JP2000501614A - 高形質導入効率を有するレトロウイルスベクター上清を得るための方法 - Google Patents

高形質導入効率を有するレトロウイルスベクター上清を得るための方法

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Abstract

(57)【要約】 本発明は、高形質導入効率を有するレトロウイルス上清を得るための方法を提供する。

Description

【発明の詳細な説明】 高形質導入効率を有するレトロウイルスベクター上清を得るための方法 本願は、1995年12月15日に出願された米国特許出願第08/572,943号の一部継続 出願である。 発明の技術分野 本発明は、一般的に、レトロウイルス形質導入上清の産生のためのパッケージ ング細胞株の誘導および使用に関する。 発明の背景 ヒト遺伝子移入は、1つ以上の治療遺伝子およびそれらの発現を制御する配列 の適切な標的細胞への移入を含む。多くのベクター系が、種々の臨床的指標のた めの治療遺伝子の移入のために開発されている。インビボ遺伝子移入は、ベクタ ーの患者内の標的細胞への直接投与を含む。エクスビボ遺伝子移入は、標的細胞 を個体から取り出すこと、それらをエクスビボで改変すること、そして改変され た細胞を患者に戻すことを必要とする。 NIH Recombinant DNA Advisory Committee(RAC)によって臨床試験について認 可された遺伝子治療プロトコルの大多数は、両種向性レトロウイルスベクターを 使用している(ORDA Reports Recombinant DNA Advisory Committee(RAC)Data Ma nagement Report,1994年6月(1994)Human Gene Therapy 5: 1295-1302)。レト ロウイルスベクターは、細胞株を用いた実験で得られる一般に高率の遺伝子移入 および遺伝物質の安定な組み込みを得る能力により主要に選択されるビヒクルで あり、これは改変細胞の子孫が移入された遺伝物質を含むことを確実にする。レ トロウイルスベクターならびに外来遺伝子の移入および発現でのそれらの使用の 総説については、Gilboa(1988)Adv.Exp.Med.Biol.241: 29; Luskeyら、(199 0)Ann.N.Y.Acad.Sci.612: 398; およびSmith(1992)J.Hematother.1: 155-1 66を参照のこと。 現在使用される多くのレトロウイルスベクターは、モロニーマウス白血病ウイ ルス(MMLV)から得られる。多くの場合において、ウイルスgag、pol、およびenv 配列はウイルスから除去され、外来DNA配列の挿入を可能にする。外来DNAにより コードされる遺伝子は、しばしば、LTR中の強力なウイルス性プロモーターの制 御下で発現される。このような構築物は、gag、pol.およびenv機能がパッケー ジング細胞株によりトランスで提供されれば、ベクター粒子に効率的にパッケー ジングされ得る。従って、ベクター構築物がパッケージング細胞に導入される場 合、細胞により産生されたGag-PolおよびEnvタンパク質は、ベクターRNAをアセ ンブリして、培養培地に分泌される複製欠損または形質導入ビリオンを産生する 。従って、産生されたベクター粒子は感染し得、そして標的細胞のDNAに組み込 み得るが、一般的に、必須のウイルス配列を欠くので感染性ウイルスを産生しな い。 現在使用されるパッケージング細胞株の大部分は、Gag-PolおよびEnvをコード する別々のプラスミドでトランスフェクトされる。その結果、複数の組換え事象 が、複製可能なレトロウイルス(RCR)が産生され得る前に必要である。通常使用 されるレトロウイルスベクターパッケージング細胞株は、マウスNIH/3T3細胞株 に基づき、そしてPA317(MillerおよびButtimore(1986)Mol.Cell Biol.6: 289 5;MillerおよびRosman(1989)BioTechniques 7: 980)、CRIP(DanosおよびMull igan(1988)Proc.Natl Acad Sci USA 85: 6460)、およびgp+am12(Markowitzら 、(1988)Virology 167: 400)を含む。パッケージング細胞ゲノム内のgag-polお よびenv遺伝子の分離はRCRの発生率を減少させるが、RCRは、レトロウイルスベ クター調製物の臨床スケールの産物において時々観察され、そして安全性の主な 関心である。これは、少なくとも部分的に、NIH/3T3細胞が、RCRを形成するため の組換えに加わり得る(Cossetら(1993)Virology 193: 385-395およびVaninら、 (1994)J.Virology 68: 4241-4250)、内因性MLV配列(Irvingら、(1993)Bio/Te chnol.11: 1042-1046)を含む(特に、大規模な臨床ベクター産生の間の大量培 養において)という事実によるらしい。 レトロウイルスにより感染され得るか、またはレトロウイルスベクターにより 形質導入され得る宿主細胞の範囲は、ウイルス性Envタンパク質により決定され る。組換えウイルスを使用して、パッケージング細胞により提供されるEnvタン パク質により認識される任意の細胞型を実質的に感染し得る。これは、ウイルス ゲノムの形質導入細胞における組み込みおよび外来遺伝子産物の安定な産生をも たらす。感染効率はまた、標的細胞上のレセプターの発現レベルに関連する。一 般的に、MMLVのマウス同種向性Envは、げっ歯類細胞の感染を可能にするが、両 種向性Envは、げっ歯類細胞、鳥類細胞、およびいくつかの霊長類細胞(ヒト細 胞を含む)の感染を可能にする。マウス他種向性Envを利用する他種向性ベクタ ー系もまた、ヒト細胞の形質導入を可能にする。 レトロウイルスベクターの宿主範囲は、基礎ウイルスのEnvタンパク質を第2 のウイルスのEnvタンパク質で置換することにより変えられる。得られる「偽型( pseudotyped)」ベクター粒子は、エンベロープタンパク質を付与するウイルスの 宿主範囲を有し、そしてパッケージング細胞株により発現されている。例えば、 水疱性口内炎ウイルス(VSV-G)由来のG-糖タンパク質は、MMLV Envタンパク質で 置換され、これにより宿主範囲が広がる。例えば、Burnsら、(1993)Proc.Natl. Acad.Sci USA 90: 8033-8037および国際特許PCT出願公報WO 92/14829を参照の こと。 いくつかの標的細胞型に対する一致しない結果および不十分な遺伝子移入は、 現在のレトロウイルスベクター系に関する2つのさらなる問題である。例えば、 造血幹細胞は、それらの自己再生能力および全ての造血系統へ分化する能力によ り改変細胞が患者において再増殖するので、遺伝子治療の魅力的な標的細胞であ る。造血幹細胞へのレトロウイルス遺伝子移入は、今なお一致せずそして残念な がら非効率的である。Kantoffら、(1987)J.Exp.Med.166: 219-234; Miller,A. D.(1990)Blood 76: 271-278; およびXuら、(1994)J.Virol.68: 7634。遺伝子 移入効率を増大するための努力は、より高い終点力価(end-point-titer)のレト ロウイルスベクター上清を産生することを含む。終点力価は、調製物における機 能的ベクター粒子の数の尺度であり、これが増大した場合、標的細胞に対する機 能的ベクターの比を増大する(すなわち、感染多重度(m.o.i.)を増大する)こと により、理論的に形質導入効率を増大するはずである。しかし、終点力価の増大 にもかかわらず、レトロウイルス遺伝子移入効率(形質導入効率)は対応して増 大していない(Xuら、(1994)、上述;Paul(1993)Hum.Gene Therapy 4: 609- 615; Fraes-Lutzら、(1994)22: 857-865)。 終点力価を増大する努力は、レトロウイルスベクター上清の産生(Kotaniら、 (1994)Human Gene Therapy,5: 19-28を参照のこと)、および限外濾過による ベクター粒子の物理的濃縮(Paulら、(1993)、上述、およびKotaniら、(1994)、 上述)を改善することを含んでいる。37℃よりむしろ32℃でのプロデュサー細胞 のインキュベーションは、より高い終点力価を有する上清を生じたが、形質導入 効率は比較されなかったことが示された(Kotaniら、(1994)、上述を参照のこと )。Kotaniら、(1994)、上述の著者は、より高い力価が、32℃でのビリオン産生 のより早い速度と組合せた不活化のより遅い速度によることを推定した。別の研 究において、形質導入効率は、類似の終点力価を有する3つの上清の濃縮の前後 で測定された。Paulら、(1993)、前述。それぞれの場合において、濃縮は、終点 力価を増大し、そして形質導入効率を中程度に改善した。しかし、濃縮されてい ない上清のうちの1つで達成された形質導入効率は、他の濃縮物で達成されたも のより有意に高かった(Paulら、(1993)、上述)。 インビボ遺伝子治療適用のために、レトロウイルスベクターは、標的細胞を形 質導入する前にヒト血清により不活化されないことが重要である。論文は、ヒト 血清は、明らかに補体経路を介して、多くの組換えレトロウイルスを不活化する ことを示している。ウイルスエンベロープおよびプロデュサー細胞成分の両方は 、ヒト補体に対するウイルス感受性を担うことが報告されている(Takeuchiら、 (1994)J.Virol.68(12): 8001)。 従って、形質導入効率を再現的に増加する方法、および高形質導入効率のレト ロウイルス調製物を産生するための安定で安全なパッケージング細胞株を提供す る方法の必要性が存在する。本発明は、これらの必要性を満たし、そして関連し た利点も同様に提供する。 発明の要旨 本発明は、特に、レトロウイルスベクターを産生し得る組換えレトロウイルス パッケージング細胞を得るための方法を提供する。1つの実施態様において、本 方法は、レトロウイルスを選択する工程、および内因性レトロウイルス核酸を含 まない細胞を得る工程を含む。これらの工程は、相互交換可能に行われる。しか し、レトロウイルス選択後に、最小のgag-polオープンリーディングフレーム(OR F)挿入物がレトロウイルスから単離される。あるいは、機能的に等価なレトロウ イルス最小ORFをコードする核酸分子が単離され得、そして本明細書中に開示さ れた方法において使用され得る。同じ様式において、最小env ORFが野生型レト ロウイルスから単離されるか、または等価な核酸分子が得られる。次いで、最小 ORF核酸分子は、適切な複製ベクターまたはプラスミドへの挿入ならびにベクタ ーおよび/またはプラスミドを含む宿主細胞の複製により、あるいは他の非生物 学的方法(PCR)のいずれかにより増幅される。増幅の後、そして増幅方法と一致 して、最小ORF核酸分子は、内因性レトロウイルス核酸を欠くように予め選択さ れた細胞に挿入される。次いで、形質転換細胞は、最小レトロウイルスgag-pol およびenv ORFの発現に好ましい条件下で増殖される。 適切な候補パッケージング細胞株には、哺乳動物細胞(例えば、COS、Vero、H T-1080、D17 MRC-5、FS-4、TE671、ヒト胚腎臓(293)、およびHeLa)が挙げられ るが、これらに限定されない。 本発明はまた、レトロウイルスベクター粒子を形質導入する組み換え体を産生 し得るレトロウイルスパッケージング細胞を同定するために、レトロウイルス構 造タンパク質の産生についてスクリーニングするためのELISA法の使用を提供す る。本発明のさらなる実施態様において、高レベルのレトロウイルスGag-Polタ ンパク質およびレトロウイルスEnvタンパク質を産生する細胞は、上清中のgag-p olおよび/またはenv ORF翻訳産物についてアッセイすることにより同定または選 択される。 本発明はまた、本明細書中に記載された全ての種々の実施態様における方法に より得られた組換えパッケージング細胞(ProPak-Aと呼ばれる両種向性細胞株お よびProPak-Xと呼ばれる他種向性パッケージング細胞株を含む)を提供する。本 明細書中に開示された方法により産生されたパッケージング細胞株の他の実施態 様は、形質導入上清を産生する能力を有することにより特徴付けられるパッケー ジング細胞株である。すなわち、ヒト補体に耐性であり;NIH/3T3細胞でアッセ イされる場合、50%以上の形質導入効率を有するか、もしくはPA317ベースの細 胞由来の上清で達成されたものより大きな形質導入効率を有するか、または293 細胞でアッセイされる場合、20%以上の形質導入効率を有し:そしてレトロウイ ルスベクター配列と指示細胞株を有する2週を超える連続培養物との相互作用の 後、RCRが実質的に存在しない。 本明細書中に開示される方法に従って得られたパッケージング細胞に、組換え レトロウイルスベクターを導入することにより得られる組換えレトロウイルス粒 子を産生し、そして得られたプロデューサー細胞をレトロウイルスベクター上清 の産生および分泌に好ましい条件下で増殖させる方法が、本発明によりさらに提 供される。 プロデューサー細胞の増殖に関して、充填層(packed-bed)バイオリアクター中 のプロデューサー細胞を培養し、そして得られた上清を採集することにより、高 形質導入効率を有するレトロウイルスベクター上清を得る方法が提供される。1 つの方法において、充填層バイオリアクターは、5〜50cm2/mlの容量対表面比を 有し、そしてプロデューサー細胞は、30℃〜約37℃の温度で培養される。 これらの方法により産生されるレトロウイルス上清はまた、本明細書中に請求 される。 本発明はまた、高形質導入効率についてレトロウイルスベクター上清をスクリ ーニングするための方法、および遺伝子治療適用において高効率を有する形質導 入細胞のためのレトロウイルスベクター上清を産生する方法を提供する。 本発明のなお別の実施態様は、本発明の方法により産生された1つ以上の組換 えパッケージング細胞の培養物から得られたレトロウイルスベクター上清で、細 胞を形質導入することにより、細胞の形質導入効率を増大する方法である。1つ より多い向性(tropism)の粒子を含むベクター上清は、相補的向性の2つ以上の プロデューサー細胞の同時培養物により産生され得る。 本発明は、高形質導入効率のウイルスベクター上清を産生する方法を提供する 。当該分野での普及している意見は、ウイルス力価の増大は、形質導入効率の増 大をもたらすことである。本明細書中に示されるように、事実はその通りでない 。むしろ、より高い形質導入効率は、機能的ベクター粒子の数の増加と相関する 。ベクター粒子は、全て同一に産生されるわけでなく、そして高い力価の上清は 多 くの非形質導入粒子を含み得る。 図面の説明 図1は、パッケージング細胞株(ProPak-AおよびProPak-X)の構築のための挿 入プラスミドとして使用された、MLV構造遺伝子の発現のためのプラスミド構築 物を模式的に示す。上3つの構築物はGag-Polの発現用であり、そして下3つはE nv発現構築物用である。最小MLV配列は、これらのプラスミド間で共通の特性で ある。CMV-IEは、サイトメガロウイルス即時初期プロモーターを示す。SD/SAは 、スプライスドナー/スプライスアクセプター部位を示す。MLVは、ウイルスLTR に存在するマウス白血病ウイルスプロモーターである。RSV LTRは、ラウス肉腫 ウイルスのLTRプロモーターである。SV40は、シミアンウイルス40初期プロモー ターを示す。pAは、ポリアデニル化部位である。Eaは、両種向性エンベロープ遺 伝子をいい、Exは他種向性エンベロープ遺伝子をいい、そしてEaxは、キメラ両 種向性/他種向性エンベロープ遺伝子を示す。 図2は、本研究で使用されるいくつかのレトロウイルスベクターの構造を示す 。各ベクター名を左に示す。白色のボックスは、MLV LTRのエレメントを示す;R evM10、HIV Revタンパク質のトランス優性変異体;TK、単純ヘルペスウイルス-1 チミジンキナーゼプロモーター;Neo、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ ;SV、シミアンウイルス40初期プロモーター;nls、核局在化シグナル:IRES、 内部リボソーム侵入部位エレメント;NGFR、神経成長因子レセプター;puro、ピ ューロマイシン耐性遺伝子;CMV、CMV-IEプロモーター。LMiLyおよびLLySNは、L LySN中のレトロウイルスLTRプロモーターから直接、またはLMiLy中のIRESエレメ ント(ires)を介してのいずれかで発現されたLyt2表面抗原をコードする。LLySN は、内部SV40プロモーター(SV)から発現されるネオマイシンホスホトランスフェ ラーゼ遺伝子(Neo)を含む。 図3は、ベクターのパッケージング細胞(ProPak-A)への一過性トランスフェク ションにより、またはパッケージングおよびベクター構築物の293細胞(293)へ の同時トランスフェクションにより、安定なプロデューサー細胞(PA317; PE501) から調製されたlacZをコードするベクターを含む上清をヒト血清に曝露した 結果を示す。上清を、等容量の4人の健康ドナーからのヒト血清プールと混合し 、37℃で1時間インキュベートし、そして残りの力価をNIH/3T3について決定し た。血清は、未処理(HS)であるか、または56℃で30分間熱不活化された(HI-HS) 。ヒト血清プールは、熱不活化前および熱不活化後の8時間内で、117〜224の溶 血力価(CH50;EZ Complement Assay、Diamedix、Miami、Florida)を有した。熱 不活化血清(100%)で処理した上清の終点力価(cfu×10-5/ml)は:PA317、5.0 ;ProPak-A、1.0;PE501、1.4、および293、1.1であった。棒は、2連のサンプ ルの範囲を示す。HI-HSは、熱不活化ヒト血清を示す。HSは、ヒト血清を示す。 図4A、4B、および4Cは、ベクター上清の形質導入効率を示す。図4Aは、充填層 バイオリアクター中で培養したProPak-AおよびPA317細胞から産生されたLyt-2コ ード(LMiLyベクター)ウイルス上清の形質導入効率の比較であり、NIH/3T3細胞 でアッセイされた。図4Bは、通気した充填層バイオリアクター中で培養したProP ak-AおよびPA317細胞から産生されたベクター上清(LMiLyベクター)の形質導入 効率の比較であり、293細胞でアッセイされた。図4Cは、NIH/3T3細胞の示された ベクター上清の希釈物での接種の2日後に抗Lyt2抗体(Pharmingen,San Diego, CA)を用いて染色したのNIH/3T3細胞の割合(%)としての、PA317またはProPak- Aベースのプロデューサー細胞から産生されたLyt2コード(LLySN)ベクター上清で 達成された形質導入効率の比較である。上清を、12時間、32℃での培養後にコン フルエントなプロデューサー細胞培養物から調製した。 図5Aおよび5Bは、種々のウイルスベクター上清により媒介される形質導入の比 較の結果を示す。5Aは、NIH/3T3細胞で測定されたPA.SVNLZ上清についての終点 力価および形質導入効率の比較である。図5Bは、NIH/3T3細胞で測定された終点 力価を有する3つのPA.LMTNL上清についての、NIH/3T3、HeLa、またはJurkat細 胞で測定された形質導入効率の比較である。1E+05は、NIH/3T3細胞での1×105 cfu/mlの終点力価を意味する。エラーバーは、3つの測定値の標準的なエラーを 示す。 図6は、濃縮前後のPA.SVNLZ上清の形質導入効率を示す。最初の上清および濃 縮物(実施例2および表4を参照のこと)を培地で希釈し、そしてNIH/3T3細胞 に接種した。 図7Aおよび7Bは、NIH/3T3細胞でのPA.SVNLZレトロウイルスベクター上清の形 質導入効率(図7A)または終点力価(図7B)の測定を示し、これらは37℃、32℃、ま たは0℃でインキュベートされたベクターの不活化を示す。 図8Aおよび8Bは、NIH/3T3細胞での形質導入効率(図8A)または終点力価(図8B) のいずれかで測定された、32℃または37℃での75cm2組織培養フラスコ中のPA.SV NLZレトロウイルスベクターの産生の時間経過を示す。 図9は、形質導入効率または終点力価により測定された、32℃でのコンフルエ ントな回転瓶培養物からのPA.LMTNLベクター産生の時間経過を示す。 図10Aおよび10Bは、形質導入効率(図10A)または終点力価(図10A)により示され る回転瓶(900cm2)または充填層バイオリアクター(12,000cm2)中でのPA.SVNLZプ ロデューサー培養物についてのベクター産生の時間経過を示す。1E+05は、NIH/ 3T3細胞での1×105cfu/mlの終点力価を意味する。 図11は、レトロウイルスベクター上清の産生に適切なバイオリアクターを例示 する。数字は、以下を示す:1:10L容器からの培地引入口;2:空気引入口med ipure空気/5% CO2;3:Fibercellディスク 10g;4:撹拌速度、80rpm接種、 250rpm産生;5:培地出口:氷上の2L容器へ;および6:上清サンプル。 図12は、レトロウイルスベクター上清の産生に適切な連続灌流充填層バイオリ アクターの配置を例示する。配置の一部は、以下の数字のように示す:1、蠕動 ポンプ;2、培地供給タンク(10L);3、充填層バイオリアクター(500ml); 4、マグネティックスターラー;5、空気/CO2混合;6、0℃に維持された毎日 の上清収集のための2L容器。インキュベーター温度は、プロデューサー細胞の 増殖のためには37℃およびベクター産生のためには32〜37℃である。 図13は、293細胞で測定された、Tフラスコ対通気した充填層バイオリアクタ ー中のProPak-A.855プロデューサー細胞からのベクター産生の比較の結果を示す 。時間(h)は、時間である。形質導入効率は、ベクターコード表面マーカータ ンパク質を発現する細胞の割合として示される。ベクターPG855の構造について は図2を参照のこと。 図14は、Tフラスコまたは充填層バイオリアクター中の細胞の接種後の異なる 時間で採集されたProPak-X由来上清での293細胞の形質導入を示す。 図15は、示されたような、異なる容器中で培養されたProPak-A.LMiLy細胞から 採集された上清で達成された形質導入効率の比較である。 