JPH0986131A - サスペンション制御装置 - Google Patents

サスペンション制御装置

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Publication number
JPH0986131A
JPH0986131A JP2336296A JP2336296A JPH0986131A JP H0986131 A JPH0986131 A JP H0986131A JP 2336296 A JP2336296 A JP 2336296A JP 2336296 A JP2336296 A JP 2336296A JP H0986131 A JPH0986131 A JP H0986131A
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JP
Japan
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damping force
speed
speed ratio
suspension
vehicle
Prior art date
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Pending
Application number
JP2336296A
Other languages
English (en)
Inventor
Takaaki Enomoto
高明 榎本
Masato Kawai
真人 河井
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Motor Corp
Original Assignee
Toyota Motor Corp
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Publication date
Application filed by Toyota Motor Corp filed Critical Toyota Motor Corp
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Publication of JPH0986131A publication Critical patent/JPH0986131A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ばね上速度と相対速度との速度比に基づいて
減衰力を変更する際の乗り心地を確保する。 【解決手段】 ばね上速度Zdと相対速度Ydとから演
算した速度比Zd/Yd(実速度比)が時刻t0 から図
示するように推移していた場合、時刻t1 でブレーキ操
作がされると、それ以降はアンチダイブを図るためにゲ
インGD は2倍とされる。従って、減衰力算出に用いる
最終速度比は、このゲインGD の乗算を経て実速度比を
補正した速度比となる。各時刻の最終速度比から、速度
比と減衰力との関係を示すグラフを用いて減衰力を求め
る。この求めた減衰力は、時刻t1〜t2 の間のうち、
時刻t1 〜t3 および時刻t4 〜t2 の間では、ゲイン
GDの乗算補正による最終速度比からの演算を通して減
衰力が増大(補正)される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両のばね上部材
とばね下部材との間に配設され両部材を懸架する懸架手
段を備え、該懸架手段の減衰力を変更制御するサスペン
ション制御装置に関し、詳しくは、ばね上部材の上下方
向の速度と、この両部材の上下方向の相対速度との比で
ある速度比に応じて減衰力を変更制御するサスペンショ
ン制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】この種のサスペンション制御装置は、い
わゆるスカイフック制御理論に基づいて減衰力を変更制
御する。つまり、ばね上部材の上下方向の速度(以下、
この速度を説明の便宜上単にばね上速度という)とこの
両部材の上下方向の相対速度(以下、この相対速度を説
明の便宜上単に相対速度という)との比を速度比として
求め、この速度比に応じて減衰力を変更制御することで
スカイフックダンパを構成し、路面からの上下入力に基
づくばね上部材の上下振動の抑制効果を高めている。そ
して、近年では、このスカイフック制御理論に基づく減
衰力変更に、従来から行なわれていた種々の減衰力変更
制御を加味して、減衰力制御を総合的に行なう技術が提
案されている。この従来からの減衰力変更制御として
は、車両の姿勢変化を抑制して操縦安定性の向上を図る
ための減衰力制御(アンチロール制御等)や乗り心地の
確保のために車速に応じて減衰力を変更する減衰力制御
などがある。
【0003】例えば、特開平3−276811では、ス
カイフック制御理論に基づく減衰力を演算する際に、車
両運転者の操作により起きる車両の姿勢変化(ロール,
ダイブ,スクォート等)を、ばね上部材のばね上速度に
各輪ごとに重み付けを行なって反映させている。このた
め、姿勢変化が生じた場合には、スカイフック制御理論
に基づく減衰力演算のための減衰係数を大きくし、より
大きな減衰力を発揮する。この際、各輪におけるばね上
部材ごとに、ばね上速度の運動モード分解と、重み係数
の積算を経た運動モード再合成とが行列式を用いて行な
われ、この運動モード再合成後のばね上部材のばね上速
度が速度比演算に用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
従来のサスペンション制御装置では、運動モード再合成
後の各輪におけるばね上部材のばね上速度には、運動モ
ード再合成の際の行列式の展開結果から、他の輪におけ
るばね上部材についてのばね上速度が反映する。このた
め、ある輪についての速度比の演算結果が他の輪につい
てのばね上部材のばね上速度の影響を受け、このある輪
についてのばね上速度が、上記のように重み付けによる
姿勢変化の反映を行なわない場合におけるばね上速度に
比べて、その値は勿論、その符号も異なる速度となる場
合がある。
【0005】ところで、スカイフック制御では、その制
御理論に則って以下のように減衰力の変更制御がなされ
る。
【0006】ばね上速度と相対速度がそれぞれ異符号
(例えば、ばね上速度は上方向を正に下方向を負に、お
よび相対速度はショックアブソーバが伸長行程にあると
きを正に、圧縮行程にあるときを負とする)の値で速度
比が負となる場合(具体的には、ばね上速度と相対速度
の一方が正で他方が負で速度比が負の場合)には、ショ
ックアブソーバの減衰力は、ばね上に対して加振力とし
て作用するので、減衰力をその下限値(フルソフト)と
する。この減衰力の低減により、ショックアブソーバの
減衰力が加振力として作用することが回避されるので、
車両の乗り心地が向上する。
【0007】一方、ばね上速度と相対速度がそれぞれ同
符号の値で速度比が正となる場合(具体的には、ばね上
速度と相対速度の両方が正或いは負で速度比が正の場
合)には、ショックアブソーバの減衰力は、ばね上に対
して制振力として作用するので、減衰力をハード側の値
とする。この際、速度比に応じてショックアブソーバの
減衰力をハード側で定める。これにより、制振性を引き
続き発揮してばね上の振動の制振を図る。なお、速度比
が所定の値(正の値)を上回る場合には、減衰力はその
最大値(フルハード)とされる。そして、フルソフトか
らハード側の減衰力への変更は、制御理論構成上、相対
速度の符号が反転するとき、いわゆるゼロクロスポイン
トで行なわれることが望ましい。
【0008】このため、上記したようにある輪について
のばね上速度が重み付けを受けてそのが符号異なる速度
となると、当該ある輪についてのこのばね上速度では相
対速度の符号反転が起きないのに、重み付け後のばね上
速度では相対速度の符号反転が起きることがある。よっ
て、本来ならば減衰力の変更制御の実行タイミングでは
ないときに、重み付け後のばね上速度の場合にあっては
減衰力の変更制御が実行されることになる。従って、減
衰力の変更時期にズレが起きて、乗り心地の悪化を招い
てしまう。
【0009】ところで、減衰力の変更時期のズレ(減衰
力の変更制御の実行タイミングのズレ)を解消すれば、
上記の不具合はある程度改善される。よって、車両の姿
勢変化を反映させる際に、ばね上部材のばね上速度への
重み付けを止め、次のように構成することも可能であ
る。即ち、ロール,ダイブ,スクォート等の姿勢変化を
抑制するための減衰力をこれら姿勢変化ごとに求め、こ
うして求めた減衰力(アンチロール,アンチダイブ,ア
