JPH09197123A - 誘電体光学素子およびこれを用いた露光装置 - Google Patents

誘電体光学素子およびこれを用いた露光装置

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JPH09197123A
JPH09197123A JP8026095A JP2609596A JPH09197123A JP H09197123 A JPH09197123 A JP H09197123A JP 8026095 A JP8026095 A JP 8026095A JP 2609596 A JP2609596 A JP 2609596A JP H09197123 A JPH09197123 A JP H09197123A
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thin film
film
optical element
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JP8026095A
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Yasuyuki Suzuki
康之 鈴木
Kenji Ando
謙二 安藤
Riyuuji Hiroo
竜二 枇榔
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Canon Inc
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 i線フィルター等の接着剤の劣化や吸湿等を
防ぐ。 【解決手段】 フィルター基板1上に誘電体光学薄膜を
積層してi線フィルター膜2を形成し、その吸湿等を防
ぐための保護基板3を接着剤5によって接着する。接着
剤5はi線によって劣化するおそれのない紫外線硬化型
のアクリル酸等の接着剤であり、エポキシ系等の接着剤
を用いた場合に比べてi線フィルターの耐光性が向上す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガラス基板等の表
面に誘電体の光学薄膜を積層した干渉フィルターや色分
離フィルター(ダイクロイックフィルター)等の誘電体
光学素子およびこれを用いた露光装置に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】TiO2 、MgF2 、SiO2 、Al2
3 等の誘電体からなる光学薄膜をガラス基板等の表面
に積層して得られる誘電体光学素子は、干渉フィルタ
ー、色分離フィルター、偏光フィルター、反射ミラー、
光減衰器等として各種光学機器等に極めて広く利用され
ている。
【0003】これらの誘電体光学素子は、ガラス基板等
の表面に金属膜を成膜したうえで、あるいは直接、誘電
体の光学薄膜を1層または複数層積層することによって
製作される。各光学薄膜の成膜方法は、蒸着法、スパッ
タリング法、イオンプレーティング法等が用いられる。
蒸着法によって例えば色分離フィルター等の光学薄膜を
成膜する方法は、大面積の基板に均一な膜厚の光学薄膜
を安価に成膜できるという利点があるが、成膜後の光学
薄膜が水分を吸収して透過率の周波数特性等が変化しや
すい。これを防ぐために、スパッタリング法やイオンプ
レーティング法を用いて膜密度の大きい光学薄膜を成膜
する技術が開発されているが、光学特性を充分改善する
ことができないうえに成膜装置が複雑で製造コストが高
くなり、その結果、誘電体光学素子の高価格化を招くと
いう不都合があった。
【0004】そこで例えば、図12に示すように、ガラ
ス基板101に成膜した誘電体光学薄膜の多層膜(ダイ
クロイックミラー膜)102の表面に、機械的損傷等に
対する保護と防湿のための保護基板104を接着するこ
とで水分の吸収を防ぎ、吸湿によって誘電体光学素子の
光学特性が劣化するのを回避する工夫がなされている。
保護基板104は、その両面に反射防止膜105とバン
ドパスフィルター106をそれぞれ設けたうえでフェノ
