JPH09144689A - ポンプ及びその製造方法 - Google Patents

ポンプ及びその製造方法

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JPH09144689A
JPH09144689A JP8235360A JP23536096A JPH09144689A JP H09144689 A JPH09144689 A JP H09144689A JP 8235360 A JP8235360 A JP 8235360A JP 23536096 A JP23536096 A JP 23536096A JP H09144689 A JPH09144689 A JP H09144689A
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Ryoji Okada
亮二 岡田
Keiji Taguchi
啓二 田口
Toshiharu Ueyama
淑治 植山
Hiroyuki Katsura
裕之 桂
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  • Structures Of Non-Positive Displacement Pumps (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 溶存酸素濃度が高い取り扱い水でも、耐食性
に優れ、かつメンテナンス性のよい、信頼性高いポンプ
を提供する。 【解決手段】 ポンプを構成する回転軸3、インペラ
4、スリーブ10の摺動面もしくは嵌め合い面に形成さ
れた硬質Crめっき皮膜8の微細亀裂110に、フッ素
樹脂を含浸させる。硬質Crめっき皮膜8に代えてWC-
NiCr溶射膜もしくはCr32−NiCr溶射膜を被覆
し、WC-NiCr溶射膜もしくはCr32−NiCr溶射膜
の微細亀裂にフッ素樹脂を含浸させてもよい。さらに、
硬質Crめっき皮膜8,WC-NiCr溶射膜もしくはCr3
2−NiCr溶射膜の下層にNiめっき膜もしくはNi合
金皮膜を被覆すれば効果的である。樹脂の代わりに、S
iO2またはCrO2でそのめっき皮膜もしくは溶射膜のク
ラック、ボイドを封じて、皮膜と母材間の腐食を防止し
てもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はポンプに係り、特に
発電プラントで用いる給水ポンプとその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】硬質クロームめっきは耐摩耗性が良好で
あり、且つ摺動性に優れるため、各種ポンプの摺動部分
に多用されている。例えば、発電プラントに用いられる
ボイラー給水ポンプの軸,スリーブ,インペラには、そ
れぞれ下記の理由から硬質クロムめっきが施されてい
る。ボイラー給水ポンプの回転軸(以下、単に軸とい
う)には高速回転による繰返し荷重が長期に亘ってかか
るため、疲労強度に優れる13%Cr鋼が用いられてい
る。また、インペラは焼き嵌めによって軸に固定されて
いるため、組立て、分解時のインペラの軸に対する摺動
性はメンテナンス時の作業性に大きく影響する。インペ
ラも高速回転によって生じる遠心力に耐えうる強度が求
められるため同様に13%Cr鋳鋼を用いている。一般
に、13%Cr鋼材同士の摺動性は良好ではないため
に、焼き嵌めによって軸に固定されるインペラは、組立
て、分解時に軸との噛り付きが生じやすい。インペラと
軸との噛り付きはメンテナンス時に軸からインペラを抜
き出す際の作業性を阻害する。従って、メンテナンス時
に軸からインペラを抜き出す際の噛り付き防止のため、
軸は硬質クロムめっきで被覆されている。
【0003】また、インペラは一部でディフューザ、も
しくはポンプケーシングと摺動するので耐摩耗性が要求
され、その摺動部には硬質クロームめっきが被覆され
る。
【0004】ボイラー給水ポンプは、復水を昇圧し、主
タービンを駆動する蒸気を発生させるボイラに給水とし
て送りこんでいる。従って、ボイラー給水ポンプが吸い
込む復水はボイラとタービンを循環してきたものであ
り、該復水には火力発電プラント中に発生するスケール
が含まれている。復水に混じってボイラー給水ポンプに
吸いこまれるスケールは、インペラによって加速され、
その一部がインペラへ付着する。インペラに付着したス
ケールが流路を塞ぎ、水流に対する抵抗となってボイラ
ー給水ポンプの性能低下と振動増加を引き起こす例が見
られる。インペラへのスケールの付着の詳細なメカニズ
ムは明確にはなっていないが、高速衝突による機械的付
着と考えられている。従って、インペラの表面硬度を増
すことによって、スケールの高速衝突による付着力を低
減できると考えられ、インペラに硬質クロムめっきを被
覆する試みがなされている。
【0005】軸端にはスリーブが取り付けられ、通常焼
き入れ鋼からなるリングと取り扱い水中で摺動し軸封を
構成する。スリーブには耐摩耗性が求められるため通常
硬質クロームめっきが被覆される。
【0006】なお、ボイラー給水ポンプの軸表面に硬質
クロムめっきを被覆する技術は「火力原子発電」、38
巻、12号(1987年、vol38,No.12)の85頁から93頁に
開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】硬質クロムめっきは電
気めっき法によって形成され、比較的容易に硬質皮膜を
形成する方法として広く用いられており、ボイラー給水
ポンプの軸、インペラへの被覆でも実績がある。しかし
ながら、近年、次に述べるような理由で火力発電プラン
トの水処理方法の変更が検討されている。
【0008】従来火力発電プラントの水処理では、揮発
性の高いアンモニア等を添加して水中の溶存酸素を極力
ゼロにする揮発性物質処理(以後、AVT:All Vol
atile Treatmentと略記する)が施されている。しか
しながら、昨今この揮発性物質処理はボイラー配管全体
の腐食に対して必ずしも効果的でないとの意見が生じて
いる。さらに従来とは逆に給水中に適量の酸素を注入
し、溶存酸素濃度を増す酸素処理を施した水が、配管内
面に安定酸化被膜を形成し、配管内面からのスケール発
生を抑えるという報告もされている。なお、酸素処理に
はpHを中性で行う中性水処理法(以後、NWT:Neutr
al Water Treatmentと略記する)と、pH8〜9で行う
複合水処理法(以後、CWT:Combined Water Tr
eatmentと略記する)とがあり、実機プラントによる実
証試験でCWTの効果が確認されている。
【0009】上述のような水処理方法の変更に対し、硬
質クロムめっきは下記の課題が予想されている。一般的
に硬質クロムめっきには表面から母材との界面に達する
微細な縦われが多数存在し、耐食性は決して十分ではな
い。しかし火力発電プラントの給水では、先に述べたよ
うに、水中の溶存酸素を極力ゼロにするAVTが施され
るため、硬質クロムめっきに微細な縦われが多数存在し
ても、その耐食性は問題なかった。
【0010】しかし、前述のように、給水中の溶存酸素
濃度が増すCWTになると、硬質クロムめっきの微細な
縦われ部分で硬質クロムめっきと下地の13%Cr鋼と
の間で電気腐食が生じ、めっきの剥離の発生が予想され
る。従って、火力発電プラント給水の処理方法がAVT
からCWT(あるいはNWT)に変更された場合、硬質ク
ロムめっきに代る表面処理を適用するか、その耐食性を
改善しなければならない。
【0011】上記、軸表面やインペラ表面に硬質クロム
めっきを施す方法は、火力発電プラント給水の処理方法
がAVTからCWTへ変わることを考慮しておらず、溶
存酸素濃度が増した給水中での軸表面やインペラ表面の
腐食の問題があった。
【0012】また、固体浮遊物を多く含む水を取扱うポ
ンプの場合、それら固体浮遊物によるインペラの摩耗の
ため、ポンプの寿命が短くなるという問題があった。
【0013】本発明の目的は、溶存酸素濃度の高い水
や、固体浮遊物を多く含む水を取り扱う場合でも耐食
性、耐摩耗性に優れ、信頼性の高いポンプ、及びその製
造方法を提供するにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】溶存酸素濃度の高い水や
固体浮遊物を多く含む水を取り扱っても腐食や摩耗が少
なく、信頼性の高い本発明のポンプは下記のいずれかの
構造を有する。
【0015】表面の一部もしくは全面を、樹脂もしくは
ガラスを含浸したCrを含む皮膜が被覆した軸を具備す
る。Crを含む皮膜の膜厚は、耐摩耗性と耐食性から製
品完成時0.3mm以上を有することが望ましい。また、
樹脂としては比較的耐熱性に優れるフッ素樹脂、シリコ
ン樹脂を用いることが望ましい。ガラスを用いる場合
は、珪素(Si)を含む溶剤を含浸後、加熱することに
よって形成できるSiOxが、耐熱性に優れるため、望ま
しい。
【0016】表面の一部もしくは全面に、樹脂もしくは
ガラスを含浸したCrを含む皮膜を被覆したインペラを
具備する。Crを含む皮膜の膜厚は、耐摩耗性と耐食性
から、最終研磨後少なくとも0.1mm、好ましくは0.
