【発明の詳細な説明】
自己免疫応答の抑制方法
技術分野
本発明は一般的に自己免疫の分野に関し、さらに詳しくは、宿主組織のT細胞
認識を抑制する方法に関するものである。
発明の背景
自己免疫とは身体自身の組織に対する免疫系の反応を表し、抗体または宿主組
織に反応する免疫エフェクターT細胞のいずれかの生産を特徴とする。自己免疫
に起因する数種の疾病はには、多発硬化症(MS)、リウマチ様関節炎、糖尿病お
よびブドウ膜炎が含まれる。
MSは視覚神経、頭脳および脊髄中での軸索髄鞘脱落の再発を特徴とする神経系
疾患である。世界中で約百万人が冒されるが、発生率は37経度以上に居住する人
口中で高い。この進行性疾病は、中枢および末梢神経系の両方中で骨髄鞘の自己
破壊を起こす免疫系の欠陥に関連ずけられる。MS患者は、正常な骨髄と類似のア
ミノ酸を含有するウイルスによる感染に続くこの疾病の発病に遺伝的に感受性が
ある。MSとヒト白血球抗原(HLA)HLA−DR2との間に強い関連性があり、この遺
伝的素質について支持を与える。これらの患者は宿主骨髄を誤って識別するリン
パ球を有し、自己免疫応答が起こる。
MSは主として西欧人の血統の55才以下の人が罹る。共通の症状は視野の部分的
な欠損および言語、平衡、一般的な運動筋肉神経の整合性の問題を含む。症状は
数日または数週後に停止することがあるが、数月または数年後再発する。結局、
再発して無能性および無力
性が増加する。いくつかの例では、症状は発生から着実に進行し、かなり初期の
段階で無能性が現れる。
疾患の進行を防止する治療法は知られていないが、プレドニソンのようなコル
チコステロイドは再発からの回復を促進することができる。しかし、生じた傷害
はそのまま残る。シクロホスホアミドまたはアザチオプリンによる徹底的な治療
は慢性進行性活性のMSの進行を阻止するのに役立つが、日和見主義的な感染の可
能性が増加する。
症状の1つ、痙直はカルシウムの役割を妨害することによって筋肉収縮を弱め
る薬剤ダンスロレンで治療される。これによって痙縮強度は減少するが、この治
療は弱い呼吸機能または心筋疾病を持つ患者には適用することができない。他の
薬剤、バクロフェンは脊椎源の痙直を治療するのに最も効果的であった。不幸に
も、関連副作用に消化器系統の障害、倦怠、疲労、鎮静、不安定、混乱および幻
覚が含まれる。さらに他の薬剤、ジアセパンは痙直を改良するが、有効な投与量
によって我慢できない眠気が頻繁に起こる。その他、フェノールまたは無水アル
コールの髄腔内注射が1種以上の重要な筋肉中で痙直を選択的に減少させるため
に使用されてきた。
リウマチ様関節炎は関節の滑液膜を特異的に冒す慢性の全身性炎症を特徴とす
る自己免疫性疾病である。遺伝的に感受性のある個人でウイルス感染すると、抗
ウイルス抗体と関節組織抗原との間の交差反応または細胞ゲノム中へのウイルス
DNAの組込みによるリンパ球機能の逸脱のいずれかが起こる。この疾病の病理学
には、慢性滑膜炎およびパンヌスの形成が含まれる。滑膜炎とは関節の周りの滑
液膜の過剰な炎症のことであり、激しい痛みを起こす。一方、パンヌスは結局軟
骨、硬骨、靱帯および腱を浸食して繊維性アルカローシスとなる。全人口のリウ
マチ様関節炎の罹患率は1%−2%であ
り、女性患者は男性を上回り3:1である。この疾病はいずれの年齢でも始まる
が、一般的に発症時の年齢は20才から40才に亘る。
リウマチ様関節炎を治療する主要な目的は炎症と痛みの軽減、機能の保存、お
よび奇形の防止である。これらの目標を達成するために、非ステロイド系抗炎症
剤、抗マラリア剤、ゴールド・ソルト、コルチコステロイド、メットレキセート
、アザチオプリンおよびペニシラミンを含む多くの治療法が使用されてきた。非
ステロイド系抗炎症剤にはアスピリン、イブプロフェン、フェノプロフェン、ナ
プロキセン、トルメチン、フルルビオプロフェン、スリンダック、メクロフェナ
メートナトリウム、ピロキシカム、ジクロフェナック、およびケトプロフェンが
含まれる。しかし、これらの薬剤は胃の潰瘍化、穿孔、または増悪性炎症性腸疾
病を誘発し、ある場合には腎臓の毒性となる。
抗マラリア剤、プラークニル(ヒドロキシクロロキン硫酸)は非ステロイド系
抗炎症剤と比較して毒性が低いので、軽度の症状のリウマチ様関節炎をもつ患者
に使用される。しかし、治療患者の25%だけしかもある場合には治療の3−6月
後のみにこの薬剤に応答する。副作用には色素性網膜炎、神経病理学、および骨
格筋と心筋の筋肉病理学が含まれる。
いく人かの患者では、ゴールド・ソルトがリウマチ様関節炎に伴え硬骨浸食を
遅らせることが示されている。これら患者の22%は重金属毒と同様の毒性副作用
を経験している。毒性は皮膚炎、胃炎、好中球減少症および類亜硝酸塩反応とし
て現れる。
コルチコステロイドはリウマチ様関節炎の自然進行を変えることなく、一般的
にその即時抗炎症効果のために使用される。不幸なことに、それらは潜在的疾病
を隠し、それ故患者および内科医が一般的な支持的治療、物理的治療および整形
外科的方法を怠る傾向を助
長する。
メトトレキセートは、非ステロイド系抗炎症剤およびゴールド・ソルトに応答
しないひどいリウマチ様関節炎の患者に投与する。この薬剤は、2から6月間か
かるゴールド・ソルトに比較して、2から4週間以内に有利な効果を発揮する。
しかし、関連する欠点には、胃の刺激、口内炎、肺炎、繊維症および肝硬変が含
まれる。それ故、治療中の個人を監視するために、肝臓の生検を定期的に行う。
アザチオプリンはメトトレキセートと同様にひどいリウマチ様関節炎の治療に
有効である。しかし、白血球減少症、血小板減少症および日和見主義的な感染に
よって悪化した免疫抑制を含む激しい毒性の潜在力のために、その使用は制限さ
れる。
ペニシラミンはまたひどいリウマチ様関節炎を治療するのに有効である。しか
し、患者の半分は口腔潰瘍、呈味の喪失、発熱、発疹、血小板減少症、白血球減
少症、および形成不全性貧血のような副作用を経験する。重症筋無力症、全身性
エリトマーデス、多発筋炎およびグッドパスチャー症候群を含む他の免疫複合体
疾病は薬剤によって誘発されるようである。
真性糖尿病は循環インシュリンの不在、高い血漿グルカン、および膵性B細胞
の破壊を特徴とする疾病であり、異常代謝および高血糖症が起こる。この疾病は
、ケトン症を防止し、高グルカン症を減少させ、高血糖値を低下させるインシュ
リン注射によって最も高頻度に治療される。この疾病の2つの主要な分類はI型
すなわちインシュリン依存性真性糖尿病(IDDM)にII型すなわち非インシュリン
依存性真性糖尿病(NIDDM)である。IDDMは子供に最も一般に発生する。スカン
ジナビアでは全糖尿病の20%はIDDMに罹り、南ヨーロッパでは13%、合衆国では
8%、日本と中国では1%以下に減少する。
ある種のHLAはIDDMと関連してきた。HLA−DR3とHLA−DR4は対照の45%−50
%に比較して患者の95%に存在する。さらに、抗原HLA−DQw3.2はIDDMのDR4患
者に存在し、一方、保護遺伝子HLA−DQ3.1はDR4対照に顕著に見出される。
抗インシュリン、循環性膵島細胞抗体は糖尿病の発生に続く最初の数週間に患
者の85%に検出されている。これらの免疫特性を考慮すると、IDDMは、免疫系が
変性膵性B細胞抗原に対して自己免疫応答を遺伝的に発生しやすくなっている個
人の膵性B細胞への伝染性または毒性環境的な障害に起因すると考えられる。B
細胞の機能に作用する要因には、ムンプスまたはコクサッキB4ウイルスのよう
なウイルスによって起こされる損傷、毒性化学試薬もしくは細胞毒、および感作
免疫細胞から放出された抗体が含まれる。持続性高血糖症により浸透圧利尿が起
こり、排尿が増加する。この低下した血漿容量によって眩暈感および脱力感が生
出され、それがさらにカルシウム減少および筋肉タンパク質の異化によって悪化
する。ケトアシドーシスの急性段階では、食欲減退、悪心および嘔吐を生出して
脱水および高容量モル濃度を悪化させる。この状況は口腔液の置換を妨害し、血
清容量モル濃度が増加するにつれて、患者は意識の減退を経験し最後に昏睡にま
で進行する。
II型糖尿病は成人に優勢に起こる。NIDDMはHLAマーカーと関連せず、非ケト性
であり、膵島細胞抗体が欠けていて、生命を保持するのインシュリン治療を必要
としない。この型の糖尿病の原因は不明であるが、年齢および腹部内蔵肥満のよ
うなインシュリン抵抗性のエンハンサーによって悪化する未知の主要遺伝因子が
関与している。遺伝子の影響はさらに疫学的データによって支持されていて、そ
れは40才以上の一卵性双生児が糖尿病を発病した時、第二の双生児は同年中に糖
尿病を発病する。
合衆国では、全糖尿病の90%以上がII型である。これらの患者は慢性皮膚感染
が普通であるが、最初は無症状である。合衆国では推定7百万人が糖尿病を患い
、その中560,000人がI型糖尿病である。治療には体重を保全するために食物カ
ロリー摂取を調節することが一般的に必要である。他の治療にはスルホニル尿素
のような低血糖様薬剤の使用が含まれる。この系中での制限された持続性のため
に、これらの薬剤はインシュリン放出を改善するためにインシュリン不足性糖尿
病患者に連続的に投与しなければならない。
ビグアニド類からの薬剤は1950年代に導入されたが、乳酸アシドーシスでの関
与のために合衆国では中止された。メトホルミンが1957年以来フランスで使用さ
れてきたが、現在FDAの承認待ちである。この薬剤はスルホニル尿素と共に使用
されるが、食欲減退、悪心、嘔吐、腹部不快および下痢を含む多くの副作用があ
る。
インシュリン注射はI型および非肥満II型糖尿病に使用される。しかし、皮下
注射は門脈内インシュリン分泌の生理学的パターンを再生することができない。
それ故、治療には血中グルコース値を絶えず監視し、患者の生涯に亘ってインシ
ュリンを注射する必要がある。
ブドウ膜炎は眼の前区または後区中に現れるまたは両方に均等に分布する眼内
炎症性疾病である。急性または慢性および肉芽腫性または非肉芽腫性に分類され
る。
前部ブドウ膜炎は体液中の炎症性細胞を特徴とする。肉芽腫性前部ブドウ膜炎
では、大きな沈殿および虹彩小結節によって視野が霞み、炎症が起こる。肉芽腫
性の前部ブドウ膜炎を起こす疾病には、サルコロイド、結核、梅毒、トキソプラ
スム症、ホヒト・小柳・原田症候群および交感性眼炎が含まれる。
非肉芽腫性前部ブドウ膜炎では、沈殿は小さく、虹彩小結節はな
い。これは片痛、赤視(redness)、まぶしがり症および視野の減少を起こす。
激しい非肉芽腫性前部ブドウ膜炎では、フィブリンが前室中に存在する。非肉芽
腫性前部ブドウ膜炎に関連する全身性疾患はHLA−B27関連症候仙腸骨炎、強直
性脊椎炎、ライター症候群、疥癬性潰瘍、潰瘍性大腸炎およびクロン病である。
非肉芽腫性前部ブドウ膜炎を起こす他の感染症は単純ヘルペスおよび帯状ヘルペ
スである。前部ブドウ膜炎では、ガラス体液中に細胞があり、網膜または脈絡膜
中に炎症性病変がある。視力減退は斑点、斑状浮腫、網膜の静脈閉塞および関連
する眼神経障害を含むガラス煙霧、混濁、炎症性病変のためである。
ブドウ膜炎について治療が限られている。前部ブドウ膜炎は局部コルチコステ
ロイドで治療することができ、一方、後部ブドウ膜炎には全身性コルチコステロ
イド治療が必要である。後部ブドウ膜炎にまたアザチオプリンおよびシクロスポ
リンによる全身性免疫抑制によって治療することができる。しかし、高い投与量
で使用すると、肝毒性および腎毒性が出ることがある。他の副作用には腎臓機能
障害、震え、多毛、高血圧および歯肉過形成が含まれる。
したがって、当業界では上記の方法に関連する副作用および不利益がなく自己
免疫応答を抑制する改良方法が必要である。本発明はこれらの要求を満たすもの
であり、さらに他の関連する利点を提供する。
発明の要約
本発明は宿主組織のT細胞認識を抑制するためにMHC抗原提示を阻止する方法
を提供する。本発明の1つの態様では、細胞に対する自己免疫応答が抑制される
