JPH0947149A - 冬虫夏草の子実体人工栽培方法 - Google Patents
冬虫夏草の子実体人工栽培方法Info
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Abstract
た、生糸を紡いだ後の死んだ蚕のサナギを固体培地とし
て有効利用すると共に、液体培地を併用することによ
り、薬効に優れ、焼酎に漬けたり煎じて飲むのに便利な
キノコ状の子実体を年間を通して大量に人工栽培するこ
とができる。 【解決手段】 繭から生糸を紡いだ後の、死んだ蚕のサ
ナギ1を乾燥させて、これを試験管2に入れて、蚕のサ
ナギ1の一部が空気中に露出するように液体培地3を注
入してから、蝶や蛾などの鱗翅目に属する昆虫のサナギ
に寄生する冬虫夏草の菌を接種し、これを培養して蚕の
サナギ1に子実体9を形成させることを特徴とする冬虫
夏草の人工栽培方法である。
Description
に属する昆虫のサナギに寄生するコナサナギタケ、ハナ
サナギタケ、サナギタケなどの冬虫夏草の子実体を人工
的に栽培する方法に関するものである。
れてきたが、最近、これらのキノコに抗腫瘍成分が含ま
れていたり、心筋や大動脈の収縮抑制や右心房の収縮増
強の効果があることが明らかとなってきた。
草は、コウモリ蛾科のコウモリ蛾の幼虫に寄生する肉座
科の不完全菌類の一種である。この中国産のものは自然
物を採取したもので数も少なく高価であり、日本産のも
のは更に数が少なく漢方薬として使えるほどの採取は不
可能である。
高価な冬虫夏草を人工的に栽培する方法が種々検討され
ている。例えば特開昭54−80486号の第433頁
右下欄には、肉座科の不完全菌類である冬虫夏草の虫体
菌糸又は子座胞子をニンニク煎汁・醤油・砂糖などの食
品に混合した培養液を殺菌し、常法により液体培養する
か、またはこの液体培養液を米・麦・とうもろこし等の
穀物又はカイコ・セミ等節足動物の昆虫類の成虫・サナ
ギ・幼虫等に吸着させて固体培養を行う冬虫夏草の培養
法が示されている。
に説明されているように、人工栽培の問題点として、菌
種によって寄生する虫体が異なることと、食品や薬とし
ての安全性を考慮して、植物性の料理材料のみで培地を
作成することを特徴としている。しかし公開公報第43
4頁右下欄〜435頁左上欄には、穀物や虫体の固体培
地を利用する場合には、シイタケ菌等の培養の常法によ
ると記載されているだけで、何ら具体的な方法は示され
ていない。つまりここでは、料理材料から製造した培地
は具体的に示されているが、菌種によって寄生する虫体
が異なると言いながら、特定の菌種を用いた場合の方法
や実施例が何ら示されておらず、また培地となる虫体が
どのような種類かも分からず発明が実施化できる程度に
は完成されていない。
いて多く提案されているが、これらは薬効成分を抽出す
るのが目的であるため、培養によって菌糸体を生成させ
るもので子実体の栽培までは目的としていない。このた
め漢方薬として輸入されている冬虫夏草のように、キノ
コ状の子実体を形成できれば、これを消費者が購入して
焼酎に漬けたり煎じて飲むことが出来る利点がある。
昭62−107725号の第168頁左上欄に、ハナサ
ナギタケ、コナサナギタケを自然界より採取し、この菌
糸体を同じ鱗翅目である生きている蚕の幼虫に直接、感
染させる方法が示されている。ここでは蚕が繭を形成す
る直前にハナサナギタケ、コナサナギタケの分生胞子、
並びに菌糸体を直接、感染させることにより、蚕の体液
の流れに沿って菌が虫体の全体に拡がって昆虫を殺し、
至適湿度75%〜95%、至適温度5〜15℃で培養す
ると蚕のサナギより、自然界で採取したものと同様の子
実体が得られると記載されている。
は蚕が繭を形成する直前の、生きている幼虫に菌糸体を
接種しなければならず、その接種時期の管理や飼育が難
しい。つまり生きている幼虫を利用することから栽培す
る時期が限定されるとともに、キノコ栽培業者が生きて
いる幼虫を養蚕業者から購入して来るため運搬や保管、
飼育などに煩雑な手間がかかり生産コストが高くなる問
題がある。
と、これを蚕糸業者に販売し、ここで加熱してサナギを
殺し、繭を容器に入れた熱湯中に浮かべてここから生糸
を紡いでいる。生糸が全部を紡がれると繭の中にいた死
んだサナギだけが残り、このサナギを乾燥させ、これを
鯉などの養殖魚の飼料にしたり、撒き餌の原料や肥料と
して販売している。福島県では毎年約1000トンの繭
