JP3271363B2 - 軸受装置、その軸受装置を備えた排水ポンプ及び水車、並びに軸受装置の製造方法 - Google Patents

軸受装置、その軸受装置を備えた排水ポンプ及び水車、並びに軸受装置の製造方法

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JP3271363B2
JP3271363B2 JP08113693A JP8113693A JP3271363B2 JP 3271363 B2 JP3271363 B2 JP 3271363B2 JP 08113693 A JP08113693 A JP 08113693A JP 8113693 A JP8113693 A JP 8113693A JP 3271363 B2 JP3271363 B2 JP 3271363B2
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    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16CSHAFTS; FLEXIBLE SHAFTS; ELEMENTS OR CRANKSHAFT MECHANISMS; ROTARY BODIES OTHER THAN GEARING ELEMENTS; BEARINGS
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    • F16C2300/30Application independent of particular apparatuses related to direction with respect to gravity
    • F16C2300/34Vertical, e.g. bearings for supporting a vertical shaft

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は排水ポンプ及び水車に係
り、特に軸受部に清浄水を供給することなく運転するポ
ンプ及び水車に適した耐摩耗性と高い信頼性、及び組立
て性に優れた軸受装置、その軸受装置を用いた排水ポン
プ及び水車とその軸受部の製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】近年の急激な都市化に伴い、降雨水量の
ほとんどが排水溝に流れ込むため排水が追いつかず、道
路に溢れだす都市型洪水が増加する傾向にある。これに
対処すべく排水ポンプシステムを装備した排水機場が設
けられているが、排水機場の増加に伴い運転維持管理費
が増大するという問題があり、自動運転による排水ポン
プシステムが検討されている。この排水ポンプシステム
の課題は高性能化、高信頼性化であり、現在、これらに
対応する技術として、ポンプの無給水運転技術、大容量
化、及び先行待機運転が検討されている。
【0003】無給水運転技術とは、軸受、スリーブ間に
清浄水を供給することなく運転するものである。清浄水
の供給装置がないため、清浄水供給装置、清浄水供用セ
ンサー等の故障による誤動作がなく信頼性が高い。無給
水運転技術を可能とするためには、排水に含まれる土砂
が進入しても摩耗しない軸受装置が必要である。
【0004】従来の無給水ポンプ用軸受装置には、耐摩
耗性、耐食性に優れるタングステンカ−バイド(以下、
WCと称する)製スリーブ(焼結体)とセラミックス製軸
受(焼結体)との組合せが用いられてきた。WC製スリー
ブとセラミックス製軸受との組合せ構造に関しては、特
開昭60−81517号公報、特開昭60−88215
号公報に開示されている。
【0005】一方、ポンプの大容量化は必然的に軸受の
大口径化を必要とする。しかしながら、従来のWCスリ
ーブとセラミックス軸受との組合せによる軸受装置のま
までは、大口径の焼結体スリーブ、焼結体軸受が必要と
なる。しかしながら、焼結技術が十分に対応できない、
さらに部品重量が大きくなり組立て作業が難しくなると
いう問題があった。そのため、セラミックスと同等の硬
さを有する皮膜を被覆する硬質膜コーティング技術が広
く検討されている。尚、硬質膜として溶射膜を利用した
例として、WC溶射膜を被覆したスリーブとセラミック
ス軸受との組合せを用いた無給水排水ポンプが、「トラ
イボロジスト」、第36巻、第2号の144頁から14
7頁に明示されている。
【0006】水車用軸受も、排水ポンプ用軸受と同様に
土砂水に対する耐摩耗性が求められている。この点を考
慮し、従来の水車用軸受には、炭化珪素(以下、SiC
と称する)等のセラミックを用いられてきた。
【0007】多くの場合、排水ポンプ軸受部には硬質被
膜として溶射膜が利用される。しかし、溶射膜は同組成
の焼結体よりも硬度、強度の点で劣るため、溶射膜の硬
度、強度を上げる方法が検討されている。例えば、50
%Cr−50%Niからなるプラズマ溶射膜を、溶射し
た後、約700℃〜800℃の温度で約1〜100時間
保持し、溶射膜の接着力と強度を高める技術が特開昭5
7−2872号公報に開示されている。又、ニッケル−
リン(NiP)を主成分とし20〜80%のNiCrの
溶射膜をFe系材料の上に形成し、600℃〜1000
℃の温度で熱処理を行い、溶射膜の強度を高める方法が
特開昭60−149762号公報に開示されている。
【0008】水車用軸受の場合口径が大きく、現在は分
割セラミックを配置する形式を採っており、排水ポンプ
軸受同様、硬質皮膜による構成が望まれている。WC溶
射膜と炭化クロム(以下、Cr32と称する)溶射膜と
を用いた水車用軸受装置が「タ−ボ機械」、第26回講
演会概要集(1991年5月)の80頁から85頁に記
載されている。
【0009】先行待機運転とは、排水開始前に排水可能
水位より低い水位状態で空転運転をすることであり、排
水可能水位に達した時点で全力運転が可能で、急激な排
水増加にすばやく対応できる。しかし、先行待機運転を
行うには、軸受は短時間ながら摺動部に排水を含まない
空転運転を行うため、軸受、スリーブ間の摩擦係数が極
めて低く、ドライ摺動によっても損傷しないことが求め
られる。
【0010】長時間の空転運転を行う先行待機運転と、
無給水運転を両立する軸受はいまだ開発されておらず、
空転運転時に軸受摺動部に外部より給水する方法が検討
され、特開昭55−90718号公報に開示されてい
る。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】土砂を含む水を排水す
るためには、軸受の耐摩耗性は不可欠である。無給水軸
受の場合は軸受、スリーブを保護する清浄水の供給がな
いため、スラリーに対する耐摩耗性は特に重要である。
土砂水に含まれる土砂粒子のほとんどが長石と石英であ
り、最高硬さがビッカース硬度(以下、Hvと称する)
1000程度(石英)である。従って、軸受、スリーブ
に必要とされる硬度はHv1000以上である。
【0012】WC,SiC,窒化珪素(以下、Si34
と称する)の焼結体であれば、その硬度はWCがHv約
1400,SiCが約2800、Si34が約1600
といずれもHv1000以上であり、硬度の点では十分
で耐摩耗性も優れている。しかし、焼結技術、組立て作
業性、製造コストを考慮すると、スリーブ、軸受の全体
