【発明の詳細な説明】
多対象同時測定用反応カラムと方法
本発明は、1つ以上の支持体ベッドを用いたアフィニティーアッセイによる測
定用反応カラムに関する。
アフィニティークロマトグラフィーは、バイオ分子の分取精製に広く用いられ
ている技術である。その利点は、測定しようとする分子と相補的に結合するパー
トナーとが特異的な相互作用をする点にある。一般にアフィニティークロマトグ
ラフィーは、精製しようとするバイオ分子を含む試料を、そのバイオ分子と互い
に相補的に結合するパートナーの1つが固体支持体に結合しているクロマト用カ
ラムに導入することによって行う。相補的結合パートナーの対として、酵素とそ
の基質、抗体と抗原またはハプテン、および互いに相補的なDNAまたはRNA単鎖を
例示することができる。
免疫アフィニティークロマトグラフィーによって定量しようとする場合は、抗
原またはハプテンとこれらに相補的な抗体との間の相互作用を利用する。
試験試料中に含まれている1つ以上の成分を検出しようとするときは、通常は
各成分を別々のアッセイで別個に検出しなければならないために、依然として大
きな問題がある。この検出法は、試験すべき各分析物について厳格な質保証測定
ができるために、好ましい方法であるとされてきた。
一方、研究室では、経費を低く抑えながら、タイムリーにより多量の試験を行
わねばならないという課題に直面している。例えば、これらの研究室において、
試験する試薬を存在させるか該試薬に晒したドナー血液上で、試薬のパネルにヒ
トT−白血病ウィルス1型(HTLV-1)、ヒト免疫不全ウィルス1および2(HIV-1およ
びHIV-2)およびC型肝炎ウィルス(HCV)を加えるという血液銀行の試験要請が非
常に増えている。
したがって、1つの試料だけを少量用いて、短時間で数個の成分またはパラメ
ーターを迅速に同時分析することが必要とされている。
さらに、医療診断のみならず環境分析および食物分析の分野においてもしばし
ば現れる妨害成分が存在するときであっても、この種の分析を行うことができる
ことが必要である。特に薬剤を分析する場合には、短時間分析、少容量の試料、
選択性、精度および自動操作といった特徴が必要とされる。このような特徴は、
既知の免疫分析法には十分には認められない。その後、この問題を解決するため
に当該技術分野では数種の方法が提案されたが、その大半は不十分なものであっ
た。
現在、本技術分野には主たる試験法が2つある。1つは、改良ELISAプレート試
験である。この試験は多対象の分析に用いることができるものの、数種の問題も
抱えている。もう1つは、カラムクロマトグラフィーに基づく試験法である。こ
の方法は単一対象の分析に用いることができるだけで、多対象の分析に用いるこ
とはできない。
国際公開WO91/13354号公報には、フロー免疫センサー法とその方法を行うため
の装置が記載されている。ターゲット部分の検出法は、ターゲットに特異的な抗
体を提供し、抗体結合部位をターゲットの標識型で飽和し、抗体にターゲットを
含む液体を流し、ターゲットに標識化抗原を置換させ、置換された標識化抗原を
検出する各工程を含む。
従来技術の欠点は、多対象の分析に用いることができないことにある。本願発
明と競合するのは、多対象の分析に用いることができるものだけである。従来技
術の欠点は、標識化抗原の置換が非平衡条件下で生じる点にもある。非平衡反応
は、ポンプで制御する流速や温度による影響をかなり受ける。したがって、高温
条件下や有機溶媒中では誤ったシグナルが発生する。このため、試験カラムにお
いて誤ったシグナルが発生したか否かを確認できるように、コントロールシグナ
ルを発するような非特異的抗原を有する第2の制御カラムが必要となる。従来法
を用いた場合は、定性分析と単一対象の測定しか行うことができなかった。シグ
ナル発生後、カラムの交換帯は置換または再生され、抗原の先行添加後に250ng
の試料を添加するときに明確な正のシグナルを発生する。このことから、従来法
によって成分の定量分析をすることはできないことが明らかである。測定値と濃
度の関係は1次関係にないため、工程を通してフロー中におかれた検出器は、1
つの特定分析物に合わせて調節されるだけである。単一対象の測定に伴うこのよ
うな問題は、多対象測定も不可能にしている。
欧州特許公開第473,065号公報には、試験試料中に存在する1つ以上の分析物を
同時に検出するアッセイ法が記載されている。分析物は異なった固体相に捕獲さ
れ、分析物に特異的な指示薬によって発せられるシグナルを検出することによっ
て1つ以上の分析物の存在が決定される。このアッセイは、改良ELISAプレート試
