JPH09143320A - スチレン系樹脂組成物、及びその製造方法 - Google Patents

スチレン系樹脂組成物、及びその製造方法

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JPH09143320A
JPH09143320A JP32524995A JP32524995A JPH09143320A JP H09143320 A JPH09143320 A JP H09143320A JP 32524995 A JP32524995 A JP 32524995A JP 32524995 A JP32524995 A JP 32524995A JP H09143320 A JPH09143320 A JP H09143320A
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JP
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monomer
polymer
styrene
styrene resin
resin composition
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JP32524995A
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English (en)
Inventor
Hiroo Sasaki
洋朗 佐々木
Kazuyuki Yoshida
和之 吉田
Atsushi Shichizawa
淳 七澤
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Asahi Chemical Industry Co Ltd
Original Assignee
Asahi Chemical Industry Co Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 (イ)残留する環状ダイマーが300p
pm以下、(ロ)モノマーを含まず、かつ、重量平均分
子量が10万までになるように低分子量領域を分画した
場合、その低分子量領域の全ポリマー末端に対するビニ
リデン末端の割合が4%以下の条件を満足するスチレン
系樹脂を用い、さらに(ハ)下記一般式(1)で表され
るフェノール系熱劣化防止剤0.005〜0.25重量
%含有してなるスチレン系樹脂組成物。 【化1】 【効果】 従来に比べて熱安定性が改良されたスチレン
系樹脂組成物を提供し得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、二次加工に供される熱
安定性に優れたスチレン系樹脂組成物、及びその製造方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】スチレン系樹脂は無色透明で硬く、水に
対する抵抗性、電気的性質に優れるなどの多くの長所を
有している上に、成形品を容易に大量生産することが可
能であることなどのため、射出成形、押出成形などの種
々の成形法によって成形され、電気部品、雑貨、食品用
途などに幅広くかつ大量に用いられている。スチレン系
樹脂の熱安定性改良を目的にスミライザーGS、GM
(住友化学社製、登録商標)が用いられることは既に公
知である(特公平3−68897号公報)。
【0003】また、その効果的使用方法として、(イ)
重合開始剤を用いたポリスチレンラジカル重合を行い、
重合と未反応モノマー回収工程の中間工程で添加する
(特開平5−170825)方法、重合が実質的に終了
後添加する(特開平7−149817)方法、あるいは
未反応モノマー回収工程の中間工程で添加する(特開平
7−149817)方法が提案されている。いずれの方
法も、スチレンの2量体、3量体に代表されるオリゴマ
ー、あるいはこれらがさらに分解して生じるスチレンモ
ノマーといったペレット中の低沸点成分の低減を狙いと
するものである。
【0004】これらの技術に基づけば、確かにある程
度、ペレット製品中の低沸点成分を減らし得るものの、
スチレン系樹脂の成形加工、すなわち射出成形、発砲成
形、フィルム作成工程といった熱、およびシェアを受け
る二次加工工程で発生するスチレンモノマーを有効に減
