JPH09306053A - 光磁気記録媒体 - Google Patents

光磁気記録媒体

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Publication number
JPH09306053A
JPH09306053A JP11770696A JP11770696A JPH09306053A JP H09306053 A JPH09306053 A JP H09306053A JP 11770696 A JP11770696 A JP 11770696A JP 11770696 A JP11770696 A JP 11770696A JP H09306053 A JPH09306053 A JP H09306053A
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JP
Japan
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coercive force
recording layer
magneto
magnetic recording
thin film
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Application number
JP11770696A
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English (en)
Inventor
Toshiyuki Suenaga
敏幸 末永
Mikio Yoshida
美喜男 吉田
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Sony Corp
Original Assignee
Sony Corp
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Publication date
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Publication of JPH09306053A publication Critical patent/JPH09306053A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ジッタ量が小さく抑えられ、それと同時に磁
場中での繰り返し再生に対して信号耐久性が確保でき、
MLM方式に適用した場合に良好な記録再生特性が得ら
れる光磁気記録媒体を実現する。 【解決手段】 光磁気記録媒体において、垂直磁気記録
層のキュリー点温度及び保磁力Hcの温度依存性を規制
する。また、垂直磁気記録層の組成及び保磁力Hcの範
囲を規制する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、情報信号がマーク
長変調方式によって記録再生される光磁気記録媒体に関
し、特に信号特性及び繰り返し再生に対する信号耐久性
の改善に関するものである。
【0002】
【従来の技術】書き換え可能な記録メディアとして、希
土類−遷移金属系のアモルファス合金薄膜を記録層とす
る光磁気記録媒体の開発が進められており、その一例と
して耐食性向上のために第4元素を添加した4元合金、
例えばTb(Gd,Dy)FeCoCr(Ti,Al)
合金薄膜を単一記録層とする光磁気ディスクが既に実用
化されている。
【0003】この光磁気ディスクでは、記録層を部分的
にキュリー点温度または温度補償点を越えて昇温し、こ
の部分の保磁力を消滅させて外部から印加される記録磁
界の方向に磁化の向きを反転することによって記録ピッ
ト(磁化反転ピット)が形成される。このような光磁気
ディスクは、記録再生特性及びデータ管理システムとし
ての長期信頼性(保存や繰り返し使用)における当該光
磁気ディスクの技術的優秀さ、実用性、生産性の高さ
は、よく知られるところである。
【0004】ところで、この光磁気記録媒体におけるデ
ジタル信号の変調方式としては、主にマーク間変調方式
(以下、MPM方式と称する。)が採用されている。し
かしながら、近年、光磁気記録媒体の大容量化が進むに
伴って、このMPM方式に比べて理論的に約1.8倍の
記録密度を達成することが可能な、マーク長変調方式
(以下、MLM方式と称する。)の採用が検討されてい
る。
【0005】なお、このMPM方式、MLM方式では、
それぞれ図13に示すようなパターンで記録マークを形
成する。
【0006】すなわち、MPM方式では、元信号のデー
タ1に対応した位置に記録マークを形成する。このMP
M方式で記録された記録情報をデジタルデータとして再
生するには、記録マークの部分をデータ1と変換し、記
録マークが形成されていないスペースをデータ0と変換
する。
【0007】一方、MLM方式では、元信号におけるデ
ータの反転位置、すなわちデータ0からデータ1に変わ
った位置、あるいはデータ1からデータ0に変わった位
置が、マークのエッジ位置と一致するように、記録マー
クを形成する。このMLM方式で記録された記録情報を
デジタルデータとして再生するには、記録マークのエッ
ジ位置をデータ1と変換し、エッジ位置とエッジ位置の
間をデータ0と変換する。
【0008】ところで、MLM方式では、記録されたマ
ーク及びこれらマーク間のスペースの時間的長さを情報
として取り扱うため、記録再生信号の元信号との差(い
わゆるジッタ量)が記録再生特性を決める重要な因子と
なる。
【0009】このジッタ量を抑える対策としては、特開
平6−07401号公報にも記載されるように、レーザ
光の発光方式の改善等、システム側について各種の検討
がなされているが、当然、記録媒体に対しても要求され
る諸特性は厳しくなり、それに対応した検討が必要とな
る。
【0010】ここで、記録媒体の場合、特に媒体内での
磁気的特性の不均一性がジッタを生じさる原因になり、
ジッタ量を抑えるには記録層の成膜条件が非常に重要に
