JP3554148B2 - インクジェット記録ヘッド用基体、インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット記録ヘッド用基体、インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、紙、プラスチックシート、布、物品等を包含する記録保持体に対して、例えばインク等の機能性液体等を吐出することにより文字、記号、画像等の記録、印刷等を行うインクジェットヘッド(以下、単に”インクジェットヘッド”と略称する)を構成するための基体、この基体を用いて構成されるインクジェットヘッド、このインクジェットヘッドに対して供給されるインクを貯溜するためのインク貯溜部を含むインクジェットペン、及びインクジェットヘッドが装着されるインクジェット装置に関する。
【0002】
なお、本発明においていうインクジェットペンは、インクジェットヘッドとインク貯溜部とを一体としたカートリッジ形態も、それらを互いに別体として取り外し可能に組み合わせた形態も包含するものを意味する。このインクジェットペンは、装置本体側のキャリッジ等の搭載手段に対して着脱自在に構成されている。
【0003】
また、本発明において称するインクジェット記録装置は、ワードプロセッサー、コンピューター等の情報処理機器の出力端末として一体的に、または別体として設けられるものの他、情報読み取り機器等と組合わされた複写装置、情報送受信機能を有するファクシミリ装置、布への捺染を行う機械等の種々の形態を包含するものを意味している。
【0004】
【従来の技術】
この種のインクジェット記録装置は、インクを微小な液滴として吐出口から高速で吐出することにより、高精細な画像の高速記録を行うことができるという特徴を有している。特に、インクを吐出するために利用されるエネルギーを発生するエネルギー発生手段として電気熱変換体を用い、この電気熱変換体が発生する熱エネルギーによって生ずるインクの発泡を利用してインクを吐出する方式のインクジェット記録装置は、画像の高精細化、高速記録化、記録ヘッド及び装置の小型化やカラー化に適していることから近年注目されている。(例えば米国特許第4723129号及び米国特許第4740796号参照)。
【0005】
上記インクジェット記録に使用されるヘッドの基板要部の一般的な構成を図1に示す。また、図2は、図1のインク流路に相当する部分のX−X’線で切断したインクジェット記録ヘッド用基体2000の模式的断面図である。
【0006】
図1において、このインクジェット記録ヘッドには、複数の吐出口1001が設けられ、また、これからそれぞれインクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生する電気熱変換素子1002が各インク流路1003毎に基板1004上に設けられている。電気熱変換素子1002は、主に発熱抵抗体1005及びこれに電力を供給するための電極配線1006並びにこれらを保護する絶縁膜1007により構成される。
【0007】
また、各インク流路1003は複数の流路壁1008が一体的に形成された天板を、基板1004上の電気熱変換素子等との相対位置を画像処理等の手段により位置合わせしながら接合することで形成される。各インク流路1003は、その吐出口1001と反対側の端部が共通液室1009と連通しており、この共通液室1009にはインクタンク(図示せず)から供給されるインクが貯留される。
【0008】
共通液室1009に供給されたインクは、ここから各インク流路1003に導かれ、吐出口1001近傍でメニスカスを形成して保持される。この時、電気熱変換素子1002を選択的に駆動させることにより、その発生する熱エネルギーを利用して熱作用面上のインクを急激に加熱沸騰させ、この時の衝撃力によってインクを吐出させる。
【0009】
図2において、2001はシリコン基板、2002は熱酸化膜からなる蓄熱層を示すものであり、
2003は、蓄熱機能を兼ねるSiO膜、SiN膜等からなる層間膜、2004は発熱抵抗層、2005はAl,Al−Si,Al−Cu等の金属配線、2006はSiO膜、SiN膜等からなる保護層を示す。また、2007は、発熱抵抗層2004の発熱に伴う化学的、物理的衝撃から保護膜2006を守るための耐キャビテーション膜、2008は発熱抵抗層2004の熱作用部である。
【0010】
これらのインクジェット記録装置の記録ヘッドに用いられる発熱抵抗体としては、以下のような特性が要求される;
(1)発熱抵抗体として熱応答性に優れ、瞬時にインクの吐出を可能とする、
(2)高速及び連続の駆動に対して、抵抗値変化が少なく、インクの発泡状態が安定している、
(3)耐熱性、熱応力性に優れ、寿命が長く信頼性が高い。
これらの要求を満たすインクジェットヘッドに使用される発熱抵抗層として特開平7−125218号公開公報には、発熱抵抗体材料にTaN膜を用いる構成が開示されている。このTaN膜における特性安定性、特に長期繰り返し記録時の抵抗変化率は、TaN膜の組成と強い相関関係が有り、中でもTaN0.8hexを含む窒化タンタルで構成された発熱抵抗体は、上記長期繰り返し記録時の抵抗変化率が少なく吐出安定性に優れているものである。
【0011】
ちなみに、発熱抵抗体を用いる記録ヘッドは上述のインクジェット記録ヘッドの他に感熱紙やインクリボンに直接接触させて記録を行うサーマルプリントヘッドがある。
【0012】