図16Aおよび16Bは、骨髄(CD34+)のLMiLy充填層上清での形質導入を示す。図16 Aは、単一の上清でのスピン接種(spinoculation)後の形質導入を示す。図16Bは 、単一または混合(ampho+xeno)上清でのスピン接種後の形質導入を示す。 図17Aおよび17Bは、細胞株の種々の向性を有するLyt2コードベクター調製物で の形質導入を示す。二連サンプルの平均値をプロットする。図17Aにおいて、細 胞株を、ProPak-X(PP-X)、ProPak-A(PP-A)、またはPG13(PG)ベースのプロデュー サー集団由来のLLySNベクターを用いて単位重量で接種した。MLV(V-G).LMiLyは 、一過性トランスフェクションにより調製されたMLV(VSV-G)偽型上清である。図 17Bにおいて、Quail細胞(Qcl.3;Cullenら、1983)を、キメラエンベロープ(Eax ;一過性トランスフェクションにより調製された)、他種向性(ProPak-X)または 両種向性(ProPak-A)エンベロープを有するLMiLyベクター粒子を用いて接種した 。 図18。ProPak-X、ProPak-A、またはPA317パッケージング細胞株にパッケージ ングされたベクターの補体耐性。上清を、等容量のヒト血清と共に30分間37℃で インキュベートした。培地中でインキュベートされたサンプルに関する残りの形 質導入活性を、293(ProPak-X)またはNIH/3T3細胞(ProPak-A、PA317)で決定 した。4人の健康ドナーからのヒト血清プールは、150〜313の溶血力価(CH50)を 有した(EZ Complement Assay,Diamedix,Miami,FL)。バーは、二連のサンプ ルの範囲を示す。 図19は、ベクター産生法の比較を示す。ProPak-A.52LMiLy上清を、コンフルエ ント(Tフラスコおよび回転瓶培養物における可視的な単層)の1日後に採集し 、8倍に希釈し、そしてNIH/3T3細胞に接種した。Lyt2発現を、FACSにより3日 後に分析した。 図20は、CD34ポジティブ細胞のスピン接種の3日後の表現型分析を示す。細胞 を、抗Lyt2フィコエリスリン抗体、および抗CD34サルファローダミン標識系統特 異的抗体(パネルAおよびB)、またはフルオレセインイソチオシアネート標識系 統特異的抗体(パネルCおよびD)のいずれかで染色した。系統特異的抗体のパネ ルは、以下の造血細胞系統に対する抗体を含んだ;胸腺細胞(CD2);顆粒球; 単 球、およびマクロファージ(CD14、CD15);ナチュラルキラー細胞(CD16);B リンパ球(CD19);および赤血球(グリコホリン)。サンプルを、Becton-Dickinso n Vantageフローサイトメーターで分析した。パネルAおよびCは、接種していな い細胞由来であり、そしてパネルBおよびDは、接種した細胞由来である。値は、 それぞれの四分円中の細胞集団の割合を示す。 本発明の実施の態様 定義 本明細書中に他に指摘がない限り、本明細書で使用される単語および用語によ って共通の定義が意図される。例えば、「レトロウイルス」は、鳥類または哺乳 類宿主細胞の染色体DNAに組み込まれ得る二本鎖DNA中間体(「プロウイルス」) にウイルスRNAゲノムをコピーするために、RNA特異的DNAポリメラーゼまたは「 逆転写酵素」を使用するウイルスのクラスを示す。レトロウイルスはまた、遊離 のビリオンとして存在し、これはレトロウイルスの構造タンパク質および酵素タ ンパク質(逆転写酵素を含む)、ウイルスゲノムの2コピー、およびウイルスエ ンベロープ糖タンパク質を包埋する宿主細胞原形質膜の一部を含む。多くのこの ようなレトロウイルスが当業者に公知であり、そして例えば、Weissら編,RNA T umor Viruses ,第2版,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,New Y ork(1984および1985)に記載される。レトロウイルスゲノムを含むプラスミド はまた、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC)、およびGacesaおよ びRamji,Vectors: Essential Data,John Wiley & Sons,New York(1994)に記 載のような他の供給源から広く利用可能である。多数のこれらのウイルスの核酸 配列は公知であり、そして一般的に、例えば、GENBANKのようなデータベースか ら利用可能である。MoMLVおよびMLVの完全核酸配列は、当該技術分野で公知であ る。 「パッケージング細胞株」は、レトロウイルスGag、Pol、およびEnv構造タン パク質を発現する核酸を含む組換え細胞株である。パッケージング細胞株は、パ ッケージングシグナルおよび他のcis作動性エレメントをコードするレトロウイ ルス核酸がないので、感染性ビリオンが産生され得ない。 「プロデューサー細胞」は、ベクター粒子中にパッケージされる複製−欠損レ トロウイルスベクターもまた含む上記の定義のようなパッケージング細胞である 。プロデューサー細胞は、治療またはマーカー遺伝子のような「外来」(すなわ ち、非レトロウイルス)遺伝子を含む形質導入レトロウイルスベースの粒子を産 生する。 「標的細胞」は、組換えレトロウイルスベクターに形質導入される細胞である 。したがって、標的細胞は、例えば、レトロウイルスベクター調製物の質を評価 するために使用される細胞株、エクソビボ遺伝子改変のための初代細胞、または レトロウイルスベクターのインビボ形質導入によって改変される患者内の細胞で あり得る。 用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」、および「核 酸分子」は、交換可能に使用され、そして任意の長さのデオキシリボヌクレオチ ドまたはリボヌクレオチドのいずれかのヌクレオチドのポリマー形態、あるいは そのアナログをいう。ポリヌクレオチドは、任意の3次元構造を有し得、そして 公知または未知の何らかの機能を行い得る。以下はポリヌクレオチドの限定され ない例である:遺伝子または遺伝子フラグメント、エキソン、イントロン、メッ センジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA、リボゾームRNA、リボザイム、cDN A、組換えポリヌクレオチド、分枝ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、 任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およ びプライマー。ポリヌクレオチドには、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチ ドアナログのような改変されたヌクレオチドが含まれ得る。存在するならば、ヌ クレオチド構造に対する改変は、ポリマーの組み立ての前または後に与えられ得 る。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分によって中断され得る。ポリヌ クレオチドは、例えば、標識成分との結合によって、重合の後さらに改変され得 る。 本明細書で使用される場合、用語ポリヌクレオチドとは、交換可能に、二本鎖 分子および一本鎖分子をいう。他に指示または必要がない限り、ポリヌクレオチ ドである本明細書に記載の本発明の任意の実施態様は、二本鎖形態、および二本 鎖形態を形成することが公知または予測される2つの相補的一本鎖形態のそれぞ れの両方を包含する。 「遺伝子」とは、タンパク質をコードする配列を含む、ポリヌクレオチド、ま たはポリヌクレオチドの一部をいい得る。しばしば、遺伝子が転写を効果的に促 進するためにコード配列に作動可能に連結したプロモーターを含むことも所望さ れる。当該技術分野で周知のように(例えば、本明細書に引用した参考文献を参 照のこと)、エンハンサー、リプレッサー、および他の調節配列もまた、遺伝子 の活性を調節するために含まれ得る。 「検出可能なマーカー」遺伝子は、遺伝子を有する細胞を、特異的に検出する こと(すなわち、マーカー遺伝子を有さない細胞と区別すること)を可能にする 遺伝子である。多くの種々のこのようなマーカー遺伝子は、当該技術分野で公知 である。このようなマーカー遺伝子の好ましい例は、細胞表面に出現するタンパ ク質をコードし、それによって簡便化されたおよび迅速な検出ならびに/または 細胞ソーティングを容易にする。 「選択マーカー」遺伝子は、対応する選択剤の存在下で、遺伝子を有する細胞 を、それについてまたはそれに対して特異的に選択することを可能にする遺伝子 である。例示として、抗生物質耐性遺伝子は、宿主細胞を、対応する抗生物質の 存在下でポジティブに選択することを可能にするポジティブ選択マーカー遺伝子 として使用され得る。種々のポジティブおよびネガティブ選択マーカーは、当該 技術分野で公知であり、そのいくつかは本明細書に記載される。 ポリヌクレオチドという面において、「直鎖状配列」または「配列」は、5'か ら3'の方向のポリヌクレオチド中のヌクレオチドの順序であり、ここで配列中の 互いに隣接する残基がポリヌクレオチドの一次構造において連続している。「部 分配列」は、一方または両方の方向の追加の残基を含むことが公知であるポリヌ クレオチドの一部の直鎖状配列である。 「ハイブリダイゼーション」とは、1つ以上のポリヌクレオチドが、ヌクレオ チド残基の塩基間の水素結合によって安定化される複合体を形成するように反応 する反応をいう。水素結合は、ワトソン・クリック型塩基対、フーグスティーン 型結合によって、または任意の他の配列特異的様式で生じ得る。複合体は、二本 鎖構造を形成する2つの鎖、多数鎖複合体を形成する3つ以上の鎖、単一の自己 ハイブリダイジング鎖、またはこれらの任意の組み合わせを包含し得る。ハイブ リダイゼーション反応は、PCRの開始、またはリボザイムによるポリヌクレオチ ドの酵素的切断のようなより大規模なプロセスにおける工程を構成し得る。 ハイブリダイゼーション反応は、種々の「ストリンジェンシー」の条件下で行 われ得る。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーを増加させる条件 は、広く知られており、そして当該技術分野で刊行されている:例えば、Sambro okら(1989)以下を参照のこと。 「Tm」は、ワトソン・クリック型塩基対による逆平行方向で水素結合した相 補鎖から作成される50%のポリヌクレオチド二本鎖が、実験条件下で一本鎖に解 離する、摂氏度での温度である。Tmは、標準式に従って予測され得る;例えば : Tm=81.5+16.6 log[Na+]+0.41(%G/C)−0.61(%F)−600/L ここでNa+は、mol/Lでのカチオン濃度(通常はナトリウムイオン)であり;(% G/C)は、二本鎖中の総残基の割合としてのGおよびC残基の数であり;(%F )は、溶液中のホルムアミドのパーセント(wt/vol)であり;そして、Lは、二本 鎖の各鎖中のヌクレオチドの数である。 ヌクレオチドの直鎖状配列は、各配列中のヌクレオチドの順序が同じである場 合、別の直鎖状配列と「同一」であり、そして、置換、欠失、または物質置換が 生じない。同様の構造を有するプリンおよびピリミジン窒素含有塩基が、ワトソ ン・クリック塩基対に関して機能的に等価であり得;そして同様な窒素含有塩基 、特にウラシルおよびチミンの内部置換、またはメチル化のような窒素含有塩基 の改変が、物質置換を構成しないことが理解される。RNAおよびDNAポリヌクレオ チドは、RNAの配列がポリリボヌクレオチド中の窒素含有塩基の順序を反映し、D NAの配列がポリデオキシリボヌクレオチド中の窒素含有塩基の順序を反映し、そ して2つの配列がこの定義の他の必要条件を満たする場合、同一の配列を有する 。配列の少なくとも1つが、不明確な残基を含む縮重オリゴヌクレオチドである 場合、2つの配列は、縮重オリゴヌクレオチドの代わりの形態の少なくとも1つ が比較される配列と同一であるならば、同一である。例えば、AYAAAがATAAAおよ びACAAAの混合物であるならば、AYAAAはATAAAと同一である。 ポリヌクレオチド間で比較が行われる場合、相補鎖が容易に生成され、そして 比較されるポリヌクレオチド間の同一性の程度を最大にするセンスまたはアンチ センス鎖が、選択または予測されることが、暗に理解される。例えば、比較され るポリヌクレオチドの一方または両方が二本鎖である場合、第1のポリヌクレオ チドの一本鎖が第2のポリヌクレオチドの一本鎖と同一であるならば、配列は同 一である。同様に、ポリヌクレオチドプローブがその標的と同一であると記載さ れる場合、プローブと標的との間のハイブリダイゼーション反応に関与する標的 の相補鎖であると理解される。 ヌクレオチドの直鎖状配列は、両方の配列が、同じ相補的ポリヌクレオチドを 有する二本鎖を形成するようにハイブリダイズし得るならば、別の直鎖状配列と 「本質的に同一」である。より大きなストリンジェンシーの条件下でハイブリダ イズする配列がより好ましい。ハイブリダイゼーション反応が、ヌクレオチド配 列中の挿入、欠失、および置換を適応し得ることが理解される。したがって、ヌ クレオチドの直鎖状配列は、ヌクレオチド残基のいくつかが正確に対応または整 列しない場合でさえも、本質的に同一であり得る。本明細書中に開示された本発 明により密接に対応または整列する配列が、比較的より好ましい。一般的に、約 25残基のポリヌクレオチド領域は、配列が少なくとも約80%同一であり;より好 ましくは、配列が少なくとも約90%同一であり;より好ましくは、配列が少なく とも約95%同一であり;さらにより好ましくは、配列が100%同一である場合、 他の領域と本質的に同一である。相同部分の整列後、40残基またはそれ以上のポ リヌクレオチド領域は、配列が少なくとも約75%同一であり;より好ましくは、 配列が少なくとも約80%同一であり;より好ましくは、配列が少なくとも約85% 同一であり;さらにより好ましくは、配列が少なくとも約90%同一であり;さら により好ましくは配列が100%同一である場合、別の領域と本質的に同一である 。 ポリヌクレオチド配列が本質的に同一であるかどうかを決定するにおいて、比 較されるポリヌクレオチドの機能性を保存する配列が、特に好ましい。機能性は 、種々のパラメータによって決定され得る。例えば、ポリヌクレオチドが、別の ポリヌクレオチドとのハイブリダイズに関与する反応に使用されるべきならば、 好ましい配列は、類似の条件下で同じ標的にハイブリダイズする配列である。一 般 的に、DNA二本鎖のTmは、200以上の残基の二本鎖については配列同一性が1% 減少する毎に、約10℃減少し;あるいは、40未満の残基の二本鎖についてはミス マッチした残基の位置に依存して、約50℃減少する。一般的に、約100残基の本 質的に同一の配列は、Tmの約20℃以下で互いのそれぞれの相補的配列との安定 な二本鎖を形成し;好ましくは、この配列は15℃以下で安定な二本鎖を形成し; より好ましくは、この配列は約10℃以下で安定な二本鎖を形成し;さらにより好 ましくは、この配列は約50℃以下で安定な二本鎖を形成し;さらにより好ましく は、この配列はほぼTmで安定な二本鎖を形成する。他の実施例では、ポリヌク レオチドによってコードされるポリペプチドがその機能性の重要な部分であるな らば、好ましい配列は同一または本質的に同一なポリペプチドをコードする配列 である。したがって、保存的アミノ酸置換を引き起こすヌクレオチドの差は、非 保存的置換を引き起こす差よりも好ましく、アミノ酸配列を変化しないヌクレオ チドの差はより好ましいが、一方、同一のヌクレオチドはさらにより好ましい。 ポリペプチドに挿入または欠失を生じるポリヌクレオチドでの挿入または欠失は 、相(phase)外にする下流コード領域を生じるものよりも好ましく;挿入または 欠失を含まないポリヌクレオチド配列はさらにより好ましい。ハイブリダイゼー ション特性の相対的な重要性およびポリヌクレオチドのコードされるポリペプチ ド配列は、本発明の適用に依存する。 両方のポリヌクレオチドが、同様の最大ストリンジェンシーの条件下で特定の 第3のポリヌクレオチドと安定な二本鎖を形成し得るならば、ポリヌクレオチド は、別のポリヌクレオチドと同じ「特徴」を有する。好ましくは、類似のハイブ リダイゼーション特性の他に、ポリヌクレオチドはまた、本質的に同一のポリペ プチドをコードする。 ポリヌクレオチド配列の「保存された」残基は、比較される2つ以上の関連の 配列の同じ部分での変化を生じない残基である。比較的保存される残基は、配列 中のどこでも出現する残基よりも、より関連した配列の中で保存される残基であ る。 「関連した」ポリヌクレオチドは、同一の残基の顕著な割合を共有するポリヌ クレオチドである。 ポリヌクレオチド操作に関して使用される場合、「プローブ」とは、標的とハ イブリダイズすることによって、目的の試料中に潜在的に存在する標的を検出す るための試薬として提供されるオリゴヌクレオチドをいう。通常は、プローブは 、標識、あるいは、ハイブリダイゼーション反応の前または後のいずれかで標識 が付着され得る手段を包含する。適切な標識には、放射性同位元素、蛍光色素、 化学発光化合物、染料、および酵素を含むタンパク質が含まれるが、これらに限 定されない。 「プライマー」は、一般的に遊離の3'-OH基を有するオリゴヌクレオチドであ り、これは、標的とハイブリダイズすることによって目的の試料中に潜在的に存 在する標的に結合し、その後標的に相補的なポリヌクレオチドの重合を促進する 。 PCRまたは遺伝子クローニングのような、同じポリヌクレオチドの複製コピー を産生するプロセスは、本明細書ではまとめて「増幅」または「複製」という。 例えば、一本鎖または二本鎖DNAは、同じ配列を有する別のDNAを形成するために 複製され得る。RNAは、例えば、RNA特異的RNAポリメラーゼによって、またはDNA を逆転写し次いでPCRを行うことによって複製され得る。後者では、RNAの増幅し たコピーは、同一の配列を有するDNAである。 「ポリメラーゼ連鎖反応」(「PCR」)は、複製コピーが、1つ以上のプライ マーならびに重合の触媒(例えば、逆転写酵素またはDNAポリメラーゼ、および 特に熱安定性ポリメラーゼ酵素)を使用して、標的ポリヌクレオチドから作成さ れる反応である。一般的に、PCRは、繰り返して形成する3つの工程を包含する :「アニーリング」、ここでは、オリゴヌクレオチドプライマーが、増幅される ポリヌクレオチドとの二本鎖を形成することを可能にするように、温度が調節さ れる;「伸長」、ここでは、二本鎖を形成しているオリゴヌクレオチドが、テン プレートとしての二本鎖を形成しているポリヌクレオチドを使用して、DNAポリ メラーゼで伸長されるように、温度が調節される;および「融解」、ここでは、 ポリヌクレオチドおよび伸長されたオリゴヌクレオチドが解離するように、温度 が調節される。次いで、このサイクルを、所望の量の増幅されたポリヌクレオチ ドが得られるまで繰り返す。PCRの方法は、米国特許第4,683,195号(Mullis)お よび同第4,683,202号(Mullisら)に教示される。 「制御エレメント」または「制御配列」は、ポリヌクレオチドの機能調節に寄 与する分子の相互作用(複製(replication)、複製(duplication)、転写、ス プライシング、翻訳、またはポリヌクレオチドの縮重が含まれる)に関連するヌ クレオチド配列である。調節は、プロセスの頻度、速度、または特異性に影響を 与え得、そして現実に増強または阻害し得る。制御エレメントは当該技術分野で 公知である。例えば、「プロモーター」は、制御エレメントの一例である。プロ モーターは、ある条件下で、RNAポリメラーゼを結合し、そしてプロモーターか ら下流(3'方向)に位置するコード領域の転写を開始し得るDNA領域である。レ トロウイルス長末端反復配列(LTR)は、本明細書に記載の本発明で適切に使用 される強力なプロモーターを含む。 「作動可能に連結した」とは、遺伝子エレメントの並列をいい、ここでエレメ ントは、予測された様式で作動することを可能にする関係にある。例えば、プロ モーターの援助がコード配列の転写を開始するならば、プロモーターはコード領 域に作動可能に連結されている。この機能関係が維持される限り、プロモーター とコード領域との間の残基が介在し得る。 レトロウイルスの「gag」遺伝子とは、レトロウイルスゲノムの5'遺伝子をい い、そして群特異的抗原(group-specific antigen)の略号である。これは翻訳さ れて、前駆体ポリタンパク質を生じ、後にこれは切断されて3〜5のキャプシド タンパク質を生じる。 「pol」遺伝子とは、ポリメラーゼをコードする遺伝子をいう。したがって、p ol遺伝子は、レトロウイルス逆転写酵素をコードし、そしてまた細胞DNA中への ウイルス組込みに必要とされるINタンパク質をコードする。 レトロウイルスゲノムの「env」すなわちエンベロープ領域は、エンベロープ タンパク質をコードする。本発明の目的で、「env」遺伝子は、ウイルスからの 天然に存在するenv配列だけでなく、レトロウイルスの標的特異性を変化させる ために改変されるenv遺伝子あるいは「偽型(pseudotyped)」レトロウイルスを生 成するために使用される代わりのenv遺伝子のような、env遺伝子に対する改変も 含むものである。本発明での使用に好ましいenv遺伝子には、両種向性env、マウ ス他種向性env、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)env、およびVSV-Gタンパク 質コード遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。 用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、任意の長さ のアミノ酸のポリマーをいうために、本明細書では交換可能に使用される。ポリ マーは、直鎖状または分枝状であり得、改変したアミノ酸を含み得、そして非ア ミノ酸によって中断され得る。この用語はまた、改変されているアミノ酸ポリマ ーを含み得る;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質形成、アセ チル化、リン酸化、または標識成分との結合のような任意の他の操作。 ポリペプチドの「生化学的機能」または「生物学的活性」には、適切な実験的 研究によって検出可能なポリペプチドの何らかの特徴を含む。