JPH09176545A - インクジェット用インク及びインクジェット印刷におけるエーロゾルの低減法 - Google Patents

インクジェット用インク及びインクジェット印刷におけるエーロゾルの低減法

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JPH09176545A
JPH09176545A JP8337487A JP33748796A JPH09176545A JP H09176545 A JPH09176545 A JP H09176545A JP 8337487 A JP8337487 A JP 8337487A JP 33748796 A JP33748796 A JP 33748796A JP H09176545 A JPH09176545 A JP H09176545A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 インクジェット印刷におけるエーロゾル発生
を軽減することができるインクジェット印刷用インクを
提供する。 【解決手段】 少なくとも1つの染料と水性ベースの媒
質から成るインクジェット用インクに、少なくとも1つ
の粘弾性ポリマーを含有させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、インクジェット印
刷に用いられるインク組成に関し、より詳細には、イン
クジェット用インク組成に高分子添加剤を含有させるこ
とによるインクジェット印刷におけるエーロゾル発生の
軽減に関する。
【0002】
【背景技術】インクジェット印刷は、ノンインパクト印
刷工程であり、この場合、インク液滴は、紙、透明フィ
ルム、又はテキスタイル(textiles)のような
印刷媒体上に載せるものである。低コストで且つ出来上
がりの品質が高いので、比較的雑音のない運転と相俟っ
て、インクジェット印刷機は、今や、コンピュータ併用
型の他方式印刷機に代わる普及型機となっている。本質
的に、インクジェット印刷は、マイクロプロセッサによ
って発生させた電気信号に応答して印刷媒体上に微細な
インク液滴を噴射するものである。
【0003】インクジェット印刷においてインク液滴噴
射を遂行するのに現在利用できる基本的手段は、熱式と
圧電式の2通りがある。熱式インクジェット印刷では、
インクを気化させるのに抵抗加熱が使用され、インクは
印刷媒体に向かってインクジェット・ペンのオリフィス
を通して噴射される。そのための印刷機は、複数のオリ
フィスを装備しており、各オリフィスは、抵抗体に結合
されている。マイクロプロセッサにより、インク噴射の
ための適当な抵抗体を選択し且つその抵抗体に電流を流
して抵抗加熱を遂行し、その結果、その選択した抵抗体
に結合されたオリフィスを通してインク噴射が行われ
る。マイクロプロセッサで選択されたインク噴射のため
の特定の抵抗/オリフィスのペア(対)のパターンによ
って、紙上に印刷される英数字文字、区画内埋込み(a
rea fills)、及びその他のパターンの形状が
決定される。圧電式インクジェット印刷では、これ又、
マイクロプロセッサで発生した電気信号に応答して、圧
電素子が振動してインク液滴を噴射する。
【0004】インクジェット印刷機からインクを噴射す
るのに用いられるエネルギーのタイプには関係なく、イ
ンクジェット印刷で経験される共通の問題は、噴射した
インク液滴の壊変であり、そのため、オリジナルのイン
ク液滴のある部分が印刷媒体上の意図した位置に到達し
ないことになる。より詳細には、インクジェット印刷機
で噴射されるインク液滴は、一般に、頭部と尾部を有す
ることが知られている。尾部は、ここでは“ブレイクオ
フ残余(breakoff remnants)”と呼
ばれる、比較的小容積のインクに分裂し易い。その後
は、一定のブレイクオフ残余は、噴射したインク液滴の
頭部と損なわれていない尾部と一緒には印刷媒体上の意
図した位置に堆積しない。むしろ、一定のブレイクオフ
残余は、それらの軌道が空気抵抗によって変更される程
に小さいものである。空気抵抗によって印刷媒体上のそ
れらの意図した目的位置に到達しないブレイクオフ残余
は、集合的に“エーロゾル”として知られている。
【0005】全てのブレイクオフ残余が用語“エーロゾ
ル”に包含されるとは限らない。むしろ、ブレイクオフ
