JPH0930944A - 芳香剤及びこれを含有する衣類 - Google Patents

芳香剤及びこれを含有する衣類

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JPH0930944A
JPH0930944A JP7185826A JP18582695A JPH0930944A JP H0930944 A JPH0930944 A JP H0930944A JP 7185826 A JP7185826 A JP 7185826A JP 18582695 A JP18582695 A JP 18582695A JP H0930944 A JPH0930944 A JP H0930944A
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JP
Japan
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glycoside
fragrance
compound
aromatic
aromaticity
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JP7185826A
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English (en)
Inventor
Noriaki Oka
憲明 岡
Makoto Fukushima
信 福島
Kanzo Sakata
完三 坂田
Yasuichi Usui
泰市 碓氷
Shuji Watanabe
修治 渡辺
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Pola Chemical Industries Inc
Original Assignee
Pola Chemical Industries Inc
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 特定成分の存在下であるいは特定成分を作用
させることで芳香を発生する芳香剤及びこれを含有して
特定成分に含有する好ましくない臭いの消臭、マスキン
グを行うまたは特定成分の発生を芳香で知らせる衣類を
提供する。 【解決手段】 芳香性を有する化合物残基を構成要素と
して有する配糖体であって、酵素による加水分解により
芳香性を有する化合物を生成することが可能な配糖体を
有効成分として芳香剤に配合し、この芳香剤を、前記配
糖体としての含有量が衣類全量に対して好ましくは0.
001〜10重量%となるように、衣類に含有させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、芳香剤及びこれを
含有する衣類並びに芳香の発生方法に関し、詳しくは酵
素による加水分解により芳香性を有する化合物を生成す
ることが可能な配糖体を有効成分として含有する芳香剤
及びこれを含有する衣類並びにこの芳香剤に酵素を作用
させて芳香を発生させる芳香の発生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の芳香剤としては、最初からワッ
クス、ゲル等の形態で賦香されており、香料成分の揮散
により芳香を発生するもの、マイクロカプセルに香料
成分を封入し、摩擦等の外力によりマイクロカプセルが
破壊され、香料成分が開放されることで芳香を発生する
もの等が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記
の方法では、容器を開けるといつでも芳香がするので、
かえって煩わしい場合もあり、また、芳香も早期に失わ
れてしまう。の方法では、芳香成分はマイクロカプセ
ルにより保護されているので芳香の保ちはよいが、マイ
クロカプセルが物理的な力により破壊された場合に芳香
を発生するため、適宜相応の量の芳香を発生させること
が難しいという問題がある。従って、芳香を出したいと
きに適宜使用者が容器の開閉度を変更したり、物理的な
力を加えて芳香の発生量を調整する必要があった。
