JPH0923984A - 金属製真空二重壁容器の製造方法 - Google Patents

金属製真空二重壁容器の製造方法

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JPH0923984A
JPH0923984A JP17781695A JP17781695A JPH0923984A JP H0923984 A JPH0923984 A JP H0923984A JP 17781695 A JP17781695 A JP 17781695A JP 17781695 A JP17781695 A JP 17781695A JP H0923984 A JPH0923984 A JP H0923984A
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JP
Japan
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metal
vacuum
container
double
brazing material
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JP17781695A
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English (en)
Inventor
Takanori Ariga
敬記 有賀
Naoyuki Takano
直幸 高野
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Japan Oxygen Co Ltd
Nippon Sanso Corp
Original Assignee
Japan Oxygen Co Ltd
Nippon Sanso Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 金属製二重壁容器の真空封止処理において低
温でろう付け可能な固形ろう材を用い、その二重壁容器
の排気孔を確実に真空封止することによって、軽量かつ
衝撃強度に優れた真空二重壁容器を歩留り良く製造可能
な方法の提供。 【解決手段】 排気孔28が穿設された金属製の外容器22
に金属製の内容器21を入れ、それぞれの口部で接合して
一体化し、かつ上記排気孔の周辺の外表面に金属被膜26
aを形成し、上部に開口を有する二重壁容器30とし、つ
いで排気孔の外側に近接しかつ排気孔を塞がない位置
に、液相線温度が300〜500℃でかつ上記金属被膜の金属
にろう付けが可能な固形ろう材29aを配置し、ついで固
形ろう材を配した二重壁容器を真空加熱炉内に入れて真
空雰囲気下で加熱し、該固形ろう材を溶融させて排気孔
に流し込み、その後冷却して排気孔をろう材で閉塞して
内容器と外容器の間の空間を真空封止することを特徴と
している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、魔法瓶、断熱コッ
プ、保温弁当箱等に使用される金属製真空二重壁容器の
製造方法に関し、詳しくは低温での真空封止を可能とし
た金属製真空二重壁容器の製造方法である。
【0002】
【従来の技術】ステンレス鋼などの鋼材からなる内容器
と外容器とを口部で接合して二重壁構造とし、これら内
容器と外容器との空間部を真空封止した金属製真空二重
壁容器の製造方法としては、特開平2−286111号
公報に記載の方法が知られている。図10はこの金属製
真空二重壁容器の製造方法によって製造される金属製真
空二重壁容器を示すものであり、この真空二重壁容器
は、外容器4の底面4bに空間部3に向けて凹む半球状
の凹部6を設け、この凹部6の中央部に排気孔5を穿設
し、この外容器と、別途に作製した内容器とをそれぞれ
の口元部で接合一体化し、得られた金属製二重壁容器1
0の底部を上向きに倒立し、排気孔5の近傍にろう材
(Niろう)を設置し、開口を下向きとした倒立状態の
まま真空加熱炉に置き、真空排気および加熱処理を行
い、ろう材の溶融温度(1040℃)まで昇温して、ろ
う材の表面張力によって排気孔5を塞ぎ、内外容器間を
真空封止して作製される。
【0003】また、チタンまたはチタン合金製の真空二
重壁容器の製造方法としては、特開平2−286110
号公報に記載の方法が知られている。図11はこのチタ
ン製魔法瓶の製造方法によって製造されるチタン製魔法
瓶を示すものであり、この魔法瓶は、排気孔16が形成
された有底筒状の外容器12の内側に、口部が外容器1
2の口部の径と等しい有底筒状に形成したチタンまたは
チタン合金からなる内容器11の外表面に、銅または
銀、ニッケル等からなる金属層18を形成したものを作
製し、内外容器を口部でスポット溶接等で接合し二重壁
容器としたのち、真空加熱炉に口部を下向きに設置し、
500℃以上800℃以下に加熱することにより、排気
孔16を、封止材17を固形ろう材19などによって外
部より封止して作製される。この固形ろう材19として
は、Ag−Cu−In系、Ag−Cu−Sn系、Ag−
Cu系、Cu−P系などのチタンとなじみの良いろう材
が用いられる。
【0004】ところで、上記ステンレス鋼製の真空二重
壁容器にあっては、落下、衝撃などによる外傷、変形を
防止できるような十分な機械的強度が必要とされ、特に
携帯用の容器においてはより大きい強度が要求される。
容器の強度は、それを構成するステンレス鋼板自体の硬
度にほぼ比例する。したがって、十分に硬度の高いステ
ンレス鋼材を用いるならば、二重壁容器を構成するステ
ンレス鋼板の厚さを薄くすることが可能になり、その結
果、ステンレス鋼製の真空二重壁容器の大幅な軽量化を
実現することが可能となる。ステンレス鋼板の硬度を高
めるために、ステンレス鋼板の加工において、結晶粒の
微細化およびマルテンサイト変態による硬化作用(加工
硬化)を利用する方法があり、これらの方法を利用して
ステンレス鋼板の硬度を高めるためには、塑性加工時の
加工度を大きくする必要がある。さらに、加工硬化され
たオーステナイト系ステンレス鋼板は、550℃以上の
