JPH09169901A - ポリカーボネート系樹脂溶液組成物およびフィルムの製造方法 - Google Patents

ポリカーボネート系樹脂溶液組成物およびフィルムの製造方法

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JPH09169901A
JPH09169901A JP33052395A JP33052395A JPH09169901A JP H09169901 A JPH09169901 A JP H09169901A JP 33052395 A JP33052395 A JP 33052395A JP 33052395 A JP33052395 A JP 33052395A JP H09169901 A JPH09169901 A JP H09169901A
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JP
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film
polycarbonate
weight
solvent
polycarbonate resin
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JP33052395A
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Hideaki Nitta
英昭 新田
Tamiaki Nagoshi
民明 名越
Kaoru Iwata
薫 岩田
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Teijin Ltd
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Teijin Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、支持基板からの剥離性の良好な、
従って表面性、透明性、光学均質性に優れたポリカーボ
ネート系フイルムを製造するのに有用な溶液組成物およ
びポリカーボネート系フイルムの製造方法を提供するこ
とを目的とする。 【解決手段】 本発明は、1,3−ジオキソランを60
重量%以上含有し、ポリカーボネート系樹脂を溶解し得
る溶媒(a)、炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状の
脂肪族アルコール(b)、およびポリカーボネート系樹
脂(c)とからなるポリカーボネート系樹脂溶液組成物
であって、上記溶媒(a)と上記脂肪族アルコール
(b)とからなる溶媒系の全体15〜90重量部に対
し、ポリカーボネート系樹脂(c)10重量部を含み、
かつ炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状の脂肪族アル
コール(b)の量が、上記溶媒系全体の0.5〜5重量
%であることを特徴とするポリカーボネート系樹脂溶液
組成物および該組成物を用いたポリカーボネート系フイ
ルムの製造方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリカーボネート系樹
脂溶液組成物、およびそれから得られるポリカーボネー
ト系フィルムの製造方法に関する。さらに詳しくは、表
示素子などの光学用途あるいは電気・電子機器用途に有
用なポリカーボネート系フイルムを溶液流延法(キャス
テイング法)により連続製膜する際に、半乾燥状態にあ
る流延フィルムを支持基板から剥離する際の剥離性に優
れた、従って表面性、透明性、光学均質性の良好なポリ
カーボネート系フィルムを与える安定な溶液組成物、お
よびそれを用いた該フィルムの製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】近年、液晶表示装置が消費電力が少な
く、かつ画像品質に優れている点から注目を浴び実用化
が進められている。これらの液晶表示装置においては、
偏光板、保護層、位相差板および電極基板などに高分子
フイルムが使用されている。
【0003】その内、高分子電極基板すなわちプラスチ
ック基板は、液晶表示装置の軽薄化のために従来のガラ
ス基板の代わり用いられるもので、透過する偏光を液晶
層に正確に伝えるために極めて高い光学等方性と均質
性、および表面性が求められる。具体的には表面厚み斑
5μm以下、位相差10nm以下、光学軸配向±10°
以下が要求される。ここで光学軸配向とは、フィルム面
内での屈折率が最大となる方向、すなわち遅相軸の向き
を表す。さらに透明電極の製膜や配向膜形成など加工時
に加わる熱に耐えるだけの耐熱性が求められる。
【0004】そのために未延伸のポリカーボネートフイ
ルム、ポリアリレートフイルムなどが用いられ、耐熱性
の観点からは芳香族ポリエーテルスルホンからなるフィ
ルムも有望視されている。これらの内で特にポリカーボ
ネートフィルムは光学的特性、経済的観点からよく使用
されている。
【0005】しかしながら、ポリカーボネートは芳香族
基を分子内に含むために分極率が高く、従ってわずかな
分子配向によってもポリカーボネートフィルムに光学異
方性を生じる欠点を有している。かかる観点から、分子
配向を極力抑え、光学等方性に優れたポリカーボネート
フィルムを製膜する技術の開発が重要な課題となってい
る。
【0006】一方、位相差フイルムは、STN型液晶表
示素子やTN型液晶表示素子において画像の視認性を向
上させるために用いられるものであり、液晶層を透過し
た楕円偏光を直線偏光に変換する役割を担っている。こ
