【発明の詳細な説明】
喘息治療用のニューロキニン2受容体拮抗薬としての新規な4−ピペリ
ジニル置換ラクタム
本発明は新規のラクタム誘導体に関する。さらに詳細には、本発明は、置換基
の一方が窒素位置にて結合したラクタム誘導体であるような新規の4,4−ジ置
換ピペリジンに関するものであり、本化合物は、ニューロキニンとして〔特に、
ニューロキニン2(NK2)受容体として〕知られている内因性ニューロペプチ
ドであるタキキニンのうちの1つの薬理学的作用と拮抗する。これらの新規なラ
クタム誘導体は、こうした拮抗作用が必要とされる場合にはいつでも有用である
。したがって、このような化合物は、NK2受容体が関与する疾患の治療におい
て(例えば、喘息やそれに関連した病気の治療において)重要となる場合がある
。本発明はさらに、このような治療に使用するための、新規なラクタム誘導体を
含有した医薬用組成物、前記医薬用組成物の使用法、および新規なラクタム誘導
体を製造するためのプロセスと中間体を提供する。
哺乳類のニューロキニンは、末梢神経系や中枢神経系において見いだされるあ
る種類のペプチド神経伝達物質を含む。3種の主要なニューロキンは、サブスタ
ンスP(SP)、ニューロキニンA(NKA)、およびニューロキニンB(NK
B)である。さらに、少なくともNKAのN−末端延長形もある。3種の主要な
ニューロキニンに対して少なくとも3種の受容体タイプが知られている。ニュー
ロキニン作用薬SP、NKA、およびNKBのそれぞれとの結びつきやすさとい
う相対的選択性に基づいて、受容体は、それぞれニューロキニン1(NK1)受
容体、ニューロキニン2(NK2)受容体、およびニューロキニン3(NK3)
受容体に分類される。末梢においては、SPとNKAはC求心性知覚ニューロン
(このニューロンは、C線維として知られている無髄の神経末端であることを特
徴とする)中に局在しており、これらニューロンの選択的脱分極、あるいはC線
維の選択的刺激によって放出される。C線維は気道上皮に局在しており、タキキ
ニンは、喘息患者に見られる症状の多くに明らかに匹敵するような激しい作用を
引き起こすことが知られている。哺乳類の気道中にタキキニンを放出または導入
して起こる作用としては、気管支収縮、微小血管透過性の増大、血管拡張、およ
びマスト細胞の活性化などがある。したがって、喘息患者に見られる病態生理学
や気道過剰反応にはタキキニンが関与しており、喘息やそれに関連した疾患の治
療には、放出されたタキキニンの作用を遮断することが有用であるといえる。ペ
プチドNK2拮抗薬が報告されている。例えば、L−659,877として知ら
れている環状ヘキサペプチドが、選択的なNK2拮抗薬として報告されている。
非ペプチドNK2拮抗薬も報告されており、例えばヨーロッパ特許出願、公開番
号(EPA)428434、EPA474561、EPA512901、EPA
512902、EPA515240、EPA559538、およびWO 94/1
0146中に記載されている。本発明者は、一連の非ペプチドNK2拮抗薬を見
いだした。このことが本発明の基本である。
本発明によれば、式I(詳細な構造については、実施例の後に、他の式ととも
にローマ数字で示してある)
〔式中、
Xは、C1-6アルキル、−CH2ORa、−CH2SRa、−CH2S(=O)Rg、
−CH2S(=O)2Rg、−C(=O)Ra、−C(=O)ORa、−C(=Ja)NRbRc
、−C(Ra)(ORd)(ORe)、−CH2N(Ra)C(=Ja)Rf、−CH2N(Ra)C(
=O)ORf、又は−CH2N(Ra)C(=Ja)NRbRcであり;
Bが直接結合であり、Lが1−位置がBに結合した炭化水素鎖であって、トリ
メチレン、テトラメチレン、シス−1−ブテニレン、およびシス,シス−ブタジ
エニレンから選ばれるか;あるいはBがN(Rh) であって、Lがエチレン、トリ
メチレン、およびシス−ビニレンから選ばれる炭化水素鎖であるか;あるいはB
がNであり、Lが1−位置がBに結合した炭化水素鎖であって、シス,シス−プ
ロプ−2−エン−1−イリジン−3−イルであり;
JとJaは、互いに独立的に酸素またはイオウであり;
Ra、Rf、およびRhは、互いに独立的に水素またはC1-6アルキルであり;
RbとRcは、互いに独立的に水素またはC1-6アルキルであり、このとき前記
C1-6アルキルは、ヒドロキシとC1-3アルコキシから選ばれる基で置換されてい
てもよく、あるいは前記C1-6アルキルは、ヒドロキシ、C1-3アルコキシ、フェ
ニル、−C(=O)ORi、および−C(=O)NRjRkから選ばれる基で末端置換
されていてもよく;あるいは
RbとRcは、それらが結合している窒素と一緒になってピロリジノ基、ピペリ
ジノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ基(もしくはそのS−オキシド)、また
はピペラジニル基(4位置にメチル基またはエチル基を有していてもよい)を形
成し;
RdとReは、互いに独立的にC1-3アルキルであるか、あるいは一緒になって
エチレンおよびトリメチレンから選ばれる二価の炭化水素鎖を形成し;
RgはC1-6アルキルであり;
Ri、Rj、およびRkは、互いに独立的に水素またはC1-3アルキルであり;
mは2または3であり;
Mは、式Iaまたは式Ibで示される残基であって、このとき
Qは、ハロ、トリフルオロメチル、ヒドロキシ、C1-3アルコキシ、C1-3アル
キル、およびメチレンジオキシから独立的に選ばれる1または2の置換基を有し
ていてもよいフェニルであるか;あるいはQは、チエニル、イミダゾリル、ベン
ゾ〔b〕チオフェニル、またはナフチル(これらのいずれもがハロ置換基を有し
ていてもよい)であるか;あるいはQはビフェニリルてあるか;あるいはQは、
1−位置にベンジル置換基を有してもよい炭素結合インドリルであり;
Qaは、水素、C1-4アルキル、または式−(CH2)q−NR7R8で示される基で
あって、このときqは2または3であり、R7とR8が互いに独立的にC1-4アル
キルであるか、あるいはNR7R8がピペリジノまたは4−ベンジルピペリジノで
あり;
R3は、水素、メチル、または末端アミノ基を有していてもよいC2-6n−アル
キルであり;
R4は、−C(=O)R5、−C(=O)OR5、または−C(=J1)NHR5であっ
て、このときJ1は酸素またはイオウであり、R5は水素、C1-6アルキル、フェ
ニルC1-3アルキル(このときフェニルは、1つ以上のハロ、ヒドロキシ、C1-4
アル
コキシ、またはC1-4アルキル置換基を有していてもよい)、ピリジルC1-3アル
キル、ナフチルC1-3アルキル、ピリジルチオC1-3アルキル、スチリル、1−メ
チルイミダゾール−2−イルチオC1-3アルキル、アリール(1つ以上のハロ、
ヒドロキシ、C1-4アルコキシ、またはC1-4アルキル置換基を有していてもよい
)、ヘテロアリール(1つ以上のハロ、ヒドロキシ、C1-4アルコキシ、または
C1-4アルキル置換基を有していてもよい)、あるいは(R4が−COR5のとき
)α−ヒドロキシベンジルであり;
nは0、1、2、または3であり;
pは1又は2であり、pか2のときnは1であって、J2が2つの水素であり
;
J2は酸素または2つの水素であり;
L1はカルボニルまたはメチレンであり;
rは0、1、2、または3であり;そして
R6は、1つ以上のハロ、トリフルオロメチル、C1-4アルキル、ヒドロキシ、
またはC1-4アルコキシ置換基(特に、1つ以上のクロロまたはフルオロ置換基
)を有していてもよいフェニル;1つ以上のハロ、トリフルオロメチル、C1-4
アルキル、またはヒドロキシ置換基を有していてもよいナフチル;ピリジル;チ
エニル;インドリル;キノリニル;またはベンゾチエニルもしくはイミダゾリル
であるか;あるいはL1がカルボニルのとき、基−(CH2)r−R6は、アリール、
ヘテロアリール、またはヒドロキシ、C1-4アルコキシ、およびC1-4アルキルか
ら選ばれるα−置換基を有するベンジル基であり、このとき前記アリール基、前
記ヘテロアリール基、または前記ベンジル基のフェニル部分は、ハロ、トリフル
オロメチル、C1-4アルキル、ヒドロキシ、およびC1-4アルキル、ヒドロキシ、
およびC1-4アルコキシから独立的に選ばれる1つ以上の置換基(特に、1つ以
上のクロロまたはフルオロ置換基)を有していてもよい〕で示される化合物であ
る本発明の化合物;あるいは
△で示されているピペリジノ窒素のN−オキシド;あるいは
医薬用として許容しうるこれら化合物の塩;あるいは
これら化合物の第四アンモニウム塩〔このとき、△で示されているピペリジノ
窒素は四価アンモニウム窒素(quadricovalent ammonium nitrogen)であり、窒
素上の4番目の基R9はC1-4アルキルまたはベンジルであり、結びついている対
イオンAは医薬用として許容しうるアニオンである〕が提供される。
本発明のサブグループは、
上記にて定義した式1の化合物〔このとき RbとRcは、互いに独立的に水素
またはC1-6アルキルであるか;あるいはRbとRcが、それらが結合している窒
素と一緒になってピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、チオモルホリノ
基(もしくはそのS−オキシド)、またはピペラジニル基(4位置にメチル基ま
たはエチル基を有していてもよい)を形成する〕;あるいは
△で示されるピペリジノ窒素のN−オキシド;あるいは
医薬用として許容しうるこれら化合物の塩;あるいは
これら化合物の第四アンモニウム塩;
である。
本発明の他のサブグループは、式Icの化合物;あるいは△で示されるピペリ
ジノ窒素のN−オキシド;あるいは医薬用として許容しうるこれら化合物の塩;
あるいはこれら化合物の第四アンモニウム塩;であり、このとき、J、B、L、
X、Q,R9、およびAは、式Iの化合物に関して定義した意味のいずれかを有
する。
周知のように、式I(またはIc)の化合物は1つ以上の不整置換した炭素原
子を含んでおり、したがってこのような化合物は、光学活性体、ラセミ体、およ
び/またはジアステレオマー体として単離することができる。化合物によっては
多形を示すものがある。理解しておかなければならないことは、本発明は、ラセ
ミ体、光学活性体、ジアステレオマー体、多形体、立体異性体、またはこれらの
混合物のいずれも包含するということである。これらの形態物はNK2拮抗薬特
性を有しており、光学活性体の調製法(例えば、ラセミ体の分割、または光学活
性の出発物質からの合成)、および後述の標準試験によるNK2拮抗薬特性の測
定法については当業界によく知られている。式I(またはIc)の化合物を、式
Ia、Ib、またはIc中の*で示される中心にて(S)−立体配置である形を例
えば少なくとも95%、98%、または99%鏡像異性体過剰に含有することを
特徴とする形で使用するのが好ましいことがある。
本明細書においては、Ra、Rb、R1、R2などは総称基を表しており、他の特
別な意味をもっているわけではない。理解しておかなければならないことは、総
称用語である“C1-3アルキル”や“C1-6アルキル”は、直鎖および枝分かれ鎖
のアルキル基を含むが、個々のアルキル基(例えば“プロピル”)に言及してい
るときは、直鎖(“ノルマル”)基だけを含んでおり、枝分かれ鎖異性体(例え
ば“イソプロピル”)の場合は明記する。他の総称基(例えば、アルコキシやア
ルカノイルなど)に対しても同様である。ハロは、フルオロ、クロロ、ブロモ、
またはヨードである。アリールとは、フェニル基、または約9〜10個の環原子
を有するオルト縮合二環式の炭素環式基(少なくとも1つの環が芳香族である)
を示している。ヘテロアリールは、酸素、イオウ、および窒素から選ばれる1〜
4個のヘテロ原子と炭素原子からなる5つの環原子を含有した単環式芳香環の環
炭素原子を介して結合した基、1つまたは2つの窒素原子と炭素原子からなる6
つの環原子を含有した単環式芳香環の環炭素を介して結合した基、約8〜10個
の原子を含んだオルト縮合二環式ヘテロ環の基(特にベンズ誘導体)、プロペニ
レン、トリメチレン、またはテトラメチレンジラジカルを縮合させることによっ
て誘導される基、およびこれらのN−オキシドを含む。
医薬用として許容しうる塩は、生理学的に許容しうるアニオンを与える酸を使
用して作製した塩である。
前記の式Iまたは式Icの化合物に対する基(radical)、置換基、および範