【0004】そこで、ある種の特定成分と反応して芳香
成分を発生するような芳香剤、例えば、好ましくない臭
いを発する特定成分、具体的には、汗や排泄物等が発生
したときにその成分中の化学物質等に反応して芳香性を
発揮するような芳香剤の開発が望まれていた。しかし、
この様な芳香剤はこれまでに得られていない。
【0005】本発明は、上記観点からなされたものであ
り、特定成分の存在下であるいは特定成分を作用させる
ことで芳香を発生する芳香剤及びこれを含有して、特定
成分に含有される好ましくない臭いの消臭、マスキング
を行うまたは特定成分の発生を芳香で知らせる衣類を提
供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために鋭意研究を行った結果、酵素の加水分
解により芳香性を有する化合物を生成することが可能な
配糖体を芳香成分として利用することにより、この配糖
体に作用してこれを加水分解させるような酵素の存在下
でのみ芳香を発生する芳香剤が得られることを見出し、
更にこの芳香剤を衣類に含有させることで、汗や排泄物
等が発生したときにその成分中の酵素に反応してこれら
に含有される好ましくない臭いの消臭、マスキングを行
うまたはこれらの発生を芳香で知らせることが可能であ
ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】すなわち本発明の芳香剤は、芳香性を有す
る化合物残基を構成要素として有する配糖体であって、
酵素による加水分解により前記芳香性を有する化合物を
生成することが可能な配糖体を有効成分として含有する
ものであり、好ましくは、この芳香剤を衣類に含有させ
る。また、芳香の発生方法として、この芳香剤に、使用
時に、前記芳香剤に有効成分として配合される配糖体を
分解できる配糖体加水分解酵素を作用させて芳香性を有
する化合物を生成して芳香を発生させる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て詳細に説明する。
【0009】<1>配糖体 本発明の芳香剤の有効成分として用いられる配糖体は、
芳香性を有する化合物残基を構成要素として有する配糖
体であって、酵素による加水分解により芳香性を有する
化合物を生成することが可能な配糖体である。
【0010】上記配糖体を構成する芳香性を有する化合
物残基としては、芳香性を有する化合物の残基であれば
特に制限されるものではないが、好ましくはアルコール
系芳香化合物、より好ましくは炭素数5〜15のアルコ
ール系芳香化合物、更に好ましくは、炭素数6〜12の
直鎖アルコールや、ボルネオール、シトロネロール、α
−シクロゲラニオール、β−シクロゲラニオール、i−
ボルネオール、ラバンジュロール、ネロール、i−プレ
ゴール、l−メントール、テルピネオール、ゲラニオー
ル、リナロール等のモノテルペンアルコール、及びセド
ロール、ファルネソール、ネロリドール、サンタロー
ル、ランセオール、オイデスモール等のセスキテルペン
アルコール、更にベンジルアルコール、クミンアルコー
ル、ジメチルベンジルカルビノール、ハイドロシンナミ
ルアルコール、メチルフェニルカルビノール、2−フェ
ニルエタノール、サリチル酸メチル、アニスアルコー
ル、シンナミルアルコール等の芳香族アルコール系化合
物等の残基を挙げることができる。
【0011】更にこれらのうちでも、上記配糖体を構成
する芳香性を有する化合物残基として、モノテルペンア
ルコール、セスキテルペンアルコール、及び芳香族アル
コール系化合物から選ばれるアルコール系芳香化合物の
残基を、本発明においてはより好ましく挙げることがで
きる。
【0012】また、配糖体の糖部分は、グルコース、ガ
ラクトース、アラビノース、キシロース、ラムノース等
の単糖類もしくはマルトース、ラクトース、ルチノー
ス、プリメベロース、マルトトリオース、アミロース等
の二糖類以上のオリゴ糖類、あるいはN−アセチルグル
コサミン等の糖類で構成されていることが好ましい。
【0013】本発明の芳香剤の有効成分として用いられ
る配糖体は、この様な芳香性を有する化合物残基と糖類