ンチスクォート等に求められる減衰力)とスカイフック
制御の理論に則った減衰力とを比較し、その最大となっ
た減衰力を発揮するよう構成する。なお、様々な制御に
必要な減衰力をそれぞれ求め、その内の最大の減衰力を
発揮するよう構成することは、特開昭62−12590
8に見られるようによく知られている。
【0010】しかし、このように最大減衰力を発揮する
構成にあっても、以下のような問題が起きることが予測
される。ばね上速度と相対速度との速度比の符号が負の
時には、既述したようにショックアブソーバの減衰力は
ばね上に対して加振力として作用するので、減衰力を速
度比に応じて低減させないとばね上部材に不用意な振動
を引き起こす。従って、速度比の符号が負である場合
に、スカイフック制御の理論に則った減衰力を越える減
衰力をアンチロール,アンチダイブ,アンチスクォート
等のために発揮させてしまうと、ショックアブソーバが
高減衰力となってばね上部材に不用意な振動を引き起こ
し、乗り心地の悪化を招いてしまう。
【0011】本発明は、上記問題点を解決するためにな
され、ばね上速度と相対速度との速度比に基づいて減衰
力を変更する際の乗り心地を確保することを目的とす
る。
【0012】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】か
かる課題を解決するため、第1の発明のサスペンション
制御装置は、車両のばね上部材とばね下部材との間に配
設され両部材を懸架する懸架手段を備え、該懸架手段の
減衰力を変更制御するサスペンション制御装置であっ
て、前記ばね上部材の上下方向の速度と、前記ばね上部
材とばね下部材とについての上下方向の相対速度との比
を速度比として演算する速度比演算手段と、前記懸架手
段の減衰力を、該演算した速度比に応じた第1の減衰力
に制御する制御手段と、前記車両の走行状態を検出する
走行状態検出手段と、前記制御手段により制御される際
の前記第1の減衰力を、該検出した走行状態に応じて補
正する減衰力補正手段と、を備える。
【0013】上記構成を有する第1の発明のサスペンシ
ョン制御装置では、ばね上部材の上下方向の速度(以
下、単にばね上速度という)と、ばね上部材とばね下部
材とについての上下方向の相対速度(以下、単に相対速
度という)との比を速度比として速度比演算手段により
演算する。そして、この演算した速度比に応じた第1の
減衰力に、制御手段により懸架手段の減衰力を制御す
る。しかしながら、懸架手段の減衰力を第1の減衰力に
一律に制御するのではなく、走行状態検出手段の検出し
た走行状態に応じて、減衰力補正手段により第1の減衰
力を補正する。
【0014】よって、懸架手段の減衰力を速度比に応じ
て制御する際に、車両の走行状態を第1の減衰力の補正
を通して減衰力制御に反映させて減衰力の大きさを変更
するが、減衰力変更のタイミングにはズレをもたらさな
い。このため、第1の発明のサスペンション制御装置に
よれば、懸架手段の減衰力を速度比に応じて制御する際
に、乗り心地ばかりか走行安定性をも確保することがで
きる。
【0015】上記の第1の発明のサスペンション制御装
置において、前記走行状態検出手段は、車両に発現する
ロール若しくはピッチを検出する手段である。
【0016】一般に、車両に発現したロールやピッチは
車両の乗員に比較的敏感に体感されるので、乗員は不快
感を覚える。しかし、この構成によれば、車両に発現し
たロールやピッチに応じて第1の減衰力を補正するの
で、この減衰力の補正を通してロールやピッチに対する
制振性を高めてロールやピッチを抑制することができ
る。しかし、このように減衰力を補正するものの、減衰
力変更は速度比に応じてなされるので、減衰力変更のタ
イミングにはズレをもたらさない。このため、この構成
のサスペンション制御装置によれば、ロールやピッチに
起因する乗員の不快感をより確実に緩和して乗り心地を
高めることができると共に、走行安定性をも確保するこ
とができる。
【0017】また、上記の第1の発明のサスペンション
制御装置において、前記減衰力補正手段は、前記懸架手
段の伸縮状態を判別する手段と、前記第1の減衰力を、
前記懸架手段が伸び側にあるときの方が縮み側にあると
きよりも増大する側に、前記走行状態に応じて補正する
手段とを有する。
【0018】この構成では、第1の減衰力を走行状態に
応じて補正するに当たり、懸架手段が伸び側にあるとき
の補正後の減衰力を懸架手段が縮み側にあるときよりも
増大させる。ところで、制振性の向上を通した乗り心地
の向上には、懸架手段の伸び側での減衰力が縮み側での
減衰力より大きく寄与する。よって、上記の減衰力補正
を行なうことでより確実に乗り心地を向上させることが
できる。
【0019】なお、懸架手段の縮み側ではばね下部材側
で懸架手段における圧力が高まるので、特に複合路面
(低周波成分に高周波成分が重畳した振動を発生する路
面)で懸架手段の縮み側において不用意に減衰力を増大
補正すると、複合路面からの入力のばね上部材への高周
波伝達ゲンイが大きくなってこの入力がばね上部材に伝
達され、乗り心地の向上を十分図れない虞がある。しか
し、この構成では、懸架手段が縮み側にあるときの補正
の程度は伸び側にあるときより小さいので、複合路面に
おける不用意な乗り心地の悪化を招かない。そして、制
振性の向上を通した乗り心地の向上に大きく寄与する懸
架手段の伸び側では第1の減衰力を走行状態に応じて補
正するので、よりきめ細かな減衰力制御を通して乗り心
地を一層向上させることができる。
【0020】この構成の場合、懸架手段が伸び側にある
ときのみ第1の減衰力の補正を行ない、懸架手段が縮み
側にあるときには補正を行なわないようにすることもで
きる。
【0021】第2の発明のサスペンション制御装置は、
車両のばね上部材とばね下部材との間に配設され両部材
を懸架する懸架手段を備え、該懸架手段の減衰力を変更
制御するサスペンション制御装置であって、前記ばね上
部材の上下方向の速度と、前記ばね上部材とばね下部材
とについての上下方向の相対速度との比を速度比として
演算する速度比演算手段と、前記懸架手段の減衰力を、
該演算した速度比に応じた第1の減衰力に制御する制御
手段と、前記車両の走行状態を検出し、該検出した走行
状態に応じた第2の減衰力を演算する第2減衰力演算手
段と、前記速度比演算手段の演算した速度比の符号を判
別し、該速度比の符号が正である場合に前記第2の減衰
力が前記第1の減衰力に勝れば、前記制御手段により制
御される際の前記懸架手段の減衰力を、前記第1の減衰
力に替えて前記第2の減衰力に変更する第2減衰力変更
手段と、を備える。
【0022】上記構成を有する第2の発明のサスペンシ
ョン制御装置では、ばね上速度と相対速度との比を速度
比として速度比演算手段により演算し、この演算した速
度比に応じた第1の減衰力に、制御手段により懸架手段
の減衰力を制御する。しかし、所定条件下では、懸架手
段の減衰力は、第2減衰力演算手段が検出した走行状態
に応じて演算した第2の減衰力に制御される。
【0023】つまり、制御手段により制御される際の懸
架手段の減衰力は、速度比の符号が正である場合に第2
の減衰力が第1の減衰力に勝れば、第2減衰力変更手段
により第1の減衰力に替えて第2の減衰力に変更され
る。そして、速度比の符号が正であっても第1の減衰力
が勝れば、或いは速度比の符号が負であれば、懸架手段
の減衰力は制御手段により第1の減衰力に制御される。
従って、速度比の符号が負であるために減衰力がばね上
に対して加振力として作用する際には、速度比から得ら
れる第1の減衰力にしか懸架手段の減衰力は制御され
ず、この第1の減衰力を越える第2の減衰力になること
はない。
【0024】このため、懸架手段の減衰力を速度比に応
じて制御する際に、速度比の符号が正で且つ第2の減衰
力が第1の減衰力に勝る場合には、第1の減衰力に替わ
る第2の減衰力への変更を通して車両の走行状態に応じ
た制振性を減衰力制御に反映させるが、減衰力変更のタ
イミングにはズレをもたらさない。その一方、速度比の
符号が負である場合を含んだその他の場合には、懸架手
段の減衰力は速度比に応じた第1の減衰力に制御され、
減衰力の大きさはもとより減衰力変更のタイミングにズ
レはない。よって、第2の発明のサスペンション制御装
置によっても、懸架手段の減衰力を速度比に応じて制御
する際に、乗り心地ばかりか走行安定性をも確保するこ
とができる。
【0025】第3の発明のサスペンション制御装置は、
車両のばね上部材とばね下部材との間に配設され両部材
を懸架する懸架手段を備え、該懸架手段の減衰力を変更
制御するサスペンション制御装置であって、前記ばね上
部材の上下方向の速度と、前記ばね上部材とばね下部材