温度で焼鈍することにより軟化して硬度が低下し、かつ
550〜800℃の温度で固溶炭素が炭化物となって析
出し、鋭敏化して粒界腐食を生じ易くなり、耐食性が低
下することから、加工硬度を増加させた二重壁容器に真
空加熱処理をし、二重壁容器の内外容器間の空間を真空
排気しつつ、排気孔をろう付けして閉塞する際の加熱温
度を550℃以下の低温で処理できれば、加工時の高い
硬度を維持できるとともに、その後の放冷における焼鈍
によって、より高い硬度を保った真空二重壁容器を製造
することが可能となる。また、チタンやチタン合金製の
二重壁容器についても同様に、550℃以下の低温で処
理できれば、高い硬度を保った真空二重壁容器を製造す
ることが可能となる。すなわち、ステンレス鋼板に予め
鋼板の時点で硬度を増すための加圧圧延を施し、その
後、丸め加工、絞り加工、張り出し加工、溶接加工等に
より金属製二重壁容器を形成して、その後、200〜5
50℃の温度下で真空排気処理して排気孔を真空封止
し、常温に戻すことにより低温焼鈍すれば、容器鋼板の
硬度を高めることができ、真空二重壁容器の大幅な軽量
化を実現することができる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の
ような低い温度範囲において二重壁容器をろう付けする
場合に、実用に供し得るとともに、食品容器に使用し得
るろう材は、従来のろう材には見当たらないのが実情で
ある。すなわち、溶接のJIS Z 3001の規定によ
れば、ろう材は、液相線温度で分類され、液相線温度が
450℃未満を軟ろう又ははんだ、液相線温度が450
℃以上を硬ろうと呼ぶが、液相線温度が400〜500
℃程度のろう材は、JIS規格品には存在しない。ま
た、液相線温度が300〜400℃程度のJISろう材
としては、Pbベースの低融点合金があるが、それらは
いずれも労働関係衛生法規で有害な金属とされ、また食
品容器には使用できない不都合がある。
【0006】また、一般に、低酸化ポテンシャル雰囲気
にある金属固体表面では、表面原子層と酸素原子との結
合により酸化物層が形成され、結合エネルギーが飽和状
態になるので、不活性である。このため、通常、ろう付
けに際し、まず、フラックスや還元性ガスの利用あるい
は高真空での加熱等により酸化物層を除去し、活性な面
を作ることが重要となる。しかしながら、低酸化ポテン
シャル雰囲気において酸化物層を除去することは極めて
難しい上に、液相線温度が300〜500℃程度のJI
S規格品のろう材には、ろう材中に還元作用を発揮する
元素を含んでいないため、酸化物除去ができない不都合
がある。
【0007】本発明は上記事情に鑑みてなされたもので
あり、ステンレス鋼板等の鋼板やチタン板の加工硬度を
高めて作製した二重壁容器の真空封止処理において低温
でろう付け可能な固形ろう材を用い、その二重壁容器の
排気孔を確実に真空封止することによって、軽量かつ衝
撃強度に優れた真空二重壁容器を歩留り良く製造可能な
方法の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明による金属製真空
二重壁容器の製造方法は、排気孔が穿設された金属製の
外容器に金属製の内容器を入れ、それぞれの口部で接合
して一体化し、かつ上記排気孔の周辺の外表面に金属被
膜を形成し、上部に開口を有する二重壁容器とし、つい
で上記排気孔の外側に近接しかつ排気孔を塞がない位置
に、液相線温度が300〜500℃でかつ上記金属被膜
の金属にろう付けが可能な固形ろう材を配置し、ついで
上記固形ろう材を配した二重壁容器を真空加熱炉内に入
れて真空雰囲気下で加熱し、該固形ろう材を溶融させて
上記排気孔に流し込み、その後冷却して排気孔をろう材
で閉塞して内容器と外容器の間の空間を真空封止するこ
とを特徴としている。
【0009】本発明による金属製真空二重壁容器の製造
方法の別な態様は、排気孔が穿設された金属製の外容器
に金属製の内容器を入れ、それぞれの口部で接合して一
体化し、上部に開口を有する二重壁容器とし、ついで上
記排気孔の周辺の外側に金網を配置し、ついで上記排気
孔の外側に近接しかつ排気孔を塞がない位置に、液相線
温度が300〜500℃でかつ上記金網と上記外容器の
金属に対してろう付けが可能な固形ろう材を配置し、つ
いで上記固形ろう材を配した二重壁容器を真空加熱炉内
に入れて真空雰囲気下で加熱し、該固形ろう材を溶融さ
せて上記排気孔に流し込み、その後冷却して排気孔をろ
う材で閉塞して内容器と外容器の間の空間を真空封止す
ることを特徴としている。
【0010】本発明の金属製真空二重壁容器の製造方法
において、上記金属被膜または上記金網をAg、Cu、
Sbおよびそれらの合金のうちから選択される一種の金
属とし、かつ上記固形ろう材を、上記金属被膜の少なく
とも1つの金属を含む固形ろう材として良い。
【0011】本発明の金属製真空二重壁容器の製造方法
において、上記固形ろう材を、Bi-Ag系、Sn-Ag
系、Sn-Cu系、Sn-Cu-P系、In-Cu-P系、
In-Ag-Cu系、Sn-Ag-Cu系、Sn-Ag-Sb
系、Sn-Sb-Cu系、In-Ag-Cu-P系、Sn-A
g-Cu-P系、Sn-Sb-Cu-P系のうちから選択さ
れる一種として良い。
【0012】本発明の金属製真空二重壁容器の製造方法
において、上記固形ろう材を、液相線温度が300〜5
00℃の固形ろう材主部の表面をAg、Cu、Sbから
選択される金属を少なくとも部分的に含む金属からなる
被膜を形成してなる固形ろう材として良い。
【0013】本発明の金属製真空二重壁容器の製造方法
において、上記金属被膜または上記金網をリンとの結合
性を有するNi,Crおよびそれらの合金から選択され
る金属とし、かつ上記固形ろう材を、Sn-Cu-P系、
In-Cu-P系、In-Ag-Cu-P系、Sn-Ag-C
u-P系、Sn-Sb-Cu-P系のうちから選択される一
種として良い。
【0014】本発明の金属製真空二重壁容器の製造方法
において、上記外容器の底部に、内容器側に凹む凹部を
設け、該凹部内に排気孔を穿設した二重壁容器とし、該
