JPH08302162A - ポリアリレート系樹脂溶液組成物およびフィルムの製造方法 - Google Patents

ポリアリレート系樹脂溶液組成物およびフィルムの製造方法

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JPH08302162A
JPH08302162A JP11167795A JP11167795A JPH08302162A JP H08302162 A JPH08302162 A JP H08302162A JP 11167795 A JP11167795 A JP 11167795A JP 11167795 A JP11167795 A JP 11167795A JP H08302162 A JPH08302162 A JP H08302162A
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polyarylate
film
solvent
weight
solution composition
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JP11167795A
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English (en)
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Hideaki Nitta
英昭 新田
Aritami Yonemura
有民 米村
Kaoru Iwata
薫 岩田
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Teijin Ltd
Original Assignee
Teijin Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 本発明は、光学等方性、均質性に優れ、残留
溶媒量の少ないポリアリレート系フィルムを流延法によ
り製造する際、基板からの剥離性を改善することを目的
とする。 【構成】 ポリアリレート系樹脂および主として塩化メ
チレン溶媒とからなる溶液組成物であって、これを支持
基板上に流延し、そして溶媒を含む流延フィルムを加熱
して溶媒を蒸発させてフィルムを製造する。その際、か
かる溶液組成物中に、炭素数1〜6の脂肪族アルコール
を少量含有することにより、基板からの剥離性が向上す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリアリレート系樹脂
溶液組成物、およびそれから得られるポリアリレート系
フィルムの製造方法に関する。さらに詳しくは、表示素
子などの光学用途あるいは電気・電子機器用途に有用な
ポリアリレート系フイルムを溶液流延法(キャステイン
グ法)により連続製膜する際に、半乾燥状態にある流延
フィルムを支持基板から剥離する際の剥離性に優れ、表
面性、透明性、光学均質性の良好なポリアリレート系フ
ィルムを与える安定な溶液組成物、およびそれを用いた
該フィルムの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、液晶表示装置が消費電力が少な
く、かつ画像品質に優れている点から注目を浴び実用化
が進められている。これらの液晶表示装置においては、
偏光板、保護層、位相差板および電極基板などに高分子
フイルムが使用されている。その内、高分子電極基板す
なわちプラスチック基板は、液晶表示装置の軽薄化のた
めに従来のガラス基板の代わり用いられるもので、透過
する偏光を液晶層に正確に伝えるために極めて高い光学
等方性と均質性、および表面性が求められる。具体的に
は表面厚み斑5μm以下、位相差10nm以下、光学軸
配向±10°以下が要求される。ここで光学軸配向と
は、フィルム面内での屈折率が最大となる方向、すなわ
ち遅相軸の向きを表す。さらに透明電極の製膜や配向膜
形成など加工時に加わる熱に耐えるだけの耐熱性が求め
られる。そのために未延伸のポリカーボネートフイル
ム、ポリアリレートフイルムなどが用いられるが、特に
耐熱性の観点からポリアリレートからなるフィルムが好
ましく用いられている。しかしながら、ポリアリレート
は芳香族基を分子内に含むために分極率が高く、従って
わずかな分子配向によってもポリアリレートフィルムに
光学異方性を生じる欠点を有している。
【0003】一方、位相差フイルムは、STN型液晶表
示素子やTN型液晶表示素子において画像の視認性を向
上させるために用いられるものであり、液晶層を透過し
た楕円偏光を直線偏光に変換する役割を担っている。こ
れらの素材として主として一軸延伸したポリカーボネー
トフイルムやポリビニルアルコールフイルムが用いられ
ている。最近更なる画像視認性の向上の要請から、液晶
層と一致した位相差(リタデーション)の波長分散性を
有する位相差フイルムが求められ、その一候補としてポ
リアリレートフィルムが挙げられている。先に述べたよ
うにポリアリレートは芳香族基を分子内に含むために分
極率が高く、フイルムを一軸延伸して分子配向させるこ
とにより光学異方性が得られやすい。そのために位相差
フイルムに要求される位相差をわずかな延伸で得られる
点が有利であるが、その反面、光学的に均質な配向フイ
ルムを得ることが難しい。かかる配向フイルムを得るた
めには、未延伸フイルム(原反フイルム)の段階で光学
的に高度に等方性を有するフイルムを用いる必要があ