なる。
【0011】例えば、これまでMPM方式に適用される
光磁気ディスクの記録層としては、特開昭58−737
46号公報にも示されているように、フェリ磁性体であ
るTb−Fe−Co合金薄膜が使用されている。このT
b−Fe−Co合金薄膜は、希土類元素であるTbと、
遷移金属合金であるFe−Co合金を各々独立のターゲ
ットとして用いる2元同時スパッタリング、あるいは近
年ではTbFeCo三元系合金ターゲットを用いるスパ
ッタリングによって成膜されている。
【0012】しかしながら、このうち、2元同時スパッ
タリングの場合には、各ターゲットのエロージョン(浸
食)に起因して成膜速度の変動が見られ、スパッタ膜の
面内で特にTb含有量が不均一になってしまう。また、
三元系合金ターゲットを用いるスパッタリングにおいて
は、各元素で質量が異なることから、スパッタ粒子が異
なる広がり分布を示し、この場合にも重希土類元素であ
るTbの組成が膜面内で若干変動してしまう。
【0013】ここで、Tb−Fe−Co合金薄膜につい
て、遷移金属であるFeCo同士の比を一定とし、これ
らに対するTbの比を変化させた場合の、室温での保磁
力変化を図14に示す。なお、保磁力は、合金薄膜の垂
直磁気異方性の強さを示し、磁化反転ピットの形状や耐
久性に関わるものである。
【0014】図14に示すように、Tb−Fe−Co合
金薄膜の保磁力はTbの含有量に依存して変化する。こ
の保磁力の変化は、保磁力が8kOeを越えた範囲で極
めて急峻になり、補償組成で発散する。
【0015】上述の如くTbの含有量は変動し易いが、
特にこの保磁力の変化が急峻になる8kOeを越えた範
囲でTbの含有量が変動すると、それが1原子%程度と
極わずかな変動であっても、膜面内で保磁力の大きな変
動につながる。図15〜図17に、保磁力が8kOeを
越えているサンプルディスクの半径方向における保磁力
分布を示すが、この図に示す通りである。なお、図に示
すHaveは、膜面における保磁力Hcの平均値であり、
ΔHcは、(Hmax−Hmin)/Have(但し、Hm axは保
磁力の最大値、Hminは保磁力Hcの最小値、Haveは保
磁力Hcの平均値である)によって求められ、膜面内で
の保磁力Hcの変動量である。
【0016】このような膜面内での保磁力Hcの変動
は、磁化反転ピットのマーク長を不均一にし、ジッタ量
を増加させる。したがって、ジッタ量を低減させるに
は、Tbの組成領域を保磁力Hcが8kOe以下となる
ような範囲に設定しなければならない。
【0017】ところが、記録層の室温での保磁力Hc
は、記録に際する垂直磁化反転ドメインの大きさや磁化
反転ピットの耐久性にも関わる。このため、高密度化を
図るべく磁化反転ピットを小径化したり、安定化するた
めには、保磁力がある程度大きいことが望ましい。特
に、外部固定磁石下で繰り返し再生を行う場合、記録過
程で生じる温度程ではないが再生用のレーザ光によって
記録層が温度上昇し、この温度上昇によって記録層の保
磁力が低下する。このとき、室温での保磁力が小さい記
録層では、不要な部分に磁化反転が生じる可能性があ
る。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】このように、Tb−F
e−Co合金薄膜を記録層とする光磁気ディスクでは、
ジッタ量の低減を図ろうとすると、磁化反転ピットの小
径化及び信号耐久性の確保が困難なるといった問題があ
り、MLM方式に対応するものとするにはさらなる改良
が必要である。
【0019】そこで、本発明はこのような従来の実情に
鑑みて提案されたものであり、ジッタ量が小さく抑えら
れるとともに、磁化反転ピットの小径化を図った場合で
も信号耐久性が十分に確保される光磁気記録媒体を提供
することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】上述の目的を達成するた
めに、本発明の光磁気記録媒体は、透明基板上に、希土
類−遷移金属非晶質合金薄膜よりなる垂直磁気記録層が
形成されてなり、情報信号がマーク長変調方式により記
録再生される光磁気記録媒体であって、上記垂直磁気記
録層は、レーザ光を最適記録パワーで照射することによ
って生じる温度以下にキュリー点温度を有し、且つ、膜
面に垂直方向の保磁力の温度依存性を示す曲線の勾配
が、キュリー点温度以下の領域で緩やかに変化すること
を特徴とするものである。
【0021】また、上記垂直磁気記録層は、Coが7〜
12原子%のTb−Fe−Co非晶質合金薄膜よりな
り、室温での保磁力Hcが膜面の略全領域で8〜20k
Oeであることを特徴とするものである。
【0022】さらに、上記垂直磁気記録層は、Crが2
〜4原子%、Coが7〜14原子%のTb−Fe−Co
−Cr非晶質合金薄膜よりなり、室温での保磁力Hcが
膜面の略全領域で8〜20kOeであることを特徴とす
るものである。
【0023】保磁力Hcの温度依存性が上述の条件を満
たす垂直磁気記録層では、膜面内で磁気特性が変動して
いても、レーザスポット内で磁化反転ピットが十分に広
がって形成されるので、記録マーク長が均一になり、ジ
ッタ量が低く抑えられる。また、成膜工程でのマージン
が大きくなるので、大量生産に有利である。
【0024】そして、特に垂直磁気記録層が、Co7〜
12原子%のTb−Fe−Co非晶質合金薄膜あるいは
Cr2〜4原子%、Co7〜14原子%のTb−Fe−
Co−Cr非晶質合金薄膜であり、さらに保磁力Hcが
8.0〜20.0kOeとなされていると、磁場中での
繰り返し再生に対して高い信号耐久性が得られる。ま
た、MLM方式で用いられる記録磁界や記録用レーザ
光、消去用レーザ光に対して十分な感度が得られ、出力
の高い磁化反転ピットを繰り返し形成することができ
る。
【0025】
【発明の実施の形態】本発明の具体的な実施の形態につ
いて説明する。
【0026】本発明の光磁気記録媒体は、透明基板上
に、希土類−遷移金属非晶質合金薄膜よりなる垂直磁気
記録層が形成されて構成され、この垂直磁気記録層にマ
