JPH09201965A - 発熱抵抗体、インクジェット記録ヘッド用基体、インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置 - Google Patents

発熱抵抗体、インクジェット記録ヘッド用基体、インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置

Info

Publication number
JPH09201965A
JPH09201965A JP1091496A JP1091496A JPH09201965A JP H09201965 A JPH09201965 A JP H09201965A JP 1091496 A JP1091496 A JP 1091496A JP 1091496 A JP1091496 A JP 1091496A JP H09201965 A JPH09201965 A JP H09201965A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
recording head
tan
ink jet
ink
jet recording
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP1091496A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3391967B2 (ja
Inventor
Masaaki Izumida
昌明 泉田
Hiroyuki Ishinaga
博之 石永
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to JP1091496A priority Critical patent/JP3391967B2/ja
Publication of JPH09201965A publication Critical patent/JPH09201965A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3391967B2 publication Critical patent/JP3391967B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 ダブルヒーターを有する、高密度で耐久性に
優れた多値インクジェット記録ヘッドを提供する。 【解決手段】 熱エネルギーを用いて吐出口からインク
を吐出して記録媒体に記録を行うインクジェット記録ヘ
ッドにおいて、発熱抵抗体(抵抗層104)がTaN
0.8 の結晶構造を含むことを特徴とする多値インクジェ
ット記録ヘッド。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、熱エネルギーを利
用して液体、例えばインクを吐出、好ましくは飛翔させ
て、普通紙、加工紙、布、OHP用紙等の媒体に所望の
画像を形成するためのインクジェット記録ヘッド及びイ
ンクジェット記録装置、更に、インクジェット記録ヘッ
ド用発熱抵抗体、及びインクジェット記録ヘッド用発熱
部材(基体)に関し、特に、ノズル内に複数の発熱素子
を有する多値インクジェット記録ヘッドの高密度化の実
現と発熱抵抗体がTaN0.8 の結晶構造を含むことで耐
久性、発熱状態の安定化を達成できるヘッドに関する。
本発明のインクジェット記録ヘッドは、プリンタ、ファ
クシミリや複写機、あるいは複合機等の各種の出力機能
を持つ機器や、それを用いて所望記録を所望媒体にプリ
ントするシステムにも適用可能である。
【0002】
【従来の技術】熱エネルギーを利用してインクを吐出、
好ましくは飛翔させて、普通紙、加工紙、布、OHP用
紙等の媒体に所望の画像を形成するための記録装置とし
ては、インクジェット方式が有効であることが確認され
ている。中でも、バブルジェット方式は膜沸騰をインク
に対して生じせしめ、インク滴を吐出させて、安定した
オンデマンド記録を達成できるもので、その基本的な特
許としては米国特許第4,849,774号明細書(西
ドイツ登録第2843064号明細書)に記載されたも
のがある。
【0003】この特許には、インク吐出用発熱抵抗体の
例として窒化タンタル(tantalum nitride)、HfB2
等が挙げられている。これらの基本的な特許が完成する
段階では、これらの発熱抵抗体は、当時(1977年以
前)の水準でのプリント速度やプリント条件を満足させ
ていた。しかし、10〜64等の多数の吐出口に対する
安定化や耐久性等の近年(1983年以降現在)の市場
要求を満足して実用化されているものは、窒化タンタル
ではなく、HfB2 やTaAlに限られている。つま
り、上記公報で認識されていた窒化タンタルは、米国特
許第3,242,006号明細書に記載されているよう
な、TaN抵抗体単体、Ta2 N抵抗体単体あるいはこ
れらを混在させた抵抗体に過ぎなかった。
【0004】窒化タンタルを発熱抵抗体として使用し、
感熱紙やインクリボンに直接接触するサーマルヘッドに
関する公知資料は数多くある。しかし、この発熱抵抗体
は、上記米国特許第3,242,006号明細書におい
て開示される抵抗体と同等である。特殊なものとして
は、米国特許第4,737,709号明細書に記載され
ている(101)方向に配向されたTa2 N発熱抵抗体
がある。この米国特許の発明は、Ta2 N発熱抵抗体の
中でも配向性に注目し、耐久性を向上できるものとして
(101)方向の配向のTa2 N発熱抵抗体を採用した
ものである。
【0005】ここで注目すべきは、サーマルヘッドでは
主として実用化されているTaN発熱抵抗体が、インク
ジェット記録ヘッドには実用化されていない現状が存在
することである。この現実を検討すると、以下の理由を
挙げることができる。即ち、サーマルヘッドでは、発熱
抵抗体に印加される電力は1msecの間に1W程度で
あるのに対して、インクジェット記録ヘッドでは、短時
間にインクを気化させるために、例えば7μsecの間
に3W以上4W以下の電力を発熱抵抗体に印加すること
になる。これは、サーマルヘッドの発熱抵抗体に印加す
る電力の数倍の大きさである。したがって、従来の窒化
タンタル(TaN抵抗体単体、Ta2 N抵抗体単体ある
いはこれらを混在させた抵抗体)をインクジェット記録
ヘッドの発熱抵抗体として使用して駆動すると、この発
熱抵抗体は電力の印加により短期間でその抵抗値が大き
くなる傾向を示す。この抵抗値変化は、サーマルヘッド
でも多少見られるが画像の急激な劣化を引き起こすもの
ではない。これに対して、インクジェット記録ヘッドで
は、気泡の発生を不安定な状態にして、インク滴自体の
量の減少を招き、その結果として記録品位を低下させて
しまうのである。同様にTa2 N抵抗体は、同様の電力
印加により逆に抵抗値が著しく減少し、初期的に断線に
至り、ヘッドとしては実用化できないものであることが
わかった。
【0006】以上の点から、従来知られているサーマル
ヘッドの分野におけるTaN発熱抵抗体は、現実的には
近来のインクジェットヘッドには実用化されておらず、
その実用レベルでは、主としてHfB2 が使用されてい
る。
【0007】そのような中で、インクジェット記録ヘッ
ドに関しては、特公昭62−48585号公報に記載さ
