JPH09320763A - 有機el素子 - Google Patents

有機el素子

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JPH09320763A
JPH09320763A JP8141578A JP14157896A JPH09320763A JP H09320763 A JPH09320763 A JP H09320763A JP 8141578 A JP8141578 A JP 8141578A JP 14157896 A JP14157896 A JP 14157896A JP H09320763 A JPH09320763 A JP H09320763A
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JP
Japan
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organic
cathode
layer
metal
alkaline earth
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Withdrawn
Application number
JP8141578A
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English (en)
Inventor
Hiroshi Shoji
弘 東海林
Hiroaki Nakamura
浩昭 中村
Chishio Hosokawa
地潮 細川
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Idemitsu Kosan Co Ltd
Original Assignee
Idemitsu Kosan Co Ltd
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    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10KORGANIC ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES
    • H10K59/00Integrated devices, or assemblies of multiple devices, comprising at least one organic light-emitting element covered by group H10K50/00
    • H10K59/80Constructional details
    • H10K59/805Electrodes
    • H10K59/8052Cathodes

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  • Electroluminescent Light Sources (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属を利
用して単層構造の陰極を形成した従来の有機EL素子
は、電力変換効率,素子寿命,均一発光性および連続定
電流駆動時の電圧値の安定性のうちの少なくとも1つが
未だ不十分である。 【解決手段】 陽極と、有機発光材料を含有する発光層
を備えた単層構造または多層構造の有機物層と、陰極と
が基板上に順次積層されている有機EL素子において、
前記陰極を、仕事関数3.8eV以上の金属とアルカリ
金属または仕事関数2.9eV以下のアルカリ土類金属
との合金によって形成し、かつ、この合金におけるアル
カリ金属とアルカリ土類金属との総量を0.5〜5at%
にする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は有機エレクトロルミ
ネッセンス(以下、「エレクトロルミネッセンス」を
「EL」と略記する。)素子に係り、特に、アルカリ金
属またはアルカリ土類金属を利用して形成された単層構
造の陰極を有する有機EL素子に関する。
【0002】
【従来の技術】有機EL素子は、陽極と、有機発光材料
を含有する発光層を備えた単層構造または多層構造の有
機物層と、陰極とが順次積層された構造をなしている。
前記の有機物層が単層構造である場合には、当該有機物
層は発光層からなり、前記の有機物層が多層構造である
場合には、当該有機物層は陽極側から順に正孔注入層−
発光層,発光層−電子注入層,または正孔注入層−発光
層−電子注入層等の層構成をなしている。
【0003】上記の構造をなしている有機EL素子で
は、陽極から直接または正孔注入層を介して発光層に注
入された正孔と陰極から直接または電子注入層を介して
発光層に注入された電子とが再結合することによって発
光を生じる。このような発光機構に基づく有機EL素子
の発光特性を向上させるための手段としては、有機発光
材料や注入材料(正孔注入材料,電子注入材料)の改
良、陰極材料の選択や改良等が知られている。これらの
うち、陰極材料の選択や改良は、陰極から直接または電
子注入層を介して発光層に注入される電子の注入効率を
改善し、これによって発光特性の向上を図ろうとするも
のである。発光層への電子の注入効率を改善するうえか
らは、有機物層(発光層または電子注入層)の電子伝導
準位へ陰極から電子を注入する際の注入障壁を下げるこ
とが望ましく、そのため、陰極材料として仕事関数の小
さい金属を用いることが検討されている。
【0004】有機EL素子用の陰極として現在最も用い
られているものは、アルカリ土類金属の1つであるマグ
ネシウム(Mg:仕事関数は約3.7eV)を電子注入
金属として用い、銀(Ag)等を安定化金属として用い
た単層構造のMg−Ag系電極であるが、Mgよりも更
に仕事関数が小さく電子注入性に優れている他のアルカ
リ土類金属、あるいはアルカリ金属を利用して陰極を形
成することについても検討されている。
【0005】アルカリ金属およびアルカリ土類金属は一
般に化学的に活性であるので、これらの金属を利用して
陰極を形成するにあたっては、アルカリ金属またはアル
カリ土類金属を化学的に安定化させるためにこれらの金
属と特定の金属とを合金化して、単層構造の陰極が形成
される。また、前記単層構造の陰極上には、必要に応じ
て、単体金属からなる保護電極が設けられる。ただし、
陰極を形成するにあたってその構造を複数層構造とした
場合には、単層構造の陰極を形成する場合に比して製造
工程が増えるので、複数層構造の陰極よりも単層構造の
陰極の方が実用上好ましい。
【0006】アルカリ金属またはアルカリ土類金属を利
用した合金からなる単層構造の陰極を有し、低電圧でよ
く発光する有機EL素子として、特開昭60−1657
71号公報の実施例には、アルミニウム(Al)とリチ
ウム(Li)との重量比がAl:Li=100:5〜1
00:100(Liの原子比で約16〜約80at%)で
あるAl−Li合金によって単層構造の陰極を形成した
有機EL素子、およびマグネシウム(Mg)とリチウム
(Li)との重量比がMg:Li=100:5〜10
0:100(Liの原子比で約15〜約78at%)であ
るMg−Li合金によって単層構造の陰極を形成した有
機EL素子がそれぞれ記載されている。
【0007】また、特開平4−212287号公報に
は、高輝度の有機EL素子として、アルカリ金属元素以
外の金属(Mg,Al,In,Sn,Zn,Zr,Ag
等)にアルカリ金属元素(Li,Na,K等)を6モル
%以上含有させた合金によって単層構造の陰極を形成し
た有機EL素子が記載されている。
【0008】そして、特開平5−121172号公報の
実施例には、発光効率が高く、かつ、経時変化による輝
度劣化が少ない有機EL素子として、Li濃度が0.0
1〜0.1wt%(Liの原子比で約0.04〜約0.4
at%)のAl−Li合金によって単層構造の陰極を形成
した有機EL素子、および、Sr濃度が10〜25wt%
(Srの原子比で約2.8〜約7at%)のMg−Sr合
金によって単層構造の陰極を形成した有機EL素子がそ
れぞれ記載されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】有機EL素子の用途の
1つとして有機EL表示装置の画素があり、例えば携帯
型の有機EL表示装置の電源としては電池の使用が予想
されるので、このような用途に使用される有機EL素子
については、連続定電流駆動時における電圧上昇が小さ
い(例えば連続500時間の定電流駆動当たり1V以下
程度)ことが望まれる。
【0010】特開昭60−165771号公報の実施例
に記載されている単層構造の陰極を有する有機EL素
子、および、特開平4−212287号公報に記載され
ている単層構造の陰極を有する有機EL素子は、連続定
電流駆動時における電圧上昇が比較的小さく、その意味
では好適なものであるが、これらの有機EL素子は電力
変換効率および素子寿命の両方について優れているとい
うものではない。
【0011】また、特開平5−121172号公報の実
施例に開示されているAl−Li合金からなる単層構造
の陰極を有する有機EL素子は、連続定電流駆動時の電
圧上昇が比較的大きい。そして、特開平5−12117
2号公報の実施例に開示されているMg−Sr合金から
なる単層構造の陰極を有する有機EL素子は、陰極を形
成しているMg−Sr合金の耐久性(耐酸化性)および
膜性が比較的低いことから、素子寿命や発光の均一性と
いう点で未だ不十分である。
【0012】本発明の目的は、電力変換効率が高く、素
子寿命が長く、均一発光性に優れ、かつ、連続定電流駆
動時の電圧上昇が小さいものを容易に得ることができる
有機EL素子を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成する本
発明の有機EL素子は、陽極と、有機発光材料を含有す
る発光層を備えた単層構造または多層構造の有機物層
と、陰極とが基板上に順次積層されている有機EL素子
であり、前記陰極が、仕事関数3.8eV以上の金属と
アルカリ金属または仕事関数2.9eV以下のアルカリ
土類金属との合金からなり、この合金における前記アル
カリ金属と前記アルカリ土類金属との総量が0.5〜5
at%であることを特徴とするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て詳細に説明する。本発明の有機EL素子は、上述した
ように、当該有機EL素子を構成している陰極が特定の
合金からなっている点に最大の特徴があるので、まずこ
の陰極について説明する。
【0015】本発明の有機EL素子を構成している陰極
は、仕事関数3.8eV以上の金属とアルカリ金属また
は仕事関数2.9eV以下のアルカリ土類金属との合金
からなり、この合金における前記アルカリ金属と前記ア
ルカリ土類金属との総量は0.5〜5at%である。ここ
で、本発明で各元素についていう「仕事関数」の値は
『J.Appl.Phys.第48巻』(1977年)
の第4729頁に記載されているデータに基づくもので
ある。
【0016】仕事関数3.8eV以上の金属(以下「母
材金属」という。)としては、アルカリ金属および仕事
関数2.9eV以下のアルカリ土類金属の種類に応じ
て、アルミニウム(Al;仕事関数4.28eV),金
(Au;仕事関数5.1eV),銀(Ag;仕事関数
4.26eV),銅(Cu;仕事関数4.65eV),
亜鉛(Zn;仕事関数4.33eV),鉛(Pb;仕事
関数4.25eV),錫(Sn;仕事関数4.42e
V)等を利用することができるが、膜性が良好な合金に
なるものほど好ましい。母材金属は1種のみであっても
よいし、複数種であってもよい。
【0017】アルカリ金属の具体例としては、リチウム
(Li;仕事関数2.9eV),ナトリウム(Na;仕
事関数2.75eV),カリウム(K;仕事関数2.3
eV),ルビジウム(Rb;仕事関数2.16eV)お
よびセシウム(Cs;仕事関数2.14eV)が挙げら
れる。また、仕事関数2.9eV以下のアルカリ土類金
属の具体例としては、カルシウム(Ca;仕事関数2.
