JPH0987300A - 雑種蛋白質およびその用途 - Google Patents

雑種蛋白質およびその用途

Info

Publication number
JPH0987300A
JPH0987300A JP8183129A JP18312996A JPH0987300A JP H0987300 A JPH0987300 A JP H0987300A JP 8183129 A JP8183129 A JP 8183129A JP 18312996 A JP18312996 A JP 18312996A JP H0987300 A JPH0987300 A JP H0987300A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
antigen
hiv
human
solution
hybrid protein
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Withdrawn
Application number
JP8183129A
Other languages
English (en)
Inventor
Yukio Fujisawa
幸夫 藤沢
Masaaki Hasama
正聡 波佐間
Kenji Okonogi
研二 小此木
Kuniko Matsuo
久仁子 松尾
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Takeda Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Takeda Chemical Industries Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Takeda Chemical Industries Ltd filed Critical Takeda Chemical Industries Ltd
Priority to JP8183129A priority Critical patent/JPH0987300A/ja
Publication of JPH0987300A publication Critical patent/JPH0987300A/ja
Withdrawn legal-status Critical Current

Links

Abstract

(57)【要約】 【課題】有効で安全なHIV感染予防およびエイズ発症
予防ワクチンを開発する。 【解決手段】ヒト免疫不全ウイルスGagP24抗原と
インターロイキン2類とからなる雑種蛋白質および該雑
種蛋白質を含有するワクチン。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ヒト免疫不全ウイ
ルス(Human Immunodeficiency Virus: HIV)感染予
防ワクチン、及び後天性免疫不全症候群(acquired imm
unodeficiency syndrome: AIDS: エイズ)の発症予防ワ
クチンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】ウイルスに対するワクチンは、ウイルス
を不活化したものを用いる不活化ワクチンやウイルスを
弱毒化したものを用いる生ワクチンが一般的である。し
かし、エイズの原因ウイルスであるHIVに対するワク
チンの開発には、HIVの抗原性が変異しやすいこと
や、感染したHIVはcDNAとなってヒト染色体に組
み込まれて潜伏感染する過程を持っていることなどのた
めに問題点が多い。すなわち、HIVの弱毒生ワクチン
については、ワクチン候補株の弱毒化やその安全性の証
明のために、その開発期間の極めて長期化が予想され
る。また、弱毒株ができたとしても、HIVは変異が起
こりやすいために毒性が復帰することも懸念される。ま
た、HIVのゲノムRNAにはそれ自身で感染性ウイル
スを生成させる能力があるため、不活性化ワクチンも危
険性が大きい。そのため、ウイルスの適当な抗原、また
は抗原の一部のペプチドを免疫原とする成分ワクチンの
開発が期待される。現在開発中のHIVワクチンの免疫
原として、外被糖蛋白質(Env抗原)が最も多く使用
されているが、Env抗原は変異が起こり易い(T. F.
W. Wolfs et. al. : ウィロロジー(Virology)185: 19
5-205, 1991)。また、エイズ感染者では、体内に高力
価の抗HIV抗体が産生されているにもかかわらず、感
染性のHIVそのものが血液中に存在していることが知
られている(D. D. Ho et. al. : ニュー・イングラン
ド・ジャーナル・オブ・メディシン(N. Engl. J. Me
d.) 321: 1621-1625, 1989)ことから、ワクチンで抗
体産生を誘導させても、HIV感染を予防し、体内のH
IVを排除することは難しいことがあることが判る。さ
らに、HIVの感染は、遊離のHIVによることより
も、感染細胞が経粘膜的に侵入することによることの方
が多い(C. J. Miller et. al. : ラボラトリー・イン
ベスティゲイション(Lab. Invest.) 68: 129-145, 19
93)。
【0003】また本発明者等はワクチン用の抗原とリン
ホカインとの融合蛋白を提案しており(特開平04-11739
9号公報)、ここでは単純ヘルペスウィルス(HSV−
1)の表面抗原たるgD、gBとリンホカインとの融合
蛋白、あるいは該抗原とリンホカインの各々の精製標品
を別個に調製しそれらを化学的に結合した雑種蛋白を記
載している他、HIV抗原とリンホカインとの融合蛋白
についても記載している。この単純ヘルペスウイルス
(HSV-1)の糖蛋白質D(gD)とヒトのインターロイキ
ン2(IL-2)とを融合させたサイトカイン融合抗原(g
D-IL-2)が抗ヘルペス剤として有効であることは、マ
ウス(M. Hazama et. al. : ワクチン(Vaccine )11:
629-636, 1993)およびモルモットの性器ヘルペスモデ
ル (M. Nakao et. al. : ジャーナル・オブ・インフェ
クシャス・ディジーズ(J. Infect.Dis.) 169: 787-79
1, 1994)を用いた動物実験において証明されている。
該融合蛋白質gD−IL−2は、HSV−1由来のgD
遺伝子の下流にヒトIL−2遺伝子を結合させた融合遺
伝子をマウス・ミエローマ細胞(Sp2/0)に導入して発
現させたものである。gD−IL−2は、IL−2レセ
プターを発現している樹状細胞などの抗原提示細胞へ効
率的にターゲッティングされ、gD特異的T細胞の活性
化を誘導するために、強力な免疫原性を発揮すると考え
られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】有効で安全なHIV感
染予防およびエイズ発症予防ワクチンを開発することが
本発明の課題であり、このワクチンは上記のように、抗
体産生を主とする体液性免疫を誘導するだけではなく、
