JPH09269035A - サイレントチェーン - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 強度を低下させることなく、耐摩耗性を向上
させる。 【解決手段】 一対の歯部２１およびピン孔２２をそれ
ぞれ有する多数のリンクプレート２をピン孔２２内に挿
入したピン３（図１）により連結してなるサイレントチ
ェーン１において、ピン孔２２の内周面に、ピン孔中心
線方向と交差する方向の油溝５を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、サイレントチェー
ンに関し、詳細には、サイレントチェーンの耐摩耗性の
向上に関する。

【０００２】

【従来の技術およびその課題】自動車や自動二輪車等の
動力伝達用チェーンとして用いられるサイレントチェー
ンは、一般に、一対の歯部およびピン孔をそれぞれ有す
る多数のリンクプレートを、各ピン孔内に挿入した連結
ピンにより連結した構造を有している。

【０００３】また、サイレントチェーンのリンクプレー
トは板材をプレス加工により打ち抜いて製作されてお
り、図７に示すように、そのピン孔内周面には、パンチ
と擦れ合うことによって生じた中心線方向の傷（ツール
マーク）１０が発生している。

【０００４】サイレントチェーンがスプロケットに巻き
付く際およびスプロケットから離れる際には、リンクプ
レートが連結ピンの回りを回動し、リンクプレートのピ
ン孔と連結ピンとが周方向に摺動する。

【０００５】このとき、ピン孔内周面のツールマークが
周方向と直交する中心線方向に形成されていることによ
り、連結ピンの摺動時には、連結ピン外周面およびピン
孔内周面が互いに切削されるような摩耗状態が生じて、
連結ピンおよびピン孔の摩耗が促進されることになる。

【０００６】そこで、このような摩耗を低減すべく、リ
ンクプレートのピン孔内周面に中心線方向に延びる油溝
を形成したもの（方法）や、連結ピンの外周に螺旋状
の油溝を形成したもの（方法）が提案されている（特
開平３−１５３９４２号公報参照）。また、ピン孔内周
面を精密打抜き加工により形成したもの（方法）も提
案されている（特開平２−２９２５４８号公報参照）。

【０００７】しかしながら、前記従来の方法では、ピ
ン孔中心線方向の油溝であるために、ツールマークの場
合と同様に、連結ピンの摺動時に連結ピンおよびピン孔
の摩耗が促進され、さらにはピン孔の縁部に切欠きが形
成されることから、リンクプレートの強度が低下する。

【０００８】前記方法では、油溝によって摩耗を低減
させることはできるが、連結ピンの強度が低下するとい
う問題がある。また前記方法では、油溝が形成されて
いないために、摩耗の低減には限界がある。

【０００９】本発明は、このような従来の実情に鑑みて
なされたもので、強度を低下させることなく、耐摩耗性
を向上できるサイレントチェーンを提供することを目的
とする。

【００１０】

【課題を解決するための手段】本発明に係るサイレント
チェーンは、一対の歯部およびピン孔をそれぞれ有する
多数のリンクプレートを該ピン孔内に挿入した連結ピン
により連結してなるサイレントチェーンにおいて、前記
ピン孔の内周面に、ピン孔中心線方向と交差する方向の
油溝が形成されていることを特徴としている。

【００１１】本発明によれば、ピン孔と連結ピンとが周
方向に摺動する際に、ピン孔内周面の油溝内に保持され
る潤滑油によって良好な潤滑状態が維持され、ピン孔お
よび連結ピンの摩耗を低減できる。

【００１２】しかも、この場合には、油溝がピン孔中心
線方向と交差する方向に形成されているので、連結ピン
の摺動時に、連結ピンおよびピン孔が互いに切削される
ような摩耗状態を回避でき、これにより、摩耗を一層低
減できる。

【００１３】また、この場合には、ピン孔の縁部に切欠
きが形成されることもないので、リンクプレートの強度
を低下させることもない。

【００１４】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施態様を添付図
面に基づいて説明する。図１ないし図５は本発明の一実
施態様によるサイレントチェーンを説明するための図で
あり、図１はサイレントチェーンの一部切欠き正面部分
図、図２はその平面図、図３はリンクプレートのピン孔
部分の拡大図、図４はそれぞれピン孔内周面に形成され
た油溝の一例を示す拡大図、図５はサイレントチェーン
がスプロケットと噛み合う状態を示す正面部分図であ
る。

【００１５】図１および図２に示すように、サイレント
チェーン１は、一対の歯部２１およびピン孔２２が形成
されたリンクプレート２を積層するとともに、これらの
リンクプレート２の各ピン孔２２内に断面円形状のピン
３を挿入して、各リンクプレート２を枢動可能に連結
し、さらに該リンクプレート２の最外側にガイドプレー
ト４を配置した構造を有している。