残余は、空気抵抗で実質的に影響される位に十分小さく
なければならず、且つブレイクオフ残余を生ずる尾部の
分裂は、その飛行経路が空気抵抗で変えられる機会が与
えられる位に、印刷媒体から十分離れた位置で起こった
筈である。理論的には、ブレイクオフ残余のサイズとブ
レイクオフ残余が生ずる時間は、作用中の慣性力、イン
クの粘性、及びインクの表面張力間の相互作用で大きく
影響される。
【0006】インクジェット印刷におけるエーロゾルの
発生は望ましいものではない:何故なら、印刷媒体上に
噴射されるインクの位置の抑制力が印刷機のマイクロプ
ロセッサから事実上曲げられ且つランダムな空気力に転
じられるからである。エーロゾルは、特定の英数字文
字、区画内埋込み、又はその他のパターンの作成用のイ
ンク量を減らすため、印刷品質にマイナスに影響する。
さらに、エーロゾルを構成するブレイクオフ残余は、空
白で残そうとした印刷媒体の部分に到達することもあ
り、これが印刷品質に逆効果を与えることになる。
【0007】従って、インクジェット印刷におけるエー
ロゾルの発生を実質上低減もしくは排除する手段を求め
る要求が存在する。採用される手段は、印刷品質に逆効
果を及ぼしてはならず且つ容易に実行されるものでなけ
ればならない。
【0008】
【発明の目的】本発明は、上記の要求に応えるために、
インクジェット印刷におけるエーロゾル発生を低減する
ためのインクジェット用インクと、このインクを用いた
エーロゾル発生の低減方法を提供することを目的とす
る。
【0009】
【発明の概要】本発明は、インクジェット印刷における
エーロゾル発生を低減するために、粘弾性ポリマーを用
いるインクジェット用インクと、その低減方法とを提供
する。より詳細には、本発明のインクジェット用インク
は、少なくとも1つの染料と水性ベースの媒質とから成
り、結果として、エーロゾル発生の実質的低減は、ポリ
アクリルアミド及びポリビニルピロリドンから成る群か
ら選択されるような、少なくとも1つの粘弾性ポリマー
により実現される。
【0010】粘弾性ポリマー成分は、その尾部が完全な
状態でより多く残り易くなるように、噴射インクの表面
張力並びに伸び粘性を高める働きがある。さらに、分裂
が起こったとしても、粘弾性ポリマー成分は、実際に、
その頭部から離れた位置に分裂点を移動させるよう機能
し、それによって、ブレイクオフ残余はどれも印刷媒体
により近くなるよう分裂の発生時間を遅延させる。最終
的に、本発明の実施において、尾部から切り取られるイ
ンクは何れも、その飛翔軌跡が空気力で支配されない位
十分な寸法を有する衛星のような液滴を、おそらく形成
することになる。換言すれば、インクジェット用インク
組成に粘弾性ポリマーを組入れることにより、次の2つ
の手段でエーロゾルの発生に対抗することになる:
(1)分裂を抑止し;(2)分裂したとしても、衛星液
滴のサイズを最大にし且つその発生を遅延させる。
【0011】本発明のインク組成と方法は、滴下オンデ
マンド(drop−on−demand)型の連続、圧
電式印刷機及び熱式又はバブルジェット式の滴下オンデ
マンド型印刷機のような種々のインクジェット式印刷機
と共に用いてよい。本発明の実施において達成されるエ
ーロゾル発生の低減によって、インクジェット印刷機で
実現できる印刷品質が改善される。
【0012】
【発明の好ましい実施の態様】エーロゾルの発生は、本
発明の実施において、インクジェット用インク組成に粘
弾性ポリマーを組入れることにより、実質的に低減され
る。粘弾性ポリマー成分は、約5〜10ppmの範囲の
濃度で既存のインクに用いる。この濃度の範囲内で、粘
弾性ポリマーは、エーロゾルブレイクオフ残余の発生を
防ぐか又は遅延させるよう働く。本発明に沿って生成さ
れるインクは、インクジェット式印刷機によって、紙、
透明紙、及びテキスタイルを含む、様々な形の印刷媒体
上に印刷してよい。さらに、このインクは、どのインク
ジェット式印刷機にも適切に用いることができるが、熱
インクジェット式印刷機に特に有効である。
【0013】図1〜5は、熱インクジェット印刷時に集
合的にエーロゾルを形成するブレイクオフ残余を発生さ
せると思われるものの時間経過による一連の現象(ti
mesequence)を描写したものである。図は、
1つの噴射抵抗体10と、オリフィス板14の関連オリ
フィス12の側面拡大図を示す。抵抗体10は、基板1
