JPH0979642A - 空気調和装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 そのときの室内温度における人の安静時の平
均的な皮膚温分布を計算し、実測皮膚温と比較すること
でその人の温冷感を推定して、より快適な方向へ設定温
度を調節する。 【解決手段】 人の特に顔面部の皮膚温を検出する皮膚
温センサ２と、該センサ２の検出値から皮膚温を求める
皮膚温実測部３と、その人のいる空間の環境条件を検出
する環境条件センサ４と、該センサ４の検出値に基づ
き、生体伝熱方程式を用いて皮膚温を計算により求める
皮膚温計算部５と、前記実測部３及び計算部５の皮膚温
を比較して、その差が少なくなるように空気調和装置の
設定温度を調節する指令を送る判定部６とよりなり、現
在の人の温冷感を推定することによって設定温度や風
量、除湿能力等を調節することで、人の温冷感を快適の
方向へ向かわせる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は空気調和装置の設定
温度調節機構に係り、人の温冷感に応じて設定されてい
る温度を自動的に調節することのできる機構に関する。

【０００２】

【従来の技術】概して快適な温度というのは、空気調和
される空間にいる人の過去と現在の活動状態により変化
することが知られている。

【０００３】ところが従来の空気調和装置にあっては、
予め定められた設定温度と温度センサ等で検知された空
間の温度とを比較し、その差が小さくなるように装置を
駆動するだけであり、人の活動状態を考慮するものでは
なかった。

【０００４】例えば夏の暑い日に屋外から室内に入って
きたときには、設定温度は多少低めの方がその人にとっ
ては快適感が増す場合が多い。しかしながら、しばらく
その室内にいると当該設定温度では涼しすぎると感じ始
め不快感が増すことは否めない。

【０００５】またデスクワーク作業時には快適であると
感じていた空間の温度も、荷物運搬時等では暑く感じる
温度となるということがある。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】このように従来の空気
調和装置では、人の快・不快感を考慮した設定温度の調
節ができないため、快適な温度調節ができていなかっ
た。

【０００７】そこで本発明では、そのときの室内温度に
おける人の安静時の平均的な皮膚温分布を計算し、実測
皮膚温と比較することでその人の温冷感を推定して、よ
り快適な方向へ設定温度を調節することを課題とする。

【０００８】

【課題を解決するための手段】ハードウェアとしては、
人の特に顔面部の皮膚温を検出する皮膚温センサと、該
センサの検出値から皮膚温を求める皮膚温実測部と、そ
の人のいる空間の環境条件を検出する環境条件センサ
と、該センサの検出値に基づき、生体伝熱方程式を用い
て皮膚温を計算により求める皮膚温計算部と、前記実測
部及び計算部の皮膚温を比較して、その差が少なくなる
ように空気調和装置の設定温度を調節する指令を送る判
定部とよりなる。

【０００９】斯かる構成において、設定温度、室内の温
度、湿度等の環境条件から生体伝熱方程式を用いて算出
される人の皮膚温と、実測された皮膚温とが異なれば、
人が感じている温冷感は現在の設定温度では不快の方向
へ偏っていることが推定できる。

【００１０】このように現在の人の温冷感を推定するこ
とによって設定温度や風量、除湿能力等を調節すること
で、人の温冷感を快適の方向へ向かわせる手段である。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下本発明の空気調和装置の一実
施形態について図面に基づき詳細に説明することにす
る。

【００１２】図１は空気調和装置のハード構成を示す要
部回路ブロック図である。同図において、１は空気調和
機本体、２は該空気調和機本体１内に設けられ人の顔面
の皮膚温を検出する皮膚温センサ、３は該皮膚温センサ
２からの検出電気信号に基づいて顔面の皮膚温を割り出
す皮膚温実測部、４は人のいる室内の温度や湿度あるい
は輻射等の周辺の温度環境条件を検出する環境条件セン
サ、５は該センサ４の出力に基づいて生体伝熱方程式を
用いてシミュレーションによる推定皮膚温を計算により
求める皮膚温計算部、６は前記実測部３からの皮膚温と
計算部５からの皮膚温とを比較しその差により制御系７
へ設定温度の調整や除湿能力の変更を指令する判定部で
ある。

【００１３】ここで前記生体伝熱方程式について説明す
る。ここでは皮膚温変化を熱的にシミュレートする顔面
熱モデルを作成し、このモデルによって標準的な被験者
の様々な環境下における顔面熱分布を模擬し、皮膚温を
特定する方法を採用した。

【００１４】皮膚温は図２に示すように生体内部での熱
移動（伝導、血流、産熱等）及び外界の気温、気流、湿
度、輻射等の熱バランスにより決定される。この熱移動
現象の中で特に重要な役割を果たすのは血流によるもの
である。

【００１５】そこで皮膚温予測のために皮膚部の熱バラ
ンスを関係づける方程式として、周知のｐｅｎｎｅｓの
提唱した生体伝熱方程式（数１参照）をここでは採用し
た。

【００１６】

【数１】

【００１７】ｐｅｎｎｅｓの生体伝熱方程式は、１９４
８年に提唱されて以来多くの研究者によって実績を上げ
ているスタンダードな方程式であり、数１の右辺第２項
以外は一般的な非定常状態熱伝導方程式である。

【００１８】また右辺第２項は血流による伝熱項であ
り、生体の深部温Ｔ₀で運ばれた血液が温度Ｔの組織と
一瞬のうちに熱交換し、右辺第２項相当の熱を伝達する
というモデルになっている。