3mm以上を有することが望ましい。また、樹脂としては
比較的耐熱性に優れるフッ素樹脂、シリコン樹脂を用い
ることが望ましい。ガラスを用いる場合は、珪素(S
i)を含む溶剤を含浸後、加熱することによって形成で
きるSiOxが、耐熱性に優れるため、望ましい。
【0017】表面の一部もしくは全面に、樹脂またはガ
ラスを含浸した、WCもしくはCr32と、Niと、Cr
とを含む皮膜を被覆した軸を具備する。WCもしくはC
r32とNi、Crを含む皮膜の膜厚は、耐摩耗性と耐食
性から、最終研磨後少なくとも0.1mm、好ましくは
0.3mm以上を有することが望ましい。また、樹脂とし
ては比較的耐熱性に優れるフッ素樹脂、シリコン樹脂を
用いることが望ましい。ガラスを用いる場合は、珪素
(Si)を含む溶剤を含浸後、加熱することによって形
成できるSiOxが、耐熱性に優れるため、望ましい。ま
た、皮膜中に含まれるNiとCrの量は、皮膜硬さと靱性
の点から、30重量%以上、80重量%以下が望まし
い。また、WCもしくはCr32とNi、Crを含む皮膜
の形成方法としては、密着力が得られ比較的厚膜を形成
できる溶射法が望ましい。溶射法でも高い密着力が得ら
れ、緻密な皮膜が形成できる高速フレーム溶射法、爆発
溶射法、減圧溶射法のいずれかの方法が望ましい。
【0018】表面の一部もしくは全面に、樹脂またはガ
ラスを含浸した、WCもしくはCr32と、Niと、Cr
とを含む皮膜を被覆したインペラを具備する。WCもし
くはCr32とNi、Crを含む皮膜の膜厚は、耐摩耗性
と耐食性から、最終研磨後0.3mm以上を有することが
望ましい。また、樹脂としては比較的耐熱性に優れるフ
ッ素樹脂、シリコン樹脂を用いることが望ましい。ガラ
スを用いる場合は、珪素(Si)を含む溶剤を含浸後、
加熱することによって形成できるSiOxが、耐熱性に優
れるため、望ましい。また、皮膜中に含まれるNiとCr
の量は、皮膜硬さと靱性の点から、20重量%以上、7
0重量%以下が望ましい。また、WCもしくはCr32
とNi、Crを含む皮膜の形成方法としては、密着力が得
られ比較的厚膜を形成できる溶射法が望ましい。溶射法
でも高い密着力が得られ、緻密な皮膜が形成できる高速
フレーム溶射法、爆発溶射法、減圧溶射法のいずれかの
方法が望ましい。
【0019】溶存酸素濃度の高い処理水を用いても腐食
が生ぜず、信頼性の高い本発明のポンプの製造には、下
記のいずれかの製造方法を用いる。
【0020】軸もしくはインペラを所定形状に加工後、
電気めっき法によってCrを含む皮膜で軸もしくはイン
ペラを被覆し、次いで所定寸法に加工する。その後、C
rを含む皮膜に樹脂を含浸する。樹脂含浸後、皮膜表面
の不要な樹脂を取り除き、組立てに供する。樹脂として
は比較的耐熱性に優れるフッ素樹脂、シリコン樹脂を用
いることが望ましい。また、樹脂含浸方法としては、C
rを含む皮膜の微細亀裂内部まで樹脂を浸透させるため
に真空含浸法を用いることが望ましい。真空含浸法と
は、Crを含む皮膜を被覆した軸、インペラを真空容器
内に配置し、真空排気後、溶融状態の樹脂を容器内に注
入して、大気圧によってCrを含む皮膜の微細亀裂内部
まで樹脂を浸透させる含浸法である。
【0021】また、軸及びインペラを所定形状に加工
後、電気めっき法によってCrを含む皮膜で軸もしくは
インペラを被覆し、次いで所定寸法に加工する。その
後、珪素(Si)を含む溶剤を前記軸もしくはインペラ
のCrを含む皮膜に含浸し、次に該皮膜を加熱して皮膜
に含浸した溶剤中の珪素をSiOx化する。その後皮膜面
の余分のSiOxや残留物を除去して組立てに供する。珪
素(Si)を含む溶剤を含浸する方法としては、該溶剤
中に軸、インペラを浸漬する方法が望ましい。この際、
超音波によって振動を加えると溶剤の含浸がより確実と
なる。軸、インペラが大型で浸漬が困難の場合、溶剤を
塗布し、その後加熱する方法でもよい。但しこの場合、
溶剤の塗布と加熱を繰返し行なうことが望ましい。
【0022】また、軸もしくはインペラを所定形状に加
工後、溶射法によってWCもしくはCr32と、Ni及び
Crを含む皮膜で軸もしくはインペラを被覆し、次いで
所定寸法に加工する。その後、WCもしくはCr3
2と、Ni及びCrを含む前記皮膜に樹脂を含浸する。樹
脂含浸後、皮膜表面の不要な樹脂を取り除いた後、組立
てに供する。樹脂としては比較的耐熱性に優れるフッ素
樹脂、シリコン樹脂を用いることが望ましい。また、樹
脂含浸方法としては、皮膜の内部まで浸透させるために
は真空含浸法を用いることが望ましい。
【0023】また、軸もしくはインペラを所定形状に加
工後、溶射法によってWCもしくはCr32と、Ni及び
Crを含む皮膜で軸もしくはインペラを被覆し、次いで
所定寸法に加工する。その後、WCもしくはCr3
2と、Ni及びCrを含む前記皮膜に珪素(Si)を含む溶
剤を含浸する。溶剤含浸後、該皮膜を加熱し皮膜に含浸
した溶剤中の珪素をSiOx化する。その後皮膜面の余分
のSiOxや残留物を除去して組立てに供する。珪素(S
i)を含む溶剤を含浸する方法としては、溶剤中に浸漬
する方法が望ましい。軸もしくはインペラが大型で浸漬
が困難の場合、溶剤を塗布し、その後加熱する方法でも
よい。但しこの場合、溶剤の塗布と加熱を繰返し行なう
ことが望ましい。
【0024】軸もしくはインペラの表面の一部もしくは
全面を被覆するCrを含む皮膜には、皮膜中に微細亀裂
が存在するが、微細亀裂中に含浸した樹脂もしくはガラ
スが存在するため、膜表面から母材(下地材料)との界
面に達する欠陥(空間)がない。従って、溶存酸素濃度
の高い水を取り扱ってもCrを含む皮膜と下地材料との
間で電気腐食が生じず、Crを含む皮膜の剥離、破壊が
生じない。また、Crを含む皮膜に含浸する樹脂もしく
はガラスは、皮膜の硬さを低減することがないため、軸
はインペラ嵌合時の十分な耐噛り付き性を有する。ま
た、樹脂、ガラスは微細クラックに浸透してクラックを
塞ぐだけで、Crを含む皮膜全体の硬さを低下させるこ
とはないため、インペラへの衝撃によるスケールの付着
力が低減し、スケールの付着量が減る。樹脂は浸透性、
封孔性の点でガラスに優り、ガラスは耐熱性の点で樹脂
に優る。
【0025】軸もしくはインペラの表面の一部もしくは
全面を被覆するWCもしくはCr32とNi、Crを含む
皮膜には、皮膜中に微細欠陥が存在するが、微細欠陥中
に含浸した樹脂もしくはガラスが存在し、膜表面から母
材(下地材料)との界面に達する欠陥(空間)がない。
従って、溶存酸素濃度の高い水を取り扱っても、WCも
しくはCr32と、Ni及びCrとを含む皮膜と下地材料
との間で電気腐食が生じず、皮膜の剥離、破壊が生じな
い。また、WCもしくはCr32とNi、Crを含む皮膜
は、十分な硬さを有するため、インペラ嵌合時の十分な
耐噛り付き性を有する。また、樹脂、ガラスは微細クラ
ックに浸透してクラックを塞ぐだけで、Crを含む皮膜
全体の硬さを低下させることはないため、インペラへの
衝撃によるスケールの付着力が低減し、スケールの付着
量が減る。
【0026】上記の目的は、また次の構成を持つポンプ
によっても達成される。
【0027】表面の一部もしくは全面に樹脂もしくは酸
化物によって微細割れを封じたCr皮膜を被覆した軸、
スリーブ、インペラを具備する。樹脂としては耐熱性に
優れるフッ素樹脂、シリコン樹脂を用いることが望まし
い。酸化物を用いる場合は、Si、Crのうち少なくとも
一方を含む溶剤を含浸後、加熱することによって形成で
きるSiOx、もしくはCrOxが耐熱性に優れ、かつ溶剤
の浸透性が優れるため望ましい。また、Cr皮膜は耐摩
耗性と耐食性から最終研磨後少なくとも0.1mmの膜厚を
有することが望ましい。
【0028】さらに、上記構造の軸、スリーブ、インペ
ラにおいて、樹脂もしくは酸化物によって微細割れを封
じたCr皮膜の下層に、Niを含む皮膜を被覆すると効果
的である。この際、Niを含む皮膜の膜厚は耐食性から
少なくとも10nmを有することが望ましく、Niを含む皮
膜はすくなくとも80重量%のNiを含むものであるこ
とが望ましい。
【0029】表面の一部もしくは全面には樹脂もしくは
酸化物によってボイド、微細割れを封じたWCもしくは
Cr32とNi、Crを含む皮膜を被覆した軸、スリー
ブ、インペラを具備するポンプとしてもよい。樹脂とし
ては耐熱性に優れるフッ素樹脂、シリコン樹脂を用いる
ことが望ましい。酸化物を用いる場合は、Si、Crのう
ち少なくとも一方を含む溶剤を含浸後、加熱することに
よって形成できるSiOx、もしくはCrOxが耐熱性に優
れるため望ましい。また、WCもしくはCr32とNi、
Crを含む皮膜は、耐摩耗性と耐食性から最終研磨後少
なくとも0.1mmの膜厚を有することが望ましく、WCも
しくはCr32を少なくとも70重量%含むものである
ことが望ましい。
【0030】また、WCもしくはCr32とNi、Crを
含む皮膜の形成方法としては、密着力が得られ比較的厚
膜を形成できる溶射法が望ましい。溶射法でも高い密着
力が得られ、緻密な皮膜が形成できる高速フレーム溶射
法、爆発溶射法、減圧溶射法のいずれかの方法が望まし
い。
【0031】さらに、上記構造の軸、スリーブ、インペ
ラにおいて、樹脂もしくは酸化物によってボイド、微細
割れを封じたWCもしくはCr32とNi、Crを含む皮
膜の下層に、Niを含む皮膜を被覆すると効果的であ
る。この際、Niを含む皮膜の膜厚は耐食性から少なく
とも10nmとすることが望ましい。
【0032】上記目的を達成する本発明のポンプの製造
には、下記のいずれかの製造方法を用いることができ
る。
【0033】軸、スリーブ、インペラは所定形状に加工
後、電気めっき法によってCr皮膜を被覆し、その後、
Cr皮膜外周面を所定寸法に加工する。このとき、Cr皮
膜は加工後に少なくとも0.1mmの膜厚が確保されるよう
にする。その後、樹脂を含浸する。樹脂含浸後、不要な
樹脂を取り除き所定寸法とした後、組立てに供する。樹
脂としては比較的耐熱性に優れるフッ素樹脂、シリコン
樹脂を用いることが望ましい。また、樹脂含浸方法とし
ては、Cr皮膜の微細亀裂内部まで浸透させるためには
真空含浸法を用いることが望ましい。真空含浸法とは、
Cr皮膜を被覆した軸、インペラを真空容器内に配置
し、真空排気後、溶融状態の樹脂を容器内に注入して、
大気圧によってCr皮膜の微細亀裂内部まで樹脂を浸透
させる含浸法である。
【0034】他の製造方法を述べる。軸、スリーブ、イ
ンペラは所定形状に加工後、電気めっき法によってCr
皮膜を被覆し、その後、Cr皮膜外周面を所定寸法に加