囲に関して特定の意味(particular value)を以下に記載するが、これらは具体
的に示しただけのものであって、他の定義した意味、あるいは基や置換基に関し
て定義した範囲内での他の意味が除外されるわけではない。
mに対する特定の意味は2である。
C1-6アルキルに対する特定の意味は、メチル、エチル、プロピル、イソプロ
ピル、またはブチルである。
C1-3アルキルに対する特定の意味は、メチルまたはエチルである。
Mが式Iaであるとき、Qaに対する特定の意味は水素であり、R3に対する特
定の意味はメチルであり、R4に対する特定の意味は−COR5である。R5に対
する特定の意味はアリールであり、さらに特定的にはフェニルであり、このとき
アリール(またはフェニル)は、1つまたは2つのクロロもしくはフルオロ置換
基を有していてもよい。
Mが式Ibであるとぎ、nに対する特定の意味は1または2であり;pに対す
る特定の意味は1であり;J2に対する特定の意味は2つの水素であり;L1に対
する特定の意味はカルボニルであり;rに対する特定の意味は0または1であり
;そしてR6に対する特定の意味は、1つまたは2つのハロもしくはC1-4アルコ
キシ置換基(さらに特定的には、クロロ、フルオロ、またはイソプロポキシ置換
基)を有していてもよいフェニルである。
Qに対する特定の意味は、例えば、ハロ、トリフルオロメチル、およびメチレ
ンジオキシから選ばれる1つまたは2つの置換基を有していてもよいフェニルで
あり、さらに特定的には3,4−ジクロロフェニルまたは3,4−メチレンジオキ
シフェニルである。
R9に対する特定の意味はメチルまたはベンジルであり、Aに対する特定の意
味は、例えばクロライド、ブロマイド、またはメタンスルホネートである。
本発明の特定のサブグループは式Icの化合物であり、このときBは直接結合
であり、Lは1−位置がBに結合している炭化水素鎖であって、トリメチレン、
テトラメチレン、シス−1−ブテニレン、およびシス,シス−ブタジエニレンか
ら選ばれる。
本発明の他の特定のグループは式Icの化合物であり、このときBがN(Rh)
であって、Lがエチレン、トリメチレン、およびシス−ビニレンから選ばれる炭
化水素鎖であるか;あるいはBがNであり、Lが1−位置がBに結合した炭化水
素鎖であってシス,シス−プロプ−2−エン−1−イリジン−3−イルである。
式Iの化合物においてL、B、およびJを含んだ窒素結合置換基に対する特定
の意味としては、2−オキソ−ピロリジノ、2−オキソ−ピペリジノ、2−オキ
ソ−1,2,5,6−テトラヒドロピリジン−1−イル、2−オキソ−1,2−ジヒ
ドロピリジン−1−イル、2−オキソ−イミダゾリジン−1−イル、2−オキソ
−4−イミダゾリン−1−イル、2−オキソ−ペルヒドロピリミジン−1−イル
、および2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イルがある。
Xに対する好ましい意味は−C(=O)ORaまたは−C(=Ja)NRbRcであり
、このときRbとRcは、互いに独立的に、前記にてこれらに関して定義した意味
の水素以外のいずれかを有する。
式Iの化合物においてL、B、およびJを含んだ窒素結合置換基に対する好ま
しい意味は、2−オキソ−ピペリジノまたは2−オキソ−ペルヒドロピリミジン
−1−イルである。
好ましい化合物としては、(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−
[4−(メチルアミノカルボニル)−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジノ]ブチ
ル]−N−メチルベンズアミド、(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−
4−[4−(エチルアミノカルボニル)−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジノ]
ブチル]−N−メチルベンズアミド、(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル
)−4−[4−[N−(2−メトキシカルボニルエチル)アミノカルボニル]−4−(
2−オキソピペリジノ)ピペリジノ]ブチル]−N−メチルベンズアミド、(S)−N
−[4−[4−(アミノカルボニル)−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジノ]
−2−(3,4−ジクロロフェニル)ブチル]−N−メチルベンズアミド、および(S
)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−[4−メトキシカルボニル−4
−(2−オキソピペリジノ)ピペリジノ]ブチル]−N−メチルベンズアミドがある
。
式I(または式Ic)の化合物の医薬用として許容しうる塩としては、生理学的
に許容しうるアニオンを供給する強い無機酸もしくは有機酸(例えば、塩酸、硫
酸、リン酸、メタンスルホン酸、またはp−トルエンスルホン酸)を使用して作
製した塩がある。
式I(または式Ic)の化合物は、構造的に類似した複素環式化合物の製造に対
して化学業界に知られている方法を含めた、種々の方法によって製造することが
できる。式I(または式Ic)の化合物を製造するためのこうした方法や中間体が
本発明のさらなる特徴として提供されており、以下にその手順を説明するが、特
に明記しない限り総称基の意味は前記にて定義したとおりである。
(a) 式IIIのピペリジンを、式IV(または式IVc)のアルデヒドを使用して
還元的アルキル化によってアルキル化する。アルキル化は、従来の還元的アルキ
ル化によって(例えば、実施例1に記載のように、酸触媒によりイミニウム塩を
その場で形成させ、次いでアルコール溶媒中にてシアノホウ水素化ナトリウムで
還元することによって)行うのが好ましい。
(b) 式IIIのピペリジンを、式V(または式Vc)のアルキル化剤(式中、
Yは離脱基である)を使用してアルキル化する。Yに対する典型的な意味として
は、例えば、ヨーダイド、ブロマイド、メタンスルホネート、p−トルエンスル
ホネート、トリフルオロメタンスルホネート、およびこれらの類似物などがある
。反応は、標準的な条件下で、例えば適切な溶媒中にて−20〜100℃の範囲
(好ましくは0〜50℃の範囲)の温度で行うことができる。
(c) 式I(または式Ic)の化合物の△で示されているピペリジノ窒素のN
−オキシドの場合は、従来の手順を使用して〔例えば、過酸化水素のメタノール
溶液、過酢酸、3−クロロペルオキシ安息香酸の不活性溶媒(例えばジクロロメ
タン)溶液、ジオキシランのアセトン溶液を使用して〕、式Iの化合物の△で示
されているピペリジノ窒素を酸化する。
(d) 式I(または式Ic)の化合物の第四アンモニウム塩の場合は、式R9
Yのアルキル化剤を使用して、式I(または式Ic)の化合物の△で示されている
ピペリジノ窒素をアルキル化するか、あるいは式V(式中、Yは離脱基である)
のアルキル化剤を使用して式IIIaのピペリジンをアルキル化し、次いで必要に応
じて、従来法によって対イオンYを異なった対イオンAと交換する。Yに対する
典型的な意味としては、(b)においてYに関して列挙したものがある。対イオ
ンの交換は、“A”形の塩基性イオン交換樹脂を使用して行うのが適切である。
(e) Xが−C(=O)ORaであって、Raが水素であるような式Iの化合物
の場合は、RaがC1-6アルキルであるような式Iの対応する化合物を加水分解す
る。反応は、エステルの加水分解に対して知られている標準的な条件下で(例え
ば、必要に応じて酸触媒または塩基触媒を使用した水性有機溶媒中で)行うこと
ができる。例えば、実施例17に記載の条件に類似の条件下で反応を行うことが
できる。
上記プロセスの全てまたは一部において、必要に応じて保護基を使用するのが
望ましいことがある。保護基は、最終化合物が形成されたら取り去ることができ
る。
上記手順のいずれの場合も、式Iの化合物の医薬用として許容しうる塩が必要
となるときは、生理学的に許容しうる対イオンを供給する酸と式Iの化合物とを
反応させることによって、あるいは他の従来法によって得ることができる。
周知のように、本発明の化合物中の種々の任意置換基は、上記プロセスの前ま
たは直後に、標準的な芳香族置換反応によって導入することもできるし、あるい
は従来の官能基変性によって生成させることもでき、このようなものとして本発
明のプロセス態様中に含ませることができる。こうした反応および変性としては
、例えば、ニトロやハロゲノ(halogeno)の導入、およびニトロの還元などがあ
る。このような手順に対する試剤や反応条件は、化学業界においてよく知られて
いる。
上記手順に対する必要な出発物質が市販されていない場合は、複素環化学につ
いての標準法、構造的に類似した公知化合物の合成に似た方法(特に、前記のE
PA公開文献やそれらの対応文献に記載のもの)、および上記の手順や実施例に
記載の手順に類似した方法から選ばれる手順によって、これらの出発物質を製造
することができる。出発物質およびこれら物質を製造するための手順は、本発明
のさらなる態様である。
式IVおよびV(または式IVcおよび式Vc)で示される出発物質を製造するため
の適切な中間体は、式VI(または式VIc)のアルコールである。Qが3,4−ジク
ロロフェニルである式VIcの光学活性アルコールの製造については、実施例1の
パートa.−h.に記載されている。式VI(または式VIc)のアルコールは、例え
ば、塩化オキサリル、ジメチルスルホキシド、及びトリエチルアミンを使用して
、あるいは実施例1.i.に記載のようにデスマーチン・ペリオディナン(Dess-Ma
rtin periodinane)〔1,1,1−トリアセトキシ−1,1−ジヒドロ−1,2−ベ
ンズヨードキソル(benziodoxol)−3(1H)−オン〕を使用して、式IV(または
式IVc)
のアルデヒドに酸化することができる。あるいは式VI(または式VIc)のアルコ
ールは、従来法によって式V(またはVc)のアルキル化剤に転化させることもで
きる。
式IIIの出発物質を製造するための適切な中間体は、R10がピペリジン窒素の
ための保護基であるような式IIの酸である。例えば、実施例1のパートj.−k.
は、R10がベンジル保護基であるような式IIの酸の製造について説明している。
式IIの酸は、例えば4−エトキシカルボニル−4−(2−オキソピペリジノ)−ピ
ペリジンに関して実施例1のパートk.−o.に記載のように、式IIIのピペリジ
ンに転化させることができる。
Jがイオウであるような式IIIの化合物が必要とされる場合は、Jが酸素であ
る対応した1−保護ピペリジン中間体から、五硫化リンまたはラウェッソン試薬
(Lawesson's reagent)〔2,4−ビス(4−メトキシフェニル)−1,3−ジチア
−2,4−ジホスフェタン−2,4−ジスルフィド〕で処理し、次いでピペリジン
窒素を脱保護することによって得ることができる。
式IIIaの出発物質ピペリジンは、式IIIのピペリジンから、置換基R9を導入す
るためのアルキル化または還元的アルキル化によって得ることができるし、ある
いは式IIIの化合物の製造に類似の方法にて、例えば、1−ベンジル−4−エト
キシカルボニル−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジンに関して実施例1のパ
ートj.−n.に記載のように製造することもできる。
当業者には周知のことであるが、出発物質の製造に対しては種々のシーケンス
が適用可能であり、本発明の出発物質および生成物へと導くシーケンスは、合成
法と存在する基に関して適切な考察を施せば、ある程度は変えることかできる。
本発明の化合物または医薬用として許容しうる前記化合物の塩(以後、これら
をまとめて“コンパウンド”と呼ぶ)の有用性は、前記のEPA公開文献(例えば
、EPA428434またはEPA474561)および後述の文献を含めて、標準的な試験および
臨床的研究によって実証することができる。ニューロキニンA(NKA)受容体−結合アッセイ
(試験A)
本発明のコンパウンドがNK2受容体にてNKAの結合に拮抗する能力は、マ
ウス赤白血病(MEL)細胞において示されるように、ヒトのNK2受容体を用い
たアッセイを使用して実証することができる〔これについては、アハロニー,D.