6に保持する。障壁層18は、抵抗体10が配置された
噴射チャンバー20を限定するもので、同抵抗体の左右
に見られ、2つの壁18aと18bを形成する。別の障
壁(図示せず)が図の紙面の“上方”にあり;3つの障
壁18a、18b、及びその別の障壁が噴射チャンバー
20の3つの側面を限定し、第四の壁は開けておく。イ
ンク22は、スロット形状をしており且つ基板16下の
容器(図示せず)から両側(一方は偶数側で他方は奇数
側)の複数の抵抗体にインクを供給する、インク送りス
ロット(図示せず)から噴射チャンバー20に入る。イ
ンク送りスロットは、障壁入口チャンネル(図示せず)
によって、噴射チャンバー20と流体的(fluidi
cally)に連絡している。障壁入口チャンネルは、
ペン壁を通して噴射チャンバー20に連接し、従って図
の紙面の“下方”にある。
【0014】図1は、平衡状態のインクを示す。その液
滴が噴射されると(図2)、インク22のメニスカスは
噴射チャンバー20内に引っ込み、頭部22Aと尾部2
2Bを形成しつつあるインクをメイクアップ(make
up)する(図3)。図4は、インク22のメニスカ
スからの尾部22Bの分離と、印刷媒体28上のその目
的位置へ向けて噴射されたインクの頭部/尾部アセンブ
リ26の移動を示す。図5は、ブレイクオフ残余30を
形成する、噴射インクアセンブリ26の尾部22Bの分
裂を示すものである。もし、そのブレイクオフ残余30
が、十分小さく且つ頭部/尾部の親アセンブリ26が印
刷媒体28に衝突するより十分前に生ずるなら、ブレイ
クオフ残余30の軌道は空気力で制御されることにな
り、これがエーロゾルと呼ばれるものである。
【0015】本発明に沿って、インクジェット用インク
組成に粘弾性ポリマー成分を含有させることにより、そ
の尾部が完全な状態でより多く残り易くなるようにイン
クの伸び粘性と表面張力が高められ、エーロゾルブレイ
クオフ残余の発生が防止される。さらに、分裂が起こっ
たとしても、粘弾性ポリマー成分は、実際に、その頭部
から離れた位置に分裂点を移動させるよう機能し、それ
によって、噴射インクが印刷媒体により一層接近するま
で、分裂の発生時間が遅延される。最終的に、粘弾性ポ
リマーを組入れることにより、尾部からの分離残余はよ
り大きい衛星液滴に凝集され、その結果、それらの飛翔
軌道は空気力でより支配され難くなる。要するに、イン
クジェット用インク組成に粘弾性ポリマーを組入れるこ
とにより、次の2つの基本的手段により:即ち、(1)
分裂を抑止することと;(2)分裂したとしても、破片
液滴のサイズを最大にし且つその発生を遅延させること
により、エーロゾルの発生と戦うのである。
【0016】エーロゾル発生を効果的に減少させるため
に、粘弾性ポリマー成分を約5〜10ppmの範囲内で
用いる。ポリアクリルアミドを2ppmだけ用いるイン
クジェット用インク組成は、エーロゾル発生の減少によ
る利益が得られないことが分かっている。他方、ポリア
クリルアミドを10ppmを越えて用いるインクジェッ
ト用インク組成は、インクジェット印刷にとって逆効果
の疑似可塑性効果(pseudo−plastic e
ffects)(即ち、“ラバーバンディング”《ru
bberbannding》)を呈する。さらに、約1
0ppmより高い濃度では、沈殿が起こることもある。
好ましくは、粘弾性ポリマーは、約10ppmで用い
る。
【0017】本発明の実施に適切に用いられる粘弾性ポ
リマーは、インクジェットインクの絶対粘性に影響を及
ぼさないで伸び粘性を増大させるようなポリマーであれ
ばどれでもよい。適切に用いられる粘弾性ポリマーの種
類の例としては、限定するものではないが、ポリアクリ
ルアミドとポリビニルピロリドンがある。本発明の実施
には、粘弾性ポリマーの混合体を用いてよい。従って、
ポリアクリルアミドとポリビニルピロリドンの混合物、
並びに様々な分子量を有するポリアクリルアミドの混合
体は、首尾よく用いることができる。好ましくは、粘弾
性ポリマー成分は、50wt%のポリアクリルアミドと
50wt%のポリビニルピロリドンの混合体から成る
か、あるいはポリアクリルアミドだけから成る。
【0018】本発明の実施に適切に用いられるポリアク
リルアミドは、約10,000と5,000,000の
範囲内の分子量を有していなければならず、一方、その
ように用いられるポリビニルピロリドンは、約3,00
