JPH09204612A - 磁気抵抗効果素子および外部磁場再生方法 - Google Patents

磁気抵抗効果素子および外部磁場再生方法

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JPH09204612A
JPH09204612A JP8011573A JP1157396A JPH09204612A JP H09204612 A JPH09204612 A JP H09204612A JP 8011573 A JP8011573 A JP 8011573A JP 1157396 A JP1157396 A JP 1157396A JP H09204612 A JPH09204612 A JP H09204612A
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邦彦 石原
Hidefumi Yamamoto
英文 山本
Kazuhiko Hayashi
一彦 林
Junichi Fujikata
潤一 藤方
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 小さい外部磁場で大きな再生出力と対称な再
生波形を得ることが可能な人工格子磁気抵抗効果素子は
提案されていない。 【解決手段】 非磁性薄膜5を介して隣りあう一方の磁
性薄膜3に反強磁性薄膜4が隣接して設けられた磁気抵
抗効果素子において、反強磁性薄膜がNi酸化膜上にC
o酸化膜、或いはNiCo酸化膜を1〜30Å積層した
2層膜として構成され、かつその幅寸法であるMR高さ
が0.5〜1.5μm、磁性薄膜3の膜厚が10〜60
Åであり、検出電流によって磁性薄膜2に生じる電流磁
界の方向が、磁性薄膜3によって磁性薄膜2に生じる静
磁界の方向と逆方向であって、その検出電流の密度が
0.5〜5×107 A/cm2 である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は磁気記録媒体等に記
録された磁界強度を情報信号として読みとるための再生
ヘッド等に用いられる磁気抵抗効果素子に関し、特に小
さい外部磁場で大きな再生出力と対称な再生波形を得る
ための素子形状及びその外部磁場検出のための再生方法
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、磁気センサの高感度化および磁気
記録における高密度化が進められており、これに伴い磁
気抵抗効果型磁気センサ(以下、MRセンサという)お
よび磁気抵抗効果型磁気ヘッド(以下、MRヘッドとい
う)の開発が盛んに進められている。MRセンサもMR
ヘッドも磁性材料からなる読み取りセンサ部の抵抗変化
により外部磁界信号を読み出しているが、MRセンサお
よびMRヘッドは記録媒体との相対速度が再生出力に依
存しないことから、MRセンサでは高感度が、MRヘッ
ドでは高密度磁気記録においても高い出力が得られると
いう特徴がある。
【0003】最近、非磁性薄膜を介した磁性人工格子に
よる多層膜において、スピン依存散乱によるより顕著な
磁気抵抗効果が観測されている(フィジカル レビュー
レターズ(Phys.Rev.Lett.)第61
巻,2472頁,1988年)。この磁気磁気抵抗効果
は巨大磁気抵抗効果と呼ばれ、従来の磁気抵抗効果に比
べ桁違いに大きな抵抗変化を示すという特徴がある。特
開平2−61572号公報では、中間層により分離され
る少なくとも2層の強磁性層からなる磁場センサが記載
されており、境界面でスピン方向に依存する電子散乱が
生じる作用を及ぼす材料から構成されることが示されて
いる。
【0004】また、非磁性薄膜層を介して積層された少
なくとも2層の磁性薄膜を有しており、一方の軟磁性薄
膜に反強磁性薄膜を隣接して設けることで抗磁力を与
え、非磁性薄膜を介して隣接した他方の軟磁性薄膜を外
部磁界で磁化回転させることで抵抗変化させる巨大磁気
抵抗効果膜(またはスピンバルブと呼ばれる)がある
