JPH0995402A - アジ化化合物の薬害防止方法およびそのための薬害防止剤 - Google Patents

アジ化化合物の薬害防止方法およびそのための薬害防止剤

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JPH0995402A
JPH0995402A JP25372795A JP25372795A JPH0995402A JP H0995402 A JPH0995402 A JP H0995402A JP 25372795 A JP25372795 A JP 25372795A JP 25372795 A JP25372795 A JP 25372795A JP H0995402 A JPH0995402 A JP H0995402A
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JP
Japan
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compound
azide
isothiocyanate
soil
generating
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JP25372795A
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English (en)
Inventor
Akira Arita
彰 有田
Kazunori Fujitani
和則 藤谷
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Teijin Ltd
Original Assignee
Teijin Chemicals Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アジ化化合物を含有する組成物を使用する土
壌処理において、処理後のアジ化化合物およびアジ化水
素の残留濃度を早く低減する有効な方法を提案する。 【解決手段】 分解によりアジ化水素を発生し得るアジ
化化合物を含む組成物を散布処理した土壌に対して、イ
ソチオシアン酸エステル化合物またはイソチオシアン酸
エステル化合物を発生し得る化合物を活性成分として含
有する薬害防止剤を散布することを特徴とするアジ化化
合物の薬害防止方法およびそのための薬害防止剤。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、分解によりアジ化
水素を発生し得るアジ化化合物を散布処理した土壌に対
して、アジ化化合物から発生するアジ化水素または未分
解のアジ化化合物によって起こる薬害を抑制または防止
する薬害防止方法およびそのための薬害防止剤に関す
る。
【0002】
【従来の技術】従来、施設園芸、蔬菜栽培では集約的栽
培が行われ、そのような栽培に伴う連作による障害がし
ばしば見られている。連作によって良好な収穫が得られ
ない主な原因は土壌中の病害虫によるものであることか
ら、これらを防除でき、かつ省力化に繋がる雑草の防除
にも充分な効果を示す総合的な土壌処理剤が要望されて
いる。
【0003】既知のD−D剤(有効成分:1,3−ジク
ロルプロペン)は線虫には効果を示すが、菌、雑草には
効果がなく、CP剤(有効成分:トリクロロニトロメタ
ン)は菌には効果を示すが、線虫、雑草には効果が弱
く、ネマモール粒剤(有効成分:1,3−ジクロロイソ
プロピルエーテル)は線虫のみの効果であり、ダゾメッ
ト粒剤(有効成分:3,5−ジメチルテトラヒドロ−2
H−1,3,5−チアジアジン−2−チオン)は線虫、菌
には効果を示すが、雑草には効果が弱く、しかも土壌の
水分により効果や薬害にバラツキが生じる等の欠点があ
る。
【0004】一方、アジ化塩例えばアジ化アルカリ金属
塩等は土壌中で加水分解してアジ化水素を発生し、これ
が生物活性を示し、土壌中の病害虫や雑草の防除に効果
を示すことが知られており(Can.J.Microbiol;vol 2
1.P565〜570、1975)、アジ化化合物による土壌燻蒸処
理は土壌病害虫、雑草の防除に有効な手段とされてい
る。しかしながら、アジ化化合物を含有する組成物を土
壌燻蒸剤として使用した場合、土壌中にアジ化水素およ
び未分解のアジ化化合物が残存し、これが有用植物の薬
物の原因となるため、3週間から4週間の放置期間を設
けてこれを十分に飛散させた後、有用植物を播種、植え
付ける必要があった。しかし、現在の農業経営におい
