JPH09234097A - 過酸化水素付加物を用いた分析方法 - Google Patents

過酸化水素付加物を用いた分析方法

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JPH09234097A
JPH09234097A JP8349790A JP34979096A JPH09234097A JP H09234097 A JPH09234097 A JP H09234097A JP 8349790 A JP8349790 A JP 8349790A JP 34979096 A JP34979096 A JP 34979096A JP H09234097 A JPH09234097 A JP H09234097A
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acid
hydrogen peroxide
peroxide
analysis
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JP8349790A
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桂 子 ▲葛▼谷
Keiko Kuzutani
Chuichi Yamauchi
内 忠 一 山
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Mochida Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Mochida Pharmaceutical Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】分析試薬の1成分として過酸化物を用いる分析
において、分析原理への悪影響が少なく、かつ過酸化水
素抱合能の高い安定な乾燥状態の過酸化水素付加物を用
いた分析法の提供。 【解決手段】分析試薬として、少なくとも過酸化物を用
いる分析方法において、(a)カルボン酸、カルボン酸
の塩、リン酸、リン酸の塩、スルホン酸およびスルホン
酸の塩からなる群より選ばれる少なくとも1成分と、
(b)過酸化水素との乾燥状態の付加物に、測定時に水
系溶液を加え、過酸化物を発生させ、分析試薬として用
いることを特徴とする分析方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、分析試薬の一成分
として過酸化物を用いる分析方法において、過酸化水素
を、分析原理への悪影響が少なく、安定な乾燥状態の過
酸化水素付加物として使用する分析方法に関する。
【0002】
【従来の技術】分析試薬の一成分として過酸化物を用い
る分析方法の1つとして、化学発光分析法が知られてい
る。例えば、過シュウ酸エステル化学発光として知られ
る化学発光反応では、塩基性触媒存在下でシュウ酸誘導
体と過酸化水素とから高エネルギー中間体を発生させ、
さらにそのエネルギーで蛍光試薬を励起させて発光させ
る。また、ルミノール誘導体は、Fe(CN)6 3- 、マ
イクロペルオキシダーゼ、あるいは、ペルオキシダーゼ
の存在下、過酸化水素によって酸化されてアミノフタル
酸が励起状態となり、これが基底状態へ戻る際に発光す
る。アクリジニウム誘導体も過酸化水素の添加によって
発光する。このような化学発光反応は、発光化合物ある
いは発光反応の触媒(酵素など)を標識として用いて、
特異結合反応分析法などで多用されており、その場合も
発光を発生させる試薬の一成分として過酸化水素が用い
られている。このような化学発光反応は比較的高感度で
あるため、臨床検査、環境試験などの広い分野の分析に
応用されている。
【0003】さらに、化学発光反応に限らず、西洋ワサ
ビペルオキシダーゼ(以下、HRPOともいう)あるい
はマイクロペルオキシダーゼなどのパーオキシダーゼ酵
素を呈色反応あるいは電気化学反応の触媒として用いる
方法がある。例えば、HRPOを標識酵素とする酵素免
疫測定法あるいは核酸ハイブリダイゼーション法、生体
組織や細胞を特異的な標識抗体で染色する免疫組織染色
法など数多く知られており、その際、分析試薬の一成分
として、HRPO酵素の基質である過酸化水素が用いら
れる。また、便潜血検査においては、糞便中のヘモグロ
ビンのパーオキシダーゼ活性を発色反応で検出する方法
が知られており、その基質として過酸化水素を添加す
る。その他パーオキシダーゼ活性を有する触媒には、金
属イオン、金属キレート、ポルフィリン誘導体、触媒抗
体などが含まれ、前記した酵素などの触媒と同じく、こ
れらも過酸化物を用いる分析方法における触媒として用
いられる。
【0004】例えば、最近、酵素などの信号物質発生体
を標識剤とし、液体試料と共にマトリクス中に展開する
ことにより、液体試料中の分析対象物と特異結合物質と
の特異結合反応によって標識剤の検出部からの距離分布
を形成させ、標識剤から発生する電子メディエータなど
の信号物質の拡散に律速された液体試料中の分析対象物
の濃度に対応する電流値を計測し、これによって分析対
象物濃度を測定する特異結合分析方法としてMEDIA
法(Mediator Diffusion-Controlled Immunoassay) が知
られている(特開平5−264552号公報(欧州特許
公開公報 0 525723 A2 号)、特開平7−234201
号公報参照)。この測定法においても、標識剤には高感
度な酸化還元酵素としてHRPOが使用され、その場
合、標識酵素の酵素基質として過酸化水素が用いられて
いる。
【0005】これらの数多くの分析法の原理では、過酸
化水素により分析対象物に特有な反応を起こさせ分析を
行うが、この分析原理への悪影響を有さずに、測定操作
の簡便化と分析試薬の安定性のために、過酸化水素を安
定な乾燥状態で分析に供する方法が求められている。
【0006】過酸化水素を乾燥状態で保持する供給体と
しては、尿素の過酸化水素付加物(Hyperole)
あるいは炭酸ナトリウムの過酸化水素付加物を乾燥した
ものが知られている。他分野では、漂白剤、洗浄剤、染
毛剤として使用されている。しかし、尿素または炭酸ナ
トリウムを用いた過酸化水素付加物は、吸湿性が強く、
不安定であり、長期保存に耐えない等の欠点がある。さ
らに、尿素は蛋白質などの変性剤として広く知られてい
る化合物であり、前記した蛋白質を分析したり試薬とし
て用いる分析法では悪影響が大きいという欠点がある。
また、炭酸ナトリウムは溶解後のpHが高く、分析用途
での使用には制約が大きいという欠点がある。
【0007】例えば、前記したMEDIA法は、洗浄操
作が不要な特異結合分析法であり、液性試料を分析装置
に添加するだけで測定が行えるドライケミストリー分析
も可能であるという特長を有している。特開平7−23
4201号公報に記載のMEDIA法分析装置において
も、過酸化水素は尿素の付加物として分析装置内に乾燥
状態で組み込まれていた。しかし、この分析装置では、
抗原抗体反応あるいは酵素反応に対する尿素の悪影響を
極力避けるために、分析装置の最下流に過酸化水素付加
物を設置し、尿素をできるだけ反応の場から遠ざけ、過
酸化水素を反応の場に自然拡散させる工夫がなされてい
るが、安定な応答が得られるまでに時間がかかり、迅速
に測定結果が得られなかった。また、分析装置の最下流
に過酸化水素付加物を設置しても、尿素も時間と共に逆
拡散して、特異的な応答を妨害するという欠点が残され
ていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、分析
試薬の一成分として過酸化水素を用いる分析方法および
分析装置において、分析原理への悪影響が少なく、か
つ、過酸化水素保持能の高い安定な乾燥状態の過酸化水
素付加物を用いた分析方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決すべく鋭意研究した結果、カルボン酸、カルボン
酸の塩、リン酸、リン酸の塩、スルホン酸およびスルホ
ン酸の塩からなる群より選ばれる少なくとも1成分を含
む、乾燥状態の過酸化水素付加物が、分析の際の悪影響
が小さく、かつ、高い過酸化水素保持能を有することを
見いだし、本発明を完成するに至った。また上記の酸の
代わりに、カルボキシル基、ホスホノ基、スルホ基のい
ずれも有していない、単糖、二糖、糖アルコール、およ
びそれらのポリマー、また、N−アセチル−グルコサミ
ン、アスコルビン酸、クレアチニン、ポリエチレングリ
コールも良好に用いりうることも見出した。
【0010】すなわち、本発明は、分析試薬として、少
なくとも過酸化物を用いる分析方法において、(a)カ
ルボン酸、カルボン酸の塩、リン酸、リン酸の塩、スル
ホン酸およびスルホン酸の塩からなる群より選ばれる少
なくとも1成分と、(b)過酸化水素との乾燥状態の付
加物を、測定時に水系溶液を溶解し、過酸化物を発生さ
せ、分析試薬として用いることを特徴とする分析方法を
提供するものである。
【0011】また、本発明は、少なくとも流路と検出部
とを有する装置を用いて、分析試薬として少なくとも過
酸化物を用いる分析方法において、前記成分(a)と前
記成分(b)との乾燥状態の付加物を、流路内のいずれ
かに配置し、測定時に水系溶液を加え、過酸化物を発生
させて、発生した過酸化物を水系溶液を介して移送し、
分析対象物を検出または検量する分析方法を提供する。
【0012】ここで、前記分析方法がパーオキシダーゼ
活性を有する触媒を用いて分析対象物の測定を行う方法
であって、前記測定時に水系溶液を加えることにより、
触媒反応に関わる物質としての過酸化物を発生するのが
好ましい。
【0013】また、前記成分(a)が、下記式(1)で
表されるモノカルボン酸、ピルビン酸、および、それら
のナトリウム塩あるいはカリウム塩からなる群より選ば
れる少なくとも1成分であるのが好ましい。
【化5】
【0014】また、前記成分(a)が、脂肪族ジカルボ
ン酸、芳香族ジカルボン酸、および、それらのナトリウ
ム酸あるいはカリウム塩からなる群より選ばれる少なく
とも1成分であるのが好ましい。
【0015】また、前記成分(a)が、下記式(2)お
よび(3)で表されるトリカルボン酸、および、該トリ
カルボン酸のナトリウム塩あるいはカリウム塩からなる
群より選ばれる少なくとも1成分であるのが好ましい。
【化6】 (ただし、R4 ;H,−OH (p=1〜3,q=0〜
3,r=0〜3))
【化7】 (ただし、R5 ;H,−CH3 (s=1〜3))
【0016】また、前記成分(a)が、下記式(4)で
表されるテトラカルボン酸、および該テトラカルボン酸
のナトリウム塩あるいはカリウム塩からなる群より選ば
れる少なくとも1成分であるのが好ましい。
【化8】 (t=0〜3,u=0〜3,v=0〜3)
【0017】あるいは、前記成分(a)がウロン酸、ポ
リウロン酸、および、それらのナトリウム塩あるいはカ
リウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1成分であ
るのが好ましい。あるいは、前記成分(a)がヒドロキ
シアルカンスルフォン酸、アミノアルカンスルフォン
酸、ヒドロキシベンゼンスルフォン酸、および、それら
のナトリウム塩あるいはカリウム塩からなる群より選ば
れる少なくとも1成分であるのが好ましい。あるいは、
前記成分(a)が、リン酸、および該リン酸のナトリウ
ム塩あるいはカリウム塩の少なくとも1成分であるのが
好ましい。
【0018】また、本発明は、分析試薬として、少なく
とも過酸化物を用いる分析方法において、(a)単糖、
二糖、糖アルコール、およびそれらのポリマーからなる
群より選ばれる少なくとも1成分と、(b)過酸化水素
との乾燥状態の付加物に、水系溶液を加え、過酸化物を
発生させ、分析試薬として用いることを特徴とする分析
方法を提供する。
【0019】さらに、本発明は、分析試薬として、少な
くとも過酸化物を用いる分析方法において、(a)N−
アセチル−グルコサミン、アスコルビン酸、クレアチニ
ン、およびポリエチレングリコールからなる群より選ば
れる少なくとも1成分と、(b)過酸化水素との乾燥状
態の付加物に、水系溶液を加え、過酸化物を発生させ、
分析試薬として用いることを特徴とする分析方法を提供
する。
【0020】また、本発明は、少なくとも流路と検出部
とを有する装置を用いて、分析試薬として少なくとも過
酸化物を用いる分析方法において、(a)流路中に存在
する固体物質のカルボキシル基、ホスホノ基、スルホ基
およびそれらの塩の少なくとも1成分と、(b)過酸化
水素との乾燥状態の付加物に、水系溶液を加え、過酸化
物を発生させ、分析試薬として用いることを特徴とする
分析方法を提供する。
【0021】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の分析方法につい
て詳細に説明する。本発明の分析方法は、分析試薬とし
て少なくとも過酸化物、具体的には過酸化水素等を用
い、分析物を検出または検量する方法であれば特に限定
されない。このような反応の具体例は、以下のように挙
げられる。
【0022】(1)試料中の分析対象物の触媒活性(パ
ーオキシダーゼ活性、カタラーゼ活性など)を過酸化水
素を試薬として分析する方法。例えば、便潜血分析、血
清中カタラーゼ活性分析、ルミノール試験など、試料中
の酵素活性あるいは触媒活性の分析において、過酸化水
素を使用する。 (2)標識を用い、この標識を過酸化水素を試薬として
分析する方法。発光物質あるいは触媒物質などを標識物
質として用いる、分析対象物の量または存在を標識物質
を検出することにより分析する方法で、特異結合分析、
組織染色分析、細胞染色分析、PCRなどの核酸増幅分
析、核酸ハイブリダイゼーション分析などが含まれ、標
識物質の定量あるいは所在を分析する際に過酸化水素を
試薬として用いる分析方法。