の残基により構成されるが、これら配糖体はその構造に
応じてグリコシダーゼやオリゴグリコシダーゼ等の配糖
体加水分解酵素により、容易に糖部分とその他の成分す
なわち芳香性を有する化合物に加水分解されて芳香を発
生する。
【0014】この様な本発明に用いる配糖体は、上記糖
類と芳香性化合物を酵素的にあるいは化学的に縮合反応
させることで合成することもできるが、この様な芳香性
化合物残基を構成要素とする配糖体は天然にも植物界に
広く存在するので、これら配糖体を含有する植物体より
通常の方法で抽出、精製することでも容易に得られる。
【0015】本発明に用いられる芳香性化合物残基を構
成要素とする配糖体を含有する植物体をその含有部分と
共に挙げると、梅、桃、桜、バラ、ジャスミン、クチナ
シ、ラベンダー、マツリカ等の花卉、葉、茎やオレン
ジ、レモン等の柑橘類の果実、ウーロン茶、紅茶、緑茶
等の茶葉、コーヒー豆等を好ましく挙げることができ
る。また、このような植物体から本発明に用いる配糖体
を得る方法として、一般的には、以下の方法が挙げられ
る。
【0016】植物材料の根、茎、葉、果実等の配糖体を
多く含有する部分をメタノール、エタノール、アセト
ン、水あるいはこれらの混合溶媒中で磨砕、もしくは粉
砕抽出する。抽出液を減圧下濃縮し、得られた濃縮液を
水で希釈後、アンバーライトXAD、ダイアイオンHP
などの吸着樹脂のカラムに通過吸着させる。カラムを水
洗後、含水アルコール、メタノール、アセトンなどで配
糖体を溶出させる。これを濃縮すると、粗配糖体画分が
得られる。これを更に一般的なシリカゲル(溶媒:ベン
ゼン、酢酸エチル、クロロフォルム、アセトン、メタノ
ール等を単独もしくは適宜混合して用いる)、逆相シリ
カゲル(溶媒:メタノール、アセトニトリル、水等を単
独もしくは適宜混合して用いる)、セファデックスLH
20(溶媒:メタノール、アセトニトリル、水等を単独
もしくは適宜混合して用いる)などを用いたカラムクロ
マトグラフィーによって精製し、最終的に高速液体クロ
マトグラフィー(カラム:逆相シリカゲル、溶媒:メタ
ノール、アセトニトリル、水等を単独もしくは適宜混合
して用いる)を繰り返し行うことによって配糖体を単離
することができる。
【0017】本発明においては、糖類と芳香性化合物を
酵素的にあるいは化学的に縮合反応させることで合成し
たり、あるいは上記方法で植物材料より抽出単離して得
られる配糖体を有効成分として芳香剤に配合するが、配
糖体として植物由来のものを用いる場合には、必ずしも
配糖体を単離して用いる必要はなく、配糖体を含む抽出
物や、配糖体の粗精製物をそのまま芳香剤に配合するこ
とも可能である。
【0018】<2>芳香剤及び芳香の発生方法 本発明の芳香剤は有効成分として、上記芳香性を有する
化合物残基を構成要素として有する配糖体であって、酵
素による加水分解により芳香性を有する化合物を生成す
ることが可能な配糖体の1種又は2種以上を含有するも
のである。また、本発明の芳香剤は、上記配糖体以外に
通常芳香剤に配合されるローズマリー油、ハッカ油、ラ
ベンダー油、パイン油、ローレル油等の任意成分を配合
することができ、上記配糖体を配合する以外は通常の方
法で製造することが可能である。
【0019】本発明の芳香剤は、上記有効成分である配
糖体に配糖体加水分解酵素が作用して、配糖体が糖類と
芳香性化合物に加水分解することで芳香を生じるもので
ある。本発明の芳香剤の使用方法としては、使用時まで
はそのまま保管し、芳香剤の使用時つまり芳香を発生さ
せたいときに、芳香剤に含有する配糖体を糖と芳香性を
有する化合物に加水分解することが可能な配糖体加水分
解酵素又はその様な配糖体加水分解酵素を含有する成分
を添加する方法が挙げられる。
【0020】本発明の芳香の発生方法において用いられ
るこの様な芳香剤とその芳香剤に含有する配糖体を加水
分解する働きをもつ酵素の組み合わせとしては、特に制
限されないが、前記芳香剤がグリコシダーゼ及び/又は
オリゴグリコシダーゼにより加水分解して芳香性を有す
る化合物を生成することが可能な配糖体を含有する芳香
剤であり、配糖体加水分解酵素がグリコシダーゼ及び/