験である。しかしながら、このアッセイは長いインキュベーション時間を要し、
温度制御が困難である。
国際公開WO92/12255号公報には、試験試料中に存在しているかも知れない複数
の分析物を測定するアッセイが記載されている。このアッセイは、互いに異なる
短寿命の化学発光標識と長寿命の化学発光標識を使用し、発生した化学発光シグ
ナルと時間を積算して、発生したシグナルの短寿命成分と長寿命成分を区別する
ものである。この公報は、これらの短寿命発光成分と長寿命発光成分を含むアッ
セイキットも提供している。この方法は、長いインキュベーション時間を要し温
度制御が困難なELISAプレート試験についても記載している。
最後に、本願出願人のドイツ特許公開第4208732号公報およびドイツ特許第412
6436号明細書には、固体相免疫分析用反応カラムと、免疫反応によって検出し得
る成分の測定法が記載されている。このカラムは扱いやすく、操作全体をフロー
で行うことができ、反応時間も短くて、反応を定量的に行うことができる。カラ
ムの各ロットに対して基本的な標準化を行った後は、さらに予備較正や再生を行
ったり、対照標準試料の測定を行ったりする必要はない。
この種のカラムを用いることによって、既知の反応(ELISAプレートまたは免
疫ブロット法のような)はすべてより簡単で迅速になるか、より正確に行うこと
ができ、しかも容易に自動化することができるようになる。しかし、既知の反応
カラムを用いた場合は、単一成分の測定しかできない。
したがって、本発明は、固体相アフィニティー分析によって同時に数種の成分
またはパラメーターを迅速に定性または定量分析することができ、上記カラムと
同じ利点を有している多対象同時測定用反応カラムを提供することを目的とした
。
本発明の目的は、アフィニティーアッセイによる多対象同時測定用反応カラム
によって達成された。このカラムは1つ以上の支持体ベッドを有しており、当該
支持体ベッドは各支持体ベッドに結合している1つ以上のアフィニティー反応性
成分を含む。各ベッドの容積は600μl以下である。
支持体ベッドは固体多孔質材料またはゲルであるのが好ましい。
好ましい実施態様は、支持体ベッドが2つの多孔質分離デバイスの間に設置さ
れている態様である。反応カラムには、化合物に特異的なアフィニティー反応用
成分またはグループに特異的なアフィニティー反応用成分、あるいはその両方を
含ませることができる。これらの成分は免疫反応性であってもよい。各支持体ベ
ッドには、グループおよび/または化合物に特異的な反応用の反応性成分を1つ
以上適用することができる。
本発明の反応カラムは、支持体ベッドおよびアフィニティー反応用反応性成分
を用いてコンフェクトした標準化型に調製され、校正や対照測定を行わずにカラ
ムをすぐに使用し得るようになっている。このコンフェクションは、定量反応後
に起こらなければならない。
グループに特異的なアフィニティー反応用反応性成分および化合物に特異的な
アフィニティー反応用反応性成分は、液体試料がカラムから排出される前に制御
下でフローしている間に化合物が支持体ベッドに定量的に結合するような密度で
導入するのが好ましい。
定量的に結合する化合物は、測定化合物であるか、測定化合物を含むグループ
または該化合物に対するアフィニティー反応性2次結合パートナーである。これ
らは検知しうる順序と段階数でカラムに導入する。
好ましい態様では、支持体ベッド上の反応性成分は、プロテインA、プロテイ
ンB、プロテインG、プロテインM、免疫グロブリンまたは免疫グロブリンのグル
ープ、抗原または抗原のグループである。
特異的結合対には、この他にビオチンとアビジン、糖質とレクチン、相補的ヌ
クレオチド配列、エフェクターとレセプター分子、コファクターと酵素、酵素阻
害剤と酵素なども含まれる。
また、特異的結合対には、元の特異的結合メンバーに類似するメンバー(例え
ば分析物類似体)も含まれる。免疫反応性の特異的結合メンバーには、さらに抗
原、抗原フラグメント、抗体および抗体フラグメント、モノクローナルおよびポ
リクローナル、およびこれらの複合体が含まれ、組み換えDNA法によって調製さ
れるものも含まれる。また、抗原や抗原グループには、ハプテンも含まれる。
基質材料には、高分子糖、プラスチック、改質プラスチック有機または無機支
持材料、多孔質金属、金属酸化物、合金、ガラス、シリケートまたはセラミック
スが含まれる。高分子糖として、アガロースを用いることができる。
反応性成分は、共有結合または収着結合のいずれかによって基質に結合するこ
とができる。
必要に応じて、1つまたは数個の支持体ベッド多孔質フリットまたは膜ででき
