JPH09500155A - 脂肪酸アルキルエステルの調製方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 エステル交換反応が行われる反応混合物から、エステル相と、脂肪酸、脂肪酸塩そして／又は他の脂肪酸化合物を含むグリセリン相とが形成され、且つ相互に分離されるトリグリセリドのエステル交換反応、特に触媒を用いたトリグリセリドのエステル交換反応によって脂肪酸アルキルエステルを調製する方法であって、脂肪酸、脂肪酸塩そして／又は他の脂肪酸化合物がグリセリン相から分離され、アルコールによってエステル化処理され、別の異なる反応混合物にリサイクルされ、そこで更なるエステル交換反応が行われることを特徴とする脂肪酸アルキルエステルの調製方法。本発明によるこの方法によって、脂肪酸エステル収量の高いエステル交換反応が可能になる。

Description

【発明の詳細な説明】 脂肪酸アルキルエステルの調製方法 本発明はエステル交換反応による脂肪酸アルキルエステルの調製方法に 関し、特にトリグリセリドの触媒を用いたエステル交換反応によって、エステル 交換反応が行われる反応混合物からエステル相と、脂肪酸、脂肪酸塩、そして／ 又はその他の脂肪酸化合物を含むグリセリン相とを分離生成する脂肪酸アルキル エステルの調製方法に関する。 エステル交換反応によって、トリグリセリドのアルコーリシスを理解す ることができる。即ち、脂肪酸とグリセリンとのモノエステルと、アルコール、 特にメタノール及びエタノールとの反応によって、中間生成物を経てジグリセリ ド及びモノグリセリドが形成される。 脂肪酸エステル、特にメチルエステルはオレオ化学(oleochemistry)に 於ける重要な中間生成物である。ヨーロッパだけでも年間２０万トンの植物油メ チルエステルが界面活性剤用の一次原料として生産されている。このほか、脂肪 酸メチルエステルはディーゼル燃料の代用燃料としてその重要性を増している。 エステル交換反応のための触媒としては、塩基性触媒（アルカリ水酸化 物、アルコラート、酸化物、炭酸塩、陰イオン交換体）、酸性触媒（鉱酸、ｐ- トルエンスルホン酸、三弗化硼素、陽イオン交換体）、及び酵素（リパーゼ）を 使用することが可能である。現今では、反応混合物に溶解する触媒が好んで用い られている。これら の触媒は均一な混合物を形成すると共に、早い反応速度と軟反応条件を保証する 。触媒のうち最もよく利用される均一なものとしては、水酸化ナトリウム、水酸 化カリウム、ナトリウムメチラートがあり、これらはアルコールに溶解して植物 油と混合される。こうした方法は、オーストリア特許発明明細書第AT-B 386,222 号に記載されている。酸性触媒は高い反応熱と圧力、そして更に複雑な反応手順 が必要になる。酸性触媒を使用したエステル交換反応については、フランス特許 出願公開明細書第85 02340号に開示されている。 塩基性触媒を用いたエステル交換反応では、溶媒を使用しないで反応を 行うことができる。反応はトリグリセリドとアルコールとの２相系によって始ま り、反応が進行し、エステルが形成される間に均一な相が形成され、次いでグリ セリンの形成と分離によって再び２相系になる。 一価アルコールによる脂肪酸エステル調製のためのトリグリセリドのア ルコーリシスでは、副生成物としてグリセリン・リッチの相が得られる。この相 は更に脂肪酸、脂肪酸塩、及び脂肪酸エステルを含んでいる。このグリセリン相 からこれら脂肪酸化合物を分離するために、通常、酸による処理が行われる。こ の処理によって、脂肪酸は脂肪酸塩から遊離される。脂肪酸及び脂肪酸エステル 自体はグリセリンと非混合性であるから、グリセリン相から分離した相として沈 降する。 これまで、この脂肪酸相の合理的な利用法について実証されたことは無 かったし、通常、この脂肪酸相はエステル交換反応過程で出るロス分として認識 されていた。特に、この過程で大量処理する際には、このロス分は不利な効果を 有し、それを１乃至２％の オーダーで改善することによってさえ、処理過程の経済性は決定的に向上する。 従って、本発明の目的はエステル交換反応、特に、触媒を用いたトリグ リセリドのエステル交換反応による改良された脂肪酸アルキルエステル調整方法 を提供することにある。 本発明による方法は、脂肪酸、脂肪酸塩、そして／又はその他の脂肪酸 化合物をグリセリン相から分離し、アルコールによってエステル化し、異なるか 或いは更に他の反応混合物に対しリサイクルし、そこで更なるエステル交換反応 が行われることを特徴としている。 エステル化は良く知られている方法、特に酸性触媒を用いた方法を用い て行うことができる。酸性触媒の例としては、硫酸、パラトルエンスルホン酸、 又はＨ＋型のイオン交換体を持ったもの等がある。 