【００１６】リンクプレート２のピン孔２２の内周面に
は、図３に示すように、ピン孔中心線ｐと交差する方向
に油溝５が形成されている。この油溝５は、図４（ａ）
に示すような複数本の同心円の溝５１から構成されてい
てもよいし、また同図（ｂ）に示すような螺旋状の溝５
２から構成されていてもよい。また同図（ｃ）に示すよ
うに、断続的に形成された螺旋状（あるいは同心円状）
の溝５３から構成されていてもよい。

【００１７】このような油溝５は、ピン孔２２の打ち抜
き加工時に、パンチをカム機構等により周方向に回転さ
せながら下降させることにより、形成することが可能で
ある。

【００１８】図５は、上記のように構成されるサイレン
トチェーン１がスプロケット６と噛み合っている状態を
示している。なお、同図においては、ガイドリンクプレ
ート４を省略して示している。

【００１９】サイレントチェーン１がスプロケット６に
巻き付く際およびスプロケット６から離れる際には、リ
ンクプレート２がピン３の回りを回動し、リンクプレー
ト２のピン孔２２とピン３とが周方向に摺動する。

【００２０】このとき、ピン孔２２の内周面には油溝５
が形成されているので、ピン３が周方向に摺動する際
に、この油溝５内に保持されている潤滑油によって良好
な潤滑状態が維持され、ピン孔２２およびピン３の摩耗
が低減される。

【００２１】しかも、この場合には、油溝５がピン孔中
心線方向と交差する方向に形成されているので、ピン３
の摺動時に、ピン３およびピン孔２２が互いに切削され
るような摩耗状態が回避され、これにより、ピン３およ
びピン孔２２の摩耗が一層低減される。また、この場合
には、ピン孔２２の縁部に切欠きが形成されることもな
いので、リンクプレート２の強度を低下させることもな
い。

【００２２】このように本実施態様では、リンクプレー
ト２のピン孔２２の内周面にピン孔中心線方向と交差す
る方向の油溝５を形成したので、リンクプレート２およ
びピン３の強度を低下させることなく、ピン３およびピ
ン孔２２の摩耗を低減できる。

【００２３】なお、前記実施態様では、リンクプレート
２のピン孔２２の内周面に油溝５を直接形成した例を示
したが、本発明の適用はこれに限定されない。図６に示
すように、リンクプレート２に、ピン孔２２よりも若干
大きな孔２３を形成するとともに、前記実施態様と同様
の油溝が内周面に形成されたブシュ７を孔２３内に圧入
するようにしてもよい。

【００２４】

【発明の効果】以上のように本発明に係るサイレントチ
ェーンでは、ピン孔中心線方向と交差する方向の油溝を
リンクプレートのピン孔内周面に形成したので、リンク
プレートおよび連結ピンの強度を低下させることなく、
耐摩耗性を向上できる効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施態様によるサイレントチェーン
の一部切欠き正面部分図。

【図２】前記サイレントチェーンの平面部分図。

【図３】前記サイレントチェーンのリンクプレートのピ
ン孔部分の拡大斜視図。

【図４】前記リンクプレートのピン孔内周面に形成され
た油溝の一例をそれぞれ示す拡大図。

【図５】前記サイレントチェーンがスプロケットと噛み
合う状態を示す正面部分図。

【図６】本発明の変形例によるサイレントチェーンの一
部切欠き正面部分図。

【図７】従来のサイレントチェーンにおけるリンクプレ
ートのピン孔部分の拡大斜視図。

【符号の説明】

１ サイレントチェーン ２ リンクプレート ２１ 歯部 ２２ ピン孔 ３ （連結）ピン ５，５１，５２，５３ 油溝

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 一対の歯部およびピン孔をそれぞれ有す
   る多数のリンクプレートを該ピン孔内に挿入した連結ピ
   ンにより連結してなるサイレントチェーンにおいて、 前記ピン孔の内周面には、ピン孔中心線方向と交差する
   方向の油溝が形成されている、ことを特徴とするサイレ
   ントチェーン。
2. 【請求項２】 前記油溝は円周方向にあるいは螺旋状に
   延びている、ことを特徴とする請求項１記載のサイレン
   トチェーン。
3. 【請求項３】 前記油溝は、ピン孔内周面に断続的に形
   成されている、ことを特徴とする請求項１記載のサイレ
   ントチェーン。
4. 【請求項４】 前記油溝は、プレス加工時にパンチを周
   方向に回転させることにより形成されたものである、こ
   とを特徴とする請求項１記載のサイレントチェーン。