JPH0875748A - 特異結合分析方法および装置 - Google Patents

特異結合分析方法および装置

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JPH0875748A
JPH0875748A JP7162297A JP16229795A JPH0875748A JP H0875748 A JPH0875748 A JP H0875748A JP 7162297 A JP7162297 A JP 7162297A JP 16229795 A JP16229795 A JP 16229795A JP H0875748 A JPH0875748 A JP H0875748A
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JP
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signal
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sample
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JP7162297A
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English (en)
Inventor
Chuichi Yamauchi
内 忠 一 山
Hideyuki Terasawa
澤 英 之 寺
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Mochida Pharmaceutical Co Ltd
Original Assignee
Mochida Pharmaceutical Co Ltd
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    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C04CEMENTS; CONCRETE; ARTIFICIAL STONE; CERAMICS; REFRACTORIES
    • C04BLIME, MAGNESIA; SLAG; CEMENTS; COMPOSITIONS THEREOF, e.g. MORTARS, CONCRETE OR LIKE BUILDING MATERIALS; ARTIFICIAL STONE; CERAMICS; REFRACTORIES; TREATMENT OF NATURAL STONE
    • C04B28/00Compositions of mortars, concrete or artificial stone, containing inorganic binders or the reaction product of an inorganic and an organic binder, e.g. polycarboxylate cements
    • C04B28/02Compositions of mortars, concrete or artificial stone, containing inorganic binders or the reaction product of an inorganic and an organic binder, e.g. polycarboxylate cements containing hydraulic cements other than calcium sulfates
    • C04B28/04Portland cements

Abstract

(57)【要約】 【目的】汎用性に優れ、試料中の非特異反応物質、分析
環境、試薬の失活等の活性の変化の程度など測定値の信
頼性を低下させる要因を排除して、高精度かつ迅速な測
定が可能な特異結合分析方法、およびその実施に好適な
特異結合分析装置を提供する。 【構成】特異結合に関与しかつ信号物質を発する信号物
質発生体および前記液性試料を所定の流路を所定方向に
流動させると共に、流路中において分析対象物の特異結
合反応を発生させて流路中に分析対象物濃度に応じた信
号物質発生体の分布を形成し、流路内に分布する信号物
質発生体によって信号物質を発生させ、発生した信号物
質を、流動方向に異なる位置に複数配置される検出手段
によって検出し、この複数の検出結果より分析対象物の
濃度以外の要因による分析結果への影響が極小になるよ
うに演算処理を行うことにより、前記目的を達成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、分析対象物と特異的に
結合する物質(特異結合物質)と、分析対象物とによる
特異結合反応を利用して、試料中の分析対象物を、非特
異的な影響や夾雑物の影響なしに簡便・迅速・正確に測
定することを可能とした特異結合分析方法、およびこの
方法を実施するのに好適な特異結合分析装置に関する。
【0002】詳細には、例えば、分析対象物と競合して
特異結合物質と結合する物質、あるいは分析対象物に特
異的に結合する物質等の特異結合反応に関与する物質で
あって、かつ直接あるいは間接的に信号物質を発生でき
る物質を標識(信号物質発生体)として用い、特異結合
物質が不溶化された流路において、分析対象物と特異結
合物質との少なくとも1つの特異結合反応を利用して、
分析対象物の濃度に応じて検出部に対する信号物質発生
体の相対的な距離の分布を形成し、さらに、信号物質発
生体によって発生される信号物質を検出部によって検出
し、検出部において観測される信号強度が、信号物質発
生体と検出部との距離(すなわち信号物質の拡散距離)
に応じて変調することを利用して、分析対象物を分析す
る分析方法であって、前記検出部を流れ方向に対して異
なる位置に複数配置することによって、夾雑物や温度等
による影響を最大限に排除して、正確な分析を行うこと
を可能とした特異結合分析方法、およびこの分析方法の
実施に好適な特異結合分析装置に関する。
【0003】
【従来の技術】特異結合分析方法としては、抗原抗体反
応を応用したイムノアッセイ、受容体を用いたレセプタ
ーアッセイ、相補的核酸配列のハイブリダイゼーション
を用いた核酸プローブアッセイなど多くの方法が知られ
ており、その特異性の高さから、臨床検査をはじめとす
る広い分野で繁用されている。これらの方法は、一般的
に、特異結合反応後、未反応物の除去工程、いわゆるB
/F分離操作を必要とするヘテロジニアス法と、B/F
分離操作を必要としないホモジニアス法に分類される。
【0004】ヘテロジニアス法は、B/F分離操作を行
うことによって、未反応物および試料の干渉なしに特異
結合反応の程度を検出できるため、比較的高感度の測定
が可能で、汎用性に富んでいる。しかしながら、未反応
物の分離操作は煩雑で、洗浄装置など、特殊な用具もし
くは機器を必要とする場合があり、その簡易化や迅速化
が求められている。
【0005】これに対し、操作を簡便化するために、凝
集反応法、EMIT法、酵素チャネリング法などのプロ
キシマールリンケージイムノアッセイ、免疫クロマトグ
ラフ法など各種のホモジニアス法が開発されてきたが、
性能および汎用性の点で、ヘテロジニアス法に及ばない
のが現状である。特に、試料の存在下で検出反応を行う
ホモジニアス法では、B/F分離操作を行った後に検出
反応を行うヘテロジニアス法に比べて、試料の干渉や測
定環境等に由来する誤差を受けやすいことも問題点とし
て残っている。
【0006】このような誤差を小さくするために、通
常、特異結合分析方法では、標準検体による測定値較正
が行われている。すなわち、含有されている分析対象物
量が不明の未知検体を、分析対象物量既知の標準検体と
共に分析し、得られた未知検体の信号強度を標準検体の
信号強度と比較することにより、未知検体の分析対象物
量を求める方法である。一般には、分析方法の測定範囲
に渡って、既知濃度の希釈列から構成される複数の標準
検体の分析から信号強度と分析対象物濃度の応答曲線
(標準曲線)を作製し、この標準曲線を基準として未知
検体の信号強度を分析対象物濃度に換算する方法が多用
されている。従って、未知検体が1検体であっても、そ
の分析には多数の標準検体の分析を並行して行う必要が
あり、操作が煩雑となり、経済的にも無駄を生じてい
た。また、試料の干渉や測定環境等に由来する非特異的
な測定誤差要因の別種の補正として、ブランク補正が汎
用されている。これは、同一試料に対して分析対象物濃
度に応答する特異結合分析と共に、分析対象物濃度に応
答しない対照分析を同時に行い、その特異結合分析結果
と対照分析結果との差分を、その分析結果として採用す
る方法である。しかし、この分析法においても、操作が
煩雑であると共に、補正法としても不十分なため、前記
した標準検体による測定値較正が必要とされていた。
【0007】しかも、近年では、在宅医療および地域医
療の充実や、緊急性の高い臨床検査等の増加に伴ない、
臨床検査の専門家でなくとも、迅速簡便で確実に測定が
実施できる特異結合分析方法の開発がとみに望まれるよ
うになってきた。通常、在宅検査や緊急検査は1検体ず
つ迅速に行われる必要がある。従って、このような分析
においては、余分な分析操作を必要とする上に時間と試
薬の浪費でもある標準検体の同時分析は特に好まれな
い。その反面、測定の信頼性が特に問われる分野でもあ
る。
【0008】このような問題点を解決するために、本発
明者らは鋭意検討を重ね、液性試料中の分析対象物の特
異結合反応を利用して、液性試料中の分析対象物の量に
応じた信号物質発生体の検出部に対する距離の分布を形
成させ、この分布を信号物質発生体が発生した信号物質
の物質移動、すなわち拡散距離に律速される信号強度と
して検出部で検出するMEDIA(Mediator Diffusion
-controlled Immunoassay )法と呼ばれる特異結合分析
方法を開発し、先にこれを提案した(特開平5−264
552号公報、欧州特許公開公報 0 525 723 A2 号参
照)。この方法によれば、未反応物の除去操作なしに簡
便かつ迅速に試料中の分析対象物を高感度に測定でき
る。しかしながら、他のホモジニアス法と同様に、この
分析方法でも、試料の干渉、反応温度などの測定環境、
あるいは分析に用いている試薬の変化などが、検出部で
検出される信号強度に対して影響を与えることがあり、
試料中の分析対象物量を測定する場合の誤差が存在する
場合があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は前記従来技術
の問題点を解決するために成されたものであり、特異結
合分析の原理を利用した、未反応物の分離操作(洗浄操
作)を伴なわない、簡便で汎用性に優れた分析方法であ
って、試料が測定に与える非特異的な影響や反応温度な
どの分析環境、分析に用いている試薬の失活等の活性の
変化の程度など測定値の信頼性を低下させる要因を排除
して、高精度かつ迅速な測定が可能な特異結合分析方
法、およびこの特異結合分析方法の実施に好適な特異結
合分析装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
に、本発明の特異結合分析方法は、液性試料中の分析対
象物を、その特異結合反応によって測定する特異結合分
析方法であって、特異結合反応に関与しかつ信号物質を
発する信号物質発生体および前記液性試料を所定の流路
を所定方向に流動させると共に、前記分析対象物の特異
結合反応を発生させ、この特異結合反応を利用して、前
記流路中に液性試料中の分析対象物濃度に応じた信号物
質発生体の分布を形成し、流路内に分布する信号物質発
生体によって信号物質を発生させ、発生した信号物質
を、前記流動方向に異なる位置に複数配置される検出手
段によって検出し、この複数の検出結果を用いることに
よって、分析対象物の濃度以外の要因による分析結果へ
の影響が極小になるように演算処理を行うことを特徴と
する特異結合分析方法を提供する。
【0011】本発明の特異結合分析装置は、前記本発明
の特異結合分析方法を実施するものであって、液性試料
導入部と、それに連結して配置される液性試料を流すこ
とのできる流路と、液性試料中の分析対象物とそれに特
異的に結合する特異結合物質との特異結合反応により前
記流路内に形成された、液性試料中の分析対象物量に応
じた信号物質発生体の分布を、前記信号物質発生体から
発生される信号物質の拡散による物質移動に律速される
信号強度として検出するための、前記流路の液流方向に
対して異なる位置に配置される複数の検出部とを有する
ことを特徴とする特異結合分析装置を提供する。また、
前記本発明の特異結合分析装置において、前記複数の検
出部が、電気化学的に信号検出を行える複数の電極であ
るのが好ましい。さらに、前記本発明の特異結合分析装
置において、前記検出部の位置が、流動方向に10μm
以上離れているのが好ましい。
【0012】以下、本発明の特異結合分析方法および装
置について詳細に説明する。はじめに、本明細書中の用
語を説明する。
【0013】分析対象物とは、本発明の方法および装置
により、測定される物質である。具体的には抗体分子や
抗原として機能する各種蛋白質、ポリペプチド、糖蛋白
質、多糖類、複合糖脂質など、あるいは核酸、エフェク
ター分子、レセプター分子、酵素、インヒビター等が例
示される。さらに具体的には、α−フェトプロテイン、
癌胎児性抗原(CEA)、CA125、CA19−9等
の腫瘍マーカーや、β2 −ミクログロブリン(β
2 m)、フェリチンなどの各種蛋白質; エストラジオ
ール(E2 ) 、エストリオール(E3)、ヒト絨毛性性腺
刺激ホルモン(hCG)、黄体形成ホルモン(LH)、
ヒト胎盤ラクトゲン(hPL)などの各種ホルモン;
HBs抗原、HBs抗体、HBe抗原、HBe抗体、H
Bc抗体、HCV抗体、HIV抗体などの各種ウイルス
関連抗原あるいはウイルス関連抗体; 各種アレルゲン
およびこれに特異的なIgE抗体; 麻薬性薬物、医療
用薬物およびこれらの代謝産物; ウイルスおよび疾患
関連ポリヌクレオチド配列の核酸等が例示される。
【0014】分析対象物類縁体とは、後記する特異結合
物質との結合反応において、分析対象物と同様の挙動を
示す物質をいう。例えば、分析対象物の構造的類縁物質
であり、すなわち分析対象物の各種構造的アナログであ
る。本発明では、主に、競合法による特異結合反応が行
なわれる場合に、後記する信号物質発生体の構成成分と
して使用される。具体的には、分析対象物がステロイド
などの低分子のホルモンや薬物化合物などの場合には、
その構造的類縁物とは、分析対象物と同一化合物あるい
はその修飾化合物である。また、分析対象物が蛋白質や
核酸、多糖類である場合には、特異結合反応に関与する
部分ペプチド、部分オリゴヌクレチオド、部分オリゴ糖
なども構造的類縁体である。別の例として、分析対象物
が抗体などの場合に、特異結合物質としての特異抗原に
対して分析対象物と競合的に結合できる物質、具体的に
は抗体、レセプター、レクチンなどの前記分析対象物の
各種機能的アナログも例示される。
【0015】液性試料とは、分析対象物が含まれると予
測される液体のことである。具体的には、尿、血清、血
漿、全血、唾液、涙液、髄液、乳頭などからの分泌液等
が例示されるが、粘液、体組織あるいは細胞、菌体等の
固形またはゲル状もしくはゾル状物を、緩衝液、抽出液
あるいは溶解液等の液体に懸濁もしくは溶解させたもの
であってもよい。
【0016】特異結合物質とは、分析対象物等のある特
定の物質に特異的に結合する、すなわち、特定の物質に
特異結合反応しうる物質である。ある特定の物質とそれ
に対する特異結合物質との組合せとしては、抗原とそれ
に対する抗体、相補的核酸配列、エフェクター分子とレ
セプター分子、酵素とインヒビター、酵素と補因子、酵
素と基質、糖鎖を有する化合物とレクチン、ある抗体と
その抗体に対する抗体、レセプター分子とそれに対する
抗体等が例示される。また、これらの組合せにおいて、
どちらの物質も相手方の物質に対する特異結合物質とな
りうる。
【0017】また、特異結合物質として、特異結合活性
が消失しない程度に化学修飾されたもの、あるいは、他
の成分と結合してなる複合性物質もあげられる。このよ
うな特異結合物質としては、ビオチンで化学修飾された
抗体もしくはポリヌクレオチド、アビジン共有結合抗体
等が例示される。また、遺伝子組換え法で作成した抗体
と酵素、あるいは抗体とレセプターとの融合蛋白質など
も例示される。なお、本明細書では、次に説明する信号
物質発生体のように、その一部に特異結合物質として働
く部分を有する物質も、特異結合物質と称することがあ
る。
【0018】信号物質発生体とは、分析対象物と競合し
て特異結合物質と結合する物質、あるいは分析対象物に
特異的に結合する物質等の、特異結合反応に関与する物
質であって、かつ直接または間接に信号物質を発生する
物質である。後に詳述するが、この信号物質発生体は、
流路内で、分析対象物の量と相関関係を有する分布を形
成する。つまり、信号物質発生体とは、特異結合物質と
して働く部分と、後記する信号物質の生成に寄与する部
分とを有する物質、すなわち標識特異結合物質である。
【0019】特異結合物質として働く部分とは、分析対
象物に対して特異結合物質となる構造、あるいは、分析
対象物もしくは分析対象物類縁物質の構造を有する部分
であり、信号物質の生成に寄与する部分とは、具体的に
は、通常の免疫反応等で標識剤として使用されている各
種酵素等により構成される部分である。すなわち、信号
物質発生体は、1つの側面として、分析対象物とそれに
対する特異結合物質との特異結合反応に参加し、その流
路内での分布が分析対象物量に応じて変化する物質であ
り、もう1つの側面として、信号物質の生成反応を司る
物質である。
【0020】信号物質とは、信号物質発生体の関与する
反応によって生成される物質であり、後記する検出部に
おいて、自身が所定の信号を発する、あるいは他の物質
に信号を発生させる物質である。
【0021】信号物質の発生に関与する物質とは、字義
通りの解釈をすると、前述の信号物質発生体も含むが、
本発明においては、信号物質発生体以外の、主に、信号
物質の前駆物質や、この前駆物質を信号物質に変化させ
るに寄与する物質を指す。例えば後述する電子メディエ
ータあるいは電子メディエータを発生させる物質、酵素
基質、酵素補因子、水素供与体等である。
【0022】また、信号の発生に関与する物質とは、信
号物質が直接には信号を発生せず、他の物質に信号を発
生させる物質である場合、あるいは、信号物質が他の物
質の存在下でもしくは他の物質と協同して信号を発生す
る物質である場合に、信号の発生に寄与する物質のう
ち、信号物質を除いた物質をいう。
【0023】信号としては、電気化学的に計測可能な電
子移動、蛍光光度計で計測可能な蛍光、発光光度計で計
測可能な発光、目視判定および色差計で計測可能な呈色
等が例示される。好ましくは、血球成分、血色素などの
存在する全血試料中等でも精度の高い測定が可能な電気
化学的な測定である。
【0024】以上説明した特異結合物質、信号物質発生
体、信号物質の発生に関与する物質、ならびに信号の発
生に関与する物質は、あらかじめ反応系内に存在しても
よいし、液性試料の導入に先立ち、あるいは液性試料と
同時に、あるいは液性試料の導入後に、反応系内に導入
されてもよい。なお、あらかじめ反応系内に存在する場
合は、反応系内に均質に分布していてもよいし、反応系
内の特定の箇所に備えられ、液性試料または試料以外の
展開液によって溶解するものであってもよい。
【0025】流路とは、試料導入部から導入された液性
試料が流れる経路であり、分析対象物および信号物質発
生体が展開され、分析対象物濃度に依存した特異結合反
応が起こる場をいう。試料導入部から導入された液性試
料は、ポンプなどの外圧、重力などの外力あるいは自発
的な浸透力によって、流路内へ導入される。簡便な装置
構成で、再現性ある液性試料の流路内への導入を可能と
するためには、流路を細管(キャピラリ)あるいは狭い
間隙で構成するか、あるいは流路を多孔性部材で構成し
て、液性試料の自発的な浸透力によって液性試料を流路
中へ導入するのが望ましい。
【0026】例えば、流路を構成する細管あるいは多孔
性部材に特異結合物質が不溶化されており、液性試料お
よび信号物質発生体がここを所定方向に流れることで、
特異結合反応が起こり、信号物質発生体が流れ方向に分
布を示す。より具体的な例を挙げれば、分析対象物と信
号物質発生体が、特異結合物質に対して競合的に特異結
