JPH0931757A - グラファイトファイバーの作成方法 - Google Patents

グラファイトファイバーの作成方法

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JPH0931757A JP7210161A JP21016195A JPH0931757A JP H0931757 A JPH0931757 A JP H0931757A JP 7210161 A JP7210161 A JP 7210161A JP 21016195 A JP21016195 A JP 21016195A JP H0931757 A JPH0931757 A JP H0931757A
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芳正 大木
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Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明は低温度で比較的簡単な装置によってナ
ノチューブと呼ばれる円筒状グラファイトファイバーの
作成方法を提供する。 【構成】ニッケル微粒子を触媒とし、有機化合物を原料
として化学気相成長法によりグラファイトファイバーを
作成するに当たり、そのファイバーを成長させる温度を
650℃から800℃とすることを特徴とするグラファ
イトファイバーの作成方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、極めて細いグラファイ
トファイバーの作成方法に関し、特にナノチューブと呼
ばれる円筒状グラファイトファイバーの作成に関する。
【0002】
【従来の技術】所謂ナノチューブと称される直径が10
-9mm程度の極めて細い円筒状グラファイトファイバー
は、同心円柱状にグラファイト結晶の網面がスパイラル
状に巻いた構造をしているため、その構造上の僅かな違
いにより、金属的な導電性から半導体的な導電性までの
幅広い特性を示すことが予想され、新規な応用が期待さ
れている物質である。従来からグラファイトファイバー
の作成方法としては、有機物質を紡糸してファイバー状
にし、これを高温で熱処理する方法と、鉄を触媒に用い
て気相成長方法によってファイバーを成長させる方法と
が知られている。更に、最近、炭素を電極としてアーク
放電によりファイバーを成長させる方法が報告されてい
る。これら作成方法において、有機物を紡糸し、これを
高温処理する方法は、炭素質材料の構造を制御すること
が困難であり、結晶性の良好な物は得られなかった。鉄
を触媒とする方法については、グラファイト面が同心円
柱状に巻いた構造を持つファイバーが得られることが報
告されている。
【0003】従って、上記の従来のグラファイトファイ
バーの作成法の内、同心円柱状にグラファイト結晶の網
面がスパイラル状に巻いた、いわゆるグラファイトナノ
チューブを作ることのできるのは、鉄を触媒に使う方法
とアーク放電を用いる方法である。鉄を使う方法は、成
分として鉄を含んだ原料気体、例えばフェロセンを用
い、気相反応で鉄の微粒子を生成し、それをそのまま反
応容器中で触媒として用いてグラファイトファイバーを
生成させるという方法である。この方法では、グラファ
イトファイバーを生成させるために1000℃以上の高
い温度が必要である。また、グラファイトファイバーの
生成は反応管の中の空間および壁面のあらゆる部分で起
こり、必要とする領域に限定してファイバーを作成する
ことができない。また、アーク放電による方法では、放
電電極のうち、陰極側にだけグラファイトファイバーが
塊となって生成する。そのためアーク放電用の特殊な装
置が必要となるだけでなく、この場合にも必要な場所に
ファイバーを生成させることはできない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明者は所
望の位置にグラファイトファイバーを成長させてナノチ
ューブを得るべく種々検討した結果、ニッケル微粒子を