をWC,SiC又はSi34の焼結体で製作するのには
大きさに限界がある。そこで、上記のごとく焼結体に替
わる硬質被膜を用いることが検討されている。摩耗量を
考慮すれば、膜厚は数100μm以上必要であるため、
硬質被膜の製法が限られる。排水ポンプ軸受部用の硬質
被膜としては、比較的膜厚が得られ、高硬度の得られる
WC,Cr32を主成分とする膜厚100〜200μm
程度の溶射膜が広く用いられている。しかし、溶射法で
形成したWC,Cr32を主成分とする溶射膜は、材
質、形成法、条件にもよるが一般に焼結体に比べ硬度が
低く、約Hv600〜1000程度である。
【0013】従来の各種溶射膜の硬度と土砂水に対する
耐摩耗性との関係を図21で説明する。図21は、実施
例において説明する要素試験によって測定した摩耗率で
ある。各種溶射膜はステンレス鋼(以下、SUSと称す
る)板の上に形成した各種溶射膜を回転側試験片に用
い、固定側試験片にはα−SiCを用いた。その他の試
験条件は、面圧が2kg/cm2、周速が0.5m/
s、土砂水に含まれる珪砂濃度が9wt%である。尚、
試験片形状や摺動方式などの詳細は、実施例に示した図
19の試験条件と同様である。
【0014】図21の横軸は溶射膜の断面ビッカース硬
度であり、縦軸はWC−12%Co焼結体の摩耗率を基
準として規格化した相対摩耗率である。溶射膜1、溶射
膜2、溶射膜3は、高速フレーム溶射法及び爆発溶射法
で作成した、WC、若しくはCr32を主成分とする従
来の溶射膜である。図21に示すように、土砂水に対す
る耐摩耗性は、溶射膜の硬度に強く依存し、前述のごと
くビッカース硬度で1000以上が良好である。図21
の結果からは、現状の溶射膜では十分な硬度と土砂水に
対する耐摩耗性が得られないことが分かる。
【0015】一般に溶射とは、WC粒子、Cr32粒子
のような硬質粒子だけを加熱して吹き付けるのではな
く、結合材としてNi、Cr、Co等の金属粒子をまぜ
同時に加熱して吹き付け、溶解した金属粒子によってW
C粒子、Cr32粒子を連結して被膜を形成するもので
ある。溶射膜の硬度が焼結体よりも低いのは、溶射膜中
のWC粒子やCr32粒子の硬度が低いのではなく、W
C粒子、Cr32粒子をつなぐ結合材に空孔等の欠陥が
あるため、或いは結合材とWC粒子、Cr32粒子との
結合力が不十分なためである。
【0016】WC粒子、Cr32粒子間の結合力を増す
ために、様々な溶射法の改善がなされている。例えば溶
射粒子の速度を増した、可燃性ガスの燃焼エネルギを利
用した高速フレーム溶射、可燃性ガスの爆発を利用した
爆発溶射などが開発されており、従来のプラズマ溶射膜
よりも溶射時の粒子速度を高め、より高硬度の溶射膜を
形成することができる。しかしながら、これらの各溶射
法による溶射膜でも土砂水に対する耐摩耗性は充分では
なく、その硬度が低いためであることが図18に示した
要素試験で明らかとなっている。
【0017】前記従来技術、特開昭60−81517号
公報及び特開昭60−88215号公報に開示のセラミ
ック軸受には、軸受、スリーブが大口径化することによ
って生じる、焼結技術の困難、信頼性の低下、重量増加
による組立て性の低下についての検討が加えられていな
い。
【0018】前記従来技術、WC溶射膜とセラミックス
軸受(焼結体)との組合せを用いた無給水排水ポンプ(「ト
ライボロジスト」、第36巻、第2号)、及びWC溶射膜
とCr32溶射膜とを用いた水車用軸受構造(「タ−ボ機
械」、第26回講演会概要集)については、WC、或い
はCr32を主成分とする溶射膜の硬度、耐摩耗性、信
頼性についての検討が加えられていない。
【0019】前記従来技術、特開昭57−2872号公
報及び特開昭60−149762号公報に開示の溶射膜
の改質方法では、主な母材材料であるFe系材料と熱膨
張率の近い材料、或いは加熱によって変質の無い材料に
限られ、高硬度が得られるWC、或いはCr32を主成
分とする溶射膜においては、加熱温度が高いため熱膨張
差が大きくなる。その結果被膜が破断しそのままの利用
は難しい。更に、ポンプ等の水中で使用する機器では、
主材料はSUSに限定される。従って、前記従来技術に
示した加熱による溶射膜の改質を適用した場合、加熱温
度が下地のSUSの焼きなまし温度、もしくは粒界腐食
に対する鋭敏化温度以上の高温となり、下地の硬度、耐
食性が低下し、結果として信頼性が低くなるという問題
がある。
【0020】即ち、前記従来技術においてはFe系材料
と熱膨張率差の大きいWCを主成分とする溶射膜の改質
についての検討がなされていない。更に、下地材料の硬
度、耐食性変化についての考慮がなされていない。
【0021】前記従来技術、55−90718号公報に
開示されている、軸受摺動部に外部より給水する方法で
は、外部給水装置の誤動作によって排水機場の停止が発
生し、緊急時に排水が停止する可能性があり、信頼性に
問題があった。
【0022】本発明は、前記従来技術に鑑みなされたも
のであり、排水ポンプシステム及び水車に適用可能な、
耐摩耗性と組立て性に優れ、信頼性が高い軸受装置、そ
の軸受装置を用いた排水ポンプ及び水車と軸受装置の製
造方法を提供することを目的とする。
【0023】
【課題を解決するための手段】本発明は、前記課題であ
る軸受装置の摺動面に被覆した溶射膜の耐摩耗性を向上
させるため、WC又はCr32を主成分とする溶射膜の
溶射後に、熱応力によって溶射膜の接着力が低下せず、
溶射膜が変質せず、更に下地のSUSの硬度が極端に低
下しない、さらに粒界腐食に対する鋭敏化が生じない温
度条件で加熱することにより達成される。
【0024】本発明の軸受装置は、軸受及びこの軸受と
摺動するスリ−ブとを備えた軸受装置に用いる軸受及び
スリ−ブのいずれか一方若しくは両方の摺動面に次のよ
うな溶射膜を被覆するものである。被覆する溶射膜はW
Cを主成分としてNi、Cr又はCoのいずれか1つ若
しくは複数を結合材とするもの又はCr32を主成分と
してNiとCrを結合材とする溶射膜を被覆するもので
あって、溶射膜の表面に形成される20μm以上の大き
さの空孔の密度が15個/mm2以下のものである。
【0025】さらに、被覆された溶射膜は、被覆後30
0℃以上550℃以下の温度で1時間以上加熱され、被
膜硬さがビッカース硬さで1000以上に改善され、土
砂水に対する十分な耐摩耗性を発揮するものである。
【0026】又溶射膜を被覆する軸受、スリ−ブの材質
はFe系金属であれば良いが、望ましくはステンレス鋼
が良い。
【0027】又軸受又はスリ−ブのいずれか一方を上記
の溶射膜を被覆したものとした場合、他方は摺動面にS
iC若しくはSi34を配したものか、全体がSiC若
しくはSi34からなるものでもよい。
【0028】又、スリ−ブ若しくは軸受は2個以上に分
割しても良い。
【0029】本発明の排水ポンプ又は水車は上記いずれ
かの特徴を持つ軸受装置を備える。
【0030】更に本発明の軸受部材は、所定形状に加工
したステンレス鋼製軸受部材の摺動部にWCを主成分と
して結合材にNi、Cr又はCOのいずれか1つ若しく
は複数を含む溶射膜又はCr32を主成分として結合材
にNiとCrを含む溶射膜を形成した後、300℃以上
550℃以下の温度で1時間以上加熱し、その後所定の
寸法に仕上加工することにより製造する。