とについての上下方向の相対速度との比を速度比として
演算する速度比演算手段と、前記懸架手段の減衰力を、
該演算した速度比に応じた第1の減衰力に制御する制御
手段と、前記ばね下部材に起きる上下方向の振動状態を
検出し、該検出した振動状態に応じた第3の減衰力を演
算する第3減衰力演算手段と、前記速度比演算手段の演
算した速度比の符号を判別し、該速度比の符号が負であ
る場合には、前記制御手段により制御される際の前記懸
架手段の減衰力を、前記第1の減衰力に替えて前記第3
の減衰力に変更する第3減衰力変更手段と、を備える。
【0026】上記構成を有する第3の発明のサスペンシ
ョン制御装置では、ばね上速度と相対速度との比を速度
比として速度比演算手段により演算し、この演算した速
度比に応じた第1の減衰力に、制御手段により懸架手段
の減衰力を制御する。しかし、所定条件下では、懸架手
段の減衰力は、ばね下部材に起きる上下方向の振動状態
に応じて第3減衰力演算手段が演算した第3の減衰力に
制御される。
【0027】つまり、制御手段により制御される際の懸
架手段の減衰力は、速度比の符号が負である場合には、
第3減衰力変更手段により第1の減衰力に替えて第3の
減衰力に変更される。従って、懸架手段の減衰力を速度
比に応じて制御するに当たって、その速度比の符号が負
であるために減衰力がばね上に対して加振力として作用
するので、その際には乗り心地を確保するべく減衰力は
フルソフトとされることがよいのであるが、路面状態等
によりばね下部材に共振状態の振動が誘起される場合に
は、第1の減衰力に替わる第3の減衰力への変更を通し
てばね下部材の上下方向の振動状態を減衰力制御に反映
させ、路面への接地性確保に必要な高い減衰力を得るこ
とができる。その一方、速度比の符号が正である場合に
は、懸架手段の減衰力は速度比に応じた第1の減衰力に
制御され、減衰力の大きさはもとより減衰力変更のタイ
ミングにズレはない。よって、第3の発明のサスペンシ
ョン制御装置によれば、懸架手段の減衰力を速度比に応
じて制御する際に、乗り心地を確保することができる。
【0028】
【発明の他の態様】本発明は、以下のような他の態様を
採ることも可能であり、第1の態様は、車両のばね上部
材とばね下部材との間に配設され両部材を懸架する懸架
手段を備え、該懸架手段の減衰力を変更制御するサスペ
ンション制御装置であって、前記ばね上部材の上下方向
の速度と、前記ばね上部材とばね下部材とについての上
下方向の相対速度との比を速度比として演算する速度比
演算手段と、該演算した速度比に応じた第1の減衰力を
演算する第1減衰力演算手段と、前記車両の走行状態を
検出し、該検出した走行状態に応じた第2の減衰力を演
算する第2減衰力演算手段と、前記第1,第2の減衰力
の大小比較を行ない、大きい方の減衰力に前記懸架手段
の減衰力を制御する減衰力制御手段と、前記速度比演算
手段の演算した速度比の符号を判別し、該速度比の符号
が負である場合には、前記減衰力制御手段により制御さ
れる際の前記懸架手段の減衰力を、前記第1,第2の減
衰力の大小に拘らず前記第1の減衰力に制御する第2減
衰力制御手段と、を備える。
【0029】この第1の態様では、ばね上速度と相対速
度との比を速度比として速度比演算手段により演算し、
この速度比に応じて第1減衰力演算手段の演算した第1
の減衰力と、車両の走行状態を検出しこの走行状態に応
じて第2減衰力演算手段の演算した第2の減衰力とを、
その大小比較を経て使い分ける。つまり、懸架手段の減
衰力は、第1,第2の減衰力のうちの大きい方の減衰力
に減衰力制御手段により制御される。しかし、速度比演
算手段の演算した速度比の符号が負である場合には、懸
架手段の減衰力は、第1,第2の減衰力の大小に拘らず
第1の減衰力に第2減衰力制御手段により制御される。
【0030】従って、速度比の符号が負であるために減
衰力がばね上に対して加振力として作用する際には、制
振性を発揮するために速度比から得られる第1の減衰力
にしか懸架手段の減衰力は制御されず、第2の減衰力に
なることはない。
【0031】このため、第1の減衰力が第2の減衰力よ
り大きい場合と速度比の符号が負である場合には、懸架
手段の減衰力は速度比に応じてその第1の減衰力に制御
され、この場合には、減衰力の大きさはもとより減衰力
変更のタイミングにズレはない。その一方、速度比の符
号が負でないときに第2の減衰力が大きければ、懸架手
段の減衰力のこの第2の減衰力への制御を通して、車両
の走行状態を減衰力制御に反映させる。よって、第1の
態様のサスペンション制御装置によっても、懸架手段の
減衰力を速度比に応じて制御する際に、乗り心地を確保
することができる。
【0032】
【発明の実施の形態】次に、本発明に係るサスペンショ
ン制御装置の実施の形態を実施例に基づき説明する。図
1は、第1実施例のサスペンション制御装置10の全体
構成を概略的に示すブロック図である。
【0033】図示するように、サスペンション制御装置
10は、図示しない左右の前輪および後輪にそれぞれ対
応して、ショックアブソーバ11a〜11dと、主エア
ーチャンバ12a〜12dおよび副エアーチャンバ13
a〜13dを有する。なお、以下の説明に際しては、各
輪を区別して説明する場合には数字の主符号にアルファ
ベットの補助符号a〜dを付すが、各輪共通の説明につ
いては補助符号a〜dを省略することとする。
【0034】ショックアブソーバ11は、ばね下部材で
ある車輪とばね上部材である図示しない車体との間に配
設され、減衰力を可変に車輪と車体とを懸架する。ショ
ックアブソーバ11は、減衰力を変更する際の制御対象
機器となるステッピングモータ14を備え、このステッ
ピングモータ14を含む図示しない減衰力可変機構を内
蔵する。なお、図1においては、ステッピングモータ1
4をショックアブソーバ11の外部に便宜上示したが、
このステッピングモータ14が減衰力可変機構と共にシ
ョックアブソーバ11に内蔵されているものでも実施可
能である。
【0035】ショックアブソーバ11内部は、上側油室
と下側油室とがピストン40を挟んで設けられており、
このピストン40は、減衰力可変機構を構成する。ピス
トン40には、上下の油室を連通する油路があけられて
おり、この油路には、ステッピングモータ14によりそ
の開度が変更されるロータリーバルブが設けられてい
る。従って、ショックアブソーバ11は、ピストン40
の油路を通過して上下の油室に流入する作動油の油量
を、ステッピングモータ14によるバルブ開度を変えて
制御する。そして、このバルブ開度の調整を通して、車
体の上下動に対する減衰力を多段階(9段階)に変更す
る。具体的には、バルブ開度を大きくして油室間の作動
油流量を増大させ、減衰力をソフトとする。また、開度
を小さくして作動油流量を減少させ、減衰力をハードと
する。
【0036】主エアーチャンバ12は、容量可変の空気
室を備え、対応する車輪位置の車高を収容空気量に応じ
て連続的に変更できるよう構成されている。なお、主エ
アーチャンバ12と副エアーチャンバ13とが連通され
ている場合には、副エアーチャンバを含めた収容空気量
に応じて車高は変更される。
【0037】副エアーチャンバ13は、アクチュエータ
15に取り付けられたバルブのオンオフにより、主エア
ーチャンバ12に対して連通・非連通状態になり、主エ
アーチャンバ12と協働して車体の上下動に対するばね
定数を2段階(小、大)に変更できるよう構成されてい
る。
【0038】主エアーチャンバ12には、空気を給排す
る給排装置が接続されている。この給排装置は、電動モ
ータ16により駆動されるコンプレッサ17を備え、そ
の下流には、チェック弁18,エアードライヤ19,並
列接続されたチェック弁21およびオリフィス22を備
える。そして、給排装置は、チェック弁21およびオリ
フィス22の下流で主エアーチャンバ12a〜12dに
分岐して接続されている。また、主エアーチャンバ12
a〜12dへの各分岐管路には第1電磁切換弁23a〜
23dが、チェック弁18とエアードライヤ19との管
の管路には第2電磁切換弁24が設けられている。そし
て、第1電磁切換弁23,第2電磁切換弁24のオン・
オフを通して、主エアーチャンバ12a〜12dにエア
ーが給排される。なお、主エアーチャンバ12による車
高調整は本発明の要旨と直接関係しないので、その説明
を省略する。
【0039】次に、上記ステッピングモータ14,アク
チュエータ15,第1電磁切換弁23および第2電磁切
換弁24等を制御するマイクロコンピュータ37につい
て説明する。マイクロコンピュータ37は、CPU,R
OM,RAM,バックアップRAMを中心に論理演算回
路として構成され、以下に記す種々のセンサやスイッチ
