JPH0954949A - 磁気記録媒体 - Google Patents

磁気記録媒体

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JPH0954949A
JPH0954949A JP20560895A JP20560895A JPH0954949A JP H0954949 A JPH0954949 A JP H0954949A JP 20560895 A JP20560895 A JP 20560895A JP 20560895 A JP20560895 A JP 20560895A JP H0954949 A JPH0954949 A JP H0954949A
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哲 喜々津
Katsutaro Ichihara
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 保磁力が大きく、結晶粒子間の交換結合相互
作用の小さな磁性体薄膜を備え、高密度記録が可能な磁
気記録媒体を提供する。 【解決手段】 非磁性基体上に磁性体薄膜よりなる磁気
記録層をスパッタリング法により形成して成る磁気記録
媒体において、非磁性基体に入射するスパッタリングガ
スのエネルギーが0.001 eV以上10eV以下となるよう
にして、磁性体薄膜が形成されている。Co合金からな
る磁性体薄膜の作製に適し、チャンバー内に冷却された
スパッタリングガスを導入したり、チャンバー内を差動
排気してスパッタすることにより、入射ガスエネルギー
が上記範囲内にあるように制御して、製造される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気ディスクある
いは磁気テープなどの磁気記録媒体およびその製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、パ−ソナルコンピュ−タを始めと
する計算機の能力向上は目ざましく、計算機の外部記憶
装置である磁気ディスク装置(HDD)には小型化・大
容量化・高速化といった性能の向上が強く求められるよ
うになっており、それに対応すべく、磁気記録媒体の高
記録密度化の技術開発が行われている。なかでも、本質
的に高記録密度化の可能な磁性体薄膜を用いた磁気ディ
スクなどの磁気記録媒体について、開発が盛んである。
【0003】磁性体薄膜において磁気記録は、磁気ヘッ
ドから印加される磁界によって、磁性体薄膜の微小領域
に反転磁区を形成することによってなされる。高密度記
録を行うためには、この磁区を小さく密に形成する必要
がある。
【0004】磁区が形成されたときには、同時に磁性体
薄膜内の内部磁界によって磁区を再反転させようとする
力が作用するため、それを抑える保磁力(Hc)が必要
となる。磁区を密に形成して高密度記録を行うために
は、記録した磁区の境界にあたる磁化遷移幅を小さくす
る必要があり、この幅はB・t/Hc(B:残留磁束密
度、t:磁性薄膜の厚さ)に比例すると言われている。
Bもtも再生信号強度に比例するのであまり小さくする
のは好ましくないことから、Hcを大きくすることが、
磁性体薄膜を用いた磁気記録媒体における記録密度向上
の重要な指針となる。このことは、複雑な磁気記録/再
生過程の計算機シミュレーションを行って、高密度を実
現するために必要な媒体パラメータを検討した報告(中
村:日本応用磁気学会誌 Vol.17,NO.5,p.768,1993)など
によっても、確認されている。
【0005】磁性体薄膜の微小領域に形成された上記反
転磁区の各々は、さらに磁性体の結晶粒から構成されて
いる。結晶粒内で各原子のスピンは同じ向きを向いてい
るが、ヘッドからの磁界によって、結晶粒内でそれらは
ほぼ同時に反転する。したがって、結晶粒が磁化反転の
最小単位であり、記録密度向上の観点からは、結晶粒を
