JPH09330658A - 電子放出素子の製造方法、並びに電子放出素子を備えた電子源および画像形成装置 - Google Patents

電子放出素子の製造方法、並びに電子放出素子を備えた電子源および画像形成装置

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JPH09330658A
JPH09330658A JP17076196A JP17076196A JPH09330658A JP H09330658 A JPH09330658 A JP H09330658A JP 17076196 A JP17076196 A JP 17076196A JP 17076196 A JP17076196 A JP 17076196A JP H09330658 A JPH09330658 A JP H09330658A
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electron
thin film
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emitting device
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Yoshitaka Arai
由高 荒井
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 均一な電子放出特性を実現する電子放出素子
の製造方法、さらに該方法で作成された電子放出素子を
用いた電子源および画像形成装置を提供する。 【解決手段】 石英基板上に有機系化合物を主成分とす
る第一の薄膜Aを作製する工程と、石英基板上の薄膜A
上に有機金属化合物を主成分として含有する第二の薄膜
Bを作製する工程と、薄膜AおよびBを作製した石英基
板と素子電極の形成された基体とを対向させて設置した
後、石英基板の裏側からの紫外線照射により薄膜Aを分
解して薄膜Bを前記基体上に転写する工程と、前記基体
上に転写した薄膜Bの熱分解により導電性薄膜を得る工
程とを含む電子放出素子の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電子放出素子の製造
方法、並びに、電子放出素子を備えた電子源および画像
形成装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、電子放出素子としては大別し
て熱電子放出素子と冷陰極電子放出素子を用いた2種類
のものが知られている。冷陰極電子放出素子には電界放
出型(以下、「FE型」と略す)、金属/絶縁層/金属
型(以下、「MIM型」と略す)や表面伝導型電子放出
素子等がある。FE型の例としてはW.P.Dyke&
W.W.Dolan、“Field emissio
n”、Advance in Electron Ph
ysics、8 89(1956)あるいはC.A.S
pindt、“PHYSICAL Propertie
s of thin−film field emis
sion cathodes with molybd
enium cones”、J.Appl.Phy
s.、47 5248(1976)等に開示されたもの
が知られている。
【0003】MIM型の例としてはC.A.Mead、
“Operation of Tunnel−Emis
sion Devices”、J.Apply.Phy
s.、32 646(1961)等に開示されたものが
知られている。
【0004】表面伝導型電子放出素子型の例としては、
M.I.Elinson、Radio Eng.Ele
ctron Phys.、10 1290(1965)
等に開示されたものがある。表面伝導型電子放出素子
は、基板上に形成された小面積の薄膜に、膜面に平行に
電流を流すことにより、電子放出が生ずる現象を利用す
るものである。この表面伝導型電子放出素子としては、
前記エリンソン等によるSnO2 薄膜を用いたもの、A
u薄膜によるもの[G.Dittmer:“Thin
Solid Films”、9 317(197
2)]、In23 /SnO2 薄膜によるもの[M.H
artwell and C.G.Fonstad:
“IEEE Trans.ED Conf.”、519
(1975)]、カーボン薄膜によるもの[荒木久他:
“真空”、第26巻、第1号、22頁(1983)]等
が報告されている。
【0005】これらの表面伝導型電子放出素子の典型的
な素子構成として前述のM.Hartwellの素子構
成を図18により模式的に説明する。同図において1は
絶縁性基板である。4は導電性薄膜で、H形状のパター
ンにスパッタで形成された金属酸化物薄膜等からなり、
後述の通電フォーミングと呼ばれる通電処理により電子
放出部5を形成したものである。また図中の素子電極間
隔Lはおよそ0.5mm〜1mm、W’は約0.1mm
に設定されている。
【0006】従来、これらの表面伝導型電子放出素子に
おいては、電子放出を行なう前に導電性薄膜4を予め通
電フォーミングと呼ばれる通電処理によって電子放出部
5を形成するのが一般的である。即ち、通電フォーミン
グとは前記導電性薄膜4の両端に直流電圧あるいは非常
にゆっくりした昇電圧、例えば1V/分程度を印加通電
し、導電性薄膜4を局所的に破壊、変形もしくは変質せ
しめ、電気的に高抵抗な状態にした電子放出部5を形成
することである。なお、電子放出部5は導電性薄膜4の
一部に亀裂が発生しその亀裂付近から電子放出が行なわ
れる。前記通電フォーミング処理をした表面伝導型電子
放出素子は、上述の導電性薄膜4に電圧を印加し、素子
に電流を流すことにより、上述の電子放出部5より電子
を放出せしめるものである。
【0007】表面伝導型電子放出素子としては、上記構
成のほかに、例えば特開平7−235255号公報に開
示されているように、電子放出部を含む導電性薄膜を、
素子電極とは別の、適当な材質により形成した構成のも
のも報告されている。この中で、導電性薄膜の形成手法
の好ましい例として、有機金属化合物の溶液を塗布・乾
燥後加熱焼成して有機成分を熱分解し、除去し、金属も
しくは金属酸化物とする手法が開示されており、この際
導電性薄膜をパターニングする手法としては、フォトリ
ソグラフィー技術によりCrマスクを形成し、ウエット
エッチによりリフトオフする方法が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上述の表面伝導型電子
放出素子は、構造が単純で製造も容易であることから、
大面積にわたり多数の素子を配列形成できる利点があ
る。そこで、この利点を生かせるようないろいろな応用
研究が行われている。例えば、荷電ビーム源、表示装置
等があげられる。多数の表面伝導型電子放出素子を配列
形成した例としては、後述するように、並列に表面伝導
型電子放出素子を配列し、個々の素子の両端を配線(共
通配線とも呼ぶ)でそれぞれ結線した行を多数行配列し
た電子源があげられる(例えば、特開昭64−0313
32号公報、特開平1−283749号公報、特開平2
−257552号公報等)。また、特に表示装置等の画
像形成装置においては、近年、液晶を用いた平板型表示
装置がCRTに替わって普及してきたが、自発光型でな
いためバックライトを持たなければならない等の問題点
があり、自発光型の表示装置の開発が望まれていた。そ
のような自発光型表示装置として、表面伝導型電子放出
素子を多数配置した電子源と電子源より放出された電子
によって、可視光を発光せしめる蛍光体とを組み合わせ
た表示装置である画像形成装置があげられる(例えば、
米国特許5,066,883号等)。
【0009】さて、上記のような応用に用いられる表面
伝導型電子放出素子は、実用的な印加電圧に対して良好
な電子放出特性を有し、長時間にわたってその特性を保
持し続けることが必要である。また、これら表面伝導型
電子放出素子を複数個用いて画像形成装置の電子源とし
て使用する場合には、各素子が一様な電子放出特性を有
することが望ましい。本出願人等による観察によれば、
しかしながら、表面伝導型電子放出素子を多数配置した
電子源、および電子源より放出された電子によって可視
光を発光させることで作製される画像形成装置では、各
蛍光体の発光輝度の均一性は十分とは言えない場合があ
り、さらなる改良が必要であることがわかった。これは
表面伝導型電子放出素子からの放出電子量が各素子毎に
異なるためで、通電フォーミング処理後の各素子の電子
放出部位の構造の違いにより生じると考えている。
【0010】表面伝導型電子放出素子の通電フォーミン
グ処理後の電子放出部位の構造を制御して均一に保つた
めには、通電フォーミング時に導電性薄膜にかかる電力
の不均一性をなくすことが必要であり、そのためには通
電フォーミング前の導電性薄膜の膜厚を各素子において
均一に制御することが重要である。
【0011】表面伝導型電子放出素子に用いることので
きる導電性薄膜の薄膜作製法としては、一般に広く薄膜
作製法として用いられている真空蒸着法、化学的気相蒸
着法等が考えられるが、既存の装置では薄膜を蒸着でき
る基板の大きさに限界があり、大画面の画像形成装置を
作製するにあたり大面積素子基板へ導電性薄膜を作製す
ることはおおいに困難である。また、導電性薄膜を構成
する金属を含む有機金属化合物をスピンナー等により素
子基板上で薄膜化し、のち有機成分を揮発させて導電性
薄膜を作製する手法では、電極や配線による凹凸が存在
する基板上に均一な薄膜を作製するのは容易ではない。
【0012】本発明は上記問題点を鑑み、均一な電子放
出特性を実現する電子放出素子の製造方法、さらに該方
法で作成された電子放出素子を用いた電子源および画像
形成装置を提供するものである。
【0013】
【課題を解決するための手段および作用】本発明は、上
述した課題を解決するために鋭意検討を行って成された
ものであり、下述する特徴を持つ。
【0014】すなわち、本発明は、基体上に形成された
対向する一対の素子電極間に、電子放出部を有する導電
性薄膜を形成する電子放出素子の製造方法において、石
英基板上に有機化合物を主成分とする第一の薄膜Aを作
製する第一の工程と、石英基板上の該薄膜A上に有機金
属化合物を主成分として含有する第二の薄膜Bを作製す
る第二の工程と、前記薄膜AおよびBを作製した石英基
