JP3155423B2 - 発熱抵抗体、該発熱抵抗体を備えた液体吐出ヘッド用基体、該基体を備えた液体吐出ヘッド、及び該液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置 - Google Patents

発熱抵抗体、該発熱抵抗体を備えた液体吐出ヘッド用基体、該基体を備えた液体吐出ヘッド、及び該液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置

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JP3155423B2 JP14624394A JP14624394A JP3155423B2 JP 3155423 B2 JP3155423 B2 JP 3155423B2 JP 14624394 A JP14624394 A JP 14624394A JP 14624394 A JP14624394 A JP 14624394A JP 3155423 B2 JP3155423 B2 JP 3155423B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱エネルギーを利用し
て液体(例えばインク)を吐出、好ましくは飛翔させ
て、普通紙、加工紙、布、OHP用紙等の媒体に所望の
画像或は模様を形成するための液体吐出ヘッド及び液体
吐出装置、或は、液体吐出ヘッド用発熱部材(基体)と
その製造方法に関し、特に、少なくとも発熱抵抗体がT
aN0.8を含むことで、製造精度の向上を含む製造コス
トの低減や耐久性、発熱状態の安定化を達成できる発明
に関する。
【0002】更に本発明は、プリンタ、ファクシミリや
複写機、或は複合機等の各種の出力機能を持つ機器や、
それを用いて所望記録を所望媒体にプリントするシステ
ムにも適用可能な発明である。
【0003】
【従来の技術】一般に窒化タンタルとして、TaN、T
2 N抵抗体を記載している代表的な特許は、米国特許
第3,242,006号明細書であることが知られてい
る。この特許には、実施例に、DC反応性スパッタリン
グ法により、カソード電極にTa材料を使用し、窒素ガ
スとアルゴンガスとを使用し、雰囲気温度400℃、基
板温度400℃、窒素分圧1×10-4mmHgの条件
で、DC電圧(5000V)を電極間に印加して前記タ
ンタル材料(カソード電極)をスパッタして形成され
る、hexagonal構造ではないが、塩化ナトリウ
ム型構造を有する窒化タンタル(TaN)で構成された
抵抗体が記載されている。更に、この公報には、hex
agonal構造のTa2 Nで構成された抵抗体を得る
ための条件やTaNとTa2 Nとの混在物で構成された
抵抗体を得るための条件を開示している。この公報が開
示するように、実質的にTaNだけで構成される(Ta
N単独とも表現する)薄膜を有する抵抗体と実質的にT
2 N(Ta2 N単独とも表現する)だけで構成される
薄膜を有する抵抗体(それぞれ不純物を含む場合が考慮
されている)或は、TaNとTa2 Nとの混合物で構成
される薄膜を有する低抗体を得ることは知られている。
【0004】一方、熱エネルギーを利用してインクを吐
出、好ましくは飛翔させて、普通紙、加工紙、布、OH
P用紙等の媒体に所望の画像を形成するためのインクヘ
ッド及びインク記録装置としては、インクジェット方式
が有効であることが確認されている。中でも、所謂オン
デマンド方式のインクジェット記録方式は、周囲への騒
音を大幅に低減し得ることから、最も優れているもので
ある。
【0005】その基本的な特許としては米国特許第4,
849,774号公報(西ドイツ登録第2843064
号明細書)に記載されたものがある。この特許には、イ
ンクを吐出用発熱抵抗体の例として窒化タンタル(tant
alum nitride),HfB2 等が挙げられている。ここ
で、窒化タンタルは上記TaN単独、上記Ta2 N単独
及びこれらの混合物を含むものである。これらの基本的
な特許が完成する段階では、これらの発熱抵抗体は膜沸
騰現象を用いて記録を行う際のインク吐出特性、プリン
ト速度、及びプリント条件を、当時(1977年以前)
の水準で満足はできたものの、10〜64等の多数の吐
出口に対する安定化や耐久性等の近年(1983年以降
現在及び将来)の市場要求を満足して実用化されている
ものは窒化タンタルではなく、HfB2 やTaAlに限
られていている。つまり、上記公報で認識されていた窒
化タンタルは、上記米国特許第3,242,006号明
細書に記載されているような、TaN抵抗体単体、Ta
2 N抵抗体単体或はこれらを混在させた抵抗体にしか過
ぎなかった。
【0006】ここで、窒化タンタルを発熱抵抗体として
使用し、感熱紙やインクリボンに直接接触するサーマル
ヘッドにおける公知資料は数多くあるものの、そこに開
示されている発熱抵抗体は、上記米国特許第3,24
2,006号明細書において開示される抵抗体と同等で
ある。中でも、特殊なものとしては、米国特許第4,7
37,709号明細書に記載されている(101)方向
に配向されたTa2 N発熱抵抗体がある。この発明は、
Ta2 N発熱抵抗体の中でも配向性に注目し、耐久性を
向上できるものとして(101)方向の配向のTa2
発熱抵抗体を得たものである。
【0007】ここで注目すべきは、サーマルヘッドでは
主として実用化されている窒化タンタル発熱抵抗体が、
インクジェットヘッドには実用化されていないという事
実である。その理由は次の通りである。即ち、サーマル
ヘッドでは、発熱抵抗体に印加される電力は1msec
の間に1W程度であるのに対して、インクジェットヘッ
ドでは、短時間にインクを気化させるために、例えば7
μsecの間に3W〜4W相当の電力を発熱抵抗体に印
加することになる。これは、サーマルヘッドの発熱抵抗
体に印加する電力の数倍の大きさであるため、従来の窒
化タンタル(TaN抵抗体単体、Ta2 N抵抗体単体或
はこれらを混在させた抵抗体)をインクジェットヘッド
の発熱抵抗体として使用して駆動すると、大きなエネル
ギーの印加によりその抵抗値は短期間で大きくなる傾向
を示す。この抵抗値変化は、サーマルヘッドでも多少見
られるが画像の急激な劣化を引き起こすものではないの
に対して、インクジェットヘッドでは、気泡の発生を不
安定な状態にして吐出されるインク滴の量の減少を招
き、結果として記録品位を低下させてしまうのである。
【0008】以上から、従来で知られているサーマルヘ
ッドの分野における窒化タンタル発熱抵抗体が、現実的
には近来のインクジェットヘッドには実用化されていな
いことが理解できよう。無論、サーマルヘッドの分野に
おける窒化タンタル発熱抵抗体を使用条件の厳しいイン
クジェットヘッドの発熱抵抗体の構成材料として利用す
るための更なる研究を示唆するものもサーマルヘッドの
分野においては見られなかったこともその裏付けとなろ
う。
【0009】尚、このような事実から、インクジェット
製品の実用化レベルにおける発熱抵抗体の構成材料とし
ては、主としてHfB2 が使用されている。
【0010】更に、その後のインクジェット分野の窒化
タンタル(TaN,Ta2 N)の公知資料について調査
すると、米国特許第4,535,343号明細書、特開
昭54−59936号公報、又は特開昭55−2728
1号公報が存在する。
【0011】具体的には、米国特許第4,535,34
3号明細書には、RF又はDCダイオードスパッタリン
グ法により、アルゴンガスと窒素ガスとの10:1容量
割合の混合物からなる雰囲気でタンタルターゲットをス
パッタして得られた窒化タンタル(Ta2 N単体)で構
成された抵抗層を有する熱インクジェットプリントヘッ
ドが記載されているが、現在求められている記録品位の
水準を到底満足するものではない。
【0012】また、特開昭54−59936号公報及び
特開昭55−27281号公報には、蒸着法又はスパッ
タリング法により得られる窒化タンタル(Ta2 N単
体)で構成された発熱抵抗体を有する記録ヘッドが記載
されている。これらの公報に記載された窒化タンタル
は、いずれもいわゆるTa2hexagonal 構造(以下、
単にTa2hex と略称することがある)のものであ
る。このTa2hex で構成された発熱抵抗体も、上記
TaN発熱抵抗体と同様に、長時間連続してインク吐出
を行う記録動作にあっては抵抗値が大きく減少してしま
い、インク吐出量の減少を招いて記録画像の画質を劣化
させてしまう問題がある。従って、Ta2he x 単体
も、インクジェットヘッドの抵抗体の構成材料として使
用に値しないものであると評価され、実際には使用可能
水準にさえ達していないため、その後、更なる研究はな
されていない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述したH
fB2 は、上記窒化タンタル(TaN単体、Ta2he
x 単体、或はこれらを混在させた抵抗体)に比べて、イ
ンクジェット記録ヘッドの発熱抵抗体の材料として実用
化水準を満足するものとして評価され使用されてはいる
ものの、HfB2 では後述するような課題があることが
本発明者達によって見いだされてきた。
【0014】第1の問題点は、HfB2 を取り巻く環境
の課題である。つまり、抵抗材料であるHfB2 は、僅
か1〜2社のみの供給、加工に委ねられているので、定
常的提供が保証されていないばかりか、HfB2 の原料
たるHfは、原子力燃料製造工程から得られる副産物で
あるところ、環境問題が世界的に議論されていることか
らして、将来的安定供給は必ずしも保証されていない。
【0015】第2の問題点は、市場要求を満足できる性
能の課題である。まず、発熱抵抗体を駆動する駆動条件
が室温等の環境条件に対して吐出応答性を向上させるた
めの発熱体へのパルス印加方法として、インクの吐出量
のコントロールが可能であるダブルパルス化が有効であ
ることがわかってきた。特に、インクジェット記録をカ
ラーで行う場合は有効であることがわかってきた。とこ
ろが、発熱体への印加パルスのダブルパルス化におい
て、発熱抵抗体の材料には特に耐久性に関して高いレベ
ルの耐久性が要求される。また、ヘッド基体にインク吐
出用の発熱抵抗体と同じ膜層で作られたダミー発熱抵抗
体(インクの吐出を行うための発熱抵抗体ではない)の