欧州特許出願公開明細書第EP-A-0 184 740号には、遊離脂肪酸のエステ ル化についての開示がなされている。しかし、この方法はある種の天然油脂に含 まれる遊離脂肪酸のプリエステル化に関する方法である。遊離脂肪酸を含む天然 油脂を原料とした場合、先ず酸性触媒を用いて遊離脂肪酸を過剰なメタノールに よってエステル化し、触媒を含むアルコール相を分離し、グリセリン―メタノー ル混合物を含む残留油（トリグリセリド相）を抽出し、そしてこの処理された油 相とメタノールとのアルカリ触媒を用いたエステル交換反応によって、脂肪酸メ チルエステルが得られる。しかし、脂肪酸化合物は、トリグリセリドのアルコー リシスに於いてもエステル交換反応過程でグリセリン相と共に回収されるから、 収量が減少す る。本発明によれば、エステル交換反応で得られる脂肪酸のエステル化と、グリ セリン相の処理によって、処理されたトリグリセリドには遊離脂肪酸が含まれ、 それが処理されて遊離脂肪酸が形成されるのみならず、エステル交換反応時に形 成された脂肪酸化合物をも回収することが可能になる。 欧州特許明細書第EP-B-0 192 035号には、原脂そして／又は原油に含ま れる遊離脂肪酸のプリエステル化方法について開示がなされている。この方法で は、原脂そして／又は原油内の遊離酸の含有量を減少するために、これらを酸性 エステル化触媒の存在下で低モノアルコールで処理している。その際、酸性形の 個体陽イオン交換樹脂を触媒として使用し、反応混合物を陽イオン交換樹脂から の分離した後、反応水を除去している。 本発明による方法は、アルカリ触媒を用いたトリグリセリドのエステル 交換反応に特に有利である。この種のエステル交換反応では、酸性エステル化に も拘わらず、酸性原料を直接、且つエステル交換反応のための酸性触媒を分離す ることなくリサイクルすることが可能である。この場合、エステル化のための酸 性触媒量とエステル交換反応のためのアルカリ触媒量との割合によって、エステ ル交換反応過程に於けるｐＨ値を僅かに修正することが求められるだけである。 エステル化のための触媒はグリセリン相の処理過程で回収される。また、エステ ル化未了の遊離脂肪酸はグリセリン相と共にソープとして回収される。エステル 化の際に生成されたエステルはエステル相に残る。従って、エステル交換反応過 程の収量は実質的に増加する。 本発明による特に好適な実施例では、エステル化された脂 肪酸、脂肪酸塩そして／又はその他の脂肪酸化合物が、更なるエステル交換反応 が本質的に完了してはいるが、前記異なるエステル交換反応のエステル相とグリ セリン相とが互いに分離されていない段階で、それぞれ前記異なる又はその他の 反応混合物に加えられる。 更に、本発明による方法は以下のように実施すること、即ち、エステル 交換反応を多くの段階で連続的に行い、各段階で脂肪酸相を形成し、これをエス テル化処理して、次のエステル交換反応段階に加えると言う仕方で実施するのが 最良の実施方法であることが判った。 更に、本発明による方法の特に好適な変形実施例では、多くの連続した 段階でエステル交換反応を行い、これら各段階で生成しグリセリン相を分離及び 結合し、結合されたグリセリン相から脂肪酸相を生成し、これをエステル化処理 して、前記異なる反応混合物に加えて、更なるエステル交換反応を実施する。 本発明による方法では、植物性及び動物性油脂の全てをトリグリセリド としてエステル交換することが可能である。例えば、菜種油、大豆油、ひまわり 油、獣脂、オリーブ油、落花生油、紅花油、あまに油、下剤用堅果油、綿実油、 米油、ラード等がある。本発明による方法は、食用品質の植物油から未精製油に 至るまで、また使用済み脂肪ベースの油圧油、使用済み食用油等の動物性脂肪又 は脂肪性廃油に至る殆どの品質の原料を用いた処理に適している。 特に、菜種油、大豆油、獣脂は、トリグリセリドとして適しており、ア ルコールとしてメタノールを使用すれば、エステル交換反応によって菜種油脂肪 酸メチルエステル、大豆油脂肪酸メチルエステル、そして獣脂脂肪酸メチルエス テルが生成される。 本発明による方法は、遊離脂肪酸を含む動物性又は植物性油脂のエステ ル交換反応に特に適していることが判った。本発明による方法の更に好適な変形 実施例では、椰子油又は椰子脂肪をそれぞれ植物油として使用している。椰子油 は１５％までの遊離脂肪酸を含むことができる。 廃物利用の経済性の観点から興味ある本発明による方法の変形実施例で は、トリグリセリドとして、使用済み食用油そして／又はたっぷり揚げものに使 用した脂肪、又は脂肪ベースの使用済み油圧油の様な廃油そして／又は廃脂肪を 利用する。 エステル交換反応用アルコール、そして／又はエステル化用アルコール としては、炭素原子１個乃至８個を有するアルコール、特に１個又は２個の炭素 原子を有するアルコールが適している。