ール樹脂やエポキシ系等の接着剤107によってガラス
基板101のダイクロイックミラー膜102側に接着さ
れる。なお、ガラス基板101のダイクロイックミラー
膜102側と反対側の表面には反射防止膜103が設け
られる。
【0005】このように、ダイクロイックミラー等の誘
電体光学素子の表面に保護基板を設ければ、大気中の水
分が誘電体光学素子内に侵入するのを防ぎ、水分の吸収
によって誘電体光学素子の光学特性が劣化するのを回避
することができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上記従来
の技術によれば、保護基板を接着した誘電体光学素子を
紫外線を露光光とする露光装置の狭帯域フィルター等と
して用いる場合には、接着剤が紫外線によって劣化し、
その結果透過率が減少するという未解決の課題があっ
た。
【0007】加えて、接着剤が前述のようにエポキシ系
等の樹脂であるために接着剤自身に吸湿性があり、接着
剤を硬化させる工程や接着剤の硬化後に誘電体光学薄膜
の水分を吸収する。その結果、接着剤と接触する誘電体
光学薄膜の水分含有量が変化して誘電体光学素子の光学
特性が設計値よりずれるおそれがある。また、保護基板
を接着するまでの待機期間中に誘電体光学薄膜が大気中
の水分を吸収して光学特性が著しく変化する等のトラブ
ルもある。このような膜内の水分含有量の変化は製品ご
とのバラつきが大きく予測も困難であるため、ダイクロ
イックミラーや露光装置の狭帯域フィルターのように波
長シフトの許容値が小さい誘電体光学素子の場合には、
安定した光学特性を得るのが難しい。
【0008】本発明は、上記従来の技術の有する未解決
の課題に鑑みてなされたものであり、保護基板等を接着
する接着剤の劣化や吸湿等によって光学特性が変化する
おそれのない高品質で耐久性にすぐれた誘電体光学素子
およびこれを用いた露光装置を提供することを目的とす
るものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の誘電体光学素子は、紫外線を含む光を透過
または反射する光学薄膜層と、該光学薄膜層を支持する
第1の基板と、接着剤によって前記光学薄膜層の表面に
接着された第2の基板を有し、前記接着剤が紫外線硬化
型の接着剤であることを特徴とする。
【0010】接着剤が、アクリル酸、メタクリル酸およ
びこれらの誘電体または重合体を主成分とするものであ
るとよい。
【0011】接着剤が、エポキシアクリレートを主成分
とするものであってもよい。
【0012】波長300nm以下の光成分を除去するた
めの補助フィルター手段または反射手段が付加されてい
るとよい。
【0013】また、第1の基板と、これに積層された光
学薄膜層と、接着剤によって前記光学薄膜層の表面に接
着された第2の基板を有し、前記光学薄膜層の前記表面
がAl23 またはこれを含有する材料によって形成さ
れていることを特徴とするものでもよい。
【0014】あるいは、第1の基板と、これに積層され
た光学薄膜層と、接着剤によって前記光学薄膜層の表面
に接着された第2の基板を有し、前記光学薄膜層の前記
表面に撥水コートが施されていることを特徴とするもの
でもよい。
【0015】第1のおよび第2の基板と光学薄膜層から
なる積層体の側面に防水コートが施されているとよい。
【0016】
【作用】第1の基板に高屈折率膜と低屈折率膜を交互に
積層して、例えばi線フィルター特性を有する多層膜
(i線フィルター膜)である光学薄膜層を形成し、これ
を保護するための第2の基板を紫外線硬化型の接着剤に
よって接着する。i線フィルターの場合には誘電体光学
素子を透過する光がi線であるため、これによって接着
剤が劣化して誘電体光学素子のi線透過率を低下させる
等のトラブルを起すおそれがあるが、接着剤が紫外線硬
化型であればi線によって劣化することなく、上記のト
ラブルを回避できる。
【0017】また、光学薄膜層の表面、すなわち前記多
層膜の最終層が、Al23 またはこれを含有する材料
によって形成されていれば、接着剤に含まれる水分等が
光学薄膜層内に侵入するのを防ぎ、光学薄膜層の吸湿に