た上方分離デバイスと下方分離デバイスを使用することができる。このフリット
の孔径は0.2−100μmであり、例えばポリエチレン、金属、ガラスなどのプラス
チック材料でできている。プラスチック材料としてポリエチレンやテフロンを使
用することができ、金属として多孔質アルミニウムやステンレス鋼を使用するこ
とができる。また、カラムの材質は、プラスチック、金属および天然材料からな
る群より選択することができる。プラスチックの例として、ポリエチレン、ポリ
プロピレンおよび/またはポリスチレンを挙げることができる。
反応カラムの両端は、数個の反応カラムを連結するために雄型−雌型結合をす
ることができるように成形されていてもよい。
支持体ベッドの容積は30−50μlであるのが好ましい。
アフィニティー反応を妨害する化合物が存在している特殊な場合には、他の化
合物のアフィニティー反応を妨害する化合物が上方の支持体ベッドにおいて定量
的に結合し、下方の支持体ベッドにおいて他の化合物がアフィニティー反応する
ように、一連の支持体ベッドをアレンジすることができる。
好ましい実施態様においては、測定用支持体ベッドの上または下に追加のベッ
ドまたはゾーンを積層してもよい。例えば、試料精製または処理用の濾過器また
はゾーン、アフィニティー結合反応準備用の追加反応ゾーン、試料導入、試料フ
ローおよび導入薬品を制御する制御ゾーンを設けてもよい。
本発明は、アフィニティー反応によって測定することができる化合物の測定方
法にも関する。この方法は、分析試料を上記反応カラムに導入し、分析化合物ま
たは分析化合物を含むグループを反応カラム内で相補的反応性成分に定量的に結
合させ、それによってさらに反応カラム中で既知のアフィニティーアッセイ工程
を施した後に既知の分析方法を行うことによって、分析成分を測定するものであ
る。
相補的反応性成分そのものをカラムに結合させる前に、相補的反応性成分をこ
れに対する相補的反応性成分に配合してアフィニティー反応を行ってもよい(実
施例3参照)。こうすれば、カラムをより柔軟に使用することができるようにな
る。すなわち、様々なアッセイやアッセイの開発に使用することができ、最終使
用者の実際の使用状況をカラム製造者に対して秘密にすることもできる。
この方法は、標識化および/または増幅用の反応カラムにおける2次アフィニ
ティー反応と、カラム内または溶出後における測定を含む筈である。
また、測定化合物と競合する標識化化合物をアフィニティー反応させて、カラ
ムから排出される液体中にて直接測定したり、カラム中で直接測定したり、ある
いは溶出後に測定することができる。
標識として、蛍光標識および/または酵素標識を使用する。
特定の場合には、グループに特異的な成分が結合するグループは、免疫グロブ
リンGおよび/またはMのグループである。
また別の態様では、特定の免疫グロブリンGおよび/またはMの存在を定性分析
するために、全相補的抗原に対して1つの酵素または蛍光標識を用いて同様に標
識化した抗原の溶液を導入することができる。特定の免疫グロブリンGおよび/
またはMの定量分析または鑑別定性分析を行うために、異なる標識を有する抗原
の溶液を導入して、結合する対応免疫グロブリンGおよび/またはMの量に比例す
る量の抗原をアフィニティー反応によって結合させることができる。
異なる抗原標識は、それぞれの相補的抗原に用いる異なる酵素または蛍光標識
である。
さらに、試料液の導入やフローおよび導入試薬の質を制御するために、各支持
体ベッドにおいて対照アフィニティー反応を行うことができる。
好ましい態様においては、サンプリングと試験装置の安全のために、反応カラ
ムを試験液の容器または血液の容器に直結して設置したり、特に容器の充填器に
直結させることができる。このようにして使用することによって、試験結果を得
ることができる。
カラムの基礎標準化とコンフェクションを行っているために、この方法は校正
したり支持体ベッドや相補性反応性成分を再生したりせずに実施することができ
る。また、さらに実施を迅速化するために、試料導入後に反応カラムを少し減圧
したり加圧したりすることができる。さらに、サンプリング、試料導入および/
または試料測定を自動化するために、自動操作機を用いることもできる。
本発明の反応カラムと方法を用いることによって、体液中のIgG型、IgM型、Ig
A型および/またはIgE型免疫グロブリンの全部または特定の一部を、定性的また
は定量的に測定することができる。
また、正確な採用温度制御や温度および時間依存性を考慮することなく、この
方法によって好ましいフロー中で免疫アッセイを迅速に行うことができる。この
方法は操作が簡単であり、精密なインキュベーション時間を必要としないだけで
