JPH10259790A - ポンプ及びその製造方法 - Google Patents

ポンプ及びその製造方法

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JPH10259790A
JPH10259790A JP6607897A JP6607897A JPH10259790A JP H10259790 A JPH10259790 A JP H10259790A JP 6607897 A JP6607897 A JP 6607897A JP 6607897 A JP6607897 A JP 6607897A JP H10259790 A JPH10259790 A JP H10259790A
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film
impeller
boss
coating
pump
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JP6607897A
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Ryoji Okada
亮二 岡田
Seiichi Ishikawa
精一 石川
Hiroaki Yoda
裕明 依田
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Hitachi Ltd
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Hitachi Ltd
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  • Structures Of Non-Positive Displacement Pumps (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】流体内に土砂などを含む条件下でも使用可能
な、耐摩耗性と耐食性に優れたポンプ及びその製造方法
を提供する。 【解決手段】ポンプ部品の高速流水面に高硬度の溶射皮
膜を被覆し、溶射処理が困難、若しくは低速流水面には
Ni合金皮膜を被覆する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は耐摩耗性、耐食性に
優れたポンプ、及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ポンプは、流体内に固形物、例え
ば土砂などを含む条件下での使用が増えている。このよ
うな条件下で運転されるポンプには、インペラ、ケーシ
ングなどに固形物の衝突による摩耗(以後、土砂摩耗と
表記する)とキャビテーション壊食とが複合した損傷が
発生する。そのため、損傷発生部は定期的に肉盛り補修
を施すか、若しくはゴム等の樹脂ライニング、あるいは
セラミックス等の高硬度材料の被覆が行われている。こ
の種の技術として特開平3-47477号公報を挙げることが
できる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】先に示したように、流
体内に土砂などを含む条件下でポンプを使用する場合、
土砂摩耗とキャビテーション壊食とによる損傷防止のた
め、各種部材には高硬度材料の被覆が必要である。しか
しながら、三次元形状であるインペラ、ケーシング等へ
の高硬度材料の被覆は容易ではない。Crメッキは広く用
いられている電解メッキであり、皮膜硬さはメッキ膜中
では最高に属し、ビッカース硬さ(以後、Hvと表記す
る)が約1000である。しかし電解メッキであるため、形
状による電解集中が生じ膜厚を均一とすることが困難で
あり、流路内面など電極から離れる箇所に良好な皮膜を
形成することは極めて難しい。また、土砂水などの固体
粒子を含有する流体を取り扱うポンプにおいて、十分な
寿命を得られる膜厚を得ることが困難である。Ni-Pメッ
キ,若しくはNi-P-BメッキもCrメッキと同様に、耐摩耗
性、耐食性の付与に広く用いられる無電解メッキであ
り、形状にとらわれず均一な膜厚の皮膜を形成できる。
しかしながら、施工したままでは十分な硬さと密着力が
得られず、高速流体に接する場合、土砂摩耗に対し十分
な耐摩耗性を発揮できない。また、十分な寿命を得られ
る膜厚を得ることが困難である。従って、単独では土砂
摩耗とキャビテーション壊食に対して十分な耐摩耗性を
発揮することはことは困難であり、特に高流速に接する
インペラ外周、羽根出口などに適用することは困難であ
る。
【0004】ボロン拡散、クロム拡散は、表面層からボ
ロン、クロムを拡散させ、高硬度の拡散層を形成し、耐
摩耗性の向上を付与する表面処理である。複雑形状でも
適用可能であり、比較的高い硬さが得られる。しかしな
がら拡散層厚みには限界があり、土砂水などの固体粒子
を含有する流体を取り扱うポンプにおいて、十分な寿命
を有する膜厚を得ることが困難である。また、比較的高
い硬さを得ることが出来るが、固体粒子を含む高速流体
に接する場合に十分な耐摩耗性を発揮するには硬さが足
らない。従って、単独では土砂摩耗とキャビテーション
壊食に対して十分な耐摩耗性を発揮することは困難であ
り、特に高流速に接するインペラ外周、羽根出口などに
適用することは困難である。溶射法によって形成する硬
質被膜は、土砂摩耗とキャビテーション壊食に対して十
分な耐摩耗性を有し、且つ十分な厚みの皮膜を容易に被
覆することが出来る。しかしながら、溶射法を用いた場
合には次の課題がある。すなわち、良好な溶射皮膜を形
成するためにはガンと部材との間隔に適切な距離が必要
であり、さらに溶射ガンの寸法の制限から、比較的広い
スペースを必要とする。したがって、三次元形状であ
り、狭いスペースを有する部材には、全ての領域におい
て十分な硬さと良好な密着力を有する良好な皮膜を被覆
