JPH09209033A - 着色用光輝焼鈍ステンレス鋼板及びその製造方法 - Google Patents

着色用光輝焼鈍ステンレス鋼板及びその製造方法

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JPH09209033A
JPH09209033A JP4055796A JP4055796A JPH09209033A JP H09209033 A JPH09209033 A JP H09209033A JP 4055796 A JP4055796 A JP 4055796A JP 4055796 A JP4055796 A JP 4055796A JP H09209033 A JPH09209033 A JP H09209033A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 電解処理,鏡面研磨処理等の前処理工程を省
略しても、着色ムラを発生することなく、均一な色調の
着色皮膜を形成する光輝焼鈍ステンレス鋼板を得る。 【構成】 鋼板表面にあるC富化層の厚みを、表面全体
にわたって10Å以下に規制している。この表面状態
は、還元性雰囲気中で850℃から焼鈍温度まで40秒
以上の時間をかけてステンレス鋼を昇温し、1030℃
以上の焼鈍温度で光輝焼鈍することにより得られる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、着色ムラの発生がない
着色用光輝焼鈍ステンレス鋼板及びその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】光輝焼鈍ステンレス鋼は、水素−窒素混
合ガス等の還元性雰囲気中で焼鈍され、光沢に優れ美麗
な外観をもっている。この優れた表面状態を活用し、化
学発色法による着色処理で装飾性を高め、内装材,外装
材等として広範な分野で使用されている。化学発色法に
よるステンレス鋼の着色では、ステンレス鋼をクロム酸
−硫酸混合溶液中に浸漬することによって、鋼表面に数
百〜数千Å厚みの酸化膜(以下、着色皮膜という)を形
成させている。着色皮膜は、ステンレス鋼をクロム酸−
硫酸混合溶液中に浸漬した際にステンレス鋼素地の一部
が溶け出す(酸化反応)と同時にクロム酸中の6価クロ
ムが還元されて3価クロムとなり、この3価クロムが酸
化物や水酸化物を形成することにより成長すると考えら
れている。
【0003】酸化皮膜は、光の干渉作用によって特定の
波長に光を反射させる着色皮膜として働く。そのため、
着色後の鋼材表面の色調は、着色皮膜の厚みや組成,着
色前における皮膜厚み,光沢度等の表面性状に応じて定
まる。このとき、着色前の表面皮膜の組成や膜厚が不均
一であると、素地の溶解速度が不均一になる。その結
果、均一な着色皮膜が形成されず、色調にバラツキが生
じる。着色後に均一な色調を得るためには、着色前素材
において皮膜,粗さ,光沢度等の表面性状を均一化させ
ることが要求される。着色前の表面性状を均一化するた
め、従来では電解処理,鏡面研磨処理等の前処理が採用
されていた。たとえば、特開昭59−28574号公報
では、着色前にステンレス鋼を陽極として硝酸水溶液中
で電解処理することにより、表面性状を均一化してい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】電解処理,鏡面研磨等
の前処理は、ステンレス鋼を均一な表面性状に調整する
ために必要であるが、そのために余分な工程が増え、生
産性を低下させると共に製品コストを上昇させる原因と
なる。また、電解処理では、鋼板表面全体にわたり均一
な電流密度で電解することは難しく、結果として新たに
着色ムラを発生させる虞れがある。また、連続ラインで
電解処理する際、鋼板表面にロール等から異物が付着
し、表面疵が発生し、歩留りが低下する。更には、使用
された廃液,配水等の処理も複雑になり、設備的な負担
も大きくなる。鏡面研磨では、鋼板表面に接触させた円
状のバフを回転させる方法が通常採用されている。しか
し、このバフ研磨工程で研磨ムラが発生すると、その研
磨ムラが着色ムラの原因となる。本発明は、このような
問題を解消すべく案出されたものであり、鋼板表面にあ
るC富化層の厚みを表面全体にわたって薄くすることに
より、電解処理,鏡面研磨等の前処理を必要とすること
なく、着色ムラの発生がない着色用光輝焼鈍ステンレス
鋼板を得ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の着色用光輝焼鈍
ステンレス鋼板は、その目的を達成するため、鋼板表面
にあるC富化層の厚みが表面全体にわたって10Å以下
に規制されていることを特徴とする。この表面状態は、
還元性雰囲気中で850℃から焼鈍温度まで40秒以上
の時間をかけてステンレス鋼を昇温し、1030℃以上
の焼鈍温度で光輝焼鈍することにより得られる。
【0006】
【実施の形態】着色ムラには種々のタイプがあるが、圧
延方向と平行に発生する帯状タイプのムラが着色後の色
調に最も大きな悪影響を及ぼす。この着色ムラは、図1