なく、インキュベーション時間そのものも必要としない。また、予め較正や再生
を行ったり、同時に対照標準試料を測定したりすることなく、即座に使用するこ
とができる。
医療診断では、非常に低い濃度で追加鑑別を要せずに、1つまたは数個のパラ
メーターについて陽性/陰性の定性的判定を迅速かつ簡易に行うことが重要であ
ることが多い。すなわち、この場合のアッセイは、定量測定の場合と同じくらい
精密でなければならない。
数種の感染症(HIV、HBV、HCVなど)のうちの1つが存在するときに問題となるの
は、数種の薬剤のうちの1つ、数種の麻酔薬のうちの1つあるいはアレルギーを引
き起こす数種のアレルゲンのうちの1つである。本発明の反応カラムを用いれば
、この種の定性分析や定量分析も簡便かつ効率的に行うことができる。
本発明の反応カラムを用いた上記方法は、従来法よりもかなり簡易であり、迅
速に定量分析や定性分析を行うことができる。これは、測定成分の測定に際して
予め較正したりカラムに使用する基質を再生したりする必要がないことや、標準
溶液による一連の対照測定が不要であることなどによる。
このような操作の簡易化は、通常の実験室の装置または自動ピペット器を用い
て試料などの溶液を導入することができることによってもたらされた。
本発明の方法は、試料導入後に反応カラムを加圧せずに重力下で迅速に実施す
ることができる。しかし、遠心分離や吸入などによってわずかに減圧したり加圧
したりすることによって、実施を迅速化することもできる。この方法は、フロー
に対する抵抗が大きい支持体ベッドにとっては、フロー通過時間を短かくしてそ
の結果試験時間を短縮することができるために重要である。
本発明の方法では、分析試料を数種の免疫反応性成分を有する反応カラムに導
入する。分析成分は、相補的免疫反応性成分によって保持される。その後、ドイ
ツ特許第4126436号明細書に記載される方法にしたがった支持体ベッドにおける
蛍光および/または酵素色反応によって、溶液導入後にカラムから排出される液
体中か溶出後の液体中の化合物を定量分析または定性分析する。抗原または抗体
あるいはさらに別の相補的結合パートナーには、定性分析を行うために異なる標
識を使用することができる。
分析成分の濃度が非常に低い場合には、可能であればより多量の試料液を導入
することによって試料を濃縮することができる。また、低濃度の特定抗体を測定
するときには、支持体ベッドの3次元構造に関する対応する問題を抱える低分子
量の相補的抗原をカラムに導入する代わりに、抗体の各クラス(ヒトIgGおよび
/またはIgMおよび/またはIgAなど)に相補的な抗体または抗体グループ、また
はプロテインAまたはGなどの各グループに特異的な1つまたは複数の反応性成
分を反応カラムに導入する。このようなカラムを用れば、成分のグループ全体を
保持することができる。そして、次の段階で成分の抗原または分析成分の抗原を
含む溶液をカラムに導入する。
この方法は、感度が高く、より良い調節が可能であって、1種類のカラムを異
なる多対象または単一対象試験に用いることができるという利点がある。試験の
具体的な種類は、その後にカラムに導入する抗原によって決定する。こうすれば
、経済的な理由からより効率的である。
1つ以上の反応容器中には、異なる免疫性等を有する反応成分を用いた数種の
支持体ベッド層を重ねて使用することができる。このとき、カラムには異なる分
離デバイスを使用する。例えば、膜、フリットまたは多孔質分離デバイスの間に
設置した異なる材質の数種の支持体ベッドを例示することができる。
種々の支持体ベッドを用いることによって、以下に記載するさまざまな方法を
実施することが可能になる。
例えば数種の分析成分を含む試料については、成分数に対応する数の別個の支
持体ベッドを有する反応カラムを用いる。これらの支持体ベッドには、分析成分
または分析成分のグループに対する1つ以上の相補的反応性パートナーを担持す
る。試料フローの間に、対応化合物が各支持体ベッドに保持されて、着色反応な
どによって検出される。アフィニティー結合定数が高い妨害性類似化合物は、上
方の支持体ベッドにて定量的に除去して所望により測定する。下方の支持体ベッ
ドでは、アフィニティー結合定数が低い化合物を分析する。
1つ以上の必要な反応性成分にとって有用であるが他の1つ以上の必要な反応性
成分には相容れないゲルのベッドを使用する場合は、反応は1つのカラム中にあ
る異なるゲルのベッド中の適当なゲルのベッドで行う。また、ドイツ特許公開第
4208732号明細書に記載されるように、大きい成分用に上方のゲルベッドを割り