れらの素材として主として一軸延伸したポリカーボネー
トフイルムやポリビニルアルコールフイルムが用いられ
ている。
【0007】先に述べたようにポリカーボネートは芳香
族基を分子内に含むために分極率が高く、フイルムを一
軸延伸して分子配向させることにより光学異方性が得ら
れやすい。そのために位相差フイルムに要求される位相
差をわずかな延伸で得られる点が有利であるが、その反
面、光学的に均質な配向フイルムを得ることが難しい。
かかる配向フイルムを得るためには、未延伸フイルム
(原反フイルム)の段階で光学的に高度に等方性を有す
るフイルムを用いる必要があり、具体的には表面厚み斑
2μm以下、位相差30nm以下、光学軸配向±1°以
下が要求される。
【0008】このような厳しい要求を達成するために、
液晶表示装置等の光学用途に用いられるポリカーボネー
トフィルムの製膜法としては、現在、溶液流延法(キャ
スティング法)が採用されている。溶液流延法とは溶液
組成物(ドープ)を支持基板上に流延した後、加熱して
大部分の溶媒を除去して自立性のあるフィルムとしてか
ら支持基板から剥離し、さらに加熱乾燥して残りの溶媒
を除去するフィルム製膜法である。
【0009】溶媒としては、ポリカーボネート樹脂に対
する溶解性、ドープ安定性が高いことなどから通常塩化
メチレンが使われているが、塩化メチレンは環境問題に
対する懸念から、近年世界的に使用を抑制する動きにあ
る。このような状況を鑑みて我々は非ハロゲン系溶媒か
らの製膜技術の開発に取り組み、1,3−ジオキソラン
からなるポリカーボネート溶液組成物が、溶液流延法に
よるポリカーボネートフィルムの製造に極めて有効であ
ることを見い出し、先に提案した。
【0010】しかしこの検討過程で、1,3−ジオキソ
ランを主たる溶媒とするポリカーボネート系フィルムの
製膜では、通常支持基板として用いられる金属板に対す
る密着性が高い場合があることが分かった。ドープ流延
後、加熱して大部分の溶媒を除いた半乾燥状態のフィル
ムを基板から剥離する際、条件によっては、密着性が高
く剥離性が悪いことがある。剥離強度が高いためにフィ
ルムに剥離筋、剥離傷が入ったり、フィルムがある一部
分で引き延ばされ、分子配向あるいは白化したりして、
液晶表示装置用途に求められる光学等方性、均質性が高
く、表面性の良好なフィルムを得ることが困難となる場
合がある。
【0011】かかる課題を解決する手段として容易に考
えられるのは、ドープにフッ素系、シリコン系、ステア
リン酸系等の離型剤を添加することである。しかしなが
らこれらの離型剤はフィルム製膜後もフィルム中に残存
するため、フィルムのガラス転移点の低下が避けられな
い。また離型剤の析出によりフィルムが白化することが
ある。さらには離型剤の入ったフィルムを液晶表示装置
用途に用いる場合には、後加工工程における他部材との
接着性の低下が懸念され好ましくない。
【0012】以上のことから1,3−ジオキソランを主
たる溶媒とするポリカーボネート系フィルムの溶液流延
法に関して、フィルム物性は損なうことなく流延フィル
ムの支持基板からの剥離性を改善する方法が求められて
いる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、1,
3−ジオキソランを主たる溶媒とするポリカーボネート
系フィルムの溶液流延法において、流延フィルムの支持
基板からの剥離性の良好な、従って表面性、透明性、光
学均質性に優れたポリカーボネート系フイルムを製造す
る方法を提供することにある。また、そのためのポリカ
ーボネート系樹脂溶液組成物を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決するために鋭意検討した結果、低級脂肪族アルコー
ルを少量含んだポリカーボネート系樹脂溶液組成物を用
いると、流延フィルムの支持基板からの剥離性が良好で
あり、従って表面性、透明性、光学均質性に優れたポリ
カーボネート系フィルムが得られることを見いだし、本
発明に到達した。
【0015】すなわち本発明は、1,3−ジオキソラン
を60重量%以上含有し、ポリカーボネート系樹脂を溶
解し得る溶媒(a)、炭素数1〜6の直鎖状または分岐
鎖状の脂肪族アルコール(b)およびポリカーボネート
系樹脂(c)とからなるポリカーボネート系樹脂溶液組
成物であって、上記溶媒(a)と上記脂肪族アルコール
(b)とからなる溶媒系の全体15〜90重量部に対
し、ポリカーボネート系樹脂(c)10重量部を含み、
かつ炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状の脂肪族アル
コール(b)の量が、上記溶媒系全体の0.5〜5重量
%であることを特徴とするポリカーボネート系樹脂溶液
組成物である。
【0016】また本発明は、(1)上記ポリカーボネー
ト系樹脂溶液組成物を支持基板上に流延し、そして
(2)溶媒を含む流延フィルムを加熱して溶媒を蒸発さ
せることを特徴とするポリカーボネート系フィルムの製
造方法である。
【0017】以下に本発明について詳述する。
【0018】本発明で用いられるポリカーボネート系樹
脂(c)について特に制約はない。希望するフィルムの
諸特性が得られるポリカーボネート系樹脂であれば特に
制約はない。一般に、ポリカーボネートと総称される高
分子材料は、その合成手法において重縮合反応が用いら
れて主鎖が炭酸結合で結ばれているものを総称するが、
これらの内でも一般に、ビスフェノール誘導体と、ホス
ゲンあるいはジフェニルカーボネートから重縮合反応に
より得られるものを意味する。
【0019】通常、経済性および物性面からビスフェノ
ールAと呼称されている2,2−ビス(4−ヒドロキシ
