)、次いでGCで得られたピーク部分の重量分析
(JEO L-SX 102、日本電子製)(以下「MS」という)
により分析した。得られた結果を図2(GC)、図3〜
5(MS)に示す。
【0052】図2〜5の結果より、リピドAは、グルコ
ース、マンノースおよびもう1種未知の糖から構成され
ることが明らかになった。
【0053】7)リピドAの脂肪酸分析 a)エステル結合型脂肪酸の分析 上記(3)で得られたリピドAに0.2規定KOH−メ
タノールを添加し、37℃で14時間加水分解した後、
脂肪酸分画を回収し、メチルエステル化し、GC、次い
でGCにより得られたピーク部分のMSにより分析し
た。得られた結果を図6(GC)、図7(MS)に示
す。
【0054】図6〜7に示した結果から、エステル型脂
肪酸は、12:0の脂肪酸であることがわかった。
【0055】b)アミド結合型脂肪酸の分析 上記(4)で得られたリソ−リピドAに6.0規定HC
lを添加し、100℃で2時間加水分解した後、脂肪酸
分画を回収し、メチルエステル化し、GC、次いでGC
により得られたピーク部分のMSにより分析した。得ら
れた結果を図8(GC)、図9〜10(MS)に示す。
【0056】図8〜10に示した結果から、アミド型脂
肪酸は、3−OH−14:0の脂肪酸及び14:1の脂
肪酸であることがわかった。
【0057】c)全脂肪酸の分析 上記(3)のリピドAを6.0規定HClを用いて10
0℃で2時間加水分解した後、脂肪酸分画を回収し、メ
チルエステル化し、GC、次いでGCにより得られたピ
ーク部分のMSにより分析した。得られた結果を図11
(GC)、図12〜14(MS)に示す。
【0058】図11〜14から明らかなように、3−O
H−14:0、14:1および12:0の脂肪酸が確認
された。
【0059】(8)リピドAの質量分析 上記(3)のリピドAを高速原子衝撃法−重量分析法
(以下「FAB−MS」という)(JEOL-SX 102 、日本
電子製)によりその質量を分析した。得られた結果を図
15に示す。
【0060】図15の結果は、リピドAからHをはず
したリピドAマイナスイオンの質量であるので、リピド
Aの質量は、1928.9であることが分かった。
【0061】実施例2 リピドAのCSF誘導作用活性 本発明のリピドAのCSF誘導作用活性は、次のように
して測定した。
【0062】本発明のリピドAをリン酸緩衝溶液(以下
PBSという)に溶解し、CDF1マウスの腹腔内に投
与し、6時間後に血清を回収する。この血清(50マイ
クロリットル)をCDF1マウス骨髄細胞(5×104
個)と混和し、軟寒天(DIFCO 社製)中に蒔き込み、C
2 雰囲気下、37℃で5日間培養する。得られたコロ
ニー数を測定した結果を、図7に示す。本発明のリピド
Aの代わりに大腸菌(O−111:B4)由来のリピド
A(LIST BIOLOGICAL LABORATORIES. INC.製)を用いた
以外は同じ条件で測定した結果も図16に示す。
【0063】図16から、CSF誘導作用活性は、0.
1μg/マウス及び1μg/マウスの投与では、大腸菌
のリピドAのほうが高いが、10マイクログラム/マウ
スの投与では、TP−5のリピドAと大腸菌由来のリピ
ドAとは有意差がないことが分かる。
【0064】実施例3 本発明のLPSのドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリ
ルアミドゲル(以下「SDS・PAGE」という)電気
泳動のパターンを図17に示す。
【0065】図17から、本発明のLPSは、段階状に
数千〜4、5万の分子量分布を示すものであることがわ
かる。
【0066】実施例4 LPSの毒性試験及び血中クリアランス試験を次のよう
にして行った。
【0067】CDF1マウス(5週齢、メス)に上記方
法により製造したLPSおよび大腸菌(O−111:B
4)由来LPS(LIST BIOLOGICAL LABORATORIES. INC.
