JPH0950806A - アルカリ蓄電池用水素吸蔵合金の製造方法 - Google Patents

アルカリ蓄電池用水素吸蔵合金の製造方法

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JPH0950806A
JPH0950806A JP7201095A JP20109595A JPH0950806A JP H0950806 A JPH0950806 A JP H0950806A JP 7201095 A JP7201095 A JP 7201095A JP 20109595 A JP20109595 A JP 20109595A JP H0950806 A JPH0950806 A JP H0950806A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 作業性がよく、しかも十分に水素吸蔵合金の
活性度を高めることのできる酸処理方法を提供し、もっ
て充電初期の電池内圧が小さく、かつ優れた高率放電特
性及びサイクル特性を有するアルカリ蓄電池用水素吸蔵
合金を提供する。 【解決手段】 水素吸蔵合金粉末を酸性水溶液に浸漬処
理した後、前記酸処理済水素吸蔵合金粉末を、0.6重
量%〜10重量%の濃度のオキソ酸塩水溶液で洗浄する
ことにより、合金表面をオキソ酸塩処理し、更にこの合
金粉末を純水又は0.1重量%〜1重量%の低濃度オキ
ソ酸塩水溶液で洗浄することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はアルカリ蓄電池用水
素吸蔵合金の製造方法に関し、更に詳しくはアルカリ蓄
電池用水素吸蔵合金電極に使用される水素吸蔵合金粉末
の処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】水素吸蔵合金を負極活物質として使用す
るニッケル・水素蓄電池などのアルカリ蓄電池では、負
極活物質である水素吸蔵合金の活性度の優劣により電池
性能が大きく左右される。このため、この種の蓄電池に
は、電池化学反応性を高めるとともに電極基板への充填
密度を大きくすることを目的として、合金を粉砕して比
表面積を大きくした水素吸蔵合金粉末が使用されてい
る。
【0003】しかし、水素吸蔵合金は、極めて活性な物
質であるので粉砕工程中に酸化され、またその後の工程
中に容易に酸化されて合金表面に酸化皮膜を形成する。
この酸化皮膜は合金の電気導電性を低下させ、初期充放
電による初期活性化を阻害するため、酸化皮膜が形成さ
れると合金の電気化学的特性が低下する。
【0004】そこで、従来より粉砕工程等で酸化を受け
難くする処置や、粉砕工程等で酸化を受けた合金の活性
度を回復させるための処置が種々提案され、実施されて
いる。
【0005】上記提案としては、例えば、水素吸蔵合
金粉末を60℃以上の加熱水で処理する方法(特開平3
−98259号公報)、水素吸蔵合金粉末を酸性水溶
液に浸漬した後、水洗する方法(特開平4−17905
5号公報)、水素吸蔵合金粉末を酸性水溶液に浸漬
し、次いでアルカリ水溶液に浸漬した後、水洗する方法
(特開平4−98760号公報)、水素吸蔵合金の粉
砕時や保存時または水素吸蔵合金粉末に結着剤とを混練
したスラリーに、リン酸塩やケイ酸塩などの添加物を添
加することにより、水素吸蔵合金の酸化を抑制する方法
(特開平3−49154号公報)などがある。
【0006】ところで、上記〜の方法で水素吸蔵合
金粉末を処理した場合、粉砕時等に合金表面に形成され
た酸化物層や水酸化物層をある程度除去できるため、電
極の初期活性化が容易となり、電極利用率が向上する。
また、上記の方法を用いた場合、電極製造工程におけ
る合金の酸化を抑制できるので、酸化に起因する電気化
学的特性の劣化が防止できるという効果がある。
【0007】しかしながら、上記特開平3−98259
号公報に記載の技術は、処理に多くの時間を必要とし、
また酸化皮膜等の除去も十分になし得ないという欠点が
ある。
【0008】他方、上記特開平4−179055号公報
に記載の技術は、酸化皮膜等の除去効果が高く、前者に
比べ処理操作が簡単であるという利点を有しており、合
金を高濃度の酸性水溶液に十分に浸漬した場合、合金表
