JPH09228019A - 黒色化溶融Zn−Al合金めっき鋼板とその製造方法 - Google Patents

黒色化溶融Zn−Al合金めっき鋼板とその製造方法

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JPH09228019A
JPH09228019A JP7867196A JP7867196A JPH09228019A JP H09228019 A JPH09228019 A JP H09228019A JP 7867196 A JP7867196 A JP 7867196A JP 7867196 A JP7867196 A JP 7867196A JP H09228019 A JPH09228019 A JP H09228019A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶融Zn−Al合金めっき鋼板のめっき皮膜を短
時間の処理で黒色化し、耐食性に優れ、色調が均一な黒
〜灰黒色を呈する、無塗装で使用できる黒色化めっき鋼
板を提供する。 【解決手段】 Al含有率2〜80重量%の溶融Zn−Al合金
めっき鋼板を、pH11以上のアルカリ性水溶液で処理
し、めっき表層部のAlリッチ相を0.05〜5μmの深さま
で除去して表面に微細凹凸を形成すると、めっき表面が
黒色化する。このめっき皮膜上にCr付着量10〜150 mg/m
2 のクロメート皮膜および/または厚さ 0.2〜5μmの
有機樹脂皮膜を形成すると、耐食性がさらに向上する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、建材、家電製品、
自動車などの意匠性が要求される分野に有用な、耐食性
と意匠性に優れた着色表面処理鋼板、より具体的には黒
色または灰黒色の美麗な外観を有する黒色化溶融Zn−Al
合金めっき鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】建材、家電製品といった美麗な表面外観
が要求される分野の製品では、冷間圧延鋼板またはめっ
き鋼板を所定形状に加工した後、塗装 (ポストコート)
を行なうのが普通であったが、最近では、鋼板の状態で
予め塗装が行なわれたプレコート鋼板をこのような製品
に適用する動きが活発である。これは、鋼板加工メーカ
ーにとって、ポストコート工程の省略により製造コスト
が低減でき、かつ製品の塗装品質が向上するという利点
があるからである。プレコート鋼板は、塗装後に加工を
受けるため、耐食性に加えて加工性に優れている必要が
ある。この要求に応えるべく、亜鉛めっき鋼板と亜鉛合
金めっき鋼板 (以下、亜鉛系めっき鋼板と総称する) に
クロメート処理などの化成処理を施した後、膜厚10〜30
μmの塗装を施した高加工性、高耐食性のプレコート鋼
板が開発され、使用されている。
【0003】しかし、鋼板加工メーカーの徹底したコス
トダウン追求の観点から、コストのかかる塗装工程を省
略した、無塗装で意匠性に優れた着色外観を有する安価
な表面処理鋼板が望まれるようになった。このような着
色表面処理鋼板に要求される品質としては、耐食性、加
工性に加え、着色外観の均一性が重要であり、場合によ
っては溶接性、耐薬品性、耐指紋性なども要求される。
色調としては、家電製品、自動車内装小物部品などでは
黒色系統の落ち着いた色調が好まれている。
【0004】このような着色外観を有する亜鉛系めっき
鋼板の製造方法として、黒色系統の色調を有するものに
ついては、下記のものが知られている。 塩素酸塩、過酸化物などの酸化剤と2価銅イオンとを
主成分とし、さらにポリオキシエチレン系エーテル、ポ
リビニールアルコールなどの有機物を含有していてもよ
い、pH5以下の黒色化処理液で、亜鉛または亜鉛合金電
気めっき鋼板を浸漬処理して、めっき表面を黒色化する
(特開昭50−55546 号、同52−76237 号および同52−76
