JP3744109B2 - 水力機械用ランナ及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐摩耗性,耐食性に優れたランナ水車及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
水車は、近年流体内に固形物、例えば土砂などを含む条件下での使用が増えている。このような条件下で運転されるランナでは、固形物の衝突による摩耗(以後、土砂摩耗と表記する)とキャビテーション壊食とが複合した損傷が発生する。そのため、損傷発生部にはゴム等の樹脂ライニング、もしくはセラミックス等の高硬度材料の溶射が行われている。この種の技術として特開平3-47477号公報を挙げることができる。
【0003】
一般に3次元形状であるランナは鋳造によって製作されることが多い。しかし、大型ランナでは、溶接によって組み立てる製造方法が一部用いられている。この場合、ランナとしての機械強度を高めるため、ステンレス系材料を溶接によって組み立てている。具体的には羽根,クラウン,バンド若しくはシュラウドをステンレス系材料で別々に形状を作り、クラウン,バンド若しくはシュラウドとの間に羽根を溶接し、ランナを形成する。このとき、ランナに形成後は必要に応じて溶接時の残留応力を除去するために加熱処理が施される。この種の技術として特開平2-140465号公報に記載されている技術を挙げることができる。
【0004】
また、土砂摩耗が生じる場合では硬質被膜の被覆が種々検討されている。例えば、ペルトン水車のバケット、ニ−ドルチップの内面に傾斜組成を有するタングステンカ−バイド皮膜を減圧プラズマ溶射法で被覆する方法が特開平6-88201号公報に記載されている。また、水車のランナに限れば、ランナの土砂摩耗を生じる一部箇所にC,Si,Mn,Cr.Mo,Ni,Feを含むCo合金を肉盛り溶接する技術が特開平2-75767号公報に記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前述したように、水力機械を流体内に土砂などを含む条件下で使用する場合、土砂摩耗とキャビテーション壊食とによる損傷防止のため、ランナには高硬度材料の被覆が必要である。しかしながら、ランナは三次元形状であるため高硬度材料の被覆は容易ではない。
【0006】
メッキ法は複雑形状物にも容易に被覆できる方法であるが、本例に適用する場合、以下の課題がある。Crメッキは最も広く用いられている電解メッキであり、皮膜硬さはメッキ膜中では最高に属し、ビッカース硬さ(以後、Hvと表記する)が約1000である。しかし電解メッキであるため、形状による電解集中が生じ膜厚を均一にすることが困難である。
また、メッキでは皮膜内の歪のため厚膜形成が難しく、土砂摩耗とキャビテーション壊食に十分な膜厚の皮膜形成が困難である。Ni-Pメッキは無電解メッキであり、形状にとらわれず均一な膜厚の皮膜を形成できる。しかしながら、Crメッキと同様に、皮膜内の歪のため厚膜形成が難しく、土砂摩耗とキャビテーション壊食に十分な膜厚の皮膜形成が困難である。さらに、Crメッキ、Ni-Pメッキ共に浴槽に浸漬するため、水車ランナのような大型部品への適用は設備上実用的ではない。
【0007】
溶射法によって形成する硬質被膜は、土砂摩耗とキャビテーション壊食に対して十分な耐摩耗性を有し、且つ溶射法は十分な厚みの皮膜を容易に被覆することができる。しかしながら、溶射法を用いた場合には以下の課題がある。良好な溶射皮膜を形成するためには溶射ガンとランナとの間隔に適切な距離が必要であり、さらに溶射ガンの寸法の制限から、比較的広いスペースを必要とする。したがって、三次元形状であり、狭いスペースを有するランナには、十分な硬さと密着力を有する良好な皮膜を被覆することは困難である。
【0008】
上記特開平6-88201号公報に記載されている技術は、溶射施工が容易な形状の小型部品に減圧プラズマ溶射法を適用した発明であり、施工時に被覆部材を減圧容器内に納めねばならない。従って、減圧プラズマ溶射法の大型部品への適用は困難であり、さらに複雑形状の3次元部品への適用は極めて困難である。上記特開平6-88201号公報に記載されている技術には、これら課題に対する検討がなされていない。
【0009】
また、上記特開平2-75767号公報に記載されている技術は、施工が容易な箇所に肉盛り施工を適用した発明である。肉盛り溶接は溶解を伴うため強固に密着した改質層が形成できるが、投入熱量が大きく、大面積へ施工すると加熱によって変形が生じる。従って、水車ランナへの適用も実用上一部分に限られ、必要部分全面への施工は困難である。また、上記特開平6-88201号公報に記載されている技術と同様に複雑形状の3次元部品へのプラズマ溶射の適用は極めて困難である。さらに、Co合金では、土砂濃度の高い環境では皮膜硬さが足らず、十分な耐摩耗性が得がたい。上記特開平2-75767号公報に記載されている技術には、これら課題に対する検討がなされていない。
