JP2006176866A - 基材の表面処理方法 - Google Patents

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健司 上村
Kazuaki Ikeda
一昭 池田
Satoru Asai
知 浅井
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Abstract

【課題】基材の表面に硼化物を被覆させる際、耐エロージョン性のより一層の強化を図った基材の表面処理方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る基材の表面処理方法は、基材にクロム、アルミニウム、硫黄、窒素、炭素のうち、いずれか少なくとも一つ以上を選択、組み合せて拡散浸透処理を行った後、硼化処理を行う。
【選択図】 図1

Description

本発明は、基材の表面処理方法に係り、特に蒸気タービン部品の表面に硼化処理を行って表面硬さをより一層強化する基材の表面処理方法に関する。
最近の蒸気タービンは、高出力化に伴って使用する蒸気条件も高圧化、高温化になっている。このため、蒸気タービンの構成部品であるタービン翼、特に最も高圧・高温の蒸気に晒されているタービンノズル等の材料も従来のクロム・モリブデン・バナジウム鋼等の鍛造材に代って、耐エロージョン性に優れた高クロム鋼、例えば12クロム鋼の鍛造材が使用されている。
また、蒸気の高圧・高温化に対応して蒸気発生器側のチューブ等の材料も従来のSTPG24等に代って耐酸化性に優れたオーステナイト系ステンレス鋼が使用されている。
ところで、蒸気タービンや蒸気発生器に供給される蒸気や給水には、多くの不純物、例えば溶存酸素等が含まれており、脱酸素等のためにヒドラジン等の化学薬品が投入されている。このため、給水の水質管理が不充分になっていると、シリカ等の溶解固形物が蒸気発生器等に凝縮し、蒸気ドラムやチューブの腐食やスケール生成が助長され、これら固形状の異物がキャリーオーバーし、タービン翼等のタービンノズルやタービン動翼を浸食させていた。
従来、異物により浸食を受け易いタービン構成部品は、タービンノズルやタービン動翼であるが、タービンノズルやタービン動翼の中でも高圧タービンの初段落や中圧タービンの初段落に設置されたものが著しい。
高圧タービンの初段落や中圧タービンの初段落に設置されているタービンノズルやタービン動翼の浸食のメカニズムは、蒸気中に含まれる異物が、タービンノズルのノズル翼を通過する際、環状列に設置されたノズル翼のうち、一方のノズル翼の前縁の腹側に沿って流れる蒸気と隣りのノズル翼の前縁の背側に沿って流れる蒸気とが互いに干渉し合い、干渉後、蒸気の慣性力により後縁の腹側に衝突するとともに、ノズル翼から出た異物がタービン動翼に流入する際、遠心力によって吹き飛ばされてタービン動翼の先端側の前縁に集って浸食が発生すると考えられる。
このように、蒸気中に含まれる異物による浸食に対し、蒸気タービンや蒸気発生器では、給水や缶水の水質管理をきめ細かに行っているが、長い間の運転中に発生するシリカや酸化スケール等の固形状粒子である異物を抑制することが難しい。
このため、耐エロージョン対策として、従来のタービン翼では、翼の母材に硼化物を被覆した、例えば、特公昭61−6242号公報や特開昭49−127004号公報等が提案され、これらの技術によりエロージョンに伴う翼の浸食を抑制していた。
特公昭61−6242号公報 特開昭49−127004号公報
タービン翼の翼母材に硼化処理を行う場合、特公昭61−6242号公報、特開昭49−127004号公報等のものは、いずれも溶融電解法が用いられ、加熱した溶解液、例えば硼砂(Na)単独または硼砂混合(90%Na+10%BC)に翼母材を浴中し、浴母材表面に硼化物としてのFeB等の拡散層を形成させているが、その拡散層自体の厚みを薄くしか形成できないため、長い間に亘って翼を運転させていると、異物により浸食を受け易く、必ずしも十分な成果を上げるに至っていなかった。すなわち、FeBの拡散層が厚く形成できないのは、翼母材自身が高クロム鋼であるが故に気孔率が比較的少なく、硼素元素(B)が拡散浸透しにくい状態にあると考えられる。
また、この種の硼化処理方法では、翼母材にFeBのほかにFeBの拡散層が形成され易くなっているが、FeBそのものは硬度が高い割合には、剥離がし易く、タービン後段落に設置されたタービン翼への悪影響の虞がある。
蒸気タービンにおいて、蒸気がますます高圧化・高温化する今日、シリカ等の異物は、高圧化・高温化に比例して蒸気中への溶解度が増し、蒸気タービンへのキャリーオーバーがし易くなる性質を備えているだけに、長い間に亘って運転を続けても耐エロージョン性に優れた技術の実現が求められていた。