「変化した」生化 学的機能は、例えば、分子量決定、円二色性、抗体結合、差分光学、または核磁 気共鳴によって検出可能なポリペプチドの一次、二次、三次、または四次構造の 変化をいい得る。ある反応を触媒する能力、あるいは、補因子、基質、インヒビ ター、薬物、ハプテン、または他のポリペプチドを結合する能力などの、反応性 の変化もいい得る。物質は、これらの方法のいずれかにおいてポリペプチドの生 物学的機能を変化するならば、ポリペプチドの生物学的機能に「妨害する」とい い得る。 「融合ポリペプチド」は、天然に生じるよりも異なる配列中の位置に領域を含 むポリペプチドである。この領域は、正常には別々のタンパク質に存在し得、そ して融合ポリペプチド中に一緒にもたらされるか;あるいは、正常には同じタン パク質中に存在し得るが、融合ポリペプチドの新しい配置に置かれる。融合ポリ ペプチドは、例えば、化学合成によって、あるいはペプチド領域が所望の関係で コードされるポリヌクレオチドを生成および翻訳することによって、生成され得 る。 「単離された」ポリヌクレオチド、ポリペプチド、タンパク質、抗体、核酸、 オラシド(oracid)、または他の物質とは、物質または同様の物質が天然に存在す るかまたは供給源混合物から富化するための精製技法である場合にもまた存在し 得る、少なくともいくつかの他の成分が全くない物質の調製物をいう。富化は、 溶液の容量当たりの重量のような絶対ベースで測定され得、あるいは、供給源混 合物中に存在する第2の潜在的な妨害物質に関して測定され得る。物質はまた、 例えば、化学合成または組換え発現によって、人工的アセンブリのプロセスによ って単離された状態で提供され得る。 ハイブリダイゼーション反応に使用されるプローブ、PCRに使用されるプライ マー、または薬学的調製物に存在するポリヌクレオチドのような、反応に使用さ れるポリヌクレオチドは、代わりの物質との反応よりもより頻繁に、より迅速に 、またはより長期間、目的の標的とハイブリダイズまたは反応するならば、「特 異的」または「選択的」という。同様に、ポリペプチドは、代わりの物質への結 合よりもより頻繁に、より迅速に、またはより長期間、目的の標的(例えば、リ ガンド、ハプテン、基質、抗体、または他のポリペプチド)を結合するならば、 「特異的」または「選択的」という。抗体は、代わりの物質への結合よりもより 頻繁に、より迅速に、またはより長期間、目的の標的に少なくとも1つの抗原認 識部位を介して結合するならば、「特異的」または「選択的」という。ポリヌク レオチド、ポリペプチド、または抗体は、代わりの物質間の反応を阻害または妨 害するよりもより大きな程度またはより長期間、特定の物質間の反応を阻害また は妨害するならば、反応を「選択的に阻害する」または「選択的に妨害する」と いう。 「細胞株」または「細胞培養物」は、インビトロで増殖または維持された高等 真核生物細胞を示す。細胞の子孫が、親細胞と完全に同一(形態学的に、遺伝子 型的に、または表現型的にのいずれか)であり得ないことが理解される。 本明細書で使用される用語「霊長類」とは、哺乳動物種の最も高等な目の任意 のメンバーをいう。これは、キツネザルおよびロリスのような原猿類;メガネザ ルのようなtarsioids;リスザル(Saimiri sciureus)およびタマリンのような 新世界サル;マカク(Macaca nemestrina、Macaca fascicularis、およびMacaca fuscataを含む)のような旧世界サル;テナガザルおよびフクロテナガサルのよ うなテナガザル類(hylobatids);オラウータン、ゴリラ、およびチンパンジーの ような類人猿;およびヒトを含む人類を含む(しかしこれらに限定されない)。 「平均滞留時間」は、培養培地が産生相の間にプロデューサー細胞と接触した ままである時間の平均量である。最適平均滞留時間は、以下の考慮によって決定 される:1)細胞特異的ベクター産生速度;2)ベクター不活性化速度;3)細胞 特異的栄養取り込み速度;4)細胞特異的代謝物産生速度;5)温度;6)容量細 胞密度;および7)ベクター上清が意図される標的細胞。1×106細胞/mlの容 量プロデューサー細胞密度であるとすると、最適平均滞留時間は、PA317-ベース の培養物で3〜6時間の範囲であり;ProPak-A-ベースの培養物では6〜12時間 ;およびProPak-XまたはPG13-ベースの培養物では12〜24時間である。これらの 平均滞留時間は、細胞株の最大形質導入に基づく。 実施態様の説明 本発明は、レトロウイルスベースのベクターおよびレトロウイルスベクター上 清を産生し得る、安全な組換えレトロウイルスパッケージング細胞を得る方法を 提供する。この方法は、レトロウイルスenvおよびgag-pol遺伝子産物の組換え産 生のためのレトロウイルスenvおよびgag-polオリゴヌクレオチド配列を提供する レトロウイルスを選択する工程、および内因性の関連するレトロウイルス核酸ま たは同じレトロウイルス型のオリゴヌクレオチドを含まない真核生物細胞を得る 工程を包含する。任意のレトロウイルスが本発明の方法で適切に使用され得るが 、マウス白血病ウイルス(MLV)の使用が現在記載されている。したがって、gag 、pol、またはenv遺伝子のいずれかがMLVに由来すべきであるならば、候補パッ ケージング細胞は、内因性MLVレトロウイルス核酸、および複製コンピテントレ トロウイルスを組換えによって産生するMLVに密接に関連した配列の不在につい てスクリーニングされるべきである。 env遺伝子産物は、組換えレトロウイルス粒子の標的細胞特異性を決定し、そ れゆえ、目的の標的細胞の最適形質導入を提供するように選択される。Envは、M LV両種向性Envあるいは感染性「偽型」レトロウイルス粒子を形成するために組 み合わせ得る任意のエンベロープであり得る。例えば、MLV両種向性およびマウ ス他種向性レトロウイルスベクターは、ヒト細胞を形質導入することが公知であ る。目的の他のenv遺伝子には、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、RD114、Fe LV-C、FeLV-B、BLV、およびHIV-1からのenv遺伝子が含まれる。PCT公表公報第WO 92/14829号(25頁1行〜34頁1行)を参照のこと。さらに、env遺伝子は、目的 の標的細胞に対して組換えレトロウイルスをより特異的に標的化するように改変 され得る。例えば、Envタンパク質は、目的の標的細胞の細胞表面抗原に特異的 な抗体結合部位(例えば、造血幹細胞および始原細胞への標的化のための抗CD34 抗体)との組み合わせによって改変され得(Cossettら(1995)J.Virol.69:63 14-6322およびKasaharaら(1994)Science 266:1373-1376)る。env遺伝子はま た、例えば、両種向性および他種向性レセプターの両方にまたは細胞上の独特の レセプターに結合し得るキメラenvを構築することによって、ウイルスの細胞向 性を広げるように改変され得る。1つの実施態様では、キメラ両種向性/他種向 性エンベロープ遺伝子であるEaxを、実施例6および7に記載のように構築した 。Eaxエンベロープを有するベクター粒子は、2重の細胞向性を提示しており、 したがって、標的細胞のより広い範囲を形質導入する。 臨床的遺伝子治療適用については、レトロウイルスベクター配列および構造遺 伝子配列が、複製コンピテントレトロウイルス(RCR)を形成するための組換え を最小にするように設計されることが重要である。gag-polおよびenv遺伝子配列 を別々にパッケージング細胞に導入し、パッケージング細胞ゲノムの種々の領域 に組み込むすることによって、複数の組換え事象がRCRを生成するために必要と されるので、RCR形成の速度は減少する。それにも関わらず、RCRは、組換えレト ロウイルスベクター調製物中にときどき見いだされる。1つの可能性のある理由 は、最も普通に使用されるパッケージング細胞株の基礎になる、マウス細胞(NI H/3T3)中の内因性レトロウイルス配列の存在であり、これは、導入されたレト ロウイルス配列と組換え得る。したがって、本発明の安全なパッケージング細胞 は、導入されたレトロウイルス配列との組換えによってRCRを産生し得る内因性 レトロウイルス配列を欠く真核生物細胞株から生成される。 したがって、1つの実施態様では、本発明のパッケージング細胞は、MLVに関 連する検出可能な内因性レトロウイルス配列を有さない細胞株に由来する。さら に、本明細書中の実施例に記載のように、細胞株は、好ましくは、Gag-Polおよ びEnvタンパク質を安定に分泌しそして高い終点力価のみを産生するよりも標的 細胞を効果的に形質導入する能力についてスクリーニングされる。好ましくは、 真核生物細胞株は、非マウス細胞株であり、より好ましくは霊長類細胞株であり 、そして最も好ましくはヒト細胞株である。本発明者らは、ヒト293細胞がMLVに 関 連するレトロウイルス配列を含まず、そして安定なパッケージング細胞の基礎と して使用される場合、高い形質導入効率のレトロウイルスベクターを産生し得る ことを見いだした。 関連のレトロウイルス核酸を含まない細胞は、当業者に周知のおよび以下に例 示する方法を使用して、内因性レトロウイルス核酸について候補細胞をスクリー ニングすることによって得られる。例えば、Mus dunni尾線維芽細胞(Landerお よびChattopadhyay(1984)J.Virol.52:695-698を参照のこと)のようないく つかの利用可能な細胞株は、報告によれば、内因性レトロウイルス核酸を含まず 、したがって、本明細書に開示された方法で適切に使用される。あるいは、当業 者は、細胞株が、候補細胞株からの核酸試料を単離し、そして、伝統的なサザン およびノーザンハイブリダイゼーション分析、またはレトロウイルス特異的プロ ーブおよび利用可能な場合は市販のPCRキット(Invitrogen,San Diego,CA)を 使用するポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)のような方法を使用して、内因性DNA またはRNAについてプローブすることによって、内因性レトロウイルス核酸を含 むかどうかを決定し得る。サザンおよびノーザンハイブリダイゼーシヨン分析は 、例えば、Sambrookら(1989)以下に記載される。PCR方法は、Gene Expression Technology ,Goeddelら編,Academic Press,Inc.New York(1991)に記載され る。500mMナトリウムイオンの低いストリンジェンシー条件でさえハイブリダイ ゼーションが検出されない場合、あるいはPCR分析に使用されたプライマーが増 幅核酸を提供しない場合、細胞は、内因性の関連するレトロウイルス核酸を含ま ない。好ましくは、ウイルスLTR、パッケージング配列、およびgag-pol遺伝子領 域に及ぶ高度に保存された配列が、プローブとして使用される。 候補真核生物細胞は、細胞株が内因性レトロウイルス配列を欠き、培養で良好 に増殖し、適切なgag-polおよびenv発現構築物でトランスフェクトまたは形質導 入され得、そしてウイルスタンパク質を発現し得るならば、任意の適切な型、す なわち、マウス、非マウス、哺乳類、霊長類、イヌ、およびヒトの細胞である。 候補細胞株は、好ましくは霊長類であり、そして最も好ましくはヒトである。霊 長類および好ましくはヒトベースのパッケージング細胞が、ヒト補体に耐性のレ トロウイルスベクターを産生するために使用され得ることが見い出されている。 さらに、この方法は、RCRを産生するための組換えの機会をさらに減少させる ために最小のgag-polおよびenv配列を使用する工程をさらに包含する。最小gag- polオープンリーディングフレーム(ORF)および最小env ORFは、選択されたレ トロウイルスから得られる。レトロウイルス配列の最小ORFは、隣接する配列を 有さない、遺伝子のATGから停止コドンまでのレトロウイルス配列のみを含むよ うに定義される。機能的タンパク質が、候補パッケージング細胞株に導入される 場合に産生されるならば、遺伝子のフラグメントおよびその生物学的等価物もま た使用され得る。1つの実施態様では、最小gag-polおよびenv ORFをコードする 単離されたレトロウイルス核酸が、使用のために選択される。好ましい実施態様 では、核酸は、MLVから選択され、そして最小配列は、約621〜5837(gag-pol) (Shinnickら(1981)からの番号付け)および約37〜2000(env)(Ottら(1990) からの番号付け)のヌクレオチドからなるように決定される。これらのヌクレオ チド位置は、種々のMLVで変化する。必ずしも明確に述べられないが、核酸配列 または「等価」である分子が、本明細書中に記載の単離された最小ORFと同じ表 現型効果を生じるように決定され、本明細書中に記載の方法で最小ORF配列とし て利用され得ることが、理解されるべきである。例えば、変化したが表現型的に 等価な核酸分予は「等価な核酸」といわれる。 最小gag-polおよびenv ORF核酸分子は、以下に記載の実験の項に記載の技法を 使用して単離され得るか、またはPCR(Perkin-Elmer)および公表された配列情 報を使用して複製され得る。例えば、配列は、オリゴヌクレオチドの合成と組み 合わせて、DNA配列の容易な再生を可能にするPCR(Perkin-Elmer)によって複製 され得る。PCR技法は、米国特許第4,683,195号、第4,800,159号、第4,754,065号 、および第4,683,202号の主題であり、そしてPCR: The Polymerase Chain React ion Mullisら編,Birkhauser Press,Boston(1994)に記載され、参考文献は本明 細書に引用される。当業者に明らかなように、ウイルス配列に対する改変および /または付加は、増幅されたDNAの単離および発現を容易にするために作成され る。 両種向性および他種向性細胞株がこの方法によって産生されそしてenv遺伝子 の選択によって決定されると考えられる。したがって、gag-polおよびenv遺伝子 の選択は、同じウイルスまたは同じウイルスタイプからの単離に制限されない。 この方法によって産生される両種向性産生パッケージング細胞株の1例は、ProP ak-Aであり、そしてまたこの方法によって産生される他種向性パッケージング細 胞の1例は、ProPak-Xである。 したがって、本発明は、RNA転写のプロモーターに作動可能に連結した単離さ れた遺伝子、ならびにDNAの複製および/または一過性もしくは安定な発現のた めの他の調節配列をさらに提供する。RCRの機会を最小にするために、外来ウイ ルス配列を使用して避けることが好ましい。用語「作動可能に連結した」は、先 に定義されている。 プロモーターは、最小MLV-LTRであり得、そして好ましくはレトロウイルス遺 伝子に「異種性」である。適切なプロモーターは、gag-polおよびenvの安定な高 レベルの発現を誘導するものである。適切なプロモーターの例には、サイトメガ ロウイルス即時初期(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)LTR、マ ウスモロニー白血病ウイルス(MMLV)LTR、または他のウイルスLTR配列を含むが 、これらに限定されない。終止コドンおよび選択マーカー配列、ならびにDNAの 挿入片がそのプロモーターに作動可能に連結され得るクローニング部位とともに 、プロモーターまたはプロモーター/エンハンサーを含むベクターおよびプラス ミドは、当該技術分野で周知であり、そして市販されている。RCR形成の機会を 最小にするために、gag-polおよびenv遺伝子は、好ましくは別々の発現プラスミ ドに導入され、そしてこのプラスミドは、その後真核生物宿主細胞に導入される 。プラスミド増幅では、細菌宿主細胞は、約28℃〜約32℃の範囲の温度で、そし てより好ましくは約30℃で繁殖され、プラスミドで行われるウイルス配列の組換 えを抑制しそしてプラスミドの完全性を維持する。 次いで、レトロウイルスgag-polおよびenv遺伝子を含む別々の発現プラスミド は、リン酸カルシウム沈降法、エレクトロポレーション、およびリポフェクショ ン(Sambrookら(1989)前出)のような当業者に周知の技法によって、別々の連 続した工程で、候補パッケージング細胞中に導入される。挿入技法はまた、標的 細胞ゲノムの特異的部位を認識する改変されたインテグラーゼ酵素の使用を包含 し得る。このような部位特異的挿入は、挿入変異誘発の機会を最小にし、他の宿 主細胞配列からの妨害を最小にし、そして望ましくない遺伝子の発現を減少また は排除するように特異的標的部位に配列を挿入させる、宿主細胞のDNA上の部位 に、遺伝子を挿入させる。 gag-polおよびenv遺伝子の導入は、いずれかの順で行われ得る。gag、pol、お よびenv遺伝子の挿入および組み込みの後、細胞は、レトロウイルス遺伝子発現 についてスクリーニングされる。抗生物質耐性のような選択マーカー遺伝子が、 レトロウイルス配列との組み合わせて使用されるならば、集団は、抗生物質の存 在下で候補細胞を増殖させることによって、選択マーカー(およびそれゆえレト ロウイルス遺伝子)を発現するために細胞について富化され得る。生存および増 殖する細胞は、抗生物質耐性遺伝子およびレトロウイルス配列の両方を含む。さ らに、発現された配列の産物に対する適切な抗体を用いるELISAは、細胞がレト ロウイルス遺伝子を含みそして発現するかどうかおよびどの程度発現するかを決 定するための、簡単および迅速なアッセイである。 したがって、本発明はまた、組換え形質導入レトロウイルスベクター粒子を産 生し得るレトロウイルスパッケージング細胞を同定するために、候補パッケージ ング細胞中のレトロウイルス遺伝子の発現についてスクリーニングするためのEL ISA方法を提供する。特に、ELISAは、Gag、Pol、およびEnvのようなレトロウイ ルス構造タンパク質の産生についてスクリーニングするために使用される。本発 明のELISA方法はまた、遺伝子治療を受けている患者における診断的使用を有す る。 1つの特定の実施態様では、Envタンパク質は、タンパク質を捕獲するために 、一次抗体としてハイブリドーマ83A25からの抗体を使用して、サンドイッチELI SAアッセイで検出される。次いで、捕獲されたタンパク質は、二次抗体として抗 血清79S-834を、次に酵素結合した抗種抗体および酵素に対する基質を使用して 検出される。同様に、Gagは、一次抗体としてハイブリドーマR187からの抗体を 、次いで抗血清77S-227、酵素結合した抗種抗体、および酵素基質を使用して、 別々に検出される。一次抗体は、ハイブリドーマ培養上清、腹水、または精製抗 体の形態で提供され得る。抗種抗体は、好ましくは、酵素のような標識に結合さ れる。適切な酵素には、西洋ワサビペルオキシダーゼおよびアルカリホスファタ ーゼが含まれる。特定の酵素に適切な基質が使用される。ELISAアッセイのこの 特定の実施態様は、以下の実施例に詳細に記載される。 好ましくは、候補パッケージング細胞株は、高形質導入効率を有するベクター 上清を産生する能力についてさらにスクリーニングされる。形質導入効率は、ベ クター上清が標的細胞集団を形質導入する能力によって測定される。標的細胞集 団は、ヒト293細胞、NIH/3T3細胞、または初代細胞であり得る。 本発明はまた、上記の方法によって得られる組換えパッケージング細胞を提供 する。適切なレトロウイルスベクターで形質導入されそして増殖した場合、本発 明の細胞株は高形質導入効率を有するレトロウイルス力価を生じるので、組換え パッケージング細胞株は従来技術のパッケージング細胞株よりも改良体である。 したがって、本発明の細胞株は、ヒト相補物に耐性であるウイルス上清を産生す ることによって特徴づけられ;高形質導入効率を有し;そして2週以上および少 なくとも12週までの連続培養後にRCRを実質的に含まない。本明細書で使用さ れる場合、「形質導入効率」とは、ベクターでマークされている接種された標的 細胞集団の割合をいう。遺伝子マーキングは、プロウイルスベクターを組み込ん だ細胞の画分を決定することによって(例えば、PCRによって)あるいはトラン ス遺伝子を発現する細胞の画分を決定することによって(例えば、FACS分析によ って)測定され得る。高形質導入効率を有する組換えレトロウイルス調製物(例 えば、上清または上清濃縮物)は、ウイルスベクターでマークされた接種された 標的細胞の増加した割合を生じる。本発明のパッケージング細胞は、NIH/3T3細 胞でアッセイされた場合、および特にヒト293または初代細胞でアッセイされた 場合、標準マウスPA317細胞よりも高形質導入効率を可能にする組換えレトロウ イルス上清を産生し得る。この分析を行うために適切な試薬および方法は、以下 の実験の項に提供される。 上記の方法に従って産生された新規なパッケージング細胞を、プロデューサー 細胞を生成するために適切なレトロウイルスベクターで形質導入する工程を包含 する、レトロウイルスベクター上清を産生する方法も、本明細書に提供される。 本発明はさらに、このように産生されたレトロウイルス上清を提供する。宿主細 胞に送達されるべき目的の遺伝子の他に、レトロウイルスベクターは、レトロウ イルスベクター核酸を組換えパッケージング細胞株でベクター粒子中にパッケー ジすることを可能にする「パッケージングシグナル」、ならびにベクター核酸を 標的細胞ゲノム中に効果的に組み込むことを可能にする長末端反復を含む。LTR は、プロウイルス核酸のいずれかの末端に位置し、そしてまた、一般的に、目的 の治療またはマーカー遺伝子の発現に影響を及ぼすプロモーター/エンハンサー のような調節配列を含む。目的の1つまたは複数の遺伝子はまた、構成的、細胞 タイプ特異的、期特異的、および/または調節可能であり得る適切なプロモータ ーに作動可能に連結され得る。他のウイルスからのようなエンハンサーも含まれ 得る。 別の実施態様では、レトロウイルスベクターは、形質導入された細胞の単離を 容易にする選択可能および/または検出可能なマーカーをコードする遺伝子を含 み得る。他の実施態様では、レシピエント細胞を随意に選択的に排除させる「自 殺遺伝子」を含むベクターが望ましくあり得る。このようなマーカーおよび自殺 遺伝子の単離、挿入、および使用は、PCT公報第WO 92/08796号および第WO 94/28 143号に例示されるように当業者に周知である。 