【0010】
以上の如く、三次元形状で且つ狭いスペースを有するランナには、溶射法を用いて十分な硬さと密着力を有する良好な皮膜を被覆することは困難である。すなわち溶射法を用いる場合、前述の溶接によって組み立てる製造方法を用いなければならない。しかしながら、溶接を用いるランナ製造方法において溶射による皮膜被覆を適用する場合、詳細な検討をした結果、下記の課題が生じることが明らかとなった。
【0011】
まず全面に溶射を施した部材では溶接が出来ず、たとえ溶接したとしても良好な溶接強度を得ることは出来ない。また、溶接部近傍では溶接の熱によって部材の温度が上がるため、一般に金属よりも熱膨張率の小さい硬質皮膜に熱歪が生じ、皮膜の剥離、もしくは密着力の低下が生じる。したがって、溶接部およびその近傍には皮膜を被覆することはできない。
【0012】
しかし、ランナの溶接部であるクラウンと羽根、及びシュラウド若しくはバンドと羽根の接合部は比較的流体速度が速く、かつ土砂の衝突頻度が大きいため土砂摩耗とキャビテーション壊食が生じやすい箇所である。皮膜を施さない状態では土砂摩耗とキャビテーション壊食によって損傷を受け、性能低下、寿命の低下などの問題が生じる。
また、溶接近傍に溶射膜を被覆しないクラウンと羽根、及びシュラウ若しくはバンドと羽根とを溶接し、溶接後に各溶接部に溶射皮膜を被覆する方法は、詳細な検討をした結果、下記の課題が生じることが明らかとなった。
【0013】
十分な密着力を得るには、溶射膜を被覆する前にサンドブラスト処理によって被覆面に適切な凹凸を形成しておかなければならない。しかしながら、本例の場合すでに溶接部近傍には事前に被覆した溶射膜が存在するため、サンドブラスト処理によってこの溶射膜が損傷を受け、密着力低下が生じる可能性がある。さらに、溶接構造物は溶接部の残留歪除去のため、Stress Release処理(以下、SR処理と略す)と称する熱処理を施さねばならない。一般に、溶射によって形成する硬質皮膜は熱膨張率が小さいため、SR処理時に適切な温度を設定せねば、熱歪によって溶接前に被覆した皮膜の剥離、破壊が生じる恐れがある。また、SR処理前に溶接部に溶射皮膜を被覆した場合、SR処理による溶接部の残留歪の解放によってさらに皮膜に歪が生じ、皮膜の剥離、破壊が一層生じ易くなる。
【0014】
本発明の目的は、上記課題を解決すべく、取扱い流体内に土砂などを含む条件下でも使用可能な、耐摩耗性と耐食性に優れたランナ水車及びその製造方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、水車ランナにおいて、クラウン、バンド、及びベーンの表面の少なくとも一部に、Ni,Cr,Coの内の少なくとも1種類を含む金属とクロム炭化物とを含む第1の皮膜が被覆され、クラウンとベーンとの接合部、及びバンドとベーンとの接合部の少なくとも一部にNi,Cr,Coの内少なくとも1種類を含む金属とタングステン炭化物とを含む第2の皮膜が被覆されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、水車ランナにおいて、クラウン、バンド、及びベーンの表面の少なくとも一部に、 Ni,Cr,Co の内の少なくとも1種類を含む金属とクロム炭化物とを含みビッカース硬さ 700 以上の第1の皮膜が被覆され、クラウンとベーンとの接合部、及びバンドとベーンとの接合部の少なくとも一部に Ni,Cr,Co の内少なくとも1種類を含む金属とタングステン炭化物とを含み、該第1の皮膜より硬いビッカース硬さ 1000 以上の第2の皮膜が被覆されていることにある。
【0019】
また、本発明の他の特徴は、水車の製造方法において、ランナを形成していない個々のクラウン、バンド、及びベーンの表面の少なくとも一部に、 Ni,Cr,Co の内の少なくとも1種類を含む金属とクロム炭化物とを含む第1の皮膜を被覆し、次にクラウンとバンドの間にベーンを接合してランナを形成し、次に350℃以上、650℃以下、望ましくは400℃以上、650℃以下の温度で1時間以上30時間以下加熱し、次にクラウンとベーンとの接合部、及びバンドとベーンとの接合部の少なくとも一部に Ni,Cr,Co の内少なくとも1種類を含む金属とタングステン炭化物とを含む第2の皮膜を被覆することにある。
【0020】
ランナは、表面の少なくとも一部に、Ni,Cr,Coの内の少なくとも1種類を含む金属とクロム炭化物を含むビッカース硬さ700以上の第1の皮膜と、Ni,Cr,Coの内少なくとも1種類を含む金属とタングステン炭化物を含み該第1の皮膜より硬いビッカース硬さ1000以上の第2の皮膜が被覆した構造とする。
【0021】