ように、MHC抗原提示を阻止することが出来るタンパク質またはタンパク質の活
性部分を発現する組換えベ
クター構成体で動物の組織細胞を形質転換することを含む、動物体内の自己免疫
を抑制する方法が提供される。本発明の1つの実施態様では、組換えベクター構
成体はH301のようなβ2−ミクログロブリンに結合することの出来るタンパク質
の発現を指令する。他の実施態様では、組換えベクター構成体は細胞内でE3/
19KのようなMHCクラスI重鎖分子に結合することが出来るタンパク質の発現を
指令する。
本発明の他の態様では、細胞に対する自己免疫応答が抑制されるように、MHC
抗原提示を阻止することが出来るアンチセンスメッセージを転写する組換えベク
ター構成体で動物の組織細胞を形質転換することを含む、動物体内の自己免疫を
抑制する方法が提供される。本発明の種々の実施態様では、組換えベクター構成
体はMHCクラスI重鎖転写産物の保存性領域、β2−ミクログロブリン転写産物ま
たはPSF1輸送タンパク質転写物に結合するアンチセンスメッセージを転写する
。
本発明のさらに他の態様では、細胞に対する自己免疫応答が抑制されるように
、MHC抗原提示を阻止することが出来るリボザイムを転写する組換えベクター構
成体で動物の組織細胞を形質転換することを含む、動物体内の自己免疫を抑制す
る方法が提供される。本発明の種々の実施態様では、組換えベクター構成体はMH
CクラスI重鎖転写産物の保存性領域、β2−ミクログロブリン転写産物またはPS
F1輸送タンパク質転写産物を切断するリボザイムを転写する。
本発明のさらに他の態様では、細胞に対する自己免疫応答が抑制されるように
、MHC抗原提示を阻止することが出来るタンパク質またはタンパク質の活性部分
、およびMHC抗原提示を阻止することが出来るアンチセンスメッセージもしくは
リボザイムを発現する組換えベクター構成体で動物の組織細胞を形質転換するこ
とを含む、動
物体内の自己免疫を抑制する方法が提供される。本発明の関連する態様では、多
価組換えベクター構成体は、細胞に対する自己免疫応答が抑制されるように、MH
C抗原提示を阻止することが出来るアンチセンスメッセージおよびリボザイムを
発現を指令する。本発明の他の関連する態様では、多価組換えベクター構成体は
、細胞に対する自己免疫応答が抑制されるように、MHC抗原提示を阻止すること
が出来る2種以上のタンパク質またはタンパク質の活性部分、2種以上のアンチ
センスメッセージ、または2種以上のリボザイムを発現を指令する。
本発明の種々の実施態様では、多価組換えベクター構成体は、次のもののいず
れもの組合せでの少なくとも2種類を発現または転写する。タンパク質E3/19
KまたはH301のタンパク質または活性部分、MHCクラスI重鎖の保存性領域、β2
−ミクログロブリンまたはPSF1輸送タンパク質の転写産物に結合するアンチセ
ンスメッセージ、またはMHCクラスI重鎖の保存性領域、β2−ミクログロブリン
またはPSF1輸送タンパク質の転写産物を切断するリボザイム。
好適な実施態様では、組換えベクター構成体は組換えウイルスベクター構成体
である。特に好適な実施態様では、組換えベクター構成体は組換えレトロウイル
スベクター構成体である。他の実施態様では、組換えベクター構成体はトガウイ
ルス科、ピコルナウイルス科、ポックスウイルス科、アデノウイルス科、パルボ
ウイルス科、ヘルペスウイルス科、パラミクソウイルス科、およびコロナウイル
ス科よりなる群から選択されるウイルスによって搬送される。
簡単に上記した方法では、動物の適切な組織細胞には骨髄神経鞘細胞、滑液膜
細胞、膵島細胞、肝細胞および角膜細胞が含まれる。本発明の好適な実施態様で
は、動物細胞は組換えベクター構成体を
直接に注入することによって生体内で形質転換される。
本発明のこれらおよび他の態様は以下の詳細な説明によって明らかになる。
発明の詳細な説明
本発明を説明する先立って、以下に使用する用語の定義を説明することは理解
に役立つだろう。
以下に使用する「自己免疫応答」とは身体自身の組織の構成要素に対する特異
な体液性すなわち細胞仲介性の免疫応答を特徴とする体調のことを表す。本発明
の文脈では、自己免疫応答の「抑制」とは免疫応答が減少または防止されるよう
にMHC抗原提示を妨害することを表す。
組織細胞を「形質転換すること」とは当業者によって認知されている種々の手
段のいずれかによる、形質転換組織細胞が形質転換の前の組織細胞と比較して追
加のポリヌクレオチドを発現するような、組織細胞の形質導入または形質移入の
ことを表す。
「組換えベクター構成体」または「ベクター構成体」とは関心のある配列また
は遺伝子を発現することが出来る集合体のこと表す。ベクター構成体はプロモー
タ要素を含んでいなければならず、またポリアデニル化を指令するシグナルを含
むことができる。さらに、ベクター構成体は好適には転写される場合、関心のあ
る配列または遺伝子に作用結合しかつ翻訳開始配列として機能する配列を含む。
好適には、ベクター構成体はネオマイシン、チミジン、キナーゼ、ヒグロマイシ
ン、プレオマイシン、ヒスチジノール、またはジヒドロフォレートレダクターゼ
(DHFR)、ならびに1つ以上の制限部位および翻訳停止配列のような選択可能マ
ーカーを含む。さらに、ベクター構成体がレトロウイルス粒子を調製するのに使
用される場合
、ベクター構成体はレトロウイルス包装シグナルおよび使用レトロウイルスに適
切なLTRSを、これらが存在しない場合、含まなければならない。ベクター構成体
はまた他のウイルスベクターと組合わせて使用し、または下記のように細胞もし
くは組織中に挿入することもできる。上記のように、ベクター構成体はタンパク
質もしくはタンパク質の活性部分、アンチセンスメッセージまたはリボザイムを
コードする配列を含む。この種の配列は、形質転換組織細胞に対するクラスI制
限T細胞の自己免疫を抑制するために、MHC抗原提示を阻止するようにデザイン
されている。
一般的に、本明細書に記載の組換えベクター構成体は強いプロモータおよび関
心のあるDNA配列をプロモータの下流に挿入するために適切な制限部位を持つプ
ラスミドを選択することによって調製される。上記のように、ベクター構成体は
選択のための抗生物質耐性ならびに停止およびポリアデニル化シグナルをコード
する遺伝子を有することができいる。追加の要素はエンハンサーおよび機能性ス
プライス供与体とアクセプター部位を持つイントロンを含むことができる。
多価組換えベクター構成体の構築には、2つのタンパク質が発現される場合、
1つのプロモータでは第二の遺伝子の適切な遺伝子発現レベルを確保しないので
、2つのプロモータが必要である。特に、ベクター構成体がアンチセンスメッセ
ージまたはリボザイムを発現する場合には、第二のプロモータが必要でない。あ
る種の実施態様では、内部リボザイム結合部位(IRBS)または単純ヘルペスウイ
ルスチミジンキナーゼ(HSVTK)プロモータを、第二の遺伝子の遺伝子発現レベル
を押上げるために関心のある第二の遺伝子と結合させる。要するに、IRBSに関し
て、免疫グロブリン重鎖結合タンパク質の上流の非翻訳領域はバイオシストロン
メッセージの内部進入を支
持することが分っている。(Jacejak等、Nature、第353巻、第90頁、1991年)。
この配列は小さく、約300塩基対であり、そのシストロンがこの配列から始まる
多シストロンメッセージからの多重遺伝子を発現させるためにベクター中に容易
に組込むまれる。
組換えベクター構成体がウイルスによって搬送される場合、この種の構成体は
プロモータ、スプライシング、およびオイリアデニル化シグナルを含有するウイ
ルスを関心のある所望の遺伝子を含有するプラスミド中に当業界では公知の方法
を使用して挿入することによって調製される。関心のある遺伝子を含有する組換
えウイルスベクターは標的組織細胞中への形質導入の後に高いコピー数にまで複
製する。
組換えベクター構成体の調製に続いて、MHC提示を下方調節するベクター形質
転換細胞の能力を検査することが好適である。一般的に、この種の検査はウエス
テンブッロト法、FACS分析、または当業者によって認知された他の方法によって
実施することができる。
好適な実施態様では、組換えベクター構成体はレトロウイルスによって搬送さ
れる。レトロウイルスは一本鎖ゲノムをもち、非溶菌性であるRNAウイルスであ
る。感染すると、レトロウイルスはそのRNAとDNAに逆転写し、宿主細胞ゲノム中
に挿入されるプロウイルスを生成する。本発明で使用するレトロウイルスの調製
は名称「組換えレトロウイルス(Recombinant Retroviruses)」(U.S.S.N.、第
07/586,603号公報、1990年9月21日出願)の出願中に極めて詳細に記載され、参
考としてここに取込まれている。レトロウイルスのゲノムは概念的に2つの部分
に分割することができる。「トランス作用」部分はウイルス構造タンパク質をコ
ードする領域からなり、核コートタンパク質の合成のためのグループ特異性抗原
(gag)遺伝子、逆トランススクリプターゼとインテグラーゼ酵素の合成のた
めのポル遺伝子、およびエンベロープグリコタンパク質の合成のためのエンベロ
ープ(env)遺伝子を含む。「シス作用」部分はウイルス粒子中に最後に包装され
るゲノムの領域からなる。これらの領域は包装シグナル、プロモータとポリアデ
ニル化部位をもつ長ターミナルリピート(LTR)、およびDNA複製のための2つの開
始部位を含む。クローン・プロウイルスの内部または「トランス作用」部分は関
心のある遺伝子で置換えられ「ベクター構成体」を創成する。ベクター構成体は
ウイルス包装タンパク質が存在する細胞中に入れられる場合(U.S.S.N.、第07/8
00,921号公報参照)、転写RNAはウイルス粒子として包装され、順に細胞から発
芽する。これらの粒子は組織細胞を形質導入するのに使用され、ベクター構成体
は細胞ゲノム中に統合することができる。ベクター構成体はその遺伝子細胞物を
発現するが、それを搬送するウイルスはウイルス・ゲノムのトランス作用部分が
存在しないので、複製に欠陥がある。複製コンピートな感染性レトロウイルスの
存在を検出するために、種々のアッセイを使用することができる。1つの好適な
アッセイは実施例9に記載の拡大S+L+アッセイである。好適なレトロウイルス
・ベクターはマウス白血病両栄養性もしくは異栄養性またはVsVg偽型ベクターで
ある。(WO、第92/14829号公報、参考としてここに取込まれている)。
組換えベクター構成体はまた、たとえば、ポリオウイルス(Evans等、nature、
第339巻、第385頁、1989年、およびSabin等、J.of Biol.Standardization、第
1巻、第115頁、1973年)(ATCC VR-58)、ライノウイルス(Arnold等、J.Cell.Bioc
hem.,L401,1990年)(ATCC VR-1110)、ポックスウイルスたとえばカナリア・ポ
ックスウイルスまたはワクシニアウイルス(Fisher-Hoch等、PNAS、第86巻、第31
7頁、1989年;Flexner等、Ann.N.Y.Acad.Sci.、第569巻、
第86頁、1989年;Flexner等、Vaccine、第8巻、第17頁、1990年;U.S.、第4,603
,112号公報、U.S.、第4,769,330号公報;WO、第89/01973)号公報(ATCC VR-111
,ATCC VR-2010)、SV40(Mulligan等、Nature、第277巻、第108頁、1979年)(A
TCC VR-305)、(Madzak等、J.Gen.Vir.、第73巻、第1533頁、1992年)、インフ
ルエンザ・ウイルス(Luytjes等、Cell、第59巻、第1107頁、1989年;McMicheal
等、The New England Jounal of Medicine、第309巻、第13頁、1983年;Yap等、
