JPH09329341A - パネルヒータおよびそれを用いた暖房装置 - Google Patents

パネルヒータおよびそれを用いた暖房装置

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JPH09329341A
JPH09329341A JP14771796A JP14771796A JPH09329341A JP H09329341 A JPH09329341 A JP H09329341A JP 14771796 A JP14771796 A JP 14771796A JP 14771796 A JP14771796 A JP 14771796A JP H09329341 A JPH09329341 A JP H09329341A
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plate
weight
panel heater
heater
heat
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JP14771796A
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English (en)
Inventor
Seiju Maejima
正受 前嶋
Koichi Saruwatari
光一 猿渡
Takeshi Saito
健 斉藤
Eiji Hara
英二 原
Yoshihisa Saito
慶久 斉藤
Yutaka Ito
裕 伊藤
Katsuji Takahara
克二 高原
Koji Kobuchi
孝司 小渕
Kazuhiro Uchida
一弘 内田
Noriyasu Baba
規泰 馬場
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Fujikura Ltd
Original Assignee
Fujikura Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、鋼板からなる放熱用加熱板を用い
たパネルヒータよりも昇温特性と均熱性に優れ、遠赤外
線の放射特性も良好な放射加熱板を備えたパネルヒータ
の提供を目的とする。 【解決手段】 本発明は、AlまたはAl合金からなる
放熱板本体とこの放熱板本体の少なくとも一面に形成さ
れて微細な凹凸を有する陽極酸化皮膜と陽極酸化皮膜の
表面に形成された繊維層とを具備する放射加熱板と、こ
の放射加熱板に敷設された加熱ヒータとを具備してなる
ものである。また、Al合金がMnを0.3〜4.3重量
%含有し、残部Alおよび不可避不純物からなるもので
あることが好ましく、陽極酸化皮膜が0.5〜45μm
の厚さに形成されたものであることが好ましい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は昇温特性、均熱性、
遠赤外線の放射特性に優れた遠赤外線放射加熱板を備え
たパネルヒータに関する。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のパネルヒータに設けられ
る放射用加熱板は、亜鉛引きやアルミニウムメッキ処理
したものを含めて鉄板単独、あるいは、この鉄板の上に
植毛処理を行ったものなどが一般的であり、この放射用
加熱板に対し、ニクロムヒータやコードヒータを必要な
発熱容量分だけ敷設したヒータユニットを取付板に積層
することによりパネルヒータが構成されている。しかし
ながらこのような構造のパネルヒータにあっては、放熱
用加熱板が基本的に鉄板から構成されているために、熱
伝導度が鉄の熱伝導度に支配されてこれ以上良好な発熱
特性や均熱性が得られないという問題があった。また、
寒い時期の開放された場所等における局部的な暖房器具
に用いられるパネル状の放熱板として、ホウロウ板が知
られているが、このホウロウ板は放熱する板の表面が露
出しているために、均熱性に劣る問題がある。
【0003】前記パネルヒータにあっては、従来、鉄板
に植毛等を施し、低温やけどを防止したり、外観を良好
にするなどの構造を採用しているが、本質的に鉄の熱伝
導度が影響し、一定温度の到達にも若干時間を有する問
題があった。さらにこの種のパネルヒータは、ヒータユ
ニットをできる限り薄く形成して表面積を大きくするこ
とがセールスポイントとなり得るので、例えば、壁掛け
タイプとして、あるいは、机、天井等の下面に装着する
ことを考慮した場合に軽量化が大きな問題となり、少し
でも構造材を軽量化したいといった課題がある。
【0004】ところで、前述の問題の一部を回避できる
構造として、鋼板の表面に高輻射で断熱効果のある植毛
層などを形成した構造の暖房テーブルが、特開平7―2
17908号公報に開示されている。この公報に開示の
暖房テーブルにあっては、薄板鋼板にセラミックなどの
高輻射率の輻射層が積層され、更にその表面に植毛処理
を施すか布物を張り付けて繊維層を形成して低温発熱面
部が構成されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】前記公報に記載の従来
の暖房テーブルにあっては、セラミックなどの高輻射率
の素材を用いることでより多くの遠赤外線を利用するこ
とができるようになり、表面の植毛処理により均熱性の
向上と採暖者の保護用ガード性能を向上させることがで
きるようになっている。しかしながら前記公報に記載の
従来の暖房テーブルにあっても、放熱用加熱板は鉄板か
らなる薄板鋼板を主体としているので、昇温特性、均熱
性、遠赤外線の放射特性および耐久性の面では、必ずし
も充分なものではないという問題があった。
【0006】本発明は前記事情に鑑みてなされたもので
あり、鋼板からなる放熱用加熱板を用いたパネルヒータ
よりも昇温特性と均熱性に優れ、遠赤外線の放射特性も
良好な放射加熱板を備えたパネルヒータの提供を目的と
する。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のパネルヒータは
前記課題を解決するために、AlまたはAl合金からな