感染細胞を傷害するキラーT細胞を主とする細胞性免疫
をも同時に誘導し得るようなものが望まれる。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、有効で安
全なエイズワクチンを開発するためには、まず、変異が
比較的少なく、T細胞エピトープを含む適当な抗原を選
び、次に、該抗原の免疫原性を高める工夫を施す必要が
あると考え、更に上記のように、HIVに対するワクチ
ンは、抗体産生を主とする体液性免疫を誘導するだけで
はなく、感染細胞を傷害するキラーT細胞を主とする細
胞性免疫をも同時に誘導し得るようなものが望まれるこ
とを考慮に入れ、鋭意研究を行った結果、以下のように
して本発明を完成したものである。一般に、ウイルスに
対する中和抗体のエピトープやキラーT細胞の認識部位
は有用なワクチン免疫原の候補と考えられる。しかしな
がら、HIVの場合にはこれらの部位のほとんどは変異
し得ることが明らかになっているため(P. L. Naraet.
al. : フィデレーション・オブ・アメリカン・ソサイア
ティーズ・フォー・エキスペリメンタル・バイオロジー
・ジャーナル(FASEB J.) 5: 2437-2455,1991)、ワク
チンの免疫原として不適当な場合がある。そこで本発明
者等はHIV-1のGag抗原中のP24抗原が、En
v抗原ほどには変異しない安定な抗原であり、また、P
24抗原中にサル免疫不全ウイルスSIVagmとSI
Vmac、およびネコ免疫不全ウイルスFIVとの間で
も高い相同性を示す領域が同定され(K. Matsuo et. a
l. :ジャーナル・オブ・ジェネラル・ウィロロジー(
J. Gen. Virol.) 73: 2445-2450, 1992)、さらにこの
領域にキラーT細胞誘導能があることが知られている
(Y. Nishino et. al.: ワクチン(Vaccine) 12: 485-
491, 1994)ことに注目し、このGagP24抗原を本
発明のワクチンに用いることを考えた。また、Gag抗
原に対する抗体はエイズ発症前に低下することが知られ
ており、Gagに対する免疫応答はエイズ発症を抑制す
る可能性がある(J. B. Spear et. al. : J. Infect. D
is. 158:1132-1133, 1988)。一方、先に述べた単純ヘ
ルペスウイルス(HSV-1)の糖蛋白質D(gD)とヒトの
インターロイキン2(IL-2)とを融合させたサイトカ
イン融合抗原(gD-IL-2)が抗ヘルペス剤として有効で
あること、gD−IL−2は、gD精製標品とIL−2
精製標品とを別々に調製し、化学的に両者を結合させる
ことによっても作製することができること、gD−IL
−2は、IL−2レセプターを発現している樹状細胞な
どの抗原提示細胞へ効率的にターゲッティングされ、g
D特異的T細胞の活性化を誘導するために、強力な免疫
原性を発揮すると考えられていることを考慮して研究を
進めた結果、本発明者等は、HIV抗原として上記の比
較的安定なGagP24抗原を用いると共に、ヘルペス
ウイルスのワクチンにおけるアジュバントとして用いら
れたインターロイキンを用いた新規な雑種蛋白質がHI
V感染予防および後天性免疫不全症候群のワクチンとし
て安全かつ有用であることを見出し、本発明に到達した
ものである。
【0006】すなわち、本発明は、HIVのGagP2
4抗原とインターロイキン2類とからなる雑種蛋白質、
およびそれを含有するHIV感染予防ワクチンと後天性
免疫不全症候群(acquired immunodeficiency syndrom
e: AIDS: エイズ)の発症予防ワクチンを提供するもの
である。更に詳しくは、本発明は、(1)ヒト免疫不全
ウイルスGagP24抗原とインターロイキン2類とか
らなる雑種蛋白質、(2)上記(1)記載の雑種蛋白質
を含有するワクチン、(3)ヒト免疫不全ウイルス感染
による後天性免疫不全症候群の発症予防用である上記
(2)記載のワクチン、および(4)ヒト免疫不全ウイ
ルスの感染予防用である上記(2)記載のワクチンに関
する。
【0007】
【発明の実施の形態】ヒト免疫不全ウイルスとしては、
1型、2型などが挙げられるが、好ましくは、1型が挙
げられる。本発明で用いられるヒト免疫不全ウイルスG
agP24抗原は、前駆体GagP55からプロセシン
グによって生まれるコア蛋白質成分であり、GagP2
4抗原としては、A. Adachi et al. : ジャーナル・オブ
・ウィロロジー(J. Virol)59 : 284-291(1986)、F.
Buseyne et al. : ジャーナル・オブ・ウィロロジー(J.
Virol)67 : 694-702(1993)などに記載のものが挙げ
られる。GagP24抗原としては遺伝子工学的に製造
されるものが好ましく、例えば、GenBankに登録
されている配列(T. Theodore et al.
1988,GenBank accession #M3
8431, 1186−1878(塩基配列)、Pro1
33−Leu363)を基に通常の遺伝子工学的方法によっ
て製造されるものが挙げられる。例えば、GagP24
抗原は、HIVのGagP24遺伝子を大腸菌T7プロ
モーター系(A. Rosenberg et. al. : ジーン(Gene)5
6: 125-135, 1987)を利用して発現させ、調製すること
ができる。また、GagP24遺伝子を真核細胞、例え
ばマウス・ミエローマ細胞株(Sp2/0)、サル腎細
胞株(COS−7)、チャイニーズハムスター卵巣細胞
株(CHO)、昆虫培養細胞株(Sf9)などを宿主に
用いて発現させ、調製することができる。
【0008】インターロイキン2(IL−2)類とは、
IL−2活性を有する物質であり、すなわち、T細胞を
継代維持し得る作用を有する物質であればいずれでもよ
い。例えば、動物体内や動物細胞で産生される天然のI
L−2や遺伝子組換え技術で生産される組換え型IL−
2などが挙げられるが、なかでもヒトIL−2が好まし
く、とりわけヒト組換え型IL−2が好ましい。上記I
L−2は、糖鎖を有していてもよく、また有さなくても
よい。具体的には、例えば遺伝子工学技術により製造さ
れる図1(配列番号:1)で示されるアミノ酸配列を有
するポリペプチド(A)(特開昭61−78799号公
報、特開平4−117399号公報参照)、その生物学
的もしくは免疫学的活性に必要な一部のアミノ酸配列か
らなるフラグメントでもよい。上記フラグメントとして
は、例えばポリペプチド(A)のアミノ末端から1個の
アミノ酸(EPC公開91539号公報参照)または4
個のアミノ酸を欠くフラグメント(特開昭60−126
088号公報)やカルボキシル末端部の数個のアミノ酸
を欠くフラグメントなどが挙げられる。さらに上記ポリ
ペプチド(A)の構成アミノ酸の一部が欠損しているか
他のアミノ酸に置換されたもの、例えば125位のシス
ティン残基がセリン残基に置換されたもの(特開昭59
−93093号公報参照)でもよい。上記遺伝子工学技
術で製造される組換え型IL−2は、ポリペプチド
(A)のアミノ末端にさらにMetを有してもよく(特
