【発明の詳細な説明】
β-グロビン遺伝子およびβ-遺伝子座制御領域誘導体を
導入するためのレトロウイルスベクター
本発明は分子遺伝学の分野内にあり、詳細にはレトロウイルスベクターの分野
、およびβ-グロビン(globin)遺伝子およびβ-遺伝子座制御領域誘導体を導入す
るためのこれらベクターを作成する方法に関する。
発明の背景
β-サラセミアおよび鎌状赤血球貧血は、ホモ接合体における重篤な臨床症状
を伴うヒトのβ-グロビン遺伝子の遺伝性疾患である。現在、同種異系の骨髄移
植が、最も実現可能なこれら患者の治療法である。不幸なことに、正常なHLA適
合性のドナーがいることは殆ど不可能であり、そしてHLA適合のドナーが利用可
能な場合であっても、多くは、対宿主移植片病のような骨髄移植の重篤な合併症
を呈する(Parkman,R.,Science 232:1373-1378 (1986))。これらの理由のため
、遺伝的に改変された自系全能造血幹細胞(THSC)は、注目すべき、同種異系の骨
髄移植の代替法である。相同組換えによる遺伝子ターゲティングは未だ、THSCで
は技術的に可能ではないため、殆どの現実的なストラテジーは、その正常ヒトβ
-グロビン遺伝子、およびそのcis作用性制御因子のTHSCゲノムへの安定な組み込
みを得ることである。これは、レトロウイルス介在遺
伝子導入であって、これらの細胞に適用可能な効率的な遺伝子導入によって達成
し得る(Fraserら、Blood、76:1071-1076(1990))。
遺伝子導入実験により既に、ヒトβ-グロビン遺伝子の近傍のcis作用性因子は
、遺伝子治療への応用に不十分であることが明らかにされている(1から5%より
少ないヒトβ-グロビン/ネズミβmaj-グロビンmRNA比)が、これはヒトβ-グロビ
ン導入遺伝子の非常に低い組み込み部位依存性発現しか示さないためである(Con
eら、Mol.Cell Biol.7:887-897 (1987); Dzierzakら、Nature 331:35-41 (198
8); Karlssonら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:6062-6066 (1988); Millerら
、J.Virol.,62:4337-4345 (1988); Benderら、Mol.Cell.Biol.,9:1426-143
4 (1989))。β-遺伝子座制御領域(β-LCR)を構成する、ヒトβ-グロビン遺伝子
座のかなり上流の主要な過感受性部位(HS)の発見により、ヒトβ-グロビン遺伝
子疾患の遺伝子治療に新たな望みが与えられた。(TuanおよびLondon、Proc.Nat
l.Acad.Sci.USA 81:2718-2722 (1984); Tuanら、Proc.Natl.Acad.Sci.US
A 82:6384-6388 (1985); Forresterら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5439-5
443 (1989);Grosveldら、Cell 51:975-985 (1987))。LCR誘導体は、トランスジ
ェニックマウスおよびネズミ赤白血病(MEL)細胞における連結されたβ-グロビン
遺伝子の赤芽球特異的に、高い、組み込み部位非依存性で発現し得るようにし、
成熟赤芽球分化を擬態する(Grosveldら、Cell 51:975-985 (1987))。各HS部
位の活性は現在小さなDNAフラグメントに局在化されている(米国特許第5,126,26
0号; curtinら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:7082-7086 (1989); Forrester
ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:5439-5443 (1989); Ryanら、Genes Dev.3:
314-323 (1989); Tuanら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,86:2554-2558 (1989);
Collisら、EMBO J.,9:233-240 (1990); Neyら、Genes Dev.4:993-1006 (1990)
; Philipsenら、EMBO J.,9:2159-2167 (1990); Talbotら、EMBO J.,9:2169-21
78 (1990); Pruzinaら、Nucleic Acids Res.,19:1413-1419 (1991); Waltersら
、Nucleic Acids Res.,19:5385-5393 (1991))ため、ヒトβ-グロビン遺伝子お
よびその近傍のcis作用性因子に連結されたβ-LCR誘導体を導入するレトロウイ
ルスベクターを構築することが可能になった(Novakら、Proc.Natl.Acad.Sci.
,USA,87:3386-3390 (1990); Changら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:3107
-3110 (1992))。しかし、これらの[β-グロビン/LCR]レトロウイルスは低い力価
であり、プロウイルス構造の伝達に際して複数の再配置をおこして非常に不安定
であり、そして感染したネズミ赤白血病(MEL)細胞においてβ-グロビン遺伝子発
現が比較的穏やかでかつ高度に変動するように強化される(Novakら、Proc.Natl
.Acad.Sci.USA 87:3386-3390 (1990); Changら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA
89:3107-3110 (1992))。
米国特許第5,126,260号は、β-LCRを構成し、および特にβ-LCR構造内のHS2エ
ンハンサーを同定するDNAaseI過感受性部
位を記載している。米国特許第5,126,260号では、高発現レベルのヒトβ-グロビ
ン遺伝子を得るために、レトロウイルス介在遺伝子導入を含む遺伝子導入プロト
コールにおけるβ-LCRおよびHS2誘導体の使用を主張している。しかし、米国特
許第5,126,260号では、[β-グロビン/LCR]レトロウイルスの安定なプロウイルス
伝達を達成し得る特別の手段を示していない。
従って本発明の目的は、β-グロビン遺伝子およびβ-遺伝子座制御領域誘導体
およびその他の赤芽球特異的遺伝子の安定な導入に関するレトロウイルスベクタ
ーを提供することである。
発明の要旨
ヒトβ-グロビン遺伝子およびβ-遺伝子座制御領域(β-LCR)誘導体を導入し得
るレトロウイルスベクター、以下[β-グロビン/LCR]レトロウイルスベクターと
記す、を提供する。[β-グロビン/LCR]レトロウイルスベクターは、遺伝子治療
に必要な以下の基準を充分に満たす:(1)細胞株およびネズミ骨髄細胞への感染
に際しての、プロウイルス伝達の安定性、すなわち当該分野において安定と考え
られているレトロウイルスベクターに類似の低い頻度の再配置;(2)改善された
ウイルス力価、それによって骨髄細胞の感染が可能となり;そして(3)導入され
