JPH09308683A - 医療用液体容器用プラスチックフィルム - Google Patents

医療用液体容器用プラスチックフィルム

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JPH09308683A
JPH09308683A JP8153029A JP15302996A JPH09308683A JP H09308683 A JPH09308683 A JP H09308683A JP 8153029 A JP8153029 A JP 8153029A JP 15302996 A JP15302996 A JP 15302996A JP H09308683 A JPH09308683 A JP H09308683A
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春雄 大橋
Moritoshi Kokuni
盛稔 小国
Masanori Nagata
政令 永田
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 高密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリ
エチレンとの混合比率が10/0〜8/2である第一フ
ィルム層2a,3aと、5/5〜1/9である第二フィ
ルム層2b,3bとをそれぞれ接着剤を介在させること
なく直接積層してなるシーラント層2,3の間に透明フ
ィルム層5を接着性樹脂層4,4を介して第二フィルム
層2b,3b側と接着するように積層させて医療用液体
容器用プラスチックフィルム1を得る。 【効果】 本発明によれば、透明性に優れるのみなら
ず、熱殺菌処理によってもフィルムの収縮が少ない上に
低分子量成分の溶出もほとんどなく、フィルム強度にも
優れ、内容液充填後に熱殺菌処理を施す医療用液体容器
の形成材料として有用な医療用液体容器用プラスチック
フィルムを得ることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、輸液又は薬液用バ
ッグ等の医療用液体容器の形成材料として特に好適に使
用される医療用液体容器用プラスチックフィルムに関す
る。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】輸液、
薬液、血液用バッグ等の医療用液体容器は、強度が高
く、安全性等に優れていることを必要とするのは勿論で
あるが、内容液を容器の外から肉眼でチェックできるこ
とが要求されるので、透明度が高いという特性は医療用
液体容器において大きな利点となる。従来より、このよ
うな医療用液体容器としては、ガラスビン、ポリエチレ
ンやポリプロピレン等のブロー成形ビン、例えばポリエ
チレンホモポリマーの単層フィルム製のフレキシブルバ
ッグのようなポリエチレンやポリ塩化ビニル製バッグな
どが使用されているが、これらの医療用液体容器には、
以下のような様々な問題がある。
【0003】即ち、ガラスビンは、破損し易いために取
り扱いを慎重にする必要があり、また、使用時に空気流
入孔が必要なために異物や雑菌等が混入する可能性があ
るのでそれに対する配慮も必要となる上に、ガラスビン
の使用方法によってはガラス中に含まれるアルカリ物質
が内容液中へ溶出する場合もあるので使用方法が制限さ
れたり、更に硬質であるために廃棄しにくい等の問題が
ある。また、ブロー成形ビン、ポリエチレンやポリ塩化
ビニル製バッグ等は、透明性が不足すると共に、レトル
ト殺菌等の高温殺菌に対する耐性に乏しく、更に可塑
剤、酸化防止剤、安定剤や残留塩化ビニルモノマー等の
低分子量成分を含有するものは、容器の使用方法によっ
てはこれらの成分が内容液中に溶出して衛生上の問題と
なるので使用方法が制限される。また、廃棄時に有害ガ
スを発生する等の環境面での問題も生じている。
【0004】そこで、医療用液体容器用プラスチックフ
ィルムとしての特性を満足することが困難な単層フィル
ムに代えて、種々の特性を兼備し得る多層フィルムが種
々提案されているが、いずれも医療用液体容器が必要と
する特性を満足するには至っていない。
【0005】本発明は、上記事情に鑑みなされたもの
で、医療用液体容器が必要とする特性、即ち透明性に優
れ、内容液中への低分子量成分の溶出も少ない等の特性
を兼備するのみならず、特にレトルト殺菌(例えば12
