JPH09184094A - 表面処理アルミニウム材及びその製造方法 - Google Patents

表面処理アルミニウム材及びその製造方法

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JPH09184094A
JPH09184094A JP34419195A JP34419195A JPH09184094A JP H09184094 A JPH09184094 A JP H09184094A JP 34419195 A JP34419195 A JP 34419195A JP 34419195 A JP34419195 A JP 34419195A JP H09184094 A JPH09184094 A JP H09184094A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 真空環境下でのガス放出量が少なく、真空特
性及び耐食性が優れた表面処理アルミニウム材と、その
製造方法の提供。 【解決手段】 アルミニウムまたはアルミニウム合金の
表面に、ベーキング処理が施された無孔質陽極酸化皮膜
が形成され、該無孔質陽極酸化皮膜は厚さが300〜7
000Å、含水量が3%以下、アルミニウムに対するア
ニオンの含有量が重量比で0.05以下である表面処理
アルミニウム材。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、化学気相蒸着(C
VD)装置、イオンプレーティング装置、ドライエッチ
ング装置、プラズマCVD装置、スパッタリング装置の
ような半導体製造装置あるいは薄膜形成装置等の真空機
器における真空チャンバーやその部品の表面材として用
いられる表面処理アルミニウム材とその製造方法に関
し、真空環境下でのガス放出量が少なく、真空特性及び
耐食性を高めたものである。
【0002】
【従来の技術】従来、半導体製造装置あるいは薄膜形成
装置等の真空機器における真空チャンバーやその部品の
表面材としては、ステンレス鋼が用いられているが、ス
テンレス鋼の使用は、重量が重いことや、クロム、ニッ
ケルなどの重金属が系内に混入することに起因して半導
体等の薄膜の性能が低下してしまう場合があるため、ア
ルミニウムまたはアルミニウム合金材の使用が試みられ
ている。ところがアルミニウムまたはアルミニミウム合
金を用いた場合においては、エッチングに用いる塩素ガ
スやフッ素プラズマ等により腐食を受ける問題がある。
【0003】そこでこのような問題を解決するために、
アルミニウムまたはアルミニミウム合金の表面に硫酸電
解液により多孔質陽極酸化処理を施して多孔質陽極酸化
皮膜を形成したアルミニウム材が考えられている。この
多孔質陽極酸化皮膜は、膜厚を薄くすると耐食性が悪く
なるため、通常厚さ10μm以上に形成されている。し
かしながらこのような多孔質陽極酸化皮膜を有するアル
ミニウム材を前述の真空機器等に用いる場合に加熱脱ガ
ス処理を施すと、皮膜にクラックが生じ耐食性が低下し
てしまうという問題がある。また、硫酸浴、シュウ酸浴
で得られた多孔質陽極酸化皮膜は、含水量が封孔処理後
で15重量%程度と極めて多く、また、アニオン含有量
も12〜15重量%程度と極めて多く、真空環境下での
放出ガス量が多いことから、真空機器内を高真空にする
という目的を十分に達成できないという問題があった。
また、この陽極酸化皮膜にあっては、表面に微小穴の形
成が避けられないことから、空孔率が5〜60%と非常
に高く(表面が多孔質で)、従って表面積が大きくな
り、吸着される水分やガス等も多くなってしまう。
【0004】また、前記真空機器では前述したように塩
素ガス等の反応性ガスやプラズマ等を用いて半導体基板
のエッチングが行われているが、このとき、前記多孔質
陽極酸化皮膜表面から放出される水分やアニオンがこれ
らの反応性ガスやプラズマと反応すると、エッチングが
均一に為されず、半導体の特性が不安定になる問題もあ
った。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記事情に
