JPH09245967A - 有機薄膜el素子 - Google Patents

有機薄膜el素子

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JPH09245967A
JPH09245967A JP8054584A JP5458496A JPH09245967A JP H09245967 A JPH09245967 A JP H09245967A JP 8054584 A JP8054584 A JP 8054584A JP 5458496 A JP5458496 A JP 5458496A JP H09245967 A JPH09245967 A JP H09245967A
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JP
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thin film
injection electrode
organic thin
electron injection
electrode
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JP8054584A
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English (en)
Inventor
Akira Gyotoku
明 行徳
Hideaki Iwanaga
秀明 岩永
Shintaro Hara
慎太郎 原
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Panasonic Holdings Corp
Original Assignee
Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、低仕事関数、高安定性を兼ね備え
た電子注入電極材料を用いることで、経時変化が少なく
長寿命であるとともに、発光特性に優れた信頼性の高い
有機薄膜EL素子を提供することを目的とする。 【解決手段】 透明基板であるガラス基板2上に電子注
入電極6と、正孔注入電極3と、電子注入電極6と正孔
注入電極3間に正孔輸送層4と発光層5からなる有機薄
膜層と、が形成された本発明の有機薄膜EL素子1であ
って、電子注入電極6がMgを含有するAl系合金から
なる構成を備えた。これにより、電子注入電極6の仕事
関数の値を増大させずに、電子注入電極6の耐蝕性を向
上させることができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液晶ディスプレイ
のバックライト,表示,光通信の光源などに用いられる
電気的発光素子である有機薄膜エレクトロルミネッセン
ス(以下、有機薄膜EL素子と称す)に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、エレクトロルミネッセンス(以
下、ELと称す)がCRTや光通信等の分野に利用され
ている。EL素子とは、固体蛍光性物質の電界発光、又
は、エレクトロルミネッセンスといわれる現象を利用し
た発光デバイスであり、現在、無機系材料を発光体とし
て用いた無機EL素子が実用化され液晶ディスプレイの
バックライトやフラットディスプレイ等へ応用されてい
る。しかしながら、無機EL素子は、素子を発光させる
ために100〜200Vの高電圧が必要とされることや
無機材料であるために色の三原色の1つである青色発光
を行うことが困難であるために、カラー化することに限
界がある。
【0003】一方、有機系材料を用いた有機薄膜EL素
子に関しても古くから研究が行われてきたが、無機EL
素子に比べて発光効率等の性能が著しく劣っていたた
め、本格的な実用化には至っていなかった。しかし、1
987年にTangらにより提案された有機薄膜EL素
子(C.W.Tang and S.A.Vansly
ke:Appl.Lett.,51(1987)91
3)は、有機化合物層を正孔輸送層と発光層の2層に分
けた積層構造とし、発光層に効率よく正孔と電子を輸送