抵抗値を、プリンタ本体側から測定してインク吐出用の
発熱抵抗体の抵抗値を推定する構成が開発されている。
その際に、測定誤差を考慮して高めの印加エネルギーを
発熱抵抗体に印加する必要があるので、この点からも発
熱抵抗体の材料には特に耐久性に関して高いレベルの耐
久性が要求される。
【0016】ところが、HfB2 は要求されるような上
述の耐久性を充分に満足するものではない。
【0017】第3の問題点は、主に製造関係の課題であ
る。HfB2 はRFスパッタリング法により作製される
が、そのようにして得られたHfB2 膜の品質を一定に
することは困難であった。即ち、スパッタリングのター
ゲット材に含まれる不純物がMOS等の半導体素子への
悪影響を与える恐れが大きく、そのためHfB2 は半導
体素子製造プロセスとの相性が良くないことがである。
ところが、近年のインクジェット記録用ヘッド基体への
印加信号ロジック系回路及びヒータードライバを構成す
るBi−CMOS集積回路を一体に作り込んだヘッド基
体の採用に対しては、上述したHfB2 と半導体素子製
造プロセスとの相性の悪さが大きな問題となる場合があ
る。
【0018】これらの様に、本発明者達は、上述したH
fB2 をインクジェット記録ヘッドの発熱抵抗体の材料
として用いる際の問題点を解決するために種々の実験を
介して検討を重ねた。そして、本発明者達は、一度はイ
ンクジェット記録ヘッドの発熱体としては不適であると
されたものの、半導体の一般的な材料として安定して入
手可能であり、HfB2 のように原子力燃料製造に何ら
の係りを持たず、比較的簡単な成膜法に依り容易に成膜
できる材料である窒化タンタルに再度着目して研究を重
ねた。その際、上記公報の製造方法によって、上記Ta
N抵抗体単体、Ta2 N抵抗体単体或はこれらを混在さ
せた抵抗体を得て、それらの特性を再確認したが、本発
明の要求を満足するものではなかった。
【0019】更に鋭意探究したところ、本発明者達は、
発熱抵抗体への大きな電力の印加にも関わらず、経時的
抵抗値の変動が小さく、安定したインクの吐出が得られ
るという特性を有し、インクジェット記録ヘッドの発熱
体として好適であって、従来知られている構造の窒化タ
ンタル(TaN抵抗体単体、Ta2 N抵抗体単体或はこ
れらを混在させた抵抗体)とは異なる画期的な窒化タン
タル(TaN0.8 hexを含む)を見い出すに至った。即
ち、本発明は、この「TaN0.8 hex を含む窒化タンタ
ル」によって完成に至ったのである。
【0020】従って、本発明の主たる目的は、従来のイ
ンクジェット記録ヘッド用の発熱抵抗体について上述し
た諸問題を解決し、高品位な記録画像を長期にわたって
得ることを可能にする液体吐出ヘッド用のTaN0.8
hex を含む窒化タンタルで構成された発熱抵抗体を提供
することにある。
【0021】本発明の他の目的は、上記TaN0.8 hex
を含む窒化タンタルで構成された発熱抵抗体を備えた液
体吐出ヘッド用基体、該基体を備えた液体吐出ヘッド、
及び該液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置を提供する
ことを目的とする。
【0022】本発明の他の目的は、駆動信号として、吐
出のための主パルスの前に更に予備パルスを与える液体
吐出ヘッドの駆動方法による長期繰り返し記録を行った
場合でも、良好な画像品位を保つことができる液体吐出
ヘッド用のTaN0.8 hex を含む窒化タンタルで構成さ
れた発熱抵抗体、該発熱抵抗体を備えた液体吐出ヘッド
用基体、該基体を備えた液体吐出ヘッド、及び該液体吐
出ヘッドを備えた液体吐出装置を提供することを目的と
する。
【0023】本発明の他の目的は、Bi−CMOS型ト
ランジスタ等の半導体素子へ悪影響を与えることのない
特定の窒化タンタルで構成された液体吐出ヘッド用のT
aN 0.8 hex を含む窒化タンタルで構成された発熱抵抗
体、該発熱抵抗体を備えた液体吐出ヘッド用基体、該基
体を備えた液体吐出ヘッド、及び該液体吐出ヘッドを備
えた液体吐出装置を提供することを目的とする。
【0024】本発明の他の目的は、蓄熱層/TaN0.8
hex を含む窒化タンタルで構成された発熱抵抗体を形成
する抵抗層/保護層/耐キャビテーション層からなる積
層構造を有し、上記抵抗層の構成原子の中の少なくとも
1種の原子を構成原子とする材料を用いて他の層のそれ
ぞれが構成されていて、各層間の密着性が確保された液
体吐出ヘッド用基体、該基体を備えた液体吐出ヘッド、
及び該液体吐出ヘッドを備えた液体吐出装置を提供する
ことを目的とする。
【0025】
【課題を解決するための手段】本発明は、本発明者達が
実験を介して得たこれらの知見に基づいて完成したもの
である。本発明は、TaN0.8 hex を含む窒化タンタル
で構成される液体吐出ヘッド用の発熱抵抗体、該発熱抵
抗体を有する液体吐出ヘッド用基体、及び該基体を備え
た液体吐出装置を包含する。
【0026】本発明の液体吐出ヘッド用発熱抵抗体は、
熱エネルギーを用いて吐出口から液体を吐出する液体吐
出ヘッドに設けられる発熱抵抗体であって、TaN0.8
を含むことを特徴とする。中でも特に最良の液体吐出ヘ
ッド用発熱抵抗体は、熱エネルギーを用いて吐出口から
液体を吐出する液体吐出ヘッドに設けられる発熱抵抗体
であって、TaN0.8 のみで構成されることを特徴とす
る。
【0027】本発明のさらに他の形態による液体吐出ヘ
ッド用発熱抵抗体は、熱エネルギーを用いて吐出口から
液体を吐出する液体吐出ヘッドに設けられる発熱抵抗体
であって、TaN0.8 およびTa2 Nを含み、より好ま
しくはそのTaN0.8 が17mol%以上100mol
%未満であるか或は、TaN0.8 およびTaNを含み、
より好ましくはそのTaN0.8 が20mol%以上10
0mol%未満であることを特徴とする。
【0028】本発明の液体吐出ヘッドは、上述のような
液体吐出ヘッド用基体を有する。この場合、上述ヘッド
を用いて吐出可能な液体であるならば液体の性質は問わ
ないものである。また、TaN0.8 およびTaNを含む
発熱抵抗体を用い、液体収納部を別体としてもよい。ま
た、TaN0.8 およびTa2 Nを含む発熱抵抗体を用
い、液体収納部を一体とし一体交換タイプとしてもよ
い。
【0029】また、TaN0.8 およびTa2 Nを含む発
熱抵抗体を配した液路に連通する液体吐出口をシート媒
体の幅方向にわたって設けてもよい。また、該液体吐出
口の数は64以上としてもよい。
【0030】本発明の液体吐出カートリッジは、上述し
たような液体吐出ヘッドを用い、液体吐出装置に着脱自
在に構成されたことを特徴とする。
【0031】本発明の液体吐出ヘッドユニットは、上述
したような液体吐出ヘッドを複数用いて構成されたこと
を特徴とする。
【0032】本発明の液体吐出装置は、上述したような
液体吐出ヘッド、または、液体吐出カートリッジ、また
は、液体吐出ヘッドユニットを用いて媒体に液体を吐出
することを特徴とする。
【0033】上記液体吐出装置を駆動する本発明の液体
吐出装置の駆動方法は、発熱抵抗体を発熱するための駆
動条件が、液体を吐出する一番低い電圧Vthの1.1倍
以上1.4倍以下の電圧により駆動することを特徴とす
る。
【0034】本発明の他の形態による液体吐出装置の駆
動方法は、少なくとも液体吐出用素子として発熱抵抗体
を多数用いる液体吐出ヘッドの駆動方法であって、該発
熱抵抗体のそれぞれがTaN0.8 を含み、10kHz以
上の駆動周波数で駆動されることを特徴とする。
【0035】本発明の液体吐出ヘッド用基体の製造方法
は、窒素ガスとアルゴンガスからなる混合ガス雰囲気を
形成し、前記窒素ガスの分圧を22%以上26%以下の
範囲とし、前記雰囲気の温度を150℃以上230℃以
下の範囲とし、基板温度を180℃以上230℃以下の
範囲とし、スパッタリングDCパワーを1.0kW以上
4.0kW以下の範囲とし、反応性スパッタリングを行
ってTaN0.8 を含む発熱抵抗体を形成する工程を包含
することを特徴とする。
【0036】本発明の液体吐出ヘッドの製造方法は、少
なくとも液体吐出用素子として発熱抵抗体を用いる液体
吐出ヘッドの製造方法であって、該発熱抵抗体と共に該
ヘッドに備えられる機能素子と該発熱抵抗体とが、Ta
0.8 を含むことを特徴とする。
【0037】本発明の記録ヘッド用抵抗体は、記録媒体
に記録を行う記録ヘッドに設けられる抵抗体であって、
TaN 0.8 を含むことを特徴とする。なお、本発明で用
いられるTaN0.8はいずれも六方晶系(hexagonal)構
造ののものである。
【0038】
【作用】本発明者らは、従来のインクジェット記録ヘッ
ド用基体の発熱抵抗体に於ける上述した問題点を解決
し、前記目的を達成すべく以下に述べる幾多の実験を介
して鋭意研究した。その結果、本発明者らは下述する知
見を得るに至った。
【0039】タンタル(Ta)材料(純度99.99
%)をターゲットに使用し、アルゴンガス(Ar)及び
窒素ガス(N2 )をスパッタリングガスに使用し、N2
分圧、雰囲気温度及び基板温度をそれぞれ所定範囲にコ
ントロールして反応性スパッタリング法により前記タン
タルターゲットを前記スパッタリングガスでスパッタす
ることにより、TaN0.8 を有する膜を得た。このTa
0.8 を有する膜を液体吐出ヘッド用基板の発熱抵抗体
に使用したところ、該発熱抵抗体は、長期の連続使用に
あっても抵抗値の変動は極めて少なく、長寿命で信頼性
の高いものであることが判明した。そして、該発熱抵抗
体を有する液体吐出ヘッド用基体を備えた液体吐出ヘッ
ドは、ヘッドの駆動信号として液体の吐出のための主パ
ルスの前に予備パルスを与えて液体の吐出を行う吐出方
式にあって、長期の間の繰り返し吐出にあっても安定し
た液体の吐出をもたらし、インクジェット記録ヘッドと
して用いた場合にも高品質の記録を可能にするものであ
ることが判明した。
【0040】また、液体吐出ヘッド用基体の積層構造
を、その発熱抵抗体を上述のTaN0. 8 を有する膜で構
成し、他の構成層、即ち蓄熱層、保護層及び耐キャビテ
ーション層のそれぞれをTaN0.8 を有する抵抗層の構
成原子のTa及びNの中の少なくともいずれか一方の原
子を構成原子とする材料で構成して、SiN又はSiO
N層(蓄熱層)/TaN0.8 を有する抵抗層(発熱抵抗