することは困難である。例えば、インペラの場合、羽根
の先端のような溶射の容易な場所では良好な皮膜を形成
することが出来るが、羽根の付け根のような流路内部で
は、スペースが狭いため良好な皮膜の形成が困難であ
る。流路内部は羽根先端に比較し流体速度は低いが、そ
れでも土砂摩耗が生じ、未処理状態では十分な寿命を得
ることが出来ない。
【0005】前記従来技術には、上記課題に対する検討
がなされていない。本発明は上記の課題を解決するため
になされたものであり、本発明の目的は流体内に土砂な
どを含む条件下でも使用可能な耐摩耗性、耐食性に優れ
たポンプを提供することにある。また、本発明の別の目
的は流体内に土砂などを含む条件下でも使用可能な、耐
摩耗性と耐食性に優れたポンプを安価に製造する方法を
提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するた
め、ポンプとして以下の構造を用いる。インペラ及びケ
ーシングの流体と接する面に、Ni合金の皮膜、ボロン拡
散層の皮膜及びクロム拡散層の皮膜からなる群から選択
された第1の皮膜が形成された領域と、金属と炭化物を
含有する第2の皮膜が形成された領域とを有する構造と
する。上記において、第2の皮膜は、Ni、Cr及びCoから
なる群から選択された少なくとも1種類を含む金属と、
クロム炭化物若しくはタングステン炭化物を含有する皮
膜とする。上記において、第1の皮膜と第2の皮膜とは
重なり合う領域を有し、この重なり合う領域では、イン
ペラおよびケーシングと第2の皮膜との間に第1の皮膜
が介在させる。上記において、第2の皮膜がクロム炭化
物、若しくはタングステン炭化物を50重量%以上90
重量%以下含む皮膜、望ましくは70重量%以上90重
量%以下含む皮膜とする。上記において、Ni合金皮膜は
Pを1重量%以上10重量%以下,若しくはBを0.5重量%以
上5重量%以下、或いは1重量%以上10重量%以下のPと
0.5重量%以上5重量%以下のBの両方を含むNi合金とす
る。あるいは、Pを1重量%以上10重量%以下、若しくは
Bを0.5重量%以上5重量%以下,或いは1重量%以上10重
量%以下のPと0.5重量%以上5重量%以下のBの両方を含
むNi合金であり、SiC、Si3N4、SiO2、Al2O3、ZrO2のう
ち1種類以上の微粒子を5体積%以上10体積%以下、分
散、含有するNi合金とする。
【0007】ポンプの製造方法として以下の方法を用い
る。ポンプの製造方法として、所定形状に加工されたイ
ンペラの表面、ケーシングの内表面にNi合金の皮膜を形
成、若しくはボロン拡散層を形成、若しくはクロム拡散
層を形成し、次いでクロム炭化物若しくはタングステン
炭化物とNi、Cr及びCoからなる群から選択された少なく
とも1種類を含む皮膜を被覆し、その後400℃以上600℃
以下の温度で加熱する。上記製造方法において、 Ni合
金皮膜はメッキ法によって被覆する。ボロン拡散層を形
成、若しくはクロム拡散層は粉末拡散法によって形成す
る。クロム炭化物若しくはタングステン炭化物とNi、C
r、Coの内の少なくとも1種類を含む皮膜を溶射法によ
って被覆する。
【0008】本発明は上記手段を用い、以下の作用効果
によって前記課題を解決するものである。
【0009】(1)流体と接するインペラ表面、及びケ
ーシングの内表面にNi合金皮膜を被覆することによって
以下の作用効果が生じる。Ni合金皮膜は、較的耐摩耗性
に優れ、且つ優れた耐食性を有する。 (2)さらにNi合金皮膜としてPを1重量%以上10重量%
以下,若しくはBを0.5重量%以上5重量%以下、或いは1
重量%以上10重量%以下のPと0.5重量%以上5重量%以
下のBの両方を含むNi合金、更にSiC、Si3N4、SiO2、Al2
O3、ZrO2のうち1種類以上の微粒子を5体積%以上10体
積%以下、分散、含有するNi合金とする場合、以下の作
用効果が生じる。Ni合金皮膜は無電解メッキ法によって
被覆でき、溶射処理が出来ない複雑形状の部材にも均一
膜厚の皮膜を被覆することが出来る。従って、流路内面
を含めた全面を被覆できるため、ポンプ全体として優れ
た耐摩耗性と耐食性向上がはかれ、全体としての信頼性
向上がはかれる。また、Pを1重量%以上5重量%以下,
若しくはBを0.5重量%以上2重量%以下、或いは1重量%
以上5重量%以下のPと0.5重量%以上2重量%以下のBの
両方を含むNi合金であれば耐摩耗性に優れ、且つ優れた
耐食性を有する。従って、Ni合金皮膜をインペラの流路
内部を含む全面、及びケーシングの内表面に被覆するこ
とで、溶射では被覆できない領域を被覆し、更に優れた
耐摩耗性と耐食性を付与することが出来る。
【0010】(3)Ni合金皮膜にSiC、Si3N4、SiO2、Al
2O3、ZrO2のうち1種類以上の粒子を5体積%以上10体積
%以下含ませることで以下の作用効果を生じる。メッキ
法によるNi合金膜(以後、Ni合金メッキ膜と称する)、例
えば、Pを1重量%以上10重量%以下,若しくはBを0.5重
量%以上5重量%以下、或いは1重量%以上10重量%以下
のPと0.5重量%以上5重量%以下のBの両方を含むNi合金
メッキ膜の場合、適切な熱処理によって硬質析出物を析
出させ、最高の皮膜硬さ(Hv800〜1000程度)を得ること
が出来る。しかし、土砂粒子と衝突する場合、皮膜硬さ
は硬い程良く、土砂粒子である石英以上の硬さを有する
皮膜であれば、耐土砂摩耗性にすぐれる。Ni合金メッキ
膜にSiC、Si3N4、SiO2、Al2O3、ZrO2などの硬質微粒子
を分散させると、皮膜硬さが増し耐摩耗性向上がはかれ
る。なお、SiC、Si3N4、SiO2、Al2O3、ZrO2などの硬質
微粒子の含有率は、体積分率で5%以上で皮膜硬さ向上の
効果が顕著となり、10%を超えると、皮膜の脆化が顕著
となる。従って、その含有率は5体積%以上、10体積%
以下が望ましい。
【0011】(4)Ni合金皮膜の膜厚を0.1mm以上、0.