することにより、直流で作動し、しかも10V以下の低
電圧で1000cd/m2以上の高輝度発光を実現し
た。以後、陽極/正孔輸送層/発光層/陰極からなる構
成の有機薄膜EL素子の研究が盛んに行われている。有
機薄膜EL素子は有機材料を発光層に用いているため、
発光材料や層構造を変化させることにより、無機系では
難しかった青色発光を含む種々の発光波長を比較的簡単
に得られる等の特徴を有し、各種発光デバイスやフルカ
ラーディスプレイへの応用が期待されている。そのため
実用化に向けて、有機薄膜EL素子の高性能化や高効率
化を図るために種々のアプローチが行われており、より
正孔輸送能の高い正孔輸送層や量子効率の高い発光層な
ど各層に求められる有機材料の物性を高めるための材料
の開発が行われている。ここで、積層型の有機薄膜EL
素子は注入型のEL素子であり、その動作原理は無機半
導体における発光ダイオードやレーザーに対応する。そ
のため、陽極から注入された正孔と陰極から注入された
電子を効率よく発光層に到達させ、再結合させることが
素子の高効率化のために求められる。
【0004】以下に従来の有機薄膜EL素子について説
明する。図6は従来の有機薄膜EL素子の断面模式図で
ある。1′は従来の有機薄膜EL素子であり、2は下地
基板となる透明基板であるガラス基板、3は透明電極膜
よりなる正孔注入電極(陽極)であり、ITO(インジ
ウム・チン・オキサイドからなる酸化インジウム)等が
スパッタリング法又は真空蒸着法等により薄膜形成され
る。4は正孔輸送能を有する正孔輸送層で、N,N′−
ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−
1,1′−ジフェニル−4,4′−ジアミン(TPDと
称す)等からなる有機化合物が真空蒸着法を用いて形成
される。5は可視領域に蛍光を有する成膜性が良い蛍光
体からなる発光層で、トリス(8−ヒドロキシキノリ
ン)アルミニウム(Alq3と称す)等からなる有機化
合物が真空蒸着法を用いて形成される。発光層5におい
て、注入された正孔と電子の再結合が行われて発光す
る。6′は電子を発光層5に注入する電子注入電極(陰
極)で、AlLi,MgAg等の仕事関数の低い金属電
極膜から形成される。7は酸素や水分から有機材料及び
陰極材を保護するためGeOやSiO等の保護膜であ
る。
【0005】以上のように構成された従来の有機薄膜E
L素子において、以下その動作原理について説明する。
有機薄膜EL素子の駆動方法としては、正孔注入電極3
と電子注入電極6′の間に直流もしくは交流の電界を印
加することにより、発光が行われる。すなわち、印加電
界により、正孔注入電極3から注入された正孔と電子注
入電極6′から注入された電子が効率よく発光層5に到
達する。発光層5に注入された正孔と電子は発光層5内
において、正孔と電子が再結合し、そのときの放出エネ
ルギーにより発光が行われる。発光効率を高めるために
は、いかに効率よく正孔及び電子を発光層5に到達させ
るかが重要である。すわわち、有機薄膜EL素子の正孔
と電子の移動については、正孔は正孔注入電極3から正
孔輸送層4のエネルギー障壁を越えて移動し、さらに正
孔輸送層4から発光層5のエネルギー障壁を越えて移動
する。これに対して、電子の移動は、電子注入電極6′
から発光層5のエネルギー障壁の差を超えて発光層5に
注入される。効率良く再結合を起こすためには正孔と電
子の移動時になるべくエネルギー障壁の少ない積層構成
が望まれる。
【0006】以上のような有機薄膜EL素子において
は、発光材料を変化させることにより、無機EL素子で
は難しかった青色発光を含む種々の発光波長を有する物
が得られており、各種発光デバイスやフルカラーディス
プレイへの応用が期待されている。
【0007】このような発光機構に基づく従来の有機薄
膜EL素子において、発光特性を向上させるには、主と
して、1)発光層5、正孔輸送層4等の有機薄膜の改
善、2)正孔注入電極3、電子注入電極6′等の改善が
必要となる。これらの内、2)の電子注入電極材の改良
は発光層へ電子を入り易くすることを目的とするため、