る放熱板本体と放熱板本体の少なくとも一面に形成され
て微細な凹凸を有する陽極酸化皮膜と陽極酸化皮膜の表
面に形成された繊維層とを具備する放射加熱板と、この
放射加熱板に敷設された加熱ヒータとを具備してなるも
のである。本発明のパネルヒータにおいてAl合金が、
Mnを0.3〜4.3重量%含有し、残部Alおよび不可
避不純物からなるものであっても良い。本発明のパネル
ヒータにおいて陽極酸化皮膜が0.5〜45μmの厚さ
に形成されたものであっても良い。一方、本発明の暖房
装置は、先に記載のパネルヒータが、取付板の裏面に取
り付けられ、この取付板の裏面のコーナ部に脚部が立設
されてなるものであっても良い。先に記載のパネルヒー
タの2つのコーナ部に支持台が装着されてパネルヒータ
が起立状態で設置自在にされてなる構成であっても良
い。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実
施の形態について説明する。図1と図2は本発明に係る
パネルヒータを備えた暖房装置の一形態を示すもので、
この例の暖房装置Aは、正方形状の表板1とこの表板1
の底面コーナ部に立設された4本の脚部2と、表板1の
底面側に取り付けられた図2に示す積層構造のヒータ本
体3を主体として構成された布団レスこたつ型のもので
ある。前記ヒータ本体3は、断熱性の木材積層板である
ハードボード等からなる補強板5と、この補強板5の下
面に一体化されたPET(ポリエチレンテレフタレー
ト)等の断熱樹脂ボードからなる断熱板6と、パネルヒ
ータ7を積層して構成されている。前記パネルヒータ7
は、以下に説明する特殊なアルミ合金板からなる放射加
熱板8と、この放射加熱板8の上面(断熱板6側の面)
に蛇行させて敷設されたコードヒータ9と、放射加熱板
8の下面に植設されて採暖者に対するガードの役目を奏
するナイロン製等の植毛部材10を主体として構成され
ている。なお、前記コードヒータ9は、180℃近傍を
温度限界とし、100℃前後の放熱面温度を得ることが
できる発熱ヒータとされることが好ましい。また、コー
ドヒータ9はニクロム線等の発熱体以外に、フィルムヒ
ータ等の面状発熱体等であっても良く、コードヒータ7
の場合は中心部と外周部においてその敷設密度を変化さ
せること等により均一な温度制御ができるように敷設さ
れることが好ましい。
【0009】前記放射加熱板8は、高い耐熱性と優れた
遠赤外線放射特性を必要とされるので、Al-Si系、
あるいは、Mnを含有するAl-Mn系の合金であっ
て、後述するSi粒子、あるいは、Al-Mn系金属間
化合物が分散析出し、表面に微細な凹凸を有する陽極酸
化皮膜8aが形成されたものが用いられる。また、これ
らの材料からなる板材表面に形成される微細な凹凸を有
する陽極酸化皮膜8aは、一例として、その板材の表面
をブラスト処理や液体ホーニング処理などの機械的粗面
化方法で所定範囲の粗さに粗面化した後に、この板材を
陽極酸化処理することにより得られる。
【0010】そして、このような微細な凹凸を有する陽
極酸化皮膜8aが形成された放射加熱板8にあっては、
純Alのような通常のAlを基材として用いた場合で
も、実用上有効とされる3〜30μmの波長領域におけ
る遠赤外線の全放射特性が70%以上と高い特性が得ら
れるとともに、耐熱性においても、従来の純Alでは2
00℃が限度とされていたものが、500℃までの熱ヒ
ートサイクルに対しても反りや変形を生じないととも
に、肉眼で観察できるようなクラックも生じない優れた
特性が得られる。
【0011】このような優れた特性が得られる理由につ
いては明らかではないが、その理由として遠赤外線の放
射特性に関しては、表面が微細な凹凸を有するために見
かけ状の表面積が増大することや、粗面化により皮膜成
長が不均一になり、複雑な凹凸と複雑に枝別れしたポア
とが形成され、入射光に対する散乱乱吸収率が増大する
ことなどが考えられる。また、耐熱性に関し、複雑に枝
別れしたポアが熱サイクルによる応力を緩和し、クラッ
クなどの発生を阻止するためと考えられる。
【0012】また、この場合、後述のようなSi粒子や
Al-Mn系金属間化合物粒子が分散析出されたAl-S
i系合金やAl-Mn系合金のような耐熱性の合金から
板材を構成すると、陽極酸化の過程でSi粒子やAl-
Mn系金属間化合物粒子が陽極酸化皮膜中に取り込まれ
るとともに、陽極酸化皮膜8aがこれらの粒子を避ける
ようにして成長するために、陽極酸化皮膜中のポアは一
層複雑に枝別れした構造となり、熱応力に対する抵抗力
が増大し、より耐熱性に優れたものが得られる。 さら
にまた、陽極酸化皮膜8a中にSi粒子やAl-Mn系
金属間化合物粒子が分散して存在しているために、これ
らの存在によって入射光の散乱吸収率もより一層増大
し、遠赤外線の放射特性においてもより優れた特性が得
られる。
【0013】放射加熱板8の表面を粗面化する場合の方
法の一例としては、アルミナや炭化けい素、ケイ砂など
のように研削作用のある粉末を研削材としたブラスト処
理や液体ホーニング処理、あるいは、コランダムを含有
したナイロン繊維、あるいは0.1〜1.0mm程度の直
径のピアノ線を植え込んだ研摩輪を高速回転させて削る
方法、あるいはエメリー紙(布)により削る方法などの
ように、機械的に粗面化する方法や、電解エッチングな
どの化学的方法により粗面化する方法などであるが、本
発明の場合においては、機械的な方法を用いてその表面
を平均粗さ0.5〜5.0μm、最大粗さ5〜50μmの
範囲に調整することにより、より優れた特性が得られ
る。
【0014】この機械的方法が優れる理由は定かではな
いが、機械的な粗面化方法では、局部的に大きな力が付
加されることによってアルミ地金の塑性流動や加工硬化
による金属組織の不均質化が起こるとともに、無理矢理
地金が削り取られるための凹凸形状の複雑化が起きるこ
とによるものと推定され、更に、この状態で陽極酸化処
理されると、金属組織の差異により、部分的に陽極酸化
皮膜8aの質や成長速度が異なり、また、複雑な凹凸形
状によるランダムな方向への陽極酸化皮膜の成長などが
原因となって、非常に不均質な凹凸と枝別れした複雑な