からの検出信号に基づき、ステッピングモータ14等を
駆動して減衰力制御や車高制御等を行なう。このマイク
ロコンピュータ37には、図1に示すように、各輪ごと
のストロークセンサ31,モードスイッチ32,ブレー
キスイッチ33,舵角センサ34,車速センサ35,ヨ
ーレートセンサ36,スロットル開度センサ38,シフ
トセンサ39および上下加速度(上下G)センサ41が
接続されている。
【0040】ストロークセンサ31は、各輪位置にそれ
ぞれ設けられ、同位置における車高変位量をそれぞれ検
出して、車高変位量を表わす信号を出力する。モードス
イッチ32は、運転者により操作されて、サスペンショ
ン特性をノーマルモードまたはスポーツモードに選択的
に切り換える操作スイッチであり、サスペンション特性
の信号を出力する。ブレーキスイッチ33は、図示しな
いブレーキペダルの踏み込み操作を検出するものであ
り、通常オフ状態にあって該ブレーキペダルの踏み込み
操作時にオン信号を出力する。舵角センサ34は、図示
しないハンドル又は前輪の操舵角θを検出して、その操
舵角θを表わす信号を出力する。車速センサ35は、車
両の車速Vを検出して、その車速Vを表わす信号を出力
する。ヨーレートセンサ36は、車体のヨーレートを検
出して、そのヨーレートを表わす検出信号を出力する。
スロットル開度センサ38は、図示しないアクセルペダ
ルの操作に連動するスロットルの開度を検出し、その開
度を表わす信号を出力する。シフトセンサ39は、図示
しないシフトレバー装置内に組み込まれ、ニュートラル
からドライブレンジにシフトレバーが切り換えれるとオ
ン信号を出力する。各輪ごとの上下Gセンサ41は、車
体(ばね上)に作用する上下方向の加速度を検出し、そ
の加速度を表わす信号を出力する。
【0041】次に、上記した構成を備える本実施例のサ
スペンション制御装置が行う減衰力変更制御(減衰力変
更ルーチン)について、フローチャートに基づき説明す
る。
【0042】図2に示す減衰力変更ルーチンは、図示し
ないイグニッションスイッチがオンされてからオフされ
るまでの間に亘り繰り返し実行されるものであり、電源
投入時には、CPUの内部レジスタのクリアや後述する
ゲイン等の変数を初期化するといった初期設定が行なわ
れる(ステップS100)。
【0043】初期設定に続いては、まず、本減衰力変更
ルーチンにて減衰力制御する際に必要な検出信号を得る
ための各種センサをスキャンし、検出データを入力する
(ステップS110)。具体的には、上下Gセンサ4
1,ストロークセンサ31,車速センサ35,ブレーキ
スイッチ33,スロットル開度センサ38,舵角センサ
34等のセンサをスキャンする。これにより、ばね上に
作用する上下方向加速度や車速Vのほか、各輪について
の車高変位量や操舵角θ,スロットル開度等を得る。そ
の後は、得られた上下方向加速度の積分を経たばね上速
度Zdの演算(ステップS120),車高変位量の微分
を経た相対速度Ydの演算(ステップS130)を順次
行なう。そして、相対速度Ydの演算に続いては、その
相対速度Ydがゼロ近傍の値を取るときにこの相対速度
Ydの補正を次のようにして実行し補正後の相対速度Y
dhを求める(ステップS140)。
【0044】即ち、図3に示すように、ステップS13
0で演算した相対速度Ydがゼロ近傍のε〜−εの値で
ある場合には、速度比Zd/Ydを演算する際の相対速
度Ydを一律にε又は−εとする。このようにεとする
か−εとするかは、演算した相対速度Ydの推移の様子
に応じて定まる。つまり、相対速度Ydが正の値から減
少過程にあってε〜−εの値となる場合には相対速度Y
d=εとし、負の値から増大過程にあってε〜−εの値
となる場合には相対速度Yd=−εとする。なお、図3
に示すグラフに対応するマップは、マイクロコンピュー
タ37のROMに予め記憶されている。
【0045】ステップS140に続いては、ばね上速度
Zdと補正後の相対速度Ydhから速度比Zd/Ydを
演算し(ステップS150)、その後は、車両の走行状
態をスカイフック制御による減衰力制御に反映すべく、
車両の姿勢変化を抑制するための補正演算を行なう。具
体的には、ショックアブソーバ11の減衰力を速度比Z
d/Ydに基づき演算する際のスカイフック減衰係数C
を補正させるゲインを、車両の姿勢変化の様子に基づき
定める。即ち、アンチロールを図る観点から減衰力を補
正するためのゲインGR の演算(ステップS160),
アンチダイブを図る観点から減衰力を補正するためのゲ
インGD の演算(ステップS170),アンチスクォー
トを図る観点から減衰力を補正するためのゲインGS の
演算(ステップS180)を順次行なう。なお、本実施
例では、これらゲンイは、アンチロール等を図るため、
減衰力を増大補正させる(図4参照)。
【0046】ここで、これらステップでの処理の詳細に
ついて説明する。ステップS160では、図4のフロー
チャートに示すように、操舵角θの推移から操舵角速度
Sθを演算し(ステップS162)、この操舵角速度S
θと車速Vとの2次元マップからゲインGR を演算する
(ステップS164)。このマップは、図4に併記して
示すように、ある車速Vに対して操舵角速度Sθが大き
くなるほどゲインの値が段階的に増大するよう定められ
ている。従って、操舵角速度Sθが大きいためにロール
が顕著となれば、アンチロールを図る必要があるとし
て、ゲインGR の値は大きくされる。なお、操舵角速度
Sθと車速Vとの2次元マップに替え、前輪の操舵角θ
と車速Vとの2次元マップ、或いは前輪の操舵角θと操
舵角速度Sθと車速Vとの3次元マップを用いてゲイン
GR を演算する構成とすることもできる。また、横加速
度やヨーレートセンサ36から得たヨーレイトに基づい
て、ゲインGR を演算する構成とすることもできる。
【0047】ステップS170では、まず、車速Vが所
定の車速VD 以上であるか否かを判断し(ステップS1
72)、この判断の結果でゲインGD の値をその後決定
する。この場合の車速VD は、ブレーキ操作がされると
車両に起きるダイブが大きくなりアンチダイブを図る必
要があるとして定められた車速である。そして、ステッ
プS172で否定判断した場合には、ブレーキ操作の有
無に拘らずアンチダイブは不要としてゲインGD の値を
初期値のまま(1倍)とする(ステップS174)。一
方、ステップS172で肯定判断した場合には、ブレー
キ操作の有無をブレーキスイッチ33からの信号により
判断し(ステップS176)、ブレーキ操作がなければ
ステップS174にてゲインGD の値を初期値のままと
する。
【0048】しかし、ステップS176でブレーキ操作
があると判断した場合には、その後の1秒間に亘っては
ゲインGD の値を2倍の値とする(ステップS17
8)。従って、車速Vが所定の車速VD 以上の場合にブ
レーキ操作がされると、この場合にはダイブが顕著とな
るのでアンチダイブを図る必要があるとして、ゲインG
Dの値は大きくされる。なお、車速Vとブレーキ操作の
有無によるゲインの演算に替え、車速Vや車輪速度の減
速度、或いは前後の車輪での車高変位量の差、若しくは
前後加速度に基づいて、ゲインGD を演算する構成とす
ることもできる。
【0049】ステップS180では、まず、スロットル
開度の推移からスロットル開速度Aを演算し(ステップ
S182)、スロットル開速度Aが所定のスロットル開
速度AS 以上であるか否かを判断する(ステップS18
4)。この場合のスロットル開速度AS は、アクセルの
踏込速度が早くて急激にスロットル開度が大きくなる急
発進時等であるので、車両に起きるスクォートが大きく
なりアンチスクォートを図る必要があるとして定められ
たスロットル開速度である。そして、ステップS184
で否定判断した場合には、アンチスクォートは不要とし
てゲインGS の値を初期値のまま(1倍)とする(ステ
ップS186)。一方、ステップS184で肯定判断し
た場合には、その後の1秒間に亘ってはゲインGS の値
を2倍の値とする(ステップS188)。従って、スロ
ットル開速度Aが所定のスロットル開速度AS 以上の場
合にはスクォートが顕著となるのでアンチスクォートを
図る必要があるとして、ゲインGS の値は大きくされ
る。なお、スロットル開速度Aによるゲインの演算に替
え、車速Vやスロットル開速度Aとの2次元マップや、
前後の車輪での車高変位量の差、若しくは前後加速度,
エンジン回転数等に基づいて、ゲインGS を演算する構
成とすることもできる。
【0050】こうしてアンチロールの要求からのゲイン
GR とアンチダイブの要求からのゲインGD とアンチス
クォートの要求からのゲインGS を順次演算した後に
