JPH09150792A - 船舶の加速方法および加速装置 - Google Patents

船舶の加速方法および加速装置

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JPH09150792A
JPH09150792A JP30881495A JP30881495A JPH09150792A JP H09150792 A JPH09150792 A JP H09150792A JP 30881495 A JP30881495 A JP 30881495A JP 30881495 A JP30881495 A JP 30881495A JP H09150792 A JPH09150792 A JP H09150792A
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JP
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hydraulic
clutch
valve
acceleration
oil
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Application number
JP30881495A
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English (en)
Inventor
Masayuki Kubo
▲まさ▼之 久保
Junichi Hitachi
純一 常陸
Toshihiko Kusano
俊彦 草野
Akira Shoji
昭 荘司
Tsutomu Kumamoto
努 隈元
Hideo Misao
秀夫 三竿
Shinji Ogawa
新治 小川
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Yanmar Co Ltd
Original Assignee
Yanmar Diesel Engine Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 過給機が起動するまでの加速性能が劣るとい
う難点をもつ、過給機を付設したエンジンを搭載する船
舶において、この加速の劣性を解消すべく、加速時に予
めエンジン回転数を高く上昇させておいてからクラッチ
を嵌合して、加速させるようにしているが、この時のク
ラッチ嵌合によるショックの発生やクラッチの破損等を
解消するため、過給機が起動するまでは半クラッチにて
加速するように構成することを課題とする。 【解決手段】 油圧クラッチ嵌合用の作動油供給用油路
R1より分岐するドレン油路R5に介設する作動油圧調
整弁V5の開弁度を制御する緩嵌入弁V6を、加速設定
スイッチSW1の操作と、タイマーTの設定時間にて切
り換える加速制御用電磁弁V7にて制御するクラッチス
リップ機構を設けた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、過給機を具備した
漁船等の船舶において、船舶を加速する際に、過給機が
機能を開始するまで油圧クラッチをスリップさせるため
の船舶の加速方法および加速装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、小型漁船等の舶用減速機の構造に
ついては、特開平4−31194に開示されている如き
ものがあり、また、近年、小型漁船用等の舶用機関にお
いて、規定内の小径ボアで大出力を実現するために、過
給機を付設したものが増えている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】漁船は、朝の出漁時に
一早く漁場に到着して、その場所を占有するという必要
性がある。ところが、過給機が付設された舶用機関で
は、機関の回転数が一定以上になって初めて、過給機の
タービンの回転数が所定回転数に達し、吸気の過給状態
が発生、即ち、過給機が機能するのであり、それまでの
低回転域では、過給機のタービン回転数が低いために、
充分な吸気を押し込むことができず、過給機起動分の出
力も要するので、機関回転数が所定回転数まで上昇しな
いという不具合がある。即ち、発進後の低回転域におけ
る加速が却って悪くなるのである。
【0004】このため、過給機を具備した船舶で、加速
性を高めようとする場合には、まず減速機のクラッチ
(油圧クラッチ)を離間した状態でエンジン回転数を高
めておき、クラッチを嵌合して、一気に過給機の機能開
始する回転数に上昇させるようにするという運転方法が
取られる。しかし、これではクラッチの嵌合と同時に急
加速することに対して、乗船員に発進時の安全態勢を取
ることが要求され、またこのような状態でクラッチを嵌
合するのは、クラッチの耐久性を低下させ、破損にも繋
がる。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、以上のような
問題を解決するため次のような手段を用いるものであ
る。即ち、請求項1の如く、過給機付エンジンと、油圧
ポンプから前後進切換弁を介して前進用油圧クラッチと
後進用油圧クラッチに択一的にクラッチ嵌合用の作動油
を供給する油圧回路を有し、該油圧回路に作動油圧力制
御手段を設けた減速逆転機とを備えた船舶において、加
速設定時に前記過給機がその機能を発揮する回転数にな
るまで油圧クラッチをスリップさせるようにした。ま
た、請求項2の如く、過給機付エンジンと油圧式減速逆
転機とを付設した船舶であって、油圧ポンプから前後進
切換弁を介して前進用油圧クラッチと後進用油圧クラッ
チに択一的にクラッチ嵌合用の作動油を供給する油圧回
路を有し、加速時において該低速弁への作動油の供給量
を徐々に増大させるべく、該作動油供給用の油圧回路か
らの作動油リーク回路にリリーフ弁及びこれを制御する
緩嵌入弁を具備したものにおいて、加速設定時に該リリ
ーフ弁を開弁し、該過給機の機能開始時期にこれを閉弁
する如く緩嵌入弁を制御するクラッチスリップ用制御機
構を設けた。
【0006】また、請求項3の如く、過給機付エンジン
と油圧式減速逆転機とを付設した船舶であって、油圧ポ
ンプから低速弁、前後進切換弁を介して前進用油圧クラ
ッチと後進用油圧クラッチに択一的にクラッチ嵌合用の