れているようにノズル内に複数の発熱素子を設けた多値
出力のカラーインクジェットヘッドが考案されている。
例えば、ノズル内に2つの発熱素子を設けてそれぞれ個
別に駆動ドライバに接続し、独立駆動できるように構成
し、さらに素子サイズを、例えば1:2のように別にす
る。このとき、小ヒーターによる印字ドットを1とすれ
ば、大ヒーターによる印字ドットは2となり、両ヒータ
ーを同時に駆動させると印字ドットは4となることを利
用して、1ノズルで4値の諧調性を得ようとするもので
ある。この素子構成を以下ダブルヒーターと称する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】HfB2 は、上記窒化
タンタル(TaN単体、Ta2hex 単体)に比べて、
インクジェット記録ヘッドの発熱抵抗体の材料として実
用化水準を満足するものとして評価され使用されてはい
るものの、更なる市場要求を満足するに足るレベルを安
定して得ることが難しく、本発明者達によって、特に、
多値出力のインクジェット記録ヘッドには、不都合な問
題点があることが見い出された。
【0009】すなわち、HfB2 膜は、通常RFスパッ
タリング法により作製されるが、HfB2 は不純物が1
%以上含まれているため抵抗体に欠陥発生確率が高く、
ヒーター耐久性のばらつきが大きい、更にダブルヒータ
ーでは、同じ印字密度を得るために、従来のヘッドの発
熱素子が1回駆動する間に、2回駆動しなければならな
い。しかも、ダブルヒーターは数μmのギャップで隣接
しているため、お互いの発熱の影響を大きく受け、その
結果、発熱素子への熱ストレスが非常に大きくなり、H
fB2 では従来素子の1/2以下の耐久性しかないこと
がわかった。
【0010】さらに、ダブルヒーターの場合、ヒーター
に1:1の駆動トランジスタが必要でありノズル密度の
倍の素子密度がトランジスタに要求される。例えば36
0DPIであれば35μmであり、900DPIであれ
ば15μmとなる。従来の発熱素子はバイポーラトラン
ジスタが一般的であり、ノズル方向の素子密度は、せい
ぜい70μmであった。それ以上素子密度を上げる場合
には、トランジスタを2段構成にする等の工夫が必要で
あって、そのような場合、配線が複雑になり、ヘッド基
体の形状が大きくなってしまうことがわかった。
【0011】以上から、本発明の主たる目的は、多値イ
ンクジェット記録ヘッド用のダブルヒーターについて前
述した諸問題を解決し、高密度で耐久性に優れたインク
ジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置を提供
することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、1
ノズル内に複数の発熱素子が設けられる多値出力ヘッド
であり、発熱抵抗体からの熱エネルギーを用いて吐出口
からインクを吐出して記録媒体に記録を行うインクジェ
ット記録ヘッドにおいて、前記発熱抵抗体が、TaN
0.8 の結晶構造を含むことを特徴とするインクジェット
記録ヘッドにより達成できる。
【0013】また、本発明は、TaN0.8 の結晶構造を
含むことを特徴とするインクジェット記録ヘッド用発熱
抵抗体、この発熱抵抗体を備えることを特徴とするイン
クジェット記録ヘッド用基体、発熱素子の駆動トランジ
スタがNーMOSトランジスタである上記本発明のイン
クジェット記録ヘッド、及び、記録媒体の被記録面に対
してインクを吐出する吐出口が設けられている上記本発
明のインクジェット記録ヘッドと該ヘッドを載置するた
めの部材とを少なくとも具備する事を特徴とするインク
ジェット記録装置をも包含する。
【0014】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態に
ついて説明する。
【0015】図1は、本発明のインクジェット記録ヘッ
ド用基体100のインク路に相当する部分の断面構成を
示す模式的断面図である。図1中、101はシリコン基
板、102は蓄熱層であるところの熱酸化膜を示す。1
03は蓄熱層を兼ねる層間膜であるところのSiO膜ま
たはSiN膜、104は抵抗層、105はAlまたはA
l−Si、Al−Cu等のAl合金配線、106は保護
膜であるところのSiO膜、SiN膜またはSiO膜を
示す。107は抵抗層104の発熱に伴う化学的、物理
的衝撃から保護膜106を守るための耐キャビテーショ
ン膜である。108は、電極配線105が形成されてい
ない領域の抵抗層104の熱作用部である。
【0016】抵抗層104は、機能素子としての発熱抵
抗体を電極としての配線105間に位置せしめる層であ
る。本発明は抵抗層104により構成さえれる発熱抵抗
体がTaN0.8 の結晶構造を含むことを特徴としてい
る。これは、例えば、TaN0. 8 及びTa2 Nを含み、
より好ましくはそのTaN0.8 が17mol%以上10
0mol%未満であるかあるいは、TaN0.8 及びTa
Nを含み、より好ましくはそのTaN0.8 が20mol
%以上100mol%未満である。製法としては、例え
ば、タンタル(Ta)材料(純度99.99%)をター
ゲットに使用し、アルゴンガス(Ar)及び窒素ガス
(N2 )をスパッタリングガスに使用し、N 2 分圧、雰
囲気温度及び基板温度をそれぞれ所定範囲にコントロー
ルして反応性スパッタリング法により前記タンタルター
ゲットを前記スパッタリングガスでスパッタすることに
より、TaN0.8 を有する微細な多結晶質膜が得られ
る。このTaN0.8 を有する膜をダブルヒーター用発熱
抵抗体に使用すれば、該発熱抵抗体は、長期の連続使用
にあっても抵抗値の変動は極めて少なく、長寿命で信頼
性の高いものとなる。図1の例では発熱抵抗体部分は無
論のこと、抵抗層104全体がTaN0.8 を含む構成と
なっている。このTaN0.8 を含む発熱抵抗体は、製造
上のばらつきが少なく、同一基板(あるいは基体)に多
数の発熱抵抗体を形成しても、機能効果の安定性が得ら
れる。さらに、通電を各種の条件で行っても、抵抗変化
が少なく、多数の発熱抵抗体夫々の機能が安定して同等
の作用を発揮することができる。
【0017】図2は、図1の基体構成を応用したダブル
ヒーターをレイアウトしたインクジェット記録ヘッド用
基体の1ノズル分の要部上面図である。ダブルヒーター
は、図1の構成を発熱抵抗体201として備えており、
201、202、2素子1組のsegmentで1ノズ
ル用である。ダブルヒーター2素子間は、数μmで構成
されている。201と202は、個別に駆動ドライバ2
03と204に接続されている。203は電力供給ライ
ンである。
【0018】図3は、インクジェット記録ヘッド基体の
等価回路である。図3中、1ノズル内に構成されるダブ
ルヒーター(発熱抵抗体201、202)と駆動トラン
ジスタであるN−MOSトランジスタ301の他、CM
OSトランジスタで構成される駆動信号処理のためのシ
フトレジスタ302、データを保持するラッチ303、
ノズルをブロック分割するためのブロック選択信号30
4及びそれらのデータと駆動パルス信号305をAND
する306等から構成される。さらに、温度調整用サブ
ヒーター307、温度センサー308、ヒーターの抵抗
値モニター用ヒーター309などが構成されている。こ