3mm以下とすることによって以下の作用効果が生じる。
上記、Ni合金皮膜の場合、優れた耐食性を発揮するには
膜厚として0.02mmあればよい。しかし、流路内面のよう
な比較的低流速領域での土砂摩耗に対して十分な耐摩耗
性を発揮するには、0.1mm以上の膜厚が必要である。一
方、ポンプの定期的メンテナンスによってNi合金皮膜の
補修を行うとすれば、0.3mmの膜厚があれば十分であ
り、省資源、省エネルギの点から0.1mm以上、0.3mm以
下の膜厚が望ましい。
【0012】(5)取り扱い流体と接するインペラ表
面、及びケーシングの内表面にボロン拡散層、若しくは
クロム拡散層を形成することによって以下の作用効果が
生じる。ボロン拡散層、若しくはクロム拡散層とは、外
表面より供給されたボロン、若しくはクロムが母材中に
拡散し、微細な硬質ボロン化合物相、硬質クロム化合物
相を析出させて形成した硬質層である。従って、密着性
に優れ、比較的硬度が高く、耐食性に優れる。また、拡
散層の形成方法として、スラリー化した粉末処理剤を塗
布した状態で加熱する、若しくは粉末処理材中に埋没さ
せ加熱する粉末拡散法を用いれば、流路内面にも拡散相
を形成することができ、かつ比較的大型部材にも処理可
能である。従って、ボロン拡散層、若しくはクロム拡散
層をインペラの流路内部を含む全面、及びケーシングの
内表面に形成することで、溶射では被覆できない領域を
被覆し、更に優れた耐摩耗性と耐食性を付与することが
出来る。ボロン拡散層、若しくはクロム拡散層の厚み
は、拡散速度、すなわち加熱温度と時間によって決定す
る。しかし、高温保持によるインペラ、及びケーシング
の強度低下、耐食性低下を考慮すると、処理時の加熱温
度に上限が生じる。また、膜厚を増すと拡散層内の歪み
が増し、亀裂、剥離が発生する。一方、流路内面のよう
な比較的低流速領域での土砂摩耗に対して十分な耐摩耗
性を発揮するには、0.1mm以上の膜厚が必要である。ま
た、ポンプの定期的メンテナンスによって補修を行うと
すれば、0.3mmの膜厚があれば十分であり、省資源、省
エネルギの点から0.1mm以上、0.3mm以下の膜厚が望ま
しい。
【0013】(6)取り扱い流体と接するインペラ表
面、及びケーシングの内表面の少なくとも一部に被覆す
る、クロム炭化物若しくはタングステン炭化物とNi、Cr
及びCoからなる群から選択された少なくとも1種類を含
む皮膜には以下の作用効果がある。クロム炭化物として
Cr3C2を用い、タングステン炭化物としてWCを用いる皮
膜は、その皮膜硬さがHv1000以上であり、且つ優れた耐
食性を有する。土砂などを構成する主な物質は長石と石
英であり、その最高硬さは石英のHv1000である。土砂摩
耗は衝突粒子の硬さを超えると急激に耐摩耗性が向上す
るため、皮膜硬さがHv1000以上である上記皮膜をインペ
ラの表面の少なくとも一部に被覆することによって、土
砂摩耗とキャビテーション壊食に対して十分な耐摩耗性
を発揮することが出来る。
【0014】(7)上記クロム炭化物若しくはタングス
テン炭化物とNi、Cr及びCoからなる群から選択された少
なくとも1種類を含む金属とから構成される皮膜を、Cr
3C2若しくはWCを50重量%以上90重量%以下、望ま
しくは70重量%以上90重量%以下含む皮膜とするこ
とによって以下の作用効果が生じる。クロム炭化物若し
くはタングステン炭化物を含み、且つNi、Cr及びCoから
なる群から選択された少なくとも1種類を含む金属とか
ら構成される皮膜はCr3C2、WCの量によって皮膜硬さが
変化する。Cr3C2、WCの量を増せば皮膜硬さは増すが、
皮膜の靭性が失われ脆性となり、皮膜破壊、剥離等が生
じやすく信頼性が低下する。Cr3C2、WCの量が50重量%
以上90重量%以下の範囲であれば、土砂摩耗に対して十
分な皮膜硬さを有し、且つ靭性を保つことが出来る。ま
た、この範囲であれば皮膜硬さとしてHv1000以上を得る
ことが可能であり、土砂摩耗に対し優れた耐食性と耐摩
耗性を有する。但し、土砂濃度が高い場合はCr3C2、WC
の量を高め、皮膜硬さを高める必要がある。この場合、
Cr3C2、WCの量は70重量%以上90重量%以下が望まし
い。
【0015】(8)上記クロム炭化物若しくはタングス
テン炭化物を含み、且つNi、Cr及びCoからなる群から選
択された少なくとも1種類を含む金属とから構成される
皮膜の膜厚を0.1mm以上1.0mm以下とすることによって
以下の作用効果が生じる。溶射膜には微細なボイドが多
数存在するため、優れた耐食性と耐摩耗性を示すには皮
膜厚さとしては0.1mm以上を必要とする。一方、溶射膜
は膜厚が増すと皮膜内部の歪が増すため密着力が低下す
る。密着力の点からは、この溶射膜は膜厚1.0mm以下と
する必要がある。また、この皮膜の耐摩耗性を考慮する
と1.0mmの膜厚があれば十分な寿命が予想され、省資
源、省エネルギの点でも1.0mm以下とすることが望まし
い。以上の点から膜厚を0.1mm以上1.0mm以下とすれば、
インペラの土砂摩耗とキャビテーション壊食に対して十
分な寿命を保証でき、且つ生産性、省エネルギの点で良
好となる。
【0016】(9)クロム炭化物若しくはタングステン
炭化物を含み、且つNi、Cr及びCoからなる群から選択さ
れた少なくとも1種類を含む皮膜の被覆方法として溶射
を用いることには以下の作用効果がある。溶射を用いれ
ばNi、Cr、Coとクロム炭化物とから構成される皮膜では
0.1mmから1mmまでの膜厚、Ni、Cr、Coとタングステン炭
化物とから構成される皮膜では0.1mmから0.5mmまでの膜
厚が形成可能である。したがって、溶射上記で皮膜を形
成すれば、土砂摩耗とキャビテーション壊食に対して十
分な寿命を保証できる厚みの皮膜を容易に被覆すること
が出来る。溶射には各種方法があり、それぞれの長所短
所に応じた適用が行われている。最も緻密な皮膜を形成