第1の皮膜と、第2の皮膜、特にクロム炭化物としてCr3C2を用いる第1の皮膜、タングステン炭化物としてWCを用いる第2の皮膜は、その皮膜硬さがHv700以上、若しくはHv1000以上であり且つ優れた耐食性を有する。土砂などを構成する主な物質は長石と石英であり、その硬さは石英のHv900〜1000、長石のHv600〜700である。土砂摩耗は衝突粒子の硬さを超えると急激に耐摩耗性が向上するため、皮膜硬さがHv700、若しくは1000以上である上記皮膜をランナの表面の少なくとも一部に被覆することによって、土砂摩耗とキャビテーション壊食に対して十分な耐摩耗性を発揮することが出来る。
【0022】
皮膜被覆法として溶射を用いれば、第1の皮膜では0.数mmから1mmまでの膜厚、第2の皮膜では0.数mmから0.5mmまでの膜厚が形成できる。したがって、溶射で皮膜を形成すれば、土砂摩耗とキャビテーション壊食に対して十分な寿命を保証できる厚みの皮膜を容易に被覆することができる。
【0023】
溶射には各種方法があり、それぞれの長所短所に応じた適用が行われている。最も緻密な皮膜を形成できる溶射法は減圧中でプラズマ溶射法を行う減圧溶射法である。しかし、減圧溶射法では施工部材を真空容器中にいれて被覆処理せねばならず、本例のような大型部材への適用は実用的でない。緻密な皮膜を被覆できる他の方法として、爆発溶射法と高速フレーム溶射がある。爆発溶射法は一度の被覆面積が広いため、大型平面部材への被覆には適するが、溶射ガン、設備が大きくランナのような三次元形状、あるいは接合部分のような狭スペースを有する部材に対して均一に被覆することは困難である。
それに比し、高速フレーム溶射は、緻密な皮膜が形成でき、且つガン、設備が比較的小さく、三次元形状、あるいは接合部分のをような狭スペースを有する部材に対して均一が緻密な皮膜が形成できる。
【0024】
ランナを製作する場合、部材状態のクラウン,バンド,羽根の各々に、Ni,Cr,Coの内の少なくとも1種類を含む金属とCr3C2を50重量%から90重量%、望ましくは70重量%から90重量%含む第1の皮膜を被覆し、且つ膜厚を0.3mm以上1.0mm以下とし、さらに溶接部の先端から20mm以内、望ましくは50mm以内の領域を未被覆部とする。
Cr3C2とNi,Cr,Coからなる第1の皮膜はCr3C2の量によって皮膜硬さが変化する。Cr3C2の量を増せば皮膜硬さは増すが、皮膜の靭性が失われ脆性となり、皮膜破壊、剥離等が生じやすく信頼性が低下する。Cr3C2量が50重量%から90重量%範囲であれば、土砂摩耗に対して十分な皮膜硬さを有し、且つ靭性を保つことができる。
【0025】
また、この範囲であれば、土砂摩耗に対し優れた耐食性と耐摩耗性を有する。但し、土砂濃度が高い場合はCr3C2量を高め、皮膜硬さを高める必要がある。この場合、Cr3C2量は70重量%から90重量%が望ましい。この範囲であれば皮膜硬さとしてHv700以上を得ることが可能である。
【0026】
溶射膜には微細なボイドが多数存在するため、優れた耐食性と耐摩耗性を示すには皮膜厚さとしては0.3mm以上を必要とする。一方、溶射膜は膜厚が増すと皮膜内部の歪が増すため密着力が低下する。密着力の点からは、この溶射膜は膜厚1.0mm以下とする必要がある。また、この皮膜の耐摩耗性を考慮すると1.0mmの膜厚があれば十分な寿命が予想され、作業の軽減、省エネルギの点でも1.0mm以下とすることが望ましい。以上の点から膜厚を0.3mm以上1.0mm以下とすれば、ランナの土砂摩耗とキャビテーション壊食に対して十分な寿命を保証でき、且つ生産性、省エネルギの点で良好となる。
【0027】
Cr3C2とNi,Cr,Coとを含む第1の皮膜の熱膨張率は、素材である鉄、ステンレスに比較し小さい。したがって、溶接による熱影響を受けると熱歪が生じ、皮膜の密着力が低減する可能性がある。しかし、溶接部の先端から20mm以内、望ましくは50mm以内の領域を未被覆部とすれば、溶接時の熱影響がさけられ、第1の皮膜の良好な密着力は溶接による影響を避けることができる。
【0028】
またこの際、第1の皮膜の膜厚よりも厚い、望ましくは2倍以上の厚みを有する金属板を付着して第1の皮膜の未被覆部を形成する。溶射法、特に高速フレーム溶射法は、吹き付けいるガス速度が著しく速いため、十分な強度有するマスキング材でなければ、破断が生じる。また、十分な厚みを有しないと、マスキング部と被覆部の皮膜が連続し、皮膜端部が剥離しやすい。従って、皮膜の膜厚より2倍以上の厚みを有する金属板をマスキング材といて用いれば、上記不都合を回避することができる。
【0029】
また、ランナを製作する場合、第1の皮膜を被覆したクラウンと羽根、バンドと羽根を溶接し、水力機械用ランナを形成し、次に350℃以上、650℃以下、望ましくは400℃以上、650℃以下の温度で少なくとも1時間以上30時間以下加熱する。
【0030】