二重壁容器の開口を下に向けた状態として、該凹部の少
なくとも一部に入るように上記固形ろう材を配置しかつ
真空加熱炉内に設置し、上記真空封止を行うようにして
良い。
【0015】本発明の金属製真空二重壁容器の製造方法
において、上記外容器の胴部または肩部に、外容器底部
側に向けて凹む凹部を設け、該凹部内に排気孔を穿設し
た二重壁容器とし、該二重壁容器の開口を上向きとした
状態で、該凹部の少なくとも一部に入るように上記固形
ろう材を配置して真空加熱炉内に設置し、上記真空封止
を行うようにして良い。
【0016】
【発明の実施の形態】本発明の金属製真空二重壁容器の
製造方法は、排気孔の周辺の外表面に金属被膜を形成し
た外容器に内容器を入れ、それぞれの口部を接合して一
体化してなる金属製の二重壁容器を作製し、その排気孔
の周辺に液相線温度が300〜500℃であり、かつ上
記金属被膜の金属にろう付けが可能な固形ろう材を配し
て真空加熱炉に設置し、真空雰囲気下で加熱し、該固形
ろう材を溶融させて上記排気孔に流し込み、その後冷却
して排気孔をろう材で閉塞して内容器と外容器の空間を
真空封止することにより、固形ろう材を溶融し得る30
0〜500℃の低温での真空加熱処理によって排気孔の
真空封止が可能であり、ステンレス鋼やチタンを材料と
して加工硬度を高めた外容器を二重壁容器に使用した場
合、その外容器の硬度を低下させずに真空二重壁容器が
製造可能である。また、溶融したろう材が、親和性のあ
る金属被膜に接して排気孔を塞いで固化することによ
り、排気孔が強固に封止される。ステンレス鋼やチタン
などの表面に不動態酸化膜が形成される金属材料からな
る外容器の排気孔の周辺に金属被膜を形成するには、排
気孔の周辺の外表面のみに不動態酸化膜を化学的にまた
は研削等の機械加工で除去する前処理を施し、その後、
化学メッキ、電解メッキなどの方法を用いて形成すれば
良く、金属被膜をAg、Cu、Sbおよびそれらの合金
のうちから選択される一種とし、固形ろう材を上記金属
被膜の金属を含む固形ろう材とすれば、金属被膜とろう
材とのろう付けが良好に行われ、ろう材の接合強度が高
められる。液相線温度が300〜500℃の固形ろう材
主部の表面を上記金属被膜の金属を少なくとも部分的に
含む金属からなる被覆を形成してなる固形ろう材を用い
て排気孔のろう付け封止を行う場合には、真空加熱して
固形ろう材が溶融すると、固形ろう材の被覆が溶融して
ろう材が金属被覆に接し、排気孔に流れ込む。このろう
材は、金属被膜と同じ金属の被覆を含むものなので、金
属被膜に対して密着性が良くなる。金属被膜をリンとの
結合性を有する金属とし、固形ろう材として、Sn-C
u-P系などのリンを含む低融点ろう材を使用する場合
には、固形ろう材中のリンが金属被膜に対する結合性
(親和性)を高め、かつ金属被膜や排気孔内の表面の酸
化膜を還元してろう材の密着性を強化するので、フラッ
クスを用いることなく強固にろう付けすることができ
る。
【0017】本発明の金属製真空二重壁容器の製造方法
の別な態様では、排気孔を形成した外容器に内容器を入
れ、それぞれの口部を接合して一体化してなる金属製の
二重壁容器を作製し、その排気孔の周辺に金網を配する
とともに、液相線温度が300〜500℃であり、かつ
上記金網の金属にろう付けが可能な固形ろう材を配して
真空加熱炉に設置し、真空雰囲気下で加熱し、該固形ろ
う材を溶融させて上記排気孔に流し込み、その後冷却し
て排気孔をろう材で閉塞して内容器と外容器の空間を真
空封止することにより、固形ろう材を溶融し得る300
〜500℃の低温での真空加熱処理によって排気孔の真
空封止が可能であり、ステンレス鋼やチタンを材料とし
て加工硬度を高めた外容器を使用した場合、外容器の硬
度を低下させずに真空二重壁容器が製造可能である。ま
た、溶融したろう材が、親和性のある金網に接し、この
金網に沿って拡散して排気孔に流れ込み易くなり、封止
後は排気孔に流れ込んだろう材と排気孔の外側を覆う金
網とが強固に接合し、排気孔が確実に封止される。
【0018】以下、図面を参照して本発明について詳細
に説明する。 (第1実施例)図1、図2および図6を参照して本発明
の第1実施例を説明する。図1は、この第1実施例の製
造方法によって製造されたステンレス鋼製の金属製二重
壁容器の一例を示すものである。この金属製二重壁容器
は、ステンレス鋼からなる内容器21と、同じくステン
レス鋼からなる外容器22とをそれぞれの口部で接合一
体化して二重壁容器30とするとともに、これら内容器
21と外容器22との間の空間に真空断熱層23を形成
して構成されている。上記外容器22は、上部材24と
胴部材25と底部材26とを溶接接合により一体化して
構成されている。底部材26の略中央には、内容器22
側に向けて半球状に凹む凹部27が設けられ、この凹部
27のほぼ中央には直径1〜5mm程度の排気孔28が
穿設されている。この排気孔28の周囲には、Ag、C
u、Sbおよびそれらの合金のうちのいずれか一種から
なる金属被膜26aが形成されている。この排気孔28
は、300〜500℃で溶融するろう材29によって封
止されている。
【0019】図2は、上記金属製真空二重壁容器の真空
封止前の状態を示すものである。この二重壁容器30
は、底部材26の凹部27の中央に穿設された排気孔2
8の周囲の外表面に、Ag、Cu、Sbおよびそれらの
合金のうちのいずれか一種からなる金属被膜26aを形
成してなる外容器22と、内容器21とを、外容器22
に内容器21を入れてそれぞれを口部で溶接接合して一
体化して作製される。外容器22の凹部27に金属被膜
26aを形成するには、凹部26aの外表面を酸洗など
の化学処理や機械研削などの機械加工によって表面の酸
化膜を取り除いた後、化学メッキ、電解メッキによりA
g、Cu、Sbおよびそれらの合金のうちのいずれか一
種からなる金属被膜26aを形成する方法が好ましい。
この金属被膜26aの厚さは限定されないが、好ましく
は1〜3μm程度とされる。
【0020】次いで、この二重壁容器30を、開口を下
向きに倒立させ、上向きとなった凹部27内に、塊状の
固形ろう材29aを入れる。この固形ろう材29aは、