レトロウイルスベクターでの遺伝子移入(形質導入)効率を改良するための従 来の方法は、しばしば、終点力価を増加させることに焦点を当てた。本明細書で 示される証拠は、終点力価と形質導入効率との間の相関関係を支持しない。本明 細書で示される証拠はまた、非形質導入粒子が、形質導入するビリオンを妨害し 、そして終点力価を減少させることなく形質導入効率を減少させるので、終点力 価を増加させることが、形質導入効率を必ずしも増加させるという結論を支持し ない。実際に、この証拠は、パッケージング細胞株クローンが、終点力価よりも むしろ形質導入効率に基づいて上清を生成する能力についてスクリーニングされ るべきことを示す。 したがって、本発明はさらに、遺伝子治療により適切であるより高形質導入効 率を有するレトロウイルスベクター上清を産生する方法を提供し、これは、約5 〜50cm2/mlの表面対容量比を有する充填層バイオリアクター中でプロデューサー 細胞を培養する工程、30℃付近〜約37℃の温度でプロデューサー細胞集団を培養 する工程、および上清の形質導入効率が標的細胞に最適であるような時間にこの プロデューサー細胞によって産生された上清を採取する工程を包含し、それによ って高形質導入効率上清を得る。 本明細書で使用される場合、充填層バイオリアクターとは、閉じこめられた3 次元空間で細胞が増殖する層マトリクス(bed matrix)を含む細胞培養容器をいう 。リアクター容量サイズ、および充填層マトリクスの容量は、必要とされるレト ロウイルス上清の量に依存して変化し得る。 充填層を含むマトリクスは、以下の特性を有する: 1)マトリクスは、足場依存性細胞の付着および増殖を可能にする物質から作 成される。物質はまた、この質を達成するために表面コーティングまたは表面処 理され得る;2)マトリクスは、3次元空間に細胞を閉じこめるように、懸濁液 中で正常に培養された細胞を捕獲し得る;3)マトリクスは、大きな表面積対容 量比(5〜50cm2/ml)を有し、細胞が高い容量密度(106〜108細胞/ml)まで増 殖することを可能にする。この特性は、高い容量ベクター産生を確実にする。特 定の実施態様では、表面対容量比は、約20〜約30cm2/mlであり、好ましくは約24 cm2/mlである;4)マトリクスは、操作中に層にわたる圧力低下を最小にするよ うにパックされる場合、大きなボイドボリュームを有する。無視してよい圧力低 下は、層全体を通して細胞への栄養の均等な供給を確実にする。 バイオリアクターは市販されており、そして層マトリクスは別々にパックされ 得る。好ましくは、層マトリクスは、層マトリクスにわたる圧力低下が0〜0.25 mbar/cmの範囲にあるように構築される。理想的には、圧力低下は無視してよい 。 任意のレトロウイルスプロデューサー細胞株が充填層バイオリアクター中で培 養され得ることが意図される。しかし、上記の方法に従って産生されたパッケー ジング細胞株に由来するプロデューサー細胞は、特に、レトロウイルスベクター 上清を産生するためのこの方法における使用に十分に適切である。このような細 胞には、3T3または293細胞に由来するプロデューサー細胞が含まれるが、これら に限定されない。3T3および293ベースのプロデューサー細胞株の例は、PA317、G P-Am12、CRIP、PG13、ProPak-A、およびProPak-Xパッケージング細胞株に基づく 細胞である。 プロデューサー細胞を充填層リアクター中に播種した後、細胞は、30℃〜37℃ の範囲の温度で培養され得る。好ましくは、細胞は、最大細胞増殖を可能にする ために37℃で最初に培養される。一旦培養物が高い細胞密度(106細胞/mlまたは それ以上)を達成すると、温度は、熱不活性化による形質導入ベクターの喪失を 最小にするために、産生相の間32℃まで低下させ得る。産生相について選択され る温度は、以下の変数に依存する:細胞特異的ベクター産生速度の温度差;所定 の温度でのベクター不活性化の速度;細胞密度;および容器が新鮮培地で灌流さ れる速度。 最適形質導入効率を得るためにレトロウイルス上清を採取する時間は、プロデ ューサー細胞の親細胞タイプと共に変化する。「平均滞留時間」および「形質導 入効率」は、上で定義される。レトロウイルス上清についての最適形質導入効率 とは、テストした培養条件下で得られる、ウイルスベクターでマークされる、接 種された標的細胞集団の最高の割合をいう。プロデューサー細胞がPA317細胞に 由来するならば、プロデューサー細胞が少なくとも106細胞/mlの細胞密度に達す る時間から開始して2〜12時間の平均滞留時間の後、上清が採取され得る。ヒト 293由来プロデューサー細胞について、上清は、1〜24時間、通常は6〜24時間 の平均滞留時間の後に採取される。平均滞留時間は、細胞密度が増加するにつれ て減少され得る。 充填層バイオリアクターは、流加(fed-batch)または灌流モードで操作され得 る。流加操作とは、異なる時間間隔で培養培地の一部またはすべての交換をいう 。灌流モードとは、ベクター上清が連続的に採取される速度に等しい特定の灌流 速度での、新鮮培地の継続的供給をいう。より安定な培養環境を維持し、プロデ ューサー細胞でのストレスが少なくなるので、灌流モードの操作が好ましい。プ ロデューサー細胞株および容量細胞密度に依存して、最適灌流速度は、1リアク ター容量/日〜24リアクター容量/日で変化し得る。好ましくは、灌流速度は、 2〜12リアクター容量/日、さらにより好ましくは2〜6リアクター容量/日、 および最も好ましくは約4リアクター容量/日の一定速度である。最も好ましい 実施態様では、灌流速度は、細胞密度に比例して増加する。細胞密度は、栄養消 費、代謝産物によって間接的に、または好ましくは酸素取り込みによってモニタ ーされ得る。所定の容量細胞密度での所定のプロデューサー細胞株についての最 適灌 流速度は、標的細胞集団の最大形質導入効率を得るベクター上清を産生するため に必要とされる、培養培地の平均滞留時間を決定することによって確立される。 細胞培養条件および上記のパラメータはまた、非マウス由来のプロデューサー 細胞から、高形質導入効率を有するレトロウイルス上清を産生する方法に適用さ れる。充填層バイオリアクター中に播種した後、細胞は、37℃または32℃で連続 的に培養され得る。あるいは、細胞はまず、細胞がコンフルエントな単層を生じ るまで37℃で培養され、そしてその後32℃で培養される。上記の方法に従って産 生される非マウスパッケージング細胞株に由来するプロデューサー細胞は、ベク ター上清を得るためのこの方法における使用に特に適切である。このような細胞 には、293細胞、HT1080細胞、およびD17細胞に由来するプロデューサー細胞が含 まれるが、これらに限定されない。1つの特定の実施態様では、非マウスプロデ ューサー細胞は、293細胞に由来し、そしてレトロウイルス上清は、プロデュー サー細胞が少なくとも106細胞/mlの細胞密度に達する時間から開始して6〜24時 間の平均滞留時間の後、採取される。 充填層バイオリアクター中で最大プロデューサー細胞密度を達成するために、 容器の適切な通気が重要である。十分な酸素輸送とともに、より高い形質導入効 率を有する上清が得られることが注目されている。20%より多く、好ましくは20 %と約60%との間の空気飽和を提供する通気条件は、効果的なベクター産生を達 成するために必要である。40%より多い空気飽和を提供する通気条件が、最も好 ましい。 当業者は、市販の基本培地を使用しそして当該技術分野で提供されるような培 地を補充して、細胞に最も適切な培養培地を容易に決定し得る。細胞は、ウシ胎 児血清(FBS)を補給した培地中で培養され得、そしてベクター上清はFBSの存在 下で産生される。しかし、臨床使用については、無血清培地が好ましい。これを 達成するために、細胞は、まず、FBSを補給された培地中充填層バイオリアクタ ーで広げられそして増殖され、そして血清を含まないベクター上清の産生のため に無血清培地処方物に交換される。最も好ましくは、細胞が培養され、そしてベ クター上清が、血清を含まないマスター細胞バンクに由来する細胞で開始する無 血清培地で産生される。 開示された方法はまた、充填層バイオリアクター中に霊長類プロデューサー細 胞を播種することによって、高形質導入効率を有するレトロウイルスベクター上 清を産生するために利用され得る。適切な霊長類プロデューサー細胞には、293 細胞、ProPak-A、およびProPak-X細胞に由来する細胞を含む。プロデューサー細 胞が293細胞に由来する場合、リアクター中の培養培地の平均滞留時間が、プロ デューサー細胞が少なくとも106細胞/mlの細胞密度に達した時間から開始して約 6〜24時間であるときに、レトロウイルス上清を採取することが好ましい。 本発明はさらに、遺伝子治療に適切な高形質導入効率のMLVベースのレトロウ イルス上清を得る方法を提供し、これは、上記の条件下でヒト由来のプロデュー サー細胞を培養する工程を包含する。ヒト由来のプロデューサー細胞は、約5〜 50cm2/mlの表面積対容量比を有する充填層バイオリアクター中に、約2〜3×104 細胞/cm2から開始する濃度で、一定の灌流にて、約20%〜60%空気飽和、好ま しくは40%以上の空気飽和で培養培地を維持するために十分な通気で播種される 。細胞は、少なくとも106細胞/mlの細胞密度に増殖するまで、約37℃の温度で培 養され、その後次いで温度は32℃に低下させる。次いで、レトロウイルス上清を 、インキュベーション時間のさらに6〜約24時間後に集める。この方法に有用な ヒト細胞には、293細胞、HT1080細胞、ProPak-A細胞、およびProPak-X細胞に由 来する細胞を含むが、これらに限定されない。 レトロウイルスベクター上清を産生する本発明の方法はまた、上記の条件下で 2つ以上のプロデューサー細胞株を共培養する工程を包含する。この状況では、 充填層バイオリアクターは、好ましくは同じベクターを含みそして相補向性を有 する、2つ以上の異なるプロデューサー細胞株、例えば、ヒト両種向性および他 種向性パッケージング細胞株に由来するプロデューサー細胞で、播種される。こ の共培養技法は、プロデューサー細胞内のベクターコピー数の増幅を生じ、そし てほとんどのヒト細胞で発現されるレセプターを区別するために標的化されたレ トロウイルスベクター粒子の混合物を含むベクター上清を得る。 本明細書に記載の方法によって産生される培養上清はまた、本発明の範囲内で ある。上清は、細胞を形質導入することが示されており、そして特に、幹細胞は 非常に効果的である。 形質導入の前に、幹細胞は単離および選択される。細胞を単離および選択する 方法は当該技術分野で周知である。例えば、成人骨髄(ABM)または動員化末梢 血(MPB)のいずれかからの分類されたCD34+Thyl+Lin-細胞が使用される。CD34+ Thyl+Lin-は、ヒト造血幹細胞中で非常に富化される。米国特許第5,061,620号を 参照のこと。 種々の方法が、幹細胞を単離するために使用され得る。ABMから幹細胞を調製 する1つの方法を説明する目的のために、20mLの新鮮骨髄を、正常ヒトボランテ ィアからの腸骨稜の吸引によって単離し得る。骨髄を、Ficoll-Perque分離後の 単核細胞画分を採ることによって分離し、Sutherlandら(1992)Exp.Hematol. 20:590に記載の方法に従ってCD34+細胞についてポジティブ選択する。簡単にい えば、細胞を、5×107細胞/mLにて、染色緩衝液(SB)(10mM HEPES、2%熱不 活性化FCSを含むHBSS)で再懸濁する。QBEND10(抗CD34)(Amac,Westbrook,M E)を、1/100希釈に添加し、次いで細胞を、30分間氷上でインキュベートする。 次いで、細胞を、FCS下層とともにSBで洗浄し、そしてSB中4×107/mLに再懸濁 する。等量の洗浄したDynalヒツジ抗マウスIgG1Fc磁性ビーズ(Dynal,Oslo,No rway)を、1:1のビーズ対細胞比で添加して、2×107細胞/mLの最終細胞濃度を 得る。穏やかな転倒での氷上で30分のインキュベーション後、チューブを、Dyna lマグネット(Dynal)に対して2分間置き、そしてCD34-細胞を除去した。2回 の洗浄後、20mLの「グリコプロテアーゼ」(O-シアロ糖タンパク質エンドペプチ ダーゼ,Accurate Chemical,Westbury,New York)+180mLのRPMI(JRH Biosci ences)/20%FCSを添加して、そしてビーズを37℃にて30分間インキュベートし て、QBEND10エピトープを切断し、そしてビーズからCD34+細胞を放出する。次い で、ビーズを3回洗浄して細胞回収を最大にする。ポジティブ選択手順における 放出工程に使用されるグリコプロテアーゼは、その後の前駆体のエクソビボ拡張 に影響がないことが示された(Marshら(1992)Leukemia 6:926)。 動員化末梢血(MPB)サンプルは、複数の骨髄腫患者からのインフォームドコ ンセントとともに得られ得る。患者に、6g/m2(3時間毎に1.5g/m2×4用量) にてシクロホスファミドで1日目の処置をする。1日目から白血球フェレーシス (leukopheresis)の開始(通常10〜28日)まで、顆粒球マクロファージコロニー 刺激因子(GM-CSF)が、0.25mg/m2/日で投与される。末梢血白血球数が500細胞/ mlより大きくそして血小板数が50,000細胞/mlよりも大きい場合、総白血球のア フェレーシスを開始する。患者は、6×108単核細胞(MNC)が収集されるまで毎 日アフェレーシスする。 次いで、新鮮MPBサンプルを、Sandersonチャンバー(Beckman,Palo Alto,CA )を装着したJE5.0 Beckmanカウンターフロー溶出機で溶出する。細胞を、0.5% ヒト血清アルブミン(HSA)を補給した、pH 7.2の溶出培地(Biowhittaker,Wal kersville,MD)に再懸濁する。ローター速度を2000RPMにセットし、細胞を導入 し、そして第1の画分を9.6ml/分の流速で集める。画分2および3を、それぞれ 14および16ml/分の流速で集める。チャンバー中に残るより大きな細胞を、ロー ターの停止後に集める。細胞を、5%HSA、10mg/ml DNAse I、およびそれぞれ50 U/mlおよび50mg/mlのペニシリン/ストレプトマイシンを補給したRPMIで再懸濁 する。画分2および3をプールし、そして非特異的Fc結合をブロックするために 、1mg/mlの熱不活性化したヒトγ-グロブリンとともにインキュベートした。顆 粒球を、磁性ビーズ(Dynal M450,Oslo,Norway)に結合したCD15とのインキュ ベーション次いで磁性選択によってさらに枯渇させる。 CD34+Thyl+Lin-細胞を、以下のようにフローサイトメトリーによってABMおよ びMPBから単離する。CD14およびCD15に対する抗体を、Becton-DickinsonからのF ITC結合体として得た。Thy-1(GM201)に対する抗体は、市販のソースから得ら れ得るか、または調製され得、そしてカタログからの抗IgG1-PE結合体で検出さ 体(Southern Biotechnologies)で検出され得る。 抗CD34抗体またはIgG3イソタイプ適合コントロールを、5μg/mlでの抗Thy-1 抗体とともに、氷上で20分間染色緩衝液(HBSS、2%FCS,10mM HEPES)中の細 胞に添加する。細胞をFCS下層で洗浄し、次いでTexas Red結合したヤギ抗マウス IgG3抗体およびフィコエリトリン結合したヤギ抗マウスIgG1抗体とともに、氷上 で20分間インキュベートする。次いで、ブロッキングIgG1を10分間添加する。ブ ロッキング後、FITC結合した血統抗体パネル(CD14およびCD15)を添加し、そし て氷上でさらに20分間インキュベートする。最終洗浄後、細胞を、プロピジウム ヨード(PI)を含む染色緩衝液で再懸濁する。 細胞を、二重アルゴンイオンレーザー、448nmでの一次レーザー発光および600 nmでの染色レーザー(Rhodamine 6G)発光(Coherent Innova 90,Santa Cruz, CA)を装着したVantageセルソーター(Becton Dickinson)で分類する。残りの 赤血球、デブリ、および死細胞を、光散乱ゲート+FL3(PI)低ゲートによって 排除する。分類した細胞集団を、HBSSで1:1に希釈し、ペレットにし、そして血 球計カウントのためにHBSSで再懸濁する。 形質導入について、分類した細胞を、サイトカインを含む適切な培地中に希釈 した新鮮なまたは新たに融解したレトロウイルス上清に懸濁する。次いで、細胞 およびベクターを遠心分離し、再懸濁し、そして約3日間サイトカイン富化した 培地中で培養する。CD34+造血幹または始原細胞を培養するために、サイトカイ ンは、好ましくは、IL-3、IL-6、LIF、およびSCFを含む(これらに限定されない )組み合わせである。3日後、細胞を採取し、そして以下に記載のようにバルク 形質導入頻度を決定するために使用する。あるいは、細胞を、遺伝子治療につい ての当業者に周知の方法によって患者に導入し得る。 本発明の方法によって産生した1つ以上の組換えパッケージング細胞に由来す るレトロウイルスベクター上清で標的細胞を形質導入することによって、細胞の 遺伝子形質導入効率を増加させる方法が、本発明によってさらに提供される。好 ましくは、標的細胞は、幹細胞のような初代造血細胞である。特定の実施態様で は、レトロウイルス上清は、ProPak-A.6またはProPak-A.52およびProPak-Xの培 養物に由来する。細胞集団の形質導入効率はまた、1つより多くの向性のベクタ ー粒子で標的細胞集団を接種または形質導入することによって増加し得る。これ は、上記のように改変したエンベロープタンパク質を有するベクター粒子で細胞 を形質導入することによって達成され、ここでエンベロープタンパク質は1つよ り多くのレセプターに結合し得る。以下の実施例6および7は、Eax env遺伝子 によってコードされるキメラ両種向性/他種向性エンベロープを有するベクター 粒子での標的細胞の形質導入を提供する。あるいは、細胞を、単回接種物に混合 した、相補向性の粒子を含むベクター上清、例えば、両種向性および他種向性ベ クター上清で同時に形質導入する。種々の向性のベクター上清を含む接種物は、 それらのそれぞれ別々に培養したプロデューサー細胞から得た2つの上清を混合 することによって調製され得るか、または2つの相補的プロデューサー細胞株は 、2つのタイプのベクター粒子を含む単一の上清を産生するために共培養され得 る。共培養物では、産生容器、好ましくは充填層バイオリアクターは、ヒト細胞 を形質導入し得るベクター粒子を産生する相補向性を有するプロデューサー細胞 の混合物で播種される。 本発明の1つの実施態様では、細胞を、ProPak-AおよびProPak-Xプロデューサ ー細胞株、詳細には、ProPak-A.52.LMiLyおよびProPak-X.LMiLy、の共培養物か ら産生されるレトロウイルス上清で形質導入される。ProPak-AおよびProPak-Xプ ロデューサー細胞の共培養物は、それらがRCRを産生しないという利点を有する 。100%に近い遺伝子移入を、MPB由来CD34+細胞においてこのような共培養上清 を使用して達成した。 本発明のさらに他の局面は、ヒト細胞についての向性を有する1つより多くの エンベロープタンパク質、例えば、両種向性および他種向性エンベロープタンパ ク質、を発現し得るパッケージング細胞株を産生する方法である。このパッケー ジング細胞株は、現存するパッケージング細胞株への、他のエンベロープ遺伝子 についての発現プラスミドの導入によって誘導される。例えば、ProPak-A.6細胞 は、発現プラスミドpCI-Exでトランスフェクトされ得、そして他種向性粒子によ って形質導入されるが両種向性粒子によって形質導入されないウズラ細胞または 他の細胞を形質導入するベクター粒子を分泌する細胞クローンが、単離され得る 。このような多向性粒子は、標的細胞が個々のレセプターを発現する状況である が、低すぎて純粋な両種向性または他種向性粒子による安定なベクター−細胞複 合体を形成しない濃度で、より高い効率を有する標的細胞を形質導入することが 期待される。 以下の実施例は例示を意図し、本明細書に開示される発明の範囲を限定しない 。 実験 上記のように、成功したレトロウイルス媒介遺伝子治療は、ベクター粒子産生 のための安全および効果的なパッケージング細胞株を必要とする。マウス白血病 ウイルスベースのベクターのための現存するパッケージング株は、主としてNIH/ 3T3細胞に由来し、これは複製コンピテントレトロウイルス(RCR)を形成するよ うに組換えに寄与し得る内因性マウスウイルス配列を有し、それによってそれら が安全ではなくなる。ベクター粒子産生のための安全および効果的なレトロウイ ルスパッケージング細胞株を構築する方法およびこのように得られる細胞株が、 本明細書で提供される。材料および方法 他に記載がない限り、以下に記載のように、材料および試薬を調製しそして方 法を実行する。プロデューサー細胞株を、パッケージング細胞株および挿入した ベクターを示すことによって示す。例えば、PA.SVNLZは、ベクターSVNLZを有す るパッケージング細胞株PA317に由来するプロデューサー細胞株を示す。PP-Aお よびPP-Xは、それぞれProPak-AおよびProPak-Xを示す。PA317 ベースの細胞株およびレトロウイルスベクター 本明細書で開示されるレトロウイルスベクタープロデューサー細胞株を、Mill erおよびButtimore,(1986)Mol.Cell Biol.6:2895-2902の方法に従って、産 生される両種向性PA317パッケージング細胞株から生成した。プロデューサー細 胞株である、Markowitzら(1988)J.Virol.62:1120-1124の方法に従って産生 したGP+E86パッケージング細胞株、およびNIH/3T3細胞(ATCC CRL 1658)を、4. 5g/Lのグルコース、4mM L-グルタミン、および5%Cosmic Calf Serum(CCS,Hy clone,UT)を補給したダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)中で培養した。 ヒト上皮ガン腫株HeLa(ATCC CCL2)を、4.5g/Lのグルコース、4mM L-グルタミ ン、および10%ウシ胎児血清(FBS,Hyclone,UT)を補給したDMEM中で培養した 。