238 号各公報参照) ; CoあるいはNiイオンを含有するアルカリ性水溶液中で
陰極電解する (特開昭60−190589号公報) ; Alイオンを添加した電解液中で陽極酸化する (特開昭
63−157898号公報) ; Ag、Sb、Bi各イオンの2種以上とNi、Fe、Co各イオン
の1種以上を所定量含有する黒色化処理液で処理する
(特開昭63−161176号公報) ; 溶融Zn−Alめっき鋼板を水蒸気処理して黒色化し、次
いでクリアー塗膜で被覆する (特開平1−56861 号公
報) ; Ni2+とNH3 を含むpH:<11.0のアルカリ溶液で処理す
る (特開平2−47273 号公報) ; 塩化第一スズと水溶性NiまたはCo化合物を含有する水
溶液中で処理する (特開平2−93077 号公報) ; Ni、Fe、Coから選んだ第1の金属イオンと、Sb、Bi、
Ag、Cu、Pb、Snから選んだ第2の金属イオンと、フッ素
イオンとを含有する水溶液中で処理した後、塗布型クロ
メート処理および高分子皮膜を施す (特開平2−282485
号公報) ; Ni2+、Co2+の1種以上とこの金属イオンを錯化するの
に十分なアンモニアおよびアミンの1種以上の化合物を
有するpH5以上の処理液で処理する (特開平3−31484
号公報) 。
【0005】の方法は、Zn−Al合金系めっきのように
酸化物が多いめっき系に適用すると、着色皮膜の密着性
が不十分となる。、、、、およびの方法
は、亜鉛系めっき皮膜をZnより貴な金属で被覆するた
め、耐食性が著しく低下する。の方法は、めっき皮膜
中にNi、Co等の金属元素が存在しないZn系めっきでは、
十分な黒色化鋼板が得られない。の方法は、高温で長
時間水蒸気処理を行なため、生産性に難点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、耐食性に優
れる溶融Zn−Al合金めっき鋼板の黒色化を低コスト、短
時間処理で達成し、加工部の色調変化が少なく、密着性
に優れた黒色化溶融Zn−Al合金めっき鋼板とその製造方
法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、溶融Zn−
Al合金めっき鋼板の黒色化について検討した結果、強ア
ルカリ性水溶液で短時間処理しただけでめっき表面が黒
色化することを見出した。溶融Zn−Al合金めっき鋼板の
めっき皮膜は、常温でZnとAlが相互にあまり固溶しない
ため、Znリッチ相 (Zn相中にAlを若干量含有) とAlリッ
チ相 (Al相中にZnを若干量含有) が混在した皮膜構造と
なる。そのため、強アルカリ性水溶液で処理すると、め
っき表層のAlリッチ相が優先的に溶解する (エッチング
される)結果、めっき表面に微細凹凸が形成される。こ
のめっき表面の微細凹凸が可視光を吸収して、めっき表
面が肉眼で見て灰黒色〜黒色の外観を呈するものと考え
られる。
【0008】ここに、本発明は、Al含有率2〜80重量%
の溶融Zn−Al合金めっき鋼板の表面に、高さ0.05〜5μ
mの微細凹凸を有することを特徴とする、黒色化溶融Zn
−Al合金めっき鋼板である。
【0009】この黒色化溶融Zn−Al合金めっき鋼板は、
Al含有率2〜80重量%の溶融Zn−Al合金めっき鋼板を、
pH11以上のアルカリ性水溶液で処理して、めっき表層
部のAlリッチ相を0.05〜5μmの深さまで除去すること
により製造される。
【0010】本発明の黒色化溶融Zn−Al合金めっき鋼板
のめっき皮膜は、Cr付着量10〜150mg/m2 のクロメート
皮膜、または厚さ 0.2〜5μmの有機樹脂皮膜、または
上記クロメート皮膜とその上の上記有機樹脂被覆とによ
り被覆されていてもよい。
【0011】本発明によるめっき皮膜の黒色化は、従来
法のように後処理でめっき皮膜上に黒色皮膜を形成する
のとは異なり、めっき皮膜自身の表面を黒色化するもの