玉が生産され、そのうち800トンがサナギで、これを
乾燥させても飼料や肥料としてしか利用できずその価格
も安かった。
去し、飼料や肥料としてしか利用されていなかった、生
糸を紡いだ後の死んだ蚕のサナギを固体培地として有効
利用すると共に、液体培地を併用することにより、薬効
に優れ、焼酎に漬けたり煎じて飲むのに便利なキノコ状
の子実体を年間を通して大量に人工栽培する方法を提供
するものである。
冬虫夏草の子実体人工栽培方法は、繭から生糸を紡いだ
後の、死んだ蚕のサナギを乾燥させて、これを培養容器
に入れて、蚕のサナギの一部が空気中に露出するように
培養液を注入してから、蝶や蛾などの鱗翅目に属する昆
虫のサナギに寄生する冬虫夏草の菌を接種し、これを培
養して蚕のサナギに子実体を形成させることを特徴とす
るものである。
栽培方法は、繭から生糸を紡いだ後の、死んだ蚕のサナ
ギを乾燥させて、これを培養容器に入れて、蝶や蛾など
の鱗翅目に属する昆虫のサナギに寄生する冬虫夏草の菌
を培養した培養液を、蚕のサナギの一部が空気中に露出
するように注入して菌を接種し、これを培養して蚕のサ
ナギに子実体を形成させることを特徴とするものであ
る。
栽培方法は、前記培養容器が、上部を開口して、隔離壁
の高さが蚕のサナギの体長より長い複数の小室で形成さ
れ、各小室に死んだ蚕のサナギを1匹ずつ入れて培養す
ることを特徴とするものである。
説明する。本発明の栽培の対象となる冬虫夏草は、蝶や
蛾などの鱗翅目に属する昆虫のサナギに寄生する、コナ
サナギタケ、ハナサナギタケ、サナギタケなどに適用さ
れる。また本発明の固体培地は、国内でも大量に生産さ
れている繭から、生糸を紡いだ後の、死んだ蚕のサナギ
を乾燥させたものを利用する。このため蚕糸業者から乾
燥したサナギを購入するのでその保管や運搬も容易で、
殺菌設備や温度管理のできる培養室を備えているキノコ
生産業者は、年間を通して栽培することができる。
る。麦芽エキスと酵母エキスを基本培地とし、これにグ
ルコースなどを添加して液体培地を製造する。この場
合、麦芽エキスは1.0〜3.0%が好ましく、また酵
母エキスは0.1〜0.4%の範囲が好ましい。またグ
ルコースは0.5〜1.5%が最も好ましい。この液体
培地に寒天を添加して、ここ採取した天然のコナサナギ
タケ、ハナサナギタケ、サナギタケなどを接種して、温
度を15〜25℃で培養して寒天種菌を作成する。この
ようにして数日後に寒天から菌糸が成長してきたら、こ
れを子実体の形成を図るため蚕のサナギに接種する。
に、先ず水や液体培地3に浸漬して十分に含水させた
後、試験管2に一匹ずつ入れて、これに前記組成の液体
培地3を注入する。この後、オートクレーブで高温度に
加熱滅菌を行なった後、シャーレで培養した寒天種菌を
小さく切除してサナギ1に接種する。この場合、液体培
地3の注入量は蚕のサナギ1の一部が空気中に露出する
ように調整し、この露出した上部に寒天種菌4を接種す
る。
上部開口部に取付けて、温度調整設備のある培養室で培
養する。このようにして3日程度経過すると、蚕のサナ
ギ1から発菌して図2に示すように菌糸6が成長し始
め、更に約30日経過後には、図3に示すように菌糸6
が全体に繁殖していくと共に、分生子柄束7が形成され
る。更に約45日経過後には図4に示すように分生子柄
束7の先端に胞子8が形成されて子実体9となる。この
頃には液体培地3は完全に蒸発して無くなり、そのまま
放置しておくと子実体9が乾燥していく。
形成された固体培地を併用すると共に、図1に示すよう
に蚕のサナギ1の一部が空気中に露出するように液体培
地3を注入することにより、短期間に且つ確実に子実体
9を形成することができる。つまり、蚕のサナギ1だけ
では菌の成長が遅く、子実体9の形成に90日以上かか
るが、液体培地3を併用することにより成長が促進され
る。また蚕のサナギ1を液体培地3に完全に浸漬した状
態で培養すると、液体培地3中に菌糸6が繁殖してしま
い、液体培地3が蒸発して少なくなっても菌糸6だけと
なり分生子柄束7や子実体9が形成されにくくなる。従
って薬効成分だけを抽出する場合には菌糸6だけ形成さ
せれば良いが、本発明の目的とする商品価値の高い子実
体9を早く形成させるには、空気に露出している部分を
確保しておくことが必要であり、成長のための栄養分
は、サナギ1と液体培地3から得られる。従って液体培
地3だけでは目的とする子実体9は得られない。
入れた試験管2に培養液を注入してから菌を接種した