合するか、分析対象物が特異結合物質に結合し、さらに
信号物質発生体が分析対象物にサンドイッチ型に特異結
合する等、流路内あるいは流路の上流域で分析対象物の
少なくとも1つの特異結合反応が起こることによって、
流路は液性試料中の分析対象物の濃度に応じた信号物質
発生体の分布が形成される場になる。なお、特異結合反
応によって、信号物質発生体の試料の流れ方向の分布が
決定される場である流路は、特異結合物質が不溶化され
ている例に限定されるものではなく、特異結合反応に伴
って起こる分子量あるいは粒子サイズの変化等に基づい
てそれを分布として示すものであってもよい。
【0027】検出部とは、到達した信号物質が発する信
号を検出する部位であり、肉眼での目視で、もしくは、
信号の性質に応じた好適な外部の計測器で、信号の変調
の程度を計測できる部位である。本発明においては、こ
の検出部を流路における液性試料の流れ方向に異なる位
置に複数有することにより、分析対象物の濃度以外の要
因、具体的には、夾雑物、粘度などの試料特性、反応
(展開)温度等の環境条件、酵素活性の低下、基質の分
解などの分析に用いている試薬の変化等に起因する分析
結果への影響を最小化して、正確な分析を可能としたも
のである。
【0028】吸収部は、吸水性材料で構成され、必要に
応じ、信号物質の発生に関与する物質等を保持する部位
である。また、通常、吸収部は流路の下流域に設置さ
れ、導入された試料液を吸引し保持する役割もはたす。
【0029】以上のように定義された用語を用い、本発
明をさらに具体的に説明する。なお、本発明の特異結合
分析方法および装置の基本的な概念は、本出願人による
特開平5−264552号公報、欧州特許公開公報 0 5
25 723 A2 号により詳細に開示される。従って、同公報
に開示される態様は、すべて本発明に利用可能である。
【0030】本発明の特異結合分析方法は、図1に概念
的に示されるように、液性試料を導入する試料導入部a
と、それに連結した液性試料の流れる流路bと、液性試
料の流れ方向(図1では矢印x方向)に対して異なる位
置に複数設けられる(図示例では2つ)第1検出部c1
および第2検出部c2 (以下、両者をまとめて検出部c
と称することもある)とを有する装置によって行われ
る。図1に示される例において、分析対象物量未知の液
性試料を試料導入部aから装置内に導入し、分析対象物
と特異結合物質との少なくとも1つの特異結合反応によ
り、流路b内で液性試料中の分析対象物量に応じた信号
物質発生体10の分布を形成させ、必要な場合には信号
物質の発生に関与する物質14を反応させて、流路b内
に分布する各々の信号物質発生体10によって信号物質
12を発生させ、発生した信号物質12が、それぞれ流
路内を拡散して検出部cまで到達して発する信号を、検
出部cにおいて計測する。
【0031】すなわち、図1においては1つの信号物質
発生体10のみを例示するが、それぞれの検出部cにお
いて計測されるのは、流路b内に分布する多数の信号物
質発生体10から連続的に発生された信号物質12の拡
散による物質移動に律速された信号に依存する。つま
り、信号物質12の発生源である信号物質発生体10か
ら検出部cに至るまで、拡散によって信号物質12が流
路内を移動しなければならない距離x1 およびx2 に依
存した信号となる。
【0032】ここで、後に詳述するが、信号物質発生体
10の分布は液性試料中の分析対象物の量に依存する。
従って、試料導入部aから流路bに導入された液性試料
中の分析対象物量が異なると、信号物質発生体10から
検出部cに至るまでの信号物質12の拡散距離の分布が
分析対象物量に応じて異なる結果となり、この信号物質
発生体10の分布の違いを検出部cに到達した信号物質
12が発する信号の違いとして検出することができる。
本発明は、上記の仕組みを利用したものであって、複数
の検出部cにおいて信号物質12が発する信号から液性
試料中の分析対象物量を測定することを特徴とする特異
結合分析方法および特異結合分析装置である。
【0033】前述のように、特異結合反応とは、分析対
象物とそれに特異的に結合する特異結合物質(含信号物
質発生体10)との反応、特異結合物質と信号物質発生
体10との反応等をいう。すなわち、本発明は、 信号物質発生体10の標識によって発生され、かつ、
検出部cにおいてのみ検出可能な信号を発生するあるい
は発生させる信号物質12を用いる場合、検出部cにお
いて観測される信号は、標識(信号物質発生体10)と
検出部cとの距離(すなわち信号物質12の拡散距離)
に応じた出力強度となること; 分析対象物と特異結合物質との少なくとも1つの特異
結合反応によって、信号物質発生体10(すなわち標
識)の位置分布を液性試料中の分析対象物濃度に応じて
異なるものとできること; 従って、検出部cにおいて検出される信号は、液性試
料中の分析対象物濃度に対応していること; をその分
析方法の基本概念として、さらに、検出部cを液流方向
に対して異なる位置に備えられた複数の検出部、例え
ば、図示例のように第1検出部c1 および第2検出部c
2 等の複数の検出部によって上記信号を検出することに
より、反応(展開)温度等の分析環境条件や、試料中に
含まれる夾雑物、分析に用いている試薬の失活などの活
性変化等の、分析対象物濃度以外の原因に起因する分析
結果への影響を最小化して、正確かつ簡易な分析を可能
としたものである。
【0034】本発明者らは、上記基本概念を見出し、先
にこれを用いた特異結合分析方法および装置を提案した
(特開平5−264552号公報、欧州特許公開公報 0
525723 A2 号参照)。この分析方法は、MEDIA(M
ediator Diffusion-controlled Immunoassay )法と呼
ばれる。この分析方法(装置)によれば、未反応物の除
去操作なしに、試料中の分析対象物を高感度、かつ迅速
に測定することが可能である。しかしながら、この方法
をもってしても、夾雑物の干渉、反応温度などの測定環
境、分析に用いている試薬の活性の変化などの影響を完
全に拭うことは困難であり、未知試料中の分析対象物量
を測定する場合の誤差が存在する場合があった。
【0035】このような問題点を解決するために、本発
明者らが鋭意検討を重ねた結果、後に詳述するが、ME
DIA(Mediator Diffusion-controlled Immunoassay
)法と呼ばれる上述の特異結合反応を利用する分析方
法において、液性試料の流れ方向に異なる位置に配置さ
れる複数の検出部によって検出される複数の信号、さら
にはこの複数の信号と未知試料中の分析対象物量(すな
わち信号物質発生体の分布)との間には、いずれの場合
にも特定の関係を有することを見出した。さらに、この
関係を実験的あるいは経験的に調査することにより、分
析対象物の濃度(試料中の分析対象物の量)以外の要因
による分析結果への影響、すなわち、夾雑物、反応(展
開)温度等の環境条件、酵素活性の低下などの分析に用
いている試薬の失活等による信号への影響を小さくでき
る演算式を作成できることを見出し、これを用いて信号
の計測結果を演算処理することによって、より正確な特
異結合分析が可能であることを見出して、本発明を完成
したものである。
【0036】すなわち、本発明は以下の技術的思想から
なるものである。後の実施例でも詳述するが、本発明の
分析方法(装置)において、流れ方向に異なる位置に配
置された検出部において計測される信号は、同じ信号物
質発生体に由来する信号であるにもかかわらず、液性試
料中の分析対象物濃度に対して異なる関数となる。なぜ
ならば、検出部の位置が液性試料の流動方向、すなわち
信号物質発生体の分布の形成方向に対して異なるため
に、特定の信号物質発生体の分布が形成されているにも
かかわらず信号物質発生体と各検出部との距離分布はそ
れぞれの検出部ごとに異なっているからである。これ
は、同一分析対象物量に依存する特異的な信号強度成分
が検出部ごとに実質的に異なることを意味する。本発明
は、流れ方向に異なる位置にある検出部での分析対象物
濃度に対する応答関数を複数用い、流路での信号物質発
生体の分布を信号への非特異的な影響を含めて測定し
て、その結果非特異的な影響のうちでも加算的影響や比
率的影響が混在しているような同一関数では表せない多
様な影響を測定することができるので、この測定結果か
ら、以下のように分析対象物濃度に非特異的な信号強度
成分を極小にする関係式を見出すことができるようにな
り、信号強度変化を分析対象物濃度の適切な関係式とし
て表すことができる。それぞれの検出部で計測されてい
る信号は、特定の信号物質が拡散によって到達した時に
発する信号を計測しているという点で全く同じ信号発生
機構に由来しているため、液性試料中の夾雑物、反応
(展開)温度などの環境条件、酵素活性の低下などの分
析に用いている試薬の失活などによる信号への影響も非
特異的な信号強度成分として同様に受けることになる。
【0037】各検出部で計測される信号は、分析対象物
量に依存する特異的な信号強度成分と非特異的な信号強
度成分との重ね合わせである。非特異的な信号強度成分
には、単純化すれば、信号強度の差で除去できる成分と
信号強度の比で除去できる成分とがあるがこれらの非特
異成分は複数の電極に共通に存在していてそれぞれ信号
強度として測定できるのでこれらの信号強度の間の関係
を適切に示す演算式を選択することにより、分析対象物
の濃度以外の要因による分析結果への影響を小さくする
ような演算式(内部関係式)を作成でき、この内部関係
式を用いて、複数の検出の計測結果から分析対象物量を
求めることにより、試料や分析環境あるいは分析装置の
経時変化等の影響を極小化できる、正確な特異結合分析
を実現したものである。ここで、内部関係式とは、従来
技術のように測定者が標準検体の分析によって得ること
のできる標準曲線(外部関係式)に対して、あらかじめ
装置内に演算機構として組み込むことが可能な信号と分
析対象物との関係式を意味している。すなわち、本発明
の特異結合分析方法(装置)は、未知検体の測定だけで
分析対象物量を求め得る、いわゆるスタンダードレス分
析法の新規な手法を提供する。このような技術的思想
は、標準物質との特異結合反応あるいは標準信号発生反
応を別途行うか、あるいは装置内で同時に行い、その標
準信号を用いて未知検体の信号を判断する信号較正法と
は全く異なる思想に基づいている。このような技術的思
想およびこれを実施できる装置は従来全く開示されては
いない。
【0038】複数の検出部の流動方向の位置のズレの大
きさには特に限定はないが、本発明者らの検討によれ
ば、特異結合反応を利用する本発明においては、好まし
くは複数の検出部を流路bの液流方向に対して幾何学的
に10μm以上離して、より好ましくは100μm以上
離して配置することである。これにより、特異結合反応
によって形成された信号物質発生体10の分布に応じて
信号物質12の物質移動(拡散)に律速され、かつ複数
の検出部で検出される信号を有為に異なるものとして検
出でき、分析対象物の濃度以外の要因による分析結果へ
の影響を好適に小さくできる演算式を作成して、正確な
分析を実現することができる。すなわち、複数の検出部
が、液流方向に少なくとも10μm、好ましくは100
μm離れていれば、試料中の分析対象物濃度に非特異的
な信号強度成分のうち、流れ方向に位置が異なることに
よって特異的な信号成分に影響しない非特異成分(加算
的影響)のみならず、特異的な信号成分に影響する非特
異成分(比率的影響)も測定することができる。
【0039】本発明の特異結合分析方法は、特異結合反
応によって、液性試料中の分析対象物の量に応じて、流
路b内での信号物質発生体10の分布を変化させ、この
分布の変化を、液性試料の流動方向に異なる位置に配置
される複数の検出部で測定する。液性試料中の分析対象
物の量に応じて、流路内の信号物質発生体10の分布を
変化させる方法は、種々の方法が可能であり、以下に記
載する方法は一例にすぎない。
【0040】本発明方法の分析対象物に対する特異結合
物質を用いた特異結合反応の具体例として、免疫反応系
の一成分が分析対象物である場合について、流路b内で
の免疫反応(特異結合反応)を例示する。
【0041】その第一は、分析対象物と同じ物質あるい
はその類縁物質を不溶化して行う競合法である。この場
合、流路bの少なくとも一部には、分析対象物と同じ物
質あるいはその類縁物質を不溶化しておき、信号物質発
生体10としては、特異結合物質である抗分析対象物抗
体と標識剤(例えば信号物質12を発生させる反応に関
与する酵素)との結合体を用いる。液性試料にあらかじ
め信号物質発生体10を混合しておき、これを流路bに
流すことにより、あるいは、流路bの上流域に存在する
信号物質発生体10を含む含浸部において信号物質発生
体10と液性試料とを混合した後、流路bの分析対象物
(類縁物質)不溶化部分に流すことにより、試料中の分
析対象物と不溶化された分析対象物(あるいはその類縁
物質)とを、信号物質発生体10中の抗体部分(特異結
合物質)に対して、競合的に反応させる。その結果、液
性試料中の分析対象物量が多いほど、信号物質発生体1
0は流路b内のより下流側に分布が変動する。この方法
は、分析対象物がハプテン様の低分子量物質の場合で
も、分析対象物が高分子量物質の場合でも好適に用いる
ことができる。分析対象物がハプテンの場合、分析対象
物と同じハプテンかあるいは特異結合物質が交叉反応し
うる別のハプテンを、特異結合物質が結合可能な様式で
流路bの少なくとも一部に不溶化すればよい。分析対象
物が高分子量の蛋白質などの場合、蛋白質自体あるいは
特異結合物質が結合するエピトープのペプチドを流路b
の少なくとも一部に不溶化すればよい。
【0042】第二は、分析対象物が複数の抗体と同時に
結合しうる高分子量物質の場合に好適なサンドイッチ法
を用いる例である。この場合、流路bの少なくとも一部
には、分析対象物の第1の特異結合物質であるエピトー
プAに対する抗体を不溶化しておき、分析対象物の第2
の特異結合物質であるエピトープBに対する抗体と標識
剤との結合体を信号物質発生体10として、液性試料に
あらかじめ信号物質発生体10を混合しておき、これを
流路bに流すことにより、あるいは、流路bの上流域に
存在する信号物質発生体10を含む含浸部において信号
物質発生体10と液性試料とを混合した後、流路bに流
すことにより、分析対象物に反応させるとよい。すなわ
ち、試料中の分析対象物をサンドイッチ型に反応させる
のである。その結果、液性試料中の分析対象物量が多い
ほど、信号物質発生体10は流路b内のより上流側に分
布が変動する。また、分析対象物が抗体の場合、流路b
の少なくとも一部には特異結合物質である抗原を不溶化
しておき、抗(抗体)抗体と標識剤との結合体を信号物
質発生体10として分析対象物に反応させるとよい。
【0043】第三は、分析対象物に対する特異結合物質
を不溶化して行う競合法である。この場合、流路bの少
なくとも一部には、特異結合物質である抗分析対象物抗
体を不溶化しておき、信号物質発生体10としては、不
溶化特異結合物質に対して分析対象物と競合する物質で
ある分析対象物と同じ物質あるいはその類縁物質と標識
剤との結合体を用い、液性試料にあらかじめ信号物質発
生体10を混合しておき、これを流路bに流すことによ
り、あるいは流路bの上流域に存在する信号物質発生体
10を含む含浸部において信号物質発生体10と液性試
料とを混合した後、流路bに流すことにより、試料中の
分析対象物と信号物質発生体10とを、不溶化された特
異結合物質に対して競合的に反応させるとよい。その結
果、液性試料中の分析対象物量が多いほど、信号物質発
生体10は流路内のより下流側に分布が変動する。ま
た、分析対象物が抗体の場合、流路bの少なくとも一部
には特異結合物質である抗原あるいはエピトープ部分を
不溶化しておき、不溶化特異結合物質に対して分析対象
物の抗体と競合的に結合する別の抗体と標識剤との結合
体を信号物質発生体10として用いることができる。
【0044】ところで、上記説明では、流路bの少なく
とも一部に抗体あるいは抗原を不溶化させ、信号物質発
生体10や分析対象物を抗体に直接あるいは間接に結合
させたが、信号物質発生体10や分析対象物を流路bに
結合させなくても、すなわち先の例における抗体あるい
は抗原が流路bの少なくとも一部に不溶化されていなく
ても、分析対象物の量に応じて信号物質発生体10の流
路b内での分布を変化させることは可能であり、そのよ
うな例も、本発明方法に含まれる。
【0045】例えば、分析対象物が微生物(例えば病原
性真菌等)であり、信号物質発生体10が抗微生物抗体
(抗病原性真菌抗体等)と標識剤とが結合してなる標識
特異結合物質である場合、分析対象物(微生物)は、信
号物質発生体10に比べてかなり大であるため、分析対
象物と信号物質発生体10との複合体と、フリーの信号
物質発生体10とでは、流路b内での移動速度、すなわ
ち到達位置に大きな差を生じる。この場合には、流路b
として、例えば多孔性材質のものを用い、そのメッシュ
(ポアサイズ)を適正に選択することによって、あるい
は、ゲル状もしくはゾル状担体を用い、その粘度を微生
物サイズに応じて適正に選択することによって、この到
達位置の差異を検出可能な差とすることができる。従っ
て、分析対象物は、流路bには結合されないが、その流
路b内での分布は局在化され、分析対象物と特異結合反
応しうる信号物質発生体10は、分析対象物の局在化に
ともなって流路b内で分析対象物量に応じた分布をする
ようになる。
【0046】また、別の例として、フリーの標識抗体と
フリーの分析対象物との自発的な沈降性結合物(免疫沈
降物)形成(いわゆるゲル内免疫沈降反応等)を利用し
た測定があげられる。この場合には、分析対象物の量に
応じて免疫沈降物の形成量が変化し、また、形成された
免疫沈降物は、多孔性材質および/またはゲル状担体か
らなる流路bの上流域に留まるが、免疫沈降反応に関与
しなかったフリーの標識抗体は、流路bの下流域へ侵入
し得るため、試料中の分析対象物量に応じて信号物質発
生体10の分布が変化する。同様に、特異結合物質を不
溶化した微粒子担体と分析対象物との特異結合凝集反応
による微粒子の会合サイズの変化を信号物質発生体10
の分布変化に利用することもできる。
【0047】続いて、本発明方法における信号の発生に
ついて、具体的に説明する。信号物質発生体が、酵素標
識特異結合物質である場合を代表例として、図1および
下記表1に基づいて説明する。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】表1は、本発明方法における信号の発生
を、典型的な6例について説明したものである。なお、
表1中の各欄において、上段には、先に説明した本明細
書中の用語を、また下段には、上段の用語で示されるも
のの具体例を示した。
【0051】まず、であるが、これは検出部cが電極
であり、信号が電子移動である例である。図1に基づい
て説明する。この場合は、流路b内の信号物質発生体
(α−ガラクトシダーゼ標識特異結合物質)10に、信
号物質の発生に関与する物質(p−アミノフェニル−α
−D−ガラクトシド)14が到達すると、信号物質の発
生に関与する物質14が信号物質(p−アミノフェノー
ル)12に変化する。この信号物質12が拡散によって
+400mV(vs.Ag/AgCl)に電位設定され
た検出部c1 (電極)あるいはc2 に到達すると、信号
物質12は酸化(p−ベンゾキノンモノイミンとなる)
され、同時に酸化電流という信号(電子移動)をそれぞ
れの検出部cで発生する。そこで、電気量や電流値とし
て、信号である電子移動に係る数値を計測すればよい。
【0052】次にであるが、これも、検出部cが電極
であり、信号が電子移動である例である。ただし、電子
の受け渡しのための電子メディエータを用いている。同
様に図1に基いて説明する。電子メディエータとは、本
発明においては、酵素反応と電極反応との間を媒介し
て、両反応間の電子移動を可能ならしめる酸化還元化合
物を総称して用いられており、その中には、両反応いず
れにおいても不可逆な副生成物を実質的に生じず、両反
応の間をサイクリング可能な物質を含んでいる。なお、
電子メディエータとしては、具体的には、後述する表3
に示されるような物質が例示される。この場合は、流路
b内の信号物質発生体(グルコースオキシダーゼ標識特
異結合物質)10に、信号物質の発生に関与する物質
(グルコースと酸化型電子メディエータであるフェリシ
ニウムイオン)14が到達すると、フェリシニウムイオ
ンが還元されてフェロセンに変化する。この還元型電子
メディエータであるフェロセンが信号物質12である。
この信号物質12が拡散によって+400mV(vs.