できる溶射法は減圧中でプラズマ溶射法を行う減圧溶射
法である。しかし、減圧溶射法では施工部材を真空容器
中にいれて被覆処理せねばならず、本例のようなポンプ
部材への適用は実用的でない。緻密な皮膜を被覆できる
他の方法として、爆発溶射法と高速フレーム溶射があ
る。爆発溶射法は一度の被覆面積が広いため、大型平面
部材への被覆には適するが、溶射ガン、設備が大きく、
インペラ、ケーシングのような三次元形状部材に対して
均一に被覆することは困難である。高速フレーム溶射は
緻密な皮膜が形成でき、且つガンが比較的小さく、三次
元形状部材に対して均一が緻密な皮膜が形成できるた
め、本例に最も適した方法である。
【0017】(10)取り扱い流体と接するインペラの
表面、ケーシングの内表面にNi合金の皮膜、ボロン拡散
層の皮膜及びクロム拡散層の皮膜からなる群から選択さ
れた第1の皮膜を形成後、さらにその上にNi、Cr及びCo
からなる群から選択された少なくとも1種類を含む金属
とクロム炭化物若しくはタングステン炭化物を含有する
第2の皮膜を被覆すると以下の作用効果が生じる。前述
のごとく、高速フレーム溶射はガンが比較的小さく、三
次元形状部材に対して均一が緻密な皮膜が形成できる溶
射法法であるが、それでもポンプのインペラの流路内部
のような箇所に良好な皮膜を形成することは困難であ
る。一方、 Ni合金皮膜、ボロン拡散層、クロム拡散層
は、溶射皮膜に比較すれば耐土砂摩耗性、耐キャビテー
ション性には劣るものの、その施工法法は狭いスペース
でも適用可能であり、インペラの流路内部のような箇所
にも良好な皮膜を被覆することができる。従って、溶射
皮膜の被覆が困難な流路内部、若しくは全面にNi合金皮
膜、ボロン拡散層、クロム拡散層を形成し、更にその上
にクロム炭化物若しくはタングステン炭化物をとNi、C
r、Coのから構成される皮膜を溶射によって被覆する
と、インペラ、ケーシング全体の耐土砂摩耗性、耐キャ
ビテーション性が大幅に改善される。
【0018】(11)取り扱い流体と接するインペラの
表面、ケーシングの内表面にNi合金の皮膜、ボロン拡散
層の皮膜及びクロム拡散層の皮膜からなる群から選択さ
れた第1の皮膜を形成し、さらにNi、Cr及びCoからなる
群から選択された少なくとも1種類を含む金属とクロム
炭化物若しくはタングステン炭化物を含有する第2の皮
膜を被覆後、400℃以上、600℃以下の温度で加熱
することによって以下の作用効果が生じる。熱処理によ
ってNi合金皮膜は母材と拡散を生じ密着力が向上する。
また、Ni合金皮膜、ボロン拡散層、クロム拡散層のいず
れかである第1の皮膜、若しくは第1の拡散層とクロム
炭化物若しくはタングステン炭化物とNi、Cr、Coの内少
なくとも1種類を含む第2の皮膜との重なり部分におい
て拡散が生じ、両皮膜間の密着力の向上がはかれる。密
着力の向上は、耐土砂摩耗性の向上、皮膜剥離の抑制と
なり、全体の信頼性向上につながる。拡散速度を考慮す
れば加熱温度は高いほど望ましい。しかしながら、皮膜
と母材との熱膨張率差によって熱歪を考慮すると600℃
以下が望ましい。また400℃以下では、拡散に時間を要
し工業的利用が困難となる。
【0019】(12)さらに、上記熱処理は、Ni合金皮
膜としてNi-P-Bメッキ膜を用いる場合、以下の作用効果
が生じる。通常、Ni-P-Bメッキ膜は約350〜400℃の加熱
によって、硬質層が析出し最高の皮膜硬さになり、それ
以上の温度による加熱では皮膜硬さは低下する。しか
し、硬さの増加と共に皮膜が脆化し、亀裂・剥離が生じ
やすくなる。それでも、耐摩耗性を必要とする場合一般
に、350〜400℃の加熱によって最高硬さにして使用す
る。しかしながら、水中で土砂粒子と衝突する本使用の
場合、皮膜の亀裂・剥離は腐食の起点となるため最も避
けねばならず、上記皮膜硬さを硬さを最高にする熱処理
条件は望ましくない。400℃以上、600℃以下の温度範囲
であれば、皮膜脆化を引き起こすことはなく、最高硬さ
を得ることは出来ないが比較的高い皮膜硬さが得られ、
且つ母材との拡散によって皮膜の亀裂・剥離を抑制した
信頼性高い皮膜が得られる。一方、クロム炭化物若しく
はタングステン炭化物を含み、且つNi、Cr及びCoからな
る群から選択された少なくとも1種類を含む皮膜は、本
熱処理によって下記の膜質改善が図られる。この加熱に
よって、同皮膜の内部において、Ni、Cr、Coの金属相と
クロム炭化物粒子若しくはタングステン炭化物粒子との
密着力が増すため、皮膜の硬さが増加し土砂摩耗とキャ
ビテーション壊食に対する耐摩耗性が増す。したがっ
て、何らかの衝撃によって皮膜に亀裂が発生しても、皮
膜の剥離、脱落が抑制され信頼性が増す。加熱温度は高
いほど、皮膜内のNi、Cr、Co金属相とクロム炭化物粒子
若しくはタングステン炭化物粒子との密着力増加、皮膜
と母材との界面における密着力増加は早く進むが、皮膜
と母材との熱膨張率差によって熱歪が生じる。熱歪によ
る皮膜への影響を考慮すると600℃以下が望ましい。
また、効果の速度を考慮すると400℃が限界であり、
これ以下では時間がかかり工業的利用が困難となる。
【0020】
【発明の実施の形態】図1は、本発明を適用した横軸ポ
ンプ1の概略断面図である。インペラ2は軸受3で両端
を支持された軸4に固定され、軸4の一端に連結された
駆動機(図示せず)によって回転し、インペラ両端から
吸い込んだ水をケーシング5から排出する機構である。
本発明を適用した部品は、インペラ2とケーシング5で
ある。インペラ2を例に取り、詳細を以下説明する。図
2にインペラ2の概略外観を示す。インペラ2は軸4と
勘合するボス21、そのボス21を取り囲むシュラウド
23、ボス21とシュラウド23と連結する羽根22か
らなる。ボス21とシュラウド23のすき間が流路とな
り、両側の吸い込み口24から流入した水は、回転する
インペラ2によって加速され、排出口25から吐き出さ