て、特に施設を利用した栽培では、長期間施設を利用せ
ず放置しておくことはコストの面並びに作付け時期の遅
れから望ましくなく、短期間で残留するアジ化水素およ
び未分解のアジ化化合物を除く必要がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、アジ
化化合物が土壌中で加水分解してアジ化水素を発生し、
燻蒸処理の目的を達成した後、土壌中に残留するアジ化
水素および未分解のアジ化化合物を短期間に除去して、
播種または植え付けした有用植物の薬害の発生を防止す
る薬害防止方法およびそのための薬害防止剤を提供する
ことにある。
【0006】本発明者はこの目的を達成せんとして鋭意
研究を重ねた結果、アジ化化合物を散布処理した土壌に
対して、イソチオシアン酸エステル化合物またはイソチ
オシアン酸エステル化合物を発生し得る化合物を活性成
分として含有する薬害防止剤を散布することで短期間に
アジ化化合物およびアジ化水素が除去され、前記薬害の
発生を防止できることを見いだし、本発明に到達した。
【0007】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明によれ
ば、分解によりアジ化水素を発生し得るアジ化化合物を
散布処理した土壌に対して、イソチオシアン酸エステル
化合物またはイソチオシアン酸エステル化合物を発生し
得る化合物を活性成分として含有する薬害防止剤を散布
することを特徴とするアジ化化合物の薬害防止方法が提
供される。
【0008】本発明で使用される分解によりアジ化水素
を発生し得るアジ化化合物としては、水の作用により分
解される化合物であればよく、例えばアジ化塩、特にア
ルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が好ましく、具
体的にはアジ化ナトリウム、アジ化カリウム、アジ化カ
ルシウムおよびアジ化バリウム等が用いられ、特にアジ
化ナトリウムが好ましい。
【0009】かかるアジ化化合物を散布するに際して、
その形態としては、固体粉末、分解によりアジ化水素を
発生し得るアジ化化合物および水溶性バインダーより実
質的になる水分解性組成物やアジ化化合物を水に溶解し
た水溶液等が好ましく用いられ、特に前者の水分解性組
成物が取り扱い易く作業性に優れているためより好まし
く用いられる。
【0010】上記の水分解性組成物の一成分である固体
粉末は、アジ化化合物を安定的に希釈でき、かつ容易に
一定形状に成形する目的に用いられる。この固体粉末と
しては、例えば鉱物質、植物質、合成品、半合成品、天
然品のいずれでもよく、鉱物質としてはクレー、炭酸カ
ルシウム、バーミキュライト、パーライト、タルク、酸
性白土、カオリン、ゼオライト等が挙げられ、植物質と
してはセルロース加水分解物、もみ殻、パルプ等が挙げ
られ、またエチレン−酢酸ビニル共重合体の粉末等でも
よい。
【0011】水溶性バインダーは、固体粉末と共にアジ
化化合物を土壌処理剤として効果的に作用せしめると共
に組成物を良好な形態に成形する目的で用いられ、この
バインダーとしては、水溶性であり、かつ有機溶媒にも
溶解する高分子であるのが好ましい。この水溶性バイン
ダーは、20℃において水1リットル当たり200〜
3,000gの範囲、好ましくは300〜1,000gの
範囲で溶解するものが適当である。200g/リットル
より溶解度の低いものは、組成物の調製に当り溶媒量を
多く必要とする。一方、3,000g/リットルを越え
る溶解度の高いものは、適当な粘度を維持することが困
難で成形上問題がある。
【0012】水溶性バインダーは、固体粉末およびアジ
化化合物を土壌処理剤として適する形態に成形する作用
と共に、土壌中に散布された後、水の作用によりその成
形物が崩壊し、アジ化水素の発生を促進する機能を有し
ている。この水溶性バインダーとしては、例えばデンプ
ン、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、アラビアガ
ム、ゼラチン、リグニン、ヒドロキシメチルセルロー
ス、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、
ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコー
ル、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリルアミド、