このようなサーマルプリントヘッドにおける発熱抵抗体としては、例えば、特開昭53−25442号公開公報に記載されるように、高い温度で発熱させても寿命特性に優れた発熱抵抗体として、第1の元素がTi,Zr,Hf,V,Nb,Ta,WおよびMoのうちから選ばれた少なくとも1種であり、第2の元素がNであり、第3の元素がSiであり、第1の元素が5〜40原子%、第2の元素が30〜60原子%、第3の元素が30〜60%で発熱抵抗体を構成するものや、あるいは、特開昭61−100476号公開公報に記載されるように、熱的安定性が高く、印字品質の優れた発熱抵抗体として、タンタルと高融点金属(Ti,Zr,Hf,V,Nb,Cr,Mo,W)と窒素との合金で発熱抵抗体を構成するものがある。更に、特開昭56−89578号公開公報のように、耐酸化性や抵抗値安定性に優れた発熱抵抗体として、窒化物を形成する金属とケイ素および窒素を含有する発熱抵抗体を用いるものがある。また、特公平2−6201号公告公報に記載されるように、サーマルヘッドにおける高速記録や、長寿命の使用に耐え得る発熱抵抗体として、Ta−Si−O系薄膜を用いるものがある。
【0013】
しかしながら、現状ではインクジェット記録ヘッドの発熱抵抗体としては、HfB、TaN、TaAlもしくはTaSiといった発熱抵抗体材料が用いられており、上述のサーマルプリントヘッドに用いられる発熱抵抗体は、一般にインクジェット記録ヘッドには実用化されていない。
【0014】
これは、サーマルプリントヘッドでは、発熱抵抗体には1msec.の時間に1W程度の電力が印加されるのに対し、インクジェットヘッドでは短時間でインクを気化させるために、例えば7μsecの間に3W〜4W相当の電力を発熱抵抗体に印加するためである。これは、サーマルプリントヘッドに印加する電力の数倍の大きさであるため、インクジェットヘッドの発熱抵抗体ではサーマルプリントヘッドに比べて短い時間により熱ストレスを受けやすいものとなっている。
【0015】
従って、発熱抵抗体としては、サーマルプリントヘッドに用いられるものとは異なるインクジェットヘッドに特有な吐出、駆動方法を考慮し、それに適した発熱抵抗体の設計(膜厚、ヒーターサイズ、形状など)が必要であり、サーマルプリントヘッド分野で使用されている発熱抵抗体をそのままインクジェットヘッドに適用することは困難である。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述したように、インクジェット記録装置においては、近年、装置の高画質化、高速記録等の高機能化がますます要求されている。このうち、高画質化に対しては、ヒーター(発熱抵抗体)のサイズを小さくすることにより、1ドット当りの吐出量を少なくし小ドット化により画質を向上する方法がある。
【0017】
また、高速記録を行うためには、従来より一層パルスを短くした駆動を行うことにより、駆動周波数を上げる方法がある。
【0018】
しかしながら、上述のように高画質化に対応するためヒーターサイズを小さくした構成で、高周波数でヒーターを駆動させるためには、シート抵抗値を大きくする必要がある。これらヒーターサイズの差異による各種駆動条件の関係説明図を図3(a)に示す。
【0019】
図3(a)は、駆動電圧が一定の時にヒーターサイズが大きいもの(A)から、小さいもの(B)に変化した時の駆動パルス幅に対する発熱抵抗体のシート抵抗値および電流値の変化を示す。また、同様にして駆動パルス幅が一定の時にヒーターサイズが変化した時の、駆動電圧に対する発熱抵抗体のシート抵抗値および電流値の関係を図3(b)に示す。
【0020】
すなわち、ヒーターサイズを小さくした時に、従来と同一条件で駆動させるためにはシート抵抗値を大きくする必要がある。また、エネルギーの関係から、シート抵抗値を大きくし、駆動電圧を高くして駆動させる方が電流値が少なくなり、省エネが達成できる。特に、発熱抵抗体を複数配置した構成の場合はその効果は大きくなる。
【0021】
ところが、前述したように現在インクジェット記録ヘッドに用いられているHfB、TaN、TaAlもしくはTaSi等の発熱抵抗体の比抵抗値は、200〜300μΩ・cm程度である。発熱抵抗体の製造安定性、吐出の特性安定性等を考慮すると、発熱抵抗体の膜厚は200Åが限界と考えれば、シート抵抗値は150Ω/□が限界となる。従って、それ以上のシート抵抗値を得ようとすると、上記発熱抵抗体を使用することは難しくなる。
【0022】
一方、上述したようなサーマルプリントヘッドに用いられている発熱抵抗体では、シート抵抗値を大きくすることは可能であるものの、上述のようにインクジェットヘッドに要求されるような熱応答性、高速記録特性を達成するためには使用することはできない。
【0023】
さらに、インクジェット記録装置では電源容量や半導体素子の耐圧の観点から、駆動電圧の制約があり、現在のところ約30V程度が上限とされている。この駆動電圧以下で動作させるためには、発熱抵抗体の比抵抗値は4000μΩ・cm以下であることが必要であるが、上述のサーマルプリントヘッドに用いられている発熱抵抗体は、一般的に発熱抵抗体の比抵抗値が4000μΩ・cmを超えるものとなってしまっている。
【0024】
このように、短パルス駆動による熱応答性に優れ、高いシート抵抗値を有することができるインクジェット記録ヘッド用の発熱抵抗体は従来なかった。更に、記録画像の高精細化に伴い、ヒーターサイズを小さくすることにより小さなインク滴を記録するためには、従来の発熱抵抗体を使用する限りにおいては、電流値が増加し、発熱による問題が避けられなかった。
【0025】
従って、本発明の主たる目的は、従来のインクジェット記録ヘッド用の発熱抵抗体について上述した諸問題を解決し、高品位な記録画像を長期にわたって得ることを可能にする発熱抵抗体を有するインクジェット記録ヘッド用基体、インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置を提供することにある。
【0026】
