JPH09253023A - 殺菌用マットとこれに用いる補助マット - Google Patents

殺菌用マットとこれに用いる補助マット

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JPH09253023A
JPH09253023A JP8072364A JP7236496A JPH09253023A JP H09253023 A JPH09253023 A JP H09253023A JP 8072364 A JP8072364 A JP 8072364A JP 7236496 A JP7236496 A JP 7236496A JP H09253023 A JPH09253023 A JP H09253023A
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wet
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mat body
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JP8072364A
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Shoji Hori
祥司 堀
Satoru Toyoshima
哲 豊島
Junichi Yamanaka
準一 山中
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Daiken Iki Co Ltd
Original Assignee
Daiken Iki Co Ltd
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    • AHUMAN NECESSITIES
    • A47FURNITURE; DOMESTIC ARTICLES OR APPLIANCES; COFFEE MILLS; SPICE MILLS; SUCTION CLEANERS IN GENERAL
    • A47LDOMESTIC WASHING OR CLEANING; SUCTION CLEANERS IN GENERAL
    • A47L23/00Cleaning footwear
    • A47L23/22Devices or implements resting on the floor for removing mud, dirt, or dust from footwear

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  • Apparatus For Disinfection Or Sterilisation (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ウェットマットの通過時に付着した履物の裏
の水分をその場で即座に拭き取れるようにして、クリー
ンゾーンの床面の汚れや同ゾーンでの細菌の増殖をより
確実に防止する。 【解決手段】 クリーンゾーンの出入口に殺菌剤を含浸
させた湿潤状態で設置されるウェットマットWを有する
殺菌用マットにおいて、前記ウェットマットWの側方
に、液体吸収性を有する補助マットDを乾燥状態で設け
る。この補助マットDには、必要に応じて、同マットD
に付着した細菌の増殖を規制する抗菌性を付与する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、半導体工場、生化
学工場、病院又は老人ホーム等のクリーンゾーンに出入
りする場合に、同ゾーン内に雑菌が入り込むのを未然に
防止するために使用する殺菌用マットとこれに用いる補
助マットに関する。
【0002】
【従来の技術】履物に付着した病原菌や雑菌が病院内で
はびこり、院内感染等を引き起こすことを防止するため
に、殺菌用マットを部屋の出入口に置いているが、この
種の殺菌用マットとして、クリーンゾーンの出入口に殺
菌剤を含浸させた湿潤状態で設置されるウェットマット
を有するものが提案されている。
【0003】このウェットタイプの殺菌用マットとして
は、綿布のかわりに吸水性ポリマーシートや含水量の高
いスポンジに消毒剤を含浸させたものがあり、これによ
れば、消毒剤の蒸散が抑制され、長時間殺菌性を保持し
て消毒剤の補充作業を頻繁に行う必要がなくなる。一
方、かかるウェットタイプの殺菌用マットに使用する消
毒液は、一般に、クロルヘキシジングルコネート液や塩
化ベンザルコニウム液などが用いられるが、近年では、
これらの消毒剤に対する抵抗性を獲得した耐性菌が出現
している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本願出願人
は、殺菌剤として特にアルカリ性化合物を含浸させたウ
ェットマットを開発し、これを既に特許出願している
(特願平6−144858号、特願平6−255779
号、特願平7−79099号参照)。しかしながら、上
記のようなウェットタイプの殺菌用マット(ウェットマ
ット)の場合、その使用時には殺菌剤が含浸した湿潤状
態とされるので、当該マットを踏むと薬剤を含んだ溶液
が履物の裏に付着することになる。
【0005】このため、その履物の裏に溶液が付着した
ままクリーンゾーンに入ると、その溶液が更にクリーン
ゾーンの床面のあちこちに付着し、却って当該クリーン
ゾーンの床面の汚れを増大させてしまったり、作業者が
スリップする原因になったりすることがある。また、上
記した殺菌剤に曝されても全ての細菌が即座に死滅する
ことはないので、クリーンゾーンの床面に付着した溶液
を放置しておくと、そこから細菌が増殖することも皆無
とは言えず、衛生上も好ましくない。
【0006】本発明は、このような実情に鑑み、ウェッ
トマットの通過時に付着した履物の裏の水分をその場で
即座に拭き取れるようにして、クリーンゾーンの床面の
汚れや同ゾーンでの細菌の増殖をより確実に防止するこ
とを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成すべく、
本発明は次の技術的手段を講じた。すなわち、本発明の
殺菌用マットは、クリーンゾーンの出入口に殺菌剤を含
浸させた湿潤状態で設置されるウェットマットを有する