部分けん化ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、
ポリビニルピロリドンおよびビニルピロリドン−酢酸ビ
ニル共重合体等が挙げられる。
【0013】これらのうちポリエチレングリコールが成
形性および防除性の両面から好ましい。特にポリエチレ
ングリコールのなかでも水に対する溶解度が200〜
3,000g/リットル、更に好ましくは300〜1,0
00g/リットルのものが好ましい。一般的には重量平
均分子量が1,000〜15,000のものが好ましい。
【0014】本発明において、好ましく用いられる上述
の水分解性組成物は、それ自体大気雰囲気中で安定であ
り安全である。しかしこの組成物を土中へ散布し土と混
和すると、土中の水分によりその成形物が崩壊し、アジ
化化合物は水と接触し分解してアジ化水素を発生する。
この際酸性土壌中においては、その酸性によりアジ化化
合物の分解は一層促進される。従って本発明の前記水分
解性組成物は、酸性土壌に対して有効であり、中性また
はアルカリ土壌に対しては、組成物自体を酸性処理する
かまたは土壌を酸性処理することが効果的である。この
組成物自体の酸性処理については、例えばこの組成物中
へ有機酸のようなアジ化化合物の加水分解剤を配合した
り、この組成物の成分である固体粉末を酸性白土のよう
な酸性の固体粉末にするという手段が挙げられる。
【0015】本発明に好ましく用いられる前記固体粉
末、分解によりアジ化水素を発生しうるアジ化化合物お
よび水溶性バインダーより実質的になる水分解性組成物
は、この組成物を成形して粒状で使用されることが特に
好ましい。
【0016】またこの水分解性組成物粒子の各成分の好
ましい割合(重量)は、組成物を100としたとき、固
体粉末30〜98、より好ましくは50〜90、アジ化
化合物1〜40、より好ましくは5〜30、および水溶
性バインダー0.1〜30、より好ましくは2〜20の
割合であり、この組成物粒子が土壌病害防除用土壌処理
剤として好ましく使用される。
【0017】固体粉末が30重量%より少なくなると、
相対的にアジ化化合物の量が多くなるため、アジ化化合
物が加水分解する時間が長くなり好ましくなく、一方9
8重量%より多くなると、アジ化化合物の割合が相対的
に少なくなり、土壌病害の防除に効果を示すに必要な高
濃度のアジ化水素が得られなくなる。アジ化化合物が1
重量%より少なくなると、土壌病害の防除に効果が劣
り、40重量%より多くなると、アジ化化合物が加水分
解する時間が長くなり好ましくない。水溶性バインダー
が0.1重量%より少ない場合も、また30重量%を越
える場合も均一散布に必要な良好な成形物が得られなく
なり、アジ化化合物が土壌中で効果的に作用し難くな
る。
【0018】また、前記土壌病害防除用土壌処理剤は、
平均粒径が100μm〜2,000μmの形態に成形さ
れた粒状の土壌処理剤であることが好ましい。この土壌
処理剤としての粒子の平均粒径は300μm〜1,50
0μmの範囲がより好ましい。この平均粒径が100μ
mより小さいと、散布中に土壌処理剤が飛散しやすく、
目的部位への施用量がばらつき、また作業者に対する被
ばくの危険性も増加する。一方2,000μmより大き
いと、散布効果が均一でなくなり、局所的に防除効果が
不十分な部分が存在するため好ましくない。かかる粒状
の土壌処理剤は、前記100μm〜2,000μmの平
均粒径を有する粒状物であるのが好ましいが、粒度分布
はあまり広くないのが望ましく、シャープであるのが効
果的である。
【0019】かかる粒状の土壌処理剤は、粒径が300
μm以下の粒子および粒径が1,500μm以上の粒子
の合計重量が、全粒子の合計重量に基づいて20%以
下、好ましくは15%以下であるのが好ましい。このよ
うに粒径が300μmより小さい粒子および粒径が1,
500μmより大きい粒子の合計量が20%を越える
と、粒子の散布効果が均一でなくなり、局部的に防除効
果が不十分な部分が存在し、また全体に亘って防除活性
も制御し難くなり望ましくない。
【0020】かかる土壌処理剤の粒状物を構成する固体
粉末の平均粒径は10μm〜100μmの範囲が好まし
く、40μm〜80μmの範囲がより好ましい。固体粉
末の平均粒径が上記範囲をはずれると本発明の目的が達
成され難くなる。
【0021】前記粒状の土壌処理剤の製法としては、特
に制限されないが、例えば固体粉末とアジ化化合物を混
合したものと、有機溶媒にバインダーを溶解したものと
を、ニーダーで練り合わせて押出成形または圧縮成形し
て粒状化する方法、あるいは固体粉末とアジ化化合物を