に示すように周辺部分に比較して白みや黒みが強くなっ
ており、肉眼で明瞭に観察される。本発明者等は、着色
ムラが発生した材料について着色前及び着色後の表面性
状を系統的に調査し、着色後における色調のバラツキと
対応する着色前表面のファクターを探索した。探索の結
果、着色前のC富化層の厚みが10Åを超えると、着色
後の色調に影響を及ぼし、C富化層が厚くなるほど着色
後の明度が低下することを知見した。また、着色前表面
に厚み10Å以下のC富化層と10Åを超えるC富化層
が混在すると、着色後の明度に大きなバラツキが生じ、
着色ムラが発生することを見い出した。
【0007】したがって、着色ムラの発生を抑えるため
には、着色前表面におけるC富化層の厚みを10Å以下
に抑制し、或いは厚みが10Åを超えた場合にあっても
着色後にムラが発生しない色調のバラツキに収まるよう
にC富化層厚みのバラツキを抑制することが必要であ
る。本発明者等は、このような表面状態をもつ光輝焼鈍
材の製造方法を種々検討した。検討の過程で、着色前C
富化層が10Åを超えて厚くなる場合、着色後にムラが
発生しないレベルまでC富化層の厚みのバラツキを抑制
できないことが判明した。そして、焼鈍温度を1030
℃以上,850℃から焼鈍温度までの加熱時間を40秒
以上に設定して光輝焼鈍することにより、C富化層の厚
みが10Å以下に規制され、着色後にムラ発生がない光
輝焼鈍材が製造されることを見い出し、本発明を完成し
た。
【0008】本発明で使用されるステンレス鋼板として
は、汎用のオーステナイト系ステンレス鋼SUS304
を始めとして、各種のオーステナイト系ステンレス鋼及
び一般に使用されている各種フェライト系ステンレス鋼
等がある。ステンレス鋼板は、テンパーの発生や著しい
光沢の低下が生じないように還元性雰囲気で光輝焼鈍さ
れる。還元性雰囲気としては、たとえば水素−窒素混合
ガスが使用され、好ましくは水素濃度75体積%以上,
露点−40℃以下に調整される。この雰囲気下で焼鈍温
度を1030℃以上,850℃から焼鈍温度までの加熱
時間を40秒以上に設定して光輝焼鈍するとき、C富化
層の厚みが鋼板の全表面にわたって10Å以下になるこ
とを、以下に示すように多数の実験結果から見い出し
た。
【0009】すなわち、光輝焼鈍後のステンレス鋼表面
を観察したところ、ミクロなピットが表面に多数存在し
ていた。このピットは、冷間圧延時に圧延オイルが圧延
ロールと材料との間に噛み込まれて発生するものと考え
られる。ピット部分と平坦部での表面分析をオージェ電
子分光法(AES)で行ったところ、ピット部分のC富
化層は、平坦部のC富化層に比較して厚いものであっ
た。この厚みの相違は、着色後のムラ発生原因になるも
のと推察される。すなわち、冷間圧延時に鋼板表面と反
応したCは、光輝焼鈍時に大部分が除去されるものの、
一部厚いままで残存する。その残存量が材料内でばらつ
き、着色後のムラ発生原因になる。この前提で種々の実
験を行った結果、光輝焼鈍条件を規制することが有効で
あることを把握した。
【0010】具体的には、先ず冷間圧延時の油量,圧延
荷重,圧延速度等の条件を変更し、圧延条件がピットの
解消に及ぼす影響を調査した。しかし、ピットの解消に
有効な圧延条件は得られなかった。また、光輝焼鈍に先
立って通常オルソケイ酸ソーダ等を使用してステンレス
鋼板が脱脂されるので、この脱脂を強化することにより
C富化層を鋼板表面全体にわたって薄くすることを検討
した。しかし、脱脂液の種類,濃度,温度等を変更して
も、光輝焼鈍後のC富化層を薄くすることはできなかっ
た。更に、光輝焼鈍のヒートパターンを種々変更し、焼
鈍条件がC富化層の厚みに及ぼす影響を調査した。その
結果、焼鈍温度を1030℃以上に、850℃から焼鈍
温度までの加熱時間を40秒以上に設定して光輝焼鈍す
るとき、光輝焼鈍材表面にあるC富化層の厚みが10Å
以下に抑えられることを見い出した。焼鈍条件がC富化
層を薄くするのに有効である理由は、高温還元性雰囲気
中でステンレス鋼板を長時間保持することにより、光輝
焼鈍前に存在するC富化層が除去されることに由来する
ものと推察される。
【0011】
【実施例】
実施例1:(C富化層の厚みが着色後の色調に及ぼす影
響の調査) ステンレス鋼SUS304の光輝焼鈍材を、クロム酸7
0g/l及び硫酸700g/lの混酸溶液(温度105
℃)中で黒色に着色した。そして、着色ムラが発生した
材料と着色ムラの発生がない材料について、着色後の色
調のバラツキと対応する着色前のファクターとの関係を
調査した。その結果、着色後の色調と着色前C富化層の
厚みとの間に相関関係がみられ、着色前のC富化層の厚
みが大きくばらついているものほど着色ムラが強くなっ
ていることが判った。特に着色前のC富化層の厚みが1
0Åを超えるとき、着色後の色調に及ぼす着色前C富化
層の厚みバラツキの影響が顕著に現れた。なお、以後の
説明においては、着色後の色調を、明度指数L* で表し
た。
【0012】着色後の色調は、JIS Z8722に準
拠しミノルタ株式会社製の色差計CR−200を用いて