【0023】ここで、 (a)分析対象物とは、具体的にはヘムなどのポルフィ
リン類やパーオキシダーゼ活性物、カタラーゼ活性物、
抗体分子や抗原として機能する各種蛋白質、ポリペプチ
ド、糖蛋白質、多糖類、複合糖脂質、各種ハプテン、核
酸、エフェクター分子、レセプター分子、酵素、インヒ
ビター等が例示される。さらに具体的には、ヘモグロビ
ン、パーオキシダーゼ、カタラーゼ; α−フェトプロ
テイン、癌胎児性抗原(CEA)、CA125、CA1
9−9等の腫瘍マーカーや、β2 −ミクログロブリン
(β2 m)、フェリチンなどの各種蛋白質; エストラ
ジオール(E2)、エストリオール(E3)、ヒト絨毛性性
腺刺激ホルモン(hCG)、黄体形成ホルモン(L
H)、ヒト胎盤ラクトゲン(hPL)などの各種ホルモ
ン; HBs抗原、HBs抗体、HBe抗原、HBe抗
体、HBc抗体、HCV抗体、HIV抗体などの各種ウ
イルス関連抗原あるいはウイルス関連抗体; 各種アレ
ルゲンおよびこれに特異的なIgE抗体; 麻薬性薬
物、医療性薬物およびこれらの代謝産物; ウイルスお
よび疾患関連ポリヌクレオチド配列の核酸等が例示され
る。 (b)発光物質としては、ルミノール誘導体、シュウ酸
誘導体、アクリジニウム誘導体などが例示される。 (c)触媒物質としては、金属イオンあるいはそのキレ
ート化合物、Fe(CN)6 -3、金属ポルフィリンなど
の金属錯体、ヘム、ヘミン、マイクロパーオキシダー
ゼ、パーオキシダーゼ、カタラーゼ、パーオキシダーゼ
活性あるいはカタラーゼ活性などを有する触媒抗体など
の人工酵素などが例示できる。
【0024】特異結合分析は、分析対象物と、それに特
異的に結合する特異結合物質との少なくとも1つの特異
結合反応に関連して試料中の分析対象物を定性もしくは
定量する分析方法である。特異結合分析方法としては、
抗原抗体反応を応用したイムノアッセイ、受容体を用い
たレセプターアッセイ、相補的核酸配列のハイブリダイ
ゼーションを用いた核酸プローブアッセイなど多くの方
法が知られており、その特異性の高さから、臨床検査を
はじめとする広い分野で繁用されている。
【0025】特異結合物質とは、分析対象物等のある特
定の物質に特異的に結合する、すなわち、特定の物質に
特異結合反応しうる物質である。ある特定の物質とそれ
に対する特異結合物質との組合せとしては、抗原とそれ
に対する抗体、相補的核酸配列、エフェクター分子とレ
セプター分子、酵素とインヒビター、酵素と補因子、酵
素と基質、糖鎖を有する化合物とレクチン、ある抗体と
その抗体に対する抗体、レセプター分子とそれに対する
抗体等が例示される。また、これらの組合せにおいて、
どちらの物質も相手方の物質に対する特異結合物質とな
りうる。
【0026】また、特異結合物質として、特異結合活性
が消失しない程度に化学修飾されたもの、あるいは、他
の成分と結合してなる複合性物質もあげられる。このよ
うな特異結合物質とある特定の物質との組合せとして
は、ビオチンで化学修飾された抗体もしくはポリヌクレ
オチドとアビジン、アビジン共有結合抗体とビオチン等
が例示される。また、遺伝子組換え法で作成した抗体と
酵素、あるいは抗体とレセプターとの融合蛋白質なども
例示される。なお、本明細書では、特異結合分析(ME
DIA)に本発明を用いる場合を図2に示す分析装置を
具体例として後に詳述する。その例示においては、後記
する信号物質発生体のように、その一部に特異結合物質
として働く部分を有する物質も、特異結合物質と称する
ことがある。さらに、過酸化水素付加物とは、過酸化水
素化物等や、後述の物質を過酸化水素水に溶解したの
ち、または、後述の物質の溶液に過酸化水素水を加えた
のち、析出あるいは乾燥により得られた物質である。流
路とは、水系溶液が自発的に、あるいは、強制的に流れ
る流路である。好ましくは、多孔質材、キャピラリー等
で構成され、この場合、水系溶液は自発的に浸潤する。
検出部とは、少なくとも過酸化物、具体的には過酸化水
素等を用いる分析方法で得られる発色、蛍光、発光、電
気化学反応などの信号を検出する部分である。
【0027】本発明はこのような分析を行う際に、特定
の成分(a)で記載される成分と(b)過酸化水素との
乾燥状態の付加物を用いることが1つの特徴である。成
分(a)は、カルボン酸、カルボン酸の塩、リン酸、リ
ン酸の塩、スルホン酸およびスルホン酸の塩からなる群
より選ばれる少なくとも1成分;単糖、二糖および糖ア
ルコールからなる群より選ばれる少なくとも1成分、ま
たは;N−アセチル−グルコサミン、アスコルビン酸、
クレアチニン、ポリエチレングリコールおよびデキスト
ランからなる群より選ばれる少なくとも1成分である。
【0028】カルボン酸、カルボン酸の塩、リン酸、リ
ン酸の塩、スルホン酸およびスルホン酸の塩からなる群
より選ばれる少なくとも1成分としては、過酸化水素保
持能が高く、蛋白質等の分析対象物、あるいは試薬成分
の活性に影響が少ないものであればよい。カルボン酸と
しては、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン
酸、テトラカルボン酸、ウロン酸、ポリウロン酸等が挙
げられる。
【0029】モノカルボン酸のうちの脂肪族モノカルボ
ン酸としては式(1)で表される化合物およびピルビン
酸が好ましい。式(1)で表される化合物としては、具
体的には、酢酸、グリコール酸、プロピオン酸、3−ヒ
ドロキシプロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチ
ル)プロピオン酸、乳酸、グリセリン酸、グルコン酸、
グルコヘプトン酸、4−ヒドロキシフェニル酢酸、ヒダ
ントイン酸、シトルリン、アルビジン、セリン、アラニ
ン、スレオニン、N−アセチルグリシン等が例示される
が、このうち、酢酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、
2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、乳
酸、グリセリン酸、グルコン酸、グルコヘプトン酸、4
−ヒドロキシフェニル酢酸、ヒダントイン酸、シトルリ
ン、アルビジン、L−セリン、N−アセチルグリシンお
よびそれらの塩が過酸化水素保持能が高く、抗原抗体反
応および酵素反応への阻害が小さいので好適に用いら
れ、特に、酢酸、乳酸、ヒダントイン酸、N−アセチル
グリシンおよびそれらの塩が、水への溶解性が良く、迅
速な測定を行えるのでより好ましい。
【0030】さらに、芳香族モノカルボン酸としては、
バニリン酸、ピコリン酸等が例示される。このうち、バ
ニリン酸およびその塩が過酸化水素保持能が高く、抗原
抗体反応および酵素反応への阻害が少ないので好適に用
いられる。
【0031】ジカルボン酸としては脂肪族ジカルボン
酸、芳香族ジカルボン酸が挙げられる。具体的には、シ
ュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、コハク酸、オキサ
ル酢酸、メチルコハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、
マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、アセチレンジカ
ルボン酸、リンゴ酸、シトラマル酸、酒石酸、グルタル
酸、ジグリコール酸、2−ケトグルタル酸、3−ケトグ
ルタル酸、3−メチルグルタル酸、3−ヒドロキシ−3
−メチルグルタル酸、アジピン酸、粘液酸、ピメリン
酸、スベリン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン
酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、グルタミン
酸、N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸、O−フタ
ル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、4−ヒドロキシフ
タル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸、5−ヒドロキシ
イソフタル酸等が例示される。このうちシュウ酸、マロ
ン酸、メチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、マ
レイン酸、リンゴ酸、シトラマル酸、酒石酸、グルタル
酸、ジグリコール酸、3−ヒドロキシ−3−メチルグル
タル酸、粘液酸、ピメリン酸、1,2−シクロヘキサン
ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、
グルタミン酸、N−(2−アセトアミド)イミノ二酢
酸、o−フタル酸、イソフタル酸、4−ヒドロキシフタ
ル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸等が好適に用いら
れ、マロン酸、L−(+)−酒石酸、DL−酒石酸、ピ
メリン酸、イソフタル酸、4−ヒドロキシイソフタル酸
等が特に好ましい。これらの酸およびその塩は過酸化水
素保持能が高く、抗原抗体反応および酵素反応への阻害
が少ないので好適に用いられ、また、水への溶解性が良
く、迅速な測定を行えるので好ましい。
【0032】トリカルボン酸としては式(2)または式
(3)で表される化合物が好適に用いられる。式(2)
および式(3)で表される化合物としてはクエン酸、ア
コニット酸、1,3,5−ペンタトリカルボン酸等が具
体的に例示される。このうち、過酸化水素保持能が高
く、抗原抗体反応および酵素反応への阻害が少なく、溶
解性、測定の迅速さにも優れているので、クエン酸およ
びその塩が好ましい。テトラカルボン酸としては式
(4)で表される化合物が好適に用いられる。具体的に
はブタン−1、2、3、4−テトラカルボン酸およびそ
の塩が過酸化水素保持能が高く、抗原抗体反応および酵
素反応への阻害が小さいので好適に用いられ、また、水
への溶解性が良く、迅速な測定を行えるので好ましい。
【0033】また、過酸化水素保持ゲルあるいは保持ゾ
ルとして、あるいは、過酸化水素含浸担体自体に過酸化
水素保持能を付与できる点ではウロン酸、ポリウロン酸
およびそれらの塩が本発明の成分(a)として好まし
い。ウロン酸としてはグルクロン酸、グルロン酸、マン
ヌロン酸、ガラクツロン酸、イズロン酸等が好ましい。
このうち特にグルクロン酸およびその塩が過酸化水素保
持能が高く、抗原抗体反応および酵素反応への阻害が小
さいので好適に用いられ、また、水への溶解性が良く、
迅速な測定を行えるので好ましい。
【0034】ポリウロン酸としては、これらの前記ウロ
ン酸のホモポリマーあるいはヘテロポリマーである。ヘ
テロポリマーとしては、前記ウロン酸とアルドースとの
ヘテロポリマーであってもよい。具体的にはポリウロン
酸としては、アルギン酸、ペクチン酸が好ましい。この
うち特にアルギン酸が好ましい。
【0035】スルホン酸としてはヒドロキシアルカンス
ルフォン酸、アミノアルカンスルフォン酸、ヒドロキシ
ベンゼンスルフォン酸等が好適に用いられる。具体的に
はイセチオン酸、タウリン、システイン酸、グアイアコ
ールスルフォン酸等が好ましい。特にシステイン酸およ
びその塩が好ましい。また、キレート作用等でカルボキ
シル基、ホスホノ基の存在が分析上不適当な場合には本
発明の成分(a)として、ヒドロキシアルカンスルフォ
ン酸およびその塩が好ましい。スルホ基とカルボキシル
基の双方を有する化合物としては前述のシステイン酸、
およびコンドロイチン硫酸が挙げられ、これらも好適に
用いられる。成分(a)として用いる、カルボン酸の
塩、リン酸の塩、またはスルホン酸の塩としては、上記
カルボン酸、リン酸、スルホン酸の、アルカリ金属、ア
ルカリ土類金属の塩が好ましいが、特に上記の各酸のナ
トリウム塩、カリウム塩が好ましい。
【0036】本発明に用いる単糖としてはペントース、
ヘキソース、ヘプトースが挙げられる。このうちヘキソ
ースとしてはグルコース、ガラクトースが好適に用いら
れる。また二糖としてはサッカロース、マルトース、ラ
クトース、トレハロースが好適に用いられる。糖アルコ
ールとしてはマンニトールが好適に用いられる。また、
それらのポリマーとしては、デキストラン、セルロース
が好適に用いられる。
【0037】成分(a)の濃度は、その過酸化水素保持
能に依存するが、おおむね用いる(b)過酸化水素量に
対して、モル比で0.01〜1000倍用いるのが好ま
しく、特に好ましくは、0.1〜100倍、成分(b)
過酸化物の量は、後述するMEDIA分析装置内に配置
する場合は、水溶液中の濃度で1〜1000mMとする
のが好ましい。
【0038】乾燥状態の付加物の製造方法は、成分
(a)と成分(b)とを水溶液または緩衝液中で混合溶
液とし、加熱、減圧、凍結乾燥等の方法によって溶媒を
除去する方法があり、なかでも凍結乾燥が好ましい。そ
の理由は、乾燥物内の濃度が均一となるためである。分
析装置として水系溶液が浸透できる多孔質体を用いる場
合には、上述の混合溶液を直接多孔質体に含浸させ、乾
燥することができる。あるいは、カルボキシル基、ホス
ホノ基、スルホ基などの官能基を導入して過酸化水素含
浸担体自体に過酸化水素保持能を付与した濾紙などの天
然繊維、合成樹脂、合成繊維等よりなる多孔質体に過酸
化水素溶液を直接含浸させ、乾燥して過酸化水素保持担
体としてもよい。これらはいずれも固体物質のカルボキ
シル基、ホスホノ基、スルホ基およびそれらの塩として
適している。あるいは、ポリウロン酸、ポリアクリル
酸、カルボキシメチルセルロース(CMC)などの水溶
性高分子を過酸化水素の保持担体、保持ゲルあるいは保
持ゾルとして用いてもよい。あるいは、これらの過酸化
水素保持担体、保持ゲルあるいは保持ゾルとヒダントイ