この温度の加熱によって、溶接部の残留歪が解放されるため、ランナ稼働時の歪解放による変形、溶接部の疲労強度の低下が防げ、信頼性が増す。さらに、第1の皮膜内部において、Ni,Cr,Coの金属相とCr3C2粒子との密着力が増すため、皮膜の硬さが増加し、土砂摩耗とキャビテーション壊食に対する耐摩耗性が増す。さらに、第1の皮膜と母材との界面において密着力が増し、皮膜剥離が抑制される。したがって、何らかの衝撃によって皮膜に亀裂が発生しても、皮膜の剥離、脱落が抑制され信頼性が増す。
【0031】
加熱温度は高いほど、溶接部の残留歪の解放、皮膜内のN i,Cr,Coの金属相とCr3C2粒子との密着力増加、皮膜と母材との界面における密着力増加は早く進むが、前述のごとく皮膜と母材との熱膨張率差によって熱歪が生じる。熱歪による皮膜への影響を考慮すると650℃以下が望ましい。また、溶接部の残留歪の解放速度と皮膜の改良速度を考慮すると、350℃が限界であり、これ以下では時間がかかり工業的利用が困難となる。
【0032】
実用性を考慮すれば400℃以上、650℃以下の温度範囲が望ましい。350℃以上、650℃以下の温度範囲で検討すれば、350℃では最低でも20時間を必要し、650℃であれば最低1時間で加熱の効果が生じる。400℃以上、650℃以下の温度範囲で検討すれば、30時間でその効果は収束する、したがって、効果と省エネルギの点を考慮すれば1時間以上30時間以下の加熱時間が望ましい。
また、ランナを製作する場合、加熱後、クラウンと羽根、及びバンドと羽根との接合部に、Ni,Cr,Coの内少なくとも1種類を含む金属とWCを50重量%以上、90重量%以下、望ましくは70重量%以上、90重量%以下を含む第2の皮膜を膜厚0.1mm以上0.5mm以下被覆し、少なくとも一部で被覆済の第1の皮膜に重ねる。
【0033】
WCとNi,Cr,Coとを含む第2の皮膜は皮膜硬さがHv1000以上であり、土砂摩耗に対し優れた耐食性と耐摩耗性を有する。また、WCの量を増せば皮膜硬さは増すが、皮膜の靭性が失われ脆性となり、皮膜破壊、剥離等が生じやすく信頼性が低下する。WC量が50重量%から90重量%範囲であれば、土砂摩耗に対して十分な皮膜硬さを有し、且つ靭性を保つことができる。但し、土砂濃度が高い場合はWC量を高め、皮膜硬さを高める必要がある。この場合、WC量が70重量%から90重量%が望ましい。
【0034】
クラウンと羽根、及びバンドと羽根との接合部は、比較的流体速度が速く、かつ土砂の衝突頻度が大きいため土砂摩耗とキャビテーション壊食が生じやすい箇所であるが、第2の皮膜を被覆することによって、上記損傷を防ぐことができる。
【0035】
高速フレーム溶射では、炭化物粒子は溶解や分解せず個体のまま機材に衝突堆積する。したがって、密度が高く、粒子重量が大きいほど、母材への食い込みが大きく良好な密着力が得られる。比重の大きいWC粒子は母材への食い込みが大きく、前処理としてサンドブラスト処理を施さなくともグラインダ加工等による表面粗さで十分な密着力が得られる。さらに、WCはCr3C2よりも高硬度であるため、すでに被覆済の第1の皮膜にも十分食い込み、良好な密着力が得られる。
【0036】
WCとNi、Cr、Coからなる溶射膜、すなわち第2の皮膜が優れた耐食性と耐摩耗性を示すには、皮膜厚さとしては0.1mm以上を必要とする。一方、第2の皮膜は膜厚が増すと皮膜内部の歪が増すため密着力が低下する。密着力の点からは、この溶射膜は膜厚0.5mm以下とする必要がある。また、この第2の皮膜の耐摩耗性を考慮すると0.5mmの膜厚があれば十分な寿命が予想され、作業の軽減、省エネルギの点でも0.5mm以下とすることが望ましい。
皮膜の破壊、剥離は皮膜端部から生じやすい。したがって、第2のを被覆済の第1の皮膜に一部重ねるて被覆することによって、母材が継ぎ目なしに被覆されるため、土砂摩耗とキャビテーション壊食に対しての耐摩耗性、信頼性を増すことができる。
【0037】
第2の皮膜の熱膨張率は、含まれる金属の堆積比率が等しければ第1の皮膜よりも熱膨張率が小さいため、母材との熱膨張率差によって生じる熱歪が大きい。また、溶接部は残留歪解放によって変形を生じる。従って、溶接部に被覆した第2の皮膜には、熱歪と残留歪解放によって生じる歪が加わる。両者の加わった歪によって溶射膜の破壊、隔離の可能性があるため、溶接部への第2の皮膜の被覆は、350℃以上、650℃以下の加熱の後に行わねばならない。
【0038】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例に係る水力機械用ランナ及びその製造方法を、図を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例に係る水力機械用ランナを適用した水車の概略構造を示す。内部構造を明確にするため、ケーシングの一部を分割表示している。なお、分割断面のハッチングについては、煩雑さをさけるため図1に限り、部材毎のハッチング種類を変えていない。