【0031】
【作用】一般に、WC、Cr32を主成分とする溶射膜
を加熱すると、被膜の硬度を増す役割の歪が消失し硬度
が低下すると言われていた。又、Fe系材料(本発明の
実施例ではSUS403)を下地材料としその上に熱膨
張率の小さいWC又はCr32を主成分とする溶射膜を
被覆した場合、両者の熱膨張率差のため、膜形成後に加
熱すると熱応力による被膜接着力の低下、更に加熱によ
るWC粒子又はCr32粒子の酸化が生じ溶射膜の特性
が低下すると考えられてきた。このため、WC又はCr
32を主成分とする溶射膜の、溶射後の加熱は望ましい
とは考えられていなかった。しかし、加熱条件を選べ
ば、溶射膜に悪影響を与えることなく硬度を増すことが
できる。例えば、300℃以上550℃以下の温度で1
時間以上加熱しすることで溶射膜硬さが増し、土砂水に
対して十分な耐摩耗性を示す。その機構及び検討結果の
詳細は、実施例で説明する。
【0032】溶射膜に空孔が存在すると、溶射膜自体の
強度も減り、且つWC粒子、或いはCr32粒子間の結
合力も低下するため、摺動中にWC粒子、或いはCr3
2粒子が脱落し、耐摩耗性を低下させる原因となる。
しかし、空孔を消滅させるために膜形成後に高温で加熱
すると、前述のごとく結合材粒子、WC粒子又はCr3
2粒子の酸化、溶射膜の接着力の低下、及び下他材料
の硬度、耐食性低下が生じ、結果的には信頼性を低下さ
せる原因となる。しかし本発明によれば、WC又はCr
32溶射膜の酸化、熱応力による膜接着力の低下、及び
下他材料の硬度、耐食性低下が生じないような低温度で
も、温度及び加熱時間を適切に選定すれば溶射膜の空孔
が減り、且つ空孔の大きさが小さくなり、溶射膜の硬度
が増すことが明らかとなった。
【0033】特に、本発明の条件で加熱すると、結合材
粒子、WC粒子又はCr32粒子の最大粒子径を超える
20μm以上の大きな空孔が減少することが判明した。
20μm以上の大きな空孔はWC粒子又はCr32粒子
の脱落を生じさせる直接的な原因となる。従って20μ
m以上の大きな空孔の減少は、溶射膜の強度を向上させ
るように作用する。更に20μm以上の大きな空孔が減
ると、被膜に延性が付与されて、衝撃に対する抵抗力が
増し、被膜の破壊、剥離が減少し、被膜の信頼性が増
す。
【0034】また、空孔は、溶射膜の腐食発生点となる
ため、空孔を減らすことによってWC粒子間が緻密にな
り、粒子間に生じる腐食が抑制され、排水に対する耐食
性が増す。
【0035】また、本発明の排水ポンプを先行待機運転
用として用いても無潤滑状態での運転も可能な軸受装置
を用いているため十分な信頼性を有する。
【0036】更に、スリーブ又は軸受を分割構造とする
ことにより、製作が容易となり特に大径のものにおいて
効果が大きい。
【0037】
【実施例】本発明の実施例を図1〜図20用いて説明す
る。
【0038】図1は本発明の一実施例の排水ポンプの構
造を示す縦断面図である。通常、排水ポンプには、イン
ペラ近くと、上部との2個所に軸受が設けられている。
本実施例の軸受装置は、両方の軸受に適用できるもので
ある。図1において、1は主軸、2は主軸に取り付けら
れているスリーブであり、3は軸受である。本実施例に
おいては主軸1、スリ−ブ2及び軸受3ともにSUS4
03を用いた。
【0039】又、本ポンプにはケーシングの排水吸込み
口に、パイプが設置されており、一端はケーシングのリ
ブに支持され、他端は排水機場の床に支持され、大気に
開口している。
【0040】本ポンプでは排水水位が低い場合、ポンプ
内圧と大気間に圧力差が生じ、上記パイプから空気が排
水中に吸収される。その結果、流水量が減じ、排水面の
渦の発生は加振力を生じ、ポンプ振動の一因となるため
防がねばならない。パイプから空気を吸い込むことによ
り、渦の発生しやすい低水位でも渦の発生が防げるた
め、安定して排水することが可能である。
【0041】更に、水位が十分高くなるとケーシング内
外の圧力差は減じ、自然にパイプからの吸気は止まる。
排水水位によるケーシング中の圧力変化を利用するた
め、外部からの制御を必要とせず、信頼性が高い。
【0042】又、大気側の開口端にバルブを設けること
で、吸気量の制御及びこの機能の取消しも可能である。
【0043】本実施例の軸受装置を、図2及び図3によ
り説明する。◆ 図2は図1に示した排水ポンプの上部に設置された軸受
装置を示す拡大図、図3は図2の摺動部を更に拡大した
断面図である。スリ−ブ及び軸受の製造方法はまず、S
US403でスリーブ基材8及び軸受基材10を機械加
工により形成した後、焼き入れ、焼き戻し熱処理を行
い、SUS403の硬度を高めておく。焼き戻し温度は
約700℃とし、後の溶射膜の改質時にSUS403が
焼き戻し脆性を生じないようにした。熱処理後、軸受3
及びスリーブ基材8の摺動部分にWCを主成分としNi
Crを結合材とする溶射膜11及び9を高速フレーム溶
射で被覆した。溶射膜形成後、400℃に20時間加熱
し保持する熱処理を施し、溶射膜の硬度を高めた。熱処
理後、スリーブ及び軸受は内径、外径を所定寸法、面粗
さに加工した。スリーブ2は回り止め4で主軸1に固定
した。
【0044】軸受3は軸受用バックメタル6に取付け、
軸受用緩衝材5を介し固定部材7で固定した。又、軸受
3には摺動部への土砂の浸入を防止する浸入防止部材1
2を取り付けた。
【0045】本実施例によれば、スリ−ブ基材としてS
US403を用いたため、主軸材料との熱膨張率が一致
し熱応力の発生が防げるとともに、靭性が高いため表面
に被覆した溶射膜を安定して保持できるスリ−ブとする
ことができる。
【0046】又、WC溶射膜に熱処理を施し硬度を増加
させてあるため耐摩耗性が増し、軸受装置の寿命、信頼
性が増す。
【0047】尚、本実施例では、スリ−ブ及び軸受に形
成する溶射膜の材質としてWCを主成分としNiCrを
結合材とする溶射膜について説明したが、WCを主成分
としCoを結合材とする溶射膜若しくはCr32を主成
分としNiCrを結合材とする溶射膜を用いても同様の
効果が得られた。
【0048】本実施例の排水ポンプは、軸受装置が無潤
滑条件下、即ち無給水状態においても安定した摺動性能
を発揮し、給水後の摺動においては更に良好な摺動を行
うことができる。
【0049】又、本実施例の排水ポンプは軸受装置の摺
動部への土砂の浸入を防止する浸入防止部材を配置した
が、排水中に混入した土砂が摺動部に浸入しても、摺動
部には十分な耐摩耗性を備えているため安定した運転が
できる。
【0050】更に、無潤滑状態においても良好な摺動性
能が得られることから、無潤滑と潤滑状態を繰り返す使
用状況、即ち先行待機運転においても信頼性の高い運転
ができる。
【0051】図4は本発明の他の実施例を示すポンプ用
軸受装置の縦断面図である。SUS403のスリーブ基
材8の摺動面にはWCを主成分としCoを結合材とする
溶射膜9を被覆した。又、スリ−ブ2と摺動する軸受1
3はSiCとした。スリ−ブ2は、溶射膜形成後400
℃×20時間の熱処理を施し、溶射膜の硬度を高めた。
その他の構造は図1乃至図3で説明した実施例のものと
同じである。
【0052】本実施例によれば、軸受部の材質が均質で
高硬度の焼結セラミックからなるため軸受装置の寿命、
信頼性が増す。
【0053】尚、本実施例では、スリ−ブに形成する溶