電子注入電極6と発光層5との障壁を低くしなければな
らない。従って、電子注入電極材料としては、仕事関数
が小さく電気伝導性の高いことが求められ、例えば、米
国特許第3173050号には、NaK合金を用いた場
合に高い量子効率が得られることが開示されている。し
かし、アルカリ金属同士の合金であるため活性が高く、
化学的に不安定である。そのため、発光面中にいわゆる
ダークスポットと呼ばれる未発光部が、保存時あるいは
連続発光時に成長し、著しい輝度低下を生じ、経時劣化
を生じさせ易くなる。そこで、現在、米国特許第488
5211号に記載のMgAgや特開平5−121172
号公報に記載のAlLi等の比較的安定な合金が主とし
て用いられている。一般に、AlLi等のAl系合金は
アルカリ金属に比べて安定であり、腐食しにくい特性を
有するが、それでもなお孔食と呼ばれるピンポイントの
腐食が生じる。そのため、有機薄膜EL素子において
は、その部分がダークスポットとなってしまう。又、M
gAgの場合もアルカリ金属と比べると高い安定性を有
するものの、Al合金と比べると高い安定性を有してい
るとは言えず、ともに実用レベルに達しているとは言い
がたい。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】この有機薄膜EL素子
は、低仕事関数と高安定性は一般的には相反する関係に
あるため、これまでの電子注入電極材料ではともに満足
する特性を得るには困難である。従って、有機薄膜EL
素子の電子注入電極材料に求められる特性としては、発
光特性の向上においては低い仕事関数を有し、信頼性の
向上においては高い安定性が要求されている。
【0009】本発明は、低仕事関数、高安定性を兼ね備
えた電子注入電極材料を用いることで、経時変化が少な
く長寿命であるとともに、発光特性に優れた信頼性の高
い有機薄膜EL素子を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】この課題を解決するため
に本発明は、透明基板上に電子注入電極と、正孔注入電
極と、電子注入電極と正孔注入電極間に有機薄膜層と、
が形成された有機薄膜EL素子であって、電子注入電極
がMg又はMnを含有するAl系合金からなる構成を備
えたものである。
【0011】これにより、電子注入電極の仕事関数の値
を増大させずに、電子注入電極の耐蝕性を向上させると
いう作用を有する。この結果、有機薄膜EL素子の輝度
特性を安定させるとともに、耐久性を向上させ、素子の
長寿命化を計ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明の請求項1に記載の有機薄
膜EL素子は、透明基板上に電子注入電極と、正孔注入
電極と、電子注入電極と正孔注入電極間に有機薄膜層
と、が形成された有機薄膜EL素子であって、電子注入
電極がMgを含有するAl系合金からなる構成を備えた
ものであり、電子注入電極の仕事関数の値を増大させず
に、電子注入電極の耐蝕性を向上させるという作用を有
する。この結果、良好な輝度特性を有し、しかも経時変
化が少なく信頼性を向上させることができる。
【0013】請求項2に記載の有機薄膜EL素子は、請
求項1において、電子注入電極が、更にLiを含む構成
を備えたものであり、Mgを含有するAl合金にLiを
含有させることにより、電子注入電極の仕事関数が低下
するといる作用を有する。この結果、輝度特性を改善す
るとともに、印加電圧の低電圧化を実現することができ
る。
【0014】請求項3に記載の有機薄膜EL素子は、請
求項2において、電子注入電極が、(AlxLiyz
Zで表され、Mgが含まれる割合Zが原子量%におい
て0.1≦Z≦5.0である構成を備えたものであり、
耐蝕性を著しく向上させ有機薄膜EL素子のダークスポ
ット面積の増加を低減するという作用を有する。この結
果、素子の耐久性を著しく向上させることができる。
【0015】請求項4に記載の有機薄膜EL素子は、透
明基板上に電子注入電極と、正孔注入電極と、電子注入
電極と正孔注入電極間に有機薄膜層と、が形成された有
機薄膜EL素子であって、電子注入電極がMnを含有す