殺菌用マットにおいて、前記ウェットマットの側方に、
液体吸収性を有する補助マットが乾燥状態で設けられて
いることを特徴とする(請求項1)。
【0008】また、本発明の補助マットは、クリーンゾ
ーンの出入口に乾燥状態で設置される液体吸収性を有す
る補助マットであって、殺菌剤が含浸された湿潤状態と
して前記出入口に設置されるウェットマットの側方に設
けられることを特徴とする(請求項6)。この場合、液
体吸収性を有する補助マットがウェットマットの側方に
乾燥状態で設けられているため、ウェットマットを踏ん
だ後すぐに補助マットを踏むようにすれば、ウェットマ
ットによって薬剤を含んだ溶液が履物の裏に付着して
も、その溶液を補助マットで即座に拭き取ることができ
る。
【0009】一方、この補助マットは、当該補助マット
に付着した細菌の増殖を規制する抗菌性を有することが
好ましい(請求項2及び7)。すなわち、乾燥状態の補
助マットには溶液とともに細菌も拭き取られるので、補
助マットが液体吸収性を有するだけであると、当該補助
マットの空隙内で細菌が増殖するおそれがある。
【0010】この点、補助マットそのものに抗菌性が付
与されていれば、溶液とともに付着した細菌が当該マッ
ト内で増殖せず、クリーンゾーン内で細菌が再繁殖する
のをより確実に防止することができる。この液体吸収性
を有する補助マットとしては、後述の実施の形態でも述
べるように、織布や不織布又は高分子発泡樹脂を採用す
ることができる。かかる補助マットに抗菌性を付与する
には、ウェットマットに採用される殺菌剤や消毒剤を補
助マット内で析出させたり、それ自体が抗菌性を有する
材料で織布や不織布を構成することが考えられる。
【0011】一方、湿潤状態とされるウェットマット
は、殺菌剤としてアルカリ性化合物を含有することが好
ましい(請求項3)。この場合、後述のようにアルカリ
性化合物が湿潤状態で広範な抗菌性、特に消毒剤に対す
る抵抗性を獲得した耐性菌に対しても抗菌性を発揮する
ので、院内感染の防止に役立つ。
【0012】また、ウェットマットが更に界面活性剤を
含有する場合、殺菌効果の即効性及び持続性を向上でき
るようになり、ウェットマットが更に保水剤を含有する
場合、保水剤が大気中の水蒸気を捕らえてウェットマッ
トに取り込むので、殺菌効果の持続時間を増大できる
(請求項4)。一方、ウェットマットの外周縁部に、こ
のウェットマット内の溶液が側方に漏れるのを防止する
堤防部を設けておけば、ウェットマット内の溶液が補助
マットへ漏れるのを防止でき、補助マットの拭き取り機
能を有効に確保できる(請求項5)。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しつつ、本発明
の実施形態を説明する。図1において、殺菌用マットM
は、半導体工場、生化学工場、病院又は老人ホーム等の
クリーンゾーンの出入口に設置されるもので、このさ
い、湿潤状態として設置される一つのウェットマットW
と、乾燥状態として設置される前後一対の補助マットD
とを備えている。
【0014】このうち、ウェットマットWは出入口の通
過方向(図1の矢印A方向)中央部に設置され、補助マ
ットDはそのウェットマットWの前後両側方に接して並
設されている。なお、補助マットDは、ウェットマット
Wの少なくとも前後一方(特にクリーンゾーン側)のみ
に配置してもよく、ウェットマットWから若干離して配
置してもよい。
【0015】また、図2に示すように、大きな補助マッ
トDの中央部に設けた開口部1DにウェットマットWを
嵌め込むようにしてもよい。本実施形態では、これらの
ウェットマットW及び補助マットDは、いずれも液体吸
収性を有する後述のマット本体1を備え、前者は使用時
に湿潤状態にされ、後者は使用時に乾燥状態とされる点
で異なる。また、当該殺菌用マットMの殺菌作用は主と
してウェットマットWが湿潤状態とされていることによ
って奏するものである。
【0016】そこで、以下、ウェットマットWの構造や
材質を中心に説明し、補助マットD特有の構成について
は、特に必要な部分でその説明を追加することとする。
図3はフレームタイプのウェットマットWを示し、この
マットWは、このマット本体1をフレーム2の凹部2a
に装着することによって構成されている。マット本体1
の裏面には粘着部3が設けられていて、この粘着部3に
より、マット本体1がフレーム2に着脱可能に取り付け
られている。
【0017】フレーム2は、底板2cの上面外周部に方
形枠状の堤防部2cを一体成形してなる合成ゴム等の樹
脂よりなり、その堤防部2cの枠内の前記凹部2aに、
マット本体1が装着されている。なお、補助マットD
も、図3に示すフレームタイプのものを採用することが
できる。
【0018】マット本体1の素材としては、綿、麻、セ
ルロース繊維等の天然繊維又はポリエステル、ナイロ
ン、アクリル、ポリプロピレン繊維等の合成繊維よりな
る織物や不織布等の布を用いることができる。この布と
しては、厚手の例えば目付50g/m2 〜300g/m
2 のものが用いられる。また、この布としては、非木質
系パルプのスポンジクロス、例えばチャフローズスポン
ジクロスが好ましく用いられる。
【0019】マット本体1の素材は、高分子発泡体であ
ってもよい。この高分子発泡体としては、セルロース、
ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、
ポリ塩化ビニール、ゴム、合成ゴム等の発泡体を使用で
きる。これらの中では、耐摩耗性に優れかつ吸水性がよ
いという点で、セルロース発泡体やポリビニールアルコ
ール発泡体又はポリエーテル系ウレタン発泡体の使用が
特に好ましい。かかる高分子発泡体の厚さは、1〜10
mm程度のものを使用できる。
【0020】マット本体1は、以上の素材の他にスポン
ジや編み物でも構成できるが、使用後の焼却処分の簡便
性を考慮すると、可燃性の不織布で構成することが好ま
しい。可燃性の不織布としては、綿、麻等の天然繊維;
レーヨン等の再生繊維;ポリエステル繊維、アクリル繊
維等の可燃性の合成繊維などからなる不織布が挙げられ
る。
【0021】マット本体1が不織布で構成されている場
合には、不織布の毛羽の飛散を防止するために、マット
本体1の上面に、樹脂で構成された毛羽防止部4が散点
状に設けられていることが好ましい。また、毛羽防止部