ーク長変調方式(MLM方式)によって磁化反転ピット
が形成される。
【0027】垂直磁気記録層に磁化反転ピットを形成す
るには、当該垂直磁気記録層に対して外部磁場を印加し
ながらレーザ光を照射し、局所的に記録層の温度をキュ
リー点温度近傍にまで上昇させる。温度が上昇した部分
では保磁力Hcが減少し、外部磁場よりも小さくなる。
この保磁力Hcが外部磁場よりも小さくなった部分は、
レーザ光の移動による冷却過程で外部磁場の方向に磁化
され、磁化反転ピットが形成されることになる。なお、
参考のため、図1に、室温での保磁力が異なる3種類の
垂直磁気記録層(TbxFe95-xCo5合金薄膜)につい
て、保磁力Hcの温度依存性を併せて示す。
【0028】ここで、例えば垂直磁気記録層であるTb
−Fe−Co合金薄膜を2層の窒化シリコン誘電体膜で
挟み込み、その上にAl反射層を形成した4層構成の記
録部の場合、熱解析の数値計算を行うと、図2に示すよ
うに、レーザスポットLsの温度プロファイルは正規型
の温度分布となる。このレーザスポットのうちキュリー
温度を越えるのは正規分布の両側を除いたLc領域であ
り、このLc領域は外部磁場によって磁化反転され、磁
化反転ピットとなる。
【0029】一方、キュリー温度を越えていないLb1
領域及びLb2領域においても、保磁力Hcの温度特性
によっては、つまり保磁力Hcがその温度で外部磁場よ
りも低くなっていれば、磁化反転領域あるいは反転磁壁
として再生出力に寄与する。
【0030】このとき、磁壁の狭いシャープな形状のピ
ットを形成するためには、このLb1領域及びLb2領域
が狭い方が良く、そのためには、図1に示す□の曲線の
ように、保磁力Hcの温度依存性を示す曲線が急峻であ
る方が有利であると言える。
【0031】しかし、実際の磁気記録層では、スパッタ
等の真空成膜時の条件変動、膜厚分布によって、組成、
密度及び非晶質構造等が巨視的あるいは微視的に変動
し、このため磁気特性が膜面内で不均一になっている。
特に、Tb−Fe−Co合金薄膜では、Tbの組成ずれ
によって保磁力Hcが顕著に変動している。このような
磁気特性の変動が膜面内に存在する場合に、保磁力Hc
の温度依存性を示す曲線が急峻であると、Lb1領域及
びLb2領域の幅が膜面内の位置によって大きく変動し
てしまい、記録マーク長が不均一になる。したがって、
実際の磁気記録層では、ピットの形状をシャープにする
よりはむしろ、図1に示す○の曲線のように、保磁力の
温度依存性を示す曲線を緩やかなものとし、Lc領域と
ともにLb1領域,Lb2領域が確実に磁化反転ドメイン
となるようにし、記録マーク長を均一にする方が重要で
ある。
【0032】本発明の光磁気記録媒体では、このような
点から、垂直磁気記録層として、レーザ光を最適記録パ
ワーで照射したときに生じる温度以下にキュリー点温度
を有するとともに、保磁力Hcの温度依存性を示す曲線
の勾配がキュリー点温度以下の領域で緩やかであるとい
った温度特性のものを使用することとする。
【0033】なお、保磁力Hcの温度依存性を示す曲線
の勾配の指標としては、次式で示すような、垂直磁気記
録層のキュリー温度Tcと、当該垂直磁気記録層の保磁
力Hcが外部磁場より小さくなるときの温度(以下、有
効温度と称する)Teffとの差ΔTeffを用いるこ
とができる。
【0034】ΔTeff=Tc−Teff このΔTeffは磁化反転ピットが形成し得る温度幅で
あり、このΔTeffが大きいもの程、保磁力Hcの温
度依存性を示す曲線の勾配が緩やかであることを意味す
る。なお、このΔTeffは、ジッタ量を十分に低める
点から、ΔTeff>0.1・Tcなる条件を満たして
いるのが望ましい。
【0035】この光磁気記録媒体において垂直磁気記録
層としては、希土類−遷移金属非晶質合金薄膜が用いら
れる。この希土類−遷移金属非晶質合金薄膜としては、
Tb−Fe−Co合金薄膜あるいはTb−Fe−Co−
Cr合金薄膜等が挙げられる。
【0036】このうちTb−Fe−Co合金薄膜では、
Coの含有量が7〜12原子%であるのが望ましい。
【0037】Tb−Fe−Co合金薄膜において、Co
の含有量は保磁力Hcの温度依存性、キュリー点温度及
び自発磁化に大きく影響する。すなわち、保磁力Hcの
温度依存性を示す曲線の勾配は、Coの含有量が大きい
程緩やかになり、これにより、膜面内での磁気特性の不
均一さによるジッタ量の増大が抑えられるようになる。
また、自発磁化は、Coの含有量が大きくなる程増大
し、これによってカー回転角が増大する。したがって、
ジッタ量を抑えるとともに信号出力を増大させるために
は、Coの含有量は大きい方が望ましい。しかし、キュ
リー点温度は、Coの含有量が大きくなる程高くなる。
磁気記録層のキュリー温度Tcが高くなるということ
は、磁化反転領域を形成するのにそれだけ大きなレーザ
ーパワーを要することを意味しており、記録感度、消去
感度が低くなる方向に働く。したがって、記録感度や消
去感度を高めるためには、Coの含有量は小さい方が有
利である。TbFeCo合金薄膜のCo含有量7〜12
原子%はこれらの兼ね合いから設定されたものである。
Co含有量が7原子%未満と少ない場合にはジッタ量が
増大し、信号出力が低くなる。また、Co含有量が12
原子%を越える場合にはMLM方式で要求される記録感
度及び消去感度が得られなくなる。なお、記録感度及び
消去感度を十分に得ながら信号耐久性を確保するには、
記録層のキュリー温度Tcは187〜200℃とされて
いるのが望ましい。
【0038】次に、Tb−Fe−Co−Cr合金薄膜
は、Tb−Fe−Co合金薄膜にCrを添加することに
よって耐蝕性を付与したものであり、この合金薄膜では
Coの含有量が7〜14原子%、Crの含有量が2〜4
原子%であるのが望ましい。
【0039】このうち、Coの含有量は、Tb−Fe−
Co合金薄膜の場合と同様の点から設定されるものであ
り、Co含有量が7原子%未満と少ない場合にはジッタ
量が増大し、信号出力が低くなる。また、Co含有量が
14原子%を越える場合にはMLM方式で要求される記