Nature、第273巻、第238頁、1978年)(ATCC VR-797)、アデノウイルス(Berkner等
、Biotechniques、第6巻、第616頁、1988年;Rosenfeld等、Science、第252巻、
第431頁、1991年)(ATCC VR-1)、パルボウイルスたとえばアデノ関連ウイルス(S
amulski等J.Vir.、第63巻、第3822頁、1989年;Mendelson等、Virology、第166
巻、第154頁、1988年)(ATCC VR-645)、単純ヘルペスウイルス(Kit等、Adv.Ex
p.Med.Biol.、第215巻、第219頁、1989年)(ATCC VR-977,ATCC VR-260)、HIV(
EPO、第386,882号公報;Buchschacher等、J.Vir.、第66巻、第2731頁、1992年)
、はしかウイルス(EPO、第440,219号公報)(ATCC VR-24)、シンドビスウイルス(X
iong等、Science第234巻、第1188頁、1989年)(ATCCVR-68)、およびコロナウイル
ス(Hamre等、Proc.Soc.Exp.Biol.Med.、第121巻、第190頁、1966年)(ATCC VR-7
40)を含む種々のウイルスキャリヤーと共に開発し利用することができる。上記
のウイルスキャリヤーはMHC抗原提示を阻止することができるタンパク質、アン
チセンスメッセージまたはリボザイムを発現するように修正する必要があること
は当事者には明らかである。
ベクター構成体はひとたび調製されると、直接の注射によって生体内を含む種
々の経路を経て組織細胞を形質転換するために、温血動物に投与することができ
る。さらに詳しくは、MHC抗原提示を阻
止することが出来るタンパク質、アンチセンスメッセージまたはリボザイム配列
をコードする配列を含有する裸のDNAまたは組換えベクター構成体は、筋肉、頭
脳、肝臓、皮膚、滑膜細胞、膵島細胞、および角膜細胞を含む組織の間質空間中
に直接に注入することができる(WO、第90/11092号公報参照)。ベクター構成
体の生体内投与の他の代表的な実例には、リポフェクション法(Felgner等、PNAS
、第84巻、第7413頁、1989年)、マイクロプロジェクション衝撃法(Williams等
、PNAS、第88巻、第2726頁、1991年)、リポソム法、(Wang等、PNAS、第84巻、
第7851頁、1987年)、カルシウムリン酸塩法(Dubensky等、PNAS、第81巻、第75
29頁、1984年)、DNAリガンド複合体法(Wu等、J.of Biol.Chem.、第264巻、第
16985頁、1989年;Cotten等、PNAS、第89巻、第6094頁、1992年)のような種々
の物理的方法による形質導入が含まれる。上記のように、ベクター構成体はワク
シニア、シンドビス、またはコロナのようなウイルスによって搬送することがで
きる。さらに、直接的な注射によってレトロウイルスベクターを経てベクター構
成体を投与する方法が名称「組換えレトロウイルス(Recombinant Retroviruses
)」(U.S.S.N.、第07/586,603号公報)の出願中に極めて詳細に記載され、参考
としてここに取込まれている。
上記のように、本発明は宿主の自己免疫応答を抑制するためにMHC抗原提示を
阻止するのに適した方法と組成物を提供する。要するに、CTLは、CD8、インエ
クシセキュラ(inexcellular)接着分子−1(ICAM-1)、ICAM-2(Singer等、
Science、第255巻、第1671頁、1992年、RAO等、Crit.Rev.Immunol.、第10巻、
第495頁、1991年)、白血球機能性抗原−1(LFA-1)(Altmann等、Naure、第33
8巻、第521頁、1989年)、B7/BB1分子(Freeman等J.Immunol.、第143巻、第2714
頁、1989年)、LFA−3、または他の細胞
接着分子のような補助分子と共にMHC分子自身の文脈中でペプチドの表示によっ
て特異的に活性化される。MHCクラスI分子との協同の抗原ペプチドの提示によ
ってCTL活性化が起こる。MHC抗原提示を阻止すると期待される生産物を発現する
ことが出来る特定の配列の輸送し安定な統合することはCD8+CTLのようなT細胞
の活性を妨害し、それ故自己免疫応答を抑制する。標準CTLアッセイは実施例13
に詳細に記載したようにこの応答を検出するのに使用される。抗原提示経路の成
分には45KdMHCクラスI重鎖、β2−ミクログロブリン、プロテアーゼのようなプ
ロセミング酵素、補助分子、シャパロンおよびPSF1のような輸送タンパク質が
含まれる。
本発明の1つの態様では、MHC抗原提示を阻止することが出来るタンパク質ま
たはタンパク質の活性部分を発現を指令するベクター構成体が提供される。本発
明では、タンパク質の「活性タンパク質」は生物学的活性のために保有しなけれ
ばならないタンパク質の断片である。この種の断片すなわち活性ドメインは、タ
ンパク質配列からヌクレオチド配列を系統的に取出し、その結果得られた組換え
ベクター構成体で標的細胞を形質転換し、FACS分析またはCTLアッセイのような
他の免疫学的アッセイを使用して細胞表面上のMHCクラスI提示を決定すること
によって容易に同定することができる。これらの断片は全タンパク質をコードす
る配列の大きさがウイルスキャリヤーの容量を超える場合特に有用である。その
他、MHC抗原提示のインヒビタータンパク質の活性ドメインは酵素的に消化され
、活性部分は生物化学的方法で精製することができる。たとえば、切断タンパク
質の活性部分を単離し精製するためには、タンパク質の活性部分を妨害するモノ
クローン抗体を使用することができる(Harlow等、Antibodies:A Laboratory M
anual,Cold Springs Harbor,1988年)。
1つの実施態様では、組換えベクター構成体は新しく合成されたMHCクラスI
分子の細胞内で結合するタンパク質またはタンパク質の活性部分の発現を指令す
る。この結合はMHCクラスI分子の小胞体からの移動を防止し、末端グリコシル
化を阻止する。Tはこれら分子の細胞表面への輸送を妨害し、CTLによる細胞認
識および溶菌を防止する。たとえば、E3遺伝子の生産物の1つはMHCクラスI
分子の形質転換細胞表面への輸送を阻止するのに使用することができる。さらに
詳しくは、E3は、アデノウイルス2ゲノムのE3領域から転写された19kD膜内
外グリコタンパク質E3/19Kをコードする。本発明の文脈では、動物はE3/
19K配列を含有する組換えベクター構成体で直接に注射され、その配列が発現し
てE3/19Kタンパク質を生成する。E3/19Kタンパク質がMHCクラスI表面
分子の表面発現を阻止して、ベクター構成体によって形質転換した細胞は免疫応
答を回避する。これに関する代表的な組換えベクター構成体の構築は実施例7に
示される。
本発明の他の実施態様では、組換えベクター構成体は、β2−ミクログロブリ
ンに結合することが出来るタンパク質またはタンパク質の活性部分の発現を指令
する。抗原提示のためのMHCクラスI分子の細胞表面への輸送にはβ2−ミクログ
ロブリンとの協力が必要である。それ故、β2−ミクログロブリンと結合してMHC
クラスIとの協力を阻止するタンパク質はMHCクラスI抗原提示を間接的に阻止
する。適切なタンパク質にH301遺伝子産物を含む。要するに、ヒト・サイトメ
ガロウイルス(CMV)から得られるH301遺伝子は、MHCクラスI分子の重鎖上のβ2
−ミクログロブリン結合部位に配列相同性をもつグリコタンパク質をコードする
(Browne等、Nature、第347巻、第770頁、1990年)。H301はβ2−ミクログロブ
リンに結合し、MHCクラスI分子の成熟を防止して、形質転換細胞
が細胞毒性T細胞の非認識性になり、それ故MHCクラスI制限免疫監視機構を回
避する。
MHCクラスI抗原提示を阻止または下方調節するように作用する他のタンパク
質(上記していない)もまた本発明の文脈内で同定し使用することができる。こ
の種のタンパク質、特に哺乳動物病原体から誘導されたタンパク質(とその活性
部分)を同定するため、MHCクラスI抗原提示を阻止することが出来ると疑われ
るタンパク質またはその活性部分を発現する組換えベクター構成体はBCのような
試験細胞株中に形質転換される。候補タンパク質をコードする配列を持つ試験細
胞株と持たない試験細胞株はCTLアッセイでスチムレータおよび/または標的に
対し比較される。形質転換試験細胞に対応する細胞溶菌性の減少は候補タンパク
質がMHC提示を阻止することが出来ることを示す。
MHCクラスI表面発現の下方調節を決定する他の方法はFACS分析によるもので
ある。さらに詳しくは、細胞株は候補タンパク質をコードする組換えベクター構
成体で形質転換される。薬剤選択と拡大の後、細胞はMHCクラスI発現によって
分析され、非形質転換細胞のそれと比較される。MHCクラスIの細胞表面発現の
減少は候補タンパク質がMHC提示を阻止することが出来ることを示す(たとえば
、実施例12を参照)。
本発明の他の態様では、MHCクラスI抗原提示を阻止することが出来るアンチ
センスメッセージを転写する組換えベクター構成体で動物の組織細胞を形質転換
することによって、動物体内の自己免疫応答を抑制する方法が提供される。要す
るに、タンパク質コードまたは「センス」配列に相補的であるヌクレオチド配列
を持つオリゴヌクレオチドは「アンチセンス」と呼ぶ。アンチセンスRNA配列は
相補mRNA配列にハイブリダイジングすることによって遺伝子発現の
調節遺伝子として作用する(Mizuno等、PNAS、第81巻、第1966頁、1984年、Heyw
ood等、Nuleic Acid Res.、第14巻、第6771頁、1986年)。標的転写産物または
そのいずれかの部分の全ハイブリッド化を含むアンチセンス分子は合成され(Fe
rretti等、PNAS、第83巻、第599頁、1986年)、ベクター構成体中に入れられ、
遺伝子発現を阻止する細胞中に効果的に導入される(Izant等、Cell、第36巻、
第1007頁、1984年)。さらに、逆配位でクローンされたDNAからのアンチセンスR
NA(asRNA)の合成は、構成的asRNAの発現が正常細胞機能を妨害しない間、永く
安定性を与える。
本発明の1つの実施態様では、組換えベクター構成体はMHCクラスI転写産物
の保存性領域に結合することが出来るアンチセンスメッセージを転写し、それに
よって細胞表面発現およびMHCクラスI抗原提示を阻止する。DNAデータバンク(
たとえば、Genbank)で入手できるMHC遺伝子の種々のクラス(たとえば、HLAA
,B、及びC)を表す配列をコンピュータ支援で比較することよって、この種の
保存性領域を確認することができる。保存性領域はヌクレオチド配列の相同性つ
いてのコンピュータ支援アラインメントによって確認される。保存性領域はMHC
クラスI遺伝子型間の100塩基対当たり50%未満のミスマッチ、好ましくは20%
未満のミスマッチを有する配列である。
本発明の他の実施態様では、組換えベクター構成体はβ2−ミクログロブリン
転写産物に結合することの原因であるアンチセンスメッセージを転写する。この
結合はβ2−ミクログロブリンタンパク質の翻訳を防止し、そのことによって細
胞表面発現に必要なMHCクラスI分子複合体の適正な組立てを阻止する。好適な
実施態様では、β2−ミクログロブリンのヌクレオチド配列は逆配位でベクター
構成体中にクローンされる。適正なアンチセンス配位は制限酵素分
析によって決定することができる。
さらに他の実施態様では、組換えベクター構成体はPSF1転写産物、ペプチド
輸送タンパク質に結合することの原因であるアンチセンスメッセージを転写する
。このタンパク質はMHCクラスI分子の効率的な組立てに必要であるから、PSF1