1℃処理)等の高温殺菌に対する耐熱性を備えており、
医療用液体容器の形成材料として有用な医療用液体容器
用プラスチックフィルムを提供することを目的とするも
のである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達
成するため、密度0.941g/cm3以上の高密度ポ
リエチレンと密度0.900〜0.940g/cm3
直鎖状低密度ポリエチレンとを混合してなり、これらの
混合比率が異なる少なくとも2種類の混合フィルム層を
接着剤を介在させることなく直接積層したシーラント層
をその高密度ポリエチレンの混合比率が低い方の混合フ
ィルム層側が透明フィルム層に接着されるように透明フ
ィルム層の上下面にそれぞれ接着性樹脂層を介在させて
積層してなることを特徴とする医療用液体容器用プラス
チックフィルムを提供する。
【0007】この場合、特に上記シーラント層を高密度
ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエチレンとの混合比率
(重量比、以下同様)が10/0〜8/2である第一フ
ィルム層と、高密度ポリエチレンと直鎖状低密度ポリエ
チレンとの混合比率が5/5〜1/9である第二フィル
ム層とを積層してなるものとすると好適であり、接着性
樹脂層を無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂により
形成されたものとすると、より好適である。
【0008】即ち、本発明は、高密度ポリエチレン(H
DPE)と直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)と
の混合比率が異なる混合フィルム層を積層し、これをシ
ーラント層として使用すると共に、このシーラント層を
接着性樹脂層を介在させて透明フィルム層の両面に積層
することにより、透明性に優れるのみならず、例えば1
00〜125℃程度の加熱処理にも耐え、医療用液体
(内容液)充填後に熱殺菌処理を行うことが可能である
上に、接着剤を使用していないために安全性に優れ、内
容液中に低分子量成分が溶出することがほとんどない医
療用液体容器用プラスチックフィルムを得るものであ
る。
【0009】より詳細には、上述したように、医療用液
体容器用プラスチックフィルムとして従来よりポリエチ
レンホモポリマーの単層フィルムが使用されているが、
ポリエチレンの中でもHDPEは、特に耐熱性が優れて
おり、上記のような熱殺菌処理を施す医療用液体容器用
プラスチックフィルムとして使用するのに好適である
が、このHDPEは耐衝撃性が小さいため、例えば透明
で耐衝撃性に優れるポリアミドフィルムを積層しても、
ポリアミドフィルムのみではHDPEの耐衝撃性の小さ
さをカバーすることができず、積層フィルム全体として
の衝撃強度が欠けたものとなってしまう。また、HDP
Eの単一フィルムの場合、その透明性が医療用包材とし
ては不十分である。そこで、HDPEとの相溶性が良
く、透明性に優れ、HDPEの衝撃強度等を補うことが
できるLLDPEとHDPEとを混合することによっ
て、透明性、耐衝撃性等にも優れる混合フィルムを得る
ことができる。
【0010】このような混合フィルムにおいて、HDP
EとLLDPEとの混合比率を変えることによって、そ
の特性が異なる混合フィルムを得ることができ、HDP
Eの混合比率が高い混合フィルム層、例えばHDPEと
LLDPEとの混合比率が10/0〜8/2である第一
フィルム層は、耐熱性に優れ、防湿性、耐薬品性、耐ブ
ロッキング性、スリップ性等にも優れたフィルムとな
り、LLDPEの混合比率が高い混合フィルム層、例え
ば5/5〜1/9である第二フィルム層は、透明性、耐
衝撃性に優れたものとなる。このような第一、第二フィ
ルム層を使用する場合、第一フィルム層と第二フィルム
層とのフィルム厚さ比率を1/9〜4/6とすると、透
明性、耐衝撃性等のバランスが特に好適なシーラント層
を得ることができる。
【0011】このシーラント層にその透明性を損なうこ
となく他の特性を付与することを目的として透明フィル
ム層を積層するに当たり、接着性樹脂層を介在させて積
層することによって、接着剤やアンカー剤等を全く使用
することなく多層フィルム構成からなる医療用液体容器
用プラスチックフィルムを得ることができる。ここで、
透明フィルム層をポリアミド、ポリカーボネート又はポ