作動油を供給する油圧回路を有するものにおいて、該油
圧回路の該低速弁と該前後進切換弁との間の油路に、加
速設定時に該過給機が機能を開始するまで作動油の圧力
を低下させるクラッチスリップ用バルブ機構を介設し
た。
【0007】また、請求項4の如く、過給機付エンジン
と油圧式減速逆転機とを付設した船舶であって、油圧ポ
ンプから前後進切換弁を介して前進用油圧クラッチと後
進用油圧クラッチに択一的にクラッチ嵌合用の作動油を
供給する油圧回路を有し、かつ、加速設定時に該過給機
が機能を開始するまでの間、油圧クラッチをスリップ状
態とすべく、該油圧回路のクラッチ嵌合用作動油の流量
を制限するクラッチスリップ機構を設けたものにおい
て、加速設定時であっても、該前後進切換弁が後進設定
となっておらず、かつエンジン回転数が一定以上となっ
た時にのみ、該クラッチスリップ機構を機能させるよう
構成した。
【0008】また、請求項5の如く、過給機付エンジン
と油圧式減速逆転機とを付設した船舶であって、油圧ポ
ンプから前後進切換弁を介して前進用油圧クラッチと後
進用油圧クラッチに択一的にクラッチ嵌合用の作動油を
供給する油圧回路を有し、かつ、加速設定時に該過給機
が機能を開始するまでの間、油圧クラッチをスリップ状
態とすべく、該油圧回路のクラッチ嵌合用作動油の流量
を制限するクラッチスリップ機構を設けたものにおい
て、該クラッチスリップ機構の機能する加速設定を、一
回限りか、或いは継続かを選択可能とした。
【0009】また、請求項6の如く、過給機付エンジン
と油圧式減速逆転機とを付設した船舶であって、油圧ポ
ンプから前後進切換弁を介して前進用油圧クラッチと後
進用油圧クラッチに択一的にクラッチ嵌合用の作動油を
供給する油圧回路を有し、かつ、加速設定時に該過給機
が機能を開始するまでの間、油圧クラッチをスリップ状
態とすべく、該油圧回路のクラッチ嵌合用作動油の流量
を制限するクラッチスリップ機構を設けたものにおい
て、該クラッチスリップ機構の作動時に、該油圧クラッ
チの潤滑油温度が一定以上となると、該機構の作動を停
止するよう構成した。
【0010】また、請求項7の如く、過給機付エンジン
と油圧式減速逆転機とを付設した船舶であって、油圧ポ
ンプから前後進切換弁を介して前進用油圧クラッチと後
進用油圧クラッチに択一的にクラッチ嵌合用の作動油を
供給する油圧回路を有し、かつ、加速設定時に該過給機
が機能を開始するまでの間、油圧クラッチをスリップ状
態とすべく、該油圧回路のクラッチ嵌合用作動油の流量
を制限するクラッチスリップ機構を設けたものにおい
て、該クラッチスリップ機構は、通電時に作動する構成
とした。
【0011】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施例を添付の図
面をもとに説明する。図1は作動油圧調整弁V5及び緩
嵌入弁V6をクラッチスリップ用バルブとして転用した
クラッチスリップ機構CSを設けた油圧クラッチ用油圧
回路図、図2は図1における作動油圧調整弁V5及び緩
嵌入弁V6の正面断面図、図3は図1の油圧クラッチ用
油圧回路における急加速時の作動油圧の推移を示すタイ
ムチャート図、図4はクラッチスリップ機構CSを低速
弁V1及び前後進切換弁V2との間の油路に設けた油圧
クラッチ用油圧回路図、図5は図4の油圧クラッチ用油
圧回路における機関回転数に対する作動油圧の推移を示
すグラフで、半クラッチ状態からクラッチ嵌合状態への
移行タイミングの調整を示す図、図6は同じく作動油圧
の推移を示すグラフで、半クラッチ時の作動油圧の調整
を示す図、図7は発進加速時の機関回転数ER及びクラ
ッチ回転数CRと作動油圧pの推移を示すグラフで、ク
ラッチスリップ機構CSを作動させない状態における
図、図8は同じくクラッチスリップ機構CSを作動させ
た状態における図、図9は加速制御装置Cの正面図、図
10は同じく内部電気回路図、図11はクラッチスリッ
プ機構CSのON・OFF制御のフローチャート図、図
12は図11の続きのフローチャート図である。
【0012】舶用減速機における油圧クラッチへの作動
油供給用の油圧回路について、その主要構成を図1等よ
り説明する。油圧ポンプOPより油路R1を介して低速
弁V1(作動油圧力制御手段)に、更に、該低速弁V1
より油路R2を介して前後進切換弁V2に、作動油が供
給され、該前後進切換弁V2は、前後進切換レバーL2
にて切換操作されて、前進用油圧クラッチFCへの油路
R3か後進用油圧クラッチRCへの油路R4かのどちら
かに択一的にクラッチ嵌合用の作動油を供給する状態
か、或いはどちらにも作動油を供給しない中立状態かに
切り換えられる。なお、低速弁V1は、トローリング状
態とする時に低速レバーL1にて切換操作されて、前後
進切換弁V2への作動油供給量を抑制するものであり、
ガバナバルブV3より作動油が供給されて、エンジン回
転を低速域で一定に保持すべく、作動油の流通量を制御
するのである。
【0013】また、油圧ポンプOPと低速弁V1との間
の油路R1からは、ドレン回路R5が分岐されていて、
該ドレン回路R5に、油路R1の油圧保持のためのリリ
ーフ弁である作動油圧調整弁V5が介設されており、ま
た、該作動油圧調整弁V5を利用して、前進切換時また
は後進切換時のクラッチ嵌合によるショックを緩和する
ための緩嵌入弁V6(作動油圧力制御手段)が、該作動
油圧調整弁V5に連設されている。
【0014】簡単に緩嵌入弁V4の作用について説明す
る。作動油圧調整弁V5は、中立時にドレン回路R5を
流動する作動油圧に応じて開弁しているが、前後進切換
弁V2を前進設定または後進設定に切り換えた時、油路
R7’及び油路R7を介して作動油が緩嵌入弁V6に供
給され、該緩嵌入弁V6が押し下げられて、該作動油圧
調整弁V5を閉弁する。この閉弁時において、該作動油
圧調整弁V5と該緩嵌入弁V6との間にはバネが介設さ
れているので、このバネの収縮により、該作動油圧調整
弁V5は該緩嵌入弁V6の動作よりも緩慢に動作し、徐
々に閉弁状態となる。これによって、該油路R2〜R3
またはR4への作動油供給量は、徐々に増大し、従っ
て、油圧クラッチFCまたはRCが徐々に嵌合するの
で、クラッチ嵌合時のショックが緩和されるのである。
【0015】該ドレン回路R5において、該作動油圧調