るAl系合金からなる構成を備えたものであり、電子注
入電極の仕事関数の値を増大させずに、電子注入電極の
耐蝕性を向上させるという作用を有する。この結果、良
好な輝度特性を有し、しかも経時変化が少なく信頼性を
向上させることができる。
【0016】請求項5に記載の有機薄膜EL素子は、請
求項4において、電子注入電極が、更にLiを含む構成
を備えたものであり、Mnを含有するAl合金にLiを
含有させることにより、電子注入電極の仕事関数が低下
するといる作用を有する。この結果、輝度特性を改善す
るとともに、印加電圧の低電圧化を実現することができ
る。
【0017】請求項6に記載の有機薄膜EL素子は、請
求項5において、電子注入電極が、(AlxLiyz
Zで表され、Mnが含まれる割合Zが原子量%におい
て0.5≦Z≦3.0である構成を備えたものであり、
耐蝕性を著しく向上させ有機薄膜EL素子のダークスポ
ット面積の増加を低減するという作用を有する。この結
果、素子の耐久性を著しく向上させることができる。
【0018】以下本発明の実施の形態について、図1か
ら図5を用いて説明する。 (実施の形態1)図1は本発明の第1実施の形態におけ
る有機薄膜EL素子の断面図である。1は本発明の有機
薄膜EL素子である。2はガラス基板、3は正孔注入電
極、4は正孔輸送層、5は発光層である。これらは従来
例の図6と同様のものなので、同一の符号を付して説明
を省略する。従来例と異なるのは、電子注入電極6の組
成が、Mgを含有するAlLi系合金からなる点であ
り、更に、電子注入電極が、(AlxLiyzMgZで表
した時、Mgが含まれる割合Zが原子量%(以下,at
%と称す)において、0.1≦Z≦5.0である構成を
備えた点である。
【0019】以上のように構成された本発明の有機薄膜
EL素子1について、以下その製造方法を説明する。ま
ず、市販のITO付き(膜厚160nm)のガラス基板
2(日本板硝子製、P110E−H−PX)を用いて、
ITOを王水によりエッチングすることによりパターン
形成した後、ITOからなる正孔注入電極3が形成され
る。このガラス基板2を洗剤(セミコクリーン、フルウ
チ化学社製)を用いて5分間超音波洗浄した後、続いて
純水を用いて5分間超音波洗浄を行い、更にアンモニア
過酸化水素溶液(1:1:5)で5分間超音波洗浄を行
った後、最後に60℃の純水を用いて5分間超音波洗浄
を行い、窒素ブロアーにて水分を飛ばし乾燥させる。こ
の洗浄されたガラス基板2を抵抗加熱真空蒸着装置内の
基板ホルダーにセットし、チャンバー内を2×10-6
orr以下の真空度まで減圧した後、N,N′−ジフェ
ニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−1,
1′−ジフェニル−4,4′−ジアミンを蒸着源とし、
約500Å蒸着し、正孔輸送層4を形成する。続いて、
トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウムを蒸着
源とし、約500Å蒸着し、発光層5を形成する。正孔
輸送層4及び発光層5の蒸着速度は特に限定されるもの
ではないが、本実施の形態においては、共に蒸着速度を
2Å/秒とした。次に、同一真空内において、15at
%のLiを含むAlLi系合金とMgを蒸着源とし、共
蒸着を行い所定の膜厚の電子注入電極6を形成する。こ
の時、AlLiとMgの蒸着速度を変化させることによ
り、任意に組成比を変化させることが可能である。この
ようにして、ガラス基板2上に正孔注入電極3、正孔輸
送層4、発光層5及び電子注入電極6を形成したことに
より、本発明の有機薄膜EL素子1を得ることができ
る。
【0020】尚、本実施の形態において製造された有機
薄膜EL素子の構成は、Mgを含むAlLi系合金を備
えた電子注入電極を備えた点以外は、特に限定されるも
のではない。例えば、正孔注入電極/正孔輸送層/発光
層/電子注入電極の2層型素子以外にも、正孔注入電極
/発光層/電子注入電極の単層型素子や正孔注入電極/
発光層/電子輸送層/電子注入電極の2層型構造や正孔
注入電極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入