らすには十分ではなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、二次加工工
程において、スチレンモノマーを発生するところの熱分
解が抑えられ、熱安定性に優れたスチレン系樹脂組成
物、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らはこれら二次
加工工程で発生するスチレンモノマーの発生機構を詳細
に検討した結果、ペレット中の残留低沸点成分を減らす
べきであるという従来技術の結論に加え、(イ)低沸点
成分の中でも特定の成分を極力減らすこと、(ロ)高分
子量のポリスチレンそのものの内包する不規則結合を減
らすことが極めて重要である事実を見出し、さらに
(ハ)特定の熱安定剤の添加によりこの効果が顕著にな
ることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明
は、(イ)残留する環状ダイマーが300ppm以下、
(ロ)モノマーを含まず、かつ、重量平均分子量が10
万までになるように低分子量領域を分画した場合、その
低分子量領域の全ポリマー末端に対するビニリデン末端
の割合が4%以下の条件を満足するスチレン系樹脂を用
い、さらに(ハ)下記一般式(1)で表されるフェノー
ル系熱劣化防止剤0.005〜0.25重量%含有して
なるスチレン系樹脂組成物、及びその製造方法である。
【0007】
【化2】 〔式中、R1 、R2 、R3 、およびR4 は、それぞれ1
〜5個の炭素原子を有するアルキル基を示し、R5 は水
素原子、または1〜5個の炭素原子を有するアルキル基
を示す。〕 以下、本発明の内容を順を追って説明する。
【0008】本発明者らの検討によれば、スチレン系樹
脂の最終製品に含有されるスチレンモノマーの由来は、
以下の3つ、すなわち、(A)未反応モノマー、(B)
環状オリゴマーよりの熱分解、(C)主鎖のβ−開裂、
からなる。未反応モノマーの除去にはペレットの製造に
至る工程でポリマーを高温、高真空下で長時間脱揮する
ことにより可能ではあるが、環状オリゴマー分解による
スチレンモノマーの供給があるため、一定の限界があっ
た。環状オリゴマーも併せて除くべく、さらに高温で長
時間処理すると主鎖のβ−開裂が無視できなくなり、や
はり一定の限界を超えて残留モノマーを減らすことはで
きなかった。
【0009】熱安定剤添加が有効であることは認識され
ていたものの、ポリスチレンの熱分解挙動とポリマーの
構造やオリゴマー種と熱安定性の関係、また、二次加工
時の熱履歴に着目されず十分に吟味されていなかったた
め、不必要に多く使用する、あるいは、二次加工に供さ
れる前に熱安定剤が消費し尽くされてしまい、二次加工
工程で有効に寄与しない等の問題があった。検討の結
果、明らかとなったことは(イ)、(ロ)を満足するス
チレン系樹脂は従来技術の示す量の半分以下の熱安定剤
添加により、従来技術では示すことのできなかった最終
製品中の残留スチレンを大きく減らすことが可能である
という事実である。本発明におけるフェノール系熱劣化
防止剤とは下記一般式(1)で表される化合物である。
【0010】
【化3】 〔式中、R1 、R2 、R3 、およびR4 は、それぞれ1
〜5個の炭素原子を有するアルキル基を示し、R5 は水
素原子、または1〜5個の炭素原子を有するアルキル基
を示す。〕
【0011】このような熱劣化防止剤としては、例え
ば、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’−
メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェ
ニルアクリレート〔商品名:スミライザーGM、住友化
学(株)所有の登録商標〕、2,4−ジ−t−アミル−
6−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒドロキシ
−α−メチルベンジル)メチルフェニルアクリレート
〔商品名:スミライザーGS、住友化学(株)所有の登
録商標〕、2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−
2’−ヒドロキシ−5’−メチル−メチルベンジル)−
4−メチルフェニルアクリレート、2,5−ジ−t−ブ
チル−6−(3’,5’−ジ−t−ブチル−2’−ヒド
ロキシ−α−メチルベンジル)メチルフェニルアクリレ
ート等を挙げることができる。