フェニル)プロパンをビスフェノール成分とする繰り返
し単位で表される芳香族ポリカーボネートが好ましく使
用されるが、適宜各種ビスフェノール誘導体を選択する
ことで、ポリカーボネート共重合体を構成することが出
来る。
【0020】かかる共重合成分としてこのビスフェノー
ルA以外に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、
1、1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサ
ン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレ
ン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,
3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4
−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2
−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−フェニルエタ
ン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,
1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス
(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス
(4−ヒドロキシフェニル)サルファイド、ビス(4−
ヒドロキシフェニル)スルフォン等をあげることが出来
る。さらに、これらのフェニル基の水素基が一部メチル
基やハロゲン基で置換されているものも含む。
【0021】また、一部にテレフタル酸および/または
イソフタル酸成分を含むポリエステルカーボネートを使
用することも可能である。このような構成単位をビスフ
ェノールAからなるポリカーボネートの構成成分の一部
に使用することによりポリカーボネートの性質、例えば
耐熱性、溶解性を改良することが出来るが、このような
共重合体についても本発明は有効である。
【0022】本発明において用いられるポリカーボネー
ト系樹脂(c)の分子量は、一般に濃度0.7g/dL
の塩化メチレン溶液中20℃での粘度測定から求めた粘
度平均分子量で10,000以上200,000以下、
好ましくは20,000以上120,000以下の範囲
が好適に用いられる。粘度平均分子量が10,000よ
り低い樹脂を使用すると得られるフィルムの機械的強度
が不足する場合があり、また200,000以上の高分
子量になるとドープ粘度が高くなりすぎて取り扱い上問
題を生じるので好ましくない。
【0023】本発明における溶媒系は、1,3−ジオキ
ソランを60重量%以上含有し、ポリカーボネート系樹
脂を溶解し得る溶媒(a)と、炭素数1〜6の直鎖上ま
たは分岐鎖状の脂肪族アルコール(b)とからなる。本
発明者は先に、ポリカーボネート系樹脂組成物の溶媒と
して、ポリカーボネート系樹脂に対する高濃度溶解性、
ドープ安定性、製膜性の観点から1,3−ジオキソラン
が優れていることを見い出した。
【0024】本発明における1,3−ジオキソランを6
0重量%以上含有し、ポリカーボネート系樹脂を溶解し
得る溶媒(a)は、1,3−ジオキソランを溶媒全体の
60重量%以上、好ましくは70重量%以上含有するこ
とが好ましく、1,3−ジオキソランが100重量%で
あることがより好ましい。1,3−ジオキソランが60
重量%よりも少ないとポリカーボネート系樹脂を高濃度
に溶解しにくくなり、得られるドープの安定性も低くな
る。また製膜したフィルムが白化しやすくなる。
【0025】他の溶媒を使用する場合は、その種類には
特に限定はなく、効果を勘案して用いればよい。ここで
いう効果とは、溶解性や安定性を犠牲にしない範囲で溶
媒を混合することによる、たとえば溶液流延法により製
膜したフイルムの表面性の改善(レベリング効果)、蒸
発速度や系の粘度調節、結晶化抑制効果などである。こ
れらの効果の度合により混合する溶媒の種類や添加量を
決定すればよく、また混合する溶媒として1種または2
種以上用いてもかまわない。
【0026】好適に用いられる溶媒としては1,4−ジ
オキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル系溶
媒、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、アセト
ン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケト
ン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶
媒、エチレングリコールジメチルエーテル、メトキシエ
チルアセテートなどのエーテル系溶媒が挙げられる。
【0027】1,3−ジオキソランを60重量%以上含
有する溶媒(a)の量は、上記溶媒系全体の99.5〜
95重量%、好ましくは99〜97重量%である。
【0028】本発明によれば、ポリカーボネート系樹脂
(c)を溶解させた溶液組成物に、炭素数1〜6の直鎖
上または分岐鎖状の脂脂肪族アルコール(b)を少量含
有させると、驚くべきことに支持基板からの剥離性が著
しく向上することを見い出した。
【0029】かかるアルコールとしては、炭素数1〜6
の直鎖状または分岐した脂肪族アルコール、好ましくは
その沸点が75〜140℃の脂肪族アルコールが挙げら
れる。
【0030】剥離性向上の効果発現のためには、1,3