ン酸、L−シトルリン、クエン酸、リン酸などとの混合
物を過酸化水素保持剤として用いてもよい。ウロン酸と
しては、グルクロン酸、グルロン酸、マンヌロン酸、ガ
ラクツロン酸、イズロン酸などが例示できる。ポリウロ
ン酸としては、これらのウロン酸のホモポリマーあるい
はヘテロポリマーである。ヘテロポリマーとしては、ウ
ロン酸とアルドースとのヘテロポリマーであってもよ
い。ポリウロン酸としては、アルギン酸、ペクチン酸が
例示できる。
【0039】本発明の方法では、成分(a)と(b)の
付加物に、水系溶液を加え過酸化物水溶液、具体的には
過酸化水素水溶液を発生させて、これを試薬として用い
る。水系溶液とは、主成分として水を含むもので、過酸
化物を溶解して過酸化物水溶液とするものであるが、具
体的には、水、塩溶液、緩衝液あるいは液性試料であ
り、液性試料としては、尿、血清、血漿、全血、唾液、
涙液、髄液、乳頭などからの分泌液等が例示される。粘
液、体組織あるいは細胞、菌体等の固形またはゲル状も
しくはゾル状物を、緩衝液、抽出液あるいは溶解液等の
液体に懸濁もしくは溶解させた液性試料そのものを用い
てもよい。この付加物に水系溶液を加える方法は、水系
溶液と付加物とを直接混合してもよいが、分析装置とし
て前述の多孔質体を用いる場合は、乾燥した付加物の付
着した多孔質体に水系溶液を含浸させて行うことができ
る。付加物に水系溶液を加えると過酸化物、具体的には
過酸化水素等が溶出し分析装置として用いることができ
る。本発明の方法では、成分(a)が蛋白質を変性した
り、分析対象物の特異反応の1つである免疫反応、ある
いは標識剤の反応である酵素反応等を阻害したりしない
ので、付加物を反応の場に予め配置することもできる
し、反応の場の上流側に配置し、水系溶液に溶出した成
分(a)と(b)が反応の場に運ばれるようにしてもよ
い。また、反応の場の下流側に配置し、成分(a)と
(b)が反応の場に浸透するようにしてもよい。付加物
を反応の場近くに配置すれば、分析試薬としての過酸化
水素を短時間で活性状態にすることができる。分析対象
物の特異反応においては、成分(a)の悪影響がなく、
かつ、保持能が高いので、成分(a)濃度をより低濃度
で用いることができ、また、成分(a)による妨害はほ
とんど認められないという効果も得られる。
【0040】以下に、本発明の分析方法を用いた具体例
を説明する。例えば、潜血試験では、尿、便あるいは便
抽出液などの試料を発色剤ο−トリジン、グアヤコー
ル、テトラメチルベンジジン(TMB)などと過酸化水
素に触れさせて、試料中のヘモグロビンのパーオキシダ
ーゼ活性の有無を発色剤の呈色反応で調べる。通常、少
なくとも過酸化水素は溶液状態でキットに添付されてお
り、試料を塗抹した濾紙あるいは採取スティックなどの
採取具あるいは採取容器に滴下する。しかし、本発明の
過酸化水素付加物は、乾燥状態で安定であり、尿素のよ
うに酵素反応過程に悪影響を与えることもないため、試
料を塗抹した濾紙あるいは採取スティックなどの採取具
あるいは採取容器にあらかじめ乾燥状態で存在させてお
くことができる。例えば、発色剤を含浸させた濾紙と本
発明の過酸化水素付加物を含浸させた濾紙とを重積した
り、採取具あるいは採取容器内に並置させておけばよ
い。このような潜血試験方法では、試料を採取後すぐに
発色反応を起こさせることが可能となる。また、便など
の固形物を試料とする場合で、水分を滴下する必要性が
ある場合でも、不安定な過酸化水素液ではなく、緩衝液
を添付するだけでよい。すなわち、潜血試験において
も、本発明の過酸化水素付加物は、分析試薬の安定性と
分析操作の簡便性を向上させる。
【0041】また、前記した化学発光分析の場合、過酸
化水素または一連の検出反応を起こさせるための引き金
となる試薬を含むトリガー液を分注すると同時に発光を
検出する必要がある。そのため、トリガー液の分注攪拌
機構と発光検出機構との精密な連動が要求される。しか
し、あらかじめ本発明の過酸化水素付加物を反応容器に
乾燥状態で組み込んでおくことにより、試料液を反応容
器に分注するだけで過酸化水素が発生して発光を生起で
きる。さらに好ましい方法として、特異結合物質を不溶
化する担体として磁性粒子などの微粒子担体を用いる方
法が例示できる。この場合、特異結合反応後の微粒子担
体を濾紙などのフィルター上で捕捉し、化学発光に必要
な成分をフィルター上に滴下すれば、微粒子担体上に結
合している標識物に由来する化学発光をこのフィルター
上で観測できる。本発明の過酸化水素付加物は、濾紙な
どのフィルター内に安定に含浸乾燥できるから、あらか
じめ本発明の過酸化水素付加物を含浸乾燥したフィルタ
ー上で前記した特異結合反応後の微粒子担体の捕捉を行
えば、過酸化水素を滴下せずとも化学発光を生起でき、
迅速で正確な化学発光特異結合分析が可能となる。
【0042】すなわち、本発明の分析方法は、前記した
各種分析方法を含めて、分析試薬の1成分として過酸化
物、具体的には過酸化水素を用いるいずれの分析方法に
おいても、分析試薬の安定性を高め、分析操作を簡便化
でき、正確で迅速な分析を行うことができる。さらに、
本発明の分析方法は、潜血試験等のパーオキシダーゼ活
性分析、化学発光分析、特異結合反応に基づく分析方法
に好適であり、流路と検出部とを有する装置を用いる特
異結合分析にも好ましい。
【0043】次に、本発明の方法を用いる分析装置の一
例を挙げて本発明の分析方法を詳細に説明する。本発明
の方法を用いる分析装置の原理は、過酸化物を使用する
ものであれば特に限定されるものではないが、過酸化物
のひとつである過酸化水素が、HRPOの酵素基質であ
ることから、酸化還元酵素としてHRPOを標識剤と
し、液体試料と共にマトリクス中に展開することによ
り、液体試料中の分析対象物と特異結合物質との特異結
合反応によって標識剤の電極部からの距離分布を形成さ
せ、電子伝達物質の拡散に律速された液体試料中の分析
対象物の濃度に対応する電流値を計測し、これによって
分析対象物濃度を測定するMEDIA法(Mediator Diff
usion-Controlled Immunoassay) として知られる特異結
合分析方法(特開平5−264552号公報(欧州特許
公開公報 0 525 723 A2 号)、特開平7−234201
号公報参照)に適用するのが好ましい。
【0044】従って、以下に、本発明を適用することが
できるMEDIA法特異結合分析方法の基本的原理につ
いて、本発明をMEDIA法特異結合分析装置に適用し
た一例に基づいて本発明を説明する。なお、本明細書中
で用いる用語の定義は、特開平5−264552号公
報、特開平7−234201号公報に記載されているの
で、これらの公報の内容を引用し、本発明の記載とす
る。
【0045】本発明の方法を実施する分析装置の一例
は、流路と検出部とを有し、原理的に図1に示され、具
体的に図2に示される装置が挙げられる。流路eとは、
試料導入部から導入された液性試料が流れる経路であ
り、分析対象物および信号物質発生体が展開され、特異
結合反応が起こる場をいう。試料導入部から導入された
液性試料は、ポンプなどの外圧、重力などの外力あるい
は自発的な浸透力によって、流路内へ導入される。簡便
な装置構成で、再現性ある液性試料の流路内への導入を
可能とするためには、流路を細管(キャピラリ)あるい
は狭い間隙で構成するか、あるいは流路を多孔性部材で
構成して、液性試料の自発的な浸透力によって導入する
のが望ましい。
【0046】例えば、流路を構成する細管あるいは多孔
性部材に特異結合物質が不溶化されており、液性試料お
よび信号物質発生体がここを所定方向に流れることで、
特異結合反応が試料の流れ方向に分布をもって起こる。
より具体的な例を挙げれば、分析対象物と信号物質発生
体が、特異結合物質に対して競合的に特異結合するか、
分析対象物が特異結合物質に結合し、さらに信号物質発
生体が分析対象物にサンドイッチ型に特異結合する等し
て、特異結合反応が液性試料の流れ方向に分布をもって
起こることによって、液性試料中の分析対象物の濃度に
応じた信号物質発生体の分布が形成される。なお、特異
結合反応等が試料の流れ方向に分布をもって起こる場で
ある流路は、特異結合物質が不溶化されている例に限定
されるものではなく、特異結合反応に伴って起こる分子
量あるいは粒子サイズの変化等に基づいてそれを分布と
して示すものであってもよい。
【0047】検出部cとは、到達した信号物質が発する
信号を検出する部位であり、肉眼での目視で、もしく
は、信号の性質に応じた好適な外部の計測器で、信号の
変調の程度を計測できる部位である。
【0048】以上説明した特異結合物質、信号物質発生
体、ならびに信号の発生に関与する物質は、あらかじめ
装置内に存在してもよいし、液性試料の導入に先立ち、
あるいは液性試料と同時に、あるいは液性試料の導入後
に、装置内に導入されてもよい。なお、あらかじめ装置
内に存在する場合は、装置内に均質に分布していてもよ
いし、装置内の特定の箇所に備えられ、液性試料または
試料以外の展開液によって溶解するものであってもよ
い。ここで、本発明において必須の過酸化水素付加物
は、信号物質の発生に関与する物質の役割を有し、ま
た、特異結合反応への悪影響が小さいので、流路eの上
流側に配置することができる。このように配置すること
により、過酸化水素水溶液が直接特異結合反応の場に溶
出するため、迅速に測定結果が得られるので好ましい。
【0049】なお、液性試料の自発的な流れを増強した
り、流路eを通過する試料液量を増大させるために、必
要に応じて、流路eの下流に連結して吸収部を配置する
こともできる。吸収部は、吸水性材料で構成され、必要
に応じ、信号物質の発生に関与する物質等を保持する部
位であってもよい。また、導入された試料液を吸引し保
持する役割もはたす。
【0050】本発明を適用することができる装置の原理
は図1に示され、液性試料を導入する試料導入部aと、
過酸化水素付加物、その他必要により信号の発生に関与
する物質(例えば、HRPO)等を備える試薬部bと、
検出部cと、検出部cに連結したマトリクスdとを有す
る。試料導入部a、試薬部bおよびマトリクスdは流路
eの一部であるか、もしくは各部は流路eでそれぞれ連
結されている。試薬部bが複数存在してもよい。図1に
示される例において、分析対象物量未知の液性試料を試
料導入部aから装置内に導入し、試薬部bで過酸化水素
等を溶解し、分析対象物と特異結合物質との少なくとも
1つの特異結合反応により、マトリクスd内で液性試料
中の分析対象物量に応じた信号物質発生体10の分布を
形成させ、必要な場合には信号物質の発生に関与する物
質14を反応させて、マトリクスd内に分布する各々の
信号物質発生体10によって信号物質12を発生させ、
発生した信号物質12が、それぞれ流路内を拡散して検
出部cまで到達して発する信号を、検出部cにおいて計
測する。
【0051】すなわち、図1においては1つの信号物質
発生体10のみを例示するが、検出部cにおいて計測さ
れるのは、マトリクスd内に分布する多数の信号物質発
生体10から連続的に発生された信号物質12の拡散に
律速された信号に依存する。つまり、信号物質12の発
生源である信号物質発生体10から検出部cに至るま
で、拡散によって信号物質12が流路内を移動しなけれ
ばならない距離xに依存した信号となる。
【0052】ここで、後に詳述するが、信号物質発生体
10の分布は液性試料中の分析対象物の量に依存する。
従って、試料導入部aに導入された液性試料中の分析対
象物量が異なると、マトリクスdにおける信号物質発生
体10から検出部cに至るまでの信号物質12の拡散距
離の分布が分析対象物量に応じて異なる結果となり、こ
の信号物質発生体10の分布の違いを検出部cに到達し
た信号物質12が発する信号の違いとして検出すること
ができる。ここで例示する特異結合分析方法は、上記の
仕組みを利用したものであって、検出部cにおいて信号
物質12が発する信号から液性試料中の分析対象物量を
測定するものである。
【0053】前述のように、特異結合反応とは、分析対
象物とそれに特異的に結合する特異結合物質(含信号物
質発生体10)との反応、特異結合物質と信号物質発生
体10との反応等をいう。すなわち、ここで例示する分
析装置は、 信号物質発生体10の標識によって発生され、かつ、
検出部cにおいてのみ検出可能な信号を発生するあるい
は発生させる信号物質12を媒介させる場合、検出部c
において観測される信号は、標識(信号物質発生体1
0)と検出部cとの距離(すなわち信号物質12の拡散
距離)に応じた出力強度となること; 分析対象物と特異結合物質との少なくとも1つの特異
結合反応によって、信号物質発生体10(すなわち標
識)の位置分布を液性試料中の分析対象物濃度に応じて
異なるものとできること; 従って、検出部cにおいて検出される信号は、液性試
料中の分析対象物濃度に対応していること;をその分析
方法の基本概念としたものである。
【0054】本発明者らは、上記基本概念を見出し、先
にこれを用いた特異結合分析方法および装置を提案した
(特開平5−264552号公報、欧州特許公開公報 0
525723 A2 号、特開平7−234201号公報参
照)。この分析方法が、MEDIA法と呼ばれる。この
分析方法(装置)によれば、未反応物の除去操作なし
に、試料中の分析対象物を高感度、かつ迅速に測定する
ことが可能である。
【0055】特開平7−234201号公報に記載のM
EDIA法では、前述のように、過酸化水素の供給源と
して、尿素と過酸化水素との混合溶液をガラス濾紙ある
いはセルロース濾紙等に含浸・乾燥させたものが用いら
れている。これは保存安定性、過酸化水素水溶液を別に
調合する必要がないという簡便性等の理由からである。
なお、尿素を用いているのは、尿素に過酸化水素の保持
効果がある、溶解性が高い等の理由による。しかしなが
ら、蛋白変性剤としても知られる尿素は、抗原抗体反応