液相線温度が300〜500℃であり、金属被膜26a
の形成に用いた金属、即ちAg、Cu、Sbのいずれか
を含むものが好適であり、例えば、Bi-Ag系、Sn-
Ag系、Sn-Cu系などの2元系ろう材、Sn-Cu-
P系、In-Cu-P系、In-Ag-Cu系、Sn-Ag-
Cu系、Sn-Ag-Sb系、Sn-Sb-Cu系などの3
元系ろう材、In-Ag-Cu-P系、Sn-Ag-Cu-P
系、Sn-Sb-Cu-P系などの4元系ろう材から適宜
選択して用いられる。
【0021】固形ろう材29aの使用量は、排気孔28
を塞ぎ、図6に示すように排気孔28の上下にろう材2
9の余盛分を生じ得る量があれば十分である。また、固
形ろう材29aの形状は、凹部27内に入れて排気孔2
8を塞いでしまうことがなければ、球形、棒状、ワイヤ
や不定形塊状などいずれの形状でも良く、また多数の小
粒状の固形ろう材を使用しても良い。固形ろう材29a
は、好ましくは排気孔28から僅かに離間して凹部27
内に配置される。
【0022】次に、この二重壁容器30を倒立状態のま
ま図示しない真空加熱炉内に設置する。この真空加熱炉
としては、従来より金属製魔法瓶などの製造に使用され
ている周知の真空加熱炉を使用して良い。凹部27に固
形ろう材29aを配置した二重壁容器30を真空加熱炉
に入れ、この炉内を10-3Torr以下、好ましくは10-4
〜10-5Torr程度に真空排気するとともに、300〜5
00℃の範囲でかつ固形ろう材29aが溶融し得る温度
に加熱する。内外容器間の隙間の空気は排気孔28を通
って排気される。
【0023】この真空雰囲気中での加熱によって、凹部
27内の固形ろう材29aは溶融し、排気孔28周辺の
金属被膜26aに接しながら流下し、排気孔28内に流
れ込み、望ましくは排気孔28の内容器側にまで達す
る。ろう材が排気孔28に十分に行き渡ったならば、真
空加熱炉内の真空状態を維持したまま、炉内を徐冷す
る。これによって、図6に示すように、排気孔28に一
部が流れ込み、残部が金属被膜26aに付着した状態で
ろう材29が固化し、排気孔28が完全に気密に封止さ
れて、内容器21と該容器22間の空間が真空断熱層2
3とされる。また、この徐冷によって外容器22または
外容器22と内容器21との両方が焼鈍され、その硬度
が一層高められる。室温あるいはろう材29が完全に固
化した時点まで徐冷したならば、真空加熱炉内に大気を
導入して大気圧とし、製造された真空二重壁容器を取り
出す。
【0024】この実施例による真空二重壁容器の製造方
法は、排気孔28の周辺の外表面に金属被膜26aを形
成した外容器22に内容器21を入れ、それぞれの口部
を接合して一体化してなる二重壁容器30を作製し、そ
の排気孔28の周辺に液相線温度が300〜500℃で
あり、かつ金属被膜26aにろう付けが可能な固形ろう
材29aを配して真空加熱炉に設置し、真空雰囲気下で
加熱し、固形ろう材29aを溶融させて排気孔28に流
し込み、その後冷却して排気孔28をろう材で閉塞して
内容器21と外容器22の空間を真空封止することによ
り、固形ろう材29aを溶融し得る300〜500℃の
低温での真空加熱処理によって排気孔28の真空封止が
可能であり、ステンレス鋼やチタンを材料として加工硬
度を高めた外容器22を使用した場合、外容器22の硬
度を低下させずに真空二重壁容器が製造できる。また、
溶融したろう材が、親和性のある金属被膜26aに接し
て排気孔28を塞いで固化することにより、排気孔28
が強固に封止される。従って、この真空二重壁容器の製
造方法によれば、軽量かつ衝撃強度に優れた真空二重壁
容器を歩留り良く製造することができる。
【0025】また、この製造方法では、固形ろう材29
aによる排気孔28の封止の前処理として、排気孔28
の周辺の外表面のみに、不動態酸化膜を化学的にまたは
研削等の機械加工で除去する前処理を施し、その後化学
メッキ、電解メッキなどの方法を用いて排気孔28の周
辺のみに金属被膜26aを形成すれば良く、金属被膜2
6aをAg、Cu、Sbおよびそれらの合金のうちから
選択される一種とし、固形ろう材29aを上記金属被膜
26aの金属を含む固形ろう材26aとすれば、金属被
膜26aとろう材29とのろう付けが良好に行われ、ろ
う材の接合強度が高められ、真空封止前の外容器全体の
酸化膜除去及び酸化膜除去用のフラックスの使用を省略
することができ、製造工程を簡略化して製造コストを低
減することができる。なお、この実施例において、金属
被膜26aと固形ろう材29aの材質は上記の例示に限
定されることなく、耐酸化性の金属、例えば金や白金族
などの他の貴金属類を含む金属被膜26aと固形ろう材
29aとを使用することもできる。
【0026】(第2実施例)本発明の第2実施例を図3
および図6を参照して説明する。この実施例では、先の
第1実施例での二重壁容器30とほぼ同様に構成された
ステンレス鋼製の二重壁容器30を用い、この二重壁容
器30の排気孔28の周囲に、電気メッキ、化学メッキ
等によってNiとCrの少なくとも一方の金属からなる
厚さ1〜3μmの金属被膜26aを形成する。
【0027】次に、二重壁容器30を、開口を下向きに
倒立させ、上向きとなった凹部27内に、塊状の固形ろ
う材29aを入れる。この固形ろう材29cは、液相線
温度が300〜500℃程度であり、好ましくはBi-
Ag系、Sn-Ag系、Sn-Cu系などの2元系ろう
材、Sn-Cu-P系、In-Cu-P系、In-Ag-Cu
系、Sn-Ag-Cu系、Sn-Ag-Sb系、Sn-Sb-
Cu系などの3元系ろう材、In-Ag-Cu-P系、S
n-Ag-Cu-P系、Sn-Sb-Cu-P系などの4元系
ろう材のうちから選択された固形ろう材主部29aの表
面を、金属被膜26aと同じくNiとCrの少なくとも
一方の金属を化学メッキや電解メッキによって1〜3μ
m程度の厚さで被覆した被覆層29bを形成してなるも
のである。
【0028】次に、凹部27に固形ろう材29cを配置
した二重壁容器30を真空加熱炉に入れ、この炉内を1
-3Torr以下、好ましくは10-4〜10-5Torr程度に真