【0012】本発明のスチレン系樹脂組成物中の上記熱
劣化防止剤の添加量は、0.005〜0.25重量%、
好ましくは0.015〜0.15重量%の範囲である。
0.005重量%未満であると、モノマーの発生を十分
に抑制することができない。一方、0.25重量を超え
て添加しても、添加量に見合うだけの効果が得られな
い。本発明における環状ダイマーとは、次の式(2)で
表される1,2−ジフェニルシクロブタンである。
【0013】
【化4】
【0014】本発明におけるスチレン系樹脂とは、スチ
レンのみを重合させて、またはスチレンとα−メチルス
チレンを、あるいはスチレンと極性ビニルコモノマーを
共重合させて得られる樹脂である。極性ビニルコモノマ
ーとしては、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステ
ル、メチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル、
アクリロニトリルやメタクリロニトリル等のα、β−不
飽和ニトリル化合物、N−フェニルマレイミド等のマレ
イミド等が挙げられる。これらを一種または二種以上の
混合物として使用する場合も含まれる。
【0015】スチレン系樹脂は主として、熱開始または
開始剤を使用したラジカル重合によって製造される。プ
ロセスは塊状重合と懸濁重合の2種があるが、プロセス
が簡単なことと懸濁剤等の不純物混入の可能性がないた
めに塊状重合が主となっている。塊状重合においては、
エチルベンゼン等の溶剤を添加する場合もある。塊状重
合プロセスでは通常80℃〜180℃の範囲で重合を行
い、続いて未反応モノマー回収工程で脱揮処理されて、
未反応モノマーや溶剤はリサイクルされるが、副生した
環状ダイマーや環状トリマーは、一部、未反応モノマー
と共にリサイクルされる場合もあるが、最終的には系内
で飽和濃度になって、重合中に副生した量がポリマーに
含まれて脱揮工程を出ていくことになる。
【0016】我々は、このようにして製造されたポリマ
ーには種々の低沸点化合物が存在し、その内1,2−ジ
フェニルシクロブタンの如き環状ダイマーが熱安定性に
大きく影響すること、そしてこの環状ダイマーを300
ppm以下にすると熱安定性が向上することを見出し、
すでに出願した。より好ましくは環状ダイマーは100
ppm以下である。また、これらのオリゴマー以外に、
スチレン系樹脂には次の式(3)で表される基(末端ビ
ニリデン構造)を主鎖末端に有するポリマーを含有して
おり、このポリマーは熱安定性に乏しく、該基を水素添
加することにより熱安定性を大きく改善できることを見
出し、すでに出願している。
【0017】
【化5】 この末端ビニリデン構造の検出には 1H−NMRを用い
た。検出感度を向上させるために低分子量領域を分画し
てNMR測定にかけた。
【0018】本発明で「モノマーを含まず」と記載して
いるのは、モノマーを含んだままでは、これが末端ビニ
リデンのNMRシグナルと重なってビニリデン量に誤差
を生じてしまうからであり、モノマーを除いた状態で末
端ビニリデンの量を規定しているわけである。また、本
発明で重量平均分子量が10万までの低分子量体で末端
ビニリデンの量を規定しているのは、NMR感度の限界
から、これ以上の分子量では末端ビニリデンの定量が難
しくなるためである。
【0019】本発明のモノマーを含まない重量平均分子
量が10万までの低分子量の分取方法には特に限定はし
ないが、例えば、ポリマーに対する良溶媒と貧溶媒の組
み合わせによって分画しても良いし、ゲルクロマトグラ
フィー(GPC)によって分取しても良い。また、これ
らを組み合わせても良い。本発明のモノマーを含まない
重量平均分子量が10万までの低分子量領域における全
末端に対するビニリデン末端の割合は、例えば、ポリス
チレンの場合は、TMSを基準としてケミカルシフトで
4.5〜5.5に現れるピーク強度の積分値(A)と
0.5〜2.5に現れるピーク強度の積分値(B)を用
い、GPC測定から求めておいた数平均分子量の値Mn
と合わせて、 (3A/2B)×〔(Mn)/(2×1
04)〕×100の式から求めた。
【0020】また、AS(アクリロニトリル−スチレ
ン)樹脂の場合はGPCによってポリスチレン換算分子
量を求め、また、IRスペクトルから文献(高分子分析
ハンドブック、日本分析化学会・高分子分析研究懇談会