(フィジカル レビューB(Phys.Rev.B)第
43巻,1297頁,1991年,または特開平4−3
58310号公報)。
【0005】さらに、1995年6月2日付の本出願人
の出願になる特許願7−136670号には、非磁性薄
膜を介して積層されて複数の磁性薄膜からなり、非磁性
薄膜を介して隣り合う一方の磁性薄膜に反強磁性薄膜が
設けてあり、この反強磁性薄膜のバイアス磁界をHr、
他方の磁性薄膜の保磁力をHc2としたとき、Hc2<
Hrである磁気抵抗効果膜において、前記反強磁性薄膜
を、Ni酸化膜上にCo酸化膜を積層した2層膜とする
ことによって、ゼロ磁場前後で直線的に大きな抵抗変化
を示し、しかも耐食性に優れた磁気抵抗効果膜が得られ
ることが記載されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記先願の磁
気抵抗効果膜は、従来より大きな抵抗変化を提供するこ
とによる、磁気抵抗センサあるいは磁気ヘッドとしての
有用性は示されているが、実用的な磁気抵抗効果素子と
して、小さい外部磁場で大きな再生出力と対称再生波形
を得るためには、素子形状および外部磁場検出のための
再生方法を設定する必要があり、またこれらに関する記
載はこれまで十分ではなかった。
【0007】本発明の目的は、上記先願の磁気抵抗効果
膜による実用的な磁気抵抗効果素子として、小さい外部
磁場で大きな再生出力と対称な再生波形を得るために必
要な素子形状を有する磁気抵抗効果素子およびその外部
磁場検出のための再生方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、非磁性薄膜を
介して積層された複数の磁性薄膜からなり、前記非磁性
薄膜を介して隣り合う第1および第2の磁性薄膜のう
ち、第1の磁性薄膜の磁化方向を固定するための手段と
して第1の磁性薄膜に隣接して反強磁性薄膜が設けてあ
り、この反強磁性薄膜のバイアス磁界をHr、第2の磁
性薄膜の保磁力をHc2としたときHc2<Hrであ
り、かつ前記反強磁性薄膜がNi酸化膜上にCo酸化膜
あるいはNiCo膜を1〜30Å積層した2層膜である
人工格子磁気抵抗効果膜として構成され、かつ前記磁気
抵抗効果膜に検出電流を流すための一対の電極を設けた
磁気抵抗効果素子において、前記第1の磁性薄膜は、前
記反強磁性薄膜によって固定された磁化方向に対してほ
ぼ直交する方向のMR高さとしての素子幅が0.5〜
1.5μmとされ、かつその膜厚が10〜60Åとさ
れ、また前記磁気抵抗効果膜に流す検出電流によって前
記第2の磁性薄膜に生じる静磁界の方向と逆方向となる
ように設定され、さらに前記非複数の磁性薄膜の全膜厚
とMR高さによって設定される断面積に対して、流れる
検出電流の密度が、0.5〜5×107 A/cm2 であ
ることを特徴とする。
【0009】ここで、第1及び第2の磁性薄膜がそれぞ
れ複数の磁性薄膜で構成されていてもよく、また磁気抵
抗効果膜の膜平面形状が矩形であることが好ましい。ま
た、非磁性薄膜の膜厚が20から35Åであり、第2の
磁性薄膜の膜厚が10から100Åであることが好まし
い。さらに、第2の磁性薄膜の磁化容易軸方向が、第1
の磁性薄膜の固定磁化方向に対して略直交され、あるい
は外部磁場が導入されていない状態で第2の磁性薄膜の
磁化方向が、第1の磁性薄膜の固定磁化方向に対して略
直交していることが好ましい。
【0010】また、本発明は、第2の磁性薄膜を単磁区
化するために充分なバイアスを生じさせる手段を備えて
もよい。このバイアスを生じさせる手段は、第2の磁性
薄膜に隣接配置された永久磁石で構成され、あるいは第
2の磁性薄膜に隣接配置された反強磁性膜で構成され
る。
【0011】また、本発明の外部磁場の再生方法は、前
記した構成の磁気抵抗効果素子を用いて、この磁気抵抗
効果素子に導入される外部磁場を検出するに際し、第1
の磁性薄膜の固定磁化方向と外部磁場の方向とをほぼ平
行に向けることを特徴とする。
【0012】すなわち、上記した先願の磁気抵抗効果膜
では、非磁性層を介して積層された一方の磁性薄膜に、