混合したものと、水にバインダーを溶解したものとを、
ニーダーで練り合わせて押出成形または圧縮成形して粒
状化し、これを乾燥して水分を除去する方法が用いられ
る。この製法に使用する有機溶媒としては、アジ化化合
物に対して不活性なものであり、さらにバインダーを溶
解するものが好ましく、例えばエタノール、ブタノール
等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等の
ケトン類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素が挙
げられる。
【0022】かかる粒状の土壌処理剤は、固体のアジ化
化合物と固体粉末とがバインダーにより結合した粒状物
であり、大気雰囲気中ではアジ化化合物が分解されず保
存安定性がよく、しかも土壌中では土壌中の水分により
アジ化化合物が加水分解し、土壌病害の防除に優れた効
果を示す。
【0023】一方、分解によりアジ化水素を発生し得る
アジ化化合物を含有する組成物として、アジ化化合物の
水溶液も好ましく使用することができる。アジ化化合物
の水溶液を使用する場合、アジ化化合物の濃度は5〜4
0重量%の範囲が好ましい。5重量%未満では水が必要
以上に多量となりアジ化化合物が拡散し難くなり、40
重量%を越えると散布時にバラツキがあり防除効果が不
十分となり好ましくない。
【0024】アジ化化合物の水溶液は、中性およびアル
カリ性では安定であるが、酸性にするとアジ化化合物が
分解され易くなる。すなわち、アジ化化合物の水溶液は
中性またはアルカリ性であるのが適当であり、pHで表
して7〜12、好ましくは7〜11の範囲が適当であ
る。このアジ化化合物の水溶液を土中へ散布する際、酸
性土壌中においては、その酸性によりアジ化化合物はす
みやかに分解される。一方、中性またはアルカリ性土壌
に対しては、土壌を酸性処理するかまたはアジ化化合物
の加水分解を促進させる化合物を散布することが効果的
である。
【0025】前述したアジ化化合物による散布処理は、
アジ化化合物を含有する組成物をアジ化化合物の量とし
て10a当り少なくとも1kg、好ましくは少なくとも
3kgとなる量散布する土壌処理方法が好ましく用いら
れる。アジ化化合物が1kg/10a未満では土壌病害
処理に効果が少ないため好ましくない。
【0026】また、これらの散布処理において、組成物
中のアジ化化合物の含有量は1〜40重量%が好まし
く、1重量%未満では10a当りの投薬量が必要以上に
多くなり好ましくなく、また40重量%以上になると土
壌処理剤としての投薬量が少なくなり、バラツキが生じ
易くなり好ましくない。かかる土壌処理剤の施用方法と
しては、手播きあるいは散粒機等、土壌に直接かつ均等
に播く方法であればよい。
【0027】また、散布処理において、アジ化化合物を
含有する組成物を散布した土壌をそのまま放置してもよ
いが、シートにより被覆することが有利に採用される。
被覆する期間としては、散布後3〜10日の範囲が好ま
しい。被覆することにより、アジ化化合物の分解により
発生したアジ化水素が空気中に揮散することなく、散布
量がそのまま土壌病害虫に有効に働くため好ましく用い
られる。
【0028】本発明の薬害防止方法において、イソチオ
シアン酸エステル化合物またはイソチオシアン酸エステ
ル化合物を発生し得る化合物が使用される。かかるイソ
チオシアン酸エステル化合物は、R−N=C=Sで示さ
れ、Rは例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピ
ル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチ
ル等の炭素数1〜8のアルキル基、ビニル、アリル、1
−プロペニル、1−ブテニル等の炭素数2〜8のアルケ
ニル基、フェニル、トリル、ナフチル等の炭素数6〜1
5のアリール基およびベンジル、フェネチル等の炭素数
7〜15のアラルキル基等が挙げられ、好ましくは炭素
数1〜8のアルキル基または炭素数6〜15のアリール
基であり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基で
あり、特にイソチオシアン酸メチルが好ましい。
【0029】このイソチオシアン酸メチルを発生する化
合物として、ダゾメット剤(3,5−ジメチルテトラヒ
ドロ−2H−1,3,5−チアジアジン−2−チオン)や
カーバム剤(N−メチルジチオカルバミン酸アンモニウ
ム)等が挙げられ、これらは土壌中で分解され、イソチ
