JP3143114B2 - シゾサッカロミセス・ポンベによるウイルス蛋白質の生産 - Google Patents

シゾサッカロミセス・ポンベによるウイルス蛋白質の生産

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosacc
haromyces pombe)によるウイルス蛋白質の生産に関す
る。
〔従来の技術〕
近年、遺伝子組換え技術を用いて、エシェリキア・コ
リ(Escherichia coli)、サッカロミセス・セレビシェ
(Saccharomyces cerevisiae)などの微生物で有用なウ
イルス蛋白質を生産させるための研究が盛んに行われて
おり、その一部は既に工業化されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかし、これらの微生物によって生産されたウイルス
蛋白質の中には、抗原性や免疫原性の低いものが多い。
従って、これらのウイルス蛋白質を動物細胞で生産する
方法が試みられているが、一般に動物細胞には生産性や
生産速度が低いという欠点がある。
〔問題点を解決するための手段〕
シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces
pombe)は酵母に属するが、サッカロミセス・セレビシ
ェよりも動物細胞に近縁であると考えられている。従っ
て、シゾサッカロミセス・ポンベでウイルス遺伝子を発
現させることによって、動物細胞の場合と同様に天然型
の遺伝子産物が得られることが期待される。
しかし、シゾサッカロミセス・ポンベを用いた遺伝子
組換えに関する研究はサッカロミセス・セレビシェを用
いた場合に比べてかなり遅れており、遺伝子発現に関す
る研究はきわめて少ない。シゾサッカロミセス・ポンベ
による動物遺伝子の発現に関しては、ヒトα−アンチト
リプシン遺伝子(特開昭61−181397号)およびヒトCDC2
遺伝子〔M.G.Lee & P.Nurse,ネイチャー(Nature),3
27,31(1987)〕が報告されているにすぎない。
上述のとおり、シゾサッカロミセス・ポンベにおける
遺伝子発現の例は少ないが、これは強力なプロモーター
およびシグナルペプチドが用いられていないためである
と本発明者等は考えた。そして、本発明者らはシグナル
ペプチドをコードするDNAの3′末端にウイルス蛋白質
をコードするDNAを有するDNAをシゾサッカロミセス・ポ
ンベで機能するプロモーターの下流に連結させたDNAを
シゾサッカロミセス・ポンベに導入し、得られた形質転
換体を培養することによって、シゾサッカロミセス・ポ
ンベを用いてウイルス蛋白質を生産する方法を提供する
ものである。
即ち、本発明は、(1)シゾサッカロミセス・ポンベ
で機能できるプロモーター領域を含有するDNAの3′末
端にシグナルペプチドおよびウイルス蛋白質をコードす
るDNAを結合させた組換えDNA、(2)プロモーターがグ
リセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPD
H,GLD)遺伝子のプロモーターである上記1記載の組換
えDNA、(3)シグナルペプチドがリゾチームのシグナ
ルペプチドである請求項1記載の組換えDNA、(4)ウ
イルス蛋白質が単純ヘルペスウイルス表面抗原,B型肝炎
ウイルス表面抗原S蛋白あるいはこれらの抗原から成る
融合蛋白である上記1記載の組換えDNA、(5)上記1
〜4の組換えDNAを保持するシゾサッカロミセス・ポン
ベ形質転換体、および(6)上記5記載のシゾサッカロ
ミセス・ポンベ形質転換体を培養し、培養物中に該ウイ
ルス蛋白を生成蓄積させることを特徴とするウイルス蛋
白質の製造法に関する。
本発明の遺伝子発現に用いるプロモーターとしては、
シゾサッカロミセス・ポンベで機能するものであればい
ずれでもよく、その具体例としては、サッカロミセス・
セレビシェのグリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロ
ゲナーゼ(GAPDH,GLD)遺伝子のプロモーター、SV40プ
ロモーター〔N.F.Kauferらネイチャー(Nature),318,
78(1985)〕などが挙げられ、その他シゾサッカロミセ
ス・ポンベの遺伝子のプロモーターであれば何でもよ
い。
シグナルペプチドをコードするDNAとしては、それぞ
れのウイルス蛋白質遺伝子に本来含まれているDNAを用
いるか、あるいは動物,酵母や糸状菌の分泌蛋白遺伝子
のDNAを用いても良い。また、これらのDNAを化学合成し
たものを用いることもできる。シグナルペプチドとして
はシゾサッカロミセス・ポンベで機能するものであれば
何でもよく、例えばヒトリゾチーム、卵白リゾチームお
よびその改良型(例、特開昭64−10986号公報、特開昭6
4−10987号公報)、糸状菌のグルコアミラーゼ、酵母の
α−ファクター、キラー因子、フォスファターゼなどの