において、いったん酵素標識抗体あるいは不溶化抗体な
どに結合した抗原を脱離させてしまい測定を不安定にす
るという悪影響を及ぼすことから、尿素ができるだけ反
応の場に影響を及ぼさないよう、尿素を用いた過酸化水
素付加物は、反応に影響を及ぼしにくい分析装置最下流
に配置する必要があり、具体的には後述する図2に示す
装置の吸収部28に配置されていた。このため、尿素に
保持される過酸化水素も反応の場から遠くに位置するこ
ととなり、この場合反応系への過酸化水素の供給は下流
側からの拡散によって行われることから、安定な応答が
得られるまでに時間がかかり、迅速に測定結果が得られ
ない、さらには、最下流に置かれていても、尿素の逆拡
散により時間とともに応答を阻害するという欠点があっ
た。また、尿素の過酸化水素保持能も必ずしも高いとは
いえない程度のものであった。
【0056】このような問題点を解決するために、本発
明者らが鋭意検討を重ねた結果、本発明の方法では、過
酸化水素と、カルボン酸およびカルボン酸の塩の少なく
とも一成分とを含む、過酸化水素と、スルホン酸および
スルホン酸の塩の少なくとも一成分とを含む、過酸化水
素と、リン酸およびリン酸の塩の少なくとも一成分とを
含む、過酸化水素と単糖、二糖、糖アルコール、および
それらのポリマーのすくなくとも1成分とを含む、ある
いは過酸化水素と、N−アセチル−グルコサミン、アス
コルビン酸、クレアチニン、およびポリエチレングリコ
ールの少なくとも一成分とを含む、乾燥状態の付加物を
過酸化物の供給源として用いることにより、過酸化水素
保持能が高く、かつ、特異結合反応等への悪影響が少な
くなることを見出して、本発明を完成したものである。
【0057】以下に、特異結合反応の具体例として、免
疫反応系の一成分が分析対象物である場合について、マ
トリクスd内での免疫反応(特異結合反応)を例示す
る。ここで例示する免疫反応は、特異結合反応によっ
て、液性試料中の分析対象物の量に応じて、マトリクス
d内での信号物質発生体10の分布を変化させ、この分
布の変化を、検出部cで測定する。なお、液性試料中の
分析対象物の量に応じて、流路内の信号物質発生体10
の分布を変化させる方法は、種々の方法が可能であり、
以下に記載する方法は一例にすぎない。
【0058】その第一は、分析対象物と同じ物質あるい
はその類縁物質を反応の場に不溶化して行う競合法であ
る。この場合、マトリクスdには、分析対象物と同じ物
質あるいはその類縁物質を不溶化しておき、信号物質発
生体10としては、特異結合物質である抗分析対象物抗
体と標識剤(例えば信号物質12を発生させる反応に関
与する酵素)との結合体を用いる。液性試料にあらかじ
め信号物質発生体10を混合しておき、これを試料導入
部aから流すことにより、あるいは、信号物質発生体1
0を含む試薬部bにおいて信号物質発生体10と液性試
料とを混合した後、マトリクスdに流すことにより、試
料中の分析対象物と不溶化された分析対象物(あるいは
その類縁物質)とを、信号物質発生体10中の抗体部分
(特異結合物質)に対して、競合的に反応させる。その
結果、液性試料中の分析対象物量が多いほど、信号物質
発生体10はマトリクスd内のより下流側に分布が変動
する。この方法は、分析対象物がハプテン様の低分子量
物質の場合でも、分析対象物が高分子量物質の場合でも
好適に用いることができる。分析対象物がハプテンの場
合、分析対象物と同じハプテンかあるいは特異結合物質
が交叉反応しうる別のハプテンを、特異結合物質が結合
可能な様式でマトリクスdに不溶化すればよい。分析対
象物が高分子量の蛋白質などの場合、蛋白質自体あるい
は特異結合物質が結合するエピトープのペプチド配列を
マトリクスdに不溶化すればよい。
【0059】第二は、分析対象物が複数の抗体と同時に
結合しうる抗原等の高分子量物質の場合に好適なサンド
イッチ法を用いる例である。この場合、マトリクスdに
は、分析対象物の第1の特異結合物質であるエピトープ
Aに対する抗体を不溶化しておき、分析対象物の第2の
特異結合物質であるエピトープBに対する抗体と標識剤
との結合体を信号物質発生体10として、液性試料にあ
らかじめ信号物質発生体10を混合しておき、これをマ
トリクスdに流すことにより、あるいは、信号物質発生
体10を含む試薬部bにおいて信号物質発生体10と液
性試料とを混合した後、マトリクスdに流すことによ
り、分析対象物に反応させるとよい。すなわち、試料中
の分析対象物をサンドイッチ型に反応させるのである。
その結果、液性試料中の分析対象物量が多いほど、信号
物質発生体10はマトリクスd内のより上流側に分布が
変動する。また、分析対象物が抗体の場合、マトリクス
dには特異結合物質である抗原を不溶化しておき、抗
(抗体)抗体と標識剤との結合体を信号物質発生体10
として分析対象物に反応させるとよい。
【0060】第三は、分析対象物に対する特異結合物質
を不溶化して行う競合法である。この場合、マトリクス
dには、特異結合物質である抗分析対象物抗体を不溶化
しておき、信号物質発生体10としては、不溶化特異結
合物質に対して分析対象物と競合する物質である分析対
象物と同じ物質あるいはその類縁物質と標識剤との結合
体を用い、液性試料にあらかじめ信号物質発生体10を
混合しておき、これをマトリクスdに流すことにより、
あるいはマトリクスdの上流域に存在する信号物質発生
体10を含む試薬部において信号物質発生体10と液性
試料とを混合した後、マトリクスdに流すことにより、
分析試料中の分析対象物と信号物質発生体10とを、不
溶化された特異結合物質に対して競合的に反応させると
よい。その結果、液性試料中の分析対象物量が多いほ
ど、信号物質発生体10は流路内のより下流側に分布が
変動する。また、分析対象物が抗体の場合、流路には特
異結合物質である抗原あるいはエピトープ部分を不溶化
しておき、不溶化特異結合物質に対して分析対象物の抗
体と競合的に結合する別の抗体と標識剤との結合体を信
号物質発生体10として用いることができる。
【0061】ところで、上記説明では、マトリクスdに
抗体あるいは抗原を不溶化させ、信号物質発生体10や
分析対象物を抗体に直接あるいは間接に結合させたが、
信号物質発生体10や分析対象物をマトリクスdに結合
させなくても、すなわち先の例における抗体あるいは抗
原がマトリクスdに不溶化されていなくても、分析対象
物の量に応じて信号物質発生体10のマトリクスd内で
の分布を変化させることは可能であり、そのような例
も、ここに含まれる。
【0062】例えば、分析対象物が微生物(例えば病原
性真菌等)であり、信号物質発生体10が抗微生物抗体
(抗病原性真菌抗体等)と標識剤とが結合してなる標識
特異結合物質である場合、分析対象物(微生物)は、信
号物質発生体10に比べてかなり大であるため、分析対
象物と信号物質発生体10との複合体と、フリーの信号
物質発生体10とでは、マトリクスd内での移動速度、
すなわち到達位置に大きな差を生じる。この場合には、
マトリクスdとして、例えば多孔性材質のものを用い、
そのメッシュ(ポアサイズ)を適正に選択することによ
って、あるいは、ゲル状もしくはゾル状担体を用い、そ
の粘度を微生物サイズに応じて適正に選択することによ
って、この到達位置の差異を明瞭化できる。従って、分
析対象物は、マトリクスdには結合されないが、そのマ
トリクスd内での分布は局在化され、分析対象物と特異
結合反応しうる信号物質発生体10は、マトリクスd内
で分析対象物量に応じた分布をするようになる。この場
合でも、成分(a)と(b)過酸化水素との付加物を試
薬として用いて、本発明の分析方法を行うことができ
る。
【0063】また、別の例として、フリーの標識抗体と
フリーの分析対象物との自発的な沈降性結合物(免疫沈
降物)形成(いわゆるゲル内免疫沈降反応)を利用した
測定があげられる。この場合には、分析対象物の量に応
じて免疫沈降物の形成量が変化し、また、形成された免
疫沈降物は、多孔性材質および/またはゲル状担体から
なるマトリクスdの上流に留まるが、免疫沈降反応に関
与しなかったフリーの標識抗体は、マトリクスdの下流
へ侵入し得るため、試料中の分析対象物量に応じて信号
物質発生体10の分布が変化する。同様に、特異結合物
質を不溶化した微粒子担体と分析対象物との特異結合凝
集反応による微粒子の会合サイズの変化を信号物質発生
体10の分布変化に利用することもできる。この場合
も、成分(a)と(b)過酸化水素との付加物を試薬と
して用いて、本発明の分析方法を行うことができる。
【0064】ここでは、信号物質発生体が、ペルオキシ
ダーゼ酵素標識特異結合物質である場合について、特異
結合分析における信号の発生について、図1に基づいて
説明する。
【0065】酵素基質として過酸化水素付加物から供給
される過酸化水素は、標識特異結合物質の構成成分であ
るペルオキシダーゼにより水に還元され、同時に水素供
与体である電子メディエータを酸化型電子メディエータ
とし、これが検出部cである電極で酸化還元反応を起こ
し、電気信号を発生する。
【0066】電子メディエータとは、本発明において
は、酵素反応と電極反応との間を媒介して、両反応間の
電子移動を可能ならしめる酸化還元化合物を総称して用
いられており、その中には、両反応いずれにおいても不
可逆な副生成物を実質的に生じず、両反応の間をサイク
リング可能な物質を含んでいる。
【0067】図1において、マトリクスd内の信号物質
発生体(パーオキシターゼ標識特異結合物質)10に信
号物質の発生に関与する物質(過酸化水素と還元型電子
メディエータ)14が反応すると、還元型電子メディエ
ータが酸化型電子メディエータに変換される。この酸化
型電子メディエータが信号物質12である。この信号物
質12が拡散によって−150mV(vs.Ag/Ag
Cl)に電位設定された検出部c(電極)に到達する
と、信号物質12は還元されて再び還元型電子メディエ
ータに戻り、同時に還元電流という信号(電子移動)を
発生する。なお、信号物質の発生に関与する物質14と
なる還元型電子メディエータ(水素供与体)としては、
ハイドロキノン、P−フェニレンジアミン(PPD)、
N,N−ジメチル−p−フェニレンジアミン(DMP
D)、N,N,N´,N´−テトラメチル−p−フェニ
レンジアミン(TMPD)、N,N,N´,N´−テト
ラエチル−p−フェニレンジアミン(TEPD)、N,
N,N´,N´−テトラキスカルボキシメチル−p−フ
ェニレンジアミン(TCPD)、N,N,N´,N´−
テトラキス(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレン
ジアミン(THEPD)、N,N,N´,N´−テトラ
キス(2,3−ジヒドロキシプロピル)−p−フェニレ
ンジアミン(TDHPD)等が例示され、好ましくはT
DHPD、TCPD、THEPDである。
【0068】流路eは、例えば多孔性担体あるいはゲル
担体で構成する。ただし、ゲル担体の場合は、試料と接
触することによってゲル状態あるいはゾル状態となるも
のを用いるのがよい。好ましくは、多孔性担体である。
あるいは、多孔性担体に、水溶性高分子化合物を含浸さ
せ、乾燥させたものを流路eとして用いてもよい。さら
には、前記多孔性担体等に固体状物質を保持させたもの
であってもよい。
【0069】より具体的には、流路eを形成する多孔性
担体としては、セルロース製、セルロースアセテート
製、ニトロセルロース製あるいはナイロン製の多孔性メ
ンブレン、ガラス繊維製あるいはセルロース繊維製の濾
紙、多孔性セラミックス等が、また、ゲル担体として
は、寒天、アガロース、デキストラン、ポリアクリルア
ミド等が例示される。さらに、前記水溶性高分子化合物
としては、デンプンおよびその誘導体、マンナン、ガラ
クタン、寒天、アガロース、アルギン酸ナトリウム、ア
ラビアゴム、デキストラン、ゼラチン、カゼイン、コラ
ーゲン、メチルセルロース(MC)、エチルセルロース
(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カ
ルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニールア
ルコール(ポバール)、ポリアクリル酸ナトリウムなど
が例示できる。加えて、前記固体状物質としては、デキ
ストラン等の多孔性粒子、ポリスチレン製等のラテック
ス、ガラス製微粒子等の微粒子、またはそれらに結合用
の活性基を付与した微粒子が例示される。
【0070】流路eを複数の構造および材質から構成さ
せることにより、例えば積層体等とすることにより、そ
の性状を詳細に調節することができる。例えば、流路e
の検出部c近傍にポアサイズの小さい材質を用い、流路
eの試料導入部a側には、ポアサイズの大きい材質を用
いると、分析対象物量による特異結合反応後の信号物質
発生体の分布の差異をより明瞭にできる。これを実現す
る具体例としては、ポリアクリルアミドのグラディエン
トゲルおよびポアサイズの異なる多孔性メンブレンの積
層体等が例示できる。
【0071】マトリクスdに分析対象物に対する特異結
合物質を存在あるいは不溶化させる場合、それは、全体
に均等に存在させあるいは不溶化してもよいが、マトリ
クスdの一部分に局在させてもよい。また、上流側には
多く存在あるいは不溶化させ、下流側には少なく存在あ
るいは不溶化させる等の濃度傾斜をつけてもよい。
【0072】なお、マトリクスdに分析対象物に対する
特異結合物質を不溶化させるには、多孔性担体あるいは
ゲル担体に共有結合あるいは吸着によって不溶化させれ
ばよい。また、マトリクスdを複数の部材から構成する
場合、あるいは、多孔性担体と水溶性高分子化合物とで
構成する場合、あるいは、多孔性担体等とそれに保持さ
れる固体状物質とで構成する場合、特異結合物質の不溶
化は、構成要素全てに対して行なってもよいし、一部に
のみ行なってもよい。
【0073】本発明の装置の流路eの試料の流れ方向の