本発明の他の目的は、記録画像の高精細化に対応した小ドット化や高速記録に対応した高速駆動においても、吐出が安定した発熱抵抗体を有するインクジェット記録ヘッド用基体、インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【0027】
本発明の更に他の目的は、上述した優れたインクジェット記録ヘッドに対して供給されるインクを貯溜するためのインク貯溜部を含むインクジェットペン、及びかかるインクジェット記録ヘッドが装着されるインクジェット記録装置を提供することにある。
【0028】
本発明の他の目的は、発熱抵抗層をはさんで蓄熱層/発熱抵抗層/保護層からなる積層構造を有したインクジェット記録ヘッドにおいて、各層間の密着性が向上したインクジェット記録ヘッドを提供することを目的とする。
【0029】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以下のインクジェット記録ヘッド用基体、インクジェット記録ヘッド及びインクジェット記録装置の構成により、前記目的を達成するものである。
【0030】
すなわち、この発熱抵抗体は、比抵抗値が4000μΩ・cm以下であるTaSiで表わされる材料からなる薄膜で構成されており、x=20〜80at.%、y=3〜25at.%、z=10〜60at.%(x+y+z=100)であることを特徴とする。
【0031】
また、インクを吐出するインク吐出口と、インクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生する複数の発熱抵抗体と、該発熱抵抗体を内包するとともに前記インク吐出口に連通するインク流路と、を有するインクジェット記録ヘッドにおいて、該発熱抵抗体は、比抵抗値が4000μΩ・cm以下であるTaSiで表わされる材料からなる薄膜で構成されており、x=20〜80at.%、y=3〜25at.%、z=10〜60at.%(x+y+z=100)であることを特徴とする。
【0032】
また、インクを吐出するインク吐出口と、インクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生する複数の発熱抵抗体と、該発熱抵抗体を内包するとともに前記インク吐出口に連通するインク流路と、を有するインクジェット記録ヘッドと、該インクジェット記録ヘッドから吐出されるインクを受ける記録媒体を搬送するための搬送手段と、を備えるインクジェット記録装置において、前記発熱抵抗体は、比抵抗値が4000μΩ・cm以下であるTaSiで表わされる材料からなる薄膜で構成されており、x=20〜80at.%、y=3〜25at.%、z=10〜60at.%(x+y+z=100)であることを特徴とする。
【0035】
(作用)
以上のような本発明構成によるインクジェット記録ヘッドの提供により、前記発熱抵抗体は、ヒータサイズを小さいものとして短いパルスで連続的に駆動した場合にも、所望の耐久性が得られ、エネルギー効率が高く、発熱を抑制して省エネルギーを可能にするとともに、高品位の記録画像を提供すること
ができる。
【0036】
また、本発明は、インクジェット記録ヘッドのインクのみに限定されるものでなく、前記発熱抵抗体を用いて吐出が可能なインクジェット記録ヘッドの液体にも適用し得るものである。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を、複数の実施例に基づいて詳細に説明する。但し、本発明は、以下に説明する各実施例のみに限定されるものでなく、本発明の目的を達成し得るものであればよいことは勿論である。
【0038】
(発明の好ましい形態)
次に本発明の詳細について、図面を参照して説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されることはなく、本発明の目的が達成され得るものであれば良い。
【0039】
前述の図1は本発明の一実施例に係わるインクジェットヘッドのインクを発泡させる、発熱部の基板要部の概略平面図であり、図2は、図1で示されたX−X’一点鎖線に沿って基板面に垂直に切断した時の模式的な切断面部分図である。
【0040】
本発明実施例における発熱抵抗体2004は、各種成膜法で作製可能であるが一般的には電源として高周波(RF)電源、または直流(DC)電源を用いたマグネトロンスパッタリング法により形成される。図4は、上記発熱抵抗層2004を成膜するスパッタリング装置の概要を示す。図4において、4001はあらかじめ所定の組成に作製されたTa−Siからなるターゲット、4002は平板マグネット、4011は基板への成膜を制御するシャッター、4003は基板ホルダー、4004は基板、4006はターゲット4001と基板ホルダー4003に接続された電源である。
【0041】
さらに、図4において、4008は成膜室4009の外周壁を囲んで設けられた外部ヒーターである。該外部ヒーター4008は、成膜室4009の雰囲気温度を調節するのに使用される。基板ホルダー4003の裏面には、基板の温度制御を行う内部ヒーター4005が設けられている。基板4004の温度制御は、外部ヒーター4008を併用して行うことが好ましい。
【0042】
図4の装置を用いた成膜は、以下の様に行われる。まず、排気ポンプ4007を用いて成膜室4009を1×10−5〜1×10−6Paまで排気する。次いで、アルゴンガスと窒素ガスあるいは形成する発熱抵抗体に応じて酸素ガス、炭素系ガスからなる混合ガスを、マスフローコントローラー(不図示)を介してガス導入口4010から成膜室4009に導入される。この時、上記基板温度及び雰囲気温度が所定の温度になるように内部ヒーター4005、外部ヒーター4008を調節する。次に、電源4006からターゲット4001にパワーを印加してスパッタリング放電を行い、シャッター4011を調節して、基板4004の上に薄膜を形成させる。