板と前記基体とを対向させて設置した後、石英基板の裏
側からの紫外線照射により前記薄膜Aを分解して前記薄
膜Bを前記基体上に転写する第三の工程と、前記基体上
に転写した薄膜Bの熱分解により前記導電性薄膜を得る
第四の工程とを含むことを特徴とする。
【0015】本発明の電子放出素子の製造方法におい
て、前記薄膜は、芳香族シラン化合物の自己集合型単分
子層であることが望ましい。また、前記薄膜AおよびB
を作製した石英基板と、対向させる前記基体との間隔は
密着ないし1mm以内に設定されていることが望まし
い。
【0016】ここで、前記薄膜Bを構成する化合物の構
造は、前記薄膜Aを分解する紫外線には分解されない
か、分解速度が著しく遅い化合物である。また、照射す
る紫外線は、前記薄膜Aは分解する一方で、前記薄膜B
は分解しないか、分解速度が著しく遅いような波長とす
ることが肝要である。
【0017】本発明の電子源は、上述の方法で作製され
た前記電子放出素子が基体上に複数個配置され、該電子
放出素子間の配線および該素子への電圧印加用端子を形
成された、入力信号に応じて電子を放出する電子源であ
る。
【0018】この電子源は、通常、前記電子放出素子が
基体に複数個並列に配置され、個々の素子の両端を配線
に接続した電子放出素子の行を複数個持ち、さらに、該
素子へ電圧を印加する手段と該印加電圧を変調する手段
を有する。この場合、好ましくは、基体に互いに絶縁さ
れたm本のX方向配線とn本のY方向配線とに、該電子
放出素子の各々の素子電極が接続している。また、本発
明の画像形成装置は、入力信号に基づいて画像を形成す
る装置であって、少なくとも画像形成部材として前記電
子源が含まれる。以上のように、本発明の表面伝導型電
子放出素子の製造方法は、石英が紫外線に対して透明で
あることを利用している。
【0019】導電性薄膜を構成する材料は通常無機化合
物であるが、本発明による導電性薄膜は無機化合物を直
接作製せず、加工成形の容易な有機金属化合物を経由す
ることから、その作製法としてさまざまな手法が応用で
き、また大面積基板へも適用が容易である。さらに、最
初に平坦な基板上に薄膜を作製することから、電極、配
線等の凹凸がある素子基板上に直接成膜する場合に比べ
て、膜厚の均一な薄膜を得ることができる。また、本発
明の表面伝導型電子放出素子の製造方法によれば、大面
積中に素子間ばらつきのない均一な電子放出特性を形成
できるため、均一な電子放出特性を有する複数の電子放
出素子からなる電子源を実現できる。さらに、本発明の
画像形成装置によれば、安定で輝度ばらつきのない画像
を形成できる。
【0020】
【発明の実施の形態】次に本発明の好ましい実施態様を
示す。まず、本発明を適用し得る電子放出素子について
説明する。図1は、本発明を適用可能な表面伝導型電子
放出素子の構成を示す模式図であり、図1(a)は平面
図、図1(b)は断面図である。図1において1は素子
基板、2と3は素子電極、4は導電性薄膜、5は電子放
出部である。
【0021】基板1としては、石英ガラス、Na等の不
純物含有量を減少したガラス、青板ガラス、青板ガラス
にスパッタ法等により形成したSiO2 を積層したガラ
ス基板およびアルミナ等のセラミックスおよびSi基板
等を用いることができる。
【0022】対向する素子電極2、3の材料としては、
一般的な導体材料を用いることができる。これは例えば
Ni,Cr,Au,Mo,W,Pt,Ti,Al,C
u,Pd等の金属或は合金およびPd,Ag,Au,R
uO2 ,Pd−Ag等の金属或は金属酸化物とガラス等
から構成される印刷導体、In23 −SnO2 等の透
明導電体およびポリシリコン等の半導体材料等から適宜
選択することができる。素子電極間隔L1、素子電極長
さW2、導電性薄膜4の形状等は、応用される形態等を
考慮して設計される。素子電極間隔L1は、好ましく
は、数千Åから数百μmの範囲とすることができ、より
好ましくは、数μmから数十μmの範囲とすることがで
きる。
【0023】素子電極長さW2は、電極の抵抗値、電子
放出特性を考慮して、数μmから数百μmの範囲とする
ことができる。素子電極2、3の膜厚dは、数百Åから
数μmの範囲とすることができる。なお、図1に示した
構成だけでなく、基板1上に、導電性薄膜4、対向する
素子電極2、3の順に積層した構成とすることもでき
る。
【0024】導電性薄膜4には、良好な電子放出特性を
得るために、微粒子で構成された微粒子膜を用いるのが
好ましく、その膜厚は、素子電極2、3へのステップカ
バレージ、素子電極2、3間の抵抗値および後述するフ
ォーミング条件等を考慮して、適宜設定されるが、通常
は数Åから数千Åの範囲とするのが好ましく、より好ま
しくは10Åより500Åの範囲とするのが良い。その
抵抗値は、RS が102 から107 Ω/□の値である。
なおRS は、厚さがt、幅がwで長さがlの薄膜の長さ
方向に測定した抵抗Rを、R=RS (l/w)とおいた
ときに現れる値である。本願明細書において、フォーミ
ング処理については、通電処理を例に挙げて説明する
が、フォーミング処理はこれに限られるものではなく、
膜に亀裂を生じさせて高抵抗状態を形成する処理を包含
するものである。
【0025】導電性薄膜4を構成する材料は、Pd、P
t、Ru、Ag、Au、Ti、In、Cu、Cr、F
e、Zn、Sn、Ta、W、Pb等の金属、PdO、S
nO2、In23 、PbO、Sb23 等の酸化物の
中から適宜選択されるが、以下に記す製造方法が適用で
きる材料であれば、これらに限るものではない。
【0026】次に本発明の好適な導電性薄膜4の製造方
法について図2を用いて説明する。図2(a)に示すご
とく、表面を完全に洗浄した石英基板上に芳香族シラン
を主成分とする薄膜Aを作製する。ここで、表面が完全
に洗浄された基板とは、基板表面に落とした水の接触角
が10°ないしそれ以下である基板を言い、塩酸、硫
酸、硝酸等の適当な濃度の酸に浸積した後脱イオン水で
リンスすることにより得ることができるほか、基板表面
をUV/O3 処理することでも得ることができる。こう
して得られた表面を完全に洗浄した基板を、芳香族シラ
ン化合物の1%トルエン溶液に3〜5分程度浸積し、ト
ルエン溶媒でリンスした後120℃で5分間乾燥するこ
とで薄膜Aを得ることができる。なお、ここで得られる
薄膜Aは自己集合型単分子膜(Self−assemb
led monolayer)と言われている。数ある
自己集合型単分子膜のうちで、芳香族シラン化合物を薄
膜Aに用いるのは、後述する紫外線照射により芳香環−
Si間の結合が容易に開裂して分解するため、およびこ
の結合が後述する薄膜Bの基本骨格には含まれておら
ず、紫外線照射が薄膜Bを分解するには至らないからで
ある。また、芳香族シランのうちフェニルトリクロロシ
ラン(構造式:図17(a))、ベンジルトリクロロシ
ラン(構造式:図17(b))、4−tブチルフェニル
トリクロロシラン(構造式:図17(c))などの芳香
族クロロシランは、構造中の塩素が基板表面の−OH基
と反応してシロキサン結合(Si−O−Si)を作るこ
とから比較的安定な薄膜を作ることができる。
【0027】続いて図2(b)に示すように薄膜A上に
有機金属化合物を主成分とする薄膜Bを作製する。薄膜
Bとして、導電性薄膜そのものを真空蒸着法(電子ビー
ム蒸着、レーザー蒸着等を含む)、CVD法、スパッタ
法等により作製することも考えられるが、これらの作製
法はいずれも高真空、高温等の厳しい条件を伴うことか
ら、作製した薄膜Aにダメージを与えることが考えられ
好ましくない。
【0028】そこで、薄膜Bとして導電性薄膜の構成成
分を含む有機金属薄膜を、スピンコート法やスプレイコ
ート法、あるいはLangmuir−Blodgett
法(以下LB法)等の既存の有機薄膜作製手段を応用し
て作製する。作製した薄膜Bは、後述する薄膜Bを転写
する工程の後に熱分解することにより、有機成分を揮発
させて金属を主成分とする導電性薄膜とすることができ
る。スピンコート法やスプレイコート法に用いることの
できる材料のひとつとして、導電性薄膜の構成元素を含
む金属の脂肪酸塩や、アセチルアセトナト基あるいはア
ルコキシド基等を配位子とした導電性薄膜の構成元素を
含む金属錯体などの有機溶液が挙げられる。脂肪酸塩や
アルコキシド等を配位子とする金属錯体は多数あること
から、薄膜Bとして様々な金属を含む有機金属薄膜を作
製でき、したがって、様々な金属を主成分とする導電性
薄膜を得ることができる。導電性薄膜を構成する金属
が、例えばPdの場合、薄膜Bを構成する材料のひとつ
として構造中にPdを含む有機金属化合物である酢酸P
dジイソプロポキシドが挙げられる。酢酸Pdジイソプ
ロポキシドの数%〜10%程度のイソプロピルアルコー
ル溶液はスピンコート法により適当な膜厚の薄膜Bを均
一に得ることができる。
【0029】また、LB法とは、親水性基と疎水性基を
含む有機分子を水面上に展開して単分子膜を形成し、こ
れに基板を垂直に上下することで順次積層して有機薄膜
を得る手法で、分子中に親水性基と疎水性基とを併せ持
つ長鎖脂肪酸やポリマーが材料として用いられる。そこ
で、長鎖脂肪酸やポリマーからなるLB膜形成材料に導
電性薄膜を構成する材料を混合し、ともにLB膜として
成膜することで分子レベルで膜厚の制御された含金属有
機薄膜を作製することができ、薄膜Bとして利用でき
る。ここでLB法は、特に大面積基板への均一な導電性
薄膜作製を考える場合に有効である。導電性薄膜を構成
する金属が、例えばPdの場合、これを含むLB膜(薄
膜B)として構造中にPdを含み、かつ親水性基と疎水
性基とを併せ持つ分子が考えられる。しかし、Pdに限
らず一般にこのような分子を合成するのは必ずしも容易
ではなく、また、その水面上単分子膜の安定性、あるい
はかかる水面上単分子膜を基板上に積層する際の安定性
が十分でない場合がある。そこで、水面上単分子膜を安
定に形成しやすい有機分子(バインダーと呼ぶ)に、金
属を含む第二の分子を混合させて水面上単分子膜を形成
する。この場合、金属を含む第二の分子が水に溶けにく
いことが条件となる。バインダーとして用いられる有機
分子としては、ポリイソブチルメタクリレート(PIB
M)、ポリ乳酸(PLA)、ポリアミド酸、ポリイミド
等のポリマー材料のほか、長鎖脂肪酸、例えば炭素数1
6のパルミチン酸CH3 (CH214COOH、同17
のマルガリン酸CH3 (CH215COOH、同18の