たヒトβ-グロビン遺伝子の高赤芽球発現であって、本明細書中では感染および
ジメチルスルホキシド誘導(DMSO-誘導)ネズミ赤白血病(MEL)細胞のプールにおけ
る1遺
伝子を基礎とする、50%より多い(ヒトβ-グロビンmRNA)/(ネズミβmaj-グロビン
mRNA)比として定義する。
上に示された基準に適合する具体的な構築物については、下記に詳細に述べる
。
これらの基準に適合する別の[β-グロビン/LCR]レトロウイルスベクターをデ
ザインする具体的方法についても、下記に述べる。
改良されたベクターは、β-サラセミアおよび鎌状赤血球貧血を含む種々の疾
患の処置に有用である。
図面の簡単な説明
図1は、本発明の[β-グロビン/LCR]レトロウイルスベクターの一般的デザイ
ンの概略図である。
図2A〜Dは、NeoR特異的プローブを用いる[β-グロビン/LCR]レトロウイル
スのプロウイルス伝達を示すサザンブロットのコンピュータ分析の複写物である
。図2Aは、[β-グロビン/(HS2+HS3+HS4)/PGK]ウイルスで感染した細胞株中
の複数の再配置を示す。感染細胞由来のゲノムDNAはSacIで切断した。レーンP
は、産生体のプールで感染された細胞由来のゲノムDNAを示す。右側のレーンは
、独立した産生体のクローンで感染された細胞由来のゲノムDNAを示す。正確な
プロウイルスの予想位置を矢印で示す。図2Bは、[β-グロビン/LCR]mutベクタ
ーで得られた感染細胞株中の安定したプロウイルス伝達を示す。ゲノムDNAおよ
びコントロールのプラスミドをS
ac1で切断した。左側のレーンはサイズコントロールとしてのプラスミドを示す(
レーン1は[β-グロビン/HS2/PGK]mut;レーン2は[β-グロビン/(HS2+HS3+[4
xCP2 HS4])/PGK]mut;レーン3は[β-グロビン/(HS2+HS3+HS4)/PGK]mut;レー
ン4は[β-グロビン/HS2/PGK/NeoR-]mut;レーン5は[β-グロビン/(HS2+HS3+
[4xCP2 HS4])/PGK/NeoR-]mut;レーン6は[β-グロビン/(HS2+HS3+HS4)/PGK/N
eoR-]mut)。右側のレーンは、感染細胞由来のゲノムDNAを示す。レーン1、2、
3および4では、産生体のプールを用いて細胞を感染したのに対し、レーン5、
6および7では単一の産生体クローンを用いて感染した。レーン1は[β-グロビ
ン/HS2/SV40]mut;レーン2、5、6および7は[β-グロビン/HS2/PGK]mut;レ
ーン3は[β-グロビン/(HS2+HS3+[4xCP2 HS4])/PGK]mut;レーン4は[β-グロ
ビン/(HS2+HS3+HS4)/PGK]mutである。マイナーな再配置コンポーネントがレー
ン3に示されている。図2Cは、ゲノムDNAをSma1で切断することによって、両L
TR内、並びにLCR誘導体と内部PGK/NeoRカセット間に位置する導入されたDNA挿入
物内で微小再配置を検出することを目的とするサザンブロットを示す。レーン1
〜7は、図2Bの右側の1〜7のレーンと同一であるが、DNAはSac1の代わりにS
ma1で切断した点が異なる。SV40プロモーターの上流にはSma1部位は存在しない
ため、”a”の矢印はレーン1に対する正確な位置を示す。”b”の矢印は、上
記のマイナーな再配置に対応するレーン3中の異常バンドを示す。”c”の矢印
は、PGKプロモータ
ーを導入する構築物に対する正確なプロウイルス構造物を示す。図2Dは、マウ
スにおける骨髄移植後のプロウイルス伝達を示す。感染脾臓(移植後13日)由来
、および細胞株コントロール由来のゲノムDNAをSac1で切断した。左側のレーン
1および2は、図2Bのレーン1および3に対応するサイズコントロールを含む
。右側のレーンHS2 (1,2,3)は、ウイルス産生体のプールより得た[β-グロビン/
HS2/PGK]mutで移植された3匹のマウスの結果を示す。右側のレーンZen (1,2,3)
は、Zenコントロールウイルスで移植された3匹のマウスの結果を示す。レーンH
S2+HS3+[HS4の4xCP2] (1,2)は、ウイルス産生体のプール由来の[β-グロビン/
(HS2+HS3+[4xCP2 HS4])/PGK]mutを移植された2匹のマウスの結果を示す。
図3a〜3bは、[β-グロビン/LCR]構築物のDNA配列分析であり、5'スプライ
シング部位(5'SS)、3'スプライシング部位(3'SS)および分枝点部位(BPS)のよう
な潜在的に有害な配列、およびポリアデニル化シグナル(polyA)の存在をスクリ
ーニングする。コンセンサス配列とのマッチまたはミスマッチを、それぞれ大文
字または小文字で示す。部位特異的突然変異または関連する操作により変異され
た領域は、アスタリスクで示す。
図4A〜Fは、本発明のレトロウイルス構築物を生産するために使用した変異
誘発操作に関与する工程の概念図である。番号付けは、図3a〜3bおよび5a
〜5cの番号付けに対応する。図4Aは、イントロン2内の372bp[Rsa1-Rsa1]フ
ラ
グメントのPCR介在欠失を示す。それそれ遺伝子内のEcoR1(1908)、Rsa1(2345)、
Rsa1(2717)およびBamH1(2820)部位を重複する2対のプライマーを用いて、2つ
の独立したPCR反応を行った。以後の試験用に遺伝子のコーディング領域を標識
する(tag)ため、β-グロビンの2個のアミノ酸をδグロビンのアミノ酸で置換す
る変異を、EcoR1プライマー内に導入した。PCR生産物をEcoR1、BamH1およびRsa1
で切断した。次にトリプルの連結を、EcoR1およびBamH1部位で開裂した親[β-グ
ロビン]ベクターで行った。図4Bは、EcoR1およびXba1部位で開裂したLXSNベク
ターと4つの相補的なおよび重複するオリゴヌクレオチドとを連結することによ
り、領域[1665〜1770]が再構成され、そして変異されたことを示す。次の構築の
工程用に調製するために、ポリリンカーはオリゴヌクレオチド配列内に含まれて
いた。連結時の鎖状化を防ぐために、4つのオリゴヌクレオチドのうち2つのみ
をリン酸化した。形質転換前に連結産物をXho1で切断して親プラスミドを除いた
。図4Cは、PCR介在構築により領域[1770〜2185]を再構築し、そして変異した
ことを示す。点変異および付加的な制限部位(Mlu1およびHind3)がPCRプライマー
内に導入された。これらの新しい部位により、Mlu1およびHind3部位で開裂され
た図4Bに示された工程で得られたベクターとの連結が可能となった。形質転換
前に連結産物をBamH1で切断して親プラスミドを除いた。図4Dは、図4Cに示
す工程と同様のアプローチで、PCR介在構築により領域[2185〜3250]を再構築し
、そして変異し
たことを示す。使用したテンプレートは、図4Aに示す工程で得られた372bpの
イントロンの欠失を含む。ベクターおよびPCRフラグメントをSac1およびNco1で
切断後、HS2、β-グロビンプロモーターおよび本遺伝子の最初の部分を含むベク
ターで連結を行った。親プラスミドを除くため、形質転換前に連結産物をSma1で
切断した。図4Eは、図4Dに示す構築物由来の[Hind3-Bgl2]挿入物をHind3お
よびBgl2で開裂した図4Cに示す構築物の骨格と連結した。親プラスミドおよび