は、図2に示すように、これらゲインの最大のゲイン
(Max(GR ,GD ,GS ))を最終ゲインG0 とし
て決定する(ステップS190)。そして、この最終ゲ
インG0 をスカイフック減衰係数Cに乗算しその乗算値
(C*G0 )を実際の減衰力算出の際のスカイフック減
衰係数とする(ステップS200)。このステップS2
00に続いては、この求めたスカイフック減衰係数C*
G0 とステップ150で演算済みの速度比Zd/Ydと
から、速度比Zd/Ydに対応する目標減衰力ステップ
数(目標減衰力)を決定する(ステップS210)。
【0051】具体的に説明すると、ショックアブソーバ
11の減衰力(減衰力ステップ数)と速度比Zd/Yd
とは、図5に示すようにスカイフック減衰係数Cでもっ
て関連付けられており、速度比Zd/Ydが定まれぱこ
のグラフからショックアブソーバ11の減衰力が演算さ
れる。上記のステップS200では、スカイフック減衰
係数CがC*G0 とされるので、ステップS190で決
定した最終ゲインG0が初期値(1倍)であれば図中実
線で示すグラフから、最終ゲインG0 が1.5倍であれ
ば図中点線で示すグラフから、最終ゲインG0 が2倍で
あれば図中一点鎖線で示すグラフから、それぞれ演算済
みの速度比Zd/Ydに応じて目標減衰力ステップ数が
演算される。この目標減衰力ステップ数は、前述のステ
ッピングモータ14の停止位置をどの位置にするかを設
定するものであり、そのステップ数がショックアブソー
バ11のバルブ開度に対応している。そして、そのステ
ップ数が大きいほどバルブ開度が小さくなって減衰力特
性がハードになるよう停止位置を設定する。
【0052】この場合、目標減衰力ステップ数は、1次
近似により、スカイフック減衰係数Cを傾きとする速度
比Zd/Ydの1次関数として定まる。よって、スカイ
フック減衰係数CをC*G0 と補正することは、スカイ
フック減衰係数Cをそのままとし、速度比Zd/Ydを
最大ゲインG0 の乗算を経て補正することと等価であ
る。従って、ステップ200の処理を、スカイフック減
衰係数Cへの最終ゲインG0 乗算(C*G0 )に替え、
最大ゲインG0 を速度比Zd/Ydに乗算することで速
度比Zd/Yd自体を最終速度比G0 *Zd/Ydに補
正することもできる。そして、この場合のステップS2
10では、スカイフック減衰係数Cのグラフから、補正
後の最終速度比G0 *Zd/Ydに応じて目標減衰力ス
テップ数を求める。
【0053】その後、各ショックアブソーバ11につい
て、現状の減衰力ステップのステップ数と上記の目標減
衰力ステップのステップ数との差に相当する駆動信号を
ステッピングモータ14に出力し(ステップS22
0)、ショックアブソーバ11の減衰力を目標減衰力に
変更する。なお、現状減衰力ステップのステップ数はR
AMに記憶されており、ステップ数の差の演算時には読
み込まれる。一方、目標減衰力に変更後には、その目標
減衰力ステップのステップ数が新たな現状減衰力ステッ
プ数としてバックアップRAMに更新して書き込まれ
る。
【0054】この場合、ステップS210における目標
減衰力の決定並びにステップS220におけるステッピ
ングモータ14への駆動信号の出力は、前後輪の各輪ご
とに個別に行なわれる。
【0055】以上説明したように上記の第1実施例のサ
スペンション制御装置10では、ばね上速度Zdと相対
速度Ydとの速度比Zd/Ydに応じて路面からの入力
に基づく減衰力を演算する際に、車両が姿勢変化を引き
起こす走行状態であれば、この走行状態を考慮して速度
比Zd/Ydに応じた減衰力を補正する。つまり、車両
に姿勢変化(ロール,ダイブ,スクォート)を引き起こ
す局面にあっては、姿勢変化抑制(アンチロール,アン
チダイブ,アンチスクォート)を図る必要もあるとし
て、スカイフック減衰係数C或いは速度比Zd/Yd自
体を補正するためのゲインGR ,GD ,GS を求め(ス
テップS160〜180)、そのうちの最大ゲインG0
の乗算を経てスカイフック減衰係数C或いは速度比Zd
/Yd自体を補正し、スカイフック減衰係数C*G0 或
いは最終速度比G0 *Zd/Ydを求める(ステップS
200)。そして、補正後のスカイフック減衰係数C*
G0或いは最終速度比G0 *Zd/Ydに応じて目標減
衰力を求め(ステップS210)、このように目標減衰
力を求めることで、速度比Zd/Ydに応じた減衰力は
結果的に補正される。
【0056】図5のグラフを用いて説明すると、ばね上
速度Zdと相対速度Ydとから演算した実際の速度比Z
d/Yd(実速度比)がある値Xである場合、通常のス
カイフック減衰係数Cのままであれば、この実速度比X
からは減衰力ステップ数はP(X)とされる。しかし、
最大ゲインG0 (G0 =2)の乗算により補正したスカ
イフック減衰係数C*G0 或いは最終速度比G0 *Xか
ら得られる減衰力ステップ数(目標減衰力ステップ数)
はP(G0 *X)となって、実速度比Xからの減衰力ス
テップ数P(X)より大きくされる。
【0057】また、上記の減衰力補正の様子を、最大ゲ
インG0 がゲインGD である場合を例に採り、図6のタ
イムチャートを用いて時系列的に説明する。今、ばね上
速度Zdと相対速度Ydとから演算した速度比Zd/Y
d(実速度比)が、時刻t0から図6(a)に示すよう
に推移しているとする。そして、図6(b)に示すよう
に時刻t1 でブレーキ操作がされると、それ以降はアン
チダイブを図るためにゲインGD は2倍とされる。従っ
て、ゲインGD の乗算を経て補正した最終速度比は、図
6(c)に示すように推移することになり、時刻t1 〜
t2 の間に亘っては、実速度比の2倍の値を取る。そし
て、各時刻の最終速度比から図5のグラフにより減衰力
が定まり、求めた減衰力は図6(d)に示すようにな
る。
【0058】つまり、時刻t1 〜t2 の間のうち、時刻
t1 〜t3 (速度比がゼロとなる時刻)および時刻t4
(速度比がゼロとなる時刻)〜t2 の間では、ゲインG
D の乗算補正による最終速度比からの演算を通して減衰
力が増大(補正)される。図をもって説明すると、時刻
t1 〜t3 ,時刻t4 〜t2 の間では、実速度比からは
点線で示すような減衰力が得られるが、その場合より、
斜線で示す範囲だけ増大された減衰力が変更すべき減衰
力となる。このため、車両に姿勢変化を引き起こすよう
な運転操作(ハンドル操作やブレーキ操作等)がされた
場合(t1 〜t3 ,t4 〜t2 )には、ショックアブソ
ーバ11の減衰力を当該操作によって引き起こされる姿
勢変化に応じた減衰力に補正する。よって、効果的に姿
勢変化を抑制し走行安定性を確保することができる。
【0059】また、このように減衰力を補正する際に、
各輪についての相対速度Ydの値やその符号はなんら変
更されることはなく、時刻t3 〜t4 までの間は、実速
度比および最終速度比とも共に負であるので、図5のグ
ラフから減衰力はフルソフトのままである。従って、減
衰力変更のタイミングにズレはないと共に、速度比の符
号が負(t3 〜t4 の間)であるために減衰力がばね上
に対して加振力として作用する際には、その減衰力はフ
ルソフトとされて、乗り心地を確保することができる。
【0060】以上のことから、第1実施例のサスペンシ
ョン制御装置10によれば、速度比Zd/Ydに応じて
減衰力を変更する際に、乗り心地と走行安定性とを両立
することができる。
【0061】また、本実施例では、アンチロール,アン
チダイブ,アンチスクォートを共に考慮して減衰力の補
正を行なうので、きめ細かな減衰力制御を通して走行安
定性をより確保することができる。
【0062】次に、第2実施例のサスペンション制御装
置10について説明する。この第2実施例では、速度比
Zd/Ydに応じた減衰力の演算に加え、アンチロール
等に応じた減衰力の演算をも行ない、速度比Zd/Yd
の符号並びにこれら各減衰力の大小比較によって最終的
な減衰力を得る点で、上記した実施例(第1実施例)と
その構成が相違する。以下、この相違する構成について
説明する。
【0063】第2実施例のサスペンション制御装置10
における減衰力変更ルーチンでは、まず、上記の第1実
施例と同様に、そのステップ100からステップ150
までの処理を行ない、ステップ160からの処理が異な
る。つまり、第2実施例のサスペンション制御装置10
における減衰力変更ルーチンでは、図7に示すように、
ステップ150に続いては、演算済みの速度比Zd/Y
dと図5のグラフとから、路面からの入力に基づく第1
減衰力ステップ数PG1st を演算する(ステップS30
0)。その後、操舵角θと車速Vに基づいて車両の旋回
状況の緩急を判別し、その旋回状況にある車両の姿勢変