又はオリゴグリコシダーゼである組み合わせが好ましく
挙げられる。
【0021】また、配糖体加水分解酵素を上記の様に積
極的に添加する方法の他に、芳香剤付近に配糖体加水分
解酵素を含有するような特定成分が発生して芳香剤に作
用することで芳香成分を発生させ、例えば、配糖体加水
分解酵素を含有する特定成分の臭いの消臭、マスキング
を行うあるいはその特定成分の存在を知らせる等の使用
方法も可能である。この場合、芳香剤に含有する配糖体
は、発生が予想される特定成分中に含有する配糖体加水
分解酵素により加水分解され芳香成分を発生することが
可能な配糖体であることが条件となる。また、上記配糖
体加水分解酵素を含有する特定成分としては、例えば、
人や各種動物の尿、唾液、リンパ液等を挙げることがで
きる。
【0022】例えば、尿の臭いの消臭、マスキングを行
ったり、その存在を知らせるために、本発明の芳香剤を
用いる場合には、人尿中に含まれるα−グルコシダー
ゼ、β−ガラクトシダーゼ、アミラーゼ、β−グルクロ
ニダーゼ等の酵素が加水分解酵素として作用して糖類と
芳香性化合物を生成するような配糖体、例えば、2−フ
ェニルエチル−α−グルコピラノシド、2−フェニルエ
チル−β−ガラクトピラノシド、2−フェニルエチル−
β−グルクロニド等を含有する芳香剤を用いることが可
能である。具体的には、配糖体として2−フェニルエチ
ル−α−グルコピラノシド、2−フェニルエチル−β−
ガラクトピラノシドを含有する芳香剤を用いると、尿が
発生し尿中のα−グルコシダーゼもしくはβ−ガラクト
シダーゼが前記配糖体に作用した時に、これら配糖体が
加水分解され、グルコース、ガラクトース等の糖類と共
に芳香成分である2−フェニルエタノールを生成し芳香
を発生する。
【0023】この様に特定成分中の配糖体加水分解酵素
により分解されることで芳香を発生する配糖体は、前記
特定成分が存在すれば芳香性化合物を発生し芳香して特
定成分の存在を知らしめることが可能である。更に、配
糖体を構成する芳香性化合物として特定成分の臭いの消
臭又はマスキング効果のあるものを用いることも可能で
ある。
【0024】<3>衣類 本発明の衣類は、上記芳香剤を含有するものである。衣
類に含有させる芳香剤としては、人体からの排泄物に含
まれる配糖体加水分解酵素により加水分解して芳香性成
分を発生できる配糖体を含有するものが好ましい。ま
た、芳香剤としての含有量は特に制限されるものではな
いが、衣類全量に対して配糖体の含有量として0.00
1〜10重量%含有させるのが好ましい。配糖体として
の含有量が0.001重量%未満では、十分な芳香成分
や、消臭成分を発生させることが難しく、10重量%を
越えて配合しても効果の増強はさほどではなく、経済的
に不利である。上記衣類としては、特に制限はなく、肌
着、靴下、パジャマ、オムツ、紙オムツ、使い捨て下
着、生理用品等、体に直接触れるものを好ましく挙げる
ことができる。
【0025】芳香剤を衣類に含有させる方法としては、
素材の繊維に練り込んだり、繊維表面に付着させておく
方法、芳香剤を封入したシートを衣類に貼付する、衣類
の内部に封入する方法等が挙げられる。
【0026】上記芳香剤を含有する本発明の衣類とし
て、紙オムツを例にして具体的に説明する。一般的な紙
オムツの尿吸収帯の部分は基本的には、肌に接する面か
ら最外層に向けて、不織布、パルプ、吸水紙、吸水性ポ
リマー、吸水紙、パルプ、防水性プラスチックフィルム
の順の積層構造になっている。例えば、この吸水性ポリ
マーに、上述のような人尿中の配糖体加水分解酵素が作
用することで、加水分解して芳香成分を生成することが
可能な配糖体を含有する本発明の芳香剤を配合して紙オ
ムツを作製する。この紙オムツは、使用中に使用者が排
尿することにより紙オムツに含有される前記配糖体が加
水分解され芳香を発生するので、交換時期を排尿とほぼ
同時に自動的に知らせることができる。
【0027】
【作用】人の尿中に存在する酵素による配糖体加水分解
作用を、一般的な配糖体及び本発明の芳香剤に用いられ
る配糖体を用いて試験した。
【0028】<配糖体加水分解試験>加水分解性の有機