リエステルにより形成すると、透明性及び耐衝撃性に特
に優れた積層フィルムを得ることができる。そして、こ
のような透明フィルム層の両面にシーラント層を積層す
ることにより、医療用液体容器の最外層及び最内層がポ
リエチレンの混合フィルムからなるシーラント層により
形成されて、容器製造時のシール性が良好なものとな
り、特に容器外側に内容液取り出し口としてクロージャ
ーを取り付けることが多い医療用液体容器の場合、上記
のようにプラスチックフィルムの最外層がポリエチレン
のシーラント層により形成されることによって、クロー
ジャーの取り付け性が良好なものとなる。
【0012】更に、シーラント層のHDPEの混合比率
が低い方の混合フィルム層(第二フィルム層)側と透明
フィルム層とを接着することにより、耐熱性に優れるH
DPEの混合比率が高い方の混合フィルム層(第一フィ
ルム層)を内容液に接する医療用液体容器の最内面とす
ることができ、このような容器を加熱処理するに当た
り、第一フィルム層の耐熱性を発揮させて加熱処理に伴
う容器の収縮を少なくするという点で特に効果的であ
り、透明フィルム層の両面においてシーラント層をそれ
ぞれ上記のように積層することによってフィルム構造が
上下対称となり、フィルムのカールが生じ難くなる。ま
た、このような多層構造体とすることによって、フィル
ムの機械的強度が大きくなり、容器の運搬・保存時の実
用強度が増す。
【0013】ここで、本発明の場合、接着性樹脂層を介
在させることによって、シーラント層と透明フィルム層
との層間接着性を十分に確保するものであり、上述した
ように、接着剤やアンカー剤等を全く使用することなく
積層することができるので、医療用液体容器用プラスチ
ックフィルムとしての安全性に特に優れるものである
が、接着性樹脂層として、特に熱接着性を有し、加熱に
よる低分子量成分の溶出がほとんどない無水マレイン酸
変性ポリオレフィンを使用すると、シーラント層の良好
な層間接着性と相俟って、例えば100〜125℃程度
の加熱殺菌処理に耐えることができるのみならず、非常
に安全性に優れた医療用液体容器用プラスチックフィル
ムを得ることが可能となる。
【0014】以上説明したように、本発明の医療用液体
容器用プラスチックフィルムは、HDPE及びLLDP
Eのプラスチック特性を兼備した複数種の混合フィルム
層を積層してシーラント層とすることによって、これら
の単層シーラント層では十分に満足することができない
フィルム特性を兼備するシーラント層を接着剤を使用す
ることなく得ることができ、更にこれらのシーラント層
を接着性樹脂層を介在させて透明フィルム層の両面に積
層することにより、特に透明性、耐衝撃性に優れた医療
用液体容器用プラスチックフィルムを接着剤を用いない
で得ることができる。この医療用液体容器用プラスチッ
クフィルムは、上記のように100〜125℃の加熱処
理によっても層間の剥離もなく、低分子量成分の溶出も
ほとんどないので、このようなプラスチックフィルムに
より形成された医療用液体容器は、医療用液体容器とし
ての要求特性、例えば強度に優れ、廃棄に場所をとら
ず、廃棄時の焼却に際して有毒ガスの発生もなく、衛生
性に優れ、また水蒸気バリア性、酸素バリア性に優れて
いる等の要求特性を兼備するのみならず、透明性、耐熱
性にも優れ、上記のような加熱処理によっても低分子量
成分の溶出がほとんどなく、医療用液体容器として収縮
が少なく、特に内容液充填後に熱殺菌処理が採用される
ことが多い、輸液又は薬液用バッグ等の液体容器として
好適なものである。
【0015】
【発明の実施の形態及び実施例】以下、本発明を図面を
参照して、更に詳細に説明する。図1は、本発明の医療
用液体容器用プラスチックフィルム1を示している。こ
の医療用液体容器用プラスチックフィルム1は、それぞ
れHDPEとLLDPEとの混合比率が異なる第一フィ
ルム層2aと第二フィルム層2b、第一フィルム層3a
と第二フィルム層3bとをそれぞれ積層してなる上下2
層のシーラント層2,3と、これらのシーラント層2,
3の間にそれぞれ接着性樹脂層4,4を介して積層され
た透明フィルム層5とからなるものである。
【0016】第一フィルム層2aと第二フィルム層2
b、第一フィルム層3aと第二フィルム層3bとにおけ
るHDPEとLLDPEとの混合比率は、それぞれの第
一、第二フィルム層の間で異なっていれば特に限定され
るものではないが、HDPEの混合割合が第一フィルム