面の酸化物層等が除去でき、利用率を向上させることが
できる。しかし、高濃度の酸性水溶液を用いた場合、処
理合金の歩留りが悪くなり、また後記する理由で酸処理
の過程で合金表面に新たに水酸化物層が形成され、これ
が初期充電における電池内圧を上昇させ、或いは高率放
電特性を低下させるという問題がある。更に、酸濃度を
下げた場合には、合金表面の緻密な水酸化物層を十分に
除去できなくなるので、酸処理効果が十分に得られなく
なるとい問題がある。
【0009】また、上記特開平4−98760号公報に
記載の技術は、予め酸性水溶液に浸漬して合金表面の酸
化物層を除去した後、アルカリ水溶液に浸漬して水素吸
蔵合金粉末の表面を粒界の多い水酸化物で被覆すること
により、充放電の初期から十分な放電容量を引き出そう
とするものであるが、この技術においても、合金表面が
水酸化物層で覆われるため、初期充電時の電池内圧が高
くなり、また十分な高率放電特性を得られないという問
題がある。
【0010】これら技術に対し、上記特開平3−491
54号公報に記載の技術は、合金にリン酸塩等の添加物
を添加するという簡便な方法で、電極作製工程中におけ
る酸化を抑制できる点で有用な技術であるが、合金活性
を十分に高めることはできないという欠点がある。
【0011】以上のように、上記各技術は未だ十分なも
のではない。したがって、この種のアルカリ蓄電池の一
層の高性能化を図るため、水素吸蔵合金の電気化学的特
性を更に向上させることのできる合金処理方法が要請さ
れている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本願発明は、上記に鑑
みなされたものであって、作業性がよく、しかも十分に
水素吸蔵合金の活性度を高めることのできる合金処理方
法を提供し、もって充電初期の電池内圧が小さく、かつ
優れた高率放電特性及びサイクル特性を有するアルカリ
蓄電池用水素吸蔵合金電極を提供しようとするものであ
る。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は次のように構成される。請求項1記載の発
明は、水素吸蔵合金を酸性水溶液に浸漬処理する酸処理
工程と、前記酸処理した水素吸蔵合金に対し、0.6重
量%〜10重量%の濃度のオキソ酸塩水溶液で表面処理
するオキソ酸塩表面処理工程と、を備えたアルカリ蓄電
池用水素吸蔵合金の製造方法であることを特徴とする
【0014】請求項2記載の発明は、請求項1記載の発
明において、前記オキソ酸塩表面処理工程で処理した水
素吸蔵合金を、更に純水で浸漬保存する純水浸漬保存工
程を付加したことを特徴とする。
【0015】請求項3記載の発明は、請求項1記載の発
明において、前記オキソ酸塩表面処理工程で処理した水
素吸蔵合金を、更に純水で攪拌洗浄する純水攪拌洗浄工
程を付加したことを特徴とする。
【0016】請求項4記載の発明は、水素吸蔵合金を酸
性水溶液に浸漬処理する酸処理工程と、前記酸処理した
水素吸蔵合金に対し、高濃度のオキソ酸塩水溶液で表面
処理する高濃度オキソ酸塩表面処理工程と、前記高濃度
オキソ酸塩水溶液で表面処理した水素吸蔵合金を前記高
濃度オキソ酸塩水溶液よりも低濃度のオキソ酸塩水溶液
で攪拌洗浄する低濃度オキソ酸塩攪拌洗浄工程と、を備
えたアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金の製造方法であるこ
とを特徴とする。
【0017】請求項5記載の発明は、水素吸蔵合金を酸
性水溶液に浸漬処理する酸処理工程と、前記酸処理した
水素吸蔵合金に対し、高濃度のオキソ酸塩水溶液で表面
処理する高濃度オキソ酸塩表面処理工程と、前記高濃度
オキソ酸塩水溶液で表面処理した水素吸蔵合金を前記高
濃度オキソ酸塩水溶液よりも低濃度のオキソ酸塩水溶液
で浸漬保存する低濃度オキソ酸塩浸漬保存工程と、を備
えたアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金の製造方法であるこ
とをとを特徴とする。
【0018】請求項6記載の発明は、請求項4ないし請
求項5記載のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金の製造方法
において、前記高濃度オキソ酸塩水溶液の濃度が、0.