編集、紀伊國屋書店発行、1995年、644頁)に従
ってスチレン含有量を求めてから、末端ビニリデン構造
を有するポリマーの含有量を上記方法に準じて末端ビニ
リデン由来のピーク面積とスチレン部分の芳香環のピー
ク面積を用いて計算した。その他のスチレン系樹脂の場
合は文献(高分子分析ハンドブック、日本分析化学会・
高分子分析研究懇談会編集、紀伊國屋書店発行、199
5年)を参考に、分子量、スチレン含有量を求めてから
末端ビニリデン構造を有するポリマーの含有量を上記方
法に準じて末端ビニリデン由来のピーク面積とスチレン
部分の芳香環のピーク面積を用いて計算した。
【0021】通常のスチレン系樹脂では、重合法によっ
て違いはあるが、モノマーを含まず、かつ、重量平均分
子量が10万までになるように分画された低分子量領体
の全末端に対するビニリデン末端の割合は4%を超えて
いる。この末端ビニリデン構造を低減させると、スチレ
ン系樹脂組成物の熱安定性が格段に向上し、熱分解によ
るモノマー等の発生が抑えられることがわかった。ビニ
リデン末端の割合は、好ましくは4%以下であり、より
好ましくは1%以下である。1%以下にすれば、ラジカ
ル重合ポリスチレン鎖の熱安定性はアニオン重合による
ポリスチレンの熱安定性と大差がなくなる。
【0022】本発明のスチレン系樹脂組成物の製造方法
は、次の2つが挙げられる。一つは(1)まず、温度を
60〜140℃の範囲で開始剤を用いてラジカル重合さ
せ、熱重合の割合を減らす。開始剤としては、アズビス
イソブチロニトリル(AIBN)、ベンゾイルパーオキ
シド(BPO)、1,1−ビス(t−ブチルパーオキ
シ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ポリ
{ジオキシ(1,1,4,4−テトラメチル−1,4−
ブタンジイル)ジオキシカルボニル−1,4−シクロヘ
キサンカルボニル}、t−ブチルパーオキシイソプロピ
ルカーボネート等が挙げられる。続いて、未反応モノマ
ーや溶剤を回収する仕上げ段階において、1段目でポリ
マー中の残存物を(モノマー+溶剤)/(モノマー+溶
剤+ポリマー)>0.002を満足するように脱揮を行
い、留出した未反応モノマー等はリサイクル使用し、2
段目でさらにポリマー中の残存物を0.002≧(モノ
マー+溶剤)/(モノマー+溶剤+ポリマー)>0.0
0005を満足するように脱揮を行い、この際に留出し
た未反応モノマー等はリサイクル使用しないことによっ
て得られる。1段目の脱揮工程の後、2段目の脱揮工程
に入る前に水等を添加することによって未反応モノマー
等を揮発しやすくしても良い。以上の方法により環状ダ
イマーを300ppm以下にすることができる。しかし
ながら、これらだけでは十分でなく、脱揮工程で熱安定
剤を添加しておくことによって、末端ビニリデンの発生
を4重量%以下にできる。熱劣化防止剤は最終製品ペレ
ットに0.005〜0.25重量%残存するように添加
する。
【0023】脱揮装置としては、大きく分けて、真空タ
ンクへフラッシュさせるタイプと押出蒸発タイプとがが
あり(参考:新ポリマー製造プロセス、佐伯・尾見 編
著、工業調査会出版、1994年、195頁)、どちら
も使用することができる。もう一つは(2)ラジカル重
合で得たスチレン系樹脂を溶液系で水素添加し、その
後、溶液から回収したポリマーに熱劣化防止剤0.00
5〜0.25重量%を添加することによって得られる。
水素添加処理には、水素ガス下で触媒を用いて水素添加
を行う方法と還元剤を用いる方法がある。水素ガス下で
水素添加を行う接触水素添加触媒として、一般的な不均
一系触媒や均一系触媒を用いることができる。
【0024】不均一系水添触媒としては、ニッケル、コ
バルト、チタン、ルテニウム、ロジウム、白金、パラジ
ウム、レニウム等の金属(またはその酸化物、塩、錯
体)およびこれらを活性炭、シリカ、ケイソウ土、アル
ミナ、シリカアルミナ、炭酸バリウム、炭酸カルシウ
ム、硫酸バリウム、ジルコニア、マグネシア、チタニ
ア、炭化珪素等に担持したものが挙げられる。
【0025】均一系水添触媒としては、ニッケル、コバ
ルト、チタンまたは鉄化合物と有機金属化合物、例えば
有機アルミ、有機リチウム化合物とを組み合わせた触媒
またはロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニ
ウム等の有機金属錯体を用いることができる。水素添加