【0039】
図1に示すように、水車1は、水力機械用ランナ2(以下、ランナと略す),軸3,ガイドベーン4,スリーブ5,軸受6で構成されている。ガイドベーン4を介して流入する流水によってランナ2は回転し、同時にランナ2と接続した軸3が回転する。軸3と図中上方で接続する発電機(図示せず)が回転し、発電する。
【0040】
ランナ2に流入する流水に多数の土砂が含まれる場合、ランナ2、ガイドベーン4は、土砂粒子の衝突によって土砂摩耗が発生する。この土砂摩耗を防ぐため、ランナ2,ガイドベーン4には、土砂摩耗の発生が予想される流水速度の速い箇所及び粒子衝突頻度の高い箇所に、第1の皮膜、すなわちCr3C2-16重量%Ni-4重量%Cr(以後、Cr3C2-20%NiCrと表記する)と、第2の皮膜、すなわちWC-20重量%Ni-5重量%Cr(以後、WC-25%NiCrと表記する)とが被覆されている。
【0041】
特に、ランナ2はクラウン、バンド、羽根における土砂摩耗の発生が予想される流水速度の速い箇所及び粒子衝突頻度の高い箇所にCr3C2-20%NiCr皮膜を0.3mm以上1.0mm以下の膜厚で被覆し、さらにクラウンと羽根、及びバンドと羽根との接合部には、WC-25%NiCr皮膜を0.1mm以上0.5mm以下の膜厚で被覆している。また、Cr3C2-20%NiCr皮膜とWC-25%NiCr皮膜は一部で重なり、その重なり部分では下層にCr3C2-20%NiCr皮膜、上層にWC-25%NiCr皮膜の構造となっている。
【0042】
図2は、図1のランナ全体の概略斜視を示し、図3は、図2におけるI-I断面をA方向から見た断面を含む斜視を示す。図2,図3に示すように、ランナ2は、クラウン21,バンド22,羽根23で構成されており、クラウン21と羽根23、バンド22と羽根23は溶接によって接合され、ランナ2を形成している。
【0043】
図4は、クラウン21と羽根23、及びバンド22と羽根23との溶接部の拡大断面を示す。なお、図4では、クラウン21、バンド22、羽根23の断面ハッチングを区別してはいない。図4において、7はCr3C2-20%NiCr皮膜(第1の皮膜)であり、8はWC-25%NiCr皮膜(第2の皮膜)である。両皮膜は一部で重なり、その範囲は約10mmから50mmである。
【0044】
本実施例では、Cr3C2-25%NiCr皮膜7,WC-25%NiCr皮膜8は高速フレーム溶射法で形成した。また、Cr3C2-25%NiCr皮膜とWC-25%NiCr皮膜についてCr3C2およびWCの含有率を検討した結果、50重量%から90重量%範囲が土砂摩耗とキャビテーション壊食に対して良好であることが判明した。但し、黄河や揚子江、あるいは大雨後の河川水といった時に2kg/m3を越える土砂濃度の場合は、Cr3C2とWCの量を高め、皮膜硬さを高める必要がある。この場合、Cr3C2とWCの量が70重量%から90重量%が望ましい。また、皮膜の金属成分については、耐食性,皮膜硬さ、靭性の点からNi,Cr,Coが適している。これらの金属からの選定、若しくは組み合わせであれば耐食性,硬さ、靭性が良好である。
【0045】
Cr3C2-25%NiCr皮膜7は皮膜硬さがHv700以上、WC-25%NiCr皮膜8は皮膜硬さがHv1000以上であり且つ優れた耐食性を有する。土砂などを構成する主な物質は長石と石英であり、その硬さは、長石がHv600〜700、石英がHv900〜Hv1000である。土砂摩耗は衝突粒子の硬さを超えると急激に耐摩耗性が向上するため、皮膜硬さがHv700、若しくはHv1000以上である皮膜を被覆することによって、土砂摩耗とキャビテーション壊食に対して十分な耐摩耗性を発揮することが出来る。
【0046】
Cr3C2-20%NiCr皮膜7,WC-25%NiCr皮膜8は、Cr3C2とWCの量によって皮膜硬さが変化する。Cr3C2,WC量を増せば皮膜硬さは増すが、皮膜の靭性が失われ脆性となり、皮膜破壊、剥離等が生じやすく信頼性が低下する。Cr3C2,WC量が50重量%から90重量%範囲であれば、土砂摩耗に対して十分な皮膜硬さを有し、且つ靭性を保つことができる。
【0047】
また、この範囲であれば土砂摩耗に対し優れた耐食性と耐摩耗性を有する。但し、黄河や揚子江、あるいは大雨後の河川水といった土砂濃度が2kg/m3を越えるような高い場合はCr3C2とWCの量を高め、皮膜硬さを高める必要がある。この場合、Cr3C2とWCの量が70重量%から90重量%が望ましく、この範囲であれば皮膜硬さとして、各々Hv700以上とHv1000以上を得ることが可能である。
【0048】
溶射膜には微細なボイドが多数存在するため、Cr3C2-20%NiCr皮膜7が優れた耐食性と耐摩耗性を示すには皮膜厚さとしては0.3mm以上を必要とする。一方、溶射膜は膜厚が増すと皮膜内部の歪が増すため密着力が低下する。密着力の点からは、Cr3C2-20%NiCr皮膜7は膜厚1.0mm以下とする必要がある。