開昭61−78799号公報参照)、またポリペプチド
(A)とそのアミノ末端にさらにMetを有するポリペ
プチド(A)との混合物でもよい(特開昭60−155
28号公報参照)。
【0009】IL−2類は、例えば、特開昭60−11
5528号公報または特開昭61−78799号公報に
記載の方法に従って、IL−2類遺伝子を大腸菌で発現
させて調製することができる。この調製方法としては例
えば、ヒト末梢白血球の培養液からヒトIL−2をコー
ドするmRNAを分離し、逆転写酵素などを用いて単鎖
のcDNAを合成した後、二重鎖DNAを合成する。つ
いで、プラスミドに導入して、例えば大腸菌や枯草菌な
どを形質転換させ、これよりcDNA含有プラスミドを
単離することによりヒトIL−2をコードする二重鎖D
NAを製造することができる。このDNAを、例えばd
G−dCホモポリマー結合法によりたとえばプラスミド
pBR322のPstI開裂エンドヌクレアーゼ切断部
位に組み込ませる。さらに、例えばヒトIL−2の一部
のアミノ酸配列に対応する塩基配列をもつオリゴヌクレ
オタイドを化学合成した後、32Pでラベルしてプローブ
となし自体公知の方法でコロニーハイブリダイゼイショ
ン法により、テトラサイクリン耐性あるいはアンピシリ
ン感受性のトランスフォーマントの中から求めるクロー
ンを選出する。上記ハイブリダイゼイション法で陽性を
示したクローンのDNAの塩基配列をMaxam−Gi
lbert法あるいはファージM13を用いたジヌクレ
オチド合成鎖停止法により決定し、ヒトIL−2遺伝子
の存在を確認する。次に、得られたクローンからヒトI
L−2遺伝子の全部あるいは一部を切り出し、プラスミ
ド中の適当なプロモーター、SD(シャイン・アンド・
ダルガーノ)塩基配列の下流につないで適当な宿主に導
入することができる。プロモーターとしてはtrpプロ
モーターなどが、宿主としては大腸菌(294株、DH
1株など)などが有利に用いられる。DNAによる宿
主の形質転換は公知の方法(Cohen, S. N. ら、プロシ
ーディングス・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サ
イエンス・USA、第69巻、2110頁(1972年))により実
施することができる。このようにして得られた宿主はそ
れ自体公知の培地、例えばグルコース、カザミノ酸を含
むM9培地中で培養される。
【0010】培養後、公知の方法で菌体を集め、菌体を
塩酸グアニジンなどの蛋白質変性剤を含む緩衝液に懸濁
し、冷所で撹拌した後、遠心分離によりIL−2を含む
上澄液を得る方法、あるいは緩衝液に懸濁し、超音波処
理、リゾチームおよび/または凍結融解によって菌体を
破壊した後、遠心分離によりIL−2を含む上澄液を得
る方法などが適宜用い得る。上記上澄液からIL−2を
分離、精製するには、自体公知の分離・精製法を適宜に
組み合わせて行うことができる。これらの公知の分離・
精製法としては塩析や溶媒沈殿法などの溶解度を利用す
る方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法およびSDS
−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分
子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィ
ーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティクロマ
トグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相
クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、
等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法など
が挙げられる。
【0011】上記IL−2の分離・精製の一例について
更に詳しく述べると、ヒトIL−2をコードする遺伝子
を含有する大腸菌を培養して得られる菌体を塩酸グアニ
ジン(好ましくは2M〜8Mの濃度で用いる)などの蛋
白変性剤に懸濁させ、撹拌後遠心分離により上澄液を集
める。上澄液をそのままあるいは限外濾過装置などによ
り濃縮して透析し、生じた沈殿を遠心分離により除き、
得られる上澄液を、たとえばジエチルアミノエチルセル
ロース〔DE52セルロース(ワットマン社製、アメリ
カ)カラムなど〕を用いて陰イオン交換クロマトグラフ
ィーを行い活性画分を集める。次いで、活性画分を限外
濾過装置を用いて濃縮したあと、たとえばN,N’−メ
チレンビスアクリルアミド架橋アリルデキストランたと
えばセファクリルS−200(ファルマシア社製,スエ
ーデン)カラム等を用いるゲル濾過を行う。活性画分を
集め、次いで前記した高速液体クロマトグラフィーを行
う。このような方法により、非グリコシル化ヒトIL−
2を取得することができる。なお、ここで高速液体クロ
マトグラフィーに用いる逆相系カラムとしては、例えば
アルキル化(C1-18程度)ケイ素のものが挙げられる。
溶出溶媒としては、C1-6程度の低級アルカノール(エ
タノール,プロパノールなど)やアセトニトリルが有利
に使用でき、pHは1.5〜4が好ましい。溶出速度は
0.1〜100ml/minが好ましい。ここで得られ
るヒトIL−2蛋白質溶液は必要によりこれを凍結乾燥
により粉末とすることができる。凍結乾燥に際しては、
ソルビトール,マンニトール,デキストロース,マルト
ース,グリセロール,ヒト血清アルブミン(HSA)な
どの安定剤を加えることができる。
【0012】等電点の差を利用する方法では、たとえば
アンホラインを利用する密度勾配等電点電気泳動法、ゲ
ル等電点電気泳動法、等速度電気泳動法などの電場の中
で蛋白質を泳動させる方法やクロマトホーカシング法、
FPLC法(Fast Protein Liquid Chromatography)、
DEAE(Diethylaminoethyl)イオン交換カラムクロマ
トグラフ法、CM(carboxymethyl)イオン交換カラムクロ
マトグラフ法またはSP(sulphopropyl)イオン交換カラム
クロマトグラフ法などの、溶出カラム等の荷電担体に付
加した蛋白質を、pH勾配または塩濃度勾配を作成して
等電点の差異をもたらす荷電の相異に従って担体から蛋
白質を順に脱離して溶出させる方法などを用いることが
できる。
【0013】HIVのGagP24抗原とIL−2類と
を結合させるためには、蛋白質分子中に存在している置
換基を利用して化学的に結合させることができる。すな
わち、GagP24抗原とIL−2類とを化学的に結合
させるために、これらの蛋白分子中に存在している置換
基、例えばアミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基
またはスルフヒドリル基などを利用することができる。
例えば、(1)一方の蛋白の反応性アミノ基をN−ヒド
ロキシスクシミドの活性エステル〔例、p−マレイミド