シグナルペプチドなどが挙げられる。
本発明において、シゾサッカロミセス・ポンベで発現
されるウイルス蛋白質遺伝子の産物としては、単純ヘル
ペスウイルス(HSV),水痘帯状疱疹ウイルス(VZV),
サイトメガロウイルス(CMV),EBウイルス(EBV)など
のヘルペスウイルスの抗原,B型肝炎ウイルス(HBV)の
抗原,成人T細胞白血病ウイルス(HTLV−I)やエイズ
ウイルス(HIV)などのレトロウイルスの抗原などが挙
げられる。これらの遺伝子は相補DNA(cDNA)、ジェノ
ミックDNA(genomic DNA)を用いてもよく、また化学合
成をしたものを用いてもよい。
発現させたい遺伝子のシグナルペプチドコード領域と
成熟蛋白コード領域との間にプロペプチドをコードする
領域が存在する場合には、その遺伝子をそのまま発現さ
せてもよい。また、プロペプチドコード領域が存在しな
い場合には、該プロペプチドコード領域をシグナルコー
ド領域と成熟蛋白コード領域の間に挿入し、その遺伝子
を発現させてもよい。
本発明の発現に用いるベクターとしては、シゾサッカ
ロミセス・ポンベで複製できるものなら何でもよく、具
体的にはpDB248〔D.BeachとP.Nurse,ネイチャー(Natur
e),290,140(1981)〕,pPA−4〔S.Elliottら,ジャ
ーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Bio
l.Chem.),261,2936(1986)〕,pSH19〔S.Harashima
ら,モレキュラー・アンド・セルラー・バイオロジー
(Mol.Cell.Biol.),,771(1984)〕などが挙げられ
る。
遺伝子を発現させるプラスミド(発現プラスミド)
は、上記のベクターにプロモーターを挿入し、そのプロ
モーターの下流に発現させたい遺伝子を連結するか、あ
るいは、プロモーターの下流に遺伝子を連結させたDNA
断片を該ベクターに挿入することなどによって得られ
る。この場合、遺伝子の下流にシゾサッカロミセス・ポ
ンベで機能できるターミネーターを挿入することによっ
て該遺伝子の発現量を高めることも可能である。
本発明における発現プラスミドを構築するための方法
は公知であり、文献たとえば「モレキュラー・クローニ
ング(Molecular Cloning)」(1982),コールド ス
プリング ハーバー ラボラトリー(Cold Spring Harb
or Laboratory)〕に記載されている。
発現プラスミドは酵母で遺伝子を発現できるプラスミ
ドであれば何でもよく、HSVのgDとHBVのS蛋白とからな
る融合蛋白の発現プラスミドとしては、実施例1に記載
されているpSPDS103などが挙げられる。その他、実施例
1で用いられているpSGL135や実施例2、3で用いられ
ているpSPS LP31−RcT、pSPD103 ΔHinf等も使用し得る
プラスミドとして挙げることができる。
本発明で用いるシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizo
saccharomyces pombe)の菌株としては、例えばシゾサ
ッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)A
TCC38399(h-leul−32),シゾサッカロミセス・ポンベ
TH168(h90ade6−M210 ura1 leu1)〔M.Kishida and
C.Shimada,カレント・ジェネティクス(Current Geneti
cus.),10,443(1986)〕などが挙げられ、シゾサッカ
ロミセス・ポンベATCC38399は、アメリカン・タイプ・
カルチャー・コレクション(American Type Culture Co
llection)から入手することができる。
上記のようにして得られた発現プラスミドを用いてシ
ゾサッカロミセス・ポンベを形質転換する。形質転換の
方法それ自体は公知であり、たとえばリチウム法〔伊藤
等(Ito et al.),「ジャーナル・オブ・バクテリオロ
ジー(J.Bacteriol.)」,153,163(1983)〕,プロト
プラスト法〔ヒンネン等(Hinnen et al.),「プロシ
ーディング・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ
・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)」,75,1927
(1978)〕などが挙げられる。このようにして発現プラ
スミドを有するシゾサッカロミセス・ポンベ(組換え
体)を得る。
このようにして得られた形質転換株ウイルス(組換え
体)をそれ自体公知の方法で培養する。
培地としては、例えばバークホルダー(Burkholder)
最少培地〔「アメリカン・ジャーナル・オブ・ボタニー
(Amer.J.Bot.),30,206(1943)〕あるいはその改変