また、Cr3C2-20%NiCr皮膜7の耐摩耗性を考慮すると1.0mmの膜厚があれば十分な寿命が予想され、作業の軽減、省エネルギの点でも1.0mm以下とすることが望ましい。
【0049】
同様にWC-25%NiCr皮膜8についても適正膜厚範囲がある。一般にWCを含む皮膜は、Cr3C2を含む皮膜に比較して、より硬く、且つ形成時の皮膜内歪が大きい。しかしながら、溶射膜であるため、Cr3C2-20%NiCr皮膜と同様に膜内には微細なボイドが多数存在する。
従って、優れた耐食性と耐摩耗性を示すには皮膜厚さとしては0.1mm以上を必要とする。一方、先に示したように皮膜内部の歪の点から膜厚0.5mm以下とする必要がある。また、この皮膜の耐摩耗性を考慮すると0.5mmの膜厚があれば十分な寿命が予想され、作業の軽減、省エネルギの点でも0.5mm以下とすることが望ましい。
【0050】
溶射膜の破壊、剥離は皮膜端部から生じやすい。したがって、WC-25%NiCr皮膜8を被覆済のCr3C2-20%NiCr皮膜7に一部重ねるて被覆することによって、母材が継ぎ目なしに被覆されるため、土砂摩耗とキャビテーション壊食に対しての耐摩耗性、信頼性を増すことができる。
【0051】
溶射膜内には微細なボイドが多数存在するため、信頼性の点から上記Cr3C2-20%NiCr皮膜7とWC-25%NiCr皮膜8の重ね量は少なくとも10mmを必要とする。重ね量が50mm以上となるとその効果は収束するため、効率の点から10mmから50mmの範囲が適正である。
【0052】
高速フレーム溶射では、炭化物粒子は溶解や分解せず個体のまま機材に衝突堆積する。したがって、密度が高く、粒子重量が大きいほど、食い込みが大きく良好な密着力が得られる。比重の大きいWC粒子は食い込みが大きく、前処理としてサンドブラスト処理を施さなくともグラインダ加工等による表面粗さで十分な密着力が得られる。さらに、WCはCr3C2よりも高硬度であるため、WC-25%NiCr皮膜8を上層にすることによって被覆済のCr3C2-20%NiCr皮膜7にも十分食い込み、良好な密着力を得ることができる。
【0053】
なお、土砂濃度が低い条件で使用する場合、必ずしも上層にWC-25%NiCr皮膜を被覆する必要はない。Cr3C2-NiCr皮膜であっても使用可能であり、この場合Cr3C2の比率を高めることが望ましい。また、この場合はCr3C2-20%NiCr皮膜の被覆していない箇所については、被覆済みCr3C2-20%NiCr皮膜に影響せぬように保護をして、サンドブラスト処理を施すことが望ましい。
【0054】
次に、本発明の一実施例に係る水力機械用ランナも製造方法を、図5から図10を用いて説明する。
図5は、本発明の一実施例である水車ランナの製造方法の工程を示す。まず、クラウン21,バンド22,羽根23を個々に製作する。次に、個々に製作されたクラウン21,バンド22,羽根23に、高速フレーム溶射法によってCr3C2-20%NiCr皮膜7を被覆する。なお、高速フレーム溶射は各種ある溶射法に中で、緻密な皮膜が形成でき、且つ溶射ガン、設備が比較的小さく、三次元形状または接合部分のような狭スペースを有する部材に対して均一が緻密な皮膜が形成できるため、ランナ2のような三次元形状部材への被覆には最も適した溶射法である。
【0055】
Cr3C2-25%NiCr皮膜7を被覆する際、溶接部となる箇所はCr3C2-20%NiCr皮膜7の膜厚よりも厚い、望ましくは2倍以上の厚みを有する金属板を張り付け、Cr3C2-20%NiCr皮膜7の被覆を防ぐ。皮膜の膜厚より2倍以上の厚みを有する金属板であれば、高速フレーム溶射法における高速ガスに対しても十分な強度、耐熱性を有するため、破断飛散が防げる。また皮膜の膜厚より2倍以上の厚みであれば、マスキング部と被覆部の皮膜が連続することはなく、良好な皮膜端部が形成できる。
【0056】
次に、クラウン21と羽根23、バンド22と羽根23を溶接し、ランナ2を形成する。溶接後、溶接部9をグラインダによって適切なR形状に加工し、稼働時の応力集中を防ぐ。次に、ランナ2を炉中に設置し、1時間以上、30時間以下の間、350℃以上、650℃以下、望ましくは400℃以上、650℃以下の温度範囲で保持するSR処理を施す。
【0057】
本実施例では、550℃で約15時間保持し、その後は炉中で冷却した。なお、15hは550℃における保持時間である。550℃加熱では、約5h以上の保持で皮膜硬さが増し、約10h以上の保持で密着力の著しい改善が図られる。ランナ2は大型部品であるため急激な昇温、冷却は困難であり、また皮膜の熱歪の点からも適切でない。ランナ2は炉中で15h、550℃に保持し、その後炉中で緩やかに冷却したものである。十分な冷却後、R形状に加工した溶接部の酸化膜を再びグラインダで削除し、その上にWC-25%NiCr皮膜8を被覆する。