4は、無色透明の塗膜が得られるアクリル系樹脂で構成
されることが好ましい。このような毛羽防止部4は、常
温で硬化できる液状の樹脂塗料をマット本体1の上面に
噴霧等することにより容易に得られる。
【0022】上記マット本体1は、殺菌剤として、アル
カリ性化合物の粉末結晶5をほぼ均一に含有している。
このアルカリ性化合物は、水溶液状態でアルカリ性を示
す化合物であればよく、特にその種類は制限しない。例
えば、水酸化ナトリウム,水酸化カリウム等の金属水酸
化物、アルカリ金属と弱酸との塩が挙げられるが、これ
らのうち、使い易さ、安全性の観点からアルカリ金属と
弱酸の塩が好ましく用いられる。
【0023】このアルカリ性化合物の結晶粉末5は、湿
潤状態にされたウェットマットWに対しては耐性菌にも
有効な広範な殺菌力を付与し、乾燥状態で使用される補
助マットDに対しては、同マットDに付着した細菌の増
殖を規制する抗菌剤として機能する。アルカリ金属と弱
酸との塩としては、例えば、炭酸リチウム,炭酸ナトリ
ウム,炭酸カリウム等の炭酸塩;炭酸水素リチウム,炭
酸水素ナトリウム,炭酸水素カリウム等の炭酸水素塩;
ホウ酸リチウム,ホウ酸ナトリウム,ホウ酸カリウム等
のホウ酸塩;及びリン酸水素二ナトリウム,リン酸水素
二カリウム,リン酸水素二リチウム等のリン酸水素塩が
好ましく用いられる。
【0024】マット本体1は、アルカリ性化合物ととも
に、界面活性剤の結晶体(図示せず)を含有することが
好ましい。界面活性剤とアルカリ性化合物とを併用する
と、殺菌効果の即効性が得られるからである。一方、ウ
ェットマットWの場合、マット本体1に界面活性剤のみ
含ませることも考えられ、従来より綿布等に消毒剤とし
て界面活性剤を含浸させたものも使用されている。
【0025】しかし、界面活性剤をはじめとする消毒剤
は、一般に数分〜数十分で殺菌効果を発揮するという即
効性はあるが、細菌をはじめとする有機物が存在する場
合、その殺菌効果は時間の経過とともに著しく低下する
傾向にあり、マットを取り替えるまでの使用期間(一般
に1週間程度)も殺菌効果を持続することができない。
【0026】本実施形態のウェットマットWでは、マッ
ト本体1中の界面活性剤の含浸量は、アルカリ性化合物
の濃度が水溶液の状態でpH9〜12となったとき、界
面活性剤の濃度がその原液について0.1〜0.5vo
l%となる量であることが好ましい。界面活性剤の濃度
が0.1vol%未満では、界面活性剤併用による顕著
な効果が認められないからである。
【0027】他方、0.5vol%以下とした理由は、
一般に界面活性剤は高濃度になる程その効果は大きくな
るが、0.1〜0.2vol%(通常の床面用消毒剤の
濃度)でも必要十分な効果が得られる上に、高濃度にな
る程高価格化が避けられないからである。上記界面活性
剤としては、第4級アンモニウム塩,アルキルピリジニ
ウム塩等のカチオン系界面活性剤;スルホン酸塩,硫酸
塩等のアニオン系界面活性剤;エーテル型,エステル型
等の非イオン界面活性剤;アミノ酸誘導体,ペタイン等
の両性界面活性剤;高分子界面活性剤が挙げられる。
【0028】このうち、アルカリ性領域で安定に存在で
きるアニオン系界面活性剤を用いることが好ましい。こ
こで、アニオン系界面活性剤とは、水溶液中でアニオン
となって存在し得る界面活性剤をいい、両性界面活性剤
も含まれる。また、2種以上の界面活性剤を組み合わせ
て、そのうちの1種をアニオン系界面活性剤としてもよ
い。
【0029】また、マット本体1は、アルカリ性化合物
や界面活性剤とともに、水に対して安定で潮解性を有す
る物質よりなる保水剤(図示せず)を含有することが好
ましい。ここで、「潮解」とは、固体が大気中にさらさ
れている場合に、大気中の水蒸気を捕らえてその水に溶
ける現象のことをいう。水に対して安定で潮解性を有す
る物質としては、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネ
シウム、塩化ストロンチウム、塩化亜鉛、塩化ニッケ
ル、塩化コバルト、臭化カルシウム、臭化亜鉛、ヨウ化
亜鉛等がある。
【0030】このうち、塩化カルシウムなどの潮解性
は、家庭用のカビ避けや消臭を目的とした「湿気とり製
品」でよく知られている。かかる物質の潮解性を利用す
れば、空気中の水分を自動的にマット本体1内に取り込
み、マットの保湿性を高めることで殺菌効果の持続時間
が延び、マット本体1への水分の補給回数を削減できる
効果を得られる。
【0031】図3に示すフレーム2の形状、材質等は特
に限定しないが、耐水性、耐薬品性のゴム、合成樹脂等
で構成されることが好ましい。粘着部3は、マット本体
1の裏面に直接粘着剤を塗布することにより形成しても
よいが、図3及び図4に示すように、ポリ塩化ビニル、
ポリエチレン、ポリプロピレン等の止水フィルム3aに
粘着剤3bが積層されたラミネートフィルムや両面テー
プ等により形成することができる。
【0032】なお、図3では、粘着部3として、マット
本体1の裏面にラミネートされた止水フィルム3aと粘
着剤3bよりなるラミネートフィルムを使用した場合を
示している。このように、マット本体1の裏面に止水フ
ィルム3aを設けておけば、止水フィルム3aによりマ
ット本体1内の水分がフレーム2側へ流出するのを防止
でき、粘着剤3bの粘着力の低下を防止できる利点があ
る。
【0033】なお、フレーム2の凹部2aに、例えば、
粘着部3が設けられていたり、ずれ防止用の突出部が設
けられているなど、マット本体1がフレーム2の凹部2
a内でずれたり剥がれたりしない構成を有していれば、
マット本体1において粘着部3は特に設ける必要はな
い。また、上記実施形態では、フレーム2に、1枚のマ
ット本体1を装着したものであったが、本発明はこれに
限定されず、マット本体1を複数枚積層してもよい。
【0034】さらに、図3のウェットマットWはフレー
ム2を備えているが、本発明はこれに限定されない。例
えば、建物の床面にマット本体1を直接貼着する場合に
は、マット本体1単独でウェットマットWや補助マット
Dを形成し得る。特に、補助マットDの場合、履物の裏
の溶液を拭き取る目的で乾燥状態で設置されるので、フ
レーム2や後述の堤防部6を設けずに、マット本体1単
独で構成する意義が大きい。
【0035】他方、ウェットマットWの場合には、フレ