−ジオキソランの沸点75℃よりも高い沸点のアルコー
ルが好ましいが、炭素数7以上のアルコールでは高沸点
になりすぎるため、フィルム製膜後も残留しやくすく、
また該アルコールを含む溶媒系のポリカーボネート系樹
脂(c)に対する溶解性が低くなり、ドープの白濁(安
定性の低下)、製膜フィルムの白化が起こりやすくなり
好ましくない。
【0031】好適に用いられる脂肪族アルコールの具体
例として、エタノール、n−プロパノール、イソプロパ
ノール、n−ブタノール、イソブタノール、2−ブタノ
ール、ターシャリーブタノール、n−ペンタノール、2
−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−
ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、3−メチル
−2−ブタノール、ネオペンチルアルコール等が挙げら
れる。これらの脂肪族アルコールは単独で加えても良い
し、2種類以上組み合わせても何ら問題はない。
【0032】炭素数1〜6の脂肪族アルコール(b)の
添加量は、慎重に選択されなければならない。これらは
ポリカーボネート系樹脂に対する溶解性には全く乏しい
完全な貧溶媒である。従ってあまり多く加えると、溶解
性、ドープ安定性の低下、および製膜時にポリマーの析
出あるいは結晶化によるフィルムの白化等が起こるた
め、満足すべき剥離性が得られる最少量とすべきであ
る。
【0033】必要な添加量はアルコールの種類により異
なるが、一般には全溶媒量、すなわち1,3−ジオキソ
ランを主体とする上記溶媒(a)と、炭素数1〜6の上
記脂肪族アルコール(b)とからなる溶媒系の全量に対
して上記アルコール(b)が0.5〜5重量%、好まし
くは1〜3重量%の範囲が好適に用いられる。含有量が
5重量%を超えると該溶媒のポリマーに対する溶解性、
ドープ安定性が低下するので好ましくなく、0.5重量
%以下では剥離性改善の効果に乏しくなる。
【0034】本発明の溶液組成物は、結果としてヘイズ
の低い透明な溶液が得られればいかなる方法で調製して
もよい。あらかじめ、ある溶媒に溶解させたポリカーボ
ネート系樹脂溶液に、上記アルコールを所定量添加して
もよいし、かかるアルコールを所定量添加した1,3−
ジオキソランを主とする溶媒系にポリカーボネート系樹
脂を溶解させてもよい。ただ先にも述べた様にアルコー
ル自体は該ポリマーに対する溶解性には全く乏しいた
め、前者の方法ではポリマーの析出によるドープ白濁の
恐れがあり、後者の、あらかじめアルコールを1,3−
ジオキソランに添加しておき、それからポリカーボネー
ト系樹脂を溶解させる方法が好ましい。
【0035】調製したドープ中に不純物、微結晶などの
不溶物、浮遊物がある場合、あるいはドープにヘーズが
認められる場合には、濾過などの処理によりこれらを取
り除かなければならない。かかる処理を実施しないと製
膜したフィルムの光学特性を悪化させることがあり、ま
たドープ自体の保存安定性を低下させることがある。一
般に溶液流延法ではドープの濾過工程は必須であり、こ
の時点で微少な不純物等を取り除けることが溶融押し出
し法に対する利点の一つである。
【0036】本発明のドープは加温状態で保存すること
が、ドープ安定性の点から好ましい。その温度としては
好ましくは30〜75℃、より好ましくは40〜70℃
の範囲である。保存温度が30℃より低いとポリマーの
析出、あるいは結晶化によるドープの白化が早く起こる
ことがあり、75℃より高いと溶媒である1,3−ジオ
キソランが沸騰する恐れがある。
【0037】本発明におけるポリカーボネート系樹脂
(c)の溶液濃度は、用いる溶媒、ポリカーボネート系
樹脂の分子量にも依存するが、ポリカーボネート系樹脂
(c)10重量部に対して溶媒系の全量が15〜90重
量部、好ましくは20〜50重量部である。
【0038】溶媒系の全量が90重量部を越えると溶液
の安定性は問題ないが、該ポリマーの実効濃度が低いた
めに好ましくないばかりか、この溶液組成物を用いて製
膜した場合、溶液粘度が低いために外部擾乱が起きやす
くなり表面平滑性が得られず好ましくない。逆に溶媒系
の全量が15重量部未満では安定なドープが得られにく
い。これらの濃度は主としてドープの安定性、溶液粘度
を勘案して決定される。
【0039】本発明においては、(1)ポリカーボネー
ト系樹脂溶液組成物(ドープ)を支持基板上に流延した
後、(2)溶媒を含む流延フイルムを加熱して溶媒を蒸
発させることによりフイルムを得る。
【0040】工業的連続製膜工程は一般に流延工程、前
乾燥工程、後乾燥工程の3工程からなる。流延工程はド
ープを平滑に流延する工程であり、前乾燥工程は流延し
たドープから大部分の溶媒を蒸発除去する工程であり、
後乾燥工程は残りの溶媒を除去する工程である。
【0041】流延工程では、ダイから押し出す方法、ド
クターブレードによる方法、リバースロールコータによ
る方法等が用いられる。工業的には、ダイからドープを
ベルト状もしくはドラム状の支持基板に連続的に押し出
す方法が最も一般的である。用いられる支持基板として
はガラス基板、ステンレスやフェロタイプ等の金属基
板、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック基板
などがある。支持基板の材質、表面状態も流延フィルム
の剥離性に大きな影響を与える。例えば表面張力の極め
て低いテフロン等でコーティングされた基板では、剥離
性は良好である。しかしながら高度に表面性、光学均質
性の優れたフィルムを工業的に連続製膜するには、表面
を鏡面仕上げした金属基板が最も一般的に用いられてお