製)を投与し、致死毒性を測定した。得られた結果を表
1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】表1から明らかなように、TP−5由来L
PSのLD50は、大腸菌由来LPSのLD50の約100
倍であった。
【0070】このように、TP−5由来LPSの毒性
が、大腸菌(O−111:B4)由来LPSの毒性に比
べて極めて低いのは、TP−5由来LPSが血中から速
やかに除去されるためと見られる。以下に、TP−5由
来LPSと大腸菌(O−111:B4)由来のLPSに
ついてのそれぞれの血中クリアランス時間測定方法とそ
の結果を示す。
【0071】CDF1マウス(5週齢、メス)にTP−
5由来LPSまたは大腸菌(O−111:B4)由来の
LPSを0.1ミリグラム/マウス腹腔投与し、1、
3、および6時間後に血中に放出されるLPSの量をリ
ムルステストにより測定した。得られた結果を表2に示
す。
【0072】
【表2】
【0073】表2の結果から、大腸菌由来のLPSは、
6時間の測定時間の範囲では血中にとどまるのに対し、
TP−5のLPSは、速やかに血中から除去されること
がわかる。
【0074】LPSの毒性試験結果は、LPSの活性中
心がリピドAであることから、リピドAの毒性試験結果
に比例することは明らかである。
【0075】実施例5 TP−5に含有されるLPS量の測定 以下の方法により、TP−5及びE.coliのLP
S、並びに各々の菌体の熱水抽出物のLPSの含有量を
リムルステストで測定した。
【0076】得られた結果を表3に示す。
【0077】
【表3】
【0078】表3の結果から、TP−5には、菌体とし
て測定したときは、E.coliよりも多くのLPS
を、熱水抽出物として測定したときは、E.coliよ
りもやや少ないLPSが含有されていることが分かる。
なお、熱水抽出物として測定した時のほうが含有量が多
いのは、熱水抽出により、LPSが菌体から遊離し、試
薬と反応し易くなるとの理由によるものと思われる。
【0079】実施例6 TP−5の抗腫瘍効果 BALB/cマウスにMeth−A繊維肉腫をマウス1
匹当り5×106 細胞づつ右側脇腹に皮下移植した。移
植の2日後より2日に1回づつ計2回各試料(TP−
5、大腸菌は、死菌各1mg/マウス)をリン酸緩衝生
理食塩水(PBS)に縣濁して腫瘍内注射により投与し
た。腫瘍移植15日後に腫瘍のサイズを測定した。
【0080】得られた結果を表4に示す。
【0081】
【表4】
【0082】表4から明らかなように、TP−5は、大
腸菌に比べるとやや劣るが、高い抗腫瘍活性を有してい
る。
【0083】実施例7 TP−5の安全性を以下に示す動物実験により試験し
た。
【0084】飼育条件 飼料は、オリエンタル酵母のCRF−1固形飼料をコン
トロールとして、同飼料にTP−5乾燥菌体をそれぞれ
1、5、10%添加した飼料を作成した。
【0085】実験動物としてはICRマウスを用い、オ
ス、メス各群10匹、8群に分け5週零より12週間飼
育した。飼料の摂取は、飼育開始より2週間は自由摂取
とし、3週目より制限食とし、5g/マウス/日、更に
6週目より試験終了時まで6g/マウス/日とした。ま
た、水は自由摂取とした。
【0086】実験期間中は体重の変動を調べた。また飼
育終了時には、採血後、剖検を行い、臓器を採取して湿
重量を測定した。採血した血液については、血液学的検
査、血液生化学的検査を行うと共に、10%投与群につ
いては各種の臓器について病理学的検査もあわせて行な
った。得られた結果を図18〜19及び表5〜7に示
す。
【0087】a)体重 オス、メスともにTP−5の添加量が多い飼料ほど食べ
残しが多くなる傾向が観察さたが、飼育中の体重の変動
についてはオス、メスとも各群に有意な差は認められな
かった。
【0088】b)臓器重量
【表5】
【0089】臓器重量については、造血臓器である脾臓
が肥大した以外、悪影響を示す肥大という点ではオス、
メスとも各群に有意な差は認められなかった。