よる光学特性の劣化を回避できる。光学薄膜層の表面に
撥水コートが施されている場合も、同様である。
【0018】さらに、第1および第2の基板と光学薄膜
層からなる積層体の側面に防水コートが施されていれ
ば、誘電体光学素子の側面から光学薄膜層に水分が侵入
して光学特性を劣化させるおそれがない。
【0019】このようにして終時的に光学特性が変化す
るおそれのない高品質な誘電体光学素子を実現できる。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面に基づ
いて説明する。
【0021】図1は第1実施例による誘電体光学素子の
膜構成を示すもので、これは、i線(波長365nm)
を露光光とする露光装置に用いられるi線フィルターで
あって、i線を透過する第1の基板であるフィルター基
板1の表面に積層された複数層の誘電体光学薄膜からな
る光学薄膜層であるi線フィルター膜2と、紫外線を透
過する第2の基板である保護基板3を有し、該保護基板
3の表面にi線の反射を防ぐ反射防止膜4を設けたうえ
で、接着剤5によってi線フィルター膜2に接着する。
【0022】接着剤5は紫外線硬化型の接着剤であり、
紫外線硬化型のアクリル酸、メタクリル酸およびこれら
の誘導体や重合体を主成分とする接着剤を用いる。ま
た、i線フィルター膜2は、i線の波長の光のみを透過
するi線フィルター特性を有する多層膜であって、Ta
25 、SiO2 をフィルター基板1の表面に25層交
互に積層したものである。
【0023】保護基板3の材料は石英基板であり、これ
に前述のように反射防止膜4を設けたうえで、表面に未
硬化の接着剤5を塗布し、フィルター基板1上のi線フ
ィルター膜2に重ねて、保護基板3の外側から紫外線を
照射して接着剤5を硬化させる。
【0024】i線フィルター膜2が大気中の水分を吸収
すると屈折率が変化してi線フィルター特性が著しく劣
化するおそれがある。そこで、i線フィルター膜2を防
湿と機械的損傷等に対する保護のための保護基板3によ
って覆うことで、i線フィルター膜2の吸湿等による光
学特性の劣化を防ぐ。紫外線硬化型のアクリル酸やメタ
クリル酸等を主成分とする接着剤5は、i線に対する耐
光性にすぐれているため、エポキシ系の接着剤を用いた
場合のように、i線を露光光とする露光装置等のi線フ
ィルターとして使用する間に接着剤が劣化して吸収が増
加する等のトラブルを生じることなく、長期間安定した
フィルター特性を確保することができる。
【0025】図2は、紫外線硬化型のアクリル系樹脂を
接着剤として用いたサンプルAと、エポキシ系樹脂を接
着剤として用いたサンプルBにそれぞれi線を照射し、
両者の透過率の変化を測定した結果を示すものである。
このグラフから、紫外線硬化型の接着剤を用いたものは
極めて高い耐光性を有することが解る。
【0026】なお、フィルター基板の材料はi線を透過
するものであればいかなる材料を用いてもよいが、特
に、i線は透過するが300nmより短波長の光はほと
んど透過しないBK7基板等を用いるのが望ましい。そ
の理由は、紫外線硬化型の接着剤は一般的に300nm
より短波長の光によって耐光性が劣化する傾向を有する
ため、露光光に含まれるi線以外の300nm以下の光
をBK7基板によってカットすれば接着剤を長寿命化で
きるからである。また、前述のように保護基板側から紫
外線を照射して接着剤を硬化させるときは300nm以
下の短波長の光をカットするための紫外線カットフィル
ター等を用いる必要があるが、フィルター基板にBK7
基板を用いてフィルター基板側から接着剤に紫外線を照
射して硬化させれば、紫外線カットフィルター等は不要
となり、設備費の低減に大きく役立つという利点も付加
される。
【0027】図3は第2実施例による誘電体光学素子の
膜構成を示すもので、これも、i線を露光光とする露光
装置に用いられるi線フィルターであって、i線を透過
する第1の基板であるフィルター基板11の表面に積層
された複数層の誘電体光学薄膜からなる光学薄膜層であ
るi線フィルター膜12と、紫外線を透過する第2の基