ステアリン酸CH3 (CH216COOH、同19のノ
ナデカン酸CH3 (CH217COOH、同20のアラ
キジン酸CH3 (CH218COOH、同21のヘネイ
コサン酸CH3 (CH219COOH、同22のベヘン
酸CH3 (CH220COOH等を挙げることができ
る。また、これらバインダーに混合させる金属を含む第
二の分子として、例えば図17(d)に示す、金属酢酸
塩とアミンとの錯体を用いてもよい。これらを混合する
比率としては、最終的に金属膜を得ようとする点から、
できるだけ金属を含む分子の比率を高めることが工数の
節減となるので好ましいが、逆に水面上単分子膜の安定
性や積層性の低下をもたらすこともあり得る。一般にモ
ノマー換算モル比で、バインダー:金属含有分子=1
0:1〜1:10の範囲で好適な比率が選択される。よ
り好ましくは4:1〜1:4の範囲である。
【0030】こうして薄膜Aおよび薄膜Bを作製した石
英基板に、図2(c)に示すように石英基板側から紫外
線を照射する。紫外線は薄膜Aを分解するが薄膜Bには
影響を及ぼさない波長を選択し、薄膜Bが下に置いた素
子基板上に転写される。例えば、薄膜Aが図17(a)
に示したフェニルトリクロロシラン等芳香族シランの場
合には、193nmの紫外線照射により芳香族とシラン
の結合が切れ、一方、この波長の紫外線は長時間照射し
なければ薄膜Bには影響しない。ついで、転写した薄膜
Bを素子基板ごと熱処理すれば、素子基板上に導電性薄
膜を得ることができる。そこで素子基板上にあらかじめ
表面伝導型電子放出素子の電極、配線パターンをフォト
リソグラフィー技術などにより形成しておき、その基板
に転写された薄膜Bを熱処理をすれば、薄膜B中の有機
成分は揮発して金属成分のみが残存し、導電性薄膜を得
ることができる。あるいは、ガラス等の平滑な基板上に
薄膜Bを移し取って熱処理し、導電性薄膜を形成した後
フォトリソグラフィー技術などにより電極、配線パター
ンを形成することも可能である。ここで、熱処理の雰囲
気を大気中あるいは酸素中で行えば酸化物が形成し、こ
の酸化物を還元すれば金属あるいは半導体の単体として
導電性薄膜が形成される。以上のような手法により膜厚
に差異のない導電性薄膜が形成できる。
【0031】ここで作製した導電性薄膜は微粒子膜であ
るが、ここで述べる微粒子膜とは、複数の微粒子が集合
した膜であり、その微細構造は、微粒子が個々に分散配
置した状態あるいは微粒子が互いに隣接、あるいは重な
り合った状態(いくつかの微粒子が集合し、全体として
島状構造を形成している場合も含む)をとっている。微
粒子の粒径は、数Åから数千Åの範囲、好ましくは10
Åから200Åの範囲である。なお、本明細書では頻繁
に「微粒子」という言葉を用いるので、その意味につい
て説明する。
【0032】小さな粒子を「微粒子」と呼び、これより
も小さなものを「超微粒子」と呼ぶ。「超微粒子」より
もさらに小さく原子の数が数百個程度以下のものを「ク
ラスター」と呼ぶことは広く行われている。
【0033】しかしながら、それぞれの境は厳密なもの
ではなく、どの様な性質に注目して分類するかにより変
化する。また「微粒子」と「超微粒子」を一括して「微
粒子」と呼ぶ場合もあり、本明細書中での記述はこれに
沿ったものである。
【0034】「実験物理学講座14 表面・微粒子」
(木下是雄 編、共立出版 1986年9月1日発行)
では次のように記述されている。「本稿で微粒子と言う
ときにはその直径がだいたい2〜3μm程度から10n
m程度までとし、特に超微粒子と言うときは粒径が10
nm程度から2〜3nm程度までを意味することにす
る。両者を一括して単に微粒子と書くこともあってけっ
して厳密なものではなく、だいたいの目安である。粒子
を構成する原子の数が2個から数十〜数百個程度の場合
はクラスターと呼ぶ」(195ページ 22〜26行
目)。
【0035】付言すると、新技術開発事業団の”林・超
微粒子プロジェクト”での「超微粒子」の定義は、粒径
の下限はさらに小さく、次のようなものであった。「創
造科学技術推進制度の“超微粒子プロジェクト”(19
81〜1986)では、粒子の大きさ(径)がおよそ1
〜100nmの範囲のものを“超微粒子”(ultra
fine particle)と呼ぶことにした。す
ると1個の超微粒子はおよそ100〜108 個くらいの
原子の集合体という事になる。原子の尺度でみれば超微
粒子は大〜巨大粒子である。」(「超微粒子−創造科学
技術−」林主税、上田良二、田崎明 編;三田出版 1
988年 2ページ1〜4行目)「超微粒子よりさらに
小さいもの、すなわち原子が数個〜数百個で構成される
1個の粒子は、ふつうクラスターと呼ばれる」(同書2
ページ12〜13行目)。
【0036】上記のような一般的な呼び方をふまえて、
本明細書において「微粒子」とは多数の原子・分子の集
合体で、粒径の下限は数Å〜10Å程度、上限は数μm
程度のものを指すこととする。
【0037】電子放出部5は、導電性薄膜4の一部に形
成された高抵抗の亀裂により構成され、導電性薄膜4の
膜厚、膜質、材料および後述する通電フォーミング等の
手法等に依存したものとなる。電子放出部5の内部に
は、数Åから数百Åの範囲の粒径の導電性微粒子が存在
する場合もある。この導電性微粒子は、導電性薄膜4を
構成する材料の元素の一部、あるいは全ての元素を含有
するものとなる。電子放出部5およびその近傍の導電性
薄膜4には、炭素および炭素化合物を有することもでき
る。
【0038】上述の表面伝導型電子放出素子の製造方法
としては様々な方法があるが、その一例を図3に模式的
に示す。以下の図1および図3を参照しながら本発明の
電子放出素子の製造方法の一例について説明する。図3
においても、図1に示した部位と同じ部位には図1に示
した符号と同一の符号を付している。
【0039】1)基板1を洗剤、純水、および有機溶剤
等を用いて十分に洗浄後、真空蒸着法、スパッタ法等に
より素子電極材料を堆積後、例えばフォトリソグラフィ
技術を用いて基板1上に素子電極2,3を形成する(図
3(a))。
【0040】2)芳香族シランを主成分とする薄膜Aお
よび導電性薄膜の構成成分を含む薄膜Bをあらかじめ作
製しておいた石英基板と上記基板を対向させ、石英基板
の裏側から紫外線を照射し、素子電極2、3を設けた基
板1に薄膜Bを転写する。転写した薄膜Bを加熱焼成処
理し、リフトオフ、エッチング等によりパターニング
し、導電性薄膜4を形成する(図3(b))。
【0041】3)つづいて、フォーミング工程を施す。
このフォーミング工程の方法の一例として通電処理によ
る方法を説明する。素子電極2、3間に不図示の電源を
用いて通電を行うと、導電性薄膜4の部位に、構造の変
化した電子放出部5が形成される(図3(c))。通電
フォーミングによれば導電性薄膜4を局所的に破壊、変
形もしくは変質等の構造の変化した部位が形成される。
該部位が電子放出部5を構成する。通電フォーミングの
電圧波形の例を図4に示す。
【0042】電圧波形は、パルス波形が好ましい。これ
にはパルス波高値を定電圧としたパルスを連続的に印加
する図4(a)に示した手法と、パルス波高値を増加さ
せながら電圧パルスを印加する図4(b)に示した手法
がある。
【0043】図4(a)におけるT1およびT2は電圧
波形のパルス幅とパルス間隔である。通常T1は1μ秒
〜10m秒、T2は10μ秒〜100m秒の範囲で設定
される。三角波の波高値(通電フォーミング時のピーク
電圧)は、表面伝導型電子放出素子の形態に応じて適宜
選択される。このような条件のもと、例えば、数秒から
数十分間電圧を印加する。パルス波形は三角波に限定さ
れるものではなく、矩形波など所望の波形を採用するこ
とができる。
【0044】図4(b)におけるT1およびT2は、図
4(a)に示したのと同様とすることができる。三角波
の波高値(通電フォーミング時のピーク電圧)は、例え
ば、0.1Vステップ程度ずつ増加させることができ
る。
【0045】通電フォーミング処理の終了は、パルス間
隔T2中に、導電性薄膜4を局所的に破壊、変形しない
程度の電圧を印加し、電流を測定して検知することがで
きる。例えば0.1V程度の電圧印加により流れる素子
電流を測定し、抵抗値を求めて、1MΩ以上の抵抗を示
した時、通電フォーミングを終了させる。
【0046】4)フォーミングを終えた素子には活性化
工程と呼ばれる処理を施すのが好ましい。活性化工程と
は、この工程により、素子電流Ifおよび放出電流Ie
が、著しく変化する工程である。
【0047】活性化工程は、例えば、有機物質のガスを
含有する雰囲気下で、通電フォーミングと同様に、パル
スの印加を繰り返すことで行うことができる。この雰囲
気は例えば油拡散ポンプやロータリーポンプなどを用い
て真空容器内を排気した場合に雰囲気内に残留する有機
ガスを利用して形成することができる他、イオンポンプ
などにより一旦十分に排気した真空中に適当な有機物質
のガスを導入することによっても得られる。このときの
好ましい有機物質のガス圧は、前述の応用の形態、真空
容器の形状や、有機物質の種類などにより異なるため場
合に応じ適宜設定される。適当な有機物質としては、ア
ルカン、アルケン、アルキンの脂肪族炭化水素類、芳香
族炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン
類、アミン類、フェノール、カルボン酸、スルホン酸等
の有機酸類等を挙げることができ、具体的には、メタ
ン、エタン、プロパンなどCn2n+2で表される飽和炭
化水素、エチレン、プロピレンなどCn2n等の組成式
で表される不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、メタ
ノール、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデ
ヒド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミン、
エチルアミン、フェノール、蟻酸、酢酸、プロピオン酸
等が使用できる。この処理により、雰囲気中に存在する
有機物質から、炭素あるいは炭素化合物が素子上に堆積
し、素子電流Ifおよび放出電流Ieが、著しく変化す
るようになる。
【0048】活性化工程の終了判定は、素子電流Ifと
放出電流Ieを測定しながら適宜行う。なお、パルス
