【発明の詳細な説明】
光架橋性フィルムを形成可能なアクリルラテックス発明の分野
本発明は光架橋性フィルムを形成することができるアクリルラテックスに関す
るものである。
従来のラテックス塗料はアクリル(コ)ポリマーの水性エマルジョンを利用し
ており、これは除々に乾燥して凝集フィルム(film coalesce)を形成する。この
塗料を建物、特に戸外で使用した場合には、それが迅速に乾燥して埃がつかない
状態となり、基本的に表面は硬化するが下側層は一定の柔軟性を維持して支持体
の欠陥(例えば、壁の微細な裂け目等)をカバーし、耐汚染性を良くすることが
が期待されている。従来の技術
専門家の興味は、得られたコポリマーが使用温度より低いガラス転移温度Tg
を示し、ポリマーフィルムが使用温度で凝集(coalescence)できるようなα,β
−不飽和モノマーをエマルジョン共重合させたラテックスを得ることにある。
このフィルム材料は熱可塑性で、凝固後に架橋による後硬化を行うことができ
る点で非常に有利である。この後架橋によってポリマー鎖が架橋し、ラテックス
の塗膜粒子が互いに架橋してフィルムが凝集し、共重合体の特性が変わる。
架橋は種々の方法で行うことができるが、この塗料は外装塗料すなわち自然の
紫外線に曝される塗料として用いられるので光架橋を利用するのが適当と思われ
る。光重合機構を利用する
光架橋では光または電磁線を用いて官能性モノマー、オリゴマーまたはポリマー
を重合させる。系が吸収したエネルギーは分子間に新たな結合を作るのに利用さ
れる。光架橋は光重合開始剤、架橋剤、光架橋性ポリマーを用いて行うことがで
きる。塗料のように既に複雑な配合物では簡単にするために光架橋性ポリマーの
溶液が有利である。
改良すべきラテックスはアクリル型ラテックスであるので、鎖状構造中にメタ
クリレート基と反応性官能基とを有する別のモノマー、すなわち凝固したラテッ
クスフィルムに放射線を照射した時に架橋を誘導するような公知の反応性官能基
を有するジシクロペンテニル−オキシエチルアクリレート、好ましくはジシクロ
ペンテニルオキシエチルメタクリレート(DCPOEMA)(図1)を導入する
方法が提案されている。
このDCPOEMAは反応性が異なる2つの二重結合を有し、一方はアクリル
性二重結合であり、実際に通常のアクリルモノマーの二重結合のように挙動する
。他方の二重結合は環状の二重結合で、明らかにより反応性が低いが適当な処理
によって後架橋させることができる。
DCPOEMAは外装用ラテックスの添加剤の他に、反応性凝集剤(米国特許
第4,097,677号)、ラテックス粒子の可塑剤、フィルム形成最低温度低下剤、金
属塩の存在下での乾燥剤として用いられている。DCPOEMAは硬度の高いフ
ィルムを形成させる。この物質は欧州特許第20,125号にも記載されており、ポリ
プロピレンに対する接着を促進するイソボルニル(メタ)アクリレートと組み合
わせて乳化重合で得られるラテックス中の任意コモノマーとして用いられている
。その場合には自己酸化による架橋剤の役目をする。
米国特許第4,144,212号では類似化合物のジシクロペンテニルアクリレートお
よびメタクリレート(PCPAおよびDCPMA)が金属塩の存在下で乾燥可能
な優れた耐溶媒性を有する塗料を作るラテックスでの機能性コモノマーとして用
いられている。
DCPOEMAは最近、耐塩基性「コア・シェル」ラテックスで用いられるコ
モノマーとして報告されている(欧州特許第478,193号)。この場合にはDCP
OEMAは粒子の中心と表皮層との間の係合サイトとして用いられている。発明の説明
本発明者は、乳化重合で得られたラテックスに光重合開始剤を添加することに
よってDCPOEMA共重合体のラテックスフィルムに光架橋特性を付与できる
ということを見い出した。
この操作は極めて簡単であるが、その効果は予想できないものである。すなわ
ち、光重合開始剤はラテックスを構成する顕微鏡的には不均質な媒質中に導入さ
れるのであり、しかも、架橋フィルムが形成される乾燥操作の初期に除去されて
しまう水性連続相中に導入されるので、その効果は予想できないものである。
従って、本発明の対象は、光重合開始剤を含有したα,β−不飽和化合物とジ
シクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(DCPOEMA)との共重合体
より成るラテックス組成物にある。この組成物でのDCPOEMAの含有率は共
重合体全体に対して50%にすることもできるが、架橋はDCPOEMAの含有率
に大きく依存し、本発明の条件下ではDCPOEMAの含有率は0.01%でも有効
である。
光重合開始剤は一般に水溶性のものと有機溶媒に可溶なものとに分類される。
これらの化合物は当業者には公知の物質である。本発明では自然光または紫外線
の波長領域で利用される工業用放射線源の下でDCPOEMA共重合体フィルム
を架橋させるので、本発明で用いられる光重合開始剤は紫外線領域で機能する光
重合開始剤にする。本発明では光重合開始剤を液体状態のラテックスに対して0.