であるため、加工後の変色の問題がなく、また耐食性、
密着性などのめっき性能への悪影響もほとんどない。従
って、溶融Zn−Al合金めっき鋼板が示す優れた耐食性が
そのまま保持される。
【0012】
【発明の実施の形態】
(1) 溶融Zn−Al合金めっき鋼板 本発明の黒色化めっき鋼板の母材は、溶融Zn−Al合金め
っき鋼板である。めっき皮膜の黒色化が、前述したよう
に、強アルカリ性水溶液中におけるZnとAlの溶解速度の
差を利用してAlリッチ相を優先的に溶解させ、めっき表
面に微細凹凸を形成することにより達成されるため、め
っき皮膜中に微細なZnリッチ相とAlリッチ相が交雑して
いる必要がある。
【0013】そのため、Zn−Al合金めっき皮膜中のAl含
有率を2〜80重量%とする。Al含有率がこの範囲外で
は、優先的に溶解するAlリッチ相のめっき表面における
占有率が高すぎるか、低すぎて、黒色化に寄与するだけ
の量の微細凹凸をAlリッチ相の優先的な溶解(エッチン
グ)により形成することができない。好ましいAl含有率
は4〜60重量%である。
【0014】Zn−Al合金めっき皮膜は、ZnとAl以外に、
黒色化やめっき性能に悪影響を及ぼさない任意の添加元
素を含有していてもよい。このような添加元素の例とし
ては、鋼板/めっき界面に形成される合金層抑制元素で
あるケイ素、濡れ性を改善するLaおよびCe、耐食性を改
善するMgなどが挙げられる。
【0015】溶融Zn−Al合金めっき鋼板の付着量は特に
制限されないが、通常は片面当たり20〜120 g/m2、特に
30〜90 g/m2 の範囲内が好ましい。本発明では、めっき
皮膜表層のAlリッチ相を除去するため、あまりに低付着
量であると耐食性が不足することがある。
【0016】(2) めっき表層の微細凹凸 Al含有率が2〜80重量%の溶融Zn−Al合金めっき鋼板を
強アルカリ水溶液で処理して、めっき表層からAlリッチ
相を優先的に溶解 (即ち、エッチング) することにより
めっき表層に微細凹凸を形成する。この時のAlリッチ相
のエッチング深さ (即ち、微細凹凸の高さ) が大きくな
るほど、外観が灰黒色から黒色に移行する。微細凹凸の
高さが0.05μm未満では、灰黒色として十分な色調が得
られず、5μmを越えると、鋼を防食するAlが溶出によ
り減少し、耐食性が低下する。微細凹凸の高さは、好ま
しくは 0.1〜3μmの範囲である。
【0017】(3) 黒色化処理 本発明によれば、溶融Zn−Al合金めっき鋼板を強アルカ
リ性水溶液で処理して、めっき表層のAlリッチ相を溶解
させる。このエッチングには、pHが11以上、好ましく
は11.5以上のアルカリ性水溶液を使用する。それによ
り、数秒ないし数十秒という短時間の処理により上記の
深さまでエッチングして、めっき表面に上記高さの微細
凹凸を形成させ、めっき外観を黒色化することができ
る。ただし、表層のAlリッチ相を完全に除去する必要は
なく、黒色化に十分な量で微細凹凸が形成される限り、
表層にAlリッチ相が残存していてもよい。処理液のpH
が11未満では、短時間の処理では十分な黒色度が得られ
ない。
【0018】このアルカリ性水溶液は、水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、珪酸ナトリウム
等のいずれか1種または2種以上を水に溶解させて調製
することができる。アルカリ成分は、適用温度でpH11
以上の水溶液を形成するものであれば、これら以外のも
のも使用できる。
【0019】その他の処理条件は、必要なエッチング深
さ (微細凹凸高さ) および黒色度が得られるように調整
すればよい。例えば、処理液温度は30〜90℃とすること
が好ましい。処理液温度が30℃より低いと、短時間で十
分な黒色度が得られないことがある。90℃を越えると処
理液の蒸発が激しく、操業に支障をきたす。処理液温度
はより好ましくは50〜70℃である。また、めっき鋼板と