【0043】
上記発熱抵抗体の成膜は、Ta−Siからなる合金ターゲットを用いた反応性スパッタリング法で形成する方法について説明した。上記成膜法のみに限定されるばかりでなく、別々のTaターゲットとSiターゲットを用い、それぞれに接続された2台の電源からパワーを印加する、2元同時反応性スパッタリング法により形成することも可能である。この場合は、各々のターゲットに印加するパワーを単独に制御することが可能となる。
【0044】
さらに、Ta−Si−N、Ta−Si−O、Ta−Si−Cあるいはそれらの混合物からなる合金ターゲットを用いて、アルゴンガスによりスパッタリングを行うスパッタリング法(場合によっては、窒素ガス、酸素ガス、炭素系ガスを導入した反応性スパッタリング法)により形成することも可能である。
【0045】
本実施例においては、図4に示した装置を使用し、上述した成膜方法により各種の成膜条件で本発明の発熱抵抗体膜を作製した。
【0046】
(実施例1)
以下、本発明の具体的な第1の実施例について説明する。
【0047】
図2において、一部既述のように、シリコン基板2001上に熱酸化により膜厚1.8μmの蓄熱層2002を形成し、更に蓄熱層を兼ねる層間膜2003として、SiO2膜をプラズマCVD法により膜厚1.2μmに形成した。次に、発熱抵抗層2004として2個のターゲットを用いた2元同時スパッタリング法によりTa−Si−N膜を膜厚1000Å形成した。
【0048】
この時のガス流量は、Arガス45sccm、N2ガス15sccm、窒素ガス分圧比25%とし、ターゲットに投入するパワーは、Siターゲット150W、Taターゲット500Wとし、雰囲気温度200℃、基板温度200℃で行った。
【0049】
更に、熱作用部2008で発熱抵抗層2004を加熱するための金属配線2005として、Al膜を5500Åスパッタリング法により形成した。
【0050】
これを、フォトリソによりパターン形成し、Al層を取り除いた15μm×40μmの熱作用部2008を形成した。保護膜2006としては、プラズマCVD法によりSiN膜を1μmの膜厚に形成し、最後に耐キャビテーション層2007としてスパッタリング法によりTa膜を膜厚2000Å形成し、本発明の基体を得た。上記形状の発熱抵抗層のシート抵抗値は、270Ω/□であった。
【0051】
(比較例1)
発熱抵抗層2004を、次のように変更する以外は、実施例1と同様に作製することにより比較例1の基体を得た。すなわち、Taターゲットを用いた反応性スパッタリング法により膜厚1000ÅのTaN0.8膜を形成した。この時のガス流量は、Arガス48sccm、N2ガス12sccm、窒素ガス分圧20%とし、Taターゲットへの投入パワー500W、雰囲気温度200℃、基板温度200℃で行った。発熱抵抗層のシート抵抗値は25Ω/□であった。
【0052】
<評価1>
上記実施例1及び比較例1として作製された基体を用いて、インクを吐出する発泡電圧Vthを求めた。
【0053】
このVthに対して、1.2Vth(発泡電圧の1.2倍)を駆動電圧として、駆動パルス幅2μsec.で駆動させた時の電流値を測定した。
【0054】
すなわち、実施例1では、Vth=24V、電流値は35mAであったのに対し、比較例1ではVth=9.9V、電流値は120mAであった。この結果から、本発明の実施例1と比較例1の基体を比較すると、電流値は比較例に比べ約1/3となっている。実際のヘッド形態では、同時に駆動させる発熱抵抗体数は複数あるので、比較例に比べてはるかに消費電力が少なくなり、省エネ効果が得られることが理解されよう。
【0055】
更に、以下の条件で発熱抵抗体を駆動させ、破断パルスによる熱ストレス耐久評価をおこなった。
【0056】
駆動周波数:10KHz、駆動パルス幅:2μsec.
駆動電圧:発泡電圧×1.3
【0057】
その結果、比較例では6.0×10パルスで破断したのに対し、実施例1では5.0×10パルスまで破断しなかった。
【0058】
このように、本発明の実施例の基体では短いパルス駆動に対しても十分耐えられることがわかる。
【0059】
(実施例2)
発熱抵抗層2004を、次のように変更する以外は、前記実施例1と同様に作製することにより、図1で示される基体2000を得た。すなわち、成膜時に導入するガスを、実施例1の窒素ガスに変えて酸素ガスを導入し、反応性スパッタリング法により膜厚1000ÅのTa−Si−O膜を形成した。この時のガス流量は、Arガス45sccm、酸素ガス15sccm、酸素ガス分圧25%とし、ターゲット投入パワーは、Siターゲット150W、Taターゲット520Wとし、雰囲気温度200℃、基板温度200℃で行った。発熱抵抗層のシート抵抗値は290Ω/□であった。
【0060】
<評価2>
前記評価1と同様にして、以上の実施例2で作製された基体の評価を行った。
【0061】
その結果、実施例2の基体ではVth=25V、電流値は36mであった。
【0062】
また、破断パルスによる熱ストレス耐久評価では、6.0×10パルスまで破断しなかった。
【0063】
評価1の結果と同じように、実施例2の基体は、電流値が少なく省エネ効果に優れた基体であることがわかる。
【0064】
また、短いパルス駆動を行った場合でも耐久性に優れているものである。
【0065】
(実施例3)
発熱抵抗層2004を、次のように変更する以外は、前記実施例1と同様に作製することにより、図1で示される基体2000を得た。すなわち、成膜時に導入するガスを、実施例1の窒素ガスに変えてメタン(CH)ガスを導入し、反応性スパッタリング法により膜厚1000ÅのTa−Si−C膜を形成した。この時のガス流量は、Arガス48sccm、CHガス12sccm、CHガス分圧20%とし、ターゲット投入パワーは、Siターゲット150W、Taターゲット500Wとし、雰囲気温度200℃、基板温度200℃で行った。