87eV),ストロンチウム(Sr;仕事関数2.59
eV)およびバリウム(Ba;仕事関数2.7eV)が
挙げられる。
【0018】陰極を形成する合金には、アルカリ金属と
仕事関数2.9eV以下のアルカリ土類金属とのうちで
前記のアルカリ金属のみを1種または複数種含有させて
もよいし、前記のアルカリ土類金属のみを1種または複
数種含有させてもよいし、前記アルカリ金属の1種また
は複数種と前記のアルカリ土類金属の1種または複数種
をそれぞれ含有させてもよい。
【0019】ただし、いずれの場合でも、上記の合金
(陰極)に含有させるアルカリ金属と仕事関数2.9e
V以下のアルカリ土類金属との総量は、0.5〜5at%
の範囲内とすることが好ましい。前記のアルカリ金属と
前記のアルカリ土類金属との総量が0.5at%未満で
は、電子注入性を担う低仕事関数金属(前記のアルカリ
金属および前記のアルカリ土類金属)の含有量が少なす
ぎて電子注入性が不十分になり、また、合金組成の再現
性ひいては素子性能の再現性が低下する。一方、前記の
アルカリ金属と前記のアルカリ土類金属との総量が5at
%を超えると、活性な金属であるこれらのアルカリ金属
およびアルカリ土類金属が多すぎて素子の耐酸化性が低
下すると共に、無発光点が増える等、発光の均一性が低
下する。
【0020】上記のアルカリ金属とアルカリ土類金属と
の総量は、陰極の膜厚が厚い場合には多く、薄い場合に
は少なくすることが好ましい。例えば、陰極の膜厚が1
50nm以上のときには前記の総量を1〜5at%とする
ことが好ましく、100nm未満のときには1at%程度
とすることが好ましい。これは、陰極の膜厚が薄い程そ
の耐酸化性が低くなるので、それに伴って活性な金属で
あるアルカリ金属とアルカリ土類金属との総量も少なく
した方がよいからである。
【0021】また、上記の合金(陰極)におけるアルカ
リ金属と仕事関数2.9eV以下のアルカリ土類金属と
の総量の濃度は、後述する有機物層との界面から陰極表
面(陰極において前記の界面と対向する側の面。以下同
じ。)にかけて実質的に均一であってもよいが、陰極本
来の役割である電子注入性にのみ着目すれば、有機物層
との界面およびその近傍(以下、前記の界面およびその
近傍を「界面領域」と総称する。)におけるアルカリ金
属あるいはアルカリ土類金属の濃度が本質的であり、そ
れ以外の領域におけるアルカリ金属あるいはアルカリ土
類金属の濃度はそれほど重要ではない。前記の界面領域
以外の領域におけるアルカリ金属あるいはアルカリ土類
金属の濃度は、素子の耐久性の向上および連続定電流駆
動時の電圧上昇の抑制という観点から重要である。
【0022】したがって、上記の合金(陰極)における
アルカリ金属と仕事関数2.9eV以下のアルカリ土類
金属との総量の濃度は、陰極の膜厚が少なくとも100
nm以上あり、かつ、陰極全体をみたときに耐酸化性が
ある程度期待できる場合には、有機物層との界面から陰
極表面にかけて漸次低下していることが好ましい。この
とき、有機物層との界面から概ね50nmの範囲におけ
る前記の濃度は10at%程度という高濃度であってもよ
く、また、陰極表面における前記の濃度は0.001at
%以上であることが好ましい。
【0023】陰極としての合金における母材金属とアル
カリ金属との好ましい組み合わせとしては例えば下記
(1)〜(2)のものが挙げられ、仕事関数2.9eV以下の
アルカリ土類金属と母材金属との好ましい組み合わせと
しては例えば下記(i)〜(iii)のものが挙げられる。
【0024】・母材金属とアルカリ金属との好ましい組
み合わせ (1) アルカリ金属がLiである場合 母材金属としてはAl,Ag,Au,Cu,Zn,Pb
またはSnを用いることが好ましく、なかでもAl,Z
n,PbまたはSnが好ましい。 (2) アルカリ金属がNa,K,CsまたはRbである場
合 母材金属としてはAlまたはAgを用いることが好まし
く、なかでもAlが好ましい。
【0025】・母材金属とアルカリ土類金属との好まし
い組み合わせ (i) アルカリ土類金属がCaである場合 母材金属としてはAl,Ag,Cu,Zn,Pbまたは
Snを用いることが好ましく、なかでもAlが好まし
い。◎ (ii)アルカリ土類金属がSrである場合 母材金属としてはAl,Au,Ag,Cu,Zn,Pb
またはSnを用いることが好ましく、なかでもAlが好
ましい。 (iii) アルカリ土類金属がBaである場合 母材金属としてはAl,Ag,Cu,Zn,Pbまたは
Snを用いることが好ましく、なかでもAl,Snまた
はPbが好ましい。
【0026】上述した合金からなる陰極の膜厚は、50
〜300nmとすることが好ましい。当該陰極の膜厚が
50nm未満では、陰極本来の役割である電子注入性が
低下すると共に、その耐久性が低下する。また、300
nmを超えると、当該陰極の製膜時に発生する熱量が多
くなり、素子(有機物層?)が熱損傷を受けるようにな
る。陰極の膜厚は、100〜200nm程度とすること
がより好ましい。
【0027】また、上記の陰極は、酸素の存在濃度が1
at%以下のものであることが好ましい。ここで、本発明
でいう「陰極における酸素の存在濃度が1at%以下」と
は、陰極中の任意の場所で測定した酸素の存在濃度が1
at%以下であることを意味する。陰極における酸素の存
在濃度が1at%を超えると、有機EL素子に無発光点が
生じ易くなり、無発光点が生じた場合には当該無発光点
が素子の連続駆動に伴って増加、拡大することから、有
機EL素子の均一発光性、輝度および素子寿命がそれぞ
れ低下する。
【0028】なお、本発明でいう合金(陰極)の組成
は、次のようにして分析したものを意味する。すなわ
ち、基板上に陽極,有機物層および陰極をこの順で順次
形成して有機EL素子を得、この有機EL素子の陰極表
面から有機物層側へ向けて一定のスパッタレートでその
表面をArイオンガンによりスパッタし、その際、ある
一定の深さ毎に表面の組成をオージェ電子分光法(AE
S)および二次イオン質量分析法(SIMS)によって
分析し(AESおよびSIMSによって、いわゆるデプ
スプロファイルの測定を行う。)、その結果に基づいて
求めた組成を意味する。
【0029】このとき、AESではat%レベルで、含有
金属の組成および不純物の同定を行う。またSIMSで
は、目的とする組成の合金領域と同一の構成元素からな
るが組成比が異なる合金インゴットを数種類あらかじめ
作製し、組成が既知であるこれらの合金インゴットにつ
いてその組成をSIMSで分析して、母材金属とアルカ
リ金属とのシグナルカウント比および母材金属と仕事関
数2.9eV以下のアルカリ土類金属とのシグナルカウ
ント比を求め、これらのシグナルカウント比と実際の組
成比との検量線をそれぞれ作成しておく。そして、有機
EL素子についてのSIMSデプスプロファイルから、
前記の各検量線に従って前記アルカリ金属および前記ア
ルカリ土類金属についてのデプスプロファイルを求める
(検量線法)。SIMSで定量性を議論するためには、
検量線の作成に用いた前記の合金インゴット中に前記の
母材金属,アルカリ金属およびアルカリ土類金属の他に
元素が含まれていないことが必要である(マトリックス
効果)ので、この条件を確認するためにAESによる測
定を併用して合金以外の成分が含まれていないことを確
認したうえで、SIMSによる定量結果を議論する。S
IMSによって上述のようにして求められる組成比の妥
当性は、陰極全体を溶出させてICP分析(誘導結合プ
ラズマ発光分光分析)から求めた陰極全体における平均
濃度により確認した。
【0030】本発明の有機EL素子を構成する上述の陰
極は、真空蒸着法(抵抗加熱蒸着法,電子ビーム蒸着
法,高周波誘導加熱法,ホットウォール蒸着法等),分
子線エピタキシー法,イオンプレーティング法,クラス
ターイオンビーム蒸着法,スパッタリング法等、種々の
方法によって形成することができる。陰極を真空蒸着法
によって形成する場合、当該真空蒸着は一元蒸着であっ
てもよいし二元以上の多元同時蒸着であってもよい。同
様のことは、陰極を真空蒸着法以外の方法によって形成
する場合についてもいえる。なお、真空蒸着法によって
陰極を形成する場合、陰極の膜厚の均一性および基板以