培地〔東江等(Toh−e,A.et al.)「ジャーナル・オブ
・バクテリオロジー(J.Bacteriol.)」,113,727(197
3)〕,または低リン酸培地〔東江等(Toh−e,A.et a
l.)「ジャーナル・オブ・バクテリオロジー(J.Bacter
iol.)」,113,727(1973)〕などが挙げられる。培養
は通常15℃〜40℃、好ましくは24℃〜37℃で10〜168時
間、好ましくは48〜96時間行う。振とう培養でも静置培
養でも良いが、必要に応じて通気や撹拌を加えることも
できる。
本発明によれば、ウイルス蛋白質、たとえばHSV表面
抗原のgDとHBV表面抗原のS蛋白の両抗原活性をもつ融
合蛋白の分離精製は、自体公知の分離・精製法を適切に
組み合わせて行うことができる。これらの公知の分離・
精製法としては、塩析や溶媒沈殿法などの溶解度を利用
する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法およびSDS
−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分
子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィ
ーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティクロマ
トグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相
高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用す
る方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する
方法などが挙げられる。
作用及び効果 本発明ではウイルス蛋白質を高発現量で効率よく生産
させることができ、得られるウイルス蛋白質は抗原性、
免疫原性も高く、ワクチンおよび診断薬として用いるこ
とができる。たとえばHSV表面蛋白のgDと表面抗原のS
蛋白との融合蛋白は、HSV感染細胞を原料にして製造さ
れるHSV表面蛋白と酵母サッカロミセス・セレビシェで
生産されるS蛋白粒子との両生物活性を有し、HSVウイ
ルスの予防のためのワクチンとして、用いることができ
る。
なお、本願明細書や図面において、塩基やアミノ酸な
どを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commision on Bi
ochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野に
おける慣用略号に基づくものであり、その例を次に挙げ
る。またアミノ酸に関して光学異性体があり得る場合
は、特に明示しなければL−体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸 A :アデニン T :チミン G :グアニン C :シトシン SDS :ドデシル硫酸ナトリウム Gly :グリシン Ala :アラニン Val :バリン Leu :ロイシン Ile :イソロイシン Ser :セリン Thr :スレオニン Cys :システイン 1/2Cys :ハーフシスチン Met :メチオニン Glu :グルタミン酸 Asp :アスパラギン酸 Lys :リジン Arg :アルギニン His :ヒスチジン Phe :フェニールアラニン Tyr :チロシン Trp :トリプトファン Pro :プロリン Asn :アスパラギン Gln :グルタミン Apr :アンピシリン耐性遺伝子 Tcr :テトラサイクリン耐性遺伝子 なお、本発明のペプチドにおいては、そのアミノ酸配
列の一部が修飾(付加、除去、その他のアミノ酸への置
換など)されていてもよい。
実施例 以下の実施例により本発明をより具体的に説明する
が、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、実施例1で開示する各プラスミドは以下に示す
受託番号の下で各寄託機関に寄託されている。IFOは財
団法人発酵研究所、FRIは通商産業省工業技術院微生物
工業技術研究所であり、FERM BPはブダペスト条約に基
く寄託である。
実施例1 卵白リゾチームシグナルを持つ単純ヘルペスウイルス1
型gD遺伝子とB型肝炎ウィルスS遺伝子との融合遺伝子
の発現プラスミドの構築 卵白リゾチームシグナルを持つ単純ヘルペスウイルス
1型gD遺伝子の発現プラスミドpHSD103S〔特願昭63−31
7546号,昭和63年12月15日出願〕を制限酵素Xho IとSac
Iで消化して得られた約1.4kbのXho I−Sac I断片をpHS
G397のXho I−Sac I消化物と反応させてサブクローニン
グプラスミドpHSG397−103Sを得た。このプラスミドを
制限酵素Xho IとXba Iで消化して得られた1.4kb断片を