長さは、小さくすればするほど、試料の必要液量を少な
くできるが、小さくしすぎると、分析対象物の量に応じ
た信号物質発生体の分布の変化が明瞭でなくなる。従っ
て、一般的には、10μm〜数十mm程度とする。
【0074】検出部cは、到達した信号物質が発する信
号を、肉眼での目視で、もしくは、信号の性質に応じた
好適な外部の計測器で、信号の変調の程度を計測できる
部位であり、マトリクスdから信号物質12を受け取る
ことができる位置に配置される。検出部cは、流路e内
での信号物質発生体10の位置分布の変化から生じる信
号変調の大きい部位に設ければよい。通常は、マトリク
スdの最下流側あるいは最上流側である。検出部におけ
る検出手段には特に限定はなく、信号物質による信号
(あるいは信号物質によって検出部が発する信号)に応
じて、各種の公知の手段が利用可能である。特に電気化
学的測定が好ましく利用される。例えば、電気化学的信
号であれば、検出部として各種の電極を用いればよい。
具体的には、作用電極および対照電極としては、白金、
金、銀、カーボン電極等が使用できるが、製造に適した
カーボン印刷電極が好適である。この場合、電極基板と
しては、液体不透過性の板、例えばPETフィルム、塩
化ビニル板あるいはガラス板などを使用してもよいし、
液体透過性のシート、例えば濾紙などを使用してもよ
い。さらに微細な電極構成とするために、マイクロ電
極、マイクロアレイ電極を作製することもできる。ま
た、前記電極の対極としては、AgあるいはAg/Ag
Cl電極等が例示される。これも、印刷技術等によって
製造できる。検出部cを酵素電極とすれば、電極反応の
特異性や感度が上昇する。この場合には、信号物質は、
酵素電極の基質もしくは補因子として作用し、電子が電
極上で授受され、信号が測定される。酵素電極は、生化
学分析あるいは分析化学分野では多数知られているもの
を用いることができる。信号が蛍光、発光、呈色等であ
る場合は、各々、具体的には、検出部cは、発光反応に
必要な少なくとも1つの信号の発生に関与する物質を実
質上不動化した発光発生部、蛍光反応に必要な少なくと
も1つの信号の発生に関与する物質を実質上不動化した
蛍光発生部、呈色反応に必要な少なくとも1つの信号の
発生に関与する物質を実質上不動化した呈色発生部等で
ある。
【0075】さらに、検出部cが蛍光、発光、呈色等が
検出される部位である場合、検出部cは、マトリクスd
または後記する吸収部の一部に、あるいは、検出部cの
下流側に設けられた基板がある場合は、その基板に、信
号の発生に関与する物質を不動化させることで作製する
ことができる。その場合、不動化には、3−アミノプロ
ピルトリエトキシシラン処理したガラス基板とグルタル
アルデヒドとを用いて酵素を基板に結合する等の、種々
の方法が利用できる。
【0076】ここで、過酸化水素付加物等を備えた試薬
部bは、マトリクスdの上流側に配置されるのが好まし
い。このような過酸化水素付加物に、水系溶液を加える
と過酸化水素が溶出し、過酸化水素水溶液が発生するの
で、試薬部bの下流側の流路に直接溶出し、ペルオキシ
ダーゼが触媒する信号物質発生反応を起こし、前記した
通り、検出部において電気信号を発生する。したがっ
て、試薬部bをマトリクスdの下流側に配置した場合
(この場合、過酸化水素は、下方からの拡散によって供
給される)に比べて、迅速に測定結果を得ることができ
る。ただし、本発明の過酸化水素付加物の非妨害性およ
び溶解性などの利点は、その配置によらず有用である。
【0077】図2に、このような本発明に好適なMED
IA法特異結合分析装置であって、電気化学的信号によ
って測定を行う装置の一例の分解斜視図を、図4にこの
装置を組み立てた際の断面図を、それぞれ示す。図2に
示される分析装置は、上から、上部カバー16、第1含
浸部18、第2含浸部20、単一あるいは複数の検出部
を有する電極部22、特異結合物質不溶化流路(マトリ
クス)26、吸収部28、および下部基板30を有して
構成され、図2に示されるように、各部材が上記順番で
積み重ねられて、組み合わされて構成される。
【0078】図示例の装置においては、上部カバー16
(その試料導入口16a)、第1含浸部18および第2
含浸部20によって試料導入部が構成される。なお、第
1含浸部18および第2含浸部20以外に、フィルター
部などを必要に応じて配置してもよく、その他の部材を
必要に応じて適宜選択し、組み合わせて試料導入部を形
成してもよい。
【0079】上部カバー16は塩化ビニル、エポキシ、
アクリルあるいはPET(ポリエチレンテレフタレー
ト)などの樹脂で成形され、その中心部分には液性試料
を注入するための試料導入口16aが形成される。
【0080】第1含浸部18および第2含浸部20は、
液性試料の種類、分析対象物、利用する特異結合反応等
に応じて適宜配置されるものであって、ガラス繊維濾
紙、セルロース繊維濾紙、不織布等に、信号物質発生
体、信号物質の発生に関与する物質、信号の発生に関与
する物質、電子メディエータ等の分析に必要な試薬また
はこれに類するものおよびこれらの安定化剤もしくは保
護剤、イオン強度および/またはpH調整のための塩成
分、緩衝液成分、界面活性剤、血液凝固阻害剤などの液
性試料の流動円滑化剤等が含浸・乾燥されてなるもので
ある。信号物質発生体がHRPO標識特異結合物質の場
合、信号物質の発生に関与する物質の1つである過酸化
水素は、本発明方法に用いる過酸化水素付加物として、
好ましくはいずれかの含浸部に含浸・乾燥することがで
きる。
【0081】第1含浸部18や第2含浸部20を液性試
料が通過することによって、信号物質発生体等と共に過
酸化水素が溶出して液性試料と混合され、反応が開始さ
れる。なお、1つの含浸部に保持される物質は複数であ
ってもよく、また、図示例のように第1含浸部18と第
2含浸部20とに分けずに、含浸部を1つとしてもよい
のはもちろんである。また、逆に、さらに多くの含浸部
を設置してもよい。
【0082】また、このような第1含浸部18や第2含
浸部20等を有することによって、試料の流れ時間を長
くして反応時間を十分に確保することが可能となる。さ
らに、図示例においては、好ましい態様として第2含浸
部20の上面中心部分には水が通過不可能なシール部2
0aが形成される。シール部20aを有することによ
り、鉛直方向であった試料の流れを水平方向に変更する
ことができ、試料の流れ時間をより長くして反応時間を
十分に確保することが可能となると共に、混合効果によ
って反応効率が上り、より正確な測定を実現することが
できる。シール部20aの形成材料および形成方法には
特に限定はなく、塩化ビニル、セルロースアセテート、
ポリエステル等の各種の水不透性材料を、接着剤、例え
ばアクリル系接着剤等の手段を用いて第2含浸部20の
中心部分に貼着すればよい。もしくは、水不透性樹脂あ
るいは水不透性ポリマーなどの薄膜を印刷法、光重合法
あるいは光硬化法などで形成させればよい。
【0083】電極部22は、単一あるいは複数の検出部
cが形成されるものであって、図示例の装置において
は、電極部22は、PET(ポリエチレンテレフタレー
ト)等の絶縁性基板24の上面に参照極/対極を、下面
に検出部となる作用極が形成され、流路26に形成され
た信号発生体の分布に応じた電気的信号が作用極によっ
て検出される。
【0084】図3(a)に電極部22の上面を、図3
(b)に電極部22の下面を、それぞれ示す。図示例の
電極部22の上面には、環状の対極(参照極)34およ
びその端子34aが形成され、対極34およびその端子
部分34aを除いて、斜線で示されるように絶縁層36
が形成されている。一方、電極部22の裏面には、上面
と同様にして、環状の作用極38およびその端子38a
が形成されている。また、作用極38およびその端子部
分38aを除いて、斜線で示されるように絶縁層36が
形成されている。また、絶縁性基板24には、対極34
および作用極38の中央を貫通して貫通孔32が形成さ
れる。
【0085】前述のように、液性試料は貫通孔32を通
過して後述する特異結合物質不溶化流路26に導入され
る。図示例の装置においては、水不透過性シール28a
の存在によって、特異結合物質不溶化流路26内での液
性試料は貫通孔32すなわち作用極38の中心から外方
向に向かって放射状に流れる。
【0086】検出部となる作用極38は、カーボン電
極、銀電極、金電極などの各種の電極材料によって形成
される。対極34は、銀電極、銀/塩化銀電極等で形成
される。また、基板24は、PET、ポリ塩化ビニル、
ポリイミド、ポリエステル等の公知の各種の絶縁性材料
で形成される。さらに、絶縁層36は、アクリル系樹
脂、ポリエステル等の公知の各種の絶縁性インク材料で
形成される。
【0087】なお、図示例の装置において、各作用極、
対極(参照極)および絶縁層は、共に、スクリーン印
刷、ドクターナイフ等の厚膜形成技術、スパッタリン
グ、CVD等の薄膜形成技術等の公知の膜形成技術によ
って形成すればよい。
【0088】本発明において、作用極38の形状は図示
例の環状に限定はされず、また、複数の作用極が配置さ
れてもよい。
【0089】図2の特異結合物質不溶化流路26は、M
EDIA法の特異結合分析装置における特異結合反応の
場として作用するもので、マトリクスともいう。例え
ば、分析対象物および信号物質発生体と特異結合する抗
体あるいは抗原が不溶化して固定されており、液体試料
中の分析対象物等の特異結合反応によって、液体試料中
の分析対象物の量に応じた信号物質発生体の分布を形成
する。特異結合物質不溶化流路26に形成された信号物
質発生体の作用極38からの距離分布が、信号物質を介
して電流値として測定される。このような特異結合物質
不溶化流路26は、例えば、メンブレンフィルター等の
多孔質膜に、特異結合反応のための抗体や抗原、核酸等
を、不溶化して保持・乾燥してなるものである。また、
余剰の試料は、特異結合物質不溶化流路26を通過して
後述の吸収部28で吸収される。
【0090】吸収部28は、前述のように特異結合物質
不溶化流路26を通過した余剰の試料を吸収するもので
あるが、吸収部28に信号物質の発生に関与する物質お
よび/または信号の発生に関与する物質、例えば本発明
方法の過酸化水素付加物を含浸しておいてもよい。
【0091】図示例の装置においては、好ましい態様と
して吸収部28の上面中心部分に水が通過不可能なシー
ル部28aが形成される。前述のシール部20aと同
様、シール部28aを有することにより、鉛直方向であ
った試料の流れを水平方向に変更することができ、試料
の流れ時間を長くして、特異結合反応の効率を向上させ
ると共に、流路内の信号物質発生体(標識体)分布が明
瞭になり、より正確な測定を実現することができる。な
お、シール部28aは、前述のシール部20aと同様に
形成される。
【0092】図示例の分析装置は、これらの各部材を図
2および図4に示される順序で、下部基板30上に積層
して、上部カバー16と下部基板30とを貼り合わせ、
あるいは、ねじ止め、ボルトとナット等を用いて固定し
て作製される。
【0093】このような分析装置においては、前述のよ
うに、試料は上部カバー16に形成される試料導入口1
6aより注入される。試料導入口16aより注入された
試料は、第1含浸部18に流入し、次いで第2含浸部2
0に流入する。含浸部に試料が流入することにより、乾
燥・保持された信号物質発生体および過酸化水素水等が
溶出し、試料と混合され、分析対象物の特異結合反応が
開始される。なお、図示例においては、第2含浸部20
の上面にはシール部20aが形成されるので、試料の流
れ方向が鉛直方向から水平方向に変更され、十分な反応
時間が確保できるのは前述のとおりである。
【0094】第2含浸部20を通過した試料は、電極部
22の貫通孔32を通過し、特異結合物質不溶化流路2
6に流入する。特異結合不溶化流路26に試料が流入す
ると、特異結合物質不溶化流路26内で液体試料中の分
析対象物の特異結合によって信号物質発生体の分布が決
まり、信号物質発生体の作用によって発生する信号物質
が拡散によって作用極38に到達し、作用極において、
信号物質発生体の特異結合物質不溶化流路26内の作用
極の半径方向の分布が、反応に対応した電気化学的信号
として検出される。余剰の試料は、特異結合物質不溶化
流路26を通過して吸収部28で吸収される。
【0095】作用極38からの出力(電気信号)は、試
料導入部に所定量の液性試料を添加し、所定時間経過後
に、あるいは、所定時間が経過するまで連続的に、読み
取りを行えばよい。また、データは、所定時間経過後の
出力強度(例えば電流値)、所定時間内の出力強度の平
均値、出力が所定強度となるまでの時間、連続的な出力
の積分値(例えば電気量)出力が一定の強度になるまで
の時間等として読み取ればよい。
【0096】
【実施例】以下、実施例により、本発明を具体的に説明
する。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。 [実施例1〜3、比較例1〜4]本発明方法に用いる過
酸化水素付加物を構成するのに好適な化合物を調べるた
めに、各種の化合物について、過酸化水素保持効果およ
び抗原抗体反応への影響について試験および評価を行っ
た。
【0097】(実施例1)過酸化水素保持効果の比較 <1>以下に示す10種類の化合物について、試験およ
び評価を行った。 酢酸(和光純薬工業株式会社製) 3−ヒドロキシプロピオン酸(東京化成工業株式会社
製) イセチオン酸(和光純薬工業株式会社製) L−セリン(和光純薬工業株式会社製) L−シトルリン(和光純薬工業株式会社製) アルビジン(SIGMA社製) ヒダントイン酸(東京化成工業株式会社製) N−アセチルグリシン(東京化成工業株式会社製) リン酸(和光純薬工業株式会社製) クエン酸(和光純薬工業株式会社製)