ポア構造を有する陽極酸化皮膜8aが形成され、これに
よって入射光の散乱の吸収率が増大し、遠赤外線の放射
特性が向上するとともに、熱サイクルによる緩和作用も
大きくなり、耐熱性においても優れたものになるものと
思われる。
【0015】また、陽極酸化処理により形成される陽極
酸化皮膜8aの厚さとしては、0.5〜45μmの範囲
とすることが好ましく、これより薄い場合には充分な遠
赤外線放射率が得られない。陽極酸化処理方法として
は、通常に良く用いられる方法の多種類のものを用いる
ことができる。また、電解浴としては、酸性浴のみなら
ず、アルカリ浴、あるいはホルムアミド系とホウ酸系な
どの非水浴をも用いることができる。
【0016】例えば、酸性電化浴としては、硫酸、リン
酸、クロム酸、しゅう酸、スルホサリチル酸、ピロリン
酸、スルファミン酸、リンモリブデン酸、ホウ酸、マロ
ン酸、コハク酸、マレイン酸、クエン酸、酒石酸、フタ
ル酸、イタコン酸、リンゴ酸、グリコール酸などを1種
または2種以上溶解した水溶液を用いることができる。
また、アルカリ性電界浴としては、カセイソーダ、カセ
イカリ、炭酸ナトリウム、リン酸カリウム、アンモニア
水などを1種または2種以上溶解した水溶液を用いるこ
とができる。
【0017】電解時の電流波形については、直流、交
流、交直重畳、交直併用、不完全整流波形、パルス波
形、矩形波などが用いられる。電解方法としては、定電
流、定電圧、定電力法および連続、断続あるいは電流回
復を応用した高速アルマイト法などで行なうことができ
る。以上の中でパルス波形や不完全整流波形を用いて不
均質な陽極酸化皮膜を生成させたり、断続電解や電流回
復法により多層構造の陽極酸化皮膜を形成させて、より
高い放射率のものとすることもできる。
【0018】陽極酸化処理により皮膜を形成させた後の
後処理としては、耐食性向上のために、沸騰水浸積や、
金属塩含有熱水浸積法などの通常の方法で封孔処理を行
なっても良い。なお、非粘着性を要求される場合は、表
面ポリ4フッ化エチレンなどのフッ素樹脂をコーティン
グすれば良く、この場合、陽極酸化処理後の表面は粗面
なのでプライマー処理などをしなくとも優れた密着性が
得られる。また、電解着色法により陽極酸化皮膜8aの
微細孔中に、Ni、Cu、Co、Sn、Pb、Cdなど
の金属を析出させてから、酸化雰囲気中で析出金属を酸
化させたり、あるいは、ケイ酸塩水溶液やジルコニウム
塩水浴などと酸やアルカリと交互に浸積して微細孔中に
ケイ酸塩やジルコニウムの水酸化物を沈積させても良
い。これら方法により陽極酸化皮膜の微細孔に遠赤外線
放射特性の優れた金属酸化物を含有させることにより、
より放射率の高い遠赤外線放射体とすることができる。
【0019】次に放射加熱板8に用いるAl-Mn系合
金について説明する。適当量のMnを含有するAl-M
n系合金では、Al-Mn系金属間化合物が生成され、
そのAl-Mn系金属間化合物の析出状態が適切であれ
ば遠赤外線放射特性に寄与するとともに、耐ヒートクラ
ック性の向上にも寄与する。このAl-Mn系金属間化
合物としては、Al6Mn、Al6(MnFe)、αAl
Mn(Fe)Si、およびそれらにCr、Ti等が少量
固溶されたものなどがあるが、このようなAl-Mn系
金属間化合物が分散して析出しているアルミニウム合金
の表面に陽極酸化処理を施すと、そのAl-Mn系金属
間化合物の粒子は分散された状態で陽極酸化皮膜中に含
有される。
【0020】このような陽極酸化皮膜に分散されている
金属間化合物粒子によって入射光が散乱吸収されやすく
なり、遠赤外線の放射物特性が向上する。また、可視光
線も吸収されるため、目視の色調も黒くなる。更に、陽
極酸化処理時において陽極酸化皮膜が成長する過程で、
ポアは枝別れした構造となり、このような枝別れポア構
造によって入射光に対する陽極酸化皮膜内での散乱吸収
が助長され、遠赤外線放射特性が一層向上する。更に、
陽極酸化皮膜中に分散して存在するAl-Mn系金属間
化合物粒子は応力の緩和点としても機能し、また前述の
ようなポアの枝別れした構造は歪の吸収能力が高く、そ
のためクラックが生じにくいとともに、仮にクラックが
発生してもその伝播が阻止される。
【0021】ここで、Al-Mn系金属間化合物析出物
の径が0.01μm未満では、前述のようなAl-Mn系
金属間化合物析出物分散による効果が得られず、一方、
3μmを越える粗大なAl-Mn系金属間化合物析出物
は成形性を悪化させるから、粒径が0.01〜3μmの
ものが分散していることが好ましい。また、粒径が0.
01〜3μmのAl-Mn系金属間化合物析出物は、1
×105個/mm3以上の密度で分散していることが好ま
しい。
【0022】次に上述のようなAl-Mn系合金におけ
る成分組成の限定理由を述べる。 Mn:Mnは、Al-Mn系金属間化合物析出物を生成
し、前述のように遠赤外線特性の向上および耐ヒートク
ラック性の向上に寄与する。ここでMn量が、0.3重
量%未満では、良好な遠赤外線放射特性が得られなくな
る。一方、4.3重量%を越えた場合には、合金から薄
板などへの連続鋳造が困難になり、実用的でない。 即
ち、前述のようなAl-Mn系金属間化合物析出物の析
出状態を得るためには、鋳造時の冷却速度を5℃/秒以
上としてMnを充分に固溶させておき、その後、前記金
属間化合物析出のための熱処理を施すことが好ましい
が、5℃/秒以上の冷却速度で鋳造するためには、実用
上は薄板連続鋳造法(連続鋳造圧延)を適用することが
最適である。しかしながら、Mn量が4.3重量%を越
えれば薄板連続鋳造が困難になってしまう。従ってMn
量は0.3〜4.3重量%の範囲が好ましい。
【0023】Mg:Mgは必ずしも必須の元素ではない
が、Al-Mn系金属間化合物析出物の析出を促進し、
前述のような析出状態を達成するに寄与する。特にMn
量が比較的少ない範囲においては、Mgの添加量を多く
することが、Al-Mn系金属間化合物析出物の析出を
促進して遠赤外線放射特性の向上のために有効である。
但し、Mg量が6.0重量%を越えれば、薄板連続鋳造
が困難となり、実用的でなくなる。一方、Mn量が0.