が、請求項2記載の発明は、蝶や蛾などの鱗翅目に属す
る昆虫のサナギに寄生する冬虫夏草の菌を液体培地中で
予め培養して、ボール状の多数の菌糸を培養しておき、
この液体培地3を蚕のサナギ1を入れた試験管2に注入
して、液体培地3の注入と菌の接種を同時に行うように
したものである。なおこの方法も菌を培養した液体培地
3を、蚕のサナギ1の一部が空気中に露出するように注
入することにより子実体9を短期間で確実に成育させる
ことができる。またこの方法によれば、菌を培養した液
体培地3を培養センターなどで大量に生産して、これを
栽培農家に販売することにより、農家では液体培地3の
成分調整や菌の繁殖管理をする必要がなく、蚕のサナギ
1の滅菌と、液体培地3の注入量の調整並びに温度管理
だけを行なえば良いので、手間が省けて実用的な方法で
ある。
い、ここに蚕のサナギ1を1匹ずつ入れて子実体9を培
養する場合について説明したが、請求項3記載の発明
は、培養容器が、パレット状に形成されたものを使用し
て大量に培養する方法である。この方法は例えば図5に
示すように、長方形状の容器10の内部を隔離壁11で
縦横に仕切って、上部が開口された複数の角筒状をなす
小室12を形成した培養容器13を用いる。この培養容
器13はガラスや、耐熱性のあるポリプロピレンなどの
プラスチックで形成されるが、破損する恐れがなく取扱
の容易なプラスチック製のものが良い。また隔離壁11
の高さは、蚕のサナギ1の体長より十分長く、サナギ1
の体長が15−20mm程度とすると50mm程度が好
ましく、また小室12の広さはサナギ1の太さよりやや
大きい程度が良い。
栽培する場合、培養センターから菌を培養した液体培地
3を購入すると共に、蚕糸工場から生糸を紡いだ後の死
んだ蚕のサナギ1を購入する。このサナギ1を図6に示
すように、培養容器13の各小室12に1匹ずつ入れて
から、オートクレーブで高温度に加熱滅菌を行なった
後、菌を培養した液体培地3を、各小室12に注入して
蚕のサナギ1の上部が空気中に露出するようにする。次
にこの培養容器13を、通気孔14にフィルター15を
取付けたポリプロピレンなどの透明なプラスチック製の
シール袋16に入れて、袋の口をシールして、温度調整
設備を備えた培養室で培養する。
図7に示すように培養容器13の各小室12に入れた蚕
のサナギ1から子実体9が形成され、これを包むように
多数の菌糸6が繁殖した状態となる。小室12の隔離壁
11は、子実体9より高く形成されているので、隣接す
る小室12に菌糸6が回り込まず、確実に1匹ずつ子実
体9を形成させることができる。なお小室12は角筒状
に限らず円筒状のものでも良い。
16を用いて大量培養できるので、生産コストが安く、
しかも商品価値の高い子実体9を確実に栽培することが
できる。なおこの場合、図8に示すように隔離壁を設け
ていない培養容器13で多数の蚕のサナギ1を入れて培
養すると、菌糸6が各サナギ1を覆うように全体に繁殖
して分生子柄束7の発生が阻害され、子実体9を形成し
にくくなる。
試験に供した菌株は福島県相馬郡飯舘村で採集したコナ
サナギタケの分生子を用い、これを分離して寒天で培養
させた。また液体培地としては、麦芽エキス2.0%、
酵母エキス0.2%、グルコースを1.0%添加したも
のを用いた。
で、これを1時間水に浸漬して十分に含水させた後、図
1に示すように試験管2に一匹ずつ入れて、これに前記
組成の液体培地3を1ml(ミリリットル)注入し、サ
ナギ1の上部が空気中に露出するようにする。この後、
オートクレーブで120℃、30分間高温度に加熱滅菌
を行なった後、シャーレで培養した寒天種菌4を直径5
mmに小さく切断して、これを蚕のサナギ1の露出した
上部に載せて接種する(表1の試験区P−1)。この
後、通気性を有する栓5を試験管2の上部開口部に取付
けて、培養室で20℃で培養し、その結果を表2に示し
た。
培地3に1時間浸漬してから、同様に培養した場合(表
1の試験区P−2)、および請求項2記載の発明の、菌
を培養液中で培養して、多数の菌糸を培養した液体培地
種菌を、予め殺菌した蚕のサナギ1を入れた試験管2に
注入して、液体培地3の注入と菌の接種を同時に行った
場合(表1の試験区P−3)についても、同様の条件で
培養し、その結果を表2に示した。
1において液体培地の添加量を6ml添加して蚕のサナ
ギ1を完全に浸漬した状態で培養した場合(表1の試験
区P−4)、液体培地3の代わりに粉末培地を蚕のサナ