所望しない形態を除くため、形質転換前に連結産物をApa1で切断した。図4Fは
、図4Eに示す構築物由来の[Bgl1-Bgl2]フラグメントをエンハンサー/プロモー
ター/NeoRカセット、および[Pvu2-Xbal1]欠失MoMLV LTRを含む[Bgl2-Bgl1]フラ
グメントとを連結することにより、最終の[β-グロビン/HS2]mutレトロウイルス
構築物を得た。親プラスミドおよび所望しない形態を除くため、形質転換前に連
結産物をApa1で切断した。構築物の正確性を、DNA配列決定により確認した。
図5a〜5cは、C/R方向で、レトロウイルスで導入したヒトβ-グロビン遺伝
子のDNA配列(配列番号1)で、図3a〜3bで記載した番号付けに従う塩基の166
5から3325である。3つのエキソン、2つのイントロン、およびプロモーターを
示す。イントロン2の372bp[Rsa1-Rsa1]欠失に下線を付す。変異ポリAおよび3'S
Sを示す。変異誘発により導入された点変異を野生型配列の下に示す。保持され
たコドンまたはヒト-δ-グロビン遺伝子由来のコドンに対応して置換されたコド
ンを
示す。変異誘発に関連する制限部位は四角で囲み番号を付けている。変異誘導に
使用したオリゴヌクレオチドは矢印で示す。
図6AからDはRNA保護アッセイのコンピュータ解析の複写物である。各レー
ンの左および右のトラックは、それぞれネズミ特異的β-グロビンプローブおよ
びヒト特異的β-グロビンプローブを含む。特異的に保護されたフラグメントの
位置を各ブロットの右側に小文字で示す。ヒトβ-に対するバンドは”a”、ネ
ズミβmaj-はb、ネズミβminはcである。図6Aの左側のレーンMおよびHは
、切断されていないネズミ(M)プローブおよびヒト(H)プローブの位置を示す。
レーン1は、[β-グロビン/HS2/PGK]構築物を用いて、エレクトロポーレートし(
細胞当たり平均3コピー)、G418選択し、およびDMSO誘発したMEL細胞のプール(>
100)から抽出されたRNAである。レーン2〜5は感染(細胞当たり1プロウイルス
)、G418選択し、およびDMSO誘発したMEL細胞のプール(>100)から抽出されたRNA
であり、レーン2は[β-グロビン/HS2/SV40]mut、レーン3は[β-グロビン/HS2/
PGK]mut、レーン4は[β-グロビン/HS2+HS3+[4xCP2 HS4])/PGK]mut、そしてレ
ーン5は[β-グロビン/HS2+HS3+HS4)/PGK]mutである。図6Bは、[β-グロビ
ン/HS2/PGK]mutを用いるネズミ骨髄細胞の感染後のin vitroクローン化アッセイ
(clonogenic assay)によって得られた細胞から抽出されるRNAを用いたRNA保護ア
ッセイの複写物である。図6Cは、異種エンハンサーの効果を示すものであり、
感染
された(細胞当たり1プロウイルス)、G418選択し、およびDMSO誘発したMEL細胞
のプール(>100)からRNAが抽出されたものであり、レーン1は[β-グロビン/HS2
+[4x23bp HS2])/F441Py]mut、レーン2は[β-グロビン/HS2/F441 Py]mut、レー
ン3は[β-グロビン/HS2/SV40]mut、レーン4は[β-グロビン/HS2/PGK]mut、お
よびレーン5は[β-グロビン/SV40]mutである。図6Dは、位置依存性の発現の
変動性を調べることを目的としたRNA保護アッセイを示す。レーン1から6は、[
β-グロビン/HS2/PGK]mut構築物を用いた、感染され(細胞当たり1プロウイルス
)、G418選択し、およびDMSOで誘発されたMEL細胞の個々のクローンから抽出され
たRNAを示す。
発明の詳細な説明
βサラセミアおよび鎌状赤血球貧血のような疾患の遺伝子治療による処置のた
めの、ヒトβ−グロビン遺伝子およびβ−遺伝子座制御領域(β−LCR)誘導体を
導入し得るレトロウイルスベクター([β−グロビン/LCR]レトロウイルスベクタ
ー)ならびにこれらのベクターを作成する方法を提供する。これら[β−グロビン
/LCR]レトロウイルスベクターは、次の点で現在利用可能なレトロウイルスベク
ターより優っている。これらは、(1)細胞株およびネズミ骨髄細胞の感染の際に
低頻度の再配置(rearrangement)しか伴わずに安定なプロウイルスの伝達を示し
、(2)より高いウイルス力価を生じ、それにより骨髄細胞の首尾良い感染(本明
細書中では、標準条件下で1
mlのウイルス上清あたり105個より多いG418耐性NIH 3T3のコロニーとして定義す
る)を可能にし、そして(3)導入したヒトβ−グロビン遺伝子の高い赤芽球発現(
本明細書中では、感染し、そしてジメチルスルホキシド(dimethylsulfoxide)誘
発(DMSO-誘発)したネズミ赤白血病(MEL)細胞のプールにおいて1遺伝子を基礎と
して、50%より多い(ヒトβ−グロビンmRNA)/(ネズミmaj−グロビンmRNA)比とし
て定義する)を引き起こす。
現在利用可能な[β−グロビン/LCR]レトロウイルスベクターのプロウイルス不
安定性および低力価の原因であると考えられている構造が、現在、同定されてい
る。これらの構造は、ヒトβ−グロビン遺伝子の第2のイントロン内のA/Tリッ
チなセグメント、ならびにいくつかの相補/逆向き(C/R)ポリアデニル化シグナル
およびスプライシング部位を包含する。これらの構造の排除を生じる、導入した
β−グロビン遺伝子の拡大した変異誘発は、細胞株およびネズミ骨髄幹細胞の感
染の際のプロウイルス伝達を安定にし、ウイルス力価を10倍増加し、そして導入
したβ−グロビン遺伝子の発現を重大に混乱させない。本明細書中に記載される
、最適化されたレトロウイルスベクターは、DMSO誘発MEL細胞において種々のレ
トロウイルスにより導入したβ−LCR誘導体の発現特性の研究および50%より多い
、1遺伝子を基礎とする(ヒトβ−グロビンmRNA)/(ネズミmaj−グロビンmRNA)比
の達成を可能にした。染色体組み込み後の位置非依存発現の問題もまた扱われて
きた。レトロウイルスにより導入したβ−グロビン遺伝子の発現に対
する異種エンハンサー/プロモーターの影響もまた、β−LCR誘導体にcisに結合
した場合、分析されている。
本明細書中で使用する場合、レトロウイルスは、レトロウイルス科(Retroviri
dae)のウイルスファミリーに属する動物ウイルスであり、任意のタイプ、サブフ
ァミリー、属、または向性を含む。
レトロウイルスベクターは、一般に、Verma,I.M.(遺伝子導入のためのレトロ
ウィルスベクター MICROBIOLOGY-1985、米国微生物学会、229-232頁、ワシント
ン、1985、本明細書中で参考として援用される)により記載されている。
[β−グロビン/LCR]レトロウイルスの安定性および力価にとって有害なDNA配
列の同定
プロウイルスの不安定性および低い力価の原因であると考えられている構造を
、以下の手順により同定した。レトロウイルスの再配置の潜在的な原因となり得
るβ−グロビン遺伝子およびβ−LCR誘導体内のDNA配列に関するコンピュータ検
索を行った。レトロウイルスの不安定性についての2種の一般的なメカニズムは
、以前に記述されている:(1)ウイルスゲノムRNAにおける不適切なスプライシ