6重量%〜10重量%であり、前記低濃度オキソ酸塩水
溶液の濃度が、0.1重量%〜1重量%であることを特
徴とする。
【0019】
【作用】本発明のアルカリ蓄電池用水素吸蔵合金電極の
製造方法の各構成要素の作用について説明する。
【0020】水素吸蔵合金粉末を酸性水溶液に浸漬した
場合、粉砕工程中等において合金表面に形成された酸化
物層が除去され、合金表面に触媒活性な金属単離層(N
iリッチ層)が形成される。よって、合金の電気化学的
反応性が高まり、低温放電特性やサイクル特性が向上す
る。
【0021】しかし、従来の酸処理法には次のような問
題点がある。即ち、高濃度の酸性水溶液で酸処理を行う
場合であっても、酸処理の進行とともに水素イオンが消
費されるため、処理液pHが上昇する。このため、酸性
水溶液に浸漬した初期の段階(pH値が低い段階)にお
いて酸処理液中に溶出した希土類元素イオンが、酸処理
液pHの上昇に伴って水酸化物となって再び合金表面に
析出し希土類元素の水酸化物層を形成する。この水酸化
物の層は、合金の酸素消費反応を阻害して初期充電にお
ける電池内圧(電池初期内圧)を高めるとともに、高率
放電特性を悪くする原因となる。
【0022】つまり、従来の酸処理法では、酸化物膜の
除去をなしうるものの、新たに水酸化物の層が合金表面
に形成される結果、電池諸特性を十分に向上させること
ができないという問題が残されている。
【0023】本発明者らは、上記従来の問題点を種々検
討したところ、酸処理の後、酸処理済合金をオキソ酸塩
水溶液で表面処理することにより、上記水酸化物層の悪
影響を取り除くことができることを見いだし、本発明を
完成させた。本発明で上記問題点が解消される理由を以
下で説明する。
【0024】酸処理済合金をオキソ酸塩水溶液で処理し
た場合、合金表面の希土類元素の水酸化物は、処理液中
のオキソ酸イオンと反応してオキソ酸希土類元素化合物
となる。このオキソ酸希土類元素化合物は、前記水酸化
物に比べ親水性が高いので、合金表面の含液性が向上す
る。したがって、合金と電解液との接触性が高まり、酸
素消費反応等の電気化学的反応が円滑に進むようにな
る。その結果、電池初期内圧が低減し、また高率放電特
性が向上すると考えられる。
【0025】ここで、合金表面の含浸性を高めるために
は、表面処理液のオキソ酸塩濃度を高めるのがよい。し
かし、オキソ酸塩濃度を過剰に高めた場合には、必要以
上のオキソ酸塩が合金中に残留することになり、この残
留オキソ酸塩が電解液中に溶出してサイクル特性を大き
く低下させる原因となる。よって、サイクル特性の低下
を避けるためには、オキソ酸塩濃度を適性にする必要が
ある。しかして、表面処理液のオキソ酸塩濃度を、0.