れら駆動素子は、半導体技術によりSi基板に形成さ
れ、熱作用部が同一基板に更に形成される。
【0019】図4に、基体の主要素子を縦断するよう切
断した時の模式的断面図を示す。P導電体のSi基板4
01上に、一般的なMOSプロセスを用いイオンプラン
テーション等の不純物導入及び拡散によりN型ウエル領
域402にP−MOS450、P型ウエル領域403に
N−MOS451が構成される。P−MOS450及び
N−MOS451は、それぞれ厚さ数百オングストロー
ムのゲート絶縁膜408を介して4000オングストロ
ーム以上5000オングストローム以下の厚さにCVD
法で堆積したpoly−Siによるゲート配線415及
びN型あるいはP型の不純物導入をしたソース領域40
5、ドレイン領域406等で構成され、それらP−MO
SとN−MOSによりC−MOSロジックが構成され
る。また、素子駆動用N−MOSトランジスタは、やは
り不純物導入及び拡散等の工程によりP−ウエル基板中
にドレイン領域411、ソース領域412、及びゲート
配線413等で構成される。
【0020】ここで、素子駆動ドライバに、N−MOS
トランジスタを使うと、1つのトランジスタを構成する
ドレインゲート間の距離Lは、最小値で約10μmであ
りダブルヒーターでも十分900DPI以上の密度が可
能である。10μmの内訳は、ソースとドレインのコン
ダクト417が2×2μmであるが、実際の半分は隣の
トランジスタと兼用なのでその1/2で、2μmであ
り、コンダクト417とゲート413間が2×2μmで
4μm、ゲート413が4μmであり、計10μmとな
る。また、各素子間は、5000オングストローム以上
10000オングストローム以下の厚さのフィールド酸
化により、酸化膜分離領域453を形成し、素子分離さ
れている。このフィールド酸化膜は、熱作用部108下
においては一層目蓄熱層414として作用する。
【0021】各素子が形成された後、層間絶縁膜416
が約7000オングストロームの厚さにCVD法による
PSG、BPSG等で堆積され、熱処理により平坦化処
理等をされてからコンタクトホールを介し、一層目Al
電極417(コンダクト)により配線が行われている。
その後、プラズマCVD法によるSiO等の層間絶縁膜
418を10000オングストローム以上15000オ
ングストローム以下の厚さに堆積し、更にスルーホール
を介して、抵抗層104として約1000オングストロ
ームの厚さの本発明にかかるTaN0.8 hex 膜をDCス
パッタ法により形成する。その後、各発熱体への配線と
なる二層目Al電極を形成する。次に、保護膜106と
しては、プラズマCVDによるSiN膜が、約1000
0オングストロームの厚さに成膜される。最上層には耐
キャビテーション膜107としてTa等で約2000オ
ングストロームの厚さに堆積される。
【0022】記録ヘッド基体完成後は、図5に示すよう
に、インクの吐出のための吐出口等が形成されてインク
ジェット記録ヘッドとなる。図5中、100は基体、1
10は発熱部、500は吐出口、501は液路壁部材、
502は天板、503はインク供給口、504は共通液
室、505は液路、506は配線、510は記録ヘッド
である。図6は、インクジェットヘッドの発熱素子の駆
動と発泡とインク液滴の吐出模式図である。図6中、6
01はインク吐出液、602は発泡、603はインク、
604は駆動手段、605はシフトレジスタ、207は
インク吐出口である。
【0023】本発明のインクジェット記録ヘッドに適用
し得る記録用の液体(インク)としては様々なものが使
用可能であるが、一般的には、染料0.5wt%〜20
wt%、(多価)アルコール、ポリアルキレングリコー
ル等の水溶性有機溶剤10wt%〜90wt%のインク
組成を持つものを好ましく用いることができ、その具体
的なインク組成の一例としては、C.I.フードブラッ
ク2を3wt%、ジエチレングリコールを25wt%、
N−メチル−2−ピロリドンを20wt%、水を52w
t%とする構成を挙げることができる。
【0024】次に、本発明の記録ヘッドを用いたインク
ジェット記録装置について図7を参照して説明する。図
7は本発明が適用されるインクジェット記録装置210
0の一例を示す概観斜視図である。
【0025】記録ヘッド2200は、駆動モータ210
1の正逆回転に連動して駆動力伝達ギア2102、21
03を介して回転するリードスクリュー2104の螺旋
溝2121に対して係合するキャリッジ2120上に搭
載されており、前記駆動モータ2101の動力によって
キャリッジ2120とともにガイド2119に沿って矢
印a、b方向に往復移動される。図示しない記録媒体給
送装置によってプラテン2106上に搬送される記録用
紙P用の紙押え板2105は、キャリッジ移動方向にわ
たって記録用紙Pをプラテン2106に対して押圧す
る。
【0026】2107、2108はフォトカプラであ
り、キャリッジ2120のレバー2109のこの域での
存在を確認して駆動モータ2101の回転方向切換等を
行うためのホームポジション検知手段である。2110
は上述の記録ヘッド2110の全面をキャップするキャ
ップ部材2111を支持する支持部材で、2112は前
記キャップ部材2111内を吸引する吸引手段で、キャ
ップ内開口2113を介して記録ヘッド2200の吸引
回復を行う。2114はクリーニングブレードで、21
15はこのブレードを前後方向に移動可能にする移動部
材であり、本体支持板2116に、これらは支持されて
いる。クリーニングブレード2114は、この形態でな
く周知のクリーニングブレードが本実施例に適用できる
ことはいうまでもない。
【0027】また、2117は、吸引回復の吸引を開始
するためのレバーで、キャリッジ2120と係合するカ
ム2118の移動に伴って移動し、駆動モータ2101
からの駆動力がクラッチ切換等の公知の伝達手段で移動
制御される。前記記録ヘッド2200に設けられた発熱
部2110に信号を付与したり、上述した各機構の駆動
制御を司ったりする記録制御部は、記録装置本体側に設
けられている(不図示)。
【0028】上述のような構成のインクジェット記録装
置2100は、前記記録媒体給送装置によってプラテン
2106上に搬送される記録用紙Pに対し、記録ヘッド
2200が前記記録用紙Pの全幅にわたって往復移動し
ながら記録を行うものであり、記録ヘッド2200は上
述したような方法で製造したものを用いているため、高
精度で高速な記録が可能である。
【0029】また、インクジェット記録装置には、記録
ヘッドに対してインクを吐出させるための電気信号を付
与するための電気信号付与手段を有している。また、イ
ンクジェット記録装置としては、上述のような記録媒体
に記録を行う形態だけではなく、布等に模様を描いて記
録する捺染装置も、その一態様である。この捺染装置に
おいては、長い反物に連続して記録を行うため、記録途
中での断線や抵抗値の変動の大きな変動による記録品位
の低下の生じにくい本発明の発熱抵抗体を備えるインク
ジェット記録ヘッドの適用は特に望ましいものである。
【0030】本発明は、特にインクジェット記録方式の
中でもキャノン(株)の提唱する、熱エネルギーを利用
してインクを吐出する方式の記録ヘッド、記録装置にお
いて、優れた効果をもたらすものである。
【0031】その代表的な構成や原理については、例え