整弁V5の下手側には、潤滑油クーラーLC、潤滑油コ
シ器Sが介設されており、その下手側にてドレンタンク
へと通ずるドレン回路R5の本流と、潤滑油回路R6と
に分岐しており、該ドレン回路R5を通過する作動油を
ドレンタンクに戻すか、或いは潤滑油回路R6に補填
し、潤滑油回路R6a・R6bを介して油圧クラッチF
C・RCに潤滑油として供給する。また、同じく油路R
1に安全弁V4が介設されていて、油圧過剰となった場
合のリリーフ弁となっている。
【0016】このような油圧クラッチへの作動油供給用
油圧回路において、加速時より過給機の機能開始時期ま
での間、この油圧回路における圧油供給量を制限して、
油圧クラッチを半クラッチ状態にするクラッチスリップ
機構CSを設けるのが、本発明に係る機構の趣旨であ
る。まず、このクラッチスリップ機構CSは、最初にク
ラッチを離しておいて、エンジン回転数を上昇させた
後、加速する場合のみに必要であって、それ以外の通常
の加速時に作動させていては、半クラッチ状態で却って
船舶が加速しない状態となるので、不必要である。そこ
で、加速時にのみクラッチスリップ機構CSを機能させ
るように、加速設定スイッチSW1を設けている。これ
は、押しボタン式でもよい。
【0017】クラッチスリップ機構CSは、加速設定ス
イッチSW1をONすると、前記の油圧クラッチへの圧
油供給用回路R1〜R2より圧油をリリースする構成と
するものである。まず、図1図示の油圧回路におけるク
ラッチスリップ機構CSについて説明する。本実施例で
は、クラッチへの供給圧油からクラッチスリップのため
に圧油をリークさせるバルブとして、既設の前記作動油
圧調整弁V5及び緩嵌入弁V6を使用している。新た
に、このためのバルブを設けることも考えられるが、こ
のように既設のバルブを使用すれば、コストを抑制でき
るし、また、これで充分にその機能を果たせる。
【0018】該緩嵌入弁V6は、前記の如く、前後進切
換弁V2の前進または後進切換時において、一時的に作
動油圧調整弁V5を開弁すべく構成されているものであ
り、これらをクラッチスリップ機構CSに組み入れる構
成においては、加速設定スイッチSW1のON時に該緩
嵌入弁V6を押し上げて該作動油圧調整弁V5を開弁
し、その後、この開弁状態を保持して、過給機の起動回
転数となった時に該緩嵌入弁V6を基に戻して該作動油
圧調整弁V5を閉弁するようにしなければならない。こ
のため、該緩嵌入弁V6の構成を変更し、加速設定スイ
ッチSWの操作に基づいて切換操作される加速制御用電
磁弁V7より適時に供給される作動油にて作動制御され
るようにしている。
【0019】図1の油圧回路に使用する作動油圧調整弁
V5及び緩嵌入弁V6について、図2より説明する。該
作動油圧調整弁V5を内設する本体ハウジングH1上
に、該緩嵌入弁V6の補助ハウジングH2を固設し、ま
た、該補助ハウジングH2の上に蓋ハウジングH3を固
設している。このようなハウジング構成において、その
内部構成を説明すると、まず、本体ハウジングH1内に
おいては、水平断面積の異なる上下三段の室を連接して
なる弁室1が穿設されていて、上から順に、断面積の異
なる上弁室1a・中弁室1b・下弁室1cを形成してい
る。下弁室1cでは、本体ハウジングH1内に穿設され
たドレン回路R5における、油路R1より分岐した上手
側ドレン回路R5aの終端部と、潤滑油クーラーLCに
通ずる下手側ドレン回路R5bの始端部とが開口してい
る。
【0020】また、該本体ハウジング1内には、他に、
前記油路R7に連通する作動油路2と、該上手側ドレン
回路R5aの途中部に連通する注油ポート5が穿設され
ている。該作動油路2は、本体ハウジングH1上端にて
開口し、その上に固設した補助ハウジングH2の下端に
穿設した連通路3を介して、該上弁室1aの上端に連通
しており、弁室1内に油路R7からの作動油が流入可能
となっている。また、該弁室1内に内嵌される作動油圧
調整弁V5及び緩嵌入弁V6の上下動に伴う作動油の逃
がし油路として、該注油ポート5と中弁室1bとの間に
逃がし油路4が穿設されている。
【0021】作動油圧調整弁V5は、下弁室1c内に内
嵌されており、上方に摺動すると、該下弁室1cの底部
と該作動油圧調整弁V5との間に該上手側ドレン回路R
5aからのドレン油が入り込み、また、該該上手側ドレ
ン回路R5aと下手側ドレン回路R5bとが連通して、
このドレン油が該下手側ドレン回路R5bへと流出す
る。こうして、ドレン回路R5が開弁して、油路R1か
らドレン回路R5に作動油が流通するようになってい
る。
【0022】一方、緩嵌入弁V6を内設する補助ハウジ
ングH2及び蓋ハウジングH3内には、本体ハウジング
H1における弁室1(上弁室1a)に連通するピストン
室7と、該ピストン室7に連通する吸入ポート6を穿設
しており、該吸入ポート6は前記の加速制御用電磁弁V
7からの油路R9に連通している。なお、ピストン室7
の内径d1 は、弁室1における最も内径の長い上弁室1
aの内径d2 よりも長くしている。
【0023】緩嵌入弁V6は、上下に長いスプール状
で、その下端部がピストンとなっていて、このピストン
部を上弁室1a内に上下摺動自在に内嵌しており、その
上部をピストン室7内に内嵌している。そして、該ピス
トン室7内において、該緩嵌入弁V6にピストン8を環
設しており、該ピストン8が該ピストン室7内にて上下
に摺動自在となっている。
【0024】作動油圧調整弁V5と緩嵌入弁V6との連
結部材として、該緩嵌入弁V6の下端ピストン部と該作
動油圧調整弁V5の底部との間には、バネ定数の小さい
バネ9が介設されており、また、該緩嵌入弁V6の下端
ピストン部と該作動油圧調整弁V5の上端部との間に
は、バネ定数の大きいバネ10が、該バネ9の周囲を取
り巻く形で介設されている。
【0025】作動油圧調整弁V5及び緩嵌入弁V6の構
成は以上であり、次に、加速制御用電磁弁V7について
説明する。該加速制御用電磁弁V7は、前記の如く、該
緩嵌入弁V6の作動油供給用バルブであって、油路R1
より分岐する油路R8と緩嵌入弁V6への作動油供給用
回路である油路R9との間に介設され、加速設定スイッ
チSW1をONした時にスプールが押されて開弁し、油
路R8・R9を連通させて、油路R1より該緩嵌入弁V
6に作動油を流通する。