条件は室温〜300℃、水素圧は常圧〜100気圧で行
われる。好ましくは分子量低下等の副反応を抑制するた
めに室温〜100℃、水素圧は常圧〜20気圧で水添さ
れる。アクリロニトリル等との共重合体の場合には常温
から80℃、水素圧常圧〜10気圧で水素添加すること
がより好ましい。一部芳香環が水添されてシクロヘキサ
ン環になってもスチレン系樹脂組成物の機械的性能と熱
安定性を低下させなければかまわない。
【0026】溶媒としては水素化条件で安定であり、ス
チレン系樹脂を溶解することのできるものならば如何な
るものでもよく、例えば、シクロヘキサン、メチルシク
ロヘキサン、デカリン、テトラリン、ベンゼン、トルエ
ン等の炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、
エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類が
好ましく、また、これらの溶媒を混合して使用してもよ
い。また、還元剤を用いて水素添加を行うこともでき
る。好適な還元剤としてはヒドラジン等が挙げられる。
【0027】水素添加処理後、ポリマー溶液をメタノー
ル等のポリマーを溶解しない溶媒と混合することによっ
てポリマーを析出させ回収しても良いし、ストリッピン
グタンクを用いてその中の加熱水中にポリマー溶液を吹
き込んで、モノマーや溶媒を除去すると共に析出したポ
リマーを回収する。この時、環状ダイマーも除かれて3
00ppm以下となる。この後、得られたポリマーに熱
安定剤を0.005〜0.25重量%添加して目的とす
るスチレン系樹脂組成物を得る。この組成物中の環状ダ
イマーは300ppm以下、好ましくは100ppm以
下、また、末端ビニリデンの割合は4%以下、好ましく
は1%以下となり、安定剤は0.005〜0.25重量
%含有される。このようにして得られたスチレン系樹脂
組成物は二次加工工程において、スチレンモノマーを発
生するところの熱分解が抑えられ、熱安定性に優れたも
のである。
【0028】本発明のスチレン系樹脂組成物は、ゴム変
性したものやゴム状重合体を添加したもの好ましい。ゴ
ム状重合体としては、ポリブタジエン、ポリイソプレ
ン、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−ブタジ
エンブロック共重合体や、それらの水素添加物が好適に
使用される。これらのゴム状重合体をスチレン系樹脂組
成物に溶融ブレンドしたり、これらのゴム状重合体の存
在下でスチレン等を重合させることによってゴム変性ス
チレン系樹脂組成物を得ることができる。これらのスチ
レン系樹脂組成物は、一種または二種以上の混合物の場
合も好ましい。また、本発明のスチレン系樹脂組成物中
には難燃剤、帯電防止剤、着色剤、ガラス繊維等の充填
剤等のスチレン系樹脂に配合することが知られている任
意の添加物を加えることができる。
【0029】
【発明の実施の形態】次に、本発明を実施例および比較
例によって具体的に説明する。 (実施例1)スチレン88重量%、エチルベンゼン12
重量%の混合液100重量部に対し、開始剤として1,
1−ビス(t- ブチルパーオキシ)−3,5,5−トリ
メチルシクロヘキサン0.02重量部を添加してなる重
合液を、7.2リットルの完全混合型反応器に続いて直
列に接続された合計4.3リットルの3槽の層流型反応
器を有する重合反応装置に1.08kg/hrで連続的
に仕込んだ。完全混合型反応器の温度を122℃、3槽
の層流型反応器の温度をそれぞれ125℃/132℃/
140℃に調節した。最終の層流型反応器の出口の固形
分濃度は75%に安定した。
【0030】重合反応器より連続して排出される重合体
溶液に2−t−ブチル−6−(3’−t−ブチル−5’
−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフ
ェニルアクリレート〔商品名:スミライザーGM、住友
化学(株)所有の登録商標〕を0.3重量%添加し、こ
の溶液を内部に単軸スクリューを有し連続的にポリマー
が排出可能な脱揮缶に導入し240℃/20Torrで
連続的に脱揮した。
【0031】ここで留出した液はスチレンと開始剤を添
加して重合液組成と同じになるように調製した後、リサ
イクルさせた。この脱揮工程での出口でのポリマー中の
残留モノマーと溶媒量は2270ppmに安定した。1