層2a,3aの方が第二フィルム層2b,3bよりも大
きく、特に第一フィルム層2a,3aのHDPE/LL
DPE(重量)=10/0〜8/2、特に85/15程
度、且つ第二フィルム層2b,3bのHDPE/LLD
PE=5/5〜1/9、特に2/8程度とするとより好
適である。第一、第二フィルム層におけるHDPEとL
LDPEとの混合割合が上記範囲にあるフィルムを積層
した場合、医療用液体容器用プラスチックフィルム1の
シーラント層2,3として好適な耐熱性、耐衝撃性、透
明性等を得ることができる。
【0017】また、第一フィルム層2aと第二フィルム
層2b、第一フィルム層3aと第二フィルム層3bとの
フィルム厚さの比率は、医療用液体容器用プラスチック
フィルムに必要な上記特性を付与することができる限
り、特に限定されるものではなく、第一、第二フィルム
層におけるHDPEとLLDPEとの混合割合により種
々選定することができるが、例えば上記混合割合でなる
第一フィルム層2a,3aと第二フィルム層2b,3b
とを積層する場合、第一フィルム層/第二フィルム層=
1/9〜4/6、特に1/9〜2/8とすると好適であ
る。なお、層厚さとしては、例えば第一フィルム層2
a,3aをそれぞれ10〜30μm程度、第二フィルム
層2b,3bをそれぞれ40〜100μm程度とすると
好適である。上記範囲以外では、十分な耐熱性が得られ
ない場合や必要な透明性や耐衝撃性が得られない場合が
ある。
【0018】そして、第一フィルム層2aと第二フィル
ム層2b、第一フィルム層3aと第二フィルム層3bと
を積層して得られるシーラント層2,3の厚さは、医療
用液体容器用プラスチックフィルムの大きさや内容液の
種類等によって適宜選定することができるが、それぞれ
通常50〜130μm程度とすると好適である。シーラ
ント層の厚さが薄すぎると医療用液体容器の形成材料と
して必要な強度等が得られない場合があり、厚すぎると
医療用液体容器用プラスチックフィルムに良好な可撓性
が得られない場合がある。
【0019】そして、透明フィルム層5とシーラント層
2,3との間に介在される接着性樹脂層4,4を形成す
る接着性樹脂としては、通常の接着性を有する樹脂を使
用することができ、このような樹脂として、例えば無水
マレイン酸変性ポリオレフィン等が挙げられるが、これ
らの中でも特に無水マレイン酸変性ポリエチレンが望ま
しい。そして、接着性樹脂層の層厚さは、5〜30μm
程度とすることが好ましい。層厚さが薄すぎると十分な
接着性を得ることができない場合があり、厚すぎてもそ
れ以上の接着性の向上が認められない。
【0020】シーラント層2,3の間に積層される透明
フィルム層5を形成する材料は、医療用液体容器用プラ
スチックフィルム1が最終的に医療用包材としての透明
性の規格値を満たすものとなる限り、特に限定されず、
例えばポリアミド、ポリカーボネート及びポリエステル
等が好適に使用されるが、これらの中でも耐衝撃性に優
れるポリアミドを透明フィルム層5として使用すれば、
医療用液体容器の運搬・保存時等の落下強度が強くな
り、破袋による液漏れが生じなくなるので特に好適であ
る。ポリアミドとしては、無延伸ナイロンを使用するこ
とができ、具体的には6ナイロン、6,6ナイロン、6
−6,6ナイロン共重合体等を挙げることができる。な
お、フィルムの製造方法等によっては、延伸ナイロンに
より形成されることもある。
【0021】上記透明フィルム層5の層厚さは、医療用
液体容器用プラスチックフィルムの大きさや内容液の種
類等によって適宜選定することができるが、通常10〜
50μm程度とすると好適である。層厚さが薄すぎると
医療用液体容器の形成材料として必要な強度等が得られ
ない場合があり、厚すぎると医療用液体容器用プラスチ
ックフィルムに良好な可撓性が得られない場合がある。
【0022】上記医療用液体容器用プラスチックフィル
ム1の製造方法は、上記構成のフィルムが十分な層間接
着性を持って積層されるのであれば、その製法は特に限
定されるものではないが、製造効率等を考慮すれば、上
記したフィルム構成となるように7層共押出ラミネート
することで容易に医療用液体容器用プラスチックフィル
ム1を得ることができる。
【0023】なお、このようにして得られた医療用液体
容器用プラスチックフィルム1は、JIS−K−710
5により測定された透明度が80%以上であることが好