れ、ケーシング5内の流路を通りポンプから吐き出され
る。インペラ2に流入する流水に多数の土砂が含まれる
場合、土砂粒子の衝突によって土砂摩耗が発生する。特
に土砂として高硬度の石英粒子が含まれる場合、土砂摩
耗が顕著となる。また、その濃度が2kg/m3以上となった
場合、さらに流体速度が30m/s以上となった場合、土砂
摩耗が極めて顕著となる。この土砂摩耗を防ぐため、さ
らに軸4との勘合部分をのぞくインペラ2の全面に膜厚
0.1mmから0.3mmのNi合金メッキ膜を被覆している。な
お、Ni合金メッキ膜の組成は、P=3重量%、B=1重量%であ
る。さらに、インペラ2には流水速度の速い箇所、粒子
衝突頻度の高い箇所、すなわちに羽根22とシュラウド
23の一部に、膜厚0.4mmから0.6mmのCr3C2-16重量%Ni
-4重量%Cr溶射膜6(以後、Cr3C2-20%NiCr溶射膜と表記
する)を被覆している。なお、本実施例ではインペラ材
質は13%のクロムを含有する鋳鋼であり、鋳造で作成し
た(以後、本材料は13%Cr鋳鋼と表記する)。母材の13%Cr
鋳鋼のビッカース硬さは約200〜250であり、Ni合金メッ
キ膜のビッカース硬さは約400〜500であり、Cr3C2-20%N
iCr溶射膜のビッカース硬さは約800〜900である。
【0021】図2ではCr3C2-20%NiCr溶射膜を被覆した
部分をハッチング表示してある。羽根22のCr3C2-20%N
iCr溶射膜被覆部分は、出口部22aと吸い込み部22
b(図2では表示せず)である。シュラウド23のCr3C2-
20%NiCr溶射膜被覆部分は、出口部23aと吸い込み部
23bである。Cr3C2-20%NiCr溶射膜は、Ni合金メッキ
膜を被覆した上層に被覆されており、その箇所では上層
にCr3C2-20%NiCr溶射膜、下層にNi合金メッキ膜の2層
構造となっている。なお、流水速度の速いシュラウド出
口部23aは、土砂摩耗が顕著となる流速30m/s以上と
なる範囲を目安としてCr3C2-20%NiCr溶射膜を被覆して
いる。
【0022】図3に、図2のインペラ2の縦断面を示
す。本図では断面以外にCr3C2-20%NiCr溶射膜を被覆し
た箇所にハッチングを施す。Cr3C2-20%NiCr溶射膜の被
覆箇所は、羽根22の出口部22aと吸い込み部22b
であり、溶射施工が容易であり、高品質の皮膜形成が可
能な箇所である。図4に、図3のインペラ2を側面から
見た正面図を示す。但し、内部構造を明確にするため、
片側のシュラウド23を省略してある。図4でも図3と
同様に、Cr3C2-20%NiCr溶射膜を被覆した箇所にハッチ
ングを施す。羽根22は吸い込み口ではボス21と鋭角
になる状態であり、出口に近づくに従い垂直になる。従
って、吸い込み口側では、羽根は吸い込み側は溶射施工
が容易であるが、背面となるボス側では溶射施工が困難
となる。そのため、羽根22の吸い込み口の溶射被覆部
22bは、吸い込み側が殆どであり、背面のボス側はほ
とんど被覆していない。
【0023】図5にインペラ2の羽根22の吐き出し口
の拡大縦断面図を示す。羽根22の全面にNi合金メッキ
膜7が被覆され、さらに一部にCr3C2-20%NiCr溶射膜6
が被覆されている。Ni合金メッキ膜7が下層、上層がCr
3C2-20%NiCr溶射膜6となる。図6に、ケーシング5に
おけるインペラ排出口25の対面部5aの縦断面拡大図
を示す。排出口25の対面部5aは流速が早く、粒子衝
突頻度が大きいために土砂摩耗が生じやすい。そこで、
ケーシング内面の全面にNi合金メッキ膜7が被覆され、
さらにインペラ排出口25からの流水が直接衝突する対
面部5aには、Ni合金メッキ膜7の上にCr3C2-20%NiCr溶
射膜6が被覆されている。2分割化できるケーシング5
は、分割面から垂直となる排出口25の正面部分は溶射
が可能であるが、他の部分は十分なスペースがとれず、
良好な溶射皮膜を被覆することが困難である。そこで、
インペラ2と同様に、Ni合金メッキ膜7を被覆してい
る。図7にCr3C2-20%NiCr溶射膜6とNi合金メッキ膜7
が重なる部分の、断面構造の概略図を示す。後述の熱処
理によって、Cr3C2-20%NiCr溶射膜6のNiCrがNi合金メ
ッキ膜7に拡散し、拡散層6dを形成する。同様にNi合
金メッキ膜7が母材に拡散し、拡散層7dを形成する。両
拡散層の形成によって、Cr3C2-20%NiCr溶射膜6とNi合
金メッキ膜7は強固に母材に密着し、亀裂の発生、剥離
脱落を防ぐ。
【0024】上記実施例では、溶射皮膜としてCr3C2-20
%NiCr溶射膜、Ni合金膜として、Ni-3重量%P-1重量%Bメ
ッキ膜を用いているが、本発明は上記組成に限定するも
のではない。例えば、溶射皮膜としてWC量が50重量%か
ら90重量%範囲のWC-NiCr皮膜、WC-Co皮膜で合っても同
様の効果が得られる。また、Ni合金膜もNi-3重量%P-1重
量%Bメッキ膜に限定するものではなく、Pを1重量%以上
10重量%以下,若しくはBを0.5重量%以上5重量%以
下,或いは1重量%以上10重量%以下のPと0.5重量%以
上5重量%以下のBの両方を含むNi合金であれば、同様の
効果が得られる。
【0025】図8に他の実施例であるポンプインペラの
Cr3C2-20%NiCr溶射膜6とSiC微粒子含有Ni合金メッキ膜
71が重なる部分の断面構造の概略図を示す。なお、本
実施例でもインペラ材質は13%Cr鋳鋼である。母材の13%
Cr鋳鋼のビッカース硬さは約200〜250であり、SiC微粒
子含有Ni合金メッキ膜71のビッカース硬さは約500〜80
0であり、Cr3C2-20%NiCr溶射膜のビッカース硬さは約80
0〜900である。なお、SiC微粒子含有Ni合金メッキ膜71
はSiC微粒子を7体積%だけ、膜内に分散含有するNi合金