01〜5重量%の割合で使用する。
本発明で使用される水溶性光重合開始剤として下記のベンゾフェノンまたはチ
オキサントンの第4級アンモニウム誘導体を挙げることができる:
(4-ベンゾイルベンジル)トリメチルアンモニウムクロライド(図2)すなわち
Cantacure BTC(Octel Chemicals社)
2-ヒドロキシ-3-(4-ベンゾイルフェノキシ)-N,N,N-トリメチル-1-プロパナミ
ニウムクロライドモノハイドレート(図3)すなわちCantacure BPQ(Octel Che
m.社)(吸収帯が可視領域の方にずれており、そのため着色配合物にとって非常
に有利である)
2-ヒドロキシ-3-(3,4-ジメチル-9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イロキシ)-N,
N,N-トリメチルプロパナミニウムクロライド(図4)すなわちCantacure QTX(O
ctel Chem.社)(最大吸収が400nmまで変位する。この物質は微量で使用可能で
あるのでこの物質を含有する配合物は黄色に着色するという欠点を小さくするこ
とができる)
(2-アクリロキシオキシエチル)(4-ベンゾイルベンジル)-ジメチルアンモニウ
ムブロミド(図5)すなわちOctel Chem.社のABQ(末端のビニル基によって
共重合体の他の成分と共重合できるので、架橋後の塩析(relargage)率が非常に
小さいと
いう利点が得られ、場合によってはラテックス合成時に直接導入することもでき
る)
これらの第4級誘導体は粉末で、最少限の蒸留水に溶解してからラテックスに
添加する。
紫外線の波長領域で機能する一般的な有機溶剤溶解性の光重合開始剤はベンゾ
フェノンとチオイキサントンであるが、これらは室温では結晶であり、疎水性で
あるのでラテックス用としてはほとんど実用的でない。従って、官能基を有する
ベンゾフェノン、例えば1-(2-エチルヘキシロキシ)-2-(アセトキシ)-3-(2-ベン
ゾイルベンゾイロキシ)プロパン(図7)が好ましい。これはL.Pouliquen(Lill
e 1991)の論理に従って合成され、EHGE−BBAと名付けられ、室温で液体
であるという利点がある。
また、下記のような置換基を有するフェニルプロパノン型の誘導体が好ましい
:
2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン(図8)(Merk社から商
品名 Darocur 1173 で市販)(この物質は水と混和しないがほとんどの有機溶媒
に可溶な液体で、攪拌しながらラテックスに導入することができる。この物質は
塗料が黄変しないという利点があるが、過度に長時間紫外線照射に曝すとその効
果の一部を失う。過度に激しい高温空気流でフィルムを乾燥させても同様な結果
となることがある。配合物中に占める好ましい量は0.5〜5%である)
この誘導体の1つ:2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[(4-イソプロペニル)-フェニル
プロパン-1-オン(図6)のオリゴマーが非常に有効であることは分かっている
。この物質は、オリゴマー鎖に沿って側鎖結合したヒドロキシアセトフェノン基
を有す
る他の重合開始剤と同様に、塗料をごくわずかにしか黄変させないという利点が
ある。この物質はFratelli Lamberti社から
2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ−プ
されている。この物質はモル吸光係数が高いという特徴を有し、それによって入
射光線の吸収に適し、従って、酸化チタンを充填した塗料配合物で重要である。
これは最小限のブチルジグリコールアセテートに溶解して使用する。
本発明のラテックスはα,β−不飽和コモノマーとDCPOEMAとの混合物
をエマルジョン共重合させて得られる共重合体の懸濁液である。α,β−不飽和
コモノマーは多くの文献、例えばポリマーハンドブック第3版(Weley Interscie
nce)に記載されており、ここでそのリストを示すことは無意味であり、省略する
。
下記実施例では極めて一般的なメチルメタクリレート(MMA)(図10)とブ
チルアクリレート(BuA)(図11)とを非限定的な例として挙げる。これらは生