6wt%〜10wt%(重量%)の範囲とした場合には、サ
イクル特性を大きく低下させることなく、電池初期内圧
特性や高率放電特性を向上させることができる。
【0026】また、上記と同様な理由から、オキソ酸塩
水溶液で表面処理した合金粉末を純水(イオン交換水)
又はより低濃度のオキソ酸塩水溶液で24時間以上浸漬
保存(静置保存)すると、過剰のオキソ酸塩が除去でき
るので好ましい。
【0027】更に、上記低濃度のオキソ酸塩水溶液のオ
キソ酸塩濃度を、0.1wt%〜1wt%とするのが好まし
い。この濃度であると、合金の含液性を保持できる程度
のオキソ酸塩を合金中に残し、かつ過剰のオキソ酸塩を
除去することができるので、好都合である。
【0028】一方、24時間の浸漬保存に変えて、純水
又は低濃度のオキソ酸塩水溶液で攪拌洗浄するのも好ま
しい。この場合、低濃度のオキソ酸塩水溶液の濃度を
0.1wt%〜1wt%とするのがより好ましい。攪拌洗浄
であると、前記浸漬保存に比べて極短時間に上記24時
間浸漬保存と同様な効果が得られる。
【0029】なお、上記において、浸漬保存とは、合金
粉末及び溶液が動かない状態(静置状態)にして合金を
貯蔵することをいう。また攪拌洗浄とは、前記浸漬保存
に対する概念であり、合金粉末と、純水又はオキソ酸塩
水溶液とを動的に接触する状態にすることをいい、合金
粉末が動く場合であっても、溶液の方が動く場合であっ
てもよく、その方法は問わない。
【0030】
【実施の形態】以下、実験に基づいて順次、本発明製造
方法の実施の形態を説明する。
【0031】(水素吸蔵合金粉末の調製)市販のミッシ
ュメタル(Mm;La,Ce,Nd,Pr等の希土類元
素の混合物)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、
アルミニウム(Al)、マンガン(Mn)を原料とし、
これらが元素比で1:3.4 :0.8 :0.2 :0.6 の割合と
なるように秤量し、高周波溶解炉を用い1000℃で1
0時間加熱して、組成式MmNi3.4 Co0.8 Al0.2
Mn0.6 の水素吸蔵合金鋳塊を作製した。
【0032】この合金鋳塊を窒素ガス雰囲気中で機械的
に粉砕し粉末となし、この合金粉末を100メッシュ
(目開き:150μm)及び500メッシュ(目開き:
25μm)のフルイを使用して分級し、100メッシュ
から500メッシュの間に分級される合金粉末となし
た。
【0033】(酸処理)上記で作製した水素吸蔵合金粉
末に対し、pH1の塩酸水溶液を合金重量当たり100
wt%注加し、攪拌型混合機を用いてpH値が7になる
まで攪拌する方法により、酸処理済水素吸蔵合金となし
た。
【0034】(実験1;オキソ酸塩での表面処理)オキ
ソ酸塩溶液としてリン酸水素2ナトリウム水溶液(以
下、Na2HPO4溶液)を用い、酸処理液を捨てた酸処理済
合金粉末に対し、0.5 wt%、0.6 wt%、1.0wt%、3.0 w
t%、5.0 wt%、7.0 wt%、10.0wt%、20.0wt%の各濃
度のNa2HPO4溶液を各々加え、前記攪拌機で10分間攪
拌洗浄する方法により、オキソ酸塩攪拌洗浄処理を行っ
た。オキソ酸塩攪拌洗浄処理後、処理液を捨て乾燥し
て、Na2HPO4溶液濃度の異なる各種水素吸蔵合金粉末
(合金No.A1 〜A8 )を調製した。
【0035】なお、酸処理およびオキソ酸塩表面処理を
全く行わない水素吸蔵合金(上記合金粉末そのもの)を
合金No.Xとし、また上記酸処理のみを行った水素吸
蔵合金粉末を合金No.Yとし、以後の実験ではこれら
を比較対象として用いた。
【0036】(実験2;純水浸漬保存)上記実験1にお
いてNa2HPO4溶液で表面処理した合金No.A1 〜A
8 を、純水(イオン交換水)中に24時間以上浸漬し、
24時間純水浸漬保存を行った。この合金を合金No.
1 〜B8 とする。
【0037】(実験3;純水攪拌洗浄処理)上記実験1
においてNa2HPO4溶液で表面処理した合金No.A1 〜A
8 を、合金重量に対し100wt%量の純水に入れ、前記
攪拌機で10分間攪拌する純水攪拌洗浄処理を行った。
この合金を合金No.C1 〜C8 とする。
【0038】(実験4;オキソ酸塩浸漬保存)上記実験
1においてNa2HPO4溶液で表面処理した合金No.A1
8 を、合金重量に対し100wt%量の0.3wt% Na2
HPO4 溶液中に24時間以上浸漬し、24時間オキソ酸
塩浸漬保存を行った。この合金を合金No.D1 〜D8
とする。
【0039】(実験5;オキソ酸塩攪拌洗浄処理)上記
実験1においてNa2HPO4溶液で表面処理した合金No.A
1 〜A8 を、合金重量に対し100wt%量の0.3wt%
Na2HPO4 溶液中に入れ、前記攪拌機で10分間攪拌す
るオキソ酸塩洗浄処理を行った。この合金を合金No.