【0026】また、該加速制御用電磁弁V7は、過給機
が起動する程度にまでエンジン回転数が上昇したら、油
圧クラッチを完全に嵌合状態にすべく、それを見越して
自動的に閉弁状態に切り換わって、該緩嵌入弁V6への
作動油供給を停止するようにしなければならない。本実
施例では、該加速設定スイッチSW1より該加速制御用
電磁弁V7のスプールへの通電用電気回路にタイマーT
を設けている。該加速制御用電磁弁V7は、加速してか
ら過給機が機能開始するまでの時間を一律的に設定して
あり、該加速制御用電磁弁V7の閉弁時期と該過給機の
機能開始時期とは多少の誤差を生じるものの、特に大き
な不具合はなく、安価であるので、利用価値は高い。ま
た、搭載する船型の相違等に応じて、設定時間を変更す
るだけで対処できるものであり、汎用性がある。
【0027】その他、コスト高となることが許容され、
より一層の精密性が要求されるのなら、エンジン回転数
の検出センサーを設け、該センサーの検出するエンジン
回転数が、過給機の機能開始する一定の回転数に到達し
た時に閉弁指示をする如きコントローラを設けてもよ
い。また、エンジン回転数と、出力軸回転数であるクラ
ッチ回転数を検出し、両回転数の差が一定以下に縮まれ
ば、閉弁する構成としてもよい。
【0028】以上のように構成された、図1及び図2に
おけるクラッチスリップ機構CSの作動過程を説明す
る。まず、前後進切換弁V2は中立状態にしておき、加
速設定スイッチSW1をONすると、加速制御用電磁弁
V7が開弁して、油路R1より油路R8へと圧油を流通
し、補助ハウジングH2の吸入ポート6に作動油として
供給する。この作動油がピストン室7内に入り、ピスト
ン8が上方に押し上げられ、これと一体の緩嵌入弁V6
が上昇し、バネ9・10の連結により作動油圧調整弁V
5も上昇して開弁状態となり、ドレン回路R5が連通
し、R1よりドレン回路R5に作動油がリリースされ
る。これによって、油圧クラッチへの作動油供給回路で
あるR1・R2における作動油流動量が低減し、最終的
に、緩嵌入弁V6が完全に上昇して、作動油圧調整弁V
5が完全に開弁した状態では、図3の如く、油路R2
(或いはR1)におけるクラッチ嵌合用の作動油圧p
は、p0 となっている。
【0029】この状態から、エンジン回転数を上げてお
いて、前後進切換弁V2を前進設定に切り換える(加速
は、前進のみに使用するものとする。後に詳述。)と、
該前後進切換弁V2を介して、油路R1に連通する油路
R7’と作動油路R7とが連通して、該作動油路R7を
介して、作動油が弁室1内に流入し、緩嵌入弁V6を押
し下げる。該緩嵌入弁V6の下降時においては、バネ9
・10が収縮して、作動油圧調整弁V5は、急には下降
しない。まず、バネ10よりも下方に突出するバネ9
が、バネ定数が低いので弱い押当力で作動油圧調整弁V
5を下方に押す。図3において、前後進切換弁V2を前
進切換した時をt0 としており、この後、作動油圧p
は、該バネ9のみの作動油圧調整弁V5の押当にて、X
の如く緩やかに上昇推移する。従って、油圧クラッチF
Cは、離間状態から半クラッチ状態に徐々に推移する。
やがて、バネ定数の高いバネ10の押当力が加わり、作
動油圧調整弁V5が両バネ9・10にて強く下方に押さ
れるので、作動油圧pは、Yの如く急速に推移する。
【0030】過給機起動設定時、即ち、タイマーTのタ
イムリミットまでは、半クラッチ状態を保持すべく、作
動油圧p1 を保持しなければならない。そこで、前記の
如くピストン室7の内径d2 を、上弁室1aの内径d1
よりも大きく設定して、該上弁室1aの内圧よりも、該
ピストン室7の内圧を少し高くし、この内圧で押し上げ
ることで、ピストン8が、最下端までゆかずに、ある程
度の位置で停止するようにしている。この停止位置を、
作動油圧pが半クラッチの基準圧p1 となるように設定
しているのであり、作動油圧調整弁V5及び緩嵌入弁V
6は、該作動油圧pをp1 とする位置で保持され(グラ
フS部分)、油圧クラッチFCは、半クラッチ状態を保
持するのである。
【0031】そして、過給機の起動時を見込んでセット
してあるタイマーTが、図3図示の設定時間t1 に達す
ると、加速制御用電磁弁V7が閉弁状態に切り換わっ
て、該ピストン室7内への作動油流入が停止する。する
と、ピストン室7内の、ピストン8下方の油圧が低下す
るので、ピストン8が下降し、即ち、緩嵌入弁V6が下
降して、バネ9・10の押当力にて作動油圧調整弁V5
を下方に押し、やがて最下端に到達して閉弁状態となる
(時間t2 )。作動油圧pは、図3の如く、設定時間t
1 時で半クラッチ基準圧p1 であった状態から上昇して
(グラフY’部分)、該作動油圧調整弁V5が閉弁する
ことにより、油圧クラッチFCが完全に嵌合状態となる
規定油圧p2 に達するのである。
【0032】以上は、作動油圧調整弁V5及び緩嵌入弁
V6を利用したクラッチスリップ機構CSを説明したも
のであり、次に、図4図示のクラッチ作動油供給用油圧
回路におけるクラッチスリップ機構CSについて説明す
る。本実施例においては、クラッチスリップ機構CS
を、低速弁V1と前後進切換弁V2との間の油路R2に
おいて配設している。すなわち、油路R2より半クラッ
チのための作動油のリークをさせるように構成してい
る。
【0033】まず、油路R2よりクラッチ嵌合用の作動
油をリークさせるためのバルブとして、油圧パイロット
弁であるクラッチスリップ用弁V8を介設し、ドレンタ
ンクに通じるリーク回路R11を該油路R2より分岐さ
せている。一方、図1の実施例と同様に、加速設定スイ
ッチSW1のONで切り換わり、過給機起動時を見越し
てセットしたタイマーTの設定時間で初期位置に切り換
わるように構成した加速制御用電磁弁V7’を配設して
いる。該加速制御用電磁弁V7’は、初期状態即ち、加
速設定スイッチSW1がOFFの時に、油路R1より分
岐する油路R8とパイロット油路R10とを連通し、こ
れによって、該クラッチスリップ用弁V8にパイロット
油が送油され、該クラッチスリップ用弁V8は、閉弁状
態にセットされる。そして、加速設定スイッチSW1が
ONすると、該加速制御用電磁弁V7’は、パイロット
油路R10よりパイロット油をドレンする状態に切り換
わり、パイロット圧がなくなることで、該クラッチスリ
ップ用弁V8は、開弁状態に切り換えられるのである。