り、具体的には表面厚み斑2μm以下、位相差30nm
以下、光学軸配向±1°以下が要求される。
【0004】このような厳しい要求を達成するために、
ポリアリレートフィルムの製膜法としては溶液流延法
(キャスティング法)が採用されいる。溶液流延法とは
溶液組成物(ドープ)を支持基板上に流延した後、加熱
して大部分の溶媒を除去して自立性のあるフィルムとし
てから支持基板から剥離し、さらに加熱乾燥して残りの
溶媒を除去するフィルム製膜法である。溶媒としてはポ
リアリレート系樹脂に対する溶解性、ドープ安定性が高
いこと、また低沸点であることなどから塩化メチレンが
もっぱら使われている。工業的には、ダイからドープを
ベルト状もしくはドラム状の支持基板に連続的に押し出
し、順次剥離していく方法が一般的であり、この場合支
持基板としては表面を鏡面仕上げした金属基板が最も一
般的に用いられている。
【0005】この塩化メチレンを溶媒として用いるポリ
アリレート系フィルムの製膜では、流延フィルムの基板
からの剥離性が次第に悪くなるという問題点がある。理
由は明らかでないが、ドープ流延開始後時間が経過する
につれ、加熱して大部分の溶媒を除いた半乾燥状態のフ
ィルムを支持基板から剥離する際の密着性が次第に高く
なり、剥離性が悪くなることが多い。剥離強度が高いた
めにフィルムに剥離筋、剥離傷が入ったり、フィルムが
ある一部分で引き延ばされ、分子配向あるいは白化した
りして、液晶表示装置用途に求められる光学等方性、均
質性が高く、表面性の良好なフィルムを得ることは極め
て困難となってしまう。定期的に基板を洗浄処理してや
れば剥離性は回復し問題はない。しかし極めてわずらわ
しい作業であり効率的ではない。またドープにフッ素
系、シリコン系、ステアリン酸系等の離型剤を添加する
ことも容易に考えられる。しかしながらこれらの離型剤
はフィルム製膜後もフィルム中に残存するため、フィル
ムのガラス転移点の低下が避けられない。また離型剤の
析出によりフィルムが白化することがある。さらには離
型剤の入ったフィルムを液晶表示装置用途に用いる場合
には、後加工工程における他部材との接着性の低下が懸
念され好ましくない。以上のことからポリアリレート系
フィルムの溶液流延法に関して、フィルム物性は損なう
ことなく流延フィルムの支持基板からの剥離性を改善す
る方法が求められていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ポリ
アリレート系フィルムの溶液流延法において、流延フィ
ルムの支持基板からの剥離性の良好な、従って表面性、
透明性、光学均質性に優れたポリアリレート系フイルム
を製造する方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決するために鋭意検討した結果、低級脂肪族アルコー
ルを少量含んだポリアリレート系樹脂溶液組成物を用い
ると、流延フィルムの支持基板からの剥離性が良好であ
り、従って表面性、透明性、光学均質性に優れたポリア
リレート系フィルムが得られることを見いだし、本発明
に到達した。
【0008】すなわち本発明は、塩化メチレンを60重
量%以上含有し、ポリアリレート系樹脂を溶解し得る溶
媒(a)、炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状の脂肪
族アルコール(b)、およびポリアリレート系樹脂とか
らなるポリアリレート系樹脂溶液組成物であって、上記
溶媒(a)15〜90重量部に対しポリアリレート系樹
脂10重量部を含み、かつ炭素数1〜6の直鎖状または
分岐鎖状の脂肪族アルコール(b)の量が、上記溶媒
(a)と(b)とからなる溶媒系全体の1〜10重量%
であることを特徴とするポリアリレート系樹脂溶液組成
物である。
【0009】また本発明は、(I)上記ポリアリレート
系樹脂溶液組成物を支持基板上に流延し、(II)溶媒を含
む流延フィルムを加熱して溶媒を蒸発させることを特徴
とするポリアリレート系フィルムの製造方法である。
【0010】以下に本発明について詳述する。
【0011】本発明において用いられるポリアリレート
系樹脂は、ビスフェノール成分と芳香族ジカルボン酸成
分とのポリエステルから主としてなるポリマーである。
かかるポリアリレート系樹脂としては、下記式(1)で
表される繰り返し単位を全体の50モル%以上、好まし
くは75モル%以上、特に好ましくは100モル%含有
するものが、得られるフィルムの透明性が良好であり好
ましい。
【0012】
【化3】
【0013】[式(1)中、Arは炭素数6〜12の芳
香族炭化水素基であり、Xは炭素数1〜15の二価の炭
化水素基、スルホン基およびスルフィド基からなる群か
ら選ばれる少なくとも一種の基である。R1 〜R4 は同
一または異なり、水素、ハロゲン、または炭素数1〜5
の炭化水素基である。] ここで上記式(1)において好適なArは炭素数6〜1
0の芳香族炭化水素基で、具体的にはm−フェニレン
基、p−フェニレン基、ナフチレン基が挙げられ、特に
好ましいのはm−フェニレン基、p−フェニレン基であ
る。
【0014】Xは炭素数1〜15の二価の炭化水素基、
スルホン基およびスルフィド基からなる群から選ばれる
少なくとも一種の基であり、詳しくは炭素数1〜15の
二価の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基、アラアル
キレン基、スルホン基、およびスルフィド基からなる群