0と1,000,000の範囲内の分子量を持っていな
ければならない。好ましくは、用いられるポリアクリル
アミドとポリビニルピロリドンは、それぞれ、約10,
000と30,000の分子量をもつ。
【0019】本発明の粘弾性ポリマーは、官能基、例え
ば、エステル、ラクトン、プリン、ピリミジン、アミ
ド、シアナート、イソシアナート、イソチオシアナー
ト、チオシアナート、重水素化化合物、エーテル、ヒド
ラジン、ヒドラゾン、オサゾン、炭化水素、ヒドロキシ
含有化合物、イミン、ケトン、ニトリル、有機金属誘導
体、硫黄含有化合物、チロシン、尿素、チオ尿素、及び
第四級アミンを含め、アセタール、ケタール、脂肪族ア
ルデヒド、芳香族アルデヒド、脂環式アルデヒド、複素
環式アルデヒド、アミン、アミン塩、アミノ酸、ペプチ
ド、アニリン、複素環式アミン、アゾ、アゾキシ、及び
ジアゾニウム誘導体、カルボン酸とその誘導体を含んで
よい。前出の官能基のうち、アミン塩、アミノ酸、ペプ
チド、ジアゾニウム誘導体、有機金属誘導体及び第四級
アミンは、荷電単位を含む。
【0020】本発明のインクジェット用インク組成に用
いられる染料は、インクジェット式印刷機用のインクに
使われる水溶性染料のどれでもよい。適当な染料の例に
は、限定するものではないが、Food Black
2,Carta Black,Direct Blac
k 19,Direct Black 51,Dire
ct Black 109,Direct Black
154,Direct Blue 86,Direc
t Blue 199,Direct Red9,Di
rect Red 32,Acid Yellow 2
3,AcidBlue 185,Acid Blue
9,Acid Red 17,Acid Red 5
2,Acid Red 249,及びReactive
Red 180がある。染料の濃度は、好ましくは、
約0.1〜7wt%の範囲である。約0.1wt%未満
では、容認できない明度(lightness)をもっ
たインクとなり、約7wt%を越えるとインクジェット
ペンのオリフィスが詰まってしまう。より好ましくは、
染料は、インクジェット用インク組成の約0.1〜4w
t%の範囲内にある。染料の混合体を用いてもよい。
【0021】ポリマー添加剤を組入れることは、染料ベ
ースのインクジェット用インク組成に関わるエーロゾル
を減ずるために広く採り入れられるであろうが、顔料ベ
ースのインクも本発明の実施で利益を受け得ることが認
められる。
【0022】好ましくは、本発明のインクジェット用イ
ンク組成の媒質は、粘弾性ポリマー成分に加えて、少な
くとも1つのジオール、少なくとも1つのグリコールエ
ーテル、2−ピロリドン、少なくとも1つの無機塩、及
び残余水を包含する。より詳細には、本発明のインクジ
ェット用インク組成の媒質は、好ましくは、全インク組
成のパーセントで表した、次の濃度からなる:(a)約
3〜20wt%の少なくとも1つのジオール;(b)約
5wt%以下の少なくとも1つのグリコールエーテル;
(c)約3〜9wt%の2−ピロリドン;(d)界面活
性剤、緩衝剤、及びバイオサイド(biocide)か
ら成る群から選択される約0.5〜5wt%の少なくと
も1つ;(e)約3〜11wt%の少なくとも1つの無
機塩;(f)約5〜10ppmの少なくとも1つの粘弾
性ポリマー、及び(g)残余水。上述の媒質の配合が好
ましいが、インクジェット用インク組成に使える水性ベ
ースの媒質も本発明の実施において利益を得ることがで
きる。
【0023】好ましいインク媒質に用いてよいジオール
の例には、次のような化合物の何れか、又はその2つ以
上の混合体が含まれる:エタンジオール(例えば、1,
2−エタンジオール);プロパンジオール(例えば、
1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジール、
2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパン
ジオール、エチルヒドロキシプロパンジオール《EHP
D》等);ブタンジオール(例えば、1,3−ブタンジ
オール、1,4−ブタンジオール等);ペンタンジオー
ル(例えば、1,5−ペンタンジオール);及びヘキサ
ンジオール(例えば、1,6−ヘキサンジオール、2,
5−ヘキサンジオール等)。好ましくは、インクの媒質