【００１９】この生体伝熱方程式は血流項が簡単で扱い
易いと云う点と、計算結果の精度が許容できる範囲に収
まるという点で有利である。また外界との境界条件に
は、一般に次のようなものが考えられる。・境界上で、
温度が規定されている場合

【００２０】

【数２】

【００２１】・境界上で、熱流速が与えられる場合

【００２２】

【数３】

【００２３】・境界上で熱伝達がある場合

【００２４】

【数４】

【００２５】・境界上で熱放射がある場合

【００２６】

【数５】

【００２７】尚、上記熱流速ｑは境界面からの熱流速で
あるが、これは前記数１の右辺第１項を展開するときに
要素の各面からの熱流出流速項として現れる。この項は
形状モデル（ここでは前記顔面熱モデル）の内側では隣
の要素があるから、それぞれとなりの要素との間で打ち
消し合う。これは各面から流出する熱量はその隣の要素
に流入する熱量に等しいからである。

【００２８】従って、その結果最終的に残るのは外部と
の境界面の熱流出によりものとなる。この境界面では隣
の要素はないので、前記数３〜数５の式で与えられた熱
量が移動することになる。

【００２９】そして上記のような境界条件のもとで前記
数１の方程式を有限要素法による数値解析の手法を用い
て解くことによって、生体各部の温度を求め、必要とす
る人の顔面皮膚温の推定温度を得る。

【００３０】次に前記図１に示すハードウエア構成によ
る空気調和装置による制御動作について図３のフローチ
ャートに基づき説明する。先ずステップＳ１において、
現在の環境条件にある人の顔面の皮膚温を、先に説明し
た生体伝熱方程式による推定皮膚温の計算を環境条件セ
ンサ４及び皮膚温計算部５を介して計算により算出す
る。

【００３１】次に、ステップＳ２において、前記皮膚温
センサ２のセンサ出力による皮膚温実測部３での実測皮
膚温と、ステップＳ１で得られた推定皮膚温とを判定部
６で比較し、その差が予め定めておいた一定の範囲外で
あるか否かを判定する。

【００３２】ステップＳ２において、差が一定の範囲に
収まっていれば、ステップＳ１に戻って所定の時間経過
時の環境条件による推定皮膚温を算出する。図４に示す
ように、差が一定の範囲外であれば、その差が一定の範
囲に収まるように設定温度の調整値、除湿能力の調整
値、風量の調整値等の指令信号を制御部７へ送り、人の
周囲の環境条件を変化させ、しばらく様子を見る。

【００３３】このしばらく様子を見る期間の間、前に求
めた推定皮膚温と変化しつつある環境条件における実測
皮膚温との比較を前記判定部６で時間間隔で行い、その
差が一定の範囲に入っているか否かを随時チェックする
（ステップＳ４）。

【００３４】時刻ｔ２において前記差が一定の範囲に収
まるようになると、ステップＳ５へ進んで、元の温度設
定値に戻し、ステップＳ１へ戻る。尚、上記の方法で
は、いったん温度設定値を変更した後の皮膚温の比較
を、変更前の推定皮膚温を固定にしておいて、随時計測
される実測皮膚温と比較し、さらなる温度設定値の変更
を行うか否かの判定を行ったが、ステップＳ３で設定温
度を変更した後、新たな推定皮膚温を即座に算出して、
そのときの実測皮膚温と比較し、設定温度の更新を行っ
てもよいことは云うまでもない。この場合も図４の各温
度の経時変化図とほぼ同様のものが得られる。

【００３５】

【発明の効果】本発明は以上の説明のように人の温冷感
をその顔面皮膚温の推定値と実測皮膚温との比較によっ
て推定し、推定結果に基づいて空気調和装置の設定温度
等の調整を行うようにしたので、人の活動度、周囲の変
化状態に応じた快適で且つ人に優しい空気調和装置の制
御が行える効果が期待できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明空気調和装置のハードウエア構成を示す
回路ブロック図である。

【図２】人の皮膚近傍の熱バランスを示す図である。

【図３】図１のハードウエアの動作を説明するフローチ
ャートである。

【図４】環境温度、推定皮膚温、実測皮膚温の経時変化
図である。

【符号の説明】

１ 空気調和機本体 ２ 皮膚温センサ ３ 皮膚温実測部 ４ 環境条件センサ ５ 皮膚温計算部 ６ 判定部 ７ 制御部

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 人体の皮膚温を検出する皮膚温センサ
   と、該センサの検出信号から皮膚温実測値を計算する皮
   膚温実測部と、前記人体が存在する環境条件を検出する
   環境条件センサと、該環境条件センサの検出値と生体伝
   熱方程式を用いて皮膚温を計算により求める皮膚温計算
   部と、前記実測部と計算部による皮膚温を比較し制御系
   に設定温度補正指令を供給する判定部とよりなる空気調
   和装置。
2. 【請求項２】 人体の周囲の環境条件における推定皮膚
   温を前記皮膚温計算部によって求めるステップと、前記
   皮膚温実測部による実測皮膚温と前記推定皮膚温とを比
   較しその差が一定範囲外であるか否かを前記判定部にて
   判定するステップと、判定結果から設定温度を調節する
   指令を前記制御系に送るステップとよりなる上記請求項
   １記載の空気調和装置の制御方法。