より選ばれる。好適には炭素数1〜10の二価の脂肪族
炭化水素基、脂環族炭化水素基、およびアラアルキレン
基である。具体的にはメチレン基、1,1−エチレン
基、2,2−プロピレン基、2,2−ブチレン基、4−
メチル−2,2−ペンチレン基などの脂肪族炭化水素
基、1,1−シクロヘキシレン基、3,3,5−トリメ
チル−1,1−シクロヘキシレン基などの脂環族炭化水
素基、1−フェニル−1,1−エチレン基、ジフェニル
メチレン基、1,1−フルオレン基などのアラアルキレ
ン基が例示できる。これらの中で特に2,2−プロピレ
ン基が好ましい。
【0015】R1 〜R4 は同一または異なり、水素、ハ
ロゲン、または炭素数1〜5の炭化水素基であるが、好
ましくは水素、臭素またはメチル基である。
【0016】これらのポリアリレート系樹脂の中で、使
用原料の経済性、得られるポリマーの物性等の面から最
も広く使われているものは、ビスフェノールAと呼称さ
れている2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロ
パンをビスフェノール成分とし、テレフタル酸および/
またはイソフタル酸を芳香族ジカルボン酸成分とする下
記繰り返し単位から主としてなるものである。
【0017】
【化4】
【0018】もちろん本発明のポリアリレート系樹脂
は、2種類以上の異なるビスフェノール成分を含む共重
合体であってもよい。共重合体にすることにより、ポリ
マーの溶解性、ドープ安定性が向上する場合が多く、本
発明の溶液流延法への用途には好適である。
【0019】上記ポリアリレート系樹脂は、下記式
(2)で表される繰り返し単位を50モル%以下、好ま
しくは25モル%以下含有してなるポリエステルカーボ
ネートであってもよい。
【0020】
【化5】
【0021】[式(2)中、Yは前記式(1)中のXと
同義である。R5 〜R8 は同一または異なり、水素、ハ
ロゲン、炭素数1〜5の炭化水素基である。] 上記式(2)において、Yは前記式(1)中のXと同義
であり、好適には炭素数1〜10の二価の脂肪族炭化水
素基、脂環族炭化水素基、およびアラアルキレン基から
なる群から選ばれる。具体的にはメチレン基、1,1−
エチレン基、2,2−プロピレン基、2,2−ブチレン
基、4−メチル−2,2−ペンチレン基などの脂肪族炭
化水素基、1,1−シクロヘキシレン基、3,3,5−
トリメチル−1,1−シクロヘキシレン基などの脂環族
炭化水素基、1−フェニル−1,1−エチレン基、ジフ
ェニルメチレン基、1,1−フルオレン基などのアラア
ルキレン基が例示できる。これらの中で特に2,2−プ
ロピレン基が好ましい。
【0022】R5 〜R8 は同一または異なり、水素、ハ
ロゲン、または炭素数1〜5の炭化水素基であるが、好
ましくは水素、臭素またはメチル基である。
【0023】本発明で用いるポリアリレート系樹脂は、
上記式(1)および上記式(2)で表される繰り返し単
位からなる共重合体であってもよいし、混合物であって
もよい。
【0024】上記ポリアリレート系樹脂は通常、界面重
縮合、溶融重縮合あるいは溶液重縮合などの公知の方法
により合成されるが、主鎖の芳香族基がエステル結合で
結ばれる上記ポリアリレート系樹脂は、得られるポリマ
ーの着色が少ない点で界面重縮合で得られるものが好ま
しい。例えば、アルカリ水溶液に溶解させたビスフェノ
ール類と塩化メチレンに溶解させた芳香族ジカルボン酸
ジクロライド類とを、界面移動触媒存在下で接触させる
ことにより重合することができる。また、上記式(1)
および(2)からなる共重合体は、この界面重縮合法に
より得ることができるが、かかる式(1)および式
(2)で表される繰り返し単位からなるそれぞれのポリ
マーを溶融混練することにより、所望のポリアリレート
系樹脂を得ることもできる。
【0025】本発明において用いられるポリアリレート
系樹脂の分子量は、GPCで測定したポリスチレン換算
の数平均分子量で10,000以上100,000以
下、好ましくは15,000以上70,000以下であ
る。かかる分子量が10,000より小さいと丈夫なフ
ィルムが得られず、また100,000を超えるとポリ
マーが得にくいばかりか溶解性が低下するために好まし
くない。
【0026】本発明において、ポリアリレート系樹脂溶
液組成物(ドープ)に用いる溶媒の60重量%以上を塩
化メチレンが占めるわけであるが、好ましくは塩化メチ
レンを70重量%以上、より好ましくは添加する脂肪族
アルコール以外は全て塩化メチレンからなる溶媒であ
る。塩化メチレンが60重量%よりも少ないとポリアリ
レート系樹脂を高濃度に溶解しにくくなり、得られるド
ープの安定性も低くなる。また得られるフィルムが白化
しやすくなる。他の溶媒を使用する場合は特に限定はな
く、効果を勘案して用いればよい。ここでいう効果と
は、溶解性や安定性を犠牲にしない範囲で溶媒を混合す
ることによる、例えば溶液流延法により製膜したフィル
ムの表面性の改善(レベリング効果)、蒸発速度や系の
粘度調節、結晶化抑制効果などである。これらの効果の
度合いにより混合する溶媒の種類や添加量を決定すれば
よく、また混合する溶媒として1種または2種以上用い
てもかまわない。好適に用いられる他の溶媒としてはク
ロロホルム、1,2−ジクロロエタンなどのハロゲン系
溶媒、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶媒、アセ