メチルシクロヘキサン−1−カルボキシル−N−ヒドロ
キシスクシミドエステル、N−(ε−マレイミドカプロ
イロキシ)スクシミドエステルなど〕と反応させてマレ
イミド化したのち、i)他方の蛋白をジチオスレイト−
ル(DTT)で還元した蛋白、あるいはii)他方の蛋白
にN-スクシミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオ
ネート(SPDP)でスルフヒドリル基を導入した蛋白
のスルフヒドリル基とチオエーテル結合させる、(2)
一方の蛋白の反応性アミノ基と他方の反応性カルボキシ
ル基とを水溶性カルボジイミド試薬〔例、1−エチル−
3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミ
ド、1−シクロヘキシル−3−(2−モルホリノエチ
ル)−カルボジイミド−p−トルエンスルホネートな
ど〕を用いて水溶溶媒中で脱水縮合させる、(3)2種
の蛋白双方の反応性アミノ基をスクシンジアルデヒドや
グルタルアルデヒドなどのジアルデヒド試薬を用いて結
合させる、(4)2種の蛋白をDTTで還元あるいはS
PDPでスルフヒドリル基を導入し、再酸化によりヘテ
ロダイマーを作製する、などの方法がある。またこれら
の方法を種々組合せて、2種の蛋白活性をできるだけ損
なわずに効率良く目的のヘテロダイメリックな蛋白を作
製することもできる。以上のような結合反応終了後、得
られた雑種蛋白はセファデックスG100もしくはG2
00、セファロース6Bもしくは4B、ウルトラゲルA
cA44もしくは34、セファクリルS200などのゲ
ルろ過クロマトグラフィーにより精製・分取できる。あ
るいは抗体結合カラムを用いるアフィニティークロマト
グラフィーを組合せることにより選択的な分取も可能で
ある。本発明で得られる雑種蛋白質は、HIVの感染予
防のためのワクチンとして、またHIV感染によるAI
DSの発症予防のためのワクチンとして、有利に用いる
ことができる。
【0014】本発明で得られる雑種蛋白質は、ウイルス
の感染予防のために用いられる各種ワクチンの投与方法
に準じて投与(筋肉内、皮下、皮内、鼻内、膣内)する
ことができる他、さらに静脈内に投与することもでき
る。該雑種蛋白質はそれ自体あるいは薬理学的に許容さ
れうる担体などとの組成物やリポソーム化製剤として用
いることができる。
【0015】
【実施例】以下の実施例により本発明をより具体的に説
明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の実施例において用いられたいくつかのプラスミド
類、制限酵素などの酵素類、試薬は、製造業者の指示に
従って使用した。また、DNAの操作、大腸菌組換え体
の培養および産生物の回収、および化学反応は、当業者
既知の方法、あるいは文献記載の方法[モレキュラー・
クローニング(Molecular Cloning) ALaboratory Mann
ual. 2nd Edition.: T. Maniatis et. al. : CSH Labor
atory,1989]に準じて行った。また、本明細書におい
て、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC-
IUB Commision on Biochemical Nomenclature による略
号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであ
り、その例を次に挙げる。また、アミノ酸に関して光学
異性体があり得る場合は、特に明示しなければL−体を
示すものとする。 DNA : デオキシリボ核酸 RNA : リボ核酸 A : アデニン T : チミン G : グアニン C : シトシン CBB : クーマシーブリリアントブルー SDS : ドデシル硫酸ナトリウム Gly : グリシン(G) Ala : アラニン(A) Val : バリン(V) Leu : ロイシン(L) Ile : イソロイシン(I) Ser : セリン(S) Thr : スレオニン(T) Cys : システイン(C) Met : メチオニン(M) Glu : グルタミン酸(E) Asp : アスパラギン酸(D) Lys : リジン(K) Arg : アルギニン(R) His : ヒスチジン(H) Phe : フェニルアラニン(F) Tyr : チロシン(Y) Trp : トリプトファン(W) Pro : プロリン(P) Asn : アスパラギン(N) Gln : グルタミン(Q) Apr : アンピシリン耐性遺伝子
【0016】なお、実験例または実施例で用いたIL−
2は、図1に示すアミノ酸配列を有するヒトIL−2す
なわちアミノ末端がアラニンで始まるIL−2である。
該IL−2は、形質転換体エシェリヒア・コリ(Escher
ichia coli) N4830/pTB285を用い、参考例
1および2に記載したような方法で培養し、高度に精製
され、等電点分画により分離されたものであり、その比
活性は約3.5×104単位/mgである(培養、分離に
ついては特開昭61−78799号公報、精製について
は特開昭60−115528号公報を参照されたい)。
【0017】前記形質転換体エシェリヒア・コリN48
30/pTB285は、昭和60年4月25日から財団
法人発酵研究所(IFO)に、受託番号IFO1443
7として寄託され、また昭和60年4月30日から通商
産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(NIBH)
に、受託番号FERM P−8199として寄託され、
該寄託はブダペスト条約に基づく寄託に切換えられて、
受託番号FERM BP−852として同研究所(NI
BH)に保管されている。また、実験例または実施例で
用いたGagP24抗原は参考例3、4の方法で製造し
たものを用いた。
【0018】〔参考例1〕非グリコシル化ヒトインター
ロイキン−2の製造 (i)発現用プラスミドの構築 ヒトIL−2遺伝子を有するプラスミドpILOT13
5−8(特開昭60−115528号公報、実施例1
(vii)参照)を制限酵素HgiAIで切断した。得ら
れた1294bpDNA断面をT4DNAポリメラーゼ
で平滑末端とし、T4DNAリカーゼを用いて、Eco
RIリンカーdTGCCATGAATTCATGGCA
を結合させた。得られたDNAをEcoRIで消化し、
翻訳開始コドンATGおよびヒトIL−2遺伝子を有す
るDNA断片を得た。このDNA断片を、あらかじめE
coRI−PstI部位を消化したptrp781〔ヌ
クレイック・アシズ・リサーチ、第11巻、3077頁
(1983)〕にT4DNAリカーゼを用いて挿入し
た。かくして得られた発現用プラスミドpTFIはtr
pプロモーターの下流に翻訳開示コドンとヒトIL−2
遺伝子を有する。プラスミドpTFIを制限酵素Stu
Iで切断し、BamHIリンカーと結合させた。このプ
ラスミドDNAを制限酵素BamHIおよびEcoRI
で処理し、ついでEcoRI−BamHI部位にλPL
プロモーターを有するプラスミドpTB281に挿入し