小さくすることで、境界の急峻でかつ小さな反転磁区を
形成できて理想的である。
【0006】ところで、通常の磁性体薄膜を用いた磁気
記録媒体では、結晶粒の間に交換相互作用とよばれる力
が粒間にはたらいて、一つの結晶粒が磁化反転すると隣
接する結晶粒も磁化反転するようになる。その結果、い
くつかの結晶粒が集合して結晶粒群を形成し、この結晶
粒群が磁化反転の単位となるため、反転磁区の境界は粗
くなる。このため、反転磁区を小さくすることができ
ず、また反転磁区の境界が不明瞭になるため、記録ノイ
ズあるいは媒体ノイズとよばれるノイズが発生する。こ
のようなことから、通常の磁気記録媒体では、高密度の
記録を低ノイズで行うことは困難であった。また、近年
開発されたMRヘッドのように感度の良好な磁気ヘッド
を使用する場合には、記録ノイズをも良好に再生してし
まうことになるので、このようなノイズの存在がとくに
問題となっていた。
【0007】このように、磁性体薄膜を用いた磁気記録
媒体において記録ノイズを大きくせずに記録密度を向上
させるためには、保磁力を大きくして磁区の境界にあた
る磁化遷移幅を小さくすること、および、結晶粒間の交
換結合相互作用を小さくして磁区と磁区との境界を明瞭
でゆらぎがないようにすることが、重要な技術課題とな
っていた。
【0008】従来は、保磁力を大きくするために、形成
された磁性体薄膜に対して熱処理を行ったり、磁性体薄
膜の構成元素に第3元素を添加するなどの試みがなされ
てきた。また、結晶粒間の交換結合相互作用を小さくす
るための典型的な解決策としては、結晶粒間へ第3元素
を添加して交換結合相互作用を分断しようとする試みが
なされ、現在までのところで1nm程度の結晶粒間にな
ったという報告例がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、磁性体
薄膜を用いた磁気記録媒体において、高保磁力とするた
め上記したように熱処理や第3元素の添加という従来の
解決方法をとった場合には、種々の材料を使うことによ
る製造プロセスの複雑化、その結果として媒体製造コス
トの上昇、さらには安定性・制御性が損なわれやすいな
どの新たな問題が生起しているのが現状である。
【0010】一方、磁性結晶粒子間の交換結合相互作用
を小さくするために行われる第3元素の添加によって
は、磁性元素の拡散などが起こるため、交換結合相互作
用を小さくする効果は薄く、その結果、数〜数10dB
もの大きな媒体ノイズの発生をみることもあった。
【0011】このように従来の対処方法によってでは、
磁性体薄膜を用いた磁気記録媒体において、高保磁力で
磁性結晶粒子間の交換結合相互作用の小さな磁気記録媒
体を得ることは困難であった。
【0012】本発明は、従来方法によってでは解決し得
なかった上記課題に対処すべく成されたものであって、
保磁力が大きくまた磁性結晶粒子間の交換結合相互作用
が小さく高密度記録が可能な磁気記録媒体を提供するこ
とを、その目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の磁気記録媒体
は、非磁性基体上に磁性体薄膜よりなる磁気記録層をス
パッタリング法により形成して成る磁気記録媒体におい
て、前記非磁性基体に入射するスパッタリングガスのエ
ネルギーが0.001 eV以上10eV以下となるようにし
て、前記磁性体薄膜が形成されていることを特徴として
いる。
【0014】本発明に係わる磁性体薄膜は、磁気記録層
として、磁気記録のシステムに応じた情報にしたがって
所定の方向に磁化され、長手記録、斜め記録または垂直
記録することが可能である。また、本発明の磁気記録媒
体は、記録/再生ヘッドが磁気記録媒体に接触する方
式、浮上する方式のいずれにも適用できる。再生原理も
誘導型、磁気抵抗型のいずれであっても構わない。
【0015】本発明において、磁性体薄膜を構成する材