05重量%未満ではMg添加による上述の効果が得られ
ない。よってMgの添加量は0.05〜6.0重量%の範
囲が好ましい。 Fe:FeはAl-Mn系金属間化合物析出物の析出に
ある程度の影響を与えるが、遠赤外線放射特性には本質
的には影響はない。鋳造性の点から考慮するとFe量は
少ないほうが好ましく、0.5重量%を越えれば連続鋳
造が困難となるおそれがある。 Si:SiはAl-Mn系金属間化合物析出物の析出に
ある程度の影響を与えるが、遠赤外線放射特性には本質
的に影響はない。鋳造性の点からはSi量は少ないこと
が好ましく、2.0重量%を越えれば連続鋳造が困難と
なるおそれがある。
【0024】更に、通常のAl合金においては、鋳塊の
結晶粒微細化のために、少量のTiを単独であるいは微
量のBと組み合わせて添加することがあるが、Al-M
n系合金にも0.003〜0.15重量%の範囲でTiを
単独で、もしくは1〜100ppmのBと組み合わせて
添加しても良い。即ち、Tiは鋳塊の結晶粒を微細化し
て圧延板のストリークス、キメを防止する効果がある
が、Tiが0.003重量%未満ではその効果が得られ
ず、Tiが0.15重量%を越えればTiAl3系粗大金
属間化合物が生成されてしまう。また、BはTiと共存
して結晶粒微細化を促進する元素であるが、B量が1p
pm未満ではその効果が得られず、一方100ppmを
越えればその効果が飽和し、また粗大TiB2粒子が生
成されて線状欠陥が発生する。このほか、Mgを含有す
る系のアルミニウム合金においては、溶湯の酸化を防止
するために微量のBeを添加することが従来から行なわ
れているが、500ppm程度以下のBeを添加するこ
とに特に支障はない。
【0025】Al-Mn系合金においては、Ni、Z
r、V、Cu、Zn等が含まれることがある。これらの
うち、Ni、Zr、Vは遠赤外線放射特性に本質的に影
響しないが、Niを1.0重量%以上、Zrを0.3重量
%以上、Vを0.3重量%以上では薄板連続鋳造が困難
となるから、Niを1.0重量%未満、Zrを0.3重量
%未満、Vを0.3重量%未満に抑制することが望まし
い。また、Cu、Znは陽極酸化皮膜の色調に若干の変
化を与えるものの、遠赤外線放射特性に本質的な影響は
与えないが、Cuを1.0重量%以上、Znを2.0重量
%以上では薄板連続鋳造が困難となるから、Cuを1.
0重量%未満、Znを2.0重量%未満に抑えることが
好ましい。
【0026】次に上述のようなAl-Mn系合金からな
る圧延板を製造するプロセス条件について説明する。前
述のように、Al-Mn系金属間化合物の適切な析出状
態を得ることで得られる遠赤外線放射特性を達成するた
めには、鋳造速度と、析出のための加熱処理が重要であ
る。鋳造については、鋳造速度を高めてMnを充分に固
溶することにより、その後の析出処理でAl-Mn系金
属間化合物を適切な析出状態で析出させることが可能で
あり、そのためには、5℃/秒以上の鋳造速度が好まし
い。特に大きな板を製造する場合に、5℃/秒以上の冷
却速度を得るためには、直接5〜10mm厚程度の薄板
を得ることが容易にできる薄板連続鋳造法(連続鋳造圧
延法)を適用することが好ましい。
【0027】一方、析出のための加熱は、300℃以
上、600℃以下の温度で0.5時間以上行なうことが
好ましい。温度が300℃未満では析出物が小さ過ぎて
優れた遠赤外線放射特性が得られず、一方600℃を越
えれば、陽極酸化処理後の色調が悪くなり、また結晶粒
の粗大化が生じる。また時間は、昇温過程から保持し、
冷却過程を通じて300℃以上となっている時間が0.
5時間以上あれば良く、300℃以上の温度となってい
る時間が0.5時間未満では陽極酸化処理後に良好な遠
赤外線特性が得られない。
【0028】なお、この析出のための加熱は、鋳塊のま
ま行なっても、また圧延の途中で、更には圧延後に行な
っても良い。従ってこの析出処理は、鋳塊に対する均質
化処理、あるいは熱間圧延のための加熱処理、更には熱
間圧延後もしくは冷間圧延の中途で必要に応じて行なわ
れる中間焼鈍、更には冷間圧延後に必要に応じて施され
る最終焼鈍などと兼ねて行なうことができる。そしてま
た、熱間圧延と圧接のための加熱や焼鈍と兼ねて行なっ
ても良い。このほか、熱間圧延や冷間圧延、更には、必
要に応じて行なわれる中間焼鈍や最終焼鈍は常法に従っ
て行なえば良い。
【0029】次にAl-Si系合金における成分組成の
限定理由について説明する。 Si:Siは鋳造時にその添加量に応じて初晶Si、共
晶Siとして晶出し、またこれらの晶出Siは必要に応
じて行なわれた熱処理や組成加工によりその形状が変化
する。また、必要に応じて熱処理された場合、Alのマ
トリックス中からも金属Siが析出する。これらの初晶
Si、共晶Si、析出Siは、前述のように陽極酸化処
理時に金属Si粒子として陽極酸化皮膜中に取り込ま
れ、入射光に対する散乱、吸収を通じて遠赤外線放射特
性の向上に寄与するとともに、クラックの発生防止に寄
与する。更に金属Si粒子は前述のように陽極酸化皮膜
内のポアを枝別れ構造とすることに寄与し、これによっ
ても遠赤外線放射特性の向上とクラック発生防止に寄与
する。基材アルミニウム合金のSi量が、3重量%未満
では金属Si粒子の数が少なく、遠赤外線の放射が不十
分となる。一方、Si量が15重量%を越えれば、陽極
酸化皮膜中の金属Si粒子の体積率が大き過ぎて陽極酸
化皮膜の強度、耐食性が低下してしまい、また圧延性も
低下する。従ってSi量は、3〜15重量%の範囲が好
ましい。
【0030】Al-Si合金としては、上記Siの他
は、基本的にはAlおよび不可避不純物とすれば良い
が、Siの他に、強度向上のために、Fe、Mg、C
u、Mn、Ni、Cr、V、Zn、Zrのうちの1種ま
たは2種以上を含有しても良い。これらの添加量は以下
の通りである。
【0031】Fe:Feは強度向上および結晶粒微細化
のために有効である。Fe量が、0.05重量%未満で
はその効果が得られず、2.0重量%を越えれば陽極酸
化皮膜の強度と耐食性が低下する。またFe量が、2.