体)/SiN又はSiON層(保護層)/Ta層(耐キ
ャビテーション層)とした場合、TaN0.8 を有する抵
抗層の上述した利点が更に発揮されるとともに、これら
の層間の密着性が確保されて、発熱抵抗体に繰り返し作
用する熱的パルス及びそれによる衝撃力に対して充分に
耐久性を有し、液体吐出ヘッドの長期繰り返し使用にあ
っても絶えず所望の液体吐出をもたらすものとすること
が判明した。
【0041】本発明による上記TaN0.8 を有する発熱
抵抗体は、媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドに好適
に用いられるだけではなく、液体吐出口(インク吐出
口)からインクを吐出して記録媒体に記録を行うインク
ジェット記録ヘッドにも適用されるものであり、従来の
HfB2 からなる発熱抵抗体の場合に比べて、その構成
材料の供給が常時安定して成されるものであるという利
点を有していることがわかった。また、当該発熱抵抗体
は、その製造方法において、HfB2 で構成される発熱
抵抗体の製造の場合のように不純物を不可避的に含有す
るターゲットを使用しないところ、当該発熱抵抗体を使
用して64以上の液体吐出口を有する高速液体吐出ヘッ
ドを製造する場合、液体吐出ヘッド駆動用素子に対する
不純物のコンタミネーション等の悪影響の問題はない。
また、当該発熱抵抗体は信頼性が高く、且つ、今後の主
流となる主パルスと副パルスとの2つのパルスによって
液体吐出状態をコントロールする駆動方法においても充
分な耐久性を達成できる等の利点を有していることがわ
かった。
【0042】本発明による液体吐出ヘッド用基体の発熱
抵抗体は、従来の窒化タンタル(Ta2 N単体等)で構
成された発熱抵抗体の場合と比較して、液体吐出ヘッド
を短パルス(1μsec以上10μsec以下)による
高周波で駆動した場合にも、所望の耐久性が維持され、
インクジェット記録ヘッドに用いた場合には高品位の記
録画像を長期にわたってもたらす作用効果が得られた。
【0043】本発明による液体吐出ヘッドは、上記Ta
0.8 を有する発熱抵抗体を備えたものであるところ、
高速駆動における複数パルスによる吐出状態をコントロ
ールする駆動方法においても充分な耐久性を有し、イン
クジェット記録ヘッドに用いた場合には高品位の画像記
録を確保でき、また、記録スピードの高速化に最適なマ
ルチノズル化が容易に達成できる利点を有することが判
明した。
【0044】こうしたことから、本発明による液体吐出
ヘッドは、公知の窒化タンタルで構成された発熱抵抗体
を有する従来のインクジェット記録ヘッドを次の点で卓
越するものである。即ち、繰り返しパルスを印加する場
合にあっても、発熱抵抗体の抵抗値の変動は極めて小さ
い。これにより、常時安定して所望の液体吐出がなさ
れ、インクジェット記録ヘッドとして用いた場合、高品
質の記録画像を常時安定して形成できることが保証され
た。
【0045】
【実施例】図1は、本発明のインクジェット記録ヘッド
用基体100のインク路に相当する部分の断面構成を示
すものである。図1において、101はシリコン基板、
102は蓄熱層であるところの熱酸化膜を示す。103
は蓄熱層を兼ねる層間膜であるところのSiO膜または
SiN膜、104は抵抗層、105はAlまたはAl−
Si、Al−Cu等のAl合金配線、106は保護膜で
あるところのSiO膜、SiN膜またはSiO膜を示
す。107は抵抗層104の発熱に伴う化学的、物理的
衝撃から保護膜106を守るための耐キャビテーション
膜である。また、108は、電極配線105が形成され
ていない領域の抵抗層104の熱作用部である。
【0046】抵抗層104は、機能素子としての発熱抵
抗体を電極としての配線105間に位置せしめ、発熱抵
抗体は無論のこと、抵抗層104全体がTaN0.8 を含
む構成となっている。このTaN0.8 を含む発熱抵抗体
は、製造上のばらつきが少なく、同一基板(あるいは基
体)に多数の発熱抵抗体を形成しても、機能効果の安定
性が得られた。さらに、通電を各種の条件で行っても、
抵抗変化が少なく、多数の発熱抵抗体夫々の機能が安定
して同等の作用を発揮することができた。
【0047】図2は、図1の基体構成を応用したインク
ジェット記録ヘッド用基体の要部上面図である。図2の
基体は、図1の構成を発熱抵抗体501として備えてお
り、基体を温度調節するために利用される加熱用のヒー
タ502と、ヘッドの特性(発熱抵抗体毎の抵抗値のバ
ラツキ等)を判定するために、通電によってその抵抗
(或は電流)を判定するために用いられる抵抗部503
と、を備えており、これらの加熱用のヒータ502、抵
抗部503は、発熱抵抗体501と同様のTaN 0.8
含む構成で機能素子として備えられている。特に、抵抗
部503は、記録ヘッドを記録装置に装着した状態で装
置本体側からのヘッド駆動条件の決定やインクの種類に
応じた制御等を行うために利用されるため、その抵抗値
は常時安定した値であることが要求される。機能素子と
しては上記のような判別用の抵抗として用いることの他
に、保護層やヘッド温度検知或はインク残量検知のセン
サーとして用いることが挙げられる。
【0048】ここで、図1及び図2のヘッド用基体の製
造装置について代表的な構成を以下に説明する。
【0049】本発明にかかる発熱抵抗体を形成する抵抗
層は、DCマグネトロンスパッタ法によって形成され
る。図13は、上記抵抗層を成膜するための装置の概要
を示す図である。図13において、301は純度99.
99%以上のタンタルターゲット、302は平板マグネ
ット、311は非使用時にターゲット表面を覆うシャッ
ター311、303は基板ホルダー、304は基板、3
06はタンタルターゲット301と基板ホルダー303
に接続されたDC電源である。
【0050】図13の装置による成膜においては、平板
マグネット302を回転することにより、高密度プラズ
マ及びγ電子がターゲット301側に分布し、基板30
4への熱的ダメージ及び物理的ダメージが緩和される。
また、307はクライオポンプまたはターボ分子ポンプ
を有する排気系であり、成膜チャンバ309内のベース
真空度は該排気系307により10-8Torr〜10-9
Torrにまで排気され、酸素、水素等の不純物ガスの
分圧が極低レベルに抑えられる。308は成膜チャンバ
309の外周壁を囲んで設けられた外部ヒータである。
該外部ヒータ308は成膜チャンバ309内の雰囲気温
度を調節するのに寄与する。305は、内部ヒータであ
り、基板ホルダー303の裏面に設けられ、基板の温度
コントロールを行うためのものである。なお、基板の温
度コントロールは、基板ホルダー303の輻射熱の影響
を無くすために、外部ヒータ308を併用して行なうよ
うにするのが望ましい。
【0051】以上、述べた図13に示す装置により、本
発明における上述した発熱抵抗体を形成する抵抗層が反
応性スパッタリング法により形成できる。その成膜は、
例えば次のようにして行なわれる。即ち、反応ガスであ
るアルゴンガスと窒素ガスとの混合ガスが0.1scc
mまで流量制御できるマスフローコントローラ(不図
示)を介してガス導入口310より成膜チャンバ309
内に導入される。そして、上記基板温度及び雰囲気温度
が所定の低温度領域で一定温度に保たれるように内部ヒ
ータ305及び外部ヒータ308を調節する。
【0052】成膜時、ターゲット301と基板ホルダー
303との間にはDC電源306によってDC電圧が印
加されるが、この電圧も0.1kVレベルの誤差範囲に
納まるように制御することが望ましい。
【0053】本実施例においては、図13に示した装置
を使用し、上述した成膜手法により、下述する各種の成
膜条件で複数種の窒化タンタル膜を作製した。それぞれ
の膜は液体吐出ヘッドの1つの適用例としてのインクジ
ェット記録ヘッド用基体の発熱抵抗体を形成する発熱抵
抗体層用のものとして形成し、その膜組成を分析すると
共にその膜の前記発熱抵抗体としての適正を評価した。
【0054】まず、単結晶シリコンウエハ上に熱酸化膜
(蓄熱層102)及びSiN膜(層間膜103)を常法
により積層したもの(以下これを基板101という)を
複数用意した。これら基板101のそれぞれについて、
基板にダメージを与えない数百Wの低パワーのRFスパ
ッタリングによって膜103をアルゴンガスによって数
十 の深さまでエッチングして、清浄かつ平坦な表面を
形成したこの基板101を図13の装置の成膜チャンバ
内の基板ホルダ303上に配置した(即ち基板30
4)。ついで排気系307を作動して成膜チャンバ30
9内を10-8Torrの真空度に排気した。その後、ア
ルゴンガス及び窒素ガスの混合ガスを成膜チャンバ30
9内に導入し、成膜チャンバ309内のガス圧を排気系
307を調節して所定の混合ガス圧に保持した。つい
で、それぞれの場合について上記混合ガス中の窒素ガス
分圧を変化させて上述した成膜方法により下述する成膜
条件で成膜を行なって、窒化タンタル膜試料を得た。
【0055】成膜条件: 基板温度:200℃ 成膜チャンバ内ガス雰囲気温度:200℃ DCパワー:2.0kW 成膜チャンバ内混合ガス全圧:7.5mTorr 次に、得られた基板101上に於ける低抗体のX線回折
測定で得られた膜の主な回折ピークを検討する。各窒化
タンタル膜試料は、図3、図4、図5に示すX線回折パ
ターンに代表される3つの構造の窒化タンタルであるこ
とがわかった。図3のパターンをX線回折パターン
(I)、図4のパターンをX線回折パターン(II)、
及び図5のパターンをX線回折パターン(III)とす
る。なお、前記各X線回折パターンの面方位に関する指
数付けは、ASTM及びJCPDS標準データを基にし
て決定した。X線回折パターン(I)において、図3に
示すようにTa2hex (002)及びTa2hex
(101)のピークが観察された。図5に示したX線回
折パターン(III)では、TaNhex (110)及び
TaNhex (101)のピークが観察された。更に、図
4に示したX線回折パターン(II)において、2θの
値が約35度から約36度付近にTaN0.8 hex(10
0)のピーク、及び2θの値が約31度付近にTaN
0.8 hex (001)のピークが観察された。
【0056】また、TaN0.8 hex (100)のピーク
が得られた発熱抵抗膜の上記製造条件における窒素ガス