料としては、飽和磁化Isが大きく、かつ磁気異方性エ
ネルギーの大きいものが適している。この観点からC
o、Fe、Ni、その他の強磁性金属、あるいはこれら
の合金、あるいはこれらにさらにPt、Sm、Cr、M
n、Biなどの元素を単独あるいは複数添加したものな
どがあげられる。これらのうちでは、結晶磁気異方性エ
ネルギーが大きいCo基合金、とくにCo−Pt、Sm
−Coを主体とする合金が好ましい。また、これらの金
属または合金に、磁気特性を向上させるための添加物、
たとえば、Nb、V、Ta、Ti、W、Hf、In、S
i、Bなど、あるいはこれらの元素と、酸素、窒素、炭
素、水素の中から選ばれる少なくとも一つの元素との化
合物を加えてもよい。
【0016】本発明の磁気記録媒体においては、磁気記
録層にヘッドが接触したときの損傷を防ぐために、磁性
体薄膜の上に保護膜を設置することが好ましい。保護膜
が満たすべき物理特性を正確に決定することは一般には
困難であるが、1つの基準として硬度を採用することが
でき、原理的には硬度が大きいほどヘッドとの接触によ
る磁性体薄膜の損傷が小さくなると考えられる。このよ
うな観点から、本発明の磁気記録媒体に用いられる保護
膜材料としてはバルク状態で高硬度であるものが好まし
い。たとえば、一般式M−Gで表される化合物があげら
れる。ここで、MはSi、Al、Zr、Ti、In、S
nおよびBからなる群より選択される少なくとも1種の
元素、Gは酸素、窒素および炭素からなる群より選択さ
れる少なくとも1種の元素を表す。具体的には、Si−
O、Al−O、Zr−O、Ti−O、Si−N、Al−
N、Zr−N、Ti−N、B−N、Si−C、Ti−
C、B−C、SiAl−ON、Si−ON、AlTi−
OC、In−Sn−Oなどが好ましい。また、炭素の同
素体、具体的にはダイヤモンド、アモルファスカーボ
ン、ダイヤモンドライクカーボンなども適している。ま
た、原子間の滑りによって衝撃を緩和することによって
も損傷を防ぐことができることから、そのような結晶構
造をもつ材料、たとえばグラファイト(炭素)も、保護
膜の材料として好ましい。
【0017】本発明において、上記のような磁性体薄膜
と保護膜を支持する基体としては、金属、ガラス、セラ
ミクスあるいはプラスチックなどを用いることができ
る。なお、基体と磁性体膜との間に、磁性体または非磁
性体からなる下地層を設けるようにしてもよい。
【0018】磁性下地層は、磁性体薄膜に効率的な記録
/再生を行うために、磁性体薄膜中の磁区や記録/再生
ヘッドと、交換相互作用・静磁気相互作用を介して磁気
的に結合されている。磁区と交換結合するように設置し
た場合には、磁化反転しやすい磁性下地層を用いること
により磁区を安定化し得る、あるいは磁化の大きな磁性
下地層を用いることにより再生出力を増加させ得るなど
の利点を有する。
【0019】非磁性下地層は、磁性体薄膜の結晶構造を
制御したり、基体からの不純物の混入を防ぐ目的で設置
される。たとえば、磁性体薄膜の所望の結晶配向の格子
間隔に近い格子間隔を持つ下地層を用いれば、磁性体薄
膜の結晶状態を制御することが可能である。また、たと
えば、磁性体薄膜との間のぬれ性が悪くなるような表面
エネルギーを持ったアモルファス下地を用いるようにす
れば、磁性体薄膜の結晶性を向上させることも可能であ
る。基板からの不純物の混入を防ぐ目的には、格子間隔
の小さいあるいは緻密な薄膜を下地層として用いるよう
にすればよい。
【0020】上記した磁性あるいは非磁性下地層は、そ
の機能を共通にもっていても構わない。すなわち、磁性
体薄膜の結晶性を制御する磁性下地層などであっても構
わない。また、これらの下地層は、イオンプレーティン
グ・雰囲気ガス中でのドープ・中性子線照射などによっ
て行う基体の表面改質層であっても構わない。その場合
には、薄膜堆積のプロセスが不要になり媒体作成工程が
簡略化されて、好ましい。
【0021】次に、本発明の磁気記録媒体を製造する方