工する。このとき、Cr皮膜は加工後に少なくとも0.1mm
の膜厚が確保されるようにする。その後、Si、Crのう
ち少なくとも一方を含む溶剤を含浸後、加熱して皮膜に
含浸した溶剤をSiOx、もしくはCrOx化する。その後
余分に付着した溶剤を取り除いて組立てに供する。但し
この場合、溶剤の塗布と加熱を繰返し行なうことが望ま
しい。
【0035】さらに、上記の軸、スリーブ、インペラの
加工方法において、樹脂もしくは酸化物によって微細割
れを封じたCrを含む皮膜の下層に、Niを含む皮膜を被
覆するのが望ましい。この際、Niを含む皮膜の膜厚
は、耐食性を維持するため、少なくとも10nmとすること
が望ましい。
【0036】他の製造方法を述べる。軸、スリーブ、イ
ンペラは所定形状に加工後、溶射法によってWCもしく
はCr32とNi、Crを含む皮膜を被覆し、その後、該
皮膜外周面を所定寸法に加工する。その後、樹脂を含浸
する。樹脂含浸後、不要な樹脂を取り除き所定寸法とし
た後、組立てに供する。このとき、WCもしくはCr3
2とNi、Crを含む皮膜は最終加工後に少なくとも0.1mm
の膜厚が確保されるようにする。樹脂としては比較的耐
熱性に優れるフッ素樹脂、シリコン樹脂を用いることが
望ましい。また、樹脂含浸方法としては、皮膜の内部ま
で浸透させるためには真空含浸法を用いることが望まし
い。
【0037】他の製造方法を述べる。軸、スリーブ、イ
ンペラは所定形状に加工後、溶射法によってWCもしく
はCr32とNi、Crを含む皮膜を被覆し、その後、該
皮膜外周面を所定寸法に加工する。その後、Si、Crの
うち少なくとも一方を含む溶剤を含浸後、加熱し皮膜に
含浸した溶剤をSiOx、もしくはCrOx過化する。その
後所定寸法に加工して組立てに供する。このとき、WC
もしくはCr32とNi、Crを含む皮膜は加工後に少な
くとも0.1mmの膜厚が確保されるようにする。Si、Cr
のうち少なくとも一方を含む溶剤を含浸する方法として
は、溶剤を塗布し、その後加熱する方法でもよい。但し
この場合、溶剤の塗布と加熱を繰返し行なうことが望ま
しい。
【0038】さらに、上記の軸、スリーブ、インペラの
加工方法において、樹脂もしくは酸化物によってボイ
ド、微細割れを封じたWCもしくはCr32とNi、Cr
を含む皮膜の下層に、Niを含む皮膜を被覆する。この
際、Niを含む皮膜の膜厚は耐食性を維持するため、少
なくとも10nmとすることが望ましい。
【0039】また、対象を給水ポンプに限れば、下記の
構造によって溶存酸素濃度の高い取り扱い水を用いても
腐食が生ぜず、信頼性高い給水ポンプが達成される。
【0040】軸、インペラには硬質クロムメッキを被覆
せず、素材のまま使用し、且つスリーブには上記他ポン
プと同様の処理を施す。軸、インペラには、耐食性に優
れる13%Cr鋼を用いる。特に、軸、インペラの材料と
しては、少なくともいずれか一方をCrを11〜15重
量%含む鉄合金とするのが望ましい。
【0041】
【発明の実施の形態】図1は本発明の一実施例であるバ
ーレル型のボイラー給水ポンプの縦断面図である。ただ
し、本図では煩雑さを避けるため、部品ごとの断面ハッ
チングを厳密に区別することなく、また軸については断
面表示をしていない。
【0042】図1に示すボイラー給水ポンプは、吸込口
2及び吐出口7を有するケーシング1と、ケーシング1
に内装されて回転する軸3と、軸3に嵌入固定され共に
回転するインペラ4と、インペラ4の外周に設けられた
デイフューザ5と、デイフューザ5の外周に設けられた
ステージ6と、を含んで構成されている。
【0043】上記構成のボイラー給水ポンプでは、ケー
シング1の吸込口2より吸込まれた水が、軸3に固定さ
れ共に回転するインペラ4によって昇圧され、インペラ
4の外周に設けられたデイフューザ5に吐出される。デ
イフューザ5に吐出された水は、デイフューザ5の外周
に設けられたステージ6に流入し、ステージ6によって
外向きの流れが内向きに変えられ、次段のインペラ4に
導かれる。このようにしてインペラ4による昇圧行程が
繰返されて加圧され、吐出口7から吐出される構造であ
る。
【0044】図2は、本発明の第1の実施例であるボイ
ラー給水ポンプの軸3の詳細断面を示す。図2におい
て、13%Cr+数%Mo鋼材で製作した軸3は、電気め
っき法によって形成された硬質Crめっきの皮膜8で被
覆されている。硬質Crめっきの皮膜8には、皮膜8の
表面から軸3との界面やその近傍に達する微細亀裂11
0が多数存在する。本実施例のボイラー給水ポンプ軸で
は、微細亀裂110内部にはフッ素樹脂111が含浸さ
れている。微細亀裂110にはフッ素樹脂111が充填
されているため、溶存酸素濃度の高い水中にあっても、
酸素が軸3の表面に到達することがなく、硬質Crめっ
きの皮膜8と軸3との界面で電気腐食が生じることはな
い。また、硬質Crめっきの皮膜8は硬度がビッカース
硬さで800〜1000程度と硬いため、インペラの組
立て・分解時の耐噛りつき性が増す。
【0045】なお、本実施例では硬質Crめっきの最終
膜厚は約0.5mmである。耐食性と耐噛りつき性を考慮
すると硬質Crめっきの最終膜厚は約0.1mm以上、好
ましくは約0.3mm以上が望ましい。
【0046】図3は、図2に示すボイラー給水ポンプの
軸の製造手順を示す工程図である。所定熱処理を施した
軸材料を切削によって所定形状に加工する(手順3
1)。このとき、後工程で形成される皮膜の厚みを予め
見込んだ形状寸法に加工する。その後、軸3の前処理
(洗浄、脱脂)を行なった(手順32)のち、電気めっ
き法によって硬質Crめっき被覆を行なう(手順3
3)。本実施例では、この段階での硬質Crめっきの膜
厚は0.8〜1mmである。めっき後の研磨によって所定
の精度で所定軸径に加工する(手順34)。所定軸径に
加工後の硬質Crめっきの最終膜厚は約0.5mmであ
る。
【0047】次に、真空含浸法によって硬質Crめっき
皮膜(正確にはめっき皮膜の微細亀裂)にフッ素樹脂を
含浸する(手順35)。まず、真空容器内に軸3を配置
し、真空排気後、溶融状態のフッ素樹脂111を容器内
に注入する。次いで大気圧によって樹脂を加圧し、Cr
めっき皮膜の微細亀裂内部までフッ素樹脂111を浸透
させる。この状態を所定時間保持後、大気中に取り出し
冷却させる。冷却後、めっき皮膜表面の不要樹脂を取り
除き、軸寸法を測定し、最終修正を施し(手順36)組
立てに供する。
【0048】なお、本実施例では含浸樹脂としてフッ素
樹脂111を用いたが、シリコン樹脂でも良くフッ素樹
脂に限定するものではない。
【0049】また、本実施例では真空含浸法によってフ
ッ素樹脂111を含浸したが、真空含浸法は大物部材へ
の適用は困難である。この場合、溶融状態の樹脂を充た
した容器内に浸漬する方法でもよく、真空含浸法に限定
するものではない。
【0050】図4は、本発明の第2の実施例に係るボイ
ラー給水ポンプの軸3の詳細断面を示す。図4におい
て、13%Cr+数%Mo鋼材で製作した軸3は、電気め
っき法によって形成された硬質Crめっきの皮膜8で被
覆されている。硬質Crめっきの皮膜8には、皮膜8の
表面から軸3との界面やその近傍に達する微細亀裂21
0が多数存在する。本実施例のボイラー給水ポンプの軸
では、微細亀裂210内部はSiOx211で充填されて
いるため、溶存酸素濃度の高い水中にあっても、硬質C
rめっきの皮膜8と軸3との界面で電気腐食が生じるこ
とはない。また、硬質Crめっきの皮膜8は硬度がビッ
カース硬さで800〜1000程度と硬いため、インペラの組
立て・分解時の耐噛りつき性が増す。
【0051】なお、本実施例では硬質Crめっきの最終
膜厚は約0.5mmである。耐食性と耐噛りつき性を考慮
すると硬質Crめっきの最終膜厚は約0.1mm以上、好
ましくは約0.3mm以上が望ましい。
【0052】図5は、図4に示す実施例のボイラー給水
ポンプの軸の製造手順を示す工程図である。所定の熱処
理を施した軸材料を切削によって皮膜の厚みを見込んだ
形状寸法に加工し(手順51)、その後、洗浄、脱脂な
どの前処理を行なう(手順52)。前処理ののち、電気
めっき法によって硬質Crめっきを行なう(手順5
3)。本実施例ではこの段階での硬質Crめっきの膜厚
は約0.8〜1mmである。めっき後の研磨によって所定
の精度で軸径を所定寸法に加工する(手順54)。硬質
Crめっきの最終膜厚は約0.5mmである。次に、ケイ
酸エチルを溶かし込んだ溶剤中に浸漬する(手順5
5)。ケイ酸エチルを溶かし込む溶剤としてはアルコー
ル系であればよい。エチルアルコールなどが取扱いが容
易である。硬質Crめっきの微細亀裂210への前記ケ
イ酸エチルを溶かし込んだ溶剤の浸透を促進するため
に、超音波加振機によって振動を加える。所定時間の浸
漬後、軸を大気中で加熱乾燥させる(手順56)。この
工程で、微細亀裂210に浸透させた溶剤中の珪素をS
iOx化する。本実施例では約200℃で約1時間加熱し
た。冷却後、再び溶剤中への浸漬、加熱乾燥の工程を行
なう。Crを含む皮膜の耐食性を確実にするためには、
上記工程をすくなくとも2回以上、望ましくは3回以上
繰り返す必要がある。上記工程が終了後、不要溶剤を取
り除き、軸寸法を測定し、最終修正を施して(手順5
7)組立てに供する。
【0053】図6は、本発明の第3の実施例のボイラー
給水ポンプのインペラ4の外観を示す。図7は図6に示
すインペラ4の詳細断面を示す。図7において、13%
Cr鋳鋼で製作したインペラ4は、電気めっき法によっ
て形成された硬質Crめっきの皮膜8により被覆されて
いる。硬質Crめっきの皮膜8には、皮膜8の表面から
インペラ4との界面やその近傍に達する微細亀裂310
が多数存在する。本実施例のボイラー給水ポンプ用イン
ペラ4では、微細亀裂310内部にはフッ素樹脂311
が含浸されている。微細亀裂310内部には、フッ素樹
脂311が充填されているため、溶存酸素濃度の高い水
中にあっても、硬質Crめっきの皮膜8とインペラ4と
の界面で電気腐食が生じることはない。また、硬質Cr
めっきの皮膜8は硬度がビッカース硬さで800〜1000程
度と硬いため、水中に含まれるスケールが衝突した際の
付着力が低下する。
【0054】なお、本実施例では硬質Crめっきの最終
膜厚は約0.3mmである。スケールの衝突付着に対して
は硬質Crめっきの膜厚を厚くする必要がない。しか
し、薄過ぎると耐食性の低下が大きく、耐食性を考慮す
ると硬質Crめっきの最終膜厚は約0.1mm以上、好ま
しくは約0.3mm以上が望ましい。
【0055】図8は、図7に示す実施例のボイラー給水