空排気するとともに、300〜500℃の範囲でかつ固
形ろう材主部29aが溶融し得る温度に加熱する。
【0029】この固形ろう材29cは、真空加熱によっ
て固形ろう材主部29aが溶融すると、その表面の被覆
層29bが溶融され、溶融したろう材29が金属被覆2
6aに接し、排気孔28に流れ込んで固化し、排気孔2
8を封止する。このろう材29は、金属被膜26aと同
じ金属よりなる被覆層29bを含むものなので、金属被
膜26aに対して密着性が良くなる。また、金属被膜2
6aは、ステンレス鋼からなる外容器22の金属材料の
一成分と同じNi、Crおよびそれらの合金のうちから
選択される一種の金属であるので、外容器22の凹部2
7表面に対して強固に密着させることができ、この金属
被膜26aにろう材29が強固に密着することにより、
ろう材29は金属被膜26aを介して外容器22に強固
にろう付けされる。
【0030】この実施例では、先の第1実施例と同じ
く、300〜500℃の低温で真空封止することがで
き、加工硬度を高めた外容器22の硬度を減じることな
く真空二重壁容器を製造することができ、その結果、外
容器22を薄肉化、軽量化することができ、軽量で傷付
き難い金属製真空二重壁容器を製造することができる。
さらにこの実施例では、排気孔28周辺にNi、Crお
よびそれらの合金のうちから選択される一種からなる金
属被膜26aを形成し、かつ液相線温度が300〜50
0℃の固形ろう材主部29aの表面を上記金属被膜26
aの金属を含む金属からなる被覆層29bを形成してな
る固形ろう材29cを用いて排気孔28のろう付け封止
を行うことにより、固形ろう材主部29aが溶融した時
に、被覆層29bの金属が混合溶融され、金属被膜26
aへの親和性が良くなって金属被膜26aとろう材29
との密着強度が向上するとともに、金属被膜26aとス
テンレス鋼製の外容器22との密着性も高められるの
で、排気孔28を封止しているろう材29が強固にろう
付けされ、排気孔28をろう材29で封止した真空封止
部の耐久性を向上させることができる。さらに、固形ろ
う材29cの被覆層29bに耐酸化性の金属を用いれ
ば、被覆層26b内の固形ろう材主部29aの酸化を防
止できるので、酸化し易い成分を含むろう材29の使用
が可能となる。
【0031】(第3実施例)本発明の第3実施例を図2
を参照して説明する。第3実施例では、上記第1実施例
と同様に構成された二重壁容器30を用い、排気孔28
の周囲に電気メッキ、化学メッキ等によってNiとCr
の少なくとも一方からなる厚さ1〜3μmの金属被膜2
6aを形成する。次に二重壁容器30を、開口を下向き
に倒立させ、上向きとなった凹部27内に、塊状の固形
ろう材29aを入れる。この固形ろう材29aは、液相
線温度が300〜500℃の範囲であり、リン(P)を
含むものである。このろう材29aは好ましくは、Sn
-Cu-P系、In-Cu-P系、In-Ag-Cu-P系、
Sn-Ag-Cu-P系、Sn-Sb-Cu-P系のうちのい
ずれか一種が使用される。
【0032】凹部27に上記ろう材29aを配した二重
壁容器30は、底部を上向きにしたまま真空加熱炉内に
配置し、真空排気するとともに300〜500℃程度で
加熱処理し、ろう材29aを溶融させて排気孔28に流
し込み、図6に示すように排気孔28を塞ぐ。
【0033】上記リン系のろう材は液相線温度が300
〜500℃であり、その成分中のリン(P)が還元作用
を示す。また上記温度範囲では、リンの蒸気圧は高くな
るが、ろう材中の一成分として含まれる場合、ろう材中
から蒸発して無くなるおそれは少ない。リンはステンレ
ス鋼の構成金属であるFe、Ni、Crのいずれの金属
とも親和性が高いため、ろう付け界面においてFe
3P、Ni3P、Cr3Pなどが生成し、これにより、ろ
う材中から逃避するリンの量が少なくなる。しかも、リ
ンが本来有する還元作用により、ろう付けする金属被膜
26aの表面が還元され、その金属被膜26aに対する
ろう材の濡れ性が優れることになり、微量の酸素ガスを
含む不活性ガス雰囲気あるいは真空雰囲気などの低酸素
ポテンシャル雰囲気中において、酸化物除去のためのフ
ラックスを使用しないフラックスレス接合を実現でき
る。
【0034】この実施例では、先の第1実施例と同じ
く、300〜500℃の低温で真空封止することがで
き、加工硬度を高めた外容器22の硬度を減じることな
く真空二重壁容器を製造することができ、その結果、外
容器22を薄肉化、軽量化することができ、軽量で傷付
き難い金属製真空二重壁容器を製造することができる。
さらにこの実施例では、金属被膜をリンとの結合性を有
する金属とし、固形ろう材として、Sn-Cu-P系など
のリンを含む低融点ろう材を使用したことにより、固形
ろう材29a中のリンが金属被膜26aに対する結合性
(親和性)を高め、かつ金属被膜29aや排気孔28内
の表面の酸化膜を還元してろう材29の密着性を強化す
るので、フラックスを用いることなく強固にろう付けす
ることができる。なお、本実施例において、金属被膜2
6aと固形ろう材29aの材質は上記の例示に限定され
ることなく、リンとの結合性の良い金属、例えばCuや
Cu合金を含む金属被膜26aと固形ろう材29aとを
使用することもできる。
【0035】(第4実施例)本発明の第4実施例を図
4、図7および図8を参照して説明する。この実施例で
は、ステンレス鋼からなる内容器21と、同じくステン
レス鋼からなる外容器22とをそれぞれの口部で接合一
体化してなる二重壁容器30を用いる。この外容器22
は、上部材24と胴部材25と底部材26とを溶接接合
により一体化して構成され、底部材26の略中央には、
内容器22側に向けて半球状に凹む凹部27が設けら
れ、この凹部27のほぼ中央には直径1〜5mm程度の
排気孔28が穿設されている。
【0036】この二重壁容器30は、倒立状態とし、上
向きとなった凹部27に、図4に示すように、円形の金
網31を凹部27の表面に沿うように湾曲させて挿入す
る。次いで凹部27内に固形ろう材29aを入れる。
【0037】この金網31は、固形ろう材29aがろう
付け可能であれば、その材質は限定されないが、好まし