0重量%を越えれば、SiがFeと化合してAl-Fe-
Si系の金属間化合物の量が増加し、遠赤外線放射特性
が低下する。従ってFeを添加する場合のFe量は、
0.05〜2.0重量%の範囲が好ましい。 Mg:Mgも強度向上に寄与する。Mg量が0.05重
量%未満ではその効果が得られず、一方、2.0重量%
を越えればMgとSiが結合してMg2Siの生成量が
増加し、遠赤外線放射特性が低下する。またMg量が
2.0重量%を越えれば、鋳造性、塑性加工性も低下す
る。従ってMgを添加する場合のMg量は0.05〜2.
0重量%の範囲内が好ましい。 Cu:Cuの添加も強度向上に寄与する。Cu量が0.
05重量%未満ではその効果が得られず、6.0重量%
を越えれば鋳造性、塑性加工性、耐食性が低下する。従
ってCuを添加する場合のCu量は0.05〜6.0重量
%の範囲が好ましい。
【0032】Mn:Mnは強度向上に寄与するととも
に、結晶粒微細化、耐熱性向上に寄与する。Mn量が
0.05重量%未満ではこれらの効果が得られず、一
方、2.0重量%を越えればMnがSiと結合してAl-
Mn-Si系の金属間化合物の生成量が増加し、遠赤外
線放射特性が向上する。また、Mn量が2.0重量%を
越えれば、鋳造も困難となる。従ってMnを添加する場
合のMn量は0.05〜2.0重量%の範囲が好ましい。 Ni:Niも強度向上に寄与するとともに、耐熱性向上
に寄与する。Ni量が0.05重量%未満ではこれらの
効果が得られず、一方、3.0重量%を越えれば鋳造が
困難になる。従ってNiを添加する場合のNi量は0.
05〜3.0重量%の範囲が好ましい。 Cr、Zr、V:これらの元素は、強度向上に寄与する
とともに、結晶粒微細化に寄与する。いずれも0.05
重量%未満ではその効果が得られず、一方0.5重量%
を越えれば粗大な金属間化合物が生成されてかえって強
度を低下させる。従ってCr、Zr、Vの1種または2
種以上を添加する場合の添加量は、いずれも単独量で
0.05〜0.5重量%の範囲が好ましい。なお、スラ
ブ、ビレットなどの圧延や押出、あるいは鋳造を適用す
る場合は、これらの元素の単独添加量が0.3重量%を
越えれば塑性加工性が低下して鋳造が困難となるから、
単独添加量で0.3重量%以下とすることが好ましい。
【0033】Zn: Znは、溶解原材料にスクラップ
を使用した場合に必然的に混入する元素であるが、1重
量%を越えて積極的に含有させた場合に強度向上に寄与
する。Znが1.0重量%以下ではその効果が得られ
ず、一方7.0重量%を越えれば鋳造性が悪化する。従
ってZnを積極的に添加する場合のZn量は1.0重量
%を越え、7.0重量%以下とした。更に、Al-Si系
合金の場合は、組織微細化のためにTiと、P,Na,
Sb,Srのうちの1種または2種以上が含有される。
これらの成分限定理由は次の通りである。 Ti:Tiは鋳塊結晶粒の微細化を通じて組織の微細化
に寄与する。Tiの添加量が0.005重量%未満では
その効果が得られず、0.2重量%を越えると粗大な金
属間化合物が生成されて好ましくない。従って、Tiを
添加する場合の添加量は、0.005〜0.2重量%が好
ましい。なお、鋳塊結晶粒微細化のためには、Tiとと
もにBを共存させることが効果的である。この場合Bの
添加量は1ppm未満ではその効果が得られず、100
ppmを越えるとその効果が飽和するからTiとあわせ
てBを添加する場合の添加量は、1〜100ppmの範
囲が好ましい。
【0034】P:Pは初晶Siの微細化に寄与する。こ
の為、Pの添加量は初晶Siが初出するような約10重
量%以上のSiを含有する合金の場合に効果的である。
Pの添加量は0.005重量%未満では初晶Siの微細
化の効果が得られず、0.1重量%を越えるとその効果
が飽和する。従って、Pを添加する場合の添加量は、
0.005〜0.1重量%が好ましい。 Na、Sb、Sr:Na、Sb、Srの元素は共晶Si
の微細化に寄与する。いずれも0.005重量%未満で
はその効果が得られない。Na、Srは0.1重量%を
越えるとその効果が飽和し、Sbは0.3重量%を越え
るとその効果が飽和する。従って、Naを添加する場合
の添加量は0.005〜0.1重量%、Sbを添加する場
合の添加量は0.005〜0.3重量%、Srを添加する
場合の添加量は0.005から0.1重量%が好ましい。
なお、Nb、Sb、SrがPと共存する場合には、Pに
よる初晶Siの微細化効果が失われてしまうから、Pと
は共存させないことが望ましい。
【0035】以上の各元素の他、溶解時の酸化防止のた
めにBeを1〜100ppm程度添加することに特に支
障はない。またその他の元素も、合計で1重量%以下程
度の微量であれば、特に遠赤外線放射特性に悪影響を及
ぼすことはない。
【0036】次に、前述のようなAl-Mn系あるいは
Al-Si系のAl合金の基材の表面に陽極酸化処理を
施せば、その陽極酸化皮膜は優れた遠赤外線特性を発揮
するとともに、優れた耐ヒートクラック性を示す。即
ち、陽極酸化処理時には、Al-Mn系Al合金の基材
の場合はAl-Mn系金属間化合物の析出粒子が、ま
た、Al-Si系Al合金の場合は金属Si粒子がいず
れも皮膜中にそのまま残存した状態で陽極酸化皮膜が成
長する。そのため、皮膜中のポアの成長がAl-Mn系
金属間化合物粒子もしくは金属Si粒子に妨げられ、枝
別れした微細なポアを有する多孔質の皮膜が生成され
る。更に、陽極酸化皮膜中にそのまま残存して分散して
いる微細なポアが入射光を散乱吸収し、遠赤外線の放射