更にHinf Iで消化して0.9kb Xho I−Hinf I断片を得
た。この断片に第1図に示す化学合成したオリゴマーを
反応させ、1.0kbのXho I−Sac I断片を得た。これをpHS
G397のXho I−Sac I消化物と反応させてサブクローニン
グプラスミドpHSG397−103(HB fused型)を作成した。
このプラスミドを制限酵素Xho IとSac Iで消化して1.0k
bの単純ヘルペスウイルス1型gD遺伝子を含むXho I−Sa
c I断片を得た。
次にB型肝炎ウイルスの改変M蛋白遺伝子の発現プラ
スミドであるpGLD P31−RcTを制限酵素Sal Iで消化し、
得られたSal I断片をpUC18のSal I消化物と反応させた
サブクローニングプラスミドpUC18−P31−RcTを制限酵
素Sty Iで消化して0.28kbのSty I断片を得た。この断片
にクレノーフラグメントを作用させ、更にSac Iリンカ
ーpCGAGCTCGをT4DNAリガーゼで連結した後、制限酵素Sa
c IとXba Iで消化して70bpのSac I−Xba I断片を得た。
これとpHSG396のSac I−Xba I消化物とを反応させ、サ
ブクローニングプラスミドpHSG396−70(Sac I−Xba
I)を作製した。このプラスミドを制限酵素Sac IとXba
Iで消化して得た70bp Sac I−Xba I断片と、上記プラス
ミドpUC18−P31−RcTを制限酵素Xba IとCla Iで消化し
て得た710bp Xba I−Cla I断片をpHSG396のSac I−Cla
I消化物と反応させたサブクローニングプラスミドpHSG3
96−680(Sac I−Cla I)を得た。このプラスミドを制
限酵素Cla Iで消化し、更にクレノーフラグメントを作
用させ、制限酵素Sac Iで消化して、680bpのB型肝炎ウ
イルスS蛋白遺伝子を含むDNA断片を得た。
pGFE213を制限酵素Sac Iで消化し、T4DNAポリメラー
ゼを作用させ、更に制限酵素Xho Iで消化して得たベク
ターに、上記単純ヘルペスウイルス1型gD遺伝子を含む
1.0kb Xho I−Sac I断片とB型肝炎ウィルスS蛋白遺伝
子を含む680bpのDNA断片とを反応させてサッカロミセス
・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)形質転換用
発現プラスミドpHSDS103を作製した。
このプラスミドを制限酵素BamH IとCla IとHind III
で消化して、2.6kbの単純ヘルペスウイルス1型gD遺伝
子とB型肝炎ウィルスS蛋白遺伝子の融合遺伝子とGLD
プロモーターとを含むBamH I−Cla I断片を得た。
次にpGLD P31−RcTを制限酵素Cla IとXho Iで消化し
てPGKターミネーターを含む0.3kb Cla IとXho I断片を
得、上記2.6kb BamH I−Cla I断片と共にpHSG396のBamH
I−Xho I消化物と反応させ、サブクローニングプラス
ミドpHSG396−103(gD+HB)を得た。このプラスミドを
制限酵素Xho Iで消化して、単純ヘルペス1型gD遺伝子
とB型肝炎ウィルスS蛋白遺伝子の融合遺伝子とPGKタ
ーミネーターを含む1.8kbのXho I断片を得た。
pDB248〔D.BeachとP.Nurse,ネイチャー(Nature),2
90,140(1981)〕を制限酵素Xho Iで消化し、9.9kbのDN
A断片を分離し、更にクレノーフラグメントを反応さ
せ、T4DNAリガーゼを用いてプラスミドpSPE23を作製し
た。
ヒトリゾチームのcDNA発現プラスミドpGHL130〔K.Yos
himuraらバイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・
リサーチ・コミュニケーションズ(Biochem.Biophys.Re
s.Commun.),150,794(1988)〕を制限酵素BamH Iで消
化し、更に制限酵素Xho Iで部分分解して約2.6kbのGLD
プロモーターとヒトリゾチームのcDNAを含んだBamH I−
Xho I DNA断片を得る。次に第2図に示すBamH I−Xho I
アダプター 5′TCGAGCCCG3′ 3′CGGGCCTAG5′ をT4DNAリガーゼにより連結し、制限酵素BamH Iで消化
して、約2.6kbのGLDプロモーターとヒトリゾチームcDNA
を含むBamH I DNA断片を得た。この断片と上記プラスミ
ドpSPE23のBamH I消化物とを反応させて、シゾサッカロ
ミセス・ポンベ用ヒトリゾチームcDNA発現プラスミドpS
GL135を得た(第2図参照)。
pSGL135を制限酵素Xho Iで消化してヒトリゾチームcD
NAを除いた11.7kbベクターと上記1.8kb Xho I断片を反
応させ、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharo
myces pombe)形質転換用発現プラスミドpSPDS103を作
製した。
次に、上記プラスミドで大腸菌DH1を形質転換し、そ
の形質転換体DH1/pSPDS103を得た。
実施例2 形質転換体の作製 実施例1で得たpSPDS103を用いてリチウム法〔Ito
ら,(J.Bacteriol.),153,163(1983)〕でシゾサッ
カロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)ATC
C38399の形質転換を行うことにより、形質転換体シゾサ
ッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)A
TCC38399/pSPDS103を得た。
実施例3 実施例2で得られた形質転換体シゾサッカロミセス・
ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)ATCC38399/pSPDS
103をショ糖8.0%、グルコース1.0%、硫安0.5%、KH2P
O40.040%を含む改変バークホルダー(Burkholder)培
地〔A.Toh−eら、ジャーナル・オブ・バクテリオロジ
ー(J.Bacteriol.),113,727(1983)〕に接種し、24
℃で3日間振とう培養した。この培養液1mlを4mlの同じ
培養を含む試験管に移し、24℃で1日間振とう培養し
た。次に、その培養液2mlを18mlの同じ培地を含む200ml
容三角フラスコに移し、24℃で3日間振とう培養した。
得られた培養液を遠心分離し、その菌体を得た。
1mlブロスあたりの菌体に100μのノボザイム液〔5m
g/mlノボザイム(ノボ社,デンマーク)−1,2Mソルビト
ール−50mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.4)−14mM
2−メルカプトエタノール〕を加え撹拌した後、室温で
3時間放置、更に400μのトリトンX−100液〔0.1%
トリトンX−100−50mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.
4)−1mM PMSF〕を加え撹拌し、室温で3時間放置後、1
2000×gで10分間遠心して得た上清を用いてオースザイ
ム(ダイナボット社)キットでHBsAg価を測定したとこ
ろ、1ブロスあたり450μgの値を得た。
また培養菌体150mgを500μの緩衝液(7M尿素−100m
M リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.2)−1mM APMSF−10m
M EDTA〔pH8.1〕)に懸濁しビーズ(シンマルエンター
プライゼス社製)1gを加えて30分間室温でボルテックス
で激しく撹拌し、10000×gで10分間遠心して得た上清
にレムリのサンプルバッファーを加え100℃10分間加熱
してウエスタン・ブロッティングに用いた。
単純ヘルペス1型ウイルスポリクロナール抗体を用い
たウエスタン・ブロッティングは、DAKAPATTS社のウサ
ギ抗単純ヘルペス1型ウイルス(herpes viurs type
1)(Maclntype)抗血清、ホースラディッシュ・パーオ
キシダーゼ(horseradish peroxidase)標識抗ウサギ抗
体および展開剤(development reagent)(Bio rad社)
を用いて行った。また、抗HBsAgモノクロナール抗体を
用いたウエスタン・ブロッティングは、抗HBsAgモノク
ロナール抗体(マウス)、ホースラディッシュ パーオ
キシダーゼ標識抗マウス抗体および展開剤(Bio rad
社)を用いて行った。
単純ヘルペス1型ウイルスポリクロナール抗体を用い
た場合、又抗HBsAgモノクロナール抗体を用いた場合共
に特異的に反応するバンドが検出された。一方、サッカ
ロミセス・セレビシェ(Saccharomyces cerevisiae)NA
74−3A(ρ)を、実施例1で得たpHSDS103で形質転換
して得られたサッカロミセス・セレビシェ(Saccharomy
ces cerevisiae)NA74−3A(ρ)/pHSDS103は、ウエ
スタン・ブロッティングにおいてもオースザイムキット
においても発現が確認されなかった(検出限界未満)。
実施例4 卵白リゾチームシグナルを有するHSV−1型深山株trunc
ated gD遺伝子発現プラスミドの構築 卵白リゾチームシグナル遺伝子とHSV−1型深山株gD
遺伝子を有するプラスミドベクターpHSG397LgD(特開平
2−182196)を制限酵素Xho IとXba Iで消化して約1.35
kbのDNA断片を得、さらに制限酵素Hinf Iで消化して約
0.91kbのXho I−Hinf I断片を得た。
次に、第3図に示す12bpの合成リンカーを用いて、サ
ブクローニングプラスミドpHSG397LgDΔHinfを作製し、