鑑みてなされたもので、真空環境下でのガス放出量が少
なく、真空特性及び耐食性が優れた表面処理アルミニウ
ム材と、その製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本願発明者は、真空環境
下で前述のような問題を生じるアルミニウム材からのガ
スの放出量を低減すべく、種々の検討及び実験を重ねた
結果、以下に述べる無孔質陽極酸化皮膜を形成すること
が極めて有効であることを究明し、本願発明に至ったの
である。すなわち、請求項1記載の表面処理アルミニウ
ム材にあっては、アルミニウムまたはアルミニウム合金
の表面に、ベーキング処理が施された無孔質陽極酸化皮
膜が形成され、該無孔質陽極酸化皮膜は厚さが300〜
7000Å、含水量が3%以下、アルミニウムに対する
アニオンの含有量が重量比で0.05以下であることを
特徴とする。また、請求項2記載の表面処理アルミニウ
ム材にあっては、請求項1記載の表面処理アルミニウム
材において、アニオン含有量が無孔質陽極酸化皮膜中の
硼素/アルミニウム重量比またはリン/アルミニウム重
量比で0.05以下であることを特徴とする。また、請
求項3記載の表面処理アルミニウム材にあっては、請求
項1又は2記載の表面処理アルミニウム材において、無
孔質陽極酸化皮膜の空孔率が5%以下であることを特徴
とする。
【0007】請求項4記載の表面処理アルミニウム材の
製造方法にあっては、アルミニウムまたはアルミニウム
合金を、硼酸、硼酸塩、リン酸塩、アジピン酸塩の群か
ら選ばれる1種または2種以上からなる電解質水溶液に
より電解し、アルミニウムまたはアルミニウム合金の表
面に無孔質陽極酸化皮膜を形成する工程と、該無孔質陽
極酸化皮膜の表面に150〜350℃のベーキング処理
を施して該無孔質陽極酸化皮膜の含水量を3重量%以
下、アルミニウムに対するアニオンの含有量を重量比で
0.05以下にする工程を備えることを特徴とする。ま
た、請求項5記載の表面処理アルミニウム材の製造方法
にあっては、請求項4記載の表面処理アルミニウム材の
製造方法において、ベーキング処理を真空環境下で行う
ことを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の表面処理アルミニ
ウム材について、その製造方法により詳しく説明する。
本発明の表面処理アルミニウム材の素材となるアルミニ
ウムまたはアルミニウム合金としては、特に限定され
ず、純アルミ系の1000系合金、Al−Cu系、Al
−Cu−Mg系の2000系合金、Al−Mn系の30
00系合金、Al−Si系の4000系合金、Al−M
g系の5000系合金、Al−Mg−Si系の6000
系合金、Al−Zn−Mg−Cu系、Al−Zn−Mg
系の7000系合金、7N01合金、Al−Fe−Mn
系の8000系合金などが用いられ、成形用合金、構造
用合金、電気用合金、AC1A、AC2A、AC3A、
AC4Bなどの鋳造用合金が用いられる。
【0009】また、これらの合金に溶体化処理、時効処
理などの種々の調質処理を施したものも用いられる。さ
らに、これらのアルミニウム合金の表面にクラディング
したクラッド材も使用できる。本発明にあっては、これ
らの合金のなかでも、1000系、5000系、600
0系が好ましい。
【0010】このような素材に対して前処理が施され
る。この前処理としては特に限定されず、要は素材の表
面に付着した油脂分を除去し、素材表面の不均質な酸化
物皮膜が除去できるものであればよい。例えば、弱アル
カリ性の脱脂液による脱脂処理を施したのち、水酸化ナ
トリウム水溶液でアルカリエッチングをしたのち、硝酸
水溶液中でデスマット処理を行う方法や、脱脂処理後に
酸洗浄を行う方法などが適宜選択して用いられる。
【0011】ついで、この前処理が施された素材を電解
質溶液中で電解する陽極酸化処理を施すことにより、素
材の表面に無孔質陽極酸化皮膜を形成する。電解液とし
ては、生成する無孔質陽極酸化皮膜を溶解しにくく、か
つ無孔質の陽極酸化皮膜を生成する電解質である硼酸、
硼酸塩、リン酸塩、アジピン酸塩などの群から選ばれる