アルカリ性水溶液との接触時間は2秒以上とすることが
好ましい。2秒未満では黒色化が均一に得られないこと
がある。
【0020】アルカリ性水溶液による処理方法は、浸漬
法、スプレー法等何れの方法であってもよい。黒色化処
理後は、色調のムラ防止のため水洗後、十分乾燥を行な
うことが好ましい。
【0021】(4) 後処理 こうして得られた本発明の黒色化溶融Zn−Al合金めっき
鋼板は、均一に灰黒色〜黒色に着色した表面外観を有
し、黒色化前のめっき鋼板と同等の耐食性を維持してお
り、そのまま加工して各種製品の製造に利用することが
できる。しかし、後処理としてクロメート処理あるいは
薄膜の有機樹脂被覆のいずれか、あるいは第1層として
クロメート処理、第2層として薄膜の有機樹脂被覆を施
すことにより、外観色調がさらに均一化し、めっき表層
の微細凹凸を保護する役目を有する上、成形後の外観変
化が少なく、耐食性も向上することが認められた。従っ
て、要求される耐食性に応じて、このようないずれかの
後処理を行えばよい。
【0022】クロメート処理は、耐食性に優れた塗布型
クロメート処理液を使用して行なうことが好ましい。形
成されたクロメート皮膜の付着量は、金属Crとして10〜
150mg/m2 がよく、特に20〜60mg/m2 の範囲が好まし
い。付着量が10mg/m2 未満では色調および耐食性の改善
に効果がなく、150 mg/m2 を越えると黒色化鋼板の外観
が損なわれる。
【0023】塗布型クロメート処理液は、クロム酸イオ
ンと還元剤の他、硫酸、リン酸、フッ酸などの酸、耐食
性の向上を目的としたシリカなどの酸化物といったクロ
メート処理液に対する公知の添加物を1種もしくは2種
以上含有していてもよい。さらに最近では、加工部の耐
食性向上のため、水溶液樹脂あるいはエマルション樹
脂、ワックス等を添加する場合もあり、これらを利用し
てもよい。クロメート皮膜の造膜を促進するため、Cr6+
イオンの一部がCr3+イオンに還元された部分還元型の処
理液を使用することが好ましい。クロメート処理は、塗
布、噴霧、浸漬などの常法で実施することができ、処理
液に加熱して膜を乾燥させると、塗布クロメート皮膜が
形成される。乾燥温度は最高到達板温度で通常は50〜10
0 ℃の範囲内である。
【0024】有機樹脂皮膜は、黒色化溶融Zn−Al合金め
っき皮膜上またはクロメート皮膜上に形成する。後者
は、前者に較べてより耐食性能が要求される場合に適用
する。有機樹脂皮膜の厚みは 0.2〜5μmがよい。この
皮膜の厚みが 0.2μm未満では、着色表面が十分に被覆
されず、樹脂皮膜によってかえって干渉色が現れたり、
耐食性が劣化することがある。樹脂皮膜の厚みが5μm
を越えると、樹脂皮膜の密着性、鋼板の溶接性、加工性
などの特性が劣化することがある。
【0025】この有機樹脂皮膜は、下地の黒色をそのま
まいかすように無色透明な皮膜でよいが、黒色または他
の色に着色した透明または半透明の皮膜とすることによ
り、黒色度をさらに高めるか、または黒色の色味を変化
させることもできる。
【0026】有機樹脂皮膜の形成に用いる樹脂は透明皮
膜を形成できるものであればよいが、好ましい樹脂とし
てはアクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系
樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ系樹脂、
ウレタン系樹脂などが挙げられる。有機樹脂皮膜を形成
する塗装工程を溶融めっきライン内で実施する場合に
は、樹脂をエマルジョン化した水性塗料を用いることが
好ましい。使用する塗料は、樹脂と溶媒またはエマルジ
ョン媒質以外に、充填材 (例、シリカ) 、防錆含量
(例、クロム酸塩) 、潤滑剤 (例、ポリオレフィンワッ
クス) 、各種塗料添加剤 (例、分散剤、界面活性剤な
ど) を含有しうる。塗料の塗布後、必要に応じて加熱し