ましく、特に90%以上であるとより好適である。
【0024】上記医療用液体容器用プラスチックフィル
ム1は、これを形成材料として、例えば輸液用バッグを
作成することができる。この場合、例えばプラスチック
フィルム1を適宜大きさに裁断し、第一フィルム層2a
が容器外側となるように重ね合わせた後、内容液(ここ
では輸液)用のキャップ付きなどの注入部(クロージャ
ー)を設け、その注入部が開口している以外は四周が密
閉された偏平の長方形袋状、三方体袋、ガセット袋、自
立袋等となるようにインパルスシール又は熱板シール等
の手段によりバッグを作成し、輸液を上記注入部から注
入してキャップを締めることなどの手段により輸液をバ
ッグ内に密閉収納し、これを100〜125℃で10分
〜2時間加熱する熱殺菌処理を施して、輸液の保存、運
搬に使用することができる。
【0025】なお、本発明の医療用液体容器用プラスチ
ックフィルムは、上記構成に限定されるものではなく、
本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更して差し支え
ない。
【0026】[実施例1、2、比較例1、2]次に、上
記医療用液体容器用プラスチックフィルムを表1に示す
構成で作製して、実施例1、2、比較例1、2のプラス
チックフィルムを製膜し、各プラスチックフィルムを1
21℃、30分間の加熱処理したものについてJIS−
K−7105に準拠した透明度試験を行った。結果を表
1に併記する。また、各プラスチックフィルムについて
日本薬局方第13改正に記載された「輸液用プラスチッ
ク容器試験法」に準拠した溶出物試験を行った。また、
実用強度を評価するために各フィルムにより作製した袋
について下記の落下衝撃強度試験を行った。結果を表1
に併記する。JIS−K−7105:全光線透過率(透明度)試験 加熱処理後のプラスチックフィルムを50×50mmに
裁断して試験片とした。試験片は各プラスチックフィル
ムについて3枚ずつ用意した。積分球式光線透過率測定
装置であるNDH−Σ80(日本電色工業株式会社製)
に試験片を取り付けて全光線透過光量(透明度)を測定
した。溶出物試験 プラスチックフィルムにより内容面積が約1200cm
2となるように袋を作製し、水で洗った後、室温で乾燥
した。この袋の中に水200mlを正確に加えて密封し
た後、高圧蒸気滅菌器を用いて121℃で1時間加熱
し、その後、滅菌器から袋を取り出して室温になるまで
放置し、この内容液を試験液とした。
【0027】別の水につき、同様の方法で空試験液を調
製した。試験液及び空試験液につき、次の試験を行っ
た。 <過マンガン酸カリウム還元性物質>試験液20mlを
共栓三角フラスコに採り、0.01N過マンガン酸カリ
ウム液20.0ml及び希硫酸1mlを加え、3分間煮
沸し、冷後、これにヨウ化カリウム0.10gを加えて
密栓し、振り混ぜて10分間放置した後、0.01Nチ
オ硫酸ナトリウム液で滴定した(指示薬:デンプン試液
5滴)。別に空試験液20.0mlを用い、同様に操作
し、試験液と空試験液との0.01N過マンガン酸カリ
ウム液の消費量の差を求めた。 <蒸発残留物>試験液20mlを水浴上で蒸発乾固し、
残留物を105℃で1時間乾燥し、その量を測定した。 <紫外吸収スペクトル>試験液につき、空試験液を対照
とし、吸光度測定法により波長200nm以上241n
m未満における吸光度及び波長241nm以上350n
m以下における吸光度を測定した。落下衝撃強度試験 各プラスチックフィルムを使用して、ヒートシール条件
を180〜210℃、2kg/cm2、1〜2秒間と
し、150×200(mm)の三方シール袋を作製し、
各袋に精製水500mlを充填した後、121℃の温度
条件下で60秒間の熱殺菌処理を施し、その後、高さ
1.2mより自由落下させた。各実施例及び比較例につ
き、各5枚の三方シール袋を作製し(n=5)、各袋を
それぞれ連続10回自由落下させ、その結果を平均し
た。
【0028】
【表1】 * 無水マレイン酸変性ポリエチレン(三井石油化学工
業(株)製)
【0029】なお、実施例1、2のフィルムの場合、上
記溶出物試験における加熱処理によってもフィルムの収
縮は少なく、層間剥離も認められなかったが、比較例1
のフィルムの場合、フィルムの収縮は少なかったが、接
着性樹脂層からのウキが認められ、比較例2のフィルム
には収縮が認められた。
【0030】上記の結果によれば、本発明の医療用液体