1種または2種以上を溶解した皮膜溶解性の低い電解質
水溶液が用いられる。これらの電解質のなかでも硼酸、
硼酸塩、リン酸塩、アジピン酸塩が好ましい。
【0012】電解質水溶液中の電解質濃度は、1〜20
0g/lが好ましい。電解質濃度が1g/lより低濃度
では皮膜むらが生じ易く、一方、200g/lを超える
と溶解し難く沈澱を生じることがあるからである。電解
浴の浴温は、50℃以上、好ましくは50℃〜95℃、
より好ましくは50〜80℃の範囲である。浴温が50
℃未満では、電解質の溶解性が低く、液抵抗による電圧
ロスが大きくなるからである。一方、浴温が95℃を超
えると、沸騰を伴うことや加熱にコストを要するからで
ある。また、浴温が50〜80℃であると、質陽極酸化
皮膜の含水量を少なくするのに効果的である。
【0013】この電解浴中で、アルミニウムまたはアル
ミニウム合金素材は、連続あるいは断続であっても陽極
となるように電源に接続されて電解される。陰極には不
溶性の導電材料が用いられる。電解電流は、直流電流が
用いられ直流電解では直流密度0.2〜5A/dm2
度である。電流密度が0.2A/dm2 未満では皮膜形
成に長時間を要してしまう。一方、5A/dm2 を超え
ると、皮膜やけ等の表面欠損が生じ易くなるからであ
る。電解時間は、数秒〜30分程度で目的とする皮膜厚
さと電解条件により選択して電解が行われる。
【0014】印加電圧は、直流電流では、電圧1Vに対
して形成される酸化皮膜厚さが約14Åとなる関係があ
ることから約20〜500V、好ましくは約30〜50
0Vの範囲とされる。電源装置などの点からは50V以
下とすることが好ましく、このような低電圧での電解で
も優れた真空特性及び耐食性が得られる。このような陽
極酸化処理によって素材の表面に厚さの均一な無孔質陽
極酸化皮膜が形成される。無孔質陽極酸化皮膜の膜厚
は、300〜7000Å、好ましくは500〜7000
Å程度である。膜厚が300Å未満であると、厚さが薄
すぎて十分な耐食性が得られ難いからである。一方、膜
厚の上限としては、7000Åまで可能である。
【0015】このようにして得られた陽極酸化皮膜は無
孔質であり、その空孔率は最大でも5%程度以下が好ま
しい。空孔率が5%を超えると、陽極酸化皮膜の表面積
が大きくなり、吸着される水分やガス等も多くなってし
まい、含水量が増えたのと同様の悪影響を及ぼす恐れが
ある。また、空孔率が5%を超えると無孔質皮膜とは言
えなくなるからである。空孔率は、前述の電解条件によ
って決定される。
【0016】後述するベーキング処理が施される前の無
孔質陽極酸化皮膜の含水量は、3〜10量%程度であ
る。後述するベーキング処理が施される前の無孔質陽極
酸化皮膜中のアルミニウムに対するアニオンの含有量が
重量比で0.05〜0.10程度である。
【0017】前述の陽極酸化処理は、コイル状などの未
加工の状態のアルミニウムまたはアルミニウム合金に対
して行うこともできるが、プレス加工などの加工を施し
たものに対して行うことが好ましい。
【0018】ついで、電解が終了後、無孔質陽極酸化皮
膜の表面に150〜350℃のベーキング処理を施すこ
とにより、無孔質陽極酸化皮膜の含水量を3重量%以
下、好ましくは0.1〜2重量%、アルミニウムに対す
るアニオン含有量を重量比で0.05以下、好ましくは
0.01〜0.03にする。無孔質陽極酸化皮膜中のア
ニオン種としては、硼酸、硼酸塩、リン酸塩、アジピン
酸塩のアニオンの1種または2種以上が含まれる。無孔
質陽極酸化皮膜中のアニオン種として、硼素、硼酸塩の
アニオンが含まれている場合のアルミニウム重量に対す
る硼素重量の割合は重量比で0.05以下、好ましくは
0.01〜0.04であり、あるいはリン酸塩のアニオ
ンが含まれている場合のアルミニウム重量に対するリン
重量の割合は重量比で0.05以下、好ましくは0.0
1〜0.04である。
【0019】ベーキング処理温度が150℃未満である
と、無孔質陽極酸化皮膜中の水分や、成膜成分であるア
ニオンや、表面に吸着した水分やガス等を除去する効果
が低く、含水量が3重量%以下、アニオン含有量が0.