触媒として使用し、化学気相成長法(CVD法)によっ
て低温度で目的物を得ることを見出し本発明を完成した
もので、本発明の目的は低温度で比較的簡単な装置によ
ってナノチューブと呼ばれる円筒状グラファイトファイ
バーの作成方法を提供する。
【0005】
【課題を解決するための手段】即ち、本願発明の要旨
は、ニッケル微粒子を触媒とし、有機化合物を原料とし
て化学気相成長法によりグラファイトファイバーを作成
するに当たり、ニッケル微粒子上にグラファイトファイ
バーを650℃から800℃の温度範囲で成長させるこ
とを特徴とするグラファイトファイバーの作成方法であ
る。そして、本発明では触媒のニッケル微粒子として
は、基体表面に形成したニッケル薄膜を真空中又は非酸
化雰囲気中で加熱処理を施して凝縮・粒状化して基板上
に形成したニッケル微粒子を使用することが好ましく、
凝縮・粒状化するため基体としてニッケルが濡れにくい
材料を選択することが好ましい。即ち、本発明ではグラ
ファイトファイバー作成のための触媒として金属ニッケ
ル微粒子を用いること、及びその金属ニッケル微粒子は
基体表面上に粒子状として分散させて使用する。
【0006】本発明について詳細に説明する。先ず、本
発明のグラファイトファイバーの形成方法について模式
的に図1に示す。図1において、基体a表面の上にニッ
ケル蒸着膜bを設け(i)、これを約700℃前後の温
度に加熱すると、ニッケルは基体と濡れにくいためニッ
ケル蒸着膜bは、ニッケル微粒子cとして基体上に点在
する(ii)。このようなニッケル微粒子cが表面に分散
した基体を触媒としてCVD法によってグラファイト結
晶を成長させると、グラファイト結晶はニッケル微粒子
cの存在した位置に蒸着、成長してグラファイトファイ
バーが形成される(iii)。従って、本発明において
は、基体表面上の金属ニッケル微粒子の位置を選択的に
定めることによって、グラファイトファイバーを所望の
位置に形成させることができる。本発明においては金属
ニッケル微粒子を分散させる必要がある。金属ニッケル
微粒子を分散させるために、基体として金属ニッケルと
濡れ性の悪い物質を使用し、該基体上にニッケル膜を形
成し、これを熱処理すると、ニッケル自体の凝集力がニ
ッケルと基体との付着力より大きいためニッケルは微粒
子化すると共に基体表面上に分散する。本発明ではこの
ような金属ニッケル微粒子を使用することが好ましい。
このような特性を有する基体として、例えば石英ガラス
などの酸化物や弗化カルシウム等の弗化物がある。
【0007】本発明では上述のような基体を使用し、こ
の基体表面にニッケル蒸着膜を設け、これに熱処理を施
して、基体上に金属ニッケル微粒子を分散させる。基体
表面上の蒸着膜の膜厚が厚過ぎると、加熱処理によって
もニッケルは微粒状化せず、連続した膜の状態を保持す
る。従って、ニッケル蒸着膜の膜厚としては1ないし2
0nm、望ましくは約5nm程度である。この程度の厚
さに蒸着したニッケル薄膜を650℃から800℃の間
の温度、真空または非酸化性の雰囲気中で30から20
0分間熱処理すると基体上に直径200nm程度のニッ
ケル微粒子が分散した状態を形成する。
【0008】本発明において使用する炭素原料としては
有機化合物であれば良く、特に限定されないが、適当な
原料としては、例えば本発明者らによって発明された
「グラファイト薄膜の形成方法」(平成5年3月24日
平成5年特許願64946号)の明細書に記載した一
方の芳香環のオルト位に置換基を有する芳香族ケトン化
合物であり、具体的に下記の構造式で示される化合物で
ある。
【0009】
【化1】
【0010】基体上にグラファイトファイバーを形成さ
せる温度範囲としては、上述のオルト位に置換基を有す
る芳香族ケトン化合物を用いた場合、650℃から80
0℃である。この温度は、基体表面上のニッケル蒸着膜
を粒状化する温度とほぼ一致しているので装置的にも作
業自体も簡単化することができる。CVD法の原料を上
記の温度範囲で熱分解反応させることによって基体表面
のニッケルの存在位置にグラファイトファイバーが生成
する。基体上の必要な部分以外にあるニッケル薄膜をあ