には1,5−ペンタンジオールとEHPDを用いる。
【0024】インク媒質のグリコールエーテル成分は、
インクジェット用インク組成に通常用いられる、グリコ
ールエーテルとチオグリコールエーテルの何れか、及び
その混合体から成ってよい。この化合物の例には、ポリ
エチレングリコールのようなポリアルキレングリコール
(例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコ
ール、テトラエチレングリコール等);ポリプロピレン
グリコール(例えば、ジプロピレングリコール、トリプ
ロピレングリコール、テトラプロピレングリコール
等);高分子グリコール(例えば、PEG 200,P
EG 300,PEG 400,PPG 400等)及
びチオグリコールがある。好ましくは、インク媒質には
ジエチレングリコールが用いられる。
【0025】インク媒質に好ましく用いられる無機塩成
分は、黒インクとカラーインク間のブリード(にじみ)
を防ぐ働きがあり、1つ以上の無機塩から成る。ブリー
ドを制御するのに無機塩成分を含有させることは、米国
特許第5,198,023号(表題“Cationic
Dyes with Added Multi−Va
lent Cations to Reduce Bl
eed in Thermal Ink−Jet In
ks”−本出願人と同じ譲受人に譲渡)に開示されてい
る。同塩は、勿論、使用濃度でインクに溶解できなけれ
ばならない。無機塩に適切に用いられるカチオンには、
周期表の2A族のアルカリ土類金属(例えば、マグネシ
ウムとカルシウム);周期表の3B族の遷移金属(例え
ば、ランタン);周期表の3A族由来のカチオン(例え
ば、アルミニウム);及びランタナイド(例えば、ネオ
ジム)がある。好ましくは、カルシウムとマグネシウム
がカチオンとして用いられる。カルシウムと結合させて
適切に用いられるアニオンには、硝酸塩、塩化物、酢酸
塩、安息香酸塩、ギ酸塩、及びチオシアン酸塩があり、
一方、マグネシウムと結合させる適当なアニオンには、
硝酸塩、塩化物、酢酸塩、安息香酸塩、臭化物、クエン
酸塩、ギ酸塩、ヨウ化物、硫酸塩、フッ化物、酒石酸
塩、及びチオシアン酸塩がある。本発明のインク媒質に
最も好ましく用いられる無機塩は、硝酸塩、塩化物、及
びカルシウムとマグネシウムの酢酸塩である。
【0026】本発明のインク組成に用いてよい他の成分
には、界面活性剤、緩衝剤、バイオサイド、及びその類
があり、それらはそれぞれ、インクジェット式印刷に通
常用いられる添加剤である。
【0027】界面活性剤は、通常、印刷媒体中へのイン
クの浸透を高めてカラー間のブリードを防ぐために用い
る。この目的のためにインクジェット用インク組成に適
切に用いられる界面活性剤はどれも、本発明のインク媒
質に含有させてよい。用いてよい界面活性剤の種類の例
としては、アニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤が
ある。
【0028】pHを緩和するために本発明のインク媒質
に使われる緩衝剤は、無機緩衝剤ではインク組成中に比
較的大量の無機塩が存在すると恐らく沈殿するであろう
から、有機系のバイオ緩衝剤でなければならない。さら
に、使用緩衝剤は、最良の結果を得るためには、約6〜
9の範囲にあるpHを示さなければならない。好ましく
使われる緩衝剤の例には、例えばAldrich Ch
emical社(Milwaukee,WI)から市販
されているTrizma Base、及び4−モリホリ
ンエタンスルホン酸(MES)がある。
【0029】本発明の要件に一致して、他の様々な種類
の添加剤をインクに用いて、特定の用途に使うインク組
成の諸特性を最適化してよい。例えば、熟練した当業者
に周知の通り、1つ以上のバイオサイド、防かび剤、及
び/又はスライムサイド(slimicide)(微生
物剤)を、当分野で通常実施されるように、インク組成
に用いてよい。適切に用いられる微生物剤の例には、限
定するものではないが、NUOSEPT(Nudex,
Inc.)、UCARCIDE(UnionCarbi
de)、VANCIDE(RT Vanderbilt
Co.)、及びPROXEL(ICI Americ
a)が含まれる。加えて、重金属の不純物の有害な影響
を排除するために、EDTAのような封鎖剤(sequ
estering agents)を包含させてもよ