当てれば、大小の成分(抗体/抗原、細菌またはウィルス)を同時に試験するこ
ともできる。
薬剤の感染試験または食物分析における毒性試験のような重要な試験を行うと
きには、カラムの上方および下方にコントロールフィールドを導入する。反応性
化合物が正しい方法でカラムに導入されており、カラムに導入した試料と使用す
る薬剤が良質であるならば、上方の陰性コントロールは、下方の陽性コントロー
ルが示す試料の正確なフローを証明する。
試験実施後には、反応カラムが試験試料とともに残る。このことは、血液銀行
にとって興味深いところであろう。例えば容器と血液提供者の静脈との間にT継
手を設置して、試験前に試験カラムを血液容器に接続することができる。接続管
中の残存血液とともに血液試料を取り出して試験を行う。文書上のエラーを発生
させずに試験結果をいつでも認識することができるように、血液容器には試験容
器を残しておく。
図1は、本発明の反応カラムを示すものである。このカラムはn段の支持体ベッ
ドを有し、多対象同時測定用に使用する。1,2,3,・・・,nは、結合反応化合物を備
えた異なる支持体ベッドを示す。11,12,13,14,15,・・・,n'は、別個のデバイスを
示す。
図2は、破傷風とジフテリアの抗体滴定量の同時測定用標準曲線である(表2お
よび実施例2参照)。
図3は、畜殺牛の抗体の標準曲線である(表3と実施例3参照)。
以下に示す実施例は、本発明の好ましい実施態様を示すものである。
実施例 フリットで隔てられたゲルのベッドを有するカラムの調製
市販のシアノブロミドで活性化した架橋アガロース(Sepharose 4b,Pharmacia
,Uppsala,Sweden)を0.001M HCl中で15分間膨潤させて、ガラスフリット上に
て0.001M HClで洗浄した。1つまたは複数の抗体、1つまたは複数の抗原または
プロテインG各2mgをカップリングバッファー(0.1MNaCO3-0.5MNaCl-pH8.3)に溶
解した溶液1mlと懸濁アガロース1mlを、オーバーヘッドミキサー中で室温にて2
時間撹拌し、均一にカップリングした抗体を有するアガロースを得た。抗体また
は抗原のカップリング度(すなわち添加した抗体または抗原の量に対する結合量
)は、懸濁液の280nmにおけるプロテインUV吸収によって(Kontron Uvikonフォ
トメーターを用いた)ほぼ100%と測定された。その後、抗体−、抗原−または
プロテインG−カップリング懸濁液をガラスフリット上にてブロッキングバッフ
ァー(0.1MTris-0.5MNaCl-pH8.0)を用いて再度緩衝化した。オーバーヘッドミ
キサー中にて室温で2時間ブロッキングした後、懸濁液をフリットに戻して、3種
類のバッファー(0.1M酢酸-0.5MNaCl-pH4.0/カップリングバッファー/ブロ
ッキングバッファー)を用いて4回ずつ連続して洗浄した。図1に示すように下端
を孔径2μmのポリプロピレンフリット11でフットさせたポリプロピレンカラムの
各々に、60μlの懸濁アガロースを注意深く添加した。懸濁液を、洗浄バッファ
ー(0.01MTris-0.15MNaCl-0.005%Tween20-pH8.0)をそれぞれ500μl用いて慎重
に積層した。1時間沈降させることによって、約30μlの最終的なアガロースゲ
ル支持体ベッドにした。担持密度は、最終的なアガロースベッド30μlあたり、
抗体、抗原またはプロテインG約60μgとした。これはカップリング度ほぼ100%
に相当する。30μlのセファロースベッドの抗体結合力は、抗体導入支持体ベッ
ドで20μg、プロテインG−導入支持体ベッドで200μgであった。これらのベッド
の上端は第2のフリット12で慎重に塞いだ。複数のフィールドを有するカラムを
調製する場合は、まずこの工程を行うことによって最下段支持体ベッド1を調製
し、その後この最下段支持体ベッドの上にさらに必要な支持体ベッド(ベッド2
−n、閉塞用フリット13−n')のそれぞれについて工程を慎重に繰り返す。
保存と輸送のために、カラムの下端をキャップで塞ぎ、約100μlの洗浄バッフ
ァーを各カラムの上方フリット上に満たして、上端も同様にキャップで塞いだ。蛍光測定
蛍光測定器 Kontron SFM 25を、ウシ血清アルブミンをPBSバッファー(0.01MNa2
HPO4-0.01MNaH2PO4-0.15MNaCl-0.005%Tween20-pH7.2)に溶解した規準溶液を用
いて校正し、0.1%アジ化ナトリウムで安定化した。
実施例1
急性または慢性ライム病の鑑別診断
欧州や米国においてダニに咬まれることによって蔓延しているボレリア・ブル