ば、米国特許第4,723,129号明細書、同第4,
740,796号明細書に開示されている基本的な原理
を用いて行うものが好ましい。
【0032】この方式はいわゆるオンデマンド型、コン
ティニュアス型のいずれにも適用可能であるが、特に、
オンデマンド型の場合には、液体(インク)が保持され
ているシートや液路に対応して配置されている電気熱変
換体に、記録情報に対応していて核沸騰を越える急速な
温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号を印加する
ことによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せし
め、記録ヘッドの熱作用面に膜沸騰させて、結果的にこ
の駆動信号に一対一対応し液体(インク)内の気泡を形
成できるので有効である。この気泡の成長、収縮により
吐出用開口を介して液体(インク)を吐出させて、少な
くとも一つの滴を形成する。この駆動信号をパルス形状
とすると、即時適切に気泡の成長収縮が行なわれるの
で、特に応答性に優れた液体(インク)の吐出が達成で
き、より好ましい。このパルス形状の駆動信号として
は、米国特許第4,463,359号明細書、同第4,
345,262号明細書に記載されているようなものが
適している。なお、前記熱作用面の温度上昇率に関する
発明の米国特許第4,313,124号明細書に記載さ
れている条件を採用すると、さらに優れた記録を行うこ
とができる。
【0033】記録ヘッドの構成としては、上述の各明細
書に開示されているような吐出口、液路、電気熱変換体
の組み合わせ構成(直線状液流路または直角液流路)の
他に、熱作用部が屈曲する領域に配置されている構成を
開示する米国特許第4,558,333号明細書、米国
特許第4,459,600号明細書を用いた構成も本発
明に含まれるものである。加えて、複数の電気熱変換体
に対して、共通するスリットを電気熱変換体の吐出部と
する構成を開示する特開昭59−123670号公報や
熱エネルギーの圧力波を吸収する開口を吐出部に対応さ
せる構成を開示する特開昭59−138461号公報に
基づいた構成においても本発明は有効である。
【0034】さらに、記録装置が記録できる最大記録媒
体の幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記録
ヘッドとしては、上述した明細書に開示されているよう
な複数記録ヘッドの組み合わせによってその長さを満た
す構成や一体的に形成された一個の記録ヘッドとしての
構成のいずれでもよいが、本発明は、上述した効果を一
層有効に発揮することができる。
【0035】加えて、装置本体に装着されることで、装
置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給
が可能になる交換自在のチップタイプの記録ヘッド、あ
るいは記録ヘッド自体に一体的に設けられたカートリッ
ジタイプの記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効で
ある。
【0036】また、本発明の記録装置の構成として設け
られる、記録ヘッドに対しての回復手段、予備的な補助
手段などを付加することは本発明の効果を一層安定化で
きるので好ましいものである。これらを具体的に挙げれ
ば、記録ヘッドに対しての、キャッピング手段、クリー
ニング手段、加圧あるいは吸引手段、電気熱変換体ある
いはこれとは別の加熱素子あるいはこれらの組み合わせ
による予備加熱手段、記録とは別の吐出を行う予備吐出
モードを行なうことも安定した記録を行うために有効で
ある。
【0037】さらに、記録装置の記録モードとしては黒
色等の主流色のみの記録モードだけではなく、記録ヘッ
ドを一体的に構成するか複数個の組み合わせによってで
もよいが、異なる色の複色カラー、または、混色による
フルカラーの少なくとも一つを備えた装置にも本発明は
極めて有効である。
【0038】以上説明した本発明実施例においては、イ
ンクを液体として説明しているが、室温やそれ以下で固
化するインクであって、室温で軟化もしくは液体あるい
は、上述のインクジェットではインク自体を30℃以上
70℃以下の範囲内で温度調整を行ってインクの粘性を
安定吐出範囲にあるように温度制御するものが一般的で
あるから、使用記録信号付与時にインクが液状をなすも
のであればよい。加えて、積極的に熱エネルギーによる
昇温をインクの固形状態から液体状態への状態変化のエ
ネルギーとして使用せしめることで防止するか、または
インクの蒸発防止を目的として放置状態で固化するイン
クを用いるかして、いずれにしても熱エネルギーの記録
信号に応じた付与によってインクが液化してインク液状
として吐出するものや記録媒体に到達する時点ではすで
に固化し始めるものなどのような、熱エネルギーによっ
て初めて液化する性質のインク使用も本発明には適用可
能である。このような場合インクは、特開昭54−56
847号公報あるいは特開昭60−71260号公報に
記載されるような、多孔質シート凹部または貫通孔に液
状または固形物として保持された状態で、電気熱変換体
に対して対向するような形態としてもよい。本発明にお
いては、上述した各インクに対して最も有効なものは、
上述した膜沸騰方式を実行するものである。
【0039】
【実施例】以下、本発明をより具体的な実施例に基づい
て更に詳細に説明する。
【0040】一般的に、発熱素子への印加電圧は、膜沸
騰が始まるレベルをVthとした時、Vthの1.2倍
の電圧を印加し、上限は1.3である。ところが、発熱
体材料がHfB2 の場合、1.3のK値で使用すると、
通常20000枚の記録が可能なプリンタ本体の寿命と
同等程度の寿命を得る事はできず、更には、ダブルヒー
ター駆動によりインク吐出を行うと、益々HfB2 発熱
体の寿命が短くなるので、インクタンクとヘッドとが一
体であって記録可能枚数の限られた比較的短寿命の交換
型ヘッドとしての製品化が限界とされている。このよう
な記録ヘッドの使用条件の下における本発明の利点を含
めて、本発明の発熱抵抗体を用いたより好ましい実施例
を説明する。
【0041】本発明の発熱抵抗体は、図8のX線回折パ
ターン(I)に示すように、主となる結晶として、Ta
0.8 hex のピークを有している。ここで、Ta、Nの
組成比xの好ましい条件を検討すると、TaN0.8 hex
を有する抵抗体としてTaxNのx値の値が1.05以
上1.85以下の間において、図9のX線回折パターン
であるTaN0.8 hex と図10のX線回折パターンであ
るTa2hex とTaNhex+cubic の3つの結晶構造
が、表1に示すように得られた。
【0042】
【表1】 表1に示すように、得られた各結晶構造中のTaとNと
の各組成比xの値は、EPMA(電子プローブマイクロ
アナライザー)、より好ましくはRBS(Rutherford Ba
ckscattering spectrometry)で測定し、各結晶構造はX
線回折法により決定され、TaN0.8 hex 、Ta2
hex 及びTaNhex+cubic の各量比(mol%)が算出
される。また、各組成比xの値の決定は、同一試料を3
回測定してその測定値の平均値とすることにより行っ