射膜の材質としてWCを主成分としNiCrを結合材と
する溶射膜について説明したが、WCを主成分としCo
を結合材とする溶射膜若しくはCr32を主成分としN
iCrを結合材とする溶射膜を用いても同様の効果が得
られた。
【0054】図5は本発明の他の実施例を示すポンプ用
軸受装置の縦断面図である。本実施例は、先行待機運転
時に、軸受高さまで排水水位が達していない空転運転の
場合に対応できる軸受構造である。なお、本図では全体
構造を示すため、スリ−ブ2の詳細断面構造は図示して
いない。SUS403材製のスリーブ2の摺動面にはW
Cを主成分としNiCr結合材とする溶射膜を被覆し、
溶射膜形成後400℃×20時間の熱処理を施し、溶射
膜の硬度を高めた。又、スリ−ブ2と摺動する軸受13
はSiCとし、バックメタル6に取付け、軸受用緩衝材
5を介して、ケーシングから張り出した固定部材7’に
固定した。さらに、固定部材7’にバッフルプレート1
7を固定した。また、主軸1に回転水槽18を固定し
た。回転水槽18中には水が貯水され、軸受高さまで排
水水位が達していない空転運転でも、軸受摺動部には潤
滑水が存在する構造である。なお、本構造では、回転水
槽18中に土砂が溜りやすいため運転時に摺動部分に土
砂が浸入する場合があるが、熱処理によって硬さを増し
たスリ−ブ摺動面の溶射膜11の耐摩耗性は十分であり
運転に支障はない。
【0055】図6,7は本発明の他の実施例を示すポン
プ用軸受装置のスリ−ブ固定状況及び固定部の断面図で
ある。本実施例では円周方向に4分割したスリ−ブを用
いた。4分割したスリ−ブ2a,2b,2c及び2dは
SUS403からなり軸受との摺動面にCr32を主成
分としNiCrを結合材とする溶射膜を形成した後、4
00℃×20時間の熱処理を施したものである。このス
リ−ブ部品2a,2b,2c,2dはそれぞれ主軸1に
軸方向の2ケ所でボルト14により固定した。その他の
構造は図1乃至図3で説明した実施例のものと同じであ
る。
【0056】軸受部の製造及び組立方法を以下説明す
る。SUS403でスリーブ部品2a,2b,2c及び
2dを作成し、上記軸受製造方法と同様の熱処理を施
す。熱処理後、そのスリーブの摺動面にWCを主成分と
しNiCr若しくはCoを結合材とする溶射膜WCを高
速フレーム溶射で形成する。溶射膜形成後、スリーブを
400℃に加熱し約20時間保持する。熱処理後、主軸
1に固定し所定の寸法に加工する。尚、主軸1への固定
はボルトで十分であるが、接着剤を併用すれば、より信
頼性は増す。
【0057】本実施例では、スリ−ブを分割構造とした
ため、溶射膜の形成作業が容易となるとともに分割した
スリ−ブのそれぞれの重量が一体型のものに比べ約1/
4となり、取扱が容易となる。
【0058】図8は本発明の他の実施例を示すポンプ用
軸受装置の軸受の、一部断面を含む外観図である。本実
施例は軸受の摺動部を分割した摺動部材19を配列、形
成する構造のものである。摺動部材19は、SUS40
3製の基材10に、WCを主成分としNiCr若しくは
Coを結合材とする溶射膜11を高速フレーム溶射で形
成したものであり、溶射膜形成後400℃×20時間の
熱処理を施し、溶射膜の硬度を高めた。摺動部材19
は、緩衝材5を介してバックメタル6に取付け、軸受ケ
ーシング20に配置する。摺動部材19は、固定治具2
1によって軸受ケーシング20に取り付けられている
が、接着剤を併用すれば、より信頼性は増す。
【0059】本実施例では、軸受摺動部が分割構造とな
っているため、溶射膜の形成作業が容易となるととも
に、各々の摺動部材19が緩衝材5を介して固定されて
いるため、片当たりの防止に効果的である。
【0060】従来、WCを主成分とする超硬材料で製作
されていたスリーブが、本発明では、SUSを用いるこ
とができ、大幅な重量低下ができる。さらに超硬材料と
異なり、基材がSUSの場合、ねじ穴加工が可能である
ため、取扱が容易となる。特に、大径の場合スリーブの
重量が増し、本発明が有効である。スリーブの重量低下
に対する本発明の効果を図9にまとめる。図9は、スリ
ーブの外径(以後Dと称する)とスリーブの重量(以後
Wと称する)との相関を示す図である。スリーブ重量W
は、スリーブの外径Dによって変化するため、W/D2
して、基準化する。本発明のスリーブではW/D2が大幅
に低下し、0.05以下を示す。
【0061】図10に別の実施例として本発明の軸受装
置を水車用軸受として用いた水車の断面図を示す。図1
0において、22は水車用主軸、23はスリ−ブ回りど
め、24はWCを主成分としNiCrを結合材として2
7重量%加えた溶射膜(以下、WC−27%NiCr溶
射膜と称する)を被覆した後熱処理を施したSUS40
3製スリ−ブ、25は熱処理済みCr32を主成分とし
NiCrを結合材として25%加えた溶射膜(以下、C
32−25%NiCr溶射膜と称する)を被覆した後
熱処理を施したSUS403製軸受、26はライナ−で
ある。スリ−ブ及び軸受への溶射膜の被覆は高速フレー
ム溶射を用いて行った。熱処理済み溶射膜は、前記要素
試験結果に示すように焼結体と同等の耐摩耗性を有す
る。且つ、大口径化が容易なため、水車に対してはコス
ト低減、軽量化に効果がある。
【0062】上記実施例で用いた軸受の耐摩耗特性を調
べるため、熱処理による溶射膜の硬度変化を要素試験で
調べた。加熱による溶射膜の硬度変化は、加熱温度20
0℃〜600℃、加熱時間1〜30時間の範囲で調べ
た。溶射膜の硬度はマイクロビッカース硬度計で測定
し、ビッカース硬度(以下、Hvと称する)で示した。下
地の影響を避けるため、硬度は溶射膜の断面で測定し、
荷重は300g一定とした。
【0063】図11は上記測定結果の一部であり、WC
−27%NiCr溶射膜を400℃で加熱したときの硬
度変化を示す。横軸は加熱時間、横軸は溶射膜の硬度で
ある。溶射膜は高速フレーム溶射で形成し、膜厚は表面
研磨後で約100μm、下地はSUS403であり、溶
射前に焼き入れ、約700℃での焼き戻しの熱処理を施
してある。尚、硬度の測定値にはバラツキがあるため、
10点の測定を行い、測定値中の最大、最小値をバラツ
キ範囲として線で示し、平均値を○で示した。
【0064】図11に示すように溶射膜の硬度は時間と
共に増加し10〜30時間で最高硬度に達し、その後バ
ラツキはあるがほぼ一定となる。平均硬度の最高値はH
v1014(最大値Hv1065、最小値Hv890)
である。同様の条件で測定したWCを主成分としCoを
バインダーとして12重量%加えた焼結体(以下WC−
12%Co焼結体と称する)の硬度、平均値Hv131
7(最大値Hv1404、最小値Hv1235)には達
しないが、熱処理前の硬度の平均値Hv727(最大値
Hv869、最小値Hv604)に比べ、平均値で約3
4%の増加となり著しく改善されている。
【0065】図12は測定結果の一部であり、図11と
同様WC−27%NiCr溶射膜を500℃で加熱した
ときの硬度変化を示す。尚、試料の形成方法、形状、硬
度の測定方法は図11と全て同様である。溶射膜の硬度
は約1.5時間の加熱でほぼ最高硬さに達する。平均硬
度の最高値はHv1115(最大値Hv1139、最小
値Hv1084)である。熱処理前の硬度に比べ平均値
で約47%の増加であり、ほぼWC−12%Co焼結体