段目の脱揮工程を出たポリマーに水2重量部添加し、次
の脱揮工程であるベント口を有する20mm2軸押出機
において250℃/10Torrで脱揮しポリスチレン
ペレットを得た。ここで留出した液はリサイクルさせな
かった。得られたポリマーの数平均分子量は15.4
万、重量平均分子量は34万であった。
【0032】このポリマー200mgを2ミリリットル
の1,2−ジクロロエタンに溶かした。この溶液にメタ
ノール2ミリリットルを添加してポリマーを析出させ、
0.2μm孔径のフィルターで濾過し、ろ液をガスクロ
マトグラフィーで分析した。カラムはGLサイエンス社
のTC−1(内径0.25mm、厚み0.25μm、長
さ30m)、カラム温度は50℃で5min保持した
後、20℃/minで320℃まで昇温し、さらに3m
in保持した。装置は島津GC−14B(FID)で、
インジェクションは260℃、ディテクターは330℃
に設定した。内標はアントラセンを用いた。ペレット中
の残留モノマーは90ppm、環状ダイマー量は120
ppmであった。
【0033】また、含有する熱劣化防止剤量を測定する
ために、上記ろ液を高速液体クロマトグラフィーで分析
した。装置は東ソー全自動高圧グラジエントシステム
を、カラムは東ソーTS Kgel Silicaを使
用し、展開溶媒としてヘキサン−クロロホルムを用い、
0.5%クロロホルム濃度から70%濃度までグラジエ
ントをかけ、検出はUVで行った。残存した熱劣化防止
剤は730ppmであった。
【0034】さらに、末端ビニリデン構造を有するポリ
マーの含有量はプロトン−NMRによって定量した。ポ
リマー1.5gをクロロホルム10ミリリットルに溶か
し、そこにメタノール4.3ミリリットルを2時間かけ
て添加し、濾過して得られた濾液を濃縮乾燥した。さら
にこのポリマーを分取GPCによって、数平均分子量
2.2万、重量平均分子量4.0万の低分子量体を得
た。次にNMR測定を行い、テトラメチルシラン(TM
S)を基準としてケミカルシフトで4.5〜5.5に現
れるピーク強度の積分値(A)と0.5〜2.5に現れ
るピーク強度の積分値(B)を用い、ゲルパーミエーシ
ョンクロマトグラフィー(GPC)法から求めておいた
数平均分子量の値MNと合わせて、(3A/2B)×
〔(Mn)/(2×104)〕×100の式から得られ
る値を分画された低分子量領域の全ポリマー末端に対す
るビニリデン末端の割合%とした。ビニリデン末端の含
有率は1.8%であった。前述のポリマー(重量平均分
子量は34万)0.1gをガラス管に入れ真空下で封管
した。これを280℃に保温したオイルバスに10mi
n間浸した後、モノマーの発生量を上記のガスクロマト
グラフィーと同様に測定した。モノマーの発生速度は4
40ppm/hrであった。
【0035】(実施例2)温度調節できるステンレス製
重合器に精製スチレン0.9kg、精製エチルベンゼン
0.1kg、開始剤として1,1−ビス(t- ブチルパ
ーオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン
0.1gを入れ、撹拌しながら窒素ガス下で140℃、
8時間保温して重合を行った。この後、5Torr減圧
下で攪拌しながら250℃に上げて未反応スチレンやエ
チルベンゼン等を留去した。得られたポリマー1gをシ
クロヘキサン20ミリリットルに溶かし、5wt%パラ
ジウム−シリカ触媒粉末を0.5g添加し、水素ガスに
て置換した後、水素ガスの充満したゴム風船を取り付
け、40℃にて5時間反応させた。触媒を濾過で除き、
溶媒を留去してポリマーを得た。このスチレン系樹脂組
成物の数平均分子量は8.2万、重量平均分子量は22
万であり、また分画した数平均分子量2.0万、重量平
均分子量4.1万の低分子量体のビニリデン末端の割合
は0.9%であった。モノマーは検出されず、環状ダイ
マーは10ppm含まれていた。
【0036】次に、このポリマーに2,4−ジ−t−ア
ミル−6−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒド
ロキシ−α−メチルベンジル)メチルフェニルアクリレ
ート〔商品名:スミライザーGS、住友化学(株)所有
の登録商標〕を0.2重量%添加し、280℃、10m
inの熱分解テストを行った。モノマーの発生速度は3
10ppm/hrであった。
【0037】(実施例3)温度調節できるステンレス製