,リトル,J.,トーマス,C.,パウウェル,S.,ベリー,D.,およびグラハム,
A.による“ハムスターのニューロキニンA受容体cDNAの単離と薬理学的特
性決定,分子薬理学(Molecular Pharmacology),1994,45,9-19”に記載され
ている〕。このアッセイの初期使用において、標準化合物L-659,877に関して測
定したIC50は、HELMに結合している3H-NKAに対して30nMであること
が見いだされた。
NK2受容体にて結合するためのコンパウンドの選択性は、標準的アッセイ〔
例えば、NK1受容体に対して選択的な組織調製(tissue preparation)におい
てSPのトリチウム化誘導体を使用したアッセイ、あるいはNK3受容体に対し
て選択的な組織調製においてNKBのトリチウム化誘導体を使用したアッセイ〕
を使用して他の受容体でのその結合を調べることによって示すことができる。モルモットによるアッセイ(試験B)
本発明のコンパウンドが、肺組織において作用薬(NKAまたは[β-ala8]−
NKA(4-10))の作用に拮抗する能力は、モルモットの気管において機能アッセ
イ(functional assay)(これは下記のように行う)を使用して実証することが
できる。選択した作用薬を本明細書全体にわたってAGと呼ぶ。
雄のモルモットを後頭部に強打を加えることによって殺す。気管を取り出し、
余分な組織を取り除き、2つのセグメントに分けた。各セグメントを、次の組成
(mM)(NaCl 119;KCl 4.6;CaCl2 1.8;MgCl2 0.5;NaH2PO4 1;NaHCO3 25;グ
ルコース 11;チオルファン(thiorphan)0.001;およびインドメタシン 0.005)
を有する生理食塩水を含有した、水ジャケット付き(37.5℃)の組織浴(tis
sue bath)中にてステンレス鋼製スターラップ間にリングとして吊し、95%O2
-5%CO2のガスを継続的に供給する。各組織に加える初期張力は1gであり、他
の薬物を加える前の0.5〜1.5時間の平衡化時間にわたってこの張力を保持す
る。グラスFT-03フォース・トランスデューサ(Grass FT-03 force transducer)
を使用してグラス・ポリグラフ(Grass polygraph)により収縮レスポンスを測
定
する。
単一濃度のAG(10nM)を使用し、張力をベースラインレベルに戻すため
に洗浄を施しつつ30分間隔で、組織の免疫性試験を繰り返し行った。AGに対
する収縮の大きさが、2回の免疫性試験(challenge)の後に一定のレベルに達
する。3回目またはそれに続く作用薬への暴露の前に、組織浴中に15分加える
ことによって、各コンパウンドをAGに対するレスポンスの抑制に関して試験す
る。コンパウンドの存在下でのAGに対する収縮レスポンスを、第2のAG免疫
性試験(コンパウンドの非存在下にて)にて得られる収縮レスポンスと比較する
。抑制率(percent inhibition)は、コンパウンドが統計的に有意(p<0.0
5)の収縮減少をもたらすときに測定し、第2の収縮レスポンスを100%とし
て算出する。
選定したコンパウンドの効力は、次の標準式を使用して、試験した各濃度に対
する見かけの解離定数(KB)を算出することによって評価する。
KB=[拮抗薬]/(用量比−1)
上記式中、用量比=真数[(AG−log molar EC50コンパウンド非存在)−(AG
−log molar EC50コンパウンド存在)]。KB値は負の対数に変形することができ
、−log molar KB(すなわちpKB)として表すことができる。この評価を行う
ためには、コンパウンドの存在下および非存在下(インキュベーション時間30
分)にて、対になった気管リングを使用して、AGに関する充分な濃度−レスポ
ンス曲線を得る。AGの効力は、各曲線においてそれ自身の最大レスポンスレベ
ルの50%にて決定する。EC50値は負の対数に変形することができ、−log mo
lar EC50として表すことができる。AGに対する最大収縮レスポンスは、AGに
対する最大レスポンスを、カルバコール(30μM)(最初の平衡化時間の後に
加える)によって引き起こされる収縮のパーセントとして表すことによって求め
る。AGに対する最大レスポンスの統計的に有意(p<0.05)の減少がコン
パウンドによってもたらされるときに、未処理の対の組織におけるカルバコール
収縮のパーセントを100%として抑制率を算出する。
本発明のコンパウンドの効力を実証するための臨床的研究は、標準的な方法を
使用して行うことができる。例えば、コンパウンドが喘息や喘息状の症状を予防
もしくは治療する能力は、吸入した低温空気またはアレルゲンについての免疫性
試験、および肺に関する標準的な測定値〔例えば、FEV1(1秒での強制呼気
量)およびFVC(強制肺活量)〕よる評価を使用して実証することかでき、ま
た統計分析の標準的な方法によって解析することができる。
言うまでもないことであるが、試験Aまたは試験Bにおけるコンパウンド活性
の関与は喘息に限定されず、むしろ試験はNKAに対する一般的な拮抗作用の証
拠を与えている。一般に、試験した本発明のコンパウンドは、試験Aにおいて統
計的に有意な活性を示し、Kiは1μMまたはそれよりはるかに小さかった。試
験Bにおいては、本発明のコンパウンドに対して一般には5以上のpKBが測定
された。理解しておかなければならないことは、試験AにおいてKi値として測
定されるコンパウンド活性と、他のアッセイにおいて測定される値(例えば、試
験Bにおいて測定されるpKB値)との間に常に直接的な相関性があるというわ
けではない、ということである。
前述したように、式Iの化合物または医薬用として許容しうる前記化合物の塩
は、NKA拮抗薬特性を有する。したがって、式Iの化合物または医薬用として
許容しうる前記化合物の塩は、気管支収縮、微小血管透過性の増大、血管拡張、
およびマスト細胞の活性化を含むことが知られているNKAの作用の少なくとも
1つを弱める。NKA拮抗薬はさらに、関節炎、炎症痛、胃腸の運動機能亢進(
gastrointestinal-hypermotility)、ハンティングトン疾患、精神病(Psycoses
)、高血圧症、偏頭痛(migrane)、及びじんま疹(uticaria)を含めた疾患の
治療に対して有用であることが報告されている(米国特許第5,236,921号)。し
たがって、本発明の1つの特徴は、治療を必要とするヒトまたは他の哺乳類にお
いて、NKAが関与していて、NKAの作用の拮抗作用が必要とされるような疾
患の治療(例えば、喘息や喘息に関連した障害の治療)のために式Iの化合物ま
たは医薬用として許容しうる前記化合物の塩を使用することである。さらに、本
発明の他の特徴は、式Iの化合物または前記化合物の塩を、新たな疾患モデルの
開発と標準化のための薬理学的標準として、あるいはNKAが関与する疾患を
治療するための新たな治療用薬剤を開発するのに使用するためのアッセイとして
、あるいはそれらの診断のためのアッセイとして使用することである。
本発明の化合物をこのような疾患の治療に使用する場合、本発明の化合物は一
般に、前述の式Iの化合物もしくは医薬用として許容しうる前記化合物の塩、お
よび医薬用として許容しうる希釈剤もしくはキャリヤーを含んだ適切な医薬用組
成物として投与され、このとき前記組成物は、選択した特定の投与経路に適合す
るよう調製されている。このような組成物が、本発明のさらなる特徴として提供
される。このような組成物は、従来の手順、賦形剤、およびバインダーを使用し
て得ることができ、種々の投与形態物のうちの1つでよい。このような形態物と
しては、例えば、経口投与のための錠剤、カプセル、溶液、または懸濁液;直腸
投与のための坐剤;静脈内または筋内への点滴もしくは注射による投与のための
、無菌の溶液または懸濁液;吸入による投与のためのエーロゾル、またはネブラ
イザー用の溶液もしくは懸濁液;あるいは吹き込みによる投与のための、医薬用
として許容しうる固体希釈剤(例えばラクトース)と混合した粉末;などがある
。
経口投与の場合、式Iの化合物を最大250mg(一般には5〜100mg)
含有した錠剤またはカプセルを使用するのが適切であるといえる。吸入による投
与の場合、式Iの化合物を、例えば、一日1回の投与で5〜100mgの一日量
範囲にてヒトに投与するか、あるいは一日2〜4回の投与に分ける。同様に、静
脈内または筋内への注射もしくは点滴の場合、式Iの化合物を最大10%w/w(
一般には0.05〜5%w/w)含有した無菌の溶液もしくは懸濁液を使用するのが
適切である。
投与しようとする式Iの化合物の投与量は、投与経路、条件の厳しさ、および
治療しようとする患者の体格と年齢を考慮して、当業界によく知られている原理
にしたがって必要に応じて変える。しかしながら、式Iの化合物は一般に、例え
ば0.01〜25mg/kg(通常は0.1〜5mg/kg)の範囲の投与量が受け入れられ
るよう定温動物(例えばヒト)に投与する。ほぼ等量の医薬用として許容しうる
式Iの化合物の塩も使用できることは言うまでもない。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明がこれらの実施例によって
限定されることはない。特に明記しない限り、以下のとおりとする:
(i) 温度は摂氏(℃)表示である;操作は室温または周囲温度(すなわち
、18〜25℃の範囲の温度)で行った;
(ii) 有機溶液は無水硫酸ナトリウムで乾燥した;溶媒の蒸発除去は、ロー
タリーエバポレーターを使用し、最高60℃の浴温にて減圧(600〜4000
パスカル;4.5〜30mmHg)で行った;
(iii) クロマトグラフィーは、メルク・キーゼルゲル(Merck Kieselgel)
(ドイツ,ダルムシュタット,E.メルクから市販の Art 9385)を使用して行っ
た“フラッシュクロマトグラフィー”〔スティルの方法(method of Still)〕
を意味している;逆相シリカゲルは、32〜74μの粒径を有するオクタデシル
シラン(ODS)被覆の支持体〔“PREP-40-ODS”(米国,ペンシルバニア州,アス
トン,ボッドマン・ケミカルズから市販の Art 731740-100)として知られてい
る〕を意味している;薄層クロマトグラフィー(TLC)は、0.25mmのシリ
カゲルGHLFプレート(米国,デラウェア州,ネワーク,アナルテックから市販の
Art21521)を使用して行った;
(iv) 一般に、反応の進行はTLCにより追跡し、反応時間は単に記載した
だけである;
(v) 融点は未補正であり、(d)は分解を示している;与えられている融
点は、記載の手順にしたがって合成した物質に対して得られたものである;多形
の結果、合成によっては、異なった融点をもつ物質の分離が起こることがある;
(vi) 最終生成物は満足できる核磁気共鳴(NMR)スペクトルを有し、T
LCによれば実質的に純粋であった;
(vii) 収率は単に記載しただけであり、必ずしも精確なプロセスによって
得られた値ではない;より多くの物質が必要とされる場合は、合成を繰り返した
;
(viii) 与えられているNMRデータは主要な特徴的プロトンに対するδ値
の形であり、CDCl3を溶媒として300MHzにて測定し、内部標準として
のテトラメチルシラン(TMS)に対するppmで表示してある;シグナルの形
状に関しては従来の略号を使用している;ABスペクトルに対しては、直接的に
観
察されたシフトが記載されている;“DMSO-d6”は全重水素化ジメチルスル
ホキシドを意味している;
(ix) 化学記号は通常の意味を有しており;SI単位とSI記号を使用して
いる;
(x) 減圧は、パスカル(Pa)で表示した絶対圧力として記載されている;
(xi) 溶媒比は容積:容積(v/v)で表示している;そして
(xii) 質量スペクトル(MS)は、直接暴露プローブを使用した化学イオ
ン化モードにて、70エレクトロンボルトの電子エネルギーで行った;一般には
、親質量を示すピークだけが記載してある。
実施例1
(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−[4−エトキシカルボニル−
4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジノ]ブチル]−N−メチルベンズアミド塩酸
塩
4−エトキシカルボニル−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジン(391mg
)と酢酸(0.09ml)をメタノール(6ml)中に溶解して得た溶液に、(S)−N
−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−オキソブチル]−N−メチルベンズ
アミド(415mg)をメタール(3ml)中に溶解して得た溶液を加えた。15分
後、シアノホウ水素化ナトリウム(100mg)をメタノール(3ml)中に溶解し
て得た溶液を一度に全部加えた。3時間撹拌した後、反応混合物を炭酸水素ナト
リウム水溶液で希釈し、30分撹拌し、ジクロロメタンで抽出した。有機抽出物
を乾燥し、溶媒を蒸発除去し、ジクロロメタン:メタノール(95:5)を溶離
剤として使用してクロマトグラフィー処理した。こうして得られた物質をジクロ
ロメタン中に溶解し、塩化水素含有エーテルを使用して塩酸塩として沈殿させ、
溶媒を蒸発除去し、高減圧下で一晩静置して標記化合物を白色固体(630mg)
として得た。MS:m/z=588(M+1);C31H39Cl2N3O4・1.70HCl・0.20(C2H5)2Oに対する
元素分析結果:計算値:C,57.40;H,6.46;N,6.31;実測値:C,57.40;H,6
.37;
N,6.17
(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−オキソブチル]−N−メチル
ベンズアミドは以下のように合成した。
a. 1−ブロモ−2−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシ)エタン
ジヒドロピラン(1リットル)と強酸イオン交換樹脂(10.0g)をヘキサ
ン(2リットル)中にて混合して得た溶液を機械的に撹拌し、これに2−ブロモ
エタノール(985g)を1.5時間で滴下した。滴下全体を通じて、冷水浴を使
用して35〜40℃の内部温度を保持した。室温で一晩撹拌した後、反応混合物
をクロマトグラフィー処理し、ヘキサン(6リットル)で溶離した。溶離液から
溶媒を蒸発除去して琥珀色の液体を得、これを2インチのヴィグロウカラムを通
して蒸留した。75〜95℃(3300〜4700Pa)で沸騰する物質を捕集し
、これを再蒸留して標記エーテルを油状物として得た(1195.5g)。
沸点:80〜90℃(2666Pa);NMR:4.68(m,1),4.01(m,1),3.89(m,1),
3.77(m,1),3.52(m,3),1.75-1.50(m,6).
b. 2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−(テトラヒドロピラン−2−イルオ
キシ)−ブチロニトリル
水素化ナトリウム(55%オイル懸濁液の218.0g)をテトラヒドロフラン
(4リットル)中に溶解して得た溶液を氷/水浴中にて10℃にし、これに3,
4−ジクロロフェニルアセトニトリル(893.0g)をテトラヒドロフラン(2
リットル)中に溶解して得た溶液を45分で加えた。こうして得られた溶液を、
室温で2時間撹拌した。本混合物を氷/水浴中で冷却し、1−ブロモ−2−(テ
トラヒドロピラン−2−イルオキシ)エタン(1076.0g)をニートの油状物
として25分で滴下した。本混合物を室温で一晩撹拌し、2リットルずつ4つの
部分に分けた。各部分を塩化アンモニウムの飽和水溶液(3リットル)で希釈し
、エーテル(500ml)で抽出した。有機層を合わせて洗浄し(塩化アンモニウ
ム水
溶液)、乾燥し、そして溶媒を蒸発除去した。こうして得られた物質を、ヘキサ
ン:ジクロロメタン(勾配100:0,0:100)を溶離剤としてクロマトグラ
フィー処理して、標記ニトリル(932g)を油状物として得た。NMR:7.47(m,
4),7.20(m,2),4.57(m,2),4.08(m,2),3.85(m,3),3.54(m,3),3.37(m,1),2.