幅、パルス間隔、パルス波高値などは適宜設定される。
【0049】炭素および炭素化合物とは、グラファイト
(いわゆるHOPG、PG、GCを包含する、HOPG
はほぼ完全なグラファイトの結晶構造、PGは結晶粒が
200Å程度で結晶構造がやや乱れたもの、GCは結晶
粒が20Å程度になり結晶構造の乱れがさらに大きくな
ったものを指す)、非晶質カーボン(アモルファスカー
ボンおよび、アモルファスカーボンと前記グラファイト
の微結晶の混合物を指す)であり、その膜厚は500Å
以下の範囲とするのが好ましく、300Å以下の範囲と
するのがより好ましい。
【0050】5)このような工程を経て得られた電子放
出素子は、この後、安定化工程を行うことが好ましい。
この工程は、真空容器内の有機物質を排気する工程であ
る。真空容器を排気する真空排気装置は、装置から発生
するオイルが素子の特性に影響を与えないように、オイ
ルを使用しないものを用いるのが好ましい。具体的に
は、ソープションポンプ、イオンポンプ等の真空排気装
置を挙げることが出来る。
【0051】前記活性化の工程で、排気装置として油拡
散ポンプやロータリーポンプを用い、これから発生する
オイル成分に由来する有機ガスを用いた場合は、この成
分の分圧を極力低く抑える必要がある。真空容器内の有
機成分の分圧は、上記の炭素および炭素化合物がほぼ新
たに堆積しない分圧で1×10-8Torr以下が好まし
く、さらには1×10-10 Torr以下が特に好まし
い。さらに真空容器内を排気するときには、真空容器全
体を加熱して、真空容器内壁や、電子放出素子に吸着し
た有機物質分子を脱着しやすくするのが好ましい。この
ときの加熱条件は80〜200℃で、できるだけ長時間
処理するのが望ましいが、特にこの条件に限るものでは
なく、真空容器の大きさや形状、電子放出素子の構成な
どの諸条件により適宜選ばれる条件により行う。真空容
器内の圧力は極力低くすることが必要で、1〜3×10
-7Torr以下が好ましく、さらに1×10-8Torr
以下が特に好ましい。
【0052】安定化工程を行った後の、駆動時の雰囲気
は、上記安定化工程終了時の雰囲気を維持するのが好ま
しいが、これに限るものではなく、有機物質が十分除去
されていれば、真空度自体は多少低下しても十分安定な
特性を維持することが出来る。
【0053】このような真空雰囲気を採用することによ
り、新たな炭素あるいは炭素化合物の堆積を抑制でき、
結果として素子電流Ifおよび放出電流Ieが安定す
る。上述した工程を経て得られた本発明を適用可能な電
子放出素子の基本特性について図5、図6を参照しなが
ら説明する。
【0054】図5は、真空処理装置の一例を示す模式図
であり、この真空処理装置は測定評価装置としての機能
をも兼ね備えている。図5においても、図1に示した部
位と同じ部位には図1に付した符号と同一の符号を付し
ている。図5において、55は真空容器であり、56は
排気ポンプである。真空容器55内には電子放出素子が
配されている。即ち、1は電子放出素子を構成する基体
であり、2および3は素子電極、4は導電性薄膜、5は
電子放出部である。51は電子放出素子に素子電圧Vf
を印加するための電源、50は素子電極2・3間の導電
性薄膜4を流れる素子電流Ifを測定するための電流
計、54は素子の電子放出部より放出される放出電流I
eを捕捉するためのアノード電極である。53はアノー
ド電極54に電圧を印加するための高圧電源、52は素
子の電子放出部5より放出される放出電流Ieを測定す
るための電流計である。一例として、アノード電極の電
圧を1kV〜10kVの範囲とし、アノード電極と電子
放出素子との距離Hを2mm〜8mmの範囲として測定
を行うことができる。
【0055】真空容器55内には、不図示の真空計等の
真空雰囲気下での測定に必要な機器が設けられていて、
所望の真空雰囲気中での測定評価を行えるようになって
いる。排気ポンプ56は、ターボポンプ、ロータリーポ
ンプからなる通常の高真空装置系と、さらに、イオンポ
ンプ等からなる超高真空装置系とにより構成されてい
る。ここに示した電子源基板を配した真空処理装置の全
体は、不図示のヒーターにより加熱できる。従って、こ
の真空処理装置を用いると、前述の通電フォーミング以
降の工程も行うことができる。
【0056】図6は図5に示した真空処理装置を用いて
測定された放出電流Ie、素子電流Ifと素子電圧Vf
の関係を模式的に示した図である。図6においては、放
出電流Ieが素子電流Ifに比べて著しく小さいので、
任意単位で示している。なお、縦軸、横軸ともにリニア
スケールである。図6からも明らかなように、本発明を
適用可能な表面伝導型電子放出素子は、放出電流Ieに
対する三つの特徴的特性を有する。
【0057】即ち、(i)本素子はある電圧(しきい値
電圧と呼ぶ、図6中のVth)以上の素子電圧を印加す
ると急激に放出電流Ieが増加し、一方しきい値電圧V
th以下では放出電流Ieがほとんど検出されない。つ
まり、放出電流Ieに対する明確なしきい値電圧Vth
を持った非線形素子である。
【0058】(ii)放出電流Ieが素子電圧Vfに単
調増加依存するため、放出電流Ieは素子電圧Vfで制
御できる。
【0059】(iii)アノード電極54に捕捉される
放出電荷は、素子電圧Vfを印加する時間に依存する。
つまり、アノード電極54に捕捉される電荷量は、素子
電圧Vfを印加する時間により制御できる。
【0060】以上の説明により理解されるように、本発
明を適用可能な表面伝導型電子放出素子は、入力信号に
応じて、電子放出特性を容易に制御できることになる。
この性質を利用すると複数の電子放出素子を配して構成
した電子源、画像形成装置等、多方面への応用が可能と
なる。
【0061】図6においては、素子電流Ifが素子電圧
Vfに対して単調増加する(以下、「MI特性」とい
う)例を実線に示した。素子電流Ifが素子電圧Vfに
対して電圧制御型負性抵抗特性(以下、「VCNR特
性」という)を示す場合もある(不図示)。また、これ
ら特性は、前述の工程を制御することで制御できる。
【0062】本発明を適用可能な電子放出素子の応用例
について以下に述べる。本発明を適用可能な表面伝導型
電子放出素子の複数個を基板上に配列し、例えば電子源
あるいは、画像形成装置が構成できる。
【0063】電子放出素子の配列については、種々のも
のが採用できる。一例として、並列に配置した多数の電
子放出素子の個々を両端で接続し、電子放出素子の行を
多数個配し(行方向と呼ぶ)、この配線と直行する方向
(列方向と呼ぶ)で、該電子放出素子の上方に配した制
御電極(グリッドとも呼ぶ)により、電子放出素子から
の電子を制御駆動するはしご状配置のものがある。これ
とは別に、電子放出素子をX方向およびY方向に行列状
に複数配し、同じ行に配された複数の電子放出素子の電
極の一方を、X方向の配線に共通に接続し、同じ列に配
された複数の電子放出素子の電極の他方を、Y方向の配
線に共通に接続するものが挙げられる。このようなもの
は、所謂単純マトリクス配置である。まず単純マトリク
ス配置について以下に詳述する。
【0064】本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素
子については、前述したとおり(i)ないし(iii)
の特性がある。即ち、表面伝導型電子放出素子からの放
出電子は、しきい値電圧以上では、対向する素子電極間
に印加するパルス状電圧の波高値と巾で制御できる。一
方、しきい値電圧以下では、殆ど放出されない。この特
性によれば、多数の電子放出素子を配置した場合におい
ても、個々の素子にパルス状電圧を適宜印加すれば、入
力信号に応じて、表面伝導型電子放出素子を選択して電
子放出量を制御できる。
【0065】以下この原理に基づき、本発明を適用可能
な電子放出素子を複数配して得られる電子源基板につい
て、図7を用いて説明する。図7において、71は電子
源基板、72はX方向配線、73はY方向配線である。
74は表面伝導型電子放出素子、75は結線である。
【0066】m本のX方向配線72はDx1,Dx2,
・・・Dxmからなり、真空蒸着法、印刷法、スパッタ
法等を用いて形成された導電性金属等で構成することが
できる。配線の材料、膜厚、巾は、適宜設計される。Y
方向配線73はDy1,Dy2,・・・Dynのn本の
配線よりなり、X方向配線72と同様に形成される。こ
れらm本のX方向配線72とn本のY方向配線73との
間には、不図示の層間絶縁層が設けられており、両者を
電気的に分離している(m,nは、共に正の整数)。
【0067】不図示の層間絶縁層は、真空蒸着法、印刷
法、スパッタ法等を用いて形成されたSiO2 等で構成
される。例えば、X方向配線72を形成した基板71の
全面或は一部に所望の形状で形成され、特に、X方向配
線72とY方向配線73の交差部の電位差に耐え得るよ
うに、膜厚、材料、製法が適宜設定される。X方向配線
72とY方向配線73は、それぞれ外部端子として引き
出されている。
【0068】表面伝導型電子放出素子74を構成する一
対の電極(不図示)は、m本のX方向配線72とn本の
Y方向配線73と、導電性金属等からなる結線75によ
って電気的に接続されている。
【0069】配線72と配線73を構成する材料、結線
75を構成する材料および一対の素子電極を構成する材
料はその構成元素の一部あるいは全部が同一であって
も、またそれぞれ異なってもよい。これら材料は、例え
ば前述の素子電極の材料より適宜選択される。素子電極
を構成する材料と配線材料が同一である場合には、素子
電極に接続した配線は素子電極ということもできる。
【0070】X方向配線72には、X方向に配列した表
面伝導型電子放出素子74の行を選択するための走査信
号を印加する不図示の走査信号印加手段が接続される。
一方、Y方向配線73には、Y方向に配列した表面伝導
型電子放出素子74の各列を入力信号に応じて、変調す
るための不図示の変調信号発生手段が接続される。各電
子放出素子に印加される駆動電圧は、当該素子に印加さ
れる走査信号と変調信号の差電圧として供給される。上
記構成においては、単純なマトリクス配線を用いて、個
別の素子を選択し、独立に駆動可能とすることができ
る。
【0071】このような単純マトリクス配置の電子源を
用いて構成した画像形成装置について、図8、図9およ
び図10を用いて説明する。図8は、画像形成装置の表