り、本発明はそのような金属基板で効果が認められるも
のである。
【0042】一般にドープから透明かつ平滑なフイルム
を製膜するにあたり溶液粘度は極めて重要な因子であ
る。溶液粘度はポリマーの濃度、分子量および溶媒の種
類に依存するが、本発明の溶液組成物の粘度は、500
〜50,000cps、好ましくは700〜30,00
0cpsである。これを越えると溶液の流動性が下がる
ために平滑なフイルムが得られないことがあり好ましく
ない。また、それ未満では流動性が高すぎ、通常キャス
トに用いるTダイからドープが均一に吐出しにくくなっ
たり、外部擾乱のために表面に乱れが生じ均質・平滑な
フイルムが得られない。脂肪族アルコールを添加するこ
とによる溶液粘度への影響は、添加量が微量なこともあ
りわずかなものである。
【0043】本発明の流延時のドープ温度は10〜60
℃、好ましくは15〜40℃の範囲で行われる。平滑性
の優れたフィルムを得るためにはダイから押し出された
溶液が支持基板上で流延・平滑化する必要がある。この
際流延温度が高すぎると、平滑になる前に表面の乾燥・
固化が起きるため好ましくない。また温度が低すぎる
と、流延溶液が冷却されて粘度が上昇し、平滑性が得ら
れにくいばかりか結露するために好ましくない。
【0044】流延工程から乾燥工程に移る前に、ある程
度の時間乾燥を抑制しドープの流動性を確保することに
より、フィルムの表面性を高度に平滑化(レベリング効
果)することが可能である。
【0045】前乾燥工程においては、できるだけ短時間
に支持基板上に流延されたドープから大部分の溶媒を蒸
発除去する必要がある。しかしながら、急激な蒸発が起
こると発泡による変形を受けるために、乾燥条件は慎重
に選択すべきである。本発明においては、使用する溶媒
の中で最も低い沸点、好適にはその(沸点−5℃)を上
限とする範囲から乾燥を開始するのがよい。その後、逐
次的あるいは連続的に昇温して乾燥効率を上げていくこ
とが好ましい。この工程における最終段階での温度の上
限は、120℃、好ましくは100℃が採用される。こ
の工程では、残留溶媒が多い場合は25重量%も含まれ
るために、それ以上高温にすると発泡が生じるために好
ましくない。
【0046】また、必要に応じて風を送ってもよい。そ
の場合、一般には風速20m/秒以下、好ましくは15
m/秒以下の範囲が用いられる。それを越えると風の擾
乱のために平滑面が得られないために好ましくない。風
速は段階的ないしは連続的に増大させてもよいし、むし
ろ好ましい。初期の段階では風の擾乱を避けるために無
風でもよい。
【0047】この前乾燥工程ではフイルムは基板上にあ
り、工程の最後に基板から剥離される。その際に残留溶
媒量が多いとフイルムが柔らかいために変形が起き、ま
た残留溶媒が少ないと、本発明の溶液組成物からキャス
トした流延フィルムでも、支持基板との密着性が高くな
り剥離性が悪くなるため応力歪、剥離筋、剥離傷が生じ
る。従って残留溶媒量は重要な因子であり、好適には残
留溶媒量5〜25重量%、さらに好適には7〜20重量
%の範囲が選択される。
【0048】金属基板を用いた溶液流延法では一般に製
膜開始当初は剥離性良好であるが、剥離を繰り返すうち
に次第に剥離性が低下していくことが多い。この原因は
定かではないが、次第に基板表面に表面張力の高い金属
原子が多く露出してくる、あるいは極微量のポリマーが
表面に付着していき、それがいわば接着層のように働き
始める、などと推定している。この対策として定期的に
基板表面を洗浄する、例えば水で基板面を拭くなどすれ
ば剥離性は回復させることができるが、工業的な連続製
膜工程では極めてわずらわしい作業であり効率的ではな
い。本発明によれば、そのような作業をすることなく支
持基板からの流延フィルムの剥離性を良好に維持するこ
とができる。
【0049】後乾燥工程においては、基板より剥離した
フイルムをさらに乾燥し、残留溶媒量を3重量%以下、
好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量
%以下にする必要がある。残留溶媒が多いと経時的に変
形が起こったり、後加工工程で熱が加わると寸法変化、
いわゆる熱収縮が起こるためである。
【0050】一般に後乾燥工程は、工業的にはピンテン
ター方式あるいはロール懸垂方式等でフイルムを搬送し
ながら乾燥する方法が採られるが、これらの方法では乾
燥途中でフィルムに様々な力が加わる。従って液晶表示
装置用途等、光学的に高度な均質性が求められるフィル
ムの製膜では乾燥温度はフィルムの変形が生じない範囲
から選択しなくてはならない。
【0051】一般には、用いるポリカーボネート系樹脂
のガラス転移温度をTg(℃)とするとき、(Tg−1
20℃)〜Tgの範囲、好ましくは(Tg−100℃)
〜(Tg−5℃)の範囲が選ばれる。それ以上ではフイ
ルムの熱変形が起こり好ましくなく、それ以下では乾燥
速度が著しく遅くなるために好ましくない。熱変形は残
留溶媒が少なくなるにつれて起きにくくなる。従って、
該範囲内で初期に低温で、その後段階的ないしは連続的
に昇温する方法をとることが好ましい。この後乾燥工程
においては前乾燥工程と同様に送風してもよい。またフ
ィルム搬送速度は特に限定はないが一般には、0.5〜
15m/分、好ましくは1〜10m/分の範囲で行われ
る。
【0052】本発明において、上記ポリカーボネート系
フィルムを製造する際には、空気雰囲気中で乾燥を行っ
てもよいし、窒素ガス、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気
中で乾燥を実施してもよい。1,3−ジオキソランは可
燃性の溶媒であるため、溶媒の爆発限界を考慮した安全