ーム2を設けない場合でも、図4に示すように、マット
本体1の外周縁部を疎水性を有する堤防部6で取り囲む
ことが好ましい。この堤防部6の高さは、マット本体1
の厚みとほぼ同じ寸法に設定されている。この疎水性を
有する堤防部6は、湿潤状態のマット本体1を踏みつけ
た際に、マット本体1に含まれているアルカリ性水溶液
(界面活性剤)がマット本体1の側面から漏れるのを防
止する。また、この場合、マット本体1の裏面に止水シ
ート3aが設けられているので、マット本体1を踏みつ
けたとき水溶液は上面側へ押し出されることになる。
【0036】このため、マット本体1の湿潤状態を長く
保持できて経済的であるとともに、床面等がマット本体
1から漏出した液体により濡れたり汚れたりすることを
防止できるので衛生的である。また、ウェットマットW
の側方に配置される補助マットDが濡れるのを防止で
き、補助マットDの拭き取り機能も長時間確保できる。
【0037】また、マット本体1を粘着剤3bで固定し
ている場合には、溶液が粘着剤3bへ流入することも防
止する。粘着部3へのアルカリ性水溶液や界面活性剤の
流入を防止できることは、これらの溶液の化学的作用に
よる粘着力の低下の防止にもつながる。上記の堤防部6
は、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリ塩
化ビニル等の、疎水性を有しかつ元の形状に復元しやす
い合成樹脂で構成することが好ましい。さらに、堤防部
6に撥水性を付与するために、上記疎水性樹脂とともに
フッ素樹脂を併用してもよい。堤防部6の製造方法は特
に限定しないが、例えば、次のような方法により容易に
形成することができる。
【0038】アクリル樹脂等のベース樹脂及び必要に応
じてフッ素樹脂、増粘剤、架橋剤等を添加して、樹脂エ
マルジョンあるいは適当な有機溶剤で希釈して樹脂溶液
を調製し、これをマット本体1の周面に塗布し、乾燥
(必要に応じて加熱)することにより形成できる。ま
た、合成樹脂製の堤防部6の形成は、粘着部3の形成と
同様に、帯状のマット本体原反にコーターで連続的に樹
脂エマルジョン又は樹脂溶液を塗工し、これを裁断して
個々のマット本体を得ることにより、簡便に行うことが
できる。
【0039】このようにして、マット本体1と復元性の
高い堤防部6とを一体的に形成することにより、水溶液
の漏出が防止されるだけでなく、フレーム2にマット本
体1をセットしてなる殺菌用マットMよりも有利な効果
を奏しうる。すなわち、マット本体1と復元性の高い堤
防部6とが同じ高さとなるため、キャスター付きの台車
等の通行の支障にならず、病人や危険な薬品等の輸送の
安全性にも役立つ。また、高価なフレーム2が不要とな
るので、殺菌用マットMの低価格化の実現が可能になる
だけでなく、マット全体を廃棄処分(焼却処分)とする
ことができるので、フレーム2の繰り返し使用に比べて
衛生的である。
【0040】なお、堤防部6を備えたマットは、アルカ
リ性化合物が含浸されたマット本体1だけでなく、アル
カリ性化合物以外の液体を含浸したウェットマット全般
について適用できる。すなわち、マット本体1に液体が
含浸された湿潤状態で使用されるマットについて、外周
面にマットと一体的な堤防部6を設けることにより、フ
レーム2のような別物品と併用しなくてもマット外周か
らの液体の漏出を防止して、所定期間湿潤状態を保持し
て優れた殺菌力を所定期間保持でき、しかも床面に敷設
するマットとして、キャスター付き台車等の通行に支障
をきたさずに済む。
【0041】また、フレーム2のような別物品を併用し
ないことから、マットの形状、大きさについても価格上
昇を招くことなく、広範囲に選択できることになる。以
上説明したウェットマットWや補助マットDの製造は、
マット本体1にアルカリ性化合物の水溶液(界面活性剤
その他の含有剤を含む場合には更にその物質)を供給し
て含浸させた後(第一工程)、この水溶液が含浸したマ
ット本体1を乾燥させてアルカリ性化合物その他の物質
をマット本体1内で析出させること(第二工程)により
行うことができる。
【0042】マット本体1にアルカリ性化合物の水溶液
を供給する方法としては、高濃度のアルカリ水溶液をマ
ット本体に少量散布したり、高濃度のアルカリ水溶液中
にマット本体を浸漬する方法が簡便である。アルカリ性
化合物だけでなく、界面活性剤や保水剤も含有させる場
合、界面活性剤の供給は、アルカリ性化合物の供給と同
時に行うことが好ましい。すなわち、アルカリ性化合
物、界面活性剤及び保水剤の混合溶液にマット本体1を
浸漬することが好ましい。この場合、浸漬操作を1回で
済ますことにより、その後の乾燥も1回で済み、効率よ
く製造できるからである。
【0043】アルカリ性化合物(及び界面活性剤)を含
む溶液に不織布、編み物、織物等からなるマット本体1
を含浸させた後これを乾燥すると、それらの物質が内部
で析出して再結晶化し、マット本体1内部の空隙に粉粒
として付着して残存する。次に、上記殺菌用マットMの
使用方法について説明する。なお、本発明の殺菌用マッ
トMの使用方法は、マット本体1に界面活性剤や保水剤
が含浸されているか否かに拘らず、基本的に同じであ
る。
【0044】本実施形態の殺菌用マットMは、ウェット
マットW及び補助マットDのいずれもが殺菌剤ないし抗
菌剤としてアルカリ性化合物その他の含有物を結晶状態
で備えている。そこで、補助マットDについては乾燥状
態のまま使用し、ウェットマットWについては適量の水
を供給し、そのマット本体1を湿潤状態にして使用す
る。
【0045】この水としては、水道水、脱イオン水、無
菌水などを使用でき、特に制限はない。また、消毒剤の
希釈液を併用してもよい。消毒剤を併用することによ
り、消毒剤とアルカリ性化合物とが相乗的に作用して、
より高い殺菌性が得られる。消毒剤としては、塩化ベン
ザルコニウム、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、
イルガサンDP−300、2,4,5,6−テトラクロ
ロイソフタロニトリル、2−(ヒドロキシメチルアミ
ノ)エタノール、グルタルアルデヒド等のアルカリ域で
安定な消毒剤が好ましく用いられる。
【0046】水分の供給量は、ウェットマットWのマッ
ト本体1におけるアルカリ性水溶液の濃度が、pH9〜
12となる量で、マット本体1の大きさ、マット本体1