【0098】<2>界面活性剤(Tween20)処理
ガラス繊維濾紙の作製 ガラス繊維濾紙(GA100、アドバンテック東洋社
製)を0.2%Tween20(和光純薬工業社製)水
溶液に浸漬させ、室温にて一晩静置した。その後、蒸留
水にて10回洗浄し、次いで、オーブン(80℃)内で
乾燥させ界面活性剤(Tween20)処理ガラス繊維
濾紙を作製した。
【0099】<3>各化合物の過酸化水素保持効果の比
較 過酸化水素(和光純薬工業製)および<1>項の各化合
物を蒸留水に溶解し、0.5M過酸化水素−0.5M化
合物溶液を調製した。各溶液はHCl水溶液又はNaO
H水溶液の添加によりpHを約6.0に調製した。各溶
液を下記の方法でそれぞれ凍結乾燥した。 無担体系;1.0mLポリスチレン製試験管に300
μLずつ分注し、凍結乾燥した。 セルロース濾紙担体系;クロマトグラフ濾紙(17C
hr、Whatman社製)からパンチングして作製し
た直径12mmの円形濾紙をバット上に並べ、1枚当た
り100μLずつ点着して凍結乾燥した。 ガラス繊維濾紙担体系;<2>項で界面活性剤(Tw
een20)処理したガラス繊維濾紙からパンチングし
て作製した直径12mmの円形濾紙をバット上に並べ、
1枚当たり140μLずつ点着して凍結乾燥した。乾燥
直後の各凍結乾燥体中の成分を下記の方法で再溶解し、
溶解液中の過酸化水素濃度をPeroXOquant TM Quantitat
ive Peroxide Assay(PIERCE社製)キットを用い
て定量し、凍結乾燥前に添加した過酸化水素量に対する
回収率を算出した。 無担体系;蒸留水を乾燥後の試験管に300μLずつ
添加して溶解した。 セルロース濾紙担体系およびガラス繊維濾紙担体
系;乾燥後の濾紙1枚ずつを、0.1Mリン酸−0.1
M塩化ナトリウム緩衝液(pH6.0)3.0mLに浸
漬し、150rpmで1時間振とうした後、その上清を
採取した。 上記〜について、結果を図5(a)、図6(a)お
よび図7(a)にそれぞれ示した。
【0100】(比較例1)過酸化水素保持効果の比較 <1>以下に示す8種類の化合物について、実施例1と
同様の試験および評価を行った。 蒸留水 尿素(和光純薬工業株式会社製) メチルアミン(和光純薬工業株式会社製) モノエタノールアミン(和光純薬工業株式会社製) ヒドロキシ尿素(和光純薬工業株式会社製) ジメチロール尿素(和光純薬工業株式会社製) アセトアミド(東京化成工業株式会社製) 塩化ナトリウム(国産化学株式会社製) 結果を図5(b)、図6(b)および図7(b)に示
す。
【0101】(結果) 無担体系においては、酢酸、3ーヒドロキシプロピオ
ン酸、イセチオン酸、L−セリン、Lーシトルリン、ア
ルビジン、ヒダントイン酸、N−アセチルグリシン、リ
ン酸、クエン酸、尿素のいずれかを含む過酸化水素付加
物の過酸化水素保持能が高かった。 セルロース濾紙担体系においては、酢酸、3ーヒドロ
キシプロピオン酸、L−セリン、L−シトルリン、アル
ビジン、ヒダントイン酸、N−アセチルグリシン、リン
酸、クエン酸、ジメチロール尿素のいずれかを含む過酸
化水素付加物の過酸化水素保持能が高かった。 ガラス繊維濾紙担体系においては、酢酸、3ーヒドロ
キシプロピオン酸、L−セリン、L−シトルリン、アル
ビジン、ヒダントイン酸、N−アセチルグリシン、リン
酸、クエン酸のいずれかを含む過酸化水素付加物の過酸
化水素保持能が高かった。特に、酢酸、3ーヒドロキシ
プロピオン酸、L−セリン、L−シトルリン、アルビジ
ン、ヒダントイン酸、N−アセチルグリシン、リン酸、
クエン酸は、尿素と同等以上の過酸化水素保持能を示し
た。
【0102】(実施例2)抗原抗体反応への影響の比較 <1>抗エストラジオール(E2)抗体と西洋ワサビパ
ーオキシダーゼとの結合体(信号物質発生体)の作製 エストラジオール(E2)を認識するマウス単クローン
性抗体(持田製薬社製)を100mM 塩化ナトリウム
−1mM EDTA−60mM トリエタノールアミン
緩衝液(pH8.0)(TEA緩衝液)に5.3mg/
mL濃度となるように溶解し、窒素ガス置換したTEA
緩衝液に十分に透析した。この抗体溶液2.2mLに対
して、TEA緩衝液中に調製した50mMの2−イミノ
チオラン塩酸塩(Pierce社製)溶液70μLを添加し、
撹拌後、窒素ガス雰囲気下、4℃で1.5時間静置し
た。その後、窒素ガス置換した100mM塩化ナトリウ
ム−1mM EDTA−100mM リン酸緩衝液(p
H6.0)(EDTA−PB)で十分に透析し、SH基
が導入された抗E2抗体を得た。100mM 塩化ナト
リウム−100mMリン酸緩衝液(pH6.0)(P
B)で20mg/mL濃度に調製された西洋ワサビパー
オキシダーゼ(HRPO,東洋紡社製)溶液3.1mL
を30℃でゆっくり撹拌しながら、50mMのスルホS
MCC(Pierce社製)3.1mLを添加して20分間反
応させた。反応後、窒素ガス置換したPBで平衡化した
SephadexG−25(ファルマシア社製)カラム
(2.5φ×14.5cm)を通して未反応のスルホS
MCCを除去し、濃縮器CENTRIPREP−10
(Amicon社製)を用いて濃縮し、マレイミド化HRPO
を得た。得られたマレイミド化HRPOの濃度は、40
3nmの吸光度から求めた。3.3×10-7モルのマレ
イミド化HRPO溶液に対して、1/5倍モル量のSH
基導入抗体を添加混合後、窒素ガス雰囲気下、4℃にて
16時間反応させた。次いで、500mMのシステアミ
ン含有EDTA−PB溶液96μLを添加し、窒素ガス
雰囲気下、4℃にて60分間反応させ、その後、窒素ガ
ス置換したPBで平衡化したULTROGEL AcA
34(IBF Biotechnics 社製)カラムを用いてゲル
ろ過クロマトグラフィーを行った。280nmおよび4
03nmにおける吸光度測定を、ゲルろ過クロマトグラ
フィーの溶出分画について行い、遊離の酵素を含まない
抗体とHRPOとの結合体の分画を集めて濃縮した。濃
縮標品(HRPO標識抗E2抗体と称す)は、Phas
tシステムによる電気泳動(ファルマシア社製)で分子
量を確認後、吸光度と酵素活性から含有される抗体およ
び酵素量を決定し、後記する測定において信号物質発生
体として用いた。
【0103】<2>17β−エストラジオール−6−
[O−カルボキシメチル]オキシム−ウシγグロブリン
(E2−6CMO−γG)の作製 17β-Estradiol-6-[O-carboxymethyl]oxime (E2−6
CMO、シグマ社製)6.6mgをジオキサン0.66
mLに溶解し、トリ−n−ブチルアミン(和光純薬製)
4.62μL、およびイソブチルクロロホルメート(ナ
カライテスク社製)4.62μLを加え、10℃で30
min攪拌した。次いで、この溶液をあらかじめ50%
ジオキサン水溶液で5mg/mLに調製したウシγグロ
ブリン(シグマ社製)溶液30.32mLに添加した。
その後、0.1N水酸化ナトリウム溶液を用いて反応溶
液のpHを8.0〜8.5に調節しながら10℃で4時
間攪拌した。蒸留水に対し4℃で20時間透析した後、
反応溶液に等量のジエチルエーテルを加えてよく攪拌
し、静置後分離したエーテル層を除去した。この抽出操
作を二度繰り返し、溶液中の未反応E2−6CMOを充
分除去した後、水層をPBに対して透析を行い、E2−
6CMO−γGを作製した。
【0104】<3>各化合物の抗原抗体反応に対する影
響の比較 96穴マイクロプレート(NUNC社製)に、<2>項
で作製したE2−6CMOーγGの10μg/mLリン
酸緩衝液加生理食塩水(PBS)をウェル当たり50μ
Lずつ添加し、E2−6CMOーγGを吸着固定した。
洗浄後、0.1%正常ウサギ血清(NRS)を100μ
L/ウェル添加し、4℃で5時間以上静置し、ブロッキ
ングを行った。洗浄後、<1>項で作製したHRPO標
識抗E2抗体の希釈溶液に、実施例1の<1>項の各化
合物の溶液(pH6.0)をそれぞれ0.25Mまたは
0.5M濃度で添加した溶液をウェル当たり50μLず
つ分注し、25℃で1時間静置した。さらに、洗浄後、
ペルオキシダーゼの発色基質TMB(ScyTek社
製)をウェル当たり50μLずつ分注した。10分後に
停止液(ScyTek社製)をウェル当たり50μLず
つ添加して反応を停止し、ETY96プレートリーダー
(東洋測器社製)で450nmの吸光度を測定した。図
8(a)に結果を示す。
【0105】(比較例2)抗原抗体反応への影響の比較 <1>比較例1<1>項の各化合物について、実施例2
と同様の試験および評価を行った。結果を図8(b)に
示す。 (結果)メチルアミン、ジメチロール尿素、アルビジン
以外の化合物は、尿素に比べて抗原抗体反応への影響が
小さいことが示された。ここで、過酸化水素保持能を横
軸に、抗原抗体反応への影響を縦軸にプロットすると図
9のようになり、酢酸、3ーヒドロキシプロピオン酸、
L−セリン、L−シトルリン、ヒダントイン酸、N−ア
セチルグリシン、リン酸、クエン酸は、尿素よりも抗原
抗体反応への影響が小さく、かつ、過酸化水素の保持能
の大きい化合物として有用であった。アルビジンは尿素
よりも抗原抗体反応への影響は大きいが、尿素よりも過
酸化水素保持能が高いため、尿素よりも低濃度で同一の
過酸化水素を保持でき、その場合は、抗原抗体反応への
影響も尿素より低くなった。
【0106】(実施例3)過酸化水素保持量の化合物濃
度依存性 <1>実施例1のガラス繊維濾紙担体において、L−
シトルリン、ヒダントイン酸の濃度を0.05M、0.
1M、0.2M、0.4M、0.5M、1.0Mの各濃
度とした以外は実施例1と同様にして、各化合物の過酸
化水素保持量の濃度依存性を調べた。図10に結果を示
す。
【0107】(比較例3)過酸化水素保持量の化合物濃
度依存性 <1>実施例1のガラス繊維濾紙担体において、尿素
の濃度を0.05M、0.1M、0.2M、0.5M、
1.0M、2.0M、4.0Mの各濃度とした以外は実
施例1と同様にして、各化合物の過酸化水素保持効果の
濃度依存性を調べた。図10に結果を示す。 (結果)尿素、L−シトルリン、ヒダントイン酸の3化
合物とも、化合物濃度に依存して過酸化水素保持量が増
大した。L−シトルリン、ヒダントイン酸は、尿素より
も10倍程度高い過酸化水素保持能を示した。例えば、
40mMの過酸化水素を保持するのに必要な濃度を比較
すると、尿素2.0Mに対し、L−シトルリンは300
mM、ヒダントイン酸は100mMであった。
【0108】(比較例4)抗原抗体反応に対する尿素濃
度の影響 実施例2において、尿素の濃度を0.5M、1.0M、
2.0M、4.0Mの各濃度とした以外は実施例2と同
様にして、450nmの吸光度を測定した。図11に結
果を示す。 (結果)尿素濃度が高いほど、450nmの吸光度が低
い、すなわち、残存酵素活性が低下することが示され
た。従って、尿素が多く存在するほど、抗原抗体反応が
阻害されることが分かる。実施例3および比較例3から
明らかなように、ガラス繊維濾紙担体系で過酸化水素を
保持するには、尿素は、L−シトルリンやヒダントイン
酸に比べて、高濃度で添加しなければならないが、高濃
度では抗原抗体反応に悪影響を及ぼすため、実用的では
ない。
【0109】[実施例4〜5、比較例5〜7]L−シト
ルリン、ヒダントイン酸または尿素を用いた過酸化水素
付加物を、以下に示すように、それぞれ特異結合分析装
置における電極の上流側または下流側に配置して装置を
組み立て、血清中エストラジオール(E2)の測定を行
った。
【0110】<1>電極部の作製 厚さ0.25mmの透明PETフィルムの表側および裏
側に、導電性カーボンインク(400−CT、アサヒ化
研社製)、導電性銀ぺースト(LS411N、アサヒ化
研社製)およびレジスト(XB−101G、藤倉化成社
製)を用いてスクリーン印刷し、図3に示されるような
電極部22を作製した。まず、絶縁性基板24となるP
ETフィルムの表面に、カーボンインクを用いてスクリ
ーン印刷を行い、対極(参照極)34と、対極34に導
通する端子34aを形成し、次いで、絶縁性レジストを
用いて絶縁層36を形成した。さらに、リング状の対極
34を銀ペーストで上塗り印刷した。続いて、絶縁性基
板24となるPETフィルムの裏面に、同様にして作用
極38と、作用極38に導通する端子38aをカーボン
インクで形成し、さらに絶縁層36を形成した(すなわ
ち、銀ペースト印刷はおこなっていない)。各電極およ
び絶縁層を形成した後、PETフィルムを長さ44m
m、幅18mmのサイズに切断し、さらに、対極34お
よび作用極38の中心をパンチングして貫通孔32を形
成し、図3に示されるような電極部22を作製した。各
電極部の諸元は下記のとおりである。
【0111】<電極部22>実施例4および比較例5、
7では以下の電極部を用いた。 貫通孔32(作用極38の内径):2mm、作用極38
の外径:4mm(すなわち、作用極38の幅1mm) 表面の対極(参照極)の内径:2mm、対極(参照極)
の外径:6mm 実施例5および比較例6では以下の電極部を用いた。 貫通孔32(作用極38の内径):4mm、作用極38
の外径:7mm(すなわち、作用極38の幅1.5m
m) 表面の対極(参照極)の内径:4mm、対極(参照極)
の外径:8mm 作製した各電極部22について、作用極38および対極
34が電気的に独立しており、また、それぞれに対応す
る端子38aおよび端子34aに電気的に接続されてい
ることを確認した。また、対極34に関しては、上述の
銀ペースト電極を対極(参照極)として使用した。
【0112】<2>第1含浸部18(信号物質発生体−
電子メディエータ含浸部=西洋わさびパ−オキシダーゼ
標識抗E2抗体およびN,N,N´,N´−テトラキス
−(2´−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミ
ン2塩酸塩(THEPD)を含浸させた乾燥体)の作製 先に実施例2の<1>項で作製した西洋わさびパ−オキ