た。表1の最下欄には、以下に記載する対応実施例の番
号を示した。
【0043】〔実施例1〕図1に示した構成を有するイ
ンクジェット記録ヘッド用の基板を以下のようにして作
製した。まず、成膜直前に同一装置内で基板表面をプラ
ズマクリーニングにより該表面を清浄化した。蓄熱層1
02として熱酸化法によりSiO2 を1.2μmの厚さ
に形成し、更に層間絶縁を兼ねる蓄熱層103として、
プラズマCVD法によりSiONを1.2μmの厚さに
堆積した。
【0044】次に、抵抗層104として、Tax Nの組
成比xの値をx=1.25にして、図8(X線回折パタ
ーン(I))のように、結晶としてTaN0.8 hex のピ
ークのみを示す膜(TaN0.8 hex 100mol%)を
1000オングストロームの厚さに形成した。該TaN
0.8 hex 膜は、反応性スパッタリング法により、窒素ガ
ス分圧比が24%、アルゴンガスと窒素ガスの混合ガス
の全圧が7.5mTorr、スパッタリングDCパワー
が2.0kW、雰囲気温度が200℃、基板温度が20
0℃の条件で成膜した。このTaN0.8 hex 膜の上に、
インクを吐出させるために発生する熱エネルギーを供給
するための導電体であるAlを5500オングストロー
ムの厚さにスパッタリング法により堆積させた。該Al
層は、発熱抵抗体の堆積後、大気中に取り出す前に同一
装置内で連続的にスパッタリングにより成膜した。この
連続成膜により、抵抗層とAl配線とは、不純物や水分
の侵入が抑制されるとともに、両層の密着性が良く信頼
性の高い記録ヘッド基体の作製が可能であった。その
後、前記Al層とTaN0.8 hex 層とを所定の形状にパ
ターニングした。熱作用部108は、図1に示したよう
にTaN0.8 hex 層上のAl層を取り除いた領域であ
る。次に、保護膜106として、プラズマCVD法によ
り、SiNを1μmの厚さに堆積させ、その後、耐キャ
ビテーション層107として、DCスパッタリング法に
よりTa膜を2000オングストロームの厚さに堆積さ
せて、本発明のインクジェット記録ヘッド用基体を完成
した。
【0045】ここで、蓄熱層103と保護膜106は同
一のプラズマCVD成膜装置を用い、成膜条件を所定の
条件に制御して形成し、さらに、抵抗層104と耐キャ
ビテーション層107も同一の反応性スパッタリング成
膜装置で同じTaターゲットを用い、成膜条件を所定の
条件に制御して2種の膜を形成した。これにより成膜装
置数が少なく、装置内のコンタミネーションが少なく、
更にはバッチ開放を極力減らし、歩留りと稼動率の高い
生産プロセスが可能となった。
【0046】図11に、SST試験を行ってその結果を
示した。SST試験とは、インク吐出Vthに対して、
0.05Vth毎に印加電圧を上げ各100000パル
ス印加し、破断電圧Kbを求める試験である。図11に
おける実施例1のTaN0.8 hex 膜を発熱抵抗体とした
場合の電気熱変換体の抵抗値の変化は極めて小さく、ま
た、その破断電圧比Kb (Kb =印加電圧/発泡電圧)
が1.8Vthと良好な特性を有している事がわかっ
た。
【0047】図12に、最大駆動電圧である1.3Vt
hでのヒートパルス耐久試験(CST試験)の結果を示
す。CST試験は、発熱抵抗体にパルスを印加するだけ
であり、記録ヘッド内にはインクは入っていない。この
実験の結果から、実施例1のTaN0.8 hex 膜を用いた
電気熱変換体は、ほぼ0%の抵抗値変化であることがわ
かった。
【0048】次に、実施例1の発熱抵抗体を備えるヘッ
ドを作製し、インクジェット記録装置に取り付けて印字
耐久試験を行った結果を説明する。該試験はA4の用紙
に該インクジェット記録装置に組み込まれている一般的
なテスト印字パターンを印字させて行なった。この時の
駆動電圧は1.3Vthに設定されるよう調整した。実
施例1のTaN0.8 hex は、表2に示すように、印字寿
命が1ページ当たり、1500文字の標準文書で、2
0,000枚以上印字可能であり、印字品位も図13に
印字耐久時の抵抗変化を示すが、CST同様、ほぼ0%
であり、表2に示すように長耐久試験による20,00
0枚印字後でも印字品位劣化がなかった。この20,0
00枚の印字耐久寿命は、ほぼプリンターの本体寿命と
同程度である。
【0049】なお、1500文字の標準文書1ページ当
り、最大パルスが印加されるノズルの印加パルス数は、
約3×104 パルスである。従って、20,000枚の
印字を行うためには、連続吐出による寿命低下を考慮し
て印加パルス数としては、5×108 パルス乃至6×1
8 パルスの印加に耐える耐久性があればよいこととな
る。
【0050】〔実施例2〕実施例1のTaN0.8 hex
より構成される抵抗層104に代えて、表1のx値が
1.85の組成であって、図9に示すようなX線回折パ
ターンを示すTaN 0.8 hex とTa2hex の混合され
た実施例2の発熱抵抗体を作成し、これを使用してイン
クジェット記録ヘッドを作製した。図11のSST試験
結果に示すように、実施例2は、破断電圧比Kb が1.
8Vthと良好な結果であった。また、図12のCST
試験結果に示すように、抵抗値の変化が(−)側(抵抗
値が減少する変化)であるため実施例1より寿命が短か
く、5×108 パルスで発熱体断線が見られたが、記録
ヘッドとしての評価を行ったところ、図13に示すよう
に少なくとも10,000枚以上の印字が可能であっ
た。その際に、印字品位は断線するまで劣化は見られな
かった。
【0051】〔実施例3〕実施例1のTaN0.8 hex
より構成される抵抗層に代えて、表1のx値が1.05
の組成であって、図10に示すようなX線回折パターン
を示すTaNhexとTaNhex の混合された窒化タンタ
ル膜として実施例3の発熱抵抗体を作成し、これを使用
してインクジェット記録ヘッドを作製した。図11のS
ST試験結果に示すように、実施例3は、破断電圧比K
b が1.8Vthと良好な結果であった。また、図12
のCST試験結果に示すように、実施例3は、抵抗値の
変化が(+)側(抵抗値が増加する変化)へ変化するこ
とがわかり、記録ヘッドとしての評価を行ったところ、
図13に示すように、20,000枚以上の印字が可能
であることがわかった。
【0052】〔実施例4〜7〕表1のTaN0.8 hex
Ta2 Nによる発熱抵抗体のTaN0.8 混合mol比が
80%の抵抗体を実施例4、TaN0.8 混合mol比が
50%の抵抗体を実施例5、また、TaN0.8 hex とT
aNによる発熱抵抗体のTaN0.8 混合mol比が80
%の抵抗体を実施例6、TaN0.8 混合mol比が50
%の抵抗体を実施例7として、図13に各実施例の印字
耐久試験の結果を示す。実施例4及び実施例5の試験結
果は、実施例1と実施例2の間の特性を示していること
がわかった。また、実施例6及び実施例7の試験結果
は、実施例1と実施例3の間の特性を示していることが
わかった。従って、TaN0.8 の混合mol比が50%
以上であると、より一層本発明の効果を安定して奏する
ことができ、より理想的な抵抗体及びインクジェットヘ
ッドを提供できることがわかった。
【0053】次に、これら実施例の実際の印字枚数を以
下の表2にまとめる。
【0054】
【表2】 表2の印字耐久試験結果において、印字耐久枚数とは、