例えば、メタノール、プロパノール、i −プロパノール、ブタノール、２−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、 ヘプタノール、そしてオクタノール等がある。 以下の応用例をもとに、本発明の好適実施例を参照して本発明を更に詳 述する。 ［実施例］ オーストリア特許発明明細書第AT-B 386,222号に開示されている方法、 即ちグリセリン相の中和によって菜種油から菜種油メチルエステルを生成するた めのアルカリエステル交換反応方法によって得られた、８．１質量％のメタノー ル濃度を有する脂肪酸相３１．４ｇを、３．３ｇのメタノール及び０．３ｇの濃 硫酸と混合し、温度８５℃で２時間還流した。エステル化処理によって脂肪酸相 の脂肪酸濃度は５０乃至１２．５質量％に減少した。この結果できた エステル、脂肪酸、及び硫酸の混合物を、反応（＝アルコーリシス）の完了後で あって、且つ相分離以前に更なるエステル交換反応を行う反応混合物に加えた。 この第二のエステル交換反応は第一のエステル交換反応と同じ条件で実施した。 このエステル化処理した脂肪酸相の追加によって、メチルエステルの収 量を増加することができた。脂肪酸相のエステル化処理及び回収を伴うエステル 交換反応によって、菜種油１００ｇからメチルエステル(RME)１００ｇを得るこ とができた。脂肪酸相のリサイクルをしない場合、菜種油１００ｇ当たりのメチ ルエステル(RME)の収量は９７ｇであった。 エステル化した脂肪酸相のリサイクルの有無に拘わらず、得たメチルエ ステルの品質は常に望ましい状態にあった。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 ＥＰ(ＡＴ，ＢＥ，ＣＨ，ＤＥ， ＤＫ，ＥＳ，ＦＲ，ＧＢ，ＧＲ，ＩＥ，ＩＴ，ＬＵ，Ｍ Ｃ，ＮＬ，ＰＴ，ＳＥ)，ＯＡ(ＢＦ，ＢＪ，ＣＦ，ＣＧ ，ＣＩ，ＣＭ，ＧＡ，ＧＮ，ＭＬ，ＭＲ，ＮＥ，ＳＮ， ＴＤ，ＴＧ)，ＡＵ，ＢＧ，ＢＲ，ＢＹ，ＣＡ，ＣＮ， ＣＺ，ＦＩ，ＨＵ，ＪＰ，ＫＲ，ＬＴ，ＬＶ，ＭＧ，Ｎ Ｏ，ＮＺ，ＰＬ，ＲＯ，ＲＵ，ＳＩ，ＳＫ，ＵＡ，ＵＳ ，ＶＮ (72)発明者 ミッテルバッハ マルティン オーストリア共和国、アー―8010 グラー ツ、アム ブルーメンハング 27 (72)発明者 コンカール ミヒャエル オーストリア共和国、アー―8501 リーボ ッホ、フォルストガッセ ８

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １．エステル交換反応が行われる反応混合物から、エステル相と、脂肪酸、脂肪 酸塩そして／又は他の脂肪酸化合物を含むグリセリン相とが形成され、且つ相互 に分離されるトリグリセリドのエステル交換反応、特に触媒を用いたトリグリセ リドのエステル交換反応によって脂肪酸アルキルエステルを調製する方法であっ て、脂肪酸、脂肪酸塩そして／又は他の脂肪酸化合物がグリセリン相から分離さ れ、アルコールによってエステル化処理され、別の異なる反応混合物にリサイク ルされ、そこで更なるエステル交換反応が行われることを特徴とする脂肪酸アル キルエステルの調製方法。 ２．酸性触媒を用いてエステル化が行われることを特徴とする請求の範囲第１項 に記載の方法。 ３．酸性触媒を用いたエステル化処理の後に得られた原料生成物は、更なる処理 せずそのまま、前記異なる反応混合物に加えられることを特徴とする請求の範囲 第２項に記載の方法。 ４．アルカリ触媒の存在下でエステル交換反応が行われることを特徴とする請求 の範囲第１項乃至第３項の少なくとも１項に記載の方法。 ５．エステル化処理された脂肪酸、脂肪酸塩そして／又は他の脂肪酸化合物は、 更なるエステル交換反応が本質的に完了した後であっ て、且つこのエステル交換反応によるエステル相とグリセリン相とが相互に分離 される以前の状態で、前記異なる反応混合物に加えれられることを特徴とする請 求の範囲第１項乃至第４項の少なくとも１項に記載の方法。 ６．エステル交換反応が多くの連続段階で実施されると共に、各段階では脂肪酸 相が生成され、この脂肪酸相はエステル化処理されて、後段のエステル交換反応 に加えられることを特徴とする請求の範囲第１項乃至第５項の少なくとも１項に 記載の方法。 ７．エステル交換反応が多くの連続段階で実施されると共に、各段階で生成され たグリセリン相は分離、且つ結合され、この結合されたグリセリン相から形成さ れた脂肪酸相はエステル化処理され、更なるエステル交換反応が行われる他の反 応混合物に加えられることを特徴とする請求の範囲第１項乃至第５項の少なくと も１項に記載の方法。 ８．エステル交換反応用アルコール及びエステル化用アルコールとして、メタノ ール又はエタノールを使用することを特徴とする請求の範囲第１項乃至第７項の 少なくとも１項に記載の方法。