性の面からこの不活性ガス雰囲気中での乾燥方法が好ま
しい。この場合、溶媒のガス濃度は3vol%以上が望
ましい。また不活性ガス雰囲気中の酸素濃度は10vo
l%以下が望ましい。
【0053】本発明のフィルムの厚みは、10〜300
μm、好ましくは50〜200μmの範囲である。特に
液晶表示装置を構成するプラスチック基板、位相差フィ
ルム用原反フィルムには50〜200の厚みが好んで用
いられる。これより厚いと残留溶媒を除去することが困
難であり、これより薄いと厚み斑を抑制することが困難
である。
【0054】
【発明の効果】本発明によれば、1,3−ジオキソラン
を主体とする溶媒からなるポリカーボネート系樹脂溶液
組成物中に、低級脂肪族アルコールを少量含有させるこ
とにより、溶液流延法において流延フィルムの支持基板
からの剥離性を向上させることが出来る。従って透明で
平滑なポリカーボネート系フィルムを連続的に製造する
のに非常に有利である。得られるフィルムは剥離傷、剥
離筋などのない良好な表面性、位相差が小さく位相差お
よび遅相軸のバラツキの少ない光学等方性および均質性
を有しており、液晶表示等に用いられる光学用フィル
ム、特に位相差フィルム、プラスチック基板等に有用で
ある。
【0055】
【実施例】以下に実施例により本発明を詳述する。ただ
し本発明はこれに限定されるものではない。なお実施例
で行った測定項目は以下の方法で測定した。
【0056】溶液粘度:東京計器(株)製B型粘度計B
H型を使用し、30℃で測定した。
【0057】ガラス転移温度:TA Instrume
nts製 2920型DSCを使用し、昇温速度は20
℃/分で測定した。 フィルム膜厚:アンリツ(株)製触針式膜厚計を使用し
た。 光線透過率:島津製作所(株)製紫外可視分光器(UV
−240)を使用した。 ヘイズ値:日本電色工業(株)製自動デジタルヘイズメ
ータ−UDH−20Dを使用した。 位相差および遅相軸:自動複屈折計KOBURA−21
ADH(KSシステムズ(株)製)を使用した。 残留溶媒の定量:窒素雰囲気中で180℃で16時間加
熱し、その前後の重量測定により求めた。 分子量:濃度0.7g/dLの塩化メチレン溶液中、2
0℃での希薄溶液粘度測定から求めた。
【0058】[実施例1]イソプロパノール(沸点82
℃)を1重量%含む1,3−ジオキソランとイソプロパ
ノールの混合溶媒40重量部に対して、ビスフェノール
Aからの構成単位からなるポリカーボネート樹脂[帝人
化成(株)製、パンライトC−1400、粘度平均分子
量=37,000、ガラス転移点=156℃]10重量
部を50℃で撹拌しながら溶解して、透明な粘ちょう溶
液を得た。この溶液の30℃における溶液粘度は2.6
×103 cpsであった。
【0059】この溶液を孔径5μmのフィルターを用い
て濾過した後、ドクターブレードを用いてフェロタイプ
基板上に流延した。この基板は新品のフェロタイプ板を
十分に洗浄、乾燥したものである。
【0060】流延後90℃で5分間、120℃で3分間
加熱乾燥してからフィルムを基板から剥離した。剥離性
は極めてよく、フィルム表面に剥離傷、剥離筋等は見ら
れなかった。またフィルムの白化は認められず、透明性
が高かった。なおこの剥離時点でのフィルム中の残留溶
媒量は12.2%、膜厚は103μmであった。同一基
板を用いてこの操作を繰り返し、フィルム表面に剥離
傷、剥離筋などが付くことなく剥離可能な回数を調べる
ことで剥離性を評価することにして、この場合さらに6
回繰り返したが剥離性は変化することなくいづれも良好
であった。
【0061】[実施例2]2−ブタノール(沸点100
℃)を2重量%含む1,3−ジオキソランと2−ブタノ
ールの混合溶媒40重量部に対して、実施例1で用いた
ポリカーボネート樹脂10重量部を50℃で撹拌しなが
ら溶解して、透明で粘ちょうな溶液を得た。この溶液の
30℃における溶液粘度は3.4×103 cpsであっ
た。
【0062】実施例1と同様に、ろ過後製膜して流延フ
ィルムの剥離性を調べたが、7回繰り返していづれも剥
離性良好であった。またフィルムの透明性も高かった。
【0063】[実施例3]n−ペンタノール(沸点13
7℃)を1重量%含む1,3−ジオキソランとn−ペン
タノールの混合溶媒40重量部に対して、実施例1で用
いたポリカーボネート樹脂10重量部を50℃で撹拌し
ながら溶解して、透明で粘ちょうな溶液を得た。この溶
液の30℃における溶液粘度は3.0×103 cpsで
あった。
【0064】実施例1と同様に、ろ過後製膜して剥離性
を調べたが、7回繰り返していづれも剥離性良好であっ
た。またフィルムの透明性も高かった。
【0065】[比較例1]1,3−ジオキソラン40重
量部に対して、実施例1で用いたポリカーボネート樹脂
10重量部を50℃で撹拌しながら溶解して、透明で粘
ちょうな溶液を得た。この溶液の30℃における溶液粘
度は2.7×103 cpsであった。
【0066】実施例1と同様に、ろ過後製膜して剥離性
を調べたところ、2回目までは剥離性良好であったが、
3回目からは剥離強度が高くなり、フィルム表面に多数
の剥離筋が見られた。
【0067】[比較例2]イソプロパノールを0.3重
量%含む1,3−ジオキソランとイソプロパノールの混
合溶媒40重量部に対して、実施例1で用いたポリカー
ボネート樹脂10重量部を50℃で撹拌しながら溶解し
て、透明で粘ちょうな溶液を得た。この溶液の30℃に
おける溶液粘度は2.8×103 cpsであった。
【0068】実施例1と同様に、ろ過後製膜して剥離性
を調べたところ、3回目までは剥離性良好であったが、
4回目からは剥離強度が高くなり、フィルム表面に多数
の剥離筋が見られた。