中に含浸されているアルカリ性化合物の種類及び含浸量
等により異なる。例えば、920mm×780mmのマ
ット本体1に約5gの炭酸ナトリウムが含浸されている
殺菌用マットMでは、500〜700mlの水を供給す
ればよい。
【0047】また、ウェットマットWのマット本体1に
界面活性剤が含浸されている場合には、界面活性剤の濃
度が界面活性剤原液について0.1〜0.5vol%と
なることが好ましい。このようにして湿潤状態とされた
ウェットマットWはアルカリ性を示し、広範な抗菌性を
示す。また、後述するように、近年問題となっている殺
菌剤に対して抵抗性を獲得した菌に対しても殺菌効果を
示す。
【0048】従って、本発明の殺菌用マットMを病院等
のクリーンゾーンの出入口に配置しておけば、出入りす
る人の履物の裏面の凸部に付着している菌は勿論、凹部
に付着している菌をも除菌、殺菌することができる。更
に、アルカリ性化合物とともに界面活性剤が含浸されて
いる場合には、マットを湿潤状態にした直後から殺菌性
を発揮できる。
【0049】一方、液体吸収性を有する補助マットDが
ウェットマットWの側方に乾燥状態で設けられているた
め、ウェットマットWによって薬剤を含んだ溶液が履物
の裏に付着しても、その溶液を補助マットDで即座に拭
き取ることができる。また、補助マットDのマット本体
1は内部にアルカリ性化合物よりなる抗菌剤を有するの
で、溶液とともに付着した細菌が当該マットD内で増殖
するのを防止できる。
【0050】本実施形態では、補助マットDの素材とし
てウェットマットWの場合と同じ素材のマット本体1を
用いたが、補助マットDとウェットマットWとで異なる
素材のマット本体1を採用することもできる。また、補
助マットDに用いる抗菌剤としては、上記したようにア
ルカリ性化合物と界面活性剤を組み合わせたものでもよ
いが、補助マットDの場合は、水を撒いて湿潤させた後
に履物で次々と薬剤が持ち出されるウェットマットWの
場合と異なり、薬剤が外へ出されることが少ないので、
アルカリ性化合物や界面活性剤の含有量はウェットマッ
トWの場合よりも少なくて済む。この場合、補助マット
Dの薬剤の含有量はウェットマットWの場合の5分の1
程度で足りる。
【0051】更に、補助マットDは湿潤させて使用する
ものではないので、耐性菌はウェットマットW上に比べ
て増殖し難い。従って、この点からも、補助マットDに
入れるアルカリ性化合物はウェットマットWの場合に比
べて少なくてもよく、また、補助マットDではアルカリ
性化合物を使用せずに界面活性剤だけでもよい。一方、
織布や不織布よりなる補助マットDに抗菌性を付与する
手段としては、殺菌剤や消毒剤を補助マット本体1内で
析出させる手段だけでなく、微粒子抗菌剤を混入させた
繊維でマット本体1を構成したり、それ自体抗菌性を有
する布や繊維を採用することが考えられる。
【0052】このうち、微粒子抗菌剤としては、例え
ば、抗菌性ゼオライト粒子及び/又は無定形アルミノ珪
酸塩粒子や(実公平7−10616号公報参照)、銀系
無機質抗菌剤よりなるノバロン粒子(商品名:東亜合成
(株)製)等がある。また、それ自体抗菌性を有する市
販の織布ないし不織布としては、デュポン社の抗菌性ソ
ンタラ(登録商標)や東洋紡のバイオシル(登録商標)
等がある。
【0053】なお、ウェットマットWのマット本体1上
面に毛羽防止部4が設けられている場合でも、毛羽防止
部4が散点状に設けられているので、水分は毛羽防止部
4間の間隙4aからマット本体1に吸収され、靴等でマ
ット本体1を踏むと、当該間隙4aからマット本体1中
のアルカリ水がしみ出し、殺菌効果を発揮する。また、
フレーム2を備えたウェットマットWの場合(図3参
照)、マット本体1を踏みつけた際に出てくる水分がフ
レーム2により外へ漏出することが防止され、堤防部6
を設けたウェットマットWの場合(図2参照)、同じよ
うに水分がマット本体1の側面からマット本体1外へ漏
出することが防止されるので、衛生的かつ経済的であ
る。
【0054】以上の実施形態では、含有剤(アルカリ性
化合物、界面活性剤、保水剤)を再結晶した粉粒状態で
含有し、使用時に水分を供給して湿潤状態とするウェッ
トマットWを例示した。しかし、本発明は、ウェットマ
ットWが湿潤状態のまま販売又は取引されることを妨げ
るものではない。湿潤状態で販売又は取引される場合、
アルカリ性化合物の含浸量は、殺菌効果を発揮できるよ
うにpH9〜12程度の水溶液となる量である。界面活
性剤が含浸されている場合には、界面活性剤の濃度が界
面活性剤原液について0.1〜0.5vol%となる量
である。
【0055】また、マット本体1の製造方法としては、
上記のように析出による再結晶を待つ手段に限られず、
含有剤を粉体のままマット本体1の内部に混入させるよ
うにしてもよい。また、使用時に水分を供給するタイ
プ、当初から湿潤状態のタイプのいずれであっても、本
発明に係るウェットマットWでの水分の蒸発は吸水性ポ
リマーを使用した場合に比べて早いので、毎日水分を供
給する必要があるが、水分の適宜供給により1週間程度
は使用できる。
【0056】水分の供給後も蒸散は続くが、蒸発するの
は水分のみで、アルカリ化合物等の含有剤は人間がマッ
ト本体1を通過することにより履物等に付着して持ち出
される量以外はほとんど減少しないので、水分の適宜供
給によって殺菌効果を発揮できるpH濃度を維持し続け
ることができる。ところで、使用後のマット本体1は焼
却処分するのが一般的であり、特に可燃性の不織布で構
成されている場合には、焼却処分が容易になる。フレー
ム2を備えている場合には、マット本体1のみを廃棄し
てフレーム2は再利用することができ、フレーム2の凹
部2aに新たな別のマット本体を取りつければよい。
【0057】なお、マット本体1にアルカリ性化合物を
含浸しているが界面活性剤は含浸されていない場合にお
いて、使用時に水とともに界面活性剤をマット本体に供
給しても、予めアルカリ性化合物及び界面活性剤を含浸
したマット本体と同様の効果を期待し難い。その理由
は、界面活性剤を後からマット本体1に供給する場合
は、当初からマット本体1内部に界面活性剤を含有させ
ている場合に比べ、マット本体表面にぬめりがあるこ
と、及び、マット本体1が予め界面活性剤を含有する
ものでは、乾燥しても水分の補給だけで界面活性効果を