シダ−ゼ標識抗E2抗体、およびTHEPD(最終濃度
2mM)を、5%正常ウサギ血清(NRS)−10%ラ
クトース/0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩
衝液 pH7.4で希釈した溶液を調製した。次いで、
実施例1の<2>で作製したTween20処理ガラス
繊維濾紙からパンチングして作製した直径12mmの円
形濾紙に上記溶液を140μLずつ点着し、凍結乾燥を
行い、第1含浸部18(信号物質発生体−電子メディエ
ータ含浸部)を作製した。
【0113】<3>第2含浸部20の作製 後述するように、実施例4および5では過酸化水素とヒ
ダントイン酸等を含有した緩衝液を、比較例5および6
では過酸化水素と尿素等を含有した緩衝液を、比較例7
では緩衝液のみを調製した。前記実施例1の<2>で作
製したTween20処理ガラス繊維濾紙からパンチン
グして作製した直径12mmの円形濾紙に上記溶液を1
40μLずつ点着し、凍結乾燥を行い、第2含浸部20
を作製した。
【0114】<4>抗原不溶化流路26(ハプテン不溶
化メンブレン=E2−6CMO−γG不溶化多孔性セル
ロース混合エステル膜)の作製 先に実施例2の<2>で作製したE2−6CMO−γG
をPBSに溶解して2.0mg/mL濃度に調製した。
この溶液100mLに、ポアサイズ8.0μmのセルロ
ース混合エステル多孔性膜(日本ミリポア社製)からパ
ンチングして作製した直径13mmの円形多孔性膜10
00枚をビーカー内で浸漬し、30分間25℃で振とう
した。濾紙で水分をぬぐった多孔性膜を一晩真空乾燥し
て抗原不溶化流路26(ハプテン不溶化メンブレン)を
作製した。
【0115】<5>吸収部28(過酸化水素付加物を含
浸させた乾燥体)の作製 クロマトグラフ濾紙17Chr(Whatman社製)
からパンチングして直径12mmの円形濾紙を作製し
た。なお、比較例7の場合に限り、後述する溶液を上記
円形濾紙に含浸し、凍結乾燥させて、過酸化水素付加物
の乾燥体として作製した。
【0116】<6>特異結合分析装置の作製 このようにして作製した各部位を用い、下記のようにし
て、図2および図4に示される特異結合分析装置を作製
した。まず、アクリル製の下部基板30上にシール部2
8a(厚さ25μm、直径;実施例4および比較例5、
7では4mm、実施例5および比較例6では7mm)を
有する吸水部ろ紙を配置し、抗原不溶化流路26(ハプ
テン不溶化メンブレン)をその上に中心位置を合わせて
重積した。なお、比較例7では、吸収部28として過酸
化水素付加物を含浸させた乾燥体を用いた。さらに、電
極部22と貫通孔32の中心を抗原不溶化流路26の中
心と一致させて、作用極側を下にして積層した。次に、
第2含浸部20を、その中心が電極の貫通孔の中心と一
致するように重積した。この第2含浸部20の上部表面
中央に、PET製シール(厚さ25μm、直径10m
m)を貼り付けた。その上に、第1含浸部18(信号物
質発生体−電子メディエータ含浸部)を重積した。その
上に、直径3mmの試料導入口16aを有するアクリル
製の上部カバー16を、その試料導入口16aの中心が
貫通孔32の中心と一致するように上乗せし、上部カバ
ー16下部基板30の四隅のネジ孔を合わせネジ留めし
て図2および4に示されるような、エストラジオール濃
度測定用の特異結合分析装置を作製した。装置の断面図
(図12)を用いて過酸化水素含浸部の配置を示す。図
12(a)は過酸化水素−ヒダントイン酸水溶液の含浸
乾燥体40を上流側に配置した場合、図12(b)は過
酸化水素−尿素水溶液の含浸乾燥体42を下流側に配置
した場合である。
【0117】<7>血清中でのE2測定 このようにして作製した特異結合分析装置の電極部22
において、対極34の端子34aを電流計測回路の対極
(参照極)端子に接続し、同回路の作用極端子に、作用
極38(検出部)の端子38aを接続した。そして、同
回路からナショナルインスツルメンツ社製のデータ集録
ボードAT−MIO−16Xを通じてコンピュータ内に
データを取り込み解析を行った。プール血清(Scantibo
dies Laboratory 社製、code3SH027)に標準濃度のE2
を添加して、E2 0.1ng/mLおよびE2 10
0ng/mLの血清検体を調製した。E2を含む血清検
体をそれぞれ、前記特異結合分析装置の上面アクリル板
の試料導入口を通じて、試料導入部に200μL導入し
た。試料導入後、各作用極を対極・参照極に対して−1
50mVとなるように電位設定し、電流値を記録した。
【0118】(実施例4)特異結合分析装置による血清
中エストラジオール(E2)測定(過酸化水素−ヒダン
トイン酸を電極の上流側に配置した場合;本発明に対
応) 500mM 過酸化水素−100mM ヒダントイン酸
(KOHでpH6.0に調製)−160U/mLヘパリ
ン−0.1M NaClを調製し、上記溶液を用いて<
3>の第2含浸部を作製し、<6>の装置を組み立て、
<7>の測定を行った。結果を図13に示した。
【0119】(比較例5)特異結合分析装置による血清
中エストラジオール(E2)測定(過酸化水素−尿素を
電極の上流側に配置した場合) 500mM 過酸化水素−2.0M 尿素−160U/
mLヘパリン−0.1M NaClを調製し、上記溶液
を用いて<3>の第2含浸部を作製し、<6>の装置を
組み立て、<7>の測定を行った。 (結果)実施例4では、E2の濃度に依存した電流応答
が見られたが、比較例5では高濃度の尿素が原因でハプ
テン不溶化メンブレンで目詰まりをおこし、測定不可能
であった。実施例3、比較例3から明らかなように、1
00mM ヒダントイン酸(実施例4)と2.0M 尿
素(比較例5)は、ほぼ同様の過酸化水素を保持してい
るが、高濃度の尿素を電極の上流側に配置すると試料液
の流れを阻害し、不適切であった。
【0120】(実施例5)特異結合分析装置による血清
中エストラジオール(E2)測定(過酸化水素−ヒダン
トイン酸を電極の上流側に配置した場合;本発明に対
応) 25mM 過酸化水素−100mM ヒダントイン酸
(KOHでpH6.0に調製)−160U/mLヘパリ
ン−0.1M NaClを調製し、上記溶液を用いて<
3>の第2含浸部を作製し、<6>の装置を組み立て、
<7>の測定を行った。結果を図14に示す。
【0121】(比較例6)特異結合分析装置による血清
中エストラジオール(E2)測定(過酸化水素−尿素を
電極の上流側に配置した場合) 500mM 過酸化水素−2.0M 尿素−160U/
mLヘパリン−0.1M NaClを調製し、上記溶液
を用いて<3>の第2含浸部を作製し、<6>の装置を
組み立て、<7>の測定を行った。結果を図15に示
す。 (結果)過酸化水素、ヒダントイン酸、および尿素を各
々最適濃度組成にし、ハプテン不溶化メンブレンへの試
料液浸潤が速くなるよう、電極部貫通孔径を2mm(実
施例4、比較例5)から4mm(実施例4、比較例5)
に拡大したMEDIA分析装置を用いて、尿素とヒダン
トイン酸との比較を行った。ヒダントイン酸(実施例
5)を用いた場合は、約200秒という短時間でE2濃
度に依存した安定な電流応答が得られたが、尿素を用い
た場合(比較例6)は、この貫通孔径でも電流の立ち上
がりが遅く、電流値も不安定であった。
【0122】(比較例7)特異結合分析装置による血清
中エストラジオール(E2)測定(過酸化水素−尿素を
電極の下流側に配置した場合;従来技術に対応) 0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液 pH
7.4を調製し、上記溶液を用いて<3>の第2含浸部
を作製した。また、過酸化水素(和光純薬工業製)およ
び尿素(和光純薬工業製)を蒸留水に溶解し、1.0M
過酸化水素−4.0M尿素溶液を調製し、<5>の円形
濾紙に上記溶液を100μL点着し、凍結乾燥を行い、
尿素の過酸化水素付加物の乾燥体を作製した。これらを
用いて、<6>の装置を組み立て、<7>の測定を行っ
た。結果を図16に示した。
【0123】(結果)抗原抗体反応及び液流に対する尿
素の悪影響を回避するために尿素の過酸化水素付加物を
下硫側に配置した場合(比較例7の尿素の過酸化水素付
加物を用いた場合;図16)に比べて、ヒダントイン酸
の過酸化水素付加物を上流に配置した場合(実施例5の
ヒダントイン酸の過酸化水素付加物を用いた場合;図1
4)では電流値の立ち上がりを待つ必要がなくなり、よ
り短時間での測定が可能になると共に、より安定な電流
応答が得られた。すなわち、図16(尿素の過酸化水素
付加物を用いて下流側に配置した場合)では、時間0秒
で試料液を導入すると、溶解した酵素標識抗体、電子メ
ディエータなどの作用極上の通過に起因する電流(図で
は−方向の還元電流)が一過性に流れた後、200秒後
には電流値は一旦低下する。試料液が最下層の吸収部に
到達して、含浸されている過酸化水素を溶解すると、過
酸化水素が逆拡散し、約250秒後から電流値は再び増
大し始める。その結果、約600秒後に、E2 100n
g/mLとE2 0.1ng/mLの試料間の電流値の差
が最大値を示した。しかし、図14(ヒダントイン酸の
過酸化水素付加物を用いて上流側に配置した場合)で
は、時間0秒に試料液を導入すると、溶解した酵素標識
抗体、電子メディエータなどの作用極上の通過に起因す
る電流(図では−方向の還元電流)が一過性に流れた
後、約200〜300秒で速やかにE2 100ng/m
LとE2 0.1ng/mLの試料間の電流値の差が安定
に現れた。同様の結果は、ヒダントイン酸の代わりにL
−シトルリン、リン酸、クエン酸、酢酸、あるいは、N
−アセチルグリシンを用いた場合にも得られた。
【0124】[実施例6〜9、比較例8]本発明に用い
る過酸化水素付加物を構成するのに好適な化合物を調べ
るために、各種の化合物について、過酸化水素保持効果
の試験および評価を行った。
【0125】(実施例6)過酸化水素保持効果の比較 <1>表1に示した各化合物を蒸留水に溶解し、200
mM化合物溶液を調製した。各溶液はHCl水溶液又は
NaOH水溶液の添加によりpHを約6.0に調整し
た。これらの溶液と過酸化水素(和光純薬工業製)を用
いて100mM過酸化水素−100mM化合物溶液を調
製した。各溶液をガラス製バイアル(容積3.0mL)
に100μLずつ分注し、凍結乾燥した。乾燥後各バイ
アルに蒸留水を1.0mLずつ添加して凍結乾燥体中の
成分を再溶解し、溶解液中の過酸化水素濃度をPero
XOquantTMQuantitative Pero
xide Assay(PIERCE社製)キットを用
いて定量し、凍結乾燥前に添加した過酸化水素量に対す
る回収率を算出した。結果を表1に示す。
【0126】
【表1】
【表2】
【0127】(実施例7)過酸化水素保持効果の比較 <1>各化合物の過酸化水素保持効果の比較 表2に示した各化合物を最終濃度0.25%あるいは
2.0%で用いた以外は実施例6と同様にして、各成分
の過酸化水素保持効果を評価した。結果を表2に示す。
【0128】
【表3】
【0129】(比較例8)表3に示す化合物について、
実施例6と同様の試験および評価を行った。結果を表3
に示す。 (結果)表1に示した化合物はいずれも過酸化水素保持
効果を示した。また、溶液のpHが少なくとも4〜9の
範囲でこの過酸化水素保持効果は認められた。さらに、
この過酸化水素保持効果は、凍結乾燥物を45℃・24
時間、あるいは4℃・6ヶ月保存した後も認められた。
表2に示したポリマーも過酸化水素保持効果を示し、化
合物濃度が高いほど過酸化水素保持効果が高くなる傾向
にあった。しかし、過酸化水素保持効果が既に知られて
いる尿素は、実施例6の化合物と同濃度(100mM)
ではほとんど過酸化水素保持効果を示さなかった(表
3)。
【0130】
【表4】
【0131】各化合物の構造と過酸化水素保持効果との
相関については以下のような傾向が認められた。少な
くとも、水酸基、カルボキシル基、リン酸基、硫酸基を
有する化合物は過酸化水素保持効果を示すが、中でもカ
ルボキシル基、あるいはリン酸基を有する化合物の過酸
化水素保持効果が高い。カルボキシル基と水酸基を併
せ持つ化合物等、複数種の官能基を有する化合物の過酸
化水素保持効果が高い。カルボキシル基を1つ有する
化合物よりも2つ以上有する化合物のほうが過酸化水素
保持効果が高い。すなわち、複数の官能基を有する化合
物の過酸化水素保持効果が一般に高かった。表4にカル
ボキシル基を2つ有する化合物の場合で例示したよう
に、化合物の分子鎖長に関わらず過酸化水素保持効果を
示した。また、二重結合や三重結合が存在する化合物、
あるいは、官能基がシクロヘキサン環やベンゼン環上に
存在する化合物も、過酸化水素保持効果を示した。すな
わち、いずれの化合物も比較例の尿素よりも過酸化水素
保持効果は高く、過酸化水素抱合剤として好適な化合物
であった。
【0132】
【表5】
【0133】(実施例8)過酸化水素保持効果の比較 <1>表5に示す化合物について、実施例6と同様にし
て100mM過酸化水素−100mM化合物溶液を調製
した。クロマトグラフ濾紙(514A、アドバンテック
東洋社製)からパンチングして作製した直径10mmの
円形濾紙をバット上に並べ、各溶液を1枚当たり25μ
Lずつ点着して凍結乾燥した。凍結乾燥後の濾紙は乾燥
剤と共にアルミパックに封入して4℃あるいは45℃で
24時間保存した。濾紙1枚ずつを、0.1Mリン酸−
0.1M塩化ナトリウム緩衝液(pH6.0)3.0m
Lに浸漬し、150rpmで1時間振とうした後、その
上清を採取した。上清中の過酸化水素を実施例6と同様
の方法で定量し、凍結乾燥前に添加した過酸化水素量に
対する回収率を算出した。結果を表5に示す。
【0134】
【表6】 (結果)表5に示した化合物はいずれも過酸化水素保持
効果を示した。さらに、この過酸化水素保持効果は、凍