基を有する配糖体として、p−ニトロフェニル−α−D
−グルコピラノシド(シグマ社製)を用いて、配糖体と
尿中の酵素との反応性に関する評価を行った。
【0029】22才男性より採尿した尿を冷却遠心器で
4℃、1500rpmの条件で10分間遠心し、この上
澄み液500μLと10mM濃度のp−ニトロフェニル
−α−D−グルコピラノシド水溶液50μLを試験管に
入れ、45℃の恒温層で表1に示す各種反応時間で反応
させた。反応終了後、1M濃度のNa2CO3水溶液を5
00μL加え撹拌して、上記加水分解により生じたp−
ニトロフェノールを発色させ、405nmの吸光度を測
定した。また、コントロールとして上記配糖体を加え
ず、尿の上澄み液のみで同様に実験を行った。各実験は
1検体3反復で行った。結果を表1に示す。
【0030】
【表1】 この結果から、p−ニトロフェニル−α−D−グルコピ
ラノシドは、人の尿と反応して(尿中の酵素と反応し
て)p−ニトロフェノールを発生することがわかった。
これにより糖類とアグリコンが上記配糖体と同様の結合
様式で結合した配糖体を含有する本発明の芳香剤は、尿
中の酵素の作用により加水分解され芳香成分を発生する
ことが示唆された。
【0031】同様に、p−ニトロフェニル−β−D−ガ
ラクトピラノシド(シグマ社製)を用いて、前記配糖体
と尿中の酵素との反応性に関する評価を行った。32才
男性より採尿した尿を冷却遠心器で4℃、1500rp
mの条件で10分間遠心し、この上澄み液500μLと
10mM濃度のp−ニトロフェニル−β−D−ガラクト
ピラノシド水溶液50μLを試験管に入れ、45℃の恒
温層で表2に示す各種反応時間で反応させた。反応終了
後、1M濃度の炭酸ナトリウム水溶液を500μL加え
撹拌して、上記加水分解により生じたp−ニトロフェノ
ールを発色させ、405nmの吸光度を測定した。ま
た、コントロールとして上記配糖体を加えず、尿の上澄
み液のみで実験を行った。各実験は1検体3反復で行っ
た。結果を表2に示す。
【0032】
【表2】 この結果から、p−ニトロフェニル−β−D−ガラクト
ピラノシドは、人の尿と反応して(尿中の酵素と反応し
て)p−ニトロフェノールを発生することがわかった。
これにより糖類とアグリコンが上記配糖体と同様の結合
様式で結合した配糖体を含有する本発明の芳香剤は、尿
中の酵素の作用により加水分解され芳香成分を発生する
ことが示唆された。
【0033】<芳香発生試験>試験には、本発明の芳香
剤に有効成分として含有する加水分解により芳香性を有
する化合物を生成することが可能な配糖体として、l−
メントールのα−グルコピラノシドを用いた。2才児男
性3名及び女性2名より採取した尿を前述の試験と同様
に処理して得られた上澄み液500μLと、l−メント
ールのα−グルコピラノシドの10mM水溶液50μL
とを試験管に入れ、37℃の恒温槽で反応させたとこ
ろ、5例とも2分後に強いメントール臭が確認された。
【0034】この結果より、尿中の配糖体加水分解酵素
がl−メントールのα−グルコピラノシドを加水分解し
l−メントールの芳香が発生したことがわかる。
【0035】
【実施例】以下に本発明の実施例を説明する。
【0036】
【実施例1】 芳香剤 l−メントール1モル及び1−ブロモ−ペンタアセチル
−D−グルコース4モルをジクロルメタン5Lに溶解し
丸底フラスコに入れて0℃に冷却した後、これに触媒と
して炭酸銀を0.1M加え12時間撹拌した。その後、
反応液を冷却水中に注ぎ、ジクロルメタンで反応物を抽
出した。得られた反応物を炭酸水素ナトリウムで洗浄し
た後、硫酸ナトリウムで乾燥した。これをカラムクロマ
トグラフィーで精製し、メンチル−D−グルコピラノシ
ドのアセテート体(α:β=約1:1)を得た。その
後、前記アセテート体をメタノールに溶解して0℃に冷
却後、28%のナトリウムメチラートを加えて2時間撹
拌した。得られた配糖体粗製物をカラムクロマトグラフ
ィーを使って精製しメンチル−β−D−グルコピラノシ
ド及びメンチル−α−D−グルコピラノシドを得た。こ
れをそのまま芳香剤とした。
【0037】