取り戻せるが、使用時に界面活性剤を添加する場合は、
乾燥により界面活性剤の効果をほぼ喪失するため、1週
間程度使用する場合には、水分とともに界面活性剤を毎
日供給する必要があり、結果として割り高になるからで
ある。従って、界面活性剤とアルカリ性化合物併用の効
果を望む場合には、界面活性剤を当初からマット本体に
含有させておくことが望ましい。次に、ウェットマット
Wにおけるアルカリ性水溶液及び界面活性剤の殺菌効果
について説明する。 〔アルカリ性水溶液の濃度と殺菌効果との関係〕本発明
によるウェットマットWの殺菌効果を調べるに当たり、
菌として、Staphylococcus aureus IFO 12732 (黄色ブ
ドウ球菌)及びPseudomonas aeruginosaIFO 3080 (緑
膿菌)を用いた。また、アルカリ性化合物として、炭酸
ナトリウムを用いた。
【0058】滅菌した生理食塩水に、約107 cells/m
l になるように菌を加えて、菌懸濁液を調製した。この
菌懸濁液100ml に、最終濃度で1重量%、0.3重量
%、又は0.1重量%となるように炭酸ナトリウムを添
加して、室温(23〜25℃)にて一昼夜放置した。放
置後の菌懸濁液を生理食塩水で希釈し、希釈液の0.1
mlをトリプトソーヤ寒天平板培地(日水製薬製)に塗
抹し、これをフラン器にて37℃で48時間培養し、得
られたコロニー数より菌数を測定した。
【0059】対照として、炭酸ナトリウムを添加しない
菌懸濁液を、室温で一昼夜放置した後、同様にして菌数
を測定した。測定結果を、表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】表1から分かるように、黄色ブドウ球菌及
び緑膿菌のいずれに対しても、0.3〜1.0重量%で
有意な抗菌力を示した。なお、1%の炭酸ナトリウム水
溶液のpH値は10.6であり、0.3%の炭酸ナトリ
ウム水溶液のpH値は10.0であり、0.1%の炭酸
ナトリウム水溶液のpH値は9.7であった。生理食塩
水のpH値は6.4であった。
【0062】次に、炭酸ナトリウムの代わりに、炭酸カ
リウムを用いて、同様にして殺菌効果を調べた。測定結
果を表2に示す。
【0063】
【表2】
【0064】表2からわかるように、炭酸カリウムを用
いた場合も、炭酸ナトリウムと同様に顕著な殺菌効果を
示した。一般に、水素イオンは菌体の細胞壁等を自由に
浸透することができるため、拡散により水素イオン濃度
は菌体内外において平衡に保たれる。しかし、微生物の
至適pHは2.5〜9(例えば、大腸菌の至適pHは
6.4〜7.8であり、コレラ菌の至適pHは7.8〜
8.4であり、真菌の至適pHは4.5〜6.0)であ
る。従って、菌体外の環境をpH9〜12のアルカリ性
に保持した場合、菌体内のpHも9〜12に変化し、そ
の結果、菌体の成育に必要な酵素等のタンパク質が変性
するため、菌体は死滅又は物理的な衝撃や乾燥等の環境
変化に対して破菌しやすくなる。
【0065】このように、本発明における殺菌の機構
は、水素イオン濃度の変化による菌体内のタンパクの変
性等によると解されることから、他のアルカリ性化合物
の水溶液であってもpH値約9〜12程度となる濃度に
調節すれば同程度の抗菌力を発揮できる。さらに、水素
イオン濃度による本発明の殺菌機構は、抗生物質や消毒
剤に比べて特異性が少ないことから、広範な抗菌性を発
揮できる上に、菌体において耐性を獲得しにくい。 〔ウェットマットWの抗菌効果〕本発明の実施例とし
て、レーヨン製の不織布(920mm×780mm)で
構成され、且つ炭酸ナトリウム約5g含浸されたマット
本体を用いた。
【0066】乾燥状態のマット本体に、菌懸濁液500
mlを散布した後(炭酸ナトリウムの最終濃度約1重量
%)、履物で踏みつけて、菌懸濁液をマット本体全体に
均一に拡散含浸させた。なお、菌懸濁液としては、黄色
ブドウ球菌、消毒剤耐性黄色ブドウ球菌、緑膿菌をそれ
ぞれ107 cells/ml となるように、生理食塩水に加え
ることにより調製した。
【0067】菌懸濁液散布後、所定時間(1時間,12
時間,又は24時間)室温にて放置し、その後、マット
本体を裁断して、100mm×100mmのマット本体
試験片を得た。この試験片をさらに5mm×20mm程
度の小片に裁断し、その小片を広口瓶に入れ、100m
lの生理食塩水を加えて200回転/分で1時間攪拌
し、マット本体試験片の小片に付着している菌を払拭し
て、菌懸濁液を得た。なお、生理食塩水を100ml加
えた後、pH値を6.5〜7.5に調整した。pH値を
調整した菌懸濁液の0.1mlを、トリプトソーヤ寒天
平板培地(日水製薬製)に塗抹し、これをフラン器にて
37℃で48時間培養し、得られたコロニー数より菌数
を測定した。
【0068】対照として、炭酸ナトリウムを含浸してい
ない不織布単独で構成される同形同大のマット本体に、
菌懸濁液500mlを散布し、菌懸濁液をマット全体に
均一に拡散含浸させて、24時間放置した後、上述と同
様にして菌数を測定した。測定結果を、表3に示す。
【0069】
【表3】
【0070】この表3から、炭酸ナトリウムを含浸した
マットでは、いずれの菌に対しても、1時間経過後には
菌数が著しく減少しており、さらに24時間後には菌の
大部分が死滅していて、本発明のマット本体が殺菌効果
を発揮していることがわかる。特に、消毒剤耐性を獲得
した黄色ブドウ球菌についても、著しい菌数の減少が認
められ、消毒剤耐性を獲得していない菌と同様に殺菌性
を発揮できることがわかる。
【0071】なお、対照実験において、処理前よりも2
4時間放置後では、若干菌数が減少しているが、これ
は、測定において不織布から付着している菌を完全には
払拭できなかったためと解される。 〔アルカリ性化合物と界面活性剤併用の効果〕殺菌効果
を調べるにあたり、菌として、Staphylococcus aureus
IFO 12732 (黄色ブドウ球菌)を用いた。また、アルカ
リ性化合物として、炭酸ナトリウムを用い、界面活性剤
として、株式会社オーディーアイ製のネストリーナ・マ
ーサ(商品名)を用いた。ネストリーナ・マーサは、非
イオン界面活性剤、アミン系ソープを主原料とした洗浄
剤JSB−1と弱酸〜弱アルカリで安定な界面活性剤O
DN−1との混合物である。
【0072】1重量%の炭酸ナトリウム水溶液99.7