た。かくして得た発現用プラスミドをpTB285と命
名した。 (ii)形質転換体の製造 上記で得たプラスミドpTB285でエシェリヒア・コ
リN4830をコーエンらの方法〔プロシージングス・
オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(P
ro.Natl.Acad.Sci.USA)第69
巻、2110頁(1972)〕に従い形質転換し、上記
プラスミドを含有する形質転換体エシェリヒア・コリN
4830/pTB285を得た。 (iii)形質転換体の培養 形質転換体エシェリヒア・コリN4830/pTB28
5を250ml容フラスコ内のバクト・トリプトン(デ
ィフコ・ラボラトリーズ、アメリカ)1%、バクト・イ
ーストエキス(ディフコ・ラボラトリーズ、アメリカ)
0.5%、食塩0.5%およびアンピシリン50μg/
mlを含む液体培地(pH7.0)50mlに接種して
37℃で一晩回転振動培養した。この培養液をカザミノ
酸0.5%、グルコース0.5%およびアンピシリン5
0μg/mlを含むM9培地2.5リットルの入った5
リットル容ジャーファーメンターに移し35℃で6時
間、ついで42℃でさらに3時間通気撹拌培養して培養
液2.5リットルを得た。この培養液を遠心分離し、菌
体を集め、−80℃で凍結して保存した。
【0019】(iv)抽出 凍結菌体20gを7M塩酸グアニジン0.1M Tri
s−HClを含む抽出(pH7.0)100mlに均一
に懸濁し、4℃で1時間撹拌した後、28,000×g
で20分間遠心分離し上清を得た。 (v)インターロイキン−2蛋白質の部分精製 得られた上清を0.01M Tris−HCl緩衝液
(pH8.5)に対して透析後19,000×gで10
分間遠心分離して得た上清を0.01M Tris−H
Cl緩衝液(pH8.5)で平衡化したDE52(DE
AE−セルロース、ワットマン社製、イギリス)カラム
(50ml容)に通して蛋白を吸着後、NaCl濃度直
線勾配(0〜0.15M NaCl、1リットル)を作
成して、IL−2を溶出させ、活性画分を得た。 (vi)インターロイキン−2蛋白質の精製 上記で得られた活性画分をYM−5メンブラン(アミコ
ン社製、アメリカ)を用いて、5mlに濃縮し、0.1
M Tris−HCl(pH8.0)−1MNaCl緩
衝液で平衡化したセファクリルS−200(ファルマシ
ア製、スウェーデン)カラム(500ml容)を用いて
ゲルろ過を行った。活性画分40mlをYM−5メンブ
ランで3mlに濃縮した。得られた濃縮液を、ウルトラ
ポアRPSC(アルテックス社製、アメリカ)カラムに
吸着させ、トリフルオロ酢酸−アセトニトリル系を溶出
溶媒とする高速液体クロマトグラフィーを行った。[カ
ラム、ウルトラポアRPSC(4.6×75mm):カ
ラム温度、30℃:溶出溶媒A、0.1%トリフルオロ
酢酸−99.9%水:溶出溶媒B、0.1%トリフルオ
ロ酢酸−99.9%アセトニトリル:溶出プログラム、
0分(68%A+32%B)−25分(55%A+45
%B)−35分(45%A+55%B)−45分(30
%A+70%B)−48分(100%B):溶出速度、
0.8ml/min:検出波長、230nm。] 本条件下で保持時間約39分の活性画分、IL−2およ
びMet−IL−2の混合物10mlを集めた。
【0020】〔参考例2〕SP−5PWカラムによるI
L−2とMet−IL−2との分離 参考例1で得られたIL−2およびMet−IL−2の
混合物である非グリコシル化ヒトインターロイキン−2
を含む0.005M酢酸アンモニウム緩衝液(pH5.
0,蛋白質濃度1.03mg/ml)0.5mlを0.
025Mリン酸緩衝液(pH7.4)で平衡化した高速
液体クロマトグラフィー用SP−5 PWカラム(0.7
5×7.5cm;東洋曹達社製)にのせ、0.025M
リン酸緩衝液(pH7.4)を用いて蛋白質を溶出し
た。カラム温度は35℃に、緩衝液の流速は0.5ml
/minに設定した。クロマトグラフシステムはバリア
ン社製5500型液体クロマトグラフを用いた。その結
果、非グリコシル化インターロイキン−2は2つのピー
ク(ピークAおよびピークB)として溶出された。それ
ぞれのピークを分取しアミノ末端アミノ酸の分析を行っ
た結果、ピークAはMet−IL−2を、ピークBはI
L−2をそれぞれ99.5%以上の純度で含んでいるこ
とが確認された。
【0021】〔参考例3〕HIV−1のGagP24遺
伝子を含む発現プラスミドの構築 (1)プラスミドpBS(+)gag24の構築 GenBank(compiled by National Institutes of Healt
h; distributed by Hitachi Software Engineering C
o., Ltd.)に登録[Accession #: M38431; Author: T.
Theodore et. al.;Journal: 未発表(1988年)]され
ているHIV−1NY5株の塩基配列をもとに、Gag
抗原中のP24抗原(Pro133〜Leu363)を
コードする塩基配列とその5’末端に開始コドン(AT
G)、3’末端に終止コドン(TAG)、およびそれら
の両端にNdeI認識配列を有する約730bpのDN
A断片を合成した。このDNA断片の末端をリン酸化
し、クレノウ(Klenow)断片で末端平滑化した
後、制限酵素SmaIで開裂したプラスミドpBlue
script SK(+)(Stratagene社)と
結合させた。反応混合液を用いて大腸菌JM109[宝
酒造(株)]を形質転換し、得られたクローンから目的
のプラスミドpBS(+)gag24を得た。 (2)プラスミドpETgag24の構築および組換え
大腸菌MM294(DE3)/pETgag24の作製 プラスミドpBS(+)gag24をNdeIで切断し、
前記のP24抗原(Pro133〜Leu363)のコ
ード領域を含む約730bpのDNA断片を回収して、
NdeIで開裂したプラスミドpET−3c [メソッ
ズ・イン・エンザイモロジー(Methods in Enzymology
)(ed. by D. V. Goeddel; Academic Press), 185,6
0-88 (1990)]と結合後、反応混合液を用いて大腸菌JM1
09を形質転換した。得られたクローンからプラスミドを
調製し、P24抗原のコード領域がプラスミドpET−
3c中のT7プロモーターと順方向に挿入されたプラス
ミドpETgag24を持つクローンを選択し、プラス
ミドpETgag24を回収して、エレクトロポレーシ
ョンによって大腸菌MM294(DE3)を形質転換
し、組換え大腸菌MM294(DE3)/pETgag
24を得た。
【0022】〔参考例4〕GagP24遺伝子の発現お
よびP24抗原の精製 (1)GagP24遺伝子の発現 大腸菌MM294(DE3)/pETgag24を10
0μg/mlのアンピシリン含有LB培地で一夜培養し
た。この培養液を、アンピシリン100μg/ml含有
LB培地に1/100量植え継ぎ、600nmでの吸光
度が0.4〜0.6に達した時点でイソプロピルチオガ