成するポリマーのガラス転移温度Tgを−50℃〜+100℃の値に容易に設定可能
な組み合せである。共重合体のガラス転移温度は下記フォックスの法則で予測で
きるということは理解できよう:
(ここで、Tgiはコモノマーのガラス転移温度係数(°K)であり、xiは各成
分重量である。MMAのTgは+105℃であり、BuAのTgは−54℃であり、D
CPOEMAのTgは−20℃である。)
本発明のラテックスより得られるフィルムの感光性はマイクロリトグラフィ用
樹脂の評価で一般に用いられるいわゆる「ネガティブフォトレジスト」試験を用
いて求められる。すなわちマスクシステムを介して感光性ポリマーフィルムに単
色または多色光を当て、こうして特定の波長領域が照射されたフィルム部分は架
橋して不溶化し、未照射部分は溶解可能であるのでアセトン等の溶媒を用いた簡
単な洗浄で除去できる。残った部分は支持体に接着する。必要な場合には色素を
用いて着色することができる。
実際の試験は下記3段階で行われる:
a) フィルムをポリエステル片に付着させる。すなわち、較正済みの厚さ25μm
のブレイブの螺旋状角棒定規(reglette a spirale calibree Braive)を用いて表
面積16×18cm2、厚さ75μmのポリエステル片にフィルムを付着させた。この支
持体を水平板上に張り付ける。フィルモグラフに感光性液体配合物を細長く付着
させた後、素早く支持体表面全体に広げて水を蒸発させ、できるだけ厚さが一定
なフィルムを作る。ラテックスフィルムの凝集時に水が蒸発して厚さは12〜14μ
mが得られる(合成ラテックスは約50%の水を含有する)。
b) 露光。フィルムの支持体を滑りフレームの寸法に合わせて切断し、マスクは
円形穴で構成し、各操作で同一表面を時間を変えて露光できるようになっている
。露光は大気中で室温(約18℃)で行い、露光時間中同じ強度にする。実施例で
は900ワットのキセノンランプHANOVIA L5 430 000を用い、40アンペアで得られ
る強度は254nmで14mW/cm2、365nmで82mW/cm2である。
C) 現像。未照射のフィルムはアセトンを用いて支持体から簡単に除去できる。
フィルムの十分に照射された部分は支持体に接着されたままとなり、裸眼で見る
ことができる。感光性Sの測定
光架橋性ポリマーの実際の感光性Sをポリマーフィルムを完全に架橋させるの
に必要な最小光エネルギーの逆数として定義する:
(ここで、Eは1cm2のポリマーを完全に不溶性するのに必要な最小エネルギ
ーであり、Iはポリマーフィルムが受けるエネルギー受光量(Watt/cm2)であり
、tは照射を受けた部分が完全に架橋するのに要する時間(秒)である)
不溶化に要する時間は、照射された円形部分を肉眼で検査して決定し、その時
間に5〜10%の許容誤差を認めるのが妥当である。塗料
使用する塗料は建物外装用塗料で、原則として対照試験をより有意義なものに
するために汚れに対して不都合な成分を除いたものにする。この塗料は主として
下記成分を含んでいる:
(1) セルロース系増粘剤。塩基性媒体で粘度上昇。
(2) ポリホスフェート分散剤。“Mouillant”、水に懸濁された疎水性粒子を安
定化させる。
(3) 殺菌剤
(4) アクリル系分散剤。粒子を湿潤させて安定化させる。
(5) アルカリ化剤((1)に関連して)。
(6) 消泡剤。泡を抑え、発泡を予防または消泡、
(7) ルチル型の酸化チタン。不透明化および白化用、非常に微細な粒子(平均粒
径Fm<1μm)、充填剤。
(8) 炭酸カルシウムCaCO3の粒子。平均粒径Fm=5μm、充填剤。
(9) 炭酸カルシウムの粒子、平均粒径F m=10μm、充填剤。酸化チタンTiO2は
粒子が非常に微細である(Fm<1μm)ので光沢のある塗料が得られる。5〜10
μmのCaCO3充填剤ではサテン状の艶のある塗料またはマットな塗料が得られる
。3種類の粉末(7)、(8)および(9)を組み合わせることによって空隙がほとんど
なく、粒子が互いに良く転がる充填剤が得られる。
(10)ラテックス、結合剤、その凝集によって塗料フィルムが形成される。
(11)凝集剤。高いTgを下げるために用いられる。一般にはブチルジグリコール
(BDG)またはブチルジグリコールアセテート(BDGA)。
(12)ポリウレタン増粘剤。塗料の最終粘度とフィルムの弾性および引張応力を調