Ag/AgCl)に電位設定された検出部c1 (電極)
あるいはc2 に到達すると、信号物質12は酸化されて
再び酸化型電子メディエータのフェリシニウムイオンに
戻り、同時に酸化電流という信号(電子移動)をそれぞ
れの検出部cで発生する。また、この場合は、電子メデ
ィエータ間の電子ホッピング等による電子自体の拡散伝
達と、その結果検出部cにおいて発生する信号(電子移
動)の測定も考えられる。
【0053】また、の場合は、流路b内の信号物質発
生体(パーオキシターゼ標識特異結合物質)10に信号
物質の発生に関与する物質(過酸化水素と還元型電子メ
ディエータ)14が反応すると、還元型電子メディエー
タが酸化型電子メディエータに変換される。この酸化型
電子メディエータが信号物質12である。この信号物質
12が拡散によって−150mV(vs.Ag/AgC
l)に電位設定された検出部c1 (電極)あるいはc2
に到達すると、信号物質12は還元されて再び還元型電
子メディエータに戻り、同時に還元電流という信号(電
子移動)をそれぞれの検出部cで発生する。なお、信号
物質の発生に関与する物質14となる還元型電子メディ
エータ(水素供与体)としては、ハイドロキノン、P−
フェニレンジアミン(PPD)、N,N−ジメチル−p
−フェニレンジアミン(DMPD)、N,N,N´,N
´−テトラメチル−p−フェニレンジアミン(TMP
D)、N,N,N´,N´−テトラエチル−p−フェニ
レンジアミン(TEPD)、N,N,N´,N´−テト
ラキス−カルボキシメチル−p−フェニレンジアミン
(TCPD)、N,N,N´,N´−テトラキス−(2
´−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン(T
HEPD)、N,N,N´,N´−テトラキス−(2
´,3´−ジヒドロキシプロピル)−p−フェニレンジ
アミン(TDHPD)等が例示され、好ましくはTDH
PD、TCPD、THEPDである。
【0054】は、検出部cが酵素電極であり、信号が
電子移動である例である。この例では、酵素電極の性能
を上げるために、酵素電極部分に、電子メディエータお
よび/または導電性高分子化合物(ポリピロール、ポリ
チオフェンなど)を構成成分として含ましめることも可
能である。酵素電極の構成に関わらず、信号物質が検出
部c(酵素電極)と反応して信号(電子移動)を発生す
るあるいは発生させることに変りない。なお、好適な信
号物質としては、酵素電極に対する基質、補因子あるい
は補酵素が例示できる。また、信号物質が他の物質と協
同して信号を発生する場合、すなわち、酵素電極が信号
物質と他の信号の発生に関与する物質の存在下で信号を
発生する場合には、この信号の発生に関与する物質を検
出部cおよび/または検出部c近傍に存在させておけば
よい。この場合は、流路b内の信号物質発生体(グルコ
ースオキシダーゼ標識特異結合物質)10と、信号物質
の発生に関与する物質(グルコースと溶存酸素)14が
反応すると、信号物質(過酸化水素)12が生成され
る。この信号物質12が−150mV(vs.Ag/A
gCl)に電位設定された検出部c1 (パーオキシダー
ゼ電極)あるいはc2 に到達すると、電子メディエータ
を介してあるいは介さずに、電子を電極から受け取り、
それぞれの検出部c(あるいはその近傍)に存在する信
号の発生に関与する物質(水素イオン)15と反応して
信号物質12自身は還元される。その際、各検出部c
(パーオキシダーゼ電極)において、信号(電子移動)
が発生する。
【0055】は、検出部cが酵素(パーオキシダー
ゼ)を実質上不動化してなる部分であり、信号が発光で
ある例である。この例も、信号物質12自身は信号を発
生しないので、信号の発生に関与する物質を使用する。
この場合は、流路b内の信号物質発生体(グルコースオ
キシダーゼ標識特異結合物質)10と信号物質の発生に
関与する物質(グルコースと溶存酸素)14が反応する
と、信号物質(過酸化水素)12が生成される。この信
号物質12が、検出部c1 (ペルオキシダーゼ不動化部
位)あるいは検出部c2 に到達すると、信号の発生に関
与する物質(ルミノール)15を変化させ、信号(発
光)を発生させる。従って、所定時間経過後に、あるい
は所定時間経過後までの発光強度をそれぞれの検出部c
で測定すればよい。
【0056】は、検出部cが酵素(パーオキシダー
ゼ)を実質上不動化してなる部分であり、信号が呈色で
ある例である。この例も、信号物質12自身は信号を発
生しないので、信号の発生に関与する物質を使用する。
この場合は、流路b内の信号物質発生体(ウリカーゼ標
識特異結合物質)10と信号物質の発生に関与する物質
(尿酸塩と溶存酸素)14が反応すると、信号物質(過
酸化水素)12が生成される。この信号物質12が、検
出部c1 (パーオキシダーゼ不動化部位)あるいは検出
部c2 に到達すると、信号の発生に関与する物質(オル
トジアニシジン)を発色体に変化させ、信号(呈色)を
発生させる。従って、所定時間経過後に、あるいは所定
時間経過後までの呈色を、それぞれの検出部cにおい
て、吸光度、反射光、肉眼等で測定すればよい。
【0057】また、上記の〜において、信号物質の
発生に関与する物質(酵素反応の基質に相当、ただし、
溶存酸素ではない方)14と信号物質発生体10を構成
する標識剤(酵素)は、交互に交換されてもよい。しか
し、この場合、酵素を標識剤として用いた方が、反応効
率に優れるのでよい。
【0058】本発明の特異結合分析方法において、信号
物質の発生に好適な酵素(前記表1における信号物質発
生体の一構成成分、標識)と、該酵素の基質(前記表1
における信号物質の発生に関与する物質)との組合せの
一例を、下表2に示す。
【0059】
【表3】
【0060】表2に示した組合せは、前記表1中のお
よび〜の場合に用いることができる。しかしなが
ら、の場合(信号物質12の電極上での酸化還元反応
によって信号を発生させる例)には、発生される信号物
質12がp−アミノフェノール、ハイドロキノン、p−
クレゾール等である組合せを用いるのがよい。これら
は、銀・塩化銀電極に対して+数百mV程度の電位を印
加すれば、十分に電極への電子移動が生じる。
【0061】また、前記表1中のの場合には、表2中
の基質として、O2 のかわりに、電子メディエータとし
て知られる酸化還元物質(酸化状態)を用いる。それに
より、表1に示すように反応が行なわれ、信号物質12
(還元状態の電子メディエータ)が発生され、この信号
物質12から、と同様に、電子メディエータに応じた
電位を印加した電極に電子が放出され、電子メディエー
タ自身は酸化状態へ戻る。
【0062】電子メディエータの候補としては、金属イ
オン、金属錯体、ルテニウム錯体化合物、フェロセン化
合物、キノン化合物、ビオロゲン化合物、ポルフィリン
誘導体など数多く知られている。この中には、水素供与
体として酵素反応に関わる化合物も含まれる。
【0063】下表3に代表例を挙げるが、本発明ではこ
れらの化合物の化学修飾物や他の好適な電子メディエー
タも利用可能である。また、電子メディエータは、信号
物質発生体10によって酸化状態から還元状態に変化す
るものに限定されず、逆に、還元状態から酸化状態に変
化するものであってもよい。具体的には、西洋わさびパ
ーオキシターゼの場合には、表2中の水素供与体、すな
わち還元型メディエータを用いる。それにより、表1に
示すような反応が行われ、信号物質(酸化型電子メディ
エータ)12が発生され、この信号物質から、前記と
同様に電子メディエータに応じた電位を印加した電極か
ら電子を奪い、電子メディエータ自身は還元状態に戻
る。
【0064】
【表4】
【0065】前記表1中の〜の例のように、二段階
の酵素反応を行なわせる場合であって、信号は、一段目
の酵素反応によって発生された信号物質12が他の物質
に働きかけて生成される場合の二段目の反応に関与する
物質は、次の通りである。
【0066】前記表1中のには、検出部cが酵素電極
である例を示したが、この場合は、一段目の反応によっ
て発生される信号物質12の種類に応じ、酵素電極の酵
素が限定される。
【0067】例えば、一段目の反応で発生される信号物
質12が過酸化水素である場合は、検出部cを西洋わさ
び由来パーオキシダーゼなどのパーオキシダーゼを固定
化した酵素電極( J. E. Frew et al, J. Electoanal. C
hem., Vol. 201, 1 - 10, 1986 ; R.M. Paddock & E.
F. Bowden, J. Electroanal. Chem., Vol. 260, 487 -4
94, 1989 ; Ulla Wollenberger et al, Analytical Let
ters, Vol.23, 1795 -1808, 1990 など参照)とし、ま
た、例えば、信号物質12がNAD+ あるいはNADH
である場合は、検出部cを好熱菌由来のジアフォラーゼ
Iを固定化した酵素電極( K. Miki et al, Analytical
Sciences, Vol. 5, 269 - 274, 1989 など参照)とすれ
ばよい。
【0068】検出部cをこのような酵素電極とする場合
は、表1に示したように、信号の発生に関与する物質と
して、電子メディエータを用いる場合がある。この場
合、電子メディエータは、検出部において酵素反応と電
極反応を媒介して、信号である電子の移動をおこす。な
お、電子メディエータについては、先に表3に例示した
通りである。
【0069】なお、酵素電極に類似のものとして、化学
修飾電極が知られており、これらの酵素電極および化学
修飾電極については、「 R. W. Murray, Chemically Mod
ified Electrode, Electroanalytical Chemistry, Volu
me 13, 191 - 368, Marcel Dekker, Inc., New York, 1
984 」、 「 K. Nakamura, M. Aizawa & O. Miyawaki, Ele
ctroenzymology Coenzyme Regeneration, Springer - V
erlag, Berlin, 1988」、 「 V. J. Razumas, J. J. Jasai
tis & J. J. Kulys, Bioelectrochemistry and Bioener
getics, Volume 12, 297 - 322, 1984 」 等に記載され
ている。
【0070】また、前記表1中のの場合のように、信
号が蛍光や発光である場合は、一段目の反応によって発
生される信号物質12の種類に応じ、二段目の反応に関
与する物質(酵素および酵素の基質である蛍光性(発光
性)物質)が限定される。
【0071】例えば信号が蛍光であり、信号物質12が
過酸化水素である場合は、二段目の反応に関与する物質
が、パーオキシダーゼと、4−ヒドロキシフェニル酢
酸、もしくは、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピ
オン酸との組合せである例がある。
【0072】また、信号が発光である場合には、次のよ
うな組合せが例示される。すなわち、信号物質12がA
TPの場合は、二段目の反応に関与する物質として、ホ
タルルシフェラーゼと、ルシフェリンおよびMg2+との
組合せが例示される。また、信号物質12がNADHの
場合は、二段目の反応に関与する物質として、NAD
(P)H:FMNオキシドレダクターゼおよび発光バク
テリア由来のルシフェラーゼと、FMNおよびテトラデ
カナールなどの飽和長鎖脂肪族アルデヒドとの組合せが
例示される。
【0073】このような例において、検出部c1 および
2 は、いずれも二段目の反応に関与する物質のうちの
いずれか1種以上を不動化させてなるもので構成される
が、反応効率の観点からは、酵素を不動化させてなるも
のであるのがよい。
【0074】なお、蛍光や発光を信号とする場合には、
前記表1中ののように、信号物質12自体から信号を
発生せしめることも可能である。すなわち、例えば、信
号物質12の発生に関与する物質として、ルシフェリン
の誘導体(例えばD−ルシフェリン−o−リン酸)、信
号物質発生体10を構成する標識剤として、アルカリフ
ォスファターゼを選択し、信号物質12であるルシフェ
リンを発生させ、ATPおよびMg2+の存在下に、ルシ
フェリンにルシフェラーゼを作用させれば、発光(信
号)が生じる。この場合、検出部c1 およびc2 は、い
ずれもATP、Mg2+およびルシフェラーゼのうちのい
ずれか1種以上を不動化させてなるもので構成される
が、反応効率の観点から、ルシフェラーゼを不動化させ
てなるものであるのが好適である。
【0075】さらに、前記表1中ののように、信号が
呈色である場合も、一段目の反応によって発生される信
号物質12の種類に応じ、二段目の反応に関与する物質
(酵素および酵素の基質である発色体の前駆物質)が限
定される。例えば信号物質12が過酸化水素の場合に
は、二段目の反応に関与する物質が、パーオキシダーゼ
と、呈色物質の前駆物質である、5−アミノサリチル
酸、o−ジアニシジン、2,2′−アジノジ−(3−エ
チルベンズチアゾリン−6−スルホン酸)ジアンモニウ
ム塩(ABTS)、3−メチル−2−ベンゾチアゾリン
ヒドラゾン(MBTH)と3−(ジメチルアミノ)安息
香酸(DMAB)の混合物、o−トリジン、3,3′−
ジアミノベンジジン(DAB)、1,2−フェニレンジ
アミン、3,3′,5,5′−テトラメチルベンジジン
等との組合せが挙げられる。
【0076】また、信号物質12がNADHの場合に
は、二段目の反応に関与する物質が、ジアフォラーゼ
と、呈色物質の前駆物質であるヨードニトロテトラゾリ
ウム・バイオレットとの組合せが挙げられる。この場合
も、検出部c1 およびc2 は、いずれも二段目の反応に
関与する物質のうちのいずれか1種以上を不動化させて
なるもので構成されるが、反応効率の観点からは、酵素
を不動化させてなるものであるのがよい。
【0077】以上、本発明方法における信号の発生につ
いて、具体例に即して説明したが、本発明方法における
信号の発生機構は、これらに限定されない。
【0078】前述のように、本発明の特異結合分析方法
を実施する分析装置は、基本的に、試料導入部a、流路
bおよび複数の検出部c、さらに必要により、液性試料
の流れる装置内のいずれかの箇所に、信号物質の発生に
関与する物質および/または信号の発生に関与する物質
を備えた装置である。
【0079】試料導入部aは、液性試料を流路bの所定
の場所から導入させるために流路bに連結して設けられ
る部位であり、流路bへの液性試料等の入り口である。
試料導入部aは、通常は流路bに連結した液性試料導入
口であるが、分析に必要な液性試料を一時的に蓄える部
位として作用させてもよく、また、必要に応じて、試料
導入部aに夾雑物等を取り除くフィルターなどを設置し
てもよい。また、試料導入部aと流路bとの間に、また
は流路bの上流域に信号物質発生体10、信号物質の発
生に関与する物質14、信号の発生に関与する物質、特
異結合物質等、反応に必要な各種の物質を含浸した含浸
部を設けてもよい。
【0080】流路bは、試料導入部aの下流に連結し、
導入された液性試料の流動する部位であり、特異結合反
応によって、液性試料中の分析対象物の量(分析対象物
の濃度)に応じた信号物質発生体10の分布が形成され
る場所である。本発明においては、分析操作を簡便化す
るために、液性試料はポンプなどの外力を必要とせず
に、自発的に流路bを流れることが望ましい。そのた
め、流路bは細管や狭い間隙で形成されるキャピラリあ
るいは多孔性部材で構成されている方が望ましい。ま
た、流路bをキャピラリあるいは多孔性部材で構成する
ことにより、特異結合反応の反応効率が増大したり、信
号物質発生体の分布が明瞭に形成されるなどの付加的な
効果も期待できる。なお、液性試料の自発的な流れを増
強したり、流路bを通過する試料液量を増大させるため
に、必要に応じて、流路bの下流域に連結して吸収部を
配置することもできる。
【0081】流路bは、例えば多孔性担体あるいはゲル
担体で構成する。ただし、ゲル担体の場合は、試料と接
触することによってゲル状態あるいはゾル状態となるも
のを用いるのがよい。好ましくは、多孔性担体である。
あるいは、多孔性担体に、水溶性高分子化合物を含浸さ
せ、乾燥させたものを流路bとして用いてもよい。さら
には、前記多孔質担体等に固体状物質を保持させたもの
であってもよい。
【0082】より具体的には、多孔性担体としては、セ
ルロースアセテート製、ニトロセルロース製あるいはナ
イロン製の多孔性メンブレン、ガラス繊維製あるいはセ
ルロース繊維製の濾紙、多孔性セラミックス等が、ま
た、ゲル担体としては、寒天、アガロース、デキストラ
ン、ポリアクリルアミド等が例示される。さらに、前記
水溶性高分子化合物としては、デンプンおよびその誘導
体、マンナン、ガラクタン、寒天、アガロース、アルギ
ン酸ナトリウム、アラビアゴム、デキストラン、ゼラチ
ン、カゼイン、コラーゲン、メチルセルロース(M
C)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセ
ルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(C
MC)、ポリビニールアルコール(ポバール)、ポリア
クリル酸ナトリウムなどが例示できる。加えて、前記固
体状物質としては、デキストラン等の多孔性粒子、ポリ
スチレン製等のラテックス、ガラス製微粒子等の微粒
子、またはそれらに結合用の活性基を付与した微粒子が
例示される。
【0083】流路bは、前記したように、特異結合反応
の場であり、信号物質発生体が分布する場でもあるの
で、この部分の構成が、検出結果に大きな影響を与え
る。そこで、分析対象物の種類、特異結合反応の方式
(競合型、サンドイッチ型など)等に応じて、流路bを
適当な性状を示すように構成することが望ましい。すな
わち、その材質、大きさ(厚み)、ポアサイズあるいは
ゲル状態となった時の粘度(粘稠性)等を選択、調整す
ることにより、信号物質発生体の分布状態や信号物質等
の拡散速度を任意に調節する。
【0084】また、流路bを複数の構造および材質から
構成させることにより、例えば積層体等とすることによ
り、その性状を詳細に調節することができる。例えば、
流路bの検出部c1 およびc2 いずれも近傍にポアサイ
ズの小さい材質を用い、試料導入部a側には、ポアサイ
ズの大きい材質を用いると、分析対象物量による特異結
合反応後の信号物質発生体の分布の差異をより明瞭にで
きる。これを実現する具体例としては、ポリアクリルア
ミドのグラディエントゲルおよびポアサイズの異なる多
孔性メンブレンの積層体等が例示できる。
【0085】流路bに分析対象物に対する特異結合物質
を存在あるいは不溶化させる場合、それは、全体に均等
に存在させあるいは不溶化してもよいが、流路bの一部
分に局在させてもよい。また、上流側には多く存在ある
いは不溶化させ、下流側には少なく存在あるいは不溶化
させる等の濃度傾斜をつけてもよい。
【0086】なお、流路bに分析対象物に対する特異結
合物質を不溶化させるには、多孔性担体あるいはゲル担
体に共有結合あるいは吸着によって不溶化させればよ
い。また、流路bを複数の部材から構成する場合、ある
いは、多孔性担体と水溶性高分子化合物とで構成する場
合、あるいは、多孔性担体等とそれに保持される固体状
物質とで構成する場合、特異結合物質の不溶化は、構成
要素全てに対して行なってもよいし、一部にのみ行なっ
てもよい。
【0087】本発明の装置の流路bの試料の流れ方向の
長さは、小さくすればするほど、試料の必要液量を少な
くできるが、小さくしすぎると、分析対象物の量に応じ
た信号物質発生体の分布の変化が明瞭でなくなる。従っ
て、一般的には、10μm〜数十mm程度とする。
【0088】検出部cは、到達した信号物質が発する信
号を、肉眼での目視で、もしくは、信号の性質に応じた
好適な外部の計測器で、信号の変調の程度を計測できる
部位であり、液性試料の流れ方向に異なる位置に、流路
bから信号物質12を受け取ることができる位置に複数
配置される。複数の検出部cのうち、少なくとも1つ
は、流路b内での信号物質発生体10の位置分布の変化
から生じる信号変調の大きい部位に設ければよい。通常
は、流路bの最下流側あるいは最上流側である。別の検
出部は、同様に流路b内での信号物質発生体10の位置
分布の変化から生じる信号変調の大きい部位に設けても
よいし、あるいは、流路b内での信号物質発生体10の
位置分布の変化から生じる信号変調を受けにくい部位に
設けてもよい。
【0089】ただし、複数の検出部が流路b内での信号
物質発生体の位置分布の変化に対して全く同等で、それ
ぞれの検出部で信号変調に差が認められない場合には、
複数検出部による本発明の分析が成立しない。従って、
本発明においては、流路bの液流方向に対して異なる位
置に複数の検出部を配置する。ここで、流路b内での信
号物質発生体の分布の分析対象物量による変動は、基本
的に試料液流の方向に起こるため、流路bの液流方向に
対して異なる位置に複数の検出部を配置すれば、それぞ
れの検出部での信号変調は同等とはならない。
【0090】検出部における検出手段には特に限定はな
く、信号物質による信号(あるいは信号物質によって検
出部が発する信号)に応じて、各種の公知の手段が利用
可能である。特に電気化学的測定が好ましく利用され
る。例えば、電気化学的信号であれば、検出部として各
種の電極を用いればよい。具体的には、作用電極および
対電極としては、白金、金、銀、カーボン電極等が使用
できるが、製造に適したカーボン印刷電極が好適であ
る。この場合、電極基板としては、液体不透過性の板、
例えばPETフィルム、塩化ビニル板あるいはガラス板
などを使用してもよいし、液体透過性のシート、例えば
濾紙などを使用してもよい。さらに微細な電極構成とす
るために、マイクロアレイ電極を作製することもでき
る。
【0091】また、前記電極の参照電極としては、Ag
/AgCl電極等が例示される。これも、印刷技術等に
よって製造できる。
【0092】検出部cを酵素電極とすれば、電極反応の
特異性や感度が上昇する。この場合には、信号物質は、
酵素電極の基質もしくは補因子として作用し、電子が電
極上で授受され、信号が測定される。酵素電極は、生化
学分析あるいは分析化学分野では多数知られている。
【0093】信号が蛍光、発光、呈色等である場合は、
各々、具体的には、検出部cは、発光反応に必要な少な
くとも1つの信号の発生に関与する物質を実質上不動化
した発光発生部、蛍光反応に必要な少なくとも1つの信
号の発生に関与する物質を実質上不動化した蛍光発生
部、呈色反応に必要な少なくとも1つの信号の発生に関
与する物質を実質上不動化した呈色発生部等である。
【0094】さらに、検出部cが蛍光、発光、呈色等が
検出される部位である場合、検出部cは、流路bまたは
後記する吸収部の一部に、あるいは、検出部cの下流側
に設けられた基板がある場合は、その基板に、信号の発
生に関与する物質を不動化させることで作製することが
できる。その場合、不動化には、3−アミノプロピルト