更に、約0.92kbのXho I−Sac I DNA断片を調製し、プラ
スミドpGFE213のXho I−Sac I消化物と反応させること
により発現プラスミドpHSD103ΔHinfを得た(第3
図)。このプラスミドを制限酵素Xho IとCla Iで消化し
て約0.93kbのXho I−Cla I DNA断片を得た。
次に、HSV−1型gD遺伝子とHBVのS遺伝子の融合遺伝
子の酵母における発現プラスミドpSPDS103を制限酵素Hi
nd IIIとCla Iで消化してPGKのターミネーターを含む約
0.6kbのCla I−Hind III DNA断片を得た。
また酵母におけるヒトリゾチーム発現プラスミドであ
るpSGL135を制限酵素Xho IとHind IIIで消化して約10kb
のXho I−Hind IIIベクターを得、卵白リゾチームシグ
ナルの付加したgD遺伝子を含む約0.93kbのXho I−Cla I
断片とPGKターミネーターを含む約0.6kbのCla I−Hind
III断片を反応させて、シゾサッカロミセス・ポンベ用H
SV−1型gD遺伝子の発現プラスミドpSPD103ΔHinfを得
た(第3図)。
実施例5 卵白リゾチームシグナルを有するHBVのM遺伝子発現プ
ラスミドの構築 卵白リゾチームシグナル遺伝子とHBVのM遺伝子を有
するプラスミドpGLD LP31−RcT(特開平2−449)を制
限酵素Xho IとCla Iで消化し、約0.9kbのXho I−Cla I
DNA断片を得た。
次にHSV−1型gD遺伝子とHBVのS遺伝子の融合遺伝子
の酵母における発現プラスミドpSPDS103を制限酵素Hind
IIIとCla Iで消化してPGKターミネーターを含む約0.6k
bのCla I−Hind III DNA断片を得た。
また酵母におけるヒトリゾチーム発現プラスミドであ
るpSGL135を制限酵素Xho IとHind IIIで消化して約10kb
のXho I−Hind IIIベクターを得、卵白リゾチームシグ
ナルの付加したM遺伝子を含む約0.9kbのXho I−Cla I
断片とPGKターミネーターを含む約0.6kbのCla I−Hind
III断片を反応させて、シゾサッカロミセス・ポンベ用H
BVのM遺伝子の発現プラスミドpSPS LP31−RcTを得た
(第4図)。
実施例6 形質転換体の作製 実施例4で得たpSPD103ΔHinf及び実施例5で得たpSP
S LP31−RcTを用いてリチウム法〔Itoら,ジャーナル・
オブ・バクテリオロジー(J.Bacteriol.),153,163(1
983)〕で、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosacch
aromyces pombe)ATCC38399の形質転換を行うことによ
り、形質転換体シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosa
ccharomyces pombe)ATCC38399/pSPD103ΔHinfおよびシ
ゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pomb
e)ATCC38399/pSPS LP31−RcTを得た。
実施例7 HSV−1深山型truncated gD遺伝子とHBVのM遺伝子の酵
母における発現 実施例6で得られた形質転換体シゾサッカロミセス・
ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)ATCC38399/pSPD1
03ΔHinfおよびシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosa
ccharomyces pombe)ATCC38399/pSPS LP31−RcTをショ
糖8.0%、グルコース1.0%、硫安0.5%、KH2PO40.040%
を含む改変バークホルダー(Burkholder)培地〔A.Toh
−eら、ジャーナル・オブ・バクテリオロジー(J.Bact
eriol.),113,727(1983)〕に接種し、24℃で3日間
振とう培養した。この培養液1mlを4mlの同じ培地を含む
試験管に移し、24℃で1日間振とう培養した。次に、そ
の培養液2mlを18mlの同じ培地を含む200ml容三角フラス
コに移し、24℃で3日間振とう培養した。得られる培養
液を遠心分離し、その菌体を得た。
菌体約150mgを500μの緩衝液〔100mMリン酸ナトリ
ウム(pH7.4),7.0M尿素,1mM p−アミジノフェノル メ
タンスルホニル フルオライド ハイドロクロライ
ド〕,10mM EDTA(pH8.0)〕に懸濁し、ガラスビーズ1g
を加え、Vortexで約20分激しく混合した。10,000rpm,5
分間遠心分離にかけて、上澄液を得た。この抽出液に1/
3量の4倍濃度のLaemmli bufferを加え、100℃、10分間
加熱した。