化の抑制(アンチロール)に必要な第2減衰力ステップ
数PG2nd を演算する(ステップS310)。この減衰
力ステップ数の演算に際しては、図8に示すように、車
速Vと操舵角θの乗算値と減衰力ステップ数とのグラフ
に対応するマップが用いられる。これにより、アンチロ
ールについて算出される第2減衰力ステップ数PG2nd
は、車速Vと操舵角θの乗算値が所定値α1 を越えてロ
ールが大きくなるほど大きなステップ数となる。このア
ンチロールについての減衰力ステップ数の演算を、車速
Vと操舵角θの乗算値に替えて車速Vと操舵角速度の乗
算値を用いて行なうこともできる。
【0064】続いて、ブレーキ信号と車速Vに基づいて
車両の車高前後差であるダイブの緩急を判別し、そのダ
イブの状況にある車両の姿勢変化の抑制(アンチダイ
ブ)に必要な第3減衰力ステップ数PG3rd を演算する
(ステップS320)。この場合にも、図9に示すよう
に、車高前後差と減衰力ステップ数とのグラフに対応す
るマップが用いられる。これにより、アンチダイブにつ
いて算出される第3減衰力ステップ数PG3rd は、車高
前後差が所定値α2 を越えると徐々に大きなステップ数
となる。なお、この車高前後差を各輪についてのストロ
ークセンサ31a〜31dの検出信号から求めることも
できる。また、車高前後差に替えて、車両の前後加速度
を用いることもできる。
【0065】その後、スロットル開速度に基づいて車両
のスクォートの緩急を判別し、そのスクォートの状況に
ある車両の姿勢変化の抑制(アンチスクォート)に必要
な第4減衰力ステップ数PG4th を演算する(ステップ
S330)。この場合であっても、図10に示すよう
に、スロットル開速度と減衰力ステップ数とのグラフに
対応するマップが用いられる。これにより、アンチスク
ォートについて算出される第4減衰力ステップ数PG4t
h は、スロットル開速度が所定値α3 を越えると徐々に
大きなステップ数となる。なお、このスロットル開速度
を車速センサ35からの車速Vにより補正し、補正後の
スロットル開速度から減衰力ステップ数を求めることも
できる。また、スロットル開速度に替えて、車両の前後
加速度を用いることもできる。
【0066】更には、車速Vの増加に応じて減衰力を増
大させてばね上の微小変位に対する乗員の違和感緩和に
必要な第5減衰力ステップ数PG5th を演算する(ステ
ップS340)。
【0067】こうして第1から第5の減衰力ステップ数
を演算した後には、演算済みの速度比Zd/Ydの符号
が正か負のいずれであるかを判別し(ステップS35
0)、その結果により以下のようにして最終的な目標減
衰力ステップ数PGを決定する。なお、速度比Zd/Y
dの値がゼロである場合には、正又は負のいずれかであ
ると判別すればよい。
【0068】ステップ350で速度比Zd/Ydの符号
が正であると判別した場合には、上記の第1から第5の
減衰力ステップ数(PG1st 〜PG5th )のうちの最大
の減衰力ステップ数(Max(PG1st ,PG2nd ,P
G3rd ,PG4th ,PG5th))を最終的な減衰力ステ
ップ数PGとして決定する(ステップS360)。この
ため、速度比Zd/Ydの符号が正で且つ第2から第5
の減衰力ステップ数(PG2nd 〜PG5th )が第1減衰
力ステップ数PG1st に勝る場合には、この第1減衰力
ステップ数PG1st ではなく第2から第5の減衰力ステ
ップ数(PG2nd 〜PG5th )のいずれかの減衰力ステ
ップ数が最終的な目標減衰力ステップ数PGとされる。
しかし、速度比Zd/Ydの符号が正であっても第1減
衰力ステップ数PG1st が最大であれば、この第1減衰
力ステップ数PG1st が最終的な目標減衰力ステップ数
PGとされる。
【0069】一方、ステップ350で速度比Zd/Yd
の符号が負であると判別した場合には、第1減衰力ステ
ップ数PG1st がそのまま最終的な目標減衰力ステップ
数PGとされる(ステップS370)。つまり、速度比
Zd/Ydの符号が負の場合には、第2から第5の減衰
力ステップ数(PG2nd 〜PG5th )が第1減衰力ステ
ップ数PG1st より大きくても、この第1減衰力ステッ
プ数PG1st を越える第2から第5の減衰力ステップ数
(PG2nd 〜PG5th )が目標減衰力ステップ数PGと
されることはない。
【0070】そして、ステップS360,370に続い
ては、各ショックアブソーバ11について、現状の減衰
力ステップのステップ数と上記の目標減衰力ステップP
Gのステップ数との差に相当する駆動信号をステッピン
グモータ14に出力し(ステップS380)、ステップ
S110の処理に移行する。これにより、ショックアブ
ソーバ11の減衰力は、目標減衰力に変更される。
【0071】以上説明したように上記の第2実施例のサ
スペンション制御装置10では、その減衰力の制御の様
子は、次のようになる。図11のタイムチャートに示す
ように、今、ばね上速度Zdと相対速度Ydとから演算
した速度比Zd/Ydが、時刻t10から図11(a)に
示すように推移しているとすると、この速度比Zd/Y
dと図5のグラフから第1減衰力ステップ数PG1st が
図11(b)に示すように定まる(ステップS30
0)。そして、図11(c)に示すように時刻t11でブ
レーキ操作がされると、それ以降は、アンチダイブを図
るための第2減衰力ステップ数PG2nd が図示するよう
に所定時間に亘って定まる(ステップS310)。
【0072】従って、最終的な目標減衰力ステップPG
は、速度比Zd/Ydの符号が正の期間である時刻t10
〜t13の間においては、時刻t10〜t11の間に亘って第
1減衰力ステップ数PG1st とされ、時刻t11〜t13の
間に亘って第2減衰力ステップ数PG2nd (>PG1st
)とされる(ステップS350,360)。このた
め、時刻t11〜t13の間に亘っては、ショックアブソー
バ11の減衰力は、第1減衰力ステップ数PG1st に該
当する減衰力から第2減衰力ステップ数PG2nd に該当
する減衰力に増大補正される。その一方、時刻t13〜t
14の間に亘っては、速度比Zd/Ydの符号が負である
ため、目標減衰力ステップPGは、第1減衰力ステップ
数PG1st とされ、このステップ数より大きい第2減衰
力ステップ数PG2nd とされることはなく(ステップS
350,370)、減衰力は、第1減衰力ステップ数P
G1st に該当する減衰力(フルソフト)で維持される。
【0073】また、時刻t14〜t15の間においては速度
比Zd/Ydの符号が正であるため、第1減衰力ステッ
プ数PG1st を越える第2減衰力ステップ数PG2nd が
目標減衰力ステップPGとされ(ステップS350,3
60)て、減衰力が増大補正される。そして、速度比Z
d/Ydの符号が負となる時刻t15以降は、再度第1減
衰力ステップ数PG1st が目標減衰力ステップPGとさ
れて(ステップS350,370)、減衰力は、第1減
衰力ステップ数PG1st に該当する減衰力(フルソフ
ト)で維持される。
【0074】つまり、時刻t11〜t12の間のうち、時刻
t11〜t13(速度比Zd/Ydの符号が正,PG2nd >
PG1st )および時刻t14〜t15(同上)の間では、目
標減衰力ステップPGを第1減衰力ステップ数PG1st
に替えて第2減衰力ステップ数PG2nd とすることで、
点線で示すように速度比Zd/Ydから得られる減衰力
が、斜線で示す範囲だけ増大されることなる。このた
め、車両に姿勢変化を引き起こすような運転操作(ハン
ドル操作やブレーキ操作等)がされた場合(t11〜t1
3,t14〜t15)には、ショックアブソーバ11の減衰
力を当該操作によって引き起こされる姿勢変化に応じた
減衰力に補正する。よって、効果的に姿勢変化を抑制し
走行安定性を確保することができる。
【0075】また、このように減衰力を補正する際に、
各輪についての相対速度Ydの値やその符号はなんら変
更されることはなく、時刻t13〜t14までの間および時
刻t15以降は、実速度比が負であるので、速度比Zd/
Ydで定まる減衰力(フルソフト)のままである。従っ
て、減衰力変更のタイミングにズレはないと共に、速度
比の符号が負(t13〜t14の間および時刻t15以降)で
あるために減衰力がばね上に対して加振力として作用す
る際には、その減衰力はフルソフトとされて制振性が発
揮される。このため、乗り心地を確保することができ
る。
【0076】以上のことから、第2実施例のサスペンシ
ョン制御装置10によれば、速度比Zd/Ydに応じて
減衰力を変更する際に、乗り心地と走行安定性とを両立
することができる。
【0077】次に、第3実施例のサスペンション制御装