オシアン酸メチルを発生する。
【0030】アジ化化合物およびアジ化水素は、該イソ
チオシアン酸エステルと下記の様な反応により無害化さ
れるものと考えられる。
【0031】
【化1】
【0032】かかるイソチオシアン酸エステル化合物ま
たはイソチオシアン酸エステル化合物を発生し得る化合
物の散布量としては、この化合物を散布する際に土壌中
に残留するアジ化化合物およびアジ化水素の総量1当量
当り、イソチオシアン酸エステルとして0.3〜4当
量、好ましくは0.5〜3.5当量に相当する量のイソチ
オシアン酸エステル化合物またはイソチオシアン酸エス
テル化合物を発生し得る化合物を活性成分として含有す
る量の薬害防止剤を散布することが好ましい。アジ化化
合物による燻蒸処理後、放置期間中に揮散するアジ化水
素があるため、必ずしも残留したアジ化水素およびアジ
化化合物の全てを分解するに対応する量(1当量)のイ
ソチオシアン酸エステル化合物またはイソチオシアン酸
エステル化合物を発生し得る化合物を散布する必要はな
いけれども、0.3当量未満では、短期間でのアジ化水
素およびアジ化化合物の除去が達成し難くなる。一方、
4当量を超える量を散布すると、残存するイソチオシア
ン酸エステル化合物により薬害を起こす恐れがある。
【0033】アジ化化合物として、通常10a当り1k
gから50kg使用されるが、20kg以上使用する場
合でも、本発明の方法によるとアジ化化合物の散布によ
る燻蒸開始から3週間程度の期間で有用植物を播種、植
え付けすることができる。この期間に、アジ化化合物は
土壌病害虫や雑草に防除効果を示し、その後イソチオシ
アン酸エステル化合物により分解される等して有用植物
に対して薬害を起こさないレベルにまで低減される。
【0034】本発明の薬害防止方法において、通常アジ
化化合物を散布して燻蒸処理後、イソチオシアン酸エス
テル化合物またはイソチオシアン酸エステル化合物を発
生し得る化合物を散布するが、その他にアジ化化合物を
散布する前あるいは同時に、アジ化化合物による燻蒸処
理後にイソチオシアン酸エステル化合物がアジ化化合物
またはアジ化水素を分解するように遅効性の形態にした
イソチオシアン酸エステル化合物またはイソチオシアン
酸エステル化合物を発生し得る化合物を散布することも
可能である。このように、遅効性の形態とする方法とし
ては、かかる化合物をマイクロカプセル化する方法、サ
イクロデキストリンを使用して製剤化する方法、製剤化
において比較的難溶性のバインダーを使用する方法等種
々の方法で実施可能である。また、これらの技術を利用
してアジ化化合物とイソチオシアン酸エステル化合物ま
たはイソチオシアン酸エステル化合物を発生し得る化合
物を共に含む製剤を作ることも可能である。
【0035】本発明の薬害防止方法を実施することによ
り燻蒸後、短期間で残留アジ化化合物およびアジ化水素
の濃度を低下させ、有用植物の播種、植え付けを早期に
実施することができる。
【0036】さらに本発明によれば、上述の薬害防止方
法のためのイソチオシアン酸エステル化合物またはイソ
チオシアン酸エステル化合物を発生し得る化合物を活性
成分として含有することを特徴とするアジ化化合物を散
布処理した土壌に対する薬害防止剤が提供される。
【0037】かかる薬害防止剤は、イソチオシアン酸エ
ステル化合物またはイソチオシアン酸エステル化合物を
発生し得る化合物を1〜100重量%含有することが好
ましい。1重量%未満では、投薬量が必要以上に多くな
り好ましくない。
【0038】かかる薬害防止剤には、イソチオシアン酸
エステル化合物またはイソチオシアン酸エステル化合物
を発生し得る化合物が使用される。イソチオシアン酸エ
ステル化合物は、R−N=C=Sで示され、Rはメチ
ル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブ
チル、ペンチル、ヘキシル、オクチル等の炭素数1〜8
のアルキル基、ビニル、アリル、1−プロペニル、1−
ブテニル等の炭素数2〜8のアルケニル基、フェニル、
トリル、ナフチル等の炭素数6〜15のアリール基およ
びベンジル、フェネチル等の炭素数7〜15のアラルキ
ル基等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜8のアルキル
基または炭素数6〜15のアリール基であり、より好ま
しくは炭素数1〜4のアルキル基であり、特にイソチオ
シアン酸メチルが好ましい。
【0039】このイソチオシアン酸メチルを発生する化