05以下の無孔質陽極酸化皮膜が得られにくく、真空機
器等に用いた場合に、無孔質陽極酸化皮膜からのガスの
放出量を低減する効果が低い。一方、ベーキング処理温
度が350℃を超えると、無孔質陽極酸化皮膜にクラッ
クが入り易くなり、また、アルミニウムまたはアルミニ
ウム合金素材がなまって強度等が大きく低下してしまう
場合があるからである。
【0020】また、本発明のベーキング処理は、常圧下
あるいは真空環境下のいずれでも行うことができるが、
真空環境下で行う方がベーキング処理時間の短縮の点で
好ましい。その理由は、ベーキング処理を真空環境下で
行うと、無孔質陽極酸化皮膜中の水分やアニオン等の除
去効率が良いからである。本発明のベーキング処理は、
常圧下で行う場合、1時間以上、好ましくは1〜3時間
であり、真空環境下で行う場合、0.3時間以上、好ま
しくは0.5〜1.0時間である。
【0021】ベーキング処理後の無孔質陽極酸化皮膜の
含水量が3重量%を超えると、皮膜から揮散する水分
(皮膜から放出されるガス)の量が増加し、真空機器内
を高真空にするという目的を十分に達成できないため真
空特性が悪く、また、塩素ガスやプラズマ等と反応し、
エッチング不良が生じ、半導体基板の特性に悪影響を与
えるという問題がある。
【0022】ベーキング処理後の無孔質陽極酸化皮膜の
アニオン含有量が0.05を超えると、皮膜から揮散す
るアニオン(皮膜から放出されるガス)の量が増加し、
真空機器内を高真空にするという目的を十分に達成でき
ないため真空特性が悪く、また、皮膜から揮散したアニ
オンが不純物として真空機器の系内に放出され、塩素ガ
ス等の反応性ガスやプラズマ等と反応し、エッチング不
良が生じたり、半導体基板を汚染し、半導体基板の特性
に悪影響を及ぼすという問題がある。一方、0.01未
満の無孔質陽極酸化皮膜は、電解浴では製造し難いから
である。以上のようにすると、目的とする表面処理アル
ミニウム材が得られる。
【0023】本発明の表面処理アルミニウム材にあって
は、アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面に、ベ
ーキング処理が施された無孔質陽極酸化皮膜が形成さ
れ、該無孔質陽極酸化皮膜は厚さが300〜7000
Å、含水量が3%以下、アルミニウムに対するアニオン
の含有量が重量比で0.05以下のものであるので、多
孔質陽極酸化皮膜が形成された従来のアルミニウム材と
比べて、皮膜の含水量ならびにアニオン含有量が少な
い。従って、本発明の表面処理アルミニウム材を、半導
体製造装置あるいは薄膜形成装置等の真空機器やその部
品の表面材として用い、真空環境下においても、前記水
分やアニオンに起因する皮膜からのガスの放出量が少く
なるので、真空特性が優れ、また、前記皮膜から放出さ
れたガスが、塩素ガス等の反応性ガスやプラズマ等と反
応することも殆どなくなるので、エッチング不良が生じ
たり、薄膜が汚染されることが改善され、特性の安定し
た薄膜が得られ易いという利点がある。また、本発明で
形成される陽極酸化皮膜は無孔質のものであるので、耐
食性が優れ、また、表面に水分やガスが吸着されにくい
ので、真空環境下での皮膜からのガスの放出量が少くな
るので、真空特性が優れるうえ、特性の安定した薄膜が
得られる易い。また、無孔質陽極酸化皮膜の空孔率を5
%以下したものにあっては、特に、表面に吸着される水
分やガスを低減する効果ならびに耐食性が格段に優れ