発熱抵抗体が断線するまでの印字枚数である。画像品位
に関して、一般に発熱抵抗体の抵抗値は印字字数の増加
と共に増加し、抵抗体に流れる電流が減じて、発熱エネ
ルギーが減少し、その結果寿命が伸びる。しかしなが
ら、発熱抵抗体に流れる電流が減少することで、発熱エ
ネルギーが減少し、その結果、インクの吐出量が減少し
て、印字濃度が薄くなるという印字劣化が発生すること
がある。
【0055】表2からわかる様に実施例1の発熱体は、
20,000枚以上印字でき、しかも品位劣化がなかっ
た。すなわち、実施例1のTaN0.8 hex を用いたイン
クジェット記録ヘッドは、記録画像品位、耐久性共に優
れており、長寿命、高画質化に適している事がわかっ
た。
【0056】実施例2の発熱体は、プリンタ本体の寿命
までの耐久寿命はないが、10,000枚毎に交換する
交換型ヘッド用発熱体としては有効であり、画像品位性
能を持っている事がわかった。
【0057】実施例3の発熱体の場合、画像品位は劣化
するが、20,000枚程度の印字寿命を有する通常の
市販のプリンタと同等以上の耐久寿命があり、耐久面で
非常に良好な特性を持っている事が判り、画像濃度が多
少薄くなるものの、抵抗値が増加することからパーマネ
ント型のインクジェット記録ヘッドとして適しているこ
とがわかった。
【0058】また、実施例4乃至実施例7のそれぞれの
発熱体は、20,000枚以上の印字が行えて、しかも
品位劣化がないという上述の実施例1と同様の結果を得
ることができ、更に特性的には、TaN0.8 混合mol
比が高い程、実施例1の良好な特性に近づく事がわかっ
た。
【0059】以上の点より、TaN0.8 とTa2 Nとの
混合物であって、TaN0.8 の混合mol比が50%以
上の発熱体を使用した記録ヘッドは、その抵抗体の抵抗
値の変化は見られるものの、20,000枚印字しても
発熱体の断線及び記録による画像劣化も無く、通常の市
販のプリンタであれば実施例1同様の使い方ができるこ
とがわかった。TaN0.8 の混合比が80%以上であれ
ば、抵抗値の変化は見られるものの、実施例1と特性差
は確認できない。
【0060】また、TaN0.8 とTaNの混合との混合
物であって、TaN0.8 の混合mol比が50%以上の
発熱体を使用した記録ヘッドは、その抵抗体の抵抗値の
変化は見られるものの、20,000枚印字しても発熱
体の断線も画像劣化も無く、通常の市販のプリンタであ
れば実施例1同様の使い方ができることがわかった。T
aN0.8 の混合比が80%以上であれば、抵抗値の変化
は見られるものの、実施例1との特性差は確認できな
い。
【0061】また、表2に示した結果より、多数の発熱
抵抗体を配する記録ヘッドのそれぞれの発熱抵抗体に、
上述の実施例1乃至実施例7の抵抗体を混在させて用い
た場合であっても、交換型の記録ヘッドとしては全く問
題なく使用できる事がわかった。
【0062】ここで、実施例2及び実施例3のように、
TaN0.8 を有しているが従来から知られているTa2
N、TaNを含む抵抗体について考察する。一般に、従
来の窒化タンタル発熱体の材料として用いられたTa2
N、TaN及びTa2 N/TaNの混合物は、従来技術
で説明したように大きな抵抗値変化のためにインクジェ
ット記録ヘッドとしての耐久性能を持っていないことが
わかっている。これらの抵抗変化のメカニズムは、Ta
2 Nが、高電気エネルギーのパルス印加により、他の膜
層からの酸素で、NOx が生成され余ったTaが金属と
なり、そのTa金属が抵抗値を下げていると予想され
る。また、TaNが、パルス印加により周辺の酸素を取
り込んで、TaO+TaNの多結晶となり、抵抗値を上
げていると予想される。さらに、Ta2 N/TaNの混
合物は、抵抗変化がキャンセルされ、抵抗値変化がない
特性を示すと思われたが、実際には、混合されているT
2Nによる抵抗値変化は、自身の抵抗減少とそれによ
る印加エネルギー増加による自乗作用で大きく抵抗値が
減少するため、抵抗値変化特性は、Ta2 Nの特性が支
配的に現れて、その結果、印字によるパルス印加の増加
に伴って抵抗値が増加するというような抵抗値変化を示
すと予想される。
【0063】これら従来の発熱体に対して、本発明の上
述したTaN0.8 hex を有する抵抗体は、その抵抗値変
化の挙動結果から予想できるように、TaN0.8 hex
駆動パルスの印加に対して、Taの酸化もしくは還元を
抑制する結晶構造体であることが予想でき、その結果と
して、TaN0.8 hex を有さない従来の発熱体からは予
想できない本発明で得られた独自の抵抗値変化を示して
いると認められる。したがって、X線回折法による測定
でTaN0.8 hex が検出できる窒化タンタル膜は、耐印
加パルスに対し安定であると言える。
【0064】以上の点から、窒化タンタル膜は、多値用
インクジェット記録ヘッドのダブルヒーター用発熱抵抗
体の材料としては、その膜構造の相違によって適否があ
ることがわかり、本発明によるTaN0.8 を含む発熱抵
抗体がインクジェット記録ヘッド用の発熱抵抗体として
優れている事がわかった。
【0065】さらに、ダブルヒーターの駆動素子をN−
MOSトランジスタにすることにより900DPI以上
の高密度でも発熱素子以上の密度で基体上にレイアウト
できるので基体上に効率よくレイアウトできることがわ
かった。
【0066】
【発明の効果】本発明のTaN0.8 を有するダブルヒー
ター発熱抵抗体を持ったインクジェット記録ヘッドにお
いては、発熱抵抗体を、長期の連続使用にあっても抵抗
値の変動は極めて少なく、長寿命で信頼性の高いものと
することができ、高密度で高品質の記録を可能にするこ
とができる効果がある。
【0067】また、本発明によるインクジェット記録ヘ
ッドは、ダブルヒーターの駆動素子をN−MOSトラン
ジスタにすることにより900DPI以上の高密度な多
値ヘッドが構成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット記録ヘッド用基体の模
式的断面図である。
【図2】本発明のダブルヒーターのレイアウト略図であ
る。
【図3】本発明のインクジェット記録ヘッド用基体の等
価回路である。
【図4】本発明のインクジェット記録ヘッド用基体の主
要素子を縦断する模式的断面図である。
【図5】本発明のインクジェット記録ヘッドの模式的斜
視図である。
【図6】本発明のインクジェット記録ヘッド用基体のダ
ブルパルス駆動発泡模式的断面図である。
【図7】本発明の記録ヘッドを用いたインクジェット記
録装置の一例としての模式的斜視図である。
【図8】実施例1におけるTaN0.8 発熱抵抗体を形成
する抵抗層のX線回折測定パターンである。
【図9】実施例2におけるX線回折測定パターンであ
る。
【図10】実施例3におけるX線回折測定パターンであ
る。
【図11】実施例1〜3におけるSST試験の結果を示
す図である。
【図12】実施例1〜7におけるCST試験の結果を示
す図である。
【図13】実施例1〜7における印字耐久試験の結果を
示す図である。
【符号の説明】
101 シリコン基板 102 熱酸化膜 103 層間膜 104 抵抗層 105 Al合金配線 106 保護膜 107 耐キャビテーション膜 108 熱作用部 601 インク吐出液 602 発泡 603 インク 604 駆動手段