置10について説明する。この第3実施例では、ばね下
共振に応じた減衰力制御を加味した点と速度比Zd/Y
dの符号が負である場合の処理内容が異なる点で、上記
した第2実施例とその構成が相違する。以下、この相違
する構成について説明する。
【0078】図12に示すように、第3実施例のサスペ
ンション制御装置10における減衰力変更ルーチンで
は、上記の第2実施例とほぼその処理内容が同じであ
り、この第2実施例におけるステップ340までの処理
に続いて、ばね下共振が生じた場合にその振動を抑制し
当該振動に対する乗員の違和感緩和に必要な第6減衰力
ステップ数PG6th を演算する(ステップS345)。
この第6減衰力ステップ数PG6th の演算に際しては、
ストロークセンサ31からの検出信号出力(車高変位
量)を所定周波数帯域の信号を通過させるバンドパスフ
ィルタ(B.P.F)にて処理し、センサの検出信号か
らばね下の振動の共振成分を抽出し、そのレベルに応じ
て第6減衰力ステップ数PG6th が決定される。本実施
例では、B.P.Fの特性を10〜20Hzとした。
【0079】その後は、第2実施例と同様にしてステッ
プ350の判別処理(速度比Zd/Ydの符号の正負判
別)を行ない、速度比Zd/Ydの符号が正であると判
別した場合には、第2実施例のステップ360に替え
て、以下の処理内容のステップ365を実行する。つま
り、第1から第6の減衰力ステップ数(PG1st 〜PG
6th )のうちの最大の減衰力ステップ数(Max(PG
1st ,PG2nd ,PG3rd ,PG4th ,PG5th ,PG
6th ))を最終的な減衰力ステップ数PGとして決定す
る。このため、速度比Zd/Ydの符号が正で且つ第2
から第6の減衰力ステップ数(PG2nd 〜PG6th )が
第1減衰力ステップ数PG1st に勝る場合には、この第
1減衰力ステップ数PG1st ではなく第2から第6の減
衰力ステップ数(PG2nd 〜PG6th )のいずれかの減
衰力ステップ数が最終的な目標減衰力ステップ数PGと
される。しかし、速度比Zd/Ydの符号が正であって
も第1減衰力ステップ数PG1st が最大であれば、この
第1減衰力ステップ数PG1st が最終的な目標減衰力ス
テップ数PGとされる。
【0080】一方、ステップ350で速度比Zd/Yd
の符号が負であると判別した場合には、第2実施例のス
テップ370に替えて、以下の処理内容のステップ37
5を実行する。つまり、第1と第6の減衰力ステップ数
(PG1st ,PG6th )のうちの大きい方の減衰力ステ
ップ数(Max(PG1st ,PG6th ))を最終的な減
衰力ステップ数PGとして決定する。このため、速度比
Zd/Ydの符号が負であっても、ばね下共振の抑制を
通した乗員の違和感緩和のための第6減衰力ステップ数
PG6th が大きい場合に限り、速度比Zd/Ydから定
まる第1減衰力ステップ数PG1st ではなく第6減衰力
ステップ数PG6th の減衰力に増大する。しかし、速度
比Zd/Ydの符号が負であっても第1減衰力ステップ
数PG1st のほうが大きければ、この第1減衰力ステッ
プ数PG1st が最終的な目標減衰力ステップ数PGとさ
れる。
【0081】車両の走行状態がいわゆるばね下共振状
態、即ち車輪のばたつきが生じるような状態であれば、
車輪の接地性が悪くなり、この場合に速度比Zd/Yd
の符号が負であれば、従来のサスペンション制御装置で
は、速度比Zd/Ydによりその減衰力は低減(フルソ
フト)される。しかし、上記の第3実施例のサスペンシ
ョン制御装置10では、ばね下共振を抑制するための第
6減衰力ステップ数PG6th が速度比Zd/Ydから定
まる第1減衰力ステップ数PG1st より大きければ、シ
ョックアブソーバ11の減衰力を第6減衰力ステップ数
PG6th の減衰力に増大してばね下共振の抑制を図り、
この共振の抑制を通して車輪の接地性を確保し、もって
走行安定性を向上する。また、速度比Zd/Ydの符号
が負でばね下共振の程度が小さい場合には、ショックア
ブソーバ11の減衰力を速度比Zd/Ydから定まる第
1減衰力ステップ数PG1st の減衰力(フルソフト)と
して、乗り心地を確保する。しかも、このように減衰力
を制御する際に、各輪についての相対速度Ydの値やそ
の符号はなんら変更されることはなく、減衰力変更のタ
イミングにズレを起こさない。このため、第3実施例の
サスペンション制御装置10によれば、速度比Zd/Y
dに応じて減衰力を変更する際に、乗り心地を効果的に
確保することができる。
【0082】また、第3実施例のサスペンション制御装
置10では、速度比Zd/Ydの符号が正である場合に
第2から第6の減衰力ステップ数(PG2nd 〜PG6th
)のいずれかが第1減衰力ステップ数PG1st より大
きければ、ショックアブソーバ11の減衰力を、第2か
ら第6の減衰力ステップ数(PG2nd 〜PG6th )のい
ずれかの減衰力に増大し、第2から第6の減衰力ステッ
プ数をもたらす走行状態に応じた減衰力とする。よっ
て、効果的に姿勢変化を抑制し走行安定性をも確保する
ことができる。
【0083】次に、第4実施例のサスペンション制御装
置10について説明する。この第4実施例では、速度比
Zd/Ydに応じた減衰力を車両に発現したロールやピ
ッチに応じて補正する点で第1実施例に同様であるが、
その補正の様子が第1実施例と相違する。以下、この相
違する点について説明する。
【0084】第4実施例のサスペンション制御装置10
における減衰力変更ルーチンでは、まず、上記の第1実
施例と同様に、そのステップ100からステップ150
までの処理を行ない、ステップ160からの処理が異な
る。つまり、第4実施例のサスペンション制御装置10
における減衰力変更ルーチンでは、ステップS150ま
ででのばね上速度Zd,相対速度Yd,速度比Zd/Y
d等の演算に続いて、図13に示すように、車両に発現
したピッチ(φ)とロール(ψ)を、ステップS110
にて読み込んだ各輪のストロークセンサ31の車高変位
量から演算する(ステップS400)。具体的には、右
前輪の車高変位量HFRと右後輪の車高変位量HRRとから
ピッチ(φ)を演算し、右前輪の車高変位量HFRと左前
輪の車高変位量HFLとからロール(ψ)を演算する。そ
の後、この演算したピッチ(φ)並びにロール(ψ)と
図14,図15に示すそれぞれのグラフとから、速度比
Zd/Ydに応じた減衰力を補正するためのゲインG
φ,Gψを演算する(ステップS410)。
【0085】このステップS410に続いては、スカイ
フック制御理論に則って速度比Zd/Ydに応じた減衰
力(減衰力ステップ数)を求める。即ち、演算済みのば
ね上速度Zdと相対速度Ydとが共に同符号か否かを判
断し(ステップS415)、肯定判断(同符号)であれ
ば、速度比Zd/Ydにスカイフック減衰係数Cを乗算
し、その乗算値を減衰力ステップ数P0 とする(ステッ
プS420)。一方、否定判断(異符号)であば、減衰
力ステップ数P0 をゼロとする(ステップS430)。
そして、ステップS420,430に続いては、ショッ
クアブソーバ11はそのピストン40が上側油室に向け
て移動する伸び側にあるか否かを判断する(ステップS
435)。この場合、ショックアブソーバ11が伸び側
にあるか縮み側にあるかは、演算済みの相対速度Ydの
値により判別できる。具体的には、相対速度Ydが正の
値であればショックアブソーバ11は伸び側にあること
になる。
【0086】このステップS435で伸び側にあると判
断した場合には、ステップS410で求めたゲインGφ
とGψとを速度比Zd/Ydに応じた減衰力(減衰力ス
テップ数P0 )に乗算し、その乗算値を目標減衰力ステ
ップ数PLIVEとする(ステップS440)。一方、縮み
側であると判断した場合には、減衰力ステップ数P0を
そのまま目標減衰力ステップ数PLIVEとする(ステップ
S450)。つまり、ショックアブソーバ11が伸び側
にある場合には、速度比Zd/Ydに応じた減衰力をピ
ッチ(φ)とロール(ψ)に対応するゲインGφ,Gψ
で補正(増大)する。そして、ステップS440,45
0に続いては、第1実施例で説明したステップS220
に移行して、ショックアブソーバ11の減衰力をこの目
標減衰力ステップ数PLIVEにするために必要な駆動信号
を各輪のステッピングモータ14に出力し、ショックア
ブソーバ11の減衰力を目標減衰力(目標減衰力ステッ
プ数PLIVE)に変更する。
【0087】この場合、ステップS415〜ステップS
450までの処理並びにステッピングモータ14への駆
動信号の出力は、前後輪の各輪ごとに個別に行なわれ
る。
【0088】ピッチ(φ)を例に採り具体的に説明する