隣接した反強磁性薄膜が成膜されることによって交換バ
イアス力が働き、外部磁場によって隣り合った磁性層の
磁化の向きが互いに平行から反平行となることによって
抵抗変化が生じる。すなわち、反強磁性薄膜によって交
換バイアスされた磁性薄膜の抗磁力をHr、他方の磁性
薄膜の保磁力をHc2(0<Hc2<Hr)として、外
部磁場がHc2とHrの間(Hc2<H<Hr)である
とき、隣り合った磁性薄膜の磁化の方向が互いに逆向き
になり、抵抗が増大する。
【0013】このため、上記の人工格子磁気抵抗効果膜
を外部磁場検出のために微細加工する際、その形状は少
なくとも、反強磁性薄膜に隣接した磁性薄膜の、反強磁
性薄膜によって固定された磁化方向に対して、ほぼ直交
して、ある幅を持って加工されてあり、かつ、前記磁化
方向に対して、磁気抵抗効果素子に導入される外部磁場
の方向が、ほぼ平行となるように配置されることが必要
であり、この場合において、微小外部磁場をより感度良
く検出することが可能となる。
【0014】しかし、上記のように微細加工が施された
磁気抵抗効果素子においては、加工された素子幅である
MR高さ方向の膜端部において、非磁性薄膜を介して隣
り合った磁性薄膜の間で静磁結合が生じるため、外部磁
場ゼロの状態でも膜端部では隣り合った磁性層間で磁化
が反平行状態となっている。すなわち、磁気抵抗効果膜
における保磁力Hc2の磁性薄膜は、反強磁性薄膜によ
って交換バイアスされた磁性薄膜のために、膜端部に過
剰なバイアス磁界が生じた状態といえる。このため、上
述のような構成条件のみでは、磁気センサあるいは磁気
ヘッドとした場合における再生波形の対称性は、非常に
非対称なものとなる。
【0015】一方、上記の磁気抵抗効果素子には外部磁
場検出のため、検出電流を流すための一対の電極が配置
されており、この検出電流によって生じる電流磁界によ
っても再生波形の対称性は大きく左右される。すなわ
ち、検出電流によって保持力Hc2の磁性薄膜に生じる
電流磁界の方向を、反強磁性薄膜によって交換バイアス
された磁性薄膜によって保持力Hc2の磁性薄膜に生じ
る静磁界の方向と逆方向になるように決定することによ
り、交換バイアスされた磁性薄膜による静磁界を弱める
ことができ、再生波形対称性の改善に効果を発揮する。
【0016】しかし、磁性層間に生じる静磁結合が膜端
部に限られるのに対し、検出電流による電流磁界は保持
力Hc2の磁性薄膜のMR高さ方向に対してほぼ一様な
バイアス磁界として働くため、上記の手段のみでは膜端
部と膜中央部で磁化方向に分布が生じることが避けられ
ない。磁気ヘッドに適用する場合、媒体からの磁場は媒
体対向面からMR高さ方向に行くに従って急激に減少す
るという分布をもつため、上記のようなMR高さ方向で
膜端部と膜中央部において磁化方向に分布が生じること
は、再生波形の対称性改善が充分できなくなるばかりで
なく、磁壁が生じることによるノイズ問題も懸念され、
更には再生出力の向上も期待できず、上記の構成のみで
は波形対称性改善のための根本的な改善とはならない。
【0017】この問題を解決するためには、反強磁性薄
膜によって交換バイアスされた磁性薄膜の膜厚をできる
だけ薄くすることが有効である。これは、交換バイアス
された磁性薄膜によって、もう一方の磁性薄膜に生じる
静磁界をできるだけ弱めるという効果があり、交換バイ
アスされた磁性薄膜の膜厚が60Å以下で大きな効果が
発揮されてくる。しかし、交換バイアスされた磁性薄膜
の下限は磁気抵抗効果素子としてMR比が維持される1
0Åであり、またMR高さが1.5μmより大きい場合
には上記のようなMR高さ方向で膜端部と膜中央部にお
いて磁化方向に分布が生じることは避けられない。
【0018】したがって、上記した問題を全て解決する
ための最も有効な手段は、検出電流の方向規定、並びに
交換バイアスされた磁性薄膜の膜厚を減少させるのに加
え、MR高さも同時に減少させることである。すなわ
ち、交換バイアスされた磁性薄膜の膜厚減少によって、
もう一方の磁性薄膜に生じる静磁界を弱めるだけでな