グドルフィー(Borrelia burgdorfii)は慢性ライム病(Erythema(chronicum)migr
ans)を誘発する。診断および制御のために、疾病の診断は重要である。診断は
、定性的(パラグラフa)および定量的(パラグラフb)に行うことができる。
a)積層陰性コントロールフィールドを用いた抗ボレリア・ブルグドルフィー
(Borrelia burgdorfii)IgG クラス抗体と IgMクラス抗体との定性的識別
試薬:−洗浄バッファー(0.01MTris-0.15MNaCl-0.05%Tween20-pH8.0)
−基質バッファー(1.0Mジエタノールアミン中の1mg/ml PNPP(リン酸パ
ラニトロフェニル)−0.5mM MgCl2−pH9.8)
−アルカリホスファターゼで標識したボレリア(Borrelia)b.株から単離
したボレリア(Borrelia)b.抗原溶液(洗浄バッファー中10μg/ml)
支持体ベッド1-3を有するカラム
3 60μgの共有結合カップリングしたウシ血清アルブミン(Sigma)を担
持した30μlのCnBr活性化セファロース4b
2 60μgの共有結合カップリングしたモノクローナルマウス抗ヒトIgM抗
体(Sigma)を担持した30μlのCnBr活性化セファロース4b
1 60μgの共有結合カップリングしたモノクローナルマウス抗ヒトIgG抗
体(Sigma)を担持した30μlのCnBr活性化セファロース4b試験手順
ヒト血清試料を洗浄バッファーで1:10に希釈した希釈液50μlを上記のカラム
に導入し、さらに洗浄バッファー750μl、ホスファターゼ標識化ボレリア(Borr
elia)b.抗原溶液500μl、再度洗浄バッファー750μl、基質バッファー200μl
に順に導入した。上方のコントロールフィールド3が淡黄色になるまでインキュ
ベーションした後(酵素反応のために約10分間インキュベーションするが、アフ
ィニティー反応のために行うものではない)、陰性試料を導入した場合は試験フ
ィールドは両方とも無色(または僅かに黄色)に維持された。IgGのみを含む陽
性試料(すなわち過去の疾病試料)を導入した場合は、各カラムの下方の試験フ
ィールド1だけがかなり濃暗黄色になった。IgGとIgMを両方含む試料(すなわち
新たな感染試料)を導入した場合は、試験フィールド1および2がともにかなり濃
暗黄色になった。
b)抗ボレリア(Borrelia)b.IgMおよびIgGの定量測定
試薬:−洗浄バッファー(0.01MTris-0.15MNaCl-0.05%Tween20-pH8.0)
−溶出バッファー(0.1MNaOH-0.15MNaCl-0.05%Tween20-pH13.0)
−洗浄バッファー中の、FITC(フルオレセインイソチオシアネート)
で標識したマウス抗ヒトIgGモノクローナル抗体10μg/mlとTRITC(ロ
ーダミンイソチオシアネート)で標識したマウス抗ヒトIgMモノクロ
ーナル抗体10μg/mlとの混合溶液(ともにSigma)
支持体ベッド1を有するカラム
1 60μgの共有結合カップリングしたボレリア(Borrelia)b.抗原を担持
した30μlのCnBr活性化セファロース4b試験手順
ヒト血清試料を洗浄バッファーで1:10に希釈した希釈液50μlを上記のカラム
に導入し、さらに洗浄バッファー750μl、混合抗体溶液500μl、再度洗浄バッフ
ァー750μlを順に導入した。溶出バッファー750μlをキュベットに溶出した後、
490/520または555/585nmの相対蛍光強度を測定した。相対蛍光強度と希釈度が異
なるヒト血清試料希釈液の濃度との間の直線関係を、同じ抗原カップリングアガ
ロースの基本系から調製したカラムを用いたその後の全測定のための基準線とし
て用いた。
抗ヒトIgGまたは抗ヒトIgMカラム上に保持された全IgGまたはIgM量を蛍光
測定により比較することによって、基本直線の標準化を行った(異なる型のカラ
ム上における、IgG/IgMまたは抗ボレリア(Borrelia)b.IgG/IgMを含まない溶
液の異なる蛍光強度0のデータを考慮した)。
実施例2
種痘状態の測定としての(すなわち一方または両方の種痘を行う必要性
の有無を判断する根拠としての)破傷風およびジフテリア抗体の定量的滴定
破傷風の種痘は、大半は怪我をしたときの疾病予防のために行われる。患者が
ワクチンで十分に保護されているときに(過去にまたは継続して)種痘を行うと
アナフィラシーショックを招き死に至ることさえある。破傷風とジフテリアの混
合ワクチンを投与する前に、種痘状態を測定することが重要である(ジフテリア
は東欧において再び増加しつつある)。すなわち、両方のワクチンを投与するの