る。
【0024】
【実施例】以下、本発明を、実施例および比較例によ
り、具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみ
に限定されるものではない。 (実施例1)アルミニウム合金としてJIS5052合
金を用い、弱エッチング性の脱脂剤で脱脂処理した後、
50g/lのアジピン酸アンモニウムと2g/lのリン
酸2水素アンモニウムを溶解した電解質水溶液で、20
V、電流密度1A/dm2、70℃、30分の電解を施
し、アルミニウム合金の表面に無孔質陽極酸化皮膜を形
成した。電解終了後、合金を水洗し、150℃、1時間
のベーキング処理を施し、表面処理アルミニウム材を得
た。 (実施例2)実施例1と同様にしてアルミニウム合金を
脱脂処理した後、50g/lの硼酸と2g/lのリン酸
2水素アンモニウムを溶解した電解質水溶液で、105
V、電流密度1A/dm2、70℃、30分の電解を施
し、アルミニウム合金の表面に無孔質陽極酸化皮膜を形
成した。電解終了後、合金を水洗し、200℃、1時間
のベーキング処理を施し、表面処理アルミニウム材を得
た。
【0025】(実施例3)実施例1と同様にしてアルミ
ニウム合金を脱脂処理した後、10g/lの硼酸と50
g/lのアジピン酸アンモニウムを溶解した電解質水溶
液で、200V、電流密度1A/dm2、70℃、30
分の電解を施し、アルミニウム合金の表面に無孔質陽極
酸化皮膜を形成した。電解終了後、合金を水洗し、20
0℃、1時間のベーキング処理を施し、表面処理アルミ
ニウム材を得た。 (実施例4)実施例1と同様にしてアルミニウム合金を
脱脂処理した後、50g/lの硼酸と2g/lの硼酸ア
ンモニウムを溶解した電解質水溶液で、500V、電流
密度1A/dm2、70℃、30分の電解を施し、アル
ミニウム合金の表面に無孔質陽極酸化皮膜を形成した。
電解終了後、合金を水洗し、350℃、1時間のベーキ
ング処理を施し、表面処理アルミニウム材を得た。
【0026】(比較例1)実施例1と同様にしてアルミ
ニウム合金を脱脂処理した後、50g/lのアジピン酸
アンモニウムと2g/lのリン酸2水素アンモニウムを
溶解した電解質水溶液で、20V、電流密度1A/dm
2、70℃、30分の電解を施し、アルミニウム合金の
表面に無孔質陽極酸化皮膜を形成し、表面処理アルミニ
ウム材を得た。 (比較例2)実施例1と同様にしてアルミニウム合金を
脱脂処理した後、10g/lの硼酸と50g/lのアジ
ピン酸アンモニウムを溶解した電解質水溶液で、200
V、電流密度1A/dm2、70℃、30分の電解を施
し、アルミニウム合金の表面に無孔質陽極酸化皮膜を形
成し、表面処理アルミニウム材を得た。
【0027】(比較例3)実施例1と同様にしてアルミ
ニウム合金を脱脂処理した後、50g/lの硼酸と2g
/lの硼酸アンモニウムを溶解した電解質水溶液で、5
00V、電流密度1A/dm2、70℃、30分の電解
を施し、アルミニウム合金の表面に無孔質陽極酸化皮膜
を形成し、表面処理アルミニウム材を得た。 (比較例4)実施例1と同様にしてアルミニウム合金を
脱脂処理した後、50g/lの硼酸と2g/lの硼酸ア
ンモニウムを溶解した電解質水溶液で、20V、電流密
度1A/dm2、98℃、20分の電解を施し、アルミ
ニウム合金の表面に無孔質陽極酸化皮膜を形成し、表面
処理アルミニウム材を得た。