く、MR高さの減少によって静磁界のおよぶ範囲が相対
的に膜中央部にまでおよぶようになるため、MR高さ方
向に沿った磁化方向の分布が均一となり、再生波形の対
称性の改善並びに再生出力の向上が可能となる。ただ
し、MR高さの下限は反磁界の影響で再生出力の向上が
見込まれなくなる0.5μmによって決定される。これ
より、再生波形の対称性並びに再生出力の向上が得られ
るのは、MR高さが0.5から1.5μmであり、かつ
交換バイアスされた磁性薄膜の膜厚が10から60Åの
範囲にある場合である。
【0019】また、非磁性薄膜を介して積層された複数
の磁性薄膜の全膜厚とMR高さによって決定された断面
積に対して、流れる検出電流の密度が0.5×107
/cm2 より小さい場合に、上記の交換バイアスされた
磁性薄膜による静磁界を弱めるための効果が低下するば
かりでなく、再生出力への寄与が減少するため有用では
ない。さらに、検出電流の密度が5×107 A/cm2
より大きい場合には、エレクトロマイグレーションの問
題により信頼性が確保できなくなり、同様に有用ではな
くなる。
【0020】さらに、前記非磁性薄膜の膜厚および保持
力がHc2の磁性薄膜の膜厚は、磁気抵抗効果素子のM
R比が維持される膜厚として、それぞれ20から35Å
および10から100Åである。
【0021】以上のような構成条件において、保持力H
c2の磁性薄膜の磁化方向が、交換バイアスされた磁性
薄膜の磁化方向とほぼ直交した状態となり、小さな外部
磁場を感度良く検出し、大きな再生出力と対称な再生波
形を得ることが可能となる。
【0022】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施形態を図面を
参照して説明する。図1は、磁気抵抗効果素子の構造を
示したものであり、磁気抵抗効果素子の微細加工素子幅
は図1に示すMR高さに相当する。磁気抵抗効果膜は、
反強磁性薄膜4上に磁性薄膜2および3を有し、これら
の2層の磁性薄膜2,3の間に非磁性薄膜5を有する。
この磁気抵抗効果膜で構成される磁気抵抗効果素子1に
は、磁性薄膜2を単磁区化するための永久磁石膜6が隣
接して配置されており、また前記磁気抵抗効果素子1に
検出電流を流すための電極7が設けられている。反強磁
性薄膜4によって交換バイアスされた磁性薄膜3の磁化
方向は、図1に示すMR高さ方向であり、また磁性薄膜
2の容易軸方向は、磁性薄膜3の磁化方向とほぼ直交す
るように成膜されている。磁気抵抗効果素子1に流す検
出電流の方向は、検出電流によって磁性薄膜2に生じる
電流磁界の方向が、磁性薄膜3によって磁性薄膜2に生
じている静磁界の方向と逆方向となるように設定した。
【0023】ここで、反強磁性薄膜4は、Ni酸化膜上
にCo酸化膜あるいはNiCo酸化膜を1〜30Åの範
囲で積層した2層膜構造において、磁性薄膜3に良好な
交換バイアスを実現することができ、かつ磁気抵抗効果
素子の出力のヒステリシスがない良好な特性を示した。
また、磁性薄膜3が10〜60Åと薄い領域においても
十分高いMR比を実現し良好な磁気抵抗効果を示したた
め、以下反強磁性薄膜4には上記の範囲のものを用い
た。
【0024】図2はかかる磁気抵抗効果素子1の上下を
絶縁層を介してシールド層としての高透磁率軟磁性材料
で挟んでシールド型磁気抵抗効果ヘッドを構成した場合
に、その出力をMR高さおよび磁性薄膜3の膜厚をパラ
メータとして測定した結果を表したものである。ここ
で、磁性薄膜3/非磁性薄膜5/磁性薄膜2の構成は、
NiFe(パラメータ)/Cu(25Å)/NiFe
(50Å)である。また、検出電流は、磁性薄膜3/非
磁性薄膜5/磁性薄膜2の3層部分に対して2×107
A/cm2 となるように決定した。また、図3はこの場
合における再生波形の対称性を示したものである。ただ
し、波形対称性は正負ピークの差と和の比によって定義
した。
【0025】図2から判るように、再生出力はMR高さ
の減少にしたがって増大していくが、MR高さ0.5μ