と、右前輪が右後輪より高い場合には(車高変位量HFR
<車高変位量HRR)、右前輪はそのショックアブソーバ
11が縮み側にあり、右後輪では伸び側にある。そし
て、このピッチ(φ)の抑制には、右後輪の側では減衰
力を高めて制振性を発揮することが効果的である。この
場合、右前輪では、ステップS435で否定されて目標
減衰力ステップ数PLIVEは右前輪についての速度比Zd
/Ydに応じた減衰力ステップ数P0 のままであるのに
対し、右後輪では、目標減衰力ステップ数PLIVEは右後
輪についての速度比Zd/Ydに応じた減衰力ステップ
数P0 をゲインGφで補正(増大)した減衰力となる。
これにより、右後輪の減衰力は速度比Zd/Ydに応じ
た減衰力ステップ数P0 から目標減衰力ステップ数PLI
VEに増大されることになり、ピッチ(φ)は効果的に抑
制されることになる。
【0089】以上説明したように、この第4実施例のサ
スペンション制御装置10にあっても、速度比Zd/Y
dに応じた減衰力をピッチ(φ)とロール(ψ)に対応
するゲインGφ,Gψで補正(増大)してピッチ(φ)
やロール(ψ)を効果的に抑制する一方、各輪について
の相対速度Ydの値やその符号をなんら変更しないので
減衰力変更のタイミングにズレを来さない。よって、第
4実施例のサスペンション制御装置10によっても、速
度比Zd/Ydに応じて減衰力を変更する際に、乗り心
地と走行安定性とを両立することができる。
【0090】また、この第4実施例では、速度比Zd/
Ydに応じた減衰力を補正するに際して、ショックアブ
ソーバ11の伸び側で減衰力をゲインGφ,Gψで増大
補正し、縮み側では速度比Zd/Ydに応じた減衰力の
ままとする。よって、第4実施例のサスペンション制御
装置10によれば、制振性の向上を通した乗り心地の向
上に大きく寄与する伸び側での減衰力増大補正により、
乗り心地を一層向上させることができる。
【0091】また、上記の第4実施例では、速度比Zd
/Ydに応じた減衰力を一旦演算し(ステップS42
0)、その減衰力(減衰力ステップ数P0 )にゲインG
φ,Gψを乗算して目標減衰力ステップ数PLIVEとした
が、次のようにすることもできる。
【0092】スカイフック制御理論に則った減衰力は、
1次近似により、スカイフック減衰係数Cを傾きとする
速度比Zd/Ydの1次関数として定まる。よって、目
標減衰力ステップ数PLIVEの算出に際して、スカイフッ
ク減衰係数CをC*Gφ*Gψと補正したスカイフック
減衰係数を用いたり、速度比Zd/Ydを(Zd/Y
d)*Gφ*Gψと補正した速度比を用いることもでき
る。
【0093】以上本発明の一実施例について説明した
が、本発明はこの様な実施例になんら限定されるもので
はなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々な
る態様で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例のサスペンション制御装置10の全
体構成を概略的に示すブロック図。
【図2】第1実施例のサスペンション制御装置10が行
う減衰力変更ルーチンを示すフローチャート。
【図3】減衰力変更ルーチンにおける処理の内容を説明
するためのグラフ。
【図4】減衰力変更ルーチンにおける詳細処理を示すフ
ローチャート。
【図5】減衰力変更ルーチンにおける処理の内容を説明
するためのグラフ。
【図6】第1実施例の減衰力変更ルーチンにおいてなさ
れる減衰力補正の様子を時系列的に説明するタイムチャ
ート。
【図7】第2実施例のサスペンション制御装置10が行
う減衰力変更ルーチンの要部を示すフローチャート。
【図8】車速Vと操舵角θの乗算値と減衰力ステップ数
との関係を示すグラフ。
【図9】車両の車高前後差と減衰力ステップ数との関係
を示すグラフ。
【図10】スロットル開速度と減衰力ステップ数との関
係を示すグラフ。
【図11】第2実施例の減衰力変更ルーチンにおいてな
される減衰力補正の様子を時系列的に説明するタイムチ
ャート。
【図12】第3実施例のサスペンション制御装置10が
行う減衰力変更ルーチンの要部を示すフローチャート。
【図13】第4実施例のサスペンション制御装置10が
行う減衰力変更ルーチンの要部を示すフローチャート。
【図14】車両に発現したピッチ(φ)とゲインGφと
の関係を示すグラフ。
【図15】車両に発現したロール(ψ)とゲインGψと
の関係を示すグラフ。
【符号の説明】
10…サスペンション制御装置 11a〜11d…ショックアブソーバ 12a〜12d…主エアーチャンバ 13a〜13d…副エアーチャンバ 14…ステッピングモータ 17…コンプレッサ 23a〜23d…第1電磁切換弁 24…第2電磁切換弁 31a〜31d…ストロークセンサ 32…モードスイッチ 33…ブレーキスイッチ 34…舵角センサ 35…車速センサ 37…マイクロコンピュータ 38…スロットル開度センサ 40…ピストン 41…上下Gセンサ

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両のばね上部材とばね下部材との間に
    配設され両部材を懸架する懸架手段を備え、該懸架手段
    の減衰力を変更制御するサスペンション制御装置であっ
    て、 前記ばね上部材の上下方向の速度と、前記ばね上部材と
    ばね下部材とについての上下方向の相対速度との比を速
    度比として演算する速度比演算手段と、 前記懸架手段の減衰力を、該演算した速度比に応じた第
    1の減衰力に制御する制御手段と、 前記車両の走行状態を検出する走行状態検出手段と、 前記制御手段により制御される際の前記第1の減衰力
    を、該検出した走行状態に応じて補正する減衰力補正手
    段と、を備えることを特徴とするサスペンション制御装
    置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のサスペンション制御装置
    であって、 前記走行状態検出手段は、車両に発現するロール若しく
    はピッチを検出する手段である。
  3. 【請求項3】 請求項1記載のサスペンション制御装置
    であって、 前記減衰力補正手段は、 前記懸架手段の伸縮状態を判別する手段と、 前記第1の減衰力を、前記懸架手段が伸び側にあるとき
    の方が縮み側にあるときよりも増大する側に、前記走行
    状態に応じて補正する手段とを有する。
  4. 【請求項4】 車両のばね上部材とばね下部材との間に
    配設され両部材を懸架する懸架手段を備え、該懸架手段
    の減衰力を変更制御するサスペンション制御装置であっ
    て、 前記ばね上部材の上下方向の速度と、前記ばね上部材と
    ばね下部材とについての上下方向の相対速度との比を速
    度比として演算する速度比演算手段と、 前記懸架手段の減衰力を、該演算した速度比に応じた第
    1の減衰力に制御する制御手段と、 前記車両の走行状態を検出し、該検出した走行状態に応
    じた第2の減衰力を演算する第2減衰力演算手段と、 前記速度比演算手段の演算した速度比の符号を判別し、
    該速度比の符号が正である場合に前記第2の減衰力が前
    記第1の減衰力に勝れば、前記制御手段により制御され
    る際の前記懸架手段の減衰力を、前記第1の減衰力に替
    えて前記第2の減衰力に変更する第2減衰力変更手段
    と、を備えることを特徴とするサスペンション制御装
    置。
  5. 【請求項5】 車両のばね上部材とばね下部材との間に
    配設され両部材を懸架する懸架手段を備え、該懸架手段
    の減衰力を変更制御するサスペンション制御装置であっ
    て、 前記ばね上部材の上下方向の速度と、前記ばね上部材と
    ばね下部材とについての上下方向の相対速度との比を速
    度比として演算する速度比演算手段と、 前記懸架手段の減衰力を、該演算した速度比に応じた第
    1の減衰力に制御する制御手段と、 前記ばね下部材に起きる上下方向の振動状態を検出し、
    該検出した振動状態に応じた第3の減衰力を演算する第
    3減衰力演算手段と、 前記速度比演算手段の演算した速度比の符号を判別し、
    該速度比の符号が負である場合には、前記制御手段によ
    り制御される際の前記懸架手段の減衰力を、前記第1の
    減衰力に替えて前記第3の減衰力に変更する第3減衰力
    変更手段と、を備えることを特徴とするサスペンション
    制御装置。
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