リエトキシシラン処理したガラス基板とグルタルアルデ
ヒドとを用いて酵素を基板に結合する等の、種々の方法
が利用できる。また、本発明の装置は、さらに、支持体
(あるいは基板)やカバーを有していてもよい。
【0095】図2に、このような本発明の特異結合分析
装置であって、電気化学的信号によって測定を行う特異
結合分析装置の一例の分解斜視図を、図3にこの装置を
組み立てた際の断面図を、それぞれ示す。図2に示され
る分析装置は、上から、上部カバー50、フィルター5
2、第1含浸部54、第2含浸部56、連通部材58、
複数の検出部を有する電極部60、特異結合物質不溶化
流路(マトリクス)62、吸収部64、および下部基板
66を有して構成され、図3に示されるように、各部材
が上記順番で積み重ねられて、組み合わされて構成され
る。
【0096】図示例の装置においては、上部カバー50
(その試料導入口50a)、フィルター52、第1含浸
部54、第2含浸部56および連通部材58によって試
料導入部が構成される。なお、フィルター52、第1含
浸部54、第2含浸部56および連通部材58は、分析
に利用する特異結合反応や装置構成等に対応して、必要
に応じてあるいは好ましい態様として配置されるもので
あり、本発明はこれらを有するものに限定されない。す
なわち、本発明においては、試料導入口50aのみで試
料導入部を形成して、ここから直接流路62に液性試料
を導入してもよく、あるいは、その他の部材を必要に応
じて適宜選択し、組み合わせて試料導入部を形成しても
よい。
【0097】上部カバー50は、前述の各種の材料によ
って成形されるものであり、中心部分には液性試料を注
入するための試料導入口50aが形成される。
【0098】フィルター52は、試料に含まれる測定に
不要な固形物(妨害物質)を除去すると共に、試料の導
入が均一に行えるようにするものであって、通常、織
布、不織布等によって形成される。
【0099】第1含浸部54および第2含浸部56は、
液性試料の種類、分析対象物、利用する特異結合反応等
に応じて適宜配置されるものであって、ガラス繊維濾
紙、セルロース繊維濾紙、不織布等に、信号物質発生
体、信号物質の発生に関与する物質、信号の発生に関与
する物質、電子メディエータおよびこれらの安定化剤も
しくは保護剤、イオン強度および/またはpH調整のた
めの塩成分、緩衝液成分、界面活性剤などの液性試料の
流動円滑化剤等が含浸・乾燥されてなるものである。第
1含浸部54や第2含浸部56を液性試料が通過するこ
とによって、信号物質発生体等が溶出して液性試料と混
合され、あるいは反応が開始される。なお、1つの含浸
部に保持される物質は複数であってもよく、また、図示
例のように第1含浸部54と第2含浸部56とに分けず
に、含浸部を1つとしてもよいのはもちろんである。
【0100】また、このような第1含浸部54や第2含
浸部56等を有することによって、試料の流れ時間を長
くして反応時間を十分に確保することが可能となる。さ
らに、図示例においては、好ましい態様として第2含浸
部56の上面中心部分には水が通過不可能なシール部5
6aが形成される。シール部56aを有することによ
り、鉛直方向であった試料の流れを水平方向に変更する
ことができ、試料の流れ時間をより長くして反応時間を
十分に確保することが可能となると共に、混合効果によ
って反応効率が上り、より正確な測定を実現することが
できる。シール部56aの形成材料および形成方法には
特に限定はなく、塩化ビニル、セルロースアセテート、
ポリエステル等の各種の水不透性材料を、接着剤、例え
ばアクリル系接着剤等の手段を用いて第2含浸部56の
中心部分に貼着すればよい。もしくは、水不透性樹脂あ
るいは水不透性ポリマーなどの薄膜を印刷法、光重合法
あるいは光硬化法などで形成させればよい。
【0101】なお、本発明の分析装置(分析方法)にお
いては、第1含浸部54や第2含浸部56等は必須要件
ではないのは前述のとおりであるが、これらを有さない
場合(これらに信号物質発生体等を含浸させない場合)
には、信号物質発生体等の分析に必要な物質は、あらか
じめ液性試料と混合しておく、液性試料の注入の前ある
いは後に試料導入口50aから注入する等の方法で反応
系に導入すればよいのは前述のとおりである。
【0102】連通部材58は、第2含浸部56を通過し
た試料等を電極部60の貫通孔68を通過させて流路6
2に導入するものであり、ガラス繊維濾紙やセルロース
繊維濾紙等より形成される。このような連通部材58
は、必要に応じて、後述する電極部60の貫通孔68に
挿入されて配置される。電極基板61の厚さが大きくな
い場合には必ずしも必要ではない。
【0103】電極部60は、本発明の構成要素の一つで
ある複数の検出部cが形成されるものであって、図示例
の装置においては、電極部60は、PET(ポリエチレ
ンテレフタレート)等の絶縁性基板61の上面に参照極
/対極を、下面に検出部となる作用極が形成され、流路
62に形成された信号発生体の分布に応じた電気的信号
が作用極によって検出される。
【0104】図4(a)に電極部60の上面を、図4
(b)に電極部60の下面を、それぞれ示す。図示例の
電極部60の上面には、環状の対極(参照極)70およ
びその端子70aが形成され、対極70を除いて、斜線
で示されるように絶縁層74が形成されている。一方、
電極部60の裏面には、上面と同様にして、環状の第1
作用極76およびその端子76aが形成され、さらに、
第1作用極76と同一中心を有しかつ第1作用極76よ
りも大きな略環状の第2作用極78およびその端子78
aが形成される。また、第1作用極76、第2作用極7
8および両者の間隙を除いて、斜線で示されるように絶
縁層74が形成されている。すなわち、図示例において
は、第1作用極76が図1の第1検出部c1 に、第2作
用極78が同第2検出部c 2 に相当する。さらに、絶縁
性基板61には、対極70および第1作用極76の内側
を貫通して貫通孔68が形成される。
【0105】前述のように、液性試料は貫通孔68ある
いは必要に応じて貫通孔68に挿入された連通部材58
を通過して後述する特異結合物質不溶化流路62に導入
される。そのため、図示例の装置においては、特異結合
物質不溶化流路62内での液性試料は貫通孔68すなわ
ち第1作用極76の中心から外方向に向かって放射状に
流れる。従って、図示例に示すように、電極(検出部)
を同一中心を有しサイズの異なる環状とし、その中心か
ら液性試料が流れる構成とすることにより、第1作用極
76および第2作用極78は、液性試料の流れ方向に異
なる位置に配置されることになる。なお、第1作用極7
6と第2作用極78との間隙には、特に限定はないが、
10μm以上が好ましいのは前述のとおりである。
【0106】検出部となる第1作用極76および第2作
用極78は、前述の各種の材料によって形成される。対
極70は、銀電極、銀/塩化銀電極等で形成される。ま
た、基板28は、PET、ポリ塩化ビニル、ポリイミ
ド、ポリエステル等の公知の各種の絶縁性材料で形成さ
れる。さらに、絶縁層36は、アクリル系樹脂、ポリエ
ステル等の公知の各種の絶縁性インク材料で形成され
る。
【0107】なお、図示例の装置において、各作用極、
対極(参照極)および絶縁層は、共に、スクリーン印
刷、ドクターナイフ等の厚膜形成技術、スパッタリン
グ、CVD等の薄膜形成技術等の公知の膜形成技術によ
って形成すればよい。
【0108】本発明において、第1作用極76、第2作
用極78等の形状は図示例の環状に限定はされず、液性
試料の拡散方向に異なる位置(好ましくは一定間隔)を
もって配置されるものであれば、例えば、図5に示され
る形状等、様々な形状が利用可能である。また、本発明
においては、複数の検出部は2つに限定されないのはも
ちろんであり、例えば、図6に示されるように、3つの
作用極を形成してもよく、あるいはそれ以上であっても
よい。さらに、図示例においては、液性試料の特異結合
物質不溶化流路62への導入点を中心に、これを囲む円
周で検出を行っているが、これ以外にも、図1、図5b
および図6bに示されるように、直線的な一方向に異な
る位置に配置される作用極としてもよいのはもちろんで
ある。
【0109】特異結合物質不溶化流路62は、本発明の
特異結合分析装置における流路bとして作用するもの
で、例えば、分析対象物および信号物質発生体と特異結
合する抗体が不溶化して固定されており、液体試料中の
分析対象物等の特異結合反応によって、液体試料中の分
析対象物の量に応じた信号物質発生体の分布を形成す
る。特異結合物質不溶化流路62に形成された信号物質
発生体の第1作用極76および第2作用極78からの距
離分布が、信号物質を介して電流値として測定される。
このような特異結合物質不溶化流路62は、前述の流路
bと同様にして形成され、例えば、メンブレン等の多孔
質膜に、特異結合反応のための抗体や抗原、核酸等を、
不溶化して保持・乾燥してなるものである。また、余剰
の試料は、特異結合物質不溶化流路62を通過して後述
の吸収部64で吸収される。
【0110】吸収部64は、前述のように特異結合物質
不溶化流路62を通過した余剰の試料を吸収するもの
で、例えば、クロマトグラフ濾紙などのセルロース濾
紙、高吸水性ポリマーで形成される。また、吸収部64
に信号物質の発生に関与する物質および/または信号の
発生に関与する物質を含浸しておいてもよい。
【0111】図示例の装置においては、好ましい態様と
して吸収部64の上面中心部分に水が通過不可能なシー
ル部64aが形成される。前述のシール部56aと同
様、シール部64aを有することにより、鉛直方向であ
った試料の流れを水平方向に変更することができ、試料
の流れ時間を長くして、特異結合反応の効率を向上させ
ると共に、流路内の信号物質発生体(標識体)分布が明
瞭になり、より正確な測定を実現することができる。図
示例の装置においては、複数の電極76および78が、
シール部64aの巾以内に複数存在すると、第1検出部
と第2検出部の信号強度の分析対象物濃度に対する応答
が非特異的信号と共に検出でき、これに対し複数の電極
の一方76をシール部64aの巾以内に設け、他方78
をシール部64aの巾の充分外側に配置すればするほ
ど、他方の電極78で検出される信号強度は分析対象物
濃度に依存する部分が少なくなり、充分外側に配置すれ
ば、実質的に非特異的信号のみを検出するように設計す
ることができる。なお、シール部64aは、前述のシー
ル部56aと同様に形成される。
【0112】図示例の分析装置は、これらの各部材を図
2および図3に示される順序で、下部基板66上に積層
して、上部カバー50と下部基板66とを貼り合わせ、
あるいはねじ止め、ボルトとナット等を用いて固定して
作製される。
【0113】このような分析装置においては、前述のよ
うに、試料は上部カバー50に形成される試料導入口5
0aより注入される。試料導入口50aより注入された
試料は、フィルター52を通過して異物等を除去され、
第1含浸部54に流入し、次いで第2含浸部56に流入
する。含浸部に試料が流入することにより、乾燥・保持
された信号物質発生体等が溶出し、試料と混合され、あ
るいは分析対象物の特異結合反応が開始される。なお、
図示例においては、第2含浸部56の上面にはシール部
56aが形成されるので、試料の流れ方向が鉛直方向か
ら水平方向に変更され、十分な反応時間が確保できるの
は前述のとおりである。
【0114】第2含浸部56を通過した試料は、連通部
材58によって電極部60の貫通孔68を通過され、特
異結合物質不溶化流路62に流入する。流路62に試料
が流入すると、特異結合物質不溶化流路62内で液体試
料中の分析対象物の特異結合によって信号物質発生体の
分布が決り、信号物質発生体の作用によって発生する信
号物質が拡散によって第1作用極76、あるいは第2作
用極78に到達し、両作用極において、信号物質発生体
の特異結合物質不溶化流路62内の作用極の半径方向の
分布が、反応に対応した電気化学的信号として検出され
る。余剰の試料は、特異結合物質不溶化流路62を通過
して吸収部64で吸収される。
【0115】第1作用極76や第2作用極78からの出
力(電気信号のみならず各種の検出部からの出力)は、
試料導入部に所定量の液性試料を添加し、所定時間経過
後に、あるいは、所定時間が経過するまで連続的に、読
み取りを行えばよい。なお、複数の検出部での信号計測
は同時に行ってもよいし、別々に行ってもよい。複数の
検出部での信号計測を別々に行う場合、各検出部を順々
に反復して計測してもよい。また、データは、所定時間
経過後の出力強度(例えば電流値)、所定時間内の出力
強度の平均値、出力が所定強度となるまでの時間、連続
的な出力の積分値(例えば電気量)出力が一定の強度に
なるまでの時間等として読み取ればよい。
【0116】前述のように、本発明は、特異結合反応を
利用する分析方法において、液性試料の流れ方向に異な
る位置に配置される複数の検出部によって検出される信
号から、液性試料中の分析対象物の量以外の非特異的要
因による分析結果への影響を小さくできる演算式を作成
できることを見出し、これを用いて信号の計測結果を演
算処理することによって、より正確な特異結合分析を可
能としたものである。
【0117】ここで、試料中の分析対象物量をC、検出
部の信号強度に影響する試料中の夾雑物量をZ、複数の
検出部の信号強度をI1 、I2 、……In とすると、 I1 =f1 (C,Z) ∴ Z=g1 (I1 ,C) -1式 I2 =f2 (C,Z) ∴ Z=g2 (I2 ,C) -2式 : : : : In =fn (C,Z) ∴ Z=gn (In ,C) -n式 であり、任意の少なくとも2つの式からZの項を消去で
きる。例えば、-1式と-2式から、 g1 (I1 ,C)−g2 (I2 ,C)=0 ∴ h1 (I1 ,I2 ,C)=0 式
【0118】この式は、測定信号強度I1 および測定
信号強度I2 から分析対象物の未知量Cを求める方程式
に他ならないから、この方程式の解である式から分析
対象物量Cを求めることができる。 C=k1 (I1 ,I2 ) 式 従って、少なくとも2つの検出部の計測結果から、試料
中の夾雑物Zに影響されない分析対象物量Cを求めるこ
とが可能となる。さらに多くの検出部の計測結果があれ
ば、推計学的により精度の高い結果を得ることもでき
る。
【0119】ただし、2つの検出部によって検出される
信号が同じ時、すなわち式が次式のような場合、 I1 =f(C,Z) I2 =f(C,Z) ∴ I1 =I2 にはCは求められない。
【0120】本発明の特異結合分析方法においては、液
性試料中の分析対象物との少なくとも1つの特異結合反
応により、分析対象物量に応じた流路内での信号物質発
生体の分布を形成させ、信号物質発生体から検出部まで
拡散移動して信号を発する信号物質の拡散に律速される
信号を計測しているため、通常、複数の検出部を液流方
向に対して異なる位置に配置すれば、2つの検出部の信
号強度は分析対象物量Cに対して、必ず異なる関数とな
る。液流方向に対して異なる位置とは、一般的には、検
出部同士が液流に対して上流下流の関係にあることを意
味する。ただし、電極サイズが大きい場合や電極形状に
よっては、液流方向に対して位置的に重なりを有する場
合もありうる。このような場合でも、電極の幾何学的な
中心あるいは電極端が異なっていれば、信号強度が異な
ることが期待されるので、液流方向に対して異なる位置
に配置しているとみなせる。好ましくは、電極の幾何学
的中心あるいは電極端が10μm以上離れた位置に配置
される。
【0121】本発明の特異結合分析方法および特異結合
分析装置は、このように複数の検出部を用いることによ
り、分析対象物との特異結合反応による信号物質発生体
の流路内分布に実質的に影響しない種々の非特異的影響
を極小化することが可能である。本発明の特異結合分析
方法および特異結合分析装置で極小化できる主要な測定
誤差要因Zとして以下のようなものが例示できる。
【0122】I. 試料中の夾雑物質や試料特性による非
特異的因子 試料に由来する信号物質発生体と類似の活性 例えば、信号物質発生体が西洋ワサビパーオキシダーゼ
の場合には、試料に由来するパーオキシダーゼ活性など 試料に由来する信号物質発生体あるいは信号物質に対す
る妨害物質 例えば、アスコルビン酸、尿酸などの酸化還元物質、信
号物質の発生に関与する物質が過酸化水素の場合には、
カタラーゼ活性など 試料特性 例えば、信号物質の拡散定数に影響する試料粘度、信号
物質発生体の活性に影響するpH、イオン強度、補因子
濃度、インヒビター濃度 全血試料のヘマトクリット値など II.分析環境 例えば、反応温度など III.失活等の試薬成分の活性の変化程度 例えば、信号物質発生体の活性の変化 信号物質の発生に関与する物質の活性の変化 信号の発生に関与する物質の活性の変化など
【0123】これらの中には、分析対象物との特異結合
反応による信号物質発生体の流路内分布に対しても実質
的に影響する可能性のある因子が含まれているが、本発
明の特異結合分析方法および特異結合分析装置は、これ
らの因子に対しても分析対象物との特異結合反応による
信号物質発生体の流路内分布に実質的に影響しない非特
異的影響の部分を極小化することが可能である。
【0124】すなわち、上記の数式を用いた説明では、
Zを検出部の信号強度に影響する試料中の夾雑物量とし
たが、一般に、Zが、Iの試料中の試料中の夾雑物質や
試料特性による非特異的因子、IIの分析環境、あるいは
IIIの試薬成分の失活程度のいずれの場合としても同じ
説明が可能である。任意の試料の任意の分析に対して、
その試料およびその分析において、これらの因子はそれ
ぞれ定まっているから、これらの因子の総合的なパラメ
ーターとしてZを定義しても同様の説明が成立する。す
なわち、本発明の信号検出系では、図27に例示される
ように、信号物質発生体(標識酵素など)によって信号
物質(電子メディエータなど)を発生させ、発生した信
号物質を検出手段(電極など)によって信号(電流な
ど)として検出する。そのため、計測される信号強度
は、信号物質が発生した場所(すなわち、信号物質発生
体の存在場所)から検出手段までの信号物質の拡散距
離、実質的には多数の分子を考慮した距離分布に大きく
依存する。
【0125】ここで、図28に競合型の特異結合反応で
例示するように、特異結合反応を利用して流路中に液性
試料中の分析対象物濃度に応じた信号物質発生体の分布
を形成させ、かつ、流動方向に異なる位置に配置された
2つの検出手段によって前記の信号検出を行うとする。
すると、各々検出手段は、ある特定の分析対象物濃度に
対応して形成された信号物質発生体の分布を計測してい
るにも係わらず、信号物質発生体の分布に対する相対的
な位置が異なるために信号物質発生体と検出手段との距
離分布がそれぞれ異なり、その結果、一般に異なる信号
強度を示す。つまり、2つの検出手段の信号強度は、液
性試料中の分析対象物濃度に対して異なる応答曲線を示
す。その各々の応答曲線は、複数の係数を有する数学的
な関数(回帰式など)で近似できる。例えば、2つの検
出手段での応答が線形関数の場合、信号強度Iと分析対
象物濃度Cとの関数はいずれもI=a・C+bと表せる
が、aおよびbの係数が各々の電極で異なっていること
になる。
【0126】ところで、2つの検出手段の信号検出系は
図29に例示したように同一であるので、液性試料中の
非特異的な測定誤差要因Zの影響は同等に受けている。
これらの測定誤差要因が信号強度に対して与える影響
は、図31に示すように加算的影響と比率的影響に大別
できるが、一般的には両者の影響が混在している。従っ
て、加算的影響の補正を主たる目的として、この分野で
汎用されている対照値を測定値から差し引くという補正
法、いわゆるブランク補正だけでは精度の高い結果が得
られない。また、従来のブランク補正法では、対照用の
検出手段は、測定用の検出手段と同等の位置に、かつ、
分析対象物濃度に対する応答を全く示さない様式で設置
しなければならないという制約があり装置構成が複雑と
なっていた。本発明の分析方法では、分析対象物濃度に
応じて信号物質発生体の分布が形成される流路が存在す
るため、流動方向のいかなる位置に設置された検出手段
も分析対象物濃度に多少とも応答するにも関わらず、精
度の高い補正法を提供できる。さらに、本発明の分析方
法では、非特異的な測定誤差要因Zの加算的影響と比率
的影響が混在していても、複数の検出手段に対して等し
く影響を与えていることに着目して、その影響を極小化
するように演算処理を行える。
【0127】つまり、本発明の分析方法によれば、複数
の検出手段における信号強度と分析対象物濃度との応答
関係と、複数の検出手段における信号強度と測定誤差要
因Zとの関係とから、測定誤差要因の影響が極小である
分析対象物濃度を求める関係式を導出できる。この導出
方法には種々の方法が可能であるが、以下の方法が簡便
で精度の高い方法として好ましい。 方法測定誤差要因Zの影響が極小化できるパラメータ
を用いる。この方法は、目的とする分析における測定誤
差要因を予測し、その影響を極小化できるパラメータ
(複数検出部の信号強度の関数式)を選択し、予測され
る測定誤差要因の存在下で分析を行ってパラメータを最
適化する方法である。一般に、加算的影響は複数の検出
手段の信号強度の差をとることによって除去でき、比率
的影響は比をとることによって除去できるから、後記す
るパラメータ式P,Q,Rなどが例示できる。ただし、
目的とする分析における測定誤差要因の影響を極小化で
きるパラメータであれば、いかなる式でもよい。 方法分析対象物濃度に対する応答曲線の近似式の係数
に測定誤差要因の関係式を導入する。この方法は、複数
の検出手段における分析対象物濃度に対する応答曲線の
近似式の係数に現れる測定誤差要因Zの影響を関数関係
として近似し、これら応答曲線の近似式と関数関係とか
ら分析対象物濃度を求める式を導出する方法である。こ
の場合も、目的とする分析における測定誤差要因を予測
し、その予測される測定誤差要因Zの存在下で分析を行
うことにより、応答曲線の近似式の係数に現れる測定誤
差要因Zの影響をより精密に関数関係として表現でき、
精度の高い分析が可能となる。
【0128】本発明は、未反応物の分離操作(洗浄操
作)を伴なわない簡便な方法であって、汎用性に優れ、
迅速測定が可能でありながら、なおかつ、分析操作上何
ら余分な操作なしに、特異結合分析の非特異的な影響に
よる測定誤差を極小化することができる方法と、この方
法の実施に好適な特異結合分析装置の提供を可能とした
のである。
【0129】複数の検出部の信号から液性試料中の分析
対象物量を定量する方法について、さらに具体的に述べ
る。分析対象物、特異結合物質、信号物質発生体、信号
物質、特異結合反応の様式、信号物質発生様式、検出部
の配置および分析装置の構成などによって、前述の式
の関数fは決定される。しかしながら、これらの要素に
より関数fは異なるので、その関数自体を数式化するこ
とは通常困難である。そこで、内部関係式となる式を
得る1つの方法は、Zは異なるが分析対象物量の同じ検
体を複数選んで分析を行い、同じ分析対象物量Cにおけ
る信号強度I 1 とI2 との関係式を推定し、次いで、そ
の関係式と分析対象物濃度Cとの関係を推測することに