【0066】
<評価3>
前記評価1と同様にして、以上の実施例3で作製された基体の評価を行った。
【0067】
その結果、実施例3の基体ではVth=22V、電流値は41mAであった。
【0068】
また、破断パルスによる熱ストレス耐久評価では、6.0×10パルスまで破断しなかった。
【0069】
評価1の結果と同じように、実施例3の基体も、電流値が少なく省エネ効果に優れた基体であることがわかる。
【0070】
また、短いパルス駆動を行った場合でも耐久性に優れているものである。
【0071】
(実施例4)
発熱抵抗層2004を、次のように変更する以外は、前記実施例1と同様に作製することにより、図1で示される基体2000を得た。すなわち、成膜時に導入するガスを、実施例1の窒素ガスに変えて窒素ガスと酸素ガスからなる混合ガスを導入し、反応性スパッタリング法により膜厚1000ÅのTa−Si−O−N膜を形成した。この時のガス流量は、Arガス48sccm、混合ガス12sccm(酸素ガス5sccm、窒素ガス7sccm)、混合ガス分圧20%とし、ターゲット投入パワーは、Siターゲット150W、Taターゲット500Wとし、雰囲気温度200℃、基板温度200℃で行った。
【0072】
<評価4>
前記評価1と同様にして、以上の実施例4で作製された基体の評価を行った。
【0073】
その結果、実施例3の基体ではVth=23V、電流値は39mAであった。
【0074】
また、破断パルスによる熱ストレス耐久評価では、5.0×10パルスまで破断しなかった。
【0075】
評価1の結果と同じように、実施例4の基体も、電流値が少なく省エネ効果に優れた基体であることがわかる。
【0076】
また、短いパルス駆動を行った場合でも耐久性に優れているものである。
【0077】
<膜物性評価>
次に、発熱抵抗体膜の物性を評価するため、上述の実施例と同様にして図4に示した装置を使用し、上述した成膜方法により各種の成膜条件で複数種のTa−Si−N膜を作製した。
【0078】
まず、単結晶シリコンウエハ上に熱酸化膜を形成し、図4の装置の成膜室4009内の基板ホルダ4003上にセットした(基板4004)。次いで、排気ポンプ4007により成膜室4009内を8×10−6Paまで排気した。
【0079】
その後、アルゴンガス及び窒素ガスの混合ガスをガス導入口4010から成膜室4009に導入し、成膜室4009のガス圧を所定の圧力に調節した。次いで、それぞれの場合について上記混合ガス中の窒素分圧を変化させて上述の成膜方法により下記の成膜条件で成膜を行い、各種発熱抵抗体を形成した。
【0080】
〔成膜条件〕
基板温度:200℃
成膜室内ガス雰囲気温度:200℃
成膜室内混合ガス圧力:0.3Pa
上記のように、基板4004上に形成された発熱抵抗体Ta−Si−N膜のX線回折測定を行い、構造解析を行った。その結果、窒素ガス分圧が変化しても特定の回折ピークは現われず、これらの膜はアモルファスに近い構造であることが明らかとなった。
【0081】
次に、上記膜についてシート抵抗値を四端針法により測定し、比抵抗値を求めた。その結果の特性線図を図5(A)および(B)に示す。図5(A)のように、窒素分圧が増加するとともに比抵抗値は連続的に変化していることが判った。また、図5(B)のようにTaターゲットに対して、Siターゲットに投入するパワーを増加させると同様にして窒素分圧が増加するとともに比抵抗値は増加するが、その比抵抗値の変化は大きくなる。これは、膜中のSi量が増加したためであると考えられる。従って、TaおよびSiターゲットに投入するパワーおよび窒素分圧を任意に設定することにより、所望の比抵抗値が得られることを示唆している。
【0082】
次に、上記膜についてRBS(ラザフォード後方散乱)分析を行い、膜の組成分析を行った。
【0083】
その結果を図6に示す。図6における曲線(A)は、上記図5(A)曲線を、図6における曲線(B)は、図5(B)曲線に対応する膜組成を示している。また、図5及び図6から比抵抗値と膜組成には相関のあることが明らかになった。
【0084】
<インクジェット用特性評価>
さらに、インクジェット記録ヘッド用基体の発熱抵抗体としての特性を評価するため、上述の実施例と同様にして図4に示した装置を使用し、上述した成膜方法により各種の成膜条件で複数種のTa−Si−N膜を有する実施例5〜10のインクジェット記録ヘッドを作成し、その特性を評価した。
【0085】
(実施例5)
本実施例によるインクジェット特性としての評価を行う試料の基板は、Si基板あるいは既に駆動用のICを作り込んだSi基板を用いる。
【0086】
Si基板の場合は、熱酸化法、スパッタ法、CVD法などによって膜厚1.8μmのSiOの蓄熱層2002(図2)を形成し、ICを作り込んだSi基板も同様にその製造プロセス中で、SiOの蓄熱層を形成しておく。
【0087】
次に、スパッタ法、CVD法などによってSiO成る膜厚1.2μmの層間絶縁膜2003を形成した。次いで、TaとSiターゲットを用いた反応性2元スパッタリング法により、表1に示す条件で発熱抵抗層2004を形成した。ターゲットに投入するパワーは、Ta−400W、Si−300Wとし、ガス流量は表1の条件とし、基板温度200℃で行った。
【0088】
電極配線2005としてAl膜を5500Åをスパッタリング法により形成した。次に、フォトリソ法を用いてパターン形成し、Al膜を取り除いた20μm×30μmの熱作用部2008を形成した。次に保護膜2006としてプラズマCVD法によって、SiNから成る膜厚1μmの絶縁体を形成し、次に耐キャビテーション層2007としてスパッタリング法によりTa膜を膜厚2300Å形成し、フォトリソ法により図1に示すような本発明のインクジェット用基体を作製した。