【0028】(比較例5)実施例1と同様にしてアルミ
ニウム合金を脱脂処理した後、50g/lの硼酸と2g
/lの硼酸アンモニウムを溶解した電解質水溶液で、5
00V、電流密度1A/dm2、98℃、20分の電解
を施し、アルミニウム合金の表面に無孔質陽極酸化皮膜
を形成し、表面処理アルミニウム材を得た。 (比較例6)実施例1と同様にしてアルミニウム合金を
脱脂処理した後、50g/lの硼酸と2g/lの硼酸ア
ンモニウムを溶解した電解質水溶液で、500V、電流
密度5A/dm2、98℃、20分の電解を施し、アル
ミニウム合金の表面に無孔質陽極酸化皮膜を形成し、表
面処理アルミニウム材を得た。
【0029】(比較例7)実施例1と同様にしてアルミ
ニウム合金を脱脂処理した後、50g/lの硼酸と2g
/lの硼酸アンモニウムを溶解した電解質水溶液で、1
5V、電流密度1A/dm2、98℃、20分の電解を
施し、アルミニウム合金の表面に無孔質陽極酸化皮膜を
形成した。電解終了後、合金を水洗し、150℃、1時
間のベーキング処理を施し、表面処理アルミニウム材を
得た。 (比較例8)実施例1と同様にしてアルミニウム合金を
脱脂処理した後、50g/lの硼酸と2g/lのリン酸
2水素アンモニウムを溶解した電解質水溶液で、107
V、電流密度5A/dm2、98℃、20分の電解を施
し、アルミニウム合金の表面に無孔質陽極酸化皮膜を形
成した。電解終了後、合金を水洗し、150℃、1時間
のベーキング処理を施し、表面処理アルミニウム材を得
た。
【0030】(比較例9)実施例1と同様にしてアルミ
ニウム合金を脱脂処理した後、20g/lのフタル酸水
素アンモニウムを溶解した電解質水溶液で、107V、
電流密度5A/dm2、98℃、20分の電解を施し、
アルミニウム合金の表面に無孔質陽極酸化皮膜を形成し
た。電解終了後、合金を水洗し、150℃、1時間のベ
ーキング処理を施し、表面処理アルミニウム材を得た。 (比較例10)実施例1と同様にしてアルミニウム合金
を脱脂処理した後、10g/lのクエン酸アンモニウム
を溶解した電解質水溶液で、107V、電流密度5A/
dm2、98℃、20分の電解を施し、アルミニウム合
金の表面に無孔質陽極酸化皮膜を形成した。電解終了
後、合金を水洗し、150℃、1時間のベーキング処理
を施し、表面処理アルミニウム材を得た。
【0031】(比較例11)実施例1と同様にしてアル
ミニウム合金を脱脂処理した後、50℃、10%の水酸
化ナトリウム水溶液で、2分間エッチング処理し水洗し
た。ついで、室温、10%の硝酸に1分間浸漬しデスマ
ットした後、15%硫酸で、1.3A/dm2で、20
℃、20分の電解を施し、アルミニウム合金の表面に多
孔質陽極酸化皮膜を形成した。さらに、この多孔質陽極
酸化皮膜が形成されたアルミニウム合金を100℃の純
水に30分間浸漬し封孔処理し乾燥し、表面処理アルミ
ニウム材を得た。 (比較例12)実施例1と同様にしてアルミニウム合金
を脱脂処理した後、50℃、10%の水酸化ナトリウム
水溶液で、2分間エッチング処理し水洗した。ついで、
室温、10%の硝酸に1分間浸漬しデスマットした後、
15%硫酸で、1.3A/dm2で、20℃、20分の
電解を施し、アルミニウム合金の表面に多孔質陽極酸化
皮膜を形成した。さらに、この多孔質陽極酸化皮膜が形
成されたアルミニウム合金を100℃の純水に30分間
浸漬し封孔処理し乾燥した。この後、さらに、この合金