ラクトシドを終濃度0.4mMになるように加えて、さ
らに3〜4時間培養した後、遠心分離によって菌体を回
収した。菌体の溶解液をSDS−ポリアクリルアミドゲ
ル電気泳動で展開後、CBB染色と抗P24抗体(AALT
O BIO REAGENTS社; アフィニティ精製ヒツジ抗HIV−
1−P24 Gag)を用いたウェスタンブロッティン
グでP24抗原が大量に発現されていることを確認し
た。 (2)P24抗原の抽出 回収した菌体に培養液の1/20容量の水を加えて懸濁
し、超音波処理後に遠心して上清と沈殿とに分けた。C
BB染色と抗P24抗体を用いたウェスタンブロッティ
ングによって、P24抗原は上清画分に存在し、凝集体
を形成していないことが分かった。 (3)P24抗原の精製 上記の大腸菌破砕液を10mM リン酸緩衝液(pH
6.0)に溶解し、10mM リン酸緩衝液(pH 6.
0)で平衡化したSP−セファロース(Pharmacia Biot
ech社)カラムに負荷し、P24抗原をカラムに吸着さ
せた。カラムを同緩衝液で洗浄した後、0.3M 塩化
ナトリウムを含む10mM リン酸緩衝液(pH 6.
0)によってP24抗原を溶出した。その結果、2リッ
トルの大腸菌培養液から純度90%以上(CBB 染色
により判断)のP24抗原標品が100mg以上得られ
た。
【0023】〔実施例1〕 P24抗原とヒトIL−2との化学的結合(1) (1)ヒトIL−2のマレイミド化 組換えヒトIL−2[1 mg/ml、 5mM 酢酸ア
ンモニウム(pH5.0)溶液中]1 mgを、透析に
よって10mM リン酸緩衝液 (pH7.0)に置換し
た後、2倍モル(42.8μg)の4−(マレイミドメ
チル)−1−シクロヘキサンカルボキシル酸 N−ヒド
ロキシスクシニミドエステル(Aldrich Chem. Co.)の
ジメチルホルムアミド(DMF)溶液100μlを添加
し、30℃で30分間反応させた。反応後、総量2.5
mlになるように10mM リン酸緩衝液(pH7.
0)を加え、10mM リン酸緩衝液(pH7.0)で
平衡化したPD10カラム(Pharmacia Biotech社)に
供して過剰の結合試薬を除去し、マレイミド化IL−2
溶液、3.5mlを得た。 (2)P24抗原のスルフヒドリル化 参考例4で作製したP24抗原の1mgを0.5mlの
10mM リン酸緩衝液(pH7.0)に溶解して、2
倍モル(24.0μg)のN−スクシミジル−3−(2
−ピリジルチオ)プロピオネート[SPDP;和光純薬
工業(株)]を含むメタノ−ル溶液25μlを添加し
た。30℃で30分間反応後、総量2.5mlになるよ
うに10mM リン酸緩衝液(pH7.0)を加え、
0.1M ジチオスレイトール(DTT)水溶液62.
5μlを添加して還元した後、10mM リン酸緩衝液
(pH7.0)で平衡化したPD10カラムに供して試
薬を除去し、スルフヒドリル化P24抗原溶液、3.5
mlを得た。
【0024】(3)P24抗原とヒトIL−2との化学
的結合 上記の(1)で得られたマレイミド化IL−2溶液のう
ちの半量(1.75ml)と(2)で得られたスルフヒ
ドリル化P24抗原溶液の半量(1.75ml)とを混
合し、4℃で24時間以上静置して反応させた。反応混
液に塩化ナトリウムを終濃度0.15Mになるように加
え、それを0.15M 塩化ナトリウムを含む10mM
リン酸緩衝液(pH7.0)で平衡化したセファクリ
ル S−200(Pharmacia Biotech社)カラムに供して
未反応のP24抗原とIL−2とを分離除去し、約12
0μgの化学的に結合した雑種蛋白質P24−IL−2
を得た。なお、本標品には除去しきれなかったP24が
約240μg混入していた。また、上記の方法と同様
に、マレイミド化したP24抗原とスルフヒドリル化し
たIL−2とを反応させた場合にも、P24抗原とIL
−2とが化学的に結合した雑種蛋白質が得られた。
【0025】〔実施例2〕 雑種蛋白質P24−IL−2におけるIL−2の生物活
性 IL−2依存性の細胞株NKC−3(R. Suzuki et. a
l. :ジャーナル・オブ・イムノロジー(J. Immunol. )
139: 981-987, 1983 ; 東北大学・熊谷教授から分与さ
れたマウス・ナチュラルキラー細胞系列株)にP24−
IL−2を加え、その細胞死抑制効果、すなわち IL
−2活性をMTT試薬(3−[4,5−ジメチル−2−チ
アゾリル]−2,5−ジフェニル−2H−テトラゾリウム
ブロミド;(株)同仁化学研究所)によって判定したと
ころ(H. Tada et. al. : ジャーナル・オブ・イムノロ
ジカル・メソッズ(J. Immunol. Methods )9: 157-16
5,1986)、対照のIL−2が0.972×107JRU
/mgの比活性を示したのに対し、P24−IL−2の
IL−2活性は0.324×107JRU/mgであっ
た。なお、マレイミド化したP24抗原とスルフヒドリ
ル化したIL−2とを化学反応させて調製した雑種蛋白
質P24−IL−2にもIL−2活性が検出された。
【0026】〔実施例3〕 雑種蛋白質P24−IL−2の抗P24抗体産生誘導能 (1)雑種蛋白質P24−IL−2によるマウスの免疫 メスの6週齢のBALB/cマウスを以下の4群(n=
6)に分け、各抗原を200μlのリン酸緩衝食塩水
(PBS)に溶解し、皮下に接種した。初回接種の3週
間後に2回目の接種を行い、初回接種後5週目に採血し
て抗体価を測定した。第1群には、完全フロインドアジ
ュバント、0.1ml(FCA;ネガティブコントロー
ル)のみを接種し(この群のみ1回接種)、対照群とし
た。第2群には、P24抗原、2.6μgを2回接種し
た。第3群には、P24抗原、2.6μgとIL−2、
1.4μgとを混合したものを2回接種した。第4群に
は、雑種蛋白質P24−IL−2、1μgを2回接種し
た。
【0027】(2)抗P24抗体価のエンザイムイムノ
アッセイ(EIA) 参考例4で調製したP24抗原をコーティング溶液(Ki
rkegaard & Perry Laboratories, Inc.)に溶解し、イ
ムノプレート(Nunc社)の1穴あたり1μgになるよう
に分注し、4℃で一夜静置した。PBSでプレートを1
回洗浄し、20% ブロックエース[大日本製薬
(株)]を含むPBSを分注し、4℃で一夜静置した。
プレートを洗浄液(0.05% Tween 20を含む
PBS)で3回洗浄した後、(1)で調製したマウス血
清を希釈液(0.05% Tween 20と20% ブ
ロックエースを含むPBS)で1/640に希釈してプ
レートに分注し、室温で2時間静置した。洗浄液でプレ
ートを6回洗浄した後、二次抗体HRP−ウサギ抗マウ
スIgG(H+L)(ZYMED社)を希釈液で1/300
0に希釈して分注し、室温で1時間静置した。洗浄液で
プレートを6回洗浄した後、TMBマイクロウェルペル
オキシダーゼサブストレートシステム(Microwell Pero
xidase Substrate System; Kirkegaard & Perry Labor