ヒトリンパ腫細胞株のJurkatを、4.5g/Lのグルコース、2mM L-グルタミン、 および10%FBSを補給したRPMI中で培養した。すべての細胞株を、他に記載がな い限り、5%CO2下で37℃にてインキュベーター中に維持した。 SVNLZベクター(Bonnerotら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.84:6795 -6799を参照のこと)およびLMTNLベクターは、当該分野で公知である(例えば、 Escaichら(1995)Human Gene Therapy 6:625-634を参照のこと)。図2は、こ れらのベクターのマップを記載する。SVNLZベクターは、シミアンウイルス40初 期プロモーターから発現される核局在化シグナルを有するLacZ遺伝子をコードす る(図2)。LMTNLベクターは、MMLV-LTRから発現されるHIV Revタンパク質のト ランス優勢変異体(RevM10)、およびチミジンキナーゼプロモーターから発現さ れるネオマイシンホスホトランスフェラーゼ(neo)遺伝子をコードする(図2 )。PA317 培養条件 ベクター産生について、PA317ベースのプロデューサー細胞を、他に指示がな い限り、3×104細胞/cm2の密度で培養容器中に播種した。一旦細胞がコンフル エントな単層を形成すると(約3日)、培地を交換し、そして温度を37℃から32 ℃に低下させた。以下の3つのタイプの培養容器を使用した:(1) フィルター キャップを有する75-cm2組織培養フラスコ(Costar,Cambridge,MA);(2) フ ィルターキャップを有する900-cm2回転瓶(Costar,Cambridge,MA);または(3 ) 10gのFibra Cellディスク(12,000cm2)を有する500mlベンチスケールの充填 層バイオリアクター(bench scale packed-bed bioreactor)(New Brunswick Sci entific,Edison,NJ)。バイオリアクターからのサンプル(1ml)を、サンプ リング出入口を通して滅菌シリンジを用いて取り出した。0.45μmニトロセルロ ースフィルター(Nalgene,Rochester,NY)による濾過によって上清サンプルか ら細胞の細片を除去し、メタノール/ドライアイス中で急速凍結し、そして−70 ℃で保存した。凍結した上清を37℃で融解し、そしてアッセイするまで氷中に置 いた。この研究で使用するすべての上清は、Cornettaら(1993)Human Gene The rapy 4:579-588およびForestellら(1996)J.Virological Methods 60:171-178 に記載されるPG4細胞でのS+L-アッセイによって決定される複製可能なレトロウ イルスを含まなかった。レトロウイルスベクターについてのアッセイ LacZ 終点力価 NIH/3T3細胞を、ウェル当たり5×104細胞で24ウェルプレート中にプレートし 、そしてこれにポリブレン(8μg/ml)の存在下で、0.2mlの希釈したベクター 上清(10-1〜10-6希釈系列)を翌日に接種した。3時間後、接種物を吸引し、そ して0.5mlの新鮮な培地を添加した。接種の3日後、細胞を0.5%グルタルアルデ ヒドで固定し、そしてBagnisら(1993)Oncogene 8:737-743のプロトコルを使用 してX-galで染色した。終点力価(cfu/ml)を、統計学的に代表的な数のウェル 中の青いコロニーを数え、希釈ファクターを乗じ、そして接種物の容量で除する ことによって計算した。すべての終点力価測定(titration)を2連行った。 ProPak-Xを使用して調製した他種向性ベクターについて、ヒト293細胞を標的 細胞として使用した以外は同じ手順を使用して、力価測定を行った。 LacZ 形質導入効率 細胞を、ウェル当たり5×104細胞で24ウェルプレート中にプレートし、そし て細胞にポリブレン(8μg/ml)の存在下、培地での1:1希釈のベクター上清の0 .2mlで翌日に接種した。3時間後、接種物を吸引し、そして0.5mlの新鮮な培地 を添加した。形質導入効率を、FluoReporter lacZ検出キット(Molecular Probe s, Inc.,Eugene,OR)を使用するフローサイトメトリーによって、接種の3日 後に測定した。NIH/3T3または293細胞については、フルオレセインジ-β-D-ガラ クトピラノシド(FDG)との反応を、1mMフェネチルチオ-β-D-ガラクトピラノ シド(PETG)で1分後にクエンチした。JurkatおよびHeLa細胞については、1時 間のインキュベーション後に氷上でPETGを添加した。取得および分析を、Becton Dickinson FACScanおよびLYSYSソフトウエアパッケージを使用して行った。形 質導入効率を、形質導入されていないコントロール細胞の緑色蛍光強度として定 義した基底蛍光レベルを超えるlacZ遺伝子(緑色蛍光強度)を発現する細胞の割 合として決定した。 G418 耐性終点力価 力価測定を、ウェル当たり2.5×104 NIH/3T3細胞を播種し、そして1.0mlの希 釈したベクター上清(10-1〜10-6希釈系列)で翌日に接種した6ウェルプレー ト中で行った。た3時間後、接種物を吸引し、そして2.0mlの新鮮な培地を添加 した。接種の1日後、G418を0.7mg/mlの最終濃度で各ウェルに添加し、そして培 地を、個々のコロニーが見られ得るまで(代表的には10〜14日)必要に応じて交 換した。終点力価(cfu/ml)を、ウェル中の統計学的に代表的な数のG418耐性コ ロニーを数えることによって計算し、そして希釈ファクターを掛けた。 ProPak-Xを使用して調製した他種向性ベクターについては、ヒト293細胞を標 的細胞として使用した以外は同じ手順を使用して、力価測定を行った。 G418 耐性形質導入効率 細胞を、ウェル当たり1×105細胞で6ウェルプレート中に播種した。翌日、 細胞にポリブレン(8μg/ml)の存在下、培地での1:1希釈のベクター上清の1.0 mlを接種した。3時間後、接種物を吸引し、そして2.0mlの新鮮な培地を添加し た。接種の3日後に、付着細胞をトリプシン処理し、そして105細胞/ウェル〜 1細胞/ウェルの10倍希釈系列で6ウェルプレートに播種した。Jurkat細胞を、 個々のコロニーをスコア付けるためにメチルセルロース培地にプレートした。2 連のプレートを播種し、そしてG418の存在下または非存在下でインキュベートし た。形質導入効率の割合を、G418の非存在下で形成したコロニーの数によって割 り、100を掛けた、G418耐性コロニーの数として計算した。 以下の方法は、実施例6〜12に関する。レトロウイルスパッケージング細胞培養物 パッケージング細胞株およびプロデューサー細胞株を、5%(PA317(Miller およびButtimore,(1986)Mol.Cell.Biol.6:2895-2902)、PG13(Millerら, (1991)J.Virol.65:2220-2224))または10%(ProPak)のいずれかで、ウシ 胎児血清(FBS:HyClone Laboratories Inc.,Logan,UT)を補充したダルベッ コの改変イーグル培地(DMEM:JRH Biosciences,Lenexa,KS)中で増殖させた 。発現構築物およびレトロウイルスベクター Gag-PolおよびEnvタンパク質を、この研究で使用したレトロウイルスベクター と共に、図1および2に記載の別々のプラスミドから発現させた。MLVタンパク 質を発現する細胞の誘導および分析、組織培養上清中のGag-PolおよびEnvタンパ ク質の分析、ならびにLyt2抗原(Riggら(1995)J.Immunol.Meth.188:501-50 9)をコードするレトロウイルスベクターの力価測定についての方法を、本明細 書に記載する。プロデューサー細胞株およびそれぞれのレトロウイルスベクター 上清を、細胞名、次いでピリオドおよびベクターの名前によって示す(例えば、 ProPak-A.LLySN(両種向性)、ProPak-X.LLySN(他種向性)、PA317.LMiLy、ま たはPG13.LMiLy)。ProPak-XおよびProPak-Aベースのプロデューサー細胞株の同 時培養物を、スラッシュを用いて示す(すなわち、ProPak-A/X.LmiLy)。ベクター上清産生 プロデューサー細胞を、3×104細胞/cm2以上の密度で培養容器中に播種した 。一旦細胞がコンフルエントな単層を形成すると(約3日)、培地を交換し、そ して温度を37℃から32℃に低下させた。その後、上清を12時間間隔で採取した。 LLySN含有プロデューサー細胞のプールからのT-フラスコ中の上清産生について は、培地を、32℃にて10日まで繰り返して採取した。次いで、上清を、NIH/3T3 または293細胞株を形質導入する能力について比較し、そして最高の形質導入を もたらした上清を、本明細書で報告する研究で使用した。以下の3つのタイプの 培養容器を使用した:(1) フィルターキャップを有する75-、162-、または225-c m2組織培養フラスコ(Costar,Cambridge,MA);(2) フィルターキャップを有 する900-cm2回転瓶(Costar,Cambridge,MA);および(3) 10gのFibra Cellデ ィスク(12,000cm2)を有する500ml充填層バイオリアクター(New Brunswick Sc ientific,Edison,NJ)。バイオリアクター中に、5×105細胞/mlで細胞を播種 し、そして培地を船舶型の羽根車によって循環させた。補給の通気を、5%CO2 を含む医療用グレードの混合空気の直接的微散布によって達成し、0.01% Pluro nic F-68(Sigma,St.Louis,MO)を添加して剪断からの細胞傷害を防いだ。0. 45μmニトロセルロースフィルター(Nalgene,Rochester,NY)による濾過によ ってベクター上清から細胞の細片を除去し、メタノール/ドライアイスで急速凍 結し、そして−70℃で保存した。アリコートを37℃で融解し、そして使用まで氷 中に置 いた。遺伝子導入実験に使用するすべての上清は、PG4細胞(Forestellら、(199 6)J.Virol.Meth.前出)での拡張されたS+L-アッセイによって決定される複 製可能なレトロウイルス(RCR)を含まなかった。接種手順 他に記載がない限り、ベクターを、37℃にて単位重量で細胞に1回3時間接種 した。スピン接種(spinoculation)と称される遠心分離下の接種(Kotaniら,(19 94)Hum.Gene Ther.5:19-28;Bahnsonら,(1995)J.Virol.Meth.54:131-14 3;Forestellら、(1996)前出)は、2550gで3時間または4時間であった。ポ リブレン(8μg/ml)または硫酸プロタミン(4μg/ml)を、細胞株または初代 細胞用の接種物にそれぞれ添加した。初代造血細胞精製 PBLを、記載(Riggら、(1995)前出)されたように末梢血単核細胞から単離し 、そしてCD8ポジティブ細胞を枯渇させた。CD34-ポジティブ(CD34+)画分を、 動員化末梢血(MPB)または成人骨髄(ABM)からBaxter Isolexアフィニティー カラム(Baxter Healthcare,Deerfield,IL)を用いて単離した。Thy-1抗原を 有する画分(CD34+/Thy+)を得るためのさらなる精製を、Sasakiら,(1995)J. Hemat.4:503-514)によって記載されるように、高速フローサイトメトリックソ ーティングによって達成した。造血幹細胞および始原細胞(HSPC)を、10%FBS 、IL-3、およびIL-6(各20ng/ml;Sandoz Pharma,Basel,Switzerland)、幹細 胞因子(SCF;Amgen Inc.,Thousand Oaks,CA)または白血病阻害因子(LIF;S andoz)(100ng/ml)を含むIMDM培地およびRPMI培地の1:1混合物中で培養した。形質導入効率アッセイ Lyt2コードベクター上清で達成した形質導入効率を、接種の2日または3日後 、Lyt2抗原を発現する標識細胞の割合として定量した(Riggら,(1995)前出) 。RevM10遺伝子のHSPCクローン原性子孫への組込みを、PCRによって決定した。 メチルセルロース(Stem Cell Technologies,Vancouver,Canada)に、IL-3、I L-6、 SCF、エリスロポエチン(Amgen,Thousand,Oaks,CA)、および顆粒球マクロフ ァージコロニー刺激因子(Immunex,Seatle,WA)を補充した。メチルセルロー ス培養物中のすべての系統の個々のコロニー(CFU-C)を、12〜14日間の培養後 に取り出し、そしてPlavecら(1996)Gene Therapy 3:723に記載のようにPCRア ッセイを使用して細胞DNA中のrevM10遺伝子についてアッセイした。revM10配列 およびβ-グロビン配列の両方が検出される場合、コロニーをポジティブである とスコア付けた。実施例1:パッケージング細胞の構築 RCRを形成する内因性ウイルス配列での組換えの機会を最小にするために、候 補細胞株を、内因性レトロウイルス核酸について、および特に内因性MMLV核酸に ついてスクリーニングした。種々の細胞株からのゲノムDNAを、レトロウイルスM MLV長末端反復配列(LTR)またはMMLV gag-pol配列に特異的なプローブを使用し て、Sambrookら、(1989)Molecular Cloning: A Laboratory Manual 第2版,Col d Spring Harbor Laboratory,New Yorkに一般的に開示される方法によるサザン ブロットハイブリダイゼーションによって分析した。以下の細胞株をスクリーニ ングした:組換えタンパク質を産生するために使用されるCHO細胞;ワクチンが 産生されるVeroおよびMRC-5細胞(WHO(1989)「Technical Report Series No.78 6」WHO,Geneva)、ならびに、臨床的遺伝子治療適用のためのアデノウイルスベ クターおよびレトロウイルスベクターを産生するために使用されるヒト胎児腎臓 293細胞(ATCC CRL 1573)(Pearら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90 :8392-8396;Finerら(1994)Blood 83:43-50)。Mus dunni尾線維芽細胞(NIH )もまた、これらの細胞には報告されているところでは内因性MMLV配列がないの で、含まれた(LanderおよびChattopadhyay(1984)J.Virol.53:695-698)。 現存するパッケージング細胞株の大部分についての基礎である、NIH/3T3細胞 からのゲノムDNAは、低または高ストリンジェンシーで両方のMMLV特異的プロー ブと非常に強くハイブリダイズした。ハイブリダイゼーション条件を、表1下の 記号一覧において提供する。対照的に、いずれのプローブも、低ストリンジェン シーでさえ、293細胞からのゲノムDNAともまたはMRC-5細胞からのゲノムDNAとも 交差ハイブリダイズしなかった(表1)。さらに、Mus dunni、MDCK、Vero、ま たはFox Lung細胞からのゲノムDNAとの交差ハイブリダイゼーションは、高スト リンジェンシーでは全く見られなかった(以下の表1を参照のこと)。 記号一覧: ハイブリダイゼーションシグナル強度:−、なし;±、弱;+、中;++、強。 プローブ:LTR(ゲノムRNAのキャップ部位に対する位置):ヌクレオチド-232( EcoRV)〜563(5'リーダー配列のPstI);gag-pol:ヌクレオチド739(gag中のP stI)〜3705(pol中のSalI)。 ストリンジェンシー(すべての場合で65℃):低、500mM Na+;高、50mM Na+。 ATCC:アメリカンタイプカルチャーコレクション、12301 Parklawn Drive,Rock ville,Maryland,20852,U.S.A.。 Fox LungおよびMRC-5を、それぞれ不十分な増殖または限定された細胞分裂能 (これらは安定にトランスフェクトされた細胞のサブクローニングを妨げる)の ため考慮しなかった。したがって、293、MDCK,Mus dunni、およびVero細胞を、 パッケージング細胞株を誘導するための候補細胞株と同定した。 RCR形成の確率を減少させるために、Danos(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.U .S.A.85:6460-6464;DanosおよびMulligan,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.U .S.A.85:6460-6464;Markovitzら(1988)J.Virol.62:1120-1124;Miller(1 990)Human Gene Therapy 1:5-14;MorgensternおよびLand(1990)Nucl.Acids Res.18:3587-3596に開示されるように、gag-polおよびenvについて、別々の発 現プラスミドを構築した。しかし、現存するパッケージング細胞と対照的に、Ga g-PolおよびEnvタンパク質をコードするために必要な最小限の遺伝子情報のみが 含まれていた。構造遺伝子配列を、以下に示すプライマーを使用するポリメラー ゼ連鎖反応(PCR)によって増幅して、NotI制限部位に隣接するgag-polまたはen v遺伝子の開始コドンから終止コドンまでのオープンリーディングフレーム(ORF )を得、そしてフラグメントをpBluescriptSK+(Stratagene,La Jolla,Califo rnia)中にサブクローニングした。遺伝子のN-末端に対応するオリゴヌクレオチ ドプライマー(Genosys Biotechnologies,Woodlands,Texas)もまた、翻訳に ついての理想的状況でAUGを配置し(Kozak(1987)J.Mol.Biol.196:947-95O )、そしてC-末端に対応するプライマーは、第2のインフレームの終止コドンを コードした。PCR産物の完全性を、DNA配列決定によって確認した。gag-pol ORF を、感染性モロニーMLV配列を有するプラスミドpVH-2(MillerおよびVerma(198 4)J.Virol.49:214-222)から、プライマー対:5'-AAAAAAAAGCGGCCGCGCCGCCAC CATGGGCCAGACTGTTACCAC-3'(配列番号1)、および5'-AAAAAAAAGCGGCCGCTCAttaG GGGGCCTCGCGGG-3'(配列番号2)を使用して増幅した。 下線を引いたATGは、p15GagのATG(塩基621〜623)であり、そして小文字のコ ドンはpol終止コドン(塩基5835〜5837)に対応する。ヒトサイトメガロウイル ス即時型(CMV)プロモーターを有する発現プラスミドpCMV-gpを、ネオマイシン 耐性発現カセット(DraIII〜BsmI)が欠失されたpcDNA3プラスミド(Invitrogen ,San Diego,CA)中にgag-polフラグメントを挿入することによって構築した。 図1は、MMLV構造遺伝子の発現に使用されるプラスミド構築物を図式的に示す。 JoshiおよびJeang(1993)BioTechniques 14:883-886に記載の条件下で組換えを 抑制するために、gag-pol ORFを有するプラスミドを30℃で増殖した。 env遺伝子を増幅するために、隣接する両種向性エンベロープ配列を、Ottら( 1990)J.Virol.64:757-766の方法に従って構築したp4070Aから構築し、そして プライマー対:5'-TAATCTACGCGGCCGCCACCATGGCGCGTTCAACGCTC-3'(配列番号3) および5'-AATGTGATGCGGCCGCtcaTGGCTCGTACTCTATGG-3'(配列番号4)を用いて増 幅した。 下線を引いたATGは、塩基37〜39に対応し、そして終止コドン(小文字)は塩 基1998〜2000に対応する(Ottら(1990)前出)。CMVプロモーター−env発現プ ラスミドpCMV*Eaを、SV40イントロン中の外来性ATGのACG(SD/SA*)への変異に よって改変されたpCMVβ(Clontech,Palo Alto,CA)のβ-ガラクトシダーゼ遺 伝子の代わりに、env ORFの挿入によって作成した。PCR産物の完全性を、DNA配 列決定によって確認した。 最適な細胞株をさらに同定するために、サンドイッチELISAアッセイを、トラ ンスフェクトした細胞中の、および特に上清中の、GagおよびEnvタンパク質を検 出するように開発した。プレートを、EnvについてはEvansら(1990)J.Virol. 64:6176-6183に開示される83A25(NIHから入手可能)、またはGagについてはR18 7(ATCC CRL 1912)のいずれかからのハイブリドーマ培養上清でコーティングし た。捕獲したタンパク質を、それぞれ79S-834および77S-227抗血清(Quality Bi otech,Camden,New Jersey)、ならびに西洋ワサビペルオキシダーゼ結合抗種 抗体、および基質2,2-アジノビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(P ierce,Rockford,Illinois)で検出した。 ベクター粒子を産生する能力を、候補細胞株へのgag-pol発現プラスミドのト ランスフェクション、および薬物耐性プールの選択によって評価した。gag-pol トランスフェクト293細胞またはgag-polトランスフェクトMus dunni細胞からの 上清のみがGagタンパク質を含んだ。Gagタンパク質は、トランスフェクトしたVe roまたはMDCK細胞によって分泌されなかったが、Gagは細胞溶解物中に存在した 。VeroおよびMDCK細胞を、候補細胞株として考慮せず、そしてヒト293細胞を、 パッケージング細胞を誘導するために選択した。ProPak-A の構築 両種向性パッケージング細胞を誘導するために、pCMV*Eaプラスミドを、ハイ グロマイシンB(250mg/ml;Boehringer,Indianapolis,Indiana)に対する耐 性を与えるpHA58プラスミド(Rieleら(1990)Nature 348:649-651に開示される )との15:1の比での同時トランスフェクション(Profection Kit,Promega,Mad ison,Wisconsin)によって、293細胞(ATCC CRL 1573)に導入した。