1 〜E8 とする。
【0040】(実験6;オキソ酸塩濃度と浸漬保存効
果)オキソ酸塩溶液の濃度とオキソ酸塩浸漬保存効果と
の関係を調べる目的で、上記実験1において3wt% Na2
HPO4 溶液で表面処理した合金No.A4 を、0.1wt %
、0.3 wt% 、0.5 wt% 、1.0 wt% 、1.5 wt%の
各濃度Na2HPO4溶液に浸漬(合金重量に対し100wt%
量使用)し、24時間のオキソ酸塩浸漬保存を行った。
この合金を合金No.F1 〜F5 とする。
【0041】(実験7;オキソ酸塩濃度と攪拌洗浄処理
効果)オキソ酸塩溶液の濃度とオキソ酸塩攪拌洗浄効果
との関係を調べる目的で、上記実験1において3wt% N
a2HPO4 溶液で表面処理した合金No.A4 を、0.1wt %
、0.3 wt% 、0.5 wt% 、1.0 wt% 、1.5 wt%の
各濃度Na2HPO4溶液(合金重量に対し100wt%量使
用)に入れ、前記攪拌機で10分間攪拌洗浄した。この
合金を合金No.F1 〜F5 とする。
【0042】(蓄電池の作製)上記の各種合金No.の
合金粉末に、結着剤としてポリテトラフルオロエチレン
ディスパージョンを合金重量に対し5wt%加え混練し
シート状となし、この合金シートをパンチングメタルの
両面に圧着しプレスして水素吸蔵合金電極を作製した。
【0043】次いで、前記水素吸蔵合金電極(負極)
と、この負極より容量の小さい公知の焼結式ニッケル正
極とを、セパレータを介して巻回し、渦巻型電極体とな
した。この電極体を外装缶に挿入し、30wt%水酸化
カリウム水溶液を注液した後、密閉し理論容量1000
mAhの円筒型ニッケル・水素蓄電池を作製した。
【0044】なお、この蓄電池は、上記で作製した各種
水素吸蔵合金粉末を、充電初期内圧特性、充放電サイク
ル特性の面から評価するためのものである。
【0045】(試験セルの作製)前記蓄電池とは別に、
各種水素吸蔵合金粉末を高率放電特性の面から評価する
ために、次のような試験セルを作製した。先ず、前記各
種合金粉末1gに、導電剤としてカルボニルニッケル
1.2g、及び結着剤としてエチレンディスパージョン
0.2gを加え、混練して合金ペーストを調製し、この
合金ペーストをニッケルメッシュで包み、プレス加工す
ることにより水素吸蔵合金電極を作製した。
【0046】次にこの水素吸蔵合金電極(負極)と、負
極より十分に容量の大きい公知の焼結式ニッケル正極と
を配置し、その後水酸化カリウム(電解液)を過剰量入
れ密閉して試験セルとなした。
【0047】(電気化学的特性の測定)充電初期の電池
内圧特性は、前記各蓄電池に対し1000mAの電流で
1時間充電した後、電池内圧力(Kg/cm2 )を測定
する方法によって調べた。
【0048】充放電サイクル特性は、先ず、100mA
で16時間充電し、1時間休止した後、200mAで放
電終止電圧が1.0Vになるまで放電し、更に1時間休
止するというサイクルを室温で3サイクル繰り返し、前
記各蓄電池に対し活性化処理を行った。次に、これら蓄
電池に対し、1500mAで48分充電し、1時間休止
した後、1500mAで放電終止電圧が1.0Vになる
まで放電し、更に1時間休止するというサイクルを繰り
返した。そして、放電容量(電池容量)が500mAh
以下になった時点を電池寿命が尽きた時点とし、これに
至るまでのサイクル回数を測定した。
【0049】高率放電特性は、前記試験セルを用い、水
素吸蔵合金1gに対し50mAの電流(50mA/g−
合金)で8時間充電し、1時間休止した後、200mA
/g−合金の電流値で終止電圧が1.0Vに達するまで
放電し、この時の放電容量(CH)を測定した。この
後、前記試験セルを1時間休止して電池電圧を復帰させ
たのち、更に50mA/g−合金の電流値で終止電圧が
1.0Vに達するまで放電して、この時の放電容量(C
L)を測定した。高率放電特性値は、数1に従い算出し
た。
【0050】
【数1】 高率放電特性値(%)=CH/(CH+CL) ×100 … 数1
【0051】以上の実験条件で測定した結果を、処理条
件とともに表1〜表7に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】
【表7】
【0059】図1〜図3に、酸処理済の水素吸蔵合金粉
末を各種濃度のNa2HPO4溶液で表面処理した合金(No.