atories, Inc.)で発色反応を行い2倍量の1NH2SO
4を加えて反応を止め、450nmの吸光度を測定し
た。結果を表1に示す。雑種蛋白質P24−IL−2投
与群では、対照群と比較し、有意な抗P24抗体産生の
誘導が証明された。また、P24抗原とIL−2の混合
投与群との比較では、有意ではないが、高力価を示す傾
向が見られた。一方、P24抗原とIL−2の混合投与
群では、抗体価が僅かに上昇したものの対照群と比べて
有意ではなかった。以上のことから、雑種蛋白質はアジ
ュバントを添加しなくても優れた免疫原性を発揮するこ
とが予想された。
【0028】
【表1】
【0029】〔実施例4〕 P24抗原とヒトIL−2との化学的結合(2) (1)ヒトIL−2のマレイミド化 実施例1に示した組換えヒトIL−2、 2.5mgを
透析によって 10mMリン酸緩衝液(pH 7.0)に
置換した後、2倍モル(107.2μg)の4−(マレ
イミドメチル)−1−シクロヘキサンカルボキシル酸
N−ヒドロキシスクシニミドエステルのDMF溶液25
0μlを添加し、反応後、PD10カラムに供してマレ
イミド化IL−2溶液3.5mlを得た。 (2)P24抗原のスルフヒドリル化 参考例4で作製したP24抗原の4mgを2mlの10
mM リン酸緩衝液(pH 7.0)に溶解して2倍モル
(97.2μg)のSPDPのメタノール溶液100μ
lを添加し、反応させた。反応後、総量2.5mlにな
るように10mMリン酸緩衝液(pH 7.0)を加
え、0.1M DTT水溶液62.5μlを添加して還
元した後、PD10カラムに供してスルフヒドリル化P
24溶液3.5mlを得た。 (3)P24抗原とヒトIL−2との化学的結合 上記の(1)で得られたマレイミド化IL−2溶液3.
5mlと(2)で得られたスルフヒドリル化P24抗原
溶液3.5mlとを混合し、4℃で24時間以上静置し
て反応させ雑種蛋白質P24−IL−2を得た。 (4)雑種蛋白質P24−IL−2の精製 上記の(3)の反応混液1.75ml(P24抗原1m
g分とIL−2、625μg分との反応液)を3回に分
けて10mM リン酸緩衝液(pH 8.0)で平衡化し
たハイトラップヘパリンカラム(Pharmacia Biotech
社)に供して0〜1Mの塩化ナトリウムの濃度勾配によ
り溶出した。得られたP24−IL−2溶出画分を5回
に分けて10mM リン酸緩衝液(pH 7.0)/0.
15M 塩化ナトリウムで平衡化したプロテインパック
300カラム(Waters Corporation)に供して分画化
し、純度90%程度の雑種蛋白質P24−IL−2の画
分を得た。定量の結果、P24−IL−2画分には2
3.7μgの蛋白質が含まれていることがわかった。つ
まり、1mgのP24抗原と625μgのIL−2とか
ら純度約90%のP24−IL−2が23.7μg得ら
れた。
【0030】〔実施例5〕 実施例4で作製した雑種蛋白質P24−IL−2におけ
るIL−2の生物活性 実施例2と同様、NKC−3細胞の細胞死抑制効果から
IL−2活性を測定した。判定試薬にはMTTの代わり
にアラマーブルー(Alamar Biosciences, Inc.)を用い
た。対照のIL−2が0.972×107JRU/mg
の比活性を示したのに対し、P24−IL−2のIL−
2活性は0.508×107JRU/mgであった。
【0031】〔実施例6〕 実施例4で作製した雑種蛋白質P24−IL−2の抗P
24抗体産生誘導能 (1)雑種蛋白質P24−IL−2によるマウスの免疫 メスの7週齢のC3H/Heマウスを以下の4群(n=
6)に分け、各抗原を200μlのPBSに溶解し皮下
に接種した。初回免疫の3週間後に2回目の接種を行
い、初回免疫後5週目に採血して抗体価を測定した。第
1群にはPBSのみ(ネガティブコントロール)を、第
2群にはP24抗原1μgを、第3群にはP24抗原1
μgとIL−2、0.6μgを、第4群にはP24−I
L−2、1μgをそれぞれ2回接種した。 (2)抗P24抗体価のEIA 実施例3と同様のEIAを行った。ただし、マウス血清
の濃度は1/40に変更した。結果を表2に示す。雑種
蛋白質P24−IL−2投与群では、対照群およびP2
4抗原とIL−2の混合投与群と比較し、有意な抗P2
4抗体産生の誘導が証明された。一方、P24抗原とI
L−2の混合投与群では、抗体価が僅かに上昇したもの
の対照群と比べて有意ではなかった。以上のことから、
雑種蛋白質はアジュバントを添加しなくても優れた免疫
原性を発揮することが明らかになった。
【0032】
【表2】
【0033】
【発明の効果】本発明によるHIV・GagP24抗原
とインターロイキン2類とからなる雑種蛋白質(HIV
・GagP24)-(IL2))は、インターロイキン2非
結合の抗原に比べてはるかに高い免疫原性を示し、HI
Vの感染予防および感染による免疫不全症候群の発症を
抑制するワクチンの安定な免疫原として有用である。
【配列表】
配列番号:1 配列の長さ:133 配列の型: アミノ酸 トポロジー: 直鎖状 配列の種類:タンパク質 配列 Ala Pro Thr Ser Ser Ser Thr Lys Lys Thr Gln Leu Gln Leu Glu His 1 5 10 15 Leu Leu Leu Asp Leu Gln Met Ile Leu Asn Gly Ile Asn Asn Tyr Lys 20 25 30 Asn Pro Lys Leu Thr Arg Met Leu Thr Phe Lys Phe Tyr Met Pro Lys 35 40 45 Lys Ala Thr Glu Leu Lys His Leu Gln Cys Leu Glu Glu Glu Leu Lys 50 55 60 Pro Leu Glu Glu Val Leu Asn Leu Ala Gln Ser Lys Asn Phe His Leu 65 70 75 80 Arg Pro Arg Asp Leu Ile Ser Asn Ile Asn Val Ile Val Leu Glu Leu 85 90 95 Lys Gly Ser Glu Thr Thr Phe Met Cys Glu Tyr Ala Asp Glu Thr Ala 100 105 110 Thr Ile Val Glu Phe Leu Asn Arg Trp Ile Thr Phe Cys Gln Ser Ile 115 120 125 Ile Ser Thr Leu Thr 130
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いたインターロイキン2のアミノ酸
配列を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12N 1/21 C12N 1/21 15/09 ZNA C12P 21/02 K C12P 21/02 9162−4B C12N 15/00 ZNAA //(C12N 1/21 C12R 1:19) (C12P 21/02 C12R 1:19) (72)発明者 松尾 久仁子 京都府京都市西京区下津林六反田1番地の 74