電極の3層型構造等であってもよい。又、本発明の実施
の形態の有機薄膜EL素子を形成する場合、電子注入電
極以外の材料は特に限定されるものではなく、種々の材
料を用いて形成することが可能である。例えば、正孔注
入電極の材料としては、ITO(インジウム・チン・オ
キサイド)以外に、SnO2にSbをドープしたATO
(アルミニウム・チン・オキサイド)、ZnOにAlを
ドープしたAZO(アルミニウム・ジンク・オキサイ
ド)等が挙げられる。又、正孔輸送層としては、正孔移
動度が大きく、成膜性の良い透明であるものが好まし
く、例えば、特開平4−129191号公報や特開平4
−132189号公報、特開平4−255692号公報
に記載の化合物を用いることができる。発光材料は、可
視領域に蛍光を有し成膜性の良いことが求められ、具体
的には、第41回応用物理学関係連合講演会講演予講集
No.3(1073頁)に記載のBe−ベンゾキノリノ
ール(BeBq2)化合物や特開平2−216791号
公報に記載のオキサジアゾール誘導体等が挙げられる。
又、電子注入電極の成膜方法についても特に限定される
ものではなく、本実施の形態で示した抵抗加熱蒸着法以
外にも、イオンビームスパッタ法、マグネトロンスパッ
タ法、電子ビーム蒸着法等の他の方法であったとして
も、成膜中に有機材料の耐熱性を越えるほどまでに温度
が上昇しなければ、どのような成膜方法であっても良
い。
【0021】(実験例1)次に、実験例1として、電子
注入電極6であるAlLiMgの組成が83at%A
l,15at%Li,2at%Mgになるように本発明
の有機薄膜EL素子1を作製した。又、電子注入電極6
の膜厚は1500Åとした。ここで、電子注入電極6の
組成以外は、本実施の形態1の製造方法と同様な方法で
作製した。
【0022】(比較例1,2)比較例1として、電子注
入電極6がAlLiで組成が85at%Al,15at
%Liになるように従来の有機薄膜EL素子を作製し
た。比較例2として、電子注入電極6がAlLiZnで
組成が83at%Al,15at%Li,2at%Zn
になるように有機薄膜EL素子を作製した。ここで、電
子注入電極の組成以外は、本実施の形態1の製造方法と
同様な方法で作製した。又、電子注入電極6の膜厚は実
験例1と同様に1500Åとした。
【0023】このようにして作製された実験例1、比較
例1及び2の有機薄膜EL素子において、正孔注入電極
3(陽極)と電子注入電極6(陰極)に直流電圧を印加
して発光特性を測定した。その結果を図2に示す。
【0024】図2から明らかなように、実験例1のAl
LiMg合金を電子注入電極6に用いた本発明の有機薄
膜EL素子1は、従来技術である比較例1の有機薄膜E
L素子と比べて輝度特性が若干向上するのに対して、比
較例2で示したAlLi合金にZnを添加した電子注入
電極6を用いた有機薄膜EL素子は、輝度特性が低下
し、実験例1に対して2〜3Vの印加電圧の上昇が見ら
れる。これは、AlLi系合金にMgを加えた電子注入
電極6の場合には、仕事関数の増加がないため、輝度特
性にほどんど影響しないが、Znを加えた場合、仕事関
数が増加するために電圧上昇が起きたと考えられる。実
際に、実験例1、比較例1及び2における組成の電子注
入電極6の仕事関数をAC−1(理研計器製)を用いて
測定したが、各仕事関数は3.6eV、3.65eV、
3.8eVとなり、この差が図2で示した電圧−輝度特
性の違いとして現れたと考えられる。
【0025】(実験例2)次に、実験例2として、実験
例1と同様の構造の本発明の有機薄膜EL素子1を作製
した。その際、電子注入電極材に用いたAlLiMgに
おけるMgの添加量を変化させ、添加量とダークスポッ
トとの関係について調べた。その結果を図3に示す。
尚、測定方法としては、温度40℃湿度70%の環境の
基で300時間経過したのちの全体の発光面積に対する
ダークスポットの面積の占める割合を評価することによ
り行った。AlLi合金にMgを全く添加しない従来の
AlLi合金を電子注入電極に用いた有機薄膜EL素子
は、ダークスポットが全体の25%程度の面積を占める