録感度及び消去感度が得られなくなる。
【0040】また、Crの含有量は、耐蝕性と磁気特性
の兼ね合いから設定される。このCrが、記録層に全く
含まれていないと記録層に腐食が生じ易くなり、耐久性
が不足する。但し、Crの含有量があまり多すぎると、
記録層の磁気特性を損ねるので、4原子%以下とする必
要がある。
【0041】なお、これらの垂直磁気記録層は、室温で
の保磁力Hcが8〜20kOeであるのが好ましい。こ
れは次の理由からである。
【0042】まず、磁場中での繰り返し再生時の信号劣
化を防ぐためには、記録層の保磁力Hcは8kOe以上
であることが必要である。記録層の保磁力Hcが印加さ
れる外部磁場に比べて小さ過ぎると、垂直磁化膜として
の異方性を保持できなくなる。このため、磁場中で多数
回繰り返し再生されることによって記録マークに磁気的
な変形が生ずる。一方、十分な磁界感度を得るには、記
録層の保磁力Hcは20kOe以下であることが必要で
ある。MLM方式での印加磁場の規格下限値は200O
eであり、このような大きさの印加磁場によって十分な
再生出力を示すピットを形成するためには記録層の保磁
力Hcは20kOe以下となされていなければならな
い。また、この保磁力HcはTbの含有量によって決ま
るが、保磁力Hcが20kOeを上回る領域では、Tb
含有量による保磁力Hcの変化が非常に大きくなり、成
膜工程で生じたTbの組成変動が膜面内での保磁力Hc
を大きく変動させることになる。ここで、保磁力の温度
依存性の曲線が緩やかであると、保磁力Hcが膜面内で
多少変動しても均一な記録マーク長が得られるが、この
変動が余り大きくなると、やはりジッタ量の増大につな
がる。したがって、保磁力Hcは20kOe以下である
ことが望ましい。なお、膜面内での保磁力Hcの変動量
ΔHcを、ΔHc=(Hmax−Hmin)/Have(但し、
maxは保磁力Hcの最大値、Hminは保磁力Hcの最小
値、Haveは保磁力Hcの平均値である)で表した場
合、このΔHcが0.25以下となっているのが望まし
い。
【0043】以上が本発明の光磁気記録媒体の基本的な
構成であるが、本発明の光磁気記録媒体においては、多
重反射によるカー回転角の増大(カー効果エンハンスメ
ント)等を目的として、誘電体層や反射層を併用するよ
うにしても良い。
【0044】上記誘電体層としては、酸化物や窒化物等
が使用可能であるが、誘電体中の酸素が記録層に悪影響
を及ぼす虞れがあることから窒化物がより好ましく、酸
素および水分を透過せず且つ使用レーザ光を十分に透過
し得る物質として窒化珪素あるいは窒化アルミニウム等
が好適である。
【0045】また、反射層は、誘電体層との境界でレー
ザ光を70%以上反射する高反射率の膜により構成する
ことが好ましく、非磁性金属の蒸着膜が好適である。ま
た、この反射層は、熱的良導体であることが望ましく、
入手の容易さや成膜の容易さ等を考慮すると、アルミニ
ウムが適している。
【0046】
【実施例】以下、本発明の実施例について実験結果に基
づいて説明する。
【0047】次のようにして、磁気記録層の合金組成が
異なる各種光磁気ディスクを作成した。
【0048】図3に示すように、直径130mmのポリ
カーボネート基板1上に、第1のSi−N誘電体層2、
希土類−遷移金属合金薄膜よりなる磁気記録層3、第2
のSi−N誘電体層4、Al反射層5を順次形成した。
【0049】なお、第1のSi−N誘電体層2、第2の
Si−N誘電体層4は、Siをターゲットとし、N2
スを反応ガスとして使用する反応性スパッタリングによ
って成膜し、Al反射層5は直流スパッタリングによっ
て成膜した。
【0050】また、希土類−遷移金属合金薄膜よりなる
磁気記録層は、希土類ターゲットと遷移金属合金ターゲ
ットを用いる2元同時スパッタリングによって成膜し
た。この2元同時スパッタリング装置を図4に示す。
【0051】このスパッタリング装置は、真空槽11内
に、Tbよりなる希土類ターゲット12と、Fe−Co
合金あるいはFe−Co−Cr合金よりなる遷移金属合
金ターゲット13が互いに離間して配置されるととも
に、基板17が装着される基板装着用トレイ14がその
頭部に回転自在に取り付けられて構成されている。希土
類ターゲット12と遷移金属合金ターゲット13は、そ
れぞれ外部の直流電圧電源15,16と接続されてお
り、独立に電圧が印加できるようになっている。
【0052】このようなスパッタリング装置では、上記
基板装着用トレイ14に、スパッタ膜を成膜すべき基板
17が装着される。この基板装着用トレイ14に装着さ
れた基板17は、このトレイ14の回転によって希土類
ターゲット12と遷移金属合金ターゲット13に対して
交互に対向する。この対向している間にターゲット1
2,13から飛翔したスパッタ粒子が基板17上に被
着、堆積し、希土類−遷移金属合金のスパッタ膜が成膜
されることになる。
【0053】なお、成膜される磁気記録層の組成は、T
bの成膜堆積速度を固定し、遷移金属合金ターゲットへ
の投入電力、すなわち成膜堆積速度を変化させることに
よって制御した。したがって、この場合には、Fe,C
o,Cr同士の比率は変化せず、Fe−Co合金あるい
はFe−Co−Cr合金に対するTbの組成比が制御さ
れ、保磁力Hcが調整されることになる。
【0054】また、磁気記録層の厚さは200オングス
トロームと一定にし、磁性層の組成変化による光学定数
のずれを第1のSi−N誘電体膜の膜厚によって補正
し、各サンプルディスク同士で反射率が略同じになるよ
うにした。
【0055】また、作成した光磁気ディスクのディスク
構造を以下に示す。
【0056】ディスク構造 トラックピッチ:1.15μm ランド幅:0.77μm グルーブ深さ:λ/8(λ=680nm) このようにして作成されたサンプルディスクに対してM
LM方式で記録を行った。記録パターンは、図5に示す
ように、2Tマーク−6Tスペース−4Tマーク−6T
スペースのパターンであり、このパターンを記録エリア
の最外周(ディスク中心から59.5mm)に線速9.