15(m,4),1.77(m,4),1.56(m,8)
c. 2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−(テトラヒドロピラン−2−イルオ
キシ)ブチルアミン
上記ニトリル(128.3g)を95%エタノール(1.1リットル)と濃アン
モニア水(550ml)に溶解して得た溶液に、ラネーニッケル(25.0g)を加
えた。本混合物を水素雰囲気下(3.6バール)で1.5日静置した。本混合物を
珪藻土を通して濾過して触媒を除去し、得られた濾液から溶媒を蒸発除去した。
こうして得られた物質を、ジクロロメタン:メタノール(勾配100:0,95:
5)を溶離剤として使用してクロマトグラフィー処理して、標記アミン(91g
)を油状物として得た。NMR:7.40(s,1),7.38(s,1),7.32(d,1,J=2.1),7.28(
d,1,J=2.0),7.07(dd,1,J=2.1,4.9),7.04(dd,1,J=2.1,4.9),4.50(m,1),
4.43(m,1),3.70(m,4),3.45(m,2),3.27(m,1),3.17(m,1),2.97-2.75(m,6),2
.00(m,2),1.82-1.66 (m,6),1.53(m,8),1.18(ブロードs,4)
MS:m/z=318(M+1),234[(M+1)-テトラヒドロピラニル]
d. 2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−ヒドロキシブチルアミン
2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−(テトラヒドロピラン−2−イルオキシ
)ブチルアミン(550g)をメタノール(3.3リットル)中に溶解して得た溶
液を機械的に撹拌し、これに6.0Nの塩酸(352ml)を一度に加えた(やや
発熱した)。3時間撹拌した後、反応混合物から溶媒を蒸発除去し、得られた残
留物を水で希釈して容積を3リットルにした。この溶液をエーテルで抽出し(5
00ml×2回)、水酸化ナトリウムペレット(100g)を加えて塩基性にし、
そして酢酸エチルで抽出した(500ml×4回)。酢酸エチル抽出物を合わせて
洗浄し
(塩化ナトリウムの飽和水溶液800ml)、乾燥し、そして溶媒を蒸発除去して
標記アルコールを琥珀色の油状物(367g)として得た。この油状物は高減圧
下で固化した。NMR:7.39(d,1,J=8.2),7.28(d,1,J=2.0),7.04(dd,1,J=8.2
,2.0),3.65(m,1),3.50(m,1),2.90(m,2),2.71(m,1),2.25(m,2),1.86(m,2)
e. (S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−ヒドロキシブチルアミン
D−酒石酸(222g)をメタノール(4リットル)中に溶解して得た溶液を
還流状態にて機械的に撹拌し、これに上記アルコール(342g)の加温メタノ
ール(2リットル)溶液を一度に加え、次いでさらなるメタノール(1リットル
)を加えた。本混合物を加熱還流した。沸点に達する前に結晶が生じ始めた。1
.5時間還流した後、溶液を徐々に室温に冷却し、3日間撹拌した。酒石酸塩の
最初のかたまりを吸引濾過によって捕集し、減圧オーブン中60℃にて乾燥して
生成物(232g)を得た。本物質を沸騰メタノール(13.5リットル)中に混
合し、還流状態を1時間保持し、1リットルのメタノールを留去した。本混合物
を徐々に室温に冷却し、4日間撹拌した。結晶の最初のかたまりを吸引濾過によ
って捕集し、これを乾燥して固体(178.8g)を得た。メタノール濾液から
溶媒を蒸発除去して容積を約3リットルとした。得られた懸濁液を再び還流して
透明溶液とし、この溶液を撹拌しながら徐々に室温に冷却した。結晶の第2のか
たまり(43.8g)を捕集した。採取した酒石酸アミノアルコールを合わせ(2
22.6g)てこれを1.0Nの水酸化ナトリウム(1.5リットル)中に溶解させ
、ジクロロメタンで抽出した(500ml×4回)。有機抽出物を合わせて塩水で
洗浄し、乾燥し、そして溶媒を蒸発除去して光学活性体を多く含有した標記アル
コール(135.4g)をオフホワイトの固体として得た。mp 80〜82℃;MS:m/z
=324(M+1); NMR(CD3OD):7.47(d,1,J=8.3),7.42(d,1,J=2.1),7.17(dd,1,
J=8.2,2.1),3.47(m,1),3.34(m,1),2.83(m,3),1.92(m,1),1.74(m,1).
f. エチル(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−ヒドロキシブチ
ル]−カルバメート
上記のアルコール(50.0g)とトリエチルアミン(24.9g)をジクロロメ
タン(600ml)中に溶解して得た溶液を機械的に撹拌し、これにエチル・クロ
ロホルメート(25.5g)を20分で滴下した。滴下中、反応混合物の温度を−
20〜−25℃に保持した。反応混合物を、4時間で徐々に室温に加温し、洗浄
した(1N塩酸、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液、および塩化ナトリウム飽和水
溶液)。分離したジクロロメタン相を乾燥し、溶媒を蒸発除去して標記カルバメ
ートを黄色油状物(65.3g)として得た。MS:m/z = 306(M+1);NMR(CD3OD):
7.44(d,1,J=8.3),7.38(d,1,J=2.1),7.15(dd,1,J=8.3,2.1),3.99(q,2,J=
7.1),3.45(m,1),3.29(m,3),2.97(m,1),1.92(m,1),1.75(m,1),1.16(t,3,J
=7.1).
g. (S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−ヒドロキシブチル]メ
チルアミン
水素化リチウムアルミニウム(16.0g)をテトラヒドロフラン(200ml)
中に混合して得た懸濁液を機械的に撹拌し、これに上記カルバメート(65.3g
)をテトラヒドロフラン(500ml)中に溶解して得た溶液を30分で滴下した
。滴下中、反応混合物の温度は45℃に上昇した。反応混合物を1時間加熱還流
し、室温に冷却し、一晩撹拌した。反応混合物を氷浴中で冷却し、硫酸ナトリウ
ム飽和水溶液(50ml)を45分で滴下した。さらに1時間撹拌した後、固体の
無水硫酸ナトリウム(50g)を加えた。30分撹拌した後、珪藻土を通して濾
過し、濾液から溶媒を蒸発除去して標記アミン(52.9g)を黄色油状物として
得た。MS:m/z=248(M+1); NMR:7.37(d,1,J=8.2),7.27(d,1,J=2.0),7.01(d
d,1,J=8.2,2.1),3.69(m,1),3.53(m,1),3.40(m,2),2.76(m,3),2.45(m,3)
,1.89(m,2).
h. (S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−ヒドロキシブチル]−
N−メチルベンズアミド
上記アミン(52.9g)とトリエチルアミン(54.0g)をジクロロメタン
(1リットル)中に溶解して得た溶液を機械的に撹拌し、これに塩化ベンゾイル
(31.5g)をジクロロメタン(200ml)中に溶解して得た溶液を45分で滴
下した。滴下中、氷浴を使用して反応混合物の温度を5〜8℃に保持した。反応
混合物を室温で3時間撹拌し、そして洗浄した(1N塩酸、塩水)。分離したジ
クロロメタン層から溶媒を蒸発除去して黄色油状物を得た。この油状物を、ジク
ロロメタン:メタノール(勾配100:0,95:5)を溶離剤としてクロマトグ
ラフィー処理して、標記ベンズアミド(65.6g)を白色固体として得た。
mp 123〜125℃; MS:m/z=352(M+1); [α]D=-18.3°(c=2.46,CH3OH)
i. (S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−オキソブチル]−N−
メチルベンズアミド
1,1,1−トリアセトキシ−1,1−ジヒドロ−1,2−ベンズヨードキソル(b
enziodoxol)−3−(1H)−オン(18.6g)とtert-ブタノール(4.5ml)を
ジクロロメタン(150ml)中に溶解して得た溶液に、上記ベンズアミド(12
.9g)をジクロロメタン(150ml)中に溶解して得た溶液を加えた。5分撹拌
した後、反応混合物をエーテル(600ml)および炭酸水素ナトリウム(19.
7g)とチオ硫酸ナトリウム五水和物(64.5g)を水中(825ml)に溶解し
て得た溶液で希釈した。この二相系を、2つの層が透明になるまで(約30分)
激しく撹拌した。有機層を分離して洗浄し(炭酸水素ナトリウム飽和水溶液)、
乾燥し、溶媒を蒸発除去した。この粗製物質を、ジクロロメタン:エーテル(1
:1)を溶離剤としてクロマトグラフィー処理して、標記アルデヒドを白色固体
(9.7g)として得た。次いでこれをエーテル中にて沈殿させ、濾過した。MS:
m/z=350(M+1)
ピペリジン中間体は以下のように合成した。
j. 8−ベンジル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン
炭酸アンモニウム(488.5g)とシアン化ナトリウム(70.0g)を水(7
00ml)およびエタノール(700ml)中に混合して得た懸濁液を機械的に
撹拌し、これに1−ベンジル−4−ピペリドン(100g)を一度に加えた。反
応混合物を60℃で12時間撹拌した。無機塩を徐々に溶解させて溶液とし、ス
ピロヒダントイン結晶を形成させた。室温に冷却し、濾過して固体を捕集し、温
水(2リットル)で洗浄し、80%エタノール(2リットル)から再結晶し、エ
タノールで洗浄し、減圧オーブン中50℃で乾燥して、標記ヒダントイン(12
2g)を白色固体として得た。MS:m/z=260(M+1); NMR(DMSO-d6):10.64(bs,1)
,8.45(ブロードs,1),7.29(m,5),3.48(s,2),2.69(m,2),2.28(m,2),1.81(m,2),
1.51(m,2).
k. 4−アミノ−1−ベンジル−4−カルボキシピペリジン
上記ヒダントイン(40.0g)と水酸化リチウム一水和物(32.4g)を水(
500ml)中に溶解して得た溶液を、撹拌しながら40時間加熱還流した。本混
合物を室温に冷却し、白色沈殿物を濾過して除去し、濾液から溶媒を蒸発除去し
た。濃縮液のpHを濃塩酸で12から5に調節し、本溶液から溶媒を蒸発除去し
た。得られた残留物をメタノール中に懸濁して白色沈殿物を生成させ、これを濾
過し、メタノールで洗浄し、そして風乾して標記アミン(32.7g)を白色固体
として得た。MS:m/z=235(M+1); NMR(DMSO-d6):7.40(m,5),3.89(m,2),2.92(
m,4),2.12(m,2),1.84(m,2).
l. 4−アミノ−1−ベンジル−4−エトキトカルボニルピペリジン
上記アミノ酸(23.0g)をエタノール(400ml)中に混合して得た懸濁液
に、0℃にて塩化チオニルを滴下して透明溶液とした。反応混合物を室温に加温
し、5時間還流し、そして室温にて一晩撹拌した。本混合物から溶媒を蒸発除去
し、トルエンから2回ストリッピングした。得られた油状物を水中に溶解し、1
Nの水酸化ナトリウムでpH3に調節し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で中和
し、そしてジクロロメタンで抽出した。有機抽出物を乾燥し、溶媒を蒸発除去し
て標記エステル(21.5g)を油状物として得た。MS:m/z=263(M+1); NMR:7.
28(m,5),4.17(q,2,J=7.1),3.52(s,2),2.50(m,4),2.13(m,2),1.54(m,4),
1.27(t,3,J=7.1).
m. 1−ベンジル−4−(5−クロロバレルアミド)−4−エトキシカルボニル
ピペリジン
上記アミノエステル(20.3g)とピリジン(13.1ml)をジクロロメタン
(250ml)中に溶解して得た溶液に、塩化5−クロロバレリル(13.2g)を
ジクロロメタン(50ml)中に溶解して得た溶液を0℃にて滴下した。20分以
内に濃厚なスラリーとなった。一晩室温に加温した後、スラリーを炭酸水素ナト
リウム水溶液で希釈して透明で二相の溶液とし、これをさらにジクロロメタンで
抽出した。有機抽出物を乾燥し、溶媒を蒸発除去して淡褐色の半固体を得た。本
物質をエーテル中に懸濁させ、これを濾過して標記アミド(16.8g)を白色固
体として得た。MS:m/z=381(M+1); NMR(CD3OD):7.28(m,5),4.11(q,2,J=7.1)
,3.55(m,4),2.68(m,2),2.26(m,4),2.05(m,4),1.75(m,4),1.21(t,3,J=7.1
).
n. 1−ベンジル−4−エトキシカルボニル−4−(2−オキソピペリジノ)ピ
ペリジン
水素化ナトリウム(2.1g)をテトラヒドロフラン(150ml)中に混合して
得た懸濁液に、上記アミド(16.8g)をテトラヒドロフラン(50ml)中に溶
解して得た溶液を混合した。一晩撹拌した後、反応混合物を水で冷却し、濃縮し
(テトラヒドロフランを除去するために)、水で希釈し、そしてジクロロメタン
で抽出した。有機抽出物を合わせて乾燥し、溶媒を蒸発除去した。この粗製物を
、ジクロロメタン:メタノール(勾配97:3,95:5)を溶離剤としてクロマ
トグラフィー処理して、1−ベンジル−4−エトキシカルボニル−4−(2−オ
キソピペリジノ)ピペリジン(13.2g)を固体として得た。MS:m/z=345(M+1)
; NMR(CD3OD): 7.30(m,5),4.11(q,2,J=7.1),3.54(s,2),3.44(m,2),2.66(
m,2),2.52(m,2),2.32(m,2),2.20(m,2),2.01(m,2),1.85(m,2),1.74(m,2),
1.20(t,3,J=7.1).
o. 4−エトキシカルボニル−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジン
1−ベンジル−4−エトキシカルボニル−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリ
ジン(12.4g)と炭素担持20%水酸化パラジウム(2.0g)をエタノール(
150ml)中に溶解して得た溶液を、水素雰囲気下(1バール)にて一晩撹拌し
た。珪藻土を通して反応混合物を濾過し、濾液から溶媒を蒸発除去して4−エト
キシカルボニル−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジン(9.1g)を高粘度油
状物として得た。MS:m/z=255(M+1); NMR(CD3OD):4.13(q,2,J=7.1),3.44(m,
2),2.95(m,4),2.32(m,2),2.19(m,2),1.88(m,4),1.74(m,2),1.23(t,3,J=7
.1).