ポンプのインペラ4の製造手順の例を示す工程図であ
る。まず、鋳造(手順81)によって製作したインペラ
に所定熱処理を施し、形状修正の加工を施す(手順8
2)。その後、前処理(手順83)、電気めっき法によ
って硬質Crめっきを被覆する(手順84)。本実施例
ではこの段階での硬質Crめっきの膜厚は約0.3mmで
ある。次に、研磨によって所定寸法に加工する(手順8
5)。この際研磨すべき箇所は、電界集中によって電気
硬質Crめっきの膜厚が極端に厚くなる部分だけであ
り、膜厚を薄くする、もしくはめっき条件を最適化すれ
ば、研磨による形状修正は必要ない。次に真空含浸法に
よってフッ素樹脂311を含浸する(手順86)。ま
ず、真空容器内にインペラを配置し、真空排気後、溶融
状態のフッ素樹脂311を容器内に注入する。次いで大
気圧によってフッ素樹脂311を加圧し、Cr皮膜の微
細亀裂内部までフッ素樹脂311を浸透させる。この状
態を所定時間保持後、大気中に取り出し冷却させる。冷
却後、不要樹脂を取り除く。最後に軸と嵌合する内径を
加工し所定寸法とした後(手順87)、組立てに供す
る。
【0056】なお、本実施例では含浸樹脂としてフッ素
樹脂311を用いたが、シリコン樹脂でも良くフッ素樹
脂に限定するものではない。
【0057】また、本実施例では真空含浸法によってフ
ッ素樹脂311を含浸したが、真空含浸法は大物部材へ
の適用は困難である。この場合、溶融状態の樹脂を充た
した容器内に浸漬する方法でもよく、真空含浸法に限定
するものではない。
【0058】図9は、本発明の第4の実施例のボイラー
給水ポンプのインペラ4の詳細断面を示す。図9におい
て、13%Cr鋳鋼で製作したインペラ4は、電気めっ
き法によって形成された硬質Crめっきの皮膜8で被覆
されている。硬質Crめっきの皮膜8には、インペラ4
との界面に達する微細亀裂410が多数存在する。本発
明のボイラー給水ポンプ用インペラでは、微細亀裂41
0内部にはSiOx411が含浸されているため、溶存酸
素濃度の高い水中にあっても、硬質Crめっきの皮膜8
とインペラ4との界面で電気腐食が生じることはない。
また、硬質Crめっきの皮膜8は硬度がビッカース硬さ
で800〜1000程度と硬いため、水中に含まれるスケール
がインペラ4に衝突した際の付着力が低下する。
【0059】なお、本実施例では硬質Crめっきの最終
膜厚は約0.3mmである。スケールの衝突付着に対して
は硬質Crめっきの膜厚を厚くする必要がない。しか
し、薄過ぎると耐食性の低下が大きく、耐食性を考慮す
ると硬質Crめっきの最終膜厚は約0.1mm以上、好ま
しくは約0.3mm以上が望ましい。
【0060】図10は、図9に示すボイラー給水ポンプ
のインペラの製造手順を示す工程図である。まず、鋳造
によって製作(手順101)したインペラに所定熱処理
を施し、形状修正の加工を施す(手順102)。その
後、洗浄、脱脂などの前処理(手順103)を行ない、
電気めっき法によって硬質Crめっきの皮膜8を形成す
る(手順104)。本実施例ではこの段階での硬質Cr
めっきの膜厚は約0.3mmである。次に、研磨によって
所定寸法に加工する(手順105)。この際、研磨すべ
き箇所は、電界集中によって電気硬質Crめっきの膜厚
が極端に厚くなる部分だけであり、膜厚を薄くする、も
しくはめっき条件を最適化すれば、研磨による形状修正
は必要ない。次に、硬質Crめっきの皮膜8で被覆され
たインペラ4をケイ酸エチルを含む溶剤中に浸漬する
(手順106)。硬質Crめっきの微細亀裂への溶剤の
浸透を促進するために、超音波加振機によって振動を加
える。所定時間の浸漬後、軸を大気中で加熱乾燥させる
(手順107)。本実施例では約200℃で約1時間加熱
した。冷却後、再び溶剤中への浸漬、加熱乾燥の工程を
行なう。Cr皮膜の耐食性を確実にするためには、上記
工程をすくなくとも2回以上、望ましくは3回以上繰り
返す必要がある。上記工程が終了後、不要溶剤を取り除
く。最後に軸と嵌合する内径を加工し所定寸法とした
(手順108)後、組立てに供する。
【0061】図11は、本発明の第5の実施例のボイラ
ー給水ポンプの軸の詳細断面を示す。図11において、
13%Cr+数%Mo鋼材で製作した軸3は、高速フレー
ム溶射法によって形成されたWC−NiCr溶射膜9によ
り被覆されている。WC−NiCr溶射膜9には、膜内部
に多数のボイド510があり、これらボイド510が連
続化し、溶射膜9表面から軸3との界面に達する欠陥と
なる。本実施例のボイラー給水ポンプ軸では、ボイド5
10内部にはフッ素樹脂511が含浸されている。ボイ
ド510内部にフッ素樹脂511が充填されているた
め、溶存酸素濃度の高い水中にあっても、WC−NiCr
溶射膜9と軸3との界面で電気腐食が生じることはな
い。また、WC−NiCr溶射膜9は、ビッカース硬さで
約1000程度と硬いため、インペラの組立て・分解時
の耐噛りつき性が増すだけでなく、水中に混在、浮遊し
ている土や砂による摩耗に対しての耐久性(耐摩耗性)
がよい。また、硬質Crめっきは膜厚が厚くなると割れ
を生じやすいのに対し、WC−NiCr溶射膜は硬質Cr
めっきに比較して厚膜化が可能であり、したがって耐食
性も硬質Crめっきの皮膜に比べて向上する。
【0062】本実施例ではWC−NiCr溶射膜9として
は、75%WC−25%NiCr組成を用いた。しかし、
本発明は75%WC−25%NiCr組成に限定するもの
ではなく、皮膜の目的である耐食性と耐噛りつき性を満
足できればよい。従って、耐摩耗性に優れるWCと耐食
性を有する金属NiCrとの混合物であればよく、具体的
にWC含有率として30〜80%の範囲が使用可能であ
る。
【0063】また、溶射膜の硬質材としては、WCだけ
ではなく、Cr32の使用も可能である。この場合のバ
インダも耐食性の点からNiCrが望ましい。耐食性と耐
噛りつき性を考慮すればCr32含有率として30〜8
0%の範囲が使用可能である。WC−NiCr溶射膜に代
えてCr32−NiCr溶射膜とした場合も、WC−NiC
r溶射膜の場合と同様、硬さが硬いため、インペラの組
立て・分解時の耐噛りつき性、土や砂に対する耐摩耗性
がよくなり、厚膜化による耐食性向上の効果がある。
【0064】図12は、図11に示す実施例のボイラー
給水ポンプの軸の製造手順を示す工程図である。所定熱
処理を施した軸材料を切削によって所定形状に加工し
(手順121)、その後、サンドブラストによって表面
を適度に荒らす前処理を施し(手順122)、次いで高
速フレーム溶射法によってWC−NiCr溶射膜を被覆す
る(手順123)。本実施例ではこの段階でのWC−N
iCr溶射膜の膜厚は約0.5mmである。その後、研磨に
よって所定軸径に加工する(手順124)。WC−Ni
Cr溶射膜の最終膜厚は約0.3mmである。次に、真空
含浸法によってフッ素樹脂511を含浸する(手順12
5)。まず、真空容器内に軸を配置し、真空排気後、溶
融状態のフッ素樹脂を容器内に注入する。次いで大気圧
によってフッ素樹脂を加圧し、WC−NiCr溶射膜のボ
イド内部まで樹脂を浸透させる。この状態を所定時間保
持後、大気中に取り出し冷却させる。冷却後、不要樹脂
を取り除き、軸寸法を測定し、最終修正を施し(手順1
26)組立てに供する。
【0065】なお、本実施例では含浸樹脂としてフッ素
樹脂を用いたが、シリコン樹脂でも良くフッ素樹脂に限
定するものではない。
【0066】また、本実施例では真空含浸法によってフ
ッ素樹脂511をWC−NiCr溶射膜のボイド内部に含
浸させたが、真空含浸法は大物部材への適用は困難であ
る。この場合、溶融状態の樹脂を充たした容器内に浸漬
する方法でもよく、真空含浸法に限定するものではな
い。
【0067】さらに、本実施例では溶射膜の形成方法と
して高速フレーム溶射法を用いたが、高速フレーム法に
限定するものではなく、爆発溶射、プラズマ溶射法であ
ってもよい。
【0068】また、ボイド内部への含浸は樹脂だけに限
るものではなく、前記第2、第4の実施例のごとく、S
iOxを含浸してもよい。この場合の製造方法は図12に
おける研磨後の樹脂含浸の工程(手順125)が、珪酸
エチルを含む溶剤中への浸漬と加熱・乾燥の工程とな
る。
【0069】図13は、本発明の第6の実施例のボイラ
ー給水ポンプの軸の詳細断面を示す。図13において、
13%Cr+数%Mo鋼材で製作した軸3は、高速フレ
ーム溶射法によって形成されたWC−NiCr溶射膜9
で被覆されている。WC−NiCr溶射膜9には、膜内
部に多数のボイド610が存在し、これらボイラ610
が連続化し、溶射膜9表面から軸3との界面に達する欠
陥となる。本実施例のボイラー給水ポンプの軸3では、
ボイド610内部にはSiOx611が含浸されてい
る。SiOxによってボイド610内部にSiOxが充
填されているため、溶存酸素濃度の高い水中にあって
も、WC−NiCr溶射膜9と軸3との界面で電気腐食
が生じることはない。また、WC−NiCr溶射膜9
は、ビッカース硬さで約1000程度と硬いため、イン
ペラの組立て・分解時の耐噛りつき性が増す。
【0070】本実施例ではWC−NiCr溶射膜9とし
ては、75%WC−25%NiCr組成を用いた。しか
し、本発明は75%WC−25%NiC組成に限定する
ものではなく、皮膜の目的である耐食性と耐噛りつき性
を満足できればよい。従って、耐摩耗性に優れるWCと
耐食性を有する金属NiCrとの混合物であればよく、
具体的にWC含有率として30〜80%の範囲が使用可
能である。また、溶射膜の硬質材としてはWCだけでは
なく、Cr32の使用も可能である。この場合のバイン
ダも耐食性の点からNiCrが望ましい。耐食性と耐噛
りつき性を考慮すればCr32含有率として30〜80
%の範囲が使用可能である。
【0071】図14は、図13に示すボイラー給水ポン
プの軸の製造手順を示す工程図である。所定熱処理を施
した軸材料を切削によって所定寸法に加工し(手順14
1)、その後、サンドブラストによって表面を適度に荒
らす前処理を施し(手順142)、次いで高速フレーム
溶射法によって軸3の表面にWC−NiCr溶射膜9を
形成する(手順143)。本実施例では、この段階での
WC−NiCr溶射膜9の膜厚は約0.5mmである。そ
の後、研磨によって所定軸径に加工する(手順14
4)。WC−NiCr溶射膜9の最終膜厚は約0.3mm
である。
【0072】次に、ケイ酸エチルを含む溶剤中に、WC
−NiCr溶射膜9で被覆された前記軸3を浸漬する
(手順145)。WC−NiCr溶射膜9のボイドへの