安定に選 択された集団を、抗Env抗体(83A25、NIHから入手可能)で染色し、そして個々 のEnvポジティブ細胞を、FACStar Plus(Becton Dickinson,San Jose,CA)で の自動細胞沈着によって単離した。最高の蛍光強度を有する3つのクローンを、 さらに特徴づけた。3つともすべて、gag-polおよびベクタープラスミドを用い る一過性同時トランスフェクションの際に等しい力価を生じた。 次に、pCMV-gp構築物を、プラスミドpSV2pac(Varaら(1986)Nucl.Acids Re s.14:4617-4624に記載される)との同時トランスフェクションによって3つの うちの1つの293-Envクローンに、安定にトランスフェクトした。ピューロマイ シン耐性(1mg/ml;Sigma,St.Louis,Missouri)クローンを、コンフルーエ ンスになるまで増殖し、培地を交換し、そして上清を16時間後に集め、濾過し、 そして前述したサンドイッチELISAを使用することによってGagおよびEnv産生に ついて分析した。高レベルのGagおよびEnv抗原を分泌する16クローンを同定した (16/37)。これらのうち、6つのクローンが、一過性トランスフェクションに おいてBOSC23細胞(Pearら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:8392-83 96を参照のこと)の両種向性等価物である、Oz2細胞の2〜3倍以内の力価でウ イルスを産生した(表2A)。 上清を32℃にて16時間後に集め、そして終点力価を、上記の材料および方法を使 用してNIH/3T3細胞で測定した。 cfu:コロニー形成単位。 細胞は、6ウェルプレート中に2×105細胞/cm2で播種し、そして25mMクロロキ ン(Pearら(1993),前出)の存在下で、2.5mg/ウェル MFG-lacZ DNA(Dranoffら (1993)前出および本明細書に記載)で16時間後にトランスフェクトされた。力 価は2連のトランスフェクションについての平均および範囲である。Oz2細胞は また、Bing細胞と呼ばれ、そしてBOSC23細胞の両種向性等価物である(Pearら, 1993)。 上清を32℃にて16時間後に集め、そして終点力価をNIH/3T3細胞で決定した。 cfu:コロニー形成単位。 上清を、T-75フラスコ中のプロデューサー細胞クローンのコンフルエントな培養 物から採取した。3連のサンプルについての平均および範囲を示す。 高い一過性トランスフェクション力価を有する1つのクローンを選択し、そし てProPak-A.6と命名した。ProPak-A.6を、特許手続のための微生物の寄託に関す るブダペスト条約の規定に基づいて、1995年12月15日に、アメリカンタイプカル チャーコレクション(ATCC)、12301 Parklawn Drive,Rockville,MD 20852 U. S.A.に寄託し、そしてATCC受託番号CRL 12006を与えられた。一過性力価は、一 過性トランスフェクションの効率を反映し、そしておそらくOz2が高い一過性ト ランスフェクション効率について選択した293T細胞クローンに基づくので(Pear ら(1993)前出)、ProPak-A細胞で得られる力価は、Oz2細胞で達する力価より も低い。ProPak-X の構築 ProPak-Xと命名した他種向性パッケージング細胞株を、以下のように構築した 。pCMVプラスミドのスプライスドナー/スプライスアクセプター中のATGを、上 記のようにACGに変異させた。CMVプロモーターを切り出し(EcoR1/Xhol、平滑末 端)、そしてプラスミドpVH2からのMoMLV LTR(Asp 718/HindIII、平滑末端)で 置換した。β-ガラクトシダーゼ遺伝子を、gag-pol ORF(NotIフラグメント)で 置換して、pMoMLVgpを生成した。pMoMLVgpを、リン酸カルシウム共沈殿によって 293細胞(ATCC CRL 1573)中にpHA58と同時トランスフェクトし、そしてハイグ ロマイシンB耐性細胞を選択した。クローンをGag分泌のレベルについてスクリ ーニングし、そして高レベルのGagを分泌する1つのクローンを選択した(ProGa gと命名した);このクローンは、一過性トランスフェクションにおいて高いウ イルス力価を得た。 マウス他種向性env遺伝子を含むプラスミドpNZBxenoを、Christine Kozak(NIH )から入手した。pNZBxeno中の不連続env配列を、SalIおよびEcoRIでの消化なら びにpBluescript(Stratagene)のSalI部位への連結によって隣接させた。xeno env ORFをPCRによって増幅し、そしてXhoI/XbaI消化pCI(Promega)にクローニ ングして、発現プラスミドpCI*Exを生成した。pCI*Exを、リン酸カルシウム共沈 殿によって先に選択した細胞株(ProGag)中にpSV2pacと同時トランスフェクト し、そしてピューロマイシン耐性細胞を選択した。得られる細胞を、フローサイ トメトリーによってEnv発現についてスクリーニングし、そして高レベルのEnvを 発現し、ProPak-Xと命名したクローンを、形質導入ベクターを産生する能力につ いてスクリーニングした。1つのクローン、ProPak-X.36と命名したクローン36 のサンプルを、特許手続のための微生物の寄託に関するブダペスト条約の規定に 基づいて、1995年12月15日に、アメリカンタイプカルチャーコレクション(ATCC )、12301 Parklawn Drive,Rockville,MD 20852 U.S.A.に寄託し、そしてATCC 受託番号CRL 12007を与えられた。 ProPak-Xベースのプロデューサー細胞によって産生された上清を、ヒト293細 胞を標的細胞として使用したこと以外は、上記のように終点力価および形質導入 効率について試験した。 ProPak-Xと同様な方法で、両種向性細胞株もまた、両種向性エンベロープをコ ードするプラスミドpCMV*EaのProGag細胞へのトランスフェクション、および高 い形質導入効率を得るクローンの単離によって誘導した。これらのうちの1つの クローン番号52(ProPak-A.52)を、本明細書に記載の実験で広く使用する。RCR の欠如 ProPak-A細胞の安全性を、RCRを生成するように組換える能力についての厳格 な試験によって決定した。これまでの研究で、ベクターBC140revM10(Bevecら (1992)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:9870-9874)が、PA317細胞中でRCR を再現可能に生じることを見いだした。BC140revM10は、gag ORFのATGを含む拡 張されたパッケージング配列を有する。逆に、LMTNLベクター(Escaichら(1995 )前出に記載のように構築した)は、5'非翻訳領域の一部を欠き、そしてgag配 列を含まず、したがって、組換えないようであり、そしてRCRを形成しないよう である。(図2を参照のこと)。BC140revM10またはLMTNLベクターを、それぞれ PA317またはProPak-A細胞に導入し、そして培養上清を、1週間隔で(Haapalaら (1985)J.Virol.53:827-833およびPrintzら(1995)Gene Therapy 2:143-150 に開示される方法を使用して)RCRについて試験した。PA317/BC140revM10組み合 わせ(トランスフェクトしたまたは形質導入した)は、4週でPG4細胞上での培 養上清の直接接種によって検出可能なRCRを生じた(表3、以下)。培養物を、 さらに4週間維持し、そしてまた、M.dunni細胞とプロデューサー細胞の同時培 養して、培養物中のRCRを増幅し、続くPG4細胞でのS+L-アッセイによって試験し た。RCRについてのこの厳格なアッセイによってでさえ、ProPak-Aベースのプロ デューサープールにはすべて、RCRを含まなかった(表3)。 RCRは、プロデューサー細胞培養物からの上清での接種による、またはMus dunni 細胞との同時培養の3継代後のPG4細胞(ATCC CRL 2032)におけるS+L-アッセイ によって検出した。 N/A:該当せず。 (>8):G418耐性プールが確立した8週後にRCRが検出されなかった。 M(G):接種物として一過性MMLV(VSV-G)偽型(Yeeら(1994)Proc.Natl.Acad. Sci.91:9564-9568)を使用した。ヒト血清による不活化に対する耐性 最近、ヒトへのベクター粒子の直接投与によるレトロウイルス遺伝子移入のイ ンビボ適用において、関心が生じてきた。さらに、特異的レセプターへハイブリ ッドリガンド−同種向性env遺伝子を運ぶ粒子の標的化が報告されている(Kasah araら(1994);Science 266:1373-1376 Somiaら(1995);Proc.Natl.Acad.Sci .U.S.A.92:7570-7574;Cossetら(1995)J.Virol.69:6314-6322)。前提条 件は、粒子がヒト血清によって不活化しないことである。したがって、ProPak-A .6またはA.52、ProPak-XまたはPA317パッケージしたベクター粒子を、ヒト血清 による不活化に対する感受性について分析した。さらに、PE501細胞(NIH/3T3ベ ース;MillerおよびRosman、(1989)BioTechniques 7:980-990)または293細胞 のいずれかにパッケージされた同種向性上清を分析した。293細胞から産生され た種々のエンベロープを有するベクター粒子は耐性であったが、NIH/3T3細胞に パッケージされた上清はヒト血清とのインキュベーションによって不活性化され た(図3)。Takeuchiら(1994)前出は、ヒト血清に対するベクター粒子の耐性 は、宿主細胞型およびウイルスエンベロープの両方によって決定されると結論し た。本明細書に提出したデータは、293ベースの細胞における両種向性、他種向 性、および同種向性ベクターのパッケージングが、ヒト補体に対する耐性を与え るために十分であることを示す。 本明細書の実施例2および3に示すデータについては、他に指示がない限り、 親パッケージング細胞株は、PA317であった。実施例2:終点力価および形質導入効率の比較 遺伝子治療適応のために、一過性トランスフェクションによって容易に調製さ れ得ない大量の特徴付けられた上清を産生することが必要である。 従って、安定な終点力価および形質導入効率を決定することが必要であった。 内因性チミジンキナーゼプロモーター(ベクター名T)が、ネオマイシンフォス ホトランスフェラーゼ遺伝子(N)を駆動するPA.LMTNLベクターで形質導入した プロデューサー細胞クローン由来の上清について、終点力価を決定した。表2B に示すように、ProPak-Aベースのプロデューサー細胞由来の終点力価は、最高の PA317ベースのプロデューサークローンの終点力価よりもわずかに高かった。さ らに、ProPak-A.LMTNLプロデューサープールは、薬剤選択の非存在下で3カ月を 経過した場合に安定であった。 本明細書中に示されるように、終点力価は広範に使用されるが、形質転換効率 は遺伝子移入力のよい尺度である。しかし、アッセイは、薬物耐性遺伝子をコー ドするベクターで困難であり得る。従って、LXSNベクター由来のベクター(LLyS N、図2)(MillerおよびRosman(1989)前出)を保有する、PA317ベースのまたは ProPak-Aベースのプロデューサー細胞集団を、Lyt2表面マーカー遺伝子(Tagawa ら、(1986)前出)の挿入により調製した。Lyt2抗原の表面発現は、FACSによる形 質導入効率の単純で量的な決定を可能にする。NIH/3T3細胞においてアッセイさ れた3つのPA317.LLySNプール由来の上清を用いるよりもより高い形質導入効率 が、2つの独立したProPak-A-LLySN集団由来の上清を用いて達成された(図4C を参照のこと)。驚くべきことに、同じ上清を形質導入効率についてヒト293細 胞においてアッセイした場合、ProPak-Aの優越性はより高かった(図4B)。 終点力価と形質導入効率との関係を決定するために、レトロウイルスベクター 上清の産生を最適にする種々の条件下で培養したプロデューサー細胞から上清を 採取した。終点力価のアッセイに加えて、単回の接種後に形質導入された細胞の 割合(すなわち、形質導入効率)をまた決定した。図5Aは、70の異なるPA317 由来βガラクトシダーゼをコードするSVNLZ(PA.SVNLZ;図2)ベクター上清を用 いて得られた終点力価および形質導入効率を示す。上清の終点力価と形質導入効 率との間の直接的な相関は見出されなかった(相関因子、r=0.07)。形質導入 効率と終点力価の間の相関の欠如が、NIH/3T3細胞またはPA317由来SVNLZベクタ ーで形質導入された細胞の割合の定量に使用したフローサイトメトリー法に特異 的でないことを確かめるために、ネオマイシンフォスホトランスフェラーゼ遺伝 子(LNTNL、図2)をコードする両種向性レトロウイルスを含む上清を、NIH/3T3な らびにJurkatおよびHeLa細胞について試験した(図5B)。結果により、NIH/3T 3細胞において最高の形質導入効率を得た上清は、JurkatおよびHeLa細胞の両方 においてもまた、最も高い形質導入効率を与えることが実証された(図5B)。 さらに、最高の形質導入効率を得た上清は、最も高い終点力価を有さず、再度こ れら2つの関数測定値の間を区別した。同様の結果がまた、PA.SVNLZベクターを 用いていくつかの異なる細胞株において得られた。このことは終点力価と形質導 入効率との間の関係の欠如が、指標遺伝子または標的細胞種のいずれにも特異的 でないことを示唆する。ベクター上清の濃縮 終点力価と形質導入効率との相関の欠如はまた、限外濾過により物理的に濃縮 したレトロウイルスベクター上清の効果を試験した場合に、明白であった。ベク ター上清を、3つの異なる限外濾過系を用いて濃縮した。Sartocon Mini クロス 通過限外濾過系(Sartorius,Bohemia,NY)を、77.4cm2、100,000kDa分子量カ ットオフ(MWCO)ポリスルホンモジュールとともに、平方インチ当たり(psi)3ポ ンドの給圧(feed pressure)で使用した。濃縮を、室温で1時間以内に達成した 。Amicon Stirred Cell 8050型(Amicon,Beverly MA)を、YM100限外フィルタ ー(3.4cm2,100,000kDa MWCO)とともに使用した。正圧を、滅菌濾過調節した 空気で維持し、そして濃縮を室温にて30分で達成した。小容量(5〜20ml)を、Fi ltron 300,000kDa MWCO遠心分離濃縮器(Filtron Tech.Corp.,Northborough,M A)を用いて濃縮した。濃縮を、Beckman GS-6KR遠心分離器(Beckman,Palo Alto ,CA)において4℃にて3,000gでの遠心分離により45分以内に達成した。 表4は、2つの異なるレトロウイルスベクターおよび3つの異なる限外濾過系 を用いる5つの独立した実験由来のデータを要約する。終点力価は、容量の減少 に比例して増加(19倍にまで)した。このことは、ベクターがこの手順により不 活化されなかったことを示した。しかし、より高い形質導入効率は達成されなか った。等価な形質導入効率が、32℃にて産生された上清で濃縮前および濃縮後に 達成された(表4)。対照的に、37℃にて産生されたレトロウイルスベクター上 清は、限外濾過後より低い形質導入効率を有した(表4)。興味深いことに、よ り低い形質導入効率は、濃縮物の希釈により、もとの上清のレベルに回復され得 た(図6を参照のこと)。このことは、阻害剤が形質導入粒子と同時濃縮された ことを示唆した。原則として、インヒビターは、非形質導入レトロウイルス粒子 、非ベクター関連エンベロープタンパク質、または組織培養上清の非ウイルス成 分であり得る。 レトロウイルスベクター形質導入のエンベロープ特異的阻害 阻害剤の性質を決定するために、異なるパッケージング細胞株またはNIH/3T3 細胞由来の組織培養上清を試験して、形質導入を阻害し得るかどうか決定した。 パッケージング細胞株由来の上清は、全ての必要なベクター粒子タンパク質を含 むが、ベクターゲノムを欠如し、そしてそれゆえ細胞を形質導入し得ない。同種 向性ベクターは、細胞に入るために両種向性ベクターとは異なるレセプターを使 用し、そして同じ向性を有するウイルス粒子との間でのみレセプターへの結合に ついての競合が起こり得る。PA.SVNLZ上清を、以下由来の上清と混合した:親の 両種向性なPA317パッケージング細胞;同種向性GP+E86パッケージング細胞株由 来の上清;上記由来のPA.SVNLZ濃縮物またはNIH/3T3細胞由来の上清。そして形 質導入効率および終点力価を計測した。 NIH/3T3細胞またはGPE+86パッケージング細胞株由来の上清の添加は、形質導 入効率または終点力価に対する効果を有さなかった(表5)。対照的に、親のPA 317またはプロデューサー細胞株PA.SVNLZ由来の濃縮されたベクター上清のいず れかの添加は、形質導入効率を減少したが、後者の場合においても、終点力価は 濃縮されたPA.SVNLZ上清の添加により増加した(表5)。これらのデータは、両 種向性エンベロープタンパク質による両種向性ベクター形質導入の阻害は、粒子 状または遊離形態であることを示す。 *Sartocon 100kD限外フィルターを用いた8.4倍濃縮(実験1、表4) †値は2つのサンプルの平均値、および範囲異なる温度でのレトロウイルスベクター粒子の安定性 37℃にて産生された上清の濃縮物は、もとの上清に比較して形質導入効率を減 少した(表4)。これらの上清が、32℃にて産生された上清よりもより高い割合 の不活化ベクターを含む可能性がある。異なる温度でのベクター粒子の安定性を 試験するために、32℃にて産生されたSVNLZ上清を37℃、32℃、または0℃のい ずれかで種々の長さの時間インキュベートした。もとの上清は、25%の形質導入 効率を有し(図7Aを参照のこと)、そして37℃、32℃または0℃にて24時間イ ンキュベーションした後、形質導入効率は、それぞれ、2、14および22%に減少 した。4日間0℃にてのインキュベーションは、さらに形質導入効率を12%に減 少したが、終点力価は比較的安定なままであった(図6Bを参照のこと)。試験 した全ての温度で、形質導入効率は終点力価よりもより迅速に減退した。37℃に てのベクター粒子の半減期を、以前の報告と同様に、終点力価に基づいて4.1時 間として算定した。32℃および0℃でのベクターの半減期はそれぞれ、12.0時間 および123.4時間であった。試験した全ての温度で、終点力価が少なくとも最初 の8時間は比較的安定(2.5±0.4×106cfu/ml)なままであったことに注意する ことは興味深い。この終点力価における最初の安定性は、形質導入効率について は観察されず、PA.SVNLZまたはPA.LMTNLベクターのいずれかを用いる3つの別個 の実験において見られた。レトロウイルス産生動力学 37℃よりも32℃でのレトロウイルスベクター粒子のより大きい安定性を仮定し て、これらの温度でのベクター産生の動力学を研究するための実験を行った。SV NLZプロデューサー細胞を、約80%のコンフルエンスまで37℃にて増殖させ、こ のとき培地を交換し、そして細胞を37℃または32℃のいずれかに保った。上清サ ンプルを異なる時点で回収し、瞬間凍結し、そして終点力価(図8A)および形 質導入効率(図8B)の両方についてアッセイした。最初の6時間を超えて、37 ℃または32℃にての培養において同様な量の形質導入ベクターが蓄積した(図7 Aおよび7B)。37℃または32℃でのベクターの不活化値を組み込む計算により 、ベクター産生速度が32℃よりも37℃にて、わずかに高いことが示された(0.02 7cfu/細胞/時間に比べて0.031cfu/細胞/時間)。これに一致して、ELISAに より測定したサンプル中に存在するp30カプシドまたはgp70エンベロープタンパ ク質の量により、ベクター分泌がまた32℃よりも37℃にて僅かに高いことが実証 された。同様の結果がまた、LMTNLベクターで見出された。 ビリオン不活化速度は37℃よりも32℃にてより低いが、32℃でのベクター粒子 の不活化はなお有意であり(図7A)、従って上清がこの温度に留まる時間は最 小限にされるべきである。実験を行い、最大形質導入効率を有する上清を生成す るために必要な最小限の時間を決定した。図9は、32℃での回転瓶中のコンフル エントなPA.LMTNLプロデューサー細胞培養物由来のベクター産生の時間経過を示 し、そして形質導入効率が培地交換の3時間後にプラトーに達することを示す。実施例3:産生方法の比較 PA317ベースのプロデューサー細胞株由来のベクター産生の動力学は、一旦プ ロデューサー細胞がコンフルエンスに達すると、高い形質導入効率を有する上清 を得るために上清は3〜5時間毎に回収されるべきであることを示唆する。この 条件を達成するために、流加様式(定期的な培地交換)または灌流様式(連続的 培地灌流)のいずれかの下で卓上規模の充填層バイオリアクターを操作した。後 者において、バイオリアクターを離れる上清を、不活化を最小限にするために、 0℃にて容器に回収した。流加様式で操作された充填層バイオリアクターにおい て培養されたPA.SVNLZプロデューサー細胞株を用いる最初の実験は、終点力価お よび形質導入効率によって組織培養フラスコにおけるベクター産生と比較可能な ベクター産生を示した。次に、充填層バイオリアクターを、灌流様式において操 作し、そして流加様式において操作した回転瓶と比較した(表6)。細胞を播種 して1日後にバイオリアクターまたは回転瓶由来の上清のサンプリングを開始し た。両方の培養系において、インキュベーションはまず37℃であり、そして50時 間後に32℃に下げた。両方の培養系における細胞は、約100時間のインキュベー ション後にコンフルエンスに達した。充填層バイオリアクターにおいて生成され た上清で達成された形質導入効率は、回転瓶培養物由来の形質導入効率よりも大 きかった(図10A)。