【0069】[比較例3]n−ペンタノールを6重量%
含む1,3−ジオキソラン40重量部に対して、実施例
1で用いたポリカーボネート樹脂10重量部を50℃で
撹拌しながら溶解させたが、溶解性が悪く白濁した溶液
しか得られなかった。
【0070】[実施例4]2−ペンタノール(沸点11
9℃)を1.5重量%含む1,3−ジオキソランと2−
ペンタノールの混合溶媒57重量部に対して、9,9−
ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンからなる構
成単位を10モル%、およびビスフェノールAからなる
構成単位90モル%よりなる共重合ポリカーボネート樹
脂[粘度平均分子量=62,000、ガラス転移点=1
73℃]10重量部を50℃で撹拌しながら溶解して、
透明な粘ちょう溶液を調製した。この溶液の30℃にお
ける溶液粘度は5.9×103 cpsであった。
【0071】この溶液を孔径5μmのフィルターを用い
て濾過した後、ドクターブレードを用いてフェロタイプ
基板上に流延した。この基板は実施例1で述べたよう
に、新品のフェロタイプ板を十分に洗浄、乾燥したもの
である。
【0072】流延後90℃で5分間、120℃で3分間
加熱乾燥してからフィルムを基板から剥離した。剥離性
は極めてよく、フィルム表面に剥離傷、剥離筋等は見ら
れなかった。またフィルムの白化は認められず、透明性
は高かった。なおこの剥離時点でのフィルム中の残留溶
媒量は12.8%、膜厚は105μmであった。同一基
板を用いてこの操作をさらに6回繰り返したが、流延フ
ィルムの剥離性は変化することなくいづれも良好であっ
た。
【0073】[比較例4]2−ペンタノールを6重量%
含む1,3−ジオキソランと2−ペンタノールの混合溶
媒57重量部に対して、実施例4で用いた共重合ポリカ
ーボネート樹脂10重量部を50℃で撹拌しながら溶解
して、透明で粘ちょうな溶液を得た。この溶液の30℃
における溶液粘度は6.1×103 cpsであった。
【0074】剥離性を調べるため、実施例4と同様にろ
過後フィルムを製膜したが、該フィルムの基板からの剥
離性はよいもののフィルムが白化し、透明なフィルムを
得ることが出来なかった。
【0075】[実施例5]イソブタノール(沸点108
℃)を2重量%含む1,3−ジオキソランとイソブタノ
ールの混合溶媒23重量部に対して、1,1−ビス(4
−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシク
ロヘキサンからなる構成単位57モル%と、ビスフェノ
ールAからの構成単位43モル%よりなる共重合ポリカ
ーボネート樹脂[BAYER社製、APEC−HT、粘
度平均分子量=22,000、ガラス転移点=207
℃]10重量部を50℃で撹拌しながら溶解して、透明
な粘ちょう溶液を得た。この溶液の30℃における溶液
粘度は3.4×103 cpsであった。
【0076】この溶液を孔径5μmのフィルターを用い
て濾過した後、ドクターブレードを用いてフェロタイプ
基板上に流延した。この基板は新品のフェロタイプ板を
十分に洗浄、乾燥したものである。
【0077】流延後80℃で5分間、110℃で5分間
加熱乾燥してからフィルムを基板から剥離した。剥離性
は極めてよく、フィルム表面に剥離傷、剥離筋等は見ら
れなかった。またフィルムの白化は認められず、透明性
が高かった。なおこの剥離時点でのフィルム中の残留溶
媒量は13.5%、膜厚は102μmであった。同一基
板を用いてこの操作を繰り返したが、フィルムの基板か
らの剥離性は変化することなくいづれも良好であった。
【0078】[比較例5]イソブタノールを0.2重量
%含む1,3−ジオキソランとイソブタノールの混合溶
媒23重量部に対して、実施例5で用いた共重合ポリカ
ーボネート樹脂10重量部を50℃で撹拌しながら溶解
して、透明で粘ちょうな溶液を得た。この溶液の30℃
における溶液粘度は3.5×103 cpsであった。
【0079】実施例5と同様にろ過後製膜してして剥離
性を調べたところ、4回目までは剥離性良好であった
が、5回目からは剥離強度が高くなり、フィルム表面に
多数の剥離筋が見られた。
【0080】以上の実施例、比較例を表1にまとめる。
ここで剥離回数とはフィルム表面に剥離傷、剥離筋など
が付くことなくスムーズに剥離できた回数の上限を示
す。表1から明らかなように、適正量のアルコールを添
加すると基板からの剥離性が著しく向上した。
【0081】
【表1】
【0082】[実施例6]実施例1で用いたポリカーボ
ネート溶液を用いて連続製膜試験を行った。キャスティ
ング装置は、ろ過工程を経てドープをダイからベルトへ
押し出し、ベルトが4段階に区分された前乾燥炉に接続
されている方式を採用した。
【0083】ベルトは表面を鏡面仕上げした金属基板か
らなり、その長さは18mである。また、後乾燥炉は6
室に区分されたロール懸垂方式の炉を採用した。この長
さは120mである。ベルトの搬送速度を1m/分、流
延フィルム幅を50cmに設定した。
【0084】この装置を用いて流延した後、前乾燥炉の
温度を段階的に、45℃(無風)、65℃(風速1m/
秒)、90℃(風速5m/秒)に昇温し、最後に40℃
にして冷却した。そして残留溶媒量が12重量%の自立
性のあるフィルムにした。この段階でベルトからフィル
ムを剥離して後乾燥炉に送った。
【0085】後乾燥炉では60℃、85℃、115℃、
135℃、145℃、150℃と段階的に昇温して乾燥
フィルムを得た。
【0086】ベルトからの流延フィルムの剥離性は良好
であり、得られたフィルムは剥離傷、剥離筋は認められ
ず、表面性に優れたものであった。厚みは100±1.