【0089】
このようにして作製された基体を用いてSST試験を行った。このSST試験とは、駆動周波数10KHz、駆動パルス幅5μsec.のパルス信号を与え、吐出を開始する発泡開始電圧Vthを求める。その後、印加電圧をVthから0.05V毎に上げていきながら、駆動周波数10KHzでそれぞれ1×10パルスを断線するまで印加し、この断線した時の破断電圧Vbを求める。この発泡開始電圧Vthと破断電圧Vbとの比を破断電圧比Kb(=Vb/Vth)と呼ぶ。この破断電圧比Kbが大きいほど発熱抵抗体の耐熱性に優れていることを示す。評価の結果、Kb=1.8が得られ、その結果を前出表1に示す。
【0090】
次に、駆動電圧Vop=1.3・Vthにおいて、駆動周波数10KHz、駆動パルス幅5μsec.、3.0×10パルスの連続したパルスを印加し、初期の発熱抵抗体の抵抗値R0、パルス印加後の抵抗値Rとした時、抵抗値変化率(R−R0)/R0を求めた(CST試験)。その結果、抵抗値変化率ΔR/R0=+1.5%(ΔR=R−R0)が得られ、その結果を表1および図7に示す。
【0091】
次に、実施例5のヘッドをインクジェット記録装置に取り付けて、印字耐久試験を行った。この試験は、A4サイズの用紙にこのインクジェット記録装置に組み込まれている一般的なテスト印字パターンを印字させて行った。この時の駆動電圧Vopは、1.3・Vthに設定した。1500文字の標準文書で、印字寿命が10000枚以上印字可能であり、印字品位の劣化は見られなかった。これはTa−Si−N発熱抵抗体が優れた耐久性を有していることを示している。
【0092】
(実施例6〜8)
発熱抵抗層2004を表1に示すような条件で形成する以外は実施例5と同様にしてインクジェットヘッド用基体を作製した。また、この基体を用いて実施例5と同様にしてSST試験、CST試験、および印字耐久試験を行い、その結果を表1に示す。
【0093】
(比較例2〜5)
発熱抵抗層2004を表1に示すような条件で形成する以外は実施例5と同様にしてインクジェットヘッド用基体を作製した。この時のターゲットに投入するパワーは、比較例2ではTa−400W,Si−500W、比較例3ではTa−400W,Si−400W、比較例4、5ではTa−400W,Si−50〜200Wとした。また、この基体を用いて実施例5と同様にしてSST試験、CST試験、および印字耐久試験を行い、その結果を表1に示す。
【0094】
(実施例9〜11)
発熱抵抗層2004を表1に示すような条件で形成する以外は実施例5と同様にしてインクジェットヘッド用基体を作製した。なお、発熱抵抗層2004は、Ta80−Si20からなる合金ターゲットを用いた反応性スパッタリング法により形成しており、その時のターゲット投入パワーは500Wとした。また、この基体を用いて実施例5と同様にしてSST試験、CST試験、および印字耐久試験を行い、その結果を表1に示す。
【0095】
以上の結果から、以下のことが明らかになった。
【0096】
すなわち、表1の結果から明らかなように、本発明実施例5〜11による基体は、比較例に示す基体に比べて広い組成範囲でCST、SST、印字耐久性に優れていることがわかる。
【0097】
また、表1には示していないが、比較例1に示したような従来インクジェット記録ヘッドに用いられている発熱抵抗層2004は、シート抵抗値が小さいことから本実施例のものと比べて駆動時の電流値が2〜3倍増加することが予想される。
【0098】
これは複数の発熱抵抗層を駆動させるインクジェット記録装置では、その影響は大きくなり、装置設計上問題となる。特に、高画質、高速化に対応した発熱抵抗層のサイズが小さくなる構成においては、従来の発熱抵抗体を使用すると大幅な電力増加につながることを示唆しており、本発明の発熱抵抗体を使用することにより省エネルギー化が成し得ることを示している。
【0099】
また、本発明の発熱抵抗体では、従来インクジェット記録ヘッドで用いられている発熱抵抗体では成し得ない比抵抗値を示しているわけであるが、前述のように発熱抵抗体材料の組成比と比抵抗値には密接な関係がある。そこで、本発明者らはTa−Si−N膜における発熱抵抗体材料の組成比に着目し、複数種の組成比を有するTa−Si−N膜を作成し、インクジェット記録ヘッドに用いられる発熱抵抗体の比抵抗値として好ましい値が得られるTa−Si−N膜の組成範囲を図8−Aに示した。
【0100】
参考までに図8−Cには、特開昭53−25442号公開公報で開示されているサーマルプリントヘッドに好適とされる組成範囲を示す。上述の比較例2、3及び5はこの図8−Cの組成範囲に含まれるものであるが、この組成範囲のものは比抵抗値が4000μΩ・cmをはるかに越えるものとなってしまうため、断線を生じてしまいインクジェット記録ヘッドの発熱抵抗体として用いることはできないものである。
【0101】
すなわち、本発明の発熱抵抗体における抵抗の温度係数TCRは、比抵抗値に対して負の相関を示し、比抵抗値が大きくなると、マイナス方向に増加する傾向を示す。つまり、TCRが大きい場合には、温度が上昇するとともに抵抗値が減少する(負の温度係数)一方、電流が流れやすくなるため、その部分において局所的に温度上昇が起こり、断線へとつながる。さらにインクジェット記録ヘッドにおける発熱抵抗体は、サーマルプリントヘッドに比べ短時間に電圧が印加され、かつ、高温に達することからTCRの影響をより受けやすくなり、TCRを可能な限り小さくする必要が生じる。このような理由から、本発明の発熱抵抗体の比抵抗値は4000μΩ・cm以下となっており、好ましくは2500μΩ・cm以下であることが望ましいものである。なお、前述の組成範囲においては、Taが20at%より少ない場合、Siが25at%より多い場合、もしくはNが60at%より多い場合にこのように比抵抗値が大きくなってしまうことがわかっている。また、前述の組成範囲において、Taが80at%より多い場合、もしくはNが10at%より少ない場合には、比抵抗値が小さくなってしまうため、本願発明の目的である高抵抗値を有する発熱抵抗体を得ることができない。さらに、Siが3at%より少ない場合には膜が結晶構造となってしまい耐久性が低下してしまうことがわかっている。