容器用プラスチックフィルムは透明度に優れるのみなら
ず、熱殺菌処理によるフィルムの収縮や層間剥離が認め
られない上に低分子量成分の溶出もほとんどなく、その
フィルム強度にも優れているので医療用液体容器の形成
材料として特に有用であることが認められる。それに対
して、HDPE単一フィルムをシーラント層としたプラ
スチックフィルム(比較例1)は、熱殺菌処理による溶
出物はほとんどないが、落下衝撃強度が著しく劣ってお
り、医療用液体容器用プラスチックフィルムとして使用
した場合、実用上の物流強度に耐えることができない。
一方、1種のみのHDPEとLLDPEとの混合フィル
ムをシーラント層としたプラスチックフィルム(比較例
2)の場合、落下衝撃強度には優れるが、熱殺菌処理に
よる溶出物が規格値を超えてしまい、比較例1、2のフ
ィルムはいずれも内容液充填後に熱殺菌処理を施す医療
用液体容器の形成材料としては不適格であることが認め
られる。
【0031】
【発明の効果】本発明の医療用液体容器用プラスチック
フィルムによれば、HDPEとLLDPEとの混合割合
の異なる混合フィルム層を接着剤を介在させることなく
直接積層し、透明フィルム層の両面に接着性樹脂層を介
在させて上記シーラント層を積層するので、これらの特
性を兼備した医療用液体容器用プラスチックフィルムを
得ることができるのみならず、接着剤を用いることなく
製膜したものであってもその層間の接着強度が強く、1
00〜125℃の加熱によってもフィルムの収縮が少な
く、層間剥離も認められず、接着剤の溶出のおそれがな
いのみならず、また、低分子量成分の溶出もほとんどな
いので、内容液を充填してから熱殺菌処理を施す輸液又
は薬液用バッグ等の液体容器の形成材料として有用であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の医療用液体容器用プラスチックフィル
ムの構成例を説明する縦断面図である。
【符号の説明】
1 医療用液体容器用プラスチックフィルム 2,3 シーラント層 2a,3a 第一フィルム層 2b,3b 第二フィルム層 4 接着性樹脂層 5 透明フィルム層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 B65D 65/40 B65D 65/40 A C08L 23/06 LCD C08L 23/06 LCD (72)発明者 永田 政令 東京都中央区日本橋馬喰町1丁目4番16号 藤森工業株式会社内

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 密度0.941g/cm3以上の高密度
    ポリエチレンと密度0.900〜0.940g/cm3
    の直鎖状低密度ポリエチレンとを混合してなり、これら
    の混合比率が異なる少なくとも2種類の混合フィルム層
    を接着剤を介在させることなく直接積層したシーラント
    層をその高密度ポリエチレンの混合比率が低い方の混合
    フィルム層側が透明フィルム層に接着されるように透明
    フィルム層の上下面にそれぞれ接着性樹脂層を介在させ
    て積層してなることを特徴とする医療用液体容器用プラ
    スチックフィルム。
  2. 【請求項2】 上記シーラント層が、高密度ポリエチレ
    ンと直鎖状低密度ポリエチレンとの混合比率が10/0
    〜8/2である第一フィルム層と、高密度ポリエチレン
    と直鎖状低密度ポリエチレンとの混合比率が5/5〜1
    /9である第二フィルム層とを積層してなる請求項1記
    載の医療用液体容器用プラスチックフィルム。
  3. 【請求項3】 上記第一フィルム層と第二フィルム層と
    のフィルム厚さ比率が、1/9〜4/6である請求項2
    記載の医療用液体容器用プラスチックフィルム。
  4. 【請求項4】 透明フィルム層がポリアミド、ポリカー
    ボネート又はポリエステルにより形成されてなる請求項
    1、2又は3記載の医療用液体容器用プラスチックフィ
    ルム。
  5. 【請求項5】 上記接着性樹脂層が無水マレイン酸変性
    ポリオレフィンにより形成されてなる請求項1乃至4の
    いずれか1項記載の医療用液体容器用プラスチックフィ
    ルム。
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