2μmであり、極めて均質であった。フィルム中の残留
溶媒量は0.3重量%と極めて微量であり、添加したイ
ソプロパノールもほとんど残っていなかった。このフィ
ルムのガラス転移点は152℃であり、元の樹脂とほぼ
同じであった。
【0087】また、550nmの波長における光線透過
率は90.5%、ヘイズ値は0.4%であり光学的に透
明であった。波長590nmにおける位相差は10nm
以下であり、またフィルム内でのバラツキも少なかっ
た。また遅相軸(フィルム面内で屈折率が最大となる方
向)のバラツキも±10°以下であり光学的にも均質な
フィルムであった。この連続製膜試験は24時間連続し
て行ったが、その間剥離性は良好なままであった。
【0088】[比較例6]比較例1で用いたポリカーボ
ネート溶液を用いて連続製膜試験を行った。実施例6と
同じ装置を使い同条件で製膜を行ったが、ドープの流延
を開始して3時間経過した頃から流延フィルムのベルト
からの剥離強度が高くなり剥離性が悪化していった。最
終的に乾燥したフィルムにも次第に剥離傷、剥離筋が顕
著に現れるようになった。
【0089】[実施例7]実施例5で用いた共重合ポリ
カーボネート溶液を用いて連続製膜試験を行った。製膜
装置は実施例6と同じものを使用した。ベルトの搬送速
度を1m/分、流延フィルム幅を50cmに設定した。
【0090】この装置を用いて流延した後、前乾燥炉の
温度を段階的に、45℃(無風)、65℃(風速1m/
秒)、90℃(風速5m/秒)に昇温し、最後に40℃
にして冷却した。そして残留溶媒量が12重量%の自立
性のあるフィルムにした。この段階でベルトからフィル
ムを剥離して後乾燥炉に送った。
【0091】後乾燥炉では75℃、105℃、140
℃、170℃、185℃、195℃と段階的に昇温して
乾燥フィルムを得た。ベルトからの流延フィルムの剥離
性は良好であり、得られたフィルムは剥離傷、剥離筋は
認められず、表面性に優れたものであった。厚みは10
0±1.3μmであり、極めて均質であった。フィルム
中の残留溶媒量は0.2重量%と極めて微量であり、添
加したイソブタノールもほとんど残っていなかった。こ
のフィルムのガラス転移点は204℃であり元の樹脂と
同じであった。また、550nmの波長における光線透
過率は90.7%、ヘイズ値は0.2%であり光学的に
透明であった。波長590nmにおける位相差は10n
m以下であり、またフィルム内でのバラツキも少なかっ
た。また遅相軸(フィルム面内で屈折率が最大となる方
向)のバラツキも±10°以下であり光学的にも均質な
フィルムであった。この連続製膜試験は16時間連続し
て行ったが、その間剥離性は良好なままであった。
【0092】[比較例7]比較例5で用いた共重合ポリ
カーボネート溶液を用いて連続製膜試験を行った。実施
例6と同じ装置を使い同条件で製膜を行ったが、ドープ
の流延を開始して6時間経過した頃から流延フィルムの
ベルトからの剥離強度が高くなり剥離性が悪化していっ
た。最終的に乾燥したフィルムにも次第に剥離傷、剥離
筋が顕著に現れるようになった。
【0093】[実施例8]実施例1〜3にて調製したポ
リカーボネート溶液を、密閉容器中、50℃で3日間保
存した後、該溶液の30℃における溶液粘度を再測定し
た。粘度は2.9×103 cps(実施例1の溶液)、
3.4×103 cps(実施例2の溶液)、3.0×1
3 cps(実施例3の溶液)で溶解直後と殆ど変化は
なかった。また、実施例6にて最終的に得たポリカーボ
ネートフィルムの分子量を調べたところ、粘度平均分子
量37,000であり、該ポリマー溶解前の分子量と全
く同じであった。以上のことからドープ保存中、あるい
は製膜工程の途中でポリカーボネート樹脂に分解等の変
化のないことが分かった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // B29K 69:00 B29L 7:00

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 1,3−ジオキソランを60重量%以上
    含有し、ポリカーボネート系樹脂を溶解し得る溶媒
    (a)、炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状の脂肪族
    アルコール(b)、およびポリカーボネート系樹脂
    (c)とからなるポリカーボネート系樹脂溶液組成物で
    あって、上記溶媒(a)と上記脂肪族アルコール(b)
    とからなる溶媒系の全体15〜90重量部に対し、ポリ
    カーボネート系樹脂(c)10重量部を含み、かつ炭素
    数1〜6の直鎖上または分岐鎖状の脂肪族アルコール
    (b)の量が、上記溶媒系全体の0.5〜5重量%であ
    ることを特徴とするポリカーボネート系樹脂溶液組成
    物。
  2. 【請求項2】 溶媒(a)の1,3−ジオキソラン含有
    量が100重量%である請求項1記載のポリカーボネー
    ト系樹脂溶液組成物。
  3. 【請求項3】 脂肪族アルコール(b)が、沸点75〜
    140℃の脂肪族アルコールである請求項1または請求
    項2に記載のポリカーボネート系樹脂溶液組成物。
  4. 【請求項4】 脂肪族アルコール(b)の量が、溶媒系
    全体の1〜3重量%である請求項1〜3のいずれかに記
    載のポリカーボネート系樹脂溶液組成物。
  5. 【請求項5】 ポリカーボネート系樹脂(c)の粘度平
    均分子量が、10,000以上、200,000以下で
    ある請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート
    系樹脂溶液組成物。
  6. 【請求項6】 (1)請求項1〜5のいずれかに記載の
    ポリカーボネート系樹脂溶液組成物を支持基板上に流延
    し、そして(2)溶媒を含む流延フィルムを加熱して溶
    媒を蒸発させることを特徴とするポリカーボネート系フ
    ィルムの製造方法。
  7. 【請求項7】 ポリカーボネート系樹脂溶液組成物の粘
    度が、500〜50,000cpsである請求項6記載
    のポリカーボネート系フィルムの製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2002080734A (ja) * 2000-06-23 2002-03-19 Teijin Chem Ltd ポリマーの製造方法
CN107949577A (zh) * 2015-09-07 2018-04-20 花王株式会社 改性纤维素纤维

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