外に付着することによるロスを考慮すると、基板と蒸発
源との間の距離は15〜50cmとすることが好まし
い。
【0031】上で例示した方法によって酸素の存在濃度
が1at%以下の陰極を形成しようとする場合には、下記
(I)または(II)のようにして製膜を行うことが好ま
しい。 (I)製膜時の雰囲気の全圧(以下「蒸着時真空度」と
いう。)が5.0×10-7〜5.0×10-6Torrである
真空環境下で製膜を行う場合には、(i) 前記雰囲気中の
水ガスの分圧を四重極質量分析計の測定値で概ね3.0
×10-7〜3.0×10-6Torrとし、かつ、当該雰囲気
中の酸素ガスの分圧を四重極質量分析計の測定値で前記
水ガスの分圧の5%以下にして製膜を行うか、または、
(ii)前記雰囲気中の水素ガスの分圧を四重極質量分析計
の測定値で概ね4.0×10-7〜4.0×10-6Torrと
し、かつ、当該雰囲気を、水素ガスの分圧が四重極質量
分析計の測定値で水ガスの分圧よりも高い還元性雰囲気
にして製膜を行う。 (II)蒸着時真空度が5×10-9〜2.0×10-7Torr
である高真空ないし超高真空環境下で製膜を行う。
【0032】上記(I)または(II)のようにして陰極
の製膜を行った場合でも、製膜基板へのアルカリ金属ま
たは仕事関数2.9eV以下のアルカリ土類金属の入射
頻度が酸素や水の入射頻度よりも高くなる製膜条件であ
った場合には、酸素の存在濃度が1at%以下である陰極
を形成することが困難になる。
【0033】例えば、蒸着時真空度を5.0×10-7
5.0×10-6Torrとした一元の真空蒸着法によって陰
極を形成する場合には、水晶振動子式膜厚計によって測
定した蒸着速度(以下同じ。)を0.005〜10nm
/sとすることにより、所望の金属組成比の陰極を後述
する有機物層上に安定に形成することができるが、蒸着
時真空度を5×10-6Torrよりも高い圧力にして0.5
〜2nm/sの蒸着速度で製膜を行うと、酸素の存在濃
度が1at%以下である所望金属組成比の陰極を後述する
有機物層上に形成することが困難になる。
【0034】また、蒸着時真空度を5.0×10-7
5.0×10-6Torrとした多元の真空蒸着法によって陰
極を形成する場合には、当該陰極に含有させようとする
アルカリ金属または仕事関数2.9eV以下のアルカリ
土類金属の蒸着速度を0.005〜0.1nm/s程度
とすることにより、所望の金属組成比の陰極を後述する
有機物層上に安定に形成することが可能になるが、蒸着
時真空度を1.0×10-5Torrよりも高い圧力にして
0.005〜0.01nm/sの蒸着速度で製膜を行う
と、酸素の存在濃度が1at%以下である所望金属組成比
の陰極を後述する有機物層上に形成することが困難にな
る。
【0035】したがって、酸素の存在濃度が1at%以下
である陰極を形成しようとする場合には、基板へのアル
カリ金属または仕事関数2.9eV以下のアルカリ土類
金属の入射頻度および基板への酸素や水の入射頻度も考
慮して、製膜条件を適宜選択する。一元の真空蒸着法ま
たは多元の真空蒸着法によって陰極を形成する際に上記
の蒸着速度を維持するためには、0.5℃以下の精度で
蒸発源温度を監視制御することが好ましい。
【0036】なお、本明細書でいうアルカリ金属および
アルカリ土類金属についての上記の「蒸着速度」は、後
述する有機物層へのこれらの金属の付着確率が1ではな
いことから、実際に製膜される堆積速度を意味している
わけではない。本発明者らの検討から、前記の付着確率
は著しく小さいことが判明した。したがって、本明細書
でいう前記の「蒸着速度」は、膜厚計付近の蒸発金属の
濃度(蒸気圧)を意味している。
【0037】また、酸素の存在濃度が1at%以下である
陰極を形成するにあたっては、製膜時の雰囲気中の水ガ
スが酸素の供給源ともなり得ることから、当該水ガスの
分圧についてもできるだけ低く抑えることが好ましい。
そのためには、水に対して有効な排気速度を有するポン
プであるクライオポンプを備えた製膜装置あるいは液体
窒素等によって冷却されるトラップ機構を有する排気系
を備えた製膜装置を使用することが好ましい。
【0038】上述のようにして形成することができる陰
極を備えた本発明の有機EL素子では、陰極が特定の合
金、すなわち、アルカリ金属または仕事関数2.9eV
以下のアルカリ土類金属を当該アルカリ金属と当該アル
カリ土類金属との総量で0.5〜5at%含有する合金か
らなっていることから、電力変換効率が高く、素子寿命
も長いものを容易に得ることができる。さらに、無発光
点が著しく少なく、また、連続定電流駆動時の電圧上昇
が小さいものを容易に得ることができる。無発光点が著
しく少ないということは、均一発光性に優れていること
を意味する。これらの特性は、陰極における酸素の存在
濃度を1at%以下にした場合には更に向上する。
【0039】上述の特性を有する本発明の有機EL素子
は、ページャーや腕時計の表示用バックライト等の面光
源、あるいは有機EL表示装置用の表示パネルの画素等
として好適である。
【0040】本発明の有機EL素子は、上述のようにし
て形成することができる前述の陰極を備えたものであれ
ばよく、その層構成については有機EL素子として機能
するものであれば特に限定されるものではない。有機E
L素子の層構成としては種々のものがある。透明基板上
に形成され、かつ、当該透明基板を光取り出し面とする
タイプの有機EL素子の層構成の具体例としては、例え
ば、前記の透明基板上の積層順が下記(1)〜(4)の
ものが挙げられる。なお、基板を光取り出し面としない
場合には、基板上の積層順を下記(1)〜(4)の逆と
することもできる。
【0041】(1)陽極/発光層/陰極 (2)陽極/正孔注入層/発光層/陰極 (3)陽極/発光層/電子注入層/陰極 (4)陽極/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極
【0042】上記(1)のタイプの有機EL素子および
上記(1)とは積層順が逆のタイプの有機EL素子では
発光層が本発明でいう単層構造の有機物層に相当し、上
記(2)のタイプの有機EL素子および上記(2)とは
積層順が逆のタイプの有機EL素子では正孔注入層およ
び発光層が本発明でいう多層構造の有機物層に相当し、
上記(3)のタイプの有機EL素子および上記(3)と
は積層順が逆のタイプの有機EL素子では発光層および
電子注入層が本発明でいう多層構造の有機物層に相当
し、上記(4)のタイプの有機EL素子および上記
(4)とは積層順が逆のタイプの有機EL素子では正孔
注入層,発光層および電子注入層が本発明でいう多層構
造の有機物層に相当する。
【0043】発光層は、通常1種または複数種の有機発
光材料によって形成されるが、有機発光材料と電子注入
材料および/または正孔注入材料との混合物や、当該混
合物もしくは有機発光材料を分散させた高分子材料等に
よって形成される場合もある。また、上述した層構成の
有機EL素子の外周に当該有機EL素子を覆うようにし
て、有機EL素子への水分や酸素の侵入を防止するため
の封止層が設けられる場合もある。
【0044】本発明の有機EL素子では、陰極以外の層
の材料については特に限定されるものではなく、種々の
材料を用いることができる。基板も含めて、陰極以外の
各層について以下詳述する。
【0045】(A)基板 基板を光取り出し面とする場合には、前述したように透
明基板を用いる。この透明基板は、発光層からの発光
(EL光)に対して高い透過性(概ね80%以上)を与
える物質からなっていればよく、その具体例としてはア
ルカリガラス,無アルカリガス等の透明ガラスや、ポリ
エチレンテレフタレート,ポリカーボネート,ポリエー
テルスルホン,ポリエーテルエーテルケトン,ポリフッ
化ビニル,ポリアクリレート,ポリプロピレン,ポリエ
チレン,非晶質ポリオレフィン,フッ素系樹脂等の透明
樹脂、または石英等からなる板状物やシート状物、ある
いはフィルム状物が挙げられる。どのような透明基板を
用いるかは、目的とする有機EL素子の用途等に応じて
適宜選択可能である。一方、基板を光取り出し面としな
い場合には、上述した透明基板以外のものについても基
板として利用することができる。この場合の基板は無機
物であってもよいし有機物であってもよい。