示パネルの一例を示す模式図であり、図9は、図8の画
像形成装置に使用される蛍光膜の模式図である。図10
はNTSC方式のテレビ信号に応じて表示を行うための
駆動回路の一例を示すブロック図である。
【0072】図8において、71は電子放出素子を複数
配した電子源基板、81は電子源基板71を固定したリ
アプレート、86はガラス基板83の内面に蛍光膜84
とメタルバック85等が形成されたフェースプレートで
ある。82は支持枠であり該支持枠82には、リアプレ
ート81、フェースプレート86がフリットガラス等を
用いて接続されている。88は外囲器であり、例えば大
気中あるいは、窒素中で、400〜500度の温度範囲
で10分以上焼成することで、封着して構成される。7
4は図1における電子放出部5に相当する。72、73
は表面伝導型電子放出素子の一対の素子電極と接続され
たX方向配線およびY方向配線である。
【0073】外囲器88は上述の如く、フェースプレー
ト86、支持枠82、リアプレート81で構成される。
リアプレート81は主に基板71の強度を補強する目的
で設けられるため、基板71自体で十分な強度を持つ場
合は別体のリアプレート81は不要とすることができ
る。即ち、基板71に直接支持枠82を封着し、フェー
スプレート86、支持枠82および基板71で外囲器8
8を構成しても良い。一方、フェースプレート86、リ
アプレート81間に、スペーサーとよばれる不図示の支
持体を設置することにより、大気圧に対して十分な強度
をもつ外囲器88を構成することもできる。
【0074】図9は、蛍光膜を示す模式図である。蛍光
膜84は、モノクロームの場合は蛍光体のみから構成す
ることができる。カラーの蛍光膜の場合は、蛍光体の配
列によりブラックストライプあるいはブラックマトリク
スなどと呼ばれる黒色導電材91と蛍光体92とから構
成することができる。ブラックストライプ、ブラックマ
トリクスを設ける目的は、カラー表示の場合、必要とな
る三原色蛍光体の各蛍光体92間の塗り分け部を黒くす
ることで混色等を目立たなくすることと、蛍光膜84に
おける外光反射によるコントラストの低下を抑制するこ
とにある。ブラックストライプの材料としては、通常用
いられている黒鉛を主成分とする材料の他、導電性があ
り、光の透過および反射が少ない材料を用いることがで
きる。
【0075】ガラス基板83に蛍光体を塗布する方法は
モノクローム、カラーによらず、沈殿法、印刷法等が採
用できる。蛍光膜84の内面側には通常メタルバック8
5が設けられる。メタルバックを設ける目的は、蛍光体
の発光のうち内面側への光をフェースプレート86側へ
鏡面反射することにより輝度を向上させること、電子ビ
ーム加速電圧を印加するための電極として作用させるこ
と、外囲器内で発生した負イオンの衝突によるダメージ
から蛍光体を保護すること等である。メタルバックは、
蛍光膜作製後、蛍光膜の内面側表面の平滑化処理(通
常、「フィルミング」と呼ばれる)を行い、その後A1
を真空蒸着等で堆積することで作製できる。
【0076】フェースプレート86には、更に蛍光膜8
4の導電性を高めるため、蛍光膜84の外面側に透明電
極(不図示)を設けてもよい。前述の封着を行う際に
は、カラーの場合は各色蛍光体と電子放出素子とを対応
させる必要があり、十分な位置合わせが不可欠となる。
【0077】図8に示した画像形成装置は、例えば以下
のようにして製造される。外囲器88は、前述の安定化
工程と同様に、適宜加熱しながら、イオンポンプ、ソー
プションポンプなどのオイルを使用しない排気装置によ
り不図示の排気管を通じて排気し、10-7Torr程度
の真空度の有機物質の十分少ない雰囲気にした後、封止
が成される。外囲器88の封止後の真空度を維持するた
めに、ゲッター処理をおこなうこともできる。これは、
外囲器88の封止を行う直前あるいは封止後に、抵抗加
熱あるいは高周波加熱等を用いた加熱により、外囲器8
8内の所定の位置(不図示)に配置されたゲッターを加
熱して蒸着膜を形成する処理である。ゲッターは通常B
a等が主成分であり、該蒸着膜の吸着作用により、たと
えば1×10-5ないしは1×10-7Torrの真空度を
維持するものである。ここで、表面伝導型電子放出素子
のフォーミング処理以降の工程は、適宜設定できる。
【0078】次に、単純マトリクス配置の電子源を用い
て構成した表示パネルに、NTSC方式のテレビ信号に
基づいたテレビジョン表示を行う為の駆動回路の構成例
について、図10を用いて説明する。図10において、
101は画像表示パネル、102は走査回路、103は
制御回路、104はシフトレジスタである。105はラ
インメモリ、106は同期信号分離回路、107は変調
信号発生器、VxおよびVaは直流電圧源である。
【0079】表示パネル101は、端子Dox1ないし
Doxm、端子Doy1ないしDoyn、および高圧端
子Hvを介して外部の電気回路と接続している。端子D
ox1ないしDoxmには、表示パネル内に設けられて
いる電子源、即ち、M行N列の行列状にマトリクス配線
された表面伝導型電子放出素子群を一行(N素子)ずつ
順次駆動する為の走査信号が印加される。
【0080】端子Dy1ないしDynには、前記走査信
号により選択された一行の表面伝導型電子放出素子の各
素子の出力電子ビームを制御する為の変調信号が印加さ
れる。高圧端子Hvには、直流電圧源Vaより、例えば
10K[V]の直流電圧が供給されるが、これは表面伝
導型電子放出素子から放出される電子ビームに蛍光体を
励起するのに十分なエネルギーを付与する為の加速電圧
である。
【0081】走査回路102について説明する。同回路
は、内部にM個のスイッチング素子を備えたものである
(図中、S1ないしSmで模式的に示している)。各ス
イッチング素子は、直流電圧源Vxの出力電圧もしくは
0[V](グランドレベル)のいずれか一方を選択し、
表示パネル101の端子Dx1ないしDxmと電気的に
接続される。S1ないしSmの各スイッチング素子は、
制御回路103が出力する制御信号Tscanに基づい
て動作するものであり、例えばFETのようなスイッチ
ング素子を組み合わせる事により構成する事ができる。
【0082】直流電圧源Vxは、本例の場合には表面伝
導型電子放出素子の特性(電子放出しきい値電圧)に基
づき、走査されていない素子に印加される駆動電圧が電
子放出しきい値電圧以下となるような一定電圧を出力す
るよう設定されている。
【0083】制御回路103は、外部より入力する画像
信号に基づいて適切な表示が行われるように各部の動作
を整合させる機能を有する。制御回路103は、同期信
号分離回路106より送られる同期信号Tsyncに基
づいて、各部に対してTscanおよびTsftおよび
Tmryの各制御信号を発生する。
【0084】同期信号分離回路106は、外部から入力
されるNTSC方式のテレビ信号から、同期信号成分と
輝度信号成分とを分離する為の回路で、一般的な周波数
分離(フィルター)回路等を用いて構成できる。同期信
号分離回路106により分離された同期信号は、垂直同
期信号と水平同期信号より成るが、ここでは説明の便宜
上、Tsync信号として図示した。前記テレビ信号か
ら分離された画像の輝度信号成分を便宜上DATA信号
と表した。該DATA信号はシフトレジスタ104に入
力される。
【0085】シフトレジスタ104は、時系列的にシリ
アルに入力される前記DATA信号を、画像の1ライン
毎にシリアル/パラレル変換するためのもので、前記制
御回路103より送られる制御信号Tsftに基づいて
動作する(すなわち、制御信号Tsftは、シフトレジ
スタ104のシフトクロックであると言うこともでき
る)。シリアル/パラレル変換された画像1ライン分
(電子放出素子N素子分の駆動データに相当)のデータ
は、Id1ないしIdnのN個の並列信号として前記シ
フトレジスタ104より出力される。
【0086】ラインメモリ105は、画像1ライン分の
データを必要時間の間だけ記憶するための記憶装置であ
り、制御回路103より送られる制御信号Tmryに従
って適宜Id1ないしIdnの内容を記憶する。記憶さ
れた内容は、I’d1ないしI’dnとして出力され、
変調信号発生器107に入力される。
【0087】変調信号発生器107は、前記画像データ
I’d1ないしI’dnの各々に応じて、表面伝導型電
子放出素子の各々を適切に駆動変調する為の信号源であ
り、その出力信号は、端子Doy1ないしDoynを通
じて表示パネル101内の表面伝導型電子放出素子に印
加される。
【0088】前述したように、本発明を適用可能な電子
放出素子は放出電流Ieに対して以下の基本特性を有し
ている。即ち、電子放出には明確なしきい値電圧Vth
があり、Vth以上の電圧を印加された時のみ電子放出
が生じる。電子放出しきい値以上の電圧に対しては、素
子への印加電圧の変化に応じて放出電流も変化する。こ
のことから、本素子にパルス状の電圧を印加する場合、
例えば電子放出しきい値以下の電圧を印加しても電子放
出は生じないが、電子放出しきい値の電圧を印加する場
合には電子ビームが出力される。その際、パルスの波高
値Vmを変化させることにより出力電子ビームの強度を
制御する事が可能である。また、パルスの幅Pwを変化
させる事により出力される電子ビームの電荷の総量を制
御する事が可能である。
【0089】従って、入力信号に応じて、電子放出素子
を変調する方式としては、電圧変調方式、パルス幅変調
方式等が採用できる。電圧変調方式を実施するに際して
は、変調信号発生器107として、一定長さの電圧パル
スを発生し、入力されるデータに応じて適宜パルスの波
高値を変調するような電圧変調方式の回路を用いること
ができる。
【0090】パルス幅変調方式を実施するに際しては、
変調信号発生器107として、一定の波高値の電圧パル
スを発生し、入力されるデータに応じて適宜電圧パルス
の幅を変調するようなパルス幅変調方式の回路を用いる
ことができる。
【0091】シフトレジスタ104やラインメモリ10
5は、デジタル信号式のものでもアナログ信号式のもの
でも採用できる。画像信号のシリアル/パラレル変換や
記憶が所定の速度で行われれば良いからである。
【0092】デジタル信号式を用いる場合には、同期信
号分離回路106の出力信号DATAをデジタル信号化
する必要があるが、これには同期信号分離回路106の
出力部にA/D変換器を設ければ良い。これに関連して