mlに、ネストリーナ・マーサ原液0.3mlを加えて
混合した。この混合液のpHは10.5であり、界面活
性剤の最終的濃度は0.3vol%である。この混合液
に1〜7×106 cells/mlになるように菌を加え、10
分、1時間、6時間、12時間、24時間後の菌数を測
定した。
【0073】24時間後(2日目)、再び1〜7×10
6 cells/mlになるように菌を加え、10分、1時間、6
時間、12時間、24時間後の菌数を測定し、同様の操
作を6日間繰り返した。測定結果を図5に示す。図5に
おいて、縦軸は菌数(cells/ml)を示し、横軸は時間及
び日数を示している。また、図3中の〜は、菌の接
種した時点を、1日目をとして6日目まで各順に示し
ている。
【0074】比較例として、1.0重量%の炭酸ナトリ
ウム水溶液(pH10.5)に1〜7×106 cells/ml
になるように菌を加え、10分、1時間、6時間、12
時間、24時間後の菌数を測定し、同様の操作を6日間
繰り返した。また、0.3vol%のネストリーナ・マ
ーサ水溶液に1〜7×106 cells/mlになるように菌を
加え、10分、1時間、6時間、12時間、24時間後
の菌数を測定し、同様の操作を6日間繰り返した。
【0075】測定結果を図6に示す。図6において、縦
軸は菌数(cells/ml)を示し、横軸は時間及び日数を示
している。また、直線(−○−)は炭酸ナトリウム溶液
の結果であり、点線(─●─)はネストリーナ・マーサ
水溶液の結果である。また、図6中の〜は、菌の接
種した時点を、1日目をとして6日目まで各順に示し
ている。
【0076】図5及び図6の結果から次のようなことが
わかる。すなわち、界面活性剤のみの場合、1日目では
菌接種後約10分後には菌の大部分が死滅しているが、
日数が経つにつれて、殺菌効果がなくなり、4日後には
殺菌効果はほとんど認められない。また、炭酸ナトリウ
ム溶液のみの場合、優れた殺菌効果を少なくとも5日間
発揮することができるが、大部分の菌の死滅に最低でも
1時間要し、日数が経つにつれて菌死滅に要する時間が
長くなる。
【0077】一方、炭酸ナトリウムとネストリーナ・マ
ーサとの混合液の場合、菌接種後10分間で大部分の菌
が死滅し、この殺菌の即効性及び殺菌効果は日数の経過
により低下する傾向にあるものの、6日間にわたって十
分な殺菌効果が認められた。次に、本発明の第二の実施
形態を説明する。図7及び図8は、当該第二の実施形態
として採用されるウェットマットW又は補助マットDの
斜視図である。この場合のマットも、裏面に止水のため
の止水フィルム12がラミネートされたマット本体11
を備えている。マット本体11には、先に述べたよう
に、殺菌剤や消毒剤を含浸できる繊維素材や高分子発泡
樹脂が用いられている。
【0078】止水フィルム12としては、ポリエチレ
ン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル等が用い
られ、その厚さは10〜100μm程度あれば十分であ
る。止水フィルム12は、マット本体1の使用時に含浸
された消毒ないし殺菌薬液の止水の役目を果たす。マッ
ト本体11には、予め水を含ませることによって殺菌剤
や消毒剤の機能を果たす薬剤を含有させたものを使用し
てもよいし、後から使用時に殺菌剤や消毒剤を含む薬液
を散布してマット本体11に含浸させてもよい。
【0079】この裏面に止水フィルム12がラミネート
されたマット本体11は、複数の剥離フィルム13を多
数積層してなる積層体の上に載置される。この積層体
は、図8に示すように、上面に粘着剤が塗布された剥離
フィルム13を多数枚積層することによって構成されて
いる。各剥離フィルム13の角隅部にはめくり用ワッペ
ン16が設けられ、積層された剥離フィルム13をこの
部分から一枚ずつ剥離できるようになっている。
【0080】この積層体の再下層の裏面には粘着剤が施
され、図8に示すように厚手のシート14に接着されて
いる。この厚手のシート14の裏面には、さらに、剥離
紙15が設けられている。この殺菌用マットは、積層体
の裏面の剥離紙15を剥がして厚手のシート14を露出
し、クリーンゾーンの出入口の床に接着して設置され
る。この後、マット本体11を止水フィルム12を下に
して積層体の剥離フィルム13の上に載置する。積層体
の剥離フィルム13の上面には、粘着剤が塗布されてい
るので、マット本体11は止水フィルム12を介して積
層体の上に固定される。
【0081】次に、マット本体11に殺菌剤や消毒剤を
含む薬液を供給して含浸させる。前述のようにマット本
体11が予め含有剤を結晶状態で含有する場合は、マッ
ト本体11に水をかけるだけでよい。使用開始後1〜数
日経過してマット本体11の表面が汚れてきたら、積層
体のめくりワッペン16の部分から剥離フィルム13を
マット本体11とともにはぎ取り、焼却その他により廃
棄する。そして、新しいマット本体11を積層体の次の
剥離フィルム13の上に載置し、再度、上記の行動を繰
り返せばよい。
【0082】図9は、さらに第三の実施形態として採用
されるウェットマットW又は補助マットDの斜視図であ
る。この場合のマットは、マット本体11を、表裏両面
に粘着性を有する熱可塑性エラストマーシート18の上
に載置することによって構成されている。この粘着性を
有するエラストマーシート18は、表面に塵埃が付着し
て汚れても、水洗によって塵埃や汚れが容易に落とすこ
とができ、再度粘着性を発揮して繰り返し使用できる性
質を有している。
【0083】この実施形態では、この熱可塑性エラスト
マーシート18を所定の位置に設置し、その上にマット
本体11を載置する。マット本体11は熱可塑性エラス
トマーシート18の表面の粘着性により同シート18上
に接着する。マット本体11には薬液を直接含浸させる
か又は水を供給して薬効を発現させ、一定期間の使用の
後、熱可塑性エラストマーシート18からマット本体1
1だけをはぎ取って焼却その他により廃棄すればよい。
使用済みのマット本体11を剥がしても熱可塑性エラス
トマーシート18の表面は粘着性を維持しているので、
新たなマット本体11を同シート18の上に再度載置す
ることにより、繰り返し使用できる。
【0084】次に、図7〜9に示した第二及び第三の実
施形態の実験例を示す。 〔実験例1〕図7に示すアクリル系粘着剤を塗布した厚