より、内部関係式式を得る方法である。この方法は、
後述する実施例2に詳述されている。しかしながら、こ
の方法は、内部関係式を得るために、多くの予備検討を
必要とする。
【0130】もっと簡便な方法は、最初から式が成立
することを前提として、Zの影響を極小化できる内部パ
ラメーターを導入する方法である。内部パラメーターと
は、I1 とI2 の関数とすることができ、分析対象物、
特異結合物質、信号物質発生体、信号物質、特異結合反
応の様式、信号物質発生様式、検出部の配置および分析
装置等、各種の要因によって決まる。 内部パラメーター P=u(I1 ,I2 ) 従って、分析対象物量Cは内部パラメーターPの関数と
なり、これをのかわりに内部関係式として用いること
ができる。 C=v(P)
【0131】内部パラメーターは、Zの影響を極小化で
きるI1 とI2 の関数式であればいかなる関数式でも採
用できる。一般的には、次のような関数が好ましい。 内部パラメーター P=I1 −a・I2 あるいは、 内部パラメーター Q=(I1 −a)/(I2 −b) なお、上記aおよびbは定数である。
【0132】後述する実施例3において、ヘパリン血漿
を試料とした場合に、これら内部パラメータPおよびQ
のいずれも、Zの影響を極小化することができることを
具体的に示した。また、この方法は、Zが試料中の夾雑
物の非特異的影響、反応温度、信号物質発生体の活性の
変化のいずれの場合においても有用であることを、実施
例3,4および5において具体的に示した。また、実施
例6において、全血試料でも同様の方法が有用であるこ
とを内部パラメーターQの例で示した。以上の実施例は
いずれもhCGを分析対象物としたサンドイッチ型の特
異結合反応である。
【0133】内部パラメーターは上記のPおよびQの例
に限定されるものではなく、PおよびQを組み合わせた
関数でも当然Zの影響を極小化できる。例えば、 (上記式において、a,b,c,d,およびfはいずれ
も定数である)等が例示され、一般に、Zの影響を低減
できる関数であれば、内部パラメーターとして有用であ
る。また、内部パラメータは、PあるいはQあるいはそ
の組み合わせ関数であるRに限定されるものではなく、
これらはその一例に過ぎない。液性試料の流動方向に異
なる位置に複数配置された検出手段によって検出された
複数の検出結果を用いて、分析対象物濃度以外の要因に
よる分析結果への影響を極小化できる演算法は種々存在
し、そのいずれの方法も利用できる。それらの演算法は
極小化できる程度に関して差があるので、一般には最も
極小化に有効な関数を内部パラメータとして採用すれば
よい。例えば、後記する内部関係式Sの例のように、上
記内部パラメータRよりもさらに精巧な関数を導入する
ことによって、分析対象物の濃度以外の要因による分析
結果への影響の極小化の程度を向上させることもでき
る。
【0134】ここで、信号強度I1 ,I2 として電流値
を用いることができるが、実施例3,4,5,6,7お
よび8のように電流密度(電流値/電極面積)を用いて
も、同様の処理が可能である。このようにして得られた
内部パラメータおよび/または内部関係式を、あらかじ
め計測装置の演算機構に組み込んでおくか、測定時に計
測装置にパラメータとして入力し、計測後に演算させ分
析対象物量を表示させることは特に望ましい。
【0135】あらかじめ計測装置の演算機構に組み込ん
である内部関係式に対して、分析装置に固有の定数を入
力する方式は、分析装置のロット差を補正する上で好ま
しい。すなわち、上記した内部パラメータ関数の定数部
分(例えば、内部パラメータ関数Rの場合におけるa,
b,c,d,e,f)の一部あるいはすべてが分析装置
のロットに依存する場合、分析を開始する前にこれらの
定数部分を計測装置にセットすることにより分析装置の
ロット差を補正することができる。これらの定数部分を
計測装置にセットする方法としては、リングスイッチあ
るいはディップスイッチなどのハードウェアスイッチに
よる設定、キーボード、マウスあるいはペンなどの入力
装置による入力、磁気テープあるいは磁気カードなどの
磁気情報読み取り、センサー部の電気的特性値あるいは
ICメモリーなどの電気的情報読み取り、バーコードな
どの光学的読み取りなど一般的な入力手段が利用でき
る。
【0136】次に、分析装置ロットに固有な内部関係式
の係数部分の決定方法について、実施例7の全血試料中
の分析対象物エストラジオールの競合反応法に基づいて
例示する。実施例7では、前記した関係式導出方法に
従って、全血試料中のZの影響を極小化するためにロジ
スティック曲線に基づいた解析から導出された内部関係
式Sを用いてZを極小化している。また、実施例8にお
いては、この内部関係式に含まれる分析装置のロット依
存性の定数項は、検定用血清試料から決定されている。
全血試料の安定な長期保存は困難であるため、この検定
用血清試料による分析装置のロット依存性の定数項決定
方法は、検定用全血試料を用いた定数項決定法よりも標
準化しやすく、また簡便でもあり、分析装置の製造時の
ロット管理に適している。
【0137】実施例7は分析対象物がエストラジオール
というハプテンであり、特異結合反応として競合法を採
用しているため、試料中の分析対象物濃度Cに対する第
1検出部の信号強度I1 は、例えばロジスティック曲線
(式)のようなS字状曲線が適合する。
【0138】本発明者らは、実施例7の分析装置におい
て各種全血試料にエストラジオールを添加した検体を測
定した結果に基づき、Zの影響はa1とd1の2つの係
数を変動させるが、b1とc1の2つの係数には大きな
変動を与えないことを見い出した。すなわち、式にお
いて、b1とc1は定数であるが、a1とd1とは全血
試料に依存して異なるZの関数であった。また、実施例
7に例示した分析装置では、試料中の分析対象物濃度C
に対する第2検出部の信号強度I2 も、同様にロジステ
ィック曲線(式)が適合する。
【0139】実施例7の分析装置では、第1検出部の場
合と同様に、式において、b2とc2は定数である
が、a2とd2とは全血試料に依存して異なるZの関数
であった。また、実施例7の分析装置では、b1=b2
=b(定数)およびc1=c2=c(定数)と近似でき
た。式および式を変形すると、それぞれ式および
式となる。
【0140】また、本発明者らは、実施例7の分析装置
において各種全血試料を測定した結果に基づき、a1と
d1との間には関数関係が存在して、例えばd1=f1
(a1)と表すことができ、a2とd2との間にも関数
関係が存在して、例えばd2=f2(a2)と表すこと
ができることを見い出した。さらに、a1とa2との間
にも関数関係が存在して、例えばa2=g(a1)と表
すことができることを見い出した。これらの関数関係式
を用いると、式および式から、例えばa2、d1、
d2を消去して、a1=h(I1 ,I2 )という関数を
求めることができる。これは、前記した関数関係から明
かなように、試料に依存する係数a1、d1、a2、d
2のすべてがI1 とI2 とから求めうることを意味して
いる。従って、式あるいは式から試料に依存する係
数a1、d1、a2、d2を消去して、I1 とI2 から
Cを求めることのできる内部関係式C=S(I1
2 )を誘導できる。それゆえ、この内部関係式C=S
(I1 ,I2 )は、種々の全血試料における非特異的な
影響を最少にする。
【0141】ここで、信号強度I1 および信号強度I2
がそれぞれロジスティック曲線のようなS字状曲線に適
合し、少なくともb1=b2、c1=c2である時に
は、これらの和(I1 +I2 )あるいは差(I1
2 )もロジスティック曲線のようなS字状曲線に適合
しうる。従って、I1 あるいはI2 のいずれか一方、あ
るいは両方を和(I1 +I2 )あるいは差(I1
2 )としても上記説明と同様の処理が可能である。実
施例7では、I1 とI1 +I2 を用いて内部関係式を求
めている。
【0142】さらに、本発明者らは、実施例8におい
て、この内部関係式に含まれる分析装置のロット依存性
の定数項を全血試料ではなく検定用血清試料から決定で
きることを示している。これは、次のような方法で達成
できる。すなわち、全血試料において、上記した係数a
1、d1、a2、d2がそれぞれ試料依存性を示すとい
うことは、前記した試料中の夾雑物、試料特性、分析環
境あるいは試薬成分の活性変化などのZによって、a
1、d1、a2、d2が変化することを示している。と
ころで、係数a1、d1、a2、d2は、それぞれ、第
1検出部のS状応答曲線の下側漸近線、上側漸近線、第
2検出部のS状応答曲線の下側漸近線、上側漸近線の位
置に相当する。これは、ある試料中において、分析対象
物濃度が十分低い時の第1検出部の信号強度がa1、分
析対象物濃度が十分高い時の第1検出部の信号強度がd
1、分析対象物濃度が十分低い時の第2検出部の信号強
度がa2、分析対象物濃度が十分高い時の第2検出部の
信号強度がd2であると言い換えることもできる。従っ
て、これらの係数の間に前記した関数関係、例えばd1
=f1(a1)、d2=f2(a2)、a2=g(a
1)が見い出されるということは、これらの漸近線の位
置はZに対して規則性を有して変動していることを意味
している。一般的には、これらの関数関係は、例えば、
次のような言葉で表現できる。d1=f1(a1)は、
第1検出部のS状応答曲線の下側漸近線が血清試料より
高目になる全血試料では、第1検出部のS状応答曲線の
上側漸近線も高目になる傾向があることを示す。d2=
f2(a2)は、第2検出部のS状応答曲線の下側漸近
線が血清試料より高目になる全血試料では、第2検出部
のS状応答曲線の上側漸近線も高目になる傾向があるこ
とを示す。a2=g(a1)は、第1検出部のS状応答
曲線の下側漸近線が高目になる全血試料では、第2検出
部のS状応答曲線の下側漸近線も高目になる傾向がある
ことを示す。
【0143】全血試料を複数測定すれば、これらの関数
関係を見い出すことができ、それらを用いて内部関係式
を求めうることは前記したが、全血試料を複数測定する
という操作は、Zの値の異なる複数の試料を測定するこ
とによって、Zの影響が各係数にどのような規則性を持
って出現するかという関数関係を決定することに他なら
ない。すなわち、このような分析装置に固有の内部パラ
メータ関係式を導出するために用いられる検定用試料と
しては、必ずしも全血試料である必要はなく、全血試料
と同様の挙動を示すことがあらかじめ知られているZの
値の異なる試料であればよいことになる。
【0144】このような検定用試料は、例えば、標準と
なる血漿に予測されるZ要因を添加することによって得
られる。添加するZ要因としては、夾雑物質、信号物質
発生体と類似の活性、試料特性を変化させる因子、信号
物質発生体あるいは信号物質に対する妨害物質などが例
示でき、例えば、パーオキシダーゼあるいはカタラーゼ
などの酵素、ヘモグロビンなどの血色素成分あるいは溶
血成分、アスコルビン酸、尿酸などの酸化還元物質、酸
成分あるいは塩基成分などのpH変動要因、塩などのイ
オン強度変動要因、金属イオンあるいは補酵素などの補
因子、酵素阻害剤、多糖類などの粘性物質などが好適な
ものとして例示できる。また、ヘマトクリット値を変動
させるために添加できるZ要因として、ラテックス粒
子、高分子微粒子球あるいは固定化血球などの血球類縁
物質が例示できるが、ヘマトクリット値による影響を受
けやすい電子メディエータ濃度あるいは酵素標識物質濃
度を変動させるために電子メディエータあるいは/およ
び酵素標識物質を添加した検定用試料も好適なものとし
て例示できる。さらに、Z要因は添加物質である必要は
なく、分析環境変動因子として、反応温度を変化させて
検定を行ってもよいし、高温あるいは高湿条件下などで
分析装置に含まれる試薬成分の活性を変化させてから検
定を行ってもよい。ただし、検定手段はこれらの例示に
限定されるものではなく、内部パラメータ関係式の決定
が可能な検定手段であれば、いずれの手段も用いること
ができる。
【0145】実施例7あるいは上記した説明は、第2検
出部の信号強度も分析対象物濃度に依存して応答する場
合を例示している。ただし、第1検出部と第2検出部は
液流方向に異なる位置に配置されているため、それぞれ
の検出部の信号強度の分析対象物濃度に対する応答は全
く同等とはならず、そのため内部パラメータ関係式を導
き出せることを示した。第1検出部と第2検出部の信号
強度の分析対象物濃度に対する応答が全く異なるよう
に、それぞれの検出部を配置することもできる。このよ
うな配置として、例えば図4の電極部60において、第
1検出部76の配置は変えずに、第2検出部78の内径
および外径を図2の分析装置例におけるシール部64a
の直径より十分大きくして、第2検出部をシール部64
aの十分外側に配置する場合を例示できる。この場合、
第2検出部の信号強度は分析対象物濃度に実質上依存せ
ず、Zにのみ依存すると見なせる。この場合、試料中の
分析対象物濃度Cに対する第2検出部の電流応答I
2 は、式ではなく、次の式が適合する。 I2 =d2 式 この場合も、第1検出部の応答式あるいは式と、第
2検出部の式、および、d1=f1(a1)、a2=
g(a1)の関数関係式から、内部パラメータ関数C=
S(I1 ,I2 )を誘導できる。すなわち、流動方向に
異なる位置に複数配置される検出手段が存在し、少なく
ともその内の1つの検出手段での信号応答が試料中の分
析対象物濃度に依存すれば、分析対象物の濃度以外の要
因による分析結果への影響を極小になるように演算処理
を行うことができる。従って、流動方向に異なる複数の
検出手段の配置は、後記する実施例あるいは前記した例
示に限定されるものではなく、分析装置の形状も後記す
る実施例あるいは前記した例示に限定されるものではな
い。
【0146】
【実施例】以下、実施例により、本発明を具体的に説明
する。
【0147】[電極部の作製]厚さ0.25mmの透明
PETフィルムの表側および裏側に、導電性カーボンイ
ンク(400−CT、アサヒ化研社製)、導電性銀ぺー
スト(LS411N、アサヒ化研社製)およびレジスト
(XB−101G、藤倉化成社製)を用いてスクリーン
印刷し、図4に示されるような電極部60を各種作製し
た。まず、絶縁性基板61となるPETフィルムの表面
に、カーボンインクを用いてスクリーン印刷を行い、対
極(参照極)70、端子70aを形成し、次いで、絶縁
性レジストを用いて絶縁層74を形成した。さらに、対
極70を銀ペーストで上塗り印刷した。続いて、絶縁性
基板61となるPETフィルムの裏面に、同様にして第
1作用極76、端子76a、第2作用極78および端子
78aをカーボンインクで形成し、さらに絶縁層74を
形成した(すなわち、銀ペースト印刷はおこなっていな
い)。各電極および絶縁層を形成した後、PETフィル
ムを長さ50mm、幅20mmのサイズに切断し、さら
に、対極70および第1作用極76の中心をパンチング
して貫通孔68を形成し、図4に示されるような電極部
60で、第1作用極76や第2作用極78、貫通孔68
等のサイズが異なる電極部60を7種類作製した。
【0148】各電極部の諸元は下記のとおりである。な
お、電極部60aから電極部60fまでの対極(参照
極)は、電極部60の表面に第1作用極76と同位置に
形成され、さらに全く同サイズ、同形状であるので、こ
こでは、電極部60の裏面の作用極の諸元のみを示す。
電極部60gの対極(参照極)はサイズが異なるため、
電極部60の裏面の作用極と共に表面の対極(参照極)
の諸元も示す。 <電極部60a> 貫通孔68(第1作用極76の内径):3mm、 第1
作用極76の外径:5mm(すなわち、第1作用極76
の幅1mm)、 第1作用極76と第2作用極78との
間隙:0.5mm、 第2作用極78の外径:8mm
(すなわち、第2作用極78の幅1mm) <電極部60b> 貫通孔68(第1作用極76の内径):3mm、 第1
作用極76の外径:6mm(すなわち、第1作用極76
の幅1.5mm)、 第1作用極76と第2作用極78
との間隙:1mm、 第2作用極78の外径:11mm
(すなわち、第2作用極78の幅1.5mm) <電極部60c> 貫通孔68(第1作用極76の内径):3mm、 第1
作用極76の外径:6mm(すなわち、第1作用極76
の幅1.5mm)、 第1作用極76と第2作用極78
との間隙:1.5mm、 第2作用極78の外径:12
mm(すなわち、第2作用極78の幅1.5mm) <電極部60d> 貫通孔68(第1作用極76の内径):3mm、 第1
作用極76の外径:5mm(すなわち、第1作用極76
の幅1mm)、 第1作用極76と第2作用極78との
間隙:2mm、 第2作用極78の外径:11mm(す
なわち、第2作用極78の幅1mm) <電極部60e> 貫通孔68(第1作用極76の内径):2mm、 第1
作用極76の外径:5mm(すなわち、第1作用極76
の幅1.5mm)、 第1作用極76と第2作用極78
との間隙:1mm、 第2作用極78の外径:10mm
(すなわち、第2作用極78の幅1.5mm) <電極部60f> 貫通孔68(第1作用極76の内径):2mm、 第1
作用極76の外径:5mm(すなわち、第1作用極76
の幅1.5mm)、 第1作用極76と第2作用極78
との間隙:1.5mm、 第2作用極78の外径:11
mm(すなわち、第2作用極78の幅1.5mm) <電極部60g> 貫通孔68(第1作用極76の内径):2mm、 第1
作用極76の外径:4mm(すなわち、第1作用極76
の幅1mm)、 第1作用極76と第2作用極78との
間隙:0.5mm、 第2作用極78の外径:6mm
(すなわち、第2作用極78の幅0.5mm) 表面の対極(参照極)の内径:2.5mm、対極(参照
極)の外径:6mm
【0149】作製した各電極部60について、第1作用
極76、第2作用極78および対極70が電気的に独立
しており、また、それぞれに対応する端子76a、端子
78aおよび端子70aに電気的に接続されていること
を確認した。
【0150】また、対極70に関しては、上述の銀ペー
スト電極をそのまま使用するか、あるいは、0.1M塩
化ナトリウム水溶液中で電解反応(+1.0V vs銀
/塩化銀電極)を10分間行うことにより、表面に塩化
銀層を形成させてから、対極(参照極)として使用し
た。
【0151】[実施例1] hCG特異結合分析装置における複数検出部の電流応答
【0152】<1>抗hCGβ抗体と西洋ワサビパーオ
キシダーゼとの結合体(標識抗体)の作製 hCGのβ鎖を認識するマウス単クローン性抗体HM8
1(持田製薬社製)を100mM 塩化ナトリウム−1
mM EDTA−60mM トリエタノールアミン緩衝
液(pH8.0)(TEA緩衝液)に7.7mg/mL
濃度となるように溶解し、窒素ガス置換したTEA緩衝
液に十分に透析した。この抗体溶液2.8mLに対し
て、TEA緩衝液中に調製した50mMの2−イミノチ
オラン塩酸塩(Pierce社製)溶液143μLを添加し、
撹拌後、窒素ガス雰囲気下、4℃で1.5時間静置し
た。その後、窒素ガス置換した100mM 塩化ナトリ
ウム−1mM EDTA−100mM リン酸緩衝液
(pH6.0)(EDTA−PB)で十分に透析し、S
H基が導入された抗hCGβ抗体HM81を得た。ED
TA−PBで20mg/mL濃度に調製された西洋ワサ
ビパーオキシダーゼ(HRPO,東洋紡社製)溶液50
0μLを30℃でゆっくり撹拌しながら、100mMリ
ン酸緩衝液(pH7.0)中に調製した50mMのスル
ホSMCC(Pierce社製)500μLを添加して20分
間反応させた。反応後、窒素ガス置換したEDTA−P
Bで平衡化したSephadexG−25(ファルマシ
ア社製)カラム(2.6φ×15cm)を通して未反応
のスルホSMCCを除去し、濃縮器CENTRIPRE
P−10(Amicon社製)を用いて濃縮し、マレイミド化
HRPOを得た。得られたマレイミド化HRPOの濃度
は、403nmの吸光度から求めた。3.66×10-7
モルのマレイミド化HRPO溶液に対して、1/5倍モ
ル量のSH基導入HM81抗体を添加混合後、窒素ガス
雰囲気下、4℃にて12時間反応させた。次いで、ED
TA−PB中に調製した500mMのシステアミン溶液
129μLを添加し、窒素ガス雰囲気下、4℃にて60
分間反応させ、その後、窒素ガス置換したEDTA−P
Bで平衡化したULTROGEL AcA34(IBF
Biotechnics 社製)カラムを用いてゲルろ過クロマト
グラフィーを行った。280nmおよび403nmにお
ける吸光度測定を、ゲルろ過クロマトグラフィーの溶出
分画について行い、遊離の酵素を含まないHM81とH
RPOとの結合体の分画を集めて濃縮した。濃縮標品
(HRPO−HM81と称す)は、Phastシステム
による電気泳動(ファルマシア社製)で分子量を確認
後、吸光度と酵素活性から含有される抗体および酵素量
を決定し、後記する測定において信号物質発生体として
用いた。
【0153】<2>第1含浸部54(信号物質発生体含
浸部=西洋わさびパ−オキシダ−ゼ標識抗hCGβ抗体
を含浸させた乾燥体)の作製 前記<1>で作製した西洋わさびパ−オキシダ−ゼ標識
抗hCGβ抗体を0.01%Amisoft LS−1
1(味の素社製)−5%正常ウサギ血清(NRS)−1
0%サッカロ−ス/0.1M NaCl含有0.1Mリ
ン酸緩衝液pH6.0にて希釈した溶液を調製した。次
いで、ガラス繊維濾紙(GA100、アドバンテック東
洋社製)からパンチングして作製した直径12mmの円
形濾紙に上記溶液を140μl点着し、凍結乾燥を行
い、第1含浸部54(信号物質発生体含浸部)を作製し
た。
【0154】<3>第2含浸部56(電子メディエータ
含浸部=N,N,N´,N´−テトラキス−(2´−ヒ
ドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン2塩酸塩
(THEPD)を含浸させた乾燥体)の作製 THEPDを0.01%Tween20−0.1M N
aCl含有0.1Mリン酸緩衝液 pH 6.0に溶解
し、5.0mMのTHEPD溶液を調製した。次いで、
ガラス繊維濾紙(GA100、アドバンテック東洋社
製)からパンチングして作製した直径12mmの円形濾
紙に上記溶液を140μl点着し、凍結乾燥を行い、第
2含浸部56(電子メディエータ含浸部)を作製した。
【0155】<4>吸収部64(過酸化水素・尿素を含
浸させた乾燥体)の作製 過酸化水素および尿素(共に和光純薬工業製)を蒸留水
に溶解し、3.0M過酸化水素−3.0M尿素溶液を調
製した。次いで、クロマトグラフ濾紙(17Chr、Wh
atman 社製)からパンチングして作製した直径12mm
の円形ろ紙に上記溶液を120μl点着し、凍結乾燥を
行い、吸収部64(過酸化水素−尿素の乾燥体)を作製
した。従って、この吸収部は、信号物質の発生に関与す
る物質である酵素基質(過酸化水素)の存在部を兼ねて
いる。
【0156】<5>抗体不溶化流路62(抗体不溶化メ
ンブレン=抗hCGα抗体不溶化多孔性セルロース混合
エステル膜)の作製 0.45%塩化ナトリウム−0.076Mリン酸緩衝液
(PBS)に、ウシγグロブリン(製品コードG751
6、シグマ社製)を1.0%(W/V)濃度で溶解した
溶液200mLを入れたビーカー中に、ポアサイズ8.