合物として、ダゾメット剤(3,5−ジメチルテトラヒ
ドロ−2H−1,3,5−チアジアジン−2−チオン)や
カーバム剤(N−メチルジチオカルバミン酸アンモニウ
ム)等が挙げられ、これらは土壌中で分解され、イソチ
オシアン酸メチルを発生する。
【0040】かかる薬害防止剤の形態は特に限定され
ず、土壌に散布できる形態であればよく、粉状物、粒状
物または液状物が好ましく使用され、またイソチオシア
ン酸エステル化合物またはイソチオシアン酸エステル化
合物を発生し得る化合物を溶剤に溶かした溶液も使用で
きる。
【0041】かかる薬害防止剤を粒状物の形態で使用す
る場合、固体粉末、イソチオシアン酸エステル化合物ま
たはイソチオシアン酸エステル化合物を発生し得る化合
物および水溶液バインダーより実質的になる粒状物が好
ましく用いられる。固体粉末は、イソチオシアン酸エス
テル化合物またはイソチオシアン酸エステル化合物を発
生し得る化合物を安定的に希釈でき、かつ容易に成形さ
れるために用いられる。この固体粉末としては、例えば
鉱物質、植物質、合成品、半合成品または天然品のいず
れでもよく、鉱物質としてはクレー、炭酸カルシウム、
バーミキュライト、パーライト、タルク、酸性白土、カ
オリン、ゼオライト等が挙げられ、植物質としてはセル
ロース加水分解物、もみ殻、パルプ等が挙げられ、また
エチレン−酢酸ビニル共重合体の粉末等でもよい。
【0042】水溶性バインダーは、固体粉末、イソチオ
シアン酸エステル化合物またはイソチオシアン酸エステ
ル化合物を発生し得る化合物および水溶性バインダーか
ら実質的になる薬害防止剤の粒状物の成形を容易にし、
かつ土壌中に散布された後、水の作用により粒状物が崩
壊し、イソチオシアン酸エステル化合物とアジ化化合物
およびアジ化水素とを接触させる機能を有している。こ
の水溶性バインダーとしては、例えばデンプン、デキス
トリン、アルギン酸ナトリウム、アラビアガム、ゼラチ
ン、リグニン、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキ
シエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプ
ロピルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニル
メチルエーテル、ポリアクリルアミド、部分けん化ポリ
酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロ
リドンおよびビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体等
が挙げられ、中でもポリエチレングリコールが好まし
い。
【0043】
【実施例】
実施例1 アジ化ナトリウム(東洋化成(株)製)100部に、タ
ルク(日本タルク(株)製)850部を加えて混合して
ニーダー(不二パウダル(株)製DHJ−10型)に入
れ、これに水200部にポリエチレングリコール(重量
平均分子量7,500、和光純薬工業(株)製)50部
を溶解した溶液を添加しながらニーダーで練り合わせ
た。次に、穴直径0.8mmのスクリーンを付けた押出
造粒機(不二パウダル(株)製DG−L1型)で押し出
し、さらに整粒機(不二パウダル(株)製球形整粒機Q
J−230型)で整粒し、平均粒径1,000μmの粒
剤を得た。この粒剤を乾燥機(不二パウダル(株)製流
動乾燥機2F型)で乾燥して、アジ化ナトリウム10重
量%を含有する粒剤1,000gを得た。この粒剤を1
/5000aワグネルポットの土壌(土壌量3.5k
g)に10a当りアジ化ナトリウムとして10kgの割
合となるよう十分に混和した。7日間被覆燻蒸処理した
後、微粒状のダゾメット剤を所定量混和した。再度被覆
して7日目、14日目に土壌を採取し、ダゾメット剤に
よるアジ化ナトリウムおよびアジ化水素の減少量を測定
した。その結果を表1に示した。測定は高速液体クロマ
トグラフィーを用い、土壌中のアジドイオン(N3 -)濃
度を調べた。また、表1中の括弧内は、ダゾメット剤の
散布時に残留するアジ化ナトリウムおよびアジ化水素の
総量を1当量とした時の添加したダゾメット剤の当量で
ある(実施例2および実施例3の表2および表3中の括
弧内も同様)。
【0044】
【表1】
【0045】実施例2 実施例1で使用したアジ化ナトリウムを10重量%含有
する粒剤を1/5000aワグネルポットの土壌(土壌
量3.5kg)に10a当りアジ化ナトリウムとして5
kgの割合となるよう十分に混和した。この土壌を7日