実施例2
(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−[4−(2−オキソピペリジノ
)−4−(ピロリジン−1−イルカルボニル)ピペリジノ]ブチル]−N−メチルベ
ンズアミド・クエン酸塩
4−(2−オキソピペリジノ)−4−(ピロリジン−1−イルカルボニル)ピペリ
ジン(330mg)と酢酸(0.07ml)をメタノール(5ml)中に溶解して得た
溶液に、(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−オキソブチル]−N
−メチルベンズアミド(350mg)をメタノール(3ml)中に溶解して得た溶液
を加えた。10分後、シアノホウ水素化ナトリウム(100mg)をメタノール(
2ml)中に溶解して得た溶液を一度に加えた。3時間撹拌した後、反応混合物を
炭酸水素ナトリウム水溶液で希釈し、30分撹拌し、そしてジクロロメタンで抽
出した。有機抽出物を乾燥し、溶媒を蒸発除去し、ジクロロメタン:メタノール
(95:5)を溶離剤としてクロマトグラフィー処理を行った。得られた物質(
410mg)を、1当量のクエン酸(128mg)を含有したメタノール中に溶解し
、溶媒を蒸発除去し、懸濁させ、エーテル中ですりつぶし、溶媒を蒸発除去し、
そして高減圧下に静置して、標記化合物を白色固体(540mg)として得た。MS
:m/z=613(M+1),542[(M+1)-ピロリジン]; C33H42Cl2N4O3・1.40H2O・0.65(C2H5)2O・1.
0C6H8O7に対す
る元素分析結果:計算値:C,56.83;H,6.80;N,6.37;実測値:C,56.89;H
,6.74;N,6.27
ピペリジン中間体は以下のように合成した。
a. 1−ベンジルオキシカルボニル−4−(エトキシカルボニル)−4−(2−
オキソピペリジノ)ピペリジン
N−(ベンジルオキシカルボニルオキシ)スクシンイミド(8.8g)とトリエチ
ルアミン(5.4ml)をジクロロメタン(150ml)中に溶解して得た溶液に、
4−(エトキシカルボニル)−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジン(9.0g)
をジクロロメタン(25ml)中に溶解して得た溶液を加えた。1.5時間後、反
応混合物を、1.0N塩酸および炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で逐次洗浄した
。有機層を分離して乾燥し、溶媒を蒸発除去して標記化合物(11.6g)を淡黄
色固体として得た。MS:m/z=389(M+1); NMR(CDCl3/CF3COOH):7.37(m,5),5.16
(s,2),4.28(q,2,J=7.1),4.09(m,2),3.40(m,2),3.28(m,2),2.53(m,2),2.3
4(m,2),1.83(m,6),1.30(t,3,J=7.1).
b. 1−ベンジルオキシカルボニル−4−カルボキシ−4−(2−オキソピペ
リジノ)ピペリジン
1−ベンジルオキシカルボニル−4−エトキシカルボニル−4−(2−オキソ
ピペリジノ)ピペリジン(11.4g)を、テトラヒドロフラン(150ml)、1.
0Nの水酸化ナトリウム(50ml)、およびメタノール(透明溶液を得るのに必
要な量)中に溶解して得た溶液を10時間加熱還流した。反応混合物から溶媒を
蒸発除去し、得られた水溶液を水で希釈し、そしてジクロロメタンで抽出して未
反応の出発物質(3.7g)を回収した。水相を1.0N塩酸でpH3に酸性化し
、ジクロロメタンで抽出した。有機抽出物を合わせて水で洗浄し、乾燥し、そし
て溶媒を蒸発除去して淡黄色固体を得た。本物質をエーテル中に懸濁させ、濾過
して標記化合物(6.3g)を白色固体として得た。MS:m/z=361(M+1); NMR(CDC
l3
/CF3COOH):7.37(m,5),5.17(s,2),4.11(m,2),3.45-3.32(m,4),2.55(m,2),2
.37(m,2),1.94-1.78(m,6).
c. 1−ベンジルオキシカルボニル−4−(2−オキソピペリジノ)−4−(ピ
ロリジン−1−イルカルボニル)ピペリジン
1−ベンジルオキシカルボニル−4−カルボキシ−4−(2−オキソピペリジ
ノ)ピペリジン(300mg)、ピロリジン(0.083ml)、4−(ジメチルアミ
ノ)ピリジン(122mg)、および1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エ
チルカルボジイミド塩酸塩(192mg)をジクロロメタン(5ml)中に溶解して
得た溶液を3.5時間撹拌した。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、1.0N
の塩酸、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液、および水で逐次洗浄した。有機層を分
離して乾燥し、溶媒を蒸発除去して標記化合物(260mg)を白色固体として得
た。これをさらなる精製を施すことなく次の工程に直接使用した。MS:m/z=343[
(M+1)-ピロリジン]; NMR(CD3OD):7.33(m,5),5.10(s,2),3.98(m,2),3.45-3.20(m,
8),2.36(m,2),2.26(m,2),1.92-1.68(m,10).
d. 4−(2−オキソピペリジノ)−4−(ピロリジン−1−イルカルボニル)ピ
ペリジン
1−ベンジルオキシカルボニル−4−(2−オキソピペリジノ)−4−(ピロリ
ジン−1−イルカルボニル)ピペリジン(660mg)および炭素担持の20%水
酸化パラジウム(150mg)をエタノール(8ml)中に溶解して得た溶液を、水
素雰囲気下(1バール)にて一晩撹拌した。反応混合物を珪藻土を通して濾過し
、濾液から溶媒を蒸発除去して4−(2−オキソピペリジノ)−4−(1−ピロリ
ジニルカルボニル)ピペリジン(430mg)をオフホワイトの固体として得た。
MS:m/z=280(M+1),209[(M+1)-ピロリジン]; NMR(CD3OD):3.44(m,4),3.26-3.11(m,
4),2.98(m,2),2.37(m,2),2.28(m,2),1.92-1.69(m,10).
前記サブパートb.に記載の1−ベンジルオキシカルボニル−4−カルボキシ
−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジン中間体は、以下のように別の方法で合
成することもできる。
1−ベンジルオキシカルボニル−4−カルボキシ−4−(2−オキソ
ピペリジノ)ピペリジン
4−(エトキシカルボニル)−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジン(15.
85g)を、テトラヒドロフラン(125ml)、1.0N水酸化ナトリウム(12
5ml)、および水(235ml)中に溶解して得た溶液を6時間還流した。反応混
合物を1.0N塩酸(65ml)で希釈し、減圧にて濃縮した。残留物をエタノー
ルと混合し、不溶の塩を濾別した。濾液から溶媒を蒸発除去し、得られた物質を
ジクロロメタン(500ml)中に溶解した。この濁った液に、トリエチルアミン
(17.4ml)とN−(ベンジルオキシカルボニルオキシ)スクシンイミド(17.
0g)を加えた。一晩撹拌した後、反応混合物を1.0N水酸化ナトリウム(25
0ml)で抽出した。ジクロロメタン層を分離して洗浄し(0.1N塩酸、炭酸水
素ナトリウム水溶液)、乾燥し、そして溶媒を蒸発除去して、1−ベンジルオキ
シカルボニル−4−(エトキシカルボニル)−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリ
ジン(12.0g)を回収した。塩基性の水相を濃塩酸でpH1に調節し、ジクロ
ロメタンで抽出した。有機抽出物をメタノールで透明にし、乾燥し、そして溶媒
を蒸発除去して標記酸を白色固体(15.8g)として得た。
実施例3
(S)−N-[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−[4−メトキシカル
ボニル−4−(2−オキソペルヒドロピリミジン−1−イル)ピペリジ
ノ]ブチル-N−メチルベンズアミド・クエン酸塩
4−(2−オキソピペリジノ)−4−(ピロリジン−1−イルカルボニル)ピペリ
ジンを4−メトキシカルボニル−4−(2−オキソペルヒドロピリミジン−1−
イル)ピペリジンに置き換えたこと以外は、実施例2に記載の手順に類似の手順
を使用して、標記化合物を白色固体として得た。MS:m/z=575(M+1);
C29H36Cl2N4O4・1.95CH3OH・1.0C6H8O7に対する元素分析値:計算値:C,53.46;H
,6.29;N,6.74;実測値:C,53.49;H,6.01;N,6.35
ピペリジン中間体は以下のように合成した。
a. 1−ベンジル−4−[N'−(3−クロロプロピル)ウレイド]−4−エトキ
シカルボニルピペリジン
4−アミノ−1−ベンジル−4−エトキシカルボニルピペリジン(3.1g)を
ジクロロメタン(40ml)中に溶解して得た溶液に、3−クロロプロピルイソシ
アネートをジクロロメタン(20ml)中に溶解して得た溶液を0℃にて加えた。
10分後、反応混合物から溶媒を蒸発除去し、エーテル中に溶解して沈殿物を生
成させ、これを濾過して標記化合物(3.5g)を白色固体として得た。
NMR(CD3OD):7.31(m,5),4.12(q,2,J=7.1),3.58(t,2,J=6.6),3.53(s,2),3.
21(t,2,J=6.6),2.69(m,2),2.32(m,2),2.11-1.85(m,6),1.22(t,3,J=7.1).
b. 1−ベンジルオキシカルボニル-4−[N'−(3−クロロプロピル)ウレイ
ド]−4−エトキシカルボニルピペリジン
1−ベンジル−4−[N'−(3−クロロプロピル)ウレイド]−4−エトキシカ
ルボニルピペリジン(10g)を1,2−ジクロロエタン中に溶解して得た溶液に
、1−クロロエチル・クロロホルメート(2.83ml)を0℃にて滴下した。1
5分後、反応混合物を1時間還流し、溶媒を蒸発除去し、メタノール(200ml
)中に溶解し、30分還流し、トルエンで希釈し、そして溶媒を蒸発除去した。
この粗製残留物をジクロロメタン(200ml)中に溶解し、N−(ベンジルオキ
シカルボニルオキシ)スクシンイミド(6.53g)とトリエチルアミン(7.3ml
)を加えた。30分後、反応混合物をジクロロメタンで希釈し、1.0N塩酸お
よび炭酸水素ナトリウム水溶液で逐次洗浄した。有機相を分離して乾燥し、溶媒
を蒸発除去し、ジクロロメタン:エーテル(勾配5:1,1:1)を溶離剤として
使用してクロマトグラフィーにより精製して、標記化合物を泡状白色固体として
得た。
MS:m/z=426(M+1); NMR:7.35(m,5),5.13(s,2),4.87(m,2),4.18(q,2,J=7.1
),3.88(m,2),3.59(m,2),3.27(m,4),1.99(m,6),1.25(t,3,J=7.1).
c. 1−ベンジルオキシカルボニル−4−カルボキシ−4−[N'−(3−クロ
ロプロピル)ウレイド]ピペリジン
1−ベンジルオキシガルボニル-4−[N'−(3−クロロプロピル)ウレイド]−
4−エトキシカルボニルピペリジン(7.6g)をテトラヒドロフラン(108ml
)、メタノール(35ml)、および1.0N水酸化ナトリウム(36ml)中に溶
解して得た溶液を一晩撹拌した。反応混合物を減圧で濃縮し、得られた塩基性水
溶液を水で希釈し、ジクロロメタンで抽出した。有機抽出物を乾燥し、溶媒を蒸
発除去して、未反応の出発物質(2.8g)を回収した。水層を1.0N塩酸で酸
性にし、ジクロロメタンで抽出した。有機抽出物を乾燥し、溶媒を蒸発除去して
標記化合物を泡状固体(4.1g)として得た。 MS:m/z=380[(M+1-H2O)]; NMR
:7.34(m,5),5.94(m,2),5.11(m,2),3.85(m,2),3.54(m,2),3.26(m,4),1.96
(m,6)
d. 1−ベンジルオキシカルボニル−4−カルボキシ−4−(2−オキソペル
ヒドロピリミジン−1−イル)ピペリジン
1−ベンジルオキシカルボニル−4−カルボキシ−4−[N'−(3−クロロプ
ロピル)ウレイド]ピペリジン(3.9g)をテトラヒドロフラン(25ml)中に
溶解して得た溶液に、カリウムtert-ブトキシド(25ml,tert-ブタノール中1
.0M)を加えた。2時間撹拌した後、反応混合物から溶媒を蒸発除去し、水中
に溶解し、そしてジクロロメタンて抽出した(これは廃棄)。水層を1.0N塩
酸で酸性化し、ジクロロメタンで抽出した。有機抽出物を乾燥し、溶媒を蒸発除
去して泡状固体を得た。これをエーテル中に懸濁させ、濾過して標記化合物を白
色固体(3.2g)として得た。MS:m/z=362(M+1); NMR:7.35(m,5),6.58(m,1)
,5.12(s,2),3.70(m,2),3.53(m,2),3.34(m,2),3.26(m,2),2.27(m,2),1.95
(m,4).
e. 1−ベンジルオキシカルボニル−4−メトキシカルボニル−4−(2−オ
キソペルヒドロピリミジン−1−イル)ピペリジン
上記パートd.から得られた生成物をメタノール(20ml)中に溶解し、次い
で(トリメチルシリル)ジアゾメタンの2.0Mヘキサン(8ml)溶液を加えた
。10分後、反応混合物から溶媒を蒸発除去して標記メチルエステル(490mg
)を泡状白色固体として得た。NMR(CDCl3/CF3COOH):7.37(m,5),5.17(s,2),4.