らかじめ酸等によって除去し、これを加熱処理すること
により、基体表面の必要な部分にのみ触媒の金属ニッケ
ル微粒子が存在することと成り、その位置においてのみ
グラファイトファイバーが生成する。
【0011】
【作用】本発明は上記の手段により先ず、触媒となる金
属ニッケルの微粒子の径を蒸着膜厚によって制御するこ
とができる。グラファイトファイバーの生成に当たって
は、触媒となる金属ニッケルの微粒子のサイズは決定的
に重要な量である。また、ニッケル微粒子を触媒として
使うことにより、ファイバー生成のための反応温度が6
50℃から800℃と低い温度とすることができると同
時に、この温度がニッケル薄膜を微粒子化する温度と一
致しているために、装置的にも作業自体も簡単化でき
る。ニッケル薄膜を用いているので、例えばフォトリン
グラフィー等の手段を用いて必要な部分のニッケルだけ
を残して他の部分のニッケルを除去することにより、基
体上で必要な部分にグラファイトファイバーの生成を行
わせることができる。もちろん金属ニッケルを微粒子化
した後で不要な部分のニッケル微粒子を除去して必要な
部分にグラファイトファイバーの生成させることも同様
に容易に行える。
【0012】
【実施例】以下、図面を参照しながら実施例をもって本
願発明を更に具体的に説明する。 実施例1 図2は本発明の実施例1におけるグラファイトファイバ
ー作成のための装置を模式的に表わした図である。図2
において、石英製の反応管4内に、反応によって反応管
内壁に析出物が付着し変質するのを防ぐためのライナー
管41を置く。該ライナー管41は反応を行う毎に清浄
なものと交換する。CVD法の原料1を容器2に入れラ
イナー管中に設置し、電気炉6の温度によりその蒸発量
を制御した。同じライナー管41中に設置した基板3の
温度は電気炉5により制御した。この実施例では原料と
して、2−メチル1,2’−ナフチルケトンを使用し
た。
【0013】
【化2】
【0014】ここで使用した基板は石英ガラスで、その
上に厚さ5nmのNi蒸着膜を設けてある。また、反応
管内には高純度アルゴンガスを流量制御器7によって供
給できるようにした。反応管の排気側にはバルブ8を介
して排気装置9を接続して、反応管内の圧力を制御でき
るようにした。原料1を設置した部分の温度を100℃
に設定した。この温度は原料を適当な蒸気圧で蒸発させ
ることを目的に設定した。また基板設置部の温度を70
0℃に設定した。この温度で基体表面上のニッケル蒸着
膜は粒状化する。高純度Arガスを毎分300ccの割
合で流し、1気圧で3時間反応させたところニッケル微
粒子を内包した状態でグラファイト結晶が成長した。得
られた試料についてマラン散乱スペクトルを測定したと
ころ、図3に示すように結晶性グラファイトに特徴的な
スペクトルを示し、グラファイト質の物質が生成したこ
とが分かった。更にこの試料について走査型電子顕微鏡
で観察したところ、図4に見るように、多数の繊維状物
が生成していることが分かった。この繊維状の物質を透
過型電子顕微鏡で調べたところ、一本一本の繊維は、グ
ラファイト面が中空で一部ニッケル粒子を内包した同心
円状に巻いた構造になっていることが分かった。この様
な構造はカーボンナノチューブと呼ばれている物であ
る。以下ではこの呼称を用いることにする。このような
反応が起こる原因について調べてみたところ、石英の表
面に蒸着されたニッケル蒸着膜が、反応温度まで昇温す
る間に小さな島状に凝集し、この凝集したニッケル微粒
子がナノチューブの生成の触媒となることが分かった。
基板を設置する所の温度すなわち反応温度を300℃か
ら1000℃まで変えてみたところ、カーボンナノチュ
ーブの生成する温度は、650℃から800℃の間に限
られることを見出した。また、反応中の雰囲気の圧力を
1気圧でなく、減圧条件にしたところ0.01気圧まで
下げても1気圧の場合と同様にカーボンナノチューブが
生成した。
【0015】実施例2 図5を参照しながら実施例2について具体的に説明す
る。図5は実施例2において使用した反応装置を示す図
である。石英反応管4は、ターボ分子ポンプを含む排気