メッキである。本実施例でもまた、熱処理によってCr3C
2-20%NiCr溶射膜6のNiCrがSiC微粒子含有Ni合金メッキ
膜71に拡散し拡散層6dを、SiC微粒子含有Ni合金メッキ
膜71が母材に拡散し拡散層7dを形成する作用効果は同
様である。両拡散層の形成によって、Cr3C2-20%NiCr溶
射膜6とSiC微粒子含有Ni合金メッキ膜71は強固に母材
に密着し、亀裂の発生、剥離脱落を防ぐ。本例の場合、
熱処理によって以下の効果が得られる。図9にCr3C2-20
%NiCr溶射膜6とSiC微粒子含有Ni合金メッキ膜71が重
なる部分の拡大断面構造の概略図を示す。図中、7eはSi
C微粒子であり、上記のごとくその含有率は7体積%であ
り、その粒子径は数μm〜数十μmである。先に示す熱処
理によって、SiC微粒子7eとメッキ母層であるNi-Pとの
結合力が増し、その結果、皮膜硬さ、靭性が増加し、耐
摩耗性が増加する。上記実施例では、分散微粒子として
SiCを用いたが、SiCに限定する必要はなく、Si3N4、SiO
2、Al2O3、ZrO2などの硬質微粒子であってもよい。その
含有率は材質に関わらず、体積分率で5%以上で顕著な効
果が発揮し、10%を越えると皮膜が脆性となり、皮膜強
度が低下する。従って、その含有率は体積分率で5%以
上,10%以下が望ましい。
【0026】次に、図10、11によって他の実施例を
説明する。図10は、他の実施例であるポンプインペラ
のWC-27%NiCr溶射膜61とボロン拡散層72が重なる部分
の断面構造の概略図を示す。なお、本実施例でもインペ
ラ材質は13%Cr鋳鋼である。母材の13%Cr鋳鋼のビッカー
ス硬さは約200〜250であり、ボロン拡散層72のビッカー
ス硬さは約700〜800であり、WC-27%NiCr溶射膜61のビ
ッカース硬さは約900〜1100である。本実施例では、イ
ンペラの軸勘合部をのぞく全面にボロン拡散処理を施し
ボロン拡散層を形成した。その後、さらに図2に示す位
置とほど同様位置にWC-27%NiCr溶射膜61を被覆してい
る。ボロン拡散層は、外表面より供給されたボロンが母
材中に拡散し、微細な硬質ボロン化合物相、本実施例の
場合FeB,Fe2B,CrBを析出した硬質層である。従って、母
材との密着性が特に優れ、ビッカース硬さが約700〜800
と高く、また耐食性に優れる。さらに流路内面にも拡散
相を形成することができるため、インペラの流路内部を
含む全面に優れた耐摩耗性と耐食性を付与できる。さら
に、そのうえに被覆したWC-27%NiCr溶射膜61は、ビッ
カース硬さが約900〜1100であり、優れた耐摩耗性と耐
食性を示す。両皮膜の組み合わせによって、インペラ全
体が優れた耐土砂摩耗性を発揮する。本実施例でもま
た、熱処理によってWC-27%NiCr溶射膜61のNiCrがボロ
ン拡散層72に拡散し拡散層6dを形成し、密着力向上を図
る機構は同様である。この密着力向上によって、亀裂の
発生、皮膜の剥離脱落を防ぐ。
【0027】図11は、他の実施例であるポンプインペ
ラのWC-27%NiCr溶射膜61とクロム拡散層73が重なる部
分の断面構造の概略図を示す。なお、本実施例でもイン
ペラ材質は13%Cr鋳鋼である。母材の13%Cr鋳鋼のビッカ
ース硬さは約200〜250であり、クロム拡散層73のビッカ
ース硬さは約700〜800であり、WC-27%NiCr溶射膜61の
ビッカース硬さは約900〜1100である。本実施例では、
インペラの軸勘合部をのぞく全面にクロム拡散処理を施
しクロム拡散層を形成した。その後、さらに図2に示す
位置とほど同様位置にWC-27%NiCr溶射膜61を被覆して
いる。クロム拡散層は、外表面より供給されたクロムが
母材中に拡散し、微細な硬質クロム化合物相、本実施例
の場合Fe-Cr,Cr7C3,Cr23C6を析出した硬質層である。従
って、母材との密着性が特に優れ、ビッカース硬さが約
700〜800と高く、また耐食性に優れる。さらに流路内面
にも拡散相を形成することができるため、インペラの流
路内部を含む全面に優れた耐摩耗性と耐食性を付与でき
る。本実施例でもまた、熱処理によってWC-27%NiCr溶射
膜61のNiCrがクロム拡散層73に拡散し拡散層6dを形成
し、密着力向上を図る機構は同様である。この密着力向
上によって、亀裂の発生、皮膜の剥離脱落を防ぐ。
【0028】次に、本発明の製造方法に関する一実施例
を、図2に示したインペラ2を例にとり、図12によっ
て説明する。インペラ2は鋳造によって製作する。鋳造
後、歪取り焼鈍を行い、その後切削によって所定寸法に
仕上げる。次いで、メッキ用の前処理のため、インペラ
表面の油膜除去、酸化膜除去によって清浄化をする。次
に、無電解メッキ法によって、軸勘合部をのぞくインペ
ラ全面にNi合金メッキ皮膜7を被覆する。メッキ被覆
後、Cr3C2-20%NiCr溶射膜6を被覆する箇所に前処理を
施す。まず、洗浄によって油脂を除去し、その後アルミ
ナ粉を用いたサンドブラスト処理によって表面を適度な
表面粗さとする。その後、所定箇所に高速フレーム溶射
法によってCr3C2-20%NiCr溶射膜6を被覆する。本実施
例では、組成Cr3C2-20%NiCrの焼結体を粉砕、分級した
溶射粉を用いた。なお、高速フレーム溶射は、各種ある
溶射法に中で緻密な皮膜が形成でき、且つ溶射ガンが比
較的小さく、比較的狭スペースを有する部材に対して均
一が緻密な皮膜が形成できるため、インペラのような三
次元形状部材への被覆には最も適した溶射法である。溶
射膜被覆後、インペラ全体を大気中で500〜600℃で5時
間以上、30時間以下の間保持する加熱処理を施す。本実
施例では550℃で約15時間保持し、その後は炉中で冷
却した。この熱処理によって、Cr3C2-20%NiCr溶射膜6
おいてNi、CrとCr3C2粒子との密着力が増すため、皮膜
の硬さが増加し、土砂摩耗とキャビテーション壊食に対