【0034】ここで、該リーク回路R11には、該クラ
ッチスリップ用弁V8の下手側において、絞り11が設
けられていて、該クラッチスリップ用弁V8の開弁時に
おいても、油路R2を通過する作動油圧、半クラッチの
ために必要な油圧を確保するように、該リーク回路R1
1を流通する油量を制限している。
【0035】このようなクラッチスリップ機構CSの構
成により、作動油圧p、更に機関回転数と出力軸の回転
数の立ち上がり状態における効果を図5乃至図8より説
明する。まず、クラッチ嵌合用の、油路R2を通過して
前後進切換弁V2に供給される油圧である作動油圧p
は、図5及び図6に示す如く、機関停止状態から機関回
転数ERを上げるにつれて、エンジン出力による油圧ポ
ンプOPの吐出圧が上昇することから、上昇する。この
作動油圧pの上昇態様は、通常に発進当初から油圧クラ
ッチを嵌合した状態である場合には、当初に規定の作動
油圧pC (図3図示の規定作動油圧p2 と同義)が確保
されており、機関回転数ERの上昇と略比例的に漸次的
に上昇していく(グラフA)。
【0036】これが、クラッチスリップ機構CSを用い
ることによって、加速当初には、半クラッチ状態となる
低圧の作動油圧である半クラッチ圧ps に作動油圧pを
落としておき、(機関回転数ERの上昇に対応して、油
圧ポンプOPの吐出圧の上昇によって徐々に作動油圧p
が上昇するものの、)半クラッチ圧ps を略保持したま
まで、機関回転数ERを上昇し、適宜時、即ち、過給機
起動回転数付近にて、半クラッチからクラッチ嵌合に移
行させるべく、作動油圧pを、規定油圧p2 に立ち上げ
る。こうして、機関回転数がr2 となり、作動油圧p
も、当初からクラッチ嵌合していた状態での作動油圧に
復帰する。図1及び図4の油圧回路においては、過給機
起動時を見越したタイマーTを用いているが、このよう
に、機関回転数ERと作動油圧pとのマップを使用すれ
ば、前記のように、コントローラーにて機関回転数を検
出して、過給機起動回転数が検出された時に、半クラッ
チからクラッチ嵌合に移行させるべく、作動油圧pを上
昇復帰させる構成とすることができる。
【0037】クラッチスリップ機構CSにおける機関回
転数ERの上昇に対する作動油圧pの上昇様態について
は、クラッチスリップ機構CSのバルブの設定等によっ
て、図5中のBa、Bb、Bcのように、様々にでき
る。Baは、加速当初における半クラッチの作動油圧か
らクラッチ嵌合の作動油圧まで、機関上昇とともに緩や
かに上昇させている。Bb、Bcにおいては、いずれも
過給機起動回転数を見越した設定回転数r1 、r1 ’を
取っており、該設定回転数r1 、r1 ’までは半クラッ
チの作動油圧を略一定に保持し、該設定回転数r1 、r
1 ’となった時にクラッチを嵌合すべく、急速に作動油
圧pを立ち上げるようしている。Bbにおいては、設定
回転数r1 を低めに、Bcにおいては設定回転数r1
を高めに設定しているので、設定回転数以上における作
動油圧の立ち上がりは、Bcの方が急速なように構成し
ている。
【0038】また、図6のグラフBd、Be、Bfのよ
うに、半クラッチ圧ps を、ps1、ps2、ps3と様々に
設定することもできる。これは、図4図示のクラッチス
リップ機構CSにおけるリーク油路R11の絞り11
を、交換可能なものにしたり、或いはオリフィスにした
り、また、絞り量を調整可能なものとすることで可能で
ある。
【0039】以上のように、作動油圧pを制御して、加
速当初に半クラッチとし、設定時間からクラッチ嵌合状
態に移行させるクラッチスリップ機構CSを設けた(船
舶)機関において、加速時の機関及び出力回転数の上昇
態様を図7及び図8より説明する。まず、図7にて、通
常の発進加速時における機関回転数ERと、クラッチ回
転数(出力軸回転数)CRの上昇様態を検証する。作動
油圧pについては当初よりクラッチ嵌合のための規定油
圧pC を確保している。この状態から、前後進切換クラ
ッチV2を前進(または後進)に切り換え、アクセル操
作で機関回転数ERを上昇させるわけだが、クラッチが
嵌合しているので、クラッチ回転数CRも機関回転数E
Rと略同一に推移する。しかし、クラッチスリップ機構
CSを用いない場合には、加速時のショックを回避すべ
く、機関回転数ERの上昇は緩やかに行う必要がある。
ショックのないように、クラッチスリップ機構CSを用
いないで目標回転数ra まで出力回転数、即ちクラッチ
回転数CRを上げようと思えば、加速時間として、Δt
1 が必要である。
【0040】次に、図8によりクラッチスリップ機構C
Sを用いての加速時の回転数上昇を検証する。作動油圧
pは、加速当初に半クラッチとなる油圧pS となってお
り、この状態から前後進切換弁V2を前進切換すると、
半クラッチとなる。この半クラッチの状態で、アクセル
操作して機関回転数ERを急上昇させて、過給機が起動
するだけの回転数rt に早く到達させる。この間、作動
油圧pは低圧に保持されていて、出力回転数であるクラ
ッチ回転数CRは、機関回転数ERほどには急上昇しな
いが、半クラッチでも機関回転数ERが高いので、ある
程度急速に上昇する。そして、機関回転数ERが過給機
起動回転数rt となった時点で(タイマーTが設定時間
t’となった時点で)、作動油圧pをクラッチ嵌合に必
要な油圧pC に復帰させる。これにより、クラッチ回転
数がクラッチ回転数CRが機関回転数ERと同一数に復
帰し、その後、速やかに目標回転数ra に到達する。こ
のように、クラッチスリップ機構CSにより、ショック
なく機関回転数ERを急速に上昇させて、クラッチ回転
数CRを急加速させることができるので、目標回転数r
a に到達する加速時間Δt2 を短くすることができる
(Δt2 <Δt1 )。
【0041】なお、図1図示のクラッチスリップ機構C
Sにおいても、図4図示のクラッチスリップ機構CSに
おいても、クラッチ作動油供給用の油路R1またはR2
より作動油をリークさせるる緩嵌入弁V6またはクラッ
チスリップ用弁V8に作動油を供給する加速制御用電磁
弁V7またはV7’は、通電時において作動油供給を行
うものであって、非通電時には、初期位置に戻ってお
り、図1の場合には、緩嵌入弁V6が初期位置で、作動
油圧調整弁V5が閉弁状態になるものであり、また、図