節する。
(13)「粘度」水。最終粘度の微調整を行う。
塗料の製造は簡単である。ステンレスのビーカと適当なブレードを備えた攪拌
機とを用いて作業する(例えば500 mlのビーカ+No.55のブレードか、1000mlの
ビーカとNo.70のブレード)。導入の順序は非常に重要である。攪拌しながら水
に(1)を加える。3分間膨潤させ、(2),(3),(4),(5)および(6)を加える。これ
とは別に(7),(8)および(9)を混合する。この粉末を攪拌
しながら混合物に加える。冷水浴で冷却し、2000回転/分で20分間攪拌を継続す
ると鹸化する。(10)、(11)、(12)および(13)を添加し、5分間混合して塗料を得
る。耐汚染性試験
この試験は塗料表面すなち照射後に硬い表面と柔かい芯部分とを有する比較的
厚い着色フィルムの表面の架橋状態を評価するためのものである。試験の原理は
簡単である。支持体に塗料フィルムを塗布した後、標準的な方法で乾燥し、複数
の方法でプレートを照射する。次いで、結合剤を含まない水ベースの(スラリー
状)顔料ペーストを用いて外装剤を人為的に汚染(着色)する。一定時間乾燥さ
せた後、透明な水を流してプレートを洗浄する。結合剤を含まないためにスラリ
ーは極めて容易に除去される。こうして外装剤はわずかに着色した状態となる。
スラリーを構成する着色顔料を適当に選択することによって残留する色で自然の
汚れを代表させることができる。分光比色計を用いてスラリーの塗布の前後で色
の変化を測定する。
実際の試験は下記の段階を含む:
1) 予めMEC(メチルエチルケトン)を用いて脱脂したステンレスプレートに
塗料を塗布する(自動アプリケータを用い、滑らかなバーコータで200 μmの厚
さに塗布する)。試験の再現性を確認するために各配合物について3回テストす
る。
2) 標準的な条件(23℃、相対湿度H.R.=50%〜75%)下で乾燥させる(1週間
)。
3) 分光比色計でCIE値:輝度L、赤色指数aおよび黄色指数bを測定する。
分光比色計の名称はHunterlabである。
使用する光源は10°でD65(昼間の光)である。標準白色塗料(参照番号SN C5
240)は下記の絶対値を有する:
L=92.99、a=-1.11、b=-0.72
4) 光化学的処理:戸外暴露用ラック上で太陽光に当てるか、老化シュミレーシ
ョン装置“QUICK UV”(Q-Panel社)のQUV:313nmの紫外線を4時間、その後
湿分で4時間のサイクルを行う。
5) 大気中で1時間乾燥させる。
6) ブラシを用いて黒色、黄色および赤色の酸化鉄の混合物を塗布する。
7) 大気中で乾燥させる(3時間)。
8) 60℃のオーブンで1時間乾燥させる。
9) 柔らかい紙で擦りながら紙に色が付かなくなるまで水で洗浄する。
10) 分光比色計を用いてスラリーを塗布する前後でCIE値:L、aおよびbを
測定する。変化分dL、daおよびdbを計算する。実施例 実施例1
(ラテックスの合成)
合成されたラテックス組成物とその各成分の割合は以下の通りである:原液
脱イオン水 45.5部
REWOPOL (WITCO) NOS 25(35%) 0.7部
(ノニルフェノールポリグリコールエーテルサルフェート)
REWOPAL (WITCO) HV 25 (80%) 0.6部
(ノニルフェノルポリグリコールエーテル)メタ重亜硫酸ソーダ溶液
脱イオン水 2.0部
メタ重亜硫酸ソーダ 0.3部プレエマルジョン
脱イオン水 41.7部
REWOPOL NOS 25 (35%) 6.4部
REWOPAL HV 25 (80%) 0.6部
モノマー 100 部重合開始剤
脱イオン水 6.0部
過硫酸アンモニウム 0.3部
下記モノマー混合物から各種共重合体を得た。比較例としてDCPOEMAの
代わりに水素化均等物(環に二重結合を持たない)を用いたラテックスを製造し
た。水素化されたDCPOEMAはDCPOEMAhで表した。
(AA=アクリル酸、NMA=N-メチロールアクリルアミド)
各合成で用いた操作方法は以下の通り:
1) 反応器に原液を入れ、67℃に加熱する。一方、プレエマル
ジョンと、メタ重亜硫酸ソーダ溶液と、重合開始剤溶液とを調製する。
2) 反応器にメタ重亜硫酸ソーダ溶液を導入する。
3) 反応温度を67℃に保ちながら、プレエマルジョンと重合開始剤とをそれぞれ