い。最後に、大気中の二酸化炭素にインクが晒されると
生ずることがある、インク中の任意のカルシウム含有無
機塩の沈殿を避けるために、インク媒質に硝酸アンモニ
ウムを包含させてもよい。
【0030】成分全ての純度は、通常の商業上の実施に
見られるそれである。
【0031】本発明による粘弾性ポリマー成分を配合し
たインクは、関連したインクジェット印刷品質の低下を
招来することなく、エーロゾル発生量の実質的低減を示
す。これらの属性は次の実施例で立証されるものであ
る。
【0032】
【実施例】本発明の実施において達成されるエーロゾル
低減を立証するため、下記の組成を持つ4つの水性ベー
スのインクを調合した:
【0033】
【表1】
【0034】表1中の符号は次の通りである。 *1:テトラメチルアンモニウムと結合したDirec
t Blueタイプの染料 *2:ナトリウムと結合したAcid Blue 9染
料 *3:硝酸マグネシウム6水和物 *4:分子量約10,000のポリアクリルアミド *5:分子量約30,000のポリビニルピロリドン
【0035】これらのインクは、ヒューレット・パッカ
ード社から市販されているDeskJet(登録商標)
のインクジェット式プリンターのペンに、それぞれ別々
に充填した。次いで、これらのインクを紙媒体上に別々
にプリントした。レーザー式粒子カウンターを用いて粒
子カウントによりインクの半径方向のサイズ分布を測定
し、それによって、各インクに関連したエーロゾルの量
を定量化した。粘弾性ポリマーを含有させなかったイン
クDは、最高の粒子カウント数(1,646,630粒
子/m)であった。インクA、B、及びCはそれぞ
れ、インクDのそれからのエーロゾルの低減を示した。
インクAは、粒子カウント数675,233粒子/m
であり;インクBは、粒子カウント数698,200粒
子/mであり;インクCは、粒子カウント数894,
320粒子/mであった。
【0036】従って、本発明に沿って調製されたインク
により、粘弾性ポリマー成分を何ら含んでいないインク
と比較して、実質的にエーロゾル生成が低減されること
が証明された。
【0037】以上、エーロゾルの生成は、本発明の実施
において実質的に低減されることを説明した。
【0038】
【産業上の応用性】ここに開示したように、インクジェ
ット印刷においてエーロゾルの生成を実質的に低減する
本発明のインクジェット用インク組成と方法は、インク
ジェット印刷において商業上の用途を見出すものと思
う。
【0039】このように、エーロゾル発生が低いインク
ジェット用インク組成並びにインクジェット印刷におい
てエーロゾル発生を低減する方法が開示された。明白な
性質の種々の変更並びに修正は、本発明の精神から逸脱
することなく実施してよいこと、且つ前述の変更並びに
修正の全ては、特許請求の範囲によって規定される本発
明の範囲内に帰属するものと考えられる、ということは
熟練した当業者には容易に明らかとなろう。
【0040】以上のように、本発明は〔1〕少なくとも
1つの染料と水性ベースの媒質から成るインクジェット
用インクであって、少なくとも1つの粘弾性ポリマーを
含有させることにより印刷中のエーロゾル発生の実質的
低減を示すインクジェット用インクに関し、次のような
好ましい実施態様を有する。
【0041】〔2〕前記少なくとも1つの粘弾性ポリマ
ーが、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、及
びその混合体から成る群から選択されることを特徴とす
る〔1〕記載のインクジェット用インク。
【0042】〔3〕前記ポリアクリルアミドが約10,
000〜5,000,000の範囲内の分子量を有し、
且つ前記ポリビニルピロリドンが約3,000〜1,0
00,000の範囲内の分子量を有することを特徴とす
る〔2〕記載のインクジェット用インク。
【0043】〔4〕前記ポリアクリルアミドが約10,
000の分子量を有し、且つ前記ポリビニルピロリドン
が約30,000の分子量を有することを特徴とする
〔3〕記載のインクジェット用インク組成。
【0044】〔5〕前記少なくとも1つの粘弾性ポリマ
ーが、約5〜10ppmの範囲内で前記インクジェット
用インクに存在することを特徴とする〔1〕記載のイン
クジェット用インク。
【0045】〔6〕前記少なくとも1つの粘弾性ポリマ