に等しい。
【0066】図13も測定結果の一部であり、WCを主
成分としCoを結合材として12重量%加えた溶射膜
(以下WC−12%Co溶射膜と称する)を400℃で
加熱したときの硬度変化を示す。WC−12%Co溶射
膜も、上記の図11及び12の各試料と同様の高速フレ
ーム溶射で形成し、膜厚は表面研磨後で約100μm、
下地は熱処理済みのSUS403である。試料の形状、
硬度の測定方法も、上記図11及び12と同様である。
WC−12%Co溶射膜の場合、硬度は時間と共に増加
し10〜20時間で最高硬さに達し、25時間でわずか
に低下する。最高硬度は、平均値でHv946(最大値
Hv1149、最小値Hv792)である。熱処理前の
硬度、平均値Hv584(最大値Hv652、最小値H
v490)に比べ、平均値で約62%の増加である。
又、500℃で加熱した場合も、ほぼ、WC−27%N
iCr溶射膜の場合と同様の硬度変化を示し、約1時間
の加熱により最高硬度に達した。
【0067】図14も測定結果の一部であり、Cr32
−25%NiCr溶射膜を400℃で加熱したときの硬
度変化を示す。Cr32−25%NiCr溶射膜も、上
記の図11、12及び13の測定に用いた各試料と同様
の高速フレーム溶射で形成し、膜厚は表面研磨後で約1
00μm、下地は熱処理済みのSUS403である。試
料の形状、硬度の測定方法も、上記図11、12及び1
3と同様である。Cr32−25%NiCr溶射膜の場
合、硬度は時間と共に徐々に増加する。加熱時間25時
間における平均硬度の最高値はHv958(最大値Hv
1043、最小値Hv905)である。熱処理前の硬
度、平均値Hv791(最大値Hv817、最小値Hv
744)に比べ、平均値で約21%の増加であり、WC
−27%NiCr溶射膜、WC−12%Co溶射膜ほど
顕著には増加しない。又、500℃で加熱した場合も、
400℃加熱のように硬度は時間と共に徐々に増加する
がその割合はより大きい。
【0068】以上、WC−27%NiCr溶射膜、WC
−12%Co溶射膜及びCr32−25%NiCr溶射
膜は400〜500℃の加熱によって、その硬度が著し
く改善され、ほぼWC−12%Coの焼結体の硬度に等
しい値となる。400℃〜500℃の加熱によって、溶
射膜中のWC粒子又はCr32粒子と結合材の結合力が
増し、ほぼ焼結体に等しくなったと考えられる。
【0069】加熱温度200℃〜600℃、加熱時間1
〜30時間の範囲で調べた結果を以下にまとめる。加熱
温度を300℃以下とすると溶射膜の硬度は増加するも
のの、その増加率は極めて小さく工業的には利用が難し
い。従って、熱処理温度としては、300℃以上、望ま
しくは350℃以上が良い。しかし、ポンプに用いるF
e系材料は、熱膨張率が約12〜17×10~6/℃であ
り、WC若しくはCr32系溶射膜は熱膨張率が約5〜
7×10~6/℃であるため、加熱温度を高くし過ぎると
溶射膜と下地との熱膨張率の差のため、熱応力が発生し
被膜の接着力を低下させ、極端な場合、被膜の剥離を生
じる。更に大気中で熱処理をする場合、溶射膜の酸化が
生じ耐摩耗性を低下させる。従って、WC若しくはCr
32系の溶射膜を用いるかぎり、熱処理温度は550℃
以下、望ましくは500℃以下が良い。尚、溶射膜の加
熱は酸化を防ぐためには不活性ガス中若しくは真空中で
の加熱が望ましい。
【0070】図15に約200μmの厚さに溶射したW
C−27%NiCr溶射膜を400℃で加熱したのち溶
射膜を約100μmの厚さまで表面研磨し、さらに加熱
を行い、再び鏡面状態まで研磨したときの金属組織写真
を示す。最終的な膜厚は、約90μmである。(A)が
未処理の溶射膜の写真、(B)が10時間加熱した溶射
膜の写真、(C)が20時間加熱した溶射膜の写真であ
り、倍率は全て100倍である。
【0071】エッチングをせずに観察しているため、W
C粒子と結合材NiCrとの差は観察できず、全て白色
の下地として観察される。点在して黒く見える部分が空
孔である。(A)、(B)及び(C)を比較すると、熱
処理時間とともに空孔数が減り、大きさも小さくなって
いる。試験に用いた試料はSUS403の板(26mm
×26mm)の上に形成した溶射膜から切り分けたもの
であるため、空孔数の差は、溶射条件によって生じたの
ではなく、熱処理によって空孔が減少したものである。
尚、WC−12%Co溶射膜又はCr32−25%Ni
Cr溶射膜でも同様の現象が認められた。
【0072】図16にWC−27%NiCr溶射膜を4
00℃で加熱したときの、加熱時間と表面に観察される
20μm以上の大きさの空孔の密度の関係を示す。尚、
表面の空孔の観察方法は、上記図15の方法と同様であ
る。一方、WC−27%NiCr溶射膜の組織を走査型
電子顕微鏡で観察したところ、WC粒子、及びNiCr
結合材粒子の平均粒子径は約10μm程度であり、最大
でも20μm以下である。従って、空孔も数μm以下で
あればWC粒子の脱落には影響が少ない。しかし、20
μm以上になるとWC粒子の脱落を生じ、溶射膜の強度
を低下させる直接的原因となる。そこで、今回の空孔の
測定では、粒子径20μm以上のもののみを測定した。
以後は、空孔と表記する場合、全て20μm以上の空孔
のこととする。
【0073】図16に示すように、加熱温度400℃の
場合、15時間以上加熱すると空孔の数は急激に減少す
る。この空孔密度の変化は図7に示した硬度の変化と一
致する。即ち、加熱による溶射膜の硬度の変化は、溶射
膜中の空孔密度に起因するものと考えられる。
【0074】図12と16に示した加熱時間による硬度
変化と空孔密度変化とから、空孔密度と硬度との関係を
求め、図17に示す。空孔密度が30個/mm2以下に
なると硬度が増加し始め、15個/mm2以下でポンプ
軸受部に望ましい硬度となる。従って、ポンプ軸受部に
配する溶射膜としては、表面に存在する20μm以上の
大きさの空孔密度が、15個/mm2以下、望ましくは
10個/mm2以下である。尚、WC−12%Co溶射
膜、Cr32−25%NiCr溶射膜でも同様の現象が
認められた。
【0075】熱処理済み溶射膜を用いた軸受及びスリー
ブの、土砂水に対する耐摩耗性を調べるため以下の要素
試験を行った。その方法と結果の一部を図18、19を
用いて説明する。図18は試験片の形状と摺動方法を示
す。(A)に示す回転側試験片15と(B)に示す固定
側試験片16を土砂水を想定した、珪砂を含んだ水中に
浸漬し、(C)に示すように回転側試験片を回転させ所
定の面圧を負荷して摺動させる。所定時間の摺動後、両
試料の摩耗量を測定した。摩耗量の測定は、回転側試験
片15は試験前後の試験片厚さ、固定側試験片16では
試験前後の表面形状を表面粗さ計で測定して求めた。検
討した条件範囲は、面圧が1〜10kg/cm2、周速
が約0.5〜5m/s、珪砂濃度が0.1〜10wt%
である。尚、珪砂自体が摩耗される影響を減らすため
3.6km摺動ごとに土砂水をかえ、更に両試験片の間
に珪砂が噛み込みやすいように土砂水を替えるたび両試
験片の間に珪砂をはさみ込み摺動試験を繰り返した。
【0076】図19は、熱処理済み溶射膜の耐摩耗性を
上記試験によって調べた結果の一部である。横軸は摺動
距離、縦軸は回転側試験片の平均摩耗量である。固定側