トン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケ
トン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系
溶媒、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、
1,4−ジオキサンなどの環状エーテル系の溶媒、エチ
レングリコールジメチルエーテル、メトキシエチルアセ
テートなどのエーテル系溶媒が挙げられる。
【0027】剥離性の改善効果の面からは水もまたその
作用を示すが、塩化メチレンの場合には、水は塩化メチ
レンとは殆ど混ざり合わない、水が存在すると塩化メチ
レンの分解による塩化水素の発生を無視することができ
ず使用する装置の金属部分に錆や腐食を発生させること
がある等の問題がある。よってアルコールが好適に用い
られる。本発明におけるアルコールとしては、炭素数1
〜6、好ましくは1〜4、より好ましくは2〜4の鎖
状、あるいは分岐した脂肪族アルコールが好ましい。具
体的にはメタノール、エタノール、イソプロパノール、
ターシャリーブタノールなどが挙げられる。これらのう
ちエタノール、イソプロパノール、ターシャリーブタノ
ールは水とほぼ同等の高い効果が得られる。理由は明ら
かでないが溶媒の沸点、すなわち乾燥工程での飛び易さ
が関係しているものと推測している。それ以上の高級ア
ルコールは、高沸点であるためフィルム製膜後も残留し
やすくなるので好ましくない。これらのアルコールは単
独で加えても良いし、2種類以上組み合わせても何ら問
題はない。
【0028】アルコールの添加量は慎重に選択されなけ
ればならない。アルコールはポリアリレート系樹脂に対
する溶解性には全く乏しい完全な貧溶媒である。従って
あまり多く加えると、ポリマーに対する溶解性、ドープ
安定性の低下、および製膜時にポリマー析出によるフィ
ルムの白化等が起こるため、満足すべき剥離性が得られ
る最少量とすべきである。全溶媒量、すなわち塩化メチ
レンを主体とする上記溶媒(a)と、炭素数1〜6の上
記アルコール(b)とからなる溶媒系の全量に対して上
記アルコール(b)が1〜10重量%、好ましくは1〜
8重量%、さらに好ましくは1.5〜5重量%の範囲が
好適に用いられる。含有量が10重量%を超えると該溶
媒のポリマーに対する溶解性、ドープ安定性が低下する
ので好ましくなく、1重量%以下では剥離性改善の効果
に乏しくなる。
【0029】本発明の溶液組成物は、結果としてヘイズ
の低い透明な溶液が得られればいかなる方法で調製して
もよい。あらかじめある溶媒に溶解させたポリアリレー
ト系樹脂溶液に、上記アルコールを所定量添加してもよ
いし、かかるアルコールを所定量添加した塩化メチレン
を主とする溶媒系にポリアリレート系樹脂を溶解させて
もよい。ただ先にも述べたようにアルコール自体は該ポ
リマーに対する溶解性には全く乏しいため、前者の方法
ではポリマーの析出によるドープ白濁の恐れがあり、後
者の、あらかじめアルコールを塩化メチレンに添加して
おき、それからポリアリレート系樹脂を溶解させる方法
が好ましい。
【0030】調製したドープ中に不純物、微結晶などの
不溶物、浮遊物がある場合、あるいはドープにヘーズが
認められる場合には、濾過などの処理によりこれらを取
り除かなければならない。かかる処理を実施しないと製
膜したフィルムの光学特性を悪化させることがあり、ま
たドープ自体の保存安定性を低下させることがある。一
般に溶液流延法ではドープの濾過工程は必須であり、こ
の時点で微少な不純物等を取り除けることが溶融押し出
し法に対する利点の一つである。
【0031】本発明におけるポリアリレート系樹脂の溶
液濃度は、用いる溶媒、ポリアリレート系樹脂の分子量
にも依存するが、ポリアリレート系樹脂10重量部に対
して溶媒量が15〜90重量部、好ましくは20〜50
重量部である。溶媒量がこれを越えると溶液の安定性は
問題ないが、該ポリマーの実効濃度が低いために好まし
くないばかりかこの溶液組成物を用いて製膜した場合、
溶液粘度が低いために外部擾乱が起きやすくなり表面平
滑性が低下し好ましくない。逆に溶媒量がこれ未満では
安定なドープが得られにくい。これらの濃度は主として
ドープの安定性、溶液粘度を勘案して決定される。
【0032】本発明においては、ポリアリレート系樹脂
溶液組成物(ドープ)を支持基板上に流延した後、加熱
して溶媒を蒸発させることによりフイルムを得る。工業
的連続製膜工程は一般に流延工程、前乾燥工程、後乾燥
工程の3工程からなる。流延工程はドープを平滑に流延
する工程であり、前乾燥工程は流延したドープから大部
分の溶媒を蒸発除去する工程であり、後乾燥工程は残り
の溶媒を除去する工程である。
【0033】流延工程では、ダイから押し出す方法、ド
クターブレードによる方法、リバースロールコータによ
る方法等が用いられる。工業的には、ダイからドープを
ベルト状もしくはドラム状の支持基板に連続的に押し出
す方法が最も一般的である。用いられる支持基板として
はガラス基板、ステンレスやフェロタイプ等の金属基
板、ポリエチレンテレフタレート等のプラスチック基板
などがある。支持基板の材質、表面状態も流延フィルム
の剥離性に大きな影響を与えることは言うまでもない。
例えば表面張力の極めて低いテフロン等でコーティング
された基板では、剥離性は良好である。しかしながら高
度に表面性、光学均質性の優れたフィルムを工業的に連
続製膜するには、表面を鏡面仕上げした金属基板が最も