くは、直接ろう付法の接合にあたって、接合温度を下
げ、応力を緩和するのに使用される弱活性金属であるA
g、Cu、Sbおよびそれらの合金のうちのいずれか一
種からなる金属が使用される。また、固形ろう材29a
は、例えば、Bi-Ag系、Sn-Ag系、Sn-Cu系
などの2元系ろう材、Sn-Cu-P系、In-Cu-P
系、In-Ag-Cu系、Sn-Ag-Cu系、Sn-Ag-
Sb系、Sn-Sb-Cu系などの3元系ろう材、In-
Ag-Cu-P系、Sn-Ag-Cu-P系、Sn-Sb-C
u-P系などの4元系ろう材から適宜選択して用いられ
る。
【0038】次に、凹部27内に金網31と固形ろう材
29aとを配置した二重壁容器30を倒立状態のまま真
空加熱炉内に設置し、この炉内を10-3Torr以下、好ま
しくは10-4〜10-5Torr程度に真空排気するととも
に、300〜500℃の範囲でかつ固形ろう材29aが
溶融し得る温度に加熱する。内外容器間の隙間の空気は
排気孔28を通って排気される。
【0039】この真空雰囲気中での加熱によって、凹部
27内の固形ろう材29aは溶融し、溶融したろう材
が、親和性のある金網31に接し、この金網31に沿っ
て拡散して排気孔28に流れ込み易くなり、封止後は排
気孔28に流れ込んだろう材と排気孔28の外側を覆う
金網31とが強固に接合し、排気孔28が確実に封止さ
れる。ろう材29が排気孔28に十分に行き渡ったなら
ば、真空加熱炉内の真空状態を維持したまま、炉内を徐
冷する。これによって、図8に示すように、排気孔28
に一部が流れ込み、残部が金網31に付着した状態でろ
う材29が固化し、排気孔28が完全に気密に封止され
て、内容器21と該容器22間の空間が真空断熱層23
とされる。また、この徐冷によって外容器22または外
容器22と内容器21との両方が焼鈍され、その硬度が
一層高められる。室温あるいはろう材29が完全に固化
した時点まで徐冷したならば、真空加熱炉内に大気を導
入して大気圧とし、製造された真空二重壁容器を取り出
す。
【0040】この実施例では、先の第1実施例と同じ
く、300〜500℃の低温で真空封止することがで
き、加工硬度を高めた外容器22の硬度を減じることな
く真空二重壁容器を製造することができ、その結果、外
容器22を薄肉化、軽量化することができ、軽量で傷付
き難い金属製真空二重壁容器を製造することができる。
【0041】また、この実施例において、金網をCu、
Sbとすれば、弱活性金属であるが故、この効果により
ろう付け前にろう付け部分の酸化膜を除去したりフラッ
クスを使用することなく、ろう付け封止が可能となるの
で、真空封止前の外容器全体の酸化膜除去及び酸化膜除
去用のフラックスの使用を省略することができ、製造工
程を簡略化して製造コストを低減することができる。さ
らに、金網31をリンとの結合性を有するNi,Cuお
よびそれらの合金のうちの1種とし、固形ろう材とし
て、Sn-Cu-P系などのリンを含む低融点ろう材を使
用しても良い。この場合には、固形ろう材中のリンが金
属被膜に対する結合性(親和性)を高め、かつ金属被膜
や排気孔内の表面の酸化膜を還元してろう材の密着性を
強化するので、フラックスを用いることなく強固にろう
付けすることができる。
【0042】(第5実施例)本発明の第5実施例を図5
および図8を参照して説明する。この実施例は、先の第
4実施例とほぼ同様であり、二重壁容器30の凹部27
内にCuからなる金網31を入れ、さらにこの凹部27
内に、液相線温度が300〜500℃程度であり、好ま
しくはBi-Ag系、Sn-Ag系、Sn-Cu系などの
2元系ろう材、Sn-Cu-P系、In-Cu-P系、In
-Ag-Cu系、Sn-Ag-Cu系、Sn-Ag-Sb系、
Sn-Sb-Cu系などの3元系ろう材、In-Ag-Cu
-P系、Sn-Ag-Cu-P系、Sn-Sb-Cu-P系な
どの4元系ろう材のうちから選択された固形ろう材主部
29aの表面に、Cuを化学メッキや電解メッキによっ
て1〜3μm程度の厚さで被覆した被覆層29bを形成
してなる固形ろう材29cを入れる。そして先の第4実
施例と同様に、二重壁容器30を真空加熱炉内に入れ、
炉内を10-3Torr以下に真空排気しつつ、300〜50
0℃に加熱して固形ろう材主部29aを溶融する。
【0043】この実施例では、先の第4実施例と同じ
く、300〜500℃の低温で真空封止することがで
き、加工硬度を高めた外容器22の硬度を減じることな
く真空二重壁容器を製造することができ、その結果、外
容器22を薄肉化、軽量化することができ、軽量で傷付
き難い金属製真空二重壁容器を製造することができる、
などの効果が得られる。
【0044】なお、上述した第1〜第5実施例では、ス
テンレス鋼製の二重壁容器30を用いた場合を例示した
が、本発明はチタン或いはチタン合金製の二重壁容器を
用いて真空二重壁容器を作製する場合にも適用が可能で
ある。また、上述した第1〜第5実施例では、二重壁容
器30が、外容器22の底部に内容器側に凹む凹部27
を設け、この凹部27内に排気孔28を穿設してなり、
この二重壁容器30の開口を下に向けた状態として、凹
部27に固形ろう材29aを配置したが、外容器22の
胴部または肩部に、外容器底部側に向けて凹む凹部を設
け、該凹部内に排気孔を穿設し、該二重壁容器の開口を
上向きのままの状態(正置状態)で、該凹部の少なくと
も一部に入るように固形ろう材を配置して真空加熱炉内
に設置し、真空封止を行うことも可能である。
【0045】
【発明の効果】本発明の金属製真空二重壁容器の製造方
法は、排気孔の周辺の外表面に金属被膜を形成した外容
器に内容器を入れ、それぞれの口部を接合して一体化し
てなる金属製の二重壁容器を作製し、その排気孔の周辺
に液相線温度が300〜500℃であり、かつ金属被膜
にろう付けが可能な固形ろう材を配して真空加熱炉に設
置し、真空雰囲気下で加熱し、固形ろう材を溶融させて
排気孔に流し込み、その後冷却して排気孔をろう材で閉
塞して内容器と外容器の空間を真空封止することによ
り、固形ろう材を溶融し得る300〜500℃の低温で
の真空加熱処理によって排気孔の真空封止が可能であ