4時間30分かけて同時に導入する。
4) 導入終了後、67℃以上でさらに1時間反応させる。
5) 冷却後、28%アンモニア水を用いてpHを8.5にする。
合成されたラテックスの主要特性は以下の通り:
光重合開始剤を用いない場合、これらのラテックスは感光性を示さない。実施例2
この実施例ではラテックスDをベースとしたワニス型配合物について複数の水
溶性または有機溶媒溶解性の光重合開始剤を種々の量でラテックスDに添加して
その効果を調べた。使用した試験はネガティブ型フォトレジスト試験である。
湿ったラテックスフィルムは25μmの厚さを有する。凝集期に水が蒸発する。
水は懸濁液の質量の約50%を占めているので
凝集後のフィルムの厚さは凝集前の約半分になる。正確な測定で平均厚さは12〜
14μmと決定された。
HANNOVIAランプ(900ワット)を照射した領域のアセトンでの溶解性を調べて
架橋度を評価した。
下記の表は照射領域がアセトン中で完全に不溶になる(すなわち完全に架橋す
る)のに要する最短時間(秒)で各光重合開始剤の効果を表したものである。
%値は湿ったラテックスに対する重量%である(凝集後のフィルムでの光重合
開始剤の割合を出すにはこれらの値を2倍す
る)。
試験した各光重合開始剤で架橋時間が最も短くなる最適な%が存在する。最適
割合をDCPOEMAのモル数に対する光重合開始剤のモル数で表した。
上記結果は外装剤を十分に架橋させるのに必要な時間を示す図12のグラフに表
してある。この時間が短ければ短いほど、対応する光重合開始剤の性能が高いこ
とになる。一方、経済性または毒性上の理由から光重合開始剤の濃度はできるだ
け低くするのが望ましい。その選択は当業者の自由であることは明らかである。実施例3
この実施例もまたワニスの塗布に関するものである。ラテックスA(DCPO
EMAを含まない)にCantacure BTCを添加し、先に行った試験と比較してDC
POEMAの有利性を評価した。
上記でラテックスDについて行った光化学的試験と全く同一の条件でネガティ
ブ型フォトレジスト試験を行った。結果は下記の表に示す。
この系の効果係数は約1/5ある。実施例4
ラテックスG(DCPOEMAh)にCantacure BTCを添加し、先に行った試
験と比較して、同じくネガティブフォトレジスト試験によってDCPOEMAの
有利性を評価した。
結果を下記の表に示す。
この系の効果係数は約1/6ある。実施例5
(塗料の塗布)
ここではスラリーを塗布し、洗浄した後に輝度の変化を調べることによって塗
料配合物の架橋効率を評価した。使用した塗料配合物は以下の通り:
配合塗料中のDCPOEMA、光重合開始剤およびジメチルエタノールアミン
(DMEA)の比率を制御して実験計画に従って3シリーズの試験を行った。上
記パラメータは従来の光架橋性系組成で一般的な配合物に対するアミンの寄与を
調べるためのものである。3シリーズは下記の通り:
ラテックス中のDCPOEMAの%、最終的に得られる塗料中の光重合開始剤
の%およびDMEAの%の各パラメータに関して3つ1組(トリプレット)にし
た7組の値を採った。追加の3つのトリプレットで試験の妥当性が確認される。
図13はこれら7つのトリプレットを3元図にプロットしたものである。この図
ではパラメータ値X1、X2およびX3は0〜1の全ての値を取ることができ、
X1+X2+X3=1である。7回の試験を行うとこれら3つのパラメータは極
めて正確な値になる。トリプレット8〜10から結果を細分化できる。
シリーズ1:光重合開始剤=BPQ,処理方法:QUV
(313nmの紫外線に4時間および湿度4時間)
シリーズ2:光重合開始剤=BPQ,処理方法:太陽光で1日
シリーズ3:光重合開始剤=QTX,処理方法=太陽光で1日
汚染後の輝度が他の全ての塗料よりも高い下記2つの配合物があることが分か
る:
このことは、フリーのアミンが存在しないことで表面架橋性が損なわれること
はなく、DCPOEMAの割合を高くし過ぎても無意味であることが分かる。実施例6
(塗料の塗布)
下記の新規な塗料配合物を用いた:
使用したラテックスはラテックスA、B、C(それぞれDCPOEMAを0、
1および2%含有する)であり、これらを用い、光重合開始剤としてのABQを
種々の%で混合して塗料を作った。ABQは添加前に最少限の蒸留水に溶解(2.