ングまたはポリアデニル化を引き起こす欠失、および/または(2)種々のタイプ
の反復配列によりしはしは誘発される逆転写の工程の間の再配置。従って、コン
ピュータ検索を、5'から3'まで、パッケージングシグナル(Ψ+)を伸長した814b
pのハイブリッド;ヒトβ−
グロビン遺伝子およびそのプロモーターを含む2748bpのフラグメント(相補/逆向
き(C/R)方向で);374bpのHS2フラグメント(C/R方向で);287bpのHS3フラグメン
ト(順方向で);243bpのHS4フラグメント(C/R方向で);583bpのネズミホスホグリ
セリン酸キナーゼ−1(phosphoglycerate kinase-1)(PGK)プロモーター(順方向
で)よりなる5kbのDNAセグメントを表す事実上のコンカテマーについて行った。
この5kbセグメントの上流または下流のエレメントは、この検索には含まれなか
った。なぜなら、LTRまたは抗生物質耐性(NeoR)用マーカーにおける再配置は、G
418耐性のウイルス伝達とほとんど両立できそうになかったからである。
5個のC/R [AATAAA]切断/ポリアデニル化(ポリA)シグナルを同定した。図3a〜
3bおよび図5a〜5cに示すように、全てがβ−グロビン遺伝子内に位置していた。
[T]n、[GT]n、または[YGTGTTYY]のような強力な下流ポリAエレメントを、これら
のほとんどについて検出しなかった。例外は、図3aにおける1704位のポリAに続
く、直ぐ下流の11bp内のセグメント内の9個の[T]であった。スプライシングシ
グナルについて、脊椎動物において記述される共通なものは、KrainerおよびMan
iatis(Hames,B.D.およびGlover,D.M.編、TRANSCRIPTION AND SPLICING、IRL P
ress、Oxford、131〜206頁、1988)により報告された:5'SSについて[C38/A39A62
G77G100T100A60A74G84T50]、3'SSについて[Y77Y78Y81Y83Y89Y85Y82Y81Y86Y91Y87
NY97A100G100]、および推定3'SSの2〜21bp上流である分枝点部位(BP
S)について[Y13/16NY16/16T14/16R13/16A16/16Y15/16]。さらに、潜在的5'SSを
、KrainerおよびManiatis(上記、1988)により記述された以下の5つのクラスに
したがって分類した:クラスI=AGGTA;クラスII=GTAAG;クラスIII=RGGTGAG
;およびクラスIV=AGGTNNGT。
2個またはより少数のミスマッチを有する18の潜在的5'SS、および3個または
より少数のミスマッチを有する32の潜在的3'SSを、図3a〜3bおよび図5a〜5cに示
すように、同定した。直列反復に関して、A/Tに非常に富む領域は、[AAAAT]nま
たはその変異体[AAAAN]nのようなモチーフの変性したタンデムダイレクトリピー
トを含むが、これを、図5a〜5cに示すように、イントロン2内に認めた。3つの
C/RポリA部位がこのA/Tリッチな領域に存在する。この領域は、Millerら(J.Vir
ol.62:4337-4345(1988))により、[β−グロビン]レトロウイルスベクターの増
殖に対する潜在的に有害な影響があるとも報告されている。別の延長したダイレ
クトタンデムリピート[ATTTATATGCAGAAATATT](配列番号2)を、図5a〜5cに示す
ように、イントロン2内に見出した。Ψ+、tRNAプライマー結合部位(PBS)、ま
たは組み込み(IN)モチーフを含むLTRのような構成レトロウイルスエレメントに
相同性を検出しなかった。イントロン2内に2つのポリプリンセグメントを同定
したが:図5a〜5cに示すように、[GGAGAAGAAAAAAAAAGAAAG](配列番号3)および[
AGAAAAGAAGGGGAAAGAAAA](配列番号4)、ウイルスゲノムRNAのRNアーゼH切断およ
びプラス鎖強停止(positive-strand
strong-stop)の開始のためのポリプリントラックとの強い相同性を検出しなかっ
た。いかなる延長した逆方向反復をも検出しなかった。
遺伝子治療に有用な特定の[β−グロビン/LCR]レトロウイルス構築物の説明
本発明の[β−グロビン/LCR]レトロウイルスベクターの一般的な設計図を、図
1に記載する。β−グロビン遺伝子を、プロウイルスの転写の向きに関して逆方
向に挿入し、逆転写の前にウィルスゲノムRNA上のβ−グロビンイントロンのス
プライシングを妨げた。これらの実施例中の全ての構築物は、LXSNベクター(Mil
lerおよびRosman、BioTechniques、7:980-990、(1989)、この文献の教示は本明
細書中で参考として援用される)由来であるが、その他のレトロウイルスを基礎
とするベクターも使用し得る。
LXSN(Dusty Miller、The Fred Hutchinson Center、Seattle、WA)の主要な特
徴は、5'から3'へ:モロニーネズミ肉腫ウイルス(MoMSV)の左LTR、MoMSVのtRNA
プライマー結合部位(PBS)、以下に記載のパッケージングシグナル(Ψ+)を伸長
したハイブリッド、DNA挿入のためのポリリンカー、NeoR遺伝子を駆動する内在S
V40エンハンサー/初期プロモーター、モロニーネズミ白血病ウイルス(MoMLV)の
ポリプリントラック、およびMoMLVの右LTRを含む。Ψ+は、高力価ウイルスの産
生のためにgag領域内へ伸張する。MoMLV gp85およびp65 gagタンパク
質の発現を防ぐために、このベクターのp65 gag開始コドンを、停止コドンへと
変異させ、そしてベクターの上流部分(Ψ+の5'部分までの左LTR)を、gp85 gag
を発現しない、MoMSV由来の相同配列で置換した。この領域はまた、MoMSV由来の
5'SSおよびMoMLV由来の潜在3'SSを有するハイブリッドイントロンを含む。
ヒトβ−グロビンプロモーターの5'境界は、CAP部位の266bp上流のSnaB1部位
である。3'境界を、ヒトβ−グロビン遺伝子の3'側フランキング領域のほとんど
を取り除くことにより最適化した。この遺伝子のわずか30bpだけ下流を、ヒトβ
−グロビン遺伝子の正常な切断/ポリアデニル化を可能にするために保持した。
右LTRをインタクトに保ち、またはConeら(Mol.Cell Biol.7:887-897、1987)お
よびDzierzakら(Nature、331:35-41、1988)(これらの教示は、本明細書中に参考
として援用される)によりpZipNeoSV(X)1において以前に記述された176bp[Pvu2-X
bal]の欠失をLXSNの3'LTRにおいて生じさせることにより、自己不活化ベクター
を設計した。
LCR誘導体に関して、全ての構築物は、米国特許第5,126,260号(この教示は、
本明細書中で参考として援用される)に記載のHS2エンハンサーを含む374bpの[Hi
nd3-Xbal]フラグメントを含む。
HS2エンハンサーに加えて、1つの構築物は、Philipsenら(EMBO J.9:2159-21
67、1990)により記述される225bpの[Hph1-Fnu4H1]HS3コアの21bp上流[AGACCCT..