系29により10-6パスカルの圧力までの真空排気が可
能である。この石英反応管の中に原料物質1と基板3が
設置してある。この原料と基板は実施例1の時と同じ物
を用いた。原料1と基板3を設置した後、排気系29に
より、先ず反応管内を10-5Paまで排気した。その
後、排気をしながら基板3を700℃まで温度を上げ、
さらに原料部の温度を100℃に昇温した。原料1が蒸
発し、基板3の上で反応し、反応生成物が反応管4の低
温部に堆積した。堆積した物は白色ないし薄い黄色を呈
していた。反応時間は4時間にした。反応終了後、電気
炉の温度を下げ、基板を取り出して調べた結果、実施例
1の場合と同じようにカーボンナノチューブが生成して
いることが分かった。基板を設置している所の温度、す
なわち反応温度を300℃から1000℃まで変えてみ
たところ、カーボンナノチューブの生成する温度は、6
50℃から800℃の間に限られることを見出した。ま
た原料1と基板3は実施例1の場合と同様に電気炉で必
要な温度に加熱されるようになっている。
【0016】実施例3 実施例2において、基板として、その表面にニッケル蒸
着薄膜をパターンニングしたものを用いた。すなわち、
石英表面に真空蒸着によりニッケル薄膜を5nm堆積さ
せた。このニッケル薄膜をフォトリソグラフィーの手法
を用いてストライプ状に加工した。この様な基板を用い
て実施例2と同じ手法で反応を行ったところ、カーボン
ナノチューブがストライプ状にニッケル薄膜を残した領
域にのみ生成し、それ以外の領域、すなわち石英表面が
露出した領域には何も生成しなかった。
【0017】
【発明の効果】以上のように、本発明はニッケルの微粒
子を触媒とするカーボンナノチューブの作成を可能とす
るものであり、特にニッケル微粒子を反応系の中で形成
するため、ニッケル微粒子表面の酸化などの汚染を気に
する必要がない。またその微粒子のサイズも最初の蒸着
膜厚によってほぼ一義的に揃えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明でグラファイトファイバーの形成方法に
ついての模式図。
【図2】本発明の第1の実施例におけるカーボンナノチ
ューブ作成に用いた装置の図。
【図3】本発明の第1の実施例で得た物質のラマン散乱
スペクトルの図。
【図4】本発明の第1の実施例で得たカーボンナノチュ
ーブの走査型電子顕微鏡写真。
【図5】本発明の第2の実施例におけるカーボンナノチ
ューブ作成に用いた装置の図。
【符号の説明】
1 原料物質 2 原料容器 3 基体
4 石英反応管 5、6 電気炉 7 流量調整器 8 ニード
ルバルブ 2、29 排気装置 41 石英ライナー
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大木 芳正 神奈川県相模原市大野台3−30−2 (72)発明者 津田坂 雅子 神奈川県川崎市多摩区生田5−8−4− 202

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ニッケル微粒子を触媒とし、有機化合物
    を原料として化学気相成長法によりグラファイトファイ
    バーを作成するに当たり、そのファイバーを成長させる
    温度を650℃から800℃とすることを特徴とするグ
    ラファイトファイバーの作成方法。
  2. 【請求項2】 ニッケル微粒子は、ニッケルが濡れにく
    い材料から成る基体表面にニッケル薄膜を形成し、これ
    を真空又は非酸化性雰囲気中で加熱することにより凝縮
    ・微粒子化したものであることを特徴とする請求項1記
    載のグラファイトファイバーの作成方法。
  3. 【請求項3】 ニッケル微粒子は、基体表面の特定の部
    分にのみニッケル薄膜を設け、該部分のニッケル薄膜を
    加熱処理により凝縮・微粒子化したものであることを特
    徴とする請求項1記載のグラファイトファイバーの作成
    方法。
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