【0102】
図8から明らかなように、本発明の組成範囲図8−Aは、サーマルプリントヘッドに用いられる組成範囲図8−Cとは異なる範囲のものであり、インクジェット記録ヘッドに特有の組成範囲を有する発熱抵抗体であることがわかる。
【0103】
(実施例12〜17)
さらに、層間膜2003および保護膜2006を表3に示す材料で形成し、発熱抵抗層2004を表2に示すような条件で形成する以外は実施例3と同様にしてインクジェットヘッド用基体を作製した。この時のターゲットに投入するパワーは、Ta−400W、Si−150〜200Wとした。また、この基体を用いて実施例5と同様にしてSST試験、CST試験、および印字耐久試験を行い、その結果を表2に示す。
【0104】
上述した実施例5〜11と同様にして、実施例12〜17においても広い組成範囲でCST、SST、印字耐久性に優れていることが明らかになった。また、図5に示すように実施例12〜17に示した発熱抵抗層2004は、実施例5〜11の発熱抵抗層2004に比べ、特にSi量が少なく、窒素分圧の変化に対して比抵抗値の変化が少ないことから、均一な比抵抗値を有する発熱抵抗層2004を安定して作製するためにはより好ましい製造方法であることが考えられる。この時のTa−Si−N膜の組成範囲を図8−Bに示す。図8−Aの組成範囲より特にSi量の少ない組成範囲となっている。上述したように本発明の組成範囲Bにおいても、サーマルプリントヘッドに用いられる組成範囲Cとは異なり、インクジェット記録ヘッドに特有の発熱抵抗体であることを示している。
【0105】
また、本発明の基体は少なくともTa−Si−N膜から構成される発熱抵抗層を挟んで蓄熱層/発熱抵抗層/保護層からなる積層構造を有し、上記発熱抵抗層の構成原子の中の少なくとも1種の原子を構成原子とする材料を用いて他の層のそれぞれが構成されていることから、各層間の密着性が向上し、SST試験や印字耐久試験において優れた特性を示していると考えられる。
【0106】
以下に本発明のインクジェット記録ヘッドを搭載可能なインクジェット記録装置の一般的な構成を示す。
【0107】
図9は本発明が適用されるインクジェット装置の一例の外観図で、駆動モータ2101の正逆回転に連動して駆動力伝達ギア2102、2103を介して回転するリードスクリュー2104の螺旋溝2121に対して係合するキャリッジ2120上に搭載されており、前駆動モータ2101の動力によってキャリッジ2120とともにガイド2119に沿って矢印a、b方向に往復移動される。不図示の記録媒体給送装置によってプラテン2106上に搬送される記録用紙P用の紙押え板2105は、キャリッジ2120移動方向にわたって記録用紙をプラテン2106に対して押圧する。
【0108】
2107、2108はフォトカプラでキャリッジ2120のレバー2109のこの域での存在を確認して駆動モータ2101の回転方向切り替え等を行うためのホームポジション検知手段である。2110は記録ヘッド2200の全面をキャップするキャップ部材2111を支持する部材で、2112は前記キャップ部材2111内を吸引する吸引手段で、キャップ内開口2113を介して記録ヘッド2200の吸引回復を行う。
【0109】
2114はクリーニングブレードで、2115はこのブレードを前後方向に移動可能にする移動部材であり、本体支持板2116にこれらは支持されている。クリーニングブレード2114は、この形態でなく周知のクリーニングブレードが 本体に適用できることは言うまでもない。
【0110】
また、2117は、吸引回復の吸引を開始するためのレバーで、キャリッジ2120と係合するカム2118の移動に伴って移動し、駆動モータ2101からの駆動力がクラッチ切り替え等の公知の伝達手段で移動制御される。前記記録ヘッド2200に設けられた発熱部2110に信号を付与したり、上述した各機構の駆動制御を司ったりする記録制御部は、記録装置本体側に設けられている(不図示)。
【0111】
上述したような構成のインクジェット記録装置2100は、前記記録媒体給送装置によってプラテン2106上に搬送される記録用紙Pに対し、記録ヘッド2200が前記記録用紙Pの全幅にわたって往復運動しながら記録を行うものであり、記録ヘッド2200は上述したような方法で製造したものを用いているため、高精度で高速な記録が可能である。
【0112】
【表1】
Figure 0003554148
【0113】
【表2】
Figure 0003554148
【0114】
【表3】
Figure 0003554148
【0115】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、インクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生する複数の発熱抵抗体を、比抵抗値が4000μΩ・cm以下であるTaSiで表わされる材料からなる薄膜で構成されており、x=20〜80at.%、y=3〜25at.%、z=10〜60at.%(x+y+z=100)として構成することにより、長期の連続使用によっても抵抗値の変化が少なく、長寿命で信頼性のある高品位の記録画像を提供することが可能となった。