.]で始まり、そして
41bp下流[... CCTATAC]で終わるPCRにより得られる287bpのHS3フラグメントおよ
びPruzinaら(Nucleic Acid.Res.19:1413-1419、1991)に記述される280bpの[S
st1-Aval]HS4コアフラグメントの27bp下流[GGGTATA...]で始まり、そしてAval部
位で終わるPCRにより得られる243bpのHS4フラグメントを含む。別の構築物は、H
S2エンハンサーフラグメントの次に、HS3無しで上記のHS4フラグメントのみを含
む。
LXSNのNeoRを駆動するSV40エンハンサー/初期プロモーターを、PMC1neoのF441
Pyエンハンサー/TKプロモーター/NeoRカセット(Stratagene、San Diego、CA)ま
たはネズミホスホグリセリン酸キナーゼ(phosphoglycerate kinase)(PGK-1)プロ
モーター/NeoRカセット(Rudolf Jaenisch、The Whitehead Institute、Cambridg
e、MAより入手)により置換した。いくつかの構築物において、現在、選択は可能
ではないが、異種エンハンサー/NeoRカセットを、ウイルス力価を増大させるた
めに、欠失させた。
レトロウイルスベクター内に挿入され得る選択マーカーは、ネオマイシン(neo
mycin)/G418耐性遺伝子に加えて、ハイグロマイシン(hygromycin)耐性遺伝子、
ピューロマイシン(puromycin)耐性遺伝子、フレオマイシン(phleomycin)耐性遺
伝子、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dihydrofolate reductase)遺伝子、および多
種薬剤耐性遺伝子を含む。使用し得る他のマーカーは、基質と相互作用して発色
した細胞を生成するβ−ガラクトシダーゼ(β-galactosidase)をコードする遺伝
子のような
任意の分子、または細胞膜で発現し、そして細胞選別手順(例えば特異的抗体と
の相互作用により)において使用される分子を含む。
修飾された導入β−グロビン遺伝子およびβ−LCR誘導体の特徴
導入β−グロビン(β-globin)遺伝子およびβ−LCR誘導体についての上述の修
飾は、増大したウイルス力価を引き起こし、細胞株および骨髄幹細胞におけるプ
ロウイルス伝達の安定性を回復し、そして導入β−グロビン遺伝子の発現を害さ
なかった。
最初に、力価および安定性に関して潜在的に有害なDNAセグメント(β−グロ
ビン遺伝子発現に関して中立と考えられた)の除去を試みた。2つのRsa1部位
(ヒトβ−グロビンキャップ(cap)部位からそれぞれ+580位、+952位に位置する
)間のイントロン2(Intron2)の372bpフラグメントを削除した。この削除したフ
ラグメントは、サテライトDNA様のA/Tリッチなセグメントの大部分を含んでおり
、5つの潜在的ポリA部位のうちの3つ、およびポリプリン(polypurine)トラッ
クを1つ含んでいる。この削除したセグメントは、例えば正常な5'SS、3'SS、分
枝点(branchpoint)および遺伝子内エンハンサー(intragenic enhancer)のような
本質的なイントロン構造(Intronic structure)とは明確にかけ離れている。Rsa1
部位は頻繁なカッターであるので、この削除は、図4Aおよび5a〜5cに示
すような組換えPCRで行った。
この結果は、イントロン2における上記372bpの削除およびその3'フランキン
グ領域の短縮が、[β−グロビン/LCR]構築物のウイルス力価を10倍増加させた
(表1)が、それ自体、例えば[HS2+HS3+HS4]のような複合β−LCR誘導体の存
在下でのプロウイルス伝達の不安定性を抑止し得ないことを示した。
イントロン2における774bpのより長い削除もまた実施し、同様の結果を得た
。この新たなイントロンの配列(オリゴヌクレオチドを介した構築によって構築
された)は、
[β−グロビン/LCR]レトロウイルスベクターのプロウイルス伝達を安定化す
るための別の努力として、広範な部位特異的変異誘発(site-directed mutagenes
is)を実施し、他の相補/逆向きの潜在的SSおよびポリAシグナルを除去した。
多くの再配置が導入β−グロビン遺伝内に生じたことの徴候があったので、β−
グロビン遺伝子自身に位置する潜在的SS部位に焦点をあてて、変異誘発の最初の
段階を3'SSに限定した。このプロセスにおいて、既知のcisに作用する特徴およ
びコーディング領域を変更しないように注意した。従って、図5a〜5cに示される
ように、β−グロビン遺伝子に位置する10の潜在的C/R 3'SSのうちの7つが、[A
G]における点変異によって破壊された。特に、1つまたは2つのミスマッチが在
る全ての潜在的3'SSが変異した。さらに、図3a〜3bに示されるように、1704位の
ポリA(強い下流[GT]/[T]領域が続いている)において1つの点変異を創出し
た。合計で20の点変異を、図4に示した複合多段階構築手法によって変異誘発の
最初の段階で導入した。
これら付加的変異は、細胞株および骨髄幹細胞におけるプロウイルス伝達の安
定性を回復させ、そして導入β−グロビン遺伝子の発現を害さなかった。これら
の最適化された[β−グロビン/LCR]レトロウイルスを、以後、本明細書におい
て[β−グロビン/LCR]mutと呼ぶ。
いくつかの構築物において、プロウイルス伝達をさらに安定化させるため、(
サブゲノム(sub-genomic)"ENV"転写物を生成するのに用いた)モロニー(Moloney
)MLVの3'SSを有するpZipNeoSV(X)1の340bp[BamH1-Xho1]フラグメントをいくつか
の構築物中に挿入した。このフラグメントは、用いる構築物に応じて中立、有用
、あるいは有害のいずれかであるようだった。
細胞株およびネズミ骨髄幹細胞の感染におけるプロウイルス伝達の安定性
[β−グロビン/LCR]mutのプロウイルス伝達を、これらの構築物で生成された
産生体由来の上清によるNIH 3T3細胞およびMEL細胞の感染で試験した。感染させ
、G418で選抜した細胞からのゲノムDNAのサザンブロット解析は、(図2Bにみら
れるように、[HS2+HS3+HS4]誘導体の存在下であって感染を産生体のプールで
実施した場合でも)全ての構築物での安定なプロウイルス伝達を示した。わずか
な再配置の構成部分(10%より少ない)のみが(HS2 + HS3 + [4 x HS4のCP2])を
有するウイルスから作成された感染細胞のプールにおいて検出さ
れた。独立した複数の産生体クローンを解析した場合、多くは非再配置形態を発
現していた。この解析から漏れ得る微少な再配置を検出するため、感染させてG4
18で選抜した細胞からのゲノムDNAをSma1で切断した。これは、両LTR中ならびに
β−LCR誘導体と内部PGK/NeoRカセットとの間に配置されている。内部Sma1は常
に保存され、図2Cにみられるように、このプロウイルス領域には微少な欠失が無
いことが確認された。Novakら(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 87:3386-3390(19
90))およびChangら(Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 89:3107-3110(1992))は、
[β−グロビン/LCR]レトロウイルス構築物が、産生体の多継代後、別の再配置
を被る傾向にあることを報告しているが、そのような再配置は数週間の連続培養
後においても見られなかった。
変異ベクターの安定性にさらに挑むために、インタクトな右側LTRを[β−グロ
ビン/HS2/PGK]mut構築物に導入した。そして「ピンポン(ping-pong)」感染を
、両種指向性Ψcrip産生体および同種指向性Ψcre産生体の2週間の共培養によ
って実施した。このチャレンジ後に再配置は見られなかった。Richard Mulligan
(Whitehead Institute and MIT,Cambridge,MA)から供与されたパッケージン
グ細胞であるΨcreおよびΨcrip(DanosおよびMulligan、Proc.Natl.Acad.Sc
i.USA、85:6460-6464 (1988))を、37℃、5%C02/95%空気下、10%仔ウシ血清、