分圧は、22%以上26%以下の領域であった。
【0057】このX線回折パターン(II)の膜をEP
MAで組成を分析したところ、Ta X Nのx値(後述す
る)を考慮すると、前記X線回折パターン(II)はT
2hex 或はTaNhex ではなく、ASTM及びJC
PDS標準データによるところのTaN0.8 hex を有す
る窒化タンタル膜であることが判った。
【0058】以上のX線回折パターン及びEPMA測定
から、上記窒素ガス分圧が22%以上26%以下の領域
では、TaN0.8 hex (100)が強く配向した構造を
有した膜であることが判った。
【0059】次に、上記3種のパターンの窒化タンタル
膜の膜質評価を行うことで、TaN 0.8 hex の構造を有
する窒化タンタルの効果についてさらに説明する。ここ
で、破断電圧比とは、種々の窒素ガス分圧比で作製した
発熱抵抗体を備えるインクジェット記録ヘッドに7μs
ecのパルス信号を与え、吐出を開始する閾値電圧V th
を求める。その後、印加電圧をVthから0.02Vth
に上げていきながら、2kHzでそれぞれ約1×105
パルスを断線するまで印加し続けた。この断線した時の
電圧を破断電圧Vb とする。また、この閾値電圧Vth
破断電圧Vb との比を破断電圧比Kb (=Vb /Vth
と呼ぶ。この破断電圧比Kb の値が高いほど発熱抵抗体
の耐熱性が高いことを示す。
【0060】ところで、インクジェット記録ヘッドのよ
うにインクの気化、凝縮を瞬時で行なう為には、数μs
ec以上十数μsec以下という非常に短い時間で加
熱、冷却をする必要があり、また、インクを瞬時に気化
する為には、発熱抵抗体上のインクとの界面が、普通の
沸点(水で100℃)の約3倍(水で300℃)近い温
度が必要で、伝熱に要する時間が短いため、発熱抵抗体
は600℃以上900℃以下まで一気に加熱される必要
がある。その為には単に発熱抵抗体の耐熱性保護膜の耐
熱性のみならず、発熱抵抗体全体を構成する材料間の応
力、及び密着性、さらには材料間の物理的、化学的変質
を考慮した設計としなければならない。
【0061】以上のような点から、上述のX線回折パタ
ーン(I)からX線回折パターン(III)の夫々の構
造を有する発熱抵抗体を備える記録ヘッドを複数用意し
て、記録ヘッドの使用に伴う発熱抵抗体の抵抗値の経時
変化や断線を生じる時の電圧等の評価を行った。
【0062】本発明のインクジェット記録ヘッドに適用
し得る記録用の液体(インク)としては様々なものが使
用可能であるが、一般的には、染料0.5wt%〜20
wt%、(多価)アルコール、ポリアルキレングリコー
ル等の水溶性有機溶剤10wt%〜90wt%のインク
組成を持つものを好ましく用いることができ、その具体
的なインク組成の一例としては、C.Iフードブラック
2を3wt%、ジエチレングリコールを25wt%、N
−メチル−2−ピロリドンを20wt%、水を52wt
%とする構成を挙げることができる。
【0063】抵抗値の変化の評価は、上述記録ヘッドを
プリンターに取り付け、1.2Vth(閾値電圧の1.2
倍)の印加電圧を7μsecのパルス幅で1×105
ルス与え、最大3kHzの吐出周波数で駆動した。そし
て、A4サイズの用紙に所定の印字テストパターンの印
字をする印字耐久試験を行ない、所定枚記録した時点で
の抵抗変化率を求めた。その結果、RO を初期のヒータ
ー抵抗とし、△Rを実験開始初期に対する試験後の抵抗
値の変化量とするとき、抵抗値の変化率△R/RO が約
20%以上になるとインクは不吐出となり、△R/RO
が10%の時には初期品位に対する画像品位の変化が認
められた。
【0064】まず、上記製造条件で、窒素ガス分圧比が
20%程度で成膜され、そのX線回折パターンが図3に
示すX線回折パターン(I)である窒化タンタル膜(T
2hex )は、破断電圧比Kb が小さく、また抵抗変
化率が大きかった。この抵抗変化率が大きいのは、印加
電圧が一定なので、発熱抵抗体材料の抵抗値の減少変化
に伴い該発熱抵抗体材料に流れる電流が増加し、その際
の発熱により発熱抵抗体材料が断線してしまい、その寿
命を短くしてしまうためである。このX線回折パターン
(I)に見られるような、抵抗体に流れる電流の増加に
よる発熱エネルギーの増加に起因する断線は、記録ヘッ
ドとしては致命的な問題である。即ち、一般に発熱抵抗
体材料として優れた特性を有するとされているTa2
hex の構造の膜は、抵抗値が大きく減少する挙動を持つ
ため、発熱抵抗体としての機能を維持することが困難で
ある。
【0065】一方、上記製造条件で、窒素ガス分圧比が
30%程度で成膜され、そのX線回折パターンが図5に
示すX線回折パターン(III)である窒化タンタル膜
(TaNhex )は、抵抗値が増加するように変化するの
で、発熱抵抗体に流れる電流が減少するので、発熱エネ
ルギーが減少して吐出するインク量も減少するという状
態になる。即ち、X線回折パターン(III)の回折ピ
ークに見られるTaN hex の構造を有する窒化タンタル
膜は、抵抗値の変化の挙動が大きく増加するために、や
はり、記録ヘッドとして求められる性能を満たすもので
はなかった。上述したように、X線回折パターン(I)
及びX線回折パターン(III)を示す組成の窒化タン
タル膜の発熱抵抗体材料としての性能は、特にインクジ
ェット記録方式の記録ヘッドの場合、その化学的、物理
的に過酷な状態の下では不十分であり、主にその構造が
Ta2hex 及びTaNhex である窒化タンタル膜のみ
では、実用上支障があることが上述したとおり再確認で
きた。
【0066】一方、上記X線回折パターン(II)であ
るTaN0.8 hex 膜は、抵抗値変化率が小さく、破断電
圧比Kb が1.6以上と著しく高い。因みに、一般に記
録ヘッドの実際の駆動電圧は1.2Vthであり、実際、
破断電圧比がKb 1.3Vth以上あれば記録ヘッドに充
分に適用可能なレベルである。このことから、破断電圧
比Kb が1.6以上という値は、耐圧マージンが大きく
信頼性が高い素子であることを示している。
【0067】前記X線回折パターン(II)に表される
窒化タンタル膜の膜質において最も特徴的なことは、X
線回折パターン(I)及びX線回折パターン(III)
には認められなかったTaN0.8 hex (100)面が配
向している結晶構造を有していることである。
【0068】以上、TaN0.8 hex を含む窒化タンタル
膜をインクジェット記録ヘッドの発熱抵抗体の材料とし
て用いれば、破断電圧比Kb が高く抵抗値の変化率も小
さく、しかも印加マージンが大きく安定して発泡するイ
ンクジェット記録方式の記録ヘッドを提供することがで
きることが判った。
【0069】図1に示される発熱抵抗体の設けられてい
る発熱抵抗体上方、及び少なくとも記録ヘッド内のイン
クが流れるもしくは滞留する領域下に設けられた電極上
には、通常、保護層が設けられている。この保護層は、
これ等電極及び熱作用部を形成している発熱抵抗体をそ
れ等の上部にあるインクから化学的、物理的に保護する
と共に、そのインクを介して生じる上記電極間の短絡及
び共通電極間、あるいは選択電極間の短絡を防止し、更
にインクと電極とが接触し、これに通電することによっ
て起こる電極の電触を防止するために設けられる。
【0070】上記保護層は、設けられる場所によって要
求される特性が各々異なり、例えば熱作用部上に於いて
は、(I)耐熱性、(II)耐インク性、(III)イ
ンク浸透防止性、(IV)熱伝導性、(V)酸化防止
性、(VI)絶縁性及び(VII)耐破傷性に優れてい
ることが要求され、熱作用部以外の領域に於いては熱的
条件では緩和されるが、インク浸透防止性、耐インク
性、絶縁性及び耐破傷性には充分優れていることが要求
される。
【0071】しかしながら、前記の(I)乃至(VI
I)の特性の総てを所望通りに満足して、保護層を一層
のみで、しかも熱作用部上及び電極上のすべてを覆うこ
とのできる保護層用材料は未だ見出されていない。こう
したことから、実際の記録ヘッドに於いては、その設け
られる場所によって要求される特性を互いに補い合う種
々の材料を選択し、それ等の材料からなる複数の層で保
護層を形成している。この様な多層構成の保護層につい
ては、該保護層についてはもとより、それに隣接する層
との間の接着力が十分に強く、記録ヘッドの製造過程及
び実際の使用期間にわたって、層間での剥離や浮き上が
りなどの接着力の低下による故障が生じないことが要求
される。
【0072】他方、これ等とは別に、マルチオリフィス
(多数ノズル)タイプのインクジェット記録ヘッドの場
合には、基板上に多数の微細な電気熱変換体を同時に形
成する為に、製造過程に於いて、基板上では各層の形成
と、形成された層の一部除去の繰返しが行なわれ、保護
層が形成される段階では、保護層の形成されるその裏面
はスラップウェッジ部(段差部)のある微細な凹凸状と
なっているので、この段差部に於ける保護層の被覆姓
(step coverage性)が重要である。つま
り、この段差部の被覆姓が悪いと、そうした段差部での
インクの浸透が起こり、電蝕或は電気的絶縁破壊を起こ
す原因となる。また、形成される保護層が欠陥部を有す
る場合には、その欠陥部を通じて、インクの浸透が起こ
り、電気熱変換体に損傷をもたらしてしまう。
【0073】これ等の理由から、保護層については、段
差部に於ける被覆性が良好であること、形成される層に
ピンホール等の欠陥が実質的に無いことが要求される。
【0074】特に熱作用面に於いては、一秒間に数千回
の高温と低温の間の激しい温度変化のサイクルが繰り返
される過酷な条件下にあると共に、熱作用面上のインク
は、高温時には気化しインク中に気泡を生じさせインク
流路内の圧力を高め、また温度の低下に伴って気化した
インクが凝縮して気泡が消滅するに従ってインク流路内
の圧力が低下するという圧力変化が繰り返され、これ等
によって生じる機械的ストレスが常に加わる。このた
め、少なくとも熱作用部上面を覆う様に設けられる保護
層には、特に機械的ストレスに対する耐衝撃性と保護層
を構成する複数の層間の接着性に優れていることが要求
される。
【0075】以下の構成例は上記背景を考慮して、上記
製造装置で得られたTaN0.8 hex膜で構成した発熱抵
抗体を熱作用部に有するインクジェット記録ヘッド用基
体試料を複数作製し(実施例No.1乃至実施例No.
