JPH0440607Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この考案は、軽量で保温性能に優れたチタン製
魔法瓶に関するものである。

〔従来の技術〕

従来、金属製魔法瓶としては、ステンレス鋼を
材料とするものが種々提案され、実用化されてい
る。

この種の金属製魔法瓶においては、保温性能を
高めるために、内瓶と外瓶の間の空隙部に面した
表面の一部または全部に銅、銀のような放射率の
小さい金属からなるメツキ層を形成し、さらに加
熱処理により上記空隙部に面した表面から脱ガス
を行うと共にこの空隙部を真空排気することが一
般的に行なわれている。しかしながら、このよう
な方法によつて保温性能を向上させたとしても、、
ステンレス鋼から構成された魔法瓶は、重量が重
く、持ち運びに不便なため、重量の軽いチタン材
から構成された魔法瓶の出現が望まれていた。

「考案が解決しようとする問題点」 ところで、チタンは、非常に活性に富んだ金属
であるため、加熱すると他の金属と容易に反応し
て合金化してしまう。また、このチタンから魔法
瓶を構成する場合にも、魔法瓶の保温性能を向上
させるために、銅または銀からなるメツキ層の形
成、および真空排気時の脱ガス加熱処理を行う必
要がある。しかしながら、銅および銀はチタンと
の共晶温度が低く、比較的低温で容易に合金化す
るため、これらの金属からなるメツキ層が加熱処
理によりチタン合金化して失われてしまい、この
ために保温性能を向上させることができなくなる
という問題点があつた。

この考案は上記問題点に鑑みてなされたもの
で、軽量で、かつ保温性に優れたチタン製魔法瓶
を提供することを目的としている。

「問題点を解決するための手段」 この考案は、チタンまたはチタン合金からなる
内瓶と外瓶とを口部で接合して二重構造とし、こ
れら内瓶と外瓶との間の空隙部を真空にしてなる
チタン製魔法瓶において、上記内瓶および外瓶の
上記空隙部に面する表面の一部または全部に、チ
タンとの共晶温度が真空排気時の加熱処理温度よ
り高い金属からなる下地メツキ層を形成し、この
下地メツキ層上に放射率の小さい金属からなる表
面メツキ層を形成したものである。

「実施例」 以下、この考案の一実施例を第１図、第２図を
参照して説明する。

この実施例のチタン製魔法瓶は、口部とこの口
部より大径の胴部とからなるチタン製の内瓶１の
口部を、この内瓶１と同様な形状でこれよりやや
大きいチタン製の外瓶２の口部に嵌め込んだ状態
でこれら口部を接合して二重構造としてなるもの
であつて、上記内瓶１の胴部および底部の外表面
に下地メツキ層３が形成され、この下地メツキ層
３上に表面メツキ層４が形成されている。この表
面メツキ層４は、下地メツキ層３よりやや狭い範
囲に形成されて、その縁部が下地メツキ層３の縁
部より底部寄りに位置している。そして、上記外
瓶２の底部に排気口５が形成されると共に、この
排気口５まわりに外側から封止板６が接着され
て、この封止板６が排気口５を封止して上記内瓶
１と外瓶２との間の空隙部７を真空にしている。

下地メツキ層３は、チタンとの共晶温度が高
く、かつ、チタンとの密着性に優れた金属材料か
ら構成されており、このような金属材料として
は、鉄、ニツケル、クロム、ロジウム、ルテニウ
ム、白金、パラジウムなどが適している。