て塗膜を乾燥ないし硬化させる。
【0027】
【実施例】
(実施例1)板厚0.8 mm、板幅100 mm、長さ250 mmに裁断
した冷延鋼板を溶剤脱脂後、溶融めっき試験装置を用い
て、表1に示す所定のAl含有率に調整したZn−Al合金溶
融めっき浴に浸漬し、両面めっきを行った。めっき付着
量は片面当たり80 g/m2 の一定になるように調整した。
その後、得られた溶融Zn−Al合金めっき鋼板を、表1に
示す条件下でアルカリ性水溶液に浸漬して黒色化処理を
施し、水洗後直ちに乾燥した。
【0028】得られた黒色化溶融Zn−Al合金めっき鋼板
のめっき皮膜の表層のAlリッチ相のエッチング深さ (=
表層微細凹凸の高さ) をSEM断面写真により測定し
た。また、EMPAにより、表面の微細凹凸のAl含有率
が、使用した溶融めっき浴中のAl含有率より著しく低
く、この微細凹凸がAlリッチ相の優先的溶解により生成
したことを確認した。この黒色化溶融Zn−Al合金めっき
鋼板の各種性能を下記の方法により評価した。測定結果
を表1に併せて示す。評価方法 (1) 黒色外観 色調ムラを判定するため、色彩色差計 (ミノルタ社製、
CR-300) を用いてハンター明度 (L* 値) を黒色化めっ
き鋼板試験片 (90×180 cm) の全面について測定し、板
面内でのL* 値変化が平均値±2のバラツキ内に入るも
のを均一色調と評価し、バラツキがそれより大きいもの
を不均一色調とした。
【0029】 ◎:均一色調の黒色 (L* 値55以下) ○:均一色調の灰黒色 (L* 値55〜65) △:不均一色調の黒色〜灰黒色 (色調ムラ) ×:十分な黒色を呈しない (L* 値65超) 。
【0030】(2) 加工後の外観 試験片を 180°密着曲げ加工し、曲げ部の外観を下記基
準で評価した。 ○:外観良好 (曲げ部と平板部の外観差なし) △:曲げ部の外観劣化が小 ×:曲げ部の外観劣化が大。
【0031】(3) 耐食性 温度60℃、相対湿度95%以上の湿潤環境中に600 時間曝
した後の白錆発生面積によって耐食性を下記基準にて評
価した。 ◎:錆発生なし ○:白錆発生5%以下 △:白錆発生10%以下 ×:白錆発生10%超。
【0032】
【表1】
【0033】(実施例2)実施例1と同様にして溶融Al
−Zn合金めっきと黒色化処理を施すことにより得た黒色
化溶融Zn−Al合金めっき鋼板に、さらにクロメート処理
または樹脂被覆のいずれか一方を施すか、またはクロメ
ート処理後に樹脂被覆を施すことにより後処理を行っ
た。
【0034】クロメート処理は、クロム酸換算で30 g/l
濃度、Cr3+/Cr6+比=1、温度 ℃の塗布型クロメート
処理液にめっき鋼板を2秒間浸漬することにより行っ
た。その後、鋼板を回転させて遠心力により所定のCr付
着量に調整し、80℃で30秒間乾燥してクロメート皮膜を
形成した。有機樹脂被覆は、15重量%のシリカゾルを分
散させたアクリル系水性エマルジョン樹脂塗料をバーコ
ーターにより塗装し、120 ℃×20秒の加熱処理により焼
付けることにより行い、所定の膜厚の有機樹脂皮膜を形
成した。
【0035】こうして後処理を施した黒色化溶融Zn−Al
合金めっき鋼板の性能を下記の方法により評価した。測
定結果を、Zn−Al合金めっきのAl含有率、黒色化のため
のアルカリ性水溶液の浸漬処理条件、Alリッチ相のエッ
チング深さ(後処理前のめっき鋼板で測定)と共に、表
2に示す。
【0036】評価方法 (1) 黒色外観 実施例1と同様の方法および基準により評価した。
【0037】(2) 加工後の外観 (a) クロメート処理品 (樹脂被覆なし) 実施例1と同様に、試験片を 180°密着曲げ加工し、曲
げ部の外観を下記基準で評価した。 ○:外観良好 (曲げ部と平板部の外観差なし) △:曲げ部の外観劣化が小 ×:曲げ部の外観劣化が大。
【0038】(b) 樹脂被覆品(下層クロメート処理品を
含む) 直径60 mm のブランクを絞り比1.8 で無塗油にて円筒絞