6m/秒で記録した。ただし、Tはチャンネルクロック
であり、ここではT=18nsecである。また、外部
印加磁界は300Oeに設定した。レーザ光源は、波長
が680nm、レンズの開口数NAが0.55であり、
このレーザーパワは先の記録パターンにおいて6Tスペ
ースがチャンネルクロックTの6倍となるように、ディ
スク毎に調整した。なお、このような記録パワーを最適
記録パワーPoと称する。
【0057】そして、この記録パターンが形成されたサ
ンプルディスクについて、MLM方式で規定される基本
フォーマットを基準にして特性の検討を行った。なお、
この基本フォーマットを表1にまとめて示す。
【0058】
【表1】
【0059】なお、以下の実験において、磁気記録層の
組成は、ICP(誘導結合高周波プラズマ分光分析)に
よる定量分析によって調べた。また、保磁力Hcは、光
学式カーループトレイサーを用い、ディスクのデータ領
域(ディスク中心から30〜60mm)内で、半径方向
で10mm毎に、周方向で角度30゜毎、すなわち1周
12点について測定した平均値である。
【0060】信号耐久性の検討 まず、希土類ターゲットとしてTbを、遷移金属合金タ
ーゲットとしてFe87Co8Cr5ターゲットを用いてサ
ンプルディスクを作製し、このサンプルディスクについ
て磁場中再生での信号耐久性を評価した。
【0061】評価は、磁場中、2.5mWのレーザパワ
ーでスチル再生を繰り返し行い、C/N比が3dB減衰
するまでの再生回数を調べることで行った。サンプルデ
ィスクの保磁力Hcと3dB減衰までのスチル再生回数
の関係を図6に示す。なお、MLM方式で要求される3
dB減衰までのスチル再生回数は、1.5mWのレーザ
ーパワーで109回以上ある。この場合にはレーザパワ
ー2.5mWの加速試験であるため、スチル再生回数が
106回以上であれば規格範囲内であると見なされる。
【0062】図6からわかるように、3dB減衰までの
再生回数はサンプルディスクの保磁力Hcが大きくなる
程多数回になり、保磁力Hcが小さい範囲では十分な信
号耐久性が得られなくなる。保磁力Hcが小さい範囲で
信号耐久性が低くなるのは、印加される外部磁場に比べ
てディスクの保磁力Hcが小さ過ぎる場合、磁場中で多
数回繰り返し再生されることによって記録マークに磁気
的な変形が生ずるからである。
【0063】ここで、MLM方式で要求される3dB減
衰までのスチル再生回数は、2.5mWのレーザーパワ
ーで106回以上あり、図6を見ると、スチル再生回数
が106回以上になるのは保磁力Hcが8kOe以上の
場合である。
【0064】このことから、磁場中再生での信号耐久性
を確保するには、ディスクの保磁力Hcは8kOe以上
になされている必要があることがわかった。
【0065】ジッタ量の検討 次に、希土類ターゲットとしてTbを、遷移金属合金タ
ーゲットとしてCo含有量の異なるFe−Co合金ター
ゲットまたはFe−Co−Cr合金ターゲットを用い、
TbxFe100-x-yCoy合金薄膜、TbxFe96-x-yCo
yCr4合金薄膜を磁気記録層とするサンプルディスクを
作製した。そして、このサンプルディスクについてジッ
タ量を測定し、保磁力Hcとジッタ量の関係を調べた。
その結果を図7、図8に示す。なお、ここで言うジッタ
量とは、4Tマークの再生信号の、タイムインターバル
アナライザーで測定した時間的偏差σを、チャンネルク
ロックTで除した値[σ/T(但し、T=18nse
c)]である。なお、MLM方式でバイトエラーレート
を5×10-5以下に抑えるためには、システムのマージ
ンも考慮してこのジッタ量が6%以下に抑えられている
必要がある。
【0066】まず、図7からわかるように、TbxFe
100-x-yCoy合金薄膜を磁気記録層とするサンプルディ
スクでは、用いた遷移金属合金ターゲットのCo含有量
に関わらず、ジッタ量は保磁力Hcの増大に伴って大き
な値になっていく。しかし、このジッタ量の増加の割合
は遷移金属合金ターゲットのCo含有量によって大きく
異なる。すなわち、遷移金属合金ターゲットのCo含有
量が8.0原子%である場合には、このジッタ量の増加
が顕著である。一方、遷移金属合金ターゲットのCo含
有量が12.0原子%以上である場合では、ジッタ量の
増加の割合は非常に小さい。
【0067】ここで、先の実験結果から示されるよう
に、磁場中再生での信号耐久性を確保するには、ディス
クの保磁力Hcは8kOe以上になっていなければなら
ない。
【0068】この点から見ると、遷移金属合金ターゲッ
トのCo含有量が8.0原子%のサンプルディスクで
は、保磁力Hcが8kOe以上の範囲では、ジッタ量が
MLM方式での上限値である6%を越えてしまい、信号
耐久性の確保とジッタ量の低減を両立させることができ
ない。
【0069】一方、遷移金属合金ターゲットのCo含有
量が12.0原子%以上のサンプルディスクでは、保磁
力Hcが8kOe以上となる範囲においてジッタ量が6
%以下に抑えられている。
【0070】このことから、Tb−Fe−Co合金薄膜
よりなる磁気記録層では、信号耐久性を確保するととも
にジッタ量を小さく抑えるには、Co含有量を規制する