ーが、約10,000の分子量を有する50wt%のポ
リアクリルアミドと約30,000の分子量を有する5
0wt%のポリビニルピロリドンとから成る〔1〕記載
のインクジェット用インク。。
【0046】〔7〕前記少なくとも1つの粘弾性ポリマ
ーが、約10,000の分子量を有するポリアクリルア
ミドから成る〔1〕記載のインクジェット用インク。
【0047】〔8〕前記少なくとも1つの染料が、Fo
od Black 2,CartaBlack,Dir
ect Black 19,Direct Black
51,Direct Black 109,Dire
ct Black 154,Direct Blue
86,Direct Blue 199,Direct
Red 9,Direct Red 32,Acid
Yellow 23,Acid Blue 185,
Acid Blue 9,Acid Red17,Ac
id Red 52,Acid Red 249,及び
Reactive Red 180から成る群から選択
されることを特徴とする〔1〕記載のインクジェット用
インク。
【0048】
〔9〕前記インクジェット用インクが、
(a)約0.1〜4wt%の少なくとも1つの染料と;
(b)約3〜20wt%の少なくとも1つのジオール
と;(c)約5wt%以下の少なくとも1つのグリコー
ルエーテルと;(d)約3〜9wt%の2−ピロリドン
と;(e)界面活性剤、緩衝剤及びバイオサイドから成
る群から選択される約0.5〜5wt%の少なくとも1
つと;(f)約3〜11wt%の少なくとも1つの無機
塩と;(g)約5〜10ppmの少なくとも1つの粘弾
性ポリマーと;(h)残余水とを含んで成る〔1〕記載
のインクジェット用インク。
【0049】また、本発明は〔10〕(a)請求項1の
インクジェット用インクを調製するステップと;(b)
インクジェットペンにより印刷媒体上に前記インクジェ
ット用インクをプリントするステップとから成り、その
結果、前記インクジェット用インクによるエーロゾル生
成が実質的に低減されることを特徴とする、インクジェ
ット印刷におけるエーロゾルの低減法に関する。
【0050】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、インク
ジェット印刷に用いるインクの特性、特に粘性を適切な
ものにコントロールすることによって、インクジェット
印刷中のエーロゾルの発生を実質上低減もしくは排除す
ることができ、この結果、印刷品質を向上させることが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1〜図5は、熱インクジェット用ペンにおけ
る噴射チャンバーの断面図であって、噴射されるインク
の時間的事象順序を描写すると共に、集合的にエーロゾ
ルとして知られているブレイクオフ残余に分裂すること
がある尾部の進化段階を示しており、図1はその最初の
段階を示している。
【図2】図1の後の段階を示す。
【図3】図2の後の段階を示す。
【図4】図3の後の段階を示す。
【図5】最終段階を示す。
【符号の説明】
10 噴射抵抗体 12 オリフィスuence)を描写したものである。
図は、1つの10と、 14 オリフィス板 16 基板 18a,18b 障壁 20 噴射チャンバー 22 インク 22A インクの頭部 22B インクの尾部 26 インクの頭部/尾部アセンブリ 28 印刷媒体 30 インクのブレイクオフ残余

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも1つの染料と水性ベースの媒
    質から成るインクジェット用インクであって、少なくと
    も1つの粘弾性ポリマーを含有させることにより印刷中
    のエーロゾル発生の実質的低減を示すインクジェット用
    インク。
  2. 【請求項2】(a)請求項1のインクジェット用インク
    を調製するステップと; (b)インクジェットペンにより印刷媒体上に前記イン
    クジェット用インクをプリントするステップとから成
    り、その結果、前記インクジェット用インクによるエー
    ロゾル生成が実質的に低減されることを特徴とする、イ
    ンクジェット印刷におけるエーロゾルの低減法。
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