重合器に精製スチレン0.56kg、精製アクリロニト
リル0.26kg、精製エチルベンゼン0.19kg、
開始剤としてt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボ
ネート0.3gを入れ、撹拌しながら窒素ガス下で2時
間掛けて150℃、8時間保温して重合を行った。この
後、5Torr減圧下で攪拌しながら250℃に上げて
未反応スチレンやエチルベンゼン等を留去した。得られ
たAS(アクリロニトリル−スチレン)ポリマー1gを
シクロヘキサン20ミリリットルに溶かし、5wt%パ
ラジウム−シリカ触媒粉末を0.5g添加し、水素ガス
にて置換した後、水素ガスの充満したゴム風船を取り付
け、50℃にて3時間反応させた。触媒を濾過で除き、
溶媒を留去してポリマーを得た。重量平均分子量は1
5.0万であり、モノマーは1ppm以下、環状ダイマ
ーは7ppm含まれていた。また、分画した数平均分子
量3.3万、重量平均分子量4.7万の低分子量体(ス
チレン含有率70重量%)のビニリデン末端の含有量は
0.8%であった。このポリマーに2,4−ジ−t−ア
ミル−6−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒド
ロキシ−α−メチルベンジル)メチルフェニルアクリレ
ート〔商品名:スミライザーGS、住友化学(株)所有
の登録商標〕を0.2重量%添加し、熱分解テストを行
った。280℃でのモノマーの発生速度は160ppm
/hrであった。
【0038】(比較例1)実施例1において、熱劣化防
止剤を入れなかった場合、得られたポリマー中の環状ダ
イマーは135ppmであったが、分画した数平均分子
量3.0万の低分子量体のビニリデン末端の割合は4.
3%であった。熱分解テストを行った結果、モノマーの
発生速度は1530ppm/hrと分解しやすかった。
【0039】(比較例2)実施例1において、熱劣化防
止剤を入れなかった場合、得られたポリマー中の環状ダ
イマーは135ppmであったが、分画した数平均分子
量3.0万の低分子量体のビニリデン末端の割合は4.
3%であった。このポリマーに2−t−ブチル−6−
(3’−t−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシ
ベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート〔商品
名:スミライザーGM、住友化学(株)所有の登録商
標〕を0.25重量%添加して熱分解テストを行った。
モノマーの発生速度は1130ppm/hrと分解しや
すかった。
【0040】(比較例3)実施例2において、熱劣化防
止剤を添加しなかったところ、熱分解テストのモノマー
発生速度は620ppm/hrと分解しやすかった。 (比較例4)実施例2において、熱劣化防止剤を0.5
重量%に増量したが、熱分解テストのモノマー発生速度
は300ppm/hrと同程度の効果であった。
【0041】(比較例5)実施例2で得られた水素添加
処理ポリマーに環状ダイマーを400ppm、熱劣化防
止剤2,4−ジ−t−アミル−6−(3’,5’−ジ−
t−アミル−2’−ヒドロキシ−α−メチルベンジル)
メチルフェニルアクリレート〔商品名:スミライザーG
S、住友化学(株)所有の登録商標〕を0.3重量%添
加し、熱分解テストを行った。モノマーの発生速度は1
980ppm/hrと分解しやすかった。
【0042】(比較例6)実施例3の水素添加処理する
前のASポリマーをテトラヒドロフラン−メタノールに
よって再沈精製した。環状ダイマーは検出されず、ま
た、分画した低分子量体(数平均分子量1.8万、スチ
レン含有率68重量%)の末端ビニリデン割合は6.3
%であった。このポリマーに2,4−ジ−t−アミル−
6−(3’,5’−ジ−t−アミル−2’−ヒドロキシ
−α−メチルベンジル)メチルフェニルアクリレート
〔商品名:スミライザーGS、住友化学(株)所有の登
録商標〕を0.3重量%添加し、熱分解テストを行っ
た。モノマーの発生速度は650ppm/hrと分解し
やすかった。
【0043】
【発明の効果】本発明は従来のスチレン系樹脂よりも熱
安定性に優れ、二次加工中でのモノマー発生の少ないス
チレン系樹脂組成物、及びその製造方法、を提供でき
る。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (イ)残留する環状ダイマーが300p