ではなく、いずれか一方のワクチンだけを投与するか否かを判断するために重要
である。
試薬:−洗浄バッファー(0.01MTris-0.15MNaCl-0.05%Tween20-pH8.0)
−溶出バッファー(0.1MNaOH-0.15MNaCl-0.05%Tween20-pH13.0)
−洗浄バッファー中の、FITCで標識化した破傷風トキソイド10μg/ml
とTRITCで標識化したジフテリアトキソイド10μg/mlとの混合溶液
(両トキソイドとも市販ワクチン)
−破傷風標準血清
−ジフテリア標準血清(これらの標準品は Statens Serum Institute,
Copenhagen,Denmark から入手し、標準化用の対照品として使用した)
−FITC用規格化溶液(洗浄バッファー中のフルオレセイン10ng/ml)
−TRITC用規格化溶液(洗浄バッファー中のローダミン10ng/ml)
支持体ベッド1を有するカラム
1 60μgの共有結合カップリングしたプロテインGを担持した30μlの
CnBr活性化セファロース4B試験手順
標準血清を洗浄バッファーを用いて濃度0.5,0.4,0.3,0.2,0.1IU/ml(IUは
国際単位)に希釈した(表2および図2参照)。
さまざまな年齢の患者から得た患者試料を使用した。結果は、商業的Elisaア
ッセイの結果(Merlin Diagnostik,,Germany)と比較した(表2参照)。
上記カラムに、標準溶液または希釈ヒト血清試料(ヒト血清20μlと洗浄バッ
ファー180μl)200μlを導入し、さらに洗浄バッファー750μl、混合抗原(トキ
ソイド)溶液250μl、再度洗浄バッファー750μlを順に導入した。溶出バッファ
ー750μlをキャベットに溶出した後、490/520または555/585nmにて相対蛍光強度
を測定した。
1日後と2日後に、1日目の規格化した標準線を用いて同一精度の測定を2回繰返
した。
実施例3
a)畜殺牛の(禁止)抗生物質(例えばクロラムフェニコール、テトラサイク
リン、スルホメタシン)の定量分析
食品中の抗生物質は、現在ほとんど細菌抑制試験によって測定されている。こ
の試験には通常4日以上かかる。このため、畜殺前でも結果が判る迅速な方法を
提供することが望まれている。
試薬:−洗浄バッファー(0.01MTris-0.15MNaCl-0.05%Tween20-pH8.0)
−溶出バッファー(0.1MNaOH-0.15MNaCl-0.05%Tween20-pH13.0)
−洗浄バッファー中の混合抗体各10μg/mlの溶液
−ポリクローナルラビット抗クロラムフェニコール
−ポリクローナルラビット抗テトラサイクリン
−ポリクローナルラビット抗スルホメタシン
(通常のハプテン免疫化法によって調製)
−定性分析および定量分析用の洗浄バッファー中の混合標識化抗原各
10μg/mlの溶液
−クロラムフェニコール−FITC
−テトラサイクリン−TRITC
−スルホメタシン−フィコシアニン
−FITC用規格化溶液(洗浄バッファー中のフルオレセイン10ng/ml)
−TRITC用規格化溶液(洗浄バッファー中のローダミン10ng/ml)
−フィコシアニン用規格化溶液(洗浄バッファー中のフィコシアニン
10ng/ml)
支持体ベッド1を有するカラム
1 60μgの共有結合カップリングしたプロテインGを担持した30μlの
CnBr活性化セファロース4B試験手順
校正用に、クロラムフェニコール、テトラサイクリンおよびスルホメタシン1
ng/mlを、HPLCおよび細菌抑制試験によってこれらの抗生物質を含有していない
ことが示されているウシ血清試料に添加した。
上記カラムに、混合抗体溶液250μlを導入した。上記カラムの校正と濃縮効果
の実施のために、これらのカラムに抗生物質を含まない試料750μlまたは調製し
た抗生物質溶液750μl(各抗生物質絶対量0.75ng)、またはこの溶液(各抗生物
質絶対量1.5,2.25,3.75または7.5ng)1500,2250,3750または7500μlを導入し
た。あるいは、ウシ血液を遠心分離した血清試料750μlを導入した。その後、洗
浄バッファー750μl、混合蛍光標識化抗原溶液250μl、再度洗浄バッファー750
μlを順に導入した。溶出バッファー750μlをキャベットに溶出した後、490/520
、555/585または650/680nmにおける蛍光強度を測定した。同じ規格化した標準線
を用いて1日後と2日後に測定を2回繰り返した(表3および図3参照)。
b)定性分析(陽性/陰性)
表3の第2章の最後の2カラムの「認定」に記載されているように、規格化蛍光
強度を試料がこのグループの禁止抗生物質を含むか否かの定性的評価に使用する