本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、基材の表面に硼化物を被着する際、耐エロージョン性のより一層の強化を図った基材の表面処理方法を提供することを目的とする。
本発明に係る基材の表面処理方法は、上述の目的を達成するために、請求項1に記載したように、基材にクロム、アルミニウム、硫黄、窒素、炭素のうち、いずれか少なくとも一つ以上を選択、組み合せて拡散浸透処理を行った後、硼化処理を行う方法である。
また、本発明に係る基材の表面処理方法は、上述の目的を達成するために、請求項2に記載したように、基材に硼化処理を行った後、クロム、アルミニウム、硫黄、窒素、炭素のうち、いずれか少なくとも一つ以上を選択、組み合せて拡散浸透処理を行う方法である。
また、本発明に係る基材の表面処理方法は、上述の目的を達成するために、請求項3に記載したように、拡散浸透処理は、基材を塩浴およびガスのうち、いずれかで行う方法である。
また、本発明に係る基材の表面処理方法は、上述の目的を達成するために、請求項4に記載したように、拡散浸透処理は、その前処理工程として、基材と同質材を被覆する方法である。
また、本発明に係る基材の表面処理方法は、上述の目的を達成するために、請求項5に記載したように、基材は、タービン部品であることを特徴とする方法である。
また、本発明に係る基材の表面処理方法は、上述の目的を達成するために、請求項6に記載したように、タービン部品は、タービンノズル、タービン動翼、タービンロータのうち、少なくとも一つ以上であることを特徴とする方法である。
本発明に係る基材の表面処理方法は、金属またはセラミックス等の基材に硼化処理を行う際、硬化処理の前処理工程または後処理工程として窒素等による拡散浸透処理を行うので、基材の表面をより一層硬化させて強度を強化することができ、FeB相生成による表面の割れを確実に防止することができる。
以下、本発明に係る基材の表面処理方法の実施形態を図面および図面に付した符号を引用して説明する。
本発明に係る基材の表面処理方法を、蒸気タービンおよび蒸気タービンに組み込まれたノズルダイアフラムに適用する例示として説明する。
図1は、蒸気タービンを概略的に示す断面図である。
蒸気タービンは、一つのタービンケーシング1内に高圧タービン部2aと中圧タービン部2bを一体構造に形成して組み込んだ高中圧一体タービン部2と、別置きの低圧タービン部3とを備え、これら互いをタービンロータ4で軸結合させて、全体としてコンパクトにし、設置面積の有効活用を図っている。
また、蒸気タービンは、高中圧一体タービン部2と低圧タービン部3のそれぞれに、タービンロータ4の軸方向に沿ってタービンノズル5とタービン動翼6を組みわせてタービン段落7を形成し、高圧タービン部2aの入口8aから供給された蒸気をタービン段落7で膨張仕事をさせ、膨張仕事を終えたタービン排気を出口8bを介して蒸気発生器内に設置された再熱器(図示せず)に供給し、ここで再び過熱して再熱蒸気にし、その再熱蒸気を中圧タービン部2bの入口9に供給し、ここからタービン段落7で膨張仕事をさせ、膨張仕事を終えた中圧タービン排気をクロスオーバ管10を介して低圧タービン部3に供給し、ここでも膨張仕事をさせた後、その低圧タービン排気を復水器、給水加熱器(ともに図示せず)等の熱交換器を介して蒸気発生器に戻している。
また、タービン段落7の構成部品の一つであるタービンノズル5を構成するノズルダイアフラムは、図2に示すように、半割れ状のダイアフラム外輪11とダイアフラム内輪12で挟まれたノズル翼13を環状列に配置し、環状列に配置したノズル翼13の両端部のそれぞれにノズル板(図示せず)を介装させてダイアフラム外輪11およびダイアフラム内輪12のそれぞれに固設させ、ノズル翼13の入口側に供給された蒸気の持つ熱エネルギを速度エネルギに変換させた後、タービン動翼6に供給し、ここでタービン動翼6の回転に伴ってタービンロータ4を回転させ、回転トルクを発生させている。
このような構成を備える蒸気タービンやタービンノズル5等のうち、例えばタービンノズル5のノズル翼13には、耐エロージョン性のより一層の強化を図るため、硼化物が被着されるが、その処理工程は次のようにして行われる。なお、硼化処理は、タービンノズル5に限ることなく、タービン部品、タービン動翼6、タービンロータ4にも適用される。
ノズル翼13の基材は、例えば、マルテンサイト系ステンレス鋼、具体的には12Cr鋼で作製されている。そして、そのビッカース硬さは、約300になっている。