必要があることがわかった。
【0071】次に、図8を見ると、この図8はTbx
96-x-yCoyCr4合金薄膜を磁気記録層とするサンプ
ルディスクの特性図であるが、この場合にも図7と同様
の傾向が見受けられる。すなわち、ジッタ量は、遷移金
属合金ターゲットのCo含有量がいずれの値であっても
保磁力Hcの増大に伴って大きな値になっていく。しか
し、このジッタ量の増加の割合は、遷移金属合金ターゲ
ットのCo含有量によって大きく異なる。
【0072】ここで、上述の如く磁場中再生での信号耐
久性を確保するには、ディスクの保磁力Hcは8kOe
以上になっていなければならない。この点から見ると、
用いた遷移金属合金ターゲットのCo含有量が8.0原
子%または12.0原子%のサンプルディスクでは、保
磁力Hcが8kOe以上の範囲では、ジッタ量がMLM
方式での上限値である6%を越えてしまう。このため、
信号耐久性の確保とジッタ量の低減を両立させることが
できない。
【0073】一方、遷移金属合金ターゲットのCo含有
量が14.0原子%以上のサンプルディスクでは、保磁
力Hcが8kOe以上となる範囲においてジッタ量が6
%以下に抑えられている。
【0074】このことから、Tb−Fe−Co−Cr合
金薄膜よりなる磁気記録層においても、信号耐久性を確
保するとともにジッタ量を小さく抑えるには、Co含有
量を規制する必要があることがわかった。
【0075】また、さらに、磁気記録層の実際の組成と
ジッタ量の関係を検討するために、これらのサンプルデ
ィスクのうち、保磁力Hcが10kOeのもの(Tb含
有量x=約20原子%)を選択し、これらについて磁気
記録層の組成をICP分析にて測定した。表2、表3
に、磁気記録層の組成とともに、保磁力Hc,キュリー
点温度Tc、ジッタ量、C/N比を示す。なお、表2は
Tb−Fe−Co合金薄膜の測定結果であり、表3はT
b−Fe−Co−Cr合金薄膜の測定結果である。ま
た、磁気記録層の組成においてはCo,Tbを除いた残
部、またはCo,Tb,Crを除いた残部がFeの含有
量になる。C/N比は、周波数14.1MHzの2Tパ
ルス幅信号(T=10nsec,2−7マーク長変調方
式の最短マーク長:0.48μm)を記録し、この単一
信号を再生することで求めたものである。
【0076】
【表2】
【0077】
【表3】
【0078】表2,表3からわかるように、ディスクの
ジッタ量は磁気記録層のCo組成比が大きくなるのに伴
って減少する。そして、ジッタ量が6%以下に抑えられ
るのは、Tb−Fe−Co合金薄膜、Tb−Fe−Co
−Cr合金薄膜のいずれにおいてもCo含有量が7原子
%以上の場合である。
【0079】以上のことから、磁場中再生での信号耐久
正を確保するとともにジッタ量を小さく抑えるために
は、磁気記録層のCo含有量を7原子%以上とする必要
があることがわかった。
【0080】なお、先に示した図7及び図8を見ると、
ジッタ量の増加の割合が小さい系においても、保磁力H
cが20kOeよりも大きな値になるとジッタ量が6%
を越えるようになるのがわかる。また、保磁力Hcが2
0kOeを越える場合、磁界感度が不足し、形成される
記録マークの再生出力が低くなる。この点と信号耐久性
との兼ね合いを考慮して、ディスクの保磁力Hcは8〜
20kOeとなされているのは望ましい。
【0081】保磁力Hcの温度依存性の検討 続いて、表1に示すサンプルディスクと同じ構成の記録
部をガラス基板上に形成することでサンプルディスクを
作製し、保磁力Hcの温度依存性を調べた。その結果を
図9に示す。
【0082】また、比較のため、希土類ターゲットとし
てTbを、遷移金属合金ターゲットとしてCo含有量が
6原子%のFe−Co合金ターゲットを用い、Co含有
量が約5原子%のTb−Fe−Co合金薄膜を磁気記録
層とするサンプルディスクを作製した。そして、このサ
ンプルディスクについても、同様にして保磁力Hcの温
度依存性を調べた。その結果を図10に示す。なお、こ
のサンプルディスクで形成した合金薄膜の組成,保磁力
Hc,キュリー点温度Tc、ジッタ量、C/N比を表4
に示す。
【0083】
【表4】
【0084】MLM方式では200〜500Oeの外部
磁界が印加されることから、合金薄膜には、保磁力Hc
が200Oe程度にまで減少したところで磁化反転が生
じる。
【0085】ここで、まず図10を見ると、磁気記録層
のCo含有量が約5原子%のディスクでは、特に室温で
の保磁力Hcが8kOe以上のものにおいて、保磁力H
cの温度依存性を示す曲線の勾配が急峻になっており、
保磁力Hcが200Oe以下となる温度幅、すなわち磁
化反転が生じ得る温度幅ΔTeffが狭いことがわか
る。
【0086】次に、図9を見ると、磁気記録層のCo含
有量が6.5原子%のサンプルディスク1では、やはり
保磁力Hcの温度依存性を示す曲線の勾配が急峻であ
る。そして、ΔTeffの温度幅が狭い。これに対し
て、磁気記録層のCo含有量が7原子%以上のサンプル
ディスク2〜サンプルディスク5、すなわち先の検討で
ジッタ量が比較的小さく抑えられていたサンプルディス
クでは、この保磁力Hcの温度依存性を示す曲線の勾配