さ50μmのポリエチレンフィルム13を30枚積層し
て積層体を構成し、この積層体を、両面にアクリル系粘
着剤っを塗布した厚さ100μmの厚手のポリエステル
シート14の上に載せて接着固定した。同シート14の
裏面はシリコンコートを施した剥離紙15で被覆した。
【0085】このようにして構成された大きさ600m
m×1200mmの敷物(大研医器(株)製 商品名
「DKIマット」)の上に、大きさ600mm×100
0mm、目付150g/m2 のレーヨン100%の乾式
不織布の裏面に厚さ30μmのポリエステルフィルム1
2をラミネートしてなるマット本体11を載せて接着固
定し、ウェットマットを作成した。
【0086】なお、乾式不織布には予め消毒剤としてア
ルキルポリアミノエチルグリシンの3%溶液を含浸さ
せ、その後乾燥したものを用いた。このウェットマット
を病院の手術室の入口に剥離紙15を剥がして設置し、
マット本体11に散水して使用したところ、1週間で汚
れが目立ったので、めくり用ワッペン16のところから
積層体の剥離フィルム13をマット本体11とともに剥
離し、これを廃棄した。
【0087】その後、新しいマット本体11を積層体の
次の剥離フィルム13の上に載せて接着固定し、これを
繰り返した。このさい、マット本体11は剥離フィルム
13とともに容易に剥離でき、取り替え作業は順調に行
えた。 〔実験例2〕厚さ3mmのセルローススポンジである
「チャフローズ スポンジ」(商品名(株)チャフロー
ズコーポレーション製)にポリエステルフィルム12
(厚さ50μm)をラミネートし、消毒剤として塩化ベ
ンザルコニウム5%溶液を含浸させて乾燥し、これを5
00mm×1000mmにカットしてマット本体11と
した。
【0088】他方、両面が粘着性を有しかつポリエステ
ルフィルムで覆われた厚さ1mmのポリウレタンエラス
トマー8(商品名「TGシート」 持田商工(株)製)
を500×1000mにカットし、上面のフィルムを剥
がして上記マット本体11をその上に載せて接着固定し
た。このようにして得られたウェットマットを、エラス
トマー8裏面のフィルムを剥離して実験例1と同様に病
院に設置した。その10日後にマット本体11を止水フ
ィルム12とともにポリウレタンエラストマー8から剥
がし、これを廃棄した。
【0089】その後、新しいマット本体11を同じエラ
ストマー8の上に載置して接着固定し、これを繰り返し
た。このさい、剥離は容易に行え、作業性は良好であっ
た。
【0090】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
ウェットマットによって薬剤を含んだ溶液が履物の裏に
付着しても、その溶液をウェットマットの側方に設けた
補助マットで即座に拭き取ることができるので、クリー
ンゾーンの床面の汚れや同ゾーンでの細菌の増殖を防止
することができる(請求項1,6)。
【0091】また、本発明によれば、補助マットがそこ
に付着した細菌の増殖を規制する抗菌性を有するので、
クリーンゾーン内で細菌が再繁殖するのをより確実に防
止することができる(請求項2,7)。更に、ウェット
マットの外周縁部に堤防部が設けてあるので、ウェット
マット内の溶液が補助マットへ漏れるのを防止でき、補
助マットの拭き取り機能を有効に確保できる(請求項
5)。
【図面の簡単な説明】
【図1】ウェットマットと補助マットよりなる殺菌用マ
ットの斜視図である。
【図2】ウェットマットと補助マットよりなる他の殺菌
用マットの斜視図である。
【図3】フレームを有するウェットマットの一例を示す
断面図である。
【図4】フレームを有しないウェットマットの一例を示
す断面図である。
【図5】ウェットマットにおける界面活性剤及びアルカ
リ性化合物併用の効果を説明するためのグラフである。
【図6】ウェットマットにおける界面活性剤及びアルカ
リ性化合物併用の効果を説明するための比較例のグラフ
である。
【図7】ウェットマット又は補助マットの第二の実施形
態を示す斜視図である。
【図8】図7のマットに使用する積層体の斜視図であ
る。
【図9】ウェットマット又は補助マットの第三の実施形
態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 マット本体 2 フレーム 2c 堤防部 6 堤防部 M 殺菌用マット W ウェットマット D 補助マット

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クリーンゾーンの出入口に殺菌剤を含浸
    させた湿潤状態で設置されるウェットマット(W)を有
    する殺菌用マットにおいて、 前記ウェットマット(W)の側方に、液体吸収性を有す
    る補助マット(D)が乾燥状態で設けられていることを
    特徴とする殺菌用マット。
  2. 【請求項2】 補助マット(D)は、当該補助マット
    (D)に付着した細菌の増殖を規制する抗菌性を有する
    請求項1記載の殺菌用マット。
  3. 【請求項3】 ウェットマット(W)は、殺菌剤として
    アルカリ性化合物を含有する請求項1又は2記載の殺菌
    用マット。
  4. 【請求項4】 ウェットマット(W)は、更に、界面活
    性剤若しくは保水剤又はこれら双方を含有する請求項1
    〜3のいずれかに記載の殺菌用マット。
  5. 【請求項5】 ウェットマット(W)の外周縁部に、こ
    のウェットマット内の溶液が側方に漏れるのを防止する
    堤防部(2c)(6)が設けられている請求項1〜4の
    いずれかに記載の殺菌用マット。
  6. 【請求項6】 クリーンゾーンの出入口に乾燥状態で設
    置される液体吸収性を有する補助マット(D)であっ
    て、殺菌剤が含浸された湿潤状態として前記出入口に設
    置されるウェットマット(W)の側方に設けられること
    を特徴とする補助マット。
  7. 【請求項7】 当該補助マット(D)に付着した細菌の
    増殖を規制する抗菌性が付与されている請求項6記載の
    補助マット。
  8. 【請求項8】 請求項3〜5記載のウェットマット
    (W)の側方に設けられる請求項6又は7記載の補助マ
    ット。
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