り、ステンレス鋼やチタンを材料として加工硬度を高め
た外容器を使用した場合、外容器の硬度を低下させずに
真空二重壁容器が製造できる。また、溶融したろう材
が、親和性のある金属被膜に接して排気孔を塞いで固化
することにより、排気孔が強固に封止される。従って本
発明の金属製真空二重壁容器の製造方法によれば、軽量
かつ衝撃強度に優れた真空二重壁容器を歩留り良く製造
することができる。
【0046】また、本発明の金属製真空二重壁容器の製
造方法では、固形ろう材による排気孔の封止の前処理と
して、排気孔の周辺の外表面のみに、不動態酸化膜を化
学的にまたは研削等の機械加工で除去する前処理を施
し、その後化学メッキ、電解メッキなどの方法を用いて
排気孔の周辺のみに金属被膜を形成すれば良く、固形ろ
う材を金属被膜とろう付けが可能なものとすれば、金属
被膜とろう材とのろう付けが良好に行われ、ろう材の接
合強度が高められ、真空封止前の外容器全体の酸化膜除
去及び酸化膜除去用のフラックスの使用を省略すること
ができ、製造工程を簡略化して製造コストを低減するこ
とができる。
【0047】また、液相線温度が300〜500℃の固
形ろう材主部の表面を金属被膜の金属を含む金属からな
る被覆を形成してなる固形ろう材を用いて排気孔のろう
付け封止を行うことにより、固形ろう材主部が溶融した
時に、被覆層の金属が混合溶融され、金属被膜への親和
性が良くなって金属被膜とろう材との密着強度が向上す
るとともに、金属被膜とステンレス鋼製の外容器との密
着性も高められるので、排気孔を封止しているろう材が
強固にろう付けされ、排気孔をろう材で封止した真空封
止部の耐久性を向上させることができる。
【0048】また、金属被膜をリンとの結合性を有する
金属とし、固形ろう材として、リンを含む低融点ろう材
を使用する場合には、固形ろう材中のリンが金属被膜に
対する結合性(親和性)を高め、かつ金属被膜や排気孔
内の表面の酸化膜を還元してろう材の密着性を強化する
ので、フラックスを用いることなく強固にろう付けする
ことができる。
【0049】本発明の金属製真空二重壁容器の製造方法
の別な態様においては、排気孔を穿設した外容器に内容
器を入れ、それぞれの口部を接合して一体化してなる金
属製の二重壁容器を作製し、その排気孔の周辺に金網を
配するとともに、液相線温度が300〜500℃であ
り、かつ金網にろう付けが可能な固形ろう材を配して真
空加熱炉に設置し、真空雰囲気下で加熱し、固形ろう材
を溶融させて排気孔に流し込み、その後冷却して排気孔
をろう材で閉塞して内容器と外容器の空間を真空封止す
ることにより、固形ろう材を溶融し得る300〜500
℃の低温での真空加熱処理によって排気孔の真空封止が
可能であり、ステンレス鋼やチタンを材料として加工硬
度を高めた外容器を使用した場合、外容器の硬度を低下
させずに真空二重壁容器が製造できる。また、溶融した
ろう材が、親和性のある金網に接し、この金網に沿って
拡散して排気孔に流れ込み易くなり、封止後は排気孔に
流れ込んだろう材と排気孔の外側を覆う金網とが強固に
接合し、排気孔が確実に封止され、排気孔をろう材で封
止した封止部の機械強度を高めることができ、この封止
部の耐久性を向上させることができる。従って、この方
法では、軽量かつ衝撃強度に優れた真空二重壁容器を歩
留り良く製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明方法により製造される金属製真空
二重壁容器を例示する正面断面図である。
【図2】図2は本発明方法の第1、第3実施例での封止
前の二重壁容器の要部断面図である。
【図3】図3は本発明方法の第2実施例での封止前の二
重壁容器の要部断面図である。
【図4】図4は本発明方法の第4実施例での封止前の二
重壁容器の要部断面図である。
【図5】図5は本発明方法の第5実施例での封止前の二
重壁容器の要部断面図である。
【図6】図6は本発明方法の第1〜第3実施例での封止
部を示す要部断面図である。
【図7】図7は図4の二重壁容器の要部平面図である。
【図8】図8は本発明方法の第4、第5実施例での封止
部を示す要部断面図である。
【図9】図9は図5の二重壁容器の要部平面図である。
【図10】図10は従来の金属製真空二重壁容器の製造
例を示す断面図である。
【図11】図11は従来の金属製真空二重壁容器の別な
製造例を示す断面図である。
【符号の説明】
21……内容器、22……外容器、23……真空断熱
層、26a……金属被膜、27……凹部、28……排気
孔、29……ろう材、29a,29c……固形ろう材、
30……二重壁容器、31……金網。

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 排気孔が穿設された金属製の外容器に金
    属製の内容器を入れそれぞれの口部で接合して一体化
    し、かつ上記排気孔の周辺の外表面に金属被膜を形成
    し、上部に開口を有する二重壁容器を形成し、 ついで上記排気孔の外側に近接しかつ排気孔を塞がない
    位置に、液相線温度が300〜500℃でかつ上記金属
    被膜の金属にろう付けが可能な固形ろう材を配置し、 ついで上記固形ろう材を配した二重壁容器を真空加熱炉
    内に入れて真空雰囲気下で加熱し、該固形ろう材を溶融
    させて上記排気孔に流し込み、その後冷却して排気孔を
    ろう材で閉塞して内容器と外容器の間の空間を真空封止
    することを特徴とする金属製真空二重壁容器の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 上記金属被膜がAg、Cu、Sbおよび
    それらの合金のうちから選択される一種であり、かつ上
    記固形ろう材が、上記金属被膜の少なくとも1つの金属
    を含む固形ろう材であることを特徴とする請求項1の金
    属製真空二重壁容器の製造方法。
  3. 【請求項3】 上記固形ろう材が、Bi-Ag系、Sn-
    Ag系、Sn-Cu系、Sn-Cu-P系、In-Cu-P
    系、In-Ag-Cu系、Sn-Ag-Cu系、Sn-Ag-