板である保護基板13を有し、該保護基板13の表面に
i線の反射を防ぐ反射防止膜14を設けたうえで、接着
剤15によってi線フィルター膜12に接着する。
【0028】接着剤15は紫外線硬化型のエポキシアク
リレートを主成分とする接着剤であり、i線フィルター
膜12は、i線の波長の光のみを透過するi線フィルタ
ー特性を有する多層膜であって、Ta25 、SiO2
をフィルター基板11の表面に25層ずつ交互に積層し
たものである。
【0029】保護基板13の材料は石英基板であり、こ
れに前述のように反射防止膜14を設けたうえで、その
表面に未硬化の接着剤15を塗布する。また、フィルタ
ー基板11上のi線フィルター膜12に撥水性を有する
撥水コート16を施す。接着剤15を塗布した保護基板
13を、フィルター基板11の撥水コート16上に重ね
て、保護基板13の側から紫外線を照射して接着剤15
を硬化させる。このようにして得られた積層体の側面
に、紫外線硬化型のアクリル酸、メタクリル酸およびこ
れの誘導体や重合体を主成分とする接着剤からなる防水
コート17を設ける。
【0030】撥水コート16は、i線に対して吸収性を
もたず、屈折率が1.45〜1.55程度の撥水材を塗
布することによって得られる。
【0031】本実施例は、フィルター基板にi線フィル
ター膜を成膜後、その表面に撥水コートを設けたうえ
で、防湿等のための保護基板を紫外線硬化型の接着剤に
よって接着し、得られた積層体の側面を防水コートによ
って覆うものである。フィルター基板にi線フィルター
膜を成膜し、製品としての品質検査を経たものに直ちに
撥水コートを施すことで、保護基板を接着するまでの待
機期間中に大気中の水分がi線フィルター膜に侵入した
り、保護基板を接着するときに接着剤を硬化させる工程
で、接着剤の硬化が進行するにつれてi線フィルター膜
内の水分が接着剤に吸収されるのを防止する。i線フィ
ルター膜の水分が接着剤に吸収されるとi線フィルター
膜内の水分量が変化してこのために光学特性が著しく変
化する。品質検査を終えたのちのi線フィルター膜にこ
のように水分含有量等の変化が起きると、フィルター特
性が変化したのに気付かずに不良品を出荷するおそれが
ある。
【0032】また、側面の防水コートは、誘電体光学素
子の側面から大気中の水分がi線フィルター膜に侵入す
るのを防ぐもので、これによってi線フィルター特性を
より一層安定させることができる。
【0033】なお、防水コートとして紫外線硬化型のエ
ポキシアクリレートを主成分とする接着剤、保護基板を
i線フィルター膜に接着する接着剤として紫外線硬化型
のアクリル酸、メタクリル酸およびこれらの誘導体や重
合体を主成分とする接着剤を用いてもよい。
【0034】図4は第3実施例による誘電体光学素子を
示すもので、これは、高圧水銀ランプ20から出た光の
うちのi線のみを取り出してウエハを露光する露光手段
を有する露光装置の光源光学系に用いるもので、高圧水
銀ランプ20から出た光を平行化するレンズ21と、平
行化された光から露光光としてi線を取り出す光学フィ
ルター装置30と、高圧水銀ランプ20とレンズ21の
間に配設された反射手段であるミラー22を有する。
【0035】高圧水銀ランプ20は、i線だけでなく、
可視から赤外にかけて広い波長範囲にわたって発光スペ
クトルを持っている光源である。半導体製造のための露
光装置に用いる場合は色収差を押さえる目的でウエハへ
照射する露光光の波長幅を数nm以下に制限する必要が
あり、この目的のために光学フィルター装置30が設け
られる。
【0036】ミラー22の表面にはTa25 とSiO
2 の誘電体光学薄膜を交互に積層した多層膜が形成され
ており、これは、図5に示す反射特性を有している。こ
の図から明らかなように、使用波長であるi線はほぼ1
00%反射するのに対して、より紫外域およびより赤外
域の波長の光はほとんど反射されない。従ってレンズ2
1に入射する光は波長320nm〜420nmの光に制
限される。わずかに可視から赤外の光も反射するが、こ
れが吸収による温度上昇や、設計仕様からずれるような
トラブルとなる場合はミラー22と同性能を有するミラ