【0090】c)血液学的検査
【表6】
【0091】血液学的検査では、MCV(平均赤血球容
積)やヘモグロビン量に一部有意差が見られる群があっ
たが、これはマウスの個体差に基づくばらつきによるも
のと考えられた。
【0092】d)血液生化学的検査
【表7】
【0093】血液生化学的検査についても一部に有意の
差が認められたが、TP−5投与量に依存したものでは
なかった。
【0094】e)各臓器の病理学的検査 唾液線、膀胱、子宮、精巣、卵巣、肝臓、腎臓、腸間膜
リンパ節について検討した。唾液線、膀胱、子宮、精
巣、卵巣、並びに阻害物質の影響を受け易い臓器である
肝臓及び腎臓については、コントロール群との間に変化
は認められなかった。免疫に係わる臓器である脾臓と腸
間膜総合的に判断すると、TP−5は、全身的な毒性は
低い。
【0095】
【発明の効果】本発明により、CSF活性などの生体の
免疫賦活的活性が高く、しかも毒性の低いリピドAが提
供される。
【0096】また、本発明のTP−5により、新規なL
PSおよびリピドAを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】TP−5の培養液の吸収スペクトルの図
【図2】リピドAの糖のガスクロマトグラムの図
【図3】リピドAの糖の重量分析の図
【図4】リピドAの糖の重量分析の図
【図5】リピドAの糖の重量分析の図
【図6】リピドAのエステル型脂肪酸のガスクロマトグ
ラムの図
【図7】リピドAのエステル型脂肪酸の重量分析の図
【図8】リピドAのアミド型脂肪酸のガスクロマトグラ
ムの図
【図9】リピドAのアミド型脂肪酸の重量分析の図
【図10】リピドAのアミド型脂肪酸の重量分析の図
【図11】リピドAの全脂肪酸のガスクロマトグラムの
【図12】リピドAの全脂肪酸の重量分析の図
【図13】リピドAの全脂肪酸の重量分析の図
【図14】リピドAの全脂肪酸の重量分析の図
【図15】リピドAの高速原子衝撃法−重量分析の図
【図16】リピドAのCSF活性を表すグラフ
【図17】LPSの電気泳動の写真
【図18】TP−5投与マウス(オス)の体重変化を表
すグラフ
【図19】TP−5投与マウス(メス)の体重変化を表
すグラフ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI (C12N 1/20 C12R 1:01) (C12P 19/00 C12R 1:01) (72)発明者 高橋 次郎 愛知県岡崎市滝町字外浦66−1 (72)発明者 隈本 正一郎 福岡県筑紫野市美しが丘南4丁目1−11

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 糖鎖と、該糖鎖とエステル結合した型の
    脂肪酸及びアミド結合した型の脂肪酸との複合体である
    リピドAにおいて、 該糖がグルコサミン、マンノース又は名称不明の糖から
    なることと、 該エステル結合した型の脂肪酸が炭素原子数12の直鎖
    飽和脂肪酸であることと、 該アミド結合した型の脂肪酸が炭素原子数14の直鎖脂
    肪酸であって、該直鎖の末端の炭素原子と末端から2番
    目の炭素原子との間の結合が二重結合である直鎖不飽和
    脂肪酸、及び炭素原子数14の直鎖脂肪酸であって、該
    直鎖の末端から3番目の炭素原子に結合する水素原子1
    つが水酸基により置換された直鎖飽和脂肪酸であること
    と、 該リピドAがリンを包含しないことと、 質量が1928.9であることとを特徴とするリピド
    A。
  2. 【請求項2】 請求項1に記載のリピドAを包含するポ
    リ多糖。
  3. 【請求項3】 受託番号FERM P−15871であ
    るランプロバクター属の光合成細菌。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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