法について説明する。
【0022】本発明の磁気記録媒体の磁気記録層である
磁性体薄膜は、スパッタリングプロセスによって作製さ
れる。スパッタリングは、真空チャンバー内にターゲッ
トと対向するように板状の基体すなわち基板を設置し、
そのチャンバー内にスパッタリングガスを導入して行わ
れる。スパッタリングガスには通常、Ne、Ar、K
r、Xeなどの不活性ガスが用いられるが、薄膜の一部
をガスとの反応によって作製することも可能で、そのと
きには酸素、窒素、炭素、水素などからなる反応性ガス
も同時に導入される。
【0023】スパッタリングプロセスは以下のように進
行する。すなわち、スパッタリングガスを導入しながら
排気することにより、チャンバー内のスパッタリングガ
スの圧力をある値に保ち、基板とターゲットとの間に電
圧を印加すると放電が起こる。このときスパッタリング
ガスを構成する原子は電離され、電界によってターゲッ
トにたたきつけられ、その結果ターゲット材料が飛び出
して基板の表面に付着する。
【0024】ターゲットにたたきつけられた後、スパッ
タリングガスの原子はチャンバー内へと反跳される。電
離した原子はターゲット上で中性化して反跳し、また反
跳原子によって別の電離されていないスパッタリングガ
ス原子がはじき飛ばされるので、チャンバー内には高速
で運動するこれらの中性原子も存在する。当然、基板に
は、作製しようとする薄膜の材料原子のほかにこの中性
原子も飛来してくる。中性原子は、基板に入射する際に
その速度と温度に基づくエネルギーを基板に与えること
になる。中性原子の速度は基板に到達するまでに衝突す
る他の原子個数によって大きく変化するので、プロセス
の条件によってこのエネルギーは種々の値をとりうる。
ただし、最低のエネルギーは決まっており、それは、中
性原子が完全に減速されて速度がゼロになった状態で、
中性原子の温度によるエネルギー、kTである。ここ
で、kはボルツマン定数、Tは中性原子の絶対温度であ
る。
【0025】一般に、薄膜を作製する場合、作製中に加
えられるエネルギーが膜質に影響を及ぼすことが知られ
ている。たとえば、基板を加熱して熱エネルギーを加え
ると、結晶格子はより熱安定な状態へ移行し結晶性が向
上する。薄膜の磁気特性に関しても、同様なメカニズム
によって、作製中に加えられるエネルギーの影響を受け
る。そこで、反跳スパッタリングガス原子の速度が可変
なスパッタリング装置を作製し、反跳原子のエネルギー
測定し、スパッタリングガス原子によって基板に入射さ
れるエネルギーと磁気特性との関係を調べた。なお、反
跳原子のエネルギ測定にあたっては、チャンバー内に基
板に接して設けられたタイム・オブ・フライト(TO
F)測定装置によって測定を行って評価した。その結
果、スパッタリングガスのエネルギーが10eV以下0.00
1 eV以上というように小さい場合に、保磁力(Hc)
が増加し、結晶粒子間の交換相互作用が小さな、高密度
磁気記録媒体に適した磁性体薄膜が得られることが判明
した。なお、入射エネルギーの値は、10eV以下0.001
eV以上であると高密度記録が可能な保磁力が得られ、
より好ましくは 1eV以下、さらには 0.1eV以下であ
るとより大きな保磁力が得られて好ましい。
【0026】入射エネルギーの値が、このように小さい
と大きな保磁力が得られるようになるのは、以下の理由
によると推定される。大きなエネルギーを持ったスパッ
タリングガス原子が基板に入射されると、基板上の磁性
体薄膜の成長が阻害され、合金を構成する各原子が均一
に入った結晶が形成され、また、膜質もポーラスになっ
て、磁気異方性エネルギーが減少し保磁力が小さくな
る。さらに、磁性結晶粒間の境界が不明瞭になるため、
交換結合相互作用が大きくなる。これに対して、10eV
よりも小さいエネルギーは、磁性体薄膜の結晶成長を阻
害するほどではなく、熱平衡に近い状態で結晶成長する
ことになり、たとえばCoPt結晶の粒間にCrが析出