転写産物に対するアンチセンスはβ2−ミクログロブリンおよびMHCクラスI分子
複合体との連合の前の加工抗原ペプチド断片の小胞体(ER)への輸送を妨害する
。好適な実施態様では、PSF1のヌクレオチド配列は調製され、逆配位でベクタ
ー構成体中に挿入され、制限酵素分析で決定される。
上記のように、抗原提示に関与する他のタンパク質の配列もまた同定され、MH
CクラスI抗原提示を阻止するアンチセンスメッセージを転写することができる
組換えベクター構成体をデザインするのに使用される。さらに詳しくは、タンパ
ク質をコードする遺伝子のヌクレオチド配列は検討され、確認された配列が適切
なアンチセンスメッセージを合成するのに使用される。標的メッセージの開始配
列の上流または近辺の部分に相補的である配列を使用することは好適である。こ
のことによって、アンチセンス配列はタンパク質の重要な部分の翻訳を防止する
mRNAに結合することができる。この種の分子の実例はICAM-1,ICAM-2,LFA-1
,LFA-3、およびB7/BB1である。実施例13および15またはMHCクラスI提示を
阻止することが出来るタンパク質について上記した他の手段中に記載したように
、MHCクラスI発現または抗原提示の下方調節は夫々FACS分析またはCTLアッセイ
によって検査することができる。
本発明の他の態様では、MHC抗原提示に関与する成分の酵素的切断の原因であ
るリボザイムを転写する組換えベクター好適には動物の選択された細胞を形質導
入することによって、動物体内での自己
免疫応答を抑制する方法が提供される。要するに、リボザイムは他のRNA分子を
消化するのに使用される酵素活性を持つRNA分子である。これらは、所望の標的
分子中の潜在的な切断部位に関する酵素を正確に配置する領域によってフランク
される高い保存性の配列特異的な切断ドメインを有する短RNAからなる。それら
は特定遺伝子の発現および活性化を阻止する極めて柔軟な道具を提供する(Hase
loff等、Nature、第334巻、第585頁、1988年)。遺伝子の転写配列が既知である
場合、カスタムリボザイムをデザインすることができる。特に、リボザイムは先
ず特定の標的RNA配列を選択し、リボザイムコーディング配列の最初と最後に相
補的配列を接続させることによってデザインすることができる。次いでこの遺伝
子単位を生成するリボザイムは組換えベクター構成体中に挿入され、組織細胞を
形質転換するのに使用される。発現のとき、標的遺伝子は相補的な結合および切
断によって中性化され、永久に不活性化が保証される。さらに、リボザイムはそ
の酵素活性にために1つ以上の標的を破壊することが出来る。
1つの実施態様では、特定リボザイムを含有するベクター構成体は抗原提示を
阻止するためにMHCクラスI重鎖分子の保存性領域の転写産物を切断するのに使
用される。本発明の他の実施態様では、組換えベクター構成体はβ2−ミクログ
ロブリン転写産物の酵素的切断の原因であるリボザイムを転写する。特に、β2
−ミクログロブリンメッセージの配列に相補的であるフラッキング領域を持つリ
ボザイムは転写産物を切断し、そのことによってタンパク質翻訳およびMHCクラ
スI分子複合体の適正な組立てを防止する。これはMHCクラスI複合体の細胞表
面への輸送を阻止し、抗原提示を防止する。
本発明のさらに他の実施態様では、組換えベクター構成体はPSF
1転写産物の酵素的切断の原因であるリボザイムを転写し、そのことによってMH
CクラスI分子の表面発現を抑制し、抗原提示を防止する。さらに詳しくは、PSF
1メッセージの配列に相補的であるフランキング領域でデザインされたリボザイ
ムは転写産物を切断しかつペプチドのERへの輸送を阻止して、そのことによって
MHCクラスI複合体の組立ておよび抗原提示を防止する。
上記のように、抗原提示経路に関与する他のタンパク質の配列は同定され、MH
C抗原提示を阻止するリボザイムを転写することが出来る組換えベクター構成体
をデザインするのに使用されることは当業者には明らかである。MHCクラスI発
現または抗原提示の下方調整は、実施例13および15またはMHCクラスI提示を阻
止することが出来るタンパク質およびアンチセンスメッセージについて上記した
他の手段中に記載したように、MHCクラスI発現または抗原提示の下方調節はFAC
S分析またはCTLアッセイによって検査することができる。
本発明の他の態様では、多価組換えベクター構成体が提供される。要するに、
自己免疫応答を抑制する効率は多価組換えベクター構成体で細胞を形質転換する
ことによって増強することができる。発現するとき、遺伝子生産物は、2つの異
なった経路を経て単独の成分を攻撃することによってかまたは同一もしくは異な
った経路を経て2つの異なった成分を介してMHC抗原提示の妨害度を増加させる
。多価組換えベクター構成体の構築には、1つのプロモータでは第二の遺伝子の
遺伝子発現の適切な水準を確保しないので2つのプロモータで必要である。上記
のように、内部リボザイム結合部位(IRBS)プロモータまたは関心のある第二の
遺伝子に結合された単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSVTK)プロモータ
のような第二のプロモータは第二の遺伝子の遺伝子発現の水準を押上げる。
好適な実施態様では、ベクター構成体は以下の成分のいずれの組合せもの少な
くとも2つを発現または転写する。(a)タンパク質E3/19KまたはH301の
タンパク質または活性部分、(b)MHCクラスI重鎖分子の保存性領域の転写産
物、β2−ミクログロブリンまたはPSF1輸送タンパク質に結合するアンチセンス
メッセージ(c)上記(b)に記載したタンパク質の転写産物を切断するリボザ
イム。さらに、ここに記載した2種のタンパク質および活性部分、2種のアンチ
センスメッセージ、または2種のリボザイムを発現する多価組換えベクター構成
体は提供される。
関連実施態様では、多くの特定の組合せが多価組換えベクター構成体を形成す
るのに利用される。たとえば、多価組換えベクター構成体は、MHCクラスI重鎖
の保存性領域、β2−ミクログロブリン、またはPSF1輸送タンパク質Fのための
アンチセンスメッセージまたはリボザイム配列との組合せでE3/19KまたはH
301を発現する遺伝子からなる。
本発明の他の態様では、製剤的に許容できる分散剤または希釈剤との組合せで
、レトロウイルス、ポリオウイルス、ライノウイルス、ワクシノウイルス、イン
フルエンザウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、単純ヘルペスウイ
ルス、はしかウイルス、コロナウイルスまたはシンドビスウイルスのようなベク
ター構成体を保持する上記の組換えベクター構成体の1つまたは組換えウイルス
からなる医薬組成物が提供される。組成物は溶液として、または投与前に溶液中
に再懸濁させる固体形態(たとえば、凍結乾燥)としてのいずれかで調製するこ
とができる。さらに、組成物は注射、経口、経鼻もしくは経直腸の投与または分
散剤に適切な他の手段に適した分散剤または希釈剤と共に調製することができる
。一般的に、ベクター構成体を保持する組換えウイルスは配合前に、0.25%から
25%、好適には約5%から20%の範囲の濃度にまで精製される。次いで、組成物
の調製後、ベクター構成体を保持する組換えウイルスは投与1回分当たり約10ng
から1μgの材料を構成し、この材料量の約10倍が共精製された混入物として存
在する。好適には、組成物は下記ように処方される0.1−1.0mlの水溶液に調製さ
れる。
製剤的に許容される分散剤または希釈剤は使用される投与量および濃度におい
て服用者に無毒であるものである。注射液用の分散剤または希釈剤の代表的な実
例には、水、生理学的pHに好適に緩衝され(リン酸塩緩衝食塩水またはトリス緩
衝食塩液)、マンニトール、ラクトース、トレハロース、デキストロース、グリ
セロールおよびエタノールの1つ以上を含有する等張溶液ならびにヒト血清アル
ブミン(HSA)のようなポリペプチドまたはタンパク質が含まれる。1つの適切な
組成物は10mg/mlのマンニトール、1mg/mlのHSA、20mMのTris pH=7.2および1
50mMのNaCl中のベクター構成体を保有する組換えウイルスを含む。この場合、ベ
クター構成体を保有する組換えウイルスは約10ngから1μgの材料を表すから、
それは全高分子量材料の1%であり、全材料(水を含む)の1/100,000以下で
ある。この組成は一般的に少なくとも6カ月間−70℃で安定である。組換えベク
ター構成体の実質的に当量投与量が調製されることが明らかである。この点で、
ベクター構成体は投与1回分当たり100ngから100μgの材料を構成し、この材料
量の約10倍が共精製された混入物として存在する。組成物は静脈(i.v.)、皮下
(s.c.)、または筋肉(i.m.)注射を含む種々の経路(上記のような)を介して
投与される。この点で、投与の方法は特定の治療的用途によって影響されること
はあきらかである。ベクター構成体を保有する組換えウイルスについては、通常
使用される個人投与量は106から1010c.f.u.(たとえば、HT1080細胞で測定され
たネオマイシン耐性
のコロニー形成単位)である。これらの組成物は1から4週の間隔で3から4回
の投薬(少なくとも最初は)で投与される。追加注射は6−12カ月後1から2回
の投薬として、その後年1回与えられる。
以下の実施例は本発明の説明のために提供され、本発明を制限するものではな
い。
実施例実施例1
マウス・レトロウイルス・プロベクターDNAの調製
A.レトロウイルス・バックボーンKT−3B
pUC31プラスミド中のN2ベクター(Armentano等、J.Vir.、第61巻、第1647頁
、1987年、Eglitas等、Science、第230巻、第1395頁、1985年)からの、gag配列
を含むマロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)5′長末端反復(LTR)EcoR I-EcoR
I断片をプラスミドSK+(Stratagene,San Diego,CA)中に連結する。その結果
得られた構成体をN2R5と呼ぶ。ATGスタートコドンをgag発現を防止するATT
に変える生体内部位特異性突然変異によってN2R5構成体を変異させる。この
突然変異誘発性断片は200塩基対(bp)長であり、PstI制限部位によってフランク
される。PstI-PstI突然変異断片をSK+プラスミドから精製し、pUC31プラスミ
ド中のN2 MoMLV5′LTR中に挿入し非突然変異200bp断片と置換える。プラスミド
pUC31はpUC19(Stratagene,San Diego,CA)から誘導され、そこでは追加の制
限部位Xho I,Bg1 II,BssH IIおよびNcoIがEcoRIとポリリンカーのSacI部
位の間に挿入される。この構成体はpUC31/N2R5gMと呼ぶ。
N2からの1.0キロ塩基(Kb)のMoMLV3′LTR EcoR I-EcoRI断
片はプラスミドSK+中にクローンされ、N2R3-と呼ぶ構成体が得られた。この構成
体から1.0KbのCla I-Hind III断片を精製する。
ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子の発現を駆動する初期プロモー
タを含む、pAFVXMレトロウイルスベクター(Kriegler等Cell、第38巻、第483頁
、1984年、St.Louis等、PNAS、第85巻、第3150頁、1988年)からのCla I-ClaI
優性選択マーカー遺伝子断片をプラスミドSK+中にクローンする。SK+プラスミド
から1,3kbのCla-I-Bs+BI遺伝子断片を精製する。
他の選択マーカー、フレオマイシン耐性(Mulsant等、Som.Cell and Mol.Gen.