4の場合には、クラッチスリップ用弁V8が閉弁状態と
なる。即ち、電源が故障した場合には、クラッチスリッ
プ機構CSが作動しないように構成されている。これに
より、電源停止時の緊急時において、クラッチスリップ
が作動することで加速が遅れ、緊急回避ができなくなる
という事態を防止できるのである。
【0042】以上のような図1、図4図示のクラッチス
リップ機構CSを制御するものとして、図9図示の加速
制御装置Cを設けている。該加速制御装置Cの外面にお
いては、電源スイッチSW0、加速設定スイッチSW
1、継続設定スイッチSW2、及びキャンセルスイッチ
SW3を設けており、また電源表示ランプL1、加速設
定表示ランプL2が設けられている。これらのスイッチ
やランプ類に係る装置内の回線については、図10の如
くである。
【0043】電源表示ランプL1は、電源スイッチSW
0をONし、電源が入れば点灯するようになっており、
加速設定表示ランプL2は、急加速がOKとなった場合
に点灯する構成となっており、この点灯に伴って、ブザ
ーも鳴動するようになっていて、ランプの点灯が目に入
らなくとも、加速ができる状態となったことが確認でき
るのである。
【0044】加速設定スイッチSW1は、前記の図1及
び図4でも説明したように、クラッチスリップ機構CS
を作動するスイッチであり、ONすると、同時に、図9
図示の該加速制御装置C内に内設されたタイマーTがカ
ウントを開始するようになっている。
【0045】継続設定スイッチSW2をONすると、加
速設定スイッチSW1がONのまま保持されるようにな
っている。クラッチスリップ機構CSは、加速設定スイ
ッチSW1をONすることで作動する訳だが、その都度
加速設定スイッチSW1のON操作をするとすれば、も
し加速を繰り返すような場合等に、スイッチのON操作
を忘れ、スイッチをONしたものと錯覚してエンジン回
転数を増速しておいて、クラッチを入れた場合に、急に
クラッチが嵌合し、ショックが発生する。そこで、この
ように加速を継続する場合には、一々加速設定スイッチ
SW1のON操作をしなくてもよいように、該継続設定
スイッチSW2をONすれば、その後、加速設定スイッ
チSWをONしなくても、クラッチスリップ機構CSが
作動するようにし、急加速時のショックを回避できる。
【0046】キャンセルスイッチSW3は、加速設定ス
イッチSW1をONしたものの、急にクラッチスリップ
を中止したい場合にONすると、前記加速制御用電磁弁
V7またはV7’への通電が停止し、クラッチスリップ
機構CSが作動しなくなるようにしている。例えば、半
クラッチの状態で急加速したが、エンジン回転数が、設
定時間になる以前に過給機が起動するぐらい充分に高く
なっており、途中で更に一気に加速して、目標の出力回
転数に上げようと思えば、クラッチを設定時間になるま
で半クラッチのままで待たずに、クラッチを嵌合させた
い場合がある。このような時には、キャンセルスイッチ
SW3をONすれば、クラッチスリップ機構CSがOF
Fして、油圧クラッチは、その時点から嵌合し、設定時
間より早く目標速度にすることができる。
【0047】また、図10の如く、加速制御装置C内の
クラッチスリップ機構CSのON・OFF制御回路に
は、リレー装置12を介してエンジン回転数検出回路1
3が連結されており、また、クラッチスリップ機構CS
のON・OFF制御回路内において、該エンジン回転数
検出回路13の制御信号に伴ってON・OFFするリレ
ースイッチ14が介設されている。
【0048】ここで、このエンジン回転数の検出に伴う
クラッチスリップ機構CSのON・OFF制御について
説明する。クラッチスリップ機構CSは、加速時におい
て作動させる構成としているが、様々な場面において、
加速スイッチSW1をONしていても作動を停止する方
がよい時もある。この中に、予めエンジンを増速してい
ない場合がある。つまり、加速設定スイッチSW1をO
Nしていても、急加速でなく、緩やかに加速する場合が
あり、この場合にもクラッチスリップ機構CSが作動し
ていると、出力回転数即ちクラッチ回転数は極めて低く
なって、なかなか加速しない。そこで、エンジン回転数
が規定回転数以上である場合にのみクラッチスリップ機
構CSが作動するように、前記の如くエンジン回転数検
出回路13やリレースイッチ14等を設けているのであ
る。
【0049】その他、加速設定スイッチSW1がONし
ていても、クラッチスリップ機構CSを作動させないケ
ースとしては、まず前進時以外の時である。中立時に
は、前後進切換弁V2が、両クラッチFC・RCに作動
油供給を停止しているから、クラッチスリップ機構CS
の作動は関係ないが、もし後進時にクラッチスリップ機
構CSが作動しているものとすれば、後進駆動は、ブレ
ーキとして使用したり、あるいは緊急時に進行方向を後
進方向に転換する場合等に使用するものなので、この場
合に半クラッチになっていると、後進駆動力がなかなか
上がらず、ブレーキが遅れたり、方向転換が遅れたりす
る結果を招く。そこで、加速設定スイッチSW1がON
していても、前後進切換弁V2がONしている場合にの
み、クラッチスリップ機構CSが作動するようにしてい
るのである。
【0050】また、船舶運転者が急加速をしたい時であ
っても、クラッチの状態により、クラッチスリップを回
避しなければならない時として、クラッチの潤滑油温度
が高い場合がある。クラッチスリップは、クラッチの摩
耗を引き起こすので、既にクラッチの潤滑油温度が高い
場合にクラッチをスリップさせると、クラッチが焼けつ
くおそれがある。これを回避すべく、クラッチの潤滑油
温度を検出し、温度が一定以下の時にクラッチスリップ
機構CSをONさせる油温制御回路15が、図9のよう
に、加速制御装置C内のクラッチスリップ機構CSのO
N・OFF制御回路内に組み込まれている。
【0051】以上のような構成に基づき、クラッチスリ
ップ機構CSのON・OFF制御は図11及び図12の
フローチャートのようになる。まず、加速設定スイッチ
SW1をONしているか(01)、または、ONしてい
なくて、継続設定スイッチSW2がONしている(0
2)ことを前提として、前後進切換弁V2を後進位置と
している場合には、スリップクラッチ機構はOFFと
し、該前後進切換弁V2を前進位置または中立位置にセ