するような膜成長が起こりやすくなる。この結果磁気異
方性エネルギーが増加し保磁力が大きくなり、交換結合
相互作用が小さくなる。
【0027】先にも述べたように、入射エネルギーの大
きさの下限は、スパッタリングガスの温度で表される。
最も沸点の低い不活性ガスであるHeの沸点は 4.1K
で、そのエネルギーは 3.5×10-4eVであることから考
えると、特殊な冷却機構を用いずに安定してスパッタリ
ングを行うためには、基板に入射するガスのエネルギー
は、0.001 eV以上が必要となる。
【0028】また、チャンバー内の排気に使用するポン
プの排気能力をあげてスパッタ率をよくするためには、
スパッタリングガスとして、Heより重い元素を用いる
ことが好ましく、一般にはArが用いられることが多
い。このArを用いて効率よくスパッタリングを行うた
めには、Arの沸点から考えて、基板に入射するガスの
エネルギーは、 7.5×10-3eV以上がより好ましい。な
お、Co合金のスパッタリングの場合、反跳粒子のエネ
ルギーを下げるにはArよりもさらに重いXeを用いる
ほうがより好ましい。したがって、Xeの沸点から考え
て、基板に入射するガスのエネルギーは、 0.015eV以
上であることがより好ましい。
【0029】本発明は上記知見を基に成されたものであ
り、本発明の磁気記録媒体の製造において、非磁性基体
上に磁性体薄膜よりなる磁気記録層をスパッタリング法
により形成するにあたり、エネルギーが0.001 eV以上
10eV以下、より好ましくは0.0075eV以上 1eV以下
のスパッタリングガスを非磁性基体に入射させて磁性体
薄膜を形成するようにしたことを特徴としている。
【0030】本発明の磁気記録媒体の製造方法におい
て、スパッタリングガスのエネルギーを0.001 eV以上
10eV以下という小さい値に制御する手段としては、ス
パッタリングガスが室温以下に冷却されていることが好
ましい。それは、以下の理由による。前述したように、
磁性体薄膜の磁気特性に影響を及ぼすとされる、薄膜作
製時に基板に入射されるスパッタリングガスのエネルギ
ーは、その最低レベルがガス温度となる。したがって、
スパッタリングガスの温度を下げてやれば、基板に入射
されるエネルギーを小さくし易くなって、より大きなH
cを得易くなるからである。
【0031】本発明においてスパッタリングガスを冷却
するにあたって、装置的により簡単にスパッタリングガ
スを冷却する方法としては、チャンバー外でガスを冷却
し、冷却されたガスをチャンバー内に導入するようにす
る方法があげられる。チャンバー外でガスを冷却してチ
ャンバー内に導入するには、ガス導入管の一部に冷却器
を設けたり、ガス導入管を液体窒素や液体ヘリウムの中
を通すようにするなどの方法があげられる。
【0032】導入するスパッタリングガスの温度を下げ
る効果と同様の効果は、スパッタ装置の真空チャンバー
全体を冷却することによっても得られる。すなわち、タ
ーゲットで反跳したりスパッタリングガス同士の衝突に
よって運動エネルギーを得たスパッタリングガス原子
は、多くはチャンバーの壁面にも衝突する。その際、壁
面から冷却されることによってスパッタリングガス原子
の運動エネルギーはより小さくなる。また、チャンバー
からの冷却によるチャンバー内のスパッタリング原子の
冷却の作用もある。チャンバー全体を冷却する方法とし
ては、チャンバー内に冷却された冷熱体を設置したり、
あるいはチャンバーの側壁面を冷却するなどの方法があ
げられる。側壁面を冷却するには、側壁面を冷却器に直
結したり、液体窒素などをスパッタリングチャンバーの
周囲に循環させるなどの方法がある。
【0033】上記の冷却によるスパッタリングガスのエ
ネルギー制御法は、薄膜の機械特性・密着性などのHc
以外の諸特性を向上させる目的にも条件設定されてい
て、あまり変えることができない場合に有効である。
【0034】さらに、本発明の磁気記録媒体の製造方法