【0058】
ここで、図6から図10を用いて上記工程の詳細を説明する。
図6は、高速フレーム溶射法によってCr3C2-20%NiCr皮膜7を被覆した羽根23の外観斜視を示す。羽根23はクラウン21,バンド22と溶接する箇所をのぞき、全面をCr3C2-20%NiCr皮膜7によって被覆する。
【0059】
図6に示すように、23aは断面ではなく、Cr3C2-20%NiCr皮膜7の被覆部を示す。ハッチングを施していない部分は、溶接する端面から少なくとも40mm、多い場合70mmの範囲となる未被覆部23bである。この未被覆部23bは、溶接後の状態ではCr3C2-20%NiCr皮膜7の端部と溶接部との間隔は20mmから50mmとなる(詳細は後述)。特に図示はしないがクラウン21,バンド22のCr3C2-20%NiCr皮膜7の被覆も同様である。
【0060】
Cr3C2-20%NiCr皮膜7の熱膨張率は、素材である鉄、ステンレスに比較し小さい。従って、溶接による熱影響を受けると熱歪が生じ、皮膜の密着力が低減する可能性がある。しかし、溶接部となる領域から20mm以内、望ましくは50mm以内の領域を未被覆部とすれば、溶接時の熱影響がさけられ、Cr3C2-20%NiCr皮膜7の良好な密着力は溶接によっても影響を避けることができる。
その後の溶接、R加工の詳細を、バンド22と羽根23との溶接を例に取り説明する。
【0061】
図7は、溶接前のバンド22と羽根23の溶接部断面を示す。クラウン21と羽根23、バンド22と羽根23の溶接は、完全溶け込み溶接であり、図7に示すような形状に加工されている。
【0062】
図8は溶接後の断面形状を示す。ただし、図8では溶接部9は多層に積層された溶接線を表記しており、ハッチングを施していない。溶接する端面から40mmから70mmの範囲のCr3C2-25%NiCr皮膜7を被覆しない未被覆部23bは、溶接後の状態ではCr3C2-20%NiCr皮膜7の端部と溶接部9との間隔は20mmから50mとなる。
【0063】
図9は、溶接部9をグラインダによって適切なR形状に加工した断面を示す。
【0064】
この形状に加工した後、ランナを炉中に設置し、1時間以上、30時間以下の間、350℃以上、650℃以下、望ましくは400℃以上、650℃以下の温度で保持するSR処理を施す。
【0065】
この温度の加熱によって、溶接部の残留歪が解放されるため、使用時の歪解放による変形、溶接部の疲労強度の低下が防げ、信頼性が増す。さらに、Cr3C2-20%NiCr皮膜7において、Ni、CrとCr3C2粒子との密着力が増すため、皮膜の硬さが増加し、土砂摩耗とキャビテーション壊食に対する耐摩耗性が増す。
【0066】
さらに、Cr3C2-20%NiCr皮膜7と母材との界面において密着力が増し、皮膜剥離が抑制される。したがって、何らかの衝撃によって皮膜に亀裂が発生しても、皮膜の剥離、脱落が抑制され信頼性が増す。
【0067】
加熱温度は高いほど、溶接部の残留歪の解放、皮膜内のNi、Crの金属相とCr3C2粒子との密着力増加、皮膜と母材との界面における密着力増加は早く進むが、Cr3C2-20%NiCr皮膜7と母材との熱膨張率差によって熱歪が生じる。熱歪による皮膜への影響を考慮すると650℃以下が望ましい。
【0068】
また、溶接部の残留歪の解放速度と皮膜の改良速度を考慮すると、350℃が限界であり、これ以下では時間がかかり工業的利用が困難となる。実用性を考慮すれば400℃以上、650℃以下の温度範囲が望ましい。350℃以上、650℃以下の温度範囲で検討すれば、350℃では最低でも20時間を必要し、650℃であれば最低1時間で加熱の効果が生じる。400℃以上、650℃以下の温度範囲で検討すれば、30時間でその効果は収束する、したがって、効果と省エネルギの点を考慮すれば1時間以上30時間以下の加熱時間が望ましい。
【0069】
図10は、R形状に加工した溶接部にWC-25%NiCr皮膜8を被覆した後の断面形状を示す。WC-25%NiCr皮膜8は一部でCr3C2-20%NiCr皮膜7に重なる。一部重ねるて被覆することによって、母材が継ぎ目なしに被覆されるため、土砂摩耗とキャビテーション壊食に対しての耐摩耗性、信頼性が増す。
【0070】
WC-25%NiCr皮膜8の被覆をSR処理後に行うのは以下の理由による。WC-25%NiCr皮膜8はCr3C2-20%NiCr皮膜7より熱膨張率が小さいため、SR処理ではCr3C2-20%NiCr皮膜7以上の熱歪みが生じる。さらに、溶接部では残留歪が解放するため、一層の歪みが発生するため、Cr3C2-20%NiCr皮膜7が剥離、亀裂発生を生じない温度範囲であっても、WC-25%NiCr皮膜8に亀裂の発生する可能性が高い。
【0071】