1 〜A8 )における電気化学特性値を、Na2HPO4濃度
との関係でグラフ化し示すとともに、比較対象として同
グラフ上に、酸処理、オソキソ酸塩表面処理とも行わな
い合金No.X(破線)、及び酸処理のみを実施した合
金No.Y(一点鎖線)における結果を表した。
【0060】図1〜図3から次のことが明らかになる。
即ち、酸処理を行った後、Na2HPO4溶液で表面処理を行
わなかった合金No.Y(一点鎖線)に比較し、表面処
理した合金は何れも電池初期内圧が大幅に小さく、高率
放電特性値が同等乃至それ以上であった。そして、電池
初期内圧、高率放電特性値とも、Na2HPO4濃度が0.6w
t%〜10wt%で特に良好な結果が得られた。
【0061】一方、Na2HPO4溶液処理合金は、合金No.
Yに比較して全体的にサイクル寿命が短く、表面処理液
のNa2HPO4濃度の上昇とともにその差が拡大した。但
し、0.6wt%〜10wt%のNa2HPO4濃度では、その差
はさほど大きくなかった。なお、図3はグラフを見やす
くするため、縦軸を大きく取ってある。
【0062】他方、酸処理もオキソ酸塩表面処理も行わ
ない合金No.X(破線)と、Na2HPO4溶液処理合金との
比較において、何れのNa2HPO4濃度で表面処理した場合
であっも、未処理合金に比べ大幅に高い高率放電特性値
及びサイクル寿命値が得られた。また、電池初期内圧に
ついては、Na2HPO4濃度が0.8wt%〜10wt%におい
て合金No.Xより低くなり、0.6wt%〜10wt%に
おいて同等乃至それ以下となることが判った。
【0063】以上の結果から、酸処理済水素吸蔵合金粉
末を、0.6wt%〜10wt%濃度のNa2HPO4溶液(オキ
ソ酸塩溶液)で表面処理することにより、サイクル特性
をさほど低下させることなく、電池初期内圧特性及び高
率放電特性を顕著に向上させることができることが判
る。
【0064】次に、表1〜表4、及びこれらの結果に基
づいて作成した図4〜図6(棒グラフ)を解析する。
【0065】表1と表2及び表3の結果の比較から、Na
2HPO4溶液で表面処理した合金粉末を、さらに純水に2
4時間以上浸漬保存した場合、又は合金重量当たり10
0wt%の純水を用い10分間の攪拌・洗浄処理を行った
場合には、電池初期内圧特性及び高率放電特性に殆ど影
響を与えることなく、サイクル寿命を改善できることが
判る。
【0066】また、Na2HPO4溶液で表面処理した合金粉
末を、0.3wt% Na2HPO4 溶液に24時間以上浸漬保
存した場合、又は0.3wt% Na2HPO4 溶液を合金重量
当たり100wt%用いて10分間の攪拌・洗浄処理を行
った場合には、電池初期内圧特性及び高率放電特性に殆
ど影響を与えることなく、サイクル寿命を顕著に高める
ことができることが判る。
【0067】更に、表2〜3と表4〜5の結果の比較か
ら、純水を用いた場合よりもNa2HPO 4溶液を用いて浸漬
保存又は攪拌洗浄処理を行った場合の方が、各特性値が
より大きく向上することが判る。
【0068】上記の結果を踏まえて行った実験6〜7の
結果を図7〜図12に示す。
【0069】図7〜9は、表面処理のNa2HPO4濃度を
3.0wt%に固定し、浸漬保存液のNa2HPO4濃度を0.