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ヒト免疫不全ウイルスGagP24抗原と
    インターロイキン2類とからなる雑種蛋白質。
  2. 【請求項2】ヒト免疫不全ウイルスがヒト免疫不全ウイ
    ルス−1である請求項1記載の雑種蛋白質。
  3. 【請求項3】請求項1又は2記載の雑種蛋白質を含有す
    るワクチン。
  4. 【請求項4】ヒト免疫不全ウイルス感染による後天性免
    疫不全症候群の発症予防用である請求項3記載のワクチ
    ン。
  5. 【請求項5】ヒト免疫不全ウイルスの感染予防用である
    請求項3記載のワクチン。
JP8183129A 1995-07-14 1996-07-12 雑種蛋白質およびその用途 Withdrawn JPH0987300A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP8183129A JPH0987300A (ja) 1995-07-14 1996-07-12 雑種蛋白質およびその用途

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP7-178321 1995-07-14
JP17832195 1995-07-14
JP8183129A JPH0987300A (ja) 1995-07-14 1996-07-12 雑種蛋白質およびその用途

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPH0987300A true JPH0987300A (ja) 1997-03-31

Family

ID=26498528

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP8183129A Withdrawn JPH0987300A (ja) 1995-07-14 1996-07-12 雑種蛋白質およびその用途

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JPH0987300A (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021004261A (ja) * 2009-06-26 2021-01-14 リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッドRegeneron Pharmaceuticals, Inc. 天然の免疫グロブリン形式を有する容易に単離される二重特異性抗体

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2021004261A (ja) * 2009-06-26 2021-01-14 リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッドRegeneron Pharmaceuticals, Inc. 天然の免疫グロブリン形式を有する容易に単離される二重特異性抗体

Similar Documents

Publication Publication Date Title
CA2011878C (en) Immunogenic regions on the e7 protein of human papillomavirus type 16
KR20010023193A (ko) Hpv에 대한 백신
JP2981286B2 (ja) 破傷風トキシンフラグメントcの発現
JPH06316532A (ja) ヒト免疫インターフェロン蛋白質含有薬剤
WO2021057826A1 (zh) 一种重组白介素-15类似物
CN109251236B (zh) 一种人乳头瘤病毒35型l1蛋白的突变体
JP3141024B2 (ja) オリゴヌクレオチド
CN109251235B (zh) 一种人乳头瘤病毒16型l1蛋白的突变体
Hausdorf et al. A recombinant human immunodeficiency virus type-1 capsid protein (rp24): its expression, purification and physico-chemical characterization
US5142025A (en) Recombinant HTLV-III proteins and uses thereof
JPH0987300A (ja) 雑種蛋白質およびその用途
CN110551185A (zh) 一种人乳头瘤病毒68型l1蛋白的突变体
JPH06220099A (ja) 可溶性ldlリセプター
JPH01193299A (ja) 組替htlv−3蛋白質及びその用途
WO2019233412A1 (zh) 一种人乳头瘤病毒18型l1蛋白的突变体
WO2019233400A1 (zh) 一种人乳头瘤病毒66型l1蛋白的突变体
JPH01503514A (ja) 免疫原性ポリペプチドとその精製法
CN110551186A (zh) 一种人乳头瘤病毒45型l1蛋白的突变体
WO2023179588A1 (zh) 截短的水痘-带状疱疹病毒囊膜糖蛋白gE
JP2584206B2 (ja) ヒト癌壊死因子
EP0343132A2 (en) Methods and systems for producing HIV antigens
US5262301A (en) Recombinant HTLV-III proteins and uses thereof
CN1007906B (zh) 高纯度蛋白质的制备及其应用
JP2662044B2 (ja) Dna配列、発現ベクターおよびポリペプチドの周辺質生産方法
JP3143114B2 (ja) シゾサッカロミセス・ポンベによるウイルス蛋白質の生産

Legal Events

Date Code Title Description
A300 Withdrawal of application because of no request for examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A300

Effective date: 20031007