5)、それら基体試料のそれぞれについてインクジェッ
ト記録特性を観察した。
【0076】実施例No.1乃至実施例No.5はそれ
ぞれ下述する各実施例の欄に記載したものとした。各実
施例は下述する各実施例の欄に記載したように作製し
た。
【0077】 試料No.1:SiN/TaN0.8 hex /SiON 単結晶シリコン基板101上に蓄熱層102としての熱
酸化法によりSiO2を1.2μmの厚さに成膜し、つ
いで蓄熱層103層としてプラズマCVD法によりSi
ONを1.2μmの厚さに堆積させた。この際、SiO
N膜のSix yz の組成が、x=1、y=0.9〜
1.8、z=0.8〜1.2となるように、SiH4
スとN2 Oガスとの混合比を調整した。その後、発熱抵
抗体103として反応性スパッタリング法によりTaN
0.8 hex を1000Å堆積させた。
【0078】更に、保護膜106としてプラズマCVD
法により、SiNを1μm堆積させた。この際、Six
y の組成がx=1、y=1.3〜2.2となるよう
に、SiH4 ガスとNH3 ガスとの混合比を調整した。
ついで、耐キャビテーション層107として、Taを反
応性スパッタリング法により2000Å堆積させてイン
クジェット記録ヘッド用基体を作製した。
【0079】この基体をAlベースプレートに取り付
け、外部より電気信号を取り入れるための配線用プリン
ト板を該ベースプレートに貼り付け、基板と配線用プリ
ント板とをワイヤーボンディングにより電気的接続がと
れるようにしてインクジェット記録ヘッドを作製した。
【0080】 試料No.2:SiN/TaN0.8 hex /SiN 試料No.1に於ける記録ヘッド用基体の層間膜103
層をプラズマCVD法によりSiNを1.2μm堆積さ
せた。この際、Sxy の組成がx=1、y=1.3〜
2.2となるよう、SiH4 ガスとNH3 ガスとの混合
比を調整した。以下、試料No.1と同様にしてインク
ジェット記録ヘッドを作製した。
【0081】 実施例No.3:SiON/TaN0.8 hex /SiON 試料No.1に於ける記録ヘッド用基体の保護膜106
をプラズマCVD法によりSiONを1μm堆積させ
た。この際、Sixyz の組成がx=1、y=0.
9〜1.8、z=0.8〜1.2となるように、SiH
4 ガスとN2 Oガスとの混合比を調整した。以下、試料
No.1の場合と同様にしてインクジェット記録ヘッド
を作製した。
【0082】 試料No.4:SiO2 /TaN0.8 hex /SiON 試料No.1に於ける記録ヘッド用基体の保護膜106
を、SiNの代わりにプラズマCVD法によりSiO2
を1.0μm堆積させた以外は、試料No.1の場合と
同様にしてインクジェット記録ヘッドを作製した。
【0083】 試料No.5:SiN/TaN0.8 hex /SiO2 試料No.1に於ける記録ヘッド用基体の蓄熱層103
を、SiONの代わりにRFスパッタリング法によりS
iO2 を1.2μm堆積させた以外は試料No.1の場
合と同様にしてインクジェット記録ヘッドを作製した。
【0084】得られた5種のインクジェット記録ヘッド
のそれぞれについて以下に述べる手法でSST試験を行
なった。得られた結果を表1に示す。
【0085】
【表1】 ここでSST試験は、発熱抵抗体に7μsecのパルス
幅で2kHzのパルスを1×105 パルス与え、まず、
インクを吐出する閾値電圧を求めた後、0.02V
th(発泡電圧の閾値電圧の0.02倍)毎に印加電圧を
増加させて、発熱抵抗体が断線した時の印加電圧(破断
電圧Vb )を測定し、閾値電圧Vthに対する破断電圧の
比(破断電圧比Kb )を求めることにより行なった。結
果として、本発明の構成によるすべての上記実施例が、
破断電圧比Kb として1.7以上1.8以下の値の範囲
で得られ、インクジェット記録ヘッド用基体として良好
であることがわかった。
【0086】いずれにしても、上述の製造装置で得られ
たTaN0.8 hex を含む構成の発熱抵抗体は、長期の繰
り返し使用に際しても、その抵抗値の変動率が小さく、
長寿命で信頼性の高いものである。
【0087】本実施構成例のインクジェット記録ヘッド
用基体は、同一もしくは同一元素を含む材料で構成され
た発熱抵抗体と耐キャビテーション層を有することが好
ましい。そのことから、それぞれを同じターゲット材を
使用して同一成膜チャンバで形成でき、且つ製造コスト
が比較的安価でインクジェット記録ヘッド用基体を提供
することができた。
【0088】本実施構成例のインクジェット記録ヘッド
用基体は、蓄熱層/発熱抵抗体を形成する抵抗層/保護
層/耐キャビテーション層からなる積層構造を有し、上
記抵抗層の構成原子の中の少なくとも1種の原子を構成
原子とする材料で他の層のそれぞれが構成されているこ
とが好ましい。この構成により、各層間の密着性が確保
され、該抵抗層に長期にわたり繰り返し作用する熱的パ
ルス及びそれによる衝撃力に対して充分に耐久性を有
し、長期繰り返し使用にあっても絶えず所望のインク吐
出を安定して行うことができた。
【0089】次に、本発明の記録ヘッドを用いたインク
ジェット記録装置について図7を参照して説明する。図
7は本発明が適用されるインクジェット記録装置210
0の一例を示す概観斜視図である。
【0090】記録ヘッド2200は、駆動モータ210
1の正逆回転に連動して駆動力伝達ギア2102、21
03を介して回転するリードスクリュー2104の螺旋
溝2121に対して係合するキャリッジ2120上に搭
載されており、前記駆動モータ2101の動力によって
キャリッジ2120とともにガイド2119に沿って矢
印a、b方向に往復移動される。図示しない記録媒体給
送装置によってプラテン2106上に搬送される記録用
紙P用の紙押え板2105は、キャリッジ移動方向にわ
たって記録用紙Pをプラテン2106に対して押圧す
る。
【0091】2107、2108はフォトカプラであ
り、キャリッジ2120のレバー2109のこの域での
存在を確認して駆動モータ2101の回転方向切換等を
行うためのホームポジション検知手段である。2110
は上述の記録ヘッド2110の全面をキャップするキャ
ップ部材2111を支持する支持部材で、2112は前
記キャップ部材2111内を吸引する吸引手段で、キャ
ップ内開口2113を介して記録ヘッド2200の吸引
回復を行う。2114はクリーニングブレードで、21
15はこのブレードを前後方向に移動可能にする移動部
材であり、本体支持板2116に、これらは支持されて
いる。クリーニングブレード2114は、この形態でな
く周知のクリーニングブレードが本実施例に適用できる
ことはいうまでもない。
【0092】また、2117は、吸引回復の吸引を開始
するためのレバーで、キャリッジ2120と係合するカ
ム2118の移動に伴って移動し、駆動モータ2101
からの駆動力がクラッチ切換等の公知の伝達手段で移動
制御される。前記記録ヘッド2200に設けられた発熱
部2110に信号を付与したり、上述した各機構の駆動
制御を司ったりする記録制御部は、記録装置本体側に設
けられている(不図示)。
【0093】上述のような構成のインクジェット記録装
置2100は、前記記記録媒体給送装置によってプラテ
ン2106上に搬送される記録用紙Pに対し、記録ヘッ
ド2200が前記記録用紙Pの全幅にわたって往復移動
しながら記録を行うものであり、記録ヘッド2200は
上述したような方法で製造したものを用いているため、
高精度で高速な記録が可能である。
【0094】また、インクジェット記録装置には、記録
ヘッドに対してインクを吐出させるための電気信号を付
与するための電気信号付与手段を有している。また、イ
ンクジェット記録装置としては、上述のような記録媒体
に記録を行う形態だけではなく、布等に模様を描いて記
録する捺染装置も、その一態様である。この捺染装置に
おいては、長い反物に連続して記録を行うため、記録途
中での断線や抵抗値の変動の大きな変動による記録品位
の低下の生じにくい本発明の発熱抵抗体を備えるインク
ジェット記録ヘッドの適用は特に望ましいものである。
【0095】以下、本発明をより具体的な実施例(使用
例)に基づいて更に詳細に説明する。
【0096】まず、発熱体の寿命と該発熱体へ印加され
る駆動電圧VOPとの関係について説明する。
【0097】最近の発熱体を発熱させる駆動方式は、高
画質化、ヘッド小型化、カラー対応などのために改良が
なされた結果、発熱体に印加される駆動電圧VOPのK値
が後述するように高めにシフトしてきた。
【0098】従来の発熱体への駆動電圧の印加は、イン
クを吐出するための主パルスのみによるシングルパルス
駆動であったが、高画質化の要求からインクの吐出量が
調整できるダブルパルス駆動に変わってきている。ダブ
ルパルス駆動とは、図6に示すように主パルスP2 と副
パルスP1 と、その間の休止時間P3 とからなるパルス
であって副パルス長と休止時間とを調整する事により、
インクの吐出量と基板の温度を調整するものである。各
駆動パルスは、駆動手段4およびシフトレジスタ5を介
して抵抗層104へ与えられ、これにより吐出口207
内のインク3に気泡2が生じてインク滴1が吐出され
る。
【0099】基板温度が、摂氏10℃程度の比較的低温
の場合は、インクが高粘度化しているため、吐出量が減
っている。そういう場合は、副パルス幅を長く設定する
ことで、吐出量を増やすことができる。また、50℃と
基板温度が上がっている時には、印加エネルギーは小さ
くて良く、副パルス幅を短く設定し吐出量を減らす。