0μm、直径13mmの円形の酢酸セルロース/硝酸セ
ルロース混合エステル多孔性膜(カタログ番号SCWP
01300、日本ミリポア工業株式会社製)200枚を
入れ、ゆっくり撹拌しながら60℃で2時間加熱した。
上澄みを除去し、さらに残液を吸引除去した後、洗浄液
として十分量のPBSを加えてよく撹拌し、再度内容液
を除去して洗浄を行った。PBSの洗浄をさらに2回行
い、その後、蒸留水での洗浄を7回繰り返した。洗浄終
了後、1.0% グルタルアルデヒド水溶液200mL
を添加し、ゆっくり撹拌しながら25℃で3時間反応さ
せた。反応後、蒸留水で10回洗浄を行い、ガラス板の
上に多孔性膜を1枚ずつ並べて乾燥した。hCGのα鎖
を認識するマウス単クローン性抗体HM21(持田製薬
社製)を0.05M炭酸水素ナトリウム−0.05M塩
化ナトリウム水溶液に溶解して1.0mg/mL濃度に
調製した。この溶液を、ガラス板上で乾燥させた多孔性
膜(13mmφ)当たり25μLを中央部分から浸潤さ
せた。室温で1時間反応させた後、多孔性膜を0.2%
ウシ血清アルブミン(BSA)/PBS溶液200mL
に移し、振とう撹拌しながら、4℃で2日間ブロッキン
グ反応した。その後、0.1%Tween20/PBS
溶液で3回洗浄し、さらにPBSで7回洗浄した。次い
で、4%マンニトール−0.01%Tween20/P
BSに室温にて30min浸漬した後、シャーレ上で減
圧乾燥を行い、抗体不溶化流路62(抗hCGα抗体不
溶化多孔性セルロース混合エステル膜)を得た。
【0157】<6>特異結合分析装置の作製 このようにして作製した各部位、および先に作製した電
極部60a〜fを用い、下記のようにして、図2および
図3に示される特異結合分析装置を各種作製した。ま
ず、アクリル製の下部基板66上に吸収部64(過酸化
水素・尿素を含浸させた乾燥体)を積層した。なお、吸
収部中央には、メンディングテープ(住友スリーエム株
式会社製)からパンチングして作製した直径6mmのシ
ールを貼り付けた。次いで、抗体不溶化流路62(抗h
CGα抗体不溶化多孔性セルロース混合エステル膜)を
シール部64aを有する吸水部64上に中心位置を合わ
せて重積した。さらに、電極部60を貫通孔68の中心
を抗体不溶化流路62の中心と一致して、作用極側を下
にして電極部60を積層し、ガラス繊維ろ紙(GA5
5、アドバンテック東洋株式会社製)からパンチングし
て作製した直径2mmもしくは3mmの円形ろ紙を、電
極の貫通孔にはめ込んで連通部58とした。次に、第2
含浸部56(電子メディエータ含浸部)を、その中心が
電極の貫通孔の中心と一致するように重積した。この第
2含浸部56の上部表面中央に、メンディングテープか
らパンチングして作製した直径6mmのシールを貼り付
けた。その上に、第1含浸部54(信号物質発生体含浸
部)を重積した。さらにその上に、界面活性剤処理をし
たエルタス(カタログ番号A05070、旭化成社製)
からパンチングして作製した直径12mmの円形部材を
重積してフィルター部52とした。その上に、直径6m
mの試料導入口50aを有するアクリル製の上部カバー
50を、その試料導入口50aの中心が貫通孔68の中
心と一致するように上乗せし、上部カバー50と下部基
板66の四隅のネジ孔を合わせネジ留めして、電極部6
0a〜fのそれぞれを使用した、図2および3に示され
るような、hCG濃度測定用の特異結合分析装置を6種
作製した。
【0158】<7>各装置を用いたhCG測定 このようにして作製した各種の特異結合分析装置を用
い、対極70(銀ペースト環状電極)を対極・参照極と
し、第1作用極76(検出部1) あるいは第2作用極7
8(検出部2) と対極70の各端子とをポテンショスタ
ットHA−150(北斗電工株式会社製)に接続した。
また、ポテンショスタットにXY記録計および電極電位
設定のためのファンクションジェネレーターHB−10
4(北斗電工株式会社製)を接続し、記録計からGPI
Bラインを通じてコンピュータへ接続し、計測およびデ
ータ処理を行った。0.1%ウシ血清アルブミン−0.
1M NaCl含有0.1Mリン酸緩衝液pH 6.0
に標準hCGを添加してそれぞれ、hCG 0IU/
L、およびhCG1000IU/Lの試料液を調製し
た。各試料液を250μl、各特異結合分析装置に上部
カバー50の試料導入口50aを通じて導入した。試料
導入後、各作用極を対極・参照極に対して−150mV
となるように電位設定し、電流値をそれぞれ個別に記録
した。
【0159】<8>結果 図7に電極部60aを用いて作製した特異結合分析装置
による測定結果を、以下同様にして、図8に電極部60
b、図9に電極部60c、図10に電極部60d、図1
1に電極部60e、および図12に電極部60fを用い
て作製した特異結合分析装置による測定結果を、それぞ
れ示す。なお、測定結果は、いずれも液性試料導入後、
4分後の電流値で、第1作用極76で測定された電流値
をI1 、第2作用極78で測定された電流値をI2 とし
た。図7〜図12に示されるように、第1作用極76や
第2作用極78のサイズが異なる場合であっても、複数
の作用極(検出部)を有する電極部60を用いた装置の
いずれにおいても、hCG濃度に依存して電流値が変化
した。これは、信号物質発生体(酵素標識抗体)の流路
内の分布が、分析対象物であるhCG濃度に応じて変化
していること、そして、いずれの複数検出部も、信号物
質の拡散に律速された電流信号の変調としてこの信号物
質発生体の分布の変化を検出していることを示してい
る。
【0160】[実施例2] 特異結合分析装置を用いたhCG濃度の測定
【0161】<1>界面活性剤(Tween20)処理
ガラス繊維濾紙の作製 ガラス繊維濾紙(GA100、アドバンテック東洋社
製)を0.2%Tween20(和光純薬工業社製)水
溶液に浸漬させ、室温にて一晩静置した。その後、蒸留
水にて10回洗浄し、次いで、オーブン(80℃)にて
乾燥させ界面活性剤(Tween20)処理ガラス繊維
濾紙を作製した。
【0162】<2>第1含浸部54(信号物質発生体含
浸部=西洋わさびパ−オキシダ−ゼ標識抗hCGβ抗体
を含浸させた乾燥体)の作製 前記実施例1の<1>で作製した西洋わさびパ−オキシ
ダ−ゼ標識抗hCGβ抗体を5%正常ウサギ血清(NR
S)−10%サッカロ−ス/0.1M NaCl含有
0.1Mリン酸緩衝液pH6.0にて希釈した溶液を調
製した。この溶液を、先に<1>で作製したTween
20処理ガラス繊維濾紙からパンチングして作製した直
径12mmの円形濾紙に上記溶液を140μl点着し、
凍結乾燥を行い、第1含浸部54(信号物質発生体含浸
部)を作製した。
【0163】<3>第2含浸部56(電子メディエータ
含浸部=N,N,N´,N´−テトラキス−(2´−ヒ
ドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン2塩酸塩
(THEPD))を含浸させた乾燥体)の作製 THEPDを0.1M NaCl含有0.1Mリン酸緩
衝液 pH 6.0に溶解し、5.0mMのTHEPD
溶液を調製した。この溶液を、先に<1>で作製したT
ween20処理ガラス繊維濾紙からパンチングして作
製した直径12mmの円形濾紙に上記溶液を140μl
点着して凍結乾燥を行い、第2含浸部56(電子メディ
エータ含浸部)を作製した。
【0164】<4>吸収部64(過酸化水素および尿素
を含浸させた乾燥体)の作製 過酸化水素(和光純薬工業製)および尿素(和光純薬工
業製)を蒸留水に溶解し、1.0M過酸化水素−1.0
M尿素溶液を調製した。次いで、クロマトグラフ濾紙
(17 Chr、Whatman 社製)からパンチングして作
製した直径12mmの円形ろ紙に上記溶液を120μl
点着して凍結乾燥を行い、吸収部64(過酸化水素−尿
素の乾燥体)を作製した。
【0165】<5>抗体不溶化流路62(抗体不溶化メ
ンブレン=抗hCG抗体不溶化多孔性ニトロセルロース
膜)の作製 実施例1<5>に記載した方法に準じて、hCGを認識
するウサギ多クローン性抗体SE030(持田製薬社
製)をポアサイズ5μmのニトロセルロース膜(アドバ
ンテック東洋社製)に不溶化し、抗体不溶化流路62と
した。
【0166】<6>特異結合分析装置の作製 このようにして作製した各部位を用い、下記のようにし
て、図2および図3に示される特異結合分析装置を各種
作製した。まず、アクリル製の下部基板66上に吸収部
64(過酸化水素・尿素を含浸させた乾燥体)を積層し
た。なお、吸収部中央には、メンディングテープ(住友
スリーエム株式会社製)からパンチングして作製した直
径6mmのシールを貼り付けた。次いで、抗体不溶化流
路62(抗hCG抗体(SE030)不溶化多孔性ニト
ロセルロース膜)をシール部64aを有する吸水部ろ紙
の上に中心位置を合わせて重積した。さらに、電極部6
0aを貫通孔68の中心を抗体不溶化流路62の中心と
一致して、作用極側を下にして電極部60を積層し、ガ
ラス繊維ろ紙(GA55、アドバンテック東洋株式会社
製)からパンチングして作製した直径3mmの円形ろ紙
を、電極の貫通孔にはめ込んで連通部58とした。次
に、第2含浸部56(電子メディエータ含浸部)を、そ
の中心が電極の貫通孔の中心と一致するように重積し
た。この第2含浸部56の上部表面中央に、メンディン
グテープからパンチングして作製した直径6mmのシー
ルを貼り付けた。その上に、第1含浸部54(信号物質
発生体含浸部)を重積した。さらにその上に、界面活性
剤処理をしたエルタス(カタログ番号A05070、旭
化成社製)からパンチングして作製した直径12mmの
円形部材を重積してフィルター部52とした。その上
に、直径6mmの試料導入口50aを有するアクリル製
の上部カバー50を、その試料導入口50aの中心が貫
通孔68の中心と一致するように上乗せし、上部カバー
50と下部基板66の四隅のネジ孔を合わせネジ留めし
て図2および3に示されるような、hCG濃度測定用の
特異結合分析装置を作製した。
【0167】<7>ヘパリン血漿中でのhCG測定 このようにして作製した特異結合分析装置の電極部60
aにおいて、対極70を対極・参照極としてその端子7
0aを2チャンネル同時測定用のμ―PGS10ポテン
ショスタット/ガルバノスタット(Teknologue社製)の
対極(参照極)端子に接続し、同機器のチャンネル1お
よびチャンネル2の作用極端子に、それぞれ第1作用極
76(検出部1) および第2作用極78(検出部2)の
端子76aおよび78aをそれぞれ接続した。そして、
同機器からGPIBラインを通じてコンピュータに接続
し、計測およびデータ処理を行った。他方、ヘパリン添
加健常男性血漿3検体(A)、(B)および(C)を用
い、標準hCGを添加してそれぞれ、hCG 600I
U/L、hCG 700IU/LおよびhCG 900
IU/Lのヘパリン血漿検体を調製した。このようにし
て調製したhCGを含む各ヘパリン血漿検体を、特異結
合分析装置の上部カバー50の試料導入口50aを通じ
て、それぞれ250μlずつ分析装置に導入した。試料
導入後、各作用極を対極・参照極に対して−150mV
となるように電位設定し、電流値を記録した。
【0168】<8>結果1. 複数検出部の電流値から
hCG濃度を算出する内部関係式の導出 3種のヘパリン血漿検体(A)、(B)および(C)を
用いて調製した各濃度のhCG溶液を導入した際の第1
作用極76および第2作用極78で測定された電流値の
6〜8分間の平均値(それぞれI1 およびI2 )を図1
3に示す。また、各hCG濃度でのI1 に対するI2
関係を図14に示す。図14に示されるように各hCG
濃度におけるI1 に対するI2 には直線関係が認められ
たため、その血漿検体間の直線回帰式を求めた。下記表
4に得られた直線回帰式を示す。
【0169】
【0170】この場合、切片はhCG濃度にほとんど依
存せず(ほぼ−8.8×10-1)、傾きがhCG濃度に
依存していた。I1 に対するI2 の関係は下記の1式で
表される。なお、式中Sは、上表の傾きであり、これが
hCG濃度の関数である。 I2 =SI1 −8.8×10-1 1式
【0171】以上の結果より、図15に示すようにhC
G濃度Cと1式の傾きS間に直線関係を仮定し、その直
線回帰式(下記2式)を求めて、hCG濃度(C)に対
する傾き(S)の関係を導いた。 S=1.36×10-3C−0.95 2式 2式(CとSの関係式)を1式(I1 とI2 の関係式)
に代入して、I1 およびI2 の複数検出部の電流値から
hCG濃度を求める内部関係式(3式)を導いた。
【0172】(9)結果2. 単数検出部からhCG濃
度を算出する関係式の導出(対照実験) 単数作用極系の場合、つまり抗hCG抗体不溶化多孔性
ニトロセルロース膜内での特異結合反応の分布を1カ所
の検出部だけで測定しhCGを定量した場合に算出され
る各検体のhCG濃度を求めた。すなわち、I1 のみで
hCGを定量する場合、hCG濃度に対するI1 の関係
は図16に示すように直線関係が認められたため、直線
回帰を行い、この回帰式を基にして単数検出部の電流値
1 からhCG濃度を求める関係式(下記4式)を導い
た。
【0173】(10)結果3. 結果1と結果2の比較 複数検出部測定および単数検出部測定から導出された関
係式(上記3式および4式)にそれぞれの電流値を代入
し、hCG濃度を算出して比較した。結果を下記表5に
示す。
【0174】
【0175】この結果から、両測定間の各hCG濃度の
平均値およびCV値を比較した。結果を下記表6に示
す。
【0176】 上記表6に示されるように、単数検出部測定で得られた
1 のみを用いてhCGの定量を行った場合には検体中
の夾雑物の影響を反映してそのCV値は大きかった。そ
れに比して、複数検出部測定で得られたI1 およびI2
を用いてhCGの定量を行った場合には、それぞれCV
値(変動係数)が12%以下であり検体間の測定誤差要
因に対する補正効果が明瞭に認められた。従って、同じ
分析操作でも、複数検出部を用いた分析方法は、単数検
出部を用いた分析方法に比べて著しく測定精度が向上し
た。
【0177】[実施例3] 特異結合分析装置を用いたhCG濃度の測定
【0178】<1>第1含浸部54(信号物質発生体−
電子メディエータ含浸部=西洋わさびパ−オキシダ−ゼ
標識抗hCGβ抗体およびN,N,N´,N´−テトラ
キス−(2´−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジ
アミン2塩酸塩(THEPD)を含浸させた乾燥体)の
作製 前記実施例1の<1>で作製した西洋わさびパ−オキシ
ダ−ゼ標識抗hCGβ抗体およびTHEPD(最終濃度
5mM)を、5%正常ウサギ血清(NRS)−10%サ
ッカロ−ス/0.1M NaCl含有0.1Mリン酸緩
衝液 pH6.0にて希釈した溶液を調製した。次い
で、前記実施例2の<1>で作製したTween20処
理ガラス繊維濾紙からパンチングして作製した直径12
mmの円形濾紙に、上記溶液を140μl点着して凍結
乾燥を行い、第1含浸部54(信号物質発生体−電子メ
ディエータ含浸部)を作製した。
【0179】<2>吸収部64(過酸化水素・尿素を含
浸させた乾燥体)の作製 クロマトグラフ濾紙(17 Chr、Whatman 社製)か
らパンチングして作製した直径12mmの円形ろ紙に、
前記実施例2の<4>で作製した1.0M過酸化水素−
1.0M尿素溶液を100μl点着し、凍結乾燥を行
い、過酸化水素−尿素の乾燥体を作製した。
【0180】<3>特異結合分析装置の作製 このようにして作製した各部位を用い、下記のようにし
て、図2および図3に示される特異結合分析装置を各種
作製した。まず、アクリル製の下部基板66上に吸収部
64(過酸化水素・尿素を含浸させた乾燥体)を積層し
た。なお、吸収部中央には、メンディングテープ(住友
スリーエム株式会社製)からパンチングして作製した直
径6mmのシールを貼り付けた。次いで、前記実施例2
の<5>で作製した抗体不溶化流路62(抗hCG抗体
(SE030)不溶化多孔性ニトロセルロース膜)をシ
ール部64aを有する吸水部ろ紙の上に中心位置を合わ
せて重積した。さらに、[電極部の作製]の項で作製し
た電極部60aを貫通孔68の中心を抗体不溶化流路6
2の中心と一致して、作用極側を下にして電極部60a
を積層し、ガラス繊維ろ紙(GA55、アドバンテック
東洋株式会社製)からパンチングして作製した直径3m
mの円形ろ紙を、電極の貫通孔にはめ込んで連通部58
とした。次に、実施例2の<1>で作製した界面活性剤
(Tween20)処理ガラス繊維濾紙を、その中心が
電極の貫通孔の中心と一致するように重積し第2含浸部
56とした。この第2含浸部56の上部表面中央に、メ
ンディングテープからパンチングして作製した直径6m
mのシールを貼り付けた。その上に、第1含浸部54
(信号物質発生体−電子メディエータ含浸部)を重積し
た。さらにその上に、界面活性剤処理をしたエルタス
(カタログ番号A05070、旭化成社製)からパンチ
ングして作製した直径12mmの円形部材を重積してフ
ィルター部52とした。その上に、直径6mmの試料導
入口50aを有するアクリル製の上部カバー50を、そ
の試料導入口50aの中心が貫通孔68の中心と一致す
るように上乗せし、上部カバー50と下部基板66の四
隅のネジ孔を合わせネジ留めして図2および3に示され
るような、hCG濃度測定用の特異結合分析装置を作製
した。
【0181】<4>ヘパリン血漿中でのhCG測定 このようにして作製した特異結合分析装置の電極部60
aにおいて、対極70を対極(参照極)として2チャン
ネル同時測定用のμ―PGS10 ポテンショスタット
/ガルバノスタット(Teknologue社製)の参照極端子お
よび対極(参照極)端子に接続し、同機器のチャンネル
1およびチャンネル2の作用極端子に、それぞれ第1作
用極76(検出部1)および第2作用極78(検出部
2)の端子76aおよび78aを接続した。そして、同
機器からGPIBラインを通じてコンピュータに接続
し、計測およびデータ処理を行った。他方、ヘパリン添
加健常男性血漿3検体(A)、(B)および(C)を用
い、標準hCGを添加してそれぞれ、hCG 50IU
/L、hCG 100IU/LおよびhCG 200I
U/Lのヘパリン血漿検体を調製した。このようにして
調製したhCGを含む各ヘパリン血漿検体を、特異結合
分析装置の上面カバー50の試料導入口50aを通じ
て、それぞれ250μlずつ分析装置に導入した。試料
導入後、各作用極を対極・参照極に対して−150mV
となるように電位設定し、電流値を記録した。
【0182】<5>結果1. 複数検出部からhCG濃