しかし、充填層バイオリアクターにおいて生成された上清 は、回転瓶由来の上清よりもより低い終点力価を有し(図10B)、これはおそら くリアクターにおける培地のより短い滞留時間により得る(回転瓶の24時間に比 較して5.75時間)。5日間にわたって、回転瓶由来の1Lと比較すると、充填層 バイオリアクターを用いて総計10Lの上清を回収した。 *10gのベンチトップNew Brunswick Scientificバイオリアクターにおけるファイ バーセル(Fibercell)ディスク+ Corningの拡張された表面積の回転瓶 実施例4:バイオリアクター産生由来のProPak-A生成およびPA317細胞上清由来 のベクター生成の比較 10gのNew Brunswick Scientificファイバーセルディスク(カタログ番号M1176 -9984)を、充填層バイオリアクターの攪拌バスケット(カタログ番号M1222-999 0)に置き、そしてオートクレーブ前にPBSで数回洗浄した。播種の前に、バイオ リアクターおよびファイバーセルディスクを、5%FBSを含む培地で2回洗浄し た。 リアクターに2.4〜3.6×108個のプロデューサー細胞(ProPakおよびPA317につ いても同じ)を、総容量500mlの培地(5%〜10%FBSを有するDMEM)に播種した (すなわち、2〜3×104細胞/cm2)。播種の際の振とう速度を約80rpmにセッ トした。全ての細胞がファイバーセルディスクに付着するために、最低3時間が 必要であった。 播種後約4〜18時間で、50%の培地を交換し、そして5mlのPluronic F68(Sigm a カタログ番号P5556)を0.1%の最終濃度でバイオリアクターへ添加した。この とき、医薬等級の空気/5%CO2混合(Altairカタログ番号39222)を0.2mmフィル ターを通してリアクターへ穏やかに散布することにより、通気を開始した。振と うを、約250rpmに増加した。細胞を37℃にて3日間増殖させ、次いで温度を32℃ へ下げた。培地交換は、細胞に対して4〜12時間毎に行うか、またはリアクター を灌流様式で操作するべきである。灌流速度は1日当たり2〜6リアクター容量 であった。バイオリアクターから採取された灌流上清を、氷上に置いた2Lガラ ス容器(孔付き蓋)に回収した。採取した上清を0.45μmフィルターを通して濾 過し、アリコートに分け、そしてMeOH/ドライアイス中で瞬間凍結した。瞬間凍 結は、液体窒素中のような他の方法において行われ得る。バイオリアクターおよ び連続灌流操作のセットアップを、図11および12に示す。回転瓶からの上清調製 プロデューサー細胞を、表面積cm2当たり0.25mlのDMEMおよび5%FBS中に3× 104細胞/cm2で播種した。回転速度を0.6rpmにセットした。細胞を37℃にて2日 間増殖させた。3日目に、温度を32℃に下げた。培地を吸引し、そして新鮮なDM EM培地および5%FCS(表面積の0.2ml/cm2)で置換した。細胞が剥がれ落ちること を防止するために、そして泡形成および細胞接触を回避するために、培地をピペ ットでフラスコの底へ添加した。血清レベルは、2%FBSに低下され得る。 PA317ベースのプロデューサー細胞については、培地の2つのバッチを毎日(1 2時間毎に)回収し、そしてプールして単一のロットを作製した。ProPak-Aベー スのプロデューサー細胞については、12〜24時間毎に上清を回収した。各バッチ を、0.45μmフィルターを通して迅速に濾過し、そしてバッチがプールされるま で4℃に保った(おそらく、約12〜24時間以内)。プールしたバッチをアリコー トに分け、瞬間凍結し、そして−80℃にて保存した。上清回収を、プロデューサ ー細胞が健康である限り継続した。 図13は、TフラスコにおけるProPak-A細胞培養由来のベクター産生と、293細 胞に対してアッセイしたような通気を有する充填層バイオリアクターにおけるベ クター産生との比較を示す。充填層バイオリアクターを用いて生成した上清は、 Tフラスコで生成された上清よりもかなり高い形質導入を媒介する。図14は、Pr oPak-X細胞がまた、充填層バイオリアクターにおいて培養された場合に、Tフラ スコと比較してより高い形質導入効率を有する上清を生成したことを示す。異な る培養条件下でProPak-Aにより生成されたベクター上清の希釈を、図15に示す。 この場合もまた、通気された充填層バイオリアクターは、形質導入効率により決 定されたようにより高い質のベクター上清を生成した。実施例5:一次細胞形質導入 細胞選択および分析 インフォームドコンセントした多発性骨髄腫または乳ガン患者からアフェレー シスしたサンプルを得た。シクロホスファミド(Cytoxan)およびGM-CSF(多発 性骨髄腫)、G-CSF(乳ガン)、またはCytoxan+VP-16+CDDP+G-CSF(乳ガン) での処置により幹細胞を末梢血へ動員させた。すべての白血球についてのアフェ レーシスを、末梢血白血球計数が500細胞/mlよりも多く、そして血小板計数が5 0,000細胞/mlよりも多くなったときに開始した。6×108単核細胞(MNC)が回収 されるまで毎日患者をアフェレーシスした。 細胞をPBS中で2回洗浄し(部分的に血小板を涸渇する)、そしてBaxter Isol exTMセルセレクターを用いてCD34+細胞を明確に選択した。回復した細胞は、FAC S分析により決定すると、平均85%〜99%のCD34+の純度であった。形質導入 CD34+細胞(0.5×106)を、0.5mlの新鮮に解凍したレトロウイルス上清中に懸濁 し、そしてWhitlock/Witte培地(50%IMDM、50%RPMI 1640、10%FCS、4×10-5 M 2-メルカプトエタノール、10mM HEPES、100μg/mlペニシリン、100mg/mlスト レプトマイシン、および4mMグルタミン(サイトカインを以下の最終濃度で含む :c-キットリガンド(Amgen)100ng/mlまたは白血病阻害因子(LIF,Sandoz);IL-3 (Sandoz)20ng/ml;IL-6(Sandoz)20ng/ml))に1:1で希釈した。プロタミン硫 酸を最終濃度4μg/mlで加えるか、またはポリブレンを最終濃度8μg/mlで加え た。細胞およびベクターを2800×gで33〜35℃にて、3時間遠心分離した。細胞 をサイトカインを有する培地に再懸濁し、そして3日間培養した。3日後、細胞 を採取し、そして約4×105細胞を使用してバルク形質導入効率を決定し、そし てメチルセルロース中にプレートして始原細胞形質導入効率を決定した(下記を 参照のこと)。 マウスのLyt-2マーカー遺伝子を含むLLySNおよびLMilyベクターについて、バ ルク形質導入効率を、APCまたはPE結合抗Lyt-2(Pharmingen)およびスルフローダ ミン(sulfurhodamine)結合抗CD34での染色により決定した。結果を、図16Aおよ び16Bに示す。ProPak-AまたはProPak-X由来のいずれのベクター上清も、PA317 細胞由来のベクター上清よりもより大きい効率で一次ヒト細胞を形質導入した。 さらに、両種向性ベクターと他種向性ベクターとの組合せは、同じレセプターに ついてそれらが競合しないので、2つのベクターを同じ細胞へ送達するのに有用 であり得る。メチルセルロースアッセイ 各形質導入由来の細胞(2.5×103〜10×103)を、4mlのメチルセルロース培 地(Stem Cell Technologies)および1ml IMDM(以下のサイトカインを含む(最 終濃度):c-キットリガンド100ng/ml;GM-CSF(Amgen)10ng/ml;IL-3 10ng/ml; IL-6 10ng/ml;rhEPO(Amgen)2ユニット/ml)へ添加した。1.0mlの細胞/サイト カインメチルセルロース混合物を、5つの35mmプレート上に5mlシリンジおよび 16ゲージ針を用いてプレートし、そしてプレートを2週間、37℃のインキュベー ターに置いた。 14日後、単一のメチルセルロースコロニーをかきとり、そしてneoまたはRevM1 0の存在についてPCRにより分析した。分析 個々のコロニーを、5μl中に吸引によりかきとり、そして25μl〜50μlのPCR 溶解緩衝液へ移した。PCR溶解緩衝液は、緩衝液A(100mM KCl、10mM Tris pH8. 2、2.5mM MgCl2)および緩衝液B(10mM Tris pH8.3、2.5mM MgCl2、1%Tween2 0、1%NP40、100μl/mlプロテイナーゼK)の1:1混合液である。混合液を37 ℃にて一晩、または56℃にて2時間インキュベートした。プロテイナーゼKを、 10から30分94℃にて加熱することにより不活化し、そして5〜10μlの溶解物をP CR反応について使用した。 PCR反応は、βグロビン遺伝子の100bpフラグメント、および使用したベクター に依存して、neo遺伝子の240bpフラグメントまたはRevM10の180bpフラグメント のいずれかを増幅した。使用したプライマーは、以下である。 Rev: 5’TCgATTAgTgAACggATCCTT 3’(配列番号5) 5’CTCCtgACTCCAATATTgCAg 3’(配列番号6) Neo: 5’TCgACgTTgTCACTgAAgCg 3’(配列番号7) 5’gCTCTTCgTCCAgATCATCC 3’(配列番号8) βグロビン: 5’ACACAACTgTgTTCACTAgC 3’(配列番号9) 5’CAACTTCATCCACgTTCACC 3’(配列番号10) 反応を、最終容量40μlにおいてPerkin Elmer サーマルサイクラー9600で以下 のように行った:94℃で5分間変性;94℃で30秒間、62℃で30秒間、72℃で1分 間の40サイクル;そして72℃で10分間。PCR産物を、エチジウムブロミドアガロ ースゲル電気泳動(Sambrookら、(1989)前出)により可視化し、そしてPCR産物を サザンブロットハイブリダイゼーションにより確認した。サンプルを、Revまた はneoバンドおよびβグロビンバンドの両方が存在する場合にポジティブとした 。結果は、表7に要約され、2つの異なる組織(MPBおよびABM)について、ProP ak上清はPA317上清よりも良好であったことを示す。 図16Aにおける結果は、他種指向型のProPac-X(X.36)および両種向性のProPak -A.6の両方が、PA317細胞から産生されたベクター調製物よりも高い効率でヒト 造血幹/始原細胞に形質導入するレトロウイルスベクター調製物を産生し得たこ とを示す。 以下の一連の実施例は、MLV他種向性、MLV両種向性、またはGaLVエンベロープ を有する高品質のベクター上清の産生、およびヒトまたはマウスベースのパッケ ージング細胞由来のこれらの異なるエンベロープ化ベクターが、一次ヒト造血細 胞に形質導入する能力を記載する。ProPak-AおよびProPak-X細胞株の相補的向性 および安全性をまた開発し、ベクター上清を同時培養により生成した。両種向性 および他種向性ベクター粒子の両方を含む同時培養上清で造血幹細胞および始原 細胞(HSPC)を播種した後、コロニー形成子孫の100%が導入遺伝子を含むことが 実証された。造血始原細胞に特徴的な表現型を有する細胞における導入遺伝子の 発現がまた実証された。実施例6:パッケージング細胞の誘導 種々のエンベロープを有するパッケージング細胞株の誘導を容易にするために 、MLV Gag-Pol機能を発現する細胞株を最初に構築した。gag-pol遺伝子を、MMLV -LTRプロモーター、CMV-IEプロモーター、またはラウス肉腫ウイルスLTRから発 現した(図1)。gag-polオープンリーディングフレーム(ORF)(Riggら、(1996) 前出)を、発現ベクターpMLV*へサブクローニングした。このプラスミドは、CMV プロモーターをMLV LTR(M-LTR)プロモーターで置換することによるpCMV*(Riggら 、(1996)前出)由来であった。エンベロープタンパク質ORFを、サイトメガロウイ ルス即時初期プロモーター(CMV-IE)、キメライントロン(SD/SA)、およびシミア ンウイルス40後期ポリアデニル化配列(pA)を含むプラスミドpCI(Promega,Madis on,WI)に見られる制限部位にサブクローニングした。 他種向性エンベロープ(Ex)遺伝子を、プラスミドpXeno(O'Neillら、(1985)J. Virol.53:100-106)由来の直鎖状テンプレートから以下のオリゴヌクレオチドプ ライマー対を用いるPCRにより得た。 5'-ACCTCGAGCCGCCAGCCATGGAAGGTTCAGCGTTCTC-3'(配列番号11)および 5'-AATCTAGACttaTTCACGCGATTCTACTTC-3'(配列番号12)。下線を引いたATGは、 ヌクレオチド291〜293に相当し、そして小文字は終止コドン、ヌクレオチド223 〜225(O'Neillら、(1985)前出)を示す。 キメラエンベロープ(Eax)遺伝子を、両種向性エンベロープ遺伝子(ヌクレオ チド772〜963;Ottら、(1990)J.Virol.64: 757-766)のApaIおよびBglII部位 の間の配列と、10Al由来の他種向性エンベロープ遺伝子の配列(ヌクレオチド80 1から965; Ottら、(1990)前出)に相当する合成DNAとを置換することにより、構 築した。 Gag-Polをコードするプラスミドを、MLV様配列を有さない、内因性MLV様配列( Riggら、(1996)前出)を有さない293細胞へ同時トランスフェクトした。一過性の Gag発現を全ての場合においてELISAにより検出したが、これは、MLV-LTR駆動Gag を有するProPak-A.6細胞(Riggら、(1996)前出)と等価のレベルでGagを安定に発 現しているクローンを単離することのみが可能であった。ベクターおよびエンベ ローププラスミドでの293/Gag-Pol細胞(ProGagと呼ぶ)の一過性同時トランス フェクションは、Anjou細胞の同時トランスフェクション(Pearら、(1993)Proc .Natl.Acad.Sci.USA 90: 8392-8396)よりも高い力価の上清を生じた。 次に、他種向性(Ex、図1)または両種向性(Riggら、(1996)前出)エンベロープ タンパク質のための遺伝子を有する発現プラスミドをProGag細胞へ安定に導入し 、そして他種向性(ProPak-Xと呼ぶ)または両種向性(ProPak-A.52)エンベロープ タンパク質のいずれかを発現するクローンをフローサイトメトリーにより単離し た。次に、ベクターLLySNおよびLMiLy(図2)を、これらの細胞へ形質導入し、 そして生じるプロデューサー細胞を用いて本研究に用いる上清を産生した。 レトロウイルスベクターLMiLyおよびLLySNは記載されている(Riggら、(1995) 前出およびRiggら、(1996)Virol.218: 290-295)。LMiLyおよびLLySNは、LLySN においてレトロウイルスLTR(L)プロモーターから直接発現されるか、またはLMiL yにおいて内部リボソーム侵入部位(i)を介してのいずれかで発現される、Lyt2表 面抗原(Ly)(Tagawaら、(1986)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 83: 3422-3426)を コードする。LMiLyにおけるパッケージング(psi)配列はヌクレオチド566までで あり(Shinnickら、(1981)Nature 293: 543-548)、そしてLLySNはより長いpsi配 列および非機能的ATGを有し(Benderら、(1987)J.Virol.64: 1639-1646;Mill erおよびRosman,(1989)Biotechniques 7: 980-990)、そしてまた内部SV40プロ モーター(S)から発現されるネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(N)を 含む。他に示されない限り、LLySN上清をTフラスコにおいてG418耐性細胞集団 から調製し、そしてLMiLy上清を散布充填層バイオリアクターにおいてプロデュ ーサー細胞クローンから調製した。 ExおよびEaエンベロープ(図1)と対照的に、細胞溶解が生じたため、キメラ Eax(図1)またはGaLVエンベロープタンパク質のいずれかを安定に発現する細 胞を反復した試みにおいて単離し得なかった。一過性上清をEaxおよびベクター 発現プラスミドでのProGag細胞の同時トランスフェクションにより調製し得たが 、Eaxエンベロープの安定な発現は293細胞、ProGag細胞、またはHT1080細胞にお いて達成されなかった。最も劇的であったのは、GALVエンベロープコードプラス ミドのトランスフェクションが、24時間以内にProGagまたは293細胞培養物の全 ての溶解を生じたことであった。一過性GaLV上清は、同時トランスフェクトした ProGag細胞により産生され得なかったが、マウス細胞を同時トランスフェクトし た場合にベクター粒子が放出されたため、GaLVエンベロープ遺伝子は機能的であ った。実施例7:向性の決定 両種向性、他種向性またはキメラ両種/他種エンベロープを有するベクター粒 子の表現型を確認するために、上清を種々のエンベロープ向性間を区別するため に選択した異なる種由来の細胞株上に接種した。細胞に、新しいProPak-X(他種 向性)もしくはProPak-A.52(両種向性)細胞株中にパッケージングされたベク ター粒子、またはEaxエンベロープをコードするベクターおよび発現プラスミド の同時トランスフェクションからのベクター上清を接種した。比較のために、Ga LV(PG13細胞由来)糖タンパク質または小胞性口内炎ウイルスのGタンパク質(V SV-G,Yeeら、(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91: 9564-9568)で偽型したM LV粒子をまた含ませた。他種向性、両種向性およびGaLVエンベロープについて観 察された向性(図20A)は、レトロウイルスについて確立された向性(Teich,(19 84)Cold Spring Harbor Laboratory)に一致した。 MLV-10A1の遺伝子型およびレセプター向性の類似性(Ottら、(1990)前出;Wils onら、(1994)J.Virol.68: 7697-7703;およびWilsonら、(1995)J.Virol.6 9: 534-537)により、Eaxエンベロープは、レトロウイルスベクターの両種向性お よび他種向性レセプターの両方への結合を媒介するはずである。Eaxエンベロー プを有するベクター粒子により、両種向性粒子に耐性であるが他種向性粒子に感 受性であるQuail細胞を形質導入し(図17B)、そしてまた他種向性ベクターに耐 性であるマウスNIH/3T3細胞を形質導入した(図17A)。従って、この両種向性エ ンベロープタンパク質の改変は、両種向性ベクターで形質導入され得ない細胞株 に対する特異性を与え、拡張された向性を確立した。予期されたように、全ての 細胞型が汎親和性MLV(VSV-G)ベクター粒子により形質導入された。VSV-Gタンパ ク質の毒性のため、おそらく一過性同時トランスフェクションによって上清を調 製しなければならない結果、より低い形質導入効率がこの偽型で達成された。実施例8:ヒト血清に対する耐性 293細胞から産生された両種向性および同種向性粒子は、マウスPA317細胞にパ ッケージングされた両種向性ベクターを不活化する条件下でのヒト血清による処 置により不活化されないことを上記に示した。他種向性ベクターを耐性について 同様に試験し、そして他種向性粒子がヒト血清での処置により不活化されないこ とを見出した(図18)。ProPak-A.52パッケージングクローン由来のベクター粒 子もまた耐性であったが、PA317パッケージングベクターは以前に実証されたよ うに(Takeuchiら、(1994)J.Virol.68: 8001-8007;Riggら、(1996)前出)、 ほぼ完全に不活化された(図18)。実施例9:RCR産生試験 ProPak-XおよびProPak-A.52細胞株におけるGag-Polパッケージング機能を、ML V-LTRプロモーターから発現させた。従ってこれらの細胞は、ProPak-A.6細胞よ りも多くのMLV由来配列を有する。しかし、MLV由来配列の組換えによるRCRの産 生は、最小でも3つの組換え事象がなお必要なため見込みがない。R配列の32ヌ クレオチドのみが、使用したLTRプロモーターにおいて保持されている(ベクタ ーと相同な比較的短い配列)。にもかかわらず、培養物および上清をRCRについ て厳密に試験した。ベクターBC140revM10を有するProPak-AおよびProPak-X細胞 の同時培養物を維持した。このベクターは、前記(Riggら、(1996)前出)のよう に、PA317細胞において迅速にRCRを産生した(表8)。培養物を3カ月までの間 維持したが、ProPak細胞を含む培養物由来の上清または細胞のいずれの場合にお いても、RCRは検出不可能であった(表8)。 ND:測定せず (>12):G418耐性プールの確立後12週間RCRを検出しなかった。* PP-XおよびPP-Aプロデューサー細胞集団の同時培養。 ProGag細胞のベクターおよびVSV-G発現プラスミド(Yeeら、(1994)前出)での一過 性トランスフェクションにより産生したMLV(VSV-G)偽型上清との1400gでの接種 により、ベクターをパッケージング細胞へ導入した。プロデューサー細胞の集団 をG418耐性について選択し、そして3または4日ごとに継代した。RCRを、PG4細 胞(ATCC CRL 2032)上でのプロデューサー細胞培養物由来の上清との接種によるS +L-アッセイにより、または2μg/mlポリブレンの存在下でのMus dunni細胞(For estellら、(1995)前出;Printzら、(1995)Gene Ther.2: 143-150)との同時培 養の3継代後に検出した。 実施例10:バイオリアクターでの改善されたレトロウイルスベクター上清の産生 PA317ベースのプロデューサー細胞株で定義されたレトロウイルスベクター産 生の原則(Forestellら、(1995)前出)を適用して、充填層バイオリアクターにお けるProPak細胞株由来のベクター産生を研究した。PP-A.52.LMiLyプロデューサ ー細胞株を用いて、フェドバッチ様式で操作される充填層バイオリアクターを、 ベクター上清の産生について回転瓶およびTフラスコと比較した。