表面メツキ層４は、放射率の小さい金属材料か
ら構成されており、このような金属材料として
は、銅、銀などが適している。

次に、このような構成のチタン製魔法瓶の製造
方法を説明する。

まず、チタン材を所定形状に成形して内瓶１を
形成し、この内瓶１の胴部および底部の外表面に
鉄メツキ、銅メツキを順次施してこれらを積層さ
せ、下地メツキ層３および表面メツキ層４を形成
する。この場合のメツキ工程は、アルカリ浸漬脱
脂→水洗→はけ洗い（磨き砂）→水洗→酸侵漬→
水洗→塩酸侵漬→鉄メツキ→水洗→銅メツキ→水
洗となる。このようにした後、チタン材によつて
内瓶１よりやや大きい外瓶２を形成し、この外瓶
２の口部に内瓶１の口部を嵌め込んだ状態でこれ
ら口部を溶接して接合する。このようにして二重
構造の瓶を形成した後、この瓶の外瓶２底部に排
気口５を形成し、この排気口５まわりの底部外表
面上に固形ろう材を介して封止板６を支持する。
この場合、封止板６を排気口５に隙間を設けるよ
うにして支持し、排気口５からガスを排気し得る
ようにておく。このようにした状態で、この瓶を
真空加熱炉内に入れ、850℃以上1100℃以下で熱
処理を行うことにより、上記空隙部７に面した表
面の脱ガスを行なつてこのガスを排気口５と封止
板６との隙間から排出すると共に、固形ろう材を
溶かして封止板６と外瓶２底部とを接合すること
により排気口５を真空封止する。

このようなチタン製魔法瓶によれば、チタン製
の内瓶１の外表面に、チタンとの共晶温度が加熱
処理温度より高い金属からなる下地メツキ層４を
形成し、その上に放射率の小さい表面メツキ層４
を形成したので、加熱処理時に表面メツキ層４が
チタン合金化して失われることがなくなり、表面
メツキ層４によつて内瓶１外表面の放射率を低下
させて保温性能を向上させることができる。ま
た、特に、この実施例では、表面メツキ層４の縁
部を下地メツキ層３の縁部より底部寄りに位置さ
せて表面メツキ層４が内瓶１外表面に全く接触し
ないようにしたので、内瓶１外表面が加熱処理時
に合金化して溶ける恐れは全くない。

また、このチタン製魔法瓶においては、上記下
地メツキ層３および表面メツキ層４は、内瓶１の
胴部および底部に形成されているが、これらメツ
キ層を内瓶１および外瓶２の空隙部７に面する全
表面に形成しても良い。このようにした場合に
は、保温性能をさらに向上させることができる。

なお、このチタン製魔法瓶では、内瓶および外
瓶を構成する材料としてチタンを用いたが、必ず
しもチタンを用いる必要はなく、チタンを主要な
構成要素の一つとするチタン合金であればどのよ
うなチタン合金を用いても良い。

「考案の効果」 この考案のチタン製魔法瓶によれば、内瓶と外
瓶との間の空隙部に面する表面に、チタンとの共
晶温度が真空排気時の加熱処理温度より高い金属
からなる下地メツキ層を形成し、この下地メツキ
層上に放射率の小さい金属からなる表面メツキ層
を形成したので、加熱処理時に表面メツキ層が合
金化して失われてしまうのを防ぐことができ、こ
れにより、魔法瓶を軽量のチタン材から構成した
場合にも、表面メツキ層によつて表面からの熱の
放射を低下させて保温性を向上させることができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図、第２図は、この考案の一実施例を示す
図であつて、第１図はチタン製魔法瓶の要部の断
面図、第２図はチタン製魔法瓶全体の縦断面図で
ある。 １……内瓶、２……外瓶、３……下地メツキ
層、４……表面メツキ層、７……空隙部。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. チタンまたはチタン合金からなる内瓶と外瓶と
   を口部で接合して二重構造とし、これら内瓶と外
   瓶との間の空隙部を真空にしてなるチタン製魔法
   瓶において、上記内瓶および外瓶の上記空隙部に
   面する表面の一部または全部に、チタンとの共晶
   温度が真空排気時の加熱処理温度より高い金属か
   らなる下地メツキ層を形成し、この下地メツキ層
   上に放射率の小さい金属からなる表面メツキ層を
   形成したことを特徴とするチタン製魔法瓶。