00(m,2),3.83(s,3),3.46(m,2),3.35(m,4),2.34(m,2),2.06(m,2),1.95(m,2)
.
f. 4−メトキシカルボニル−4−(2−オキソペルヒドロピリミジン−1−
イル)ピペリジン
1−ベンジルオキシカルボニル−4−メトキシカルボニル−4−(2−オキソ
ペルヒドロピリミジン−1−イル)ピペリジン(490mg)と炭素担持の20%
水酸化パラジウム(40mg)をエタノール(10ml)中に溶解して得た溶液を、
水素雰囲気下(1バール)にて一晩撹拌した。反応混合物を珪藻土を通して濾過
し、濾液から溶媒を蒸発除去して4−メトキシカルボニル−4−(2−オキソペ
ルヒドロピリミジン−1−イル)ピペリジン(213mg)を白色固体として得た
。
実施例4〜14
4−(2−オキソピペリジノ)−4−(ピロリジン−1−イルカルボニル)ピペリ
ジンの代わりに必要なピペリジンを使用したこと以外は、実施例2に記載の手順
に類似の手順にしたがって、式Iで示される以下の化合物を合成した。各化合物
に対して満足できるNMRスペクトルが得られた。
実施例4
(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−[4−(2−オキソペルヒドロ
ピリミジン−1−イル)−4−(ピロリジン−1−イルカルボニル)ピペリジノ]
ブチル]−N−メチルベンズアミド・クエン酸塩.
MS:m/z=614(M+1); C32H41Cl2N5O3・1.55H2O・1.0C6H8O7に対する元素分析値:計
算値:C,54.68;H,6.29;N,8.39;実測値:C,54.68;H,6.13;N,8.32
実施例5
(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−[4−(メチルアミノカルボニ
ル)−4−(2−オキソペルヒドロピリミジン−1−イル)ピペリジノ]ブチル]−N
−メチルベンズアミド・クエン酸塩
MS:m/z=574(M+1);C29H37Cl2N5O3・1.10H2O・1.0C6H8O7に対する元素分析値:計
算値:C,53.45;H,6.05;N,8.90;実測値:C,53.44;H,6.07;N,8.55
実施例6
(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−[4−(メチルアミノカルボニ
ル)−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジノ]ブチル]−N−メチルベンズアミ
ド・クエン酸塩
MS:m/z=573(M+1);C30H38Cl2N4O3・0.80H2O・0.20(C2H5)2O・1.0C6H8O7に対する元
素分析値:計算値:C,55.60;H,6.29;N,7.05;実測値:C,55.64;H,6.28
;N,6.82
実施例7
(S)−N-[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−[4−(ジメチルアミノカルボ
ニル)−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジノ]ブチル]−N−メチルベンズア
ミド・クエン酸塩
MS:m/z=587(M+1); C31H40Cl2N4O3・1.0H2O・0.20(C2H5)2O・1.05C6H8O7に対する
元素分析値:計算値:C,55.66;H,6.42;N,6.81;実測値:C,55.52;H,6.3
6;N,6.41
実施例8
(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−[4−(エチルアミノカルボニ
ル)−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジノ]ブチル]−N−メチルベンズアミ
ド・クエン酸塩
MS:m/z=587(M+1); C31H40Cl2N4O3・0.60H2O・0.50(C2H5)2O・1.0C6H8O7に対する
元素分析値:計算値:C,56.60;H,6.60;N,6.77;実測値:C,56.59;H,6.5
4;N,6.55
実施例9
(S)−N−[4−[4−(ベンジルアミノカルボニル)−4−(2−オキソピペリジ
ノ)ピペリジノ]−2−(3,4−ジクロロフェニル)ブチル]−N−メチルベンズア
ミド・クエン酸塩
MS:m/z=649(M+1); C36H42Cl2N4O3・0.30H2O・1.0C6H8O7に対する元素分析値:計
算値:C,59.54;H,6.02;N,6.61;実測値:C,59.54;H,6.24;N,6.76
実施例10
(S)−N−[4−[4−[N−(アミノカルボニルメチル)アミノカルボニル]−4−
(2−オキソピペリジノ)ピペリジノ]−2−(3,4−ジクロロフェニル)ブチル]
−N−メチルベンズアミド・クエン酸塩
MS:m/z=616(M+1); C31H39Cl2N5O4・1.0H2O・1.0C6H8O7に対する元素分析値:計
算値:C,53.75;H,5.97;N,8.47;実測値:C,53.78;H,5.99;N,8.13
実施例11
(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−[4−[N−(2−メトキシカ
ルボニルエチル)アミノカルボニル]−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジノ]
ブチル]−N−メチルベンズアミド・クエン酸塩
MS:m/z=645(M+1); C33H42Cl2N4O5・0.95H2O・1.0C6H8O7に対する元素分析値:計
算値:C,54.79;H,6.12;N,6.55;実測値:C,54.79;H,6.04;N,6.57
実施例12
(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)-4−[4−[N−(2−ヒドロキシエ
チル)アミノカルボニル]−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジノ]ブチル]−N
−メチルベンズアミド・クエン酸塩
MS:m/z=603(M+1); C31H40Cl2N4O5・0.85H2O・1.0C6H8O7に対する元素分析値:計
算値:C,54.79;H,6.17;N,6.91;実測値:C,54.79;H,6.23;N,6.59
実施例13
(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−[4−[N−(2−ヒドロキシ
エチル)−N−メチルアミノカルボニル]−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジ
ノ]ブチル]−N−メチルベンズアミド・クエン酸塩
MS:m/z=617(M+1); C32H42Cl2N4O4・1.3H2O・1.0C6H8O7に対する元素分析値:計
算値:C,54.78;H,6.36;N,6.72;実測値:C,54.71;H,6.18;N,6.82
実施例14
(S)−N−[4−[4−(アミノカルボニル)−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリ
ジノ]−2−(3,4−ジクロロフェニル)ブチル]−N−メチルベンズアミド・ク
エン酸塩
MS:m/z=559(M+1); C29H36Cl2N4O3・1.35H2O・1.05C6H8O7に対する元素分析値:
計算値:C,53.97;H,6.04;N,7.13;実測値:C,53.99;H,6.04;N,6.84
実施例4〜14に対する出発物質であるピペリジンは以下のように合成した。
実施例4.a〜14.a
実施例4.a
1−ベンジルオキシカルボニル−4−(2−オキソペルヒドロピリミジン−1
−イル)−4−(ピロリジン−1−イルカルボニル)ピペリジン.
1−ベンジルオキシカルボニル−4−カルボキシ−4−(2−オキソピペリジ
ノ)ピペリジンを1−ベンジルオキシカルボニル−4−カルボキシ(2−オキソペ
ルヒドロピリミジン−1−イル)ピペリジンで置き換えたこと以外は、実施例2.
cに記載の手順に類似の手順を使用して、標記アミドを白色固体として得た。
NMR(CD3OD):7.35(m,5),5.11(s,2),3.96(m,2),3.38(m,8),3.17(m,2),2.28(
m,2),1.91(m,4),1.79(m,4)
実施例5.a
1−ベンジルオキシカルボニル−4−(メチルアミノカルボニル)−4−(2−オ
キソペルヒドロピリミジン−1−イル)ピペリジン.
1−ベンジルオキシカルボニル−4−カルボキシ−(2−オキソペルヒドロピ
リミジン−1−イル)ピペリジン(1.45g)、メチルアミン塩酸塩(0.32g
)、4−(ジメチルアミノ)ピリジン(0.59g)、トリエチルアミン(0.67m
l)、および1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩
酸塩(0.92g)をジクロロメタン(20ml)中に溶解して得た溶液を一晩撹拌
した。反応混合物をジクロロメタンで希釈し、1.0N塩酸、炭酸水素ナトリウ
ム飽和水
溶液、および水で逐次洗浄した。有機層を分離して乾燥し、溶媒を蒸発除去して
標記化合物(1.37g)を白色固体(さらなる精製を必要としなかった)として
得た。NMR(CD3OD):7.35(m,5),5.11(s,2),3.71(m,2),3.36(m,2),3.19(m,2)
,2.69(s,3),2.14(m,2),1.96(m,4)
実施例6.a.
1−ベンジルオキシカルボニル-4−(メチルアミノカルボニル)−4−(2−オキ
ソピペリジノ)ピペリジン.
1−ベンジルオキシカルボニル−4−カルボキシ−(2−オキソペルヒドロピ
リミジン−1−イル)ピペリジンを1−ベンジルオキシカルボニル−4−カルボ
キシ−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジンで置き換えたこと以外は、実施例
5.aに記載の手順に類似の手順を使用して、標記アミドを吸湿性の白色固体と
して得た。NMR:7.35(m,5),6.72(m,1),5.12(s,2),3.56(m,4),3.30(m,2),2.
78(d,3,J=4.8),2.43(m,2),2.27(m,2),2.20(m,2),1.76(m,4)
実施例7.a.
1−ベンジルオキシカルボニル−4−(ジメチルアミノカルボニル)−4−(2−
オキソピペリジノ)ピペリジン.
1−ベンジルオキシカルボニル−4−カルボキシ−(2−オキソペルヒドロピ
リミジン−1−イル)ピペリジンを1−ベンジルオキシカルボニル−4−カルボ
キシ−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジンで、そしてメチルアミン塩酸塩を
ジメチルアミン塩酸塩で置き換えたこと以外は、実施例5.aに記載の手順に類
似の手順を使用して、標記アミドを白色固体として得た。NMR:7.35(m,5),5.12
(s,2),4.03(m,2),3.57(m,1),3.26(m,3),2.91(m,6),2.42(m,2),2.33(m,1)
,2.18(m,1),1.86-1.69(m,6)
実施例8.a.
1−ベンジルオキシカルボニル−4−(エチルアミノカルボニル)−4−(2−オ
キソピペリジノ)ピペリジン.
1−ベンジルオキシカルボニル−4−カルボキシ−(2−オキソペルヒドロピ
リミジン−1−イル)ピペリジンを1−ベンジルオキシカルボニル−4−カルボ
キ
シ−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジンで、そしてメチルアミン塩酸塩をエ
チルアミン塩酸塩で置き換えたこと以外は、実施例5.aに記載の手順に類似の
手順を使用して、標記アミドを白色固体として得た。NMR:7.35(m,5),6.71(m,1
),5.12(s,2),3.56(m,4),3.28(m,4),2.43(m,2),2.27(m,2),2.20(m,2),1.7
6(m,4),1.11(t,3,J=7.2)
実施例9.a.
4−(ベンジルアミノカルボニル)−1−ベンジルオキシカルボニル−4−(2−
オキソピペリジノ)ピペリジン.
ピロリジンをベンジルアミンに置き換えたこと、粗製物をエーテル中に懸濁さ
せることによって精製したこと、および濾過したこと以外は、実施例2.c.に記
載の手順に類似の手順を使用して、標記アミドを白色固体として得た。NMR:7.3
0(m,10),7.07(m,1),5.12(s,2),4.42(d,2,J=5.8),3.58(m,4),3.26(m,2),2
.40(m,2),2.30(m,2),2.22(m,2),1.72(m,4)
実施例10.a.
4−[N−(アミノカルボニルメチル)アミノカルボニル]−1−ベンジルオキシカ
ルボニル−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジン.
1−ベンジルオキシカルボニル-4−カルボキシ−(2−オキソペルヒドロピリ
ミジン−1−イル)ピペリジンを1−ベンジルオキシカルボニル−4−カルボキ
シ−(2−オキソピペリジノ)ピペリジンに、そしてメチルアミン塩酸塩をグリシ
ンアミド塩酸塩に置き換えたこと、そしてジクロロメタン:メタノール:エーテル
(勾配7:1:2,85:15:0)を溶離剤として粗製物をクロマトグラフィーに
より精製したこと以外は、実施例5.a.に記載の手順に類似の手順を使用して、
標記アミドを白色固体として得た。NMR(CD3OD):7.35(m,5),5.11(s,2),3.91(m
,2),3.75(m,2),3.42(m,4).2.35(m,2),2.23(m,2),1.88(m,4),1.75(m,2)
実施例11.a.