ラインメモリ105の出力信号がデジタル信号かアナロ
グ信号かにより、変調信号発生器107に用いられる回
路が若干異なったものとなる。即ち、デジタル信号を用
いた電圧変調方式の場合、変調信号発生器107には、
例えばD/A変換回路を用い、必要に応じて増幅回路な
どを付加する。パルス幅変調方式の場合、変調信号発生
器107には、例えば、高速の発振器および発振器の出
力する波数を計数する計数器(カウンタ)および計数器
の出力値と前記メモリの出力値を比較する比較器(コン
パレータ)を組み合せた回路を用いる。必要に応じて、
比較器の出力するパルス幅変調された変調信号を表面電
動型電子放出素子の駆動電圧にまで電圧増幅するための
増幅器を付加することもできる。
【0093】アナログ信号を用いた電圧変調方式の場
合、変調信号発生器107には、例えばオペアンプなど
を用いた増幅回路を採用でき、必要に応じてレベルシフ
ト回路などを付加することもできる。パルス幅変調方式
の場合には、例えば、電圧制御型発振回路(VCO)を
採用でき、必要に応じて表面伝導型電子放出素子の駆動
電圧まで電圧増幅するための増幅器を付加することもで
きる。
【0094】このような構成をとり得る本発明の画像表
示装置においては、各電子放出素子に、容器外端子Do
x1ないしDoxm、Doy1ないしDoynを介して
電圧を印加することにより、電子放出が生ずる。高圧端
子Hvを介してメタルバック85、あるいは透明電極
(不図示)に高圧を印加し、電子ビームを加速する。加
速された電子は、蛍光膜84に衝突し、発光が生じて画
像が形成される。
【0095】ここで述べた画像形成装置の構成は、本発
明の画像形成装置の一例であり、本発明の技術思想に基
づいて種々の変形が可能である。入力信号については、
NTSC方式を挙げたが、入力信号はこれに限られるも
のではなく、PAL、SECAM方式などの他、これよ
りも、多数の走査線からなるTV信号(例えば、MUS
E方式をはじめとする高品位TV)方式をも採用でき
る。
【0096】次に、はしご型配置の電子源および画像形
成装置について図11、図12を用いて説明する。図1
1は、はしご型配置の電子源の一例を示す模式図であ
る。図11において、110は電子源基板、111は電
子放出素子である。112、Dx1〜Dx10は、電子
放出素子111を接続するための共通配線である。電子
放出素子111は、基板110上に、X方向に並列に複
数個配されている(これを素子行と呼ぶ)。この素子行
が複数個配されて、電子源を構成している。各素子行の
共通配線間に駆動電圧を印加することで、各素子行を独
立に駆動させることができる。即ち、電子ビームを放出
させたい素子行には、電子放出しきい値以上の電圧を、
電子ビームを放出しない素子行には、電子放出しきい値
以下の電圧を印加する。各素子行間の共通配線Dx2〜
Dx9は、例えばDx2、Dx3を同一配線とすること
もできる。
【0097】図12は、はしご型配置の電子源を備えた
画像形成装置におけるパネル構造の一例を示す模式図で
ある。120はグリッド電極、121は電子が通過する
ための空孔、122はDox1,Dox2...Dox
mよりなる容器外端子である。123はグリッド電極1
20と接続されたG1、G2...Gnからなる容器外
端子、124は各素子行間の共通配線を同一配線とした
電子源基板である。図12においては、図8または図1
1に示した部位と同じ部位には、これらの図に付したの
と同一の符号を付している。ここに示した画像形成装置
と図8に示した単純マトリクス配置の画像形成装置との
大きな違いは、電子源基板110とフェースプレート8
6の間にグリッド電極120を備えているか否かであ
る。
【0098】図12においては、基板110とフェース
プレート86の間には、グリッド電極120が設けられ
ている。グリッド電極120は、表面伝導型電子放出素
子から放出された電子ビームを変調するためのものであ
り、はしご型配置の素子行と直交して設けられたストラ
イプ状の電極に電子ビームを通過させるため、各素子に
対応して1個ずつ円形の開口121が設けられている。
グリッドの形状や設置位置は図12に示したものに限定
されるものではない。例えば、開口としてメッシュ状に
多数の通過口を設けることもでき、グリッドを表面伝導
型電子放出素子の周囲や近傍に設けることもできる。容
器外端子122およびグリッド容器外端子123は、不
図示の制御回路と電気的に接続されている。
【0099】本例の画像形成装置では、素子行を1列ず
つ順次駆動(走査)していくのと同期してグリッド電極
列に画像1ライン分の変調信号を同時に印加する。これ
により、各電子ビームの蛍光体への照射を制御し、画像
を1ラインずつ表示することができる。本発明の画像形
成装置は、テレビジョン放送の表示装置、テレビ会議シ
ステムやコンピューター等の表示装置の他、感光性ドラ
ム等を用いて構成された光プリンターとしての画像形成
装置等としても用いることができる。
【0100】
【実施例】以下、具体的な実施例をあげて本発明を説明
するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではな
く、本発明の目的が達成される範囲内での各要素の置換
や設計変更がなされたものを包含する。
【0101】実施例1 本実施例にかかわる基本的な表面伝導型電子放出素子の
構成は、図1(a)、(b)と同様である。本実施例に
かかわる表面伝導型電子放出素子の製造方法は、基本的
には図2,3と同様である。以下、図1〜3を用いて本
実施例にかかわる素子の基本的な構成および製造方法を
説明する。図1において1は基板、2と3は素子電極、
4は導電性薄膜、5は電子放出部である。
【0102】以下、順をおって表面伝導型電子放出素子
の製造方法を図1〜3に基づいて説明する。 工程−a 図1のように、清浄化した青板ガラス上に厚さ0.5μ
mのシリコン酸化膜をスパッタ法で形成した基板1上
に、素子電極2、3と素子電極間隔L1となるべきパタ
ーンをホトレジスト(製品名:RD−2000N−4
1、日立化成製)形成し、真空蒸着法により厚さ5nm
のTi、厚さ100nmのNiを順次堆積した。ホトレ
ジストパターンを有機溶剤で溶解し、Ni/Ti堆積膜
をリフトオフし、素子電極間隔L1が3μm、素子電極
の幅W1が300μmの素子電極2、3を形成した。こ
うして素子電極2、3を有する素子基板を作製した。
【0103】工程−b 工程−aで素子電極パターンを作製した素子基板に、膜
厚10nmのCr膜を真空蒸着により堆積し、フォトリ
ソグラフィー技術により、導電性薄膜4の形状に対応す
る開口を持つようにパターニングした。次に示す工程−
cから工程−dにかけては、工程−aおよびbと平行し
て実施することができる。
【0104】工程−c UV/O3 ドライストリッパー((株)サムコ・インタ
ーナショナル研究所製)にて表面を完全に洗浄した石英
基板を、図17(a)に示す構造のフェニルトリクロロ
シランの1%トルエン溶液に3〜5分程度浸積し、トル
エン溶媒でリンスした後120℃で5分間乾燥すること
により図2(a)に示すごとく薄膜Aを作製した。な
お、浸積により基板裏面や側面にもフェニルトリクロロ
シランが付着するが、表面以外は洗浄されていないため
連続膜を形成しない。また、裏面や側面に付着したフェ
ニルトリクロロシランは、後述する紫外線による分解工
程があることから、後の工程になんら影響しない。
【0105】工程−d 図2(b)に示すごとく、工程−cで作製した薄膜A上
に有機Pd(製品名:ccp4230、奥野製薬株式会
社製)をスピンナーにより回転塗布し、有機Pdからな
る薄膜Bを形成した。
【0106】工程−e つづいて図2(c)に示すごとく、工程−cおよび工程
−dで薄膜Aおよび薄膜Bを作製した石英基板の石英基
板側から波長193nmの紫外線を照射し、工程−aお
よび工程−bで作製した素子基板上へ有機Pdからなる
薄膜Bを転写した。
【0107】工程−f 転写した薄膜Bに素子基板ごとに300℃で120分間
の加熱焼成処理を施し、Pdを主元素とする微粒子から
なり膜厚10nm、シート抵抗値2×104 Ω/□の導
電性薄膜4を形成した。
【0108】工程−g Cr膜を酸エッチャントによりエッチングしてリフトオ
フにより所望のパターンを有する導電性薄膜4を形成し
た。以上の工程により基板1上に、素子電極2、3およ
び導電性薄膜4等を形成した。
【0109】工程−h 次に、測定評価装置に設置し、真空ポンプにて排気し、
2×10-5Torrの真空度に達した後、素子に素子電
圧Vfを印加するための不図示の電源より、素子の素子
電極2、3に電圧を印加し、通電フォーミングを行っ
た。通電フォーミング処理の電圧波形は図4に示したも
のである。
【0110】図4中、T1およびT2は電圧波形のパル
ス幅とパルス間隔であり、本実施例ではT1を1m秒、
T2を10m秒とし、矩形波の波高値(フォーミング時
のピーク電圧)は0.1Vステップで昇圧し、フォーミ
ング処理を行った。また、フォーミング処理中は、同時
に0.1Vの電圧でT2間に抵抗測定パルスを挿入し、
抵抗を測定した。なお、フォーミング処理の終了は、抵
抗測定パルスでの測定値が、約1MΩ以上になった時と
し、同時に素子への電圧の印加を終了した。この後、素
子を真空中に保持したまま、150℃でアニーリング
し、導電性薄膜4を還元した。
【0111】工程−i 続いて、n−ヘキサンをアンプルに封じたものをスロー
リークバルブを通して真空内に導入し、1.0×10-5
Torrを維持した。次にフォーミング処理した素子に
矩形波の波高値14Vのパルス電圧を印加し、活性化処
理をした。効率η(Ie/If×100%)が、約30
分で最大になったため、通電を停止し、スローリークバ
ルブを閉め、活性化処理を終了した。
【0112】工程−j こうして、電子放出部5を形成して電子放出素子を作製
し、電子放出特性を評価した。なお、アノード電極と電
子放出素子間の距離を4mm、アノード電極の電位を1
000V、電子放出特性測定時の真空装置内の真空度を
1×10-8Torrとし、素子の電極2および3の間に
素子電圧を14V印加した。
【0113】比較例1 実施例1の工程−aおよびbと同様の工程を行った後、
有機Pdを直接素子基板上にスピンナーにより回転塗布
した、その後実施例1の工程−f以降の処理を同様に行
い、電子放出特性の評価を行った。実施例1および比較