が緩やかであり、ΔTeffが広い温度幅に亘ってい
る。
【0087】このことから、ジッタ量と保磁力Hcの温
度依存性とは相関関係があり、保磁力Hcの温度依存性
を示す曲線の勾配が緩やかで、ΔTeffの温度域が広
い場合程、ジッタ量が低減できることが示唆される。な
お、これは、ΔTeffが大きい磁性薄膜は、磁気記録
層の膜面内で磁気特性の変動があっても、レーザスポッ
ト内で磁化反転ピットが十分に広がり、記録マーク長が
均一になるからと考えられる。
【0088】C/N比の検討 次に、表2及び表3に示したサンプルディスク及び表4
の保磁力Hcが9.5のサンプルディスク(サンプルデ
ィスク13)について、Co含有量を横軸にしてC/N
比をプロットしたものを図11に示す。
【0089】この図11からわかるように、C/N比
は、磁気記録層のCo含有量が大きくなる程向上する。
これは、磁気記録層では、Co含有量が大きくなると、
自発磁化が大きくなり、それに比例してカー回転角が増
大するからである。
【0090】記録感度及び消去感度の検討 ここでは、TbxFe100-x-yCoy合金薄膜を磁気記録
層とするサンプルディスクについて、最適記録パワー及
び消去パワーを測定し、これらの値と磁気記録層のCo
含有量との関係を調べた。
【0091】なお、最適記録パワーPoは、2Tマーク
−6Tスペース−4Tマーク−6Tスペース(T=18
nsec)のパターンで記録を行ったときに、6Tスペ
ースがチャンネルクロックTの6倍となるような記録パ
ワーである。
【0092】また、消去パワーPeは、最長マーク長で
ある8Tマーク(T=18nsec)を消去した場合
に、この8Tマークが記録されていた領域から得られる
再生出力が−45dB(完全な消去状態)となるときの
消去レーザーパワーである。
【0093】なお、MLM方式で採用されてる記録パワ
ーは13mW、消去パワーは8mWである。
【0094】磁気記録層のCo含有量と最適記録パワー
Po及び消去パワーPeの関係を図12に示す。
【0095】図12を見ると、最適記録パワーPo及び
消去パワーPeは、磁気記録層のCo含有量が大きくな
るに従って大きな値になっている。つまり、磁気記録層
のCo含有量の増大は、ディスクのレーザ光に対する感
度を低くめる方向に働く。ここで、MLM方式で採用さ
れる記録パワーは13mWであり、最適記録パワーがこ
の記録パワーと同じ、あるいはこの記録パワーよりも小
さくなるのはCo含有量が12原子%以下の場合であ
る。
【0096】したがって、MLM方式で要求される記録
感度を得るには、記録磁性層のCo含有量は12原子%
以下に抑える必要があり、先のジッタ量の検討結果と併
せると、記録磁性層のCo含有量の最適範囲は、7〜1
2原子%であると言える。なお、消去感度も考慮する
と、Co含有量の範囲は、9原子%以下であるのが望ま
しい。
【0097】ここで、Co含有量の増大によって記録磁
性層の記録感度、消去感度が低くなるのは、Coが記録
磁性層のキュリー温度Tcを高めるように作用するから
と考えられる。
【0098】すなわち、記録感度や消去感度は、磁気記
録層のキュリー温度Tcと密接に関係している。熱的応
答性、ディスク構造が同一であるとすれば(本実施例で
作成したサンプルディスクでは、ディスク構造は同一で
あり、磁気記録層の熱的特性、比熱、熱吸収率等もほぼ
同等であると考えられる)、最適記録パワーPo、消去
パワーPeは磁気記録層のキュリー温度Tcが高くなる
のに伴って大きな値になる。これは、光磁気記録システ
ムでの磁化の反転原理から説明できることである。つま
り、光磁気記録システムにおいて、記録磁性層に反転磁
化領域を形成するには、レーザ光の照射によって記録磁
性層をキュリー温度Tc以上に加熱する必要がある。こ
の記録磁性層のキュリー温度Tcが高ければ、それだけ
大きなレーザーパワーを要し、感度は低くなる。
【0099】一方、ガラス基板上に、Tb20.0Fe71.0
Co4.8Cr4.2合金薄膜、Tb20.0Fe69.6Co6.5
3.9合金薄膜、Tb19.8Fe69.0Co8.1Cr4.1合金
薄膜のキュリー温度Tcは以下の通りであり、磁気記録
層のキュリー温度TcはCo含有量が大きい場合程高い
値になる。
【0100】 Tc(A)(Co含有量=4.8原子%):178℃ Tc(b)(Co含有量=6.5原子%):187℃ Tc(C)(Co含有量=8.1原子%):199℃ Co含有量の増大によって記録磁性層の記録感度、消去
感度が低くなるのは、このようにCoが記録磁性層のキ
ュリー温度Tcを高めるように作用するからであると考
えられる。
【0101】
【発明の効果】以上の説明からも明らかなように、本発
明の光磁気記録媒体では、垂直磁気記録層のキュリー点
温度及び保磁力Hcの温度依存性が規制されているの
で、磁場中での繰り返し再生に対する信号耐久性を確保
しながらジッタ量を低減することができる。したがっ
て、マーク長変調方式に適用したときに良好な記録再生
特性が得られ、このマーク長変調方式の実用化、光磁気
記録媒体のさらなる高密度記録化に大いに貢献するもの
であると言える。
【図面の簡単な説明】
【図1】垂直磁気記録層の保磁力と温度依存性を示す特