特性も良好となる。そしてまた前述の枝別れした微細な
ポア構造と皮膜中に分散したAl-Mn系金属間化合物
粒子もしくは金属Si粒子が熱応力の緩和点として機能
し、そのため皮膜中にクラックが生じにくくなり、50
0℃程度の高温に至るまでクラックが生じることなく使
用可能となる。
【0037】ところで、前述したAlあるいはAl合金
からなる基材に機械的粗面化処理を施した後に陽極酸化
処理を施すと、基材表面の表面粗さの値がそのまま陽極
酸化皮膜の表面粗さに表われることとなる。よって、基
材表面を平均粗さ0.5〜5μm、最大粗さ5〜50μ
mに粗面化することにより、得られた陽極酸化皮膜の表
面粗さも平均粗さ0.5〜5μm、最大粗さ5〜50μ
mに粗面化されることになる。
【0038】前記構成の放射加熱板8を備えたパネルヒ
ータ7のコードヒータ9に通電してコードヒータ9を発
熱させることでコードヒータ9の発熱に対応する遠赤外
線が放射加熱板8から放射される。また、前記構造であ
れば、放射加熱板8が鉄に比べて3倍近い熱伝導率のA
lあるいはAl合金からなるとともに、陽極酸化皮膜8
a中に陽極酸化処理時に合金成分や析出成分が溶解しな
いかしにくいMnAl6、TiAl3、β-AlFeSi
あるいはFeAl3、Siが成長した陽極酸化皮膜中に
存在するために、通常の多孔質の構造とは異なる枝分か
れ状の不整列構造の陽極酸化皮膜8aが生成され、これ
が灰色ないしは黒色に自然発色し、加熱や加工に強く、
クラック発生抵抗が高く、陽極酸化処理前の表面積の
1.5〜2倍程度の表面積を有するようになり、これら
のために熱の吸収放出の実効面積が大きな放射加熱板8
により効率の良い熱放ができる特徴がある。この放射加
熱板8から放射される遠赤外線の放射率は電磁波長域2
〜30μm(この範囲が水分、有機物の最も吸収し易い
電磁波長域となる。)で80〜90%となり、高い遠赤
外線放射率を発揮する。
【0039】従ってこの放射加熱板8を備えたパネルヒ
ータ7であれば、体感上、熱風や局部的な対流暖房より
も好ましい遠赤外線による暖房効果を得ることができ
る。更に、放射加熱板8の表面の植毛の存在により、放
射加熱板8に肌を触れさせた場合の低温火傷を防止でき
るとともに、AlまたはAl合金製の熱伝導率の良さと
遠赤外線の放射率の良さとが相まって放射加熱板8の近
傍の温度上昇速度を極めて早くすることができ、しかも
放射熱エネルギーの大きな暖房効果を得ることができ
る。
【0040】前記の如く構成されたヒータ本体3あるい
はパネルヒータ7は先の例の如く机型の暖房装置に適用
される以外に、こたつ用のヒータとして、簡易トイレの
壁板装着用として、集会場の天井暖房、簡易足温器の熱
源、床置き型の暖房装置、机の下方空間の暖房装置等と
して広く応用することができる。ここで図3は前記構成
のヒータ本体3を起立型のパネル暖房装置に適用した一
例を示すもので、この例の暖房装置20はヒータ本体3
の2つのコーナ部に支持脚21、21を取り付け、この
支持脚21、21を床面等に設置することでヒータ本体
3を起立した状態で設置できるようにした例である。こ
の例においてヒータ本体3の通電を切り替えるスイッチ
22をヒータ本体3の他のコーナ部に取り付け、ヒータ
本体3の脚部近くの底部から電源コード23を引き出し
て構成されている。ヒータ本体3をこの例のように起立
型とすることで室内暖房用等に供することができ、その
場合に遠赤外線の放射効率の高い、昇温速度の高い、効
率の良い暖房効果を得ることができる。
【0041】
【実施例】図1と図2に示す構造のこたつ型の暖房装置
を試作した。アルミニウム板の表面に厚さ25μmの陽
極酸化皮膜を形成した放射加熱板と、軟鋼板に、それぞ
れナイロン繊維製の植毛を厚さ1mm形成し、それぞれ
の裏面側に、2φmmのニクロム線を発熱体としてそれ
に耐熱絶縁のためにPVC被覆を施したコードヒータ
(抵抗値2Ω/m)を12.5m蛇行させて640mm
角の正方形の範囲に配置し、接着剤付きのアルミ箔で固
定して2枚のパネルヒータを構成した。各パネルヒータ
のコードヒータの上にPET(ポリエステル樹脂)製の
厚さ10mmの断熱ボードを被せ更に3mm厚のハード
ボードを被せて全体をビス止めして一体化して2つのヒ
ータ本体を作製した。これらの植毛面を下に向け、ハー
ドボード面を上に向けて各ヒータ本体を図1に示す75
0mm角の正方形状の表板の裏面側に取り付けて2組の
暖房装置を作製した。次に、各暖房装置のコードヒータ
に100Vを通電し、中心点Aと中心点Aから11cm
下方の2カ所の昇温状態を測定した結果を図4に示す。
【0042】図4に示す放熱面中心の温度測定結果か
ら、軟鋼板を用いた従来例の暖房装置に比べて本発明構
造の暖房装置にあっては、15〜20%も昇温立ち上が
り時間を短縮できることが明らかであり、寒冷地等の暖
房用に好適な省エネルギー暖房を実現できる。また、放
熱面中心から11cm下方の温度測定結果から、放熱面
中心の測定結果と同様に温度の立ち上がり状況は早くな
り、快適な体感温度を得ることができると判断できる。
なお、この種の暖房装置において、放射面の下方11c
m程度の位置において昇温速度が1゜でも異なることは
採暖者にとって体感的に大きな差異であり、軟鋼板を用
いた暖房装置よりも本発明に係る暖房装置の方が優れて
いることが明らかである。
【0043】次に、放射加熱板として厚さ0.5mmの
後述する材料製の放射加熱板を用い、ナイロン植毛を施
したものを用いた。直径2.0mmのシリコンゴム被覆
コードヒータ(1.25Ω/m)を18m用意し、前記