【0046】(B)陽極 陽極の材料としては、仕事関数の大きい(例えば4eV
以上)金属,合金,電気伝導性化合物またはこれらの混
合物が好ましく用いられる。具体例としてはAu等の金
属、CuI,ITO,錫酸化物,亜鉛酸化物等の導電性
透明材料が挙げられる。陽極は、蒸着法やスパッタ法等
の方法で上記材料の薄膜を形成することにより作製する
ことができる。発光層からの発光(EL光)を陽極側か
ら取り出す場合、陽極における前記EL光の透過率は1
0%以上であることが好ましい。また、陽極のシート抵
抗は数百Ω/□以下が好ましい。陽極の膜厚は材料にも
よるが、通常10nm〜1μm、好ましくは10〜20
0nmの範囲で選択される。
【0047】(C)発光層 発光層の材料として使用する有機発光材料は、(a) 電荷
の注入機能、すなわち、電界印加時に陽極あるいは正孔
注入層から正孔を注入することができ、陰極あるいは電
子注入層から電子を注入することができる機能、(b) 輸
送機能、すなわち、注入された正孔および電子を電界の
力で移動させる機能、および(c) 発光機能、すなわち、
電子と正孔の再結合の場を提供し、これらを発光につな
げる機能、の3つの機能を併せもつものであればよい
が、上記(a) 〜(c) の各機能それぞれについて十分な性
能を併せもつことは必ずしも必要ではなく、例えば正孔
の注入輸送性が電子の注入輸送性よりも大きく優れてい
るものの中にも有機発光材料として好適なものがある。
有機発光材料としては、例えばベンゾチアゾール系,ベ
ンゾイミダゾール系,ベンゾオキサゾール系等の蛍光増
白剤や、スチリルベンゼン系化合物等を用いることがで
きる。
【0048】上記の蛍光増白剤の具体例としては、ベン
ゾオキサゾール系では2,5−ビス(5,7−ジ−t−
ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)−1,3,4−チ
アジアゾール、4,4′−ビス(5,7−t−ペンチル
−2−ベンゾオキサゾリル)スチルベン、4,4′−ビ
ス[5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベ
ンゾオキサゾリル]スチルベン、2,5−ビス(5,7
−ジ−t−ペンチル−2−ベンゾオキサゾリル)チオフ
ェン、2,5−ビス[5−α,α−ジメチルベンジル−
2−ベンゾオキサゾリル]チオフェン、2,5−ビス
[5,7−ジ−(2−メチル−2−ブチル)−2−ベン
ゾオキサゾリル]−3,4−ジフェニルチオフェン、
2,5−ビス(5−メチル−2−ベンゾオキサゾリル)
チオフェン、4,4′−ビス(2−ベンゾオキサゾリ
ル)ビフェニル、5−メチル−2−[2−[4−(5−
メチル−2−ベンゾオキサゾリル)フェニル]ビニル]
ベンゾオキサゾール、2−[2−(4−クロロフェニ
ル)ビニル]ナフト[1,2−d]オキサゾール等が挙
げられ、ベンゾチアゾール系では2,2′−(p−フェ
ニレンジビニレン)−ビスベンゾチアゾール等が挙げら
れ、ベンゾイミダゾール系では2−[2−[4−(2−
ベンゾイミダゾリル)フェニル]ビニル]ベンゾイミダ
ゾール、2−[2−(4−カルボキシフェニル)ビニ
ル]ベンゾイミダゾール等が挙げられる。さらに、他の
有用な化合物は、ケミストリー・オブ・シンセティック
・ダイズ(1971),第628〜637頁および第6
40頁に列挙されている。
【0049】また、上記のスチリルベンゼン系化合物の
具体例としては、1,4−ビス(2−メチルスチリル)
ベンゼン、1,4−ビス(3−メチルスチリル)ベンゼ
ン、1,4−ビス(4−メチルスチリル)ベンゼン、ジ
スチリルベンゼン、1,4−ビス(2−エチルスチリ
ル)ベンゼン、1,4−ビス(3−エチルスチリル)ベ
ンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−2−メ
チルベンゼン、1,4−ビス(2−メチルスチリル)−
2−エチルベンゼン等が挙げられる。
【0050】さらに、上述した蛍光増白剤およびスチリ
ルベンゼン系化合物以外にも、例えば12−フタロペリ
ノン、1,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、1,
1,4,4−テトラフェニル−1,3−ブタジエン、ナ
フタルイミド誘導体、ペリレン誘導体、オキサジアゾー
ル誘導体、アルダジン誘導体、ピラジリン誘導体、シク
ロペンタジエン誘導体、ピロロピロール誘導体、スチリ
ルアミン誘導体、クマリン系化合物、国際公開公報WO
90/13148やAppl.Phys.Lett.,vol 58,18,P1982
(1991) に記載されているような高分子化合物、芳香族
ジメチリディン系化合物、下記一般式(I)
【化1】 で表される化合物等も、有機発光材料として用いること
ができる。
【0051】ここで、上記芳香族ジメチリディン系化合
物の具体例としては、1,4−フェニレンジメチリディ
ン、4,4′−フェニレンジメチリディン、2,5−キ
シリレンジメチリディン、2,6−ナフチレンジメチリ
ディン、1,4−ビフェニレンジメチリディン、1,4
−p−テレフェニレンジメチリディン、4,4′−ビス
(2,2−ジ−t−ブチルフェニルビニル)ビフェニ
ル、4,4′−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフ
ェニル等、およびこれらの誘導体が挙げられる。また、
上記一般式(I)で表される化合物の具体例としては、
ビス(2−メチル−8−キノリノラート)(p−フェニ
ルフェノラート)アルミニウム(III)、ビ ス(2−メ
チル−8−キノリノラート)(1−ナフトラート)アル
ミニウム(III)等が挙げられる。
【0052】その他、上述した有機発光材料をホストと
し、当該ホストに青色から緑色までの強い蛍光色素、例
えばクマリン系あるいは前記ホストと同様の蛍光色素を
ドープした化合物も、有機発光材料として好適である。
有機発光材料として前記の化合物を用いた場合には、青
色から緑色の発光(発光色はドーパントの種類によって
異なる。)を高効率で得ることができる。前記化合物の
材料であるホストの具体例としては、ジスチリルアリー
レン骨格の有機発光材料(特に好ましくは例えば4,
4′−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル)
が挙げられ、前記化合物の材料であるドーパントの具体
例としては、ジフェニルアミノビニルアリーレン(特に
好ましくは例えばN,N−ジフェニルアミノビフェニル
ベンゼン)や4,4′−ビス[2−[4−(N,N−ジ
−p−トリル)フェニル]ビニル]ビフェニル)が挙げ
られる。
【0053】上述した有機発光材料を用いて発光層を形
成する方法としては、例えば蒸着法、スピンコート法、
キャスト法、LB法等の公知の方法を適用することがで
きるが、スパッタリング法以外の方法を適用することが
好ましい。また、発光層は、特に分子堆積膜であること
が好ましい。ここで分子堆積膜とは、気相状態の材料化
合物から沈着され形成された薄膜や、溶液状態または液
相状態の材料化合物から固体化され形成された膜のこと
であり、通常この分子堆積膜は、LB法により形成され
た薄膜(分子累積膜)とは凝集構造、高次構造の相違
や、それに起因する機能的な相違により区分することが
できる。さらには、樹脂等の結着剤と有機発光材料とを
溶剤に溶かして溶液とした後、これをスピンコート法等
により薄膜化することによっても、発光層を形成するこ
とができる。このようにして形成される発光層の膜厚に
ついては特に制限はなく、状況に応じて適宜選択するこ
とができるが、通常5nm〜5μmの範囲が好ましい。
【0054】(D)正孔注入層 必要に応じて設けられる正孔注入層の材料(以下「正孔
注入材料」という。)は、正孔の注入性あるいは電子の
障壁性を有しているものであればよく、例えば、従来よ
り電子感光体の正孔注入材料として用いられているもの
を適宜選択して用いることができ、正孔の移動度が10
-5cm2 /V・s(電界強度104 〜105 V/cm)
以上であるものが好ましい。正孔注入材料は、有機物お
よび無機物のどちらでもよい。
【0055】具体例としては、トリアゾール誘導体、オ
キサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリ
ールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘
導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導
体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、
スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒ
ドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、
ポリシラン、アニリン系共重合体、導電性高分子オリゴ
マー(特にチオフェンオリゴマー)、ポルフィリン化合
物、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合
物、有機発光材料として示した前述の芳香族ジメチリデ
ィン系化合物、p型−Siやp−型SiC等の無機半導
体等を挙げることができる。正孔注入材料としては、ポ
ルフィリン化合物、芳香族第三級アミン化合物またはス
チリルアミン化合物を用いることが好ましく、特に芳香
族第三級アミン化合物を用いることが好ましい。
【0056】上記ポルフィリン化合物の具体例として
は、ポルフィン、1,10,15,20−テトラフェニ
ル−21H,23H−ポルフィン銅(II)、1,10,
15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフ
ィン亜鉛(II)、5,10,15,20−テトラキス
(ペンタフルオロフェニル)−21H,23H−ポルフ
ィン、シリコンフタロシアニンオキシド、アルミニウム
フタロシアニンクロリド、フタロシアニン(無金属)、
ジリチウムフタロシアニン、銅テトラメチルフタロシア
ニン、銅フタロシアニン、クロムフタロシアニン、亜鉛
フタロシアニン、鉛フタロシアニン、チタニウムフタロ
シアニンオキシド、マグネシウムフタロシアニン、銅オ
クタメチルフタロシアニン等が挙げられる。
【0057】また、前記芳香族第三級アミン化合物およ
びスチリルアミン化合物の具体例としては、N,N,
N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェ
ニル、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス−(3−
メチルフェニル)−[1,1′−ビフェニル]−4,
4′−ジアミン、2,2−ビス(4−ジ−p−トリルア
ミノフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ジ−p−
トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N,
N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノ
ビフェニル、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノ
フェニル)−4−フェニルシクロヘキサン、ビス(4−
ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタ
ン、ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニ
ルメタン、N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−
メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル、
N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジア
ミノジフェニルエーテル、4,4′−ビス(ジフェニル
アミノ)クオードリフェニル、N,N,N−トリ(p−
トリル)アミン、4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′
−[4(ジ−p−トリルアミノ)スチリル]スチルベ
ン、4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニル
ビニル)ベンゼン、3−メトキシ−4′−N,N−ジフ
ェニルアミノスチルベン、N−フェニルカルバゾール、
4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル
アミノ]ビフェニルのように2個の縮合芳香族環を分子
内に有するもの、トリフェニルアミンユニットが3つス
ターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス
[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]
トリフェニルアミン等が挙げられる。
【0058】正孔注入層は、上述した正孔注入材料を、
例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB
法等の公知の方法により薄膜化することにより形成する
ことができる。正孔注入層としての膜厚は特に制限され
ないが、通常は5nm〜5μmである。この正孔注入層
は、正孔注入材料の1種または2種以上からなる一層構
造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層
からなる複層構造であってもよい。
【0059】(E)電子注入層 必要に応じて設けられる電子注入層の材料(以下「電子
注入材料」という。)は、陰極から注入された電子を発
光層に伝達する機能を有しているものであればよい。一
般には、電子親和力が有機発光材料の電子親和力に比し
て大きく陰極の仕事関数(陰極が多成分の場合には最小
のもの)に比して小さいものが望ましい。ただし、エネ
ルギーレベルの差が極端に大きいところは、そこに大き
な電子注入障壁が存在することになり、好ましくない。
電子注入材料の電子親和力は、陰極の仕事関数あるいは
有機発光材料の電子親和力と同程度の大きさであること
が好ましい。電子注入材料は、有機物および無機物のど
ちらでもよい。
【0060】具体例としては、ニトロ置換フルオレノン
誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジフェニルキノ
ン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、ナフタレンペ
リレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、カルボジイ
ミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントロン誘導
体、オキサジアゾール誘導体、特開昭59−19439
3号公報において発光層の材料として開示されている一
連の電子伝達性化合物、オキサジアゾール環の酸素原子
がイオウ原子に置換したチアゾール誘導体、電子吸引基
として知られているキノキサリン環を有したキノキサリ
ン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体(例えば
トリス(8−キノリノール)アルミニウム、トリス
(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウ
ム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)ア
ルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)
アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノー
ル)アルミニウムおよびビス(8−キノリノール)亜鉛
等や、これらの金属錯体の中心金属がIn,Mg,C
u,Ca,Sn,GaまたはPbに置き代わった金属錯
体等)、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニンま
たはこれらの末端がアルキル基,スルホン基等で置換さ
れているもの、有機発光材料として示した前述のジスチ
リルピラジン誘導体、n型−Siやn型−SiC等の無
機半導体等が挙げられる。
【0061】電子注入層は、上述した電子注入材料を、
例えば真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB
法等の公知の方法により薄膜化することにより形成する
ことができる。電子注入層としての膜厚は特に制限され
ないが、通常は5nm〜5μmである。この電子注入層
は、電子注入材料の1種または2種以上からなる一層構
造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層
からなる複層構造であってもよい。
【0062】以上説明したように、本発明の有機EL素
子では、陰極以外の各層については基板も含めて種々の
物質を利用することができ、その層構成、特に本発明で
いう有機物層の層構成も種々の構成とすることができ
る。また、陽極,有機物層を構成する各層および陰極
は、前述したように種々の方法によって形成することが
できるが、各層の形成にあたって真空蒸着法を用いれ
ば、この真空蒸着法だけによって有機EL素子を形成す
ることができるので、設備の簡略化や生産時間の短縮を
図るうえで有利である。その際、目的とする有機EL素
子が基板上に陽極,有機物層および陰極をこの順で順次
形成したものである場合には少なくとも有機物層を構成
する各層(当該有機物層が単層構造である場合を含
む。)の形成から陰極の形成までを、また、目的とする
有機EL素子が基板上に陰極,有機物層および陽極をこ
の順で順次形成したものである場合には陰極の形成から
陽極の形成までを、それぞれ連続的に行う、すなわち、
ある層Aの形成後から次の層Bを形成するまでの間に前
記の層Aが空気に触れないようにして行うことが好まし
い。
【0063】また、本発明の有機EL素子は、従来の有
機EL素子と同様に、素子への水分や酸素の侵入を防止
するための封止層を有していてもよい。封止層の材料の
具体例としては、テトラフルオロエチレンと少なくとも
1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させ
て得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含
フッ素共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ
メチルメタクリレート、ポリイミド、ポリユリア、ポリ
テトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチ
レン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフ
ルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重
合体、吸水率1%以上の吸水性物質および吸水率0.1
%以下の防湿性物質、In,Sn,Pb,Au,Cu,
Ag,Al,Ti,Ni等の金属、MgO,SiO,S
iO2 ,Al2 3 ,GeO,NiO,CaO,Ba
O,Fe2 3 ,Y2 3 ,TiO2等の金属酸化物、
MgF2 ,LiF,AlF3 ,CaF2 等の金属フッ化
物、パーフルオロアルカン,パーフルオロアミン,パー
フルオロポリエーテル等の液状フッ素化炭素および当該
液状フッ素化炭素に水分や酸素を吸着する吸着剤を分散
させたもの等が挙げられる。
【0064】封止層の形成にあたっては真空蒸着法、ス
ピンコート法、スパッタリング法、キャスト法、MBE
(分子線エピタキシー)法、クラスターイオンビーム蒸
着法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周
波励起イオンプレーティング法)、反応性スパッタリン
グ法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD
法、ガスソースCVD法等を適宜適用することができ
る。封止層の材料として液状フッ素化炭素や当該液状フ
ッ素化炭素に水分や酸素を吸着する吸着剤を分散させた
ものを用いる場合には、基板上に形成されている有機E
L素子(既に別の封止層があってもよい。)の外側に、
当該有機EL素子との間に空隙を形成しつつ前記の基板
と共同して有機EL素子を覆うハウジング材を設け、前
記の基板と前記のハウジング材とによって形成された空
間に前記の液状フッ素化炭素や当該液状フッ素化炭素に
水分や酸素を吸着する吸着剤を分散させたものを充填す
ることによって封止層を形成することが好ましい。前記
のハウジング材としては、吸水率の小さいガラスまたは
ポリマー(例えば三フッ化塩化エチレン)からなるもの
が好適に用いられる。ハウジング材を使用する場合に
は、上述した封止層を設けずに当該ハウジング材のみを
設けてもよいし、ハウジング材を設けた後に、当該ハウ
ジング材と前記の基板とによって形成された空間に酸素
や水を吸着する吸着材の層を設けるか当該吸着材からな
る粒子を分散させてもよい。
【0065】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。 実施例1 (1)有機EL素子の作製 25×75×1.1mmのサイズのガラス基板上に膜厚
100nmのITO透明電極(陽極に相当)が形成され
ているもの(以下「陽極付き基板」という。)を用意し
た。この陽極付き基板を有機溶媒中で超音波洗浄した
後、乾燥窒素ガスを吹き付けて、ITO透明電極の表面
から有機溶媒を除去した。その後、UV/オゾン洗浄を
行って、ITO透明電極の表面から有機物を除去した。
【0066】水に対して有効な排気速度を有するクライ
オポンプを主排気ポンプとして備えている市販の真空蒸
着装置(日本真空技術(株)製の高真空蒸着装置)を用
い、かつ、水や酸素等の残留ガスが基板に付着しないよ
うに当該真空蒸着装置の基板支持部付近にトラップ機構
を設けて、洗浄済みの上記陽極付き基板の上(ITO透
明電極が設けられている側の面上)に以下の条件で正孔
注入層、発光層、電子注入層および陰極をこの順で順次
積層して、有機EL素子を得た。このとき、正孔注入層
の形成から陰極の形成まで途中真空を破ることなく、1
回の真空引きで有機EL素子を作製した。また、有機材
料は全て精製済みのものを用い、蒸着開始時に脱ガスが
なく不純物の発生もないようにした。
【0067】まず、第1の正孔注入層用の正孔注入材料
として4,4′,4″−トリス[N−(3−メチルフェ
ニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(以
下「MTDATA」と略記する。)を用い、このMTD
ATAを蒸着時真空度1.0×10-6Torr以下、蒸着速
度0.1〜0.3nm/sの条件で蒸着させて、膜厚6
0nmの第1の正孔注入層を形成した。このとき、上記
の陽極付き基板は特に加熱も冷却もしなかった。次に、
第2の正孔注入層用の正孔注入材料として4,4′−ビ
ス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフ
ェニル(以下「NPD」と略記する。)を用い、このN
PDを前記第1の正孔注入層形成時と同様の条件で蒸着
させて、膜厚20nmの第2の正孔注入層を形成した。
【0068】次いで、有機発光材料として4,4′−ビ
ス[2−[4−(N,N−ジ−p−トリル)フェニル]
ビニル]ビフェニル(以下「DTAVBi」と略記す
る。)と4,4′−ビス(2,2−ジフェニルビニル)
ビフェニル(以下「DPVBi」と略記する。)とを用
い、DTAVBiがDPVBiに対して2.5wt%とな
るようにこれらを二元同時蒸着して、膜厚40nmの発
光層を形成した。このときの蒸着時真空度、基板温度お
よびDPVBiの蒸着速度は、上述した第1の正孔注入
層の形成時と同様にした。
【0069】次に、電子注入材料としてトリス(8−キ
ノリノール)アルミニウム(以下「Alq」と略記す
る。)を用い、このAlqを上述した第1の正孔注入層