ットしている場合(03)において、クラッチ潤滑油温
LTが設定温度LT1 以下であり(04)、クラッチ中
立状態で予め増速させておくエンジン回転数ERが設定
回転数ER1 以上であり(05)、また、タイマーTの
カウントする時間tが、設定時間t1 内であり(0
6)、更にキャンセルスイッチSW3がOFFされてい
る(07)が確認されると、クラッチスリップ機構CS
がONする(08)。これらのクラッチスリップ機構C
SのON条件(01〜07)が一つでもクリアされてい
なければ、クラッチスリップ機構CSはOFFされる
(11)。
【0052】クラッチスリップ機構CSがONすると、
クラッチ作動油供給回路R1またはR2からクラッチス
リップ機構CSの回路に作動油がリークされるものであ
り、こうして、作動油圧pが、半クラッチとなるだけの
設定圧ps に下がったことが確認される(09)と、加
速設定表示ランプL2が点灯し、ブザーが鳴動して(1
0)、急加速可能であることを、操縦者が確認できる。
もしもクラッチスリップ機構CSがOFFされている
か、または、ONとしても、まだ作動油圧が規定圧にな
っていない段階では、加速設定表示ランプL2は消灯し
ており、ブザーも鳴動しない(12)。その上で、操縦
者が、エンジン回転数を上げて、前後進切換弁V2を中
立としていた場合には、前進位置に切り換えると、船舶
は、半クラッチ状態にて、タイマーの設定時間まで急加
速を行う。そして、クラッチスリップ状態にて急加速し
ている際においても、この制御は継続して行われ、もし
も急加速時に、前記のクラッチスリップ機構CSの作動
条件(01〜09)がクリアされなくなると、例えば、
急加速の最中にキャンセルスイッチSW3をONした
り、あるいは、途中で前後進切換弁V2を後進に切り換
えたりした場合等には、クラッチスリップ機構CSがO
FFされるのである。
【0053】
【発明の効果】本発明は以上のように構成したので、次
のような効果を奏する。即ち、過給機付エンジンと油圧
式を付設した船舶において、請求項1の如く構成したの
で、船舶を過給機の機能開始時まで半クラッチ状態で加
速させることができ、従って、加速時において、予めエ
ンジン回転数を高く上げておいてクラッチを嵌合させて
もクラッチを傷めず、ショックを緩和できる。また、請
求項2の如く構成したので、半クラッチ状態とすべく、
油圧クラッチの作動油をリークさせるバルブとして、既
設のリリーフ弁及び緩嵌入弁を転用しており、コスト低
減に貢献するのである。
【0054】また、請求項3の如く、クラッチスリップ
用バルブ機構を設けることで、船舶を過給機の機能開始
時まで半クラッチ状態で加速させることができ、従っ
て、加速時において予めエンジン回転数を高く上げてお
いてクラッチを嵌合させても、クラッチを傷めず、ショ
ックを緩和できる。
【0055】また、請求項4の如く構成することによ
り、まず、後進設定時でない時にクラッチスリップ機構
を作動させる、即ち、後進設定時にはクラッチスリップ
機構を作動させないようにすることにより、停止時や緊
急回避時によく使用する後進設定時において、クラッチ
スリップ機構が機能して半クラッチとなって、停止や緊
急回避等が遅れるという事態が回避される。また、エン
ジン回転数を一定以上に増速した時にクラッチスリップ
機構を作動させる、即ち、エンジン回転数が低い状態で
発進する時には、急加速設定としていても、通常の加速
時なので、この時にはクラッチスリップ機構を作動しな
いことで、クラッチスリップにて却って加速が抑制され
ることを回避できる。
【0056】また、請求項5の如く構成することによ
り、継続設定にしておけば、クラッチスリップ状態にて
急加速する操作を、その都度加速設定用のスイッチを操
作することなく繰り返し行うことができる。従って、ス
イッチ操作の煩雑さを解消するのみならず、その都度ス
イッチ操作をするとした場合に起こりがちな、スイッチ
操作を忘れて、クラッチスリップと思い込んでエンジン
回転数を予め高く上げておき、クラッチを嵌合させる
と、ショックを発生するという事態を回避できる。
【0057】また、クラッチスリップの状態では、クラ
ッチ板が摩擦するものであり、もしも油圧クラッチの潤
滑油温度が高い状態でこのようにクラッチスリップをす
れば焼けつきを発生する。そこで、請求項6の如く、油
圧クラッチの潤滑油温度が一定以上となると、クラッチ
スリップ機構の作動を停止する構成とすることによりク
ラッチの焼けつきを防止できるのである。
【0058】また、請求項7の如く、クラッチスリップ
機構は、通電時に作動する構成としたことにより、停電
するのは緊急時であって、この場合にクラッチのスリッ
プにて緊急回避が遅れたりするのを防止できるのであ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】作動油圧調整弁V5及び緩嵌入弁V6をクラッ
チスリップ用バルブとして転用したクラッチスリップ機
構CSを設けた油圧クラッチ用油圧回路図である。
【図2】図1における作動油圧調整弁V5及び緩嵌入弁
V6の正面断面図である。
【図3】図1の油圧クラッチ用油圧回路における急加速
時の作動油圧の推移を示すタイムチャート図である。
【図4】クラッチスリップ機構CSを低速弁V1及び前
後進切換弁V2との間の油路に設けた油圧クラッチ用油
圧回路図である。
【図5】図4の油圧クラッチ用油圧回路における機関回
転数に対する作動油圧の推移を示すグラフで、半クラッ
チ状態からクラッチ嵌合状態への移行タイミングの調整
を示す図である。
【図6】同じく作動油圧の推移を示すグラフで、半クラ
ッチ時の作動油圧の調整を示す図である。
【図7】発進加速時の機関回転数ER及びクラッチ回転
数CRと作動油圧pの推移を示すグラフで、クラッチス
リップ機構CSを作動させない状態における図である。
【図8】同じくクラッチスリップ機構CSを作動させた
状態における図である。
【図9】加速制御装置Cの正面図である。
【図10】同じく内部電気回路図である。
【図11】クラッチスリップ機構CSのON・OFF制
御のフローチャート図である。
【図12】図11の続きのフローチャート図である。
【符号の説明】