試験片はα−SiC、回転側試験片はWC−27%Ni
Cr溶射膜であり、膜厚が約100μm、下地は焼入
れ、焼戻し熱処理を施したSUS403である。溶射膜
の熱処理条件は、図12の結果を参考にし400℃×2
0時間とした。比較材料として、WC−12%Co焼結
体と未処理のWC−27%NiCr溶射膜を回転側試験
片として同様の条件で試験した。その他の試験条件は面
圧が2kg/cm2、周速が0.5m/s、珪砂濃度が
9wt%である。
【0077】図19において、-▲-で示す(1)のライ
ンが本発明の軸受部材である熱処理済WC−27%Ni
Cr溶射膜の摩耗量変化、-○-で示す(2)のラインが
比較材料である従来の軸受部材であるWC−12%Co
焼結体の摩耗量変化、-△-で示す(3)のラインが比較
材料である未熱処理のWC−27%NiCr溶射膜の摩
耗量変化である。未熱処理のWC−27%NiCr溶射
膜の摩耗率は、WC−12%Co焼結体に比べて約3倍
の値を示すのに対し、熱処理済WC−27%NiCr溶
射膜はほぼ同等の摩耗率を示す。即ち、400℃×20
時間の熱処理によって、WC−27%NiCr溶射膜の
土砂水に対する摩耗量は約1/3に減少した。この摩耗
量の低下は、図12に示した溶射膜の熱処理による硬度
の増加に起因すると考えられる。図21で示した溶射膜
の硬度と摩耗率との関係からも、上記熱処理済み溶射膜
の耐摩耗性は妥当な値である。又、図19には示さない
が、400℃×20時間の熱処理を施したWC−27%
NiCr溶射膜とSi34との組み合わせも良好な耐摩
耗性を示す。固定側試験片に用いたSi34はSiC以
上に優れた耐摩耗性を示した。
【0078】同様の試験によると、WC−12%Co溶
射膜も同様の熱処理によって向上の効果を示す。しかし
WC−12%Co溶射膜の場合、WC−27%NiCr
溶射膜ほど硬度が増さないために、WC−12%Co焼
結体や熱処理済みWC−27%NiCr溶射膜の耐摩耗
性に及ばない。更に、結合材のCoがNiCrに比べ耐
食性に劣るため、腐食による摩耗が生じる可能性があ
る。本条件の熱処理済WC−12%Co溶射膜では、表
面の空孔密度が減るため、Co結合材でも腐食摩耗に対
する耐摩耗性が向上する。しかし、それでも海水のよう
な塩分を含む排水に対する耐食性は十分でない。従っ
て、使用環境によってはWC−12%Co溶射膜を用い
た軸受は用いることができない。
【0079】同様の試験によると、Cr32−25%N
iCr溶射膜も耐摩耗性が向上する。しかし、WC−2
7%NiCr溶射膜、WC−12%Co溶射膜ほど顕著
な耐摩耗性の向上はない。これは、Cr32−25%N
iCr溶射膜自体の硬度が本質的にWC−27%NiC
r溶射膜、WC−12%Co溶射膜ほど高くないため
に、熱処理を施しても効果が小さいためである。
【0080】上記図19の結果と、固定側と回転側の両
試験片に熱処理済みWC−27%NiCr溶射膜を用い
た場合及び回転側試験片に熱処理済みWC−27%Ni
Cr溶射膜、固定側試験片に熱処理済みCr32−25
%NiCr溶射膜を用いた場合の結果を合わせて、各々
の摩耗率を図20にまとめて示す。
【0081】図20は固定側と回転側両試験片の試験時
間60時間における摩耗率を表示したものである。試験
条件は図19の試験と同様である。尚、縦軸の相対摩耗
率とは、WC−12%Co焼結体とα−SiCとの組合
せである(A)の、回転側、固定側各々の試験片の摩耗
率を基準1.0とし、各試料の摩耗率を相対値として示
した値である。又、棒グラフにおいて、斜線の入ってい
る側が回転側試験片の摩耗率であり、無い側が固定側試
験片の摩耗率である。
【0082】組合せ(A)は、WC−12%Co焼結体
とα−SiCとの組合せであり、図19の曲線(2)の
結果である。(B)は、図19の曲線(3)に示した未
熱処理のWC−27%NiCr溶射膜とα−SiCとの
組合せ結果である。(C)は、図19の曲線(1)に示
した本発明の軸受部材である熱処理済みWC−27%N
iCr溶射膜とα−SiCとの組合せ結果である。
(D)は、本発明の軸受部材である熱処理済みWC−2
7%NiCr溶射膜と熱処理済みWC−27%NiCr
溶射膜との組合せ結果、(E)は熱処理済みWC−27
%NiCr溶射膜と熱処理済みCr32−25%NiC
r溶射膜との組合せ結果である。尚、溶射膜の熱処理条
件は、全て400℃×20時間である。
【0083】図19で説明したように、(C)の組み合
わせは、固定側、回転側の両試験片とも、組合せ(A)
即ちWC−12%Co焼結体とα−SiCとの組合せと
ほぼ同等の耐摩耗性を示す。 固定側と回転側の両試験
片に熱処理済みWC−27%NiCr溶射膜を用いた
(D)の組合わせにおいても、回転側、固定側試験片は
WC−12%Co焼結体とほぼ同等の耐摩耗性を示し
た。
【0084】固定側試験片の熱処理済みWC−27%N
iCr溶射膜は、α−SiC以上の優れた耐摩耗性を示
した。α−SiCの硬度は平均値Hv2704(最大値
Hv2874、最小値Hv2591)であり、熱処理済
みWC−27%NiCr溶射膜よりもはるかに高い。そ
れにもかかわらずWC−27%NiCr溶射膜がα−S
iCよりも優れた耐摩耗性を示した原因は、両者の延
性、すなわち破壊靱性の差によると考えられる。α−S
iCの破壊靱性は約3.9(MN/m・√m)であり、
熱処理済みWC−27%NiCr溶射膜の約13(MN
/m・√m)に及ばない。熱処理済みWC−27%Ni
Cr溶射膜の優れた破壊靱性が、硬度以上に耐摩耗性に
影響し、上記の優れた耐摩耗性を示したものと考えられ
る。尚、上記破壊靱性は、ビッカース圧痕法によって測
定したものである。
【0085】回転側試験片に熱処理済みWC−27%N
iCr溶射膜、固定側試験片に熱処理済みCr32−2
5%NiCr溶射膜を用いた(E)の組み合わせは、回
転側試験片の相対摩耗率は(C)、(D)の組み合わせ
とほぼ同等の結果を示した。しかし、固定側試験片の熱
処理済みCr32−25%NiCr溶射膜の摩耗率は、
α−SiCや熱処理済みWC−27%NiCr溶射膜よ
り高い値を示した。これは、図14に示したように、熱
処理を施してもCr32−25%NiCr溶射膜の硬度
が大幅に増加しないためと考えられる。しかし、排水の
温度が高い条件では、Cr32−25%NiCr溶射膜
はWC−27%NiCr溶射膜と同等、或いはそれ以上
の耐摩耗性を示した。これは、Cr32−25%NiC
r溶射膜が高温での硬度低下が少ないためと考えられ
る。従って、使用環境によっては、熱処理済みWC−2
7%NiCr溶射膜と熱処理済みCr32−25%Ni
Cr溶射膜の組み合わせが良好となる。
【0086】以上の結果を以下にまとめる。
【0087】熱処理済みWC−27%NiCr溶射膜を
スリーブに用い、SiC若しくはSi34軸受と組み合
わせた場合、良好な耐摩耗性、摺動特性が得られる。こ
の場合、SiCやSi34は、圧縮応力を加えると強度
が増すため、焼きばめによりバックメタルで支持する構
造の軸受側に用いる方が良い。熱処理済みWC−27%
NiCr溶射膜をスリーブ、軸受の両方に用いた場合、
全般的に優れた耐摩耗性、摺動特性を示す。この場合、
Coを結合材とするWC溶射膜でも同様に優れた耐摩耗
性が得られるが、排水に塩分が含まれる場合、腐食のた
め使用は難しい。熱処理済みWC−27%NiCr溶射