の形成時と同様の条件で蒸着させて、膜厚20nmの電
子注入層を形成した。
【0070】次いで、AlとLiとからなるLi濃度1
0at%の合金母材を陰極形成用の蒸着材料として用い、
蒸着時真空度1.0×10-6Torr、蒸着速度0.5〜
1.0nm/sの条件で当該蒸着材料を蒸着させて、膜
厚約160nmの陰極を形成した。このとき、陰極の形
成に先立ち、上記の合金母材を当該合金母材の蒸発が起
こらないように水晶振動子式膜厚計で監視しながら徐々
に加熱して脱ガスを行った。脱ガス時の真空槽内の雰囲
気を四重極質量分析計で観察すると、水素ガスの成長の
他に、蒸発源付近が熱放射によって加熱されたことによ
るCO2 等のガスの成長が見られた。陰極の形成は、C
2 ガス等の脱ガスが収まったのを確認した後、水晶振
動子式膜厚計で蒸発源からの合金のとびが観察されるま
で更に蒸発源を加熱し、蒸発源シャッターを閉にした状
態で空とばしを行いながら蒸着速度を徐々に上記の速度
に近づけ、当該蒸着速度が目的とする速度で安定するよ
うに蒸発源へのパワー投入の制御を行って蒸着速度が安
定したことを水晶振動子式膜厚計で確認した後に行っ
た。
【0071】陰極形成時の真空槽内の雰囲気を四重極質
量分析計で観察したところ、酸素ガスは水ガスの3%程
度の分圧強度(2.0×10-9Torr程度)であり、水ガ
スの分圧強度が減少して水素ガスが第一ピークとなって
いることが確認された。陰極の形成後、蒸発源用シャッ
ターを素早く閉とし、合金母材への通電を切って、基板
(陰極まで形成した上記の陽極付き基板)を蒸着源から
隔離した。
【0072】上述した陰極まで形成することにより、陽
極(ITO透明電極)、正孔注入層(MTDATA層お
よびNPD層)、発光層(DTAVBiとDPVBiと
からなる層)、電子注入層(Alq層)および陰極(A
l−Li合金層)が前記のガラス基板上に順次積層され
ている有機EL素子が得られた。この有機EL素子にお
いては、正孔注入層、発光層および電子注入層が本発明
でいう「有機発光材料を含有する発光層を備えた多層構
造の有機物層」に相当する。
【0073】(2)有機EL素子の発光試験 上記(1)で得られた有機EL素子の陽極−陰極間に6
Vの直流電圧を印加したところ2.60mA/cm2
電流が流れ、輝度219cd/m2 の青色発光が得られ
た。このときの電力変換効率は4.43lm/Wであっ
た。また、目視および輝度計(ミノルタ社製のCS−1
00)で観測する限りでは発光面内に無発光点は認めら
れず、発光の均一性に優れていた。上記の有機EL素子
を、初期輝度300cd/m2 の条件で乾燥窒素ガス雰
囲気中において連続的に直流定電流駆動したところ、そ
の輝度が半減するまでには3000時間という長時間を
要した。この間、発光色度は変化せず、無発光点の発生
も認められなかった。また、連続定電流駆動の開始から
500時間後までの間における有機EL素子の陽極−陰
極間の電圧上昇は0.6Vであった。
【0074】(3)陰極の組成分析 上記(1)と同様にして更にもう1個の有機EL素子を
作製し、この有機EL素子を構成している陰極につい
て、その組成を次のようにして分析した。すなわち、陰
極表面(陰極上面。以下同様。)から陽極側に向けてA
+ イオンによって1.5nm/sのスパッタレートで
スパッタしてゆき、所定時間毎にスパッタを中止して、
そのつどAESおよびSIMSによって組成分析を行っ
た。SIMSでは試料表面にイオンを照射することか
ら、測定の度毎にイオンスパッタを受けて試料表面が5
nm程度削られる。スパッタおよび組成分析は、AES
によって炭素の信号が観察される深さを目途に繰り返し
た。
【0075】その結果、陰極においてはAESではLi
および酸素のいずれも検出されず、当該陰極におけるこ
れらの濃度は検出限界未満、すなわち1at%未満であっ
た。SIMSによる陰極中のLi濃度についての測定結
果を表1に示す。
【0076】
【表1】
【0077】表1に示したように、Liは陰極表面およ
び有機物層との界面付近を除いて概ね0.5at%程度の
濃度でほぼ均一に分布している。なお、陰極表面および
有機物層との界面付近にはAlおよびLi以外の元素が
存在していたため、マトリックス効果により、これらの
箇所におけるLi濃度は定量性に欠ける。ただし、陰極
表面にはAESによりほぼ15at%の酸素が存在してい
ることが確認され、AlおよびLi以外で陰極表面に存
在する元素は実質的に酸素のみであることから、SIM
Sデプスプロファイルを検量線法によって作成する際に
使用する合金インゴットを意図的に酸化(陰極表面と同
程度の酸素量となるように酸化)させたときのLi/A
lのシグナルカウント比の変化から陰極表面における実
際のLi濃度を推測したところ、0.01at%程度であ
った。
【0078】実施例2 (1)有機EL素子の作製 実施例1(1)と同様にして電子注入層まで形成した
後、蒸着材料としてAlとLiとを用い、蒸着時真空度
を4.0×10-7Torr、Alの蒸着速度を2.0nm/
s、Liの蒸着速度を0.01nm/sにした二元同時
蒸着によって膜厚120nmの陰極を形成して、有機E
L素子を得た。四重極質量分析計でみた陰極形成時の真
空槽内の残留ガス成分の分圧の相対強度は、実施例1
(1)におけるのと同様であった。
【0079】(2)有機EL素子の発光試験 上記(1)で得られた有機EL素子の陽極−陰極間に8
Vの直流電圧を印加したところ0.82mA/cm2
電流が流れ、輝度86.7cd/m2 の青色発光が得ら
れた。このときの電力変換効率は4.15lm/Wであっ
た。また、目視および輝度計で観測する限りでは発光面
内に無発光点は認められず、発光の均一性に優れてい
た。上記の有機EL素子を実施例1(2)と同条件で連
続定電流駆動したところ、その輝度が半減するまでには
ほぼ2000時間という長時間を要した。この間、発光
色度は変化せず、無発光点の発生も認められなかった。
また、連続定電流駆動の開始から500時間後までの間
における有機EL素子の陽極−陰極間の電圧上昇は0.
67Vであった。
【0080】(3)陰極の組成分析 上記(1)と同様にして更にもう1個の有機EL素子を
作製し、この有機EL素子を構成している陰極につい
て、その組成を実施例1(3)と同様にして分析した。
その結果、陰極においてはAESではLiおよび酸素の
いずれも検出されず、当該陰極におけるこれらの濃度は
検出限界未満、すなわち1at%未満であった。SIMS
による陰極中のLi濃度についての測定結果を表2に示
す。
【0081】
【表2】
【0082】表2に示したように、Liは陰極表面およ
び有機物層との界面付近を除いて概ね3at%程度の濃度
で均一に分布している。なお、陰極表面および有機物層
との界面付近にはAlおよびLi以外の元素が存在して
いたため、マトリックス効果により、これらの箇所にお
けるLi濃度は定量性に欠ける。ただし、実施例1
(3)と同様にして推測した陰極表面の実際のLi濃度
は、0.04〜0.07at%であった。
【0083】実施例3 (1)有機EL素子の作製 実施例1(1)と同様にして電子注入層まで形成した
後、蒸着材料としてAlとLiとからなるLi濃度5at
%の合金母材を用い、かつ、蒸着速度を0.8〜1.0
nmとした以外は実施例1(1)と同様にして膜厚20
0nmの陰極を形成して、有機EL素子を得た。四重極
質量分析計でみた陰極形成時の真空槽内の残留ガス成分
の分圧の相対強度は実施例1(1)におけるのと同様で
あった。
【0084】(2)有機EL素子の発光試験 上記(1)で得られた有機EL素子の陽極−陰極間に6
Vの直流電圧を印加したところ1.30mA/cm2
電流が流れ、輝度140cd/m2 の青色発光が得られ
た。このときの電力変換効率は5.63lm/Wであっ
た。また、目視および輝度計で観測する限りでは発光面
内に無発光点は認められず、発光の均一性に優れてい
た。上記の有機EL素子を実施例1(2)と同条件で連
続定電流駆動したところ、その輝度が半減するまでには
ほぼ3200時間という長時間を要した。この間、発光
色度は変化せず、無発光点の発生も認められなかった。
また、連続定電流駆動の開始から500時間後までの間
における有機EL素子の陽極−陰極間の電圧上昇は0.