1wt%から1.5wt%に変化させた場合における電気化
学特性値の変化を示すグラフである。図7〜9から、電
池初期内圧特性及び高率放電特性は、浸漬保存液のNa2H
PO4濃度(0.1〜1.5wt%)に影響されない一方、
サイクル特性は、Na2HPO4溶液濃度が1.5wt%となる
とかなり低下することが判る。このことから、浸漬保存
液のNa2HPO4濃度(オキソ酸塩濃度)は、0.1wt%〜
1.0wt%とするのが好ましい。
【0070】図10〜図12は、表面処理のNa2HPO4
度を3.0wt%に固定し、攪拌洗浄液のNa2HPO4濃度を
0.1wt%から1.5wt%に変化させた場合における電
気化学特性値の変化を示すグラフである。図10〜図1
2に示される結果も、上記図7〜図9の結果と同様であ
り、電池初期内圧特性及び高率放電特性は、攪拌洗浄液
のNa2HPO4濃度(0.1〜1.5wt%)に影響されない
一方、サイクル特性は、Na2HPO4溶液濃度が1.5wt%
となるとかなり低下した。このことから、攪拌洗浄液の
Na2HPO4濃度(オキソ酸塩濃度)は、0.1wt%〜1.
0wt%とするのが好ましい。
【0071】なお、純水またはNa2HPO4溶液での24時
間以上の浸漬保存と、同様溶液での10分間攪拌・洗浄
とが同様な結果を与えることから、合金処理工程から次
の工程へ移行する当たり、十分に時間的余裕がある場合
には浸漬保存を行い、連続して次の工程に移る必要があ
る場合には、攪拌洗浄処理を行うのが合理的である。こ
の選択により作業労力又は時間の何れかが節約できると
いう効果が得られる。
【0072】〔その他の事項〕上記実験ではオキソ酸塩
としてリン酸水素2ナトリウムを使用したが、例えばリ
ン酸2水素ナトリウム、リン酸水素2カリウム、リン酸
2水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウ
ム等の他のオキソ酸塩を使用できることは勿論である。
そして、他のオキソ酸塩を使用した場合であっても、表
8及び表9に示すが如くリン酸水素2ナトリウムを使用
した場合と同様な作用効果が得られる。
【0073】また、上記実験では、水素吸蔵合金として
希土類−ニッケル系合金を用いたが本発明の適用はこの
合金に限られるものではない。例えば、チタン−ニッケ
ル系水素吸蔵合金、ジルコニウム基ラーベス相水素吸蔵
合金などにも適用可能である。
【0074】
【表8】
【0075】
【表9】
【0076】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、アルカリ
蓄電池用水素吸蔵合金に対し、本発明製造方法を適用す
れば、水素吸蔵合金の電気化学的特性を向上させること
ができ、特に電池初期内圧特性及び高率放電特性を顕著
に高めることができる。したがって、本発明製造方法を
適用した水素吸蔵合金を用いてアルカリ水素蓄電池を作
製すれば、電池初期内圧特性、低温放電特性、高率放電
特性特性、サイクル特性に優れた高性能な蓄電池が得ら
れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】酸処理済水素吸蔵合金に対する表面処理におけ
る表面処理液のNa2HPO4濃度と電池初期内圧との関係を
示すグラフである。
【図2】酸処理済水素吸蔵合金に対する表面処理におけ
る表面処理液のNa2HPO4濃度と高率放電特性値との関係
を示すグラフである。
【図3】酸処理済水素吸蔵合金に対する表面処理におけ
る表面処理液のNa2HPO4濃度とサイクル寿命との関係を
示すグラフである。
【図4】酸処理済水素吸蔵合金に対する各処理条件と電
池初期内圧との関係を示す棒グラフである。
【図5】酸処理済水素吸蔵合金に対する各処理条件と高
率放電特性値との関係を示す棒グラフである。
【図6】酸処理済水素吸蔵合金に対する各処理条件とサ
イクル寿命との関係を示す棒グラフである。