ーでもう一度反射させてからレンズ21に光を入射させ
たり、別のフィルターを途中に設けるなどして有害な波
長の光を除去するのが望ましい。
【0037】レンズ21によって平行化された光は光学
フィルター装置30の補助フィルター基板31に入射す
る。なお、レンズ21の表面には図6に示すようなi線
波長用の反射防止膜が形成されている。従って、補助フ
ィルター基板31に入射する紫外線はほぼ図5に示す反
射率と光源の輝度を掛け合わせた光が入射することにな
る。補助フィルター基板31は石英基板であり、その入
射面側にはレンズ21の反射防止膜と同様の反射防止膜
32が形成されており、出射面側には図7に示す透過率
を有するバンドパスフィルター(誘電体多層膜)からな
る補助フィルター手段である補助フィルター膜33が形
成されている。これによって、補助フィルター基板31
を透過する光の波長は350〜380nmに限定され
る。この補助フィルター膜33は広帯域のバンドパスフ
ィルターであり、必要な365nmの光(i線)を透過
するとともに、後述する接着剤37の劣化を促進する紫
外光と、紫外域から赤外域にわたる露光光以外の光をカ
ットすることで露光光による接着剤37の劣化を防ぐも
のである。なお、補助フィルター膜33は透過波長域を
365nmを中心として約30nmと広くとり、多少の
波長シフトでは機能上問題が生じないように設計する。
【0038】本実施例においては、波長360nmのi
線用のフィルターであるから365nmを中心としたバ
ンドパスフィルターを用いているが、その他の各種波長
のフィルターに対しても同様に使用波長以外の光を接着
剤に極力入射させない構成にすることは誘電体光学素子
の安定性、耐久性の向上に非常に効果がある。すなわ
ち、後述する狭帯域のバンドパスフィルターであるi線
フィルター膜39で生じるリップル成分を広帯域のバン
ドパスフィルターである補助フィルター膜33と組み合
わせて有害光を除去することが有効である。
【0039】第2の基板である保護基板34は入射面に
反射防止膜35を形成し、出射面には接着剤37との境
界面でi線を反射しない構成とした反射防止膜36を形
成した石英基板である。第1の基板であるフィルター基
板38も同様に石英基板であり、その入射面側(光源に
近い表面)にはi線波長のみを透過する光学薄膜層であ
るi線フィルター膜39が形成されており、出射面側に
は前述と同様の反射防止膜40が形成され、接着剤37
によって保護基板34に接着されている。
【0040】接着剤37は、紫外線硬化型のアクリル
酸、メタクリル酸およびこれらの誘導体もしくは重合体
を主成分としたアクリル系接着剤を用いたもので、これ
と、従来のエポキシ系接着剤で接着した誘電体光学素子
に紫外線照射耐久試験を行なった結果、従来例によるも
のは経時的に透過率が次第に減少する一方、紫外線硬化
型のアクリル系接着剤を用いた本実施例の光学フィルタ
ー装置30は、極めて耐光性に優れていることが確認で
きた。
【0041】なお、接着剤37にエポキシアクリレート
を主成分とした接着剤を用いてもほぼ同様の効果が得ら
れることが判明している。
【0042】本実施例の多層膜は高屈折率材料としてT
25 を、低屈折材料としてSiO2 を用いたもの
で、反射防止膜では交互に4層、補助フィルター膜およ
びi線フィルター膜では交互に23〜25層積層して形
成したが、用いる材料としては使用する紫外線に対して
吸収がなく、耐久性に優れていればどんな材料を用いて
もほぼ同様の効果が得られる。紫外線領域に適用する光
学素子の場合、高屈折率材料としてはTa25 の他に
ZrO2 、HfO2 、Y23 もしくはこれらの混合
物、低屈折率材料としてはSiO2 、Al23 もしく
はこれらの混合物が吸収等の光学特性、安定性、コスト
などの面で特に優れている。ミラーに用いる材料はこれ
ら以外に紫外線に多少吸収があっても屈折率の高いTi
2 なども使うことができる。特に大気中における紫外
線に対する耐光性は紫外線によって発生するオゾンなど
酸化性ガスに強い酸化物薄膜が優れている。
【0043】本実施例では前述のように、各基板に紫外