100IU/mlペニシリン(Penicillin)および100mg/mlストレプトマイシン(streptomy
cin)を補給したダルベッコ改
変イーグル培地(DMEM)中で増殖させた。トランスフェクションに用いたプラスミ
ドDNAを、製造者(Quiagen,Inc.,Chatsworth,CA)により提供されたプロトコー
ルに従って、Quiagen法で調製した。自己不活化ベクターを使用したので、プロ
ウイルス構造の外側(Nde1部位)でプラスミドを線状化した後、リン酸カルシウム
法(calcium phosphate procedure)(5prime:3prime,Inc)を用いてプラスミドDNA
を直接パッケージング細胞にトランスフェクトした。G418による選抜(500mg/ml
の活性フラクション;Gibco,BRL,Gaithersburg,MD)後、産生体のプールもし
くは独立した産生体クローンを単離し、増殖させた。非自己不活化ベクターを用
いた「ピンポン」実験の場合は、Ψcre産生体およびΨcrip産生体を混合し、10
日間共培養した。産生体細胞は、共培養による感染に直接使用するか、もしくは
ウイルスをDanosおよびMulligan(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:6460-6464 (
1988))に記載されるように、0.45mmのミリポア(Millipore)フィルターでの上清
濾過によって調製した。
これらベクターによって得られるウイルス力価を上記表1に示す。[β−グロ
ビン/LCR]mutベクターが正しいプロウイルス構造を造血幹細胞に伝達し得るか
否かを試験するため、ネズミ骨髄細胞を、5−フルオロウラシル(5-fluorouraci
l;5-FU)で処置したドナーマウス由来の産生体のプールで感染させた。2つの構
築物を選択した:[β−グロビン/HS2/PGK]mut(高力価であるため)、および[
β−グロビン/(HS2 + H
S3 + [4 x HS4のCP2])/PGK]mut(この構築物で見られる微少な再配置したコン
ポーネントが不安定性の傾向を示し得、そして別のチャレンジを表し得るから)
である。「エンプティー(empty)」Zenベクター(106/ml以上の力価)(Fraserら
、Blood,76:1071-1076 (1991)に記載されている。)をコントロールとして使用
した。感染骨髄を、インビトロクローン原性アッセイ(in vitro clonogenic ass
ays)のために接種して遺伝子導入効率を評価した。または、感染骨髄を、致死的
に放射線照射された同系マウスに移植した。遺伝子導入効率は、G418の存在下、
または非存在下における肉眼で見えるCFU-ミックス-赤芽球コロニー(macroscopi
c CFU-Mix-Erythroid colonies)の数の比較によって評価した。
骨髄細胞を、4日前に5-FU(150mg/Kg)を静脈注射した成熟雄(C57BL/6J x C3H/
HeJ)F1マウスから単離した。感染には、6x106の骨髄細胞を、α培地(10%FCS、5
%CS(Ψcre由来β−グロビンウイルス産生体について)もしくは5%新生児ウシ血
清(GP-E86由来JZenNeoウイルス産生体について)、5%のアメリカヤマゴボウ分
裂促進因子(pokeweed mitogen)刺激脾臓細胞コンディショニング培地、100ng/ml
のネズミスチール因子(Steel factor; Immunex,Seattle,WA) 、および4μg/ml
のポリブレン(PolybreneTM; Sigma,St.Louis,MO)を含む)を含有する100mmペ
トリディッシュ中の90%集密の放射線照射(15Gy X線)されたウイルス産生体細胞
に添加した。共培養を、2日間(さらに1日、G418(500(活性)μg/ml)での
選抜
(アッセイ前)を伴って、または、伴わずに)実施した。非付着細胞および付着細
胞(トリプシン処理によって回収した)をクローン原性前駆細胞アッセイ(clone
genic progenitor assays)、または照射(9.5Gy 137Cs)されたレシピエントマウ
ス内への移植のために併用した。移植レシピエントは、静脈内に2x106の前感染
細胞当量を接種され、3週間後、脾臓からのDNA単離のために屠殺された。クロ
ーン原性前駆細胞アッセイ(clonegenic progenitor assays)のために、G418(0.
8(活性)μg/ml)を含むかまたは含まない1.1mlの培地(0.8%メチルセルロース(
methylcellulose)、30%FCS、1%ウシ血清アルブミン(bovine serum albumin)、10-4
Mのβ−メルカプトエタノール(β-mercaptoethanol)、3単位/mlのヒト尿エリ
スロポイエチン(human urinary erythropoietin)、2%のアメリカヤマゴボウ分裂
促進因子刺激脾臓細胞コンディショニング培地、および10%寒天刺激ヒト白血球
コンディショニング培地(Media Preparation Service,Terry Fox Laboratory,
Vancouver、Canada)を含む)が入った35mmペトリディッシュに細胞を1.5x104前
感染細胞当量で接種した。18日間のインキュベーション後、Humphriesら(Proc
.Natl.Acad.Sci.USA 78:3629-3633 (1981))に記載される標準的な基準によ
って、肉眼で見える赤芽球コロニーをスコアリングした。次いで、ペトリディッ
シュをリン酸緩衝化生理食塩水(PBS; phosphate bufferedsaline)で洗い流し、
続くRNA単離および解析のために遠心分離によって細胞を回収した。
遺伝子導入効率を、上記Zenベクターについては約60%、[β−グロビン/LCR]m ut
ベクターについてはおよそ40%と見積もった。再構成した動物の全脾臓由来の
ゲノムDNAを、移植後13日目に調製した。図2Dに見られるように、続いて実施し
たサザンブロット解析は、造血幹細胞への遺伝子導入が全ての移植マウスで確認
されたことを示した。検出可能な再配置のない正しいプロウイルス伝達が、[HS2
/β−グロビン/PGK]mutベクターを接種された3匹のマウスで確認された。[β
−グロビン/(HS2 + HS3 + [4 x HS4のCP2])/PGK]mutを接種された2匹のマウ
スは、このウイルスによる細胞株の感染において認められる2つの形態について
異なる割合を示した。割合におけるこの差異は、Lemischkaら(Cell,45:917-927
(1986))およびFraserら(Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1968-1972(1992))に
よって得られた結果に基づけば、移植後の骨髄再構成におけるオリゴ−クローン
発生(oligo-clonality)の結果のようである。さらなる再配置形態は検出されな
かった。
変異は、導入β−グロビン遺伝子の発現に関して中立である
次に、拡張した変異誘発がβ−グロビン遺伝子発現に有害であるか否かを測定
した。適切なプローブを用いるRNAプロテクションアッセイは、図6Aに見られる
ように、感染MEL細胞において変異ヒトβ−グロビンmRNAが正しく開始され、そ
してスプライシングされることを示した。変異ヒトβ−グロビン
mRNAはまた、図6Bに見られるように、ネズミ骨髄幹細胞の感染に続くインビトロ
クローン原性アッセイから得られた細胞において正確に開始され、そしてスプラ
イシングされるようであった。さらに、[β−グロビン/LCR]mutウイルスに感染
したDMSO誘導MEL細胞中のヒトβ−グロビン導入遺伝子の発現レベルは、図6Aに
見られるように、MEL細胞にエレクトロポレートした、変異していない[β−グロ
ビン/LCR]構築物で得られた遺伝子発現レベルと同等であった。
感染したおよびDMSO-誘発したMEL細胞における導入されたヒトβ-グロビン遺
伝子の高い、および赤芽球発現
遺伝子発現の予備的な指標を得るために、プロウイルスの構造という面で多様
な[β-グロビン(globin)/LCR]挿入物を含む直線化したプラスミドをMEL細胞に
エレクトロポレーションした。Paul Henri Romeo(INSERM U91,Paris,France
)から提供された半-粘着性(APRT-)MEL細胞を12%ウマ血清 (horse serum)、4.