このような鉄基耐熱合金鋼の基材に硼化処理を行うには、まず、基材にクロム、アルミニウム、硫黄、窒素、炭素のうち、いずれか少なくとも一つ以上の元素を選択、組み合せ、例えば、ガスまたは塩浴等による拡散浸透処理を行った後、硼化処理が行われる。なお、基材は、金属に限らず、セラミックスでもよい。
ここで行われる硼化処理は、Naを生成する塩浴材、BCを主成分とする硼化剤、Fe−Siを主成分とする還元剤を混合した塩浴またはガスに基材を浸含させ、硼素を基材表面に拡散させ、硼化を析出させる処理方法である。
なお、硼化処理の前工程として行われる拡散浸透処理は、温度1000℃〜1100℃のガスで行われるが、この処理温度は基材の焼入れ熱処理を兼ねたものである。焼入れ、焼戻しを行っている基材の機械的強度を損なわせないようにするためである。
このように、本実施形態は、基材に硼素と相性の良い元素、例えば窒素等を用い、ガスまたは塩浴等で行う拡散浸透処理を前処理として行った後、硼化物を基材から折出させる硼化処理を行うので、基材の表面をより一層硬化させることができる。
具体的には、例えば、炭化物系のセラミックスのタングステンカーバイドをコバルト基に分散させたサーメット溶射を行った基材に硼化処理を行ったとき、その溶射皮膜の硬さがビッカース硬さ約1300であった従来技術に対し、本実施形態のように、基材の前処理として窒素等の拡散浸透処理を行った後、硼化処理を行うので、その表面硬さが、ビッカースで約1800にまで上昇していることが認められた。
なお、本実施形態は、基材の前処理として窒素等を用いて拡散浸透処理を行った後、硼化処理を行ったが、この例に限らず、基材に硼化処理を行った後、クロム、アルミニウム、硫黄、窒素、炭素のうち、いずれか少なくとも一つ以上の元素を選択、組合せ、例えば、ガスまたは塩浴等による拡散浸透処理の後処理を行ってもよい。
すなわち、従来、例えば鉄基の耐熱鋼に硼化処理を行うと、その表層部に硼素含有量の多いFeB相が生成され、さらにその内部にFeB相が生成されていた。この2つの相は、処理温度や処理時間によって変化するものの、FeB相は表面に割れ等を引き起こすことがあった。
しかし、本実施形態は、基材に硼化処理を行った後、例えば窒素等による拡散浸透処理を後処理として行うので、硼素リッチなFeB相に生成させるので、表面割れを抑制させることができる。
なお、本実施形態は、基材の表面硬さをより一層強化するために窒素等による拡散浸透処理を行っているが、拡散浸透処理の前処理として基材に、例えばコバルト、ニッケル、鉄基合金等の相性の良い基材同質材を被覆してもよい。硼化処理を行う際、強固な硼化物相を析出させるためである。基材に同質材を被覆させる場合、溶射、物理蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)等のうち、いずれかで処理される。
本発明に係る基材の表面処理方法に適用される蒸気タービンを概略的に示す断面図。 本発明に係る基材の表面処理方法に適用されるタービンノズルの半割れ部分を示す斜視図。
符号の説明
1 タービンケーシング
2 高中圧一体タービン部
2a 高圧タービン部
2b 中圧タービン部
3 低圧タービン部
4 タービンロータ
5 タービンノズル
6 タービン動翼
7 タービン段落
8a 入口
8b 出口
9 入口
10 クロスオーバ管
11 ダイアフラム外輪
12 ダイアフラム内輪
13 ノズル翼

Claims (6)

  1. 基材にクロム、アルミニウム、硫黄、窒素、炭素のうち、いずれか少なくとも一つ以上を選択、組み合せて拡散浸透処理を行った後、硼化処理を行うことを特徴とする基材の表面処理方法。
  2. 基材に硼化処理を行った後、クロム、アルミニウム、硫黄、窒素、炭素のうち、いずれか少なくとも一つ以上を選択、組み合せて拡散浸透処理を行うことを特徴とする基材の表面処理方法。
  3. 拡散浸透処理は、基材を塩浴およびガスのうち、いずれかで行うことを特徴とする請求項1または2記載の基材の表面処理方法。
  4. 拡散浸透処理は、その前処理工程として、基材と同質材を被覆することを特徴とする請求項1または2記載の基材の表面処理方法。
  5. 基材は、タービン部品であることを特徴とする請求項1または2記載の基材の表面処理方法。
  6. タービン部品は、タービンノズル、タービン動翼、タービンロータのうち、少なくとも一つ以上であることを特徴とする請求項5記載の基材の表面処理方法。
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JP2017008399A (ja) * 2015-06-25 2017-01-12 トーカロ株式会社 鋼鉄部材表面への複合硬化層の形成方法
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