空気/CO2混 合物のバイオリアクター中への補足的散布の効果をまた試験し、バイオリアクタ ーの頭部空間由来の酸素移動が細胞増殖およびベクター産生を制限しているかど うかを決定した。補足的通気を、空気と5%CO2との医療グレードの混合物の直 接微小散布により達成し、そして0.01%プルロン酸F-68(Sigma,St.Louis,MO) を添加して剪断力由来の細胞損傷を防いだ。異なる産生容器から採集したベクタ ー上清を、それらのNIH/3T3細胞を形質導入する能力について比較した(図19)。 Tフラスコおよび回転瓶培養物から採集した上清は、それぞれ62%および63%の 形質導入効率を生じ、一方、非散布バイオリアクター由来の上清は、78%の形質 導入効率を生じた。遺伝子移入は、散布充填層バイオリアクターにおいて産生さ れたベクターで最大(100%)であり、これは、非散布充填層バイオリアクターに おいて頭部空間の酸素移動のみではベクター産生および細胞増殖を制限すること を示した。グルコースおよびグルタミン濃度の測定は、これらの主要栄養素が任 意の培養物において制限されないことを示した。この特定の実験において、ELIS AによるウイルスエンベロープおよびGagタンパク質の測定によりベクター産生を また分析し、改善された形質導入効率が増加したベクター産生によるかどうかを 決定した。散布充填層バイオリアクターにおける最終容量細胞密度は、Tフラス コにおけるよりもわずかに低かった(それぞれ4.0×106および4.7×106細胞/ml )が、散布充填層バイオリアクター由来のベクター上清は、Tフラスコ上清より もより高いレベルのウイルスタンパク質ならびにより高い形質導入を生じた。こ れらの結果は、散布充填層バイオリアクターにおける改善された産生が、増加し た細胞特異的ベクター産生性によることを示した。 PA317、PG13、ProPak-A.6、ProPak-A.52、およびProPak-Xベースの産生された 細胞株を、充填層バイオリアクターにおいて散布条件下で培養した。いずれの場 合においても、Tフラスコ培養物と比較してベクター産生において2〜20倍の改 善が達成された。 詳細には、細胞株への増加した遺伝子移入が初代細胞においてもまた達成され 得るかどうかを決定した。NIH/3T3細胞のより高い形質導入に加えて(図19)、 散布充填層バイオリアクターにおいて産生されたProPak上清は、Tフラスコ培養 物由来のベクター調製物よりもCD34ポジティブ細胞で約3倍高い形質導入効率を 生じた(表9)。2つの異なるアッセイを用いて(バルク培養物におけるLyt2発 現またはCFU-CのPCR分析)、遺伝子移入効率について異なる評価を生じた;しか し、相対的な数は一致した。 細胞を1回接種し、そして3日後にLyt2発現を測定した。CFU-Cの遺伝子マーカ ー(PCRにより決定)は、割合として表され、そして括弧内の値は、上記の生じ たβグロビンシグナルの総数で割ったRevM10ポジティブコロニーの数である。 実施例11:異なるベクター向性での初代細胞の形質導入 本実施例は、安定なプロデューサー細胞株から調製された異なる向性(両種向 性、他種向性、GaLV)のベクターでのCD34ポジティブ造血始原細胞またはCD4ポ ジティブPBLの形質導入を比較した。細胞をベクターに一回曝露し、Lyt2表面マ ーカー発現として表される形質導入効率を、PA317パッケージングベクター調製 物により達成される発現と直接比較した(表10)。向性に関わらず、全てのベク ター型が、MPBまたはABMから単離されたCD34ポジティブ細胞、またはCD4ポジテ ィブPBLを首尾よく形質導入した(表10)。これは、3つ全てのベクター型のレ セプターがこれらの細胞上で発現されることを意味する。一つのベクター向性が 他のどれよりも有意に高いレベルの形質導入を媒介するようには見えなかったが 、最高の形質導入効率がProPak-AまたはProPak-X上清で達成された(表10)。異 なる手段に由来したが、比較可能な形質導入がProPak-A.6またはProPak-A.52ク ローンのいずれかに由来するベクターで達成された(表10)。これらの比較にお いてまた、ヒトProPak-A細胞株由来の両種向性ベクター上清は一貫して、PA-317 ベースのプロデューサー細胞から調製された両種向性ベクターよりも高い割合の 標的細胞を形質導入した(表10)。 形質導入した始原細胞の表現型を、フローサイトメトリーにより決定した。大 部分のLyt2遺伝子を発現する細胞は、初期造血始原細胞に特徴的な表現型を示し た。すなわち、CD34抗原が分化した造血細胞株統について特異的な抗原(図20、 パネルD)の不在下で発現された(図20、パネルB)。 一つの向性が初代細胞を優先的に形質導入するようには見えなかったため、細 胞をまたProPak-AまたはProPak-X細胞に別々にパッケージングされたベクターの 混合物で接種し、異なるレセプターを標的とするベクターとの同時接種により、 より高い形質導入が達成され得るかどうかを試験した。5つのうち1つ以外の全 ての場合(PP-AおよびPP-X混合;表3)において、わずかに高い形質導入がこの 混合物で達成された(表10)。これらの実験において、上清中のベクターの濃度 が制限され得る可能性がある。なぜなら、2倍希釈を1回の接種に使用したこと と比較して、混合物において個々の上清を4倍に希釈したからである。異なる初代細胞型の形質導入は、LLySNベクター(A)またはLMiLyベクター(B )を含む上清を用いて1回接種した後に達成された。形質導入効率を、Lyt2発現 細胞の割合として測定し、そして値をPA317ベースの上清を用いて達成した値に 正規化した。6つの異なる組織から単離した造血細胞集団(詳細には、CD4+PBL または;2人の乳ガン患者(aおよびc)、多発性骨髄腫患者(b)、もし くは正常ドナー(d)由来のABMまたはMPBから選択された、CD34+細胞)を接種 した。ND=測定せず。実施例12:プロデューサー細胞同時培養におけるベクター産生 形質導入効率を増加する試みにおいて、ベクター上清を相補的なProPak-X.LMi LyおよびProPak-A.52.LMiLyプロデューサー細胞の同時培養から充填層バイオリ アクターにおいて産生した。この技術は、ピンポン増幅として知られ、おそらく 増加したベクターコピー数の結果として、マウスおよび鳥類プロデューサー細胞 株でより高い力価を生じる(Bodineら、(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87: 3738-3742;Cossetら、(1993)Virol.193: 385-395;Hoatlinら、(1995)J.M ol.Med.73: 113-120)。過去に生じた同時培養産生の問題は、RCRの産生である (Bodineら、(1990)前出;Cossetら、(1993)前出;Muenchauら、(1990)Virol.1 76: 262-265)。しかし、BC140revM10ベクターを有するProPak-AおよびProPak-X 細胞の拡張した同時培養の間RCRが生じなかったことを、本明細書中にすでに示 した(表8)。この事象は、ProPakパッケージング構築物と重複する配列を欠如 するLMiLyベクターではよりありそうでない。にもかかわらず、上清および産生 の終点の細胞を徹底的に試験し、そしてストリンジェントなアッセイ(Mus dunn iとのインキュベーションまたは同時培養およびPG-4細胞でのS+L-アッセイ)に よりRCRを含まないことを見出した。さらに、両種向性および他種向性ベクター 粒子の両方の存在を、許容および制限細胞株の形質導入により確認した。 1回のスピン接種でのPA317、ProPak-A、ProPak-X、またはProPak-A/X.LMiLy ベクター上清のCD34ポジティブ細胞を形質導入する能力を、まず比較した。細胞 サンプルをLyt2発現について分析し、そして関連した始原細胞におけるrevM10ト ランスジーンの存在をPCRにより決定した。Lyt2発現アッセイ(表10)と一致し て、ヒトベースのProPak-AまたはProPak-Xプロデューサー由来の上清は、PA317 パッケージングベクターよりもより効率的に細胞を形質導入し、そして最高レベ ルの形質導入がProPak-A/X上清で達成された(表11)。 ProPak-A/X.LMiLy上清を用いて、遺伝子移入効率を最大にする努力において異 なるサイトカインの組合せおよび複数回の接種を研究した。CD34ポジティブ細胞 に、PP-A/X.LMiLyベクターを1回、同じ日に2回、または2日連続して1日1回 、IL-3、IL-6、およびLIFまたはSCFのいずれかの存在下でスピン接種した。最初 のスピン接種前に、細胞を、上記のように各20ng/mlのIL-3およびIL-6、ならび に50ng/mlのSCFまたはLIFの存在下で1日インキュベートした。表12における結 果は、遺伝子移入がSCFで処理した培養物において1回の接種後により高かった が、CFU-Cへの遺伝子移入はLIFまたはSCFのいずれかの存在下で2日連続して2 回接種した培養物について100%であったことを示す。さらに、サイトカインカ クテルの両方の存在下で、Lyt2トランスジーンは、総細胞集団の40%までにおい て発現され、そしてその35%の細胞はまた、CD34ポジティブであった。 プロデューサー細胞株由来の散布充填層バイオリアクターにおいて調製したベク ター上清で達成した形質導入効率を示した。正常MPB由来のCD34+/Thy+細胞を、 1時間単位重量にて接種し、次いで3時間スピン接種した。形質導入効率を、Ly t2表面抗原の発現、または個々のメチルセルロースコロニー(CFU-C;表9)の標 識頻度として示す。ProPak両種向性および他種向性LMiLyプロデューサー細胞の同時培養からの充填 層バイオリアクター上清でのCD34+細胞(MPB)の形質導入。細胞をスピン接種し、 そして示すようにIL-3、IL-6、およびLIFまたはSCFの存在下でインキュベートし た。Lyt2の発現を最後の接種の2日後に決定し、そして個々のメチルセルロース コロニー(CFU-C)の標識頻度を決定した(表9)。 1Riggら、(1996)前出。 上記は、ヒト細胞上の異なるレセプターを標的にし得、そして遺伝子治療適用 のためにヒト細胞への効率的な遺伝子移入を提供し得る、安全で新規なレトロウ イルスベクターパッケージング細胞株である。実施例6に記載された新規な株は 、実施例1のProPak-Aクローン6とは異なる。なぜなら、Gag-Pol ORFが、ProPa k-A.6においてCMVプロモーターではなくMLV-LTRプロモーター(表13)から発現 さ れたためである。さらなるMLV特異的配列を有するにも関わらず、ストリンジェ ントな試験(すなわち、BC140revM10ベクターを有するProPak-XおよびProPak-A. 52細胞の拡張された同時培養)を用いてRCRは、上清または細胞において検出不 可能であった。これらのProPakベクター粒子はヒト血清に耐性であり、従ってヒ トにインビボで投与された場合に機能的なままであるはずである。 ProPak-XおよびProPak-A細胞株は、ヒト細胞上の異なるレセプターを利用する 粒子を産生し、そして、種々の種由来の細胞株を形質導入する能力を決定するこ とにより向性が確認された。両方のレセプターを、ProPak-AおよびProPak-Xプロ デューサー細胞株の同時培養物からの上清を産生することにより標的し得た。Pr oPak細胞株の安全性は、RCR形成の危険なしにベクターの効率的なピンポン増幅 を可能にする。ProPak-A/Xベクターを用いて、MPBから精製したCD34ポジティブ 細胞由来のCFU-Cの100%の標識を達成した。特に、本実施例は、接種したMPB由 来のCD34ポジティブ細胞の40%において、接種後2日、Lyt2トランスジーンの発 現を有意に実証した。 本実施例はまた、高効率遺伝子移入が安定なプロデューサー細胞培養物から調 製された上清で最も良好に達成されることを示した。上記のアプローチは、安定 な細胞、現存するおよび未来のベクター系からの産生に適用可能である。 当業者に明白なように、本明細書中に開示される本発明の精神および範囲から 逸脱することなく種々の改変および変更がなされ得る。従って、本発明は、以下 の請求の範囲のみにより制限される。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FI,FR,GB,GR,IE,IT,L U,MC,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF ,CG,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE, SN,TD,TG),AP(KE,LS,MW,SD,S Z,UG),UA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD ,RU,TJ,TM),AL,AM,AT,AU,AZ ,BA,BB,BG,BR,BY,CA,CH,CN, CU,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,GB,G E,HU,IL,IS,JP,KE,KG,KP,KR ,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV, MD,MG,MK,MN,MW,MX,NO,NZ,P L,PT,RO,RU,SD,SE,SG,SI,SK ,TJ,TM,TR,TT,UA,UG,US,UZ, VN (72)発明者 フォレステール,シーン ピー. アメリカ合衆国 カリフォルニア 94025, メンロ パーク,ホーマー レーン 20 (72)発明者 ボーンレイン,アーンスト アメリカ合衆国 カリフォルニア 94025, ロス アルトス,ビネベニュー アベニュ ー 476

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.高形質導入効率を有するレトロウイルスベクター上清を得る方法であって、 該方法は以下の工程:プロデューサー細胞を充填層バイオリアクター内で培養す る工程、および該プロデューサー細胞により産生された上清を採集する工程を包 含し、それにより高形質導入効率を有するレトロウイルス上清を得る、方法。 2.上記充填層バイオリアクターが、層を横切る圧力低下が約0〜0.25mbar/cm であるように構築されるベットマトリックスを含む、請求項1に記載の方法。 3.前記圧力低下がごくわずかである、請求項2に記載の方法。 4.高形質導入効率を有するレトロウイルスベクター上清を得る方法であって、 該方法は以下の工程: a.プロデューサー細胞を約5〜50cm2/mlの表面積対容量比を有する充填層バ イオリアクターに導入する工程; b.該プロデューサー細胞を約30℃〜約37℃の温度で培養する工程;および c.該プロデューサー細胞により産生された上清を、該上清の形質導入効率が 標的細胞集団に最適であるような時間で採集する工程、 を包含し、それにより高形質導入効率を有するレトロウイルス上清を得る、方法 。 5.前記充填層バイオリアクターが、層を横切る圧力低下がごくわずかであるよ うに構築されるベットマトリックスを含む、請求項4に記載の方法。 6.前記表面積対容量比が約20〜約30cm2/mlである、請求項4に記載の方法。 7.前記表面積対容量比が約24cm2/mlである、請求項6に記載の方法。 8.前記プロデューサー細胞が、該細胞が少なくとも1mlあたり106細胞の細胞 密度まで増殖するまで約37℃で培養され、引き続いて約32℃で培養される、請求 項4に記載の方法。 9.前記プロデューサー細胞がPA317細胞に由来し、そして前記上清が、該プロ デューサー細胞が少なくとも1mlあたり106細胞の細胞密度に達する時間から開 始して2〜12時間の平均滞留時間後に採集される、請求項8に記載の方法。 10.前記プロデューサー細胞がヒト293細胞に由来し、そして前記上清が、該 プロデューサー細胞が少なくとも1mlあたり106細胞の細胞密度に達する時間か ら開始して1〜24時間の平均滞留時間後に採集される、請求項8に記載の方法。 11.前記培養する工程が、1日あたり約1〜約24リアクター容量の速度での定 常灌流下で行われる、請求項4に記載の方法。 12.前記培養する工程が、1日あたり約2〜12リアクター容量の速度での定常 灌流下で行われる、請求項4に記載の方法。 13.前記培養する工程が、1日あたり約2〜6リアクター容量の速度での定常 灌流下で行われる、請求項11に記載の方法。 14.前記培養する工程が、1日あたり約4リアクター容量の速度での定常灌流 下で行われる、請求項12に記載の方法。 15.高形質導入効率を有するレトロウイルスベクター上清を得る方法であって 、該方法は以下の工程: a.非マウスプロデューサー細胞を約5〜50cm2/mlの表面積対容量比を有する 充填層バイオリアクターに導入する工程; b.該プロデューサー細胞を約30℃〜約37℃の温度で培養する工程;および c.該プロデューサー細胞により産生された上清を、該上清の形質導入効率が 標的細胞集団に最適であるような時間で採集する工程、 を包含し、それにより遺伝子治療に適した高形質導入効率のレトロウイルス上清 を得る、方法。 16.前記充填層バイオリアクターが、層を横切る圧力低下がごくわずかである ように構築されるベットマトリックスを含む、請求項15に記載の方法。 17.前記表面積対容量比が約20〜約30cm2/mlである、請求項15に記載の方法 。 18.前記表面積対容量比が約24cm2/mlである、請求項17に記載の方法。 19.前記非マウスプロデューサー細胞が、該細胞が、少なくとも1mlあたり106 細胞の細胞密度まで増殖するかまたはコンフルエント単層を生成するまで、約3 7℃で培養され、その後約32℃で培養される、請求項15に記載の方法。 20.前記非マウスプロデューサー細胞が、293細胞、HT1080細胞およびD17細胞 からなる群より選択される細胞株に由来する、請求項15に記載の方法。 21.前記非マウスプロデューサー細胞が293細胞に由来し、そして前記レトロ ウイルス上清が、該プロデューサー細胞が少なくども1mlあたり106細胞の細胞 密度に達する時間から開始して1〜24時間の平均滞留時間後に採集される、請求 項20に記載の方法。 22.前記培養する工程が、1日あたり約1〜約24リアクター容量の速度での定 常灌流下で行われる、請求項15に記載の方法。 23.前記培養する工程が、1日あたり約2〜6リアクター容量の速度での定常 灌流下で行われる、請求項22に記載の方法。 24.前記培養する工程が、1日あたり約4リアクター容量の速度での定常灌流 下で行われる、請求項23に記載の方法。 25.高形質導入効率を有するレトロウイルスベクター上清を産生する方法であ って、該方法は以下の工程: a.霊長類プロデューサー細胞を約5〜50cm2/mlの表面積対容量比を有する充 填層バイオリアクターに導入する工程; b.該プロデューサー細胞を約30℃〜約37℃の温度で定常灌流様式下で培養す る工程;および c.該プロデューサー細胞により産生された上清を、該上清の形質導入効率が 標的細胞集団に最適であるような時間で採集する工程、 を包含し、それにより高形質導入効率のレトロウイルス上清を得る、方法。 26.前記充填層バイオリアクターが、層を横切る圧力低下がごくわずかである ように構築されるベットマトリックスを含む、請求項25に記載の方法。 27.前記表面積対容量比が約20〜約30cm2/mlである、請求項25に記載の方法 。 28.前記表面積対容量比が約24cm2/mlである、請求項25に記載の方法。 29.前記霊長類プロデューサー細胞が、該細胞が、少なくとも1mlあたり106 細胞の細胞密度まで増殖するかまたはコンフルエント単層を生成するまで、約37 ℃で培養され、その後約32℃で培養される、請求項25に記載の方法。 30.前記霊長類プロデューサー細胞が293細胞に由来する、請求項25に記載 の方法。 31.前記プロデューサー細胞がProPak-A細胞に由来する、請求項30に記載の 方法。 32.前記プロデューサー細胞がProPak-X細胞に由来する、請求項30に記載の 方法。 33.前記培養する工程が、無血清培養培地を用いて行われる、請求項25に記 載の方法。 34.前記灌流が、1日あたり2〜6リアクター容量の速度である、請求項25 に記載の方法。 35.前記灌流が、1日あたり約4リアクター容量の速度である、請求項34に 記載の方法。 36.遺伝子治療に適した高形質導入効率のMMLVベースのレトロウイルス上清を 得る方法であって、該方法は以下の工程: a.ヒトベースのプロデューサー細胞を、約5〜50cm2/mlの表面積対容量比を 有する充填層バイオリアクター内で、約2〜3×104細胞/cm2で開始する濃度で 、定常灌流下で、約20%〜50%空気飽和で培養培地を維持するのに十分な通気を 有し、そして約37℃の温度で培養する工程; b.該細胞を、少なくとも1mlあたり106細胞の細胞密度まで増殖させる工程 ; c.該温度を約32℃まで低下させる工程;および d.1〜24時間の平均滞留時間で該細胞より産生された上清を採集する工程、 を包含し、それにより遺伝子治療に適した高形質導入効率のレトロウイルス上清 を得る、方法。 37.前記プロデューサー細胞細胞が、293細胞、HT1080細胞、ProPak-A.6細胞 (ATCC受託番号CRL 12006)、ProPak-A.52細胞、またはProPak-X.36細胞(ATCC 受託番号12007)に由来する、請求項36に記載の方法。 38.前記充填層リアクターが、約500ml〜約30Lの容量および足場依存性細胞の 培養に適したベット表面積を有する、請求項36に記載の方法。 39.前記充填層バイオリアクターが、層を横切る圧力低下がごくわずかである ように構築されるベットマトリックスを含む、請求項36に記載の方法。 40.前記表面積対容量比が約20〜約30cm2/mlである、請求項36に記載の方法 。 41.前記表面積対容量比が約24cm2/mlである、請求項40に記載の方法。 42.前記培養する工程が、無血清培養培地を用いて行われる、請求項36に記 載の方法。 43.前記灌流が、1日あたり2〜6リアクター容量の速度である、請求項36 に記載の方法。 44.前記灌流が、1日あたり約4リアクター容量の速度である、請求項43に 記載の方法。
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