【0116】
本発明によるインクジェット記録ヘッドの発熱抵抗体は、短いパルスで駆動した場合にも、所望の耐久性が維持され、高品位の記録画像を長期にわたって提供することが可能となった。
【0117】
本発明によるインクジェット記録ヘッドは、小ドット化に対応した高抵抗の発熱抵抗特性を可能とし、インクジェット記録ヘッドに用いた場合にはエネルギー効率が高い、つまり発熱を抑えることができ、省エネを可能にすることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェットヘッドの基板を示す概略平面図である。
【図2】図1をX−X’の一点鎖線で垂直に切断したときの基板の断面図である。
【図3】ヒーターサイズの違いによる各種駆動条件を説明する図である。
【図4】本発明のインクジェット記録ヘッド用基体の各層を成膜する成膜装置である。
【図5】Ta−Si−N発熱抵抗体を形成する抵抗層の窒素分圧に対する比抵抗値を示す図である。
【図6】Ta−Si−N発熱抵抗体を形成する抵抗層の窒素分圧に対する膜組成値を示す図である。
【図7】CST試験の結果を示す図である。
【図8】本発明のインクジェット記録ヘッドの発熱抵抗体に使用できる抵抗体の組成範囲を示す図である。
【図9】本発明の記録ヘッドを用いたインクジェット記録装置の一例としての模式的斜視図である。
【符号の説明】
1001 吐出口
1002 電気熱変換素子
1003 インク流路
1004 基板
1005 発熱抵抗体
1006 電極配線
1007 絶縁膜
1008 流路壁
1009 共通液室
2000 基体
2001 シリコン基板
2002 蓄熱層
2003 層間膜
2004 発熱抵抗層
2005 金属配線
2006 保護層
2007 耐キャビテーション膜
2008 熱作用部
4001 ターゲット
4002 平板マグネット
4003 基板ホルダー
4004 基板
4005 内部ヒーター
4006 電源
4007 排気ポンプ
4008 外部ヒーター
4009 成膜室
4010 ガス導入口
4011 シャッター

Claims (8)

  1. インクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生する複数の発熱抵抗体を有するインクジェット記録ヘッド用基体において、
    この発熱抵抗体は、比抵抗値が4000μΩ・cm以下であるTaSiで表わされる材料からなる薄膜で構成されており、x=20〜80at.%、y=3〜25at.%、z=10〜60at.%であることを特徴とするインクジェット記録ヘッド用基体。
    ただし、x+y+z=100。
  2. 前記発熱抵抗体が、TaSiからなり、x=30〜60at.%、y=3〜15at.%、z=30〜60at.%であることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録ヘッド用基体。
  3. 前記発熱抵抗層が少なくともTa−Si−N膜から構成され、発熱抵抗層をはさんで、蓄熱層/発熱抵抗層/保護層からなる積層構造を有し、前記発熱抵抗層の構成原子の中の少なくとも1種の原子を構成原子とする材料を用いて他の層のそれぞれが構成されていることを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録ヘッド用基体。
  4. インクを吐出するインク吐出口と、インクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生する複数の発熱抵抗体と、該発熱抵抗体を内包するとともに前記インク吐出口に連通するインク流路と、を有するインクジェット記録ヘッドにおいて、
    この発熱抵抗体は、比抵抗値が4000μΩ・cm以下であるTaSiで表わされる材料からなる薄膜で構成されており、x=20〜80at.%、y=3〜25at.%、z=10〜60at.%であることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
    ただし、x+y+z=100。
  5. 前記発熱抵抗体が、TaSiからなり、x=30〜60at.%、y=3〜15at.%、z=30〜60at.%であることを特徴とする請求項4記載のインクジェット記録ヘッド。
  6. 前記発熱抵抗層が少なくともTa−Si−N膜から構成され、発熱抵抗層をはさんで、蓄熱層/発熱抵抗層/保護層からなる積層構造を有し、前記発熱抵抗層の構成原子の中の少なくとも1種の原子を構成原子とする材料を用いて他の層のそれぞれが構成されていることを特徴とする請求項4記載のインクジェット記録ヘッド。
  7. 前記インク流路中にインクを保持するとともに、前記発熱抵抗体は該インクに膜沸騰を超える熱エネルギーを付与し、前記インクを吐出するものである請求項4記載のインクジェット記録ヘッド。
  8. インクを吐出するインク吐出口と、インクを吐出するために利用される熱エネルギーを発生する複数の発熱抵抗体と、該発熱抵抗体を内包するとともに前記インク吐出口に連通するインク流路と、を有するインクジェット記録ヘッドと、
    該インクジェット記録ヘッドから吐出されるインクを受ける記録媒体を搬送するための搬送手段と、を備えるインクジェット記録装置において、
    前記発熱抵抗体は、比抵抗値が4000μΩ・cm以下であるTaSiで表わされる材料からなる薄膜で構成されており、x=20〜80at.%、y=3〜25at.%、z=10〜60at.%であることを特徴とするインクジェット記録装置。
    ただし、x+y+z=100。
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