線領域に吸収のない石英基板を用いたが、使用波長に吸
収のないガラス基板であれば各種金属イオンを含む高屈
折率ガラス基板や結晶性のある基板を用いることもでき
る。特に、BK7等のガラス基板は、i線の透過率が高
く、しかもより短波長の光に対しては吸収が大きくなっ
て接着剤に有害な光をカットするのにも有効である。
【0044】本実施例によれば、i線を露光光とする露
光装置において、i線フィルター膜にこれを保護する保
護基板を紫外線硬化型の接着剤によって接着することで
接着剤の劣化を防ぎ、i線フィルターの耐光性を向上さ
せるとともに、露光光に含まれるi線以外の有害光を除
去するバンドパスフィルターやミラーを付加すること
で、露光光による接着剤の劣化をより一層確実に回避し
て、i線フィルターの長寿命化に大きく貢献できる。
【0045】図8は本実施例による光学フィルター装置
(サンプルC)と、補助フィルターやミラーを取り除い
て構成した光学フィルター装置(サンプルD)のランプ
照射耐久試験の結果である。紫外線領域に対して耐光性
のある接着剤であっても300nmより短波長の光は接
着剤の劣化を加速的に促進し、透過率が減少する。特
に、光学フィルター装置内部の温度が高くなるほど劣化
速度が速まる。そこで、接着剤に入射する光の波長を上
記のように極めて限られた範囲に限定することで耐光性
を大幅に向上することができる。
【0046】図9は第4実施例による赤反射ダイクロイ
ックミラー40の膜構成を示すもので、これは、青に相
当する波長400〜490nmの光は反射し、波長49
0nmより長波長の光を透過する青反射ダイクロイック
ミラーと組み合わせて配設され、光の3原色を分離する
装置に用いられる。
【0047】赤反射ダイクロイックミラー40は、両面
に反射防止膜41aと光学薄膜層である赤反射ダイクロ
イックミラー膜43をそれぞれ設けた第1の基板である
ミラー基板41と、両面に反射防止膜44a,44bを
備えた第2の基板である保護基板42を有し、両者は紫
外線硬化型の接着剤45によって接着される。赤反射ダ
イクロイックミラー膜42は、図10に実線で示すよう
に、赤に相当する波長580〜700nmの光を反射す
る反射特性を有し、スパッタ法によってミラー基板41
上にTiO2 膜とSiO2 膜を交互に所定数ずつ積層
し、接着剤45と接触する最終層にはTiO2 にAl2
3 を10%混合した材料を用いたものである。接着剤
45は、紫外線硬化型のアクリル酸、メタクリル酸およ
びこれらの誘導体あるいは重合体を主成分とする接着剤
である。
【0048】赤反射ダイクロイックミラー膜43の最終
層の材料がTiO2 に10%のAl23 を混合したも
のであるため、赤反射ダイクロイックミラー膜43の反
射率50%における波長シフトは1nm以下である。赤
反射ダイクロイックミラー膜43の最終層にAl23
を添加せずTiO2 のみである場合は、前記波長シフト
が3nm以上に増大することが判明している。その理由
は、接着剤45を硬化させる工程中あるいは硬化後に接
着剤45が赤反射ダイクロイックミラー膜43の水分を
吸収し、赤反射ダイクロイックミラー膜43の水分含有
量が変化することによって波長シフトが増大する傾向が
あるが、接着剤45と接触する最終層の材料にAl2
3 を添加すると接着剤45の吸湿が抑制されるためであ
る。
【0049】なお、ミラー基板41の入射側の反射防止
膜41aは可視域の光に対するものであり、保護基板4
2の入射側の反射防止膜44aはAl23 膜とSiO
2 膜を交互に積層したものであり、出射側の反射防止膜
44bは波長420〜600nmの光を反射する。
【0050】赤反射ダイクロイックミラー40の反射光
は赤トリミングフィルター50を経て取り出される。赤
トリミングフィルター50はトリミングフィルター基板
51の出射側に赤トリミングフィルター膜52、入射側
に可視域の光に対する反射防止膜53を設けたもので、
赤トリミングフィルター膜52は、図10に実線で示す
ように、波長750nm付近の光と、波長850nm付
近の反射光を除去する赤トリミングフィルター特性を有