のに対し、本実施の形態の範囲である5at%以下のM
gを添加した場合には、4%程度のダークスポットしか
観察されず、素子としての信頼性が著しく向上すること
が判った。これは、電子注入電極材自身の耐蝕性が向上
することによって、外部の湿度による電子注入電極材の
腐食が抑えられ、ダークスポットの成長が低減されたと
考えられる。但し、Mgの添加量が多くなりすぎると、
結晶粒の成長が起きやすくその部分からの腐食が進行
し、しかもMg自身はAlと比べて腐食しやすいため、
AlLiMg合金の耐蝕性が損なわれ、Mgを添加しな
い場合と比べてダークスポットの成長が大きくなる。図
3から明らかなように、AlLi合金へのMgの添加量
としては、0.1at%以上5.0at%以下であれ
ば、極めて効果的であることが判った。
【0026】以上のように本実施の形態によれば、電子
注入電極の仕事関数を増加させずに、電子注入電極の耐
蝕性を向上させることができた。
【0027】(実施の形態2)以下に、本発明の第2実
施の形態の有機薄膜EL素子の構成について説明する。
本発明の第2実施の形態の有機薄膜EL素子が実施の形
態1と異なるのは、図1において、電子注入電極6の組
成が、Mnを含有するAlLi系合金からなる点であ
り、更に、電子注入電極が、(AlxLiyzMnZで表
した時、Mnが含まれる割合Zがat%において、0.
5≦Z≦3.0である構成を備えた点である。
【0028】以上のように構成された本発明の第2実施
の形態の有機薄膜EL素子は、電子注入電極6の組成が
異なるのみで、実施の形態1と同様の方法で製造するこ
とができる。
【0029】(実験例3)次に、実験例3として、電子
注入電極6であるAlLiMnの組成が,84at%A
l,14at%Li,2at%になるように有機薄膜E
L素子を作製した。
【0030】(比較例3)比較例3として、電子注入電
極6がAlLiで組成が86at%Al,14at%L
iになるように従来の有機薄膜EL素子を作製した。
【0031】このようにして作製された実験例3、比較
例3の有機薄膜EL素子において、正孔注入電極3(陽
極)と電子注入電極6(陰極)に直流電圧5〜10V又
は7〜10Vを印加して輝度特性を測定した。その結果
を図4に示す。図4から明らかなように、MnをAlL
i合金に添加しても電圧−輝度特性は変化せず、Mnの
添加が有機薄膜EL素子の電子注入電極材によって非常
に効果的であることが判った。
【0032】(実験例4)次に、実験例4として、実験
例3と同様の構造の有機薄膜EL素子を作製した。その
際、電子注入電極材に用いたAlLiMnにおけるMn
の添加量を変化させ、添加量とダークスポットとの関係
について調べた。評価方法としては、実験例2における
図3で示した場合と同様の方法により行った。その結果
を図5に示す。Mnの添加効果はMgを添加した場合と
同様にダークスポットの成長を抑える効果があり、その
最適な添加量は0.5at%以上3.0at%未満であ
る。又、この組成範囲における仕事関数をAC−1によ
って測定したが、3.6eVと略一定であった。尚、M
nの添加効果はAlSr,AlBa,AlLa等のAl
Li合金以外にも効果があることを確認した。
【0033】以上のように本実施の形態によれば、電子
注入電極の仕事関数を増加させずに、電子注入電極の耐
蝕性を向上させることができた。
【0034】以上において、一般に、Al系合金は、主
な構成元素により1000系から7000系までの7種
類に分類され、成分の違いにより耐蝕性が異なる。例え
ば、航空機の構造材料として使用されるZn,Mgを添
加した7000系、鉄道車両に使用されるMg,Siを
添加した5000系等、その目的に応じて添加元素が選
択される。Al合金の耐蝕性を向上させる添加金属とし
ては、Cu,Mg,Zn,Mn,Si等が一般的であ
る。ところが、有機薄膜EL素子の電極材は特性上仕事
関数が低いことが求められるので、一般に、耐蝕性に乏
しい卑金属であるLi,Sr等を加えて仕事関数を低く
したAl系合金が用いられている。そのため、有機薄膜
EL素子の電子注入電極材料を検討する上で、Al金属
における添加効果による耐蝕性及び仕事関数の変化では