する耐摩耗性が増す。さらに、Cr3C2-20%NiCr溶射膜6
と母材との界面において密着力が増し、皮膜剥離が抑制
される。したがって、何らかの衝撃によって皮膜に亀裂
が発生しても、皮膜の剥離、脱落が抑制され信頼性が増
す。なお、この現象はCr3C2-20%NiCr溶射膜に限らず、
WC-NiCr皮膜、WC-Co皮膜でも同様である。また、本熱処
理によってNi合金メッキ皮膜と母材金属とが拡散し、強
固な密着力を発生する。この結果、 Ni合金メッキ皮膜
7は母材との界面において密着力が増し、皮膜剥離が抑
制される。加熱温度は高いほど、Cr3C2-20%NiCr溶射膜
6内のNi、Crの金属相とCr3C2粒子との密着力増加、皮
膜と母材との界面における密着力増加は早く進むが、Cr
3C2-20%NiCr溶射膜6と母材13Cr鋼との熱膨張率差によ
って熱歪が生じる。熱歪による皮膜への影響を考慮する
と600℃以下が望ましい。500℃以上、600℃以
下の温度範囲で検討すれば、最低5時間で加熱の効果が
生じ、30時間でその効果は収束する。したがって、効
果と省エネルギの点を考慮すれば5時間以上30時間以
下の加熱時間が望ましい。なお、この条件はCr3C2-20%
NiCr溶射膜に限らず、WC量が50重量%から90重量%範囲
であればWC-NiCr皮膜、WC-Co皮膜でも同様である。
【0029】次に、本発明の製造方法に関する他の実施
例を図10に示したインペラを例にとり、図13によっ
て説明する。インペラは鋳造によって製作する。鋳造以
後、所定形状までの加工は前記方法と同様である。次い
で、ボロン拡散用の前処理のため、インペラ表面の油膜
除去、酸化膜除去によって清浄化をする。次に、軸勘合
部をのぞくインペラ全面にボロン拡散処理粉末スラリを
塗布する。乾燥後、所定温度に、所定時間保持し、ボロ
ンの拡散層を形成する。本実施例の場合800〜950℃の温
度に、10〜20時間保持後、炉内で徐冷した。十分な冷却
後、表面に残存するスラリを除き、次に溶射の前処理を
施す。アルミナ粉を用いたサンドブラスト処理によって
表面を適度な表面粗さとする。その後、所定箇所に高速
フレーム溶射法によってWC-27%NiCr溶射膜61を被覆す
る。本実施例では、組成WC-27%NiCrの焼結体を粉砕、分
級した溶射粉を用いた。溶射膜被覆後、インペラ全体を
大気中で500〜600℃で5時間以上、30時間以下の間保持
する加熱処理を施す。本実施例では550℃で約15時間
保持し、その後は炉中で冷却した。この熱処理によっ
て、WC-27%NiCr溶射膜61おいてNi、CrとWC粒子との
密着力が増すため、皮膜の硬さが増加し、土砂摩耗とキ
ャビテーション壊食に対する耐摩耗性が増す。さらに、
WC-27%NiCr溶射膜61と母材との界面において密着力
が増し、皮膜剥離が抑制される。これらが耐摩耗性に及
ぼす効果は前述と同様である。
【0030】図11に示したインペラの製造方法を図1
4に示す。本方法は、クロム拡散処理時の方法が異なる
だけで、その他は上記方法とほぼ同様である。なお、異
種元素を表面より拡散させ拡散層を形成する方法には、
様々な元素が用いられる。例えば、本方法以外にアル
ミ、バナジウム、ニオブ、チタンなどである。しかし、
耐土砂摩耗性、耐食性、さらに用いる元素の希少性を考
慮すれば、ポンプ部材のような水中で用いる大型部品に
用いるには、本発明であるボロン、クロムの拡散層を形
成する方法が最も適する。また、拡散方法としても、メ
ッキ相を形成し加熱するメッキ法、溶融塩中に浸漬する
溶融塩法等があるが、大型部材であること、流路内部な
ど複雑形状であることを考慮すれば、本発明である粉末
拡散法が最も適する。粉末拡散法では、上記実施例のよ
うなスラリを塗布する方法と、粉末中に部材を埋没させ
加熱する方法があるが、本発明では両方法を用いること
が可能である。特に、流路内部の処理を考慮すれば、ス
ラリ塗布方法が最も優れる。
【0031】本発明の効果を確認するために行った、土
砂摩耗試験結果を以下説明する。本実験は、本発明に開
示されている処理を施した13%Cr鋳鋼製試験片をアルミ
ナ粉末の混合した水中に設置し、試験片そばに配置した
ノズルから高速の流水を吹き付け試験片の摩耗量を測定
した試験である。試験方法を表1にまとめる。なお、通
常の河川水を想定した場合、本試験条件の30g/lは極め
て高濃度であり、河川水としては存在し得ない。また、
本発明の効果を発揮できる土砂濃度2kg/m3に比較しても
極めて大きい値であるが、加速実験として本条件を用い
た。
【0032】
【表1】
【0033】試験結果を図15にまとめる。検討した試
験片は、13%Cr鋳鋼に、本発明に開示する表面処理を被
覆したものである。摩耗量は、1時間の試験前後の重量
減少を測定し、試験時間で除し、摩耗率として評価し
た。なお図15は、未処理の13%Cr材の摩耗率を100%と
し、相対値として示す。本発明で開示するボロン拡散
層、クロム拡散層、SiC粒子入りNi-P-Bメッキ膜,Ni-P-B
メッキ膜は、溶射皮膜に比較すれば耐摩耗性に劣るもの
の、未処理材に比べ摩耗率が低く最大18%まで低下す
る。また、Cr3C2-25%NiCr溶射膜,WC-27%NiCr溶射膜は、
さらに耐摩耗性が優れ、約1/10程度まで摩耗率が低下す
る。従って、高速流体と接する領域、若しくは個体粒子
と衝突頻度の高い領域を上記溶射膜の被覆し、比較的低
速領域を他の表面処理機被覆する本発明は、ポンプ全体
としての信頼性向上に極めて効果的である。
【0034】
【発明の効果】本発明によって流体内に土砂などを含む
条件下でも使用可能な、耐摩耗性と耐食性に優れたポン
プを実現でき、且つ安価に、効率よく製造する事が出来
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である横軸ポンプの断面図。