測定した。明度指数L* は、色の明るさを評価する指標
であり、L* が大きな値になるほど明度が高くなる。ま
た、L* が1.5を超えて異なるとき、着色後の材料表
面における明度の差が肉眼で観察される。着色前表面に
あるC富化層の厚みは、AESで測定した。表面から深
さ方向へのC濃度の分布を求めたところ、図2に示すよ
うに表面から大きな濃度勾配でCが低下し、ある深さか
らほぼ濃度が一定になっていた。そこで、本発明におい
ては、C濃度がほぼ一定となった深さまでの表面からの
厚みとしてC富化層の厚みを定義した。
【0013】着色前表面にあるC富化層の厚みと着色後
の明度指数L* との関係を調査したところ、両者の間に
図3に示す関係が成立していた。着色ムラ発生材では、
白みが強く観察された部分はC富化層の厚みが10Å以
下であり、黒みが強く観察された部分はC富化層の厚み
が10Åを超えていた。また、C富化層が厚くなるほ
ど、明度が低下する傾向がみられた。このように着色ム
ラ発生材は、着色前に厚みが10Å以下のC富化層と厚
みが10Åを超えるC富化層が混在しており、且つその
厚みが大きくばらついていることから着色後に明度のバ
ラツキが大きくなり、白みが強い部分と黒みが強い部分
が発生し、着色ムラになっていることが判った。これに
対し、着色ムラの発生がない材料では、C富化層の厚み
が鋼板表面全体にわたって10Å以下に抑えられてお
り、着色後の明度のバラツキが少なくなっていた。この
結果から、光輝焼鈍された材料内においてC富化層の厚
みを10Å以下に薄く均一化することにより、明度指数
* のバラツキが小さくなり、着色ムラの発生が抑制さ
れることが判明した。
【0014】実施例2:(光輝焼鈍条件がC富化層の厚
みに及ぼす影響の調査) 板厚4.5mmのステンレス鋼板SUS304の熱延板
を焼鈍・酸洗した後、ベルト研磨し、リバース式のゼン
ジミア圧延機で冷間圧延した。次いで、60℃,2.5
%オルソケイ酸ソーダで脱脂処理を施し、焼鈍温度及び
850℃から焼鈍温度までの加熱時間を種々変更した条
件下で光輝焼鈍し、焼鈍温度及び加熱時間がC富化層の
厚みに及ぼす影響を調査した。光輝焼鈍後の材料を温度
105℃,クロム酸70g/l,硫酸700g/lの混
合水溶液に浸漬し、着色電位を5.5mVに設定し、黒
色に着色した。着色後の色調の測定及び着色前のC富化
層の厚みの測定には、実施例1と同様な方法を採用し
た。各材料内で明度指数L* のバラツキが1.5を超え
る場合には肉眼で着色ムラが観察されることから、この
明度指数L* 1.5を着色ムラ発生有無の基準値とし
た。着色前の光沢度,C富化層の厚みのバラツキと着色
後の色調のバラツキ及び着色ムラ発生の有無との関係に
及ぼす光輝焼鈍条件の影響を調査した。調査結果を示す
表1にみられるように、焼鈍温度を1050℃以上,8
50℃から焼鈍温度までの加熱時間を40秒以上に設定
して光輝焼鈍したものでは、C富化層が10Å以下に薄
くなっており、着色後の明度のバラツキが小さく、着色
ムラも発生していなかった。
【0015】
【0016】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の着色用
光輝焼鈍ステンレス鋼板は、鋼板表面全体にわたってC
富化層の厚みを10Å以下に規制することにより、化学
発色で着色した後に着色ムラが発生することなく、均一
な色調をもつ着色皮膜を形成することができる。そのた
め、着色ムラ発生を防止するため従来採用されていた電
解処理,鏡面研磨処理等の前処理工程を省略することが
でき、歩留りの向上,コストの低減,省工程等が可能と
なる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 着色ムラを説明した図
【図2】 C富化層の厚みの定義を説明する図
【図3】 着色ムラが発生した材料及び着色ムラのない
材料について、着色前表面のC富化層の厚みと着色後の
明度との関係を表したグラフ

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 鋼板表面にあるC富化層の厚みが表面全
    体にわたって10Å以下に規制されている着色用光輝焼
    鈍ステンレス鋼板。
  2. 【請求項2】 還元性雰囲気中で850℃から焼鈍温度
    まで40秒以上の時間をかけてステンレス鋼を昇温し、
    C富化層の厚みが表面全体にわたって10Å以下となる
    ように、1030℃以上の焼鈍温度で光輝焼鈍する着色
    用光輝焼鈍ステンレス鋼板の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR100761903B1 (ko) * 2006-05-01 2007-09-28 김영희 고내식성 컬러강재의 제조방법
JP2010229488A (ja) * 2009-03-27 2010-10-14 Nisshin Steel Co Ltd フェライト系ステンレス鋼研磨仕上げ材の製造方法

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