CS クラッチスリップ機構 FC 前進用油圧クラッチ RC 後進用油圧クラッチ V1 低速弁 V2 前後進切換弁 V5 作動油圧調整弁 V6 緩嵌入弁 V7・V7’ 加速制御用電磁弁 V8 クラッチスリップ用弁 C 加速制御装置 SW1 加速設定スイッチ SW2 継続設定スイッチ SW3 キャンセルスイッチ L2 加速表示ランプ T タイマー 1 弁室 7 ピストン室 8 ピストン 9 バネ 10 バネ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 F16H 61/06 F16H 61/06 // F16H 59:42 59:72 (72)発明者 荘司 昭 大阪府大阪市北区茶屋町1番32号 ヤンマ ーディーゼル株式会社内 (72)発明者 隈元 努 大阪府大阪市北区茶屋町1番32号 ヤンマ ーディーゼル株式会社内 (72)発明者 三竿 秀夫 大阪府大阪市北区茶屋町1番32号 ヤンマ ーディーゼル株式会社内 (72)発明者 小川 新治 大阪府大阪市北区茶屋町1番32号 ヤンマ ーディーゼル株式会社内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 過給機付エンジンと、油圧ポンプから前
    後進切換弁を介して前進用油圧クラッチと後進用油圧ク
    ラッチに択一的にクラッチ嵌合用の作動油を供給する油
    圧回路を有し、該油圧回路に作動油圧力制御手段を設け
    た減速逆転機とを備えた船舶において、加速設定時に、
    前記過給機がその機能を発揮する回転数になるまで油圧
    クラッチをスリップさせるようにしたことを特徴とする
    船舶の加速方法。
  2. 【請求項2】 過給機付エンジンと油圧式減速逆転機と
    を付設した船舶であって、油圧ポンプから前後進切換弁
    を介して前進用油圧クラッチと後進用油圧クラッチに択
    一的にクラッチ嵌合用の作動油を供給する油圧回路を有
    し、加速時において該低速弁への作動油の供給量を徐々
    に増大させるべく、該作動油供給用の油圧回路からの作
    動油リーク回路にリリーフ弁及びこれを制御する緩嵌入
    弁を具備したものにおいて、加速設定時に該リリーフ弁
    を開弁し、該過給機の機能開始時期にこれを閉弁する如
    く緩嵌入弁を制御するクラッチスリップ用制御機構を設
    けたことを特徴とする船舶の加速装置。
  3. 【請求項3】 過給機付エンジンと油圧式減速逆転機と
    を付設した船舶であって、油圧ポンプから低速弁、前後
    進切換弁を介して前進用油圧クラッチと後進用油圧クラ
    ッチに択一的にクラッチ嵌合用の作動油を供給する油圧
    回路を有するものにおいて、該油圧回路の該低速弁と該
    前後進切換弁との間の油路に、加速設定時に該過給機が
    機能を開始するまで作動油の圧油を低下させるクラッチ
    スリップ用バルブ機構を介設したことを特徴とする船舶
    の加速装置。
  4. 【請求項4】 過給機付エンジンと油圧式減速逆転機と
    を付設した船舶であって、油圧ポンプから前後進切換弁
    を介して前進用油圧クラッチと後進用油圧クラッチに択
    一的にクラッチ嵌合用の作動油を供給する油圧回路を有
    し、かつ、加速設定時に該過給機が機能を開始するまで
    の間、油圧クラッチをスリップ状態とすべく、該油圧回
    路のクラッチ嵌合用作動油の流量を制限するクラッチス
    リップ機構を設けたものにおいて、加速設定時であって
    も、該前後進切換弁が後進設定となっておらず、かつエ
    ンジン回転数が一定以上となった時にのみ、該クラッチ
    スリップ機構を機能させるよう構成したことを特徴とす
    る船舶の加速装置。
  5. 【請求項5】 過給機付エンジンと油圧式減速逆転機と
    を付設した船舶であって、油圧ポンプから前後進切換弁
    を介して前進用油圧クラッチと後進用油圧クラッチに択
    一的にクラッチ嵌合用の作動油を供給する油圧回路を有
    し、かつ、加速設定時に該過給機が機能を開始するまで
    の間、油圧クラッチをスリップ状態とすべく、該油圧回
    路のクラッチ嵌合用作動油の流量を制限するクラッチス
    リップ機構を設けたものにおいて、該クラッチスリップ
    機構の機能する加速設定を、一回限りか、或いは継続か
    を選択可能としたことを特徴とする船舶の加速装置。
  6. 【請求項6】 過給機付エンジンと油圧式減速逆転機と
    を付設した船舶であって、油圧ポンプから前後進切換弁
    を介して前進用油圧クラッチと後進用油圧クラッチに択
    一的にクラッチ嵌合用の作動油を供給する油圧回路を有
    し、かつ、加速設定時に該過給機が機能を開始するまで
    の間、油圧クラッチをスリップ状態とすべく、該油圧回
    路のクラッチ嵌合用作動油の流量を制限するクラッチス
    リップ機構を設けたものにおいて、該クラッチスリップ
    機構の作動時に、該油圧クラッチの潤滑油温度が一定以
    上となると、該機構の作動を停止することを特徴とする
    船舶の加速装置。
  7. 【請求項7】 過給機付エンジンと油圧式減速逆転機と
    を付設した船舶であって、油圧ポンプから前後進切換弁
    を介して前進用油圧クラッチと後進用油圧クラッチに択
    一的にクラッチ嵌合用の作動油を供給する油圧回路を有
    し、かつ、加速設定時に該過給機が機能を開始するまで
    の間、油圧クラッチをスリップ状態とすべく、該油圧回
    路のクラッチ嵌合用作動油の流量を制限するクラッチス
    リップ機構を設けたものにおいて、該クラッチスリップ
    機構は、通電時に作動する構成としたことを特徴とする
    船舶の加速装置。
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JP2010241207A (ja) * 2009-04-02 2010-10-28 Yamaha Motor Co Ltd 船舶用推進システムおよび船舶
JP2015101242A (ja) * 2013-11-26 2015-06-04 日野自動車株式会社 発進制御装置及び発進制御方法
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