【図7】酸処理済水素吸蔵合金をNa2HPO4溶液で浸漬保
存する場合におけるNa2HPO4濃度と電池初期内圧との関
係を示すグラフである。
【図8】酸処理済水素吸蔵合金をNa2HPO4溶液で浸漬保
存する場合におけるNa2HPO4濃度と高率放電特性値との
関係を示すグラフである。
【図9】酸処理済水素吸蔵合金をNa2HPO4溶液で浸漬保
存する場合におけるNa2HPO4濃度とサイクル寿命との関
係を示すグラフである。
【図10】酸処理済水素吸蔵合金をNa2HPO4溶液で攪拌
洗浄する場合におけるNa2HPO4濃度と電池初期内圧との
関係を示すグラフである。
【図11】酸処理済水素吸蔵合金をNa2HPO4溶液で攪拌
洗浄する場合におけるNa2HPO4濃度と高率放電特性値と
の関係を示すグラフである。
【図12】酸処理済水素吸蔵合金をNa2HPO4溶液で攪拌
洗浄する場合におけるNa2HPO4濃度とサイクル寿命との
関係を示すグラフである。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水素吸蔵合金を酸性水溶液に浸漬処理す
    る酸処理工程と、 前記酸処理した水素吸蔵合金に対し、0.6重量%〜1
    0重量%の濃度のオキソ酸塩水溶液で表面処理するオキ
    ソ酸塩表面処理工程と、 を備えることを特徴とするアルカリ蓄電池用水素吸蔵合
    金の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記オキソ酸塩表面処理工程で処理した
    水素吸蔵合金を、更に純水で浸漬保存する純水浸漬保存
    工程を付加したことを特徴とする請求項1記載のアルカ
    リ蓄電池用水素吸蔵合金の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記オキソ酸塩表面処理工程で処理した
    水素吸蔵合金を、更に純水で攪拌洗浄する純水攪拌洗浄
    工程を付加したことを特徴とする請求項1記載のアルカ
    リ蓄電池用水素吸蔵合金の製造方法。
  4. 【請求項4】 水素吸蔵合金を酸性水溶液に浸漬処理す
    る酸処理工程と、 前記酸処理した水素吸蔵合金に対し、高濃度のオキソ酸
    塩水溶液で表面処理する高濃度オキソ酸塩表面処理工程
    と、 前記高濃度オキソ酸塩水溶液で表面処理した水素吸蔵合
    金を前記高濃度オキソ酸塩水溶液よりも低濃度のオキソ
    酸塩水溶液で攪拌洗浄する低濃度オキソ酸塩攪拌洗浄工
    程と、 を備えることを特徴とするアルカリ蓄電池用水素吸蔵合
    金の製造方法。
  5. 【請求項5】 水素吸蔵合金を酸性水溶液に浸漬処理す
    る酸処理工程と、 前記酸処理した水素吸蔵合金に対し、高濃度のオキソ酸
    塩水溶液で表面処理する高濃度オキソ酸塩表面処理工程
    と、 前記高濃度オキソ酸塩水溶液で表面処理した水素吸蔵合
    金を前記高濃度オキソ酸塩水溶液よりも低濃度のオキソ
    酸塩水溶液で浸漬保存する低濃度オキソ酸塩浸漬保存工
    程と、 を備えることを特徴とするアルカリ蓄電池用水素吸蔵合
    金の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記高濃度オキソ酸塩水溶液の濃度が、
    0.6重量%〜10重量%であり、前記低濃度オキソ酸
    塩水溶液の濃度が、0.1重量%〜1重量%であること
    を特徴とする請求項4ないし請求項5記載のアルカリ蓄
    電池用水素吸蔵合金の製造方法。
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CN96193079A CN1090824C (zh) 1995-04-05 1996-04-05 碱性蓄电池用贮氢合金电极的制造方法
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