5 gの水に3.1 gのABQ)させた。適用上の問題(固形分の変化)なしに塗料
の配合を変えることができるようにするためにABQの量は(最終塗料に対して
ではなく)湿ったラテックスに対するABQの重量パーセントで表した。
図14の試験グラフは使用点を示している。
配合後、表面が光架橋性になった塗料をステンレスのプレート上に厚さ200 μ
mに広げ、下記の各光化学試験を行った。
1) QUV(紫外線4時間+凝集4時間)を通過させるか、
2) 6日間乾燥(23℃、相対湿度50%)した後、太陽の紫外線に3日間暴露させ
るか、
3) 太陽の紫外線に15日間暴露させるか、
4) 太陽光線に2ヶ月暴露させる。
各感光性配合物(合計13種類)を上記4種類の光化学処理で処理した後、スラ
リーでプレートを人為的に汚染し、その後に洗浄した。
輝度の測定は塗料をステンレス鋼に塗布し、UVに曝し、さらにスラリーを洗
浄してから行った。結果は塗料塗布後の測定値Lとスラリー洗浄後の測定値Lと
の差dLで表した。下記の表は係数b、特に係数b1(ラテックス中のDCPO
EMAの%の効果)、b2(配合物中のABQの%の効果)およびb12(上記2
つのパラメータの相互作用の効果)をまとめたものである。
これらの値から下記の式に従ってdLの値が計算できる:
Y=dL=b0+b1.X1+b2.X2+b11.X1 2+b22X2 2+b12.X1.X2
(ここで、X1およびX2は0〜1で変化し、X1+X2=1である)
プレートをスラリーで汚染すると輝度は低下するので、dLの値は常にマイナ
スである。dLの値が0に近いほど(汚染の前後で輝度が近い)、配合物の汚染
に対する効果が高い。b1およびb2の結果がプラスであることから、ラテック
ス中の光重合開始剤ABQの割合が増加し、DCPOEMAの割合が増加するこ
とがプラスの効果を与えることが分かる。
セルロースまたはアクリル増粘剤を含む配合物を自然光に3日間および2ヶ月
間暴露させた後のdLの等回答曲線(courbesd'isoreponses)はほぼ同じである(
図15〜18)。理想的な配合は×印で示してある。
a) セルロース増粘剤を含む配合:
3日間暴露後(図15)、dLの最大値は−4になる。2ヶ月間太陽に曝した後
(図16)で値は−0.5まで上昇する。従ってこの2つの期間の間に耐汚染性が著
しく向上することが分かる。
b) アクリル増粘剤を含む配合:
太陽の紫外線に3日間暴露後(図17)、既にdLの最大値は−0.5に達する。
2ヶ月暴露後(図18)もこの性能はそれ以上大きく向上しない。
以上の結果から、有機部分に1.5〜2%(質量)のDCPOEMAを含む湿っ
たラテックスに対して約1.75重量%の割合の光重合開始剤ABQを含む耐汚染性
に優れた光架橋性塗料組成物、特にアクリル増粘剤を含む組成物が好ましいこと
が分かる。産業上の利用分野
本発明は例えばインク、接着剤、織物用顔料印刷製品または皮革の仕上げ剤、
特にワニスと塗料用光硬化性組成物の製造で利用される。
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DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
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TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ),AM,
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