m以下では、磁性薄膜3の膜厚がいずれの場合において
も大きく減少していることがわかる。また、磁性薄膜3
の膜厚が10Åより小さい場合は抵抗変化をほとんど示
さず、出力が観測されなかった。一方、図3から判るよ
うに、再生波形の対称性は、それぞれのMR高さの最適
な磁性薄膜3の膜厚を選ぶことで良好を対称性が得られ
るが、MR高さが1.5μmより大きい場合あるいは磁
性薄膜3の膜厚が60Åより厚い場合には、再生波形に
ノイズが多く見られ、実用上問題がある。
【0026】この結果を磁気抵抗効果素子の内部磁化分
布から説明する。ここでは、上記の構造を有するシール
ド型磁気抵抗効果ヘッドの信号磁界の変化に対する3次
元磁化解析を行った結果について示す。図4はMR高さ
2μm、磁性薄膜3の膜厚が70Åの場合について、磁
化のMR高さ方向の成分を規格化してMR高さ方向に沿
って示したものである。図中には、信号磁界ゼロの場合
と同時に、信号磁界がMR高さ方向に沿ってプラスある
いはマイナス方向に印加された場合についても示してあ
る。
【0027】この図より、MR高さ2μmでは磁性薄膜
3によって磁性薄膜2に生じている静磁界の及ぶ範囲が
膜端部に限られ、膜中央部と膜端部では磁化方向に大き
な分布が生じていることがわかる。さらに、磁性薄膜3
の膜厚が70Åと厚いため、膜端部における静磁結合が
更に強くなり、膜中央部と膜端部での磁化方向の分布、
つまり磁化方向の差を更に助長していることがわかる。
すなわち、磁性薄膜2の磁化は、膜中央部と膜端部でM
R高さ方向に沿ってプラスあるいはマイナスを向いた分
布をとっており、磁化状態の乱れた、磁壁の存在する状
態であることがわかる。これが、上述した再生波形にお
けるノイズを引き起こしていると考えられ、これを避け
るためにはMR高さは1.5μm以下、また磁性薄膜3
の膜厚は60Å以下であることが必要である。
【0028】このような傾向は、比磁性薄膜5の膜厚が
20〜35Åにおいて見られたが、この範囲を越えると
抵抗変化が著しく減少し出力が得られない。また、磁性
薄膜2の膜厚も10Å以上で同様の傾向を示すが、これ
より薄い場合は抵抗変化が著しく減少した。磁性薄膜2
の膜厚の上限は100Å程度であり、これ以上では反磁
界の影響で磁場感度が落ちるため、実用上有益ではな
い。
【0029】また、上記の全ての条件に対して、検出電
流の密度を変化させたが、0.5×107 A/cm2
り小さい場合には再生出力は著しく減少し、また5×1
7A/cm2 より大きい場合には測定中に断線が頻発
し信頼性の面で問題のあることが認められた。
【0030】さらに、非磁性薄膜5を介して存在する磁
性薄膜2、磁性薄膜3の一方あるいは両方が複数の磁性
薄膜からなる場合、例えば(NiFe/Co)/Cu/
NiFeあるいは(NiFe/Co)/Cu/(Co/
NiFe)のような構成の磁気抵抗効果素子において
も、上記と同様な傾向を示すことが確認されている。さ
らに、磁性薄膜2を単磁区化するための手段は、隣接し
て配置された反強磁性膜であってもこの傾向を変えるも
のではなく、またヨーク型磁気抵抗センサにおいても同
様の結果が得られた。
【0031】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、非
磁性薄膜を介して積層された複数の磁性薄膜からなり、
前記非磁性薄膜を介して隣り合う第1および第2の磁性
薄膜のうち、第1の磁性薄膜の磁化方向を固定するため
の手段として第1の磁性薄膜に隣接して反強磁性薄膜が
設けてあり、この反強磁性薄膜のバイアス磁界をHr、
第2の磁性薄膜の保磁力をHc2としたときHc2<H
rであり、かつ前記反強磁性薄膜がNi酸化膜上にCo
酸化膜あるいはNiCo膜を1〜30Å積層した2層膜
である人工格子磁気抵抗効果膜として構成され、かつ前
記磁気抵抗効果膜に検出電流を流すための一対の電極を
設けた磁気抵抗効果素子において、前記第1の磁性薄膜
は、前記反強磁性薄膜によって固定された磁化方向に対
してほぼ直交する方向のMR高さとしての素子幅が0.