一般的に用いられており、本発明はそのような金属基板
で効果が認められるものである。
【0034】一般にドープから透明かつ平滑なフイルム
を製膜するにあたり溶液粘度は極めて重要な因子であ
る。溶液粘度はポリマーの濃度、分子量および溶媒の種
類に依存するが、本発明の溶液組成物の粘度は、500
〜50,000cps、好ましくは700〜30,00
0cpsである。これを越えると溶液の流動性が下がる
ために平滑なフイルムが得られないことがあり好ましく
ない。また、それ未満では流動性が高すぎ、通常キャス
トに用いるTダイからドープが均一に吐出しにくくなっ
たり、外部擾乱のために表面に乱れが生じ均質・平滑な
フイルムが得られない。
【0035】アルコールを添加することによる溶液粘度
への影響は、添加量が微量なこともありわずかなもので
ある。一般にはアルコールを添加することにより、溶液
粘度はやや低くなる傾向にある。本発明においてアルコ
ールが存在することにより、ドープ保存中、あるいは加
熱処理する製膜時の乾燥工程中に上記式(1)中のポリ
アリレート系樹脂のエステル結合部分、または上記式
(2)中のカーボネート結合部分の加アルコール分解
(アルコリシス)が起こり分子量が低下することが懸念
されるが、溶液粘度の経時変化を調べたところ変化はな
く一定であり、また製膜後のフィルムの分子量をGPC
で測定したが変化はなかった。すなわち本発明において
はポリアリレート系樹脂の分解は起こらず、分子量が低
下することはない。
【0036】本発明の流延時のドープ温度は10〜40
℃、好ましくは15〜35℃の範囲で行われる。平滑性
の優れたフィルムを得るためにはダイから押し出された
溶液が支持基板上で流延・平滑化する必要がある。この
際流延温度が高すぎると、平滑になる前に表面の乾燥・
固化が起きるため好ましくない。また温度が低すぎる
と、流延溶液が冷却されて粘度が上昇し、平滑性が得ら
れにくいばかりか結露するために好ましくない。
【0037】流延工程から乾燥工程に移る前に、ある程
度の時間乾燥を抑制しドープの流動性を確保することに
より、フィルムの表面性を高度に平滑化(レベリング効
果)することが可能である。
【0038】前乾燥工程においては、できるだけ短時間
に支持基板上に流延されたドープから大部分の溶媒を蒸
発除去する必要がある。しかしながら、急激な蒸発が起
こると発泡による変形を受けるために、乾燥条件は慎重
に選択すべきである。本発明においては、使用する溶媒
の中で最も低い沸点、好適にはその(沸点−5℃)を上
限とする範囲から乾燥を開始するのがよい。その後、逐
次的あるいは連続的に昇温して乾燥効率を上げていくこ
とが好ましい。この工程における最終段階での温度の上
限は、120℃、好ましくは100℃が採用される。こ
の工程では、残留溶媒が多い場合は25重量%も含まれ
るために、それ以上高温にすると発泡が生じるために好
ましくない。また、必要に応じて風を送ってもよい。そ
の場合、一般には風速20m/秒以下、好ましくは15
m/秒以下の範囲が用いられる。それを越えると風の擾
乱のために平滑面が得られないために好ましくない。風
速は段階的ないしは連続的に増大させてもよいし、むし
ろ好ましい。初期の段階では風の擾乱を避けるために無
風でもよい。
【0039】この前乾燥工程ではフイルムは基板上にあ
り、工程の最後に基板から剥離される。その際に残留溶
媒量が多いとフイルムが柔らかいために変形が起き、ま
た残留溶媒が少ないと、本発明の溶液組成物からキャス
トした流延フィルムでも、支持基板との密着性が高くな
り剥離性が悪くなるため応力歪、剥離筋、剥離傷が生じ
る。従って残留溶媒量は重要な因子であり、好適には残
留溶媒量5〜25重量%、さらに好適には7〜20重量
%の範囲が選択される。先に述べたように、金属基板を
用いた溶液流延法では一般に製膜開始当初は剥離性良好
であるが、剥離を繰り返すうちに次第に剥離性が低下し
ていくことが多い。この原因は定かではないが、次第に
基板表面に表面張力の高い金属原子が多く露出してく
る、あるいは極微量のポリマーが表面に付着していき、
それがいわば接着層のように働き始める、などと推定し
ている。この対策として定期的に基板表面を洗浄する、
例えば水で基板面を拭くなどすれば剥離性は回復させる
ことができるが、工業的な連続製膜工程では極めてわず
らわしい作業であり効率的ではない。本発明によれば、
そのような作業をすることなく支持基板からの流延フィ
ルムの剥離性を良好に維持することができる。
【0040】後乾燥工程においては、基板より剥離した
フイルムをさらに乾燥し、残留溶媒量を3重量%以下、
好ましくは1重量%以下、さらに好ましくは0.5重量
%以下にする必要がある。残留溶媒が多いと経時的に変
形が起こったり、後加工工程で熱が加わると寸法変化、
いわゆる熱収縮が起こるためである。一般に後乾燥工程
は、工業的にはピンテンター方式あるいはロール懸垂方
式等でフイルムを搬送しながら乾燥する方法が採られる
が、これらの方法では乾燥途中でフィルムに様々な力が
加わる。従って液晶表示装置用途等、光学的に高度な均
質性が求められるフィルムの製膜では乾燥温度はフィル
ムの変形が生じない範囲から選択しなくてはならない。
一般には、用いるポリアリレート系樹脂のガラス転移温
度をTg(℃)とするとき、(Tg−120℃)〜Tg
の範囲、好ましくは(Tg−100℃)〜(Tg−10
℃)の範囲が選ばれる。それ以上ではフイルムの熱変形
が起こり好ましくなく、それ以下では乾燥速度が著しく
遅くなるために好ましくない。熱変形は残留溶媒が少な
くなるにつれて起きにくくなる。従って、該範囲内で初
期に低温で、その後段階的ないしは連続的に昇温する方
法をとることが好ましい。この後乾燥工程においては前
乾燥工程と同様に送風してもよい。またフィルム搬送速
度は特に限定はないが一般には、0.5〜15m/分、
好ましくは1〜10m/分の範囲で行われる。
【0041】本発明において、上記ポリアリレート系フ
ィルムを製造する際に、溶媒ガス濃度が高く、窒素ガ
ス、炭酸ガス等の不活性ガス雰囲気中で乾燥を実施して
もよい。塩化メチレンの他に可燃性の溶媒を使用する場
合は、溶媒の爆発限界を考慮した安全性の面からこの不
活性ガス雰囲気中での乾燥方法が好ましい。この場合、
溶媒のガス濃度は3vol%以上が望ましい。また不活
性ガス雰囲気中の酸素濃度は10vol%以下が望まし
い。
【0042】本発明のフィルムの厚みは、10〜300
μm、好ましくは50〜200μmの範囲である。特に
液晶表示装置を構成するプラスチック基板、位相差フィ
ルム用原反フィルムには50〜200の厚みが好んで用
いられる。これより厚いと残留溶媒を除去することが困
難であり、これより薄いと厚み斑を抑制することが困難
である。
【0043】
【発明の効果】本発明によれば、低級脂肪族アルコール
を少量含むポリアリレート系樹脂溶液をドープとして用
いることにより、溶液流延法において流延フィルムの支
持基板からの剥離性の良好な、従って表面性、透明性、
光学均質性に優れたポリアリレート系フィルムを連続的
に得ることができる。
【0044】
【実施例】以下に実施例により本発明を詳述する。ただ
し本発明はこれに限定されるものではない。なお実施例
で行った測定項目は以下の方法で測定した。
【0045】溶液粘度:東京計器(株)製B型粘度計B
H型を使用し、30℃で測定した。 ガラス転移温度:TAInstruments製 29
20型DSCを使用し、昇温速度は20℃/分で測定し
た。 フィルム膜厚:アンリツ(株)製触針式膜厚計を使用し
た。 光線透過率:島津製作所(株)製紫外可視分光器(UV
−240)を使用した。 ヘイズ値:日本電色工業(株)製自動デジタルヘイズメ
ータ−UDH−20Dを使用した。 位相差および遅相軸:自動複屈折計KOBURA−21
ADH(KSシステムズ(株)製)を使用した。 残留溶媒の定量:窒素雰囲気中で180℃で16時間加
熱し、その前後の重量測定により求めた。 分子量:東ソー(株)製GPC、HLC8020型を使
用し、ポリスチレン換算の数平均分子量を求めた。
【0046】[実施例1]エタノールを3重量%含む塩
化メチレンに、前記式(1)中のビスフェノール成分に
おいて、Xが2,2−プロピレン基、R1 〜R4 が水素
基であるものが60モル%、Xがメチレン基、R1 〜R
4 がメチル基であるものが40モル%であり、Arがp
−フェニレン基およびm−フェニレン基である(モル比
率7:3)繰り返し単位からなる共重合ポリアリレート
樹脂[数平均分子量=37,000(ポリスチレン換
算)、ガラス転移点=211℃]を25℃で撹拌しなが
ら溶解して、濃度20重量%の透明な粘ちょう溶液(組
成物)を得た。この溶液の30℃における溶液粘度は
5.1×103 cpsであった。この溶液を孔径5μm
のフィルターを用いて濾過した後、ドクターブレードを
用いてフェロタイプ基板上に流延した。この基板は新品
のフェロタイプ板を十分に洗浄、乾燥したものである。
流延後35℃で10分間、75℃で7分間加熱乾燥して
からフィルムを基板から剥離した。剥離性は極めてよ
く、フィルム表面に剥離傷、剥離筋等は見られなかっ
た。またフィルムの白化は認められず、透明性が高かっ
た。なおこの剥離時点でのフィルム中の残留溶媒量は1
5.5%、膜厚は108μmであった。同一基板を用い
てこの操作を繰り返し、フィルム表面に剥離傷、剥離筋
などが付くことなく剥離可能な回数を調べることで剥離
性を評価することにして、この場合さらに6回繰り返し
たが剥離性は変化することなくいずれも良好であった。
【0047】[実施例2]イソプロパノールを2重量%
含む塩化メチレンに、実施例1で用いた共重合ポリアリ
レート樹脂を25℃で撹拌しながら溶解して、濃度20
重量%の透明で粘ちょうな溶液を得た。この溶液の30
℃における溶液粘度は5.7×103 cpsであった。
実施例1と同様にして剥離性を調べたが、7回繰り返し
ていづれも剥離性良好であった。
【0048】[比較例1]塩化メチレンに、実施例1で
用いた共重合ポリアリレートを25℃で撹拌しながら溶
解して、濃度20%の透明で粘ちょうな溶液を得た。こ
の溶液の30℃における溶液粘度は6.4×103 cp
sであった。実施例1と同様にして剥離性を調べたとこ
ろ、3回目までは剥離性良好であったが、4回目からは
剥離強度が高くなり、フィルム表面に多数の剥離筋が見
られた。
【0049】[比較例2]エタノールを0.5重量%含
む塩化メチレンに、実施例1で用いた共重合ポリアリレ
ートを25℃で撹拌しながら溶解して、濃度20%の透
明で粘ちょうな溶液を得た。この溶液の30℃における
溶液粘度は6.2×103 cpsであった。実施例1と
同様にして剥離性を調べたところ、4回目までは剥離性
良好であったが、5回目からは剥離強度が高くなり、フ
ィルム表面に多数の剥離筋が見られた。
【0050】[比較例3]エタノールを13重量%含む
塩化メチレンに、実施例1で用いた共重合ポリアリレー
トを25℃で撹拌しながら溶解させたが、溶解性が悪く
白濁した溶液しか得られなかった。
【0051】[実施例3]エタノールを2重量%含む塩
化メチレンに、ポリアリレート系樹脂として、前記式
(1)中のXが2,2−プロピレン基、Arがp−フェ
ニレン基およびm−フェニレン基(モル比率1:1)、
1 〜R4 が水素基であり、前記式(2)中のYが2,
2−プロピレン基、R5 〜R8 が水素基である繰り返し
単位からなり、前記式(1)および(2)で表される繰
り返し単位の比率が88/12であるポリエステルカー
ボネート[数平均分子量=29,000(ポリスチレン
換算)、ガラス転移点=189℃]を25℃で撹拌しな
がら溶解して、濃度20重量%の透明な粘ちょう溶液
(組成物)を調製した。この溶液の30℃における溶液
粘度は1.9×103 cpsであった。この溶液を孔径
5μmのフィルターを用いて濾過した後、ドクターブレ
ードを用いてフェロタイプ基板上に流延した。この基板
は実施例1で述べたように、新品のフェロタイプ板を十
分に洗浄、乾燥したものである。流延後35℃で10分
間、75℃で7分間加熱乾燥してからフィルムを基板か
ら剥離した。剥離性は極めてよく、フィルム表面に剥離
傷、剥離筋等は見られなかった。またフィルムの白化は
認められず、透明性は高かった。なおこの剥離時点での
フィルム中の残留溶媒量は15.1%、膜厚は107μ
mであった。同一基板を用いてこの操作をさらに6回繰
り返したが剥離性は変化することなくいずれも良好であ
った。
【0052】[比較例4]塩化メチレンに、実施例3で
用いたポリアリレート系樹脂を25℃で撹拌しながら溶
解して、濃度20重量%の透明で粘ちょうな溶液を得
た。この溶液の30℃における溶液粘度は2.1×10
3 cpsであった。実施例3と同様にして剥離性を調べ
たところ3回目までは剥離性良好であったが、4回目か
らは剥離強度が高くなり、フィルム表面に多数の剥離筋
が見られた。
【0053】以上の実施例、比較例を表1にまとめる。
ここで剥離回数とはフィルム表面に剥離傷、剥離筋など
が付くことなくスムーズに剥離できた回数の上限を示
す。表1から明らかなように、適正量のエタノールおよ
びイソプロパノールを添加すると基板からの剥離性が著
しく向上した。
【0054】
【表1】
【0055】A:実施例1記載の共重合ポリアリレート
樹脂 B:実施例3記載のポリアリレート系(ポリエステルカ
ーボネート)樹脂 [実施例4]実施例2で用いたポリアリレート溶液を用
いて連続製膜試験を行った。キャスティング装置は、ろ
過工程を経てドープをダイからベルトへ押し出し、ベル
トが4段階に区分された前乾燥炉に接続されている方式
を採用した。ベルトは表面を鏡面仕上げした金属基板か
らなり、その長さは18mである。また、後乾燥炉は6
室に区分されたロール懸垂方式の炉を採用した。この長
さは100mである。ベルトの搬送速度を1m/分、流
延フィルム幅を50cmに設定した。
【0056】この装置を用いて流延した後、前乾燥炉の
温度を段階的に、35℃(無風)、55℃(風速1m/
秒)、75℃(風速5m/秒)に昇温し、最後に40℃
にして冷却した。そして残留溶媒量が15重量%の自立
性のあるフィルムにした。この段階でベルトからフィル
ムを剥離して後乾燥炉に送った。後乾燥炉では75℃、
100℃、130℃、155℃、175℃、185℃と
段階的に昇温して乾燥フィルムを得た。
【0057】ベルトからの流延フィルムの剥離性は良好
であり、得られたフィルムは剥離傷、剥離筋は認められ
ず、表面性に優れたものであった。厚みは100±1.
1μmであり、極めて均質であった。フィルム中の残留
溶媒量は0.1重量%と極めて微量であり、添加したイ
ソプロパノールもほとんど残っていなかった。このフィ
ルムのガラス転移点は209℃であり、元の樹脂とほぼ
同じであった。また550nmの波長における光線透過
率は90.5%、ヘイズ値は0.3%であり光学的に透
明であった。波長590nmにおける位相差は10nm
以下であり、またフィルム内でのバラツキも少なかっ
た。また遅相軸(フィルム面内で屈折率が最大となる方
向)のバラツキも±10°以下であり光学的にも均質な
フィルムであった。この連続製膜試験は16時間連続し
て行ったが、その間剥離性は良好なままであった。
【0058】[比較例5]比較例1で用いたポリアリレ
ート溶液を用いて連続製膜試験を行った。実施例4と同
じ装置を使い同条件で製膜を行ったが、ドープの流延を
開始して3時間経過した頃から流延フィルムのベルトか
らの剥離強度が高くなり剥離性が悪化していった。最終
的に乾燥したフィルムにも次第に剥離傷、剥離筋が顕著
に現れるようになった。
【0059】[実施例5]実施例3で用いたポリエステ
ルカーボネート溶液を用いて連続製膜試験を行った。製
膜装置は実施例4と同じものを使用した。ベルトの搬送
速度を1m/分、流延フィルム幅を50cmに設定し
た。この装置を用いて流延した後、前乾燥炉の温度を段
階的に、35℃(無風)、55℃(風速1m/秒)、7
5℃(風速5m/秒)に昇温し、最後に40℃にして冷
却した。そして残留溶媒量が15重量%の自立性のある
フィルムにした。この段階でベルトからフィルムを剥離
して後乾燥炉に送った。後乾燥炉では65℃、80℃、
115℃、135℃、155℃、175℃と段階的に昇
温して乾燥フィルムを得た。
【0060】ベルトからの流延フィルムの剥離性は良好
であり、得られたフィルムは剥離傷、剥離筋は認められ
ず、表面性に優れたものであった。厚みは100±1.
3μmであり、極めて均質であった。フィルム中の残留
溶媒量は0.06重量%と極めて微量であり、添加した
エタノールもほとんど残っていなかった。このフィルム
のガラス転移点は189℃であり元の樹脂と同じであっ
た。また550nmの波長における光線透過率は90.
1%、ヘイズ値は0.4%であり光学的に透明であっ
た。波長590nmにおける位相差は10nm以下であ
り、またフィルム内でのバラツキも少なかった。また遅
相軸(フィルム面内で屈折率が最大となる方向)のバラ
ツキも±10°以下であり光学的にも均質なフィルムで
あった。この連続製膜試験は16時間連続して行った
が、その間剥離性は良好なままであった。
【0061】[比較例6]比較例4で用いたポリエステ
ルカーボネート溶液を用いて連続製膜試験を行った。実
施例5と同じ装置を使い同条件で製膜を行ったが、ドー
プの流延を開始して3時間経過した頃から流延フィルム
のベルトからの剥離強度が高くなり剥離性が悪化してい
った。最終的に乾燥したフィルムにも次第に剥離傷、剥
離筋が顕著に現れるようになった。
【0062】[実施例6]実施例3にて用いた、エタノ
ールを2重量%含む塩化メチレンにポリエステルカーボ
ネートを溶解させた溶液を密閉容器中、25℃で30日
間保存した後、該溶液の30℃における溶液粘度を測定
した。粘度は2.0×103 cpsで溶解直後と殆ど変
化はなかった。また、実施例5にて最終的に得たポリエ
ステルカーボネートフィルムの分子量をGPC測定で調
べたところ、数平均分子量29,000であり、該ポリ
マー溶解前の分子量と全く同じであった。以上のことか
らドープ保存中、あるいは製膜工程の途中でポリエステ
ルカーボネート樹脂が分解していないことが分かった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 // B29K 67:00 B29L 7:00

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 塩化メチレンを60重量%以上含有し、
    ポリアリレート系樹脂を溶解し得る溶媒(a)、炭素数
    1〜6の直鎖状または分岐鎖状の脂肪族アルコール
    (b)、およびポリアリレート系樹脂とからなるポリア
    リレート系樹脂溶液組成物であって、上記溶媒(a)1
    5〜90重量部に対しポリアリレート系樹脂10重量部
    を含み、かつ炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状の脂
    肪族アルコール(b)の量が、上記溶媒(a)と(b)
    とからなる溶媒系全体の1〜10重量%であることを特
    徴とするポリアリレート系樹脂溶液組成物。
  2. 【請求項2】 溶媒(a)が塩化メチレン100重量%
    である請求項1記載のポリアリレート系樹脂溶液組成
    物。
  3. 【請求項3】 脂肪族アルコール(b)がエタノールで
    ある請求項1または2記載のポリアリレート系樹脂溶液
    組成物。
  4. 【請求項4】 脂肪族アルコール(b)がイソプロパノ
    ールである請求項1または2記載のポリアリレート系樹
    脂溶液組成物。
  5. 【請求項5】 脂肪族アルコール(b)の量が、溶媒系
    全体の1.5〜5重量%である請求項1〜4のいずれか
    に記載のポリアリレート系樹脂溶液組成物。
  6. 【請求項6】 ポリアリレート系樹脂が、下記式(1) 【化1】 [ここでXは2,2−プロピレン基であり、R1 〜R4
    は全て水素であり、Arはフェニレン基である。]で表
    される繰り返し単位から主としてなる請求項1〜5のい
    ずれかに記載のポリアリレート系樹脂溶液組成物。
  7. 【請求項7】 ポリアリレート系樹脂が、下記式(2) 【化2】 [ここでYは2,2−プロピレン基であり、R5 〜R8
    は全て水素である。]で表される繰り返し単位を50モ
    ル%以下含有する請求項1〜6のいずれかに記載のポリ
    アリレート系樹脂溶液組成物。
  8. 【請求項8】 (I)請求項1記載のポリアリレート系
    樹脂溶液組成物を支持基板上に流延し、そして(II)溶媒
    を含む流延フィルムを加熱して溶媒を蒸発させることを
    特徴とするポリアリレート系フィルムの製造方法。
  9. 【請求項9】 ポリアリレート系樹脂溶液組成物の粘度
    が、500〜50,000cpsである請求項8記載の
    ポリアリレート系フィルムの製造方法。
  10. 【請求項10】 流延時のポリアリレート系樹脂溶液組
    成物の温度が10〜40℃である請求項8または9に記
    載のポリアリレート系フィルムの製造方法。
  11. 【請求項11】 上記工程を(II)を、(i)溶媒の含有
    量が5〜25重量%になるまで溶媒を蒸発させる前乾燥
    工程と、(ii)支持基板から剥離したのち(Tg−10
    0)〜Tgの範囲(ここでTgはポリアリレート系樹脂
    のガラス転移温度である。)で段階的ないしは連続的に
    昇温し、残留溶媒量が3重量%以下となるまで乾燥させ
    る後乾燥工程とで乾燥を実施する請求項8〜10のいず
    れかに記載のポリアリレート系フィルムの製造方法。
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