【実施例2】 芳香剤 マツリカのつぼみ1kgを80%メタノール水溶液1L
に加えて、4℃、1時間の抽出を行った。得られた抽出
物を濾過し不溶物を取り除いた後、濾液を濃縮した。得
られた濃縮物を水溶液としてアンバーライトXAD−2
カラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:水→10%メタ
ノール水溶液→20%メタノール水溶液→40%メタノ
ール水溶液→60%メタノール水溶液→100%メタノ
ール)にかけた。これらの溶出画分のうち、ナリンギナ
ーゼ(シグマ社製)処理によりリナロール配糖体、2−
フェニルエタノール配糖体、ベンジルアルコール配糖体
が含まれていることが確認された20%メタノール水溶
液溶出画分及び100%メタノール溶出画分を合わせ
て、セファデックスLH−20カラムクロマトグラフィ
ー(50%メタノール水溶液)により精製を進め、更に
ナリンギナーゼ処理を行い上記アルコール系芳香成分の
配糖体の存在が確認された画分を合わせて減圧下濃縮し
た。得られた上記アルコール系芳香成分の配糖体混合物
含有の濃縮物をそのまま芳香剤とした。
【0038】
【実施例3】 芳香剤 ウーロン茶の乾燥茶葉2kgを2Lの熱湯で抽出し冷却
した後、遠心分離を行い大部分のカテキンを除去した。
得られた上澄みを活性炭カラムクロマトグラフィー(溶
出溶媒:水→20%メタノール水溶液→40%メタノー
ル水溶液→60%メタノール水溶液→100%メタノー
ル→100%アセトン)にかけこの溶出画分全てを合わ
せてアンバーライトXAD−2カラムクロマトグラフィ
ー(溶出溶媒:水→10%メタノール水溶液→20%メ
タノール水溶液→40%メタノール水溶液→60%メタ
ノール水溶液→100%メタノール)に供した。得られ
た溶出画分のうち粗酵素試験(ナリンギナーゼ(シグマ
社製)処理)により、ゲラニオール配糖体、リナロール
配糖体、ベンジルアルコール配糖体及び2−フェニルア
ルコール配糖体が含まれていることが確認された20%
メタノール水溶液〜80%メタノール水溶液溶出画分を
まとめて、ポリクラーAT(GAF社製)により処理
し、水で溶出させ残りのカテキンを除去した。通過液を
順次、セファデックスLH−20カラムクロマトグラフ
ィー(50%メタノール水溶液)にかけて精製を進め、
更にナリンギナーゼ処理を行い上記アルコール系芳香成
分の配糖体の存在が確認された画分を合わせて減圧下濃
縮した。得られた上記アルコール系芳香成分の配糖体混
合物含有の濃縮物をそのまま芳香剤とした。
【0039】
【実施例4】 芳香剤 茶葉(摘採直後に釜煎りしたもの)500gを1Lの熱
湯で抽出した後、遠心分離を行い大部分のカテキンを除
去した。得られた上澄みを活性炭カラムクロマトグラフ
ィー(溶出溶媒:水→20%メタノール水溶液→40%
メタノール水溶液→60%メタノール水溶液→100%
メタノール→100%アセトン)にかけこの溶出画分全
てを合わせてアンバーライトXAD−2カラムクロマト
グラフィー(溶出溶媒:水→10%メタノール水溶液→
20%メタノール水溶液→40%メタノール水溶液→6
0%メタノール水溶液→100%メタノール)に供し
た。得られた溶出画分のうちナリンギナーゼ(シグマ社
製)処理により、ゲラニオール配糖体、リナロール配糖
体、ベンジルアルコール配糖体及び2−フェニルアルコ
ール配糖体が含まれていることが確認された20%メタ
ノール水溶液〜80%メタノール水溶液溶出画分をまと
めて、ポリクラーAT処理し、水で溶出させ残りのカテ
キンを除去した。通過液を順次、セファデックスLH−
20カラムクロマトグラフィー(50%メタノール水溶
液)にかけて精製を進め、更にナリンギナーゼ処理を行
い上記アルコール系芳香成分の配糖体の存在が確認され
た画分を合わせて減圧下濃縮した。得られた上記アルコ
ール系芳香成分の配糖体混合物含有の濃縮物をそのまま
芳香剤とした。
【0040】次に、上記実施例の芳香剤を含有する衣類
の実施例について説明する。
【0041】
【実施例5】 紙オムツ 上記実施例1で得られた芳香剤(メンチル−D−グルコ
ピラノシド(α体:β体=約1:1の混合物))を図1