53Vであった。
【0085】(3)陰極の組成分析1 上記(1)と同様にして更にもう1個の有機EL素子を
作製し、この有機EL素子を構成している陰極につい
て、その組成を実施例1(3)と同様にして分析した。
その結果、陰極においてはAESでは酸素は検出され
ず、当該陰極における酸素の濃度は検出限界未満、すな
わち1at%未満であった。SIMSによる陰極中のLi
濃度についての測定結果を表3に示す。
【0086】
【表3】
【0087】表3に示したように、Li濃度は有機物層
との界面から陰極表面にかけて、9at%程度から0.1
at%程度へと漸次低下している。ただし、有機物層との
界面付近にはAlおよびLi以外の元素(C,O,N)
が存在していたため、マトリックス効果により、この箇
所におけるLi濃度は定量性に欠ける。
【0088】(4)陰極の組成分析2 上記(1)における陰極の形成条件と同条件で石英ガラ
ス基板上に膜厚200nmのAl−Li合金層を形成
し、その組成をICP分析により求めた。その結果、A
l−Li合金層全体におけるLiの濃度は3.25at%
であり、SIMSによる上記(3)の結果と矛盾しない
結果であった。
【0089】実施例4〜実施例5および比較例1〜比較
例6 (1)有機EL素子の作製 実施例1(1)と同様にして電子注入層まで形成した
後、蒸着材料としてAlとLiとからなるLi濃度7at
%の合金母材を用い、かつ、蒸着速度を0.5〜2nm
とした以外は実施例1(1)と同様にして膜厚150n
mの陰極を形成して、有機EL素子を得た。ただし、陰
極の形成にあたっては、前記の合金母材について脱ガス
を十分に行った後、実施例毎および比較例毎に空とばし
量を適宜変化させて空とばしを行い、この後に陰極を形
成した。前記の空とばし量を実施例毎および比較例毎に
変化させたことによって、陰極中のLi濃度は実施例毎
および比較例毎に表4に示す値となった。
【0090】なお、表4に示した陰極中のLi濃度は、
各実施例または各比較例における陰極の形成条件と同条
件で石英ガラス基板上に形成した膜厚150nmのAl
−Li合金層についてICP分析によって求めた値であ
る。また、四重極質量分析計でみた陰極形成時の真空槽
内の残留ガス成分の分圧の相対強度は、いずれの実施例
および比較例においても実施例1(1)におけるのと同
様であった。
【0091】(2)有機EL素子の発光試験 上記(1)で得られた各有機EL素子の陽極−陰極間に
直流電圧を印加したところ、いずれの有機EL素子にお
いても目視および輝度計で観測する限りでは発光面内に
無発光点は認められず、発光の均一性に優れていた。こ
のときの電流密度、輝度および電力変換効率を表4に示
す。また、各有機EL素子を実施例1(2)と同条件で
連続定電流駆動したところ、いずれの有機EL素子にお
いても連続駆動の間に発光色度は変化せず、また、無発
光点の発生も認められなかった。連続定電流駆動によっ
て輝度が半減するのに要した時間(半減時間)、およ
び、連続定電流駆動の開始から500時間後までの間に
おける有機EL素子の陽極−陰極間の電圧上昇値を、そ
れぞれ表4に併記する。
【0092】
【表4】
【0093】表4から明らかなように、実施例4および
実施例5で得た各有機EL素子は、輝度および電力変換
効率が共に高く、連続定電流駆動によって輝度が半減す
るのに要した時間(半減時間)は2650時間または3
500時間と長い。そして、これら実施例4および実施
例5で得た各有機EL素子は、連続定電流駆動の開始か
ら500時間後までの間における有機EL素子の陽極−
陰極間の電圧上昇が0.7Vまたは0.5Vと小さい。
【0094】これに対し、比較例1〜比較例6で得た各
有機EL素子は、連続定電流駆動によって輝度が半減す
るのに要した時間(半減時間)は680〜1500時間
と短い。また、比較例1〜比較例4で得た各有機EL素
子は、連続定電流駆動の開始から500時間後までの間
における有機EL素子の陽極−陰極間の電圧上昇が1.
4〜1.8Vと大きい。そして、比較例7で得た有機E
L素子は、輝度および電力変換効率がともに低い。
【0095】実施例6 (1)有機EL素子の作製 実施例1(1)と同様にして電子注入層まで形成した
後、Alと仕事関数2.9eV以下のアルカリ土類金属
の1つであるCaとからなる合金母材(Caの濃度=5
at%)を蒸着材料として用い、かつ、蒸着時真空度を
1.0×10-6Torr、蒸着速度を1.2〜1.3nm/
sとした以外は実施例1(1)と同様にして膜厚150
nmの陰極を形成して、有機EL素子を得た。四重極質
量分析計でみた陰極形成時の真空槽内の残留ガス成分の
分圧の相対強度は、実施例1(1)におけるのと同様で
あった。
【0096】(2)有機EL素子の発光試験 上記(1)で得られた有機EL素子の陽極−陰極間に6
Vの直流電圧を印加したところ0.64mA/cm2
電流が流れ、輝度60cd/m2 の青色発光が得られ
た。このときの電力変換効率は4.91lm/Wであっ
た。また、目視および輝度計で観測する限りでは発光面
内に無発光点は認められず、発光の均一性に優れてい
た。上記の有機EL素子を実施例1(2)と同条件で連
続定電流駆動したところ、その輝度が半減するまでには
ほぼ2300時間という長時間を要した。この間、発光
色度は変化せず、無発光点の発生も認められなかった。
また、連続定電流駆動の開始から500時間後までの間
における有機EL素子の陽極−陰極間の電圧上昇は0.
6Vであった。
【0097】(3)陰極の組成分析 上記(1)における陰極の形成条件と同条件で石英ガラ
ス基板上に膜厚150nmのAl−Ca合金層を形成
し、その組成をICP分析により求めた。その結果、当
該Al−Ca合金層全体におけるCa濃度は1.5at%
であった。このことから、上記(1)で形成した陰極中
のCa濃度も1.5at%であると推察される。
【0098】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の有機EL
素子は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属を利用し
た単層構造の陰極を備えた有機EL素子でありながら、
電力変換効率が高く、素子寿命が長く、均一発光性に優
れ、かつ、連続定電流駆動時の電圧上昇が小さいもので
ある。したがって、本発明によれば上記の特性を有する
有機EL素子を容易に提供することが可能になる。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 陽極と、有機発光材料を含有する発光層
    を備えた単層構造または多層構造の有機物層と、陰極と
    が基板上に順次積層されている有機EL素子において、 前記陰極が、仕事関数3.8eV以上の金属とアルカリ
    金属または仕事関数2.9eV以下のアルカリ土類金属
    との合金からなり、この合金における前記アルカリ金属
    と前記アルカリ土類金属との総量が0.5〜5at%であ
    ることを特徴とする有機EL素子。
  2. 【請求項2】 陰極が、アルカリ金属と仕事関数2.9
    eV以下のアルカリ土類金属とのうちでアルカリ金属の
    みを含有し、前記アルカリ金属がリチウム(Li)であ
    る、請求項1に記載の有機EL素子。
  3. 【請求項3】 陰極が、アルカリ金属と仕事関数2.9
    eV以下のアルカリ土類金属とのうちで仕事関数2.9
    eV以下のアルカリ土類金属のみを含有し、前記アルカ
    リ土類金属がカルシウム(Ca)である、請求項1に記
    載の有機EL素子。
  4. 【請求項4】 陰極が、アルミニウム(Al)とアルカ
    リ金属または仕事関数2.9eV以下のアルカリ土類金
    属との合金からなる、請求項1〜請求項3のいずれか1
    項に記載の有機EL素子。
  5. 【請求項5】 陰極におけるアルカリ金属とアルカリ土
    類金属との総量の濃度が、有機物層との界面から陰極表
    面にかけて漸次低下している、請求項1〜請求項4のい
    ずれか1項に記載の有機EL素子。
  6. 【請求項6】 陰極における酸素の存在濃度が1at%以
    下である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の
    有機EL素子。
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