、第14巻、第243頁、1988年、Cayla,Cedex,FRから入手)を使用して、すでにネ
オマイシン耐性である細胞に遺伝子を形質転換するのに利用するためのレトロウ
イルスバックボーンKT−3Cを作成することができる。プラスミドpUT507(Mulsant
等、Som.Cell and Mol.Gen.、第14巻、第243頁、1988年)をNdeIで消化し、末
端をVlenowポリメラーゼIでブラントする。次いでさらに試料をHpaIで消化し
、Cla リンカーを断片の混合物に連結し、さらに試料をClaIで消化する。過剰
のClaIリンカーをClaI消化によって取除き、RSV LTRおよびフレオマイシン耐
性を保持する1.2KbのClaI断片をアガロース電気泳動法によって次いでGene Cle
an(Bio101,San Diego,CA)を使用する精製によって単離する。この断片を1.3Kb
のCla I-Bs+BIネオマイシン断片に代わりに使用してバックボーンKT−3Cを
得る。
選択マーカーセットのさらなる修正はPAFVXMからのCla I-ClaISV2 Neo 断片
を単に使用することである。リボザイム配列のアントセンスをNEO 遺伝子の3−
非翻訳領域中のHWC II S/TE中に挿入することができる。このベクターはKT3Dと
呼ぶ。
発現ベクターは3部連結反応によって構築され、そこでは関心の
ある遺伝子を含有するXho I-ClaI断片および1.0KbのMoMLV3′LTR Cla I-Hing I
II断片をpUC31/N2R5gMプラスミドのXho I-Hind III部位中に挿入する。次いで1
.3KbのCla I-BstBINeor遺伝子、または1.2KbのClaIフレオマイシン、断片をこ
のプラスミドのClaI部位中にセンス配向で挿入する。実施例2
A.E3/19K遺伝子のKT−3B中へのクローニング
i アデノウイルスの単離と精製
アデノウイルスの単離と精製はGreen等、Methods in Enzymology、第58巻、第
425頁、1979年に記載されている。特に、5のヒーラー細胞(3−6×105細胞/
ml)をアデノウイルス2型(Ad2)ビリオン(ATCC VR−846)のml当たり100−500
プラーク形成単位(pfu)で感染させる。37℃30−40時間のインキュベーションの
後、細胞を氷上に入れ、4℃20分間の遠心分離によって集菌し、Tris−HCl緩衝
液(pH8.1)中に再懸濁させる。ペッレトを音波処理で破砕し、トリクロロトリフ
ルオロエタン中で均質化した後、1,000gで10分間塩賃分離する。上水層を取出
し、10mlのCsCl(1.43g/cm3)上に層積し、SW27ローター中で20,000rpmで1時間
遠心分離する。乳白光のウイルス・バンドを取出し、CsClで1.34g/cm3に調節
し、さらにTiローター中で30,000rpmで16−20時間遠心分離する。勾配の中間に
ある可視ウイルス・バンドを取出し、アデノウイルスDNAの精製まで4℃で保管
する。
ii.アデノウイルスDNAの単離と精製
アデノウイルス・バンドを37℃で1時間プロテアーゼとインキュウベートして
タンパク質を消化する。4℃で7,800gで10分間遠心分離し、粒子を室温で5%
ドデシル硫酸ナトリウム中に30分間で溶解した後、同量のフェノールで抽出する
。上水相を取出し、フェノ
ールで再抽出し、エーテルで3回抽出し、Tris緩衝液中で24時間透析する。ウイ
ルスAd2DNAをエタノルで沈殿させ、エタノールで洗浄し、pH8.1のTris−EDTA緩
衝液中で再懸濁する。1.0の細胞中に生成したウイルスから約0.5mgのウイルスAd
2DNAが単離される。
iii. E3/19K遺伝子の単離
ウイルスAd2DNAはEcoRI(New England Biolabs,Beverly,MA)で消化し、1%
アガローズゲル上での電気泳動法によって分離する。Ad2の協調領域75.9−83.4
中に位置し、E3/19K遺伝子(Herisse等、Nucleic Acids Research、第8巻、
第2173頁、1980年、Cladaras等、Virology、第140巻、第28頁、1985年)を含有す
る2.7KbのAd2 EcoRI D断片は電気泳動法によって溶出し、フェノール抽出し、
エタノール沈殿し、Tris−EDTA(pH8.1)中に溶解する。
iv E3/19K遺伝子のKT−3B中へのクローニング
E3/19K遺伝子はPUC1813のEcoR I部位中にクローン化される。PUC1813はKa
y等、Nucleic Acids Research、第15巻、第2778頁、1987年、Gray等、PNAS、第8
0巻、第5842頁、1983年に実質的に記載されているように調製される。E3/19
KはEcoR I消化によって取出され、単離断片はホスファターゼ処理pSP73 プラス
ミドのEcoRI部位中にクローン化される(Promega,Madison,WI)。この構成体
はSP−E3/19Kと呼称する。SP−E3/19KcDNAの配向は適切な制限酵素の消
化およびDNA配列決定を使用することによって確認される。センス配向において
、cDNAの5′末端はpSP73ポリリンカーのXhoI部位に隣接し、3′末端はClaI
部位に隣接する。センスまたはアンチセンス配向中いずれかにE3/19KcDNAを
含有するXho I-ClaI断片はSP−E3/19K構成体から取出され、KT−3Bレト
ロウイルスバックボーンのXho I-ClaI部位中にクローン化される。この構成体
をKT−3B/e3/19Kと呼称する。
B.PCR増幅E3/19K遺伝子のKT−3Bへのクローニング
i.E3/19K遺伝子のPCR増幅
アミノ酸末端シグナル配列、次いでE3/19Kタンパク質をして小胞体(ER)
中に自身を包埋せしめる管腔内ドメインおよびカルボキシ末端細胞質テールを含
むAd2DNAE3/19K遺伝子は、ウイルス配列28,812と29,288の間に存在する。ウ
イルスゲノムDNAからのAd2DNAE3/19K遺伝子の単離はPCR増幅によって以下の
プライマー対を使って行う。
順方向プライマーはAd2ヌクレオチド配列28,812−28,835に対応する。
(配列番号: )
5′− 3′:TATATCTCCAGATGAGGTACATGATTTTAGGCTTG
逆方向プライマーはAd2ヌクレオチド配列29,241−29,213に対応する。
(配列番号: )
5′− 3′:TATATATCGATTCAAGGCATTTTCTTTTCATCAATAAAAC
Ad2相補的配列の外に、両プライマーは、PCTアンプリコン生産物の効率的な
酵素消化のための5つのヌクレオチド「緩衝配列」を含有する。順方向プライマ
ー中のこの配列はXhoI認識部位によってまた逆方向プライマー中のClaI認識部
位によって続かれる。それ故、5′から3′の方向では、E3/19K遺伝子はXh
oIおよびClaI認識部位によってフランクされる。
E3/19K遺伝子のAd2DNAからの増幅は次のPCRサイクルプロトコールで実施さ
れる。
ii.PCR増幅E3/19K遺伝子のKT−3B中への連結
SK-E3/19K構成体からのE3/19K遺伝子、約780bp長、は取出され、実施
例2Biに記載と同様に1%アガロース/TBEゲル電気泳動法によって単離する。
次いで、XhoIE3/19K断片はKT−3Bレトロウイルスバックボーン中に連結
する。この構成体はKT−3B/E3/19Kと呼称する。それはDH5α細菌株をKT
−3B/E3/19K構成体で形質転換することによって増幅される。特に、細菌
は1−1000ngの連結反応混合物DNAで形質転換される。形質転換された細菌細胞
はアンピシリンを含有するLBNAで形質転換される。形質転換された細菌細胞はア
ンピシリンを含有するLBプレート上にプレートする。プレートは37℃で一夜イン
キュウベートし、細菌コロニーを選択して、それからDNAを調製する。DNAはXho
IおよびCla Iで消化する。E3/19K遺伝子を含有するプラスミドのためのエ
ンドヌクレアーゼ制限切断断片の期待サイズは780と1300bpである。
C.合成E3/19K遺伝子のKT−3Bへのクローニング
i.E3/19K遺伝子DNAの合成
合成DNAの化学合成はすでに記載されている(Caruthers等、Methods in Enzymo
logy、第211巻、第3頁、1992年)。E3/19K遺
伝子をコードする配列は5′と3′リミットとしてPCRプライマーを使用し、末
端に同一のXho IおよびCla Iリンカーを保持するアライド・バイオシステムズ
社のDNA合成装置、モデル392(Foster City,CA)を使用してホスホトリエステル
法によって合成する。長さ約14−40ヌクレオチドの短いオリゴマヌクレオチドは
ポリアクリルアミドゲル電気泳動法によって精製し、相互に連結して一本鎖DNA
分子を形成する(Ferretti等、PNAS、第83巻、第599頁、1986年)。
ii.E3/19K遺伝子DNAの配列決定
DNAの増幅のために、断片をバクテリオファージ・ベクターM13mp18およびM13m
p19中にクローン化する(GIBCO,Gaithsburg,MD)。各断片のヌクレオチド配列
は、テンペレートとして一本鎖の13mp18およびM13mp19組換えファージDNAを使用
し、プライマーとして選択された合成オリゴヌクレオチドを使用するジデオキシ
法によって決定する。これによって、遺伝子の同一性と構造的完全性が確認され
る。
iii. E3/19K遺伝子のKT−3B中への連結
E3/19K遺伝子は、実施例2Biiの記載と同様に、KT−3BまたはKT−3C
ベクター中に連結する。実施例3
MHCの保存性領域のアンチセンス配列のKT−3へのクローニング
A.KT−3ClneoαMHCの構築
KT−3バックボンベクターのネオマイシン耐性遺伝子の非翻訳領域中に挿入さ
れる特定の配列の増幅のためのPCR反応においてテンペレートとしてMHCクラスI
対立遺伝子CW3(Zemmour等、Tissue Antigens、第39巻、第249頁、1992年)を
使用する。
次のプライマーを使用してヌクレオチド配列147から1,075の間
でMHCクラスI対立遺伝子CW1 cDNAを増幅する。
順方向プライマーはMHC CW3 cDNAヌクレオチド配列147−166に対応する。
(配列番号 )
5′−3′:TATATGTCGACGGGCTACGTGGACGACACGC
逆方向プライマーはMHC CW3 cDNAヌクレオチド配列1,075−1,056に対応する。
(配列番号 )
5′−3′:TATATGTCGACCATCAGAGCCCTGGGCACTG
MHCクラスI対立遺伝子CW3相補的配列の外に、両プライマーはPCRアプリコン
生産物の効率的酵素消化のために5′末端に5つのヌクレオチド「緩衝配列」を
含有する。緩衝配列に両プライマー中のHincII認識配列が続く。上記のプライマ
ーを持つMHCアンプリコンの作成はセクショク2Bi.に記載のPCRプロトコールを
使用して行う。このプロトコールはVentポリメラーゼ(New England Biolabs,B
everly,MA)によって修正され、さらに3.5分の代わりに1分の伸張時間を含む
ように修正される。Ventポリメラーゼはブラント末端を持つアンプリコンを作成
する。その他、順方向および逆方向プライマーはMHC CW3相補的配列のみを含有
することができる。
MHC CW3 cDNA950bpアンプリコン生産物をGene Clean(Bio101,San Diego,CA)
で精製し、HincIIで消化する。消化断片、938bpは1%アガロースゲル電気泳動
法によって単離し、Gene Cleanで精製する。
MHC CW3 cDNA950bp断片はネオマイシン耐性遺伝子の3′非翻訳領域中にアン
チセンス配向で挿入する。特に、pBluescripII SKC(pSKC)(Stratagene,San Di
ego,CA)プラスミドのHincII認識配列をHincIIおよびKpnIでの消化によって取
出す。Kpn I3′末端をT
4 DNAポリメラーゼでブラントにし、ブラント末端を連結する。このプラスミド
をpSKd1HIIを呼称する。実施例IAに記載のように、pAFVXMレトロウイルスベク
ターからの1.3Kb Cla I-ClaIドミナント選択性マーカー遺伝子断片をpSKd1HII
のClaI部位中に挿入する。このプラスミドをpSKd1HII/SVneoと呼称する。MHC
CW3 cDNA950bp断片をネオマイシン耐性遺伝子の3′非翻訳領域中に位置するpSK
d1HII/SVneoのHincII部位中アンチセンス配向に挿入する。MHC CW3 cDNA950bp
断片がアンチセンス配向でネオマイシン遺伝子中に存在するコンフォメーション
は制限エンドヌクレアーゼ消化および配向分析によって決定される。このクロー
ンはpSKd1HII/SVneo/αMHCと呼称する。
pSKd1HII/SVneo/αMHCの構築は3路の連結反応で行う。そこでは、実施例1
に記載のように、Cla I2.2KbSVneoαMHC断片およびN2R3-からの1.0Kb MoMLV3′L
TR ClaI-HindII断片をClaIおよびpUC31/N2R5gMプラスミドのClaIとHindIII部
位の間に挿入する。
B.KT-3C/SVneo/VARNA/αの構築
高水準MHC CW3アンチセンスRNA発現はAd2 VARNA1プロモータの下流のこの配
列の挿入によって行う。Ad2 VARNA1プロモータMHCアンチセンスcDNAはRNAポリメ
ラーゼIII(pol III)発現カセットとして組立てられ、次いでKT−3Cバックボ
ーン中に挿入される。このpol III発現カセットでは、Ad2 VARNA1プロモータに
アンチセンスαMHCcDNAが続き、それに順次pol IIIコンセンサス停止シグナルが
続く。
二本鎖の−30/+70Ad2 VARNA1プロモータは化学的に合成し(Railey等、Mol.