5μg/mlグルコース(glucose)、2mMグルタミン(glutamine)、100 IU/mlペニシリ
ン(penicillin)および100μg/mlストレプトマイシン(streptomycin)を添加したD
MEM培地で、37℃、 5%CO2/95%空気下で生育させた。DMEM中の約107MEL細胞/mlと
、NdeIで直鎖状にした20μgのプラスミドDNAとを用いてエレクトロポレーション
したが、Cellporator(BRL)を用い以下の条件で行った:低抵抗、キャパシタン
ス1180μF、および250-350Vの範囲。MEL細胞は、上述のように、
8μg/mlのPolybreneTM(Sigma,St.Louis,MO)の存在下で、3mlのウイルス産生
体の濾過した上清を用いて感染させた。エレクトロポレーションした、あるいは
感染したMEL細胞を、次に、500μg/mlの(活性)G418を含む培地で分離した。単
一のあるいはプールした耐性コロニーを単離し、そして使用した。MEL細胞を、1
5%ウシ胎児血清、4.5mg/mlグルコース、2mMグルタミン、100 IU/mlペニシリン、
100μg/mlストレプトマイシンおよび2%ジメチルスルホキシド(DMSO)(Sigma
,St.Louis,× MO)を含むDMEM培地で、5日間、37℃、 5%CO2/95% 空気中で誘発
した。全RNAをRNAzolB法を用いて行ったが、それは製造者(Biotecx Laboratori
es,Inc.,Houston,TX)によって提供されたプロトコールに従って行った。定
量RNA保護アッセイを[α-32P]UTP(Amersham,Arlington Heights,IL)の存在
下、SP6ポリメラーゼ(Promega,Madison,WI)を用いてインビトロで転写され
た、均一にラベルしたRNAプローブを用いて行った。ヒト特異的プローブはTom M
aniatis(Harvard University,Cambridge,MA)によって提供され:特異的に保
護されたフラグメントは350bpの長さで、β-グロビンmRNAの第1および第2エク
ソンにエクソン内BamHI部位まで対応する。ネズミ特異的プローブを構築して、
βmaj-グロビンmRNAの第1エクソンに対応する145bpフラグメントを保護する。
ネズミβmaj-およびβmin-グロビン遺伝子の第1エクソンは、「ATG」の下流
まで相同性があったが、それらのリーダーでは、大きく異なっていた。この相同
性パターンと我々のRN
A保護アッセイによって、ネズミ特異的プローブはまた、ネズミβmin-グロビンm
RNAの115bpフラグメントを保護する。RNA保護アッセイは、Sambrookら、Molecul
ar cloning: a laboratory manual-第2版,Cold Spring Harbor Laboratory Pre
ss,Cold Spring Harbor,NY,(1989)に記載の方法で行われ、以下の条件:10μ
g全RNA、個々の反応で5×105cpmより多い各プローブ、52℃、16時間の[40mM PI
PES、pH6.4、400mM NaCl、1mM EDTA、80%ホルムアミド(formamide)]中のハイブ
リダイゼーション、20μg/ml RNase A (Sigma,St.Louis,MO)および2μg/ml R
Nase T1 (Sigma)で、室温で30分、消化で行った。これらの条件下では、例えば
、変異したヒトβ-グロビン遺伝子中に、あるいはネズミβmaj-およびβ-minグ
ロビンmRNAの相同性領域間に存在する疎らなミスマッチは検出されない。特異的
に保護されたフラグメントに対応する放射性バンドは、Phosphor Imager (Mole
cular Dynamics,Evry Cedex,France)を用いてスキャンし、および/またはオ
ートラジオグラムを2202 Ultrascan laser densitometer(LKB Instruments,In
c.,Gaithersburg,MD)を用いて解析した。ヒトβ-グロビンmRNA/ネズミβ-グ
ロビンmRNAの比は、それぞれのプローブ中のウリジン(Uridine)残基の数(係数2
.5)および1遺伝子を基礎として補正した。異数体半粘着性(APRT-)MEL細胞の最
初の単離株は偽4倍体(pseudo-tetraploid)と考えられている(Chaoら、Cell,3
2:483-493(1983))が、サザンブロット解析では、この研究で用いたMEL細胞は、
内因性のマ
ウスβ-グロビン遺伝子については、むしろ偽2倍体(pseudo-diploid)であるこ
とを示唆している。従って、補正(係数2)をこの比率の計算に適用した:2つ
のβmaj-および2つのβmin-グロビン遺伝子の平均、および細胞あたりたった一
つのプロウイルス。全体的な計算は、以下のように行った。
RNA保護アッセイおよびサザンブロット解析は、エレクトロポレートし、G418
で選択し、そしてDMSOで誘発されたMEL細胞のプールを用いて行った。この実験
の結果は、[2×HS2]、(HS2+HS3)および(HS2+[2×HS3])誘導体は、HS2単独
以上に、β-グロビン遺伝子発現を増加しないことを示唆したが、対照的に、HS4
誘導体をHS2およびHS3に加えると、β-グロビン遺伝子発現を有意に増加するよ
うに見えた。従って、感染の研究は以下のβ-LCRの組合せに限って行った:HS2
、[HS2+(4×HS2の23bp)]、[HS2+(4×HS2の23bp)+HS3]、[HS2+HS3+HS4]、お
よび[HS2+HS3+(4×HS4のCP2)]。これらの種々のβ-LCR誘導体を安定なプロウ
イルス伝達に最適化した変異ベクターに挿入した。β-LCRを含まないSV40エンハ
ンサーを有しているコ
ントロールベクターがまた含まれていた。MEL細胞を産生体からの上清で感染さ
せたが、細胞あたり一個までのプロウイルスが組み込まれる実験条件で行い、つ
いで、G418で選択した。感染され、そして選択されたMEL細胞の少なくとも102ク
ローンのプールを5日間、DMSOで誘発し、ついで、ヒトおよびネズミβ-グロビン
mRNA発現をRNA保護アッセイで解析した。導入されたヒトβ-グロビンmRNA/ネズ
ミβ-グロビンmRNA比を、1遺伝子を基礎として計算し、適正に補正した。補正
は、プローブの比活性に適用し、そして、異数体MEL細胞が、感染およびG418選
択後細胞あたり1コピーのみ組み込みプロウイルスを含むが、内因性のネズミβ
-グロビン遺伝子偽2倍体であると思われるという根拠に基づいて、適用された
。発現の細胞型特異性をNIH 3T3細胞の感染で証明した:導入されたβ-グロビン
遺伝子の発現は検出されなかった。同様に、導入されたヒトβ-グロビン遺伝子
の発現も、非誘発MEL細胞では低かった。種々の構築物について得られた結果を
図6Aおよび表Iに示す。
骨髄再構築におけるモノあるいはオリゴクローン性の遺伝子治療プロトコール
に対する別の示唆は、受容体と唯一の導入されたTHSCとを合体させる必要性があ
ることであり、それによって、100%の移植された個体において感染した細胞で完
全で継続性のある再構築が達成される。Lemischkaら、Cell45:917-927(1986);