例1の方法で作製した素子を各々10素子ずつ評価した
ところ、実施例1の方法により作製した素子の方が電子
放出特性の均一性がまさっていた。
【0114】実施例2 本実施例では、工程−aおよび工程−bは実施例1と同
様に行った。なお、次に示す工程−cから工程−dにか
けては、工程−aおよびbと平行して実施することがで
きる。
【0115】工程−c UV/O3 ドライストリッパー((株)サムコ・インタ
ーナショナル研究所製)にて表面を完全に洗浄した石英
基板を、図17(a)に示す構造のフェニルトリクロロ
シランの1%トルエン溶液に3〜5分程度浸積し、トル
エン溶媒でリンスした後120℃で5分間乾燥すること
により図2(a)に示すごとく薄膜Aを作製した。な
お、浸積により基板裏面や側面にもフェニルトリクロロ
シランが付着するが、表面以外は洗浄されていないため
連続膜を形成しない。また、裏面や側面に付着したフェ
ニルトリクロロシランは、後述する紫外線による分解工
程があることから、後の工程になんら影響しない。
【0116】工程−d 図2(b)に示すごとく、工程−cで作製した薄膜A上
にチタニウムイソプロポキシド(東京化成株式会社製)
をスピンナーにより回転塗布し、有機Tiからなる薄膜
Bを形成した。
【0117】工程−e つづいて図2(c)に示すごとく、工程−cおよび工程
−dで薄膜Aおよび薄膜Bを作製した石英基板の石英基
板側から波長193nmの紫外線を照射し、工程−aお
よび工程−bで作製した素子基板上へ有機Tiからなる
薄膜Bを転写した。
【0118】工程−f 転写した薄膜Bに素子基板ごとに300℃で120分間
の加熱焼成処理を施し、Tiを主元素とする微粒からな
り膜厚10nm、シート抵抗値2×104 Ω/□の導電
性薄膜4を形成した。なお、ここで述べる微粒子膜と
は、上述したように、複数の微粒子が集合した膜であ
り、その微細構造として、微粒子が個々に分散配置した
状態のみならず、微粒子が互いに隣接、あるいは、重な
り合った状態(島状も含む)の膜をさし、その粒径と
は、前記状態で粒子形状が認識可能な微粒子についての
径をいう。
【0119】工程−g Cr膜および焼成後の導電性薄膜4を酸エッチャントに
よりエッチングして所望のパターンを形成した。以上の
工程により基板1上に、素子電極2、3および導電性薄
膜4等を形成した。
【0120】次いで、実施例1の工程−hから工程−j
と同様の処理を行い表面伝導型電子放出素子を作製し
た。本実施例のように作製した素子は、従来の素子に比
べて安定な電子放出特性を示し、また素子間均一性に優
れていた。
【0121】実施例3 本実施例では、工程−aおよび工程−bは実施例1と同
様に行った。なお、次に示す工程−cから工程−dにか
けては、工程−aおよびbと平行して実施することがで
きる。
【0122】工程−c UV/O3 ドライストリッパー((株)サムコ・インタ
ーナショナル研究所製)にて表面を完全に洗浄した石英
基板を、図17(c)に示す構造の4−tブチルフェニ
ルトリクロロシランの1%トルエン溶液に3〜5分程度
浸積し、トルエン溶媒でリンスした後120℃で5分間
乾燥することにより図2(a)に示すごとく薄膜Aを作
製した。なお、浸積により基板裏面や側面にも4−tブ
チルフェニルトリクロロシランが付着するが、表面以外
は洗浄されていないため連続膜を形成しない。また、裏
面や側面に付着した4−tブチルフェニルトリクロロシ
ランは、後述する紫外線による分解工程があることか
ら、後の工程になんら影響しない。
【0123】工程−d 図2(b)に示すごとく、工程−cで作製した薄膜A上
にLB法により有機Pdからなる薄膜Bを形成した。薄
膜Bは、表面圧18mN/m 、基板上下速度2mm/
secでベヘン酸と図17(d)に示す酢酸Pd−ビス
(ジデシルアミン)錯体の4:1混合物を150層累積
することにより作製した。
【0124】以降、実施例1の工程−eから工程−jま
でと同様の処理を行い、表面伝導型電子放出素子を作製
した。本実施例のように作製した素子は、従来の素子に
比べて安定な電子放出特性を示し、また素子間均一性に
優れていた。
【0125】実施例4 本実施例は、多数の表面伝導型電子放出素子を単純マト
リクス配置した画像形成装置の例である。電子源の一部
の平面図を図13に示す。また、図13のA−A’断面
図を図14に示す。ただし、図13〜16で同じ符号で
示したものは同じものを表す。ここで1は基板、72は
図7のDxmに対応するX方向配線(下配線とも呼
ぶ)、73は図7のDynに対応するY方向配線(上配
線とも呼ぶ)、4は導電性薄膜、2、3は素子電極、1
51は層間絶縁層、152は素子電極2と下配線72と
の電気的接続のためのコンタクトホールである。
【0126】次に製造方法を図2、図15および16に
より工程順に従って具体的に説明する。 工程−a 清浄化した青板ガラス上に厚さ0.5μmのシリコン酸
化膜をスパッタ法で形成した基板1上に、真空蒸着によ
り厚さ5nmのCr、厚さ600nmのAuを順次積層
した後、ホトレジスト(AZ1370ヘキスト社製)を
スピンナーにより回転塗布、ベークした後、ホトマスク
像を露光、現像して、下配線72のレジストパターンを
形成し、Au/Cr堆積膜をウェットエッチングして、
所望の形状の下配線72を形成した。
【0127】工程−b 次に厚さ1.0μmのシリコン酸化膜からなる層間絶縁
層151をRFスパッタ法により堆積した。
【0128】工程−c 工程bで堆積したシリコン酸化膜にコンタクトホール1
52を形成するためのホトレジストパターンを作り、こ
れをマスクとして層間絶縁層151をエッチングしてコ
ンタクトホール152を形成した。エッチングはCF4
とH2 ガスを用いたRIE(Reactive Ion
Etching)法によった。
【0129】工程−d その後、素子電極2、3と素子電極間ギャップLとなる
べきパターンをホトレジスト(製品名:RD−2000
N−41、日立化成社製)形成し、真空蒸着法により厚
さ5nmのTi、厚さ100nmのNiを順次堆積し
た。ホトレジストパターンを有機溶剤で溶解し、Ni/
Ti堆積膜をリフトオフし、素子電極間隔Lを3μmと
し、素子電極の幅を300μmとする、素子電極2、3
を形成した。
【0130】工程−e 素子電極2、3の上に上配線73のホトレジストパター
ンを形成した後、厚さ5nmのTi、厚さ500nmの
Auを順次真空蒸着により堆積し、リフトオフにより不
要の部分を除去して、所望の形状の上配線73を形成し
た。
【0131】工程−f 素子電極や配線を形成した素子基板に、膜厚100nm
のCr膜を真空蒸着により堆積し、フォトリソグラフィ
ー技術により、導電性薄膜4の形状に対応する開口を形
成し、Crマスク171(図16(f))を形成した。
【0132】次に示す工程−gから工程−hにかけて
は、工程−aから工程−fと平行して実施することがで
きる。 工程−g UV/O3 ドライストリッパー((株)サムコ・インタ
ーナショナル研究所製)にて表面を完全に洗浄した石英
基板を、図17(a)に示す構造のフェニルトリクロロ
シランの1%トルエン溶液に3〜5分程度浸積し、トル
エン溶媒でリンスした後120℃で5分間乾燥すること
により図2(a)に示すごとく薄膜Aを作製した。な
お、浸積により基板裏面や側面にもフェニルトリクロロ
シランが付着するが、表面以外は洗浄されていないため
連続膜を形成しない。また、裏面や側面に付着したフェ
ニルトリクロロシランは、後述する紫外線による分解工
程があることから、後の工程になんら影響しない。
【0133】工程−h 図2(b)に示すごとく、工程−cで作製した薄膜A上
に有機Pd(製品名:ccp4230、奥野製薬株式会
社製)をスピンナーにより回転塗布し、有機Pdからな
る薄膜Bを形成した。
【0134】工程−i つづいて図2(c)にしめすごとく、工程−fおよび工
程−gで薄膜Aおよび薄膜Bを作製した石英基板の石英
基板側から波長193nmの紫外線を照射し、工程−a
から工程−fで作製した基板上へ有機Pdからなる薄膜
Bを転写した。 工程−j 転写した薄膜Bに素子基板ごとに300℃で120分間
の加熱焼成処理を施し、Pdを主元素とする微粒からな
り膜厚10nm、シート抵抗値2×104 Ω/□の導電
性薄膜4を形成した(図16(j))。なお、ここで述
べる微粒子膜とは、上述したように、複数の微粒子が集
合した膜であり、その微細構造として、微粒子が個々に
分散配置した状態のみならず、微粒子が互いに隣接、あ
るいは、重なり合った状態(島状も含む)の膜をさし、
その粒径とは、前記状態で粒子形状が認識可能な微粒子
についての径をいう。
【0135】工程−k Cr膜171および焼成後の導電性薄膜4を(図16
(j))、酸エッチャントによりエッチングして所望の
パターンを形成した(図16(k))。以上の工程によ
り絶縁性基板1上に下配線72、層間絶縁層151、上
配線73、素子電極2および3、導電性薄膜4等を形成
した。つぎに、以上のようにして作成した電子源を用い
て表示装置を構成した例を図8を用いて説明する。
【0136】以上のようにして多数の平面型の表面伝導
型電子放出素子を作製した基板(電子源基板71)をリ
アプレート81上に固定した後、電子源基板71の5m
m上方に、フェースプレート86(ガラス基板83の内
面に蛍光膜84とメタルバック85が形成されて構成さ
れる)を支持枠82を介して配置し、フェースプレート
86、支持枠82、リアプレート81の接合部にフリッ
トガラスを塗布し、大気中あるいは窒素雰囲気中で40
0℃ないし500℃で10分以上焼成することで封着し
た。またリアプレート81への基板1の固定もフリット
ガラスで行った。
【0137】図8において、74は電子放出素子、7
2、73はそれぞれX方向およびY方向の素子配線であ
る。蛍光膜84は、モノクロームの場合は蛍光体のみか
ら成るが、本実施例では蛍光体はストライプ形状を採用
し、先にブラックストライプを形成し、その間隙部に各
色蛍光体を塗布し、蛍光膜84を作製した。ブラックス
トライプの材料として通常良く用いられている黒鉛を主
成分とする材料を用いた。ガラス基板83に蛍光体を塗
布する方法としてはスラリー法を用いた。また、蛍光膜
84の内面側には通常メタルバック85が設けられる。
メタルバックは、蛍光膜作製後、蛍光膜の内面側表面の
平滑化処理(通常フィルミングと呼ばれる)を行い、そ