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1ノズル内に複数の発熱素子が設けられ
    る多値出力ヘッドであるインクジェット記録ヘッドに用
    いる発熱抵抗体において、TaN0.8 の結晶構造を含む
    ことを特徴とするインクジェット記録ヘッド用発熱抵抗
    体。
  2. 【請求項2】 1ノズル内に複数の発熱素子が設けられ
    る多値出力ヘッドであるインクジェット記録ヘッドに用
    いる基体において、TaN0.8 の結晶構造を含む発熱抵
    抗体を備えることを特徴とするインクジェット記録ヘッ
    ド用基体。
  3. 【請求項3】 1ノズル内に複数の発熱素子が設けられ
    る多値出力ヘッドであり、発熱抵抗体からの熱エネルギ
    ーを用いて吐出口からインクを吐出して記録媒体に記録
    を行うインクジェット記録ヘッドにおいて、 前記発熱抵抗体が、TaN0.8 の結晶構造を含むことを
    特徴とするインクジェット記録ヘッド。
  4. 【請求項4】 前記発熱抵抗体が、TaN0.8 のみの結
    晶構造で構成される請求項3記載のインクジェット記録
    ヘッド。
  5. 【請求項5】 前記発熱抵抗体が、TaN0.8 及びTa
    Nの結晶構造を含む請求項3記載のインクジェット記録
    ヘッド。
  6. 【請求項6】 前記発熱抵抗体が、TaN0.8 及びTa
    2 Nの結晶構造を含む請求項3記載のインクジェット記
    録ヘッド。
  7. 【請求項7】 発熱素子の駆動トランジスタが、NーM
    OSトランジスタである請求項3〜6の何れか一項記載
    のインクジェット記録ヘッド。
  8. 【請求項8】 記録媒体の被記録面に対してインクを吐
    出する吐出口が設けられている請求項3〜7の何れか一
    項記載のインクジェット記録ヘッドと、該ヘッドを載置
    するための部材とを少なくとも具備する事を特徴とする
    インクジェット記録装置。
JP1091496A 1996-01-25 1996-01-25 インクジェット記録ヘッド用基体、インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置 Expired - Fee Related JP3391967B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP1091496A JP3391967B2 (ja) 1996-01-25 1996-01-25 インクジェット記録ヘッド用基体、インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP1091496A JP3391967B2 (ja) 1996-01-25 1996-01-25 インクジェット記録ヘッド用基体、インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH09201965A true JPH09201965A (ja) 1997-08-05
JP3391967B2 JP3391967B2 (ja) 2003-03-31