に、150℃、1時間のベーキング処理を施し、表面処
理アルミニウム材を得た。
【0032】(実験例)実施例1〜4、比較例1〜12
得られた表面処理アルミニウム材の陽極酸化皮膜の含水
量を熱重量分析によって測定し、アニオン含有量をXP
Sによって測定した。また、得られた表面処理アルミニ
ウム材を10-6トール以下の真空に吸引した雰囲気下
で、300℃まで加熱したときの放出されたガスの量を
測定し、ガス放出性(アウトガス性)を評価した。その
結果を下記表1に示す。評価基準は、ガスが殆ど放出さ
れないものを秀(◎)、やや放出されたものを良
(○)、多量に放出されたものを(×)、極めて多量に
放出されたものを(××)とした。さらに、得られた表
面処理アルミニウム材に40eVのCF4プラズマを3
0分照射し、膜厚の変化を測定することにより耐食性
(プラズマ耐久性)評価した。その結果を下記表1に示
す。評価基準は、膜厚減少が10%以内のものを
(○)、膜厚減少が10%以上のものを(×)とした。
【0033】
【表1】
【0034】表1中のB/Al比、P/Al比は重量比
である。
【0035】
【発明の効果】以上説明したように本発明の表面処理ア
ルミニウム材にあっては、前述の構成としたことによ
り、真空環境下でのガス放出量が少なく、真空特性及び
耐食性が優れる。従って、本発明の表面処理アルミニウ
ム材を、半導体製造装置あるいは薄膜形成装置等の真空
機器やその部品の表面材として用いると、エッチング不
良が生じたり、薄膜が汚染されることが殆どなくなり、
特性の安定した薄膜が得られ易いという利点がある。

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アルミニウムまたはアルミニウム合金の
    表面に、ベーキング処理が施された無孔質陽極酸化皮膜
    が形成され、該無孔質陽極酸化皮膜は厚さが300〜7
    000Å、含水量が3%以下、アルミニウムに対するア
    ニオンの含有量が重量比で0.05以下であることを特
    徴とする表面処理アルミニウム材。
  2. 【請求項2】 アニオン含有量が、無孔質陽極酸化皮膜
    中の硼素/アルミニウム重量比またはリン/アルミニウ
    ム重量比で0.05以下であることを特徴とする請求項
    1記載の表面処理アルミニウム材。
  3. 【請求項3】 無孔質陽極酸化皮膜の空孔率が5%以下
    であることを特徴とする請求項1又は2記載の表面処理
    アルミニウム材。
  4. 【請求項4】 アルミニウムまたはアルミニウム合金
    を、硼酸、硼酸塩、リン酸塩、アジピン酸塩の群から選
    ばれる1種または2種以上からなる電解質水溶液により
    電解し、アルミニウムまたはアルミニウム合金の表面に
    無孔質陽極酸化皮膜を形成する工程と、該無孔質陽極酸
    化皮膜の表面に150〜350℃のベーキング処理を施
    して該無孔質陽極酸化皮膜の含水量を3重量%以下、ア
    ルミニウムに対するアニオン含有量を重量比で0.05
    以下にする工程を備えることを特徴とする表面処理アル
    ミニウム材の製造方法。
  5. 【請求項5】 ベーキング処理を真空環境下で行うこと
    を特徴とする請求項4記載の表面処理アルミニウム材の
    製造方法。
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