ギ1に塗布した場合(表1の試験区P−5)、液体培地
3を全く添加せずサナギだけの場合(表1の試験区P−
6)、およびサナギを入れず液体培地3に接種した場合
(表1の試験区P−7)についても夫々、発菌状況、分
生子、分生子柄束および子実体の発生状況を観察してそ
の結果を表2に併記した。
験区P−1、P−2、P−3において、培養11日後の
発菌状況を観察した結果、発菌は良好で、特に液体培地
に予め蚕のサナギを浸漬して前処理しておいたものが優
れていた。各試料とも28日で分生子が形成され、44
日には子実体が形成された。これに対して、サナギを液
体培地に完全に浸漬させて培養した比較試験区P−4
は、液体培地3の液表面に菌糸を形成したが、子実体の
形成は認められなかった。また液体培地を用いず粉末培
地を塗布した比較試験区P−5は菌糸の発生がなかっ
た。また液体培地を用いずサナギに寒天種菌だけを接種
した比較試験区P−6は92日で子実体がやっと形成さ
れたがその数は僅かであった。更にサナギを用いず液体
培地に菌を接種しただけの比較試験区P−7は、液体培
地の液表面に菌糸が多数形成されたが子実体の発生はな
かった。
の子実体人工栽培方法によれば、生糸を紡いだ後の死ん
だ蚕のサナギを乾燥させて、これを固体培地として利用
すると共に、これと液体培地を併用することにより、薬
効に優れ、焼酎に漬けたり煎じて飲むのに便利なキノコ
状の子実体を年間を通して大量に人工栽培することがで
きる。特に請求項2と3を組合せた発明は、安価な培養
容器やシール袋を用いて大量培養できるので、生産コス
トが安く、商品価値の高い子実体を確実に栽培すること
ができる。
ギと液体培地を入れた状態を示す断面図である。
図である。
す断面図である。
面図である。
を示す断面図である。
された状態を示す拡大断面図である。
養している状態を示す断面図である。
Claims (3)
- 【請求項1】 繭から生糸を紡いだ後の、死んだ蚕のサ
ナギを乾燥させて、これを培養容器に入れて、蚕のサナ
ギの一部が空気中に露出するように培養液を注入してか
ら、蝶や蛾などの鱗翅目に属する昆虫のサナギに寄生す
る冬虫夏草の菌を接種し、これを培養して蚕のサナギに
子実体を形成させることを特徴とする冬虫夏草の人工栽
培方法。 - 【請求項2】 繭から生糸を紡いだ後の、死んだ蚕のサ
ナギを乾燥させて、これを培養容器に入れて、蝶や蛾な
どの鱗翅目に属する昆虫のサナギに寄生する冬虫夏草の
菌を培養した培養液を、蚕のサナギの一部が空気中に露
出するように注入して菌を接種し、これを培養して蚕の
サナギに子実体を形成させることを特徴とする冬虫夏草
の人工栽培方法。 - 【請求項3】 培養容器が、上部を開口して隔離壁の高
さが蚕のサナギの体長より長い複数の小室で形成され、
各小室に死んだ蚕のサナギを1匹ずつ入れて培養するこ
とを特徴とする請求項1または2記載の冬虫夏草の子実
体人工栽培方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7229581A JP2676502B2 (ja) | 1995-08-03 | 1995-08-03 | 冬虫夏草の子実体人工栽培方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP7229581A JP2676502B2 (ja) | 1995-08-03 | 1995-08-03 | 冬虫夏草の子実体人工栽培方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0947149A true JPH0947149A (ja) | 1997-02-18 |
JP2676502B2 JP2676502B2 (ja) | 1997-11-17 |
Family
ID=16894430
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP7229581A Expired - Lifetime JP2676502B2 (ja) | 1995-08-03 | 1995-08-03 | 冬虫夏草の子実体人工栽培方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2676502B2 (ja) |
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