性図である。
【図2】垂直磁気記録層上に照射されたレーサスポット
の温度プロファイルを示す特性図である。
【図3】本発明を適用した光磁気ディスクの一例を示す
断面図である。
【図4】磁気記録層を成膜するための2元同時スパッタ
リング装置を示す模式図である。
【図5】特性の検討に用いた記録パターンを示す模式図
である。
【図6】Tb−Fe−Co−Cr合金薄膜の保磁力Hc
と3dB減衰までの再生回数の関係を示す特性図であ
る。
【図7】Tb−Fe−Co合金薄膜の保磁力Hcとジッ
タ量の関係を示す特性図である。
【図8】Tb−Fe−Co−Cr合金薄膜の保磁力Hc
とジッタ量の関係を示す特性図である。
【図9】Co含有量が6.5原子%以上のTb−Fe−
Co合金薄膜の保磁力Hcの温度依存性を示す特性図で
ある。
【図10】Co含有量が約5原子%のTb−Fe−Co
合金薄膜の保磁力Hcの温度依存性を示す特性図であ
る。
【図11】Tb−Fe−Co合金薄膜とTb−Fe−C
o−Cr合金薄膜について、Co含有量とC/N比の関
係を併せて示す特性図である。
【図12】Tb−Fe−Co合金薄膜のCo含有量と、
最適記録パワー及び消去パワーの関係を併せて示す特性
図である。
【図13】MPM変調方式及びMLM変調方式を説明す
るための模式図である。
【図14】Tb−Fe−Co合金薄膜のTbの含有量と
保磁力Hcの関係を示す特性図である。
【図15】膜面での保磁力の平均値Haveが8.0kO
eの記録磁性層が形成された光磁気ディスクの、膜面に
おける保磁力分布を示す特性図である。
【図16】膜面での保磁力の平均値Haveが14.8k
Oeの記録磁性層が形成された光磁気ディスクの、膜面
における保磁力分布を示す特性図である。
【図17】膜面での保磁力の平均値Haveが18.0k
Oeの記録磁性層が形成された光磁気ディスクの、膜面
における保磁力分布を示す特性図である。
【符号の説明】
1 基板 2 第1の誘電体層 3 磁気記録層 4 第2の誘電体層 5 反射層

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 透明基板上に、希土類−遷移金属非晶質
    合金薄膜よりなる垂直磁気記録層が形成されてなり、情
    報信号がマーク長変調方式により記録再生される光磁気
    記録媒体において、 上記垂直磁気記録層は、レーザ光を最適記録パワーで照
    射することによって生じる温度以下にキュリー点温度を
    有し、 且つ、膜面に垂直方向の保磁力の温度依存性を示す曲線
    の勾配が、キュリー点温度以下の領域で緩やかに変化す
    ることを特徴とする光磁気記録媒体。
  2. 【請求項2】 上記垂直磁気記録層は、Coが7〜12
    原子%のTb−Fe−Co非晶質合金薄膜よりなり、室
    温での保磁力が膜面の略全領域で8〜20kOeである
    ことを特徴とする請求項1記載の光磁気記録媒体。
  3. 【請求項3】 上記垂直磁気記録層は、室温での保磁力
    の、膜面の略全領域における平均値をHave、最大値を
    max、最小値をHminとしたときに、 (Hmax−Hmin)/Haveが0.25以下であることを
    特徴とする請求項2記載の光磁気記録媒体。
  4. 【請求項4】 上記垂直磁気記録層は、Crが2〜4原
    子%、Coが7〜14原子%のTb−Fe−Co−Cr
    非晶質合金薄膜よりなり、室温での保磁力が膜面の略全
    領域で8〜20kOeであることを特徴とする請求項1
    記載の光磁気記録媒体。
  5. 【請求項5】 上記垂直磁気記録層は、室温での保磁力
    の、膜面の略全領域における平均値をHave、最大値を
    max、最小値をHminとしたときに、 (Hmax−Hmin)/Haveが0.25以下であることを
    特徴とする請求項4記載の光磁気記録媒体。
  6. 【請求項6】 記録再生用のレーザー光の波長が680
    nm以下であり、10メガバイト/cm2以上の面密度
    で記録が行われることを特徴とする請求項1記載の光磁
    気記録媒体。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004023470A1 (ja) * 2002-08-30 2004-03-18 Fujitsu Limited 光磁気記録媒体及び光磁気記録装置

Cited By (3)

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Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2004023470A1 (ja) * 2002-08-30 2004-03-18 Fujitsu Limited 光磁気記録媒体及び光磁気記録装置
WO2004027773A1 (ja) * 2002-08-30 2004-04-01 Fujitsu Limited 光磁気記録媒体及び光磁気記録装置
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