膜と熱処理済みCr32−25%NiCr溶射膜をスリ
ーブ及び軸受に用いた場合、熱処理済みWC−27%N
iCr溶射膜同しの組み合わせほど優れた耐摩耗性は得
られない。しかし排水温度の高い場合は、より優れた特
性を示す。この場合、スリーブ、軸受のどちらにWC−
27%NiCr溶射膜を配しても良く、特性に対して影
響はない。
【0088】従って、本発明の軸受構造はスリーブ及び
軸受の摺動面の耐摩耗性が軸受にWC−12%Co焼結
体を用いたものとほぼ同等であり、且つスリーブ及び軸
受の部品重量が少ないため組立て性が優れる。又、スリ
ーブ及び軸受の靱性が高いため衝撃による破壊の発生が
なく信頼性が高くなる。このため、本発明の軸受構造を
用いた回転機械、例えばポンプ、水車等は信頼性が高く
なる。
【0089】上記各実施例では、溶射膜形成法としては
高速フレーム溶射を用いたが、爆発溶射、減圧プラズマ
溶射、レーザ溶射、プラズマ溶射であってもよく、その
製法に制限されるものではない。尚、熱処理前の硬度は
高い方が望ましく、高硬度の溶射膜が形成できる高速フ
レーム溶射、爆発溶射が望ましい。
【0090】又、上記各実施例ではスリ−ブ基材及び軸
受基材の材料としてSUS403を用いたが、水中で使
用できる材料であればよい。尚、WC又はCr32を主
成分とする溶射膜の熱膨張率を考慮すれば、熱膨張率の
大きいSUS304よりもSUS403の方が望まし
い。また、加熱処理によるSUSの耐食性低下を考慮す
れば、炭素含有率の少ないSUS304L、もしくはS
US316Lが望ましい。
【0091】又、上記各実施例では結合材としてNiC
rとCoを用い、その含有率は12wt%,25wt
%,27wt%としたが、溶射膜として特性を満足する
ならば、その含有率を制限するものではない。
【0092】
【発明の効果】本発明によれば、WC若しくはCr32
を主成分とする溶射膜を所定条件で加熱することによ
り、WC粒子、Cr32粒子と結合材との結合力が増
し、その結果溶射膜の空孔が減少して硬度が平均値で約
50〜60%増加し、土砂水に対する耐摩耗性が熱処理
前の約3倍に向上する。この特性はWC−12%Co等
のセラミック焼結体とほぼ同等であり、WC−12%C
o焼結体製スリーブ、軸受に替わり、金属表面に溶射膜
を被覆したスリーブ、軸受を用いることができる。
【0093】その結果、WC、SiC、Si34の焼結
体では製作できなかった大口径の軸受、スリーブが製作
できる。
【0094】更に、口径にかかわらず、軸受、スリーブ
の重量が低減するために、組立て性が大幅に良くなる。
【0095】又、靱性の低いWC、SiC、Si34
焼結体に替わり、ステンレスを基材として使用できる
め、軸受、スリーブの信頼性が増す。従って、この軸受
装置を用いるポンプ及び水車の信頼性が増す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例の排水ポンプ構造を示す断面図
である。
【図2】本発明の実施例の軸受装置を示す一部断面斜視
図である。
【図3】本発明の他の実施例の軸受装置の縦断面図であ
る。
【図4】本発明の他の実施例の軸受装置の縦断面図であ
る。
【図5】本発明の他の実施例の軸受装置の縦断面図であ
る。
【図6】本発明の他の実施例のスリ−ブ構造を示す斜視
図である。
【図7】図5のA−A断面図である。
【図8】本発明の他の実施例の軸受を示す一部断面斜視
図である。
【図9】本発明の他の実施例のスリ−ブの外径Dと重量
W/(外径D)2との相関を示す関係図である。
【図10】本発明の他の実施例の水車構造を示す断面図
である。
【図11】WC−27%NiCr溶射膜の400℃加熱
時の硬度変化を示す図である。
【図12】WC−27%NiCr溶射膜の500℃加熱
時の硬度変化を示す図である。
【図13】WC−12%Co溶射膜の400℃加熱時の
硬度変化を示す図である。
【図14】Cr32−25%NiCr溶射膜の400℃
加熱時の硬度変化を示す図である。
【図15】WC−27%NiCr溶射膜の400℃加熱
時の溶射膜の変化状況を示す金属組織写真である。
【図16】WC−27%NiCr溶射膜の400℃加熱
時の溶射膜表面空孔密度と加熱時間との関係図である。
【図17】WC−27%NiCr溶射膜の400℃加熱
時の溶射膜表面空孔密度と硬度との関係図である。
【図18】摩耗試験片形状と摺動方法を示す図である。
【図19】摩耗試験によるWC−12%Co焼結体、未
熱処理WC−27%NiCr溶射膜と熱処理済みWC−
27%NiCr溶射膜の摺動距離と摩耗量との関係図で
ある。
【図20】熱処理済みWC−27%NiCr溶射膜、熱
処理済みCr32−25%NiCr溶射膜を含む各種材
料組合せの相対摩耗率比較図である。
【図21】従来の各溶射膜の硬度と土砂水に対するWC
−12%Co焼結体を基準とした相対摩耗率を示す図で
ある。
【符号の説明】
1…主軸、2…スリーブ、3…軸受、4…スリーブの回
り止め、5…軸受用緩衝材、6…軸受用バックメタル、
7,7’…固定部材、8…スリーブ基材、9,11…溶
射膜、10…軸受基材、13…セラミック製軸受、14
…分割スリーブ固定ボルト、15,16…摩耗試験片、
17…バッフルプレート、18…回転水槽、19…摺動
部材、20…軸受ケーシング、21…固定治具、22…
水車用主軸、23…スリーブ回り止め、26…ライナ
ー。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大谷 健二 茨城県土浦市神立町603番地 株式会社 日立製作所 土浦工場内 (72)発明者 会沢 宏二 茨城県土浦市神立町502番地 株式会社 日立製作所 機械研究所内 (72)発明者 羽田 光明 茨城県土浦市神立町502番地 株式会社 日立製作所 機械研究所内 (72)発明者 山田 俊宏 茨城県土浦市神立町502番地 株式会社 日立製作所 機械研究所内 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 4/10 F16C 33/12

Claims (15)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】軸受と、前記軸受と摺動するスリ−ブとを
    備えてなる軸受装置において、前記軸受及びスリ−ブの
    少なくともいずれか一方はその摺動面がWCを主成分と
    して結合材にNi、Cr又はCoのいずれか1つ若しく
    は複数を含む溶射膜を被覆した金属製であり、前記溶射
    膜の表面に形成される20μm以上の大きさの空孔の密
    度が15個/mm2以下であることを特徴とする軸受装
    置。
  2. 【請求項2】軸受と、前記軸受と摺動するスリ−ブとを
    備えてなる軸受装置において、前記軸受又はスリ−ブの
    いずれか一方はその摺動面にWCを主成分として結合材
    にNi、Cr又はCoのいずれか1つ若しくは複数を含
    む溶射膜を被覆した金属製であり、他方はSiC若しく
    はSi3N4からなるか、摺動面にWCを主成分として結
    合材にNi、Cr又はCoのいずれか1つ若しくは複数
    を含む溶射膜、Cr3C2を主成分として結合材にNiと
    Crを含む溶射膜、SiC若しくはSi3N4いずれか