の後、Alを真空蒸着することで作製した。
【0138】フェースプレート86には、さらに蛍光膜
84の導電性を高めるため、蛍光膜84の外面側に透明
電極(不図示)が設けられる場合もあるが、本実施例で
はメタルバックのみで十分な導電性が得られたので省略
した。前述の封着を行う際、カラーの場合は各色蛍光体
と電子放出素子とを対応させなくてはいけないため、十
分な位置合わせを行った。
【0139】以上のようにして完成したガラス容器(外
囲器)内の雰囲気を排気管(不図示)を通じ真空ポンプ
にて排気し、十分な真空度に達した後、容器外端子Do
x1ないしDoxmとDoy1ないしDoynを通じ電
子放出素子74の電極2、3間に電圧を印加し、導電性
薄膜4をフォーミング処理することにより電子放出部5
を作成した。フォーミング処理の電圧波形は図4(b)
と同様である。本実施例では図4における、T1を1m
秒、T2を10m秒とし、約1×10-5Torrの真空
雰囲気下で行った。このように作成された電子放出部5
はパラジウム元素を主成分とする微粒子が分散配置され
た状態となり、その微粒子の平均粒径は30Åであっ
た。
【0140】次に、パネルの排気管よりn−ヘキサンを
スローリークバルブを通してパネル内に導入し、1.0
×10-5Torrを維持した。フォーミングと同一の短
形波で、波高14Vで、真空度2×10-5Torrの真
空度で、素子電流Ifおよび放出電流Ieを測定しなが
ら、活性化処理をおこなった。以上のように、フォーミ
ング、活性化処理を行い、電子放出部5を形成し電子放
出素子74を作成した。次に10-6Torr程度の真空
度まで排気し、不図示の排気管をガスバーナーで熱する
ことで溶着し、外囲器の封止を行った。最後に封止後の
真空度を維持するために、高周波加熱法でゲッター処理
を行った。
【0141】以上のように完成した本発明の画像表示装
置において、各電子放出素子に容器外端子Dx1ないし
Dxm、Dy1ないしDynを通じて、走査信号および
変調信号を不図示の信号発生手段よりそれぞれ印加する
ことにより、電子放出させ、高圧端子Hvを通じ、メタ
ルバック85、あるいは透明電極(不図示)に数kV以
上の高圧を印加し、電子ビームを加速し、蛍光膜84に
衝突させ、励起・発光させることで画像を表示した。
【0142】比較例2 実施例4の工程−a〜工程−fと同様の工程を行った
後、有機Pdを直接素子基板にスピンナーにより回転塗
布した。その後実施例4の工程−j以降と同様の工程に
より画像表示装置を作成し、評価を行った。実施例4と
比較例2の発光輝度の分布を比較したところ、実施例4
の方が均一性がまさっていた。
【0143】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
電子放出素子の電子放出特性が良好、かつ安定となっ
た。また、導電性薄膜の膜厚が均一となることで電子放
出素子の電子放出特性には高い再現性が見られ、各素子
間で一様な特性が確保できた。
【0144】さらには、入力信号に応じて電子を放出す
る電子源においては、上記の電子放出素子を基体上に複
数個配列した配置とする電子源とすることで、各電子放
出素子が安定で、かつ、歩留よく製造できるようにな
り、素子間の特性ばらつきが減少した。
【0145】また、画像形成装置においては、電子放出
特性の安定性と均一性が向上し、例えば蛍光体を画像形
成部材とする画像形成装置においては、発光輝度の均一
性が確保されて高品位な画像形成装置、例えば蛍光体を
画像形成部材とする画像形成装置においては、発光輝度
の均一性が確保されて高品位な画像形成装置、例えば、
カラーフラットテレビが実現された。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子
の構成を示す模式的平面図および断面図である。
【図2】 本発明にかかわる表面伝導型電子放出素子の
製造方法の一例を示す模式図である。
【図3】 本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子
の製造方法の一例を示す模式図である。
【図4】 本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子
の製造に際して採用可能な通電フォーミング処理におけ
る電圧波形の例を示す模式図である。
【図5】 測定評価機能を備えた真空処理装置の一例を
示す模式図である。
【図6】 本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素子
についての放出電流Ie、素子電流Ifと素子電圧Vf
の関係の一例を示すグラフである。
【図7】 本発明を適用可能な単純マトリクス配置の電
子源の一例を示す模式図である。
【図8】 本発明を適用可能な画像形成装置の表示パネ
ルの一例を示す模式図である。
【図9】 蛍光膜の例を示す模式図である。
【図10】 画像形成装置をNTSC方式のテレビ信号
に応じて表示を行う例の駆動回路の一例を示すブロック
図である。
【図11】 本発明を適用可能な梯子配置の電子源の1
例を示す模式図である。
【図12】 本発明を適用可能な画像形成装置の表示パ
ネルの他の例を示す模式図である。
【図13】 実施例4における素子基板の部分平面図で
ある。
【図14】 図13のA−A’断面図である。
【図15】 実施例4の素子基板の製法を示す図であ
る。
【図16】 実施例4の素子基板の製法を示す図であ
る。
【図17】 薄膜Aおよび薄膜Bとして使用できる材料
の例を示す化学構造式である。
【図18】 従来の表面伝導型電子放出素子の一例を示
す模式図である。
【符号の説明】
1:基板、2,3:素子電極、4:導電性薄膜、5:電
子放出部、50:素子電極2,3間の導電性薄膜4を流
れる素子電流Ifを測定するための電流計、51:電子
放出素子に素子電圧Vfを印加するための電源、52:
素子の電子放出部5より放出される放出電流Ieを測定
するための電流計、53:アノード電極54に電圧を印
加するための高圧電源、54:素子の電子放出部より放
出される放出電流Ieを捕捉するためのアノード電極、
55:真空装置、56:排気ポンプ、71:電子源基
板、72:X方向配線、73:Y方向配線、74:表面
伝導型電子放出素子、75:結線、81:リアプレー
ト、82:支持枠、83:ガラス基板、84:蛍光膜、
85:メタルバック、86:フェースプレート、88:
外囲器、91:黒色導電材、92:蛍光体、101:表
示パネル、102:走査回路、103:制御回路、10
4:シフトレジスタ、105:ラインメモリ、106:
同期信号分離回路、107:変調信号発生器、Vxおよ
びVa:直流電圧源、110:電子源基板、111:電
子放出素子、112:Dx1〜Dx10は、前記電子放
出素子を配線するための共通配線、120:グリッド電
極、121:電子が通過するための空孔、122:Do
x1,Dox2,・・・・・・Doxmよりなる容器外端子、
123:グリッド電極120と接続されたG1、G2、
・・・・・・Gnからなる容器外端子、151:層間絶縁層、
152:コンタクトホール、171:パターン形成のた
めのCr膜。

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体上に形成された対向する一対の素子
    電極間に、電子放出部を有する導電性薄膜を形成する電
    子放出素子の製造方法において、 石英基板上に有機化合物を主成分とする第一の薄膜Aを
    作製する第一の工程と、 石英基板上の該薄膜A上に有機金属化合物を主成分とし
    て含有する第二の薄膜Bを作製する第二の工程と、 前記薄膜AおよびBを作製した石英基板と前記基体とを
    対向させて設置した後、石英基板の裏側からの紫外線照
    射により前記薄膜Aを分解して前記薄膜Bを前記基体上
    に転写する第三の工程と、 前記基体上に転写した薄膜Bの熱分解により前記導電性
    薄膜を得る第四の工程とを含むことを特徴とする電子放
    出素子の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記薄膜Aが、芳香族シラン化合物の自
    己集合型単分子層であることを特徴とする請求項1に記
    載の電子放出素子の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記薄膜AおよびBを作製した石英基板
    と、対向させる素子基板との間隔が密着ないし1mm以
    内に設定されている請求項1に記載の電子放出素子の製
    造方法。
  4. 【請求項4】 前記薄膜Bを構成する化合物の構造が、
    前記薄膜Aを分解する紫外線には分解されないか、分解
    速度が著しく遅いことを特徴とする請求項1に記載の電
    子放出素子の製造方法。
  5. 【請求項5】 照射する紫外線が、前記薄膜Aは分解す
    る一方で、前記薄膜Bは分解しないか、分解速度が著し
    く遅いような波長であることを特徴とする請求項1に記
    載の電子放出素子の製造方法。
  6. 【請求項6】 電子放出素子が基体上に複数個配置さ
    れ、該電子放出素子間の配線および該素子への電圧印加
    用端子が設けられた、入力信号に応じて電子を放出する
    電子源であって、 前記複数個の電子放出素子が、各々請求項第1〜5項の
    方法により設けられたことを特徴とする電子源。
  7. 【請求項7】 前記電子放出素子が基体に複数個並列に
    配置され、個々の素子の両端を配線に接続した電子放出
    素子の行を複数個持ち、さらに、該素子へ電圧を印加す
    る手段と該印加電圧を変調する手段を有することを特徴
    とする請求項6記載の電子源。
  8. 【請求項8】 基体に互いに絶縁された複数本のX方向
    配線と複数本のY方向配線とに、前記電子放出素子の各
    々の素子電極とを接続したことを特徴とする請求項7記
    載の電子源。
  9. 【請求項9】 入力信号に基づいて画像を形成する装置
    であって、少なくとも画像形成部材として請求項7また
    は8記載の電子源を含むことを特徴とする画像形成装
    置。
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