なく、AlLi系合金やAlSr系合金等における耐蝕
性及び仕事関数の変化についての知見が必要となる。そ
こで、AlLi系合金、AlSr系合金等における耐蝕
性を向上させるために、様々な添加元素の効果について
実験した結果、実施の形態1及び2で示したように、所
定の範囲の量のMg,Mnを添加したAlLi合金が耐
蝕性が著しく向上し、しかも仕事関数の増加が見られな
いことを見いだした。例えば、Znを加えた比較例の場
合における仕事関数の増加は0.1〜0.2eV程度で
あるが、これによって、印加電圧は2〜3V増加し、輝
度特性は劣化することになる。従って、本実施の形態の
AlLi合金にMg又はMnを添加した電子注入電極材
を用いた有機薄膜EL素子は、経時変化の少ない優れた
発光特性を得ることができた。尚、本実施の形態では、
AlLi合金に対するMg又はMnの添加効果について
のみ示したが、例えば、AlSr,AlBa,AlLa
等のAlLi合金以外の金属にも効果があることを確認
した。
【0035】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、電子注入
電極の仕事関数を増加させずに、電子注入電極の耐蝕性
を向上させ、長寿命で信頼性が高く、輝度特性に優れた
有機薄膜EL素子を実現するという有利な効果が得られ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施の形態における有機薄膜EL
素子の断面図
【図2】実験例1及び比較例1,2における電圧−輝度
特性図
【図3】実験例2の有機薄膜EL素子における電子注入
電極においてAlLi系合金へのMg添加量に対するダ
ークスポット面積の測定図
【図4】実験例3及び比較例1における電圧−輝度特性
【図5】実験例4の有機薄膜EL素子における電子注入
電極においてAlLi系合金へのMn添加量に対するダ
ークスポット面積の測定図
【図6】従来の有機薄膜EL素子の断面模式図
【符号の説明】
1 本発明の有機薄膜EL素子 1′ 従来の有機薄膜EL素子 2 ガラス基板 3 正孔注入電極(陽極) 4 正孔輸送層 5 発光層 6,6′ 電子注入電極(陰極) 7 保護膜

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】透明基板上に電子注入電極と、正孔注入電
    極と、前記電子注入電極と前記正孔注入電極間に有機薄
    膜層と、が形成された有機薄膜EL素子であって、前記
    電子注入電極がMgを含有するAl系合金からなること
    を特徴とする有機薄膜EL素子。
  2. 【請求項2】前記電子注入電極が、更にLiを含むこと
    を特徴とする請求項1に記載の有機薄膜EL素子。
  3. 【請求項3】前記電子注入電極が、(AlxLiyz
    Zで表され、前記Mgが含まれる割合Zが原子量%に
    おいて0.1≦Z≦5.0であることを特徴とする請求
    項2に記載の有機薄膜EL素子。
  4. 【請求項4】透明基板上に電子注入電極と、正孔注入電
    極と、前記電子注入電極と前記正孔注入電極間に有機薄
    膜層と、が形成された有機薄膜EL素子であって、前記
    電子注入電極がMnを含有するAl系合金からなること
    を特徴とする有機薄膜EL素子。
  5. 【請求項5】前記電子注入電極が、更にLiを含むこと
    を特徴とする請求項4に記載の有機薄膜EL素子。
  6. 【請求項6】前記電子注入電極が、(AlxLiyz
    Zで表され、前記Mnが含まれる割合Zが原子量%に
    おいて0.5≦Z≦3.0であることを特徴とする請求
    項5に記載の有機薄膜EL素子。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2006303527A (ja) * 1997-10-09 2006-11-02 Trustees Of Princeton Univ 高透明性非金属カソード

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