する。
【0051】また、ミラー基板41、保護基板43、ト
リミングフィルター基板51はすべてBK7基板であ
る。
【0052】本実施例によれば、赤反射ダイクロイック
ミラー膜に保護基板を接着する接着剤に紫外線硬化型の
接着剤を用いることで、赤反射ダイクロイックミラーの
耐光性を大幅に向上させるとともに、赤反射ダイクロイ
ックミラー膜の最終層の材料にAl23 を添加するこ
とによって、接着剤との接触による赤反射ダイクロイッ
クミラー膜の水分含有量の変化を抑制し、接着剤の吸湿
に起因する赤反射ダイクロイックミラー特性の劣化を回
避するものである。これによって、耐光性にすぐれてお
りしかも光学特性が安定した赤反射ダイクロイックミラ
ーを得ることができる。
【0053】なお、接着剤による吸湿を防ぐために赤反
射ダイクロイックミラー膜の最終層に添加する材料はA
23 に限定されることなく、例えば、網状構造を有
する高分子材料等の、屈折率が接着剤のものとほぼ等し
くて可視域の光に対して吸収のない材料であってしかも
必要な防湿効果の得られるものであればいかなる材料で
もよい。さらに、撥水性のあるPTFE等を用いても同
様の効果を得ることができる。
【0054】また、本実施例は赤反射ダイクロイックミ
ラーであるために必要な光学特性を確保するには最終層
の材料に添加するAl23 の量が小量に限定される
が、第1〜第3の実施例のi線フィルター等の場合には
最終層により多くのAl23を添加することができ
る。
【0055】図11は第1実施例のi線フィルター膜の
最終層のTa25 に20%のAl23 を添加した場
合と添加しない場合の波長シフトを比較したものであ
る。このグラフから、最終層にAl23 を添加すると
接着剤の吸湿を防ぎ誘電体光学素子の波長シフトを大幅
に改善できることが解る。
【0056】また、第1〜第4の実施例において、接着
中やその前のi線フィルター膜や赤反射ダイクロイック
ミラー膜を高湿環境下に所定時間保持し、これらの誘電
体多層膜(光学薄膜層)に予め充分水分を吸収させると
光学特性の経時変化を防ぐうえで極めて効果的であるこ
とが判明している。誘電体多層膜が充分に水分を含有し
ていない場合には、接着剤の吸湿によって膜内の水分含
有量が大きく変化するため、光学特性の劣化が著しい。
特に接着中に湿度管理を行なうことは、接着剤の硬化時
の吸湿を防ぎ、誘電体多層膜の光学特性を安定させるの
に大きく役立つ。また、接着前に誘電体多層膜の水分量
を飽和させた状態で光学特性を測定して品質検査を行な
えば、製品の品質のバラつきを防ぐうえで効果的とな
る。
【0057】例えば、第2実施例によるi線フィルター
の場合には、接着前の誘電体多層膜を湿度70%以上の
高湿状態に1時間以上保持し、接着工程中の雰囲気を湿
度50%以上に維持することで、極めて高品質で耐久性
にすぐれたi線フィルターを得ることができる。
【0058】
【発明の効果】本発明は上述のとおり構成されているの
で、次に記載するような効果を奏する。
【0059】保護基板等を接着する接着剤の劣化や吸湿
等によって光学特性が変化するおそれのない高品質で耐
久性にすぐれた誘電体光学素子を実現できる。
【0060】請求項1記載の発明によれば、紫外線によ
る接着剤の劣化を防ぎ、誘電体光学素子の耐光性を向上
できる。
【0061】請求項5または6記載の発明によれば、誘
電体多層膜の水分含有量の変化に起因する光学特性の変
化を回避できる。
【0062】このような誘電体光学素子を、例えばi線
を露光光とする露光装置のi線フィルターとして用いる
ことで、露光装置の転写、焼き付け精度の向上に大きく
貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1実施例の膜構成を示す図である。
【図2】紫外線硬化型のアクリル系の接着剤を用いたi
線フィルターと、エポキシ系の接着剤を用いたi線フィ
ルターの耐光性を比較したグラフである。
【図3】第2実施例の膜構成を示す図である。
【図4】第3実施例を説明する図である。
【図5】図4のミラーの反射率の周波数特性を示すグラ
フである。