1−ベンジルオキシカルボニル−4−[N−(2−メトキシカルボニルエチル)ア
ミノカルボニル]−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジン.
1−ベンジルオキシカルボニル−4−カルボキシ−(2−オキソペルヒドロピ
リ
ミジン−1−イル)ピペリジンを1−ベンジルオキシカルボニル−4−カルボキ
シ−(2−オキソピペリジノ)ピペリジンに、そしてメチルアミン塩酸塩をb−ア
ラニンメチルエステル塩酸塩に置き換えたこと、そしてジクロロメタン:メタノ
ール:エーテル(勾配8:1:1,80:20:0)を溶離剤として粗製物をクロマ
トグラフィーにより精製したこと以外は、実施例5.a.に記載の手順に類似の手
順を使用して、標記アミドを泡状白色固体として得た。NMR(CD3OD):7.35(m,5)
,5.11(s,2),3.89(m,2),3.65(s,3),3.38(m,6),2.52(m,2),2.29(m,2),2.20
(m,2),1.85(m,4),1.73(m,2)
実施例12.a.
1−ベンジルオキシカルボニル−4−[N−(2−ヒドロキシエチル)アミノカル
ボニル]−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジン.
ピロリジンをエタノールアミンに置き換えたこと、そしてジクロロメタン:メ
タノール(90:10)を溶離剤として粗製物をクロマトグラフィーにより精製
したこと以外は、実施例2.c.に記載の手順に類似の手順を使用して、標記アミ
ドを泡状白色固体として得た。NMR(CD3OD):7.35(m,5),5.12(s,2),3.90(m,2)
,3.57(m,2),3.40(m,4),3.28(m,2),2.34(m,2),2.23(m,2),1.88(m,4),1.75
(m,2)
実施例13.a.
1−ベンジルオキシカルボニル-4−[N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチル
アミノカルボニル]−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジン.
ピロリジンを2−(メチルアミノ)エタノールに置き換えたこと、そしてジクロ
ロメタン:メタノール:エーテル(4:1:4)を溶離剤として粗製物をクロマトグ
ラフィーにより精製したこと以外は、実施例2.c.に記載の手順に類似の手順を
使用して、標記アミドを泡状白色固体として得た。NMR(CD3OD):7.34(m,5),5.1
1(s,2),3.99(m,2),3.67(m,2),3.36(m,6),2.96(m,3),2.37(m,2),2.28(m,2)
,1.85-1.66(m,6)
実施例14.a.
4−(アミノカルボニル)−1−ベンジルオキシカルボニル−4−(2−オキソピ
ペリジノ)ピペリジン.
ピロリジンを塩化アンモニウムに置き換えたこと、そしてジクロロメタン:メ
タノール:エーテル(4:1:4)を溶離剤として粗製物をクロマトグラフィーに
より精製したこと以外は、実施例2.c.に記載の手順に類似の手順を使用して、
標記アミドを泡状白色固体として得た。NMR(CD3OD):7.35(m,5),5.11(s,2),3.
86(m,2),3.40(m,4),2.34(m,2),2.23(m,2),1.86(m,4),1.74(m,2)
実施例4.b.〜14.b.
1−ベンジルオキシカルボニル−4−(2−オキソピペリジノ)−4−(ピロリ
ジン−1−イルカルボニル)ピペリジンを必要な1−ベンジルオキシカルボニル
で保護したピペリジン(上記実施例4.a.〜14.a.に記載の手順にしたがって
合成)に置き換えたこと以外は、実施例2.d.に記載の手順に類似の手順を使用
して、以下の化合物を合成した。
実施例4.b.
4−(2−オキソペルヒドロピリミジン−1−イル)−4−(ピロリジン−1−イ
ルカルボニル)ピペリジン.MS:m/z=281(M+1);NMR(CD3OD):3.41(m,6),3.16(m
,4),2.98(m,2),2.28(m,2),2.00-1.78(m,8)
実施例5.b.
4−(メチルアミノカルボニル)−4−(2−オキソペルヒドロピリミジン−1−
イル)ピペリジン.MS:m/z=241(M+1);NMR(CD3OD):3.41(m,2),3.19(m,2),3.0
5(m,2),2.89(m,2),2.69(s,3),2.16(m,2),2.00(m,4)
実施例6.b.
4−(メチルアミノカルボニル)−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジン.MS:
m/z=240(M+1);NMR(CD3OD):3.45(m,2),3.10(m,2),2.96(m,2),2.68(m,3),2.
32(m,2),2.22(m,2),1.90(m,4),1.75(m,2)
実施例7.b.
4−(ジメチルアミノカルボニル)−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジン.MS
:m/z=254(M+1);NMR(CD3OD):3.45(m,2),3.09(m,2),2.92(m,8),2.38(m,2),
2.26(m,2),1.92-1.69(m,6)
実施例8.b.
4−(エチルアミノカルボニル)−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジン.MS:
m/z=240(M+1);NMR(CD3OD):3.45(m,2),3.17(q,2,J=7.2),3.02(m,2),2.86(m
,2),2.31(m,2),2.17(m,2),1.88(m,4),1.75(m,2),1.06(t,3,J=7.2)
実施例9.b.
4−(ベンジルアミノカルボニル)−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジン.MS
:m/z=316(M+1);NMR:7.26(m,5),7.09(m,1),4.43(d,2,J=5.8),3.33(m,2),
3.05(m,2),2.95(m,2),2.80(m,1),2.42-2.25(m,6),1.73(m,4)
実施例10.b.
4−[N−(アミノカルボニルメチル)アミノカルボニル]−4−(2−オキソピペ
リジノ)ピペリジン.MS:m/z=283(M+1);NMR(CD3OD):3.76(m,2),3.48(m,2),3
.07(m,2),2.91(m,2),2.36(m,2),2.21(m,2),1.90(m,4),1.76(m,2)
実施例11.b.
4−[N−(2−メトキシカルボニルエチル)アミノカルボニル]−4−(2−オキ
ソピペリジノ)ピペリジン.MS:m/z=312(M+1);NMR(CD3OD):3.65(s,3),3.44(m
,2),3.40(m,2),3.08(m,2),2.92(m,2),2.52(m,2),2.30(m,2),2.20(m,2),1
.86(m,4),1.75(m,2)
実施例12.b.
4−[N−(2−ヒドロキシエチル)アミノカルボニル]−4−(2−オキソピペリ
ジノ)ピペリジン.MS:m/z=270(M+1);NMR(CD3OD):3.56(m,2),3.46(m,2),3.27(
m,2),3.06(m,2),2.90(m,2),2.33(m,2),2.20(m,2),1.89(m,4),1.76(m,2)
実施例13.b.
4−[N−(2−ヒドロキシエチル)−N−メチルアミノカルボニル]−4−(2−
オキソピペリジノ)ピペリジン.MS:m/z=284(M+1);NMR(CD3OD):3.66(m,2),3.
45(m,4),3.08(m,2),2.93(m,5),2.38(m,2),2.26(m,2),1.90-1.70(m,6)
実施例14.b.
4−(アミノカルボニル)−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジン.MS:m/z=22
6(M+1);NMR(CD3OD):3.45(m,2),3.13(m,2),2.96(m,2),2.34(m,
2),2.25(m,2),1.92(m,4),1.74(m,2)
実施例15
(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−[4−(メチルアミノカルボ
ニル)−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジノ]ブチル]−N−エチルベンズア
ミド・クエン酸塩
4−(2−オキソピペリジノ)−4−(ピロリジン−1−イルカルボニル)ピペリ
ジンを4−(メチルアミノカルボニル)−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジン
に、そして(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−オキソブチル]−N
−メチルベンズアミドを(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−
オキソブチル]−N−エチルベンズアミドに置き換えたこと以外は、実施例2に
記載の手順に類似の手順を使用して、標記化合物を白色固体として得た。MS:m/
z=587(M+1);C31H40Cl2N4O3・1.35H2O・1.0C6H8O7に対する元素分析値:計算値:C
,55.27;H,6.35;N,6.97;実測値:C,55.22;H,6.22;N,6.70
中間体(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−オキソブチル]−N
−エチルベンズアミドは以下のように合成した。
a. (S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−ヒドロキシブチル]ベ
ンズアミド.
(S)−2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−ヒドロキシブチルアミン
(15.0g)とトリエチルアミン(9.0ml)をジクロロメタン(200ml)中
に溶解して得た溶液に、無水安息香酸(14.6g)をジクロロメタン(50ml)
中に溶解して得た溶液を0℃にて滴下した。0℃にて1時間、次いで室温にて1
時間撹拌した後、反応混合物を洗浄し(1N塩酸、炭酸水素ナトリウム飽和水溶
液)、分離した有機相を乾燥し、そして溶媒を蒸発除去した。得られた粗製物を
、ジクロロメタン:メタノール(勾配98:2,90:10)を溶離剤としてクロ
マトグラフィー処理して、標記化合物を淡黄色ゴム質(17.5g)として得た。
MS:m/z=338(M+1);NMR:7.65(m,2),7.48(m,1),7.38(m,3),7.33(d,1,J=2.1)
,
7.07(dd,1,J=2.1,8.2),6.44(m,1,NH),3.83(m,1),3.70(m,1),3.58-3.41(m
,2),3.13(m,1),2.47(m,1,OH),1.99(m,1),1.84(m,1)
b. (S)−N−[4−アセトキシ−2−(3,4−ジクロロフェニル)ブチル]ベ
ンズアミド.
(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−ヒドロキシブチル]ベンズ
アミド(17.5g)とピリジン(8.4ml)をジクロロメタン(400ml)中に
溶解して得た溶液に、塩化アセチル(4.6ml)を0℃にて滴下した。室温で一
晩撹拌した後、反応混合物を洗浄し(水、硫酸銅(II)飽和水溶液)、有機相を分
離して乾燥し、そして溶媒を蒸発除去して標記アセチル化合物を淡黄色油状物と
して得た。MS:m/z=380(M+1);NMR:7.63(m,2),7.48(m,1),7.39(m,3),7.32(d
,1,J=2.1),7.06(dd,1,J=2.1,8.2),6.21(m,1),4.03(m,1),3.87(m,2),3.4
1(m,1),3.07(m,1),2.09(m,1),1.98(s,3),1.92(m,1)
c. (S)−N−[4−アセトキシ−2−(3,4−ジクロロフェニル)ブチル]−
N−エチルベンズアミド.
水素化ナトリウム(0.58g,鉱油中60%分散液)とヨードエタン(1.0m
l)をテトラヒドロフラン(5ml)中に懸濁して得た懸濁液に、(S)−N−[4−
アセトキシ−2−(3,4−ジクロロフェニル)ブチル]ベンズアミド(4.2g)を
テトラヒドロフラン(15ml)中に溶解して得た溶液を混合した。一晩撹拌した
後、反応混合物を減圧にて濃縮し、ジクロロメタン中に溶解し、そして水で洗浄
した。有機相を分離して乾燥し、溶媒を蒸発除去し、ジクロロメタン:エーテル
(10:1)を溶離剤としてクロマトグラフィー処理して、標記N−エチル化合
物を油状物(3.7g)として得た。MS:m/z=408(M+1)
d. (S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−ヒドロキシブチル]−
N−エチルベンズアミド.
(S)−N−[4−アセトキシ−2−(3,4−ジクロロフェニル)ブチル]−N−
エチルベンズアミド(3.7g)を、1N水酸化ナトリウム(27ml)、テトラヒ
ドロフラン(70ml)、水(20ml)、およびメタノール(15ml)中に溶解し
て得た溶液を3時間撹拌した。反応混合物から溶媒を蒸発除去し、ジクロロメタ
ン中に溶解し、そして水で洗浄した。有機相を分離して乾燥し、溶媒を蒸発除去
して標記アルコールを油状物(3.2g)として得た。MS:m/z=366(M+1)
e. (S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−オキソブチル]−N−
エチルベンズアミド.
塩化オキサリル(1.3ml)をジクロロメタン(30ml)中に溶解して得た溶
液に、ジメチルスルホキシド(2.1ml)をジクロロメタン(10ml)中に溶解
して得た溶液を−78℃で加え、次いで(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェ
ニル)−4−ヒドロキシブチル]−N−エチルベンズアミド(3.2g)をジクロロ
メタン(15ml)中に溶解して得た溶液を5分以内に加えた。15分後、トリエ
チルアミン(8.2ml)を加え、反応混合物を室温に加温した。本混合物をジク
ロロメタンで希釈し、希薄塩酸、水、および炭酸水素ナトリウム水溶液で洗浄し
た。有機相を分離して乾燥し、溶媒を蒸発除去し、ジクロロメタン:エーテル:ヘ
キサン(2:1:1)を溶離剤としてクロマトグラフィー処理して、標記アルデヒ
ドを油状物(2.5g)として得た。m/z=364(M+1)
実施例16
(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−[4−メトキシカルボニル−
4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジノ]ブチル]−N−メチルベンズアミド・ク
エン酸塩.