【0100】以上のように制御することにより、種々の
環境下で同一の画像が得られる。その結果、基板温度が
低温度の時に発熱体へ印加するエネルギーを大きくする
ために、実質的に発熱体に対してK値を上げた場合と同
様の負担を与えることになり、発熱体の寿命に影響を与
えるようになった。
【0101】また、一度に多数の記録ヘッドに用いられ
る発熱抵抗層を成膜する場合、成膜装置内での位置によ
り、でき上がった発熱体の抵抗値にばらつきが生じるた
め、記録ヘッド毎に印加する駆動電圧を調整する必要が
ある。
【0102】そこで、発熱抵抗層を成膜する際に、その
近傍に液体の吐出には用いない抵抗層を同時に成膜す
る。そして、プリンタ本体側からその抵抗層の抵抗値を
測定することにより実際に液体の吐出を発熱抵抗層の抵
抗値を推測して、その推測された抵抗値に応じた駆動電
圧を記録ヘッドに印加する方法が考えられている。
【0103】ところが、このようにして推測された抵抗
値は、電極の抵抗値のばらつきや、プリンタ本体側での
抵抗値読み取り誤差等により、実際の発熱抵抗層の抵抗
値との間に多少の誤差を含むものである。
【0104】これらの誤差は、K値に換算すると約±
0.1に相当するので、安定した記録品位を得るための
最低K値である1.1を維持するためには、K値を1.
2±0.1に設定することが必要となる。従って、ヘッ
ドによっては、1.3のK値で使用されることもあり、
そのために発熱体の寿命に影響を与えることがある。
【0105】さらに、ダブルパルス駆動による低温環境
下でヘッドを使用する場合には、K値の最大値が1.3
5(〜1.4)となることもある。
【0106】従って、従来の発熱体材料であるHfB2
を用いた記録ヘッドを上述のように使用すると、200
00枚の記録が可能とされる通常のプリンタ本体の寿命
と同等程度の寿命を得る事は困難であり、インクタンク
とヘッドとが一体であって記録可能枚数の限られた交換
型ヘッドとしての製品化が限界とされている。
【0107】以下、上述したような記録ヘッドの使用条
件の下に於ける本発明の利点を含めて、本発明による抵
抗体を用いたより好ましい実施例を説明する。
【0108】本発明による抵抗体は、図4のX線回折パ
ターン(II)に示すように、主となる結晶として、T
aN0.8 hex のピークを有している。ここで、Ta、N
の組成比xの好ましい条件を検討すると、TaN0.8
hex を有する抵抗体としてTa X Nのx値の値が1.0
5以上1.85以下の間において、TaN0.8 hex とT
2hex とTaNhexの3つの結晶構造が、表2に示
すように存在する抵抗体が得られた。そして、上述した
製造方法で製造した表2に示す7種の発熱抵抗体を有す
るインクジェット記録ヘッドを製造した。
【0109】そこで、 実施例1:TaN0.8 hex を抵抗体としたインクジェッ
ト記録ヘッド; 実施例2、実施例4及び実施例5:TaN0.8 hex とT
2hex との混合物による抵抗体を使用したインクジ
ェット記録ヘッド; 実施例3、実施例6及び実施例7:TaN0.8 hex とT
aNhex との混合物に抵抗体を使用したインクジェット
記録ヘッド; として、以下、各例を説明する。
【0110】
【表2】 表2に示すように、得られた各結晶構造中のTaとNと
の各組成比xの値は、EPMAより好ましくはRBS
(Rutherford Backscattering Spectrometry)で測定
し、各結晶構造はX線回折法により決定され、TaN
0.8 hex 、Ta2he x 及びTaNhexの各量比(mo
l%)が算出される。また、各組成比xの値の決定は、
同一試料を3回測定してその測定値の平均値とすること
により行った。
【0111】〔実施例1〕図1のインクジェット記録ヘ
ッド用の基板に於いて、成膜直前に同一装置内で基板表
面をプラズマクリーニングにより該表面を清浄化した。
蓄熱層102は熱酸化法によりSiO2 を1.2μmの
厚さに形成させ、更に層間絶縁を兼ねる蓄熱層103層
をプラズマCVD法によりSiONを1.2μmの厚さ
に堆積させた。
【0112】ここで、実施例1の抵抗層104として上
述した成膜装置を用いて実質的にX線回折パターン(I
I)のTaN0.8 hex のみである膜を1000Åの厚さ
に反応性スパッタリング法により形成した。該TaN
0.8 hex 膜は、本実施例に於いては、反応性スパッタリ
ング法により以下の条件にて成膜して抵抗層104とし
た。即ち、窒素ガス分圧比が24%、アルゴンガスと窒
素ガスの混合ガスの全圧が7.5mTorr、スパッタ
リングDCパワーが2.0kW、雰囲気温度が200
℃、基板温度が200℃で反応性スパッタリングを行っ
た。
【0113】実施例1のTaN0.8 hex 膜の上には、熱
作用部108に、インクを吐出させるために発生する熱
エネルギーを供給するための導電体であるAlを550
0Åの厚さにスパッタリング法により堆積させた。該A
l層は、発熱抵抗体の堆積後、大気中に取り出す前に同
一装置内で連続的にスパッタリングにより成膜した。そ
の後、上記Al層及び上記TaN0.8 hex 層とを所定の
形状に形成した。熱作用部108は、図1のようにTa
0.8 hex 層上のAl層を取り除いた領域である。
【0114】保護膜106としては、プラズマCVD法
により、SiNを1μmの厚さに堆積させ、その後、D
Cスパッタリング法によりTa膜を2000Åの厚さに
堆積させて、耐キャビテーション層107とし、基体を
形成した。
【0115】図10に、前述したようなSST試験を行
ってその結果を示した。
【0116】図10に於ける使用例1のTaN0.8 hex
膜を発熱抵抗体とした場合の電気熱変換体の抵抗値の変
化は極めて小さく、また、その破断電圧比Kb (Kb
印加電圧/発泡電圧)が、1.8Vthと良好な特性を有
している事がわかった。
【0117】そこで、図11に、最大駆動電圧である
1.3Vthでのヒートパルス耐久試験(CST試験)の
結果を示す。CST試験は、発熱抵抗体にパルスを印加
するだけであり、記録ヘッド内にはインクは入っていな
い。この実験の結果から、使用例1のTaN0.8 hex
を用いた電気熱変換体は、ほぼ0%の抵抗値変化である
ことが判った。
【0118】次に実施例1の発熱抵抗体を備えるヘッド
を作製し、インクジェット記録装置に取り付けて印字耐
久試験を行った結果を説明する。該試験はA4の用紙に
該インクジェット記録装置に組み込まれている一般的な
テスト印字パターンを印字させて行なった。この時の駆
動電圧は、1.3Vthに設定されるよう調整した。使用
例1のTaN0.8 hex は、表3に示すように、印字寿命
が1ページ当り、1500文字の標準文書で、20,0
00枚以上印字可能であり、印字品位も図12に印字耐
久時の抵抗変化を示すが、CST同様、ほぼ0%であ
り、表3に示すように長耐久印字試験による20,00
0枚印字後でも印字品位劣化がなった。この20000
枚の印字耐久寿命は、ほぼプリンターの本体寿命と同程
度である。なお1500文字の標準分書1ページ当り、
最大パルスが印加されるノズルの印加パルス数は、約3
×104 パルスである。従って、20000枚の印字を
行うためには、連続吐出による寿命低下を考慮して印加
パルス数としては、5×108 パルス乃至6×108
ルスの印加に耐える耐久性があれば良いこととなる。
【0119】〔実施例2〕実施例1のTaN0.8 hex
より構成される抵抗層に代えて、表2のx値が1.85
の組成であって図8に示すようなX線回折パターンを示
すTaN0.8 hexとTa2hex の混合された実施例2
の抵抗体を作成し、これを使用してインクジェット記録
ヘッドを作製した。
【0120】図10に、SST試験結果を示すように、
実施例2は、破断電圧比Kb が1.8Vthと良好な結果
であった。
【0121】又、図11にCST試験結果を示すよう
に、抵抗値の変化が(−)側(抵抗値が減少する変化)
であるため実施例1より寿命が短かく、5×108 パル
スで発熱体断線が見られたが、記録ヘッドとしての評価
を行った所、図12に示すように少なくとも20,00
0枚までは印字ができた。その際に、印字品位は断線す
るまで劣化は見られなかった。
【0122】〔実施例3〕実施例1のTaN0.8 hex
より構成される抵抗層を、表2のx値が1.05の組成
であって、図9に示すようなX線回折パターンを示すT
aNhex とTaN hex の混合された窒化タンタル膜で変
更した実施例を実施例3とする。
【0123】図10にSST試験結果を示すように、実
施例3は、破断電圧比Kb が1.8Vthと良好な結果で
あった。
【0124】図11にCST試験結果を示すように、実
施例3は、抵抗値の変化が(+)側(抵抗値が増加する
変化)へ変化することがわかり、記録ヘッドとしての評
価を行った所、図12に示すように、20,000枚以
上の印字が可能であることがわかった。
【0125】〔他の実施例〕表2のTaN0.8 hex とT
2 Nによる発熱抵抗体のTaN0.8 混合mol比が8
0%の抵抗体を実施例4、TaN0.8 混合mol比が5
0%の抵抗体を実施例5、また、TaN0.8 hex とTa
Nによる発熱抵抗体のTaN0.8 混合mol比が80%
の抵抗体を実施例6、TaN0.8 混合mol比が50%
の抵抗体を実施例7として、図12に各実施例の印字耐
久試験の結果を示す。
【0126】実施例4及び実施例5の試験結果は、実施