ケイ酸エチルを含む溶剤の浸透を促進するために、超音
波加振機によって該溶剤に振動を加える。所定時間の浸
漬後、軸3を大気中で加熱乾燥させる(手順146)。
本実施例では約200℃で約1時間加熱した。冷却後、
再び溶剤中への浸漬、加熱乾燥の工程を行なう。WC−
NiCr溶射膜9の耐食性を確実にするためには、上記
工程をすくなくとも2回以上、望ましくは3回以上繰り
返す必要がある。上記工程の終了後、不要溶剤を取り除
く。最後に軸と嵌合する内径を加工し所定寸法とした
(手順147)後、組立てに供する。
【0073】上記第5、第6の実施例は、ポンプの軸3
を、WC−NiCr溶射膜9で被覆した場合の例である
が、同様に、ポンプのインペラ4を、WC−NiCr溶
射膜9もしくはCr32−NiCr溶射膜で被覆し、溶
射膜のボイドをフッ素樹脂、シリコン樹脂、あるいはS
iOxで充填するようにしても、同様の効果が得られる。
また、上記各実施例は、バーレル形のボイラー給水ポ
ンプに本発明を適用したものであるが、本発明はバーレ
ル形のボイラー給水ポンプ以外のポンプ、例えば図15
に示すような縦軸ポンプなどの軸、インペラにも、同様
に適用して効果がある。図15は、縦軸ポンプの概略縦
断面図で、煩雑さを避けるため、断面部のハッチングを
省略してある。図示のポンプは、ケーシング1の吸込み
口2から吸い込まれた水が、軸3によって回転されるイ
ンペラ4によって引き上げられ、吐出口7から排出され
る構成となっており、火力プラントの海水冷却用の循環
水ポンプや雨水や河川水などを排水する排水機場などで
使用される。このようなポンプの取扱いの対象となる水
あるいは海水には、微小な砂が混じっている場合が多
く、インペラの摩耗が問題となるが、本発明の適用によ
り、インペラの摩耗が抑制され、ポンプの寿命延長に効
果がある。
【0074】図16は本発明の第7の実施例である、火
力発電プラント等に用いられるバーレル型のボイラー給
水ポンプの縦断面図である。ただし、本図では煩雑さを
避けるため、部品ごとの断面ハッチングを厳密に区別す
ることなく、また軸については断面表示をしていない。
図16に示す本発明の実施例であるボイラー給水ポンプ
は、吸込口2及び吐出口7を備えたケーシング1と、該
ケーシング1に内装され軸受11で両端を支持された軸
3と、軸3に嵌装、固着されて該軸3とともに回転する
インペラ4と、軸3のインペラ4の両側の軸シール部に
嵌装、固着されたスリーブ10と、インペラ4の外周に
設けられたデイフューザ5と、デイフューザ5の外周の
ケーシング1内周に設けられたステージ6と、を含んで
構成されている。
【0075】ケーシング1の吸込口2より吸込まれた水
が、軸3に固定され共に回転するインペラ4によって昇
圧され、インペラ4の外周に設けたデイフューザ5に吐
出される。デイフューザ5に吐出された水は、デイフュ
ーザ5の外周に設けたステージ6に流入し、ステージ6
によって外向きの流れが内向きに変えられて、次段のイ
ンペラ4に導入され、さらに昇圧される。こうして、吸
込口2より吸込まれた水は昇圧行程を繰返して加圧さ
れ、吐出口7から吐出され構造である。軸3は軸受11
によって両端で支持され、その内側にはスリーブ10が
装着されて軸封を構成している。
【0076】本実施例では、軸3は13%Cr鋼で、イン
ペラ4は13%Cr鋳鋼で製作されている。軸3は高速回
転と流体力によって稼働時常に回転曲げを受けるため、
表面に亀裂が生じると、それが起点となって軸の疲労破
壊を引き起こす可能性がある。なお、本実施例では、軸
3,インペラ4の双方がCrを13重量%含む鉄合金と
したが、軸3,インペラ4のうちのすくなくとも一方の
材料は、Crを11〜15%含む鉄合金とするのが望ま
しい。また、インペラ4も常に高速流体と接するため、
表面に亀裂が生じるとエロージョン(壊食)を発生する
可能性が生じる。軸3とインペラ4はボイラー給水ポン
プにおいて極めて重要部品であるため、その破断、壊食
は避けねばならない。特に火力発電プラント等で連続的
に使用されるボイラー給水ポンプの場合、その信頼性向
上が最優先されねばならない。前記のごとく、軸3には
組立時・分解時の噛り付き防止のため、インペラ4には
ディフューザ、もしくはケーシングとの摺動部の摩耗防
止のために硬質Crめっきが被覆される。
【0077】一方CrめっきはCWT環境下では、腐食
を発生する可能性がある。そこで、火力発電プラント等
で連続的に使用されるボイラー給水ポンプの場合、軸、
インペラにはCrめっきを被覆しないために生じる不都
合以上に、被覆しないことによって生じる信頼性向上が
優先されるべきと考え、本実施例では表面処理を施して
いない。すなわち軸3とインペラ4は素材組成とほぼ同
等の材料が表面をなしている。
【0078】しかしながら、スリーブ10は、摺動部に
摩耗が生じるとその本来の機能である軸封を達成するこ
となく漏水の原因となる。従って、スリーブ10は耐摩
耗性向上が優先され、硬質Crめっきの被覆が不可欠で
ある。本実施例では、スリーブ10に被覆したCrめっ
きの耐食性向上のため、下記の構成とした。
【0079】図17はスリーブ10の外観を示す。スリ
ーブ10は13%Cr鋼で製作されている。摺動する円筒
面には約0.2mm厚みの硬質Crめっきの皮膜8が被覆され
ている。図18はスリーブ10の円筒面に被覆された硬
質Crめっきの皮膜8の組織の概略図である。硬質Crめ
っきの皮膜8にはマイクロクラック8aと称する微細な
亀裂が存在し、場合によっては素材13%Cr鋼との界面
に達するマイクロクラック(微細な縦割れ)も存在す
る。本実施例ではマイクロクラック8aにはCrO2、S
iO2を含む酸化物8dが含浸されている。図18のI−
I線矢視断面を図19に示す。図19においてスリーブ
10の素材10aは13%Cr鋼である。スリーブ10の
素材10aの円筒面に被覆された約0.2mm厚みの硬質Cr
めっきの皮膜8の下層には、約20nm厚みのNiめっき1
2が被覆されている。なお、Niめっき12はほぼNi10
0%の組成、硬質Crめっきの皮膜8はほぼCr100%の組
成であり、意図的に添加物は加えていない。また、前述
のごとくマイクロクラック8aにはCrO2、SiO2を含
む酸化物8dが含浸され、表層から下地(素材10a)
に至る亀裂は全て封じられており、水分が13%Cr鋼の
素材10aと硬質Crめっきの皮膜8の界面に達する事
はない。従って、溶存酸素濃度が増加した水を取り扱っ
ても、本実施例のスリーブ10は腐食、及びCrめっき
の剥離を生じることはない。この際、酸化物8dは、含
浸量によってCrめっき粒界に沿った網目状、もしくは
点状に存在する。いずれかの形態であれば、マイクロク
ラック8aを十分封じており、必要とされる特性を発揮
できる。
【0080】スリーブ10の製造方法を以下に説明す
る。先ず、13%Cr鋼で所要の形状を製作する。次い
で、アルカリ洗浄、水洗等の前処理を施し、めっき被覆
面の表面の清浄化、活性化を行う。次いで軸3と嵌合す
るスリーブ内径面にめっきが被覆しないようにコーティ
ングし、次いでNiストライクを行い、その後電気めっ
きによって円筒面にNi皮膜を被覆する。次にめっき面
を所定形状に研磨し、次いでCrめっき用の前処理を施
す。前処理後、再び電気めっきによって硬質Crめっき
を被覆する。その後、内径コーティングを取り去り、内
径を基準に円筒面を研磨加工し所定寸法とする。さら
に、円筒面を基準に内径面を切削加工し所定形状とす
る。その後、スリーブを加熱しながら、珪酸、クロム酸
を含む溶剤を円筒面に塗布する。溶剤塗布と加熱を繰り
返し、Crめっきに存在する微細亀裂に珪酸、クロム酸
を含む溶剤を含浸させ、さらに加熱によって溶剤中の珪
酸、クロム酸を酸化物化させる。溶剤の塗布、加熱が完
了後、所定寸法を測定し、必要であれば研磨加工によっ
て所定寸法とする。Niめっき12、硬質Crめっきの皮
膜8を連続的に電気めっきで製作することによっって、
めっき間の密着力が増し、皮膜の剥離を防ぐことが出来
る。Niめっきを無電解めっきで製作すると、軸と嵌合
する内面被覆防止のコーティングが難しく、且つ硬質C
rめっきとの密着力が低くなるため、高速流水による皮
膜剥離が生じやすい。なお、微細亀裂に珪酸、クロム酸
を含む溶剤を含浸させるには、それら溶剤を塗布するの
ではなく、それら溶剤中にスリーブ10を浸漬してもよ
い。
【0081】本実施例では、Niめっき12、硬質Crめ
っきの皮膜8に各々純Ni、純Crを用いたが、それぞれ
必要とする耐食性と耐摩耗性を有すれば、100%のNi、
Crである必要はない。各々合金であってよく、各種組
成の検討結果によればNiめっきの場合Niを80重量%
含む合金皮膜であれば必要とする耐食性は確保できる。
Crめっきの場合Crを90重量%含む合金皮膜であれば必
要とする耐摩耗性は確保できる。
【0082】また、本実施例では、酸化物8dにCr
2、SiO2を含む酸化物を用いた。これは、それぞれ
が優れた耐食性と安定性を有し、且つ加熱による珪酸、
クロム酸からの形成が容易で、また浸透性に優れるため
である。従って、その組成に特定の限定はなく、珪酸、
クロム酸を含む溶剤から形成できる酸化物であればよ
い。
【0083】図20は、本発明の第8の実施例である給
水ポンプのインペラ41の外観を示す。本インペラ41は13
%Cr鋳鋼を素材41eとして製作され、13%Cr+数%M
o鋼材で製作された軸31に嵌入、固着されている。図2
0に示す円周面41fには、約20nm厚みのNiめっき41aが
被覆され、その上層に約0.2mm厚みの硬質Crめっき41b
が被覆されている。図21はインペラ41の硬質Crめ
っき41bの表面組織を示す平面図である。硬質Crめっき
41bにはマイクロクラック41cが存在し、本実施例では、
このマイクロクラック41cのCrめっき粒界に点状に樹脂
を含浸してある。図22はインペラ41の硬質Crめっ
き41b及びNiめっき41aが被覆された部分の縦断面図で
ある。図示のように、硬質Crめっき41bのマイクロクラ
ック41cには、樹脂41dが含浸させてある。本実施例では
フッ素樹脂が含浸されている。硬質Crめっき41bのマイ
クロクラック41cがフッ素樹脂によって封じられている
ため、溶存酸素濃度の高い水中にあっても、スリーブ1
0の素材を構成する13%Cr鋳鋼に腐食が生じることは
ない。
【0084】図23は本実施例の給水ポンプの軸31の断
面拡大図を示す。本実施例では軸31の素材31eは、先に
述べたように、13%Cr+数%Mo鋼材で製作されてい
る。本実施例は、すでに硬質Crめっき31bを被覆して