においては、真空チャンバー内の基板とターゲットとの
間にシールド板を設置して差動排気とすることが望まし
い。シールド板の位置、スパッタリングガス流量や排気
速度調節弁の調節によって差動排気とすることにより、
基板近傍のスパッタリングガス原子濃度を変えることが
できる。基板近傍のスパッタリングガス濃度を変化させ
ることによっても、基板に飛び込んでくるスパッタリン
グガス原子の速度すなわちエネルギーを変えることがで
きるのである。
【0035】
【発明の実施の形態】以下本発明を実施例にしたがって
説明する。
【0036】実施例1〜7 図1に示す断面構造を有する磁気記録媒体を作製した。
図1に示されるように、ガラス基板11の上に磁性体薄
膜12および非磁性保護層13が設けられている。作製
にあたり、図2にその概略を示すスパッタリング装置を
用いて磁性体薄膜を作製した。図2に示されるように、
真空チャンバー20の内部には、対向させてに設けられ
たターゲット21と基板22の間に、シールド板23が
設置されている。シールド板23は図に示す矢印の向き
に動かすことができる。スパッタリングガス24は、ス
パッタリングガス導入口25からチャンバー20の内部
へ導入される。チャンバー20の内部は真空ポンプ26
によって排気される。排気の状態は排気速度調節弁27
によって調節される。基板22には、TOF分析装置2
8が取り付けられ、基板22に入射するスパッタリング
ガス24のエネルギーを測定した。ターゲット21とし
てはCoPtCr合金を用い、スパッタリングガス24
としてはXeを用い、ターゲットにDC電圧 300Vを印
加してスパッタリングを行い、厚さ25nmのCoPtC
r磁性体薄膜を作製した。
【0037】適切なガス流量や排気速度を選ぶことによ
り、シールド板の位置を変化させて、Xeガスの入射エ
ネルギーを0.05eV〜10eVの範囲で7通り変えること
ができた。そして、各エネルギーでスパッタリングを行
って磁気記録媒体を作製した。なお、磁性体薄膜の上に
は、厚さ15nmのCからなる保護膜を設けるようにし
た。
【0038】比較例1〜2 Xeガスの入射エネルギーを10eV以上の範囲で2通り
に変化させてスパッタリングを行った他は実施例と同様
にして、磁気記録媒体を作製した。
【0039】次いで、上記した実施例および比較例によ
り得られた磁気記録媒体について、評価するにあたっ
て、保磁力の測定とΔMの算出を行った。このΔM法と
は、磁性体薄膜の結晶粒子間の交換結合相互作用の強さ
を評価する手法であって、一方向磁化した場合と交流消
磁した場合の残留磁化状態からの磁化の立ち上がりの差
を調べるもので、ΔMが大きいほど(1で規格化されて
いる)交換結合相互作用が大きいことを示す。
【0040】図3には、上記した実施例および比較例の
磁気記録媒体における、作製時のスパッタリングガスの
入射エネルギーと、それらの面内方向の保磁力とΔM評
価の測定結果を示す。図3において、○印は面内方向の
保磁力を示し、△印はΔMを示す。○印および△印に付
した1〜7の数字は実施例の番号を表し、比1および比
2は、比較例1および比較例2を表す。図3からも明ら
かなように、基板に入射させるスパッタリングガスのエ
ネルギーが10eVよりも小さくなるあたりから、作製さ
れる磁気記録媒体の保磁力が 2kOeを越え、 0.1eV
以下では 3kOe以上に増加するのがわかる。また、Δ
Mの値はエネルギーが小さくなるほど小さくなり、やは
り10eVを越えるところで急激に減少し 0.4以下となっ
ている。
【0041】なお、これまでに、10Gb/in2 程度の
高密度磁気記録を実施するためには、 2kOe以上ある
いは 2.5kOe以上、あるいは 4.5KOe程度必要であ
るとする報告(M.Futamoto et.al.:IEEE Trans.Magn.,M
AG-27,p.5280,1991)、(E.S.Murdock:IEEE Trans Magn.