結乾燥物を45℃・24時間保存した後も認められた。
すなわち、いずれの化合物も過酸化水素抱合剤として保
存安定性が優れていた。
【0135】(実施例9)特異結合分析装置による血漿
中エストラジオール(E2)測定 実施例8で作製した過酸化水素乾燥体を吸収部として特
異結合分析装置の電極に対して下流側に配置し、血漿中
エストラジオール(E2)の測定を行った。
【0136】<1>吸収部43(過酸化水素付加物を含
浸させた乾燥体)の作製 実施例8<1>で作製した過酸化水素付加物を含浸させ
た乾燥体を吸収部43として用いた。
【0137】<2>界面活性剤(Tween20)処理
ガラス繊維濾紙の作製 ガラス繊維濾紙(GF/C、Whatman社製)を用
い、実施例1<2>の手順で界面活性剤(Tween2
0)処理ガラス繊維濾紙を作製した。この界面活性剤
(Tween20)処理ガラス繊維濾紙からパンチング
して作製した直径10mmの円形濾紙を第1層44およ
び第2層45として用いた。
【0138】<3>試薬乾燥体46(信号物質発生体−
電子メディエータ含浸部=西洋わさびパーオキシダーゼ
標識抗E2抗体およびN,N,N’,N’−テトラキス
−(2’−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミ
ン2塩酸塩(THEPD)を含浸させた乾燥体)の作製 先に実施例2の<1>項で作製した西洋わさびパーオキ
シダーゼ標識抗E2抗体、およびTHEPD(最終濃度
9mM)を、5%正常ウサギ血清(NRS)−10%ラ
クトース/0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩
衝液 pH7.4で希釈した溶液を調製した。上記溶液
をバット上に20μLずつ点着し、凍結乾燥を行い、試
薬乾燥体46(信号物質発生体−電子メディエータ)を
作製した。
【0139】<4>抗原不溶化流路47(ハプテン不溶
化メンブレン=E2−6CMO−γG不溶化多孔性セル
ロース混合エステル膜)の作製 実施例4<4>と同様にして抗原不溶化流路47(ハプ
テン不溶化メンブレン)を作製した。ただし、円形多孔
性膜の直径は10mmとした。
【0140】<5>電極部 電極部22は図3に示した通りである。実施例9で用い
た電極の諸元は下記の通りである。 貫通孔32(作用極38の内径):3.5mm、作用極
38の外径:6.5mm(すなわち、作用極38の幅
1.5mm) 表面の対極(参照極)の内径:3.5mm、対極(参照
極)の外径:7mm
【0141】<6>特異結合分析装置の作製 このようにして作製した各部材を用い、下記のようにし
て図17に示される特異結合分析装置を作製した。先
ず、アクリル製の下部基板48上にシール部43a(厚
さ25μm、直径7mm)を有する吸水部43を配置
し、抗原不溶化流路47(ハプテン不溶化メンブレン)
をその上に中心位置を合わせて重積した。さらに、電極
部22と貫通孔32の中心を抗原不溶化流路47の中心
と一致させて、作用極側を下にして積層した。次に、第
2層45を、その中心が電極の貫通孔の中心と一致する
ように重積した。この第2層45の上部表面中央に、P
ET製シール(厚さ25μm、直径8mm)を張りつけ
た。その上に、第1層44を重積した。その上に、直径
2mmの試料導入口49aを有するアクリル製の上部カ
バー49を、その試料導入口49aの中心が貫通孔32
の中心と一致するように上乗せし、上部カバー49下部
基板48の四隅のネジ孔を合わせネジ留めした。試料導
入口49aに試薬乾燥体46を配置して、エストラジオ
ール濃度測定用の特異結合分析装置を作製した。装置の
概略図を図17に示す。
【0142】<7>血漿中でのE2測定 このようにして作製した特異結合分析装置の電極部22
において、対極34の端子34aを電流計回路の対極
(参照極)端子に接続し、同回路の作用極端子に、作用
極38(検出部)の端子38aを接続した。そして、同
回路からナショナルインスツルメンス社製のデータ集録
ボードAT−MIO−16Xを通じてコンピュータ内に
データを取り込み解析を行った。健常人血漿に標準濃度
のE2を添加して、E2 1ng/mLおよびE2 1
0ng/mLの血漿検体を調製した。E2を含む血漿検
体をそれぞれ、前記特異結合分析装置の上面アクリル板
の試料導入口を通じて、試料導入部に80μL導入し
た。あらかじめ各作用極を対極・参照極に対して−15
0mVとなるように電位設定した特異結合分析装置に試
料を導入し、電流値を記録した。
【0143】(結果)表5に示したいずれの化合物を用
いた場合も、実施例4及び実施例5と同様に、E2濃度
に依存した電流応答が観察された。したがって、これら
の化合物はいずれも、ここに例示した特異結合分析のよ
うな分析方法において試薬の配置にかかわらずに、分析
原理に対する影響が小さい汎用性の高い過酸化水素抱合
剤である。また、本発明の過酸化水素付加物は、ここに
例示したMEDIA分析装置に限定されず、分析試薬と
して少なくとも過酸化水素を用いる分析方法において好
適に使用できる。
【0144】
【発明の効果】本発明によれば、過酸化物、具体的には
過酸化水素の供給源として、分析への悪影響が小さく、
過酸化水素保持能の高い安定な過酸化水素付加物を使用
することにより、正確で、かつ、感度の優れた、分析操
作の簡便な分析装置が提供される。
【0145】さらに、MEDIA法特異結合分析装置に
適用する場合には、過酸化水素付加物の配置にかかわら
ず、迅速な測定が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の分析方法を利用する特異結合分析
(MEDIA)装置の一例の原理を概念的に示す図であ
る。
【図2】 本発明の分析方法を利用する特異結合分析
(MEDIA)装置の一例の概略分解斜視図である。
【図3】 (a)は図2に示される特異結合分析(ME
DIA)装置の電極部の上面、(b)は同電極部の裏面
を、それぞれ示す概略図である。
【図4】 図2に示される特異結合分析(MEDIA)
装置を組み立てた際の概略断面図である。
【図5】 過酸化水素−各化合物水溶液を無担体で凍結
乾燥した場合の添加量に対する過酸化水素回収率を示す
実施例(a)および比較例(b)のグラフである。
【図6】 過酸化水素−各化合物水溶液をセルロース濾
紙に含浸させて凍結乾燥した場合の添加量に対する過酸
化水素回収率を示す実施例(a)および比較例(b)の
グラフである。
【図7】 過酸化水素−各化合物水溶液をガラス濾紙に
含浸させて凍結乾燥した場合の添加量に対する過酸化水
素回収率を示す実施例(a)および比較例(b)のグラ
フである。
【図8】 各化合物の抗原抗体反応への影響を示す実施
例(a)および比較例(b)のグラフである。
【図9】 各化合物の過酸化水素保持能と抗原抗体反応
への影響との関係を示すグラフである。
【図10】 各化合物の過酸化水素保持量の化合物濃度
依存性を示すグラフである。
【図11】 尿素濃度と抗原抗体反応への影響との関係
を示すグラフである。
【図12】 (a)は過酸化水素−ヒダントイン酸水溶
液の含浸乾燥体を上流側に配置した場合、(b)は過酸
化水素−尿素の含浸乾燥体を下流側に配置した場合の装
置の概略図である。
【図13】 過酸化水素−ヒダントイン酸水溶液の含浸
乾燥体を上流側に配置した場合の電流値の変化の様子を
示すグラフである。
【図14】 過酸化水素−ヒダントイン酸水溶液の含浸
乾燥体を上流側に配置した場合の電流値の変化の様子を
示すグラフである。
【図15】 過酸化水素−尿素水溶液の含浸乾燥体を上
流側に配置した場合の電流値の変化の様子を示すグラフ
である。
【図16】 過酸化水素−尿素水溶液の含浸乾燥体を下
流側に配置した場合の電流値の変化の様子を示すグラフ
である。
【図17】 実施例9のE2測定に使用した分析装置の
概略図である。
【符号の説明】
a 試料導入部 b 試薬部 c 検出部 d マトリクス e 流路 10 信号物質発生体 12 信号物質 14 信号物質の発生に関与する物質 16 上部カバー 16a 試料導入口 18 第1含浸部 20 第2含浸部 20a,28a シール部 22 電極部 24 絶縁性基板 26 特異結合物質不溶化流路(マトリクス) 28 吸収部 30 下部基板 32 貫通孔 34 対極 34a 端子部分 36 絶縁層 38 作用極 38a 端子部分 40 過酸化水素−ヒダントイン酸含浸乾燥部 42 過酸化水素−尿素含浸乾燥部 43 吸収部 43a シール部 44 第1層 45 第2層 45a シール部 46 試薬乾燥体 47 抗原不溶化流路 48 下部基板 49 上部カバー 49a 試料導入口

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】分析試薬として、少なくとも過酸化物を用
    いる分析方法において、 (a)カルボン酸、カルボン酸の塩、リン酸、リン酸の
    塩、スルホン酸およびスルホン酸の塩からなる群より選
    ばれる少なくとも1成分と、 (b)過酸化水素との乾燥状態の付加物を、測定時に水
    系溶液を加え、過酸化物を発生させ、分析試薬として用
    いることを特徴とする分析方法。
  2. 【請求項2】少なくとも流路と検出部とを有する装置を
    用いて、分析試薬として少なくとも過酸化物を用いる分
    析方法において、 (a)カルボン酸、カルボン酸の塩、リン酸、リン酸の
    塩、スルホン酸およびスルホン酸の塩からなる群より選
    ばれる少なくとも1成分と、 (b)過酸化水素との乾燥状態の付加物を、流路内のい
    ずれかに配置し、測定時に水系溶液を溶解し、過酸化物
    を発生させて、発生した過酸化物を用いて、分析対象物
    を検出または検量する請求項1に記載の分析方法。
  3. 【請求項3】前記分析方法がパーオキシダーゼ活性を有
    する触媒を用いて分析対象物の測定を行う方法であっ
    て、前記測定時に水系溶液を加えることにより、触媒反
    応に関わる物質としての過酸化物を発生する請求項1ま
    たは2に記載の分析方法。
  4. 【請求項4】前記成分(a)が、下記式(1)で表され
    るモノカルボン酸、ピルビン酸、およびそれらのナトリ
    ウム塩あるいはカリウム塩からなる群より選ばれる少な
    くとも1成分である請求項1〜3のいずれかに記載の分
    析方法。 【化1】
  5. 【請求項5】前記成分(a)が、脂肪族ジカルボン酸、
    芳香族ジカルボン酸、および、それらのナトリウム酸あ
    るいはカリウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1
    成分である請求項1〜3のいずれかに記載の分析方法。
  6. 【請求項6】前記成分(a)が、下記式(2)または
    (3)で表されるトリカルボン酸、および、該トリカル
    ボン酸のナトリウム塩あるいはカリウム塩からなる群よ
    り選ばれる少なくとも1成分である請求項1〜3のいず
    れかに記載の分析方法。 【化2】 (ただし、R4 ;H,−OH (p=1〜3,q=0〜
    3,r=0〜3)) 【化3】 (ただし、R5 ;H,−CH3 (s=1〜3))
  7. 【請求項7】前記成分(a)が、下記式(4)で表され
    るテトラカルボン酸、および該テトラカルボン酸のナト
    リウム塩あるいはカリウム塩からなる群より選ばれる少
    なくとも1成分である請求項1〜3のいずれかに記載の
    分析方法。 【化4】 (t=0〜3,u=0〜3,v=0〜3)
  8. 【請求項8】前記成分(a)がウロン酸、ポリウロン
    酸、および、それらのナトリウム塩あるいはカリウム塩
    からなる群より選ばれる少なくとも1成分である請求項
    1〜3のいずれかに記載の分析方法。
  9. 【請求項9】前記成分(a)がヒドロキシアルカンスル
    フォン酸、アミノアルカンスルフォン酸、ヒドロキシベ
    ンゼンスルフォン酸、および、それらのナトリウム塩あ
    るいはカリウム塩からなる群より選ばれる少なくとも1
    成分である請求項1〜3のいずれかに記載の分析方法。
  10. 【請求項10】前記成分(a)が、リン酸、および該リ
    ン酸のナトリウム塩あるいはカリウム塩からなる群より
    選ばれる少なくとも1成分である請求項1〜3のいずれ
    かに記載の分析方法。
  11. 【請求項11】分析試薬として、少なくとも過酸化物を
    用いる分析方法において、 (a)単糖、二糖、糖アルコール、およびそれらのポリ
    マーからなる群より選ばれる少なくとも1成分と、 (b)過酸化水素との乾燥状態の付加物に、水系溶液を
    加え、過酸化物を発生させ、分析試薬として用いること
    を特徴とする分析方法。
  12. 【請求項12】分析試薬として、少なくとも過酸化物を
    用いる分析方法において、 (a)N−アセチル−グルコサミン、アスコルビン酸、
    クレアチニン、およびポリエチレングリコールからなる
    群より選ばれる少なくとも1成分と、 (b)過酸化水素との乾燥状態の付加物に、水系溶液を
    加え、過酸化物を発生させ、分析試薬として用いること
    を特徴とする分析方法。
  13. 【請求項13】少なくとも流路と検出部とを有する装置
    を用いて、分析試薬として少なくとも過酸化物を用いる
    分析方法において、 (a)流路中に存在する固体物質のカルボキシル基、ホ
    スホノ基、スルホ基およびそれらの塩の少なくとも1成
    分と、 (b)過酸化水素との乾燥状態の付加物に、水系溶液を
    加え、過酸化物を発生させ、分析試薬として用いること
    を特徴とする分析方法。
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