5〜1.5μmとされ、かつその膜厚が10〜60Åと
され、また前記磁気抵抗効果膜に流す検出電流によって
前記第2の磁性薄膜に生じる静磁界の方向と逆方向とな
るように設定され、さらに前記非複数の磁性薄膜の全膜
厚とMR高さによって設定される断面積に対して、流れ
る検出電流の密度が、0.5〜5×107 A/cm2
あり、その上で第1の磁性薄膜の固定された磁化方向に
対して、磁気抵抗効果素子に導入される外部磁場の方向
がほぼ平行となるように配置して外部磁場の再生を行う
ので、実用的な磁気抵抗効果素子として、小さい外部磁
場で大きな再生出力と対称な再生波形を得ることが可能
となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気抵抗効果素子の一部を破断した斜
視図である。
【図2】磁気抵抗効果素子の再生出力のMR高さと磁性
薄膜の膜厚依存性を示す図である。
【図3】磁気抵抗効果素子の再生波形の対称性のMR高
さと磁性薄膜の膜厚依存性を示す図である。
【図4】磁気抵抗効果素子の磁性薄膜の内部磁化分布を
示す図である。
【符号の説明】
1 磁気抵抗効果素子 2 磁性薄膜 3 磁性薄膜 4 反強磁性薄膜 5 非磁性薄膜 6 永久磁石膜 7 電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤方 潤一 東京都港区芝五丁目7番1号 日本電気株 式会社内

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非磁性薄膜を介して積層された複数の磁
    性薄膜からなり、前記非磁性薄膜を介して隣り合う第1
    および第2の磁性薄膜のうち、第1の磁性薄膜の磁化方
    向を固定するための手段として第1の磁性薄膜に隣接し
    て反強磁性薄膜が設けてあり、この反強磁性薄膜のバイ
    アス磁界をHr、第2の磁性薄膜の保磁力をHc2とし
    たときHc2<Hrであり、かつ前記反強磁性薄膜がN
    i酸化膜上にCo酸化膜あるいはNiCo膜を1〜30
    Å積層した2層膜である人工格子磁気抵抗効果膜として
    構成され、かつ前記磁気抵抗効果膜に検出電流を流すた
    めの一対の電極を設けた磁気抵抗効果素子において、前
    記第1の磁性薄膜は、前記反強磁性薄膜によって固定さ
    れた磁化方向に対してほぼ直交する方向のMR高さとし
    ての素子幅が0.5〜1.5μmとされ、かつその膜厚
    が10〜60Åとされ、また前記磁気抵抗効果膜に流す
    検出電流によって前記第2の磁性薄膜に生じる静磁界の
    方向と逆方向となるように設定され、さらに前記非複数
    の磁性薄膜の全膜厚とMR高さによって設定される断面
    積に対して、流れる検出電流の密度が、0.5〜5×1
    7 A/cm2 であることを特徴とする磁気抵抗効果素
    子。
  2. 【請求項2】 第1及び第2の磁性薄膜がそれぞれ複数
    の磁性薄膜で構成される請求項1の磁気抵抗効果素子。
  3. 【請求項3】 磁気抵抗効果膜の膜平面形状が矩形であ
    る請求項1または2の磁気抵抗効果素子。
  4. 【請求項4】 非磁性薄膜の膜厚が20から35Åであ
    る請求項1ないし3のいずれかの磁気抵抗効果素子。
  5. 【請求項5】 第2の磁性薄膜の膜厚が10から100
    Åである請求項1ないし4のいずれかの磁気抵抗効果素
    子。
  6. 【請求項6】 第2の磁性薄膜の磁化容易軸方向が、第
    1の磁性薄膜の固定磁化方向に対して略直交されてなる
    請求項1ないし5のいずれかの磁気抵抗効果素子。
  7. 【請求項7】 外部磁場が導入されていない状態で第2
    の磁性薄膜の磁化方向が、第1の磁性薄膜の固定磁化方
    向に対して略直交している請求項1ないし5のいずれか
    の磁気抵抗効果素子。
  8. 【請求項8】 第2の磁性薄膜を単磁区化するために充
    分なバイアスを生じさせる手段を備える請求項1ないし
    7のいずれかの磁気抵抗効果素子。
  9. 【請求項9】 バイアスを生じさせる手段は、第2の磁
    性薄膜に隣接配置された永久磁石である請求項8の磁気
    抵抗効果素子。
  10. 【請求項10】 バイアスを生じさせる手段は、第2の
    磁性薄膜に隣接配置された反強磁性膜である請求項8の
    磁気抵抗効果素子。
  11. 【請求項11】 請求項1ないし10の磁気抵抗効果素
    子を用いて、この磁気抵抗効果素子に導入される外部磁
    場を検出するに際し、第1の磁性薄膜の固定磁化方向と
    外部磁場の方向とをほぼ平行に向けることを特徴とする
    磁気抵抗効果素子の外部磁場再生方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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