Dzierzakら、Nature 331:35-41(1988);Karlssonら、Proc.Natl.Acad.Sci.U
SA 85:6062-6066(1
988); Benderら、Mol.Cell.Biol.9:1426-1434(1989);およびFraserら、Proc
.Natl.Acad.Sci.USA 89:1968-1972(1991)に報告されているように、THSCは
高い比率で、高い力価のレトロウイルスベクターであっても感染しないので、従
って、移植前に感染した骨髄細胞を選択する工程を加えることが望ましいであろ
う。残念ながら、NeoRを駆動するエンハンサー/プロモーター(例えばLTR、SV4
0)は、THSCで抑制されると考えられているが、これは、例えば、Hawleyら、Pla
smid,22:120-131(1989)に報告されているように、未発達の幹細胞(ES細胞)な
どの他の幹細胞で観察されている。従って、ES細胞で抑制されない内部のエンハ
ンサー/プロモーターを、[β-グロビン/LCR]mutベクターに挿入してNeoRを駆動
させた。これらのエンハンサー/プロモーターは、F441ポリオーマ(polyoma) (F
441 Py)エンハンサー/チミジンキナーゼ(TK)プロモーターおよびネズミホスホ
グリセレートキナーゼ-1(phosphoglycerate kinase-1)(PGK)プロモーターが含ま
れる。さらに、タバコモザイクウイルス(Tabacco Mosaic Virus)(TMV)リーダー
、これは強力な翻訳エンハンサーである(Gallieら、Nucleic Acids Res.,15:32
57-3273(1987))、をある構築物に加えた。
感染した3T3細胞のG418選択に際し、これらの異なるベクターの力価を比較し
た。Jane-Jane Chen (Harvard-MIT HST,MIT,Cambridge,MA)によって提供され
たNIH 3T3細胞を、10%ウシ血清、100 IU/mlペニシリンおよび100 μg/mlストレ
プト
マイシンを含むDMEM培地で、37℃、 5%CO2/95% 空気中で生育させた。NIH 3T3細
胞を、8μg/mlのPolybreneTM(Sigma,St.Louis,MO)存在下、濾過したウイルス
上清の種々の希釈液で感染させたが、これは、DanosおよびMulligan、Proc.Nat
l.Acad.Sci.USA 85:6460-6464(1988)に記載されている。細胞を次いで、500
μg/mlの(活性)G418を含む培地で分離した。耐性コロニーをカウントし、前記
(DanosおよびMulligan、同上、1988)の標準的な計算で力価を概算した。プロ
ウイルスの伝達は、neoRおよびβ-グロビン特異的プローブと適切なコントロー
ルを用いて、サザン解析(Sambrookら、Molecular cloning: alaboratory manu
al-第2版 Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1
989)により試験した。
力価は、SV40、F441Py/TK、およびF441 Py/TK/TMVでは同じであった。対照的
にPGKは第1グループと比較して5倍以上のウイルス力価を増加させた(表I)
。これらの異種のエンハンサーは、[β-グロビン/LCR]mutベクター中でLCR誘導
体の隣に位置しているので、これらの異種エンハンサーが、導入されたβ-グロ
ビン遺伝子の転写において、β-LCR誘導体に及ぼす影響もまた検討した。この実
験結果は、HS-2に連結したときは、異種エンハンサーはβ-グロビンの発現に関
しては中立ではないことを示す。[HS2+異種エンハンサー]の組合せによって提供
される全体的な増強レベルは、以下の順に増加した:SV40、PGK、およびF441 Py
/TK(図6Cおよび表I)。
β-グロビン発現は、染色体組み込み部位とは一部独立している。
モノ−およびオリゴクローン性は長期に再構築した造血系でしばしば観察され
るので(Lemischkaら、Cell 45:917-927(1986);Fraserら、Proc.Natl.Acad.S
ci.USA 89:1968-1972(1991))、染色体組み込み部位とは比較的独立している導
入されたβ-グロビン遺伝子の発現を得ることが、必須であり、それによって、
一貫した、および継続性のあるβ-グロビン遺伝子発現が得られる。Grosveldら
、Cell,51:975-985(1987);Collisら、EMBO J.9:233-240(1990);Philipsenら、
EMBO J.9:2159-2167(1990);Talbotら、EMBO J.9:2169-2178(1990);およびpruz
inaら、Nucleic Acids Res.19:1413-1419(1991)は、HS部位のそれぞれが、独立
してあるいは関連して、MEL細胞およびトランスジェニックマウスで位置独立性
を与え得ることを報告しているが、不完全な位置独立性もまた、curtinら、Proc
.Natl.Acad.Sci.USA 86:7082-7086(1989);Forresterら、Proc.Natl.Acad
.Sci.USA 86:5439-5443(1989);Ryanら、Genes Dev.,3:314-323(1989) およびN
ovakら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:3386-3390(1990)によって報告されて
いる。従って、感染およびG418選択後の、6個の独立したMEL細胞クローンにおい
て、β-グロビンmRNA発現の変動を試験した。[β-グロビン/HS2/PGK]mutに研究
の焦点をあてたが、ある単離されたHS部位とともに位置独立性が観察されれば、
位置独立性は付加的なHSフラグメントによって強化されるという推定に基いてい
た。
完全な位置独立性は観察されなかったが、変動は図6Dおよび表IIに示すように
比較的おだやかであった。
遺伝子導入によるβ-グロビン疾患の処置
本願明細書に記載されたレトロウイルスベクターは、例えば、β-サラセミア
および鎌状細胞貧血などのβ-グロビン疾患の遺伝子導入による処置に有用であ
る。
遺伝子導入は、当業者に公知の方法に従って、自己の全能造血幹細胞(THSC)
をレトロウイルスベクターで感染することによって行われる。
本願発明である、ヒトβ-グロビン遺伝子およびβ-遺伝子座制御領域誘導体を
導入するためのレトロウイルスベクターの修飾および改変は、上記の詳細な説明
から当業者には自明であろう。このような修飾および改変は添付の請求の範囲の
範囲内であることを意図している。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
A61K 48/00 9281−4B C12N 5/00 B
C07K 14/805 9051−4C A61K 37/04
(72)発明者 ロンドン,アービング エム.
アメリカ合衆国 マサチューセッツ
02138,ケンブリッジ,フレッシュ ポン
ド レーン 41
(72)発明者 ツアン,ドロシー
アメリカ合衆国 マサチューセッツ
02159,ニュートン,クロス ヒル ロー
ド 55