Cell.Biol.、第8巻。第1147頁、1988年)、夫々5′および3′にXhoIおよびB
gl II部位を含む、
VARNA1プロモータ順方向鎖:
(配列番号: )
5′−3′:CGAGTCTAGACCGTGCAAAAGGAGAGCCTGTAAGCGGGCACTCTTCCGTGGTCTGGTGGA
TAAATTCGGAAGGGTATCATGGCGGACGACCGGGGTTCGAACCCCGGAVARNA1プロモータ逆方向鎖
:
(配列番号: )
5′−3′:GATCTCCGGGGTTCGAACCCCGGTCGTCCGCCATGATACCCTTGCGAATTTATCCACCAG
ACCACGGAAGAGTGCCCGCTTACAGGCTCTCCTTTTGCACGGTCTAGAC
XhoIおよびBgl II付着端を持つ二本鎖のVARNA1プロモータを形成するために
、同量の一本鎖を10mMMgCl2中で混ぜ合せ、95℃5分間加熱し、次いで室温に徐
々に冷却して、鎖をアニールさせる。
プラスミドpSKdlHII/SVneo/αmhcからのMHCクラスI対立遺伝子CW3断片、
ヌクレオチド配列653-854、を次のプライマー対を使用して増幅する。
順方向プライマーはヌクレオチド配列653-689に対応する:
5′−3′:TATATCCTAGGTCTCTGACCATGAGGCCACCCTGAGGTG
逆方向プライマーはヌクレオチド配列854-827に対応する:
5′−3′:TATATAGATCTACATGGCACGTGTATCTCTGCTCTTCTC
MHCクラスI対立遺伝子CW3相補的配列の外に、両プライマーはPCRアプリコン
生産物の効率的な酵素消化のためにその5′末端に5つのヌクレオチド「緩衝配
列」を含有する。緩衝配列に順方向プライマー中ではAvr II認識配列が続き、逆
方向プライマー中ではBgl II認識配列が続く。このことは、pol III発現カセッ
ト中のAd2 VARNA1プロモータに関して、アンチセンス配向での挿入を可能にする
。上記のプライマーを持つMHCの作成は、3.5分の代わりに0.5分の伸張時間を含
むように修正された実施例1Bini記載のPCRプロ
トコールで行う。
Gene Clean(Bio101,San Diego,CA)でMHC CW3 cDNA223bpアプリコン生産物を
精製し、次いでAvr IIおよびBgIIIで消化し、2%NuSeive-1%アガロース/TBE
ゲル電気泳動法によって単離する。211bpバンドをゲルから取り出し、DNAをGene
Cleanで精製する。
二本鎖pol IIIコンセンサス停止配列を化学的は合成し(Geiduschek等、Annu
.Rev.Biochem.、第57巻、第873巻、1988年)、夫々5′および3′未満にAvr
IIおよびClaI部位を含む。
pol III停止配列順方向プライマー:
(配列番号: )
5′−3′:CTAGGGCGCTTTTTGCGCAT
pol III停止配列逆方向プライマー:
(配列番号: )
5′−3′:CGATGCGCAAAAAGCGCC
Avr IIおよびCla I付着端を持つ二本鎖のpol III停止配列を形成するために
、同量の一本鎖を10mMMgCl2中で混ぜ合せ、95℃5分間加熱し、次いで室温に徐
々に冷却して、鎖をアニールさせる。
アンチセンスαMHCクラスI対立遺伝子CW3のためのpol III発現カセットを4
路の連結反応で組立て、その中ではXhoI−Bgl II Ad2 VARNA1プロモータ断片
、Bgl II−Avr IIαMHC CW3断片、およびAvr II−ClaI転写停止断片をXho Iお
よびCla I部位の間のpSKII+中にクローンする。この構成体はpSK/VARNA/αMH
Cと呼称する。
KT3B/SVneo/VARNA/αMHCの構築は2工程の連結反応で行う。第一工程は、
実施例1に記載のように、Xho I−ClaI VARNA/αMHC断片およびN2R3-からの
1.0KbのMoMLV3′LTR Cla I−Hind III断片をpUC31/N2R5gMプラスミドのXhoI
とHind III部位の
間に挿入する3路の連結反応である。この構成体はKT3B/VARNA/αMHCと呼称す
る。第二連結反応工程では、1.3KbのClaI−BstBI SVneo断片をKT3B/VARNA/
αMHCのClaI部位中に挿入する。この構成体はKT3B/SVneo/VARNA/αMHCと呼
称する。実施例4
MHCクラスI重鎖の保存性領域を切断するリボザイムのKT−3Bへにクローニング
A.pSK/VARNA/MHCHRBZの構築
形質導入細胞中でのMHCクラスIの発現を効率的に阻止するために、MHCクラス
I対立遺伝子についての標的特異性をもつヘアーピン・リボザイムをKT3B/SVne
oベクター中に挿入する。リボザイムをAd2 VARNAプロモータから高水準で発現さ
せる。MHCヘアーピン・リボザイム(HRBZ)を実施例3に記載のpol IIIpSK/VARN
A/αMHC発現カセット中に挿入する。
HRBZおよびMHCクラスI対立遺伝子CW3は以下の同族配列を有する。
(配列番号: )
5′−3′:GATGAGTCTCTCATCG
HRBZは標的配列中に含有されるAGTCヘアピン基質motif中のA残基の後を切断
するようにデザインされている。切断後、HRBZは再循環させて、MHCクラスIRNA
分子にハイブリダイズし、切断することができる。
(Hampel等、Nucleic Acids Research、第18巻、第299頁、1990年)にすでに規
定され、4個の塩基「テトラループ」3および拡大ヘリックス4を含有し、上記
のMHCクラスI同族配列についての特異性をもつ二本鎖HRBZは化学的に合成され
、夫々5′および3′末端にBgl IIおよびAvr II部位を含む。
MHC HRBZセンス鎖:
(配列番号: )
5′−3′:GATCTCGATGAGAAGAACATCACCAGAGAAACACACGGACTTCGGTCCGTGGTATATTAC
CTGGTAC
MHC HRBZアンチセンス鎖:
(配列番号: )
5′−3′:CTAGGTACCAGGTAATATACCACGGACCGAAGTCCGTGTGTTTCTCTGGTGATGTTCTTC
TCATCGA
Bgl IIおよびAvr II付着端を持つ二本鎖のMHCクラスI特異的HRBZを形成する
ために、同量の一本鎖を10mMMgCl2中で混ぜ合せ、95℃5分間加熱し、次いで室
温に徐々に冷却して、鎖をアニールさせる。
MHC HRBZについてのpol III発現カセットを、Bgl IIおよびAvr II付着端をも
つ科学的の合成した二本鎖のMHCクラスI特異的HRBZをBgl IIとAvr II消化かつC
IAP処理したpSK/VARNA/αMHC中に連結することによって組立てる。そこではα
MHC配列は配列ベクターからゲル精製除去されている。このプラスミドはpSK/VA
RNA/MHCHCHRBZと呼称し、Ad2 VARNA1プロモータを含有し、それにMHCHCHRBZが
続き、順次pol IIIコンセンサス停止配列が続く。pol III発現成分はXhoIおよ
びClaI認識部位によってフランクされる。
B.KT3B/SVneo/VARNA/MHCHCHRBZの構築
KT3B/SVneo/VARNA/MHCHCHRBZの構築は2工程の連結反応によって行う。第
一工程はXhoI−ClaI VARNA/MHCHCHRBZ断片およびN2R3-からの1.0KbのMoMLV3
′LTR ClaI−Hind III断片を、実施例1に記載のpUC31/H2R5gMプラスミドのXh
oIとHind III部位の間に挿入する3路の連結反応である。この構成体はKT3B/V
A
RNA/MHCHCHRBZと呼称する。第二工程では、1.3KbのClaI−BstBISVneo断片をK
T3B/VARNA/MHCHCHRBZのClaI部位中に連結する。この構成体はKT3B/SVneo/V
ARNA/MHCHCHRBZと呼称する。実施例5
PSF1アンチセンスcDNAのクローニング
A.KT−3C/SVneo/αPSF1
KT−3Cバックボーンベクター中、ネオマイシン耐性遺伝子の非翻訳領域中に挿
入する特定の配列の増幅のためのPCR反応において、PSF1のcDNAクローン(Spies
等、Nature、第351巻、第323頁、1991年、Spies等、Nature、第348巻、第744頁
、1990年)をテンプレートとして使用する。次のプライマー対を使用して、PSF1c
DNAはヌクレオチド配列91−1,124の間で増幅される。
順方向プライマーはヌクレオチド配列9-111に対応する:
(配列番号: )
5′−3′:TATATGTCGACGAGCCATGCGGCTCCCTGAC
逆方向プライマーはヌクレオチド配列1,124-1,105に対応する:
(配列番号: )
5′−3′:TATATGTCGACCGAACGGTCTGCAGCCCTCC
PSF1相補的配列の外に、両プライマーはPCRアプリコン生産物の効率的な酵素
消化のために、その5′未満に5つのヌクレオチド「緩衝配列」を含有する。両
プライマー中では、緩衝配列にHinc II認識配列が続く。上記のプライマーをも
つPSF1アンプリコンの作成は実施例2Biに記載のPCRプロトコールで行う。この
プロトコールはVent ポリメラーゼ(New England Biolabs,Beverly,MA)を使
用することによって修正され、さらに3.5分の代わりに1分の伸張時間を含むよ
うに修正される。Ventポリメラーゼはブラント末端を
もつアンプリコンを生成する。
B.KT3B/SVneo/VARNA/αPSF1の構築
高水準のPSF1アンチセンス配列はこの配列をAd2 VARNAlプロモーターの下流に
挿入することによって行う。先ず、Ad2 VARNAlプロモターPSF1アンチセンスcDNA
をpol III発現カセットとして組立て、次いでKT−3Bバックボーン中に挿入する
。このpol III発現カセット中では、Ad2 VARNAlプロモータにアンチセンスPSF1
cDNAが続き、順番にpol IIIコンセンサス停止シグナルが続く。
次のプライマー対を使用するPCE反応において、PSF1 cDNAのヌクレオチド配
列91-309が増幅される。
順方向プライマーはヌクレオチド配列91-111に対応する:
(配列番号: )
5′−3′:TATATCCTAGGGAGCCATGCGGCTCCCTGAC
逆方向プライマーはヌクレオチド配列309-288に対応する:
(配列番号: )
5′−3′:TATATAGATCTCAGACAGAGCGGGAGCAGCAG
PSF1相補的配列の外に、両プライマーはPCRアプリコン生産物の効率的な酵素
消化のために、その5′未満に5つのヌクレオチド「緩衝配列」を含有する。順
方向プライマーでは緩衝配列にAvr II認識配列が続き、逆方向プライマーではBg
l II認識配列が続き、RNAポリメラーゼIII発現カセット中のAd2 VARNAlプロモー
タに関して、アンチセンス配向での挿入を可能にする。上記のプライマーをもつ
PSF1アプリコンの作成は、3.5分に代わりに0.5分の伸張時間を含むように修正し
た実施例2Biに記載のPCRプロトコールで行う。
MHC CW3 cDNA240bpアプリコン生産物はGene Clean(Bio101,San Diego,CA)
で精製し、Avr IIおよびBgl IIで消化し、2%NuSeive-1%アガロース/TBEゲ
ル電気泳動法によって単離する。次いで
211bpバンドをゲルから取り出し、Gene Cleanで精製する。
KT3B/SVneo/VARNA/αPSF1の構築は2工程に連結反応で行う。第一工程はXh
oI−Cla I VARNA/MHCHCHRBZ/αPSF1断片およびN2R3-からの1.0KbのMoMLV3′
LTR ClaI−Hind III断片を、実施例1に記載のpUC31/N2R5gMプラスミドのXho
Iと-Hind III部位の間に挿入する3路の連結反応である。この構成体はKT3B/V
ARNA/αPSF1と呼称する。第二連結工程では、1.3KbのClaI−BstBISVneo断片
をKT3B/VARNA/αPSF1のClaI部位中に連結する。この構成体はKT3B/SVneo/V
ARNA/αPSF1と呼称する。実施例6
PSF1の保存性領域を切断するリボザイムのKT−3Bへのクローニング
A.pSK/VARNA/αPSFIHRBZの構築
形質導入細胞中でのPSF1の発現効率的に阻止するために、PSF1 RNAについての
標的特異性をもつヘアピン・リボザイムをKT3B/SVneoベクター中に挿入する。
リボザイムをAd2 VARNAプロモータから高水準で発現させる。PSF1ヘアピン・リ
ボザイム(HRBZ)を実施例3に記載のpol IIIpSK/VARNA/αMHC発現カセット中
に挿入する。
HRBZおよびPSF1 RNAは以下の同族配列を有する。
(配列番号: )
5′−3′:GCTCTGTCTGGCCAC
HRBZは標的配列中に含有されるTGTCヘアーピン基質motif中のT残基の後を切
断するようにデザインされている。切断後、HRBZは再循環させて、PSF1 RNA分子
にハイブリッド化し、切断することができる。
(Hampel等、Nucleic Acids Research、第18巻、第299頁、1990年)にすでに規
定され、4個の塩基「テトラループ」3および拡大
ヘリックス4を含有し、上記のPSF1同族配列についての特異性をもつ二本鎖HRBZ
は科学的に合成され、夫々5′および3′末端にBg1 IIおよびAvr II部位を含む
。
(配列番号: )
5′−3′:GATCTGTGGCCAGACAGAGCACCAGAGAAACACACGGACTTCGGTCCGTGGTATATTACC
TGGTAC
(配列番号: )
5′−3′:CTAGGTACCAGGTAATATACCACGGACCGAAGTCCGTGTGTTTCTCTGGTGCTCTGTCTG
GCCACA
Bgl IIおよびAvr II付着端を持つ二本鎖のPSF1特異的HRBZを形成するために、
同量の一本鎖を10mMMgCl2中で混ぜ合せ、95℃5分間加熱し、次いで室温に徐々
に冷却して、鎖をアニールさせる。
PSF1 HRBZについてのpol III発現カセットを、Bgl IIおよびAvr II付着端をも
つ科学的の合成した二本鎖のPSF1特異的HRBZをBgl IIとAvr II消化かつCIAP処理
したpSK/VARNA/αMHC中にベクター中で連結することによって組立てる。この
プラスミドはpSK/VARNA/MHCHCHRBZと呼称し、Ad2 VARNAlプロモータを含有し
、それにMHCHCHRBZが続き、順次pol IIIコンセンサス停止配列が続く。pol III
発現成分はXhoIおよびClaI認識部位によってフランクされる。
B.KT3B/SVneo/VARNA/PSF1HCHRBZの構築
KT3B/SVneo/VARNA/MHCHCHRBZの構築は2工程の連結反応によって行う。第
一工程はXhoI−ClaIVARNA/PSF1IHRBZ断片およびN2R3−からの1.0KbのMoMLV3
′LTR ClaI−Hind III断片を、実施例1に記載のpUC31/H2R5gMプラスミドのXh
oIとHind III部位の間に挿入する3路の連結反応である。この構成体はKT3B/V
ARNA/PSFIHRBZと呼称する。第二工程では、1.3KbのClaI−BstB I
SVneo断片をKT3B/VARNA/PSF1HRBZのClaI部位中に連結する。この構成体はKT3
B/SVneo/VARNA/PSF1HRBZと呼称する。実施例7
多価組換えレトロウイルスベクターKT3b−E3/19K/αMHCの構築
実施例2と3に記載のスリークラスIMHC対立遺伝子A2,CW3およびB27の間
に保存性領域に特異的なE3/19K配列およびアンチセンス配列の両方を含有す
る種々のレトロウイルスベクターKT3b−E3/19Kもまた構築することができる
。このプラスミドはKT3b−E3/19K/αMHCとして知られ、キメラ分子として
発現されるE3/19K配列の3′末端でMHCクラスIアンチセンス配列を取込む
ようにデザインされている。レトロウイルス、KT3b−E3/19K/αMHCは、MHC
アンチセンス配列を含有するClaI消化PCR増幅生産物をKT3b−E3/19KのCla
I部位中に連結することによって構築することができる。さらに詳しくは、MHC
クラスI対立遺伝子CW3のcDNAクローン(Zemmour等、Tissue Antigens、第32巻、
第249頁、1992年)は次のプライマー対を使用してヌクレオチド653と854の間のPC
Rによって増幅される。
(配列番号: )
5′−3′:ATTATCGATTCTCTGACCATGAGGCCACCCTGAGGTG
(配列番号: )
5′−3′:ATTAATCGATACATGGCAAGTGTATCTCTGCTCTTCTC
プラマー対は、増幅Cla I消化生産物を部分的前消化KT−3B−E3/19Kベ
クター中にアンチセンス配向で挿入するために、ClaI制限酵素部位によってフ
ランクされる。ClaI断片を逆配向に入れることによって、ベクターは転写のと
き負アンチセンス鎖を発現する。実施例8
組換えレトロウイルスベクターKT3B−E3/19Kまたは他のベクターによる包装
細胞株DAの形質導入
A.プラスミドDNA形質導入
293 2-3細胞(293細胞ATTC No.CRL 1573から誘導された細胞株、WO、第92/052
66号公報)の5×105細胞を6cm組織培養皿上に約50%集落で接種する。翌日、感
染4時間前に培地を4ml新鮮な培地で取換える。標準カルシウムリン酸塩−DNA
共沈殿法は、10.0μgのKT−3B−E3/19Kプラスミドと10.0μgのMLP G プラ
スミドを2M CaCl2溶液で混合し、pH6.9の1×ヘペス緩衝食塩溶液を添加し、
室温で15分間インキュウベートすることによって行う。カルシウムリン酸塩-DNA
共沈殿を293 2-3細胞に移し、次いで5%CO2中で37℃で一夜インキュウベートす
る。翌日、細胞をpH7.0の1×PBSで3回リンスする。新鮮な培地を細胞に添加し
、次いで10%CO2中で37℃で一夜インキュウベートする。翌日、培地を細胞から
収集し、0.45μフィルタを通す。この上澄液を使用して、包装と腫瘍細胞株を形
質導入する。同様の方法で他のベクターについて過渡性ベクター上澄液を作成す
る。
B.包装細胞株の形質導入
DA細胞(D−17細胞から誘導された両栄養性細胞株ATCC No.183,WO、第92/0
5266号公報)を5×105細胞/10cm皿に接種する。約0.5mlの新しく収集した293
2-3上澄液(または−70℃に保管してあった上澄液)にDA細胞を添加する。翌日
、フレオマイシンをこれら細胞に添加し、1週間かけて薬剤耐性プールを作成す
る。この細胞プールを希釈クローンして、96ウエルプレートのウエル当たり1個
の細胞を得た。24クローンを24ウエルプレートに展開し、次いで6ウエルプレー
トに展開し、このとき細胞上澄液を分析のために
収集する。ベクター生産のためのDAクローンを選択し、DA−E3/19Kと呼ぶ。
ベクター上澄液をポリブレンまたはプロタミン硫酸塩を含有する正常培地で培養
したDA−E3/19Kクローンの10cm交会プレートから収集する。その他、ベクタ
ー上澄液をバイオリアクターまたはローラーボトルから採取し、加工し、使用前
にさらに精製することができる。
薬剤耐性マーカーのないまたはすでに包装細胞株中にあるマーカーをもつこれ
らのベクターについて、293 2-3作成上澄液で細胞を形質導入して1から2日後
にDA形質導入細胞を希釈クローニングすることによって、安定的に形質導入され
るクローンの選択を行なわねばならない。次いで、PT-PCRとして知られている操
作法、すなわちメッセージRNAの逆転写次いでポリメラーゼ連鎖反応によるcDNA
メッセージの増幅を使用することによって、希釈クローンをE3/19K発現の存
在についてスクリーニングする。商業キットがInvitrogen社(San Diego,CA)か
ら入手できる。程よい数の安定的に形質転換されたクローンを見出だすためには
、RT-PCRは少なくとも10日間増殖されたクローンについて行うべきであり、約50
から100クローンがスクリーニングされる必要である。PT-PCRを行うためには、
特異的なプライマーは各メッセージが増殖される必要がある。E3/19Kメセー
ジクリーニングについて401bp生産物を増殖するようにデザインさたプライマー
は次の通りである。
E3/19Kについてのスクリーニングプライマー:
(配列番号: )
5′−3′:ATGAGGTACATGATTTTAGGCTTG
(配列番号: )
5′−3′:TCAAGGCATTTTCTTTTCATCAATAAAAC実施例9
複製コンピテントレトロウイルスの検出
拡大S+L+アッセイによって複製コンピテント感染性ウイルスが関心のある細
胞株上澄液中に存在するかどうかが決定される。アッセイは感染性レトロウイル
スがインディケーター細胞株MiCl1(ATCC CCL64.1)上にフォーカスを作るという
実験的観察に基ずく。MiCl1細胞株はMvlLu ミンク細胞株(ATCC CCL64)からマ
ウス肉腫ウイルス(MSV)での形質導入によって誘導される。MSVゲノムの存在を示
す肉腫(S+)を形成し、複製コンピテントウイルスの不在を示す白血病(L-)
を起こさないのは、マウス肉腫プロウイルスを含有する非生産者、非形質転換的
、復帰突然変異体クローンである。複製コンピテントレトロウイルスによるMiCl1
細胞の感染によって、MSVゲノムは「活性化」されて増殖班を与える「形質転換
」を起こす。
複製コンピテントレトロウイルスの存在について試験する細胞株から上澄液取
出し、0.45μフィルタに通して細胞も除去する。MvlLu細胞をDMEM2ml、10%FBS
と8μgポリブレン中に6ウエルプレートのウエル当たり(試験試料当たり1ウ
エル)1×105細胞で接種する。1日目に、MvlLu細胞を別々の6ウエルプレート
上にポジチブとネガチブコントロールのために同じ方法でプレートする。MvlLu
細胞を37℃で10%CO2で一夜インキュウベートする。2日目に、1.0mlの試験上澄
液をMvlLu細胞に添加する。ネガチブコントロールプレートを1.0ml培地でインキ
ュベートする。ポジチブコントロールは、MAウイルス(Miller等、Molec.and C
ell.Biol.、第5巻、第431頁、1985年)の3希釈(1.0mの培地中200増殖班形成
単位(ffu)、20ffuと2ffu)からからなり、それはポジチブコントロール・ウエル
中の細胞に添加される。細胞を一夜インキュベートする。3日目に、培地をアス
ピレートし、細胞に3.0mlの新鮮なDMEM
と10%FBSを添加する。細胞を交会まで成育させ、6日目と10日目に1:10に分
割し、複製コンピテントレトロウイルスを増殖させる。13日目に、MVlLu細胞上
の培地をアスピレートし、2.0mlのDMEMと10%FBSを細胞に添加する。さらに、Mi
Cl1 をDMEM2mL10%FBSと8μgポリブレン中に6ウエルプレートのウエル当た
り1×105細胞で接種する。14日目に、MvlLu細胞からの上澄液をMiCl1細胞の相
当するウエルに移し、37℃で10%CO2で一夜インキュウベートする。15日目に、
培地をアスピレートし、3.0mlの新鮮DMEMと10%FBSを細胞に添加する。20日目に
、細胞を細胞の単層上のフォーカス形成(単層に過増殖し付着したままである、
群生した抵抗性の細胞として現れる)について検査する。増殖班がMiCl1細胞上
に出現する場合、試験部品は複製コンピーテントレトロウイルスによって汚染さ
れると決定する。実施例10
細胞株のE3/19Kレトロウイルスベクターによる形質導入
4μg/mlポリブレン:HT1080(ATCC No.CCL121),Hela (ATCCNo.CCL2),BC
10ME(Patek等、Cell.Immuno.、第72巻、第113頁、1982年、ATCC No.TIB85),
BCenv,HIV-1 IIIBenvを発現するBC10ME(Warner等、AIDS Res.and Human Zetr
oviruses、第7巻、第 645頁、1991年、Gunther Oennert,University of South
ern Californiaからの得たL33)、およびL33envを持つ5×105細胞/1−cm皿
に次の粘着性ヒトおよびマウス細胞株を接種する。翌日、DA E3/19Kからの
1.0mlの濾過上澄液を各細胞培養プレートに添加する。翌日、フレオマイシンを
すべての細胞培養の培地に添加する。すでにネオマイシン耐性である細胞株につ
いては、KT−3Cバックボーン中のE3/19K(フレオマイシン耐性)を使用す
る。293 2-3についてまたはDA誘導株からの過渡的上澄液を使用すること
ができる。選択が完全であり、遺伝子発現を試験するのに十分な細胞数が作成さ
れるまで、培養物を保持する。形質導入細胞株は夫々、HT1080−E3/19K、He
la−E3/19K、および、L33env−E3/19Kと呼ぶ。
EBV形質転換細胞株(BLCL)、および他の懸濁細胞株を照射プロデュサー細胞
株、DA−E3/19Kとの共培養によって形質導入する。特に、照射(10,000rads
)プロデュサー細胞株を4μgmlポリブレンを含有する増殖培地中で5×105細
胞/6cm皿でプレートする。細胞を2−24時間付着させた後、106懸濁細胞を添
加する。2−3日後、懸濁細胞を取出し、遠心分離でペッレト化し、1mg/mlフ
レオマイシンを含有する増殖培地中に懸濁し、丸ボトル96ウエルプレートの10ウ
エル中に接種する。培養物を24ウエルプレート、次いでT−25フラスコに拡張す
る。実施例11
多価組換えレトロウイルスベクター構成体KT3B−E3/19K中でのE3/19Kの
発現
A.E3/19Kについてのウエスタン・ブロット分析
E3/19K発現の分析のために放射性免疫沈殿検定法(RIPA)溶解物を選択培
養物から作成する。RIPA溶解物を融合性プレートから調製する。特に、初めに培
地を細胞からスピレートする。細胞を含有する培養プレートのサイズに依って、
100から500μの氷冷RIPA溶解物緩衝液(pH7.4の10mMTris,1%Nonidet P40(Calb