ある軸の耐食性を改善した例である。すでに硬質Crめ
っき31bが被覆してある軸の場合、Ni/Crの2層めっ
きとするには、Crめっき層を取り去らねばならなず、
長尺物である軸ではその作業は容易ではない。しかしな
がら本発明であればCrめっきを取り去ることなく、軸
の耐食性を改善できる。図23は、硬質Crめっき31b
のマイクロクラック31cに、CrO2、SiO2を含む酸化
物31dが含浸された状態を示してある。酸化物31dによっ
てマイクロクラック31cが封じられているため、溶存酸
素濃度の高い水中にあっても、素材31eに腐食が生じる
ことはない。なお、軸31の材料は、Crを11〜15%
含む鉄合金とするのが望ましい。
【0085】以下、インペラ41の製造方法を説明する。
鋳造法によってインペラを形成する。次いでNiめっ
き、Crめっきを被覆するが、その方法は実施例7のス
リーブ10と同様である。次いで、真空含浸法によって
フッ素樹脂を含浸する。まず、真空容器内にインペラ41
を配置し、真空排気後、溶融状態の樹脂を容器内に注入
する。次いで大気圧によって樹脂を加圧し、Cr皮膜の
微細亀裂内部まで樹脂を浸透させる。この状態を所定時
間保持後、大気中に取り出し冷却させる。冷却後、イン
ペラ41の表面から不要樹脂を取り除き、寸法測定後最終
修正を施し組立てに供する。なお、本実施例では含浸樹
脂としてフッ素樹脂を用いたが、シリコン樹脂でも良く
フッ素樹脂に限定するものではない。
【0086】以下、軸31の製造方法を説明する。本例の
場合、すでにCrめっきのみが被覆された状態の軸を処
理する。軸は長尺物であるため、インペラのような真空
含浸法は困難であり、実施例7に示したスリーブ10に
処理した珪酸、クロム酸を含む溶剤を円筒面に塗布する
方法を用いた。溶剤塗布と加熱を繰り返し、Crめっき
に存在する微細亀裂に珪酸、クロム酸を含む溶剤を含浸
させ、さらに加熱によって溶剤中の珪酸、クロム酸を酸
化物化させる。溶剤の塗布、加熱が完了後、外径寸法を
測定し、必要であれば研磨加工によって外径を所定寸法
とした。なお、微細亀裂に珪酸、クロム酸を含む溶剤を
含浸させるには、それら溶剤を塗布するのではなく、そ
れら溶剤中に軸31を浸漬してもよい。
【0087】なお、本実施例では、インペラ41のNiめ
っきの膜厚は約20nm、硬質Crめっきの膜厚は約0.2mmと
した。Niめっきは耐食性を増すために必要な膜厚範囲
があり、様々に検討した結果では、最低10nm必要であ
る。但し、30nm以上では、その効果は飽和するため、省
労力、省資源のためには10nm〜30nmの範囲とするのが適
当である。硬質Crめっきは耐摩耗性の点で必要な膜厚
があり、様々に検討した結果では、最低0.1mm必要であ
る。0.5mm以上では、皮膜の残留応力が顕著になるため
好ましくない。従って、その適正膜厚範囲は0.1mm〜0.5
mmとなる。
【0088】図24は本発明の第9の実施例である昇圧
ポンプ9の縦断面図である。図示のポンプは、軸93と、
軸93に固定され共に回転するインペラ94と、インペラ94
及びインペラ94が固定された軸93の部分を内装するケー
シング92と、ケーシング92の外側で前記軸93の両端部を
支持する軸受97と、を含んで構成され、ケーシング92内
に取り込まれた取り扱い流体をインペラ94の吸い込み口
94aから吸い込み、回転によって昇圧させて吐き出し口9
4bから吐き出し、ケーシング92内の流路から排出する機
構である。
【0089】図25はインペラ94の外観を示す。本実施
例ではインペラ94は、13%Cr鋳鋼で製作されている。
なお、図中の網目で覆われた環状表面部は、溶射法によ
ってWC-NiCr溶射膜94cを被覆した箇所である。網目
で覆われた環状表面部は、ケーシング92と摺動するた
め、耐摩耗性が求められる。そこで、硬く且つ厚膜化が
可能である溶射膜を被覆している。図26は、インペラ
94の縦断面図を示す。図26に示すように、WC−Ni
Cr溶射膜94c内部にはボイド94eが存在し、該ボイド94e
にはCrO2、SiO2を含む酸化物94fが含浸、充填され
ている。ボイド94eは酸化物94fによって封じられている
ため、溶存酸素濃度の高い水中にあってもインペラ94の
素材94dに腐食が生じることはない。
【0090】以下、本実施例のインペラ94の製造方法を
説明する。所定熱処理を施したインペラ94の素材94dを
切削によって所要の形状寸法に加工し、その後、サンド
ブラストによって表面を適度に荒らす。次いで高速フレ
ーム溶射法によってWC-NiCr溶射膜94cを被覆する。
本実施例ではこの段階でのWC-NiCr溶射膜94cの膜厚
は約0.5mmとした。次に、珪酸、クロム酸を含む溶剤を
WC-NiCr溶射膜94cに塗布し、加熱する工程を繰
り返す。溶剤塗布と加熱を繰り返し、WC−NiCr溶
射膜94cに存在するボイド94eに珪酸、クロム酸を含む溶
剤を含浸させ、さらに加熱によって溶剤中の珪酸、クロ
ム酸を酸化物化させる。溶剤の塗布、加熱が完了後、溶
射膜形成部の形状寸法を測定し、必要であれば研磨加工
によって所定寸法とした。微細亀裂に珪酸、クロム酸を
含む溶剤を含浸させるには、それら溶剤を塗布するので
はなく、それら溶剤中にインペラ94を浸漬してもよい。
【0091】なお、本実施例ではWC−NiCr溶射膜94
cとしては、75%WC−25%NiCr組成を用いた。しか
し、本発明は75%WC−25%NiCr組成に限定するもの
ではなく、皮膜の目的である耐摩耗性と耐噛りつき性を
満足できればよい。従って、耐摩耗性に優れるWCと耐
食性を有する金属NiCrとの混合物であればよく、具体
的には、WC含有率は少なくとも70%あればよい。ま
た、溶射膜の硬質材としてはWCだけではなく、Cr3
2の使用も可能である。この場合のバインダも耐食性の
点からNiCrが望ましい。耐食性と耐噛りつき性を考慮
すればCr32含有率は少なくとも70%とするのが望
ましい。
【0092】図27は、本発明の第10の実施例である
昇圧ポンプのインペラ94の断面を示す。図27に示すよ
うに、本実施例ではWC−NiCr溶射膜94cの下にNi合
金皮膜94gが被覆されている。Ni合金皮膜94gは溶射法
によってインペラ94の素材94dに被覆され、その組成は
Ni−10%Pである。本実施例では、WC−NiCr溶射膜
94cに存在するボイド94eがCrO2、SiO2を含む酸化物
94fによって封じられ、且つNi合金皮膜94gがWC−Ni
Cr溶射膜94cの下層に被覆されているため、優れた耐食
性と耐摩耗性が達成される。
【0093】以下、その製造方法を説明する。所定熱処
理を施したインペラ94の素材94dを切削によって所要の
形状寸法に加工し、その後、サンドブラストによって表
面を適度に荒らす。、次いで高速フレーム溶射法によっ
てNi−10%Pなる組成のNi合金皮膜94gを素材94dの表
面に被覆する。次いで、再びサンドブラストによってN
i合金皮膜94g表面を適度に荒らし、高速フレーム溶射法
によってWC−NiCr溶射膜をNi合金皮膜94g上に被
覆する。以後の珪酸、クロム酸を含む溶剤をWC−Ni
Cr溶射膜94cに塗布し、加熱する工程を繰り返す以降の
工程は前記と同様である。微細亀裂に珪酸、クロム酸を
含む溶剤を含浸させるには、それら溶剤を塗布するので
はなく、それら溶剤中にインペラ94を浸漬してもよい。
【0094】図28は本発明のポンプのインペラ、軸、
スリーブ等の部材と、従来のCrめっきを施した同様部
材との耐食性を比較したものである。耐食性は、溶存酸
素濃度が約6ppm、水温約50〜60℃の流水中に10mm×30mm
の面積を所定皮膜で被覆したSUS403を浸漬して、その重
量変化を測定した結果で表した。酸素濃度を高く設定
し、加速を行った腐食試験である。
【0095】上記腐食試験の本発明を代表する試験片に
は、基材としてSUS403を用い、その表面に電気めっきに
よって約20nm厚みのNiめっきを被覆し、さらにその上
に電気めっきで硬質Crめっきを被覆した。その後研磨
によって前記硬質Crめっきの膜厚を約0.2mmとし、次い
で、珪酸、クロム酸を含む溶剤を研磨済硬質Crめっき
に含浸させ、さらに加熱によって溶剤中の珪酸、クロム
酸を酸化物化した。従来の硬質Crめっきの試験片は、
基材として同じくSUS403を用い、その表面に電気めっき
で硬質Crめっきを被覆し、その後研磨によって硬質Cr
めっきの膜厚を約0.2mmとしたものである。
【0096】従来品は、酸化によって初期重量が増加
し、その後腐食による重量減少が認められる。それに比
較し、本発明の試験片は重量変化がほとんど生じること
はなく、極めて優れた耐食性を示す。腐食はめっきと母
材との界面で生じるため、重量減少はめっき膜の密着強
度の低下とほぼ同様である。すなわち、本発明のポンプ
のインペラ、軸、スリーブは、優れた耐食性と、強固な
めっき膜密着力を長期に保持することが出来る。
【0097】
【発明の効果】本発明によれば、耐食性とインペラ組立
て時の耐噛りつき性に優れる軸が達成され、かつ、溶存
酸素濃度が高い水中でも信頼性高いポンプが提供でき
る。
【0098】また本発明によれば、耐食性とスケールの
衝突付着力を抑制するインペラが達成されるため、溶存
酸素濃度が高い水中でも信頼性高いボイラー給水ポンプ
が提供できる。
【0099】さらに、本発明によれば、軸、インペラの
表面の硬度をあげることができるので、取り扱う水に多
量の土や砂が混じっている場合の軸、インペラの表面の
摩耗を抑制し、寿命を延長する効果がある。
【0100】また、本発明によれば、溶存酸素濃度の高
い取り扱い水中でも、耐食、耐摩耗性に優れた皮膜を
軸、インペラ、スリーブを形成できるため、信頼性高い
ポンプが達成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されるポンプの例を示す概略縦断
面図である。
【図2】本発明の第1の実施例であるボイラー給水ポン
プの軸表面の詳細縦断面図である。
【図3】図2に示すボイラー給水ポンプ用軸の製造手順
を示す工程図である。
【図4】本発明の第2の実施例であるボイラー給水ポン
プ用軸表面の詳細縦断面図である。
【図5】図4に示すボイラー給水ポンプ用軸の製造手順
を示す工程図である。
【図6】本発明の第3の実施例であるボイラー給水ポン
プ用インペラの概略斜視図である。
【図7】図6に示すボイラー給水ポンプ用インペラ表面
の詳細縦断面図である。
【図8】図6に示すボイラー給水ポンプ用インペラの製
造手順を示す工程図である。