    pm以下、(ロ)モノマーを含まず、かつ、重量平均分
    子量が10万までになるように低分子量領域を分画した
    場合、その低分子量領域の全ポリマー末端に対するビニ
    リデン末端の割合が4%以下の条件を満足するスチレン
    系樹脂を用い、さらに(ハ)下記一般式(1)で表され
    るフェノール系熱劣化防止剤0.005〜0.25重量
    %含有してなるスチレン系樹脂組成物。 【化1】 〔式中、R1 、R2 、R3 、およびR4 は、それぞれ1
    〜5個の炭素原子を有するアルキル基を示し、R5 は水
    素原子、または1〜5個の炭素原子を有するアルキル基
    を示す。〕
  2. 【請求項2】 残留する環状ダイマーが100ppm以
    下である請求項1記載のスチレン系樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 ビニリデン末端の割合が1%以下である
    請求項1記載のスチレン系樹脂組成物。
  4. 【請求項4】 残留する環状ダイマーが100ppm以
    下、かつビニリデン末端の割合が1%以下であるところ
    の請求項1記載のスチレン系樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 温度を60〜140℃の範囲で開始剤を
    用いてラジカル重合を行い、未反応モノマーや溶剤を回
    収する仕上げ段階において、熱劣化防止剤を存在させ
    て、1段目でポリマー中の残存物を(モノマー+溶剤)
    /(モノマー+溶剤+ポリマー)>0.002を満足す
    るように脱揮を行い、留出した未反応モノマー等はリサ
    イクル使用し、2段目でさらにポリマー中の残存物を
    0.002≧(モノマー+溶剤)/(モノマー+溶剤+
    ポリマー)>0.00005を満足するように脱揮を行
    い、この際に留出した未反応モノマー等はリサイクル使
    用せず、かつ、熱劣化防止剤を0.005〜0.25重
    量%残存させることを特徴とする請求項1記載のスチレ
    ン系樹脂組成物の製造方法。
  6. 【請求項6】 ラジカル重合で得たスチレン系樹脂を溶
    液系で水素添加し、その後、溶液から回収したポリマー
    に熱劣化防止剤を添加すること特徴とする請求項1記載
    のスチレン系樹脂組成物の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2001036539A1 (fr) * 1999-11-18 2001-05-25 Teijin Limited Composition a base de resine thermoplastique contenant un polymere thermoplastique a groupes alicycliques; objet moule
JP2002003531A (ja) * 2000-05-31 2002-01-09 Qimei Industry Co Ltd 射出成形用ポリスチレン系樹脂

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WO2001036539A1 (fr) * 1999-11-18 2001-05-25 Teijin Limited Composition a base de resine thermoplastique contenant un polymere thermoplastique a groupes alicycliques; objet moule
EP1266937A1 (en) * 1999-11-18 2002-12-18 Teijin Limited Thermoplastic resin composition containing thermoplastic polymer containing alicyclic group and molded object
JP2002003531A (ja) * 2000-05-31 2002-01-09 Qimei Industry Co Ltd 射出成形用ポリスチレン系樹脂

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