【図2】本発明の一実施例であるポンプインペラの概略
斜視図。
【図3】本発明の一実施例であるポンプインペラの縦断
面図。
【図4】本発明の一実施例であるポンプインペラの一部
断面を含む概略正面図。
【図5】本発明の一実施例であるポンプインペラの拡大
断面図。
【図6】本発明の一実施例であるポンプケーシングの拡
大断面図。
【図7】本発明の一実施例であるポンプ表面処理部の概
略拡大断面図。
【図8】本発明の他の実施例であるポンプ表面処理部の
概略拡大断面図。
【図9】図8に示すポンプ表面処理部の詳細拡大断面
図。
【図10】本発明の他の実施例であるポンプ表面処理部
の概略拡大断面図。
【図11】本発明の他の実施例であるポンプ表面処理部
の概略拡大断面図。
【図12】本発明の一実施例であるポンプインペラの製
造手順図。
【図13】本発明の他の実施例であるポンプインペラの
製造手順図。
【図14】本発明の他の実施例であるポンプインペラの
製造手順図。
【図15】本発明の開示する表面処理の土砂摩耗試験結
果。
【符号の説明】
1…横軸ポンプ、2…インペラ、21…ボス、22…羽
根、22a…羽根出口部、22b…羽根吸い込み部、2
3…シュラウド、23a…シュラウド出口部、23b…
シュラウド吸い込み部、インペラ3…軸受、4…ポンプ
軸、5…ケーシング、5a…排出口対面部、6…Cr3C2-
20%NiCr溶射膜、61…WC-27%NiCr溶射膜、6d…溶射
膜拡散層、7…Ni-Pメッキ膜、71…SiC微粒子含有Ni-
Pメッキ膜、72…ボロン拡散層、73…クロム拡散
層、7d…メッキ拡散層、7e…SiC微粒子。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】流体の流路を形成するケーシングと、前記
    流路に配設されており、中心部のボスと、このボスを取
    り囲むシュラウドと、前記ボスと前記シュラウドとを連
    結する羽根とを備えたインペラと、このインペラを回転
    させるために前記ボスに勘合された軸とを備えたポンプ
    において、前記インペラ及び前記ケーシングの前記流体
    と接する面に、Ni合金の皮膜、ボロン拡散層の皮膜及び
    クロム拡散層の皮膜からなる群から選択された第1の皮
    膜が形成された領域と、金属と炭化物を含有する第2の
    皮膜が形成された領域とを有することを特徴とするポン
    プ。
  2. 【請求項2】流体の流路を形成するケーシングと、前記
    流路に配設されており、中心部のボスと、このボスを取
    り囲むシュラウドと、前記ボスと前記シュラウドとを連
    結する羽根とを備えたインペラと、このインペラを回転
    させるために前記ボスに勘合された軸とを備えたポンプ
    において、前記インペラ及び前記ケーシングの前記流体
    と接する面に、Ni合金の皮膜、ボロン拡散層の皮膜及び
    クロム拡散層の皮膜からなる群から選択された第1の皮
    膜が形成された領域を有し、前記シュラウドの出口部(2
    3a)及び吸い込み部(23b)、前記羽根の出口部(22a)及び
    吸い込み部(22b)、前記ケーシングの前記インペラ出口
    対面部(5a)に金属と炭化物を含有する第2の皮膜が形成
    された領域を有することを特徴とするポンプ。
  3. 【請求項3】前記第1の皮膜と前記第2の皮膜とは重な
    り合う領域を有し、この重なり合う領域では、前記イン
    ペラおよび前記ケーシングと前記第2の皮膜との間に前
    記第1の皮膜が介在していることを特徴とする請求項1
    または2に記載のポンプ。
  4. 【請求項4】前記第2の皮膜は、Ni、Cr及びCoからなる
    群から選択された少なくとも1種類を含む金属と、クロ
    ム炭化物若しくはタングステン炭化物を含有することを
    特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のポン
    プ。
  5. 【請求項5】流体の流路を形成するケーシングと、前記
    流路に配設されており、中心部のボスと、このボスを取
    り囲むシュラウドと、前記ボスと前記シュラウドとを連
    結する羽根とを備えたインペラと、このインペラを回転
    させるために前記ボスに勘合された軸とを備えたポンプ
    において、前記インペラの前記流体と接する面および前
    記ケーシングの前記流体と接する面に、ビッカース硬さ
    で400以上を有し、前記インペラ及び前記ケーシング
    を構成する金属よりも硬い第1の皮膜が形成されてお
    り、前記インペラの前記流体と接する面および前記ケー
    シングの前記流体と接する面に、ビッカース硬さで80
    0以上を有し、前記第1の皮膜よりも硬い第2の皮膜が
    形成されていることを特徴とするポンプ。
  6. 【請求項6】流体の流路を形成するケーシングと、前記
    流路に配設されており、中心部のボスと、このボスを取
    り囲むシュラウドと、前記ボスと前記シュラウドとを連
    結する羽根とを備えたインペラと、このインペラを回転
    させるために前記ボスに勘合された軸とを備えたポンプ
    の製造方法において、前記インペラおよび前記ケーシン
    グの前記流体と接する面に、Ni合金の皮膜、ボロン拡散
    層の皮膜及びクロム拡散層の皮膜からなる群から選択さ
    れた第1の皮膜を被覆し、次いでNi、Cr及びCoからなる
    群から選択された少なくとも1種類を含む金属とクロム
    炭化物若しくはタングステン炭化物を含有する第2の皮
    膜を被覆し、次いで400℃以上600℃以下の温度で加熱す
    ることを特徴とするポンプの製造方法。
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