【図9】本発明の第4の実施例であるボイラー給水ポン
プ用インペラ表面の詳細縦断面図である。
【図10】図9に示すボイラー給水ポンプ用インペラの
製造手順を示す工程図である。
【図11】本発明の第5の実施例であるボイラー給水ポ
ンプ用軸表面の詳細縦断面図である。
【図12】図11に示すボイラー給水ポンプ用軸の製造
手順を示す工程図である。
【図13】本発明の第6の実施例であるボイラー給水ポ
ンプ用軸表面の詳細縦断面図である。
【図14】図13に示すボイラー給水ポンプ用軸の製造
手順を示す工程図である。
【図15】本発明が適用される縦軸ポンプの例を示す断
面図である。
【図16】本発明の第7の実施例であるボイラー給水ポ
ンプの概略縦断面図である。
【図17】図16に示すボイラー給水ポンプのスリーブ
の外観を示す斜視図である。
【図18】図17に示すスリーブ円筒面の概略組織を示
す平面図である。
【図19】図18に示すスリーブ円筒面のI−I線矢視
縦断面図である。
【図20】本発明の第8の実施例であるボイラー給水ポ
ンプのインペラの外観斜視図である。
【図21】図20に示すインペラ表面の概略組織を示す
平面図である。
【図22】図21に示すインペラの一部表面の概略縦断
面図である。
【図23】図20に示す実施例の軸の一部表面の概略縦
断面図である。
【図24】本発明の第9の実施例である昇圧ポンプの概
略縦断面図である。
【図25】図24に示す昇圧ポンプのインペラの外観斜
視図である。
【図26】図25に示すインペラの一部表面の概略縦断
面図である。
【図27】本発明の第10の実施例である昇圧ポンプの
インペラの一部表面の概略縦断面図である。
【図28】本発明のポンプのインペラ、軸、スリーブ
と、従来ポンプのインペラ、軸、スリーブとの耐食性を
比較して示すグラフである。
【符号の説明】
1 ケーシング 2 吸込口 3 軸 4 インペラ 5 ディフューザ 6 ステージ 7 吐出口 8 硬質Cr
めっき皮膜 8a マイクロクラック 8d 酸化物 9 WC−NiCr溶射膜 10 スリーブ 10a スリーブの素材 11 軸受 12 Niめっき 31 軸 31b 硬質Crめっき 31c マイ
クロクラック 31d 酸化物 31e 軸の
素材 41 インペラ 41a Ni
めっき 41b 硬質Crめっき 41c マイ
クロクラック 41d 樹脂 41e イン
ペラの素材 41f 円周面 92 ケーシ
ング 93 軸 94 インペ
ラ 94a 吸い込み口 94b 吐き
出し口 94c WC-NiCr溶射膜 94d インペ
ラの素材 94e ボイド 94f 酸化
物 94g Ni合金皮膜 97 軸受 110 フッ素樹脂を含浸した硬質Crめっき膜の微細
亀裂 111 フッ素樹脂 210 SiOxを含浸した硬質Crめっき膜の微細亀裂 211 SiOx 310 フッ素樹脂を含浸した硬質Crめっき膜の微細
亀裂 311 フッ素樹脂 410 SiOxを含浸した硬質Crめっき膜の微細亀裂 411 SiOx 510 フッ素樹脂を含浸したWC−NiCr溶射膜のボ
イド 511 フッ素樹脂 610 SiOxを含浸したWC−NiCr溶射膜のボイド 611 SiOx
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 桂 裕之 茨城県土浦市神立町603番地 株式会社日 立製作所土浦工場内

Claims (25)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流路
    を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケーシ
    ングとを有してなるポンプにおいて、前記軸及びまたは
    インペラの表面の一部もしくは全面が、樹脂もしくはガ
    ラスを含浸した、Crを含む皮膜で被覆されていること
    を特徴とするポンプ。
  2. 【請求項2】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流路
    を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケーシ
    ングとを有してなるポンプにおいて、前記軸及びまたは
    インペラの表面の一部もしくは全面が、樹脂もしくはガ
    ラスを含浸した、WC,Ni,及びCrを含む皮膜で被覆
    されていることを特徴とするポンプ。
  3. 【請求項3】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流路
    を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケーシ
    ングとを有してなるポンプにおいて、前記軸及びまたは
    インペラの表面の一部もしくは全面に、樹脂もしくはガ
    ラスを含浸した、Cr32,Ni,及びCrを含む皮膜が
    被覆されていることを特徴とするポンプ。
  4. 【請求項4】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流路
    を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケーシ
    ングとを有してなるポンプの製造方法において、軸もし
    くはインペラをCrを含む皮膜で被覆し、その後該皮膜
    で被覆された軸もしくはインペラを所定の寸法に加工
    し、次に軸もしくはインペラの前記皮膜に樹脂を含浸さ
    せることを特徴とするポンプの製造方法。
  5. 【請求項5】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流路
    を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケーシ
    ングとを有してなるポンプの製造方法において、軸もし
    くはインペラをCrを含む皮膜で被覆し、その後該皮膜
    で被覆された軸もしくはインペラを所定の寸法に加工
    し、次に軸もしくはインペラを珪素を含む溶剤中に浸漬
    することまたは軸もしくはインペラへ珪素を含む溶剤を
    塗布することによって前記皮膜に珪素を含む前記溶剤を
    含浸させ、その後前記皮膜を加熱することを特徴とする
    ポンプの製造方法。
  6. 【請求項6】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流路
    を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケーシ
    ングとを有してなるポンプの製造方法において、前記軸
    及びまたはインペラをWCとNi,Crを含む皮膜もしく
    はCr32とNi,Crを含む皮膜で被覆し、その後該皮膜
    で被覆された軸及びまたはインペラを所定寸法に加工
    し、次に前記皮膜に樹脂を含浸させることを特徴とする
    ポンプの製造方法。
  7. 【請求項7】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流路
    を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケーシ
    ングとを有してなるポンプの製造方法において、前記軸
    をWCとNi,Crを含む皮膜もしくはCr32とNi,Cr
    を含む皮膜で被覆し、その後該皮膜で被覆された軸を所
    定寸法に加工し、次に該軸を珪素を含む溶剤中に浸漬す
    ることまたは該軸へ珪素を含む溶剤を塗布することによ
    って前記皮膜に珪素を含む前記溶剤を含浸させ、その後
    前記皮膜を加熱することを特徴とするポンプの製造方
    法。
  8. 【請求項8】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流路
    を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケーシ
    ングとを有してなるポンプの製造方法において、インペ
    ラにWCとNi,Crを含む皮膜もしくはCr32とNi,C
    rを含む皮膜を被覆し、その後該皮膜で被覆されたイン
    ペラを所定寸法に加工し、次にインペラを珪素を含む溶
    剤中に浸漬することもしくはインペラへ珪素を含む溶剤
    を塗布することによって前記皮膜に珪素を含む前記溶剤
    を含浸させ、その後前記皮膜を加熱することを特徴とす
    るポンプの製造方法。
  9. 【請求項9】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流路
    を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケーシ
    ングとを有してなるポンプにおいて、前記軸、該軸に取
    り付けるスリーブ、インペラの内少なくとも一部材の表
    面の一部もしくは全面が、樹脂もしくは酸化物を含みC
    rを主成分とする皮膜で被覆されていることを特徴とす
    るポンプ。
  10. 【請求項10】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流
    路を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケー
    シングとを有してなるポンプにおいて、前記軸、該軸に
    取り付けるスリーブ、インペラの内少なくとも一部材の
    表面の一部もしくは全面がNiを含む皮膜で被覆され
    て、且つその上に樹脂もしくは酸化物を含みCrを主成
    分とする皮膜が被覆されていることを特徴とするポン
    プ。
  11. 【請求項11】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流
    路を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケー
    シングとを有してなるポンプにおいて、前記軸、該軸に
    取り付けるスリーブ、インペラの内少なくとも一部材の
    表面の一部もしくは全面が、樹脂もしくは酸化物を含み
    WC、Ni及びCrを主成分とし皮膜で被覆されているこ
    とを特徴とするポンプ。