vol.28,NO.5,p3078,1992)などがある。したがって、本
発明によれば、高密度磁気記録を実施するのに十分高い
保磁力を有する磁気記録媒体が得られることが理解され
よう。
【0042】実施例8 スパッタリングガスにArを用い、基板に入射するガス
の温度を室温と同じにした他は、実施例1〜7との場合
と同様にしてスパッタリングを行い、磁性体薄膜を作製
した。TOF測定による分析の結果、スパッタリングガ
スの入射エネルギーは 1eVであった。
【0043】実施例9 スパッタリングガスの温度を 100Kにした他は、実施例
8の場合と同様にしてスパッタリングを行い、磁性体薄
膜を作製した。その結果、基板に入射するスパッタリン
グガスのエネルギーは0.12eVであった。
【0044】実施例10 スパッタリングガスの温度を30Kにした他は、実施例8
の場合と同様にしてスパッタリングを行い、磁性体薄膜
を作製した。その結果、基板に入射するスパッタリング
ガスのエネルギーは0.08eVであった。
【0045】なお図4は、実施例8〜10において、導
入したガスの温度と基板に入射するスパッタリングガス
のエネルギーの関係を示している。図中の○印に付した
数字は実施例の番号を表す。図4からも明らかなよう
に、導入するスパッタリングガスの温度を室温から下げ
ていくにしたがって、入射エネルギーが小さくなること
が分かる。図3の結果とも合わせると、導入するスパッ
タリングガスを室温よりも低い温度に冷却することによ
り、作製される磁性体薄膜の保磁力を増加させ、磁性結
晶粒子間の交換相互作用を減少させることが確認され
た。
【0046】なお、大きな保磁力を得るという観点から
はガス温度は低ければ低いほど好ましいが、低い温度に
冷却するほどガス冷却のための装置が複雑になるという
欠点がある。したがって、 100K近辺のガス冷却温度で
あれば、液体窒素を用いて比較的簡単な装置で実現され
るので、冷却するガスの温度としては、 100Kがより実
用的で好ましいといえる。
【0047】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
保磁力が大きく、結晶粒子間の交換結合相互作用の小さ
な磁性体薄膜が容易に作製できるため、高密度記録が可
能な磁気記録媒体を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る磁気記録媒体の一例の断面図であ
る。
【図2】本発明に係る磁気記録媒体の磁性体薄膜を作製
するスパッタリング装置の一例を示す概略図。
【図3】本発明に係る磁気記録媒体の作製時に基板に入
射されるスパッタリングガスのエネルギーと、作製され
た磁気記録媒体の面内方向の保磁力およびΔMの値との
関係を示す図である。
【図4】導入するスパッタリングガスの温度と基板に入
射されるスパッタリングガスのエネルギーとの関係を示
す図である。
【符号の説明】
11………基板 12………磁性体薄膜 13………非磁性保護層 20………真空チャンバー 21………ターゲット 22………基板 23………シールド板 24………スパッタリングガス 25………スパッタリングガス導入口 26………真空ポンプ 27………排気速度調節弁 28………TOF分析装置

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性基体上に磁性体薄膜よりなる磁気
    記録層をスパッタリング法により形成して成る磁気記録
    媒体において、 前記非磁性基体に入射するスパッタリングガスのエネル
    ギーが0.001 eV以上10eV以下となるようにして、前
    記磁性体薄膜が形成されていることを特徴とする磁気記
    録媒体。
  2. 【請求項2】 前記磁性体薄膜が、少なくともCoを含
    む合金からなることを特徴とする特許請求の範囲請求項
    1記載の磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 前記スパッタリングガスが、室温以下に
    冷却してスパッタリングチャンバー内に導入されること
    を特徴とする特許請求の範囲請求項1あるいは2記載の
    磁気記録媒体。
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