Family

ID=11763540

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP1091496A Expired - Fee Related JP3391967B2 (ja) 1996-01-25 1996-01-25 インクジェット記録ヘッド用基体、インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3391967B2 (ja)

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN1304200C (zh) * 2003-08-25 2007-03-14 三星电子株式会社 喷墨打印头的保护层、含有保护层的打印头及其制造方法
WO2009023361A2 (en) 2007-06-01 2009-02-19 Purdue Research Foundation Discontinuous atmospheric pressure interface
WO2021005796A1 (ja) * 2019-07-11 2021-01-14 堺ディスプレイプロダクト株式会社 フレキシブル発光デバイス、その製造方法及び支持基板

Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN1304200C (zh) * 2003-08-25 2007-03-14 三星电子株式会社 喷墨打印头的保护层、含有保护层的打印头及其制造方法
WO2009023361A2 (en) 2007-06-01 2009-02-19 Purdue Research Foundation Discontinuous atmospheric pressure interface
WO2021005796A1 (ja) * 2019-07-11 2021-01-14 堺ディスプレイプロダクト株式会社 フレキシブル発光デバイス、その製造方法及び支持基板

Also Published As

Publication number Publication date
JP3391967B2 (ja) 2003-03-31

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100229123B1 (ko) 잉크 제트 헤드 기판, 잉크 제트 헤드, 잉크 제트 장치 및 잉크제트 기록 헤드 제조 방법
US8141986B2 (en) Heating element
CN114750514B (zh) 晶圆结构
US7862156B2 (en) Heating element
JPH0970973A (ja) 液体噴射記録ヘッド、その製造方法および液体噴射記録ヘッドに用いる基体の製造方法
US6435660B1 (en) Ink jet recording head substrate, ink jet recording head, ink jet recording unit, and ink jet recording apparatus
US6676246B1 (en) Heater construction for minimum pulse time
JP3387749B2 (ja) 記録ヘッド及びその記録ヘッドを用いた記録装置
CN114750513A (zh) 晶圆结构
JP3391967B2 (ja) インクジェット記録ヘッド用基体、インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置
JP2933429B2 (ja) 液体噴射記録ヘッド用基板、液体噴射記録ヘッドおよび液体噴射記録装置
JP3155423B2 (ja) 発熱抵抗体、該発熱抵抗体を備えた液体吐出ヘッド用基体、該基体を備えた液体吐出ヘッド、及び該液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置
US6450616B1 (en) Substrate with multiple heat generating elements for each ejection opening, ink jet printing head and ink-jet printing apparatus with same
JP3554148B2 (ja) インクジェット記録ヘッド用基体、インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置
JP2865943B2 (ja) インクジェットヘッド、その製造方法及びそれを用いたインクジェット記録装置
JP2004216889A (ja) 発熱抵抗体薄膜、これを用いたインクジェットヘッド用基体、インクジェットヘッド及びインクジェット装置
JP2866256B2 (ja) インクジェットヘッド、その製造方法及びそれを用いたインクジェット記録装置
JP2865947B2 (ja) インクジェットヘッド、その製造方法及びそれを用いたインクジェット記録装置
JP2865946B2 (ja) インクジェットヘッド、その製造方法及びそれを用いたインクジェット記録装置
JPH068441A (ja) 記録ヘッド用基体、インクジェット記録ヘッド用基体、インクジェット記録ヘッド、インクジェット記録装置およびインクジェット記録ヘッド用基体の製造方法
JP2866253B2 (ja) インクジェットヘッド、その製造方法及びそれを用いたインクジェット記録装置
JP2865944B2 (ja) インクジェットヘッド、その製造方法及びそれを用いたインクジェット記録装置
JP2866255B2 (ja) インクジェットヘッド、その製造方法及びそれを用いたインクジェット記録装置
JP2866254B2 (ja) インクジェットヘッド、その製造方法及びそれを用いたインクジェット記録装置
JPH09286107A (ja) インクジェットプリントヘッドの基体、インクジェットプリントヘッド、およびインクジェットプリント装置

Legal Events

Date Code Title Description
FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090124

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090124

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Year of fee payment: 7

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100124

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees