JPH09157394A - 芳香族複素環ブロックコポリマーおよび芳香族複素環ブロックコポリマー成形体ならびにその製造方法 - Google Patents

芳香族複素環ブロックコポリマーおよび芳香族複素環ブロックコポリマー成形体ならびにその製造方法

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JPH09157394A
JPH09157394A JP34614995A JP34614995A JPH09157394A JP H09157394 A JPH09157394 A JP H09157394A JP 34614995 A JP34614995 A JP 34614995A JP 34614995 A JP34614995 A JP 34614995A JP H09157394 A JPH09157394 A JP H09157394A
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compound
aromatic
polymer
block copolymer
oligomer
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JP34614995A
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English (en)
Inventor
Koji Akita
浩司 秋田
Hiroto Kobayashi
啓人 小林
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Honda Motor Co Ltd
Original Assignee
Honda Motor Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 剛直芳香族ポリマーブロックが、マトリック
スブロック中に微細に均一に良好に分散し、成形段階で
の補強高分子の凝集などもなく、もって機械的強度など
に優れ、しかも効率よく成形することできるポリマー材
料を提供する。 【解決手段】 芳香族複素環を含むブロックと屈曲性の
高い芳香族アミドを含むブロックより芳香族複素環ブロ
ックコポリマーを製造する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、芳香族複素環ブロ
ックコポリマー、その製法、および成形品に関するもの
である。機械的特性などに優れ、航空機や自動車、宇宙
機器などの構造材料として使用するのに適したブロック
コポリマーに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、航空機や自動車などの軽量化の目
的で、機械的性質や耐熱性などに優れたいわゆるエンジ
ニアリングプラスチックが広く使われるようになってき
た。また、強度や剛性を向上するために、プラスチック
材とカーボンファイバーなどの高強度高弾性の繊維とを
組み合わせたFRPなどの複合材料の開発も盛んに行わ
れるようになり、広く実用に供されている。
【0003】これらの複合材の強度は、マトリックスと
なるプラスチック、および補強材として用いた繊維自身
の強度のほかに、繊維とマトリックス樹脂との界面接着
性に大きく影響されることが知られている。また、繊維
強化プリフォームへのマトリックス樹脂の含浸性の良不
良も、製造の観点のみならず製品の強度に影響してく。
このような事情から、材料として高強度、高弾性を示す
繊維または樹脂を用いても、必ずしも強度に優れた複合
材を得ることができるとはかぎらない。
【0004】そこで、芳香族ポリアミドなどのいわゆる
剛直ポリマーを、マトリックス樹脂となるポリマー中に
分子レベルまで微細に分散させることにより、いわゆる
ポリマーブレンド系複合材(分子複合材)として上記の
問題を克服し、高強度の複合材を得ようとする試みが提
案され、その研究が行われている。
【0005】分子複合材に好適に使用される芳香族高分
子としては、例えばチアゾール環、イミダゾール環、オ
キサゾール環、オキサジノン環などの複素環を繰り返し
単位内に有するものがあり、中でもチアゾール環を有す
るポリチアゾールは、その優れた機械的強度により、分
子複合材の補強高分子として有望視されている。
【0006】ところで、芳香族ポリチアゾールなどの補
強高分子とマトリックスポリマーとを単純に混合して分
子複合材を製造しようとしても、補強高分子の有する剛
直性のために、補強高分子とマトリックスポリマーとの
相溶性が一般に良好とはならず、補強高分子のマトリッ
クスポリマー中への均一な分散を得ることは難しい。補
強高分子がマトリックスポリマー中に均一に分散しなけ
れば、機械的特性に優れた分子複合材を得ることはでき
ない。そのために、これまで種々の試みがなされてき
た。
【0007】例えば、特開平1−287167号公報
は、実質的に棒状骨格を有するポリチアゾールからなる
補強高分子(A)と融着性を有するマトリックスポリマ
ー(B)とを主として含有する高分子溶液を凝固浴中に
導入し、製膜することからなる高分子複合体の製造法で
あって、上記高分子溶液が光学的異方性を呈し、上記高
分子溶液が凝固浴中に浸漬後、見掛け上、光学的等方性
相を経由したのち、凝固させる方法を開示している。
【0008】また、特公平2−7976号公報は、実質
的に棒状骨格を有するポリチアゾールからなる補強高分
子(A)と、200℃以上のガラス転移温度および50
0℃以下の流動開始温度を有し、かつガラス転移温度と
流動開始温度との間の温度でそのものを5時間以内の任
意の時間保持したとき、形成される見掛けの結晶サイズ
が25Å以下である難結晶性芳香族コポリアミドからな
るマトリックス高分子(B)とが、(A)/〔(A)+
(B)〕=0.15〜0.70(重量基準)の割合で含
有される高分子組成物を開示している。
【0009】しかしながら、特開平1−287167号
公報に示される高分子複合体の製造方法、および特公平
2−7976号公報に開示の高分子組成物を用いた複合
材の製造では、補強高分子とマトリックスポリマーとの
均一な分散がそれほど期待できず、得られる分子複合材
の機械的強度などが大きく向上しない。これは、剛直性
を示す補強高分子とマトリックスとの相溶性が良くない
ため、補強高分子のマトリックスポリマー中への分散が
充分とならないためであると思われる。
【0010】そこで、剛直芳香族ポリマーとマトリック
スポリマーとを混合するのではなく、剛直芳香族ポリマ
ーの前駆物質と、マトリックスポリマーまたはその前駆
物質とを有機溶媒中で均一に混合し、有機溶媒を除去後
に加熱して前駆物質を剛直芳香族ポリマーとする方法が
提案された(特開昭64−1760号公報および特開昭
64−1761号公報)。上記の方法によれば、機械的
強度などが比較的良好な分子複合材を製造することがで
きるようになる。
【0011】しかしながら、本発明者の研究によれば、
例えば分子複合材の熱圧成形を目的としてマトリックス
ポリマーに熱可塑性樹脂を用い、これと芳香族ポリチア
ゾール前駆物質とを用いて、上述の特開昭64−176
0号公報または特開昭64−1761号公報に示された
方法により分子複合材を製造しようとすると、マトリッ
クスポリマーと前駆物質との均一混合物の加熱成形段階
で、チアゾール閉環反応により形成される芳香族ポリチ
アゾールが凝集してしまい、その結果、分子複合材の機
械的特性が低下することが分かった。また、前駆物質と
したために相溶性が改善されたとはいえ、マトリックス
ポリマーと前駆物質との均一混合物を得るためには、有
機溶媒中で長時間攪拌しなければならないという問題も
ある。さらに、芳香族ポリチアゾールは、マトリックス
ポリマーと水素結合などの相互作用に乏しいため、得ら
れる分子複合材の伸びが小さい。これは、構造材などに
用いる場合の欠点となる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上のよう
な従来の技術的課題を背景になされたものであり、従来
の複合材のもつ、補強高分子である剛直芳香族ポリマー
と、マトリックスポリマーとの相溶性及び相分離の問題
がなく、剛直芳香族ポリマーブロックが、マトリックス
ブロック中に微細に均一に良好に分散し、成形段階での
補強高分子の凝集などもなく、もって機械的強度などに
優れ、しかも効率よく成形することできるポリマー材料
を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、芳香族複素環
を含むブロックと芳香族アミドを含むブロックよりなる
芳香族複素環ブロックコポリマー、およびその製法、す
なわち、置換または未置換で未閉環の芳香族複素環コポ
リマー前駆体を金型ホットプレス成形し、その後、型内
熱処理することにより、芳香族複素環前駆体ブロックの
閉環を行い、芳香族複素環ブロックコポリマーを得るこ
とを特徴とする芳香族複素環ブロックコポリマーの製造
方法、さらにその成形品を提供するものある。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明は、従来のように補強高分
子とマトリックス高分子を複合する複合材ではなく、両
者をブロックコポリマーとすることにより、分子中に補
強成分となる剛直鎖部位とマトリックス成分となる柔軟
な鎖部位を合わせ持たせたものである。従って、従来の
ような、マトリックスと補強成分となる剛直芳香族ポリ
マーの相溶性、相分離などの問題がない。ブロックコポ
リマー中で補強成分となる剛直鎖部位である芳香族複素
環を含むブロックは、マトリックスとなっている柔軟な
鎖部位である芳香族アミドを含むブロック中で、網目状
に均一に分散しており、もって本発明のポリマーの成形
品は、優れた機械的特性を有するのである。
【0015】このような補強成分となる剛直鎖ブロック
に含まれる芳香族複素環としては、主鎖に芳香族環およ
び縮合環を有するものが好ましい。縮合環としてはチア
ゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、オキサジ
ノン環などが挙げられる。これらは1種または2種以上
であってもよい。本発明においては、芳香族複素環ブロ
ックコポリマーの成形は、剛直鎖部位が芳香族複素環の
前駆体となっているブロックコポリマーを成形し、その
後加熱して、芳香族複素環前駆体の閉環反応を起こし、
もって最終的に芳香族複素環ブロックコポリマーとす
る。
【0016】従って、まず、縮合環としてチアゾール環
をもつポリベンゾチアゾール(PBZ−T)ブロックコ
ポリマーの前駆体について説明する。(1)PBZ−T前駆体ブロックコポリマーの製造 本発明のおいて、PBZ−Tブロックコポリマーの前駆
体は、下記式(化1)で表される。
【0017】
【化1】
【0018】(ただし、ArおよびAr′は芳香族残基
であり、Rは置換または無置換のアルキル基であり、X
はジカルボン酸誘導体の残基であり、mおよびnはとも
に整数であり、m:nは0.01:99.99〜99.
99:0.01である。)
【0019】このPBZ−T前駆体ブロックコポリマー
は、(a)チオール基の水素原子を置換または無置換の
アルキル基で置換した芳香族ジアミノジチオール化合
物、(b)芳香族ジアミノ化合物および(c)ジカルボ
ン酸誘導体とから製造することができる。
【0020】(a)チオール基の水素原子を置換または
無置換のアルキル基で置換した芳香族ジアミノジチオー
ル化合物 本発明において、(a)チオール基の水素原子を置換ま
たは無置換のアルキル基で置換した芳香族ジアミノジチ
オール化合物〔以下、化合物(a)ということがある〕
は、下記一般式(化2)(ただし、Arは芳香族残基で
あり、Rは置換または無置換のアルキル基である)で表
されるものである。
【0021】
【化2】
【0022】ここで、芳香族残基Arは、ベンゼン環に
限らず2つ以上のベンゼン環が縮合した芳香族環でもよ
く、またビフェニルなどのように2つ以上のベンゼン環
が結合したものでもよい。また、両側のアミノ基および
チオエーテル基の位置は、芳香族残基を中心として左右
対称でも点対称でもよい。この化合物(a)の具体例と
しては、(化3)などが挙げられる。
【0023】
【化3】
【0024】この化合物(a)は、芳香族残基の両側に
それぞれアミノ基およびチオール基を有する化合物であ
る芳香族ジアミノジチオール化合物より合成することが
できる。芳香族ジアミノジチオール化合物としては、上
述した(化3)に示す各化合物のアルキル基Rを水素原
子で置き換えたものを使用することができるが、この芳
香族ジアミノジチオール化合物は、劣化を防ぐためには
塩酸塩などの塩の形で使用する。
【0025】芳香族ジアミノジチオール化合物のチオー
ル基に結合するアルキル基Rは、置換または無置換のア
ルキル基である。無置換のアルキル基としては、イソプ
ロピル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、
sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられ
る。アルキル基としては、2級および3級のアルキル基
が特に好ましい。
【0026】また、置換アルキル基としては、カルボキ
シル基、エステル基、シアノ基またはベンゼン基などに
より置換されたアルキル基が好適である。なお、このよ
うな置換基を有する場合には、アルキル基は特に2級の
ものである必要はない。置換基を有するアルキル基とし
ては、例えば(化4)などが挙げられる。
【0027】
【化4】
【0028】なお、上記の6つの置換アルキル基のう
ち、上位に示す2つのエステル基を置換したものにおい
ては、エステル結合中の酸素原子に結合するアルキル基
がメチル基に限らず、炭素数2〜10のアルキル基であ
ってもよい。
【0029】特に、芳香族ジアミノジチオール化合物の
チオール基の水素原子を、シアノ基を有するアルキル基
またはエステル基を有するアルキル基で置換しておく
と、前駆体コポリマー〔上記した(化1)のポリマー〕
の、Nメチル−2−ピロリドンなどの有機溶媒への溶解
度が向上する。
【0030】上記したアルキル基は、そのハロゲン化物
であるアルキルハライドとして用い、これと、さきに述
べた芳香族ジアミノジチオール化合物(の塩)とから、
以下に示す方法により化合物(a)を合成する。なお、
ハロゲン化物としては、上記したアルキル基の臭素化
物、塩化物、ヨウ化物などが使用できる。
【0031】化合物(a)の合成では、上述した芳香族
ジアミノジチオール化合物の塩およびアルキルハライド
とをアルカリ性水溶液中で反応させる。使用するアルカ
リ性水性溶媒としては、水、または水とアルコール(エ
タノールおよび/またはメタノール)との混合溶媒に、
水酸化ナトリウムなどの塩基性塩を溶解したものを使用
することができる。溶媒をアルカリ性とすることで、芳
香族ジアミノジチオール化合物の塩を容易に溶解するこ
とができる。また、チオール基の求核性を増大させ、置
換反応を助長する。なお、アルカリ性水性溶媒のアルカ
リ濃度は、30重量%以下とするのがよい。
【0032】この置換反応は、0℃〜100℃の範囲で
行うことができる。温度が0℃未満であると、反応速度
が遅くなり好ましくない。一方、100℃を超えると、
副反応が起こってしまい好ましくない。より好ましい反
応温度は、0〜95℃である。反応時間は、特に制限は
ないが、一般に2〜24時間程度でよい。なお、反応速
度を高めるために、溶液の攪拌を行うことが好ましい。
また、アルキルハライドの量を過剰にすることで、反応
速度を高めることができる。
【0033】さらに、セチルトリメチルアンモニウムク
ロライド、臭化n−ブチルトリフェニルホスホニウム、
臭化テトラフェニルホスホニウム、18−クラウン−6
などを相間移動触媒として加えると、反応速度を高める
ことができる。このような相間移動触媒は、芳香族ジア
ミノジチオール化合物の塩とアルキルハライドとの反応
を速やかに進行させる。
【0034】以上の条件で置換反応を行うことにより、
芳香族ジアミノジチオール化合物の塩のチオール基の水
素原子をアルキル基で置換したモノマー〔化合物
(a)〕を得ることができる。
【0035】化合物(a)を合成する反応において、芳
香族ジアミノジチオール化合物の塩とアルキルハライド
との反応は以下(化5)のとおり進行する。ここで、芳
香族ジアミノジチオール化合物の塩の例として、2,5
−ジアミノ−1,4−ベンゼンジチオール二塩酸塩を用
いる。また、式中、X−Rは、アルキルハライドを表
す。
【0036】
【化5】
【0037】(b)芳香族ジアミノ化合物 本発明で用いる芳香族ジアミノ化合物〔以下「化合物
(b)」ということがある〕としては、屈曲可能な構造
を有する芳香族ジアミノ化合物が好ましい。この芳香族
ジアミノ化合物は(c)ジカルボン酸誘導体と反応して
ブロックコポリマー中でマトリックス成分ブロックとな
るものである。本発明では、このマトリックス部分に柔
軟性をもたせることによって、ポリマーの柔軟性をあ
げ、成形可能にしている。従って、芳香族ジアミノ化合
物の屈曲性が低いと、ブロックコポリマーの流動性が低
くなり、成形出来ないからである。具体的には、ジフェ
ニルケトン、トリフェニルエーテル、ジフェニルエーテ
ル、ジフェニルサルホン、ジフェニルメタンなどの、こ
れらの芳香族環が3,3位に結合した、芳香族残基を有
するジアミンを好適に用いることができる。芳香族ジア
ミノ化合物としては具体的には(化6)で表される芳香
族残基を有するものを使用することができる。
【0038】
【化6】
【0039】上記した(化6)中の芳香族残基のうち、
上位に示すジフェニルケトン基、トリフェニルエーテル
基が好ましい。このような芳香族残基を用いれば、得ら
れる前駆体コポリマーに充分な屈曲性を付与することが
できる。
【0040】(c)ジカルボン酸誘導体 また、本発明において使用するジカルボン酸の誘導体
〔以下「化合物(c)」ということがある〕としては、
各カルボキシル基を以下の(化7)のように置換したも
のが挙げられる。
【0041】
【化7】
【0042】また、上記ジカルボン酸誘導体の残基とし
ては、比較的短鎖(炭素数2〜10)のアルキレン基や
以下のような(化8)の芳香族系残基が挙げられる。な
お、ジカルボン酸の例としては、芳香族系のジカルボン
酸が好ましい。
【0043】
【化8】
【0044】なお、芳香族残基にはハロゲン、および/
または低級アルキル基、低級アルコキシル基、またはフ
ェニル基などの置換基を付加し得る。このような置換基
を導入することによって、反応性、溶媒への溶解性を向
上させることができる。
【0045】このような芳香族ジカルボン酸誘導体の中
では、特にテレフタル酸ジクロリド、またはそのハロゲ
ン置換体、イソフタル酸ジクロリドが好ましく、具体的
には2−クロロテレフタル酸ジクロリド、および2,5
−ジクロロテレフタル酸ジクロリドなどを好適に用いる
ことができる。なお、これらの芳香族ジカルボン酸誘導
体は、単独で用いても、あるいは2種以上混合して用い
てもよい。
【0046】このような化合物から、上記(化1)で表
されるPBZ−T前駆体ブロックコポリマーを製する
には、(i)化合物(a)および化合物(b)をそれぞ
れ、別々に有機溶媒中で化合物(c)と反応させること
により、2種類のオリゴマーを合成し、(ii)得られた
2種類のオリゴマーを有機溶媒中で反応させることによ
り製造することができる。
【0047】ここで、説明を簡単にするため、化合物
(a)と化合物(c)とを反応させて得られる、補強成
分となる剛直鎖部位に変化する部分、すなわち芳香族複
素環ブロックとなるオリゴマーをオリゴマー(I)と呼
び、化合物(b)と化合物(c)とを反応させて得られ
る、柔軟な鎖部分となる部位、すなわちマトリックス成
分ブロックとなるオリゴマーをオリゴマー(II) と呼
ぶ。
【0048】(1)−1 PBZ−T前駆体ブロックコ
ポリマー用のオリゴマーの合成 (a)芳香族ジアミノジチオール化合物と(c)ジカル
ボン酸誘導体とを有機溶媒に溶解し、所定の温度で攪拌
してオリゴマー(I)を製造する。オリゴマー(I)の
合成において、化合物(a)のモル量と化合物(c)の
モル量とは基本的には等量とするが、オリゴマー(I)
の分子量を適切なものとし、また後述するオリゴマー
(II) との反応を良好にするために、化合物(c)の量
を調製してもよい。
【0049】また、有機溶媒中における化合物(a)と
化合物(c)の合計量の濃度は、0.5〜5モル/l程
度とするのがよい。濃度が5モル/lを超えると、各成
分の溶解が難しくなり好ましくない。
【0050】有機溶媒としては、アミド系有機溶媒を好
適に用いることができる。アミド系有機溶媒としては、
N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルフォスフォ
リックトリアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど
が挙げられ、これらの単独または混合溶液を使用するこ
とができる。また、反応性を高めるために、最大限5重
量%のLiCl、CaCl2 などの金属塩を添加しても
よい。
【0051】(a)芳香族ジアミノジチオール化合物と
(c)ジカルボン酸誘導体とを重合してオリゴマー
(I)を合成するときの重合反応温度は、−20〜20
0℃とするのがよい。反応温度が−20℃未満である
と、充分な重合反応がおこらない。一方、250℃程度
の温度ではチアゾール閉環反応が起こる可能性があるの
で、重合反応の温度の上限は200℃とする。より好ま
しくは、−10〜50℃の範囲とする。
【0052】上記のオリゴマー(I)の製造において
は、反応速度を高めるために、溶液の攪拌を行うことが
好ましい。また、反応時間は、1〜120分程度とする
のがよい。化合物(a)と化合物(c)との重合反応は
以下の(化9)のとおり進行するものと考えられる。な
お、下記の反応式(化9)において、化合物(a)の例
として、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジチオー
ル二塩酸塩のアルキル基置換体を用い、化合物(c)の
例として2−クロロテレフタル酸ジクロライドを用いて
いる。なお、mは重合度を表す。オリゴマー(I)の固
有粘度はηinh (N−メチル−2−ピロリドン、30
℃)は、0.1〜0.7程度である。
【0053】
【化9】
【0054】また、オリゴマー(II) も、上述したオリ
ゴマー(I)の合成方法と同様にして合成することがで
きる。オリゴマー(II) の合成の場合も、(c)ジカル
ボン酸誘導体の量は基本的には化合物(b)のモル量と
等量とするが、オリゴマー(I)の合成時の(c)ジカ
ルボン酸誘導体の量の調節に合わせて、オリゴマー(I
I) の合成における(c)ジカルボン酸誘導体の量も調
節するのがよい。
【0055】有機溶媒中における化合物(b)および化
合物(c)の合計量の濃度は、0.5〜5モル/l程度
とするのがよい。また、重合反応温度は、−20℃〜3
00℃、好ましくは−20〜200℃とするのがよい。
温度が−20℃未満であると、充分な重合反応が起こら
ない。一方、400℃程度の温度では熱分解が生じるの
で、重合反応の温度の上限は300℃とする。より好ま
しくは、−10〜50℃の範囲である。
【0056】なお、オリゴマー(II) の合成において用
いる有機溶媒としては、上述のオリゴマー(I)の合成
に用いたものと同様のものが挙げられる。反応時間は、
特に制限はないが一般に1〜120分程度とするのがよ
い。
【0057】化合物(b)と化合物(c)との重合反応
は以下の(化10)のとおり進行するものと考えられ
る。なお、下記の反応式(化10)において、化合物
(b)の例として3、3′−ジアミノジフェニルケトン
を用い、(c)ジカルボン酸誘導体の例として2−クロ
ロテレフタル酸ジクロライドを用いている。なお、nは
重合度を表す。オリゴマー(II) の固有粘度はη
inh (N−メチル−2−ピロリドン、30℃)は、0.
1〜0.6程度である。
【0058】
【化10】
【0059】(1)−2 PBZ−T前駆体ブロックコ
ポリマーの製造 上述した方法により得られたオリゴマー(I)とオリゴ
マー(II) とを有機溶媒中で反応させ、PBZ−T前駆
体ブロックコポリマーを合成する。有機溶媒としては、
上記のオリゴマー(I)あるいは(II) の合成で用いた
ものを使用することができる。
【0060】具体的には、オリゴマー(I)を溶解した
有機溶媒とオリゴマー(II) を溶解した有機溶媒を混合
し、−10〜50℃で攪拌して前駆体ブロックコポリマ
ーを合成する。−10℃未満では、重合が進まない。な
お、250℃を超す温度とすると、チアゾール閉環反応
が進行してしまう。
【0061】以上の条件で重合反応を行うことにより、
チアゾール閉環反応を起こすことなく、大きな重合度を
有するPBZ−T前駆体ブロックコポリマーが得られ
る。得られるPBZ−T前駆体ブロックコポリマーの固
有粘度ηinh (N−メチル−2−ピロリドン、30℃)
は、0.7〜2.0程度である。
【0062】オリゴマー(I)とオリゴマー(II) との
重合反応は、以下の(化11)のとおりに進行し、前駆
体ブロックコポリマーが得られる。ここで、オリゴマー
(I)として先に(化9)で示した反応により得られた
ものを用い、オリゴマー(II) としては(化10)で示
したものを用いているが、本発明はこれに限定されるも
のではない。
【0063】
【化11】
【0064】なお、mおよびnは、重合度を示してい
る。本発明においては、1つのコポリマー中のmの合計
(上記式でmによって括られている部位の前駆体ブロッ
クコポリマー中における合計の重合度)とnの合計(上
記式でnによって括られている部位の前駆体ブロックコ
ポリマー中における合計の重合度)との比m:nは、
0.01:99.99〜99.99:0.01の範囲を
とる。剛直鎖である芳香族複素環ブロックの比が大きす
ぎると、ブロックコポリマーの流動性がなくなり、ま
た、小さいすぎると補強効果が充分でない。
【0065】得られた前駆体ブロックコポリマーは、公
知の方法により洗浄および乾燥することができる。つぎ
に縮合環としてオキサゾール環を有するポリベンゾオキ
サゾール(PBZ−O)について説明する。
【0066】(2)PBZ−O前駆体ブロックコポリマ
ーの製造 本発明において、PBZ−O前駆体ブロックコポリマー
は、下記式(化12)で表される。
【0067】
【化12】
【0068】(ただし、Ar、Ar′は芳香族残基であ
り、mおよびnはともに整数であり、m:nは0.0
1:99.99〜99.99:0.01である。)
【0069】このPBZ−O前駆体コポリマーは、
(d)アミノ基および/またはヒドロキシル基の水素原
子を置換または無置換した芳香族ジアミノジヒドロキシ
化合物、(e)アミノ基の水素原子を置換または無置換
した芳香族ジアミノ化合物、および(c)ジカルボン酸
誘導体とから製造することができる。
【0070】(d)アミノ基および/またはヒドロキシ
ル基の水素原子を置換または無置換した芳香族ジアミノ
ジヒドロキシ化合物 本発明における芳香族ジアミノヒドロキシ化合物〔以下
「化合物(d)」ということがある〕は、芳香族残基の
両側にそれぞれアミノ基、ヒドロキシル基を有する化合
物であり、芳香族残基はベンゼン環に限らず2つ以上の
ベンゼン環が縮合した芳香族環でもよく、またビフェニ
ルなどのように2つ以上のベンゼン環が結合したもので
もよい。また、両側のアミノ基およびヒドロキシル基の
位置関係は、芳香族残基を中心として左右対称でも点対
称でもよい。このような芳香族ジアミノジヒドロキシ化
合物の例としては、以下の(化13)などが挙げられ
る。
【0071】
【化13】
【0072】なお、本発明において、(d)芳香族ジア
ミノジヒドロキシ化合物は、そのアミノ基および/また
はヒドロキシル基の水素原子が置換されたものでもよ
い。水素基がシリル基で置換されたシリル化物によりP
BZ−O前駆体コポリマーを製造すると、高分子量のも
のを高い収率で得ることができ、好ましい。
【0073】また、上述した(d)芳香族ジアミノジヒ
ドロキシ化合物において、その芳香族残基にClなどの
置換基を有したものを用いてもよい。これらの芳香族ジ
アミノジヒドロキシ化合物は、劣化を防ぐために塩酸塩
などの塩の形で使用するのがよい。芳香族ジアミノジヒ
ドロキシ化合物としては、特に4,6−ジアミノ−1,
3−ジヒドロキシベンゼン(またはその塩)、そのシリ
ル化物が好適に用いられる。
【0074】(e)アミノ基の水素原子を置換または無
置換した芳香族ジアミノ化合物 本発明で用いる芳香族ジアミノ化合物〔以下「化合物
(e)」ということがある〕としては、屈曲可能な構造
を有する芳香族ジアミノ化合物が好ましい。PBZ−T
前駆体ブロックコポリマーを合成する際に用いる(b)
芳香族ジアミノ化合物について前述したものと同様の理
由からであり、この化合物(b)と同様のものを好適に
用いることができる。具体的には上記の(化6)で表さ
れる芳香族残基を有するものなどを使用することができ
るが、これらの芳香族ジアミノ化合物のアミノ基の水素
原子は置換されたものであってもよい。特に、シリル化
されたものが好ましい。上記した(化6)中の芳香族残
基のうち、上位に示すジフェニルケトン基、トリフェニ
ルエーテル基が好ましい。このような芳香族残基を用い
れば、得られるPBZ−O前駆体コポリマーに充分な屈
曲性を付与することができる。
【0075】本発明のPBZ−O前駆体ブロックコポリ
マーは、上記の化合物(d)、化合物(e)、および化
合物(c)より得られるものであるが、化合物(d)と
して、芳香族ジアミノジヒドロキシ化合物のアミノ基お
よびヒドロキシル基をシリル化した芳香族ジアミノジヒ
ドロキシ化合物を用い、化合物(e)として、アミノ基
をシリル化した芳香族ジアミノ化合物を用い、これらと
化合物(c)とを反応させるのがよい。このように化合
物(d)、化合物(e)としてシリル化を行った化合物
を用いコポリマーを製造すると、高分子量のものを高い
収率で得ることができる。
【0076】芳香族ジアミノジヒドロキシ化合物のアミ
ノ基およびヒドロキシル基をシリル化するには、芳香族
ジアミノジヒドロキシ化合物またはその塩、特に塩酸塩
を、窒素含有シリル化剤を用いて、有機溶媒中または溶
媒なしで、80℃〜140℃で6〜72時間処理する。
【0077】このようなシリル化反応に有効な窒素含有
シリル化剤としては、ヘキサメチルジシラザン、N,N
−ジエチルアミノトリメチルシラン、N,O−ビス(ト
リメチルシリル)カーバメイト、N−トリメチルシリル
イミダゾールなどが挙げられる。
【0078】また、シリル化反応を行う有機溶媒とし
て、テトラヒドロフラン、四塩化炭素、N,N−ジメチ
ルアセトアミドなどを用いることができるが、有機溶媒
を省略することもできる。シリル化温度が、80℃より
低いと反応性が充分でなく、一方140℃より高いとア
ミン塩酸塩の分解が起こり、好ましくない。同様にし
て、(e)芳香族ジアミノ化合物も、シリル化すること
ができる。
【0079】PBZ−O前駆体ブロックコポリマーは、
(i)化合物(d)および化合物(e)をそれぞれ、別
々に有機溶媒中で化合物(c)と反応させることによ
り、2種類のオリゴマーを合成し、(ii)得られた2種
類のオリゴマーを有機溶媒中で反応させることにより製
造することができる。ここで、説明を簡単にするため、
化合物(d)と化合物(c)とを反応させて得られる、
補強成分となる剛直鎖部位に変化する部分、すなわち芳
香族複素環ブロックとなるオリゴマーをオリゴマー(II
I)と呼び、化合物(e)と化合物(c)とを反応させて
得られる、柔軟な鎖部分となる部位、すなわちマトリッ
クス成分ブロックとなるオリゴマーをオリゴマー(IV)
と呼ぶ。
【0080】(2)−1 PBZ−O前駆体ブロックコ
ポリマー用のオリゴマーの合成 前述の条件でシリル化芳香族ジアミノジヒドロキシ化合
物を製造したならば、次にこのシリル化芳香族ジアミノ
ヒドロキシ化合物とジカルボン酸誘導体とを反応させ
て、オリゴマー(III)を製造する。シリル化芳香族ジア
ミノジヒドロキシ化合物とジカルボン酸誘導体との反応
は、有機溶媒中、実質的に無水、無酸素の条件下、乾燥
窒素またはアルゴンガス下で、使用する溶媒により多少
異なるが、−10〜100℃にて15〜120分間行え
ばよい。反応温度が−10℃未満であると、反応性が充
分でなく、一方100℃を超えると上記反応物の酸化な
どが起こる恐れがある。好ましくは、反応温度を−10
〜40℃とする。
【0081】化合物(d)のモル量と化合物(c)のモ
ル量とは、基本的には等量とするが、化合物(d)に対
し化合物(c)のモル量を適宜増減するのがよい。この
化合物(c)の量の調節については、後述する。また、
有機溶媒中における化合物(a)と化合物(c)の合計
量の濃度は、0.1〜5モル/l程度とするのがよい。
濃度が5モル/lを超えると、各成分の溶解が難しくな
り、好ましくない。
【0082】有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメ
チルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N
−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒、ピリジ
ンなどの芳香族アミン系溶媒、ジメチルスルホキシド、
テトラメチルスルホンなどのイオウ系溶媒、ベンゼン、
トルエン、アニソール、ジフェニルエーテル、ニトロベ
ンゼン、ベンゾニトリルなどのベンゼン系溶媒、テトラ
ヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶
媒、クロロホルム、トリクロルエタン、四塩化炭素など
のハロゲン化炭化水素などの中性溶媒(aprotic
solvent)を挙げることができる。
【0083】化合物(d)と化合物(c)との重合反応
は以下の(化14)のとおり進行するものと考えられ
る。なお、下記の反応式(化14)において、シリル化
芳香族ジアミノヒドロキシ化合物としては、ジアミノジ
ヒドロキシベンゼンをシリル化したものを用いている。
【0084】
【化14】
【0085】(ただし、式中、Arは芳香族残基、Xは
ハロゲン、Meはメチル基を表す。) オリゴマー(IV) の合成も、上述したオリゴマー(III)
の合成と同様にし、化合物(e)として芳香族ジアミノ
化合物をシリル化したものを用い、これをジカルボン酸
誘導体と反応させて行うことができる。
【0086】オリゴマー(IV) の合成の場合も、化合物
(c)の量は基本的には化合物(e)のモル量と等量と
するが、オリゴマー(III)の合成時の化合物(c)の量
の調節に合わせて、オリゴマー(IV) の合成における化
合物(c)の量も調節するのがよい。これについては、
後述する。
【0087】有機溶媒中における化合物(e)および化
合物(c)の合計量の濃度は、0.1〜5モル/l程度
とするのがよい。濃度が5モル/lを超えると、各成分
の溶解が難しくなり、好ましくない。また、重合反応
は、−10〜100℃にて5〜120分間行えばよい。
反応温度が−10℃未満であると、反応性が充分でな
く、一方100℃を超えると上記反応物の酸化などが起
こる恐れがある。好ましくは、反応温度を−10〜40
℃とする。
【0088】なお、オリゴマー(IV) の合成に用いる有
機溶媒としては、上述のオリゴマー(III)の合成に用い
たものと同様のものが挙げられる。化合物(e)と化合
物(c)との重合反応は、以下の(化15)のとおり進
行するものと考えられる。なお、下記の反応式(化1
5)において、(e)シリル化芳香族ジアミノ化合物と
しては、3、3′−ジアミノジフェニルケトンをシリル
化したものを用いている。
【0089】
【化15】
【0090】(ただし、式中、Arは芳香族残基、Xは
ハロゲン、Meはメチル基を表す。)
【0091】次に、オリゴマー(III)およびオリゴマー
(IV) の合成における(c)ジカルボン酸誘導体の量の
調節について説明する。それぞれのオリゴマーの合成に
おいては、化合物(d)または化合物(e)のモル量と
ジカルボン酸誘導体のモル量は基本的には等量とする
が、以下の理由 オリゴマー(III)と、オリゴマー(IV) とが良好に反
応できるように、オリゴマー(III)、オリゴマー(IV)
のうちの一方における末端を−COClとし、他方のオ
リゴマーの末端を−NH2 とするため、および オリゴマー(III)あるいは(IV) の分子量を適切なも
のとするために、化合物(d)あるいは化合物(e)に
対して化合物(c)のモル量を適宜増減するのがよい。
【0092】本発明者らの研究によれば、後述する前駆
体コポリマーの製造において、オリゴマー(III)を比較
的多く用いる場合には(すなわち、最終的に得られるP
BZ−Oコポリマー中に、ジヒドロキシル基を有する剛
直部位を多く導入する場合には)、オリゴマー(III)の
合成における化合物(c)の量を化合物(d)のモル数
より多少多めにするのがよい。一方、前駆体コポリマー
の製造において、オリゴマー(III)の量をオリゴマー
(IV) の量より少なくする場合には、オリゴマー(III)
の合成における化合物(c)の量を化合物(d)のモル
数よりわずかに少なめにするのがよい。ただし、一方の
オリゴマーの合成において化合物(c)の量を少々減じ
た場合には、その減じた分だけ、他方のオリゴマーの合
成において化合物(c)の量を増やす。
【0093】(2)−2 PBZ−O前駆体ブロックコ
ポリマーの製造 上述した方法により得られたオリゴマー(III)とオリゴ
マー(IV) とを有機溶媒中で反応させ、PBZ−Oブロ
ックコポリマーを合成する。有機溶媒としては、上記の
オリゴマー(III)あるいは(IV) の合成で用いたものを
使用することができる。
【0094】具体的には、オリゴマー(III)を溶解した
有機溶媒とオリゴマー(IV) を溶解した有機溶媒を混合
し、−20〜250℃で6〜24時間攪拌してブロック
コポリマーを合成する。−20℃未満では重合が進ま
ず、一方250℃を超す温度とするとオキサゾール閉環
反応が進行してしまう。
【0095】以上の条件で重合反応を行うことにより、
オキサゾール閉環反応を起こすことなく、大きな重合度
を有するPBZ−Oブロックコポリマーが得られる。得
られるPBZ−O前駆体ブロックコポリマーの固有粘度
ηinh (NMP中、0.5g/dl、30℃)は、0.
8〜2.0程度である。
【0096】オリゴマー(III)とオリゴマー(IV) との
重合反応は、以下(化16)のとおりに進行し、ブロッ
クコポリマーが得られる。ここでオリゴマー(III)とし
て先に(化14)で示した反応により得られたものを用
い、オリゴマー(IV) としては(化15)で示したもの
を用いているが、本発明はこれに限定されるものではな
い。
【0097】
【化16】
【0098】式中、mおよびnは、重合度を示してい
る。m:nは、0.01:99.99〜99.99:
0.01の範囲をとることができる。得られたブロック
コポリマーは、公知の方法により洗浄および乾燥するこ
とができる。
【0099】縮合環としてイミダゾール環を持つ芳香族
複素環を含むブロックとしては、以下に示すポリベンゾ
イミダゾール(化17)を含むブロックが挙げられる。
【0100】
【化17】
【0101】その前駆体ポリマーは、以下(化18)の
ようにして得ることができる。
【化18】
【0102】また、縮合環としてオキサジノン環を持つ
芳香族複素環を含むブロックとしては、以下に示すポリ
ビベンゾオキサジノン(化19)を含むブロックが挙げ
られる。
【0103】
【化19】
【0104】この前駆体ポリマーは、以下(化20)の
ようにして得ることができる。
【化20】
【0105】これらの芳香族複素環についても前述した
方法を適用して、芳香族アミドを有するポリマーとのコ
ポリマーとすることができる。このようにして得られた
ブロックコポリマー前駆体は、そのまま溶融成形して
も、再び有機溶媒に溶解し、脱溶媒して凝固粉を得てか
ら成形してもよい。そのまま成形する場合には、反応溶
液からポリマーを分離するにあたり、反応溶液の濃度を
15〜40重量%程度に調製し、これを非溶媒中に噴霧
し急速凝固粉とすることが好ましい。非溶媒としては、
メタノール、エタノールなどのアルコール、蒸留水など
が挙げられる。重合生成物から未反応物などを完全に除
去し、収量を正確に測定する場合は、一旦、溶液から凝
固乾燥し、再び溶解して成形に適した粉末に凝固しなお
すとよい。この場合、完全に溶解分散させるためには3
日から1週間攪拌することが好ましい。このときの有機
溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチル
スルフォキサイド、N,N−ジメチルアセトアミドなど
のアミド系の有機溶媒を好適に用いることができる。
【0106】脱溶媒の方法としては、芳香族複素環ブロ
ックコポリマー前駆体の溶液を、ポリマーの非溶媒中に
投入する、あるいは乾燥してキャストフィルムにするな
どの方法がある。非溶媒としては、メタノール、エタノ
ールなどのアルコール、蒸留水などが挙げられる。
【0107】投入方法は、どのような方法でもよく、ポ
リマー溶液を、非溶媒中へ、噴霧、滴下、繊維状に流し
込む、あるいは板状に広げて非溶媒中で凝固させるなど
の方法があるがこれらに限定されるものではない。中で
も、噴霧する方法が好ましい。非溶媒中に投入する際の
ポリマー溶液の濃度は、10〜40重量%が好ましい。
さらに好ましくは、15〜30重量%である。溶解時間
は、溶媒によって多少異なるが、6時間〜30日程度が
よい。また、温度は、−15〜150℃とするのがよい
が、好ましくは室温〜80℃であり、さらに好ましくは
室温〜60℃である。前駆体コポリマーの溶液の調製
は、チッ素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気
下、または真空中で行うのがよい。
【0108】なお、PBZ−O前駆体コポリマーを用い
る場合、化合物(d)、化合物(e)としてシリル化物
を用いた場合には、メチルアルコールなどのアルコール
中で数時間攪拌し、アルコール洗浄を繰り返すことによ
り、下記反応式(化21)に例示するように脱シリル化
反応処理を施す。なお、式中、Arは、芳香族残基であ
る。
【0109】
【化21】
【0110】このようにして得られた前駆体ブロックコ
ポリマーを金型ホットプレス成形するが、このとき、繊
維状のものを用いる場合には、これを延伸して用いても
よく、また長い繊維状のまま金型に入れ成形しても、2
〜10mm程度に切断して金型に入れ成形してもよい。
【0111】成形は、芳香族複素環コポリマー前駆体の
閉環反応が起こらない範囲で行う。成形温度は、200
〜250℃が好ましい。200℃未満では溶融粘度が不
足し、一方250℃を超えると分解が始まり好ましくな
い。また、圧力は50〜500Kgf/cm2 が好まし
く、より好ましくは100〜300Kgf/mm2 であ
る。50Kgf/cm2 未満では成形品にボイドが生じ
る恐れがあり、一方500Kgf/cm2 を超えると、
残留応力が残り好ましくない。また、成形は、Arなど
の不活性ガス雰囲気グローブボックス中で行うのが好ま
しい。
【0112】本発明においては、この金型ホットプレス
成形後、そのまま金型を昇温し、型内圧力下で熱処理
し、前駆体ポリマー中においてチアゾールあるいはオキ
サゾールなどの閉環反応を起こし、芳香族複素環ブロッ
クコポリマーとする。前駆体コポリマーの加熱温度は、
用いるポリマーの種類によって異なるが、一般には25
0℃〜400℃とする。250℃未満の温度では、チア
ゾール環あるいはオキサゾール環などの形成は見られな
い。PBZ−Tの場合、成形後、1℃/分の加熱速度で
320℃まで昇温し、30分加熱を行うのが最適であ
る。PBZ−Oの場合、成形後、1℃/分の加熱速度で
350℃まで昇温し、30分間加熱を行うのが最適であ
る。加熱速度、加熱温度がこれらの値を超えると、材料
の破壊を招くため好ましくない。加熱は一定の加熱温度
によるものだけでなく、段階的に温度を変える加熱プロ
グラムによるものでもよい。また、加熱は、不活性雰囲
気または真空中で行うことが好ましい。また加熱時の圧
力は、50〜300Kgf/cm2 が好ましい。
【0113】この加熱において、PBZ−T前駆体ブロ
ックコポリマーであればアルキル基R、PBZ−O前駆
体ブロックコポリマーであれば水素が離脱するととも
に、その部位でチアゾール環、あるいはオキサゾール環
が形成され、芳香族複素環ブロックコポリマーが形成さ
れる。前駆体ブロックコポリマーとして上述の(化1
1)に示す反応式で得られたもの(PBZ−T前駆体ブ
ロックコポリマー)を用いれば、下記構造式(化22)
の芳香族複素環ブロックコポリマーが形成される。
【0114】
【化22】
【0115】また、前駆体ブロックコポリマーとして上
述の(化21)に示す反応式で得られたもの(PBZ−
O前駆体ブロックコポリマー)を用いれば、下記構造式
(化23)の芳香族複素環ブロックコポリマーが形成さ
れる。
【0116】
【化23】
【0117】閉環反応の際にはガスが発生するが、本発
明では閉環反応を金型内で行うため、このガスを抜きな
がら加熱することが好ましい。そこで、金型としては、
図7に示すような、ベントホールが設けられ、成形面に
多孔性材料を用いているような金型を用いるのが好まし
い。
【0118】上述した方法によれば、マトリックス中に
均一に分散した芳香族複素環ポリマー前駆体ブロックが
そのまま芳香族複素環ポリマーブロックになるので、芳
香族複素環ポリマーブロックはマトリックス中に微細に
均一に分散することになり、良好な機械的特性を有する
高分子材料となる。また、閉環反応時、金型の圧力によ
り拘束されるため、剛直鎖ブロックが凝集することが無
く、均一な網目構造となる。
【0119】図1に、本発明の高分子材料の状態を表す
模式図を示す。成形品は、マトリックスリッチ相中に、
強化材として機能する剛直鎖である芳香族複素環ポリマ
ーブロックリッチ相が連続した3次元網目状の相として
均一に存在している。これは、図3に示す本発明のPB
Z−Tブロックコポリマー成形品の電子顕微鏡写真によ
り明らかである。網目の平均径が1μm以下、芳香族複
素環コポリマーブロックの連続相の径が200nm以下
のものが好ましい。
【0120】本発明の高分子材料は、このように剛直鎖
ブロック、すなわち芳香族複素環ポリマーブロックが3
次元網目構造を形成しており、非常に微細に均一にマト
リックス中に分散しており、また、マトリックスブロッ
クの柔軟性を高めたため、一般的な溶融成形が可能とな
った。また、成形時にも剛直鎖ポリマーの凝集などがな
く、2種のポリマーを複合するのと違って、大きな相分
離を生じない。これにより、本発明の高分子材料は、優
れた機械的物性を有する。
【0121】芳香族複素環ポリマーは、その高い剛直性
のために一般に溶解性に乏しく、強酸にのみ可溶であ
り、熱により溶融することがなく、また相溶性にも劣
り、成形加工が困難であり、マトリックスポリマーと複
合材料とする際においても問題がある。
【0122】本発明では、このような欠点を解決する手
段として、芳香族複素環ポリマーに、マトリックスとな
る非常に屈曲性の高いフラグメントを導入しブロック共
重合体とし、ポリマーの柔軟性を向上させ、分子内に補
強高分子とマトリックスとの2つの要素を合わせもたせ
ている。そして、閉環反応時に、金型の圧力により拘束
することによって、剛直鎖ブロックが凝集することを防
ぎ、補強材である剛直鎖ブロック、すなわち芳香族複素
環ポリマーブロックに3次元網目構造を形成させ、マト
リックス中に微細に均一に分散させることができる。か
くて、一般的な溶融成形が可能となり、成形時に、従来
の複合材の成形の際に起きるような大きな相分離を生じ
ず、芳香族複素環ポリマーの凝集もなく、機械的特性に
優れた高分子材料を得ることができる。
【0123】
【実施例】以下、実施例により、本発明をさらに詳しく
説明する。 実施例1 下記の式(化24)で示されるPBZ−T前駆体ブロッ
クコポリマーを、以下のようにして製造した。
【0124】
【化24】
【0125】(1) オリゴマー(I)(PBZ−T前駆
体ブロック)の合成 乾燥したアルゴン気流下で、よく乾燥したフラスコにN
MP8mlを採り、これに、下記の(化25)で表され
る化合物(a)8ミリモル(2.227g)を加えて溶
解し、均一なNMP溶液を調製した。
【0126】
【化25】
【0127】この溶液を容器ごと氷冷した状態で、さら
に(c)ジカルボン酸誘導体として2−クロロテレフタ
ルジ酸クロライド9.6ミリモル(2.2798g)を
加えて30分間攪拌し、オリゴマー(I)を合成した。(2)オリゴマー(II) (マトリックスブロック)の合
上記したオリゴマー(I)の合成と同時に、乾燥したア
ルゴン気流下で、よく乾燥したフラスコにNMP17m
lを入れ、これに下記の(化26)で表される化合物
(b)12ミリモル(2.5470g)を加えて溶解
し、均一なNMP溶液を調製した。
【0128】この溶液を容器ごと氷冷した状態で、さら
に(c)ジカルボン酸誘導体として2−クロロテレフタ
ル酸ジクロライド10.4ミリモル(2.4696g)
を加えて30分間攪拌し、オリゴマー(II) を合成し
た。
【0129】(3)PBZ−T前駆体ブロックコポリマ
ーの合成 上記の操作で得られたオリゴマー(I)のNMP溶液
に、オリゴマー(II) のNMP溶液を加え、氷冷〜室温
にて6時間攪拌した。得られた溶液を大量のエタノール
中に注ぎ、ポリマーを凝固させた。なお、この操作はエ
タノールを攪拌しながら行った。エタノールで数回洗浄
後、得られた沈澱(ポリマー)を真空中、120℃で乾
燥した。このポリマーの固有粘度ηinh は、1.4(g
/dl)であった。なお、固有粘度の測定はNMP中
で、ポリマー濃度を0.5g/dlとし、30℃にてウ
ベローデ法により行った。
【0130】なお、このポリマーにおいて、オリゴマー
(I)に由来し、剛直性を発現する部位の重合度mと、
オリゴマー(II) に由来し、マトリックスとなり、柔軟
性を発現する部位の重合度nの分子全体における比
(m:n、ここでmおよびnはそれぞれポリマー全体で
の合計をとる)は、4:6となる。
【0131】(4)成形 上記のようにして得られたポリマー凝固粉をNMPに溶
解し、25重量%濃度とし、室温〜80℃で1週間攪拌
して混合し、均一な溶液を得た。この溶液を大量のエタ
ノール中にスプレーして吹き込み、ポリマー急速凝固粉
を得た。これをろ過し、得られた凝固粉を120℃で真
空乾燥した。得られたポリマー凝固粉を図7に示す金型
に充填し、金型ホットプレス成形を230℃にて行った
のち、そのまま金型を昇温し、320℃にて型内熱処理
によりPBZ−T前駆体ブロックコポリマーを閉環し
た。このようにして15×50×2t(mm)の平板成
形品T/Pを得た。この時の金型の加熱および圧力プロ
グラムは図2に示す。また加熱はアルゴン雰囲気グロー
ブボックス中で行った。
【0132】得られた成形品の透過電子顕微鏡写真(超
薄切片法、倍率56000倍)を図3に示す。成形品は
母材マトリックス中にPBZ−Tリッチ相が連続した3
次元網目状の相として均一に存在していることが判る。
また、網目の平均径は0.3μm以下であり、PBZ−
T連続相の径は約60nmであった。また、成形品の物
性を表1に、高温時の曲げ物性を示すグラフを図4に示
す。
【0133】
【表1】
【0134】比較例1 乾燥したアルゴン気流下で、よく乾燥したフラスコにN
MP100mlを採り、これに、上記の(化26)で表
される化合物(b)94.2ミリモル(20.0g)を
加えて溶解し、均一なNMP溶液を調製した。この溶液
を容器ごと氷冷した状態で、さらに(c)ジカルボン酸
誘導体として2−クロロテレフタル酸ジクロライド9
4.2ミリモル(22.3762g)を加えて、氷冷〜
室温で6時間攪拌し、実施例1のブロックコポリマー中
のマトリックスブロックと同様の構造式で表されるポリ
マーを合成した。
【0135】得られた溶液を大量のエタノール中に注
ぎ、ポリマーを凝固させた。なお、この操作はエタノー
ルを攪拌しながら行った。エタノールで数回洗浄後、得
られた沈澱(ポリマー)を真空中、120℃で乾燥し
た。得られたポリマー凝固粉を図8に示す金型に充填
し、金型ホットプレス成形を行い、15×50×2t
(mm)の平板成形品T/Pを得た。この時の金型の加
熱および圧力プログラムは図5に示す。成形品の物性を
表1に、高温時の曲げ物性を示すグラフを図4に示す。
実施例1の成形品は比較例1の成形品に比較して高温時
の物性低下が小さくなったことが判る。
【0136】実施例2 化合物(b)として下記の式(化27)で示されるジア
ミンを3.5082g用いてオリゴマー(II) を合成し
た以外は全て実施例1と同様にして下記の式(化28)
で示されるPBZ−T前駆体ブロックコポリマーの合成
反応を行った。
【0137】
【化27】
【0138】
【化28】
【0139】反応終了後、反応溶液を25重量%となる
様に調製し、この溶液を直接大量のエタノール中にスプ
レーして吹き込み、ポリマー急速凝固粉を得た。これを
ろ過し、得られた凝固粉を120℃で真空乾燥した。こ
のポリマーの固有粘度ηinh は、1/2(g/dl)で
あった。なお、固有粘度の測定はNMP中で、ポリマー
濃度を0.5g/dlとし、30℃にてウベローデ法に
より行った。なお、このポリマーにおいて、オリゴマー
(I)に由来し、剛直性を発現する部位の重合度mと、
オリゴマー(II) に由来し、マトリックスとなり、柔軟
性を発現する部位の重合度nの分子全体における比
(m:n、ここでmおよびnはそれぞれポリマー全体で
の合計をとる)は、4:6となる。
【0140】このようにして得られた凝固粉を金型に充
填し、実施例1と同様に成形した。ただし、金型の加熱
および圧力は図6に示すプログラムで行った。成形品の
物性を表2に示す。
【0141】
【表2】
【0142】比較例2 乾燥したアルゴン気流下で、よく乾燥したフラスコにN
MP60mlを採り、これに、上記の(化27)で表さ
れる化合物(b)40ミリモル(11.6935g)を
加えて溶解し、均一なNMP溶液を調製した。この溶液
を容器ごと氷冷した状態で、さらに(c)ジカルボン酸
誘導体として2−クロロテレフタル酸ジクロライド40
ミリモル(9.4988g)を加えて、氷冷〜室温で6
時間攪拌し、実施例2のブロックコポリマー中のマトリ
ックスブロックと同様の構造式で表されるポリマーを合
成した。
【0143】得られた溶液を大量のエタノール中に注
ぎ、ポリマーを凝固させた。なお、この操作はエタノー
ルを攪拌しながら行った。エタノールで数回洗浄後、得
られた沈澱(ポリマー)を真空中、120℃で乾燥し
た。得られたポリマー凝固粉を比較例1と同様にして、
金型ホットプレス成形を行い、15×50×2t(m
m)の平板成形品T/Pを得た。成形品の物性を表2に
示す。
【0144】
【発明の効果】本発明では、補強高分子である芳香族複
素環ポリマーに屈曲性を有するフラグメントを導入し共
重合体とし、分子内に補強高分子とマトリックスとの2
つの要素を合わせもたせている。そして、補強材である
芳香族複素環ポリマーブロックを3次元網目構造とする
ことにより、マトリックス中に良好に均一に分散させる
ことができる。かくて、一般的な溶融成形が可能とな
り、成形時にも大きな相分離を生じず、芳香族複素環ポ
リマーの凝集もなく、機械的特性に優れた高分子材料を
得ることができる。また、2つのポリマーを複合させる
ために長時間攪拌する必要がなく、効率的である。
【0145】このような同一分子内での微細複合化によ
って、少量の補強成分添加でも、剛性、硬度、高温時物
性を大幅に向上させ、線膨張係数も軽合金並みに低下さ
せることができる。本発明の高分子材料は、良好な機械
的強度を有するために、自動車部品、航空部品、宇宙機
器を始めとして、幅広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のブロックコポリマーの状態を表す模式
図である。
【図2】実施例1における加熱および圧力プログラムで
ある。
【図3】実施例1における電子顕微鏡写真(倍率560
00倍)である。
【図4】実施例1と比較例1の成形品の曲げ弾性率と温
度との関係を示すグラフである。
【図5】比較例1における加熱および圧力プログラムで
ある。
【図6】実施例2における加熱および圧力プログラムで
ある。
【図7】実施例1で用いられるガス抜き可能な金型の構
成図である。
【図8】比較例1で用いられる金型の構成図である。
【化26】
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成8年2月14日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 芳香族複素環ブロックコポリマーおよ
び芳香族複素環ブロックコポリマー成形体ならびにその
製造方法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、芳香族複素環ブロ
ックコポリマー、その製法、および成形品に関するもの
である。機械的特性などに優れ、航空機や自動車、宇宙
機器などの構造材料として使用するのに適したブロック
コポリマーに関する。
【0002】
【従来の技術】近年、航空機や自動車などの軽量化の目
的で、機械的性質や耐熱性などに優れたいわゆるエンジ
ニアリングプラスチックが広く使われるようになってき
た。また、強度や剛性を向上するために、プラスチック
材とカーボンファイバーなどの高強度高弾性の繊維とを
組み合わせたFRPなどの複合材料の開発も盛んに行わ
れるようになり、広く実用に供されている。
【0003】これらの複合材の強度は、マトリックスと
なるプラスチック、および補強材として用いた繊維自身
の強度のほかに、繊維とマトリックス樹脂との界面接着
性に大きく影響されることが知られている。また、繊維
強化プリフォームへのマトリックス樹脂の含浸性の良不
良も、製造の観点のみならず製品の強度に影響してく。
このような事情から、材料として高強度、高弾性を示す
繊維または樹脂を用いても、必ずしも強度に優れた複合
材を得ることができるとはかぎらない。
【0004】そこで、芳香族ポリアミドなどのいわゆる
剛直ポリマーを、マトリックス樹脂となるポリマー中に
分子レベルまで微細に分散させることにより、いわゆる
ポリマーブレンド系複合材(分子複合材)として上記の
問題を克服し、高強度の複合材を得ようとする試みが提
案され、その研究が行われている。
【0005】分子複合材に好適に使用される芳香族高分
子としては、例えばチアゾール環、イミダゾール環、オ
キサゾール環、オキサジノン環などの複素環を繰り返し
単位内に有するものがあり、中でもチアゾール環を有す
るポリチアゾールは、その優れた機械的強度により、分
子複合材の補強高分子として有望視されている。
【0006】ところで、芳香族ポリチアゾールなどの補
強高分子とマトリックスポリマーとを単純に混合して分
子複合材を製造しようとしても、補強高分子の有する剛
直性のために、補強高分子とマトリックスポリマーとの
相溶性が一般に良好とはならず、補強高分子のマトリッ
クスポリマー中への均一な分散を得ることは難しい。補
強高分子がマトリックスポリマー中に均一に分散しなけ
れば、機械的特性に優れた分子複合材を得ることはでき
ない。そのために、これまで種々の試みがなされてき
た。
【0007】例えば、特開平1−287167号公報
は、実質的に棒状骨格を有するポリチアゾールからなる
補強高分子(A)と融着性を有するマトリックスポリマ
ー(B)とを主として含有する高分子溶液を凝固浴中に
導入し、製膜することからなる高分子複合体の製造法で
あって、上記高分子溶液が光学的異方性を呈し、上記高
分子溶液が凝固浴中に浸漬後、見掛け上、光学的等方性
相を経由したのち、凝固させる方法を開示している。
【0008】また、特公平2−7976号公報は、実質
的に棒状骨格を有するポリチアゾールからなる補強高分
子(A)と、200℃以上のガラス転移温度および50
0℃以下の流動開始温度を有し、かつガラス転移温度と
流動開始温度との間の温度でそのものを5時間以内の任
意の時間保持したとき、形成される見掛けの結晶サイズ
が25Å以下である難結晶性芳香族コポリアミドからな
るマトリックス高分子(B)とが、(A)/〔(A)+
(B)〕=0.15〜0.70(重量基準)の割合で含
有される高分子組成物を開示している。
【0009】しかしながら、特開平1−287167号
公報に示される高分子複合体の製造方法、および特公平
2−7976号公報に開示の高分子組成物を用いた複合
材の製造では、補強高分子とマトリックスポリマーとの
均一な分散がそれほど期待できず、得られる分子複合材
の機械的強度などが大きく向上しない。これは、剛直性
を示す補強高分子とマトリックスとの相溶性が良くない
ため、補強高分子のマトリックスポリマー中への分散が
充分とならないためであると思われる。
【0010】そこで、剛直芳香族ポリマーとマトリック
スポリマーとを混合するのではなく、剛直芳香族ポリマ
ーの前駆物質と、マトリックスポリマーまたはその前駆
物質とを有機溶媒中で均一に混合し、有機溶媒を除去後
に加熱して前駆物質を剛直芳香族ポリマーとする方法が
提案された(特開昭64−1760号公報および特開昭
64−1761号公報)。上記の方法によれば、機械的
強度などが比較的良好な分子複合材を製造することがで
きるようになる。
【0011】しかしながら、本発明者の研究によれば、
例えば分子複合材の熱圧成形を目的としてマトリックス
ポリマーに熱可塑性樹脂を用い、これと芳香族ポリチア
ゾール前駆物質とを用いて、上述の特開昭64−176
0号公報または特開昭64−1761号公報に示された
方法により分子複合材を製造しようとすると、マトリッ
クスポリマーと前駆物質との均一混合物の加熱成形段階
で、チアゾール閉環反応により形成される芳香族ポリチ
アゾールが凝集してしまい、その結果、分子複合材の機
械的特性が低下することが分かった。また、前駆物質と
したために相溶性が改善されたとはいえ、マトリックス
ポリマーと前駆物質との均一混合物を得るためには、有
機溶媒中で長時間攪拌しなければならないという問題も
ある。さらに、芳香族ポリチアゾールは、マトリックス
ポリマーと水素結合などの相互作用に乏しいため、得ら
れる分子複合材の伸びが小さい。これは、構造材などに
用いる場合の欠点となる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、以上のよう
な従来の技術的課題を背景になされたものであり、従来
の複合材のもつ、補強高分子である剛直芳香族ポリマー
と、マトリックスポリマーとの相溶性及び相分離の問題
がなく、剛直芳香族ポリマーブロックが、マトリックス
ブロック中に微細に均一に良好に分散し、成形段階での
補強高分子の凝集などもなく、もって機械的強度などに
優れ、しかも効率よく成形することできるポリマー材料
を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、芳香族複素環
を含むブロックと芳香族アミドを含むブロックよりなる
芳香族複素環ブロックコポリマー、およびその製法、す
なわち、置換または未置換で未閉環の芳香族複素環コポ
リマー前駆体を金型ホットプレス成形し、その後、型内
熱処理することにより、芳香族複素環前駆体ブロックの
閉環を行い、芳香族複素環ブロックコポリマーを得るこ
とを特徴とする芳香族複素環ブロックコポリマーの製造
方法、さらにその成形品を提供するものある。
【0014】
【発明の実施の形態】本発明は、従来のように補強高分
子とマトリックス高分子を複合する複合材ではなく、両
者をブロックコポリマーとすることにより、分子中に補
強成分となる剛直鎖部位とマトリックス成分となる柔軟
な鎖部位を合わせ持たせたものである。従って、従来の
ような、マトリックスと補強成分となる剛直芳香族ポリ
マーの相溶性、相分離などの問題がない。ブロックコポ
リマー中で補強成分となる剛直鎖部位である芳香族複素
環を含むブロックは、マトリックスとなっている柔軟な
鎖部位である芳香族アミドを含むブロック中で、網目状
に均一に分散しており、もって本発明のポリマーの成形
品は、優れた機械的特性を有するのである。
【0015】このような補強成分となる剛直鎖ブロック
に含まれる芳香族複素環としては、主鎖に芳香族環およ
び縮合環を有するものが好ましい。縮合環としてはチア
ゾール環、オキサゾール環、イミダゾール環、オキサジ
ノン環などが挙げられる。これらは1種または2種以上
であってもよい。本発明においては、芳香族複素環ブロ
ックコポリマーの成形は、剛直鎖部位が芳香族複素環の
前駆体となっているブロックコポリマーを成形し、その
後加熱して、芳香族複素環前駆体の閉環反応を起こし、
もって最終的に芳香族複素環ブロックコポリマーとす
る。
【0016】従って、まず、縮合環としてチアゾール環
をもつポリベンゾチアゾール(PBZ−T)ブロックコ
ポリマーの前駆体について説明する。(1)PBZ−T前駆体ブロックコポリマーの製造 本発明のおいて、PBZ−Tブロックコポリマーの前駆
体は、下記式(化1)で表される。
【0017】
【化1】
【0018】(ただし、ArおよびAr′は芳香族残基
であり、Rは置換または無置換のアルキル基であり、X
はジカルボン酸誘導体の残基であり、mおよびnはとも
に整数であり、m:nは0.01:99.99〜99.
99:0.01である。)
【0019】このPBZ−T前駆体ブロックコポリマー
は、(a)チオール基の水素原子を置換または無置換の
アルキル基で置換した芳香族ジアミノジチオール化合
物、(b)芳香族ジアミノ化合物および(c)ジカルボ
ン酸誘導体とから製造することができる。
【0020】(a)チオール基の水素原子を置換または
無置換のアルキル基で置換した芳香族ジアミノジチオー
ル化合物 本発明において、(a)チオール基の水素原子を置換ま
たは無置換のアルキル基で置換した芳香族ジアミノジチ
オール化合物〔以下、化合物(a)ということがある〕
は、下記一般式(化2)(ただし、Arは芳香族残基で
あり、Rは置換または無置換のアルキル基である)で表
されるものである。
【0021】
【化2】
【0022】ここで、芳香族残基Arは、ベンゼン環に
限らず2つ以上のベンゼン環が縮合した芳香族環でもよ
く、またビフェニルなどのように2つ以上のベンゼン環
が結合したものでもよい。また、両側のアミノ基および
チオエーテル基の位置は、芳香族残基を中心として左右
対称でも点対称でもよい。この化合物(a)の具体例と
しては、(化3)などが挙げられる。
【0023】
【化3】
【0024】この化合物(a)は、芳香族残基の両側に
それぞれアミノ基およびチオール基を有する化合物であ
る芳香族ジアミノジチオール化合物より合成することが
できる。芳香族ジアミノジチオール化合物としては、上
述した(化3)に示す各化合物のアルキル基Rを水素原
子で置き換えたものを使用することができるが、この芳
香族ジアミノジチオール化合物は、劣化を防ぐためには
塩酸塩などの塩の形で使用する。
【0025】芳香族ジアミノジチオール化合物のチオー
ル基に結合するアルキル基Rは、置換または無置換のア
ルキル基である。無置換のアルキル基としては、イソプ
ロピル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、
sec−ブチル基、tert−ブチル基などが挙げられ
る。アルキル基としては、2級および3級のアルキル基
が特に好ましい。
【0026】また、置換アルキル基としては、カルボキ
シル基、エステル基、シアノ基またはベンゼン基などに
より置換されたアルキル基が好適である。なお、このよ
うな置換基を有する場合には、アルキル基は特に2級の
ものである必要はない。置換基を有するアルキル基とし
ては、例えば(化4)などが挙げられる。
【0027】
【化4】
【0028】なお、上記の6つの置換アルキル基のう
ち、上位に示す2つのエステル基を置換したものにおい
ては、エステル結合中の酸素原子に結合するアルキル基
がメチル基に限らず、炭素数2〜10のアルキル基であ
ってもよい。
【0029】特に、芳香族ジアミノジチオール化合物の
チオール基の水素原子を、シアノ基を有するアルキル基
またはエステル基を有するアルキル基で置換しておく
と、前駆体コポリマー〔上記した(化1)のポリマー〕
の、Nメチル−2−ピロリドンなどの有機溶媒への溶解
度が向上する。
【0030】上記したアルキル基は、そのハロゲン化物
であるアルキルハライドとして用い、これと、さきに述
べた芳香族ジアミノジチオール化合物(の塩)とから、
以下に示す方法により化合物(a)を合成する。なお、
ハロゲン化物としては、上記したアルキル基の臭素化
物、塩化物、ヨウ化物などが使用できる。
【0031】化合物(a)の合成では、上述した芳香族
ジアミノジチオール化合物の塩およびアルキルハライド
とをアルカリ性水溶液中で反応させる。使用するアルカ
リ性水性溶媒としては、水、または水とアルコール(エ
タノールおよび/またはメタノール)との混合溶媒に、
水酸化ナトリウムなどの塩基性塩を溶解したものを使用
することができる。溶媒をアルカリ性とすることで、芳
香族ジアミノジチオール化合物の塩を容易に溶解するこ
とができる。また、チオール基の求核性を増大させ、置
換反応を助長する。なお、アルカリ性水性溶媒のアルカ
リ濃度は、30重量%以下とするのがよい。
【0032】この置換反応は、0℃〜100℃の範囲で
行うことができる。温度が0℃未満であると、反応速度
が遅くなり好ましくない。一方、100℃を超えると、
副反応が起こってしまい好ましくない。より好ましい反
応温度は、0〜95℃である。反応時間は、特に制限は
ないが、一般に2〜24時間程度でよい。なお、反応速
度を高めるために、溶液の攪拌を行うことが好ましい。
また、アルキルハライドの量を過剰にすることで、反応
速度を高めることができる。
【0033】さらに、セチルトリメチルアンモニウムク
ロライド、臭化n−ブチルトリフェニルホスホニウム、
臭化テトラフェニルホスホニウム、18−クラウン−6
などを相間移動触媒として加えると、反応速度を高める
ことができる。このような相間移動触媒は、芳香族ジア
ミノジチオール化合物の塩とアルキルハライドとの反応
を速やかに進行させる。
【0034】以上の条件で置換反応を行うことにより、
芳香族ジアミノジチオール化合物の塩のチオール基の水
素原子をアルキル基で置換したモノマー〔化合物
(a)〕を得ることができる。
【0035】化合物(a)を合成する反応において、芳
香族ジアミノジチオール化合物の塩とアルキルハライド
との反応は以下(化5)のとおり進行する。ここで、芳
香族ジアミノジチオール化合物の塩の例として、2,5
−ジアミノ−1,4−ベンゼンジチオール二塩酸塩を用
いる。また、式中、X−Rは、アルキルハライドを表
す。
【0036】
【化5】
【0037】(b)芳香族ジアミノ化合物 本発明で用いる芳香族ジアミノ化合物〔以下「化合物
(b)」ということがある〕としては、屈曲可能な構造
を有する芳香族ジアミノ化合物が好ましい。この芳香族
ジアミノ化合物は(c)ジカルボン酸誘導体と反応して
ブロックコポリマー中でマトリックス成分ブロックとな
るものである。本発明では、このマトリックス部分に柔
軟性をもたせることによって、ポリマーの柔軟性をあ
げ、成形可能にしている。従って、芳香族ジアミノ化合
物の屈曲性が低いと、ブロックコポリマーの流動性が低
くなり、成形出来ないからである。具体的には、ジフェ
ニルケトン、トリフェニルエーテル、ジフェニルエーテ
ル、ジフェニルサルホン、ジフェニルメタンなどの、こ
れらの芳香族環が3,3位に結合した、芳香族残基を有
するジアミンを好適に用いることができる。芳香族ジア
ミノ化合物としては具体的には(化6)で表される芳香
族残基を有するものを使用することができる。
【0038】
【化6】
【0039】上記した(化6)中の芳香族残基のうち、
上位に示すジフェニルケトン基、トリフェニルエーテル
基が好ましい。このような芳香族残基を用いれば、得ら
れる前駆体コポリマーに充分な屈曲性を付与することが
できる。
【0040】(c)ジカルボン酸誘導体 また、本発明において使用するジカルボン酸の誘導体
〔以下「化合物(c)」ということがある〕としては、
各カルボキシル基を以下の(化7)のように置換したも
のが挙げられる。
【0041】
【化7】
【0042】また、上記ジカルボン酸誘導体の残基とし
ては、比較的短鎖(炭素数2〜10)のアルキレン基や
以下のような(化8)の芳香族系残基が挙げられる。な
お、ジカルボン酸の例としては、芳香族系のジカルボン
酸が好ましい。
【0043】
【化8】
【0044】なお、芳香族残基にはハロゲン、および/
または低級アルキル基、低級アルコキシル基、またはフ
ェニル基などの置換基を付加し得る。このような置換基
を導入することによって、反応性、溶媒への溶解性を向
上させることができる。
【0045】このような芳香族ジカルボン酸誘導体の中
では、特にテレフタル酸ジクロリド、またはそのハロゲ
ン置換体、イソフタル酸ジクロリドが好ましく、具体的
には2−クロロテレフタル酸ジクロリド、および2,5
−ジクロロテレフタル酸ジクロリドなどを好適に用いる
ことができる。なお、これらの芳香族ジカルボン酸誘導
体は、単独で用いても、あるいは2種以上混合して用い
てもよい。
【0046】このような化合物から、上記(化1)で表
されるPBZ−T前駆体ブロックコポリマーを製する
には、(i)化合物(a)および化合物(b)をそれぞ
れ、別々に有機溶媒中で化合物(c)と反応させること
により、2種類のオリゴマーを合成し、(ii)得られた
2種類のオリゴマーを有機溶媒中で反応させることによ
り製造することができる。
【0047】ここで、説明を簡単にするため、化合物
(a)と化合物(c)とを反応させて得られる、補強成
分となる剛直鎖部位に変化する部分、すなわち芳香族複
素環ブロックとなるオリゴマーをオリゴマー(I)と呼
び、化合物(b)と化合物(c)とを反応させて得られ
る、柔軟な鎖部分となる部位、すなわちマトリックス成
分ブロックとなるオリゴマーをオリゴマー(II) と呼
ぶ。
【0048】(1)−1 PBZ−T前駆体ブロックコ
ポリマー用のオリゴマーの合成 (a)芳香族ジアミノジチオール化合物と(c)ジカル
ボン酸誘導体とを有機溶媒に溶解し、所定の温度で攪拌
してオリゴマー(I)を製造する。オリゴマー(I)の
合成において、化合物(a)のモル量と化合物(c)の
モル量とは基本的には等量とするが、オリゴマー(I)
の分子量を適切なものとし、また後述するオリゴマー
(II) との反応を良好にするために、化合物(c)の量
を調製してもよい。
【0049】また、有機溶媒中における化合物(a)と
化合物(c)の合計量の濃度は、0.5〜5モル/l程
度とするのがよい。濃度が5モル/lを超えると、各成
分の溶解が難しくなり好ましくない。
【0050】有機溶媒としては、アミド系有機溶媒を好
適に用いることができる。アミド系有機溶媒としては、
N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルフォスフォ
リックトリアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど
が挙げられ、これらの単独または混合溶液を使用するこ
とができる。また、反応性を高めるために、最大限5重
量%のLiCl、CaCl2 などの金属塩を添加しても
よい。
【0051】(a)芳香族ジアミノジチオール化合物と
(c)ジカルボン酸誘導体とを重合してオリゴマー
(I)を合成するときの重合反応温度は、−20〜20
0℃とするのがよい。反応温度が−20℃未満である
と、充分な重合反応がおこらない。一方、250℃程度
の温度ではチアゾール閉環反応が起こる可能性があるの
で、重合反応の温度の上限は200℃とする。より好ま
しくは、−10〜50℃の範囲とする。
【0052】上記のオリゴマー(I)の製造において
は、反応速度を高めるために、溶液の攪拌を行うことが
好ましい。また、反応時間は、1〜120分程度とする
のがよい。化合物(a)と化合物(c)との重合反応は
以下の(化9)のとおり進行するものと考えられる。な
お、下記の反応式(化9)において、化合物(a)の例
として、2,5−ジアミノ−1,4−ベンゼンジチオー
ル二塩酸塩のアルキル基置換体を用い、化合物(c)の
例として2−クロロテレフタル酸ジクロライドを用いて
いる。なお、mは重合度を表す。オリゴマー(I)の固
有粘度はηinh (N−メチル−2−ピロリドン、30
℃)は、0.1〜0.7程度である。
【0053】
【化9】
【0054】また、オリゴマー(II) も、上述したオリ
ゴマー(I)の合成方法と同様にして合成することがで
きる。オリゴマー(II) の合成の場合も、(c)ジカル
ボン酸誘導体の量は基本的には化合物(b)のモル量と
等量とするが、オリゴマー(I)の合成時の(c)ジカ
ルボン酸誘導体の量の調節に合わせて、オリゴマー(I
I) の合成における(c)ジカルボン酸誘導体の量も調
節するのがよい。
【0055】有機溶媒中における化合物(b)および化
合物(c)の合計量の濃度は、0.5〜5モル/l程度
とするのがよい。また、重合反応温度は、−20℃〜3
00℃、好ましくは−20〜200℃とするのがよい。
温度が−20℃未満であると、充分な重合反応が起こら
ない。一方、400℃程度の温度では熱分解が生じるの
で、重合反応の温度の上限は300℃とする。より好ま
しくは、−10〜50℃の範囲である。
【0056】なお、オリゴマー(II) の合成において用
いる有機溶媒としては、上述のオリゴマー(I)の合成
に用いたものと同様のものが挙げられる。反応時間は、
特に制限はないが一般に1〜120分程度とするのがよ
い。
【0057】化合物(b)と化合物(c)との重合反応
は以下の(化10)のとおり進行するものと考えられ
る。なお、下記の反応式(化10)において、化合物
(b)の例として3、3′−ジアミノジフェニルケトン
を用い、(c)ジカルボン酸誘導体の例として2−クロ
ロテレフタル酸ジクロライドを用いている。なお、nは
重合度を表す。オリゴマー(II) の固有粘度はη
inh (N−メチル−2−ピロリドン、30℃)は、0.
1〜0.6程度である。
【0058】
【化10】
【0059】(1)−2 PBZ−T前駆体ブロックコ
ポリマーの製造 上述した方法により得られたオリゴマー(I)とオリゴ
マー(II) とを有機溶媒中で反応させ、PBZ−T前駆
体ブロックコポリマーを合成する。有機溶媒としては、
上記のオリゴマー(I)あるいは(II) の合成で用いた
ものを使用することができる。
【0060】具体的には、オリゴマー(I)を溶解した
有機溶媒とオリゴマー(II) を溶解した有機溶媒を混合
し、−10〜50℃で攪拌して前駆体ブロックコポリマ
ーを合成する。−10℃未満では、重合が進まない。な
お、250℃を超す温度とすると、チアゾール閉環反応
が進行してしまう。
【0061】以上の条件で重合反応を行うことにより、
チアゾール閉環反応を起こすことなく、大きな重合度を
有するPBZ−T前駆体ブロックコポリマーが得られ
る。得られるPBZ−T前駆体ブロックコポリマーの固
有粘度ηinh (N−メチル−2−ピロリドン、30℃)
は、0.7〜2.0程度である。
【0062】オリゴマー(I)とオリゴマー(II) との
重合反応は、以下の(化11)のとおりに進行し、前駆
体ブロックコポリマーが得られる。ここで、オリゴマー
(I)として先に(化9)で示した反応により得られた
ものを用い、オリゴマー(II) としては(化10)で示
したものを用いているが、本発明はこれに限定されるも
のではない。
【0063】
【化11】
【0064】なお、mおよびnは、重合度を示してい
る。本発明においては、1つのコポリマー中のmの合計
(上記式でmによって括られている部位の前駆体ブロッ
クコポリマー中における合計の重合度)とnの合計(上
記式でnによって括られている部位の前駆体ブロックコ
ポリマー中における合計の重合度)との比m:nは、
0.01:99.99〜99.99:0.01の範囲を
とる。剛直鎖である芳香族複素環ブロックの比が大きす
ぎると、ブロックコポリマーの流動性がなくなり、ま
た、小さいすぎると補強効果が充分でない。
【0065】得られた前駆体ブロックコポリマーは、公
知の方法により洗浄および乾燥することができる。つぎ
に縮合環としてオキサゾール環を有するポリベンゾオキ
サゾール(PBZ−O)について説明する。
【0066】(2)PBZ−O前駆体ブロックコポリマ
ーの製造 本発明において、PBZ−O前駆体ブロックコポリマー
は、下記式(化12)で表される。
【0067】
【化12】
【0068】(ただし、Ar、Ar′は芳香族残基であ
り、mおよびnはともに整数であり、m:nは0.0
1:99.99〜99.99:0.01である。)
【0069】このPBZ−O前駆体コポリマーは、
(d)アミノ基および/またはヒドロキシル基の水素原
子を置換または無置換した芳香族ジアミノジヒドロキシ
化合物、(e)アミノ基の水素原子を置換または無置換
した芳香族ジアミノ化合物、および(c)ジカルボン酸
誘導体とから製造することができる。
【0070】(d)アミノ基および/またはヒドロキシ
ル基の水素原子を置換または無置換した芳香族ジアミノ
ジヒドロキシ化合物 本発明における芳香族ジアミノヒドロキシ化合物〔以下
「化合物(d)」ということがある〕は、芳香族残基の
両側にそれぞれアミノ基、ヒドロキシル基を有する化合
物であり、芳香族残基はベンゼン環に限らず2つ以上の
ベンゼン環が縮合した芳香族環でもよく、またビフェニ
ルなどのように2つ以上のベンゼン環が結合したもので
もよい。また、両側のアミノ基およびヒドロキシル基の
位置関係は、芳香族残基を中心として左右対称でも点対
称でもよい。このような芳香族ジアミノジヒドロキシ化
合物の例としては、以下の(化13)などが挙げられ
る。
【0071】
【化13】
【0072】なお、本発明において、(d)芳香族ジア
ミノジヒドロキシ化合物は、そのアミノ基および/また
はヒドロキシル基の水素原子が置換されたものでもよ
い。水素基がシリル基で置換されたシリル化物によりP
BZ−O前駆体コポリマーを製造すると、高分子量のも
のを高い収率で得ることができ、好ましい。
【0073】また、上述した(d)芳香族ジアミノジヒ
ドロキシ化合物において、その芳香族残基にClなどの
置換基を有したものを用いてもよい。これらの芳香族ジ
アミノジヒドロキシ化合物は、劣化を防ぐために塩酸塩
などの塩の形で使用するのがよい。芳香族ジアミノジヒ
ドロキシ化合物としては、特に4,6−ジアミノ−1,
3−ジヒドロキシベンゼン(またはその塩)、そのシリ
ル化物が好適に用いられる。
【0074】(e)アミノ基の水素原子を置換または無
置換した芳香族ジアミノ化合物 本発明で用いる芳香族ジアミノ化合物〔以下「化合物
(e)」ということがある〕としては、屈曲可能な構造
を有する芳香族ジアミノ化合物が好ましい。PBZ−T
前駆体ブロックコポリマーを合成する際に用いる(b)
芳香族ジアミノ化合物について前述したものと同様の理
由からであり、この化合物(b)と同様のものを好適に
用いることができる。具体的には上記の(化6)で表さ
れる芳香族残基を有するものなどを使用することができ
るが、これらの芳香族ジアミノ化合物のアミノ基の水素
原子は置換されたものであってもよい。特に、シリル化
されたものが好ましい。上記した(化6)中の芳香族残
基のうち、上位に示すジフェニルケトン基、トリフェニ
ルエーテル基が好ましい。このような芳香族残基を用い
れば、得られるPBZ−O前駆体コポリマーに充分な屈
曲性を付与することができる。
【0075】本発明のPBZ−O前駆体ブロックコポリ
マーは、上記の化合物(d)、化合物(e)、および化
合物(c)より得られるものであるが、化合物(d)と
して、芳香族ジアミノジヒドロキシ化合物のアミノ基お
よびヒドロキシル基をシリル化した芳香族ジアミノジヒ
ドロキシ化合物を用い、化合物(e)として、アミノ基
をシリル化した芳香族ジアミノ化合物を用い、これらと
化合物(c)とを反応させるのがよい。このように化合
物(d)、化合物(e)としてシリル化を行った化合物
を用いコポリマーを製造すると、高分子量のものを高い
収率で得ることができる。
【0076】芳香族ジアミノジヒドロキシ化合物のアミ
ノ基およびヒドロキシル基をシリル化するには、芳香族
ジアミノジヒドロキシ化合物またはその塩、特に塩酸塩
を、窒素含有シリル化剤を用いて、有機溶媒中または溶
媒なしで、80℃〜140℃で6〜72時間処理する。
【0077】このようなシリル化反応に有効な窒素含有
シリル化剤としては、ヘキサメチルジシラザン、N,N
−ジエチルアミノトリメチルシラン、N,O−ビス(ト
リメチルシリル)カーバメイト、N−トリメチルシリル
イミダゾールなどが挙げられる。
【0078】また、シリル化反応を行う有機溶媒とし
て、テトラヒドロフラン、四塩化炭素、N,N−ジメチ
ルアセトアミドなどを用いることができるが、有機溶媒
を省略することもできる。シリル化温度が、80℃より
低いと反応性が充分でなく、一方140℃より高いとア
ミン塩酸塩の分解が起こり、好ましくない。同様にし
て、(e)芳香族ジアミノ化合物も、シリル化すること
ができる。
【0079】PBZ−O前駆体ブロックコポリマーは、
(i)化合物(d)および化合物(e)をそれぞれ、別
々に有機溶媒中で化合物(c)と反応させることによ
り、2種類のオリゴマーを合成し、(ii)得られた2種
類のオリゴマーを有機溶媒中で反応させることにより製
造することができる。ここで、説明を簡単にするため、
化合物(d)と化合物(c)とを反応させて得られる、
補強成分となる剛直鎖部位に変化する部分、すなわち芳
香族複素環ブロックとなるオリゴマーをオリゴマー(II
I)と呼び、化合物(e)と化合物(c)とを反応させて
得られる、柔軟な鎖部分となる部位、すなわちマトリッ
クス成分ブロックとなるオリゴマーをオリゴマー(IV)
と呼ぶ。
【0080】(2)−1 PBZ−O前駆体ブロックコ
ポリマー用のオリゴマーの合成 前述の条件でシリル化芳香族ジアミノジヒドロキシ化合
物を製造したならば、次にこのシリル化芳香族ジアミノ
ヒドロキシ化合物とジカルボン酸誘導体とを反応させ
て、オリゴマー(III)を製造する。シリル化芳香族ジア
ミノジヒドロキシ化合物とジカルボン酸誘導体との反応
は、有機溶媒中、実質的に無水、無酸素の条件下、乾燥
窒素またはアルゴンガス下で、使用する溶媒により多少
異なるが、−10〜100℃にて15〜120分間行え
ばよい。反応温度が−10℃未満であると、反応性が充
分でなく、一方100℃を超えると上記反応物の酸化な
どが起こる恐れがある。好ましくは、反応温度を−10
〜40℃とする。
【0081】化合物(d)のモル量と化合物(c)のモ
ル量とは、基本的には等量とするが、化合物(d)に対
し化合物(c)のモル量を適宜増減するのがよい。この
化合物(c)の量の調節については、後述する。また、
有機溶媒中における化合物(a)と化合物(c)の合計
量の濃度は、0.1〜5モル/l程度とするのがよい。
濃度が5モル/lを超えると、各成分の溶解が難しくな
り、好ましくない。
【0082】有機溶媒としては、例えば、N,N−ジメ
チルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N
−メチル−2−ピロリドンなどのアミド系溶媒、ピリジ
ンなどの芳香族アミン系溶媒、ジメチルスルホキシド、
テトラメチルスルホンなどのイオウ系溶媒、ベンゼン、
トルエン、アニソール、ジフェニルエーテル、ニトロベ
ンゼン、ベンゾニトリルなどのベンゼン系溶媒、テトラ
ヒドロフラン、1,4−ジオキサンなどのエーテル系溶
媒、クロロホルム、トリクロルエタン、四塩化炭素など
のハロゲン化炭化水素などの中性溶媒(aprotic
solvent)を挙げることができる。
【0083】化合物(d)と化合物(c)との重合反応
は以下の(化14)のとおり進行するものと考えられ
る。なお、下記の反応式(化14)において、シリル化
芳香族ジアミノヒドロキシ化合物としては、ジアミノジ
ヒドロキシベンゼンをシリル化したものを用いている。
【0084】
【化14】
【0085】(ただし、式中、Arは芳香族残基、Xは
ハロゲン、Meはメチル基を表す。) オリゴマー(IV) の合成も、上述したオリゴマー(III)
の合成と同様にし、化合物(e)として芳香族ジアミノ
化合物をシリル化したものを用い、これをジカルボン酸
誘導体と反応させて行うことができる。
【0086】オリゴマー(IV) の合成の場合も、化合物
(c)の量は基本的には化合物(e)のモル量と等量と
するが、オリゴマー(III)の合成時の化合物(c)の量
の調節に合わせて、オリゴマー(IV) の合成における化
合物(c)の量も調節するのがよい。これについては、
後述する。
【0087】有機溶媒中における化合物(e)および化
合物(c)の合計量の濃度は、0.1〜5モル/l程度
とするのがよい。濃度が5モル/lを超えると、各成分
の溶解が難しくなり、好ましくない。また、重合反応
は、−10〜100℃にて5〜120分間行えばよい。
反応温度が−10℃未満であると、反応性が充分でな
く、一方100℃を超えると上記反応物の酸化などが起
こる恐れがある。好ましくは、反応温度を−10〜40
℃とする。
【0088】なお、オリゴマー(IV) の合成に用いる有
機溶媒としては、上述のオリゴマー(III)の合成に用い
たものと同様のものが挙げられる。化合物(e)と化合
物(c)との重合反応は、以下の(化15)のとおり進
行するものと考えられる。なお、下記の反応式(化1
5)において、(e)シリル化芳香族ジアミノ化合物と
しては、3、3′−ジアミノジフェニルケトンをシリル
化したものを用いている。
【0089】
【化15】
【0090】(ただし、式中、Arは芳香族残基、Xは
ハロゲン、Meはメチル基を表す。)
【0091】次に、オリゴマー(III)およびオリゴマー
(IV) の合成における(c)ジカルボン酸誘導体の量の
調節について説明する。それぞれのオリゴマーの合成に
おいては、化合物(d)または化合物(e)のモル量と
ジカルボン酸誘導体のモル量は基本的には等量とする
が、以下の理由 オリゴマー(III)と、オリゴマー(IV) とが良好に反
応できるように、オリゴマー(III)、オリゴマー(IV)
のうちの一方における末端を−COClとし、他方のオ
リゴマーの末端を−NH2 とするため、および オリゴマー(III)あるいは(IV) の分子量を適切なも
のとするために、化合物(d)あるいは化合物(e)に
対して化合物(c)のモル量を適宜増減するのがよい。
【0092】本発明者らの研究によれば、後述する前駆
体コポリマーの製造において、オリゴマー(III)を比較
的多く用いる場合には(すなわち、最終的に得られるP
BZ−Oコポリマー中に、ジヒドロキシル基を有する剛
直部位を多く導入する場合には)、オリゴマー(III)の
合成における化合物(c)の量を化合物(d)のモル数
より多少多めにするのがよい。一方、前駆体コポリマー
の製造において、オリゴマー(III)の量をオリゴマー
(IV) の量より少なくする場合には、オリゴマー(III)
の合成における化合物(c)の量を化合物(d)のモル
数よりわずかに少なめにするのがよい。ただし、一方の
オリゴマーの合成において化合物(c)の量を少々減じ
た場合には、その減じた分だけ、他方のオリゴマーの合
成において化合物(c)の量を増やす。
【0093】(2)−2 PBZ−O前駆体ブロックコ
ポリマーの製造 上述した方法により得られたオリゴマー(III)とオリゴ
マー(IV) とを有機溶媒中で反応させ、PBZ−Oブロ
ックコポリマーを合成する。有機溶媒としては、上記の
オリゴマー(III)あるいは(IV) の合成で用いたものを
使用することができる。
【0094】具体的には、オリゴマー(III)を溶解した
有機溶媒とオリゴマー(IV) を溶解した有機溶媒を混合
し、−20〜250℃で6〜24時間攪拌してブロック
コポリマーを合成する。−20℃未満では重合が進ま
ず、一方250℃を超す温度とするとオキサゾール閉環
反応が進行してしまう。
【0095】以上の条件で重合反応を行うことにより、
オキサゾール閉環反応を起こすことなく、大きな重合度
を有するPBZ−Oブロックコポリマーが得られる。得
られるPBZ−O前駆体ブロックコポリマーの固有粘度
ηinh (NMP中、0.5g/dl、30℃)は、0.
8〜2.0程度である。
【0096】オリゴマー(III)とオリゴマー(IV) との
重合反応は、以下(化16)のとおりに進行し、ブロッ
クコポリマーが得られる。ここでオリゴマー(III)とし
て先に(化14)で示した反応により得られたものを用
い、オリゴマー(IV) としては(化15)で示したもの
を用いているが、本発明はこれに限定されるものではな
い。
【0097】
【化16】
【0098】式中、mおよびnは、重合度を示してい
る。m:nは、0.01:99.99〜99.99:
0.01の範囲をとることができる。得られたブロック
コポリマーは、公知の方法により洗浄および乾燥するこ
とができる。
【0099】縮合環としてイミダゾール環を持つ芳香族
複素環を含むブロックとしては、以下に示すポリベンゾ
イミダゾール(化17)を含むブロックが挙げられる。
【0100】
【化17】
【0101】その前駆体ポリマーは、以下(化18)の
ようにして得ることができる。
【化18】
【0102】また、縮合環としてオキサジノン環を持つ
芳香族複素環を含むブロックとしては、以下に示すポリ
ビベンゾオキサジノン(化19)を含むブロックが挙げ
られる。
【0103】
【化19】
【0104】この前駆体ポリマーは、以下(化20)の
ようにして得ることができる。
【化20】
【0105】これらの芳香族複素環についても前述した
方法を適用して、芳香族アミドを有するポリマーとのコ
ポリマーとすることができる。このようにして得られた
ブロックコポリマー前駆体は、そのまま溶融成形して
も、再び有機溶媒に溶解し、脱溶媒して凝固粉を得てか
ら成形してもよい。そのまま成形する場合には、反応溶
液からポリマーを分離するにあたり、反応溶液の濃度を
15〜40重量%程度に調製し、これを非溶媒中に噴霧
し急速凝固粉とすることが好ましい。非溶媒としては、
メタノール、エタノールなどのアルコール、蒸留水など
が挙げられる。重合生成物から未反応物などを完全に除
去し、収量を正確に測定する場合は、一旦、溶液から凝
固乾燥し、再び溶解して成形に適した粉末に凝固しなお
すとよい。この場合、完全に溶解分散させるためには3
日から1週間攪拌することが好ましい。このときの有機
溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチル
スルフォキサイド、N,N−ジメチルアセトアミドなど
のアミド系の有機溶媒を好適に用いることができる。
【0106】脱溶媒の方法としては、芳香族複素環ブロ
ックコポリマー前駆体の溶液を、ポリマーの非溶媒中に
投入する、あるいは乾燥してキャストフィルムにするな
どの方法がある。非溶媒としては、メタノール、エタノ
ールなどのアルコール、蒸留水などが挙げられる。
【0107】投入方法は、どのような方法でもよく、ポ
リマー溶液を、非溶媒中へ、噴霧、滴下、繊維状に流し
込む、あるいは板状に広げて非溶媒中で凝固させるなど
の方法があるがこれらに限定されるものではない。中で
も、噴霧する方法が好ましい。非溶媒中に投入する際の
ポリマー溶液の濃度は、10〜40重量%が好ましい。
さらに好ましくは、15〜30重量%である。溶解時間
は、溶媒によって多少異なるが、6時間〜30日程度が
よい。また、温度は、−15〜150℃とするのがよい
が、好ましくは室温〜80℃であり、さらに好ましくは
室温〜60℃である。前駆体コポリマーの溶液の調製
は、チッ素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気
下、または真空中で行うのがよい。
【0108】なお、PBZ−O前駆体コポリマーを用い
る場合、化合物(d)、化合物(e)としてシリル化物
を用いた場合には、メチルアルコールなどのアルコール
中で数時間攪拌し、アルコール洗浄を繰り返すことによ
り、下記反応式(化21)に例示するように脱シリル化
反応処理を施す。なお、式中、Arは、芳香族残基であ
る。
【0109】
【化21】
【0110】このようにして得られた前駆体ブロックコ
ポリマーを金型ホットプレス成形するが、このとき、繊
維状のものを用いる場合には、これを延伸して用いても
よく、また長い繊維状のまま金型に入れ成形しても、2
〜10mm程度に切断して金型に入れ成形してもよい。
【0111】成形は、芳香族複素環コポリマー前駆体の
閉環反応が起こらない範囲で行う。成形温度は、200
〜250℃が好ましい。200℃未満では溶融粘度が不
足し、一方250℃を超えると分解が始まり好ましくな
い。また、圧力は50〜500Kgf/cm2 が好まし
く、より好ましくは100〜300Kgf/mm2 であ
る。50Kgf/cm2 未満では成形品にボイドが生じ
る恐れがあり、一方500Kgf/cm2 を超えると、
残留応力が残り好ましくない。また、成形は、Arなど
の不活性ガス雰囲気グローブボックス中で行うのが好ま
しい。
【0112】本発明においては、この金型ホットプレス
成形後、そのまま金型を昇温し、型内圧力下で熱処理
し、前駆体ポリマー中においてチアゾールあるいはオキ
サゾールなどの閉環反応を起こし、芳香族複素環ブロッ
クコポリマーとする。前駆体コポリマーの加熱温度は、
用いるポリマーの種類によって異なるが、一般には25
0℃〜400℃とする。250℃未満の温度では、チア
ゾール環あるいはオキサゾール環などの形成は見られな
い。PBZ−Tの場合、成形後、1℃/分の加熱速度で
320℃まで昇温し、30分加熱を行うのが最適であ
る。PBZ−Oの場合、成形後、1℃/分の加熱速度で
350℃まで昇温し、30分間加熱を行うのが最適であ
る。加熱速度、加熱温度がこれらの値を超えると、材料
の破壊を招くため好ましくない。加熱は一定の加熱温度
によるものだけでなく、段階的に温度を変える加熱プロ
グラムによるものでもよい。また、加熱は、不活性雰囲
気または真空中で行うことが好ましい。また加熱時の圧
力は、50〜300Kgf/cm2 が好ましい。
【0113】この加熱において、PBZ−T前駆体ブロ
ックコポリマーであればアルキル基R、PBZ−O前駆
体ブロックコポリマーであれば水素が離脱するととも
に、その部位でチアゾール環、あるいはオキサゾール環
が形成され、芳香族複素環ブロックコポリマーが形成さ
れる。前駆体ブロックコポリマーとして上述の(化1
1)に示す反応式で得られたもの(PBZ−T前駆体ブ
ロックコポリマー)を用いれば、下記構造式(化22)
の芳香族複素環ブロックコポリマーが形成される。
【0114】
【化22】
【0115】また、前駆体ブロックコポリマーとして上
述の(化21)に示す反応式で得られたもの(PBZ−
O前駆体ブロックコポリマー)を用いれば、下記構造式
(化23)の芳香族複素環ブロックコポリマーが形成さ
れる。
【0116】
【化23】
【0117】閉環反応の際にはガスが発生するが、本発
明では閉環反応を金型内で行うため、このガスを抜きな
がら加熱することが好ましい。そこで、金型としては、
図7に示すような、ベントホールが設けられ、成形面に
多孔性材料を用いているような金型を用いるのが好まし
い。
【0118】上述した方法によれば、マトリックス中に
均一に分散した芳香族複素環ポリマー前駆体ブロックが
そのまま芳香族複素環ポリマーブロックになるので、芳
香族複素環ポリマーブロックはマトリックス中に微細に
均一に分散することになり、良好な機械的特性を有する
高分子材料となる。また、閉環反応時、金型の圧力によ
り拘束されるため、剛直鎖ブロックが凝集することが無
く、均一な網目構造となる。
【0119】図1に、本発明の高分子材料の状態を表す
模式図を示す。成形品は、マトリックスリッチ相中に、
強化材として機能する剛直鎖である芳香族複素環ポリマ
ーブロックリッチ相が連続した3次元網目状の相として
均一に存在している。これは、図3に示す本発明のPB
Z−Tブロックコポリマー成形品の電子顕微鏡写真によ
り明らかである。網目の平均径が1μm以下、芳香族複
素環コポリマーブロックの連続相の径が200nm以下
のものが好ましい。
【0120】本発明の高分子材料は、このように剛直鎖
ブロック、すなわち芳香族複素環ポリマーブロックが3
次元網目構造を形成しており、非常に微細に均一にマト
リックス中に分散しており、また、マトリックスブロッ
クの柔軟性を高めたため、一般的な溶融成形が可能とな
った。また、成形時にも剛直鎖ポリマーの凝集などがな
く、2種のポリマーを複合するのと違って、大きな相分
離を生じない。これにより、本発明の高分子材料は、優
れた機械的物性を有する。
【0121】芳香族複素環ポリマーは、その高い剛直性
のために一般に溶解性に乏しく、強酸にのみ可溶であ
り、熱により溶融することがなく、また相溶性にも劣
り、成形加工が困難であり、マトリックスポリマーと複
合材料とする際においても問題がある。
【0122】本発明では、このような欠点を解決する手
段として、芳香族複素環ポリマーに、マトリックスとな
る非常に屈曲性の高いフラグメントを導入しブロック共
重合体とし、ポリマーの柔軟性を向上させ、分子内に補
強高分子とマトリックスとの2つの要素を合わせもたせ
ている。そして、閉環反応時に、金型の圧力により拘束
することによって、剛直鎖ブロックが凝集することを防
ぎ、補強材である剛直鎖ブロック、すなわち芳香族複素
環ポリマーブロックに3次元網目構造を形成させ、マト
リックス中に微細に均一に分散させることができる。か
くて、一般的な溶融成形が可能となり、成形時に、従来
の複合材の成形の際に起きるような大きな相分離を生じ
ず、芳香族複素環ポリマーの凝集もなく、機械的特性に
優れた高分子材料を得ることができる。
【0123】
【実施例】以下、実施例により、本発明をさらに詳しく
説明する。 実施例1 下記の式(化24)で示されるPBZ−T前駆体ブロッ
クコポリマーを、以下のようにして製造した。
【0124】
【化24】
【0125】(1) オリゴマー(I)(PBZ−T前駆
体ブロック)の合成 乾燥したアルゴン気流下で、よく乾燥したフラスコにN
MP8mlを採り、これに、下記の(化25)で表され
る化合物(a)8ミリモル(2.227g)を加えて溶
解し、均一なNMP溶液を調製した。
【0126】
【化25】
【0127】この溶液を容器ごと氷冷した状態で、さら
に(c)ジカルボン酸誘導体として2−クロロテレフタ
ルジ酸クロライド9.6ミリモル(2.2798g)を
加えて30分間攪拌し、オリゴマー(I)を合成した。(2)オリゴマー(II) (マトリックスブロック)の合
上記したオリゴマー(I)の合成と同時に、乾燥したア
ルゴン気流下で、よく乾燥したフラスコにNMP17m
lを入れ、これに下記の(化26)で表される化合物
(b)12ミリモル(2.5470g)を加えて溶解
し、均一なNMP溶液を調製した。
【0128】
【化26】
【0129】この溶液を容器ごと氷冷した状態で、さら
に(c)ジカルボン酸誘導体として2−クロロテレフタ
ル酸ジクロライド10.4ミリモル(2.4696g)
を加えて30分間攪拌し、オリゴマー(II) を合成し
た。
【0130】(3)PBZ−T前駆体ブロックコポリマ
ーの合成 上記の操作で得られたオリゴマー(I)のNMP溶液
に、オリゴマー(II) のNMP溶液を加え、氷冷〜室温
にて6時間攪拌した。得られた溶液を大量のエタノール
中に注ぎ、ポリマーを凝固させた。なお、この操作はエ
タノールを攪拌しながら行った。エタノールで数回洗浄
後、得られた沈澱(ポリマー)を真空中、120℃で乾
燥した。このポリマーの固有粘度ηinh は、1.4(g
/dl)であった。なお、固有粘度の測定はNMP中
で、ポリマー濃度を0.5g/dlとし、30℃にてウ
ベローデ法により行った。
【0131】なお、このポリマーにおいて、オリゴマー
(I)に由来し、剛直性を発現する部位の重合度mと、
オリゴマー(II) に由来し、マトリックスとなり、柔軟
性を発現する部位の重合度nの分子全体における比
(m:n、ここでmおよびnはそれぞれポリマー全体で
の合計をとる)は、4:6となる。
【0132】(4)成形 上記のようにして得られたポリマー凝固粉をNMPに溶
解し、25重量%濃度とし、室温〜80℃で1週間攪拌
して混合し、均一な溶液を得た。この溶液を大量のエタ
ノール中にスプレーして吹き込み、ポリマー急速凝固粉
を得た。これをろ過し、得られた凝固粉を120℃で真
空乾燥した。得られたポリマー凝固粉を図7に示す金型
に充填し、金型ホットプレス成形を230℃にて行った
のち、そのまま金型を昇温し、320℃にて型内熱処理
によりPBZ−T前駆体ブロックコポリマーを閉環し
た。このようにして15×50×2t(mm)の平板成
形品T/Pを得た。この時の金型の加熱および圧力プロ
グラムは図2に示す。また加熱はアルゴン雰囲気グロー
ブボックス中で行った。
【0133】得られた成形品の透過電子顕微鏡写真(超
薄切片法、倍率56000倍)を図3に示す。成形品は
母材マトリックス中にPBZ−Tリッチ相が連続した3
次元網目状の相として均一に存在していることが判る。
また、網目の平均径は0.3μm以下であり、PBZ−
T連続相の径は約60nmであった。また、成形品の物
性を表1に、高温時の曲げ物性を示すグラフを図4に示
す。
【0134】
【表1】
【0135】比較例1 乾燥したアルゴン気流下で、よく乾燥したフラスコにN
MP100mlを採り、これに、上記の(化26)で表
される化合物(b)94.2ミリモル(20.0g)を
加えて溶解し、均一なNMP溶液を調製した。この溶液
を容器ごと氷冷した状態で、さらに(c)ジカルボン酸
誘導体として2−クロロテレフタル酸ジクロライド9
4.2ミリモル(22.3762g)を加えて、氷冷〜
室温で6時間攪拌し、実施例1のブロックコポリマー中
のマトリックスブロックと同様の構造式で表されるポリ
マーを合成した。
【0136】得られた溶液を大量のエタノール中に注
ぎ、ポリマーを凝固させた。なお、この操作はエタノー
ルを攪拌しながら行った。エタノールで数回洗浄後、得
られた沈澱(ポリマー)を真空中、120℃で乾燥し
た。得られたポリマー凝固粉を図8に示す金型に充填
し、金型ホットプレス成形を行い、15×50×2t
(mm)の平板成形品T/Pを得た。この時の金型の加
熱および圧力プログラムは図5に示す。成形品の物性を
表1に、高温時の曲げ物性を示すグラフを図4に示す。
実施例1の成形品は比較例1の成形品に比較して高温時
の物性低下が小さくなったことが判る。
【0137】実施例2 化合物(b)として下記の式(化27)で示されるジア
ミンを3.5082g用いてオリゴマー(II) を合成し
た以外は全て実施例1と同様にして下記の式(化28)
で示されるPBZ−T前駆体ブロックコポリマーの合成
反応を行った。
【0138】
【化27】
【0139】
【化28】
【0140】反応終了後、反応溶液を25重量%となる
様に調製し、この溶液を直接大量のエタノール中にスプ
レーして吹き込み、ポリマー急速凝固粉を得た。これを
ろ過し、得られた凝固粉を120℃で真空乾燥した。こ
のポリマーの固有粘度ηinh は、1/2(g/dl)で
あった。なお、固有粘度の測定はNMP中で、ポリマー
濃度を0.5g/dlとし、30℃にてウベローデ法に
より行った。なお、このポリマーにおいて、オリゴマー
(I)に由来し、剛直性を発現する部位の重合度mと、
オリゴマー(II) に由来し、マトリックスとなり、柔軟
性を発現する部位の重合度nの分子全体における比
(m:n、ここでmおよびnはそれぞれポリマー全体で
の合計をとる)は、4:6となる。
【0141】このようにして得られた凝固粉を金型に充
填し、実施例1と同様に成形した。ただし、金型の加熱
および圧力は図6に示すプログラムで行った。成形品の
物性を表2に示す。
【0142】
【表2】
【0143】比較例2 乾燥したアルゴン気流下で、よく乾燥したフラスコにN
MP60mlを採り、これに、上記の(化27)で表さ
れる化合物(b)40ミリモル(11.6935g)を
加えて溶解し、均一なNMP溶液を調製した。この溶液
を容器ごと氷冷した状態で、さらに(c)ジカルボン酸
誘導体として2−クロロテレフタル酸ジクロライド40
ミリモル(9.4988g)を加えて、氷冷〜室温で6
時間攪拌し、実施例2のブロックコポリマー中のマトリ
ックスブロックと同様の構造式で表されるポリマーを合
成した。
【0144】得られた溶液を大量のエタノール中に注
ぎ、ポリマーを凝固させた。なお、この操作はエタノー
ルを攪拌しながら行った。エタノールで数回洗浄後、得
られた沈澱(ポリマー)を真空中、120℃で乾燥し
た。得られたポリマー凝固粉を比較例1と同様にして、
金型ホットプレス成形を行い、15×50×2t(m
m)の平板成形品T/Pを得た。成形品の物性を表2に
示す。
【0145】
【発明の効果】本発明では、補強高分子である芳香族複
素環ポリマーに屈曲性を有するフラグメントを導入し共
重合体とし、分子内に補強高分子とマトリックスとの2
つの要素を合わせもたせている。そして、補強材である
芳香族複素環ポリマーブロックを3次元網目構造とする
ことにより、マトリックス中に良好に均一に分散させる
ことができる。かくて、一般的な溶融成形が可能とな
り、成形時にも大きな相分離を生じず、芳香族複素環ポ
リマーの凝集もなく、機械的特性に優れた高分子材料を
得ることができる。また、2つのポリマーを複合させる
ために長時間攪拌する必要がなく、効率的である。
【0146】このような同一分子内での微細複合化によ
って、少量の補強成分添加でも、剛性、硬度、高温時物
性を大幅に向上させ、線膨張係数も軽合金並みに低下さ
せることができる。本発明の高分子材料は、良好な機械
的強度を有するために、自動車部品、航空部品、宇宙機
器を始めとして、幅広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のブロックコポリマーの状態を表す模式
図である。
【図2】実施例1における加熱および圧力プログラムで
ある。
【図3】実施例1における電子顕微鏡写真(倍率560
00倍)である。
【図4】実施例1と比較例1の成形品の曲げ弾性率と温
度との関係を示すグラフである。
【図5】比較例1における加熱および圧力プログラムで
ある。
【図6】実施例2における加熱および圧力プログラムで
ある。
【図7】実施例1で用いられるガス抜き可能な金型の構
成図である。
【図8】比較例1で用いられる金型の構成図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C08J 5/00 CFJ C08J 5/00 CFJ

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 芳香族複素環を含むブロックと芳香族ア
    ミドを含むブロックよりなる芳香族複素環ブロックコポ
    リマー。
  2. 【請求項2】 芳香族複素環を含むブロックが主鎖に芳
    香族環および縮合環を有するものである請求項1記載の
    芳香族複素環ブロックコポリマー。
  3. 【請求項3】 縮合環がチアゾール環、オキサゾール
    環、イミダゾール環、およびオキサジノン環の少なくと
    も1種である請求項1〜2いずれか1項記載の芳香族複
    素環ブロックコポリマー。
  4. 【請求項4】 未閉環の芳香族複素環コポリマー前駆体
    を金型ホットプレス成形し、その後、型内熱処理するこ
    とにより、芳香族複素環前駆体ブロックの閉環を行い、
    芳香族複素環ブロックコポリマーを得ることを特徴とす
    る芳香族複素環ブロックコポリマー成形体の製造方法。
  5. 【請求項5】 請求項4に記載の製造方法により製造さ
    れた芳香族複素環ブロックコポリマー成形体。
JP34614995A 1995-12-12 1995-12-12 芳香族複素環ブロックコポリマーおよび芳香族複素環ブロックコポリマー成形体ならびにその製造方法 Pending JPH09157394A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6316564B1 (en) 1999-10-07 2001-11-13 E. I. Du Pont De Nemours And Company Acrylic block copolymer pigment dispersants containing heterocyclic groups

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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