  12. 【請求項12】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流
    路を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケー
    シングとを有してなるポンプにおいて、前記軸、該軸に
    取り付けるスリーブ、インペラの内少なくとも一部材の
    表面の一部もしくは全面がNiを含む皮膜で被覆され
    て、且つその上に樹脂もしくは酸化物を含みWC、Ni
    及びCrを主成分とする皮膜が被覆されていることを特
    徴とするポンプ。
  13. 【請求項13】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流
    路を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケー
    シングとを有してなるポンプにおいて、前記軸、該軸に
    取り付けるスリーブ、インペラの内少なくとも一部材の
    表面の一部もしくは全面が、樹脂もしくは酸化物を含み
    Cr32、Ni及びCrを主成分とした皮膜で被覆されて
    いることを特徴とするポンプ。
  14. 【請求項14】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流
    路を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケー
    シングとを有してなるポンプにおいて、前記軸、該軸に
    取り付けるスリーブ、インペラの内少なくとも一部材の
    表面の一部もしくは全面がNiを含む皮膜で被覆され
    て、且つその上に樹脂もしくは酸化物を含みCr32
    Ni及びCrを主成分とする皮膜が形成されていることを
    特徴とするポンプ。
  15. 【請求項15】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流
    路を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケー
    シングとを有してなるポンプの製造方法において、前記
    軸、該軸に取り付けるスリーブ、インペラの内少なくと
    も一部材をCrを含む皮膜で被覆し、その後該皮膜で被
    覆された該部材を所定の寸法に加工し、次に前記皮膜に
    樹脂を含浸させることを特徴とするポンプ製造方法。
  16. 【請求項16】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流
    路を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケー
    シングとを有してなるポンプの製造方法において、前記
    軸、該軸に取り付けるスリーブ、インペラの内少なくと
    も一部材をCrを含む皮膜で被覆し、その後該皮膜で被
    覆された該部材を所定の寸法に加工し、次に該部材を珪
    素を含む溶剤中に浸漬すること、またはSi,Crのうち
    少なくとも一方を含む溶剤を塗布することによって皮膜
    に前記溶剤を含浸させ、その後加熱することを特徴とす
    るポンプ製造方法。
  17. 【請求項17】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流
    路を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケー
    シングとを有してなるポンプの製造方法において、前記
    軸、該軸に取り付けるスリーブ、インペラの内少なくと
    も一部材にNiを含む皮膜を被覆し、次いでCrを含む皮
    膜で被覆し、その後該皮膜で被覆された該部材を所定の
    寸法に加工し、次に前記皮膜に樹脂を含浸させることを
    特徴とするポンプ製造方法。
  18. 【請求項18】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流
    路を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケー
    シングとを有してなるポンプの製造方法において、前記
    軸、該軸に取り付けるスリーブ、インペラの内少なくと
    も一部材にNiを含む皮膜を被覆し、次いでCrを含む皮
    膜で被覆し、その後該皮膜で被覆された該部材を所定の
    寸法に加工し、次に該部材をSi,Crのうち少なくとも
    一方を含む溶剤中に浸漬すること、またはSi,Crのう
    ち少なくとも一方を含む溶剤を塗布することによって前
    記皮膜に前記溶剤を含浸させ、その後加熱することを特
    徴とするポンプ製造方法。
  19. 【請求項19】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流
    路を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケー
    シングとを有してなるポンプの製造方法において、前記
    軸、前記軸に取り付けるスリーブ、インペラの内少なく
    とも一部材にWC,Ni及びCrを含む皮膜もしくはCr3
    2,Ni及びCrを含む皮膜を被覆し、その後該皮膜で被
    覆された部材を所定の寸法に加工し、次に前記皮膜に樹
    脂を含浸させることを特徴とするポンプの製造方法。
  20. 【請求項20】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流
    路を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケー
    シングとを有してなるポンプの製造方法において、前記
    軸、前記軸に取り付けるスリーブ、インペラの内少なく
    とも一部材にWC,Ni及びCrを含む皮膜もしくはCr3
    2,Ni及びCrを含む皮膜を被覆し、その後該皮膜で被
    覆された部材を所定の寸法に加工し、次に該部材をSi,
    Crのうち少なくとも一方を含む溶剤中に浸漬するこ
    と、または該部材へSi,Crのうち少なくとも一方を含
    む溶剤を塗布することによって前記皮膜に前記溶剤を含
    浸させ、その後加熱することを特徴とするポンプの製造
    方法。
  21. 【請求項21】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流
    路を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケー
    シングとを有してなるポンプの製造方法において、前記
    軸、前記軸に取り付けるスリーブ、インペラの内少なく
    とも一部材にNiを含む皮膜を被覆し、次いでWC,Ni
    及びCrを含む皮膜もしくはCr32,Ni及びCrを含む
    皮膜を被覆し、その後該皮膜で被覆された部材を所定の
    寸法に加工し、次に前記皮膜に樹脂を含浸させることを
    特徴とするポンプの製造方法。
  22. 【請求項22】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流
    路を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケー
    シングとを有してなるポンプの製造方法において、前記
    軸、前記軸に取り付けるスリーブ、インペラの内少なく
    とも一部材にNiを含む皮膜を被覆し、次いでWC,Ni
    及びCrを含む皮膜もしくはCr32,Ni及びCrを含む
    皮膜を被覆し、その後該皮膜で被覆された部材を所定の
    寸法に加工し、次に該部材をSi,Crのうち少なくとも
    一方を含む溶剤中に浸漬すること、または該部材へSi,
    Crのうち少なくとも一方を含む溶剤を塗布することに
    よって前記皮膜に前記溶剤を含浸させ、その後加熱する
    ことを特徴とするポンプの製造方法。
  23. 【請求項23】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流
    路を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケー
    シングとを有してなる給水ポンプにおいて、前記軸、及
    び前記軸に取り付けるインペラは、その表面は素材組成
    とおおよそ同等であり、且つ前記軸に取り付けるスリー
    ブは少なくとも表面の一部もしくは全面がNiを含む皮
    膜で被覆されて、且つその上にCrを含む皮膜が被覆さ
    れていることを特徴とする給水ポンプ。
  24. 【請求項24】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流
    路を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケー
    シングとを有してなる給水ポンプの製造方法において、
    前記軸に取り付けるスリーブは少なくとも表面の一部も
    しくは全面にNiを電気メッキによって被覆し、ついで
    速やかにその上の一部もしくは全面にCrを電気メッキ
    によって被覆することを特徴とする給水ポンプの製造方
    法。
  25. 【請求項25】 回転する軸と、該軸に取り付けられ流
    路を形成する複数のインペラと、これらを内蔵するケー
    シングとを有してなる給水ポンプの製造方法において、
    前記軸に取り付けるスリーブは少なくとも表面の一部も
    しくは全面にNiを電気メッキによって被覆し、ついで
    速やかにその上の一部もしくは全面にCrを電気メッキ
    によって被覆し、次いで該スリーブをSi,Crのうち少
    なくとも一方を含む溶剤中に浸漬すること、または該部
    材へSi,Crのうち少なくとも一方を含む溶剤を塗布す
    ることによって前記Crメッキ皮膜に前記溶剤を含浸さ
    せ、その後加熱することを特徴とする給水ポンプの製造
    方法。
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