4−(2−オキソピペリジノ)−4−(ピロリジン−1−イルカルボニル)ピペリ
ジンを4−メトキシカルボニル−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジンに置き
換えたこと以外は、実施例2に記載の手順に類似の手順を使用して、標記化合物
を白色固体として得た。MS:m/z=574(M+1);C30H37Cl2N3O4・1.30H2O・1.0C6H8O7
に対する元素分析値:計算値:C,54.73;H,6.07;N,5.32;実測値:C,54.69
;H,5.98;N,5.36
ピペリジン中間体は以下のように合成した。
a. 1−ベンジルオキシカルボニル−4−メトキシカルボニル−4−(2−オ
キソピペリジノ)ピペリジン.
1−ベンジルオキシガルボニル−4−カルボキシ−4−(2−オキソピペリジ
ノ)ピペリジン(4.0g)をメタノール(50ml)中に懸濁して得た懸濁液を撹
拌し、これに(トリメチルシリル)ジアゾメタン(17.2ml,ヘキサン中2.0
M)を滴下した。溶液が透明となり、溶液の黄色が持続するようになった後、反
応混合物を減圧にて濃縮して油状物とした。この粗製物を、ジクロロメタン:メ
タノール(95:5)を溶離剤としてクロマトグラフィー処理して、標記化合物
を白色固体(4.0g)として得た。MS:m/z=375(M+1);NMR(CD3OD):7.35(m,5)
,5.11(s,2),3.95(m,2),3.66(s,3),3.37(m,2),3.29(m,2),2.32(m,2),2.19
(m,2),1.83(m,4),1.72(m,2)
b. 4−メトキシカルボニル−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジン.
1−ベンジルオキシカルボニル−4−(2−オキソピペリジノ)−4−(ピロリ
ジン−1−イルカルボニル)ピペリジンを1−ベンジルオキシカルボニル−4−
メトキシカルボニル−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジンに置き換え、そし
てテトラヒドロフランを共溶媒として加え、実施例2.d.に記載の手順を使用し
て標記化合物を油状物として得た。MS:m/z=241(M+1);NMR(CD3OD):3.66(m,3)
,3.44(m,2),2.93(m,4),2.32(m,2),2.17(m,2),1.86(m,4),1.74(m,2)
実施例17
(S)−N−[4−[4−カルボキシ−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジノ]−
2−(3,4−ジクロロフェニル)ブチル]−N−メチルベンズアミド.
(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−[4−メトキシカルボニル
−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジノ]ブチル]−N−メチルベンズアミド
(0.65g)をテトラヒドロフラン(15ml)および1.0N水酸化ナトリウム
(15.5ml)中に溶解して得た溶液を一晩加熱還流した。テトラヒドロフラン
を留去した後、得られた水性混合物をpH5.5〜6.0に調節し、ジクロロメタ
ンで数回抽出した。有機抽出物を乾燥し、溶媒を蒸発除去した。この粗製物をエ
ーテル中に懸濁させ、濾過して標記化合物を白色固体(0.25g)として得た。
MS:m/z=560(M+1)
実施例18
(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−[4−メチル-4−(2−オキ
ソピペリジノ)ピペリジノ]ブチル]−N−メチルベンズアミド・クエン酸塩.
4−(2−オキソピペリジノ)−4−(ピロリジン−1−イルカルボニル)ピペリ
ジンを4−メチル−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジンに置き換えたこと以
外は、実施例2に記載の手順に類似の手順を使用して、標記化合物を白色固体と
して得た。MS:m/z=530(M+1);C29H37Cl2N3O2・0.80H2O・1.1C6H8O7に対する元素
分析値:計算値:C,56.53;H,6.31;N,5.55;実測値:C,56.56;H,6.24;N
,5.73
ピペリジン中間体は以下のように合成した。
a. 1−ベンジル−4−ヒドロキシ−4−メチルピペリジン.
メチルリチウム(100ml,エーテル中1.4M)、メチルリチウム/臭化リ
チウム錯体(93.0ml,エーテル中1.5M)、およびメチルリチウム/ヨウ化
リチウム錯体(100ml,エーテル中1.0M)をテトラヒドロフラン(170m
l)中に溶解して得た溶液に、1−ベンジル−4−ピペリドン(33.5g)をテ
トラヒドロフラン(500ml)中に溶解して得た溶液を滴下した。3時間撹拌し
た後、反応混合物を氷浴中で冷却し、エタノールで処理し、そして減圧にて濃縮
した。得られた残留物をジクロロメタン中に溶解し、水で洗浄し、乾燥し、そし
て溶媒を蒸発除去した。この粗製物を蒸留して、標記アルコール(34.4g)を
無色油状物として得た。bp 107-114℃(0.115mmHg);MS:m/z=206(M+1);NMR:7.
28
(m,5),3.52(s,2),2.54(m,2),2.37(m,2),1.63(m,4),1.29(bs,1),1.24(s,3)
b. 4−アセトアミド−1−ベンジル−4−メチルピペリジン.
1−ベンジル−4−ヒドロキシ−4−メチルピペリジン(33.9g)をアセト
ニトリル(190ml)中に溶解して得た溶液に濃硫酸(165ml,18M)を滴
下した。白色沈殿物が生じ、徐々に溶解していった。一晩撹拌した後、反応混合
物を氷上に注ぎ込み、3.0N水酸化ナトリウムでpH10に調節し、そしてジ
クロロメタンで抽出した。有機抽出物を乾燥し、溶媒を蒸発除去して標記アミド
を白色固体(33g)として得た。MS:m/z=247(M+1);NMR:7.29(m,5),5.15(bs
,1),3.49(s,2),2.55(m,2),2.22(m,2),2.02(m,2),1.95(s,3),1.66(m,2),1
.39(s,3)
c. 4−アミノ−1−ベンジル−4−メチルピペリジン.
4−アセトアミド−1−ベンジル−4−メチルピペリジン(34.0g)を濃塩
酸(340ml,12.1N)中に溶解して得た溶液を36時間還流した。反応混
合物を氷浴中で冷却し、高濃度の水酸化ナトリウム(水中163g)水溶液を滴
下することによって中和した。本溶液をさらに水酸化ナトリウム水溶液を加えて
pH10に調節し、ジクロロメタンで抽出した。有機抽出物を乾燥し、溶媒を蒸
発除去して標記アミンを琥珀色の油状物(25.0g)として得た。MS:m/z=205(
M+1);NMR(CD3OD):7.28(m,5),3.52(s,2),2.45(m,4),1.54(m,4),1.10(s,3)
d. 1−ベンジル-4−(5−クロロバレルアミド)−4−メチルピペリジン.
4−アミノ−1−ベンジル−4−メチルピペリジン(6.0g)とピリジン(5
.1ml)をジクロロメタン(200ml)中に溶解して得た溶液に、塩化5−クロ
ロバレリル(4.2ml)をジクロロメタン(20ml)中に溶解して得た溶液を0
℃にて加えた。1時間撹拌した後、反応混合物を硫酸銅(II)飽和水溶液で洗浄し
、乾燥し、そして溶媒を蒸発除去した。この粗製物を、ジクロロメタン:メタノ
ール(勾配98:2,90:10)を溶離剤として使用してクロマトグラフィー処
理し
て、標記クロロ化合物を白色固体(2.4g)として得た。MS:m/z=323(M+1);NM
R(CD3OD):7.31(m,5),3.57(m,2),3.54(s,2),2.60(m,2),2.28(m,2),2.16(m,
4),1.73(m,4),1.60(m,2),1.32(s,3)
e. 1−ベンジル−4−メチル−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジン.
水素化ナトリウム(0.21g)をテトラヒドロフラン(5ml)中に懸濁して得
た懸濁液に、1−ベンジル−4−(5−クロロバレルアミド)−4−メチルピペリ
ジン(2.1g)をテトラヒドロフラン(37ml)中に溶解して得た溶液を加えた
。2日間還流した後、反応混合物を希塩酸で処理し、溶媒を蒸発除去した。得ら
れた残留物をジクロロメタン中に溶解し、炭酸水素ナトリウム飽和水溶液で洗浄
した。有機層を乾燥し、溶媒を蒸発除去して1−ベンジル−4−メチル−4−(
2−オキソピペリジノ)ピペリジンを淡橙色油状物(1.5g)として得た。MS:m
/z=287(M+1);NMR(CD3OD):7.30(m,5),3.51(s,2),3.30(m,2),2.50-2.29(m,8)
,1.87(m,2),1.72(m,4),1.33(s,3)
f. 4−メチル−4−(2−オキソピペリジノ)ピペリジン.
1−ベンジルオキシカルボニル−4−(2−オキソピペリジノ)−4−(ピロリ
ジン−1−イルカルボニル)ピペリジンを1−ベンジル−4−メチル−4−(2−
オキソピペリジノ)ピペリジンに置き換え、実施例1.o.に記載の手順を使用し
て、標記ピペリジンを白色固体として得た。MS:m/z=197(M+1);NMR(CD3OD):3.
33(m,2),2.78(m,4),2.36(m,4),1.79(m,6),1.36(s,3)
実施例19
(S)−N−[2−(3,4−ジクロロフェニル)−4−[4−メチル−4−(2−オキ
ソペルヒドロピリミジン−1−イル)ピペリジノ]ブチル]−N−メチルベンズア
ミド・クエン酸塩.
4−(2−オキソピペリジノ)−4−(ピロリジン−1−イルカルボニル)ピペリ
ジンを4−メチル−4−(2−オキソペルヒドロピリミジン−1−イル)ピペリジ
ンに置き換え、実施例2に記載の手順に類似の手順を使用して、標記化合物を白
色固体として得た。MS:m/z=531(M+1);C28H36Cl2N4O2・0.50H2O・1.1C6H8O7に対
する元素分析値:計算値:C,55.27;H,6.14;N,7.45;実測値:C,55.16;H
,6.17;N,5.52
ピペリジン中間体は以下のように合成した。
a. 1−ベンジル−4−[N'−(3−クロロプロピル)ウレイド]−4−メチル
ピペリジン.
4−アミノ−1−ベンジル−4−メチルピペリジン(6.0g)をジクロロメタ
ン(200ml)中に溶解して得た溶液に、3−クロロプロピルイソシアネート(
3.0ml)をジクロロメタン(20ml)中に溶解して得た溶液を0℃にて加えた
。一晩撹拌した後、反応混合物から溶媒を蒸発除去し、残留物をエーテル中に溶
解した。生じた沈殿物を濾別して、標記化合物を白色固体(8.9g)として得た
。MS:m/z=324(M+1);NMR(CD3OD):7.32(m,5),3.59(m,2),3.56(s,2),3.21(m,
2),2.61(m,2),2.35(m,2),2.04(m,2),1.89(m,2),1.60(m,2),1.32(s,3)
b. 1−ベンジル−4−メチル−4−(2−オキソペルヒドロピリミジン−1
−イル)ピペリジン.
1−ベンジル−4−[N'−(3−クロロプロピル)ウレイド]−4−メチルピペ
リジン(8.3g)をテトラヒドロフラン(62ml)中に溶解して得た溶液に、カ
リウムtert-ブトキシド(33.5ml,tert-ブタノール中1.0M)を加えた。さ
らに1当量のカリウムtert-ブトキシド(25.8ml,tert-ブタノール中1.0M
)を加え、反応混合物を一晩撹拌した。反応混合物から溶媒を蒸発除去し、得ら
れた残留物を水中に溶解した(pH2)。この酸性水溶液をジクロロメタンで抽
出し(廃棄)、1.0N水酸化ナトリウムでpH10に調節し、そしてジクロロ
メタンで抽出した。有機抽出物を乾燥し、溶媒を蒸発除去し、そしてエーテル中
に溶解した。生じた沈殿物を濾別して、1−ベンジル−4−メチル−4−(2−
オキソペルヒドロピリミジン−1−イル)ピペリジンを白色固体(3.2g)とし
て得た。
MS:m/z=288(M+1);NMR(CD3OD):7.30(m,5).3.51(s,2).3.23(m,2).3.15(m,2)
.2.50(m,4),2.34(m,2),1.82(m,4),1.29(s,3)
c. 4−メチル−4−(2−オキソペルヒドロピリミジン−1−イル)ピペリジ
ン
1−ベンジルオキシカルボニル−4−(2−オキソピペリジノ)−4−(ピロリ
ジン−1−イルカルボニル)ピペリジンを1−ベンジル−4−メチル−4−(2−
オキソペルヒドロピリミジン−1−イル)ピペリジンに置き換え、実施例1.o.
に記載の手順を使用して、標記ピペリジンを白色固体として得た。
MS:m/z=198(M+1);NMR(CD3OD):3.26(m,2),3.17(m,2),2.77(m,4),2.44(m,2)
,1.89(m,2),1.67(m,2),1.31(s,3)
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C07D 403/06 207 9159−4C C07D 403/06 207
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AP(KE,MW,SD,SZ),AM,
AT,AU,BB,BG,BR,BY,CA,CH,C
N,CZ,DE,DK,ES,FI,GB,GE,HU
,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LK,LT,
LU,LV,MD,MG,MN,MW,NL,NO,N
Z,PL,PT,RO,RU,SD,SE,SI,SK
,TJ,TT,UA,UZ,VN