例1と実施例2の間の特性を示していることがわかっ
た。また、実施例6及び実施例7の試験結果は、実施例
1と実施例3の間の特性を示していることがわかった。
従って、TaN0.8 の混合混合mol比が50%以上で
あると、より一層本発明の効果を安定して奏することが
でき、より理想的な抵抗体及びインクジェットヘッドを
提供できることがわかった。
【0127】次に、これら実施例の実際の印字枚数を以
下の表3にまとめる。
【0128】
【表3】 表3は、印字耐久試験のまとめで、印字耐久枚数とは、
発熱抵抗体が断線するまでの印字枚数である。
【0129】一般に発熱抵抗体の抵抗値は印字字数の増
加と共に増加するので、抵抗体に流れる電流の減少に伴
って発熱エネルギーも減少し、その結果、発熱抵抗体の
寿命は伸びる。しかしながら、発熱抵抗体に流れる電流
が減少することで発熱エネルギーが減少し、その結果、
インクの吐出量が減少して印字濃度が薄くなるという印
字劣化が発生することがある。
【0130】表3からわかる様に実施例1の発熱体は、
20000枚以上印字でき、しかも画像品位の劣化がな
かった。従って、この表からわかる通り、実施例1のT
aN 0.8 hex を用いたインクジェット記録ヘッドは、記
録画像品位、耐久性共に優れており、長寿命、高画質化
に適していることがわかった。
【0131】実施例2の発熱体は、通常市販されている
プリンタ本体の寿命とされる20000枚までの印字寿
命はないが、10000枚毎に交換する交換型ヘッド用
発熱体としては有効であることがわかった。
【0132】実施例3の発熱体の場合、画像品位は劣化
するが、20000枚程度の印字寿命を有する通常の市
販のプリンタと同等以上の耐久寿命があり、耐久面で非
常に良好な特性を持っていることが判り、画像濃度が多
少薄くなるものの、抵抗値が増加することからパーマネ
ント型のインクジェット記録ヘッドとして適しているこ
とがわかった。
【0133】また、実施例4乃至実施例7のそれぞれの
発熱体は、20000枚以上の印字が行えて、しかも品
位劣化がないという上述の実施例1と同様の結果を得る
ことができ、更に特性的にはTaN0.8 混合mol比が
高い程、実施例1の良好な特性に近づくことがわかっ
た。
【0134】以上より、TaN0.8 とTa2 Nとの混合
物であって、TaN0.8 の混合mol比が50%以上の
発熱体を使用した記録ヘッドは、その抵抗体の抵抗値の
変化は見られるものの、20000枚印字しても発熱体
の断線及び記録による画像劣化も無く、通常の市販のプ
リンタであれば実施例1同様の使い方ができることがわ
かった。TaN0.8 の混合比が80%以上であれば、抵
抗値の変化は見られるものの、実施例1との特性差は確
認できない。
【0135】また、TaN0.8 とTaNの混合との混合
物であって、TaN0.8 の混合mol比が50%以上の
発熱体を使用した記録ヘッドは、その抵抗体の抵抗値の
変化は見られるものの、20000枚印字しても発熱体
の断線も画像劣化も無く、通常の市販のプリンタであれ
ば実施例1同様の使い方ができることがわかった。Ta
0.8 の混合比が80%以上であれば、抵抗値の変化は
見られるものの、実施例1との特性差は確認できない。
【0136】また、表3に示した結果より、多数の発熱
抵抗体を配する記録ヘッドのそれぞれの発熱抵抗体に、
上述の実施例1乃至実施例7の抵抗体を混在させて用い
た場合であっても、交換型の記録ヘッドとしては全く問
題なく使用できることがわかった。
【0137】ここで、実施例2及び実施例3のように、
TaN0.8 を有しているが従来から知られているTa2
N、TaNを含む抵抗体について考察する。一般に、従
来の窒化タンタル発熱体の材料として用いられたTa2
N、TaN及びTa2 N/TaNの混合物は、背景技術
で説明したように大きな抵抗値変化のためにインクジェ
ットプリントヘッドとしての耐久性能を持っていないこ
とがわかっている。これらの抵抗変化のメカニズムは、
Ta2 Nが、高電気エネルギーのパルス印加により、他
の膜層からの酸素で、NOX が生成され余ったTaが金
属となり、そのTa金属が抵抗値を下げていると予想さ
れる。また、TaNが、パルス印加により周辺の酸素を
取り込んで、TaO+TaNの多結晶となり、抵抗値を
上げていると予想される。さらに、Ta2 N/TaNの
混合物は、抵抗変化がキャンセルされ、抵抗値変化がな
い特性を示すと思われたが、実際には、混合されている
Ta2 Nによる抵抗値変化は、自身の抵抗減少とそれに
よる印加エネルギー増加による自乗作用で大きく抵抗値
が減少するため、抵抗値変化特性は、Ta2 Nの特性が
支配的に現れて、その結果、印字によるパルス印加の増
加に伴って抵抗値が増加するというような抵抗値変化を
示すと予想される。
【0138】これら従来の発熱体に対して、本発明の上
述したTaN0.8 hex を有する抵抗体は、その抵抗値変
化の挙動結果から予想できるように、TaN0.8 hex
駆動パルスの印加に対して、Taの酸化もしくは還元を
抑制する結晶構造体であることが予想でき、結果とし
て、TaN0.8 hex を有さない従来の発熱体からは予想
できない本発明で得られた独自の抵抗値変化を示してい
ると認められる。
【0139】したがって、X線回折法による測定でTa
0.8 hex が検出できる窒化タンタル膜は、耐印加パル
スに対して安定であると言える。
【0140】ここまでに述べた実施例では、抵抗体の膜
厚が1000Åの発熱抵抗体を用いて説明をしてきた
が、更に、該膜厚を500Å及び200Åとした発熱抵
抗体を用いた場合でも、SST試験による破断電圧比及
びCST試験による抵抗値の変化は、1000Åの膜厚
の発熱抵抗体の場合と同様の良好な結果を得ることがで
きた。
【0141】一方、従来から使用されてきた発熱体であ
るHfB2 は、膜厚が500Åの場合には、1000Å
の膜厚のHfB2 の発熱体と同様の特性が得られたが、
200Åの膜厚のHfB2 の発熱体では、1000Åの
膜厚の場合と比較してSST試験による破断電圧比が低
下してしまうとともに、CST試験の結果において抵抗
値が大きく変化してしまい印字耐久性が著しく劣化して
しまうことがわかった。
【0142】従って、本発明による発熱体の膜厚は、2
00Å以上1000Å以下の場合であっても上述したよ
うな良好な特性を示し、従来から使用されてきたHfB
2 を用いた発熱体と比較して優れた特性を有しているこ
とがわかった。
【0143】これにより、発熱体の膜厚を薄くすること
ができるので、成膜時間を短縮することができる他、発
熱体のシート抵抗値を発熱体の膜厚を選択することで任
意に設定することも可能となった。
【0144】以上から、窒化タンタル膜は、インクジェ
ット記録ヘッド用の発熱抵抗体の材料としては、その膜
構造の相違によって適否があることがわかり、本発明に
よるTaN0.8 を含む発熱抵抗体がインクジェット記録
ヘッド用の発熱抵抗体として優れていることがわかっ
た。
【0145】本発明は、記録装置が記録できる最大記録
媒体の幅に対応した長さを有するフルラインタイプの記
録ヘッドとしては、複数記録ヘッドの組み合わせによっ
て、または、その長さを満たす構成や一体的に形成され
た一個の記録ヘッドとして等、その構成のいずれでもよ
いが、上述した効果を有効に発揮することができる。
【0146】
【発明の効果】本発明は以上説明したように構成されて
いるので、以下に記載するような効果を奏する。
【0147】本発明のTaN0.8 を有する発熱抵抗体お
よびTaN0.8 を有する液体吐出ヘッド用基体において
は、発熱抵抗体を、長期の連続使用にあっても抵抗値の
変動は極めて少なく、長寿命で信頼性の高いものとする
ことができ、該発熱抵抗体を有する液体吐出ヘッド用基
体を備えた液体吐出ヘッドは、ヘッドの駆動信号として
液体の吐出のための主パルスの前に予備パルスを与えて
液体の吐出を行う液体吐出方式にあって、長期の間の繰
り返し吐出にあっても安定した液体の吐出をもたらし、
インクジェット記録ヘッドに用いた場合には、高品質の
記録を可能にすることができる効果がある。
【0148】液体吐出ヘッドの積層構造として、層間の
密着性が確保されたものとすることができ、液体吐出ヘ
ッドを該発熱抵抗体に繰り返し作用する熱的パルス及び
それによる衝撃力に対して充分に耐久性を有しるものと
することができ、長期繰り返し使用にあっても絶えず所
望の液体吐出をもたらすものとすることができる効果が
ある。
【0149】本発明の液体吐出ヘッドにおいては、構成
材料の供給が常時安定して成されるものであり、また、
当該発熱抵抗体の製造において不純物のコンタミネーシ
ョン等の悪影響の問題はなかった。また、当該発熱抵抗
体は信頼性が高く、且つ、今後の主流となる主パルスと
副パルスとの2つのパルスによって液体吐出状態をコン
トロールする駆動方法においても充分な耐久性を達成す
ることができる等の利点を有する。
【0150】本発明による液体吐出ヘッドの発熱抵抗体
は、高周波で駆動した場合にも、所望の耐久性が維持さ
れ、インクジェット記録ヘッドに用いた場合でも高品位
の記録画像を長期にわたってもたらすことができる。
【0151】本発明による液体吐出ヘッドは、高速駆動
における複数パルスによる吐出状態をコントロールする
駆動方法においても充分な耐久性を有し、更に、インク
ジェット記録ヘッドに用いた場合でも高品位の画像とを
確保できる等の利点を有し、記録スピードの高速化に対
応し、そのマルチノズル化が容易に達成することがで