り加工した後の外観を下記基準で評価した。 ○:外観良好 (摺動部と非摺動部の外観差なし) △:摺動部の外観劣化が小 ×:摺動部の外観劣化が大。
【0039】(3) 樹脂皮膜の密着性 (樹脂被覆品のみ) 上記の円筒絞り加工で得られた円筒の側壁部をセロテー
TM剥離し、テープに付着した樹脂皮膜の目視観察によ
り下記基準で密着性を評価した。 ○:樹脂皮膜が全く剥離しない △:樹脂皮膜がわずかに剥離する ×:樹脂皮膜が面積で20%以上剥離する (4) 耐食性 塩水噴霧試験 (JIS-2371) における白錆発生面積によっ
て耐食性を評価した。塩水噴霧時間は後処理の種類によ
って次の通りに変化させ、評価基準はいずれも下記の一
定基準とした。
【0040】塩水噴霧時間 クロメート処理品 (樹脂被覆なし) 600時間 樹脂被覆品 (下層クロメートなし) 1200時間 樹脂被覆品 (下層クロメートあり) 2400時間評価基準 ◎:錆発生なし ○:白錆発生 5%以下 △:白錆発生 10%以下 ×:白錆発生 10%超。
【0041】
【表2−1】
【0042】
【表2−2】
【0043】
【発明の効果】本発明によれば、溶融Zn−Al合金めっき
鋼板の黒色化が、強アルカリ性水溶液による比較的短時
間の処理により安価に達成される。本発明の黒色化溶融
Zn−Al合金めっき鋼板は、プレコート鋼板より安価で、
意匠性に優れ、Zn−Al合金めっきの持つ高耐食性を保持
しているため、塗装を施さずに使用できる。また、めっ
き皮膜の上に黒色皮膜を形成するのではなく、めっき皮
膜自体を黒色化するため、加工を受けても加工部の色調
変化がなく、外観を損なわれることがない。
【0044】その結果、本発明の黒色化溶融Zn−Al合金
めっき鋼板は、特に黒色系統の色調が好まれる家電製
品、自動車内装小物部品などに適しているが、その黒色
外観を活かして建材、事務用品など他の用途にも使用で
きることは当然である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C23F 1/36 C23F 1/36 1/40 1/40 // B05D 7/14 B05D 7/14 A (72)発明者 松田 克弘 和歌山市湊1850番地 住友金属工業株式会 社和歌山製鉄所内 (72)発明者 松永 貴裕 和歌山市湊1850番地 住友金属工業株式会 社和歌山製鉄所内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Al含有率2〜80重量%の溶融Zn−Al合金
    めっき鋼板の表面に、高さ0.05〜5μmの微細凹凸を有
    することを特徴とする、黒色化溶融Zn−Al合金めっき鋼
    板。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の黒色溶融Zn−Al合金めっ
    き鋼板のめっき皮膜上にCr付着量で10〜150 mg/m2 のク
    ロメート皮膜を有することを特徴とする、クロメート処
    理黒色化溶融Zn−Al合金めっき鋼板。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の黒色溶融Zn−Al
    合金めっき鋼板の表面のめっき皮膜またはクロメート皮
    膜上に、厚さ 0.2〜5μmの有機樹脂皮膜を有すること
    を特徴とする、樹脂被覆黒色化溶融Zn−Al合金めっき鋼
    板。
  4. 【請求項4】 Al含有率2〜80重量%の溶融Zn−Al合金
    めっき鋼板を、pH11以上のアルカリ性水溶液で処理し
    て、めっき表層部のAlリッチ相を0.05〜5μmの深さま
    で除去することを特徴とする、黒色化溶融Zn−Al合金め
    っき鋼板の製造方法。
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