放射加熱板の表面に均等になるように蛇行させて敷設
し、アルミ箔テープで固定した。更に、放射加熱板の表
面に厚さ5cmのPET繊維断熱材板を被せ、更に3m
m厚の木材製ハードボードを被せ、放射加熱板とPET
繊維断熱材板とハードボードを貫通させてビスを打ち込
むことでこれらを一体化してパネルヒータを構成した。
放射加熱板の下面にはナイロン製の厚さ0.5mmのチ
ョコレート色の植毛を施した。前記放射加熱板は、軟鋼
板に植毛を施したものを試料1、Al合金板(Mnを2
重量%含有するAl合金に厚さ20μmの陽極酸化皮膜
を形成してAl6Mnを析出させたもの)に植毛を施し
たものを試料2、JIS1100のアルミニウム板に植
毛を施したものを試料3、JIS1100のアルミニウ
ム板の表面に多孔質酸化皮膜である厚さ20μmの陽極
酸化皮膜(アルマイト層)を形成したものに植毛したも
のを試料4、鋼板のみで植毛していないものを試料5と
してそれぞれ作製した。多孔質酸化皮膜を形成したもの
は、アルミニウム板の表面にアルミナ粒子を吹き付けて
ブラスト処理を行い、その後20重量%の硫酸浴中にお
いて陽極酸化処理し、20μmの厚さの陽極酸化皮膜
(アルマイト層)を形成したものである。
【0044】前記構成の各パネルヒータを図1に示すこ
たつ型の暖房装置の表板の裏面側に取り付け、脚部の長
さを揃えることでパネルヒータから床面までの距離を1
1cmに設定した。
【0045】前記コードヒータに通電後、6分後にパネ
ルヒータの放熱面の中心温度を測定し、放熱面中心から
下方11cmの位置の温度を測定した結果を以下の表1
に示す。次に、鉄とアルミニウムの熱容量を比較して表
2に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】表1と表2に示す結果から、鋼板を放射加
熱板に用いたものは、放熱面中心温度が高くとも放熱面
から11cm下方の温度が著しく低く、鋼板に植毛した
ものは放熱面から11cm下方の温度は高めであるが放
熱面中心の温度が著しく低いのに対し、Al合金に陽極
酸化皮膜を施した放射加熱板を用いたものは、放熱面中
心の温度が高く放熱面から11cm下方の温度も高いこ
とが明らかである。また、アルミナに陽極酸化皮膜(ア
ルマイト層皮膜)を施したものにおいても、前者の陽極
酸化皮膜付きのものに近い温度特性が得られた。更に、
鉄とアルミニウムの密度を比較して明らかなように、ア
ルミニウムの密度が鉄の密度の1/3程度であるので、
本発明に係る放射加熱板を備えた暖房装置であれば装置
の軽量化にも寄与する。
【0049】次に、前記構成の暖房装置において電流と
電圧を制御して放熱面中心温度を80℃になるように設
定し、その場合の放熱面の温度分布を測定した結果を以
下の表3に示す。放熱面の温度分布は、サーモビュアー
画像から温度が70〜80℃の範囲に入る面積を測定し
た。
【0050】
【表3】
【0051】放熱面の総面積は4096cm2(640
×640mm)であり、温度分布は中心部が最も高く同
心円状の温度分布が得られ、放熱面端部で最も低い温度
になった。軟鋼板を用いるよりもAl板を用いる方が温
度低下する面積の割合が少なく、8〜9%程度良好であ
ることが判明した。
【0052】次に、放熱面から11cm下方の空間温度
の比較と放射率の比較を行った。 空間温度の測定方法 前記例の試料1〜4で用いたそれぞれの放射加熱板を用
い、放熱面の中心温度を一定に設定し、放射加熱板に平
行に放射加熱板の下方11cmの場所に0.1×50×
50mmの寸法であって、厚さ20μmのアルマイト層
の陽極酸化皮膜を形成して植毛した2%Mn-Al合金
板を置き、放熱面温度を80℃、100℃、125℃と
したそれぞれの場合に平衡に達した時のMn-Al合金
板表面温度を測定した結果を以下の表4に示す。測定は
5回繰り返し、平均値を求めた。また、表4に、各放射
加熱板の80℃における放射率を測定した結果を示す。
放射率の測定は、バイオラッド社製FTS―65型のフ
ーリエ変換赤外分光光度計を用いて測定した結果であ
る。なお、放射率とは、一定の電力数の場合の赤外線の
放射率を示す。
【0053】
【表4】 表4に示す結果から明らかなように、Al合金板に陽極
酸化皮膜を形成して植毛した試料2とAl板にアルマイ
ト層の陽極酸化皮膜を形成して植毛した試料4の放熱面
温度が他の試料1、3に比べて高いことが明らかであ
り、放射率においてもこれらの試料2、4は著しく高い
値を示した。なお、放熱面温度において1〜2゜の差違
はこの種の暖房装置においては大きな差違とされてい
る。
【0054】次に、植毛の耐摩耗性試験を行った。3デ
ュール、0.5mmの長さのチョコレート色のナイロン
毛を用い、各種放射加熱板にアクリル系接着剤を塗布し
て通常の静電塗布法により植毛処理して試料とした。各
試料に対し、往復摩耗試験機(スガ試験機(株)製NU
S-150-3型)を用いて摩耗紙にスコッチブライト7
446(住友3M社製)を用い、加重1kgfで地金が
露出するまでの往復摩耗回数を測定した結果を以下の表
5に示す。試験片の大きさは、1.0×50×100m
mとした。
【0055】
【表5】
【0056】表5に示す結果から、Al合金板に陽極酸
化皮膜を形成して植毛した試料2とAl板にアルマイト
層の陽極酸化皮膜を形成して植毛した試料4の往復摩耗
回数が他の試料1、3の往復摩耗回数に比べて高いこと
が明らかである。これは、アルマイト層の陽極酸化皮膜
の電気絶縁効果により静電塗布時の静電気のリークの少
ないこと、あるいは、接着剤の濡れ性が良いこと、皮膜