き、常時安定して所望のインク吐出がなされ、高品質の
記録画像を常時安定して形成することができる。
【0152】本発明による発熱抵抗体の製造方法による
と、上記各効果を奏する液体吐出ヘッド用基体および液
体吐出ヘッドを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】インクジェット記録ヘッド用基体の模式的断面
図である。
【図2】インクジェット記録ヘッド用基体のVop設定用
ダミーヒーターのレイアウト図である。
【図3】Ta2 N発熱抵抗体を形成する抵抗層のX線回
折測定パターンである。
【図4】TaN0.8 発熱抵抗体を形成する抵抗層のX線
回折測定パターンである。
【図5】TaN発熱抵抗体を形成する抵抗層のX線回折
測定パターンである。
【図6】インクジェット記録ヘッド用基体のダブルパル
ス駆動発泡模式的断面図である。
【図7】本発明の記録ヘッドを用いたインクジェット記
録装置の一例としての模式的斜視図である。
【図8】実施例2のX線回折測定パターンである。
【図9】実施例3のX線回折測定パターンである。
【図10】SST試験の結果を示す図である。
【図11】CST試験の結果を示す図である。
【図12】印字耐久試験の結果を示す図である。
【図13】本発明のインクジェット記録ヘッド用基体の
各層を成膜する成膜装置である。
【符号の説明】
101 シリコン基板 102 熱酸化膜 103 層間膜 104 抵抗層 105 Al合金配線 106 保護膜 107 耐キャビテーション膜 108 熱作用部 201 ランク設定用ダミーヒーター 202 温度調整用サブヒーター 301 タンタルターゲット 302 平板マグネット 303 基板ホルダー 304 基板 305 ヒータ 306 DC電源 307 ポンプ 308 ヒータ 309 チャンバ 310 取り入れ口 311 シヤッター 601 インク吐出液 602 発泡 603 インク 604 駆動手段
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 杉谷 博志 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (72)発明者 牧野 憲史 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (72)発明者 田村 清一 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (72)発明者 成瀬 泰弘 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (56)参考文献 特開 平4−255357(JP,A) 特開 平5−92565(JP,A) 特開 平5−57885(JP,A) 特公 昭61−56111(JP,B2) 米国特許3242006(US,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41J 2/05 B41J 2/16 B41J 2/335 C01B 21/06 C01G 35/00 H01C 7/00 H01C 17/12

Claims (21)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱エネルギーを用いて吐出口から液体を
    吐出する液体吐出ヘッドに設けられる発熱抵抗体におい
    て、 該発熱抵抗体は、六方晶系(hexagonal)構造のTaN
    0.8 を含むことを特徴とする液体吐出ヘッド用発熱抵抗
    体。
  2. 【請求項2】 熱エネルギーを用いて吐出口から液体を
    吐出する液体吐出ヘッドに設けられる発熱抵抗体におい
    て、 該発熱抵抗体は、六方晶系(hexagonal)構造のTaN
    0.8 のみで構成されることを特徴とする液体吐出ヘッド
    用発熱抵抗体。
  3. 【請求項3】 熱エネルギーを用いて吐出口から液体を
    吐出する液体吐出ヘッドに設けられる発熱抵抗体におい
    て、 該発熱抵抗体は、六方晶系(hexagonal)構造のTaN
    0.8 およびTaNを含むことを特徴とする液体吐出ヘッ
    ド用発熱抵抗体。
  4. 【請求項4】 熱エネルギーを用いて吐出口から液体を
    吐出する液体吐出ヘッドに設けられる発熱抵抗体におい
    て、 該発熱抵抗体は、六方晶系(hexagonal)構造のTaN
    0.8 およびTa 2 を含むことを特徴とする液体吐出ヘッ
    ド用発熱抵抗体。
  5. 【請求項5】 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載
    の発熱抵抗体を有する液体吐出ヘッド用基体。
  6. 【請求項6】 請求項5に記載の液体吐出ヘッド用基体
    において、 発熱抵抗体を有する複数の層構造の最上層は、Taを有
    する層であることを特徴とする液体吐出ヘッド用基体。
  7. 【請求項7】 請求項5に記載の液体吐出ヘッド用基体
    において、 該液体吐出ヘッド用基体は六方晶系(hexagonal)構造
    のTaN 0.8 を含むとともに、液体の吐出には使用され
    ない抵抗素子を有することを特徴とする液体吐出ヘッド
    用基体。
  8. 【請求項8】 請求項5乃至請求項7のいずれかに記載
    の液体吐出ヘッド用基体を有する液体吐出ヘッド。
  9. 【請求項9】 請求項8に記載の液体吐出ヘッドにおい
    て、 該液体吐出ヘッドは、異なる液体を吐出することを特徴
    とする液体吐出ヘッド。
  10. 【請求項10】 六方晶系(hexagonal)構造のTaN
    0.8 およびTaNを含む発熱抵抗体を用い、液体収納部
    が別体とされることを特徴とする液体吐出ヘッド。
  11. 【請求項11】 六方晶系(hexagonal)構造のTaN
    0.8 およびTa 2 を含む発熱抵抗体を用い、液体収納部
    が一体とされ、一体交換タイプの液体吐出ヘッド。
  12. 【請求項12】 請求項8乃至請求項11のいずれかに
    記載の液体吐出ヘッドにおいて、 該液体吐出ヘッドは、吐出された液体を付着させるシー
    ト媒体の幅方向にわたって液体吐出口を有することを特
    徴とする液体吐出ヘッド。
  13. 【請求項13】 請求項8乃至請求項12のいずれかに
    記載の液体吐出ヘッドにおいて、 該液体吐出ヘッドは、液体吐出口の数が64以上である
    ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
  14. 【請求項14】 液体吐出装置に着脱自在であって、請
    求項8乃至請求項11のいずれかに記載の液体吐出ヘッ
    ドを用いて構成されたことを特徴とする液体吐出ヘッド
    カートリッジ。
  15. 【請求項15】 請求項8乃至請求項13のいずれかに
    記載の液体吐出ヘッドを複数用いて構成されたことを特
    徴とする液体吐出ヘッドユニット。
  16. 【請求項16】 請求項8乃至請求項13のいずれかに
    記載の液体吐出ヘッド、または請求項14に記載の液体
    吐出カートリッジ、または請求項15に記載の液体吐出
    ヘッドユニットを用いて媒体に液体の吐出を行う液体吐
    出装置。
  17. 【請求項17】 請求項16に記載の液体吐出装置の発
    熱抵抗体を発熱するための駆動条件が、液体の吐出する
    一番低い電圧 th の1.1倍以上1.4倍以下の電圧に
    より駆動することを特徴とする液体吐出装置の駆動方
    法。
  18. 【請求項18】 少なくとも液体吐出用素子として発熱
    抵抗体を多数用いる液体吐出ヘッドの駆動方法であっ
    て、該発熱抵抗体のそれぞれが六方晶系(hexa gonal)
    構造のTaN 0.8 を含み、10kHz以上の駆動周波数
    で駆動されることを特徴とする液体吐出ヘッドの駆動方
    法。
  19. 【請求項19】 液体吐出ヘッド用基体の製造方法にお
    いて、 該製造方法は、窒素ガスとアルゴンガスからなる混合ガ
    ス雰囲気を形成し、前記窒素ガスの分圧を22%以上2
    6%以下の範囲とし、前記雰囲気の温度を150℃以上
    230℃以下の範囲とし、基板温度を180℃以上23
    0℃以下の範囲とし、スパッタリングDCパワーを1.
    0kW以上4.0kW以下の範囲とし、反応性スパッタ
    リングを行って六方晶系(hexagonal)構造のTaN 0.8
    を含む発熱抵抗体を形成する工程を包含することを特徴
    とする液体吐出ヘッド用基体の製造方法。
  20. 【請求項20】 少なくとも液体吐出用素子として発熱
    抵抗体を用いる液体吐出ヘッドの製造方法において、 該発熱抵抗体と共に該液体吐出ヘッドに備えられる機能
    素子と該発熱抵抗体とが、六方晶系(hexagonal)構造
    のTaN 0.8 を含むことを特徴とする液体吐出ヘッドの
    製造方法。
  21. 【請求項21】 記録媒体に記録を行う記録ヘッドに設
    けられる抵抗体において、 該抵抗体が、六方晶系(hexagonal)構造のTaN 0.8
    含むことを特徴とする記録ヘッド用抵抗体。
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