冷却後、10,000rpm,5分間遠心分離にかけて、上澄液
を得た。該抽出液80μをSDS−ポリアクリルアミドゲ
ルで電気泳動にかけ、さらに電気的にニトロセルロース
フィルターにブロッティングした。
形質転換体シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosacc
haromyces pombe)ATCC38399/pSPD103ΔHinfについて
は、上記フィルターにDAKAPATTS社のウサギ抗単純ヘル
ペス1型ウィルス(Maclntype)抗血清を反応させ、次
にホースラディッシュ・パーオキシダーゼ標識抗ウサギ
抗体を反応させ、展開剤(Bio rad社)で発色させると
特異的なバンドが検出された。
また、形質転換体シゾサッカロミセス・ポンベ(Schi
zosaccharomyces pombe)ATCC38399/pSPS LP31−RcTに
ついては、上記フィルターに、抗HBSモノクローナル抗
体を反応させ、次にホースラディッシュ・パーオキシダ
ーゼ標識抗マウス抗体を反応させ、展開剤(Bio rad
社)で発色させると特異的なバンドが検出された。
実施例4で得た発現プラスミドpHSD103ΔHinfで形質
転換して得た形質転換体サッカロミセス・セレビシェNA
74−3A(ρ)/pHSD103ΔHinfとシゾサッカロミセス・
ポンベATCC38399/pSPD103ΔHinfを比較しところウエス
タンブロッティングにより、シゾサッカロミセス・ポン
ベATCC38399/pSPD103ΔHinfの方が発現量が高いことが
確認された。
また、実施例5の発現プラスミドpGLD LP31−RcTで形
質転換して得た質転換体サッカロミセス・セレビシェNA
74−3A(ρ)/pGLD LP31−RcTとシゾサッカロミセス
・ポンベATCC38399/pSPS LP31−RcTを比較したところ、
ウエスタンブロッティングにより、シゾサッカロミセス
・ポンベATCC38399/pSPS LP31−RcTの方が発現量が高い
ことが確認された。
【図面の簡単な説明】
第1図はシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharo
myces pombe)形質転換用発現プラスミドpSPDS103の構
築図であり、第2図は第1図中に開示されるシゾサッカ
ロミセス・ポンベ用ヒトリゾチームcDNA発現プラスミド
pSGL135の構築図である。第3図、第4図は本発明の実
施例4および5で得られる発現プラスミドpSPD103ΔHin
fおよびpSPS LP31−RcTの構築図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI (C12P 21/02 C12R 1:645) 微生物の受託番号 FERM BP−2095 微生物の受託番号 FERM BP−2802 微生物の受託番号 FERM BP−1744 微生物の受託番号 FERM BP−3043 微生物の受託番号 FERM BP−3044 微生物の受託番号 FERM BP−3045 (56)参考文献 特開 昭62−51993(JP,A) 特開 昭61−181397(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12N 15/62 - 15/869 C12N 15/33 C12N 1/19 C12P 21/02 BIOSIS(DIALOG) MEDLINE(STN) WPI(DIALOG)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】シゾサッカロミセス・ポンベで機能できる
    グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝
    子のプロモーター領域を含有するDNAの3′末端にリゾ
    チームのシグナルペプチドおよびウイルス蛋白質誘導体
    をコードするDNAを結合させた組換えDNA。
  2. 【請求項2】ウイルス蛋白質誘導体が単純ヘルペスウイ
    ルス表面蛋白、B型肝炎ウイルス表面抗原あるいは融合
    抗原蛋白である請求項1記載の組換えDNA。
  3. 【請求項3】融合抗原蛋白がB型肝炎ウイルス表面蛋白
    Sのアミノ末端に単純ヘルペスウイルス表面蛋白が結合
    した融合蛋白である請求項2記載の組換えDNA。
  4. 【請求項4】請求項1、2又は3記載の組換えDNAを保
    持する形質転換体。
  5. 【請求項5】宿主がシゾサッカロミセス・ポンベである
    請求項4記載の形質転換体。
  6. 【請求項6】請求項5記載の形質転換体を培養し、培養
    物中にウイルス蛋白質誘導体を生成蓄積せしめ、これを
    採取することを特徴とするウイルス蛋白質誘導体の製造
    法。
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