    を配した金属製であり、前記溶射膜の表面に形成される
    20μm以上の大きさの空孔の密度が15個/mm2以
    下であることを特徴とする軸受装置。
  3. 【請求項3】軸受と、前記軸受と摺動するスリ−ブとを
    備えてなる軸受装置において、前記軸受及びスリ−ブの
    少なくともいずれか一方はその摺動面がWCを主成分と
    して結合材にNi、Cr又はCoのいずれか1つ若しく
    は複数を含む溶射膜を被覆した金属製であり、該溶射膜
    は、被覆した後300℃以上550℃以下の温度で1時
    間以上加熱され、該溶射膜のビッカース硬さが1000
    以上であることを特徴とする軸受装置。
  4. 【請求項4】軸受と、前記軸受と摺動するスリ−ブとを
    備えてなる軸受装置において、前記スリ−ブの摺動面が
    WCを主成分として結合材にNi、Cr又はCoのいず
    れか1つ若しくは複数を含む溶射膜を被覆した金属製で
    あり、そのkg単位の重量Wと、cm単位の外形Dとの
    比、W/D2が0.05以下であることを特徴とする軸
    受装置。
  5. 【請求項5】内部を排水が流動するケ−シングと、前記
    ケ−シング内で軸受装置により支持されその一部にイン
    ペラを配置し回転する主軸とを備えるものであって、前
    記軸受装置の少なくとも1か所は外部より清浄水を供給
    することなく運転されるものである排水ポンプにおい
    て、前記軸受装置を構成する軸受及びスリ−ブのいずれ
    か一方若しくは両方の摺動面は溶射膜を被覆したもので
    あり、前記溶射膜はその表面に形成される20μm以上
    の大きさの空孔の密度が15個/mm2以下であること
    を特徴とする排水ポンプ。
  6. 【請求項6】内部を排水が流動するケ−シングと、前記
    ケ−シング内で軸受装置により支持されその一部にイン
    ペラを配置し回転する主軸とを備えるものであって、前
    記軸受装置の少なくとも1か所は外部より清浄水を供給
    することなく運転されるものである排水ポンプにおい
    て、前記軸受装置を構成する軸受及びスリ−ブのいずれ
    か一方若しくは両方の摺動面は溶射膜を被覆したもので
    あり、該溶射膜は、被覆した後300℃以上550℃以
    下の温度で1時間以上加熱され、該溶射膜のビッカース
    硬さが1000以上であることを特徴とする排水ポン
    プ。
  7. 【請求項7】内部を排水が流動するケ−シングと、前記
    ケ−シング内で軸受装置により支持されその一部にイン
    ペラを配置し回転する主軸とを備えるものであって、前
    記軸受装置の少なくとも1か所は外部より清浄水を供給
    することなく運転されるものである排水ポンプにおい
    て、前記軸受装置を構成するスリ−ブの摺動面は溶射膜
    を被覆したものであり、そのkg単位の重量Wと、cm
    単位の外形Dとの比、W/D2が0.05以下であるこ
    とを特徴とする排水ポンプ。
  8. 【請求項8】内部を排水が流動するケ−シングと、前記
    ケ−シング内で軸受装置により支持されその一部にイン
    ペラを配置し回転する主軸とを備えるものであって、前
    記軸受装置の少なくとも1か所は外部より清浄水を供給
    することなく運転されるものである排水ポンプにおい
    て、前記軸受装置を構成する軸受及びスリ−ブのいずれ
    か一方若しくは両方の摺動面は溶射膜を被覆したもので
    あり、前記溶射膜はその表面に形成される20μm以上
    の大きさの空孔の密度が15個/mm2以下であり、更
    に前記主軸の外周側で、前記軸受及び軸受固定部材の下
    端面及び外周側を囲むように上部が開口する貯水槽を固
    定したことを特徴とする排水ポンプ。
  9. 【請求項9】内部を流体が流動するケ−シングと、前記
    ケ−シング内で軸受装置により支持されその一部にラン
    ナを配置し回転する主軸とを備えるものであって、前記
    軸受装置の少なくとも1か所は前記流体を供給して運転
    されるものである水車において、前記軸受装置を構成す
    る軸受及びスリ−ブのいずれか一方若しくは両方の摺動
    面は溶射膜を被覆したものであり、前記溶射膜はその表
    面に形成される20μm以上の大きさの空孔の密度が1
    5個/mm2以下であることを特徴とする水車。
  10. 【請求項10】内部を流体が流動するケ−シングと、前
    記ケ−シング内で軸受装置により支持されその一部にラ
    ンナを配置し回転する主軸とを備えるものであって、前
    記軸受装置の少なくとも1か所は前記流体を供給して運
    転されるものである水車において、前記軸受装置を構成
    する軸受及びスリ−ブのいずれか一方若しくは両方の摺
    動面は溶射膜を被覆したものであり、該溶射膜は、被覆
    した後300℃以上550℃以下の温度で1時間以上加
    熱され、該溶射膜のビッカース硬さが1000以上であ
    ることを特徴とする水車。
  11. 【請求項11】内部を流体が流動するケ−シングと、前
    記ケ−シング内で軸受装置により支持されその一部にラ
    ンナを配置し回転する主軸とを備えるものであって、前
    記軸受装置を構成するスリ−ブの摺動面は溶射膜を被覆
    したものであり、そのkg単位の重量Wと、cm単位の
    外形Dとの比、W/D2が0.05以下であることを特
    徴とする水車。
  12. 【請求項12】金属製軸受部材の摺動部にWCを主成分
    として結合材にNi、Cr又はCOのいずれか1つ若し
    くは複数を含む溶射膜を被覆した後、300℃以上55
    0℃以下の温度で1時間以上加熱し、その後所定の寸法
    に仕上加工することを特徴とする軸受部材の製造方法。
  13. 【請求項13】金属製軸受部材の摺動部にCr3C2を主
    成分として結合材にNiとCrを含む射膜を被覆した
    後、300℃以上550℃以下の温度で1時間以上加熱
    し、その後所定の寸法に仕上加工することを特徴とする
    軸受部材の製造方法。
  14. 【請求項14】金属製軸受部材の摺動部にWCを主成分
    として結合材にNi、Cr又はCOのいずれか1つ若し
    くは複数を含む溶射膜を高速フレーム溶射法、爆発溶射
    法、プラズマ溶射法、レーザ溶射法のいずれかの方法に
    より溶射被覆した後、300℃以上550℃以下の温度
    で1時間以上加熱し、その後所定の寸法に仕上加工する
    ことを特徴とする軸受部材の製造方法。
  15. 【請求項15】金属製軸受部材の摺動部にCr3C2を主
    成分として結合材にNiとCrを含む溶射膜を高速フレ
    ーム溶射法、爆発溶射法、プラズマ溶射法、レーザ溶射
    法のいずれかの方法により溶射被覆した後、300℃以
    上550℃以下の温度で1時間以上加熱し、その後所定
    の寸法に仕上加工することを特徴とする軸受部材の製造
    方法。
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