【図6】図4のレンズの反射防止膜の反射率の周波数特
性を示すグラフである。
【図7】図4の補助フィルター膜の透過率の周波数特性
を示すグラフである。
【図8】図4のi線フィルターの耐光テストを行った結
果を示すグラフである。
【図9】第4実施例を説明する図である。
【図10】図10の装置の赤反射ダイクロイックミラー
と赤トリミングフィルターの光学特性を示すグラフであ
る。
【図11】多層膜の最終層にAl23 を添加した場合
と添加しない場合の波長シフトを比較するグラフであ
る。
【図12】従来例による誘電体光学素子の膜構成を示す
図である。
【符号の説明】
1,11,38 フィルター基板 2,12,39 i線フィルター膜 3,13,34,42 保護基板 4,14,32,35,36,40,41a,44a,
44b,53 反射防止膜 5,15,37,45 接着剤 16 撥水コート 17 防水コート 33 補助フィルター膜 41 ミラー基板 43 赤反射ダイクロイックミラー膜 51 トリミングフィルター基板 52 赤トリミングフィルター膜

Claims (12)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 紫外線を含む光を透過または反射する光
    学薄膜層と、該光学薄膜層を支持する第1の基板と、接
    着剤によって前記光学薄膜層の表面に接着された第2の
    基板を有し、前記接着剤が紫外線硬化型の接着剤である
    ことを特徴とする誘電体光学素子。
  2. 【請求項2】 接着剤が、アクリル酸、メタクリル酸お
    よびこれらの誘電体または重合体を主成分とするもので
    あることを特徴とする請求項1記載の誘電体光学素子。
  3. 【請求項3】 接着剤が、エポキシアクリレートを主成
    分とするものであることを特徴とする請求項1記載の誘
    電体光学素子。
  4. 【請求項4】 波長300nm以下の光成分を除去する
    ための補助フィルター手段または反射手段が付加されて
    いることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記
    載の誘電体光学素子。
  5. 【請求項5】 第1の基板と、これに積層された光学薄
    膜層と、接着剤によって前記光学薄膜層の表面に接着さ
    れた第2の基板を有し、前記光学薄膜層の前記表面がA
    23 またはこれを含有する材料によって形成されて
    いることを特徴とする誘電体光学素子。
  6. 【請求項6】 第1の基板と、これに積層された光学薄
    膜層と、接着剤によって前記光学薄膜層の表面に接着さ
    れた第2の基板を有し、前記光学薄膜層の前記表面に撥
    水コートが施されていることを特徴とする誘電体光学素
    子。
  7. 【請求項7】 第1のおよび第2の基板と光学薄膜層か
    らなる積層体の側面に防水コートが施されていることを
    特徴とする請求項5または6記載の誘電体光学素子。
  8. 【請求項8】 接着剤が紫外線硬化型の接着剤であるこ
    とを特徴とする請求項5ないし7いずれか1項記載の誘
    電体光学素子。
  9. 【請求項9】 光学薄膜層が、接着剤によって第2の基
    板を接着する前に水分を充分吸収させたものであること
    を特徴とする請求項1ないし8いずれか1項記載の誘電
    体光学素子。
  10. 【請求項10】 請求項1ないし9いずれか1項記載の
    誘電体光学素子によって選択透過された露光光によって
    ウエハを露光する露光手段を有する露光装置。
  11. 【請求項11】 露光光がi線であり、誘電体光学素子
    がi線フィルターであることを特徴とする請求項10記
    載の露光装置。
  12. 【請求項12】 第1および第2の基板のうちの少なく
    とも一方がBK7基板であることを特徴とする請求項1
    0または11記載の露光装置。
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