自体の耐摩耗性が良いことなどによるものと思われる。
【0057】植毛の耐摩耗性試験 前記の試験において成績の良好であった試料2、4にお
いて、厚さの異なる陽極酸化皮膜を形成した場合の耐摩
耗性を比較した。アルマイト層の陽極酸化皮膜は、20
℃、20重量%硫酸浴中において電流密度1A/dm2
で通電時間を1分30秒(0.5μm厚)〜135分
(45μm厚)まで変えて異なる膜厚のものを生成させ
た場合のそれぞれの試料について試料(1.0×50×
100mm)を用意した。測定結果を以下の表6に示
す。
【0058】
【表6】
【0059】表6に示す結果から、Al板に陽極酸化皮
膜を形成する場合、あるいはAl合金板に陽極酸化皮膜
を形成する場合において、各皮膜とも厚さ0.5μm〜
45μmまでの範囲が好ましい範囲であり、耐摩耗性の
面で好ましいことがわかる。
【0060】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、鉄の数倍
の熱伝導率を有するAlあるいはAl合金であって、少
なくとも一面に微細な凹凸を有する陽極酸化皮膜を備え
た放射加熱板を備えるために、温度上昇が早く、遠赤外
線の放射率の高い、均熱性に優れた暖房効果を得ること
ができる。更に、遠赤外線の放射率が高いことで、熱風
や局部的な対流暖房よりも人体にとって好ましい遠赤外
線による温暖な暖房効果を得ることができる。一方、放
射加熱板に植毛を施すことにより、放射加熱板へ採暖者
の肌が触れた場合であっても採暖者の肌を必要以上に熱
くすることはない。また、AlまたはAl合金を主体と
し、凹凸を有する陽極酸化皮膜を有する放射加熱板の熱
伝導性が良好で多量に放熱する構成であるために、同じ
放射熱効率であれば鉄板を用いるパネルヒータよりも小
型化、軽量化ができ、消費電力量の低減ができる。
【0061】前記の構成において放射加熱板を構成する
Al合金として、Mnを0.5〜4.3重量%含有するも
のを用いることで、遠赤外線の放射効率の良いものを確
実に得ることができる。次に、放射加熱板に形成する陽
極酸化皮膜を厚さ0.5〜45μmのものとすること
で、放射加熱板に設ける植毛の耐摩耗性を向上させるこ
とができ、耐久性に優れ、長期間使用しても植毛が損耗
するおそれの少ない放射加熱板を備えたパネルヒータを
提供できる。
【0062】次に、前記の構成パネルヒータは、脚部を
有する取付板に取り付けてこたつ型の暖房装置として使
用することができるとともに、パネルヒータの2つのコ
ーナ部に支持脚を設けてパネルヒータを起立状態で設置
して使用できるように構成することで、起立型の薄型暖
房装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るパネルヒータの一例を備えた暖
房装置の一例を示す斜視図。
【図2】 図1に示す暖房装置に装着されたパネルヒー
タを示す断面図。
【図3】 本発明に係るパネルヒータの一例を備えた暖
房装置の他の例を示す斜視図。
【図4】 本発明に係る暖房装置による昇温特性の測定
結果を示す図。
【符号の説明】
1・・・暖房装置、2・・・脚部、3・・・ヒータ本体、5・・・ハ
ードボード、6・・・断熱板、7・・・パネルヒータ、8・・・
放射加熱板、9・・・ヒータ、8a・・・陽極酸化皮膜、10
・・・植毛。
フロントページの続き (72)発明者 原 英二 東京都江東区木場一丁目5番1号 株式会 社フジクラ内 (72)発明者 斉藤 慶久 東京都江東区木場一丁目5番1号 株式会 社フジクラ内 (72)発明者 伊藤 裕 東京都江東区木場一丁目5番1号 株式会 社フジクラ内 (72)発明者 高原 克二 東京都江東区木場一丁目5番1号 株式会 社フジクラ内 (72)発明者 小渕 孝司 東京都江東区木場一丁目5番1号 株式会 社フジクラ内 (72)発明者 内田 一弘 東京都江東区木場一丁目5番1号 株式会 社フジクラ内 (72)発明者 馬場 規泰 東京都江東区木場一丁目5番1号 株式会 社フジクラ内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 AlまたはAl合金からなる放熱板本体
    とこの放熱板本体の少なくとも一面に形成されて微細な
    凹凸を有する陽極酸化皮膜と陽極酸化皮膜の表面に形成
    された繊維層とを具備する放射加熱板と、この放射加熱
    板に敷設された加熱ヒータとを具備してなることを特徴
    とするパネルヒータ。
  2. 【請求項2】 Al合金が、Mnを0.3〜4.3重量%
    含有し、残部Alおよび不可避不純物からなることを特
    徴とする請求項1記載のパネルヒータ。
  3. 【請求項3】 陽極酸化皮膜が0.5〜45μmの厚さ
    に形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載
    のパネルヒータ。
  4. 【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載のパネル
    ヒータが、取付板の裏面に取り付けられ、この取付板の
    裏面のコーナ部に脚部が立設されてなることを特徴とす
    る暖房装置。
  5. 【請求項5】 請求項1〜3のいずれかに記載のパネル
    ヒータの2つのコーナ部に支持台が装着されてパネルヒ
    ータが起立状態で設置自在にされてなることを特徴とす
    る暖房装置。
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