従って、溶接部へ被覆するWC-25%NiCr皮膜8は、SR処理後に行わなければならない。また、WC-25%NiCr皮膜は、WC粒子の密度が高いため密着力形が高く、特に被覆済のCr3C2-20%NiCr皮膜7への影響のため全面にサンドブラスト処理を施せない、本実施例の溶接部被覆に適している。
【0072】
なお、上記実施例では溶射皮膜として、Cr3C2-20%NiCr皮膜7とWC-25%NiCr皮膜8を用いたが、本発明は前述のごとくこの組成に限定されるものではない。例えば、Cr3C2-15%NiCr皮膜、Cr3C2-25%NiCr皮膜、Cr3C2-15%CoCr皮膜、Cr3C2-20%CoCr皮膜、Cr3C2-25%CoCr皮膜、WC-15%NiCr皮膜、WC-20%NiCr皮膜、WC-15%Co皮膜、WC-20%Co皮膜、WC-25%Co皮膜、WC-15%CoCr皮膜、WC-20%CoCr皮膜、WC-25%CoCr皮膜は良好な皮膜強度、密着力を有し、本発明に適した皮膜である。
【0073】
また上記実施例では、個々に製作されたクラウン21,バンド22,羽根23にCr3C2-20%NiCr皮膜7を被覆する際、高速フレーム溶射法を用いた。しかし、個別部品に対する溶射する場合、狭スペースではないため高速フレーム溶射法に限定する必要はなく、爆発溶射法、部材の大きさによっては減圧溶射法も適用可能である。
【0074】
【発明の効果】
本発明によれば、流体内に土砂などを含む条件下でも使用可能な、耐摩耗性と耐食性に優れたランナを実現でき、且つランナを、安価に、しかも効率よく製造することができる。
また、流体内に土砂などを含む条件下でも使用可能な、耐摩耗性と耐食性に優れた信頼性高い水車を実現でき、且つ、安価に、しかも効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る水力機械用ランナを適用した水車の概略構造図である。
【図2】本発明の一実施例に係る水力機械用ランナの斜視図である。
【図3】本発明の一実施例に係る水力機械用ランナの一部断面を含む斜視図である。
【図4】本発明の一実施例に係る水力機械用ランナの拡大断面図である。
【図5】本発明の一実施例に係る水力機械用ランナの製造手順を示す工程図である。
【図6】本発明の一実施例に係る水力機械用ランナの羽根の斜視図である。
【図7】本発明の一実施例に係る水力機械用ランナの羽根,バンド溶接部の一部断面を含む斜視図である。
【図8】本発明の一実施例に係る水力機械用ランナの羽根,バンド溶接部のR加工前の断面図である。
【図9】本発明の一実施例に係る水力機械用ランナの羽根,バンド溶接部のR加工後の断面図である。
【図10】本発明の一実施例に係る水力機械用ランナの羽根,バンド溶接部の皮膜被覆後の断面図である。
【符号の説明】
1…水車、2…ランナ、21…クラウン、22…バンド、23…羽根、23a…Cr3C2-20%NiCr皮膜の被覆部、23b…Cr3C2-20%NiCr皮膜の未被覆部、3…軸、4…ランナベーン、5…スリーブ、6…軸受、7…Cr3C2-20%NiCr皮膜(第1の皮膜)、8…WC-25%NiCr皮膜(第2の)、9…羽根とバンドの溶接部。

Claims (3)

  1. 水車ランナにおいて、クラウン、バンド、及びベーンの表面の少なくとも一部に、Ni,Cr,Coの内の少なくとも1種類を含む金属とクロム炭化物とを含む第1の皮膜が被覆され、クラウンとベーンとの接合部、及びバンドとベーンとの接合部の少なくとも一部にNi,Cr,Coの内少なくとも1種類を含む金属とタングステン炭化物とを含む第2の皮膜が被覆されていることを特徴とする水車ランナ。
  2. 水車ランナにおいて、クラウン、バンド、及びベーンの表面の少なくとも一部に、Ni,Cr,Coの内の少なくとも1種類を含む金属とクロム炭化物とを含みビッカース硬さ700以上の第1の皮膜が被覆され、クラウンとベーンとの接合部、及びバンドとベーンとの接合部の少なくとも一部にNi,Cr,Coの内少なくとも1種類を含む金属とタングステン炭化物とを含み、該第1の皮膜より硬いビッカース硬さ1000以上の第2の皮膜が被覆されていることを特徴とする水車ランナ。
  3. 水車の製造方法において、ランナを形成していない個々のクラウン、バンド、及びベーンの表面の少なくとも一部に、Ni,Cr,Coの内の少なくとも1種類を含む金属とクロム炭化物とを含む第1の皮膜を被覆し、次にクラウンとバンドの間にベーンを接合してランナを形成し、次に350℃以上、650℃以下、望ましくは400℃以上、650℃以下の温度で1時間以上30時間以下加熱し、次にクラウンとベーンとの接合部、及びバンドとベーンとの接合部の少なくとも一部にNi,Cr,Coの内少なくとも1種類を含む金属とタングステン炭化物とを含む第2の皮膜を被覆することを特徴とする水車の製造方法。
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