度を算出する内部関係式の導出1 ヘパリン血漿3検体(A)、(B)および(C)を用い
て調製した各濃度のhCG溶液を点着した際の第1作用
極76および第2作用極78で測定された電流値の8〜
10分間の平均値(I1 およびI2 )を図17に示す。
さらに、各hCG濃度でのI1 からI2 を差し引いた内
部パラメーター(P=I1-I2 )の関係を図18に示
す。各検体での各hCG濃度 (C)に対するPとの相
関から、内部パラメーターPとhCG濃度Cとの関係式
を求めた(下記5式)。 P=5.99×10-62 −3.52×10-3C−7.59×10-2 5式 この式5からhCG濃度(C)を求める内部関係式を導
いた(下記6式)。
【0183】<6>結果2. 単数検出部からhCG濃
度を算出する関係式の導出1(対照実験) 単数作用極系で抗体不溶化流路62(抗hCG抗体不溶
化多孔性ニトロセルロース膜内)での特異結合反応の分
布を測定しhCGを定量した場合(I1 もしくはI2
みでhCGを定量)に算出される各検体のhCG濃度
(C)を求めた。ここでは、I1 のみでhCGを定量す
る場合はhCG濃度に対するI1 の相関(図19)か
ら、I2 のみでhCGを定量する場合はhCG濃度に対
するI2 の相関(図20)からhCG濃度(C)を算出
する関係式を求めた。(7式および8式)。I1 のみで
hCGを定量する場合 2 のみでhCGを定量する場合
【0184】複数検出部測定および単数検出部測定から
導出された関係式(6式、7式および8式)にそれぞれ
の電流値を代入してhCG濃度を算出し、各測定間のh
CG濃度の平均値およびCV値を比較した。結果を下記
表7に示す。 上記表7に示されるように、単数検出部測定で得られた
1 およびI2 単独の値を用いてhCGの定量を行った
場合、CV値はかなり大きく検体間の測定誤差要因を補
正できておらず、測定値には全く信頼性がなかった。そ
れに比して、複数検出部測定で得られたI1 およびI2
両者を用いてhCGの定量を行った場合には、分析操作
は同じであるにもかかわらず、各hCG濃度の読み値の
CV値が顕著に減少し、充分な補正効果が示された。
【0185】<7>結果3. 複数検出部からhCG濃
度を算出する内部関係式の導出2 前述のヘパリン血漿3検体(A)、(B)、および
(C)を用いて調製した各濃度のhCG溶液の測定にお
いて、第1作用極76および第2作用極78で測定され
た8〜10分間の電流値の平均(I1 およびI2 )よ
り、電流密度(電流値/各電極面積(μA/cm2 ))
の平均値D1 およびD2 を求めた。各hCG濃度でのD
1 からバックグラウンド(−1.5μA/cm2 )を差
し引いた値を、D2 からバックグラウンド(−0.2μ
A/cm2 )を差し引いた値で割り、さらにその値から
定数1.3を差し引いた内部パラメータQと、hCG濃
度との関係を図21に示す。図21に示される各hCG
の濃度(C)に対する Q=[(D1 +1.5)/(D2 +0.2)]−1.3 との相関から、hCG濃度を算出する内部関係式を求め
た(9式)。
【0186】<8>結果4. 単数検出部からhCG濃
度を算出する関係式の導出2. 単数検出部で同様に測定を行い、hCGを定量した場合
(D1 もしくはD2 のみでhCGを定量)に算出される
各検体のhCG濃度(C)を求めた。ここで、D1 のみ
でhCGを定量する場合はhCG濃度に対するD1 の相
関から、D2 のみでhCGを定量する場合はhCG濃度
に対するD2 の相関からhCG濃度(C)を算出する関
係式を求めた(下記10式および11式)。 D1 のみでhCGを定量する場合 2 のみでhCGを定量する場合
【0187】複数検出部測定および単数検出部測定から
導出された関係式(9式、10式および11式)にそれ
ぞれの電流密度を代入し、hCG濃度を算出し、各測定
間の各hCG濃度の平均値およびCV値を比較した。結
果を下記表8に示す
【0188】
【0189】上記表8に示されるように、内部関係式9
式を用いたhCGの定量(複数検出部)は、内部関係式
6式を用いた場合(表7)と同様に、単数検出部測定に
対し明らかな補正効果を示し、これらの式によって検体
中の莢雑物質の影響が補正されることが明かとなった。
【0190】[実施例4]第1含浸部54(信号物質発
生体−電子メディエータ含浸部)として、西洋わさびパ
−オキシダ−ゼ標識抗hCGβ抗体の失活度が異なる3
種のもの(A)、(B)および(C)を用いた以外は、
前記実施例3と全く同様にして特異結合分析装置(特異
結合分析装置(A)、(B)および(C)とする)を3
種作製し、実施例3と同様にヘパリン血漿中のhCG測
定(hCG 200IU/LおよびhCG 400IU
/L)を行った。
【0191】<結果>パーオキシダーゼ活性の失活度が
異なる西洋わさびパーオキシダーゼ抗hCGβ抗体を含
浸した第1含浸部54を用いた特異結合分析装置
(A)、(B)および(C)による測定結果より、前記
実施例3の<7>および<8>と同様に、電流密度の4
〜5分間の平均値D1 およびD2 を求めて、複数検出部
測定および単数極検出部測定(D1 )から導出された関
係式にそれぞれ代入し、hCG濃度を算出した。結果を
下記表9に示す。
【0192】 以上のように、複数検出部測定から導出された内部関係
式を用いて、酵素標識抗体の酵素の失活を補正できた。
【0193】[実施例5]前記実施例3と同様の特異結
合分析装置を作製し、これをConstantTemp
erature Testing Chambers
modelIV21(ヤマト科学社製)内で測定を行
い、25℃および40℃でのヘパリン血漿中のhCG測
定(hCG 400IU/L)を行った。
【0194】前記実施例3の<7>および<8>と同様
に、電流密度の4〜5分間の平均値D1 およびD2 を求
めて、複数検出部測定および単数極検出部測定(D1
から導出された関係式にそれぞれ代入し、hCG濃度を
算出した。結果を下記表10に示す。
【0195】 以上のように、複数検出部測定から導出された内部関係
式を用いて、温度による効果を補正できた。
【0196】[実施例6] 特異結合分析装置を用いた全血中のhCG濃度の測定
【0197】<1>第1含浸部54(信号物質発生体−
電子メディエータ含浸部=西洋わさびパ−オキシダ−ゼ
標識抗hCGβ抗体およびN,N,N´,N´−テトラ
キス−(2´−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジ
アミン2塩酸塩(THEPD)を含浸させた乾燥体)の
作製 前記実施例1の<1>で作製した西洋わさびパ−オキシ
ダ−ゼ標識抗hCGβ抗体およびTHEPD(最終濃度
2mM)を、5%正常ウサギ血清(NRS)−10%サ
ッカロ−ス/0.1M NaCl含有0.1Mリン酸緩
衝液 pH6.0にて希釈した溶液を調製した。次い
で、前記実施例2の<1>で作製したTween20処
理ガラス繊維濾紙からパンチングして作製した直径12
mmの円形濾紙に、上記溶液を140μl点着して凍結
乾燥を行い、第1含浸部54(信号物質発生体−電子メ
ディエータ含浸部)を作製した。
【0198】<2>第2含浸部56(緩衝液成分含浸部
=0.1M NaCl含有0.1Mリン酸緩衝液 pH
6.0を含浸させた乾燥体)の作製 0.1M NaCl含有0.1Mリン酸緩衝液 pH
6.0を調製し、前記実施例2の<1>で作製したTw
een20処理ガラス繊維濾紙からパンチングして作製
した直径12mmの円形濾紙に上記溶液を140μl点
着し、凍結乾燥を行い、緩衝液成分の乾燥体を作製し
た。
【0199】<3>抗体不溶化流路62(抗体不溶化メ
ンブレン=抗hCG抗体不溶化多孔性セルロース混合エ
ステル膜)の作製 hCGを認識するウサギ多クローン性抗体SE030
(持田製薬社製)をPBSに溶解して6.4mg/mL
濃度に調製した溶液30μlを、シャーレ上にて、ポア
サイズ8.0μmのセルロース混合エステル多孔性膜
(カタログ番号SCWP0190R、日本ミリポア社
製)からパンチングして作製した直径16mmの円形多
孔性膜に中央部分から浸潤させた。デシケータ内で室温
で2時間乾燥後、直径13mmのサイズにパンチング
し、抗体不溶化流路62(抗hCG抗体(SE030)
不溶化多孔性セルロース混合エステル膜)を作製した。
【0200】<4>特異結合分析装置の作製 このようにして作製した各部位を用い、下記のようにし
て、図2および図3に示される特異結合分析装置を各種
作製した。まず、アクリル製の下部基板66上に前記実
施例3で作製した吸収部64(過酸化水素・尿素を含浸
させた乾燥体)を積層した。なお、吸収部中央には、メ
ンディングテープ(住友スリーエム株式会社製)からパ
ンチングして作製した直径8mmのシールを貼り付け
た。次いで、抗体不溶化流路62(抗hCG抗体(SE
030)不溶化多孔性ニトロセルロース膜)をシール部
64aを有する吸水部ろ紙の上に中心位置を合わせて重
積した。さらに、電極部60aを貫通孔68の中心を抗
体不溶化流路62の中心と一致して、作用極側を下にし
て、電極部60aを積層し、ガラス繊維ろ紙(GA5
5、アドバンテック東洋株式会社製)からパンチングし
て作製した直径3mmの円形ろ紙を、電極の貫通孔には
め込んで連通部58とした。次に、第2含浸部56(緩
衝液成分含浸部)を、その中心が電極の貫通孔の中心と
一致するように重積した。この第2含浸部56の上部表
面中央に、メンディングテープからパンチングして作製
した直径6mmのシールを貼り付けた。その上に、第1
含浸部54(信号物質発生体−電子メディエータ含浸
部)を重積した。さらにその上に、界面活性剤処理をし
たエルタス(カタログ番号A05070、旭化成社製)
からパンチングして作製した直径12mmの円形部材を
重積してフィルター部52とした。その上に、直径6m
mの試料導入口50aを有するアクリル製の上部カバー
50を、その試料導入口50aの中心が貫通孔68の中
心と一致するように上乗せし、上部カバー50と下部基
板66の四隅のネジ孔を合わせネジ留めして図2および
3に示されるような、hCG濃度測定用の特異結合分析
装置を作製した。
【0201】<5>ヘパリン全血中でのhCG測定 このようにして作製した特異結合分析装置の電極部60
aにおいて、対極70を対極・参照極として電流計測回
路の対極(参照極)端子に接続し、同回路のチャンネル
1およびチャンネル2の作用極端子に、それぞれ第1作
用極76(検出部1) および第2作用極78(検出部
2) の端子76aおよび78aを接続した。そして、同
回路からナショナルインスツルメンツ社製のデータ集録
ボードAT−MIO−16Xを通じてコンピュータ内に
データを取り込み解析を行った。ベノジェクトII真空採
血管(テルモ社製)にて採血したヘパリン添加健常男性
全血4検体(A)、(B)、(C)および(D)に標準
hCGを添加して検体(A)については、hCG 50
IU/L、およびhCG 100IU/L、検体(B)
および(C)については、hCG 25IU/L、hC
G 50IU/L、およびhCG 75IU/L、そし
て検体(D)についてはhCG 50IU/Lのヘパリ
ン全血検体を調製した。hCGを含む各ヘパリン全血検
体をそれぞれ、特異結合分析装置の上面カバー50板の
試料導入口50aを通じて、試料導入部に250μl導
入した。試料導入後、各作用極を対極・参照極に対して
−150mVとなるように電位設定し、電流値を記録し
た。
【0202】<6>マイクロタイタープレートを用いた
酵素免疫測定による各血液検体中のhCG濃度測定 全血にhCGを添加した場合、hCGは血漿成分に溶解
していると考えられるため、hCG添加濃度と実濃度と
は異なり、ヘマトクリット値による補正が必要である。
そこで、全血にhCGを添加した全血検体の血漿分離を
行い、血漿成分中に存在しているhCGを以下に示す酵
素免疫測定法により定量しhCGの実濃度とした。NU
NC−IMMUNO PLATE(NUNC社製)にP
BSで10μg/mLに調製したhCGを認識するウサ
ギ多クローン性抗体SE030を50μL加え、56℃
で30minインキュベイトした。イオン交換水で洗浄
後、PBSで0.5%に調製したBSA溶液を100μ
L加え、室温で1.5時間インキュベイトしてブロッキ
ングを行った。BSA溶液を除去した後、ヘパリン血漿
で0、10、20、50、100、および200IU/
Lに希釈した標準hCG検体、およびhCG添加全血検
体から遠心分離操作で得られたヘパリン血漿検体を50
μL加え、室温にて1時間反応させた。反応後、洗浄液
で5回、イオン交換水で2回洗浄した後、0.1%BS
A−0.1M NaCl含有 0.1Mリン酸緩衝液
pH6.0にて希釈した西洋わさびパ−オキシダ−ゼ標
識抗hCGβ抗体(HRPO−HM81)を50μL添
加し、室温で1時間反応させた。反応後、洗浄液で5
回、イオン交換水で2回洗浄した後、TMB Solu
ble Reagent(Scy Tck社製)を50
μL添加し、酵素反応による呈色反応を15min行っ
た。次いで、TMB Stop Buffer(Scy
Tck社製)を100μL加え、酵素反応を停止し
た。その後、分光光度計ETY96(東洋測器社製)に
て吸光度を測定し、標準hCGのスタンダードカーブか
ら各ヘパリン血漿中のhCG実濃度を求めた。
【0203】<7>結果. 複数検出部からhCG濃度
を算出する内部関係式の導出 ヘパリン全血検体(A)を用いて調製した各実濃度のh
CG溶液を点着した際の第1作用極76および第2作用
極78で測定された10〜12分間の電流値の平均値I
1 およびI2 から、電流密度の平均値(D1 および
2 )を算出した。hCG実濃度と電流密度との関係を
図22に示す。また、各hCG濃度でのD1 からバック
グラウンド値(−23μA/cm2 )を差し引き、さら
にD2 で割った内部パラメーターQを算出した。hCG
実濃度と内部パラメーターQとの関係を図23に示す。
図23に示される各hCG実濃度(C)に対するQ=
(D1 +23)/D2 との相関から、hCG濃度を算出
する内部関係式を求めた(下記12式)。
【0204】次いで、12式にヘパリン全血hCG検体
(B)、(C)および(D)のQ値を代入し、hCG濃
度を算出し、<6>に示される酵素免疫測定法によって
求めた全血中hCGの実濃度との相関を求めた。その結
果、図24に示すように、両者には優れた相関性があ
り、複数電極による補正の効果が顕著に示された。
【0205】[実施例7] 特異結合分析装置を用いた全血試料中のE2濃度の競合
法による測定
【0206】<1>抗E2抗体と西洋ワサビパーオキシ
ダーゼとの結合体(信号物質発生体)の作製 E2を認識するマウス単クローン性抗体F815(持田
製薬社製)を100mM 塩化ナトリウム−1mM E
DTA−60mM トリエタノールアミン緩衝液(pH
8.0)(TEA緩衝液)に5.3mg/mL濃度とな
るように溶解し、窒素ガス置換したTEA緩衝液に十分
に透析した。この抗体溶液2.2mLに対して、TEA
緩衝液中に調製した50mMの2−イミノチオラン塩酸
塩(Pierce社製)溶液70μLを添加し、撹拌後、窒素
ガス雰囲気下、4℃で1.5時間静置した。その後、窒
素ガス置換した100mM塩化ナトリウム−1mM E
DTA−100mM リン酸緩衝液(pH6.0)(E
DTA−PB)で十分に透析し、SH基が導入された抗
E2抗体を得た。100mM 塩化ナトリウム−100
mMリン酸緩衝液(pH6.0)(PB)で20mg/
mL濃度に調製された西洋ワサビパーオキシダーゼ(H
RPO,東洋紡社製)溶液3.1mLを30℃でゆっく
り撹拌しながら、50mMのスルホSMCC(Pierce社
製)3.1mLを添加して20分間反応させた。反応
後、窒素ガス置換したPBで平衡化したSephade
xG−25(ファルマシア社製)カラム(2.5φ×1
4.5cm)を通して未反応のスルホSMCCを除去
し、濃縮器CENTRIPREP−10(Amicon社製)
を用いて濃縮し、マレイミド化HRPOを得た。得られ
たマレイミド化HRPOの濃度は、403nmの吸光度
から求めた。3.3×10-7モルのマレイミド化HRP
O溶液に対して、1/5倍モル量のSH基導入F815
抗体を添加混合後、窒素ガス雰囲気下、4℃にて16時
間反応させた。次いで、500mMのシステアミン−E
DTA−PB溶液96μLを添加し、窒素ガス雰囲気
下、4℃にて60分間反応させ、その後、窒素ガス置換
したPBで平衡化したULTROGEL AcA34
(IBF Biotechnics 社製)カラムを用いてゲルろ過
クロマトグラフィーを行った。280nmおよび403
nmにおける吸光度測定を、ゲルろ過クロマトグラフィ
ーの溶出分画について行い、遊離の酵素を含まないF8
15抗体とHRPOとの結合体の分画を集めて濃縮し
た。濃縮標品(HRPO−F815抗体と称す)は、P
hastシステムによる電気泳動(ファルマシア社製)
で分子量を確認後、吸光度と酵素活性から含有される抗
体および酵素量を決定し、後記する測定において信号物
質発生体として用いた。
【0207】<2>6−ケトエストラジオール 6−
(O−カルボキシメチル)オキシム−ウシγグロブリン
(E2−6CMO−γG)の作製 E2−6CMO(シグマ社製)6.6mgをジオキサン
0.66mlに溶解し、トリ−n−ブチルアミン(和光
純薬製)4.62μL、およびイソブチルクロロホルメ
ート(ナカライテスク社製)4.62μLを加え、10
℃で30min攪拌した。次いで、この溶液をあらかじ
め50%ジオキサン水溶液で5mg/mLに調製したウ
シγグロブリン(シグマ社製)溶液30.32mLに添
加した。その後、0.1N水酸化ナトリウム溶液を用い
て反応溶液のpHを8.0〜8.5に調節しながら10
℃で4時間攪拌した。蒸留水に対し4℃で20時間透析
した後、反応溶液に等量のジエチルエーテルを加えてよ
く攪拌し、エーテル層を除去した。この抽出操作を二度
繰り返し、溶液中の未反応E2−6CMOを充分除去し
た後、水層をPBに対して透析を行い、E2−6CMO
−γGを作製した。
【0208】<3>第1含浸部54(信号物質発生体−
電子メディエータ含浸部=西洋わさびパ−オキシダーゼ
標識抗E2抗体およびN,N,N´,N´−テトラキス
−(2´−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミ
ン2塩酸塩(THEPD)を含浸させた乾燥体)の作製 先に<1>項で作製した西洋わさびパ−オキシダ−ゼ標
識抗E2抗体(HRPO−F815抗体)、およびTH
EPD(最終濃度2mM)、5%正常ウサギ血清(NR
S)−10%ラクトース/0.1M NaCl含有0.