間被覆燻蒸処理した後、微粒状のダゾメット剤を所定量
混和した。再度被覆して7日目に土壌を採取し、ダゾメ
ット剤によるアジ化ナトリウムおよびアジ化水素の減少
量を測定した。測定は、高速液体クロマトグラフィーを
用い、土壌中のアジドイオン(N3 -)濃度を調べた。さ
らに、薬害に対する評価項目として、発芽試験を実施し
た。ダゾメット剤を所定量混和、被覆してから7日後の
土壌および無処理の(アジ化ナトリウム、ダゾメット剤
を使用しない)土壌にそれぞれトマト種子50粒を播
種、その5日後に発芽種子数を調べ、次式により発芽割
合を算出した。その結果を表2に示した。
【0046】
【数1】
【0047】
【表2】
【0048】実施例3 実施例1で使用したアジ化ナトリウムを10重量%含有
する粒剤を1/5000aワグネルポットの土壌(土壌
量3.5kg)に10a当りアジ化ナトリウムとして5
kgの割合となるよう十分に混和した。この土壌を7日
間被覆燻蒸処理した後、液状のカーバム剤(N−メチル
ジチオカルバミン酸アンモニウム50%含有)を所定量
混和した。再度被覆して7日目に土壌を採取し、カーバ
ム剤によるアジ化ナトリウムおよびアジ化水素の減少量
を測定した。その結果を表3に示した。測定は、高速液
体クロマトグラフィーを用い、土壌中のアジドイオン
(N3 -)濃度を調べた。
【0049】
【表3】
【0050】
【発明の効果】アジ化化合物を用いた土壌燻蒸におい
て、本発明の薬害防止方法は、残留アジ化化合物および
アジ化水素を短時間に除くことができることから、薬害
の発生もなく早期に有用植物を播種、植え付けでき圃
場、施設での効率的栽培ができる。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 分解によりアジ化水素を発生し得るアジ
    化化合物を散布処理した土壌に対して、イソチオシアン
    酸エステル化合物またはイソチオシアン酸エステル化合
    物を発生し得る化合物を活性成分として含有する薬害防
    止剤を散布することを特徴とするアジ化化合物の薬害防
    止方法。
  2. 【請求項2】 該イソチオシアン酸エステル化合物は、
    R−N=C=S(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基
    または炭素数6〜15のアリール基を示す)である請求
    項1記載の薬害防止方法。
  3. 【請求項3】 該アジ化化合物は、アジ化アルカリ金属
    塩またはアジ化アルカリ土類金属塩である請求項1記載
    の薬害防止方法。
  4. 【請求項4】 残留するアジ化化合物およびアジ化水素
    の総量1当量当り0.3〜4当量に相当する量のイソチ
    オシアン酸エステル化合物またはイソチオシアン酸エス
    テル化合物を発生し得る化合物を活性成分として含有す
    る量の薬害防止剤を散布する請求項1記載の薬害防止方
    法。
  5. 【請求項5】 イソチオシアン酸エステル化合物または
    イソチオシアン酸エステル化合物を発生し得る化合物を
    活性成分として含有することを特徴とするアジ化化合物
    を散布処理した土壌に対する薬害防止剤。
  6. 【請求項6】 該イソチオシアン酸エステル化合物は、
    R−N=C=S(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基
    または炭素数6〜15のアリール基を示す)である請求
    項5記載の薬害防止剤。
  7. 【請求項7】 該薬害防止剤は、イソチオシアン酸エス
    テル化合物またはイソチオシアン酸エステル化合物を発
    生し得る化合物を1〜100重量%含有する請求項5記
    載の薬害防止剤。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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US6852341B2 (en) 2000-10-10 2005-02-08 Auburn University Azide method and composition for controlling deleterious organisms and for stimulating beneficial organisms
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