に示す紙オムツ1の吸収帯2内部に含有する芳香剤含有
の紙オムツを作製した。
【0042】まず、芳香剤含有の吸収帯(図2)を次の
方法で作製した。アクリル系高吸水樹脂(アクアリザー
ブAP:日本合成化学製)粉末に実施例1で得られた芳
香剤を0.1重量%加えよく練り合わせた。これを2枚
の吸水紙14の間に20g/m2 となるように固定して
芳香剤含有の高吸水樹脂層15を形成させ、更にこれを
綿状パルプ30gを等分した上下2層の綿状パルプ層1
3の間に入れてはさみ、これを全体として吸水性シート
16とした。不織布11としてポリエステル繊維80
%、レーヨン20%を化学接着したものを用いた。不織
布11、吸水性シート16を重ね合わせ、この積層体の
不織布面の大部分を除いて残りの部分を全て液体不透過
性シート12で包み込み吸収帯2を製造した。これを、
固定用接着テープ3、収縮性ゴム4付きの紙オムツ本体
に組み込んで芳香剤含有の紙オムツとした。
【0043】
【発明の効果】本発明の芳香剤は、特定成分の存在下で
あるいは特定成分を作用させることで芳香を発生する。
また、本発明の芳香剤を含有する衣類は特定成分に含有
する好ましくない臭いの消臭、マスキングを行うまたは
特定成分の発生を芳香で知らせることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例5の紙オムツの展開図を示す図。
【図2】 実施例5の紙オムツの吸収帯の断面図を示す
図。
【符号の説明】
1.紙オムツ 2.吸収帯 3.固定用接着テープ 4.収縮性ゴム 11.不織布 12.液体不透過性シート 13.綿状パルプ 14.吸水紙 15.芳香剤含有高吸水樹脂層 16.吸水性シート
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 碓氷 泰市 静岡県静岡市大谷836 静岡大学農学部内 (72)発明者 渡辺 修治 静岡県静岡市大谷836 静岡大学農学部内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 芳香性を有する化合物残基を構成要素と
    して有する配糖体であって、酵素による加水分解により
    前記芳香性を有する化合物を生成することが可能な配糖
    体を有効成分として含有する芳香剤。
  2. 【請求項2】 前記配糖体の構成要素である糖残基が単
    糖類及び/又は二糖類以上のオリゴ糖の残基である請求
    項1記載の芳香剤。
  3. 【請求項3】 前記芳香性を有する化合物がアルコール
    系芳香化合物である請求項1又は2に記載の芳香剤。
  4. 【請求項4】 前記アルコール系芳香化合物が、炭素数
    5〜15のアルコール系芳香化合物である請求項3に記
    載の芳香剤。
  5. 【請求項5】 前記炭素数5〜15のアルコール系芳香
    化合物が、モノテルペンアルコール、セスキテルペンア
    ルコール、及び芳香族アルコール系化合物から選ばれる
    一種又は二種以上である請求項4に記載の芳香剤。
  6. 【請求項6】 請求項1〜5の何れか1項に記載の芳香
    剤を含有する衣類。
  7. 【請求項7】 前記衣類における芳香剤の含有量が、配
    糖体の含有量として衣類全量に対して0.001〜10
    重量%である請求項6に記載の衣類。
  8. 【請求項8】 請求項1〜5の何れか1項に記載の芳香
    剤に、前記芳香剤に有効成分として配合される配糖体を
    糖と芳香性を有する化合物に加水分解できる配糖体加水
    分解酵素を作用させて芳香性を有する化合物を生成させ
    る芳香の発生方法。
  9. 【請求項9】 前記配糖体がグリコシダーゼ及び/又は
    オリゴグリコシダーゼにより加水分解して芳香性を有す
    る化合物を生成できる配糖体であり、配糖体加水分解酵
    素がグリコシダーゼ及び/又はオリゴグリコシダーゼで
    ある請求項8記載の芳香の発生方法。
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