01Mリン酸緩衝液 pH7.4にて希釈した溶液を調
製した。次いで、実施例2の<1>で作製したTwee
n20処理ガラス繊維濾紙からパンチングして作製した
直径10mmの円形濾紙に上記溶液を90μl点着し、
凍結乾燥を行い、第1含浸部54(信号物質発生体−電
子メディエータ含浸部)を作製した。
【0209】<4>第2含浸部56(緩衝液成分含浸部
=0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液 p
H7.4を含浸させた乾燥体)の作製 0.1M NaCl含有0.01Mリン酸緩衝液 pH
7.4を調製し、前記実施例2の<1>で作製したTw
een20処理ガラス繊維濾紙からパンチングして作製
した直径10mmの円形濾紙に上記溶液を90μl点着
し、凍結乾燥を行い、緩衝液成分の乾燥体を作製した。
【0210】<5>抗原不溶化流路62(ハプテン不溶
化メンブレン=E2−6CMO−γG不溶化多孔性セル
ロース混合エステル膜)の作製 先に<2>で作製したE2−6CMO−γGをPBSに
溶解して2.0mg/mL濃度に調製した。この溶液1
00mlに、ポアサイズ8.0μmのセルロース混合エ
ステル多孔性膜(日本ミリポア社製)からパンチングし
て作製した直径11mmの円形多孔性膜1000枚をビ
ーカー内で浸漬し、30分間25℃で振とうした。濾紙
で水分をぬぐった多孔性膜を一晩真空乾燥して抗原不溶
化流路62(ハプテン不溶化メンブレン)を作製した。
【0211】<6>吸収部64(過酸化水素・尿素を含
浸させた乾燥体)の作製 クロマトグラフ濾紙(31ET、Whatman 社製)からパ
ンチングして作製した直径10mmの円形ろ紙に、前記
実施例2の<4>と同様に作製した2.0M過酸化水素
−4.0M尿素溶液を30μl点着し、凍結乾燥を行
い、過酸化水素−尿素の乾燥体を作製した。
【0212】<7>特異結合分析装置の作製 このようにして作製した各部位を用い、下記のようにし
て、図2および図3に示される特異結合分析装置を各種
作製した。まず、アクリル製の下部基板66上に吸収部
64(過酸化水素・尿素を含浸させた乾燥体)を積層し
た。なお、吸収部64の中央には、メンディングテープ
(住友スリーエム株式会社製)からパンチングして作製
した直径8mmのシールを貼り付けた。次いで、抗原不
溶化流路62(ハプテン不溶化メンブレン)をシール部
64aを有する吸水部ろ紙の上に中心位置を合わせて重
積した。さらに、電極部60と貫通孔68の中心を抗原
不溶化流路62の中心と一致させて、作用極側を下にし
て積層した。次に、第2含浸部56(緩衝液成分含浸
部)を、その中心が電極の貫通孔の中心と一致するよう
に重積した。この第2含浸部56の上部表面中央に、メ
ンディングテープからパンチングして作製した直径8m
mのシールを貼り付けた。その上に、第1含浸部54
(信号物質発生体−電子メディエータ含浸部)を重積し
た。さらにその上に、界面活性剤処理をしたアクスター
(カタログ番号B50401、東レ社製)からパンチン
グして作製した直径10mmの円形部材を重積してフィ
ルター部52とした。その上に、直径6mmの試料導入
口50aを有するアクリル製の上部カバー50を、その
試料導入口50aの中心が貫通孔68の中心と一致する
ように上乗せし、上部カバー50下部基板66の四隅の
ネジ孔を合わせネジ留めして図2および3に示されるよ
うな、エストラジオール濃度測定用の特異結合分析装置
を作製した。
【0213】<8>ヘパリン全血中でのE2測定 このようにして作製した特異結合分析装置の電極部60
gにおいて、対極70を対極・参照極として電流計測回
路の対極(参照極)端子に接続し、同回路のチャンネル
1およびチャンネル2の作用極端子に、それぞれ第1作
用極76(検出部1) および第2作用極78(検出部
2) の端子76aおよび78aを接続した。そして、同
回路からナショナルインスツルメンツ社製のデータ集録
ボードAT−MIO−16Xを通じてコンピュータ内に
データを取り込み解析を行った。ベノジェクトII真空採
血管(テルモ社製)で採血したヘパリン添加健常男性全
血検体(A)に標準E2を添加して、E2 1ng/m
L、E2 3ng/mL、E2 10ng/mL、E2
30ng/mLおよびE2 100ng/mLのヘパ
リン全血検体を調製した。また、別の全血検体(B)お
よび、(C)にもE2を各種濃度で添加して測定試料と
した。E2を含む各ヘパリン全血検体をそれぞれ、前記
特異結合分析装置の上面アクリル板の試料導入口を通じ
て、試料導入部に150μl導入した。試料導入後、各
作用極を対極・参照極に対して−150mVとなるよう
に電位設定し、電流値を記録した。
【0214】<9>酵素免疫測定法による各血液検体中
のE2濃度測定 上記各全血検体から分離した血漿中のE2濃度を市販の
エストラジオール測定試薬エンチムンテストE2(ベー
リンガー・マンハイム社製)を用いて測定し、この濃度
を各全血検体のE2実濃度とした。
【0215】<10>結果. 複数検出部からE2濃度
を算出する内部関係式の導出 ヘパリン全血検体(A)、(B)および(C)を用いて
調製した各濃度のE2溶液を点着した際の第1作用極7
6および第2作用極78で測定された8〜10分間の電
流値の平均値I1 およびI2 から、電流密度の平均値
(D1 およびD2)を算出した。ここでは、応答曲線の
1つは各全血検体中のE2実濃度とD1 との関係(図2
5)から求めた近似式とした。また、もう一つの応答曲
線は各全血検体中のE2実濃度と、D2 の代わりに、D
1 +D2 との関係(図26)から求めた近似式とした。
図25および図26に示されるように、各E2実濃度の
対数値(logC)に対するD1 およびD1 +D2 の応
答は、ロジスティック曲線(下記13式および14式)
に適合した。ここで13式、14式および18式中のE
2濃度Cは、10-1ng/mL単位である。 各全血検体(A)、(B)および(C)から求めた応答
曲線の近似式(13式および14式)中のb1、b2、
c1およびc2を比較したところ、これらの係数はb1
=b2=4.4およびc1=c2=2.2とすることが
できた。また、応答曲線の近似式(13式および14
式)のa1とd1、a2とd2およびa1とa2の間に
は、下記15式、16式および17式に示されるような
関係が認められた。 d1=a1+9.7 15式 d2=a2+18 16式 a2=1.1 a1−15 17式 上記式(13式、14式、15式、16式および17
式)より、試料に依存する係数a1、d1、a2、d2
を消去することで、内部関係式C=S(D1 ,D 1 +D
2 )(18式)が誘導できる。
【数1】
【0216】<11>結果. 単数検出部からE2濃度
を算出する関係式の導出 単数検出部で同様に測定を行い、E2を定量した場合
(D1 のみでE2を定量)に算出される全血検体(A)
(B)(C)のE2濃度Cを求めた。ここでは、全血検
体(A)を用いた際のE2濃度に対するD1 の応答から
E2濃度Cを算出する関係式を求めた。(下記19式)
なお、19式中のE2 濃度Cは10-1ng/mL単位で
ある。
【数2】 複数検出部測定および単数検出部測定から誘導された関
係式(上記18式および19式)に全血検体(B)およ
び(C)の電流密度を代入し、全血検体(B)および
(C)のE2濃度をそれぞれ求め、その平均値を比較し
た。結果を表11に示す。
【0217】
【表5】 表11に示されるように、複数検出部測定から誘導した
内部関係式18式を用いたE2の測定は単数検出部測定
から誘導した関係式19を用いた場合に比べ明かな補正
効果を示した。ゆえにこの内部関係式18によって検体
中の夾雑物質等の影響が補正されることが明かとなっ
た。また、内部関係式(18式)から求めたE2濃度と
<9>の酵素免疫測定法で求めたE2実濃度との間には
良い相関が認められた。
【0218】[実施例8] 検定用血清試料による全血検体測定用内部関係式の装置
ロット依存性定数項の決定 <1>特異結合分析装置の作製 前記実施例7において用いた特異結合分析装置と同一ロ
ットの装置を用い、以下の測定を行った。
【0219】<2>検定用血清試料中でのE2測定 ステロイドフリー血清(Scantibodies社
製)(検定用血清A(非特異的因子が少ない全血検体に
相当))、上記西洋わさびパーオキシダーゼ標識抗E2
抗体およびTHEPDをそれぞれ、5×10-10 Mおよ
び1×10-4Mを含むステロイドフリー血清(検定用血
清B(非特異的因子が多い全血検体に相当))、および
上記西洋わさびパーオキシダーゼ標識抗E2抗体および
THEPDをそれぞれ、5×10-11 Mおよび1×10
-4Mを含むステロイドフリー血清(検定用血清C(非特
異的因子が中程度の全血検体に相当))に標準E2を添
加して、E2 1ng/mL、E2 3ng/mL、E
2 10ng/mL、E230ng/mLおよびE2
100ng/mLの各検定用血清検体を調製した。E2
を含む各検定用血清検体をそれぞれ、前記特異結合分析
装置の上面アクリル板の試料導入口を通じて、試料導入
部に150μL導入した。試料導入後、各作用極を対極
・参照極に対して−150mVとなるように電位設定
し、電流値を記録した。
【0220】<3>結果. 検定用血清検体からE2濃
度を算出する補正式の導出 検定用血清検体(A)、(B)および(C)を用いて調
製した各濃度のE2溶液を点着した際の第1作用極76
および第2作用極78で測定された5.5〜7.5分間
(全血検体測定の8〜10分間に相当する)の電流値の
平均値I1 およびI2から、電流密度の平均値(D1
よびD2 )を算出した。各E2実濃度の対数値(log
C)に対するD1 およびD1 +D2 の応答は、実施例7
に記載した全血検体と同様にロジスティック曲線(上記
13式および14式)に適合した。ここで13式、14
式および23式中のE2濃度Cは10-1ng/mL単位
である。各検定用血清試料(A)、(B)および(C)
から求めた応答曲線の近似式(13式および14式)の
b1、b2、c1およびc2を比較したところ、これら
の係数はb1=b2=4.4およびc1=c2=2.2
とすることができた。また、応答曲線の近似式(13式
および14式)のa1とd1、a2とd2およびa1と
a2の間には下記20式、21式および22式に示され
るような関係が認められた。 d1=a1+9.7 20式 d2=a2+18 21式 a2=1.1a1−15 22式 上記式(13式、14式、20式、21式および22
式)より、試料に依存する係数a1、d1、a2、d2
を消去することで、内部関係式C=T(D1 ,D 1 +D
2 )(下記23式)が誘導できる。
【数3】 検定用血清検体から誘導された内部関係式23式の装置
ロット依存性の定数項は、実施例7で全血検体から誘導
された内部関係式18式の装置ロット依存性定数項と一
致した。以上より検定用血清検体から得られた内部関係
式を用いることで全血中のE2の定量が可能となった。
【0221】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明の特
異結合分析方法および装置によれば、未反応物の分離操
作(洗浄操作)を行う必要がなく、汎用性に優れ、しか
も、夾雑物による影響、試料が測定に与える非特異的な
影響や反応温度などの分析環境、分析に用いている試薬
の失活程度など測定値の信頼性を低下させる要因を排除
して、高精度かつ迅速な測定が可能な特異結合分析方
法、およびこの特異結合分析方法の実施に好適な特異結
合分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の特異結合分析方法を説明するための
概念図である。
【図2】 本発明の特異結合分析装置の概略分解斜視図
である。
【図3】 図2に示される特異結合分析装置を組み立て
た際の概略断面図である。
【図4】 (a)は図2に示される特異結合分析装置の
電極部の上面、(b)は同電極部の裏面を、それぞれ示
す概略図である。
【図5】 (a)は図2に示される特異結合分析装置に
用いられる2つの作用極を有する電極部の裏面の別の例
を示す概略図、(b)はストリップ状の流路を用いた別
の特異結合分析装置に用いられる2つの作用極を有する
電極部の裏面の例を示す概略図である。
【図6】 (a)は図2に示される特異結合分析装置に
用いられる3つの作用極を有する電極部の裏面の別の例
を示す概略図、(b)はストリップ状の流路を用いた別
の特異結合分析装置に用いられる3つの作用極を有する
電極部の裏面の例を示す概略図である。
【図7】 hCG濃度と複数の検出部によって測定され
た電流値との関係を示すグラフである。
【図8】 hCG濃度と複数の検出部によって測定され
た電流値との関係を示すグラフである。
【図9】 hCG濃度と複数の検出部によって測定され
た電流値との関係を示すグラフである。
【図10】 hCG濃度と複数の検出部によって測定さ
れた電流値との関係を示すグラフである。
【図11】 hCG濃度と複数の検出部によって測定さ
れた電流値との関係を示すグラフである。
【図12】 hCG濃度と複数の検出部によって測定さ
れた電流値との関係を示すグラフである。
【図13】 hCG濃度と電流値との関係を示すグラフ
である。
【図14】 検出部1の電流値と検出部2の電流値との
関係を示すグラフである。
【図15】 hCG濃度と傾きSとの関係を示すグラフ
である。
【図16】 hCG濃度と検出部1による電流値との関
係を示すグラフである。
【図17】 hCG濃度と電流値との関係を示すグラフ
である。
【図18】 hCG濃度と内部パラメータPとの関係を
示すグラフである。
【図19】 hCG濃度と検出部1による電流値との関
係を示すグラフである。
【図20】 hCG濃度と検出部2による電流値との関
係を示すグラフである。
【図21】 hCG濃度と内部パラメータQとの関係を
示すグラフである。
【図22】 hCG濃度と電流密度との関係を示すグラ
フである。
【図23】 hCG濃度と内部パラメータQとの関係を
示すグラフである。
【図24】 本発明の特異結合分析方法(装置)で求め
たhCG濃度とマイクロタイタープレートを用いた酵素
免疫測定法で求めたhCG濃度との関係を示すグラフで
ある。
【図25】 E2濃度と電流密度(D1 )との関係を示
すグラフである。
【図26】 E2濃度と電流密度(D1 +D2 )との関
係を示すグラフである。
【図27】 本発明の検出部の信号検出系の一例を示す
模式図である。
【図28】 競合型MEDIA法における試料中の抗原
の有無と標識酵素分布との関係を示す模式図である。
【図29】 2つの検出手段の信号強度(I1 ,I2
に対して測定誤差要因が与える影響の模式図である。
【符号の説明】
1 試料液 2 抗原 3 酵素 4 酵素標識抗体 5 不溶化抗原 6 検出部1 7 検出部2 10 信号物質発生体 12 信号物質 14 信号物質の発生に関与する物質 50 上面カバー 50a 試料導入口 52 フィルタ 54 第1含浸部 56 第2含浸部 56a,64a シール部 58 連通部 60 電極部 61 基板 62 特異結合物質不溶化流路(マトリクス) 64 吸収部 66 基台 68 貫通孔 70 対極(参照極) 70a 対極(参照極)端子部 74 絶縁層 76 第1作用極(検出部1) 76a 第1作用極端子部 78 第2作用極(検出部2) 78b 第2作用極端子部 80 第3作用極(検出部3) 80a 第3作用極端子部 a 試料導入部 b 流路 c 検出部

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】液性試料中の分析対象物を、その特異結合
    反応によって測定する特異結合分析方法であって、 特異結合反応に関与しかつ信号物質を発する信号物質発
    生体および前記液性試料を、所定の流路において所定方
    向に流動させると共に、前記分析対象物の特異結合反応
    を発生させ、この特異結合反応を利用して、前記流路中
    に液性試料中の分析対象物濃度に応じた信号物質発生体
    の分布を形成し、 流路内に分布する信号物質発生体によって信号物質を発
    生させ、発生した信号物質を、前記流動方向に異なる位
    置に複数配置される検出手段によって検出し、 この複数の検出結果を用いることによって、分析対象物
    の濃度以外の要因による分析結果への影響が極小になる
    ように演算処理を行うことを特徴とする特異結合分析方
    法。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の特異結合分析方法の実施
    に利用される特異結合分析装置であって、 液性試料導入部と、それに連結して配置される液性試料
    を流すことのできる流路と、液性試料中の分析対象物と
    それに特異的に結合する特異結合物質との特異結合反応
    により前記流路内に形成された、液性試料中の分析対象
    物量に応じた信号物質発生体の分布を、前記信号物質発
    生体から発生される信号物質の拡散による物質移動に律
    速される信号強度として検出するための、前記流路の液
    流方向に対して異なる位置に配置される複数の検出部と
    を有することを特徴とする特異結合分析装置。
  3. 【請求項3】前記複数の検出部が、電気化学的信号検出
    を行なえる複数の電極である請求項1に記載の特異結合
    分析装置。
  4. 【請求項4】前記検出部の位置が、流動方向に10μm
    以上離れている請求項2に記載の特異結合分析装置。
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