iochem,San Diego,CA),0.1%SDS,150mM NaCl)を細胞に添加する。プレート
からマイクロピペットを使用して細胞を取出し、混合物をマイクロチューブに移
す。チューブを5分間遠心分離して細胞破片を沈殿させ、上澄液を他のチューブ
に移す。上澄液を10%SDS-PAGEゲル上で電気泳動し、タンパク質バンドをCAPS緩
衝液(Aldrich,Milwauk
ee,WI)(10mM CAPS,pH11.0,10%メタノール)中で10から60ボルトで2から1
8時間でImmobilon膜に移す。膜をCAPS緩衝液から5%Blotto(5%無脂肪乾燥ミ
ルク、pH7.4の50mM Tris,150mM NaCl,0.02%アジ化ナトリウム、および0.05%
Tween20)に移し、E3/19Kに対するマウス・モノクローナル抗体でプローブす
る(Severinsson等、J,Cell Biol.、第101巻、第540頁、1985年)。膜に結合す
る抗体を1251−プロテインAを使用して検出する。実施例12
非形質導入細胞と比較してクラスI発現が減少した水準を示すE3/19K−ベク
ター形質導入細胞のFACS検査
E3/19K−ベクターで形質導入した細胞株をFACS分析によってMHCクラスI
分子発現について検査する。非形質導入細胞もMHCクラスI分子発現について分
析し、E3/19K形質導入細胞と比較して形質導入のMHCクラスI分子に対する
効果を決定する。
msウス細胞株、L33−E3/19K,L33env−E3/19K,L33env,BC10ME,BC
env,BCenv-E3/19Kを細胞表面上のH−2Dd分子の発現について試験する。
準集密密度にまで増殖した細胞を(ベルセンVersene)による処理によって培養物
から取出し、冷(4℃)PBSプラス1%BSAと0.02%アジ化ナトリウム(洗浄緩衝液
)で200gの遠心分離によって2回洗浄する。2百万個の細胞をマイクロフュー
ジ・チューブ中に入れ、200gの遠心分離によってペレット化し、上澄液を除去
する。細胞ペレットをH−2Dd−特異性Mab34-2−12s(精製抗体の1:100希釈
液の50μ,ATCC No.HB87)で再懸濁し、時どき混合して4℃で30分間インキュウ
ベートする。抗体標識細胞を1mlの洗浄緩衝液(4℃)で洗浄し、遠心分離し、
上澄液を除去する。細胞をビオチン化ヤギ・アンチマウス・カッパ軽鎖Mab(Amer
sham,Arlington Heigts,IL)(50μ、精製抗体の1:100
希釈液)で再懸濁し、4℃で30分間インキュウベートする。細胞を洗浄し、50μ
のアビジン結合FITC(Pierce,Rockford,IL)で再懸濁し、4℃で30分間インキ
ュウベートする。細胞をもう1回洗浄し、1mlの洗浄緩衝液中に再懸濁し、FACS
tar Analyzer(Becton,Dickinson,Los Angels,CA)での分析の前に氷上に保持
する。形質導入細胞の平均蛍光強度を非形質導入細胞のそれと比較して、E3/
19Kタンパク質が表面MHCクラスI分子発現に対して有する効果を決定する。実施例13
マウスCTL検査
Balb/cマウスに107照射(10,000ラド)BCenv細胞を注射する。7日後脾臓を採
取し、単細胞懸濁液に分散し、3×106脾臓細胞/mlを生体外で6×104細胞/ml
照射BCenvまたはBCenv-E3/19K細胞と共にT−25フラスコ中で37℃で7日間
培養する。培養液はRPM11640;熱失活した5%胎児ウシ血清(FBS);1mMピルビ
ン酸塩;50μg/mlゲンタマイシンおよび10-5M2−メルカプトエタノールから
なる。7日後にエフェクター細胞を採取し、標準4−6時間検査で96ウエル・マ
イクロタイター・プレート中で種々のエフェクター:標的細胞比を使用して試験
する。この検査には、Na2 51CrO4−標識、100μCi、37℃で時間(Amersham,Arlin
gton Heighs,Illinois)の標的細胞(BC,BCenv,Warner等、Aids Res.and Hum
an Retroviruses、第7巻、第645頁、1991年またはBCenvE3/19K)を200μの
ウエル当たり最終全量で1.0×104細胞/ウエルで使用する。インキュウベートの
後、100μの培養液を取出し、WALLACガンマ分光計(Gaithersgurg、MD)中で分
析する。自発放出(SR)を標的プラス培地からCPMとして決定し、そして最高放
出(MR)を標的プラスIM HClから毎秒カウント数(CPM)として決定する。標的
細胞溶菌パーセントを「(エフェクター細胞+標的CPM)−(SR)」/〔(MR)
−(SR)]×100として算出する。標的の自発放出価は典型的にはMRの10%−30
%である。関心のある遺伝子(リボザイム、E3/19K、アンチセンスなど)で
形質導入された腫瘍細胞をこの検査の刺敵物質および/または標的細胞として使
用して、ポジチブコントロールである非形質導入株と比較してHIV-特異的CTLの
誘発および検出の減少を実証する。実施例14
E3−ベクター形質導入によってクラスI分子表面発現が減少する場合BALB/C
マウスによるL33env細胞の腫瘍拒絶が阻害される
遺伝子治療処理の形質導入細胞についてのモデルとしてL33env細胞が使用され
ている。遺伝子治療処理細胞は、それらをCTLによるクリアランスについての可
能な標的とする外来タンパク質を産生する。生L33腫瘍細胞を注射されたBalb/
cマウスは露呈後3週間以内にカリッパー測定によって確認可能な固形腫瘍を発
生することが示されている。しかし、生L33形質導入腫瘍細胞(HIV−1IIIBエン
ベロープタンパク質の発現について形質導入されかつ選択されたL33細胞)を注
射されたBalb/cマウスはH−2Ddの文脈でHIVenvを認識し、15週間後までに
明白な腫瘍を持たない腫瘍細胞を拒絶する(Warner等、Aids Res.and Human Re
troviruses、第7巻、第645頁、1991年)。L33env細胞をE3/19Kベクターで
形質導入するとMHCクラスI分子の細胞表面発現が減少して、これらの細胞が免
疫監視を回避し、それによって腫瘍を確立する。L33env腫瘍の発生は、MHCクラ
スI分子の細胞表面発現が細胞をE19遺伝子で共形質導入することによって減少
したことを示す。このことは免疫系クリアランス機構を妨げる。
腫瘍細胞株L33env、およびE3/19K−L33envを10%FBSを含有
するDMEM中で増殖させる。腫瘍細胞を冷(4℃)PBSで静かにリンスし、ベルセン
で処理してプレートから取出す。プレートから細胞をスピレートした後、単細胞
懸濁液を無菌プラスチックチューブに添加する。細胞懸濁液を無菌PBS(4℃)2
回洗浄し、計数し、PBS中に107細胞/mlまで再懸濁する。Balb/cマウス(4−
6週令)に106生腫瘍細胞(0.1ml)を皮下注射し、腫瘍形成および腫瘍クリアラン
スについて評価する。種々のマウスに種々の腫瘍細胞株を注射する。L33細胞を
注射されたマウスは腫瘍形成についてポジチブ動物であり、一方L33envを注射さ
れたマウスはネガチブコントロールであり、env特異的CTL応答のために腫瘍細胞
を拒絶するはずである。E3/19K形質導入された、L33env細胞を注射されたマ
ウスの群を監視して、L33env細胞中でのE3/19K発現がこれら腫瘍細胞に対す
るマウスの免疫応答に対して有する効果が分かる。実施例15
非形質導入細胞と比較してMHC クラスI発現が減少した水準を示すE3/19K−
ベクター形質導入ヒト細胞のFACS検査
E3/19K−ベクターで形質導入した細胞株をFACS分析によってクラスI分子
発現について検査する。非形質導入細胞をクラスI分子発現について分析し、E
3/19K形質導入細胞と比較して、形質導入がクラスI分子に対して有する効果
を決定する。
2種のヒト細胞株、JY-E3/19KおよびJY(ATCC No. )を細胞表面上
のHLA-A2分子の発現について試験する。106細胞/mlまで増殖した懸濁細胞を
ピペットによって培養フラスコから取出し、冷(4℃)PBSプラス1%BSAと0.02%
アジ化ナトリウム(洗浄緩衝液)で200gの遠心分離によって2回洗浄する。2
百万(2×106)個の細胞をマイクロフュージ・チューブ中に入れ、200gでペレ
ット化し、上澄液を除去する。細胞ペレットをHLA-A2−特異
性MabBB7.2(精製抗体の1:100希釈液の50μ、ATCC No.HB82)で再懸濁し、抗
体と共に時どき混合して4℃で30分間インキュウベートする。抗体標識細胞を1
mlの洗浄緩衝液(4℃)で洗浄する。上澄液を除去する前に、細胞をビオチン化
ヤギ・アンチマウス・カッパ軽鎖Mab(Amersham,Arlington Heigts,IL)(50μ、
精製抗体の1:100希釈液)で再懸濁し、4℃で30分間インキュウベートする。細
胞を洗浄し、50μのアビジン結合FITCで再懸濁し、4℃で30分間インキュウベー
トする。細胞をもう1回洗浄し、1mlの洗浄緩衝液中に再懸濁し、FACStar Anal
yzerでの分析の前に氷上に保持する。形質導入細胞の平均蛍光強度を非形質導入
細胞のそれと比較して、E3/19Kタンパク質が表面MHCクラスI分子発現に対
して有する効果を決定する。実施例16
HLA-A2制限されたEBV-特異的ヒトCTL株によるE3/19−形質導入と非形質導
入されたEBV-形質転換ヒトJY細胞に対する免疫応答の測定
刺激要因として自己EBV形質転換細胞を使用して供血試料から増殖させたヒトC
TL株は制限されかつEBVに特異的であるHLA-A2であることが分かっている。自
己EBV形質転換細胞と共に増殖したこれらのCTL株はJY標的細胞(HLA-A2+とEBV
形質転換された)を溶菌することができる。クロム放出検査を、E3/19K遺伝
子で形質転換されているまたは非形質転換であるこれらCTL株およびJY標的細胞
で行うことができる。非形質転換JT標的細胞と比軟した場合にこの細胞の認識と
溶菌が減少することを実証するのに、E3/19K遺伝子形質転換JY標的細胞を使
用する。これらの結果は、MHCクラスI表面発現を減少させる試薬による細胞形
質転換は、生体内ヒト細胞モデル系中でのMHCクラスI制限細胞仲介免疫応答を
も減少
させることを示す。
HLA-A2でありEBV応答を有することが確認されている人間からの1×107PBMC
と共に約1×106照射(10,000ラド)JY細胞を10mlの培地中で37℃5%CO2で7−
10日間培養する。培養液はCTL増殖用に前選択された5%熱失活胎児ウシ血清、
1mMピルビン酸ナトリウムおよび非必須アミノ酸を補足したRPMI1640からなる。
7−10日培養の後、エフェクター細胞を採取し、ポジチブとして51Cr標識JY細胞
および51Cr標識JY-E3/19Kを使用する標準4−6時間クローム放出検査で試
験する。JYおよびJY-E3/19K細胞をNa2 51CrO4の300μCiで37℃で1時間標識
し、次いで洗浄し計数して、100μのウエル当たり最終全量で4×103細胞/ウエ
ルでの検査に使用する。インキュウベートの後、100μの培養液を取出し、WALLA
Cガンマ分光計中で分析する。自発放出(SR)を標的プラス培地から毎秒カウン
ト数(CPM)CPMとして決定し、そして最高放出(MR)を標的プラス1M HClから
決定する。標的細胞溶菌パーセントを「(エフェクター細胞+標的CPM)−(SR)
」/[(MR)−(SR)]×100として算出する。標的の自発放出価は典型的にはM
Rの10%−30%である。関心のある遺伝子(リボザイム、E3/19K、アンチセ
ンスなど)で形質導入された腫瘍細胞をこの検査の刺激物質および/または標的
細胞として使用して、ポジチブコントロールである非形質導入株と比較してHIV-
特異的CTLの誘発および検出の減少を実証する。
患者中に注入当たり注入するのに使用する形質転換細胞数は患者当たり注入当
たり107−108細胞の最小数とするように計画する。注入の部位は直接に患者の滑
液膜中または静脈注射で末梢血流中とすることができる。
上記から、本発明の特定の実施態様は説明の目的のためにここに
記載されたものであって、本発明の範囲を逸脱することなく種々の修正を作成す
ることができる。それ故、請求の範囲による以外、本発明は制限されない。
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フロントページの続き
(72)発明者 イルウィン,マイケル ジェイ.
アメリカ合衆国,カリフォルニア 92109,
サンディエゴ,ダイヤモンド ストリート
#7 1944
(72)発明者 ワーナー,ジョン エフ.
アメリカ合衆国,カリフォルニア 92130,
サンディエゴ,カーメル クリーク ロー
ド 12962―137
(72)発明者 ドゥベンスキー,トーマス ダブリュ.,
ジュニア
アメリカ合衆国,カリフォルニア 92014,
デル マー,ビア フェリノ 12729
(72)発明者 イバネツ,カルロス イー.
アメリカ合衆国,カリフォルニア 92129,
サンディエゴ,ミルポンド ウェイ
13592