こともできる。
迅速な定性的スクリーニングを、酵素標識を用いて行うこともできる。操作は
、溶出前の最後の洗浄工程まではa)と同じであるが、異なる蛍光標識化抗原の
代わりに類似するホスファターゼ標識化混合溶液を使用した。基質バッファーを
添加して、10分間インキュベーションした。導入試料を有するカラムを、導入陰
性試料を有するコントロールカラムと比較することによって評価した。陽性試料
のカラムはすべて淡黄色だけであったが、陰性試料のカラムとコントロールカラ
ム
はかなり暗黄色になった。
実施例4
積層コントロールフィールド(特にコントロール試料導入の陽性コントロール
フィールド)を用いた、1人以上の感染者の異なるエピトープに対する数種の有
向IgGおよびIgM抗体の同時定性試験(例えばHIV-I感染スクリーニング試験)(
実施例2によればこの試験を数種の感染をただ1つのカラムで同時に行うことがで
きるが、試験抗体に対する別個の抗原すべてに1つの同じ標識を使用しており、
異なる抗体を区別していない)は、最終判断に用いることはできない。疾患の現
状を診断したうえで、結果が陽性であるときに確認と明確化のために、異なる抗
体の定性または定量測定も必要とされる(定量試験は、異なる抗原に対して異な
る標識を使って実施例2の1つのカラムを用いて行うことができる)。
((主として血液銀行にて)現在利用されている確認試験であるウエスタンブ
ロット法は、試験を実際に適用したか否かの積層コントロールがないうえ(陰性
試料については試料導入をしなかったときと同じように白色のままであるためで
ある)、自動化できない手動試験であり、時間がかなりかかって、結果の解釈に
多大な経験を要するという欠点がある)試薬
:−洗浄バッファー(0.01MTris-0.15MNaCl-0.05%Tween20-pH8.0)
−基質バッファー(1.0Mジエタノールアミン中のPNPP1mg/ml-0.5mM
MgCl2-pH9.8)
−洗浄バッファー中の、アルカリホスファターゼで標識化したマウス
抗ヒトIgM10gl/mlとマウス抗ヒトIgG10gl/ml
支持体ベッド1-5を有するカラム
5 60μgの共有結合カップリングしたウシ血清アルブミンを担持した30
μlのCnBr活性化セファロース4b
(非特異的結合用の陰性コントロール)
4 60μgのp24領域のHIV-Iペプチドを担持した30μlのCnBr活性化セフ
ァロース4b
3 60μgのgp41領域のHIV-Iペプチドを担持した30μlのCnBr活性化セフ
ァロース4b
2 60μgのgp120領域のHIV-Iペプチドを担持した30μlのCnBr活性化セ
ファロース4b
1 60μgの共有結合したモノクローナルマウス抗ヒトIgGを担持した30μ
lのCnBr活性化セファロース4b
(ヒト血清試料導入と試料フロー用の陽性コントロール)
(Sigmaの抗体、Saxon Biochemicals,Hannover,GermanyのHIV-I
ペプチド)試験手順
上記カラムに、溶液(ヒト血清250μlを洗浄バッファー250μlで希釈)500μl
を導入し、さらに洗浄バッファー750μl、混合2次抗体溶液300μl、
再度洗浄バッファー750μlを順に導入した。基質バッファー300μlを導入して、
カラムを上部陰性コントロールフィールド5がわずかに黄色になるまで約6分間イ
ンキュベーションした(インキュベーション時間は酵素反応のためにかけるもの
であり、アフィニティー反応のためではない)。
陰性コントロールフィールド5:
正しく試験実施しカラムが無傷(試験状態)であるとき、このフィールドは常
に淡黄色になった。一方、保存が悪いカラムは暗黄色になった。
陽性コントロールフィールド1:
酵素インキュベーション後、陽性コントロールフィールド5は全てのヒト血清
試料について暗黄色になった(すなわち、試料は正しく導入されフローした)。
人工ラビット血清試料11を導入したときは、このフィールドは上方のコントロー
ルフィールドのように淡黄色になっただけであった。
確認フィールド2-4:
HIV-陰性試料1-5を導入したときは、試験フィールド2-4はわずかに淡黄色にな
っただけであった。陽性試料を導入したときは、いずれも1つ以上の抗原試験フ
ィールドが暗黄色になった。試料6および7は、スクリーニング試験がHIV-陽性で
ウエスタンブロット法が陰性の患者から得た試料であり、試料8-10はウエスタン
ブロット法でHIV-陽性であった。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
G01N 30/88 0275−2J G01N 30/88 E