    Sb系、Sn-Sb-Cu系、In-Ag-Cu-P系、S
    n-Ag-Cu-P系、Sn-Sb-Cu-P系のうちから選
    択される一種であることを特徴とする請求項1または2
    の金属製真空二重壁容器の製造方法。
  4. 【請求項4】 上記固形ろう材が、液相線温度が300
    〜500℃の固形ろう材主部の表面にAg、Cu、Sb
    のうちの少なくとも1種からなる金属を少なくとも部分
    的に含む金属からなる被膜を形成してなるものであるこ
    とを特徴とする請求項1から3のいずれかの金属製真空
    二重壁容器の製造方法。
  5. 【請求項5】 上記金属被膜がリンとの結合性を有する
    Ni,Crおよびそれらの合金から選択される金属から
    なり、かつ上記固形ろう材が、Sn-Cu-P系、In-
    Cu-P系、In-Ag-Cu-P系、Sn-Ag-Cu-P
    系、Sn-Sb-Cu-P系のうちから選択される一種であ
    ることを特徴とする請求項1の金属製真空二重壁容器の
    製造方法。
  6. 【請求項6】 上記金属被膜がリンとの結合性を有する
    Ni,Crおよびそれらの合金から選択される金属から
    なり、かつ固形ろう材が、Bi-Ag系、Sn-Ag系、
    Sn-Cu系、Sn-Cu-P系、In-Cu-P系、In-
    Ag-Cu系、Sn-Ag-Cu系、Sn-Ag-Sb系、
    Sn-Sb-Cu系、In-Ag-Cu-P系、Sn-Ag-
    Cu-P系、Sn-Sb-Cu-P系のうちから選択される
    固形ろう材の表面にNi,Crの金属の少なくとも1つ
    よりなる被膜を形成したものであることを特徴とする請
    求項1の金属製真空二重壁容器の製造方法。
  7. 【請求項7】 上記二重壁容器が、上記外容器の底部
    に、内容器側に凹む凹部を設け、該凹部内に排気孔を穿
    設してなり、該二重壁容器の開口を下に向けた状態とし
    て、該凹部の少なくとも一部に入るように上記固形ろう
    材を配置しかつ真空加熱炉内に設置し、上記真空封止を
    行うことを特徴とする請求項1から6のいずれかの金属
    製真空二重壁容器の製造方法。
  8. 【請求項8】 上記二重壁容器が、上記外容器の胴部又
    は肩部に、外容器底部側に向けて凹む凹部を設け、該凹
    部内に排気孔を穿設してなり、該二重壁容器の開口を上
    向きとした状態で、該凹部の少なくとも一部に入るよう
    に上記固形ろう材を配置して真空加熱炉内に設置し、上
    記真空封止を行うことを特徴とする請求項1から6のい
    ずれかの金属製真空二重壁容器の製造方法。
  9. 【請求項9】 排気孔が穿設された金属製の外容器に金
    属製の内容器を入れそれぞれの口部で接合して一体化
    し、上部に開口を有する二重壁容器とし、 ついで上記排気孔の周辺の外側に金網を配置し、 ついで上記排気孔の外側に近接しかつ排気孔を塞がない
    位置に、液相線温度が300〜500℃でかつ上記金網
    と上記外容器の金属に対してろう付けが可能な固形ろう
    材を配置し、 ついで上記固形ろう材を配した二重壁容器を真空加熱炉
    内に入れて真空雰囲気下で加熱し、該固形ろう材を溶融
    させて上記排気孔に流し込み、その後冷却して排気孔を
    ろう材で閉塞して内容器と外容器の間の空間を真空封止
    することを特徴とする金属製真空二重壁容器の製造方
    法。
  10. 【請求項10】 上記金網がCuからなり、かつ上記固
    形ろう材が、Ag、Cu、Sbの少なくとも1種の金属
    を含む固形ろう材であることを特徴とする請求項9の金
    属製真空二重壁容器の製造方法。
  11. 【請求項11】 上記固形ろう材がBi-Ag系、Sn-
    Ag系、Sn-Cu系、Sn-Cu-P系、In-Cu-P
    系、In-Ag-Cu系、Sn-Ag-Cu系、Sn-Ag-
    Sb系、Sn-Sb-Cu系、In-Ag-Cu-P系、S
    n-Ag-Cu-P系、Sn-Sb-Cu-P系のうちから選
    択される一種であることを特徴とする請求項9または1
    0の金属製真空二重壁容器の製造方法。
  12. 【請求項12】 上記固形ろう材が、液相線温度が30
    0〜500℃の固形ろう材主部の表面にCuを少なくと
    も部分的に含む金属からなる被膜を形成してなるもので
    あることを特徴とする請求項9から11のいずれかの金
    属製真空二重壁容器の製造方法。
  13. 【請求項13】 上記金網にリンとの結合性を有するC
    r,Niの少なくとも1つの金属からなる被膜を形成
    し、かつ上記固形ろう材が、Sn-Cu-P系、In-C
    u-P系、In-Ag-Cu-P系、Sn-Ag-Cu-P
    系、Sn-Sb-Cu-P系のうちから選択される一種で
    あることを特徴とする請求項9の金属製真空二重壁容器
    の製造方法。
  14. 【請求項14】 上記二重壁容器が、上記外容器の底部
    に、内容器側に凹む凹部を設け、該凹部内に排気孔を穿
    設してなり、該二重壁容器の開口を下に向けた状態とし
    て、該凹部の少なくとも一部に入るように上記固形ろう
    材を配置しかつ真空加熱炉内に設置し、上記真空封止を
    行うことを特徴とする請求項9から13のいずれかの金
    属製真空二重壁容器の製造方法。
  15. 【請求項15】 上記二重壁容器が、上記外容器の胴部
    または肩部に、外容器底部側に向けて凹む凹部を設け、
    該凹部内に排気孔を穿設してなり、該二重壁容器の開口
    を上向きとした状態で、該凹部の少なくとも一部に入る
    ように上記固形ろう材を配置して真空加熱炉内に設置
    し、上記真空封止を行うことを特徴とする請求項9から
    13のいずれかの金属製真空二重壁容器の製造方法。
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